- 11/4 ◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:19:16
(ドリジャ+のんびりポジティブ♀トレ)
「やったぁ!ぜひお願いします!」
「ふふ……では、少々お待ちください」
昼休みに訪れた遠征支援委員会。
今日は休息日だったはずが、ジャーニーに直接確認したいことが出来てしまったのでお邪魔させてもらっていた。
必要な確認も済んだところでコーヒーをご馳走してくれると言うので、遠慮なく甘えさせてもらう。
ジャーニーは慣れた手付きで器具を準備していく……スマートにコーヒーを淹れられるってめちゃくちゃかっこよくない?私も教えて貰おうかな……。
「トレーナーさん、本日のご予定は?」
「えっと……このあと同年代のトレーナー達で勉強会をすることになってて」
今朝決まった予定を伝えるとジャーニーは静かに「勉強会、ですか」と復唱する。
同じタイミングでドリッパーから最後の一滴が落ち、コーヒーサーバーの中にふわ……と波紋が広がていった。
「どうぞ。熱いのでお気を付けて」
深い芳香と共にコーヒーカップがのったソーサーが置かれ、お礼を告げてそっとカップに口付ける。はぁ、美味しい……
そのまま、ちらりと向かいに座るジャーニーの様子を窺う。真剣な表情で思案しているみたいだけど……なにか勉強会で引っかかることがあるのかな。
「……多分、勉強会のメンバーに変な人はいないと思うよ?」
「ええ、そこは心配していませんよ」
「えっ」
「……そうですね、貴方を不必要に惑わせたくありませんし……」
そこで言葉を区切ってジャーニーが取り出したのは、黒い長方形の……彼女が愛用している香水のボトル。 - 22/4 ◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:20:18
「こちら、トレーナーさんに付けていただきたいのですが……構いませんか?」
「うん。大丈夫」
詳しく話せないみたいだけど、多分私を思っての行動だろうから快諾する。
するとジャーニーは「ありがとうございます」と微笑み、椅子から腰を上げた。香水を自身の手の甲にワンプッシュしてから指先に付けると、こちらに視線を向ける。
「首に触れても?」
こくり、と頷きだけで返す。ジャーニーが一歩、二歩と近付いてくるごとにあの深い香りがより濃く感じられて、なぜかどきりとしてしまう。
椅子に座ったままの私に付けるため、ジャーニーが少し前屈みになる。淡い色彩の瞳と視線が合うと彼女は目を細め、小さく「失礼します」と囁き……優しく、首筋に触れた。
ほんのり冷たい指先がトントンと肌を軽く叩く。くすぐったくて身体を捩りそうになるのを我慢して、ぎゅっと目を閉じる。
「……本当に、おかわいらしい」
指が離れると同時にぽつりと呟かれた言葉。ぱっと顔を上げると、そこにはいつも通りの表情をしたジャーニーがいて。 - 33/4 ◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:20:55
「実りの多い勉強会になるといいですね」
「あ……うん!トレーニングに活かせる話が聞けるといいなぁ」
「ええ、楽しみです。よろしければ明日、教えていただいても?」
「もちろん!しっかりメモってくるね」
任せて!と腕を曲げて力こぶを作ってみせる。柔らかいのしか出来ないけど。
話している間に少し冷めてしまったコーヒーに口を付ける、と。ヴヴヴ……と鈍い音を立ててテーブルに伏せておいたスマホが振動する。集合時間一〇分前にセットしておいたアラームだ。
折角ジャーニーがコーヒーを淹れてくれたのに……ゆっくり飲みたかった……!仕方なく流し込むように残りを飲み干し、立ち上がる。
「じゃあ、行ってくるね。コーヒーご馳走様でした!」
「はい、行ってらっしゃい。……また明日、お待ちしていますね。暑くなりそうですし……アイスコーヒーと、それに合うお菓子も用意しておきましょう」
こちらの気持ちを察してくれたのか、そう付け加えてくれたジャーニー。彼女の優しさを噛み締めつつ、バタバタと部屋を後にしたのだった。 - 44/4 ◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:21:30
「……トレーナーさんの言う通り、害をなすような人物はいないでしょう。ですが……」
彼女の気持ちに関係なく言い寄る可能性がある人物が、いるとしたら?
以前トレーナーさんと食堂で話していた際に遠くからこちらを見ていた、あのトレーナー。彼女に向ける視線がどこか熱っぽかったのを覚えている。年齢はトレーナーさんとそう変わらなかったはずだ。
強引に行動を移すタイプではなさそうだが、あわよくば距離を縮めたい……と考えている可能性もある。不安要素はなるべく取り除いておきたい。
ただの同僚であれば何事もなく終わるだろう。トレーナーさんだって素直な人ではあるが警戒心がないわけではない……ですが、ね。
想ってもいない相手に言い寄られ、心優しい彼女が思い悩むようなことになっては、いけないでしょう?
でも、それをそのまま彼女に話してしまえば。
「あのトレーナーは貴方に気があるかもしれないから気を付けて」と正直に話してしまえば、トレーナーさんは否が応でも意識してしまうだろう。
それではいけない。あちらから近付いてこないようにしなければ。
だから、香りを纏わせた。有り体に言えば「虫除け」というわけだ。
彼女が纏う香りに、その背後にいる存在(なにか)に気付けばいい。声を掛けることを躊躇すればいい。
そうして明日、いつも通りの彼女の笑顔が見られれば……重畳でしょう?
「ふふッ……オルに知られたら『過保護だ』と言われてしまいそうだ」
コーヒーと、香水と、かすかに彼女の香りが残る部屋に鍵を掛け、後にする。
授業が終わり次第、アイスコーヒー用に浅煎りの豆と茶菓子を買いに行くとしよう。トレーナーさんの幸せそうにほころぶ笑顔を想像して、自然と笑みがこぼれた。
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おわり - 5◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:22:00
- 6◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:22:46
- 7◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:23:32
このドリジャはトレーナーさんが自ら選んだ相手かつドリジャ独自の調査をクリアした人しか恋人として認めなさそう
(トレーナーさんの感性を信じていますが万が一ということもありますから…みたいな)
(恋人が出来ることそのものは別に問題ない) - 8◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:24:09
ドリジャなら勉強会のことも把握済みなのでは?って思った!書いてから気付いた!でもまぁ全部が全部把握してるわけではないだろうし…多分…慌てて朝決まったとか付け足したし…
- 9◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:25:02
お互いに恋愛感情は一切ないのにどこか色っぽい?しっとりした雰囲気になるの、ヘキです
- 10二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 03:25:02
信頼しきった上での独占欲を感じられて良き
- 11◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:27:29
- 12◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 03:29:30
こちら魔除けになります
お問い合わせアニメ・漫画・ゲームの専門掲示板ですbbs.animanch.com - 13二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 04:12:06
このレスは削除されています
- 14◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 04:18:28
- 15◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 04:42:39
書いてた時はそこまで思わなかったけど、改めて読み返すとドリジャ側からの結構な執着?を感じる…
ドリジャは「好ましい・身内認定した存在のことを守ろうとする」傾向にあるのかなと思ってて、虫除けもその一環としてのつもりだったんだけど…
10の言う通り「信頼しきった上での独占欲」なのかも…読み取る力と表現力すごっ - 16二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 05:27:39
これぞという語彙が出ずすごくすごいとしか言えませんが あなたの絵と文が好きです
- 17◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 06:26:49
う〜〜〜れしい!!ありがとうございます!!
- 18二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 10:02:57
- 19◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 10:58:02
もう少しさっぱりめにするはずが筆が乗った結果なんかねっとりしてました…なんでだろう…
スモーキーな香水、自分は嗅いだことがないけどエキゾチック (異国的)な香りらしいから旅(もしくはステゴ?)のイメージなのかな?とは思ったり
- 20◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 11:04:10
トレーナーさん、と、お話し中でしたね。失礼いたしました。
そちらは……ああ、先日の勉強会の。
いえ、少々確認したいことがありまして……ですが、トレーニングの時でも構いませんので。
おや……よろしいのですか?
それはそれは、ありがとうございます。トレーナーさん、遠征支援委員会の方でお話しさせていただいても?
……では、失礼いたしますね。
すれ違う時にふわっとあの日の♀トレが纏っていた香りがして振り向いた例のトレーナー、♀トレと並んで歩いているドリジャからの一瞬の視線と(♀トレが気付かない程度に)彼女の尻尾が♀トレの足にゆるく巻かれているのを見てなにかを察するという後日談
でもあの香りがドリジャのだってバラさない方がいいんだよね多分…でもこういうシチュ(牽制目的?)くらいでしか尻尾ハグしなさそうだし…尻尾ハグさせたかったし… - 21◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 11:19:48
- 22二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 19:30:57
なに気にドリジャと♀トレの身長ほぼ同じ?
可愛ぇんじゃあ~ - 23二次元好きの匿名さん24/07/06(土) 19:51:57
- 24◆CkgutIW.EIYz24/07/06(土) 19:58:36
- 25◆CkgutIW.EIYz24/07/07(日) 00:35:00
- 26二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 00:36:34
このレスは削除されています
- 27◆CkgutIW.EIYz24/07/07(日) 00:55:59
26で普通に誤字ってて恥ずかしかったから消した
特になにもなければこのまま自然にスレ落とそうかなーと思います!です! - 28二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 08:40:26
このレスは削除されています
- 29◆CkgutIW.EIYz24/07/07(日) 09:45:11
微笑み…?ありがとうございます…??
台詞のみだけど七夕SS書いたから投げる! - 301/2 ◆CkgutIW.EIYz24/07/07(日) 09:46:03
七夕のおはなし
「これ、短冊?七夕の?」
「はい。なんでも、多く用意してしまったそうで。来年に回してもいいのですが、トレーナーさん達にも書いてもらうのはどうだろう……となりまして」
「寮ってそういう季節の行事もやるんだねぇ、楽しそう……。短冊……願いごとかぁ」
「……七夕の願いごとですが、元々は手芸の上達を願ったそうです。そこから時代が変わり、習い事や芸事の上達を願うようになったとか」
「あー……小学生くらいの時に聞いた気がする……?」
「また、たなばたさまの歌詞にある『ごしきのたんざく』は文字通り紫・赤・白・黄・青の五色の短冊のことを指します。そして短冊の色によって叶いやすくなる願いが違うそうですよ」
「へぇぇ……」
「紫は『学業』、赤は両親や先祖への『感謝』、白は『規則』や『義務』、黄色は『人間関係』、そして青は『成長』に関する願いごとを書くとよいそうです」
「なるほどー……勉強になります、ジャーニー先生」
「ふふッ、トレーナーさんは素直に聞いてくださるので、つい喋りすぎてしまいました」
「へへ……」
(はにかむように微笑んで……おかわいらしい)
「っと、願いごと……うー……ん、よし」
「赤い短冊、ですか」
「うん。自分に関する願いごとは自分で叶えたいから……トレーナー試験に合格出来るまで支えてくれたお父さんとお母さん、それに私ならなれるって応援してくれたおじいちゃんとおばあちゃんに『ありがとう、これからも元気でいてね』って書こうかな」
「……素敵なご家族に囲まれて、トレーナーさんはここまで来られたのですね」
「へへー、私の自慢の家族です。じゃあ、書いちゃうから少し待っててね……『お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん』……全部収まるかな……」
(真剣な顔をして……ふふ……)
「……ふぅ、ギリギリ入った……」
「お疲れ様でした、トレーナーさん」
「えへへ……じゃあこれ、お願いします」
「はい、確かに受け取りました。トレーナーさんに代わって、間違いなく、笹に吊るすことを誓いましょう」 - 312/2 ◆CkgutIW.EIYz24/07/07(日) 09:46:48
「ところでトレーナーさん、こういったものはお好きでしょうか?」
「わぁ……!キラキラして綺麗だねぇ……えっと、琥珀糖、だっけ?」
「正解です。星空を模したもので、七夕に丁度良いかと思いまして。こちら、コーヒーとも合うそうです。試してみませんか?」
「それは……すごく、気になるね……!」
「ふふッ、では少々お待ちを……」
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おわり - 32◆CkgutIW.EIYz24/07/07(日) 09:56:41
やっとほのぼのした話書けた
ドリジャと同じく♀トレも家族大好きっ子だといいなぁ - 33二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 19:56:24
いいですねほのぼの話
こういうかわいい面ももっと見たい - 34◆CkgutIW.EIYz24/07/07(日) 20:31:04
ほのぼの、いいですよね…何気ない大切な日常って感じで…