- 1書いた人24/07/11(木) 21:18:44
- 2二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:19:20
楽しみぃ!
- 3二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:19:24
2万!?気合入りすぎだろ待機
- 4書いた人24/07/11(木) 21:19:38
『会計担当役員、早瀬ユウカです。これより第二次補正予算案の概要をご説明します。よろしくお願いします』
ぺこりと頭を下げる私の横で、モモイはかちんこちんに固まっていた。私は右手を強く握る。すると彼女はビクッと肩を震わせ、すぐにお辞儀をした。
気持ちは分かる。なにせ眼下にミレニアムの生徒がほぼ全員集まっているのだから。
『まず初めに、先の災害で被害を受けられた生徒の皆様、住民の皆様へ謹んでお見舞い申し上げます。今回の議案は前回の補正予算で対応が難しかった範囲を中心により手広い支援を実現するべく……』
「ねえあれってモモイ?」
「え、ゲーム部のモモイ? 何で?」
「モモイちゃんセミナー入ったんだ」
「いやそれはない」
「早瀬先輩と一緒に? えっ手繋っ、えっ」
「付き合ってたんだ……私以外の先輩と……」
最前列からひそひそ声が聞こえる。これも気持ちは分かる。
なにせ、セミナーの会計がモモイと手を繋いで登壇したのだから。 - 5書いた人24/07/11(木) 21:21:19
『せ、静粛にっ!』
思わず出した大声でマイクがハウリングを起こす。それと同時に、頭の中に描いていたかんぺきな台本が吹き飛んでしまった。焦って手を伸ばし講壇の水を飲もうとする私。つい右手が出てしまう。モモイの左手がぐいっと近付く。
急に引っ張られて驚いたのか、モモイはその場で足を滑らせた。今度は私の右手が引き寄せられる。
「「わわわわわ!!?」」
そうして私とモモイは全校生徒の前で盛大にひっくり返った。
ダメだ。終わった。昼夜を徹して準備した予算計画……。
どうしてこんなことに、なったんだっけ。 - 6二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:25:30
ひゃっほい!!モモユウSSしかも長編だって!?楽しみすぎる!!
自信もってpixivとかハーメルンにあげても大丈夫です!! - 7二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:25:41
なるほど言葉通り手が離れなくなってんのね
- 8書いた人24/07/11(木) 21:28:08
「あ゛っっづい゛……」
セミナー、生徒会室。デスクからデスクへ庶務の生徒がパタパタ駆け回っている。その白衣姿だって目に入れたくないくらいの、うだるような蒸し暑さだった。
セミナーの会計は冷酷だってよく言われるけれど……今の私は頭から火が出そうになっている。
「ユウカちゃん、その服を脱ぐという選択肢もありますよ? もう七月なんですし。無理は体に良くないですからね」
「そういうノアだって着てるじゃない。私に合わせてるつもりなら、そっちこそ自由にしていいわよ」
「いえ。私は寒がりなので」
ノアが涼しい顔で笑う。汗一つ流さず淀みなく働くあなたの方が、私にとっては不気味なんだけど。
節電の一環として生徒会室のクーラーを禁止したのは私だ。私が一番に根を上げるわけにはいかない。いつも先生のだらしない恰好を叱っている身として、制服を脱ぐ事も許されない。このジャケットはセミナー役員の正装なのだ。 - 9二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:28:34
ユウモモ💢💢💢💢好き💢💢💢💢
- 10書いた人24/07/11(木) 21:34:45
「それはそうと、少し休憩を入れてはどうでしょう? 臨時総会は大切ですが、ユウカちゃんが倒れてしまっては元も子もありませんよ」
「そんなの分かってる。今回は災害支援がメインなのよ? 私がやらなくちゃ誰が全体発表するのよ。市民団体からの圧力もあるし……絶対に通さなきゃいけないんだから」
「色彩」との戦いからしばらく。D.U.ほどではないけれど、ミレニアムにも被災地域がある。一刻も早い復興が必要だ。そのための予算をかき集めては調整して、批判を受けては謝っての毎日。そんなことばかりしていたら夏になってしまった。
この臨時総会が思い通りに進めば、少しは羽を伸ばすことが出来るはず。いつも恨みを買っている節はあるけど、今回ばかりはみんなに協力してほしい。そんな思いが沸々と湧いてくる。
リオ会長が姿を消してから何度目かの総会。各所への根回しも万全。今度こそ、あの人が出来なかった透明な学校運営を実現する時だ。
私は今回の補正予算案に賭けていた。
すると、ノアがぽつりと呟く。
「……あら? 珍しい」
「ん、どうしたの」
「事前質問状が届いています。補正予算案の項目についてですね」 - 11二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:37:37
支援
- 12二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:39:52
ううっ、どこへ行ってもユウカは世知辛い…
楽しみです! - 13書いた人24/07/11(木) 21:43:34
ピリッと背筋に緊張が走る。
何か怪しく見える点があったかな? もし悪印象が決議に影響したらどうしよう?
それに、一体どこの誰が今更になって予算項目をつつくのかしら。
流れる汗が急速に冷えていく。ヴェリタスを筆頭に、うるさ型へは話を付けたと思っていたのに……。
私の表情を見て、ノアは苦笑いした。
「そんな顔しないでください、ユウカちゃん。心配するには及びません。かわいいものですよ」
「……誰から」
「モモイちゃんです。ゲーム開発部の」
「はあ?」
「えーと。『追加予算なのに私たちの部費が増えていないのは何かの間違い! 断固抗議と共に説明を求める!』だそうです」
にじんだ額の汗を手袋で拭う。じっとり濡れたその手袋を外し、机の上に放り投げた。
ノアは思ったんだろう。そのニュースが私の表情を少しでもほころばせるかもしれないと。
私はゆっくり席を立った。
「ゲーム開発部に行ってくる」
「えっ」
「あのバカ、こっちの気も知らないで……何も分かってないくせに! そんなもの取り下げさせるから、消しておきなさい!」
「ユウカちゃん!?」
困惑するノアの声を背中で受けながら、私は生徒会室を飛び出すのだった。 - 14二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:49:41
お、楽しみ
- 15書いた人24/07/11(木) 21:50:35
「モモイっ!! あの質問状はどういうこと!?」
沈黙。私がドアを開けると、ゲーム開発部の部屋には凍て付くような空気感、が……?
「あ、やばいかも」
「お久しぶりです、ユウカ!」
空気”感”じゃない。空気だ。空気が冷え切っている。壁のエアコンが轟々と音を立て冷気を吐き出しているのだった。冷蔵庫、いや冷凍庫と見紛う室温。
ミドリとアリスちゃんがごろんと寝転がっている。お菓子やらジュースやらゲーム機器、そして漫画が散乱する床に。
私は言葉を失った。
「……」
「えっと、これはね。ゲーム開発に欠かせないコンピューターグラフィックスを出力するために少しでも冷却が必要で」
「CGなんか描けないでしょう、あなたたち」
「そ、それはこれまでの話で……勉強自体は何となくしてて……」
「じゃあクーラー切るわね。リモコンはしばらく預かるから」
「えー!?」 - 16二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:52:11
この文章の書き方あの人思い出すわね
- 17二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:56:14
ユウモモSSだ!
楽しみにしてる!! - 18書いた人24/07/11(木) 21:58:50
ミドリを正座させ、私はひとしきり節電の必要性を説いた。仏頂面の彼女はそっぽを向いている。姉の素行に紛れ、妹も大概なことをこのほど忘れていたかもしれない。ゲーム開発部には油断も隙もならないのだ。
「それで、モモイはどこ? 隠し立てしない方がいいわよ」
「お姉ちゃんならいないよ」
ミドリの視線が一瞬、部屋のロッカーに向いたような気がした。
隠れる暇があったとも思えないが、念のためロッカーを開けてみる。
「わひゃぁぁ!?」
「あ、ごめん」
中にいたのはユズだった。毛布を頭から被って震えている。
……寒がってるじゃない。
ロッカーを閉じ、ミドリに向き直る。するとアリスちゃんが言った。
「ユウカ、モモイがまた何かしたんですか?」
「総会の事前質問状についてよ。あの子、資料もロクに読まずとんちんかんなことを……」
「あれ本当に出したんだ。やめときなって言ったのに」
「モモイは外出中? なら何をやってるのかだけ教えて。そうすれば長居はしないわ」
「はい! アリス、知ってます。モモイは、モモイは……」
アリスちゃんは急に真剣な顔をした。表情豊かな彼女のこと。それはまるで思い詰めているようにさえ見える。
ちょっと心配になったものの、さっき怒り散らした矢先。腕を組んだままアリスちゃんを見守るしかない。
「モモイは……邪神降臨の儀式を行っているんです!」
前言撤回。
私は肩を落とすのだった。 - 19書いた人24/07/11(木) 22:07:28
通訳を挟んだところ、モモイは開発作業に飽きてどこかへ遊びに行ったらしい。
何よ、シナリオの神が降りてくるのを待つって。物書きってみんなこうなの? あの子はプロでも何でもないけど。
近頃モモイは金欠らしい。ゲームセンターへは行ってなさそうだし、まずは学内を探した方がいいだろう。
そう思ってミレニアムタワーのエントランスへ降りてくると、何やら人だかりが出来ていた。
「よってらっしゃい見てらっしゃい! 新素材開発部の新商品だよ! 今なら一壺三万円! 買った買ったぁ!」
「……」
ミレニアムの生徒たちは好奇心旺盛だ。新しいものと言われればすぐ飛び付いてしまう。
詐欺の被害で相談を受けることも珍しくない。その現場と思しきものが、目の前に広がっていた。
「どんな素材にも使える魔法の接着剤だよ! 金属同士もくっ付くんだって。これを使えばどんなものも二度と剝がれない! 最初の一個だけ特別に一万円で売っちゃうよ!」
「モモイちゃん、それはちょっと強気すぎじゃ……」
「大丈夫大丈夫。こういうのは煽れば煽るほどいいから」
何だろう。探していたのに見つけたくなかった。つい顔を覆ってしまう。
商売を語る前に、校則を学んでおくことは出来なかったのだろうか。
お立ち台の上のモモイは実に爽やかな笑顔をしていた。 - 20書いた人24/07/11(木) 22:13:36
あ、今更だけどちょっとお固めです
- 21書いた人24/07/11(木) 22:27:50
モモイのセールストークに乗せられ、わっと集まる生徒たち。新素材開発部の子は揉みくちゃにされている。
トラブルの常連と常連が手を組んでしまった。
「どうも毎度あり! お後の皆さんは並んで並んで!」
「モモイっ! こんなことして捕まらないとでも思ったの!?」
「げぇっユウカ!?」
混乱の渦中、私は背後からモモイの首根っこを掴んだ。
群衆に警備員も混ざり始めている。それでも狂騒は止まず、誰もかれもがお金を握り締めている始末。
暴動かと見紛う状況の中、ぐいっとモモイを引っ張り出す。
近くで何かが割れる音がした。修繕が必要な何かじゃないといいけど。
「小金欲しさのためにまたバカなことを……! あんなふざけた質問状まで書いて! あれもこれも取り消しなさい!」
「ユウカには貧乏人の気持ちなんて分からないやい! 離してよ!」
「このっ……うわ!?」
後ちょっとでモモイを捕まえられそうだったそんな一瞬。隣の生徒に背中で押され、私は体勢を崩した。
「待ちなさいモモイ!」
「しつこいよユウカ!」
咄嗟に右手を床に突く。べたり、と何か不快な液体の感触。
しかし、モモイを逃がすわけにはいかない。こちらに背を向ける彼女の手をがっちりと握った。
……それが、全ての過ちとも知らずに。 - 22二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 22:37:06
なるほど、手錠モノ的な感じか
お固めってそういう…? - 23書いた人24/07/11(木) 22:43:58
「離してよー! ちょっと売るのを手伝ってただけじゃんかぁ」
「それがアウトなの。無認可の素材を売り捌くなんて、どれだけ危険か分かってる? あなたが痛い目見るだけじゃ済まないのよ」
「ユウカのケチ! 鬼! 官僚!」
「……はぁ」
群衆が食い散らした祭りの後には、もはや何も残っていなかった。新素材開発部の連中もどこかへ姿を消している。こういう悪夢のようなハプニングが週に数回起こるのでなければ、良い校風なのに。
逃げようとしてぐいぐい私を引っ張るモモイ。私は彼女が大人しくなるまで手を繋いでいた。
「ユウカ」
モモイはいつもこうだ。私だって悪意があって邪魔してるわけじゃない。
むしろ逆、彼女のためを思って叱っているつもりなのに。どうして伝わらないんだろう。この頃は考え過ぎるというか、つい悩み込んでしまう。モモイのことだけじゃない。
ノアの言う通り、きっと疲れている節はある。何だか体が重いし頭がぼーっとする。やはりジャケットを着たままウロウロするのはきつい。
「ユウカぁ!!」
「はぁ……何よ」
これでも徹夜明けなのだ。頭がガンガンする。
私はやけに青い顔をしているモモイを一瞥した。彼女は床に散らばった壺か何かの破片を指さしている。
そこには、鮮やかなピンク色の水溜まりが出来ていた。
「ま、まさか……あれ触った?」
「え?」
「接着剤! 超強力接着剤っ!」
「えええ!?」 - 24書いた人24/07/11(木) 23:02:39
「ウタハせんぱーい! 何とかしてよぉ」
涙を目いっぱいに浮かべて騒ぐモモイ。ぶんぶん振り回す左手につられ、私の右手も振り回される。それ、やめなさいって言ったでしょ。
そんなわけで、私たちはエンジニア部を訪れていた。
「うーん……危惧はしていたが、まさかこうも早く肌を接着してしまう人が出るとは。そしてそれが君たちとは」
「ウタハ部長、この接着剤のこと知ってたんですか?」
「もちろんだとも。新素材開発部とはパートナー関係だし、画期的な発明品だからね」
「ただの瞬間接着剤じゃないんですか?」
「全然違いますよ!」
横からコトリが割って入ってくる。ヒビキもうんうんと頷いていた。
「説明しましょう! これは有機分子設計学に着想を得て開発されたイオン反応を用いる超原子接着剤でして! 物と物を無理に繋げるのではなく、まるで潤滑油のように働いて原子レベルで融合させる仕組みになっているのです!」
「……半端ない危険物質じゃない」
「いえいえ。環境に優しい素材で、お肌にも無害なんですよ」
「これのどこが無害なのよ!」
私の右手とモモイの左手はぴったりくっ付いてしまっている。お湯でほぐしても市販の剥がし剤を塗ってもビクともしない。お互い指一本動かせないし、凄く不便だ。
何より恥ずかしいったら……! どうしてモモイと親子みたいに手を繋いでなきゃいけないの!? - 25書いた人24/07/11(木) 23:18:11
新素材開発部は行方をくらましているし、頼れる相手はエンジニア部しかいない。
それだって不安だけど、一刻も早く何とかしたかった。
モモイの温かい小さな手。細いにも関わらず柔らかいその印象は、年相応の女の子のものだ。
じっとりにじんだ手汗から、彼女の焦りを感じる。お互い握り締めてもいないのに手が離れない。
モモイが嫌いってわけじゃないけど……とにかく居心地が悪い。
「もう、どうしてこんな危険物を作っちゃったのよ。事故でも起こったらどうするつもりだったの? いつもくだらないものばっかり……」
「ユウカ。今の気持ちとしてはそうだろうけれど、何でも取り扱い次第だと思わないかい?」
「え?」
「この接着剤は縫合なしで傷を塞げるし、溶接要らずの金属加工を可能にする。使い方によれば医療、製造分野に革命をもたらすかもしれないんだ。君たちの言う”当たり”の発明品なんだよ」
「……」
ウタハ部長がじろりと私を見た。そこに言外の圧力を感じる。
私たちセミナーは役に立つと思ったものにだけ予算を出す。投資のやり方としては当然だ。学校のお金で無駄なものをいくら作られても困る。
でも向こうは役に立つ立たないを問わず、発明は発明だと言いたいのだろう。それを選別する立場の私が嫌われる所以だ。
そんなこと分かってる。でも今は言い争ってる場合じゃない。
遊んでるだけのモモイと違って、こっちは早く臨時総会の準備に戻らないといけないんだから。 - 26書いた人24/07/11(木) 23:35:26
「ヒビキ、どう思う?」
「やっぱり力ずくで剥がせる代物じゃないね。電解法を転用して水中での分離を促すのはどうだろう」
「超音波による溶着技術との併用はどうでしょうか? もちろん人体に安全な範囲では難しいですが……」
「早く帰ってゲームがしたいよぉ」
あれからしばらく、エンジニア部の三人はああでもないこうでもないと議論を繰り広げていた。
モモイはだらんと腰掛けたままぼやき続けている。
誰のせいでこんなことになったと……平常心、平常心。
ひとしきり話が済んだようだった。ウタハ部長が私たちに振り向く。
「うん、結論が出たよ。少なくとも今日中には取り外せないだろう」
「えー!? じゃあどれくらい掛かるの?」
「タンパク質構造の解析と分離機の製作で……一週間くらいかな?」
「「嘘ぉ!?」」
え、一週間? 聞き間違いよね? 目の前が暗くなっていく。
一週間って。総会に間に合わないじゃない。
え? 噓でしょ? モモイと手を繋いだまま出席するの?
何も聞こえない。聞きたくない。
ぴーぴーと泣き喚くモモイの横で、私の意識は静かに絶望へ沈んでいった。 - 27二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 23:36:39
おもろい
- 28二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 23:40:26
なんだろう、読んでてとても胸がずきずきする
リアタイで追ってると気持ちが宙ぶらりんになりそうなので完結してから一気に読みたいタイプかも - 29二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 23:42:37
ちゃんと原作通りのクソガキなモモイが新鮮に感じる…
ユウカがモモイに当たらないようにしようとしてたりしてるのに、自分のことしか考えてないモモイっていうのがモモイって感じがしていい
続きに楽しみにしてます - 30二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 23:47:29
これはきっと相互理解の物語なんだねって言ってみるよ
ユウカは基本的にダダ甘でお人好しだけど若干頭が固いというか、自分の想像や価値観が及ばない事柄には配慮が足りなくなっちゃう所があるから…
まずはお互い言いたいことを言ってみよう - 31書いた人24/07/11(木) 23:47:54
「ゲームぅ、ゲームぅぅぅ! ゲームをさせろぉー!」
「ちょっとは協力しなさいよ! 今のあなたは私の右手なのよ!」
作業が、進まない。もう夕方なのに仕事が全然終わってない。
まだまだ編集したいデータとか、準備したい資料とか、連絡を回したい相手が山ほど残ってるのに。
モモイが隣でギャーギャー叫ぶから集中どころじゃない。
タイピングも上手く出来ないし、ストレスで頭が割れそうだ。
両手が使えないのは百歩譲っていいとする。
でもどうして私が左でモモイが右なの!?
「マウスカーソルもうちょっと下! 違う、そっちは別のファイル!」
「わーん、どれがどれかなんて分かんないよー!」
「次はこれにサインして……字、汚すぎ! 他人が書いたってバレるでしょ!?」
「なら左手で書けばいいじゃん!」
「左で筆記はやりにくいのよ!」
確かに私は両利きだけど、だからってセオリーというものがある。
左手で、左から右に文字を書くのは非効率的なのだ。ボールペンのインクは出てこないし手が汚れるし。
片手だけで執務をするのは地獄のような体験だった。おまけに狭いデスクへ二人掛け。
「あの、ユウカちゃん……後は私がやっておきますから……」
「いいえ、ここは私がやらないと意味ないの。ノアは先に上がってて」
「えー? こんな計算誰がやったって一緒だよ。ノア先輩にやってもらおうよー。私帰りたいんだからぁ」
「あなたに何が分かるのよ!」
「まあまあ……」 - 32書いた人24/07/11(木) 23:52:24
- 33書いた人24/07/12(金) 00:05:49
「こらユウカ! 必殺抱え落ちはタブーだって言ってるでしょ!」
「ボタン押してるのはモモイじゃない。そっちのタイミングなんて分からないわよ」
「CT空けたら即ブッパだよ。そんなの常識じゃん?」
「どこの世界の常識なの?」
ノアに説得され、私たちはゲーム開発部の部屋にいた。どうしても寄る必要があるって言うから来たけど、遊んでるだけじゃないの。
モモイはとっかえひっかえ自分のゲーム機にソフトを差し込んでいく。
「この敵は睡眠ハメが有効だから壺投げまくるよ! あっそれは麻痺壺! そっちは毒壺! それは出血壺っ!」
「違いが全然分からないんだけど……」
「このゲーム、そんな逃げ腰じゃ勝てるものも勝てないよ! もっと敵弾の中に前ブーしていかないと。ボスの前に陣取って回避! あっこれはガードして!?」
「どっちなのよ!?」
「ユウカ―! 前のラップでショトカ教えたじゃん! せっかくアイテム持ってるんだから活用して! ちょ、ダート走っちゃダメだってば!?」
「……」
ことゲームにおいて、右手と左手の役割は大きく違う。左手は方針と選択を司り、右手は決定と行使を担当する。どんなゲームでもコントローラーを使う以上は大体一緒だ。
普段は何気なくやっているゲームの操作。でもそれを二人羽織でやると、こんなに難しいとは思わなかった。
自分の意思で進められないゲーム。こんなにつまらないものはない。
それはお互い様のようで、私たちはすっかり疲れ果ててしまった。 - 34書いた人24/07/12(金) 00:26:09
私はモモイを家に連れ帰った。
自室にノア以外の誰かを招いたことは多分ない。その初めてがまさかモモイになるなんて、昨夜までは思ってもみなかった。
今日は熱帯夜になるらしい。クーラーを点けベッドに横たわる。
どうせ電気代を払うのは自分だと思うと、少し心に余裕が生まれた。
汗で身体に張り付くシャツも、熱の籠ったブレザーも、重いジャケットも脱ぎ捨ててしまいたい。でも無理だ。他人と片手が繋がっていては着替えようがない。
半袖姿のモモイが羨ましくて仕方なかった。
「うぅ……」
「喉乾いたよー。ジュースとかないの?」
「キッチンなら勝手に使って」
「じゃ、じゃあ起きてほしいんですが……」
「それは無理」
もう起き上がれない。身体は重いし頭もクラクラする。軽い熱中症だと思う。
本当はシャワーを浴びたいけど、服を着たままモモイと入るなんて最悪だ。
私たちはあくまで先輩と後輩。それ以上でも以下でもない。既に数回トイレを共にしているとはいえ。
「ユウカの部屋、意外と物少ないんだね。何で? お金持ちなのに」
「何でって……ここで時間を過ごすこと、あんまりないもの。学校に生徒会にシャーレを行き来してたら実質寝るだけの場所よ」
「そんな生活、私にはムリだよー。ユウカはそれで楽しいの?」
「……」 - 35書いた人24/07/12(金) 00:35:29
「楽しいとか楽しくないとか関係ないから。仕事ってそういうものでしょ」
「えー? 楽しくなくちゃ、やってる意味ないよ。骨折れ損のくたびれ儲けじゃん。意味分かんない」
「あのね……ゲームを作るのだってそうでしょ。最初から最後まで、全部が全部楽しいって言えるの? そうじゃないから今日もサボってた。違う?」
「むぐぐ……」
モモイが私に言い勝とうだなんて百年早い。頬を膨らませ、彼女はすぐ返答に困ってしまった。
私だって、辛いだけの仕事をわざわざ選んだつもりはない。
自分に出来ることを最大限やってるだけだ。困難に突き当たるのも、悪く言われるのにも慣れている。
リオ会長は何でもやってのけるカリスマだったけど、私は違う。得意なことは多くないし、誰もを黙らせる辣腕もない。地道に努力を重ねるしかないんだ。
そうしてる内に、段々と目蓋が重くなってきた。
モモイが隣で何か言っているけど、よく聞き取れる感じがしない。
「でも先生なら……毎日が楽しいって言うと思うんだけどな」
先生? どうして先生の名前が出てくるの。
分かってる。私は先生のようにもなれないって。
みんなに愛されて、誰からも好かれて、キヴォトスの人気者で……あの人を嫌う生徒なんて一人もいない。
私とは大違いだ。
私は、私の出来ることを、するしかない。
もしかしたら……リオ会長も、そうだったのかな。
「え? ユウカ寝ちゃったの? わ、私トイレ行きたいんだけど?」
段々涼しくなっていく部屋で、髪をほどきもせず私は眠りに就いた。 - 36書いた人24/07/12(金) 00:42:06
以上で前半終了です。やっぱ長いかも……。
続きは明日仕事終わりに更新します。
リアタイだるいよーって方はPixivに全編上げたのでどうぞ。
明日も付き合うよーって方はなにとぞよろしくお願いします。
↓ユウカ「モモイから手が離せない......!」↓
#ブルーアーカイブ #二次創作 ユウカ「モモイから手が離せない......!」 - にげせんの小説 - pixiv*** 『会計担当役員、早瀬ユウカです。これより第二次補正予算案の概要をご説明します。よろしくお願いします』 ぺこりと頭を下げる私の横で、モモイはかちんこちんに固まっていた。私は右手を強く握る。すると彼女はビクッと肩を震わせ、すぐにお辞儀をした。 気持ちは分かる。なにせ眼下にミレ...www.pixiv.net遅くまでお目汚し失礼しました!
- 37二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 00:56:06
おつ
- 38二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 01:07:24
おつした!
- 39二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 02:03:45
続きはwebで
- 40二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 02:26:40
結構な長文だったけど、言葉選びや改行が丁寧でスッと頭に入ってきた
生徒の会話や独白も「なるほど確かにこの子ならこういう風に振る舞うだろうな」って感じですごくよかった
後半を全裸待機(死語) - 41二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 07:53:02
後編期待
- 42二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 14:54:37
保守
- 43書いた人24/07/12(金) 16:13:41
保守ありがとうございます。
17時台から後編投下しまあす - 44書いた人24/07/12(金) 17:05:14
あれから三日が経った。
エンジニア部から連絡は来ないままだ。ラボはずっと稼動し続けているらしいけど。仮称「接着剤剥がし機君」の開発費用は全部私が支払っている。そろそろクライアントとして進捗を案じてもいいはずだ。
そんな中、臨時総会は閉幕した。
大講堂から続々と去っていく生徒たち。しかし私たちは人だかりに囲まれていた。
「学内報出版部です! お二人のご関係についてお聞かせください!」
「モモ、セミナー入ったの!? 一体どんな賄賂を!?」
「にっ、にははっ……手、総会なのに、手、繋っ……には……っ」
「わーん、誤解だよー!」
私は机に突っ伏していた。主に囲まれているのはモモイだ。私は無関係。私は赤の他人。
そこで抱腹絶倒しているコユキだけは許さないが、今日は全てを無かったことにしたい。
総会は大盛り上がりだった。出鼻にすっ転んだ後、私は必死に予算の概要を説明した。多分全員が全員モモイを見ていたと思う。
例の事前質問は取り下げられていなかった。1年の才羽モモイから質問が届いていることを説明すると、議場は爆笑の渦に包まれた。
私は全校生徒の前で、何故ゲーム開発部の部費が増えないのかを説明した。自分が今まさに手を繋いでいる人へ向かって。
私の説明を受け必死に頷くモモイ。まるでパペット人形だと誰かが野次を飛ばし、一同は笑い転げた。
その結果がこれだ。
「おらおら、漫才はもう終いだ! ここ閉じるからさっさと出てけ!」
「うわっ、ユウカ!? 急に走らないでよー!」
ネル先輩が野次馬を散らす。私はその隙に席から立ち、駆け出す。
背中に嘲笑を浴びながら、どこへともなく逃げ出したのだった。 - 45書いた人24/07/12(金) 17:42:00
「……」
「……」
人気のない校舎裏で、私は膝を抱えていた。
モモイは気まずそうに夕陽を眺めている。総会を台無しにした自覚が少しでもあることの表れだろうか。
カラスの羽ばたく音。運動場で球技を楽しむ生徒たちの声。その全てが恨めしい。
別に待っていたわけじゃない。でもモモイが口火を切った。
「ご……ごめんね」
「別に、怒ってない」
「怒ってない人は校舎裏なんかに来ないよぉ」
「怒ってないから」
「じゃ、じゃあどういう感情……?」
「悔しいのよ」
モモイの手を強く強く握る。我ながら稚拙な感情表現だと思うけど。
「悔しいって……準備してた予算は通ったんでしょ。それなら良かったじゃん。スイーツでも食べて帰ろーよ」
「あの顛末を見て、私の議案が認められたって思う?」
「え、どゆこと」
「誰も予算案の内容なんか見てない……! マスコットみたいなあなたの存在に絆されただけ。内容なんかどうだっていいに決まってる!」
「……それじゃダメなの?」
「ダメなのよ!」
私の大声にモモイの肩がビクッと震える。手を繋いでいるから、直接それが伝わってきた。 - 46書いた人24/07/12(金) 18:20:04
「あなたは知らないだろうけど……リオ会長ならこれくらいの追加予算、総会になんか掛けてなかったはずなの。臨時経費を内密にいじるか裏帳簿で対応してたに決まってる……学生に知らせて総会で決めるなんてやり方、あの人はしないのよ」
「んんん?」
モモイは目を丸くした。
分かってる。こんなこと、あなたに言っても仕方ないって。
「私も会長を信頼してた。会長のやることなら多分正しいんだろうって……でも、そのせいで気付かなかった。要塞都市エリドゥの建築が進んでることに」
「!」
「学校のお金はみんなのものでしょ。だからみんなで考えるべきだって……そう伝えるのが、私の、責任で」
声が掠れた。あれ、おかしいな。夏風邪でも引いたのかしら。
モモイを責めるつもりはないし、自己憐憫に浸る気もない。頭ではそう思っている。でも、どうして?
私の口は止まらない。
「でも、誰も! 誰も分かってくれなんかしない! 何とでも言えばいい、冷酷な算術使いでも妖怪でも。だけど……嗤われることには慣れてないのよ。何を言われても堪えないあなたたちとは違うから!」
「ユウカ……」
リオ会長の罪は私の罪でもある。その償いが今日のはずだった。
でも、そうはならなかった。
やっぱりみんなの関心は私には無かった。
覚悟も、努力も、熱意も伝わらなかった。
モモイの顔を見ることも出来ず、私は俯き続ける。
日が暮れるまで、ずっと私たちはそこにいた。 - 47二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 18:25:21
とてもつらい…
- 48書いた人24/07/12(金) 19:02:01
闇の中、ポチポチとスマホを叩くモモイ。
その光が鬱陶しくて、私はブランケットの中で丸まっていた。
またソーシャルゲームのデイリーミッションをこなしているのだろう。ここ三日間、暇さえあればそれだ。聞くと十とか二十も同時にプレイしているのだとか。
そのリソースを他に回せばいいのに。価値あること、やるべきことは無限にあるのに。
私たちはどこまでも正反対の性格なんだな、そう思った。
「ねーユウカ。ご飯食べなよ」
要らない。その意思を示すため右手を一回だけ握った。なのに、モモイは続けた。
「じゃあ食べなくていいからこれ飲みな? オニオンスープ。少しは温かいものお腹に入れた方がいいよ」
「……」
「ミドリが持ってきてくれたの。おいしいよ」
返答はしなかった。信号はすでに出している。別に意固地になっているわけじゃない。そんな風に振る舞われることが嫌だっただけ。
私たちは家族でも何でもないから。
「……明日、シャーレ行くの? 当番なんでしょ」
少し考えた。
本当は行きたくない。先生と会うのに数日お風呂に入っていないなんて最悪だ。体はタオルで拭けるけど、洗濯が出来ていないのはなお酷い。このシャツなんて嗅がなくても臭う気がする。
何より朝起きた時、D.U.まで足を運ぶ体力や気力が残っているかどうか。
「一緒に行こうよ。私も先生のとこ行く用事あるんだー」
そんな私の心境をよそに、モモイは穏やかな声でそう言った。 - 49書いた人24/07/12(金) 19:38:18
「……大雨じゃない」
連日の酷暑ですっかり忘れていた。梅雨明けまではまだ掛かるのだ。
バケツをひっくり返したような土砂降りに顔をしかめる。
これじゃ傘なんてほとんど意味を為さない。電車を降りたはいいが、シャーレまでまだあるのに。
「どうしよっか。降り止むまで待つ?」
「予報じゃ夜まで止まないわよ。歩こう」
「え、ズブ濡れになっちゃうじゃん。ゲーム機壊れたら困るんだが」
「どうしてゲーム機持ってきてるのよ。何しに来てるわけ? そっちのお使いっていうのも何だか腹立たしいし……」
「!」
その時、左手に持っているスマホが鳴った。更にもう一つの通知音。モモイのスマホにも来ているらしい。
これはシャーレ……先生からの出動要請だ。
「げ、悪徳PMCがデパートを占拠!? ヴァルキューレの救援って……私たちがやるの!?」
場所は少し行った先らしい。この連絡が来たからには、私たちが一番近いということになる。
……どうして、よりによって今日なのよ。
私とモモイは顔を見合わせる。
そもそも私たち、一緒に戦ったことなんてあったっけ? - 50書いた人24/07/12(金) 20:14:19
「ちょっとモモイ! ちゃんと狙ってよ!」
「いやいやいや! 狙ってる暇がないって! しかも私片手だし!」
「私だって片手なのよ!?」
「そっちはいつもそうじゃん!」
急行したデパートはまるで戦場だった。
乱雑に組まれたバリケードが突入を阻み、ヴァルキューレの生徒たちが次々倒れていく。
この大雨で交通網が麻痺していることもあるだろう。戦力は圧倒的に足りず、PMC相手に手も足も出ない状況だ。
私たち二人は一階のエントランスで膠着状態に陥っていた。
敵は完全な重武装。中央に居座ったパワーローダーが激しいプレッシャーを醸している。
「いだだだだっ! ユウカぁ、もっと奥隠れてよ!」
「こっちだって余裕ないわよ! づっ……!」
耳元を敵の弾丸が掠める。私が選んだ遮蔽は二人入るには小さかった。
モモイは片手でライフルを構えるが、明らかに反動に負けている。
リコイルを制動出来ず銃身が跳ね上がる。そんな攻撃が敵勢へ届くはずもない。
私はといえば、敵の装甲に悩まされていた。向こうは重武装のオートマタばかり。一挺の火力じゃ全く足りない。
肉薄して二挺で攻めればまだ戦えるけれど、モモイがいてはそれすら出来ない。
頼みの綱は先生と一緒に急行しているという部隊だけ。
でも戦力が違い過ぎる……! 到着はまだなの!? - 51書いた人24/07/12(金) 20:42:00
そうこうしている内に、私たちの隠れていた壁はバラバラに崩れてしまった。急いで次の遮蔽に移らないと……。
「一旦下がろ!? このままじゃ囲まれちゃうよ」
「それが出来ればやってる! でもここで食い止めなきゃ戦線が……」
「そんなのどうでもいいじゃん! 私たちが人質にされたらマズいでしょ!? しっかりしてよユウカ!」
「っ、そんなこと分かってる!」
モモイに手綱を握られてどうする? 私の方がずっと作戦の参加回数は多い。こういう状況を切り抜けてきた経験だってある。先生が来てからここまでの劣勢はそうそうないけれど。
彼女を力いっぱい引っ張りながら退路を探る。でも二人身を隠せる場所は見つからない。
私一人ならまだ……いや、それじゃ意味がない!
気付けば、一緒に戦線を保っていたヴァルキューレの隊員たちが見当たらない。
幾人かは瓦礫の上に倒れ、建物の隅にうずくまっている子もいる。ケガ人を庇う味方も攻撃を防ぐので精一杯だ。
ってことは、戦意があるのは私たちだけ……!?
「げほっげほっ! ユウカぁ」
「本当に……退くしかないの……?」
建物の奥には数十人のPMC兵士。こちらはそもそも戦える状態じゃない。先生の指示はあくまでヴァルキューレの援護だ。私たちは、いや私は前に出過ぎたのかもしれない。どうして? こんな時リオ会長なら……すぐに正解を導き出せるのに。
今の私は迷い、何のため戦っているのかも分からない。
その時。愚鈍な私が気付くのは数秒遅かった。
敵のパワーローダーが機首をこちらへ向けている……!
「っ!? モモイっ!」
「ユウカ……!?」
渾身の力で右腕を引き、モモイの前に出る。次の瞬間、衝撃と共に体が浮いた。
視界が炎で埋め尽くされる。私はモモイを抱えたまま、奈落の底へと意識を手放した。 - 52書いた人24/07/12(金) 20:43:55
あれ、もしかして固いっていうか重い寄りですかこれ?
- 53二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 20:58:01
うんまあ重いっていうか、読んでて辛くなるやつ…
- 54書いた人24/07/12(金) 21:07:15
全身が痛い。視界は暗く閉ざされていた。体の半分が何かの下にあり、抜け出したくても動かない。潰された頭が軋む。目玉が飛び出そうだ。
多分、私……早瀬ユウカがここまで手酷くやられたのは初めてだ。
普段私はセミナー役員として後方に控えている。リオ会長の在校時からナンバーツーに近い自覚はあった。だから、望むなら作戦に出なくたって良かった。
「……カ! ねえ……」
でもシャーレでは、いつもみんなの一番前で戦ってきた。論理的計算と少しの勇気があれば、戦闘力の低い私でも役に立てるって……証明したかったから。
帰ってこれるか分からないウトナピシュティムの本船に、オペレーターとして搭乗したのも同じ。一番、みんなが助かる確率の高い行動を取ったつもりだ。
「ウカ……ユウカ」
会計役員として、臨時総会の招集を提案したのだってそう。
シャーレの依頼へ躊躇いなく駆け付けたのだって、そう。
みんなのために。
ミレニアムのために。
キヴォトスのために。
何と言われたって構わない。
傷付いたって立ち上がってみせる。
たとえ、一人でも
「このバカっっっ!!」
その一発の平手打ちで私は目を覚ます。私の右手を、誰かが強く握ってくれていた。 - 55書いた人24/07/12(金) 21:46:49
「バカバカバカ! ユウカなんかバカだ! 私よりよっぽどバカの、大バカ妖怪! このバカ! ほんとバカ!」
ここ最近で一番痛かったのはその平手打ちだった。
なにせ一度のみならず、何度も何度も同じ場所を鋭く叩かれ続けるから。
目を開けるとモモイがいた。顔を真っ赤にして、涙をこぼしながら私を罵り続けていた。
「何でそんなにバカなの!? 頭良いくせに! 何でも出来るくせに! 私にないもの、全部持ってるくせにっ!」
「つっ、やめ」
「やめるもんか! ユウカも会長とおんなじだよ! みんな心配してるのに一人で突っ走って、全部一人でやろうとして!」
「……っ!」
「いい加減に私を頼ってよ! 私も、ユウカを守るから……」
「モモ、イ」
言葉が出てこない。
私が、会長と同じ?
誰にも頼らず、一人で背負い込んで、権力と能力で全てを成し遂げようとして。自分が傷付いても意に介さない。苦しんでいるのは自分だけだと思い込んで……自分の理想に、みんなを落とし込んで。
そんな、勝手な先輩。私が。
「いつも、ごめん……ユウカに頼ってばっかりで。ほんとは分かってるの。あなたがいなきゃ、私たちはダメなんだって」
「……」
「それじゃダメだよね。私は私で、ユウカはユウカなんだから。でも他人だなんて思いたくない……ユウカのこと、大好きだもん」 - 56書いた人24/07/12(金) 22:16:10
ようやく、私は瓦礫の中で寝かされていることに気付いた。こちらを見下ろすモモイの頭上に大穴がある。床が崩壊して地下へ落ちてきてしまったのだろう。
瓦礫に埋まりかけていた私を助けてくれたのは、誰あろうモモイだった。
「ねえ。ユウカにとって私は邪魔かもしれないけど……そんなのイヤ」
「嫌、って」
「私たち、お互いを自分の片手にしようとしてたんだ。でもそれじゃ、いくら頑張っても一人分でしかないでしょ」
「!」
「二人で、ここを乗り切ろうよ」
モモイの左手に引かれ、私は半身を起こした。あれだけ痛かった身体だけど、まだ何とか動かせそうだ。引っ叩かれた頬を擦りながら立ち上がる。
そして、モモイを抱き締めた。
「……ごめんね。ありがとう、モモイ」
「い、痛かった?」
「本当にね。でもおかげで目、覚めたから」
小さな背中を擦ってあげると、彼女はまた鼻をすすった。
私はまだ銃声の響く上階を見上げる。
「ねえモモイ。二人でゲームやった時のこと、思い出してくれない?」
「え……ゲーム?」
「ええ。あいつらに痛い目、見せてやるわよ」 - 57書いた人24/07/12(金) 22:37:14
天井の穴から二人で這い出ると、味方はすでに全員撤退していた。
うじゃうじゃしているPMC兵士たち。その目と銃口が一斉にこちらを向く。
私たちの共同戦線が、遂に始まった。
「敵は僅か二名! 狙い撃て!」
「ラジャー!」
奴らは数の有利に慢心している。私たちが反撃してくるとすら思っていないだろう。
この状況は限りなく変数を排したゲームと言っていい。相手の反応は読みやすく、攻めるこちらの方が選択肢は多い。
セオリーに従ってミスなく遂行すれば自然と解に辿り着く。ある意味ゲームと数学は同じ攻略が成り立つのだ。
「行くわよ、モモイ! 付いてきて!」
「よーっし! 頼んだよユウカ!」
「何……まっすぐ突っ込んでくるだと!?」
攻略法その一、「アイテム使ってショートカット」。地下で拾った鋼板を構え、私はパワーローダーに向かって走る。敵がどれだけ多くても、被弾面積は同じだ。モモイは私の後ろにピッタリ付いているのだから。
即席の盾はガリガリ削られていく。でもほんの数秒で私たちは目的地に辿り着いた。迷いがないからだ。
「バカな……コイツら正気か!?」
攻略法その二、「ボスは正面に陣取る」。
パワーローダーとのゼロ距離! ここで勝負する! - 58書いた人24/07/12(金) 23:02:16
「お望み通り叩き潰してやる!」
パワーローダーはクレーンのようなアームを振りかぶる。でも計算可能な攻撃なんかに当たってやる私じゃない。
鋼板を投げ捨て、私は自分のジャケットを掴む。
ナイフで切り裂いたジャケットを片手で脱ぐ。その重くて暑い邪魔なものを、私はパワーローダーのカメラアイに投げ付けた。
「ちっ、小癪な真似を……」
「あなたたちの戦力はすでに計算済みよ! 攻撃が私たちに命中する確率は……極めて低い!」
「ゼロじゃないの!?」
「言ってないでほら、次っ」
「オッケー! 私たちの怒りの壺を食らえぇっ!」
床に鉄拳をめり込ませたパワーローダーは、大きな隙を私たちに晒す。それは強靭な装甲に任せた油断。もし私たちが、たったの一撃であなたを行動不能にする術を持っていたとしたら?
攻略法その三。「ハメ技は容赦なく使う」……!
モモイがリュックサックから取り出した因縁の壺を投げ付ける。
壺が割れ、機体はピンク色の液体を被った。それこそは私たちをここまで追い詰めた元凶。超強力瞬間原子接着剤だ。
「な……何だ!? う、動きが悪く……」
「一生その中にいなさい!」
「そーだそーだ!」
パワーローダーはギシギシと音を立て、動かなくなった。モーターの空転する悲鳴のような高音。関節の各所から黒い煙が立ち昇る。
モモイがシャーレに頼まれた用事。それは接着剤のサンプルを配達することだった。こんな危険物、やはり封印した方が良い気もするけれど。
これで勝利の道筋は整った。もう遮蔽物を探して逃げ惑う必要はない。エントランスの真ん中に、これだけ大きな盾を得たのだから……! - 59書いた人24/07/12(金) 23:24:52
「パワーローダーがやられた!? 総員奴らを囲み込め!」
「決して逃がすな! とっ捕まえろ!」
「……モモイ。用意はいい?」
「うん! ユウカこそ大丈夫?」
「ふふっ、完璧よ」
自然と笑みがこぼれたのは何日ぶりだろう。与えられた数瞬の猶予の内、私はモモイと一緒に呼吸を整えた。ここからが私とモモイの正念場。でも不思議と焦りや不安はない。
モモイが右手でライフルを構える。私は左手へ彼女の予備マガジンを携えた。
二方向から押し寄せてくる敵へ、モモイはトリガーを引き絞る。
「こんなの筋肉痛確定じゃん! あなたたちのせいだよー!?」
けたたましい銃声と共に吐き出される弾丸が先頭のオートマタを貫く。貫いた弾丸はまた次のオートマタを直撃する。片手だから精度は落ちるだろうけど、この距離なら問題ない。
弾倉を撃ち切った瞬間、モモイは私の右手を握った。交換の合図だ。
「次々行くよー! やられたい奴から掛かってこーい!」
「ガキ一人に舐められるな! 分散して対応しろ!」
「……させない!」
私は素早くモモイのマガジンを交換した。そして彼女の左手を握る。これは交換完了の合図ではない。回避行動開始の合図だ。
「怒りや悲しみだけじゃない。孤独も失意も絶望も……全て因数分解してやるわ!」
「えっそれどういう意味!?」
敵が迫ってくる。一斉にこちらへ降り掛かる弾丸の雨嵐。私はモモイの手を引き、その間隙を縫うように飛び退く。
全て計算通り。もう一度彼女の手を強く握る……! - 60書いた人24/07/13(土) 00:06:41
「何故だ!? 攻撃が当たらない!」
「マズいぞ、誰か盾を……ぐわっ!?」
モモイは再びトリガーを引く。意表を突かれたPMC兵士たちを怒りの弾丸が貫いた。不動のパワーローダーを盾に、私たちは大きく立ち回りを再開する。
広範囲に渡る高火力掃射。ロジックを突き詰めた徹底回避。それが私たち二人の強み。それは片手が塞がったことで失われたようにも見えた。お互いの欠けを補おうとするだけじゃ、相反する要素は食い合ってしまう。
でも本当はそんな必要なかったんだ。
「モモイっ!」
「ユウカっ!」
一方的に自分の強みを押し付ける。押し付け続ける。相手が折れるまで! それこそ対戦ゲームの極意。そして自らの一芸に秀でた、私たちミレニアムサイエンススクールのセオリー! 私はモモイの火力を、モモイは私の防御力を得た。更にリロードを突き詰めることで、攻撃と回避の完璧なサイクルを発生させる。
そう、これが最後の攻略法。「CT空けたら即ブッパ」だ……!
「クソっ、たった二人にここまで押されるとはっ」
「待て、裏口から奇襲だと!? 誰か対応しろ!」
「や、奴らは確か元SRTの……! ダメです、持ちません!」
「ててて、撤退だぁー!」
敵の連携が崩れ始めた。そうか、遂に先生が到着したんだ。
それならもう……怖れるものは何もない。
私たちは背中をぴったり合わせた。
「……逃げてくわね。私たちの勝利よ」
「よゆーよゆー! これでおしまい?」
「まさか。他の学園に手柄を取られてたまるもんですか。ここまで来たら……とことんやるわよ!」
「オッケー!」
お互いの手を固く握り締める。
それから私たちは、逃げる悪党を木っ端微塵になるまで追撃したのだった。 - 61書いた人24/07/13(土) 00:23:33
私たちはヴァルキューレ警察学校から表彰を受けた。警備局隊員の援護。重犯罪者の逮捕。シャーレの名声と共に、私とモモイもニュースへ取り上げられることになった。
クロノス取材陣が構えるカメラの前で、手と手を繋ぐ私たち二人。鼻高々なモモイはともかく、私は顔から火が出そうだった。
救援が遅くなったことを幾度となく謝る先生。でも結果的に問題なく終えられたわけだし、当然怒ってなんかいない。むしろRABBIT小隊から「ミレニアムにここまで戦える人がいたなんて」と言ってもらえたことが誇らしかった。
それはそれとして、私はジャケットの弁償代。モモイは新しいゲームソフトを買ってもらっていた。先生の家計……今月大丈夫かしら。
……そして。
私たちにとって、運命の瞬間がやってきた。
「「剥がれたぁぁぁ!!」」
高周波式超原子接着点融解促進機君。エンジニア部が完成させた巨大な装置の水槽の中で、私とモモイの手は見事に離れたのだった。
感動のあまりひしっと抱き付く私たち。
これで右手にペンを持てる! 服を切り裂かなくても着替えられる! 寝返りが打てる! トイレの度、相手の頭にズタ袋を被せなくて済む! 勉強もゲームもテレビも漫画も料理も仕事も全部全部、自分の好きなようにしていいんだ!
言葉もなくさめざめと泣く私たち。それを見下ろす関係者の面々。
「良かったですね、ユウカちゃん。でもお二人の近況を毎日楽しみにしていたので……残念な気もします」
「あーあ……お姉ちゃんが帰ってきたら一人暮らしもおしまいかぁ」
「「喜んでよっ!?」」 - 62書いた人24/07/13(土) 00:30:15
「しかし、最初の被害者が君たちで良かったよ。もしよそで重大事故が起こっていたら、この先端技術はお蔵入りになっていただろう」
「ええ! シャーレのご協力で技術特許もいただけましたし、取り扱い法が確立したのは僥倖でした!」
「みんなハッピー。めでたしめでたし♪」
ウタハ部長たちは何やらご機嫌だ。何だか先週は無かった機材が色々増えているような気もするけど……気のせいだと思うことにしよう。
ゲーム開発部、ヴェリタス、C&Cの面々はモモイを揉みくちゃにしている。ちょっと待って、見物人多くない?
「お帰りなさいモモイ! さっそく部室でアリスと対戦しましょう!」
「待てチビ、あたしが先だ。こないだの借り返してやっからよ、全員このままゲーセン行こうぜ」
「モモに見せたいグラフィティがあるんだ! 後でいいから来てよ」
「え……えっと……シナリオの締切……近いんだけど……」
「わわわ!? 一人ずつ喋ってよ!?」
この子、そんなに交友関係広かったのね。私と強制行動していた一週間、退屈していた面々がこれだけいる。問題児の類が多いように思うけど。
本当に……人気者なんだな。
ようやく自由になった右手。ちょっとだけその軽さに違和感がある。
そんな私に背後からニヤついた声が掛かった。
「ユウカせんぱーい? もしかして寂しいんですかぁ? モモイちゃんと離れ離れになるのが!」
「なっ……」
「にはははは! それ図星の顔じゃないですか! もしかしてホントにお付き合いしちゃってたり?」
「コユキ……次はあなたとノアにくっ付いてもらおうかしら。いい勉強になるんじゃない?」
「それは洒落にならないですよっ!?」
「え、私との生活って罰なんですか?」
へらへらと笑うコユキ。目をぱちくりさせるノア。
ああ、忙しくて忘れてた。そういえば……これが私の日常だったっけ。
これってやっぱり、楽しいかもしれない。 - 63書いた人24/07/13(土) 00:44:33
「涼しいですねー、ユウカちゃん」
「本当は暑かったんでしょ? 私の見てないとこでバテてたんじゃない?」
「さあ、どうでしょう」
「ノアも大概意地悪なんだから……あ、これかしら」
「片手で出来るRPG?」
クーラーのよく効いた生徒会室。私とノアはパソコンを覗き込んでいた。ゲーム開発部が新作を発表したというのだ。
事件のせいで滞っていたシナリオライティング。お尻に火が点いたモモイは一週間缶詰めだったと聞いている。その成果がようやく世に出たと聞き、何だか感慨深いものがあった。
ゲームの紹介ページには色々と御託が書き連ねてある。
何とはなしにノアがそれを口にした。
「両手を使うのはもう古い、時代の最先端に乗り遅れるな。ラクラク操作で奥深いゲーム性、授業の合間にレッツプレイ……」
「へえ、良いじゃない」
視界の端々で庶務の生徒が動き回っている。みんな目に見えて動きが早い。
自分で何でもやる必要はないって、どうして今まで気付かなかったんだろう。
仕事を振ったら時間も気持ちも余裕が出来た気がする。
今回の件で色々と気付かされた。
それがあいつのおかげだってのがちょっと癪だけど。 - 64書いた人24/07/13(土) 00:54:46
「モモイはバリアフリーの大事さを学んだのね。それをゲームを通して表現出来るなら、きっと成長したってことかしら」
「……君は最強無敵のチート剣士、古今東西天下無双。お前ら如き右手一本で十分ですが何か?」
「ん?」
「お姫様と手を繋ぎ、悪のフトモモ星人ユーカロイドをぶっ倒せ。この夏、全ミレニアムが泣いた奇跡の因数分解を目撃せよ。かんぺき〜」
「な、何よこれぇ!?」
椅子から転げ落ちそうになる私。ノアからマウスをひったくる。
ザコ敵のビジュアルが、軒並み全部見覚えのある姿だった。主に鏡で。大げさにカリカチュアライズされた私と思しきモンスターが、亜麻色の髪をした主人公に蹴散らされている。
書き割りのような背景は低クオリティだし、エフェクトも効果音も雑すぎる。
片手で出来るなんて謳ってるけど……こんなの片手間に作ったゲームじゃない!?
「早期購入者特典、セミナー会計Y氏の寝顔写真集ですか。アルティメットパックには寝言も収録……ふむふむ」
「……」
「ユーザーレビュー、圧倒的に好評ですよ。良かったですね」
にこりと微笑むノア。
私はロジック&リーズンを両手で掴み、席を立った。
「相っ変わらずこ、こんな物……ちょっとは見直した私がバカだった!」
「ふふっ。行ってらっしゃい、ユウカちゃん」
「今度こそ廃部にしてやるっ! モモイぃぃぃっ!!」
生徒会室を飛び出し、まっすぐゲーム開発部へ走る。あの日のように。
全く、どこまでもどこまでも……手が離れない奴なんだから!
【END】 - 65書いた人24/07/13(土) 01:01:29
- 66二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 01:11:35
最高でした!
- 67二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 03:26:48
pixivのおまけまで読了。圧巻のクオリティと熱量。文句なしの名作でした。モモユウてぇてぇ…
…と言いたいところなのだけど、正直個人的にはユウカが不憫すぎてあまり楽しくは読めなかったというのが本音です。
最後まで読んでもどうしてもモヤモヤとした気持ちを抱えてしまい、吐き出すように感想を書いていたら5000字くらいになってしまったため、テレグラフにまとめて投稿させて頂きます。
批判的な意見の割合が多くなってしまったため、目を通される場合はあくまで一個人の感想として聞き流して頂ければ幸いです…
もしもお気に障るようであれば、無理に読まずにこのレスごと削除頂いても結構です。
本当にごめんなさい。書かずにはいられませんでした。ごめんなさい。
いろいろ言ってしまったけれど、重ねてこのSSは間違いなく名作だと思います。
素晴らしい作品をありがとうございました。次回作も楽しみにしています。
ユウカ「モモイから手が離せない……!」感想まず最初に、SSとして純粋にクオリティが高いことは疑いようもないです。率直に言ってストーリーは面白いし、キャラの心情描写や戦闘描写もしっかりしていてお手本にしたいくらいでした。
ただ、ものすごく主観的かつ身勝手な理由で、この結末を「めでたしめでたし」とは言いたくない、というのが自分の素直な感想です。
素晴らしかった点としては、まずとにかく文章力が高い。
キャラエミュの精度も原作テイストに沿っていて、変にキャラ崩壊だったり二次創作にありがちなバイアスの入っていないところも好印象でした。
ユウカの会計としての事務仕事の描写だったり、エンジニア部の科学的考証にもリアリティがあって物語の解像度を上げていたし、何よりモモユウSSとしてユウカの心情描写がとても丁寧で、最後まで引き込まれるように読み進めてしまいました。
臨時総会が失敗してユウカが本音をぶちまけるシーンは見ていて痛々しかったし、序盤のゲームでのやりとりがモモイとのタッグに生かされるシーンも熱かった。
モモイとユウカの絡みが大好きなので、変にべたつかないニュートラルな二人のやりとりは大変読み応えがありました。友達とも言えないただの先輩後輩いいよね。
割…telegra.ph - 68二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 03:28:07
モモユウ少ないので良かったです!お疲れ様でした!
- 69二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 12:40:11
お疲れ様でした!
- 70二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:00:07
次もスレ立てと渋の更新頼んだ!
- 71二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:09:14
カタルシスがやや弱いか
二次創作として質が高い
エミュとしては神の部類に入る
文書が読みやすくてこっちまで辛くなっちゃったよ - 72二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 09:33:02
良かった…!
次回作にも期待! - 73二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 12:09:47
- 746724/07/14(日) 12:39:04
- 75二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 15:43:03