もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart3

  • 1二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 15:40:01

    アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。

    己を取り巻く不可解な状況に四苦八苦しながらミネルバとアグネスは前進。彼女が少しずつ変え続ける運命の歯車は果たして何をもたらすのか。

    本編では本編時空では運命時代『活躍の場がなかった』こと切歯扼腕し、鬱憤を溜めていたアグネス。『もし』の世界の彼女が辿る運命はどうなるのか?

    おつきあいをいただければ。

  • 2二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 15:44:51
  • 3二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 15:48:09

    本編ミネルバは軍事組織の一員としてはとんでもない動きをしていたとよくわかります
    ザフトは義勇軍で軍隊ではないという抜け穴がありますが
    このアグネス、議長のミネルバ私兵化に嫌気が差して転属願いを出しそうですね

    そしてアスランのボッチぶりがヒドイ
    仕事はできる男なので周囲との緩衝&折衝ができる人材が欲しい、切実に

  • 4二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 15:49:50

    このレスは削除されています

  • 5二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 15:50:05

    このレスは削除されています

  • 6二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 16:06:39

    アスランは副官を自分で連れてきた方が良い位になってるな

  • 7二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 17:36:44

    ニコルやラスティが生きててくれたらな~
    マジでアスランに副官が欲しい
    虎にダコスタ、イザークにディアッカ上司部下でも相棒でもいいので
    どこかに逸材いないかしら

  • 8二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 17:49:31

    よし、月からルナマリア呼んできてアスランに付けよう
    この流れでシンとフラグは立たないだろうし

  • 9二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 18:15:38

    アスランとルナマリアってそこまで人間関係的に相性良さそうでしたっけ?
    本編で孤立気味なアスランにルナマリアから多少気遣いはしてましたが、ルナマリアが副官になったらそのうちストレスで脱落しそうです(個人の感想です)
    シンとフラグが立たないから良いだろうもよくわかりません
    シンルナ成立したらだめな世界線でしたか?

    (スレ主へ 不快に思われましたらこのレス消してください)

  • 10二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 18:34:54

    この話ルナマリアがアグネスが居た月基地に居る設定だから、あるとすればルナマリアが月でなんか功績上げて月光のワルキューレ(真)みたいになるんでね?知らんけど

    >>8

  • 11二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 18:45:05

    その場で模擬作戦立案開始。そこから始めなくてはシュミレーター訓練が出来ない。

    アグネス「このマップを見て最初に思いつくのは、挟撃作戦ね。有名な『テルモピュライの戦い』も現地の住民が抜け道を教えたことが強健なスパルタ軍に最後の致命傷を負わせた」

    シン「隘路に布陣し、圧倒的多数のペルシャ軍相手に善戦していたスパルタ軍の背後にペルシャ軍の別動隊が現れ…。という流れだったね」

    レイ「今回のケースで異なるのは隘路の向こうにも敵軍が存在することだ。ガルナハンの占領軍に火力プラントの守備兵。カスピ海の向こうにはユーラシア連邦の大部隊」
    アグネス「となるとミネルバをカスピ海に投入して、ガルナハン湖畔から逆上陸、ラドル隊は渓谷を進み、両方向から連合軍をサンドバック…というやり方は難しいわね。一瞬考えたのだけど」

    ショーン「カスピ海の向こうにはユーラシア連邦の本土ですからね。最悪、戦いが長期化すれば湖を渡って援軍が到着するかも」
    デイル「仮に勝ったとしても、急いで追撃しないとガルナハン占領軍を取り逃がしてしまうぞ。湖の向こうに渡すわけにはいかない。海上・上空で殲滅しないと」

    グーンパイロット「もう一つ気がかりなのは、解放後の町の治安だ。これまでの連合から受けた仕打ちの怒りが爆発したら、逃げ遅れた連合兵や連合派の住民を、反連合派の住民やレジスタンスが虐殺し始めるかも」
    グーンパイロット「ジンと…あとバクゥ、ラドル隊歩兵部隊を、開放後、すぐさま突入させ、投降連合兵、連合派住民と反連合派住民・レジスタンスを引き離さないと」

    レイ「その通りですが、些か気が早いかも知れません。まずはガルナハン・ローエングリン砲台の突破法を」

    シン「ザムザザーなら、この前墜とせた。ラドル隊と力を合わせて正面突破できないかな。ダガーならバビで落とせるだろ」

  • 12二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 19:01:52

    アグネス「それも手ね。やるなら速攻戦。ピートリー級は置いていく。グーンのパイロット皆さん申し訳ありませんが…」

    3人にアイコンタクトをとる。

    グーンパイロット「いや、かまわん続けてくれ」
    アグネス「では、グーン3機はミネルバから降ろして、ローエングリン射程外に待機してもらうピートリー級に。グーン隊の皆さんはザクにブレイズウィザードで。ファイヤビーミサイルとビーム突撃銃で弾幕を」
    グーンパイロット「訓練を急がないとな」

    アグネス「ありがとうございます。本来、ピートリー級に同行予定だったモビルスーツ隊、ジン2機とガズウート8機、バクゥ3機はミネルバに移乗、元々のミネルバ隊と一緒に砲台を強襲」

    シン「待ってくれ。それだとミネルバにインパルス1、セイバー1、バビ2、ディン2、ザク3or4、ジン2、ガズウート8、バクゥ3、全部で22、23機載せていく計算になるけど、流石に無理じゃ」

    アグネス「マハムール基地からずっと載せていくわけじゃない。渓谷突入手前までピートリー級と一緒。ここでグーン3機とザク1機は下ろす。作戦終了後に回収すればいい。」

    マップでローエングリン砲台射程ギリギリの谷間地点を指さし、皆にアイコンタクト。シンも一旦頷く。

    アグネス「ここまでは、ミネルバとピートリー級は同行。ここで、インパルス、セイバー、バビ2機、ディン2機はミネルバを下船。ガズウートのうち2機は左右の甲板に『ビーム・ミサイル砲台』として配置。グーンパイロットのうち2名はブレイズウィザードを装備したブレイズザクに乗っていただき、同じく両甲板に。1名は艦橋裏ヘリポートに後方からの敵に備えて下さい。甲板・ヘリポート配置担当のパイロットにはミネルバの急旋回時、急機動時、転落を防ぐため、入念な事前訓練と機体調整を」

    レイ「なるほど、これでミネルバ艦内に12機を搭載できるスペースが空くな。バクゥも含めて」

    ミネルバ単独なら、3次元的に作戦が可能になる。足を引っ張りかねない『同伴者』に気を配らなくていい。

  • 13二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 19:21:58

    アグネス「(最悪、その場の展開次第ではいくつか機体は投棄、自爆させてもいい。今は言わないけど)」

    シン「ダガーと対空砲台をある程度潰したら、敵前降下作戦も出来るようになるわけか」
    アグネス「選択肢としては。あとはラドル隊の歩兵部隊も半分はミネルバに。出来れば空挺訓練がされている人員を。車両等はパラシュートで降下させれば…」
    デイル「モビルスーツ、歩兵の運搬方法も大事だが、一番の問題は砲台と陽電子リフレクター装備モビルアーマーだ。こいつ等をどうするか?」

    一呼吸置く。ここからが本番だ。

    アグネス「シン、このモビルアーマーやれる?一人でとは言わない、セイバーあるいはバビと協力しても良い。どう?」
    シンに皆の視線が集まる。シンにアイコンタクト。ジェスチャーで一度深呼吸するように伝える。今-

    シン「相手がザムザザーと同レベルならやれると思う。多少強くても協力機がいれば」

    良し!アグネスポイント1000000点。あんたにかかっているわよ!

    レイ「ローエングリンは…、一発、先に撃たせる。ということだな?」
    アグネス「そう」
    グーンパイロット「そのための高機動・急旋回訓練と整備調整か…。命がけだな」
    デイル「でも、悪くないんじゃないか。ミネルバを守るディンも、ダガーとの戦闘、砲台への爆破。連携すればいろいろできるし」
    ショーン「バビが一撃離脱戦法を繰り返せば、ダガーでは太刀打ちできませんしね」
    アグネス「では、この作戦でシュミレーター訓練を開始しましょう」

    シン「ああ、わかった」
    レイ「いいだろう」
    ショーン「了解」
    デイル「おう!」
    グーン三人衆「わかった」

    取り合えず、猛訓練ね。ラドル隊のパイロットとも話したいけど艦内待機なのよね、私達。
    ガズウートは甲板に固定しちゃってもいいかな。相手次第だけど。

  • 14二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 19:30:04

    一人称SSとしてしっかりしてるし、スレよりもハーメルンでやったらどうや
    スレSSよりもそっちのが読みやすいやろ

  • 15二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:53:01

    >>14

    ありがとうございます。

    ただ、ハーメルンは書き込んだことが無くて。もう少し、ここで続けます。

  • 16二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:57:51

    皆とシュミレーター訓練をこなしているうちに夕食時間に。

    一応、訓練ではモビルアーマー撃破とローエングリン砲台の破壊は可能だけど。グーン三人衆が甲板、ヘリポートから落ちる落ちる…。

    ローエングリン砲台攻略には、『先に相手側に撃たせる』ことが必須。ミネルバがタンホイザー発射で挑発した後、少なくとも1回、念を入れれば3回は艦を急降下ないし急旋回させる必要がある。何度も転げ落ちながら、だんだん、ましになって来たから良いか…。

    あと、ショーンとデイルのディンもそこそこ撃墜される。これはダガーのせい。

    今回の任務は隘路の向こうにガルナハン市街地が広がっている。そのため、今までのように『薙ぎ払う』ようにタンホイザーを撃てない。そんなことをすれば、町を吹き飛ばしてしまい私達全員戦犯よ。今回、タンホイザー使用は特に射線の先に気を付けないといけない。これまでみたいに海上じゃないから。

    そのため、会敵時に敵モビルスーツ群を撃ち減らしてから戦闘を開始する、いつものパターンに持って行けるとは限らず、敢えて『撃ち減らせなかった想定』で訓練している。ダガーとは言え、12機から24機ほどのモビルスーツ群と対峙するのは、ミネルバの対空兵装と連携してもなかなか難しい。ただ、ザクのファイヤビーミサイルはかなり有効。もうこれ、ザクはファイヤビーミサイル。甲板に立たせるならブレイズウィザード一択ね。私はガナーでも、ちゃんと活用できるけど。

    あと、あの気持ち悪いモビルアーマーの性能が未知数なのも困る。当然、こっちには十分な情報なんてない。遠景からの映像から読み取るに頭部にバルカン砲、上半身両手にビームライフル、ザムザザーを参考にするなら、脚部の先端からビーム砲が何門かと言ったところか?

    アグネス「(ザムザザー同様、接近戦に弱い、という仮定で訓練しているけど。あんななりで接近戦特化だったら困るわよ)」

  • 17二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:02:01

    訓練後は、パイロット8人でそのまま食卓を囲む。
    うむ。『同じ釜の飯を食った仲』てやつね。
    一人は皆のために。皆は一人のために。助け合わなければ生き残れない。パイロット隊は兄弟姉妹。皆家族!死体になっても仲間を見捨てない!!

    アグネス「(という建前、というか心情は大事よね。自分の生存と手柄のためにも。上がまったく信頼できない中、激戦地に放り込まれて身に染みたわ)」

    逆に上が信頼できる…、ちょっと違うな、甘えられる状況なら、また違った感情を抱いたのかも知れない。

    優しい上司、高潔な指導者が、必ずしも『下の者』を育てるか、という問題。難しいけどね。

    バカな上司のしりぬぐいに必死になっている内にスキルが身につき、クズな上司を前に部下が一致団結、みたいな話は一般企業でもよくある話だ。

    勿論、付いて来れない人間は脱落するしかない。戦争なら死ぬ。それをコストと考えるなら、上の人間がスーパーマンになるしかない。スーパーマンの去った後の軍や国がどうなるかは時代が示すところ。

    目の前ではシンがモシャモシャご飯を食べ、両隣りにはデイルとグーンパイロット、斜め前にレイとショーン。口数こそ少ないがそれなりに和やかに食事は進む。うむ。

    アグネス「(ただ、さっきの考えは『エリート層』の存在を否定するものではない。カリスマ指導者もスーパー上司も居ても良い。『大仏を作ったのは出れですか?はい、答えは大工さんと農民です』なんて人間に迎合するつもりは毛頭ない。スーパー政治家、スーパー官僚、スーパー僧侶、スーパー職人が皆を率いたはず。要は程度の問題なんだ)」

    そして、この私はスーパーエリート。プラントとコーディネイターを率いて、愚鈍なナチュラルを1000光年先に導くべくして生まれた…。

  • 18二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:12:45

    シン「…」
    アグネス「…」

    シンと目が合う。

    シン「どうした?なんか考えごと?」
    う~ん。今、思っていることをそのまま言うわけにもいくまい。代わりに訓練で感じた問題点を上げる。

    アグネス「作戦地域の詳細な地理と地質データが欲しい。連合軍はあの山全体を要塞化し、司令部等も地下。山の地質が分からないと、攻略のために必要な火力も分からない。場合によっては基地制圧のため、白兵戦すら必要になる」

    レイ「確かに地下には司令部だけでなく、弾薬庫を始めとした可燃物、燃料やエネルギータンクも存在するはず。逆に上手く貫通できれば、基地全体を吹き飛ばせる」

    ショーン「陽電子砲が沈黙した段階で降伏してくれるのが一番なんですけどね」
    デイル「そう上手くいくとは…。軍によって降伏は屈辱だ。古今東西、国勢力問わずな。まして、背後には町や発電所の連合守備軍、つまりは仲間がいるんだ。時間稼ぎのためにも粘るはずだ」

    シン「地理と地質。確かに知りたいな。地元の図書館とか?」
    レイ「恐らくそんな時間は無いだろう。図書館もこの戦火では…」
    アグネス「『本を燃やす者は、やがて人をも燃やす』昔の人はよく言ったものね。」

    だからと言って、今更、反戦主義者になるつもりもない。私が起こした戦争ではないのだから!
    しっかりこの機に乗じて手柄を上げて、己の立身出世に生かすべきなのよ。

  • 19二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:18:01

    アグネス「まって、そう言えば…」
    ふと、アカデミー時代の成績ランキングを思い出す。
    シン「…?」
    アグネス「メイリンなら電子データから、過去の国・自治体の記録、あの場所で開業していた企業のデータ、研究者の論文、昔の住民の日記とか発掘できるんじゃない?あの子そう言うの得意でしょう!」
    レイ「確かに彼女は情報のエキスパートだ。話してみてはどうだ?」
    アグネス「そうね。そうする」

    仕事の話は出来るのよね、レイとは。

    あとは―アスランか…。

    シン「あの人、今回はどのポジションなんだろう?」
    レイ「さあ。訓練ではインパルスと共にモビルアーマーを撃破。そこからはダガー撃墜、対空砲台撃破と進んでいたが―」

    メイリンに頼んだ後、声をかけに行くか…私が。何でだろう…。シンかレイがやれば良いじゃない!

    トラブルになるのが目に見えているからやっぱりいいわ。

    アグネス「はぁー。アスラン先輩、何とかならないわけ?ねえ、レイ」
    レイ「…」

    私を睨んでも、こればっかりは解決しないわよ。アスランも自分からご飯食べに来ればいいじゃない。

    というか、レイ、あんたのお養父さんがやった事でしょう?!もっと当事者意識を持ってよ!
    やったら、やりっぱなし、ほんと困るわ。

  • 20二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 07:55:33

    コニールはどうなるか

  • 21二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 11:41:07

    アグネス「(はっ!私としたことが。悪しき『でもでもだって思考』になっていたわ。声をかけさせれば良いじゃない、アスラン自身に。私からそう言えばいい。あと、今日、アスランに声をかけるとき、メイリンなり、ヴィーノなり、ヨウランなり誰か連れて行く。多分順番的にはメイリンかな。あの子にとっては迷惑かも知れないけど…)」

    これから毎日、強制イベント。アスランに誰かと会話させる。この艦には、あなたの知り合いがいる。直接会ったことのある知り合いが。そして、知り合いのそのまた知り合いも、この艦ミネルバに乗っていて、その人にはプラント本国に家族もいるのだと自覚してもらう。

    アスランの事情はアスランだけのもの。今はこの艦を守れ、それがあなたのするべきことなのだ。でなければ今、目の前のその人が明日死ぬのだと。その人が死んだら確実に誰かが悲しむのだとアスランに思わせる。

    まあ、当たり前の事だけど。戦争がどうとか平和が何だとか、そんなものは2の次にするべきなのだと、ちゃんとわかってもらって、ミネルバをアスランの『守りたいものリスト』に強制登録させる。それしかないわ。

    そして、艦の皆にもアスランは存在そのものが厄ネタであったとしても、本人自身はコミュニケーション能力に問題があるだけの真っ当な人間、善人なのだと理解してもらわないと。

    食事を終え、皆と別れると、レクリエーションルームにいたメイリンに声をかけ、自室に来てもらう。副長、アスランから受けた説明、その時感じた私の疑問点、模擬作戦とシュミレーター訓練の結果を伝え―。現地の詳細な地理・地質情報が欲しいこと、それをメイリンに電子情報から探し出して欲しい、とお願いする。どうかな?

    メイリン「わかりました。頑張ります!」
    アグネス「(快諾してくれたわ。アグネスポイント1000000。)ごめんね。普段の業務に加え…」
    メイリン「いえ、生還するためです。私も含め皆が」
    アグネス「ありがとう」

  • 22二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 11:46:52

    そこから、またメイリンは思案顔に。どうしたの?やっぱり、オーバーワークは嫌?

    メイリン「アグネスさん。私と工作員と護衛を要塞内に侵入させることって、出来ないですよね?もしできれば、要塞の中央コンピュータシステムをハッキングできるかも」
    アグネス「そこまでできるの?!すごい!流石、情報のエキスパート!」

    少し考えてみる。素晴らしいプランではある。工作員と護衛はラドル隊から選抜して…。しかし。

    アグネス「う~ん。最高のプランなんだけど。メイリンが要塞をハッキング、外から私達が総攻撃。でも、そもそもあの砲台に近づけないのが問題なのだから、作戦時間も限られているし、惜しい!」
    メイリン「そうですよね。変なことを言ってごめんなさい」
    アグネス「ぜんぜん!今回は無理なだけ。次の機会によろしく頼むわ」
    メイリン「はい!」
    アグネス「それと…。厄介ごとついでに、今から私アスラン先輩に声をかけに行くんだけど、ついて来てくれない?いつまでもこのままじゃ困るわ。少しずつ、皆と会話させていくことにしたい」
    メイリン「わかりました。本人は善良なはずなのに、難しいですね。こういうの」
    アグネス「まあ、往々にして、そういうもんじゃない?」

    メイリンとアスランの部屋に行き、留守なので探して、甲板でやっと発見。なんか黄昏ている。沈みゆく夕日の最後のひとかけらが目に飛び込んで来る。メイリンと一緒に歩み寄り、アスランが気づいたタイミングで敬礼。返礼を受けて直る。

    メイリンとアイコンタクト。先ず彼女に話してもらう。

  • 23二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 11:47:58

    ここのアグネスは本当にしっかりと全体を俯瞰できてるな
    一兵卒なのがもったいないくらいなので頑張って出世してくれ

    本人にそんなつもりないだろうに色々介入した結果的に結構シンと仲がいいの側から見てるとほっこりする

  • 24二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 11:52:45

    メイリン「アスランさん。どうされました?一人でこんなところに」
    アスラン「いや…。特にどうと言う訳では…」
    困り顔のアスラン。うむ。ラクスも苦労したでしょうね。それとも、身内同士ではまた別なのかな?

    メイリンにアイコンタクト2回目。もうちょっとお願い。艦長や私以外と話させないと。

    メイリン「お疲れなんですね。フェイスは激務でしょうし」
    私達だって疲れてるわよ。スケジュールはギチギチだし、ずっと訓練だしって、いけないわ。先ずはアスランに寄り添わないと。

    アスラン「俺だけが特別じゃない。艦長も皆も大変だ。君も…」

    来た!ここだ、ここ!

    アグネス「彼女はメイリンです」
    そういってアスランにアイコンタクト。上官の話に割り込むのは大変な無礼だが、この瞬間のためにメイリンを連れて来たのよ。頼む!

    アスラン「メイリンも。大変だったな。おつかれさま。アーモリーワンから今日までずっと」

    アスランの表情がふっと優しいものに代わり、メイリンの表情が嬉しさに満ちる。良し!良し良し良し!!

    アスランの視線が私にも向かう。
    アスラン「アグネスもいつもありがとう。そして、気を使わせてすまない」

    まあ、これぐらいは言ってもらわないとね。
    さて、問題はここからだわ。任務以外、話題が…ない。何か…ああ、そう言えば。

    アグネス「そう言えば、このタイミングで話すのもなんですが、プラントでラクス様の役をして居る方はどなたでしょう?アスラン先輩、何かご存知ですか?」

    アスラン「えっ…!!」
    驚愕した顔でアスランは一歩下がり、甲板の柵に背中がぶつかる。あちゃー、これ、聞いちゃいけなかったやつか?でも、ここで聞いておかないといつまでたっっても…。

  • 25二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 11:54:44

    アスラン「どうして?」
    メイリン「オーブで私達―私とアグネスさんとシン、ヴィーノ、ヨウランはラクス様ご本人とキラ・ヤマトさんにお会いしています。イザナギ海岸の慰霊碑の前で。そこから、艦の皆に広まり…」
    アスラン「慰霊碑の前って…。あのバカ」

    自白ね。しかし、『ラクス様』をバカ呼ばわりとは流石、婚約者様ね。それともこれはキラ・ヤマトあての言葉か。二人ともかな。あの二人の行動が迂闊であったかはともかく。ラクスが偽物なのは、バレバレでしょう。

    異常な議長万歳コメント、本人の歌手活動・歌い方や身体パフォーマンスの不自然な変更。立ち振る舞い。第一、ラクス本人は大衆の前に出る機会は少なかったとしても、これまでの人生で直接、会った人、係わった人の数は一般ピープルの比じゃないくらい多いわけで。

    隠しきれるわけないでしょう。確証を持っていないだけで、ピンと来ている人はきっと多いはず。議長が無能なのか、所詮、あの人は使い捨ての駒で、その時が来たらポイ捨てする気なのか。

    アグネス「(多分、両方ね)」

    どうするべきか、分からないと言った顔のアスラン。こっちがどうすればいいのか聞きたいわよ。周りと打ち解けさせるためにメイリンを連れて来たのに、地雷踏んだわ。

    アスラン「というか、キラのこと。君は知っているのか!」

    えっ、そっちも地雷だったの?メイリンと顔を見合わせ答える。そもそも、アスハ代表亡命の説明時にもキラ・ヤマトの話はしたはずだけど…。アスハ代表の事でいっぱいいっぱいだったか。

  • 26二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 11:58:07

    アグネス「え、ええ。フリーダムのパイロットですよね」
    アスラン「ああ。そうだが」

    アグネス「公開情報に加え、両親からいろいろ。勿論、家族間でも話せないこともありますし、自分も知っていることを全部話すわけにも…」

    フルーダムのパイロット、キラ・ヤマト。知る人ぞ知る存在ではあるかもしれないが、完全に秘密のヴェールに包まれているわけではない。というか、アラスカ戦で音声データ自体はバッチリ記録に残っている。声紋鑑定も可能だ。その時は、名乗りこそ上げていなかったはずだが。

    両親たちから、聞いた分と、公開情報、準公開情報から追える範囲までしか、私も知らない。

    キラ・ヤマトが学生時代、ヘリオポリスに住んでいて、工業カレッジに在学中、あの崩壊事件に巻き込まれたことは分かっている。あの事件はオーブが悪い、プラントは悪くないわ。

    まあ、それはともかく、オーブのヘリオポリス行方不明者名簿に名前があった。あとで当時、オーブのニュース番組を確認したから。よく、大事件や災害発生時に報道番組で流れるやつ。各行方不明者の顔写真と簡単なプロフィールも放送していた。そもそも情報社会の現代、無理があるんだ、隠すことなんて。

    両親の名前はハルマ・ヤマトとカリダ・ヤマト。彼自身は、幼年学校までは月面中立都市コペルニクスで育ったオーブ国民。

    そもそも―

  • 27二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 12:02:07

    アグネス「イザーク先輩やディアッカ先輩、特にディアッカ先輩は、MIA後からヤキン終結までの経緯をプラント再入国、ザフト軍再入隊時、相当念入りに事情聴取をされ、審査手続きを受けたはずです。
    そのほかにも、クライン派レジスタンスの法律違反免責手続き時等の収集資料。かなりの情報を実はザフト軍情報省は把握しているのでは?流石に、私は情報省の特定秘密を直接閲覧しているわけではありませんが」

    パパ、ママ経由でたまに、そこそこ。

    あと、カナーバの婆もそれなりに知っている。カナーバが知っているなら、彼女をサポートしていた官僚・軍幹部・個人秘書にも漏れ伝わる。当然それは政府高官のパパ、ママにもっていう具合。

    アスラン「ああ、そういえば…。ディアッカ、イザーク…。それにクライン派とその協力者。全員亡命したわけではない…。ご家族もいらっしゃるだろうし」
    アグネス「市民生活を再開するうえで、刑事・民事・行政の責任は特別に問われないにしても、事情は聞かれますから。勿論、仲間のために核心部に関しては濁したりしていると思いますけど」

    メイリン「無辜の民を救ったのに、まるで隠れるように。なんか気の毒です」
    アスラン「いや…。それは。あいつも目立つのは嫌いだし」
    アグネス「?気やすいんですね?バカとかあいつとか」
    アスラン「…。幼馴染だ、コペルニクスで幼年学校の時に。子供の頃、コペルニクスに疎開していたから。ヤマト家のお世話に、家族ぐるみの付き合いだった」
    メイリン「そうだったんですか!?世の中不思議なこともあるものですね」
    アグネス「父から、アスラン先輩が一時身を隠していたことは聞いていましたが…」

    なんか話題がそれているわね。キラ・ヤマトも気になる人物ではあるけれど。ああ、でもお互いの『秘密の開示』は仲良くなるための大事な通過儀礼ね。上手くいっているわ。おおむね、ね。

  • 28二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 20:04:01

    メイリン「じゃあプラントのラクスさんは?ミネルバの中に、結構ファンが多いんですよ」

    メイリン、グイグイ行くわね。結構知りたがりなの?

    アスラン「えっ…。そうなのか…。皆、偽物だと知っているんだろう?」

    当然の疑問ね。まあ、理由についてははっきりしているけど。

    アグネス「彼女の献身と果たした使命は本物なので。ミネルバは開戦時、本国と同時刻にオーブ近海で戦闘を行い、その後、多数の連合捕虜を乗せたままカーペンタリア基地に寄港しました。皆、核攻撃に激高した基地の兵士が捕虜に狼藉を働くのではないか危惧しました」

    アスランの表情筋がピックと動く。まあ、心配しなくてもいい。

    メイリン「あの人が基地の人達の心を沈めてくれたから私達も、報復を恐れず、捕虜を下船させることが出来たんです。あの後も厳しい任務が続き、いつ、月軌道艦隊と合流するのか、プラントに帰れるのか分からない中、あの人の歌を聞きながら、頑張っている仲間が大勢います。頑張れ、平和のために戦ってくれてありがとう、勿論、それが台本を読んでいることぐらい皆知っていますけど、それでも嬉しいんです」

    残りは、メイリンが言ってくれた。
    ふむ、私はそんなことしてないけど、この子もしていないわね。男子はやっぱり、ああいうのが良いのかしら。

    アスラン「そうか。そうだったのか…」

    溜息の様な言葉を漏らすと、アスランは空を見上げる。

    没した太陽が海面を未だ赤く染める中、空にはもう星々が輝き始めている。彼は誰かをその中に探すように目を凝らしたたあと、身体を私達の正面に向け告げる。

  • 29二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 20:07:09

    アスラン「彼女はミーア・キャンベル。とても良い人間だ。議長から、呼ばれてラクスの代わりに。でも、彼女は自分のためにやっているんじゃない。プラントのために、皆のためにラクスが必要だから、今だけは代わりにと。議長や皆のためにお手伝いが出来たら、それだけで嬉しいと」

    メイリン「ミーア・キャンベル…」
    アグネス「もし、彼女の名前を尋ねる人が居れば、伝えてもよろしいですか?艦内限定で」

    ヴィーノやヨウランも知りたがっているからね。

    アスラン「ああ、ミネルバの中だけなら。どうか伝えてあげて欲しい。彼女がラクスじゃなくなった後も…。歌を聞いてあげて欲しい。俺の勝手な思いだが…」

    何処か懇願するような表情。アレックスとして生きざるを得なかった自分と彼女を重ねているのだろう。この顔は。

    アグネス「はい」
    メイリン「勿論です」

    ここは全力で肯定。アスランの好感度を全力でゲット。まあ、艦内で、会話の種が増えるのは悪い事じゃない。どんよりムードがちょっとは和らぐかも。

    しかし、議長、政治に疎い若いマイナー歌手に上手いこと拭き込んで。コロリと騙されちゃうでしょ。

    あーあ。これは、ぼろ雑巾ルート確定ね。歌唱力を除けば、本人の力も後ろ盾もないのに政治の暗部、特大のスキャンダルネタに『善意』で関わってしまった以上。もうまともな人生送れないわよ。そのミーアさんとやら。ご愁傷様。

    また、黄昏モードに入ろうとするアスラン。もうひと声か。

    アグネス「アスラン先輩、夜は冷えます。私達とミネルバの中に戻りましょう」
    アスラン「ああ、そうだな」

    『ミネルバの中に戻りましょう』サブリミナル効果いけるか、まあ、一回ではあまり効かないわね。

    ともあれ、三人で艦内に入り、現地産のコーヒーを飲んで解散。コーヒーはそこそこの味ね。

  • 30二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 20:11:15

    自室に戻る。
    アグネス「ただいま、おかえりメイリン」
    メイリン「おかえりなさい、ただいまアグネスさん」

    帰ったはいいが、メイリンは私からの頼まれごとでキーボードを忙しなく叩きながら、モニター画面とにらめっこ。

    私は私でカスピ海・コーカサス・黒海方面のマップとにらめっこ。
    ガルナハンを落とす。落とすのは良いが、カスピ海の向こう側はユーラシア連邦の本土。カスピ海に注ぐヴォルガ川下流にはアストラハン、その上流には、かの有名なスターリングラードことヴォルゴグラード。ユーラシア連邦上層部を刺激しないわけがない。

    落としたからには、再上陸をかけてくるかもしれない連合軍とカスピ海を挟んで、ザフト軍は睨み合わなければいけない。それにコーカサス山脈の向こう側はユーラシア連邦の心臓部だ。黒海に戦雲が及べば連合も本気にならざるを得ない。クリミアとウクライナが安全圏じゃ無くなればユーラシア連邦はお終いなんだ。特にウクライナは『ヨーロッパのパン籠』絶対死守しようとするに決まっている。

    アグネス「(何が積極的自衛権の行使よ。戦火を思いっきり拡大しているじゃない。こんな火薬庫の上でダンスをするぐらいなら、むしろユーラシア連邦と単独講和を計り、一緒に火種を潰して回って恩を売った方が良い。勿論、相応の『対価』を貰ったうえで)」

    ユーラシア連邦など正直どうでも良い。あくまでプラントにとっての主敵は大西洋連合。なぜ彼らを野放しにする?

    第一次大戦終結時、協商陣営最大の失敗は賠償金の金額じゃない。バイエルン王国をドイツから切り離さず、逆にハプスブルク帝国の崩壊を座視したこと。

    特にハプスブルク帝国の崩壊をせき止めなかったことは、第二次大戦の原因の一つでもあり、東西冷戦、後に猖獗を極めたユーゴスラヴィア紛争の遠因でもある。

  • 31二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 20:14:30

    アグネス「(同じ失敗をC.Eで繰り返すつもり?まだ、アングロサクソン国家色が強い大西洋連合から、旧メキシコ、旧アイルランド、旧ケベック州を独立させた方が理にかなっている。新独立国をジャブジャブ援助漬けにして親プラント国に出来れば北大西洋の覇権すら握れるかもしれない。ユーラシア連合の火薬庫をつつく火遊びだけは是認できない。せいぜい旧EU圏分離ぐらいにしておかないと。今のダンスの仕方は最悪だわ)」

    旧EU圏を分離するとき扱いに困るのはやはり、ウクライナ、コーカサス。一番厄介な所から手を出すとは、無能を通りこして害悪よ。

    もっとも、それは『戦火の拡大を望まない』という議長の言葉を文字通りに受け止めればの話。単に地球の国家群を疲弊させ混乱させるつもりなら、ユーラシア連邦崩壊も良いかも知れない。ただ、経済の大混乱が長引くのは間違いないから、終戦後、再開されるであろう、プラントの貿易、特に輸出産業が大打撃を被る。

    やっぱりバカだわ、あいつ。善意にしろ悪意にしろ全くの意味不明なことをしてるわ。

    アグネス「(中央アジア、コーカサス、黒海沿岸地域に混乱を巻き起こすぐらいなら、旧EU圏に注力するべき。機会が有れば艦長とアスランに言うだけ言ってみようかしら。フェイスは最高評議会に直属しているわけだし。いや、スエズの任務が先か、何でスエズに行かないのよ。というか月面、アルザッヘル。月面制圧が最優先なの!これ、アスランに絶対言う明日以降!)」

    ふと、メイリンに目線を向ける。完全にのめり込んでる…。この子大丈夫?
    アグネス「メ、メイリン…。そろそろ寝よっか?明日に差し障るし…」
    メイリン「へ…、ああ、そうですね。つい夢中になってしまって」
    アグネス「頼んだのは私だけど…。気を付けてね」
    メイリン「はい!」

    何か、見つけたのか―聞いたら今日が終わらなくなりそう。流石にいろいろありすぎ。

    アグネス「おやすみ。メイリン」
    メイリン「おやすみなさい。アグネスさん」

  • 32二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 07:31:04

    既存のシステムを破壊しようとする議長の考えはアグネスには理解できないよな

  • 33二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 18:34:49

    やっと追いついた
    ミリタリー色の強いロボットアニメを現実の軍事要素で補完するのはかなりの知識が無いとできない事だからスレ主は凄いな

  • 34二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 19:11:43

    アグネス「おはよう。メイリン」
    メイリン「おはようございます。アグネスさん」

    アグネス「昨夜、何か途中から夢中になって調べていたけど、どうしたの?」
    メイリン「それは…。実は砲台への抜け道を見つけたんです!副長とアスランさん、シンに話さないと!」
    アグネス「抜け道?間道ってこと?!副長やアスランはともかくシンも呼ぶの?」
    メイリン「はい。そうしてください」

    積極的ね。

    朝ごはんをメイリンと食べ、内容を詳しく聞いてgoサイン。作戦の参考になるかも知れない。

    食堂でレイと朝ご飯を食べていたシンにメイリンと声をかける。

    アグネス「シン。食事が終わったら、ブリーフィングルームに来て。メイリンが見せたいものがあるって。任務関連で」
    シン「メイリンが?珍しいな」

    私の隣のメイリンにシンが目線を向ける。頷く彼女を見てシンも同意する。

    シン「わかった。行くよ」
    レイ「俺も行く。作戦についてなのだろう」

    アグネス「そうよ。そうねえ、まだ新視点の指摘段階だけど、まあ、来たければ来れば」
    また、ママ同伴?この男なに?ホモは困るわ。

    アグネス「私から、副長とアスラン先輩にはご連絡を、じゃあ、頼むわよ」

    副長とアスラン、と聞いてシンが何か言おうとしたが、言わせない!踵を返して副長とアスランにお声がけ、お願いに向かう。

  • 35二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 19:16:20

    副長、アスラン、私、メイリンと四人そろって、ブリーフィングルームに入室する。
    シンとレイが立ち上がって敬礼。副長たちと一緒に返礼。
    こいつ等に敬礼するのはいつ以来?初めてかも。直って。私は席に向かい、シン、レイは着席。モニターの横に副長は立ち、それにアスランが並ぶ。正面にはメイリン。

    頑張れ、皆を呼んだのは私もなのよ。恥をかかせないで、ガツンとやるのよ。

    メイリンがモニターを操作し、もはや穴が開くほど目にしたガルナハン・ローエングリンゲートのマップを表示する。

    でも一点昨日までの訓練マップと相違点がある。マップにはローエングリン砲台の隣の山から谷間を抜け、砲台の下横まで伸びる赤いラインが引かれている。

    メイリン「それでは始めます。アグネスさんから頼まれて、昨日、この地域の資料を探したところ、今ではすっかりさびれて久しいですが、かつて、山ではかつて、鉱山業が営まれていました」

    そう話すと、昔、鉱山であった頃のローエングリンゲートの写真、鉱山会社の資料等のスライドが順番に映し出される。

    アーサー「なるほど」
    副長は興味深そうに頷いている。それに力づけられたように、メイリンは、モニターを最初の画面に戻し話を再開する。

    メイリン「この赤いラインはその時、掘削された坑道の一つです。資料によるとこの坑道はの砲台のほぼ直下そばに伸びています。坑道を通って奇襲をかけることが出来るかも知れません。モビルスーツでは通れませんが、インパルスの分離機能を利用にして、抜けることが出来れば」

    シン「トンネル戦が可能かもしれない、ってことか」
    シンは意外と乗り気だ。歴史の本でトンネル戦で有名な作戦を読んだのかもしれない。

    アグネス「(トンネル戦、坑道戦はアカデミーでも習うしね)」

  • 36二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 19:16:47

    アグネスがまともだからめちゃくちゃレイはやりにくそうだな
    物事を俯瞰できて冷静で情報共有をしっかりできるまとめ役がいると全然違うね

  • 37二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 19:30:01

    レイ「しかし、現在の写真では、坑道の砲台側出口が確認できない。埋められるか、崩れるかして出口が埋められている」

    現在のガルナハン・ローエングリンゲートの遠景が表示される。確かに、砲台側出口は塞がっている。落盤か。

    メイリン「はい。そこが大きな問題です。昨日から、資料を探していますが、出口付近の岩盤の厚さが分かりません。他にも、坑道が現在も安全に通行できる状態を保っているのか―地下水で水没したり、落盤等で不通になっていないか。作戦中に事故が発生するリスクがないか等。確認に努めてはいますが…」

    モニター横のアスランが口を開く。

    アスラン「難しいだろうな。廃鉱山になってかなりの年月が経過している。もし、安全に通れたとしても、連合軍もこの坑道に気が付いている可能性も…」

    手を挙げて、発言を求める。
    アグネス「発言の許可を」
    アーサー「どうぞ」

    起立しながら、考えをもう一度まとめる。
    アグネス「ありがとうございます。連合の伏兵の可能性について。もし、反対側入り口が今なお開いており、連合が監視員を配備していないなら、彼らが坑道の存在を認識していないことが、ほぼ確定すると思います。基地の基礎工事、地盤の強度に悪影響を与えかねない位置に坑道があります。知っていたら埋めているはずです」

    アスランも一先ず頷いてくれる。

    アスラン「確かに。坑道の奥で待ち伏せ、も考えられるが、ザフト側が知っているかどうかも分からない坑道に戦力を常時分散させるとも思えない。落盤が有れば、待機させた戦力が失われる。そんなリスクをとるぐらいなら、そもそも埋めているはずだ。」

    つまり、問題なのは、この坑道が今も存在するのか。存在したとして、通行可能か。砲台側出口を塞ぐ岩盤の厚さがどの程度か、ということね。

  • 38二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:26:10

    シン「いいですか?」
    アーサー「ああ、シン」

    シンが!?珍しいわね。
    立ち上がったシンが坑道を見つめながら言う。

    シン「坑道が通っているなら、侵入ではなく要塞の爆破に使ったらどうですか?」
    アスラン「確かに。それなら…」

    敵拠点の地下まで坑道を掘って爆破。太平天国の乱の太平天国軍、日露戦争の日本軍が取った作戦ね。第一次世界大戦でも成功例があったはず。

    アスラン「ただその場合。敵に察知されないことが前提だ。今回、敵は高所に砲台を構え、ダガー部隊も配備。奇襲なら兎も角、坑道に大量の爆薬を設置するとなると…」

    時間も人でもかかる。発見されるリスクも…。
    いけない、いけない。でもでも、だってに話が流れているわ。まず、情報を確定させるところから始めないと。

    再び挙手。
    アーサー「アグネス、どうぞ」
    アグネス「ありがとうございます。作戦立案のためにも、まず、反対側入り口の現状を確認しなければいけません。バビに迷彩処理を施して偵察に向かおうと思うのですが、許可をいただけますか?」

    かつて坑道が存在した事実はメイリンが伝えてくれた。そして、その坑道が今もあればこんな作戦が出来る、という意見は大体出そろったわ。あとは、仮定を基に意見をダメだしするのではなく、まずは事実を確定しなければ。

    副長とアスランが、顔を見合わせ何か話し合っている。流れで偵察任務を申し出るような形となり、私も実は少し困惑。まあ、モビルスーツ作戦飛行時間を伸ばすのも悪くはないか。出世にプラスになるし。

    副長とアスランが目線で合図すると、私とシンとレイが起立する。

  • 39二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:31:12

    アスラン「では、セイバーとバビ一機に迷彩処理を施し、マハムール基地から直接現地に乗り込み偵察調査、完了次第、即時帰還。記録にある坑道と現状がどこまで一致しているか、確認したい。アグネス、バビで同行を」
    アグネス「はい!」

    まあ、これも手柄っちゃ手柄ね。ペルシャ湾からカスビ海南東岸まで一気に縦断・往復。一部敵地上空偵察。ふむ。まあ悪くはない。使う暇もない危険手当がいっぱい貰えるわ。

    アーサー「ではこれにて―」
    アグネス「申し訳ありません。もう一点」

    急いで挙手。そうだ、今日のアスランノルマはここ!作戦上も必要だし―

    アグネス「もし、アスラン先輩の機体操作に支障が出ないなら…。セイバーにシンを乗せていくことを上申します」
    シン「え…」
    アスラン「ほう。理由は?」
    アグネス「坑道作戦を実行する際、シンのインパルス投入が選択肢に上がっています。パイロットの彼に直接、坑道を確認させる必要があります」
    アスラン「…。セイバーは一人乗りだが…」
    シン「別にいいんじゃないですか。何だったら、俺がセイバーに乗って行きますよ」
    アスラン「!?」
    レイ「シン!」
    アーサー「シン!」

    アグネス「シン!」
    シン「ッ!痛…」
    渾身の怒りを込めてシンの足を一回踏みつぶす。一回、周りの視線に入らないようにサッとね。
    しかし、地雷踏んだか?同じ任務にアスランとシンを放り込んで交流をという狙いと、作戦の実施に当たっての緊急調査一挙両得だと思ったのに。インパルスで突入するかもしれないシンに現場検証を、というのも別に嘘ではない。むしろ、そっちが主目的だ。

  • 40二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:38:22

    その時、大人しくこれまでの流れを見ていたメイリンが突然挙手!
    メイリン「私、アグネスさんが大丈夫なら、バビに同乗していきます、デバイスを持って。資料上のデータと現状を照合判断しないと」

    アスランは、足の痛みをこらえるシンとめっちゃ張り切るメイリンの顔を一瞥し、私に視線を送ってくる。

    メイリンを乗せて飛べるか、最悪、戦闘できるか。Yesとアイコンタクト。

    アスラン「では、シン。それにメイリン、現地偵察調査に同行せよ。シンはセイバーにメイリンはバビに同乗を。両名ともパイロットスーツ・ヘルメット着用で」
    アグネス「了解」
    シン「了解」
    メイリン「了解」

    アーサー「良し。艦長には自分から報告する。皆は準備を。任務の成功を祈る」
    アスラン「はい」
    アスランの返事と合わせ、メイリン含め全員で副長に敬礼。返礼を受けて直る。
    次はアスランに敬礼。退出を見届けて…。

    シンに文句を言われる前に先制パンチ。
    アグネス「シン!あんた作戦失敗させたいの!!メイリンが何時間睡眠時間削ったと思っているのよ!!」

    メイリンの名前と彼女の頑張りを伝えられると、不貞腐れかけていたシンの表情が一気にバツの悪そうなものに変わる。分かりやすいわね。

    シン「あ…、いや。そのメイリンごめん。そういうつもりじゃ…」
    メイリン「いいえ。でもアスランさんと仲良くしてくださいね」
    シン「あ…ああ」

    良し。メイリン、ナイス。1000000アグネスポイント。

  • 41二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:52:31

    レイ「シンが気にすることではない。事前に打ち合わせをせずに上申し始めたアグネスも悪い」
    アグネス「私の過失割合は1:1000よ。勿論、私が1の方。大体、そう言うのを洗い出して、潰していくためにこの部屋に来たのよ!」
    レイ「勝手に新しい任務を増やしている」
    アグネス「不随任務よ。増やしたわけではないわ」
    シン「レイ!俺が悪かったから。確かに、坑道があるとすれば、突入できるかどうか俺の目で確認しないと」

    ふむ。分かればよろしい。レイ、少しは殊勝な態度を取ることね。

    アグネス「パイロットスーツに飛行装置を付ければ、かなり奥まで調べられる。危険があれば即座に撤収。地下水、落盤に最大の注意を。出口の2機が見張り。坑道が現存すればね」
    メイリン「ちゃんと残っていて、抜け道を使った奇襲なり、爆破攻撃に使えるといいんですね」
    アグネス「そうね」

    シンとレイに目線を投げる。
    シン「ああ」
    レイ「そうだな」

    じゃあ、準備開始ね。私達が留守の間の訓練メニュー、皆に伝えとかないとダメかな…。いや、オーバーワークで軍医に叱られる。

    そうだ。

    アグネス「レイ、留守組の訓練」
    レイ「分かっている。昨日立てた方針でシュミレーター訓練を続ける。ラドル隊と連絡がつけば共有を図っておく」
    アグネス「頼んだわよ」

    副長、艦長と挟まないと向こうのパイロット隊と連絡が出来ないのも地味に不便ね。一応、昨日の模擬作戦、訓練とその結果については、訓練終了後、副長に報告書を出しているから、大丈夫なはずだけど。

    アグネス「(伝言ゲームで物事を進めるのがこんなに大変だとは。地味に盲点だわ)」
    アグネス「まあ、仕方ない。メイリン、シン。準備」
    シン「ああ」
    メイリン「はい」

  • 42二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 07:18:08

    本編は一歩間違えれば失敗してただろう展開が多いからリスクヘッジを可能な限り行うのは良いと思う
    出世欲と自己顕示欲と自己保身の塊みたいなアグネスが率先してやってるから笑えてくるけど

  • 43二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 09:22:43

    シンとアスランの仲は改善するか

  • 44二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 15:13:22

    というか本編はあのぶっつけ本番でよく成功したな……

  • 45二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 22:27:05

    照明が一切無い暗闇の坑道をマップだけ見て戦闘機で突っ切るのは普通はできねぇんだわ
    シンの技量が普通じゃないから本編は成功したけど本来は入念な下準備が必要だよな…万が一があってはいけないし

  • 46二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 22:58:10

    セイバーとバビの迷彩処理を整備兵が施している間に、メイリンは仮眠。
    シンは、メイリンの探し出してくれた地図地形情報を3Dマップにして何度も読み込み頭に叩き込んでいる。勿論、現場にもマップは持っていくが暗記しておくに越したことはない。

    アグネス「(メイリン、寝なさい!マッド・エイブス、ヴィーノ、ヨウラン。機体頼んだわよ)」

    私とアスランは、他のパイロットとは別メニューのシュミレーター訓練。
    敵のレーダーと哨戒網を掻い潜らないといけない。ニュートロンジャマ―の影響を加味してもアルボルズ山脈南斜面からは山肌を削るような低空飛行が必要になる。

    幸いセイバー、バビ共に空中戦闘用の機体で、MA形態に変形できる。そのまま、狭い谷間を縫うように坑道の入口まで飛行。

    MS状態に素早く変形し、着地。メイリンとシンを下ろす。
    二人はパイロットスーツに飛行装置を装着、暗視・赤外線カメラ、音波探知装置などを携帯し、坑道内の調査に。

    私たち二人は待機。調査はどんなに長くても3時間、出来れば2時間で切り上げ、二人を拾い、マハムール基地に帰還。

    マハムール基地(旧イラン領フーゼスターン州バンダレ・エマ―ム市付近)から、ガルナハン(旧イラン領ギーラーン州アスタラ市および旧アゼルバイジャン領アスタラ市付近)まで、片道約880キロメートル以上、往復1780キロメートル程度。ガルナハン・ローエングリンゲート周辺を除けば、親プラント国である汎ムスリム会議の領空であるから―

    アグネス「そこまで高難易度ではありませんね。甘く見るわけではありませんが」
    アスラン「そうだな」

    シュミレーター訓練完了。二人で相互チェック完了。

  • 47二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 23:03:51

    レクリエーションルームに向かおうとするアスランに『一緒に甲板に行きましょう』のジェスチャー。
    頷き、同行してもらう。

    2人で甲板に、この地方の日差しはやはり厳しい。女性の民族衣装の理由も半分くらいは理解できる。コーディネイターの自分にはナチュラルほどは必要ないけれど。

    アスラン「どうしたんだ?任務前にこんなところに」

    首を伸ばして周囲を見渡す。話を聞かれて困る人は…いないわね。確認終了!

    アグネス「アスラン先輩。単刀直入にシンについてお話が。セイバーにシンを、とお願いした理由。先輩もお察しして下さっているのでは在りませんか?作戦の主目的でない方の理由です」

    アスラン「…。いい加減シンと打ち解けろ、ということか」
    また、その表情。怒り顔一歩手前みたいな真顔。勘弁してほしいわ。

    アグネス「端的に言えば、そう言うことになります。任務にも艦内生活にも、このままでは支障が出ます。和解のきっかけに」

    今度は困り顔になった…。この人、ひょっとして正論パンチに弱い人?!なら、ボコボコいかないと!!

    アスラン「彼は…。彼は俺の何が気に入らないんだ」

    まずは、そこからか。

    アグネス「まず、アスラン先輩の復隊の経緯・手順。アスラン先輩個人の事情と心情を慮ると申しにくいですが、はっきり言って無茶苦茶ですよ。どの陣営にとっても。勿論、私達にとっても」

    アスラン「この艦に着任した時も、君からきつく言われたな。こればっかりは認めざるを得ない」

  • 48二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 23:09:01

    何とも言えない顔でアスランが頷くが、それはあくまで理由の一つに過ぎない。

    アグネス「もっと根本的な理由が。アスラン先輩がオーブ、特にアスハ代表に近しい人だからだと思います。彼が元オーブ国民であること、先輩もご存知では?」
    アスラン「ああ、知っている。オーブのオノゴロで家族を亡くしたと…」
    アグネス「ええ。カラミティか、フリーダムか、あるいは他のモビルスーツ。いずれかの流れ弾で」
    アスラン「…」

    睨まないでよ。事実なんだから。あの日、あの島で戦っていた、いずれかの機体の砲撃がアスカ家の家族を吹き飛ばした。それが連合兵でもキラ・ヤマトでも極論アスランでも結果は変わらない。まあ、なんにしろ―

    アグネス「何にしろ。悪いのは一方的に主権侵害をして来た連合の方。仮にウズミ前代表が連合の要求をのんだとしても、今度はザフト・カーペンタリアと戦端が開いたでしょう。

    ブルーコスモスの強い影響下にあった連合に主権が譲渡されれば、下手したら、シンの一家含むコーディネイターのオーブ国民、強制収容所送りだったかも。

    それなら、武士の一分を貫いて降伏前に一度は善戦して意地を国際社会に示し、アスハ代表達を宇宙に送り出して人類絶滅だけは回避するのが当時オーブが取れた最善手だったはず」

    道理が分からぬ一般ピープルは直ぐに逆恨みを始めるから困る。ちょっと考えればわかることじゃない。

    アスラン「分かっていても、納得できないことは有る。誰にだって…。俺にだって...。彼は…、彼は、アスハが殺したと、カガリに…」

    私に恐い視線を送り続けていた、アスランの顔がみるみる曇り出す。

  • 49二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 23:15:02

    シン、あんたまさか、アスハ代表に直接言ってたの!?私がいないタイミングで?!

    よく銃殺刑にならなかったわね。アスハ代表の厚意に感謝しなさい、ほんとに。

    アグネス「(とはいえ、アスラン、や~~~と、思い至った?国語のテストじゃないんだから『彼はなぜ怒ったのか、前の段落から探してみましょう』すれば良いじゃない)」

    まあ、どちらにしてもウザいんだけど!!
    アカデミーにお涙頂戴を持ち込まれるのも我慢ならなかったのに、まして戦場の真っ最中にまで持ってきて諍いの種にするとか!難民キャンプに帰ればよかったのに!
    いや、我慢よ。今回の任務にはシンとアスランの力を両方100%発揮してもらわないと。
    成功はおぼつかない。危ない。相手は強固な堡塁、強力な主砲。無視しがたい数の護衛モビルスーツ隊。

    飲みこめ、私。アホ共への怒りを。
    アスランの顔を正面から、もう一度しっかり見る。

    アグネス「私は精神医ではありません。ただ、シンがある種の心理的なトラブル、おそらくPTSDやサバイバーズ・ギルト、精神的トラウマと認知の歪みに苦しんでいることは察しています。本来、保護入院措置が望ましいですが、戦局がそれを許しません」

    アスラン「俺にどうしろと…。精神医学の学位は持っていない…」
    アグネス「説教ではなく、寄り添っうこと。互いの痛みを開示し共有し合うこと」
    アスラン「任務中にか?」
    アグネス「今回の任務は交流回数の増加と吊り橋効果が目当てです。どうか、とっかかりに。任務の時間で足りないなら、アスラン先輩から会いに行ってください。何度も。負傷兵に駆け寄るのは無事な兵隊の義務ではありませんか?戦士の条件では?」

    じ~~と二人で見つめ合う。この人、真顔と難しい顔と怒り顔ばかりだから、今一判断に困る。圧が強いのよ。

  • 50二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 23:37:39

    突然、アスランが相貌を崩す。
    アスラン「俺の負けだ。君が正しい。言う通り、何度でも彼に会うよ」

    珍しく私に微笑みかけてくる。キラ・ヤマトやラクス・クライン(真)に向ける用の表情なのだろうか。

    アスラン「ありがとう。すまない。気を使わせてしまって」
    アグネス「いえ…。差し出がましいことを。申し訳ありません」
    アスラン「いや。謝るのは俺の方だ。何か君に気を使わせてばかりだな」
    アグネス「いえ…。そんな」

    めっちゃ気を使ってますとも!この人、やっぱりパワハラ上司の素質あるわ。直属の上官には絶対に持ちたくない。
    もし、突然この人が上官です、って来たら皆嫌でしょう。私なら、即日、辞表か転属願い叩き付けるところよ。
    でも、戦時下では通らないか…。

    斜め上下の関係で良かった! 本当に…。

    アスラン「互いの痛みを開示というのは…。俺の場合は母の事とキラの事か…」
    アグネス「そうですね。アスラン先輩自身の痛み、それからアスハ代表ご本人の苦しみ…。えっ!キラ・ヤマト氏の事とは?!」
    アスラン「ああ…。いや、それは…。その、また。帰ったら話す」

    確かにそろそろね。時間を確認する。うん、そろそろだわ。

    アグネス「アスラン先輩。お時間です」
    アスラン「よし。モビルスーツデッキへ。俺が言えた義理では全くないが、任務中はまず、その達成に集中を。従たる目的はあくまで従だ」
    アグネス「了解」

    モビルスーツ発艦前特有の空気に包まれるミネルバの中を二人で駆け下っていく。

  • 51二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 23:49:06

    アグネス我慢強い
    上昇志向強いけどそれに見合うくらい上官の素質があるね
    カガリを結構気にかけてるのを見るに意外と義理堅いところもあるのかな

  • 52二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 07:59:28

    アスランはキラがストライクのパイロットだったことを伝えるのかな?

  • 53二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 18:36:15

    命かかってるせいだけどアグネス頑張ってるな
    怒りを外に出さない(出すと死ぬから)の凄いよわかってても普通出るよこの状況

    運命本編で副長がなにげに凄いのが読んでてわかったな

  • 54二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:33:01

    モビルスーツデッキに着くと、既にメイリンとシンがスタンバっている。2人ともパイロットスーツ、ヘルメット、飛行装置、調査キッドと。メイリン、そこそこ様になっているじゃない。

    アグネス「(メイリン、少し緊張気味…、でもない!?存外に度胸とガッツがあるわね。この子、パイロット適性がそこまで高くなかったのが残念ね)」

    アスラン「皆揃ったな。作戦は既に伝えてある通り。坑道調査は時間との勝負だ。本来は、念入りな調査をしたいが、音が発生する調査は連合軍に発見されるリスクがあるから最小限に。落石、落盤、地下水に注意。通信中継器を一定間隔に設置しつつ進むように。ただし、傍受の恐れがある。使用は原則禁止」
    アグネス「了解」
    シン「了解」
    メイリン「了解です」

    一度頷くと、2人ずつに、二手に分かれ、それぞれセイバーとバビに。

    アスラン、早速お仕事モード全開。まあ、ここはこれが最適か。そもそも、交流接触回数増だけで、アスラン、シンはノルマ達成と言えば達成だし。

    昇降機で、バビのコックピットを開くと、整備兵が急ごしらえで作った小さな補助席。

    アグネス「メイリン、この補助席、というか腰置き(?)結構小さいけど大丈夫?一応シートベルトは付いているけど」
    メイリン「はい。私が言い出したことです」
    アグネス「ありがとうね」

    飛行装置、調査キッドを押し込み、メイリンを乗せる。狭い! でも、大丈夫。飛べる。戦える!

    アグネス「戦えるけど、戦闘になったらこの偵察調査任務、大失敗なのよね」
    メイリン「頑張ります!音は最小限に」

    そうね。

  • 55二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:37:55

    ブリッジより通信。
    アーサー「セイバー、バビ。発進準備良し。右舷ハッチ開放。セイバー発進、どうぞ」

    アスラン「アスラン・ザラ、セイバー発進す…します!」
    アスランのセイバー発進。

    アーサー「続いて、バビ、発進どうぞ」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、バビ、出ます!」

    セイバー、バビ共に発進直後に高速飛行用MA形態に変形。亜音速でペルシャ湾からカスピ海南東岸まで一気に縦断する。

    メイリン「アグネスさん、山!ザグロス山脈です!!」
    アグネス「そうね。スシアナ平原はあっという間だったわね!」

    そこそこGがかかっているはずだが、流石はコーディネイターと言うべきなのか、かつて『ルナマリアのおまけ』位に思っていた少女は状況をどこか楽しむ余裕すらあるようだ。
    まあ、プラント生まれの私達にとっては山も海も川も珍しい。かつて幾つもの文明が勃興し、興亡を繰り返した大地が、眼下に広がっている、そう思うと感無量ではある。操縦する私はそれどころではないけど。

    アスラン「間も無く、ザグロス山脈。アグネス機異常はないか?」
    アグネス「異常ありません」
    アスラン「了解」

    ザグロス山脈を通過飛行。西側にはハマダ―ンを視認。古名はエクバタナ。観光に行きたいものね。勿論、勝ってから。

    アルボルズ山脈南側が迫ってくる。北西方向にザンジャーン市。

  • 56二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:40:15

    アスラン「これより、徐々に高度を50メートルまで下げる。50メートルでキープ。速度そのまま。山頂通過時以降は30メートルまで下げる。北側渓谷進入時には15メートル」
    アグネス「了解」

    メイリン「15!」
    メイリンがちょっと慌てるが、内心私も慌てている。
    アグネス「少し高すぎるかも」

    セイバーに通信。
    アグネス「まだ下げられます5メートルまで」
    アスラン「了解。渓谷進入時に指示する」

    メイリン「木や岩、大丈夫…。ああ、大丈夫ですね」
    アグネス「そうね」

    高度50、まだ亜音速のまま。

    アスラン「南斜面。速度を徐々に3分の一、300まで落とせ、高度は30に」
    アグネス「了解」
    しばらくは山脈を南北に這うように飛ぶ。ほぼカスピ海南西海岸と並行、西側方向にはアルダビール市。

    アスラン「渓谷に突入。高度は5まで」
    アグネス「了解」

    メイリン「いよいよですね」
    アグネス「そうね」

  • 57二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:51:27

    そこそこの流量がある川が流れる渓谷をセイバーとバビは翼を掠めるように飛行。

    アスラン「坑道を前方に確認!!」

    コックピットモニターに映像!
    メイリン「あれ!!良かった!地形図通りです」

    山の岩肌に巨人が大剣で切り込んだような大きな深い割れ目。水が流れ出ている。やはり地下水が問題か...。

    アスラン「着陸」
    アグネス「了解」

    最小の動作でアスラン、セイバーと私、バビはMS形態に変形。速度を急低下させつつ、坑道脇に着地。

    一瞬背中がヒヤリとした。ここはミネルバのカタパルト、甲板でも、ザフトの空港、基地でもない。

    完全な敵地のど真ん中に下りるのは人生で初めてかも。インド洋の時は味方が傍にいたし。

    アグネス「(着陸難易度じゃない。ここには整備兵も警備兵もいない。友軍も…)」
    チラリと横に視線を向けると、何やらウキウキ気味のメイリンの顔が…。

    アグネス「メイリン。もしかして、あんた。ルナマリアより度胸ある?」
    メイリン「えっ…。そんなこと言われたの初めてです!」
    アグネス「そう。光栄ね」

    心細さが吹っ飛んだわ!私としたことがどうかしていた。セイバーとバビよ。ダガーの中隊ぐらい全部、叩き落してやるわ。

    アグネス「じゃあここからは、メイリンそれから…」

  • 58二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:56:25

    通信をセイバーにつなげる。
    アグネス「アスラン先輩、失礼します。シン、頑張りなさいよ!」

    シン「ああ...。勿論!」
    コックピットモニターにちょっと拍子抜けしたようなシンの顔。まったく、拍子抜けできないような状況が起これば、全部台無しよ!しっかりしなさい!アスラン先輩と何か話す機会はあっただろうか。

    アグネス「(操縦中は難しいわね。多くを求めすぎてもいけないか)」

    セイバーから下りようとするシンがモニターに。
    シンの背中に向け、意を決したようなアスランの声が掛かる。

    アスラン「俺からも頼む。メイリン。それから…シン!」

    少し驚き、シンが振り向く。
    シン「はい」

    アグネス「(良し!)」
    横を見るとメイリンも小さくガッツポーズ。良し。

    シンがどんな表情か、ここからでは見えなかった。でも、まあ、良いわ。

    アスラン頑張った。偉い。60アグネスポイント。

  • 59二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 07:29:30

    アグネスは増長し過ぎない程度に余裕が無い環境で使い潰すのが一番だね…
    無印AAよりマシな環境なのにミネルバの余裕が無さ過ぎるんだけど?????

  • 60二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 07:41:27

    シンやメイリンに1000000アグネスポイントを進呈してるのと比べると分かるアスランへの60アグネスポイントのしょっぱさよ
    カガリに同情してたし何度も内心キレてるしで色々思う所があるんだろうな

  • 61二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 07:51:01

    アグネスポイントを溜めるとどうなる?

  • 62二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 08:09:14

    今にして思うとルナマリアって本編だと終盤までは別にいなくても問題ない役割だったな

  • 63二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 17:18:46

    保守

  • 64二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 21:13:13

    メイリンとシンが坑道調査を開始。二人は、深く暗い穴に飲まれるように消えていく。3Dマップではなく、こうして改めて、実物を目の当たりにすると、暗黒の空間が本能的な不安をかき立てる。『冥界に続く』なんて言葉が頭をよぎる。今は、見送ることしかできない。

    私とアスランはひたすら待ちだ。彼らが無事に帰るか、なにがしかの通信が入るまで。

    アグネス「(とはいえ、基本通信はNG。勿論、護衛中の私とアスラン間も。ひたすら、静かに機体の迷彩を頼りに、大きな岩になり切る)」

    ただし、敵の偵察機が勘づいた瞬間には即座に撃てなければならない。集中力を保たなくては!まあ、楽なもんでしょう、狙撃兵に比べれば。

    視覚を何分割にもしながら、細心の注意でモノアイを移動させ、背後の岩肌以外に死角を作らないようにする。背後の岩を突き破って攻撃されたら?そう思うとヒヤリとする。連合が自分達の要塞に中から風穴を開けるわけがない。だから、杞憂よ。戦史ではそういう例もないではないけど…。まさかね…。もしもを考えたらきりがないわ。

    アグネ「(『もしもを考えてもきりがない』、『まさか』。なるほど。こういう心理なのね)」

    合点がいった。歴史上でしばしば著名な作戦で、奇襲、奇策が実行され、勝者と敗者が生まれる。敗者はなぜ『そんな隙を作ったのか』『対策をとらなかったのか』と必ず批判され、時に嘲笑の対象にすらなる。私もいつも疑問に思ったものだわ。知らず知らずのうちに自分も敗者の列に加わろうとしていたとは…。
    身を引き締め直す。バビに背後を見る機能はない。後ろを見る為に動いたら元も子もない。音響センサーで対処。

    大丈夫、背後の岩から異常音はない。

    コックピットに通信!メイリン!どうしたの!?

    メイリン「アスランさん、アグネスさん、今、坑道3分の1ほど。坑道上部から、地下水が。坑道が滝で一旦途切れ、坑道の先は地底湖に」

    アグネス「やっぱり、問題は地下水ね…」
    アスラン「了解。二人は帰還しろ」

  • 65二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 21:18:24

    メイリン「いえ。シンとも話し合いましたが、彼一人なら、滝の切れ目から先に進めるそうです。調査続行の許可を」

    モニターに暗視カメラ映像。
    なるほど、入口から続く坑道が滝のカーテンによって分断されている。その先は滝つぼ、地底湖。対岸には、もう一つより大きな滝がある。その滝の上流に坑道の続きが確認される。

    アグネス「あなた達の飛行装置であそこまで行ける?地底湖の対岸に何とか渡れても、坑道の続きの部分まで、結構な高さがあるわよ」

    シン「岩伝いになんとか!行けます!」
    アスラン「分かった。地底湖の岸、滝の両側の岩場、両方ともかなり滑るはず。落下に厳重に注意を。クライミング用の機材は?」
    シン「簡易的なものが探索セットの中に」
    アスラン「良し。メイリンは別命あるまで待機。シン調査続行」
    シン「了解!」

    本来、二人一組以上の行動が望ましいが、今回ばかりは仕方ないわね。ちゃっちゃと確認してきなさい。

    栄養ゼリーを昼食代わりに胃に流し込みながら、二人の帰りを待つ。

    遅い。調査開始から本来のタイムリミット3時間が経過。

    アグネス「(日が陰り始めている。いや、太陽はどうでも良いけど…)」

    もう2回、連合の偵察機が上空を通り過ぎた。敵が節穴で助かったわ。ローエングリンと例の陽電子リフレクター搭載モビルアーマーで気が大きくなったのか?他山の石にするわ。

  • 66二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 21:34:28

    アグネス「アスラン先輩、そろそろかと」
    アスラン「ああ。シン、そちらはどうなっている!」

    回線を開く。実際に偵察機を目の当たりにした後だと、通信すること自体、かなりのリスクに感じるわね。

    シン「事前資料によると後、500メートルほどで反対側出口です。ここまで来たら、最後までやらせてください!」
    アスラン「分かった。メイリン、危険はないか?」
    メイリン「はい。シンの帰りを待ちます」
    アスラン「了解。シン、続行せよ」
    シン「了解」

    これは、まいったわね…。いや、電車の時刻表のように任務が進むわけないか…。帰りは結構遅くなりそうね。

    じっと空を睨み続ける。
    2人が帰るまで―

    メイリン「シンと合流しました。現在、地底湖直前の坑道内」
    アグネス「(おおぅ!)」
    シン「反対側出口調査を終え現在、地底湖対岸。メイリンと合流。これより、そちらの入口に向かいます」

    アスラン「良し。慌てるな」
    アグネス「やったわね」
    シン「はい」
    メイリン「はい」

    待つこと暫し―

    地下世界から這い出してきた二人をセイバーとバビで迎える!
    ちゃんと二人とも無事!!良かった。
    まあ、シンはオルペウスという柄じゃないし、メイリンは自力でハデスを振り切るでしょうけど、間違いなく!!

  • 67二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 21:38:34

    アスラン「二人を収容。セイバー、バビ。これよりミネルバ、マハムール基地へ帰還する」
    アグネス「了解」

    シンをセイバーの、メイリンをバビの掌が迎える。

    コックピットを開く。
    アグネス「おかえり、メイリン」
    メイリン「ただいま、アグネスさん」
    メイリンの手を取り、補助席に。安堵感からお互い笑みがこぼれる。

    そこにアスランから通信。
    アスラン「メイリン、シン。よくやったな」

    隣のメイリンの顔が輝く。
    メイリン「はい」
    シン「はい」
    モニター越しに嬉しそうなシンの声と照れくさそうなアスランの顔。あんな顔するのね。仏頂面しかしないのかと思ったわ。

    アグネス「(アスラン、『褒める』が出来て大変よろしい!)」
    これはアグネスポイント、100上げちゃおうかな。

    登りゆく月を追いかけるようにセイバーとバビ、2機で山河を飛び越えていく。

  • 68二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 00:23:11

    マハムール基地を目視。ミネルバのカタパルトに着艦。整備兵達に温かく迎えられ、流石に気が緩みそうになる。
    今から、シンとメイリンの報告を聞いて、アスランと共に報告書を作成し、副長に提出しなければいけない。場合によってはその場で報告を。今日の任務はまだ終わっていない。大丈夫…。私は強い。

    アグネス「私は強い!!」
    メイリン「うわっ!アグネスさん、どうしました?!」

    更衣室で着替え中に自分に気合を入れていたら、メイリンを驚かせてしまったわ。

    アグネス「ああ。メイリン。気にしないで。ちゃっちゃと夕食食べたら、仕事の続きをするわよ」

    帰りが遅くなってしまった。皆はもう夕食を済ませている。仕方ないわ。

    メイリン「アグネスさん。無理しちゃダメですよ」
    アグネス「無理してないわよ。というか、疲れてるのはメイリンの方じゃない。大丈夫?」

    坑道探索で結構、疲労が出ているのではないの?オペレーターのメイリンを引っ張り込むような形にしてしまったのは私ではあるけど。

    メイリン「平気です!私は大丈夫です。むしろシンの方が心配です。奥の方は結構大変で…」

    着替えを終え、二人で通路を進む。

    アグネス「まあ、平気でしょう。腐ってもザフト最新鋭機インパルスのテストパイロット様よ。エベレスト厳冬期無酸素登頂も余裕よ、きっと」
    メイリン「そうですね…。シンやアスランさんなら、ならやれるかも。アグネスさんも出来ますか?」
    アグネス「あんたね…。シンが出来て、私が出来ないわけないでしょう!」

    『このおバカ』のジェスチャー、メイリンの『ごめんなさ~い』のジェスチャーで特別に許す。

  • 69二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 00:34:16

    アグネス「(厳冬期無酸素は少し訓練してからチャレンジが良いわね。マナスルで力試ししてから…。いや、別に物の喩えよ!)」

    第一、山に登って最新鋭機のテストパイロットになれるものなら、K2にも登っているわ。
    私だけでなく、ザフト軍パイロットの中で、それを目指している人間なら皆。

    脱落する奴は脱落するし、死ぬ奴は死ぬでしょうけどね。

    私にはその資格があったはず、能力もあった。
    それでも選ばれなかったのだから、きっとインパルスパイロットの適性判断はもっと別の要素を上は重視したのよ。

    シン「おっと…。アグネス、メイリン」
    通路でアスラン、シンと鉢合わせに。

    やあ…と手を挙げるシンとその後ろにアスラン。そっちも着替え終わったのか。

    アグネス「…」
    シン「なんだよ。じっと見て来て?」

    ここで今更、こいつに文句を言ったところで―

    アグネス「メイリンと、私とシンとアスラン、厳冬期エベレスト無酸素登頂できるか話していたところよ」

    しかたないので、本質ではない『本当の事』を言ってごまかす。

  • 70二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 00:38:45

    シン「山岳戦訓練??そういえば、プラントでは十分ではなかったかも。一応、やるだけはやったけど」
    メイリン「違います。二人でシンの体調を心配していたんですよ」

    メイリンのウィンクサイン。まあ、これからまだ、こいつとの仕事は続くからね。思うところが無いとは言わないけど。ここで、こいつが潰れたら困るのは私。

    アグネス「まあ、大筋ではね」
    シン「ああ、そうなの?ありがとう」
    アグネス「どういたしまして」
    アスラン「確かに。プラントでは山岳戦の訓練は難しいな。再現環境下でのトレーニングは行うが。特殊地形の訓練はなかなか…」

    このまま四人で食堂まで歩き、そのまま、ご飯。アスランもちょっとは打ち解けてきたようね。
    こっちの目的は合格点かな。

  • 71二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 08:07:33

    シンとアスランのわだかまりも解消されたようで良かった

  • 72二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 09:54:23

    アグネス上昇志向激高なのに内心を取り繕えなくなりそうなくらいガチギレしたのはインパルスのパイロットであるシンではなくアスラン相手なんだよな
    メイリンとも仲良しだし色々理屈をつけてはいるけどかなり絆されてそうだ

  • 73二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:19:05

    夕食後、4人でブリーフィングルームへ。

    まず、坑道調査の結果報告。

    メイリンとシンから一通りの説明を受ける。地下水や落石等でやはり、坑道の地形は大きく様変わりしていた。3Dマップを表示しながら、説明される。

    シン「地下水は正直、そこまで問題ではありません。反対出口の岩盤は調査の結果、コアスプレンダーのレディバード誘導ミサイルで破壊可能です。それより問題なのは…。ここ!」

    アップグレードされた最新の坑道3Dマップの最狭部示す。坑道3分の2の地点。
    確かにコアスプレンダーの翼が掠りそうなほどの狭さね。

    メイリン「それと坑道内部の視界不良も、やはり無視できない要素です。」
    アグネス「視界不良で最狭部はコアスプレンダーの翼がぶつかりかねない、と。果たして抜けるか?飛べるかどうか…」
    アスラン「確かに。視界不良は訓練で対応するとしても、物理上の問題はどうしようもない。シン、どうだ?」

    アスランはここでバトンをシンに投げ返す。ちょっと、自分に投げ返されたバトンにシンは困惑している。

    シン「えっ…」
    アスラン「飛ぶのはお前だ。この最狭部、俺でも飛べるかは断言できない。本当にギリギリだ。翼の端が掠めるのは覚悟しなければならない。それでも突入できるか」

    アスランの言葉を補足する。

    アグネス「もし無理なら、正面からの攻撃に集中するのも手よ。もともと、そちらで作戦を立てていたわけだし。
    メイリンとシンには悪いけど、可能・不可能を判断するためにも今日一日を使ったのよ」

  • 74二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:24:47

    シンは一瞬、迷うも強い言葉で断言する。
    シン「やれます。でも、決行前に十分な訓練をやらせてください」

    シンから強い決意がこもった言葉。目に力強さがある。これは行ける―

    アスラン「つまり、坑道奇襲作戦は可能ということだな。」
    シン「はい!」

    アスランも即座にシンの要請に応じる。

    アスラン「良し。では訓練方針を決めよう」
    アグネス「上申の許可を」
    挙手してアスランに呼び掛ける。
    アスラン「許可する」

    アグネス「では、…。これから、シンのシュミレーター訓練は坑道突破・奇襲作戦を中心のメニューに変更するべきです。シュミレーター訓練が合格すれば、次はコアスプレンダーのモニターに坑道の3D映像を表示しながらの飛行訓練、チェストフライヤーとレッグフライヤーも伴って。合格したら、最後は坑道の実物大模型を実際に利用した突破訓練で仕上げをしましょう」

    シン「実物大模型…。そりゃできればやりたいけど…。どうやって準備を?」

    アグネス「明日からラドル隊工兵部隊にお願いすれば。3Dプリンター等も活用しながら準備・制作していただきましょう。ザフトの工兵部隊は優秀よ。それで、実物大模型訓練を合格したらgoサイン。…というのはどうでしょう、アスラン先輩?」

    アスランは顎に手を当てて暫し思案。やがて―

    アスラン「それでいこう。ただし、時間は限られている。シュミレーター訓練、実飛行訓練、実物大模型訓練、全部合わせて明日から、3日以内に、シン!」
    シン「はい!」

  • 75二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:30:22

    アスラン「メイリンもシンに協力を!インパルスが岩盤を破壊して飛び出した瞬間にフォースシルエットが換装できないと砲台破壊が不発に終わりかねない」
    アグネス「周りの対空砲台とダガーはこちらで落とすつもりだけど、インパルス単機の戦闘力も最大に発揮させたいわ」
    メイリン「はい!頑張ります」

    この子、もっと引っ込み思案だと思ってたけど。羊の皮を被ってたのかしら。脱いでくれてありがとうね。

    アスラン「通常業務にプラスして、大変だと思うが、メイリン、頼む」
    メイリン「はい!」
    良し。方針決定。

    アグネス「明日の朝には、他のパイロットにも周知しましょう。ラドル隊には今日中に副長、艦長を通してお知らせを。艦長とアスラン先輩、フェイス2名連名でラドル司令官にご連絡ください。参加予定のラドル隊パイロットにも今の状況を連絡しなければ」

    アスラン「わかった」
    アグネス「それから…。分を過ぎた提案かも…」
    アスラン「続けてくれ」

    アグネス「ありがとうございます。では、明日からはミネルバブリッジ組と第一次攻勢参加組のラドル隊を含めたパイロット隊全員で合同訓練を開始する必要があると思います。特にミネルバは敵ローエングリンの砲撃を必ず一発以上回避しなくてはいけません。急旋回、急降下、場合によってはバレルロールぐらい出来るようにならないと…」

    アスラン「確かにな」
    メイリン「バレルロール…。前大戦の英雄艦アークエンジェルがやってのけたという。マリクさんの腕の見せ所ですね」

    慎重居士の艦長はどう思うだろう。バレルロールまではしないかな…。訓練だけでもやるべきとは思うけど。

  • 76二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:35:20

    アグネス「ザクと両甲板に乗ってもらう予定のガズウート2機も連携訓練が必要です。ガズウートは最悪、固定することも考えていますが、その場合モビルスーツとしての利点、甲板上を動いて射角等を調整する等が出来なくなります。
    ミネルバの機動に合わせ、ジャンプする、臨機応変に機体変形、無限軌道を利用するなどして、滑り落ちるのを防ぎ。完全に『置き砲台』にはならず、継続戦闘できるのが望ましいと思います」

    アスラン「同意見だ。ミネルバブリッジ、機関部クルー、ラドル隊ガズウート隊は、基地のシュミレーターも利用しながら訓練をし、最終出来には実際にミネルバで飛行、緊急回避訓練を行いたい。俺の方から、ラドル司令官、艦長にお願いしてみよう。その場合、最終訓練には全クルー、パイロット参加だ」

    シンも挙手、アスランは頷いて促す。

    シン「戦闘中に敵前降下予定のバクゥ隊や残りのガズウート隊は、降下訓練をしないと。それと、ガルナハン開放時の治安崩壊・連合捕虜虐殺を防ぐために空挺部隊とジンも市街地に突入してもらわないといけないから、それもラドル隊に協力してもらって、明日から訓練開始…。3日で足りますか?」
    アスラン「厳しいのは分かっている。だが、現地協力者。レジスタンスの都合もある。あまり時間はかけられない」

    現地協力者・レジスタンスでふと思い至る。

    アグネス「そういえば、現地で協力するというレジスタンスと、まだの顔合わせしていませんね。市街地の制圧と町解放後の治安維持に協力してもらわないといけませんし、何より降伏後の連合捕虜虐殺の厳禁を申し渡さなければ」

    メイリン「現地勢力との連絡はどんな予定になっているんですか?アスランさん?」
    アスラン「作戦直前に接触予定だが…。そうか。その前に一回会合を持つ必要があるな。ガルナハン・ローエングリンゲート手前に出てきてもらって、こちらも軍使の派遣を」

    直前に接触予定なの?!いや、流石に前からパイプは出来ているはず、よね?

    アグネス「是非に。町解放後の治安維持の協力と捕虜虐殺の厳禁は確約してもらわないといけません。書面に相手のサインを。相手が、約束を拒むなら最悪、切り捨てることも視野に」

  • 77二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:38:21

    アスラン「切り捨てる、まで行くと俺だけでは判断できないから、ラドル司令官の許可がいるが…。一応、現地武装勢力支援が目的の一つでもある。だが、事前に軍使を派遣して簡易でも連絡会議をする必要はあるな。これも俺から艦長とラドル司令官にお伝えする」

    アグネス「よろしくお願いします。それと…。シンあんたは寝なさい!疲労が蓄積してるでしょう」

    シンの顔に明らかに疲労の兆しが見える。探索の負荷はやはり大きいだろう。

    シン「いや、俺も手伝うよ。アスランさんやアグネスも待機・護衛中ずっと気が抜けなくて、疲れているのは同じだ」
    メイリン「じゃあ、私も手伝います!」

    アスランは少し感心したような呆れたような顔をして、私達を眺めて、命令を下す。

    アスラン「分かった。今から報告書と上申書を作成。日付変わる前に副長に提出。ただし、君らはそこまでだ。早く自室に帰って就寝しろ。残りの報告説明は俺がやっておく」
    アグネス「了解」
    シン「了解」
    メイリン「了解です」

    やっと、今日の仕事の終わりが見えて来たわ。

    何とか日付が変わる前にメイリンと自室に辿り着く。長い一日だった。
    アグネス「ただいま、おかえりメイリン」
    メイリン「おかえりなさい、ただいまアグネスさん」

    ベッドに突っ伏す。制服を脱がないと…。皺になる。うぅ…。何とか着替えて布団にくるまる。
    アスランに任せてしまったわ、副長への報告を。不覚。でも、もう集中力が持たない。

    アグネス「おやすみメイリン」
    メイリン「お…、おやすみなさ…い。アグネスさん」

  • 78二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 22:36:30

    本編はシルエットなしでそのあとやったんだよな……?

  • 79二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 23:18:21

    >>78

    ナイフでコックピット潰したダガーLをローエングリン格納するシャッターに投げ入れて誘爆で破壊だったはず

    GIF(Animated) / 1.93MB / 11520ms

  • 80二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 08:36:49

    保守

  • 81二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 09:03:50

    >>78

    そう

    ただ飛行できないから歩行と短距離ジャンプで進むしかなくて結果的に砲台の破壊はギリギリになった

  • 82二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 12:59:58

    アグネス「おはよう、メイリン」
    メイリン「おはようございます、アグネスさん」

    メイリンはブリッジに、私は身支度をして、食堂へ、。シンとレイ、ヴィーノ、ヨウランと合流する。

    ヴィーノ「へー。3日集中訓練の後に第一次ガルナハン・ローエングリンゲート攻勢か」
    アグネス「ミネルバの回避訓練、最後は整備兵の人達も参加だからね」
    ヨウラン「固定とか大変だな。でも、実戦では予告なしだから」
    レイ「ミネルバの攻撃回避訓練は今後の作戦のためにもしっかりやっておく必要はある」

    朝食をバクバク食べながら5人で話す。もっと上品に食べたいものだが、こいつ等の前で気取って見たところで仕方ない。時間もないし。アカデミーなら、もっと外面を取り繕ったのに。落とす目当ての男がいなければこんなものなのか。いや…。気さくな女子アピールも良いかも。『たくさん食べる君が好き的な』。

    ヨウラン「マハムール基地から、今回が最初の攻勢か?一回で済めばいいけど」

    ヨウラン…。バカな発言をするヨウランを軽く睨んで窘める。

    アグネス「今回一回で終わらないってことは私達が負けて、味方が死ぬということ。勝つ以外ないわよ」

    この男はちょくちょく失言する。口が軽くて困るわ。

    ヨウラン「そうだな…。悪い」
    レイ「ただ、可能性としては。いや…。あってはならないこと。シンが危ない」

    レイの真顔にシンがちょっと驚く。
    シン「俺!?」
    アグネス「当然よ。あんたが一番危ないんだから。作戦が不発に終われば、あんたは、敵中に孤立する。私達は撤退の選択肢があるけど、あんたは投降か自決か選ばなけでばならなくなるわ」

  • 83二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 13:26:20

    ヴィーノ「降伏か死か…」
    ヨウラン「どっちも…」
    シンより2の友人の方が深刻そうな顔になっている。

    レイ「究極の選択だな。連合が捕虜を人道的に扱う保証はない」
    シン「…」
    アグネス「だからこそ、ザフト軍は連合軍捕虜を人道的に扱い、現地民の報復からも守らなくてはいけない。連合の捕虜になったザフト兵を虐待や虐殺から守るためにも」

    もし、こちらが連合捕虜を虐殺・虐待すれば、あるいは現に行われているのを放置すれば、連合の捕虜になったザフト兵士に同じことをされる名目になってしまう。報復合戦は戦争のエスカレーションを招く。前大戦がそうだった。
    逆に連合捕虜を人道的に扱うことはザフト兵捕虜を守ることであり、捕虜交換による仲間の開放に繋がる道でもある。

    ザフトが連合捕虜を守っても、連合はザフト捕虜を守らないかも知れない。それなら、それをもって相手を非難批判し、相手国と自国の世論に訴えかけ、国際社会で優位に立つことが出来る。

    『連合捕虜の命≒ザフト兵捕虜の命』。だからこそ、ガルナハン開放時の民衆の暴発は避けなければならない。連合捕虜1名の命は現地の暴徒100名の命よりも重い。流石に口には出さないけどね。

    さて、それはともかく。深刻そうなヴィーノとヨウランの顔を見るに―

    アグネス「(ちょっと言い過ぎたわね。別に此奴らを委縮させたいわけではないわ)」

    元気づけなければ。シンがリスクをとることをむしろ、彼らのモチベーションにつなげる必要がある。

  • 84二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 13:33:52

    アグネス「シンが頑張るなら私達も死力を尽くさないとね!大丈夫。ちゃんとやれば勝てる。アナグマみたいに岩山に籠って守勢に回っている連合を吹き飛ばすわよ。作戦の主導権はこちらにある!」

    小さくガッツポーズして見せる。この戦いは十分に勝算があるのだとジェスチャーで示す。
    それから、皆、特にヴィーノとヨウラン、二人と目線を合わせる。二人の目から怯えが消え、決意に変わるまで視線を逸らさない―。

    良し、今の表情良し!100000アグネスポイント!

    レイ「実際、敵勢力に突出する形で籠城戦を強いられているのは連合側だ。落ち着いて進めればいい」

    レイの分析に5人で頷き、現状を再確認、再認識。レイ、良いこと言うわね。その通りよ。苦しいのは相手も同じ。
    攻撃を諦めなかった方が最後に勝つ!!

    アグネス「その通りよ!」
    シン「うん…。そうだな」
    ヴィーノ「うん」
    ヨウラン「おう」

    レイとまた、目が合う。今一つこいつの考えていることは理解できない。アカデミーからずっとそうだった。
    私にもなびかないし...。まあ、いいわ。今は互いが頼り。それだけが確かなこと。

    アグネス「レイ。本番、バビはアンタと私。2機編隊」
    レイ「分かっている。連携を」

    食事が終わった頃に艦内放送。
    メイリン「パイロットは全員、ブリーフィングルームに集合せよ。ラドル隊パイロットと合同ミーティングを行います」

    3人アイコンタクト、一緒に席を立つ。忙しい3日間が始まる。これまでも十分忙しかった。つまりいつも通りね。

    ヴィーノとヨウランに軽く手を振り、ブリーフィングルームへ。

  • 85二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 19:56:57

    ブリーフィングルームに入室後、他のミネルバパイロット達と合流。
    その後、乗艦してきた第一次攻勢に参加予定のラドル隊パイロット13名をお迎えする。敬礼。返礼を受け直る。

    アグネス「(第一次攻勢にラドル隊から参加するのは、地上戦艦ピートリー級1隻にバクゥ3機、ガズウート8機、ジン2機が予定されていたから、これで全員ね)」

    時計を確認、副長やアスランが到着するまで少し時間があるわね。

    アグネス「シン、皆。一旦整列!ラドル隊の皆さんがよろしければ、上官たちがご到着前に互いの自己紹介をお願いできませんか?」
    ラドル隊代表「ああ。ありがとう。確かに、上の人が来る前に。そう言うことはすませた方が良いな」

    ミネルバパイロット隊(アスラン除く)7人とラドル隊13人。向き合って整列する。

    う~ん。ラドル隊。全員、緑のモブ顔。男としては用なし。
    とは言え、任務成功の上、全員を無事、生還させ、『ガルナハン・ローエングリンゲートの奇跡』とか持ち上げられるのも悪くはないわ。そのためにも―

    ピシッと姿勢を正し、最初に自分の自己紹介開始。

    アグネス「私は、アグネス・ギーベンラート。ミネルバパイロット隊所属。名高いラドル隊の皆さんと轡を並べられること、大変光栄に思います。どうかよろしくお願いします」

    さりげなく、左胸の略綬アピール。経歴書代わりにもなって便利ね。ふふん。存在感アピールよ。

    相手のラドル隊にちょっとした驚きのような反応。私の家名というより、開戦以来のミネルバの活躍を改めて実感したのが大きいみたいね。

    ちょいちょいと横に並んだシンの肩をつつく。次、あんたよ。
    シン「あ、俺…。自分はシン・アスカ。同じくミネルバ隊のパイロットです。よろしくお願いします!」

    良し。可もなく不可もなし。

    こんな調子で、お偉いさんが来るまでに両パイロット隊とも自己紹介を終え、席に座ってちょっとした世間話をしていた。何でも、カスピ海の北東、旧カザフスタン領でも、最近嫌な空気が漂っているらしい。巻き込まれたくないわね。

  • 86二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:05:36

    ブリーフィングルームの扉が開き皆で起立。艦長、ラドル司令官、副長、アスランが入室。
    敬礼 返礼を受け直る。

    艦長とラドル隊長が正面中央に。艦長から譲られ、ラドル司令官が挨拶。

    ラドル「よし。皆集まったな。マハムール基地司令官、ヨアヒム・ラドルだ。司令官として、ガルナハン・ローエングリンゲート攻略に加勢してくださるグラディス艦長はじめ、ミネルバの皆さんに改めて感謝を。
    この攻勢に参加する者、一丸となって作戦を成功させよう。余計なセクショナリズムはザフトには不要だ。無論、我が隊にもな」

    ラドル隊長は視線を一度自分の部下に向け、それからさりげなく発言権を艦長に。

    艦長もそれに応え、付言・補足する。
    タリア「勿論、本艦パイロット隊も同じです。良き協力関係を。そして任務完遂を」

    パイロット一同「はい!」

    艦長とラドル司令官がやや満足げに頷き、正面を空けると副長がこの作戦の意義、大枠の作戦内容、ミネルバ隊がこれまでして来た訓練等を説明、気を利かせた副長がアスランにバトンタッチしてアスランが各詳細を説明。

    アスラン「では、各々、シュミレーター訓練を開始」
    パイロット一同「はい!」

    艦長たちの退出をお見送りし、私達も各自で別れる。訓練内容は連携しながらも各々異なる。

    特にシンはメイリンにも協力してもらって特別メニューね。坑道突破、シルエット換装、砲台破壊。破壊後、退避、ミネルバ帰還。リズムよく頼むわよ。

  • 87二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:15:38

    アグネス「(甲板配置予定のガズウート2名。モブ顔だけど大丈夫かな?後で練習みてあげなきゃいけないかな?)」

    急速旋回、急速降下・上昇、場合によってはバレルロールに振り落とされず、場合によってはテンポよくジャンプしながら、攻撃を続けなければならない。対空砲の破壊はガズウートの2連装ビーム砲や地対地対艦ミサイルにかなり期待しているし、近接防御機関砲や3連装軽砲でダガーに弾幕を張ってもらう予定。

    アグネス「(シュミレーターでやって見せて、何ならガズウート借りて実演しないといけないかも)」

    ブリッジクルーも今回は訓練を開始。足りない分は基地のを借りる。

    特にマリクさん、頼むわ。
    アークエンジェル並みの操艦とまでは言わない。でも、良いとこまでは食らいついて。
    集中的にトレーニングできる滅多にないチャンスなんだから!バレルロールやって見せてちょうだい!

    私はアスラン、レイと共に空中戦トレーニング。
    ダガー撃墜、モビルアーマー撃破、対空砲破壊は私達の割り振りよ。これもタイミングよく進めないといけない任務。

    特にあの気持ち悪いモビルアーマーは私達が相手をするしかない。
    ダガーと対空砲はミネルバや他のモビルスーツと共同になるけれども。

    アグネス「(モビルアーマーに3機が、ずっとかかりきりになるわけにも、って!)」

    隣のシュミレーターでアスランが早速、あいつの両腕を切り飛ばしている!すごいわね。

    まあ、私もすぐにできるようになるけど。バビではお預けね。近接戦なんとかして!
    もっと頭を使った機体開発をして欲しい!設計局には無能しかいないの?!

  • 88二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 23:52:22

    シュミレーター訓練を一旦切り上げ、昼食。
    シンやメイリンも合流、私、アスラン、レイと5人で食事。
    この面子では、話すことは仕事の事しかないので互いの進捗を確認。

    シン「それで、モビルアーマー対策は何とかなるんですね?」
    アスラン「ああ。あくまで君らが戦ったザムザザーと上半身のダガーの戦闘力を基にしたモデルを相手にしたシュミレーションだが」
    アグネス「時間制限が無ければ、アスラン先輩、セイバー単体で対処可能。できれば、プラス、バビ1機援護に来れば楽勝ね」
    レイ「あくまでモデルが正しければの話だ」

    レイは嫌な奴だけど、この指摘は正しい。想定以上にあの機体が近接格闘戦に強い可能性はある。あるにはあるが...。
    アグネス「分かってるわよ。でも、何か芸がないわね。ザムザザーの方が強そう」

    ザムザザーを単機で倒したこともあるシンも同意する。
    シン「ザムザザーは外見が、いかにも強そうだからな。兵器ってそう言うのも大事なんだろう?」
    アスラン「『強い』『恰好が良い』と敵味方に思わせる、というのも性能の内ではあるな。確かに」

    こっちだけで話が弾むのも問題ね。メイリンに視線を向ける。ちょっとパイロット陣に囲まれて話しにくいかな。
    この子、流石にもう『優秀な姉にコンプレックス』とかはないでしょうけど。ルナマリアは宙の向こうだし。

    アグネス「メイリン。シルエット換装は行けそう?」
    彼女の任務。作戦中に行われるであろう、ひっきりなしのオペレーター業務と今回のインパルス換装はちょっと難しいと私も思うわ。

    メイリン「いえ。いつも通りです。シンが飛び出した段階でミネルバが健在で作戦半径の中にいれば確実にシルエットを射出できます」
    アグネス「ほう…。流石」
    やっぱり、下士官ぐらいなら最強ね。この子。この専門性すごいわ。いや、将来、情報将校を目指すなら、士官の階級もいるか。それはともかく―

    アグネス「となると、やっぱりインパルスが岩山から飛び出すまでに敵対空砲を叩いておくことが何よりも肝要ね」
    メイリン「はい。シルエットがシンの所まで届かないと意味がありませんから」

    ただし、そっちは結構、目途が立って居る。セイバー、バビ以外にもミネルバの火砲、ミサイル、甲板に乗せていくガズウートを始めとしたモビルスーツの火力。さらに、降下させるガズウートとバクゥの支援。結構早く対空砲は沈黙するはず。

  • 89二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 23:53:18

    アグネスは早く昇進して士官になった方がいい

  • 90二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 00:02:33

    メイリン「あと、ダガー隊が心配です」
    レイ「マハムール基地から得た情報によれば、ダガー隊の数はおよそ15機以上20機未満。セイバーがモビルアーマーに切り込むと同時に、バビ2機で一撃離脱を。最初の一撃で俺とアグネスで少なくとも、4機できれば6機は墜とす。そこから先は臨機応変に」
    アグネス「シュミレーターでは最初の一撃離脱で、私とレイで10機墜としたこともあるけど。本番はまた違うでしょうしね」

    慢心、ダメ絶対。

    食事を終えると、まだ幾分か時間がある。ここは―

    アグネス「アスラン先輩、私一緒に士官室でお話しませんか?二人きりと言う訳にもいかないから」
    チラリと視線を投げるとメイリンが反応。感度が良いわね。興味津々、大いに結構。

    アグネス「メイリンと3人で」
    アスラン「かまわないが…。込み入った話なら今日の訓練後にしないか」

    アグネス「(確かにそれもそうね。メイリンはどうかしら)」
    メイリンからOKのジェスチャー。
    アグネス「では、今日の訓練後に」
    アスラン「分かった。時間を空けておく」

    脇から声をかけられる。
    レイ「何の話をするつもりだ?」

    レイ、ウザすぎ。こいつ、シンやアスランに私が接触しようとすると絶妙に邪魔してくるわよね。まあ、だからメイリンを撒き込んじゃった感はあるんだけど。

    アグネス「中ぐらいの話。まあ、必要なら後で聞けば?」
    レイ「…」

    睨んできたから、睨み返す。

  • 91二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 00:16:46

    どうもレイとは馬が合わない。生来の気質に加え、何か違和感あるのよね、ここ最近。
    多分、アスランは議長の手駒だから、抱え込みたいというのもあるんでしょうけど。

    アグネス「(アスラン自身は議長シンパかというとちょっと微妙なのよね)」

    シン「まあ、まあ。女の子だし、アグネスやメイリンも、な?」

    見かねたシンが仲裁に乗り出す。あの、問題時のシンが!?信じられない...。
    でも、そのまったく的外れなフォローは止めて。まるで、私とメイリンがあの人のファンみたいじゃない。戦闘能力だけは驚嘆に値するけれど。男としては無いわ。強制イベントで接点が出来たことを感謝ね。

    アグネス「まあ、そんなところよ。レイ、女の子の言動に一々反応しないで、ウザいから」
    メイリン「まあ、まあ」

    メイリンまで仲裁に。大丈夫。喧嘩じゃないからね。う~ん。何でこうなるかな。

    アグネス「ごめん。空気を悪くする気はなかったの。じゃあ、レイ。休みあけたら、また訓練で」
    レイ「...。ああ」

    仕方ない。昼休み終わりまで、ガズウートのパイロット達とコミュニケーションをとって過ごすわ。あっちにも声かけしなきゃいけないと思っていたから。ミネルバ甲板組は作戦終了まで一心同体なんだ。

    でも、何を話そう。私の経歴や戦歴を話しても自慢と思われるし。男の沽券ってやつ。逆に相手が前大戦からの勇者なら生意気に思われるわ。

    いや、待てよ。美人が寄ってくるだけで男は嬉しい。つまり、私が近寄るだけで、相手は喜ぶわね!!
    そうよ、私は本来、皆に愛されているはず。変人とアホとモブばかりに囲まれていて失念していたわ。
    しっかりしなくちゃ。
    基本、男から話しかけてくるはずよ。それがマナー。あとは流れね。

  • 92二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 01:17:28

    ・本性がアレなのを知っている
    ・議長アンチ
    ・同期の輪の中心にいる
    ・議長最大の駒候補兼お友達であるシンの手綱を握りかけている
    ・持論を納得させたり仲間内の人間関係の向上を積極的に行うなど話術が上手い
    ・ラクスが偽物である事を知っている上に本物がオーブにいる事も知っている
    ・↑をミネルバのクルーに教えている

    レイから好かれる要素が皆無どころかミネルバじゃなかったら背後から撃ってきそうなくらい嫌われてるだろこれ…

  • 93二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 06:20:40

    軍人としては上昇志向が上手く働いてるなあって思わせてからの、この恋愛面でのアレっぷりが実にアグネス

  • 94二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 08:59:56

    レイ「だからルナマリアを配属してくれって頼んだのに…」

  • 95二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 15:15:42

    昼休み明け、訓練再開。
    アスラン、私、レイ3人、つまりセイバー、バビ2機で、既にかなりのアベレージが出せるようになっている。

    敵が『引きこもり戦法』をとった場合は厄介だけど、その時はモビルアーマーと砲台さえどうにかなれば、ミネルバのタンホイザーで敵要塞ごと吹き飛ばしてもいい。

    ひと段落着いたところでアスランに切り出す。
    アグネス「アスラン先輩、よろしいでしょうか?」
    アスラン「どうした?」
    アグネス「アスラン先輩の許可がいただければ、私は他の配置の人達の訓練のお手伝いをしたいのですが…。特にガズウート2機とザク3機の『甲板組』は艦防衛の要ですが、不安定な足場に苦戦しています」

    昼休みで甲板組と話して再確認したわ。特にガズウートの2名は普段とあまりにも違う戦闘環境に戸惑っている。
    ガズウートは宇宙艦や陸上戦艦の砲台担当になることも多いから、行けると思ったけど。大気圏内を空中飛行する強襲揚陸艦の甲板というのは、初めての体験だそう。

    アスラン「なるほど…。では、俺も行くべきか?」
    アスランからの提案。どうする?

    う~ん。ちょっと迷う。この人教えるの下手そうだし…。でも、アスランの打ち解け作戦には必要か。それに、この人のテクニックは凄く参考になるのよね。

    アグネス「お願いします。ガズウート組が特に難儀していますが、グーン三人衆、改め今回はザク3人組も余裕と言う訳ではありません」
    アスラン「良し。レイはどうする?」

    アスランは話をレイに振る。
    レイ「まいります」

    決定ね。作戦の不安要素を一つずつ潰していくわよ。

  • 96二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 15:26:57

    ガズウートパイロット「す…、すごい。流石ヤキンの英雄だ…」

    アスランがシュミレーターでガズウートに搭乗。シュミレーション上、ミネルバをグルんグルんと、三次元に回避行動させるが、アスランは甲板から絶対に落ちない。

    横、縦に傾いても、無限軌道を駆使して、必要とあらば、適時最適な形態に変形しながら、振り落とされず戦闘を続行する。バレルロールやってもMS形態に変形、ジャンプ、スラスター制御で甲板が上を向いた瞬間に着地、即座に戦闘再開。
    オペレーター役の私が直前には合図しているとはいえ、この操縦能力はなかなかね。

    パチパチパチパチ!
    シュミレーターを出て来たアスランに甲板組5人が拍手している。まさに曲芸、サーカスを見たような気分なんでしょうね。

    アグネス「(ただ、『いいもの見せてもらった』で済ませてはダメよ。あなた達にこれをやってもらうんだから)」

    アスランにアイコンタクト。アスランは、頷くと私とレイに命令。
    アスラン「次はアグネス、レイ。左右甲板のガズウートパイロット役を。俺個人の特技ではなく、他の人でも再現可能であることを見せてやれ」

    アグネス「了解」
    レイ「了解」

    パチパチパチパチパチ!
    今度は私とレイがシュミレーターから下りたら拍手を受ける。

    アグネス「(ちょっと大げさじゃない?!)」
    流石に、私もレイもアスランほどには上手くできない。傾斜42度で転げ落ちたり、バレルロール連続3回目で着地に失敗したりしている。実戦ならタイミング次第で命取りに成りかねなかっただろう。

    アグネス「(3本勝負で3回目には一回も落ちなかったんだから、それでもまあまあね。私もレイも)」

    感心顔の緑モブ5名一人一人に目線を合わせる。
    ただ感心しているだけで終わってはダメなのだと。口に出しては相手の面目を潰す。だから、じっと、彼ら顔が引き締まる瞬間を待つ。

    良し、今!一同に声をかける。

  • 97二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 15:29:41

    アグネス「お褒めにあずかり光栄です。さて、次は皆さんが…。アスラン先輩」

    アスランに続きをバトンタッチ、さあ、決めて!

    アスラン「これらの機体で、任務は可能なことは今見せた通りだ。すぐ、君たちも出来るようになるだろう。あとは訓練あるのみ!」

    グーンパイロット達「了解」
    ガズウートパイロット達「了解」

    アグネス「差し出がましいとは思いますが、私とレイも訓練のお手伝いを」
    レイ「お力になります」

    甲板組は顔を見合わせた後、互いに目で合図。
    甲板組「よろしく頼む!」

    声を合わせて言ってくるのでこちらも声を合わせて返事。

    アグネス、レイ「はい!!」

    訓練は夕食時間に食い込むまで続き、ようやく一段落したところで皆で食堂へ。
    転げ落ちる回数がガズウート組は徐々に減少。ザク組はほぼ皆無になった。この調子ね。

    私、アスラン、レイ、グーン三人衆、ガズウート甲板コンビ、8人で一緒にご飯。謎面子ね。まあ、いいわ。

    『同じ釜の飯を食う作戦』開始ね。ガズウートコンビはミネルバの動ける副砲役だから仲良くなるに越したことはない。

  • 98二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 15:35:55

    少ない会話ながらも、和やかに食事は進み、世間話に花が咲く。物騒な内容ばかりだけど。

    アスラン「そんなにユーラシア西側の状況は悪いのか?」
    ガズウートパイロット「はい。さらに最近では西側だけでなく、これから攻略するガルナハンの対岸、カスピ海北東辺りも」

    アグネス「(以前にも話に出た地域ね。)」
    アグネス「ジョチ・ウルスの後裔国ハイバル朝の故地ね。ユーラシア連邦併合前はファウンデーション王国を国号としていた」
    ガズウートパイロット「そう。その残党が最近、何やら不穏な動きを…」

    カーペンタリアから来たグーンパイロット達が少しビックリしている。
    グーンパイロット「ユーラシア西側どころかほぼ中央アジアじゃないか。まあ、世界地域区分は定義ごとにずれがあるが…」
    グーンパイロット「あのあたり、地味にめんどくさいんですよね。大丈夫ですか?そこに行くんですか?」
    アグネス「中央アジアまで?ちょっと考えたくないわね」
    レイ「…」

    アグネス「(バルカン半島とコーカサスと○○スタンはヤバいって世界史を学んだ者なら直感でわかるでしょうに。不用意に手を突っ込んだら大やけどよ。火薬庫ばかりなんだから。まあ、その地域の一部に今回手を突っ込もうとしているわけだけど)」

    そんな感じで食事も終わり、明日も頑張ろう!で解散。
    挨拶をして、皆と別れる。今日の訓練はお終いね。私とアスランはメイリンと合流して士官室へ。

  • 99二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 21:55:07

    士官室に入る。
    取り合えず、3人分のコーヒーを出す。一口飲むとアスランが口を開く。
    アスラン「キラの話か?」

    ああ、そっち?今日話そうとした本題ではないのだけれど。
    確かにそれもあるわね。アスランがシンと交流を深める中できっとキラ・ヤマトの話題も出るだろう。
    予め地雷を踏まないようにアドバイスしたいし、前大戦の謎多き英雄に興味が無いと言ったらウソになる。
    私服のセンスがないことは既に知っているけど。

    アグネス「はい。それもあります。ただ、他にも…」
    メイリン「あ、それ。キラさんのお話、私も聞いていいですか?」

    興味津々なメイリンの顔。当然の反応ね。しかし、ちょっとこの子危なっかしいかも。
    連れて来たのは私ではあるが。流石に女性と男性、一対一で同室ではね。

    しかし、キラ・ヤマトの話か。早く本題に移りたいのに。
    アグネス「(妙な流れになったわね。まあ、こちらも片づけておかなければいけないか)」

    アスラン少し思案顔。『あとで話す』と言ってしまったのは彼自身だから、完全に墓穴を掘ったわね。一応助け舟を。

    アグネス「メイリンは善人です。私は聖人君子ではありませんが、プラントに害をなす気など毛頭ありません」

    アスランは慌てて顔を上げる。

    アスラン「いや、君たちを疑うつもりは…。それとアグネス、俺は君の全部を知っている訳じゃないが、自分をそんなふうに言うものじゃない」
    アグネス「ありがとうございます。シンと痛みを共有することをお勧めしましたが、私も、多分、メイリンもアスラン先輩を良く知りたいという思いは同じです。舟板一枚下は地獄の世界で共に戦場を渡っていくのですから。ただ、お話したくないことまではお聞きしようとは思いません」

  • 100二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 21:58:13

    うむ。とは言え、ここまで来たら、相互理解、とことんやってみようかしら。アスランの内心を引き出して味方に付けられれば、それに越したことは無いし。本題じゃなかったけどね。

    アグネス「アスラン先輩、こういう時は、まず自分から話さなければいけませんね。配慮が足りませんでした」

    アスラン「うん?」
    メイリン「…?」

    改めて、己を語ってみる。自分の弱みを見せる。勿論、肝心なことは伏せて。あと、ウソにならない程度に話を盛って。自分から話した方が相手も話しやすいでしょう。

    アグネス「私はアグネス・ギーベンラート。プラント首都アプリリウス生まれ、アプリリウス育ちの二世代目コーディネイターです。両親はプラント政府で働いていて…。自分で云うのは憚られますが、それなりに恵まれた育ちであったと自覚しています。両親は愛国心が強く、私もそのように教育され、育ちました」

    ザラ派って言うわけにはいかないわよね。アスラン・ザラの前で。とは言えニュアンスは伝わってしまったらしく、アスランは目を伏せる。どんな心境なんだろう。横目で少しキョトン顔のメイリンを見る。ホーク家は何かノンポリっぽいわよね。

    アグネス「ザフトアカデミーでは、シン、ルナマリア、レイ、メイリン、ヴィーノ、ヨウラン達と同期で…。この艦で一緒になった時は嬉しかったな。アカデミーの成績こそ良かったけど、実戦では…」

    実戦では…と口ごもって、悲し気に目を伏せる。
    どう!ありがちだけど、良い演出じゃない!
    本当は、実戦でも臆したことは無いわ。ちゃんとアカデミーで学んでおいてよかった!

    メイリンの反応を確認。うんうん、と頷いている。まあ、同期が同じ艦でやりやすいのは本当だし、実戦で思ったほど活躍できず、腹が立ったのも本当のことよ。

    さて、ここから。話す相手に自分との共通項を提示し、目の前の人間に親近感を待たせるのよ。

  • 101二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 22:02:36

    アグネス「父も母も、私には、優しくも厳しい人で、これまで、常に成果を求められてきました。
    私という存在が両親にとって、プラントにとって、社会にとって、意味のある、価値のある存在であると示すようにと。他人からの評価を気にしながら、生きることに苦しさを感じたことが無いと言ったらウソになります」

    苦しい胸の内を吐露するように話す。アスランが私に視線を、アイコンタクト。『苦しいのは貴方だけじゃない。親の呪縛と向き合いましょう』のサイン。

    は~あ。ウソになります(0.001%)。
    他人から私が評価され、また、私が他人に評価を下すのは当たり前でしょう。
    現に私は優れていて、これまでも、これからも成果を上げ続けるのだから、価値が認められて然るべき。
    優れた遺伝子とそこから出力される優れた才能を有した個人は、国家・社会で大きな役割を担うべきだし、私達は大いにその力を発揮して国家・社会の発展に尽くし、福利を向上させるべきなのよ。そして、その成し得た業績に報われ、賞賛を受ける当然の権利がある。

    世界は貴女のものあり、そして、また、貴女は世界のものである。生まれ出でて、この世界にあるからには、ね。

    アグネス「以上です。私の人生、薄っぺらくて、大してお話しできることが有りませんね。未熟者です、私は」
    一応、謙遜。大業を成すのはこれからだものね、見ていなさいよ!

    アスランは私の話が終わるや口を開く。

    アスラン「薄っぺらくなんかない。ユニウスセブンの時、君が頑張ってくれたから…。君の働きで直接救われた人が大勢いる」
    アスランが何かフォローしてくれた。ああ、ユニウスセブン、忙し過ぎて忘れてたわ。勲章まだかな。

    メイリン「そうですよ。アグネスさんは薄っぺらくなんてありません!それを言い出したら、私達、アカデミーでて直ぐですし」
    アグネス「そうね。そうですね。ありがとうございます」

    お目目をウルウルさせて二人にお礼を言う。言うだけならただよ。まあ、悪い気はしないわね。

  • 102二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 23:11:14

    さて、次はアスランの番、というかキラ・ヤマトの番ね。
    う~ん。アスランの言う『キラの事』って何?幼馴染で戦友でしょ。何か彼がアスランの人生に大きな痛みや苦しみを加えたような点がある?

    アグネス「(むしろ、そう言うのはアスランの亡くなった仲間。ミゲル先輩やラスティ先輩、そしてニコル先輩のはずだと思うけど。キラ・ヤマトは存命だし)」

    アスランはなおも迷っていたが、ついに決心したように語り出す。
    私の人生で最も意外な、驚くべき、私達コーディネイターにとっては天地がひっくり返るような事実を。

    アスラン「ストライクのパイロットはキラだ」

    アグネス「はっ?」
    メイリン「えっ…?」

    何かの聞き間違えかしら?

    アグネス「先輩、そのストライクというのは?」
    恐らく、私は今、かなり間の抜けた顔をしていることだろう。しかし、一度話始めたアスランは迷わない。

    アスラン「前大戦、アークエンジェルと共にヘリオポリスからザフトと戦闘していたストライクのパイロットはキラ・ヤマトだ」
    頭の中が???で覆われる。この男は何を言っているのだろう。

    アグネス「…」
    メイリン「やっぱり…」

    はっと横を見る。やっぱりって何、メイリン!
    メイリンの賢そうな目が私の目と合う。瞳を覗くうちに何となく頭の整理がついて行く。
    あ、あ~。点と点を繋ぎ合わせると、確かに。そう考えた方が筋は通るのか…。
    でも、コーディネイターがナチュラルの?キラ・ヤマトが地球軍のパイロットで同朋殺し!?

  • 103二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 23:14:41

    いや…。

    アグネス「(キラ・ヤマトはオーブ国民だから。ヘリオポリスに在住していたオーブ国民の行動と考えれば一貫性が有るのか…。ナチュラル、コーディネイターの横線で区切らず、国家単位の縦線で区切れば結構理解できるわね)」

    ヘリオポリス避難民の同胞を護送するためにパイロットに現地志願。
    その後、オーブ人の学友達がアークエンジェルに残ったため、戦闘を続行しMIA。その後、通常戦争から絶滅戦争にエスカレーションしつつあった前大戦に歯止めをかけるべく、アスハ家と親交があったクライン派の依頼を受けてアラスカに。その後は祖国、オーブの防衛線に参加し、アスハ代表と共に宇宙へ。
    アグネス「(確かに筋は通るわね)」

    こっちの戸惑いを他所にアスランは話を続ける。話してと言ったのはこっちだけれど。
    何でも、アスハ代表とキラ・ヤマトは双子の兄弟姉妹だそう!
    頭、破裂しそうよ。

    アスランの長い独白は、だんだん懺悔に変わっていく。ふむ。ふむふむ

    アスラン「二年前、俺は…。父の言葉が正しいと信じ、戦場を駆け、敵の命を奪った。その中にはキラの親友も。キラと殺し合い、ニコルや仲間を何人も失って、ようやく間違いと気付いても、何一つ止められず、全てを失って…」

    良し!ここで、決める!!今だ!!

    アグネス「そんなことはありません。『何一つ止められず』なんてことは。核とジェネシスを止めて下さったのはアスラン先輩ではありませんか?」

    メイリンが横で力強く頷くのが空気の振動でわかる。

  • 104二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 23:22:47

    アグネス「ザラ前議長の行いはあくまであの方ご自身のもの。それにザラ前議長は奥様の死の衝撃で精神のバランスを欠いていたとも聞き及びます。アスラン先輩ご自身がなした行いを毀損するものではありません。プラントと人類をお守りいただいたことに心からの感謝を。改めて、ありがとうございます」

    メイリンと一緒に起立。敬礼。
    さっきから、眼を伏せがちになっていたアスランが私達を見上げ、暫し逡巡した後、自分も起立して敬礼を返してくれる。

    下げた手をアスランに差し出す、『私は貴方の敵ではない』力になりたいのだと。そう示す。
    躊躇いながらもアスランが手を差し出したので握手。この人とするのは初めてか。敢えて、互いの存在を実感できるよう、いつもよりも強めに握る。
    その次はメイリン、しっかり握っている。そう言えばこの子、元々はアスランに興味があったわね。アレな人だと分かって幻滅していたと思ったけど、また、異性ではなく人間としての好意を持ったのかな。

    握手が終わると、アスランが着席するのを待つ。するとアスランからそちらが先にと促される。
    レディファーストかしら。それとも『人としての感謝みたいなもの』?

    メイリンとアイコンタクト。アスランに『同時に座りましょう』のジェスチャー。
    1.2.3で3人一緒に席に着く。まあ、偶には階級関係なしで座るのも悪くは無いわね。

  • 105二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 00:01:07

    うん?そう言えば、アスラン先輩とは前、仲直りの握手をしたわね。
    今日のはありがとうの握手か。2回目で真の仲間になる、みたいで悪くないわね。

    さて、2杯目のコーヒーを3つ出して静かに三人で飲む。

    しかし―
    この話、多分結構な機密よね。聞いてしまったけれど、どうしたものか。シンとアスランの相互理解、なんてものじゃないわよ。とんでもないものが飛び出して来たわ。

    アグネス「(う~ん。でも、今更、ストライクのパイロットが判明したところで…。みたいな感もある。上層部には悪いけれど、前大戦で内地にいた自分には衝撃的ではあっても、そこまで…、って感じかな)」

    まあ、私がそう言った類の物事に出身階層上、慣れっこになっているのかもしれないけれど。取り合えず、シンに伝えるかは保留かな。

    アスランは、コーヒーを飲み平静を取り戻した後切り出す。
    アスラン「それで、まだ、話したいことがあるんだったな」

    ああ、そうそう。本題を話さなければ。
    アグネス「アスラン先輩、フェイスとして、最高評議会及び国防委員会に月面戦線の重視を上申して頂けませんか。それと、現在のプラントの地上戦略にも私は疑問を持っています」

    アスランは面食らう。
    アスラン「確かに、フェイスは最高評議会と国防委員会の直属だが…。藪から棒にどうした」
    アグネス「思い付きで話しているわけではありません。私なりに何度も熟考した上でのことです。どうか、聞くだけでも…」

    アスランはちょっと考え、先を促す。
    アグネス「ありがとうございます。先ず―」

  • 106二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 07:52:44

    フリーダムのパイロットがストライクのパイロットでオーブの姫の弟とか頭パンクするよな

  • 107二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 09:47:02

    保守

  • 108二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 12:40:47

    フリーダムのパイロットがカガリの弟だと混乱するけど、同時に納得だよな
    常に先陣きって戦い、最大の脅威を抑え、撤退時には殿。そんな戦場の英雄でありながら、同時に莫大なパテント料で実質国を買い戻しながら、権力は求めず政治からは距離を置く

    弟じゃなければ婚姻で何としても縛りつけるわ。アグネスはOSやオーブの財政周りの情報知らんかもだが

  • 109二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 13:46:33

    久々に原作アグネス仕草がちょこっと見えたな…w

  • 110二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 23:39:51

    アスランと視線を一度合わせ、その後、メイリンにも軽く目線を振る。『貴女がこの部屋にいることを忘れてないわよ』の合図。さてお話しますか―

    アグネス「先ず、この戦争について、プラント最高評議会はその目的を積極的自衛権の行使としています。『自衛権の行使』なら、まず、一番に確保されるべきなのは本国プラントの安全ではありませんか?」

    アスラン「そうだな。それは同意見だが…」
    これにはアスランも同意する。

    アグネス「この戦争は連合の宣戦布告と核攻撃によって始まりました。ならば、優先するべきなのは核攻撃からプラントを守ること。アスラン先輩も核攻撃の際、プラントにいらっしゃったのでは?」

    間の悪い事に。そこで議長に誑かされたと。
    アスラン「その通りだ。戦いでザフトはニュートロンスタンピーダーを使用していたな」

    アグネス「そうです。間一髪のところでプラントは無事でした。しかし、アスラン先輩もご存知の事と思いますが、ニュートロンスタンピーダーには大量のベースマテリアルが必要になります。私はプラントがあの防御装置を幾つ確保してあるかは存じませんが、数に限りがあることは明らかだと認識しています」

    メイリンが微かに息をのむ音が聞こえる。事実に驚いたというより、ああ、それ言っちゃうか、と言ったような反応ね。

  • 111二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 23:48:46

    アスランは話の流れを理解し、腕組みしながら考えを巡らせる。

    アスラン「確かに…。極論すれば、あの時使ったニュートロンスタンピーダーが最後の一つ…、ということもあり得るな。地球連合はアルザッヘルに大規模基地を持ち、さらに月面民間拠点を軍事転用すれば拠点の数は更に増加しうる。そして、連合はそれらの拠点に大量の核兵器をため込んでいるはずだ、と。
    ユニウス条約でプラントは地球と同数の月面拠点を持てることになっているが、実際はそこまで手が回らず、ザフトに月面基地はない。だから事実上、月面は中立都市コペルニクスを除けば、地球軍の牙城…。月を落とさねば、プラントの核の脅威は消滅しない、そう君は言いたいわけだな。」

    ちゃんと理解してくれて、話が早いわ。

    アグネス「はい。そうです。フォックストロット・ノベンバーの後、連合宇宙艦隊は壊滅されることはなく、月軌道へ撤退。現在それをゴンドワナ率いるザフト月軌道艦隊が中小規模の戦闘を繰り返しながら押し留めている状況です。私達の同期で、メイリンの姉であるルナマリアも他の仲間たちと一緒に奮戦してくれています」

    目線を横のメイリンに。アイコンタクト、メイリンも頷いてくれる。
    メイリン「はい。姉たちも頑張ってくれていると」
    アスラン「そうか…」

    目の前の人物の近親者が話題に出たことで、アスランの表情がやや改まる。というか、真顔がさらに真顔になる、と言った方が良いのかしら。

    アスラン「話は分かった。だが、実際、連合軍の核再攻撃の可能性はどれぐらいだと、君は考えている?
    仮に連合軍がザフト月軌道艦隊を突破しても、ニュートロンスタンピーダーを使われたら、直接核を搭載する攻撃部隊は全滅するじゃないか。現にクルセイダーズはそうなった。向こうはプラントがニュートロンスタンピーダー幾つ確保してあるか知らないはず…、いや…」

    話している内にアスランも気づく。

  • 112二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 23:53:46

    アグネス「情報漏えいの恐れは必ずあります。それに数は分からなくても、大量生産できないものであることは連合も察知しうるはず。攻撃部隊については、もとより、生還を想定しない作戦を選択する可能性も排除できません」

    ここでアスランを正面からしっかり見る。今度は顎に手を当てて思案顔のアスランにストライクボールを撃ちこむ。

    アグネス「実際そう言う輩を私達はユニウス・セブンで見ました」
    アスラン「…!!」

    あ、アスランの顔がみるみる曇り出す。やばいわ。ちょっと地雷、トラウマを刺激し過ぎちゃった…

    アグネス「アスラン先輩、すみません...、言葉が過ぎ...」
    アスラン「確かに君の言う通りだ」
    アグネス「へ…?」

    アスラン「月から核の脅威を除かないことには…。ブルーコスモスだけじゃない。ユニウスセブン落下事件被害者遺族の兵士もきっと月面拠点にはいるはず。彼らの憎しみの矛先が、プラントに直接向くことは、十分あり得ることだ。…。現に開戦時に一度は起こった」

    アスランの言葉に深く頷くと、メイリンにもアイコンタクト。メイリンも会話に加わる。

    メイリン「月面を抑えないとプラントの自衛は難しいかも知れませんね。月面制圧後、民間拠点に関しては査察や臨検といった方法を選択すればいいわけですし」

    アグネス「付言するなら、このミネルバも元々、月軌道艦隊の所属艦です。クルーの中には予定と大きく異なる任務に戸惑い、モチベーションを低下している者も。ガルナハンが片付いたら、合流に向かうべきかと」

    アスラン「分かった…。俺から艦長にもお話する。フェイス特権で2人で議長に…」

    アスランに少し待ってのジェスチャー。無礼かな。まあ、ここは大事なところだわ。無礼でも決める。

  • 113二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 00:02:50

    アグネス「フェイス、特務隊特権で報告・上申するべきなのはプラント最高評議会と国防委員会です。まず、正規ルートで最高評議会事務局局長と軍本部並びに国防委員長に具申するべきでは。議長はその後に」

    アスラン「ああ。そう言えば…」
    『議長から直接フェイスに任命された』という印象に流されているアスランと...できれば艦長を考えをこれを機に修正させる。

    私は議長を全く信用していない。こんな提案をするのは、議長でも流石に、議会事務方、参謀将校、国防委員長達全員まで手を回し、もみ消すことは出来ないと踏んでのことだ。

    アグネス「(あの男は不気味よ。なにを考えているか分からない)」

    しかし、もう一押し。アスランに『あとで』と棚上げされたらこの会話の意味がない。

    アグネス「報告するのならアークエンジェルのことも」
    アスラン「…?」

    ちょっと、貴方が一番気にするべきなのは、議長じゃなくてアスハ代表でしょ。さあ思い出して、流されず。

    アグネス「以前、お伝えしたように現オーブ政権-セイラン派がいう『カガリ・ユラ・アスハ代表首長拉致事件』の実態は、中立路線を堅持したいアスハ代表とアスハ派オーブ軍とでもいうべきアークエンジェルが実行した政治亡命と推定されます。
    現在、アークエンジェル内にはアスハ代表を長に事実上の亡命政府が存在し、オーブの政権奪取の機会をうかがっていると考えられます。オーブ国内で内戦を勃発させないためか、対外的に声明をこそ出していませんが…」

    さっきまで、ザフト軍人していたアスランの顔色が明らかに変わる。みるみると。ほら、この人これじゃあね。

  • 114二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 00:10:06

    アグネス「アークエンジェルが体外的に動けないからこそ、プラント、ザフトのフェイスであるアスラン先輩の真骨頂を示すべきでは。プラントは、アスハ代表、アークエンジェルと水面下で連携関係を構築し、オーブ連合首長国の政権奪取を裏からでも支援するべきであると。
    これも、しっかり記録が残る形で上に伝えるべきです。言質を得なければ!
    勿論、プラント内の特定秘密なのでオーブに洩れないはずですし、セイラン政権は条約を締結した以上敵対勢力。もし、そうなったとしても遠慮はいりません」

    アスラン「まだ、可能性だと…」
    アグネス「まだ、可能性であることを付言した上で、しっかりお伝えするべきです。アスハ代表とオーブのため一肌脱ごうとプラントにいらしたのでは?」

    最悪のタイミングでね!何で来ちゃったかな…。いや、今言っても仕方ない!

    アスラン「分かった。一緒に上に上げる」
    アグネス「明日にも。基地の通信装置なら本国に届くはず」
    アスラン「ああ」
    アグネス「それと…。先輩は好まないかも知れませんが、搦手も。アスハ代表のためにも」
    アスラン「搦手?」

    アグネス「(そんな怪しむような顔しないでよ。メイリンまでなんか興味津々に見てくるし)」
    隣からの視線に気づかずにはいられないわ。

    アグネス「別に違法なことをお勧めしたいのでは在りません。ただ、『お役所仕事』は当てにならないのが世の常。
    伝手を頼るのは悪い事ではありません。月面の『自衛・防衛』の事とアークエンジェル・事実上のオーブ亡命政権の事。議会事務局と軍本部、国防委員長の他にルイーズ・ライトナ―最高評議会議員にもお伝えして見ればいかがでしょう」
    アスラン「ルイーズ…、ライトナ―評議員か」

  • 115二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 00:14:19

    メイリン「ルイーズ・ライトナ―氏はユニウス市選出の最高評議会議員で、前大戦時からの再選組ですね。元は穏健な政治スタンスでしたが…」

    アスランが目線を落とす。
    アスラン「ユニウス・セブンがあんなことになって…、母も…。俺の母、レノアと評議員は親友だったから、それで戦時中は強硬派に…」

    そう!ザラ派と歩調を合わせてくれたのよね。私達ザラ派からすれば、評議会に留まってくれた元同志よ。
    まあ、つまり―

    アグネス「ライトナ―最高評議会議員は、再戦組の古株で、経歴的に穏健派・強硬派双方に顔が効きます。そして―アスラン先輩とも面識があるのではないですか?」

    ママ友どころかママ親友の息子な訳だし。

    アグネス「コネを使う、というと良い気がしないかも知れませんが、プラント6000万人の命がかかっています。オーブを連合から切り離せるかどうかも。アスハ代表、アークエンジェルの運命も」

    さっさと決めて、パパッと。何かアスラン迷ってばかりね。テンポが悪い。
    それでも、やや逡巡した後、顔を上げ、アスランはしっかり告げる。

    アスラン「ああ。分かった。これから、艦長とお話して…。
    もし同意できなければ、俺個人の意思で、明日、本国にお伝えする」
    アグネス「明日の朝に、ですね?」

    アスランにアイコンタクト。グイグイ行くわよ。
    アスランが頷く。

    アスラン「ああ。明日の朝に」

  • 116二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 00:30:52

    最後の最後にもう一押し。

    アグネス「それと…。今後の戦争の展望について、最高評議会と軍本部がどの様な見解を持っているのか、フェイスとして―現場兵士と軍本部・最高評議会を繋ぐことが出来る立場として―質問して頂けないでしょうか?」

    アスランは小首をかしげる。
    アスラン「戦争方針...。展望とは?」

    な、なに言ってるの?この人は...。貴方、権限から言えば他国の将官級でしょう?
    将官が、何で戦争全体の方針や政治判断に無関心でいられるの?一般将校・士官じゃないのよ。貴方も艦長も。

    アグネス「これまでのミネルバを見れば一目瞭然ですが、戦争方針が迷走しています。私には積極的自衛権を唱えながらユーラシア西側の、特にデリケートな黒海、コーカサス、カスピ海に手を出すことは矛盾しているように思えてなりません。戦争指導が一貫していないのです。
    ある方面では積極的『自衛権』を理由に消極的対応をして現地ザフト軍を圧迫し、別の方面では『積極的』自衛権を主張して、ザフト軍を突出させる。戦争指導がちぐはぐなのです。
    ユーラシアで言えば、プラントは既にベルリンを始め旧EU圏に部隊を進駐させつつあります。名目はともかく、これが戦火の拡大以外何だと言うのです。せめて、ユーラシア連邦の解体ではなく旧EU圏分離までに事態を修めないと取り返しがつかなくなります。それに、スエズ基地を落とすなら落とすで、そこに集中するのが筋かと」

    アスラン「もっともだが…。少々政治的すぎるな。いや、俺はフェイスだから、質問自体は出来るのか?」

    首を捻るアスランにアドバイス。

  • 117二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 00:39:31

    アグネス「質問して、もし権限が無ければ、そのように回答されるだけでは。このままでは、ミネルバの士気は崩壊します。何のためにどこで戦うのか、説明できないなら、国は兵士に忠誠を求めるべきではありません。
    それに、アスラン先輩は戦火の拡大を食い止めたいと仰いますが、それもまた『政治的意思』ではありませんか?」

    ちょっと図星を疲れたよう顔をしたあと、何とも言えない困ったような笑みを浮かべる、アスランが...。

    アスラン「確かに…。しかし、君は思っていた以上に積極的だな」
    何て言ってくるものだから、反応に困るわ。

    アグネス「はい」
    食らいついて行かないと上にはいけないからね。尋ねるべきは尋ね、要求するべきは要求しないと。
    ダメならダメで次の手を考えれば良いわ。

    メイリン「アグネスさんは、いろいろ考えてます!」
    メイリンもありがとうね。そりゃ考えますとも。士官学校次席ですもの!

    ようやく納得してくれたらしいアスランから返事をもらう。
    アスラン「わかった。戦争方針と展望についても質問してみる。こっちは答えが返って来るかは分からないが…」

    アグネス「ありがとうございます」
    席を立って敬礼 メイリンも付き合って敬礼してくれる。ノリが良いわね。

    アスラン「ああ...」
    アスランも返礼。士官室を出るアスランをメイリンと見送る。

    アスランが居なくなったところで、メイリンに謝る。
    アグネス「ごめん。メイリン。無理につき合わせちゃって」
    メイリン「いえ。知らないこといっぱい聞けて満足です!」
    アグネス「(えっ…。そう?まあ、それならいいわ)」

    3杯目のコーヒー(デカフェ)を入れて二人で飲む。落ち着くわ。上官(?)がいない空間って良いわね。さて、あとは帰って寝るだけね。長い一日だった。

  • 118二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 06:36:07

    この後アークエンジェルが武力介入してくるのよな…
    時系列的にはどれくらい先だっけか

  • 119二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 06:51:14

    このスエズ攻略戦が終わって、ディオキア基地で休息をとってからハイネ加入。
    そこからダーダネルス海峡攻防戦で、という流れだから割と近いといえば近い。

  • 120二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 12:57:36

    AAは対処法自体は簡単で、①こっちから撃た(敵対し)ない②民間人に被害出さない③必要以上に敵を撃たないだからな。介入してきたら敵押し付けて離脱がベストなんだが、
    ラクス暗殺未遂最有力者の肝入部隊∶1アウト
    よりにもよって海上でタンホイザー(汚染兵器)ブッパ∶2アウト
    拠点防衛や敵の殲滅が戦術目標じゃなきゃ大丈夫かね?

  • 121二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 13:17:15

    メイリン楽しそうだな

  • 122二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 19:26:12

    視野が狭まりまくってザフトのアスランやってるアスランをここまで動かせるなんて
    ここのアグネス本当に有能だ

  • 123二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 20:34:31

    タイマーと共に目を覚ます。
    久しぶりに良く寝た気がする。最近は睡眠というより、機能停止といった感覚だった。
    横目にメイリンの起床を確認。

    アグネス「おはよう。メイリン」
    メイリン「おはようございます。アグネスさん」

    パタパタと二人で身支度。メイリンはブリッジに。そう言えば、ブリッジメンバー、特に操艦担当のマリクさんの訓練は進んでいるだろうか?いろいろ有り過ぎて、メイリンに聞き忘れていた。

    久しぶりに、ショーンとデイル、それにシンと朝食。レイは私を見かけると避けやがったわ!この前ので懲りたのね。ありがたい。仕事以外の用事はあいつには無いわ。
    シンは、遠い席に座るレイに心配そうな視線を送るが、喧嘩になってもいけないと、今日は私達と同じテーブルに。

    ともあれ、朝食を食べつつ、3人と情報共有。中身は、昨日、アスランと話したことのうち話しても良い範囲。私が、アスランに、月面戦線の重視とアークエンジェルとの提携を模索するべきとフェイス権限で最高評議会と国防委員会に上申するよう説得したことを今いるメンバーに伝える。

    シン「へえ。それで今朝アスランさん、見かけないんだ」
    結局、シンは『さん』呼びで統一するらしい。まあ、良いんじゃない?斜め上下の関係って難しいしね。

    アグネス「シンは私がアスラン先輩に頼んだ内容についてどう思う?」

    さりげなく、目の前に座るシンの表情を伺う。上層部の覚え目鯛であろう、この男の反応が知りたい。

    シン「いいんじゃないか。プラントがまた、核攻撃に晒されるのは大問題だ。何時までもルナマリア達だけに頼ってないで、俺達も母艦隊に合流しないと…。オーブも戦わずに連合から切り離せるなら、その方が良い…」

    良かった。天下のインパルスパイロット様もそこは同意してくれるのね。
    オーブについても、若干言い淀みながらも、自分の感情を言えて良し!

    ショーン「それで朝、艦長と二人で基地に向かっていたんだな」
    デイル「良かった。アスランさんは艦長も説得できたわけだ」

  • 124二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 20:43:01

    アグネス「(艦長の説得は正直ダメ元だと思っていたわ。あの人、そう言うの上手い印象がない)」
    議長の愛人とは言え、良く新鋭艦の艦長になれたものといつも思う。議長の彼女への思いがそれほど重い物だったのか。

    ついでに、政権批判の色を抑えながらも、現状のミネルバを取り巻く不安要素について4人で共有を図る。
    昨日、同じくアスランに話した戦争方針の疑問について、ニュアンスを弱めながら3人にも話しておく。

    シン「確かに、スエズ攻略にガルナハンは…。あんまりいらないな」
    デイル「旧EU圏を重視するなら、バルト三国かワルシャワに向かうべきだが。ああ、ワルシャワにはもう進駐しているんだっけか?」
    ショーン「旧EU圏にズカズカ進駐する度胸があるなら、スエズに大降下作戦、踏み切って欲しいですよね。ミネルバは地上部隊としてジブラルタルからの部隊と合流。結果的にそれが一番流血が少なく済むんじゃないですか?」

    3人の話が盛り上がる。やっぱり皆、現状に思うところがあるみたいだわ。それは良いけれど…。
    アグネス「(むむ。やばいわ。話を振ったのは私だけど、これで目の前のガルナハン・ローエングリンゲート攻略作戦のモチベーションが下がるのは良くない)」
    正直、カスピ海の辺、コーカサスの南端に月軌道艦隊のミネルバが攻め入ること自体、意味不明であると思い出させてしまった。

    話をうまく切り上げなくては…。

    メイリン「レイ・ザ・バレル、アグネス・ギーベンラート。副長が及びです。至急、副長室に出頭せよ」

    艦内放送が私達の会話を叩き切る。正直、助かったわ。朝食も食べきってあるし。

    ガバッと立ち上がる。3人が私を見上げるが、特にやらかした心当たりはない。何か任務を仰せつかるのだろう。
    アグネス「私とレイは何か任務かもね。貴方たちは訓練頑張って。ともかく、ガルナハンを落としてから、考えましょう」

    シン「ああ」
    ショーン「そうだな。そこからだ」
    デイル「おう!」

  • 125二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 20:50:57

    小走りで副長室へ。しかし、一体何だろう?こっちも訓練で忙しいのに。

    レイ「お…」
    アグネス「あ…」

    レイと合流。朝、向こうから消えてくれて、せいせいしていたのに。

    副長室の扉の前に2人で並ぶ。はい。仕事モードに移行。お互いにね。
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、レイ・ザ・バレル、共に参りました。副長、入ってもよろしいでしょうか?」
    アーサー「どうぞ」
    アグネス、レイ「失礼します」
    入室して二人で敬礼。 副長の返礼を受け、直る。

    副長「朝から済まないが、バビに、自分とマハムール基地の参謀を乗せて、ガルナハン手前の町まで護送してくれ。自分はアグネスの、基地参謀はレイの機体に」

    おっ!また、モビルスーツ飛行時間が伸びるわね。
    マハムール基地の参謀と言うとラドル司令官と一緒にいる黒服の内の一人ね。遠目で見てもいかにもモブって感じの連中だったわ。あいつ等の出世はあそこまでで多分打ち止めね。
    アグネス「(ああ、でもこの作戦が成功したら、彼らのの手柄にもなるのか。まあ、良いわ。今回だけは…)」
    私の出世のお零れにあずからせてあげるわ。それはそうと―

    レイが命令の意味を察して反応する。
    レイ「かまいませんが…。このタイミングということは」
    アグネス「ガルナハン・レジスタンスとの最終調整ですね」
    私もそれぐらいわかるわよ。

    副長は少し難しそうな顔をして頷く。
    アーサー「そうだ。自分と基地参謀が軍使を。正使が自分、副使が基地参謀だ。アグネスは護衛隊長、レイが書記を」
    アグネス「了解」
    レイ「了解」
    アグネス「(なんかレジスタンスがごねてるの?めんどくさ。正直、もうそいつら要らないわ)」

  • 126二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 23:38:29

    パイロットスーツに着替え艦内エレベーターに。
    同じくパイロットスーツ姿のレイと―副長、基地参謀と合流する。

    アグネス「(副長のパイロットスーツ姿は始めて見るわね)」
    敬礼 返礼を受け直りモビルスーツデッキへ。

    黒服ということは我らがミネルバ副長、アーサー・トラインは、地味にかなりのエリートコースを歩んでいる。
    前大戦、この人もモビルスーツを駆っていたのだろうか?あるいは艦隊士官としてキャリアをスタートさせたのだろうか。

    明け方に整備兵に指示は出ていたのだろう。既にレイのバビも迷彩が施されている。おそらくコックピットには臨時補助席が設けてあるはず。この前みたいに。

    整備兵の皆、一人一人に『ありがとう』のアイコンタクト。皆、喜んでくれている。ヴィーノは特にだが、ヨウランもちょっとうれしそうだ。まあ、礼を示されて嫌な人間はそうはいないだろう。せいぜい愛嬌を振りまいてあげましょう。これもエリートの務めよ。

    機体搭乗前に護衛隊長として私には銃が支給される。レイは書記だが、渡されているのはカメラと書面か。

    アーサー「準備できたか?」
    アグネス「はい」
    レイ「はい」
    基地参謀も副長に頷く。

    なるほど、副長の上官グラディス艦長は白服・フェイスで攻略作戦の上級指揮官。基地参謀の上官はラドル司令官で黒服。それが今回の軍使の正、副に反映されているのね。

    アーサー「良し。これから、アグネスとレイには我々を乗せて、汎ムスリム会議旧イラン領アルダビール州ナミーン市に向かってもらう。レジスタンスとはそこで会談を」
    アグネス「了解」
    レイ「了解」
    アグネス「(ローエングリンゲートを抜けて入国したの?まあ、少人数なら可能か)」

  • 127二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 23:52:57

    今回は、私も副長も制服を持っていく。こういう場には形式も要求されるだろうから。当然、レイや基地参謀も同じ。

    向こうに着替えスペースが無かったら…。まあ、その場で着替えるだけの事。こういう時、女性兵は不便だと女性ながら思う。私は下種が近寄っても吹き飛ばせるから良いけど。
    着替えだけに限らず、何かと不便が多く、またそのように扱われる。

    アグネス「(アスランが取り込み中だから、やむなく私に指名が来たのね。私はそんなこと気にしないからバンバン指名して欲しいし、手柄を上げたい。女だからとその機会を奪われたくない。『戦争は女の顔をしていない』筈はない。古代バイキングにも殷王朝の軍勢にも女将軍は居たのだから!)」

    バビのコックピットに上がり、副長の手を取り中に誘導する。
    アーサー「よろしく頼むよ」
    アグネス「はい!」
    気さくに声をかけてくれる副長に元気よく返事を返す。こうやって好感度を稼いでいかないとね。

    メイリン「右舷ハッチ開放。バビ、アグネス機、発進どうぞ」
    旧イラン領縦断2回目ね。今度も片道880キロ以上。親プラント国領空内だけど油断大敵!
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、バビ、出ます!」

    メイリン「続いて、バビ、レイ機、発進どうぞ」
    レイ「レイ・ザ・バレル。バビ、発進する!」

    操縦中、副長に話を振ってみる。ヘルメット、パイロットスーツ姿の男性を脇に乗せるとやっぱり存在感があるわ。荷物が少ないのは幸ね。
    アグネス「質問を許可して頂けますか?」
    アーサー「いいぞ」
    アグネス「ありがとうございます。レジスタンスとの交渉に何か問題が?」

    もう、バビはザグロス山脈の上を飛行している聞くなら早めに聞いておかないと。

  • 128二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 00:08:34

    アーサー「ガルナハン開放後の自治権交渉や軍事保障の問題はラドル司令官たちが一旦、引き受けた後、本国評議会に。そこは先方も文句はないそうだ。市街地解放後の治安維持の協力も快諾してくれた」
    アグネス「では、今日は副長と基地参謀が艦長とラドル司令官の代理で赴き、調印を?」

    副長は一度大きく深呼吸をした後告げる。

    アーサー「町の開放後の連合捕虜の保護、引き渡しは確約しかねると。これまでの連合の強引な締め付けに相当鬱憤が貯まっているようだ」
    アグネス「それは、拒否するしかありませんね」
    アーサー「…」

    副長の機嫌を損ねたくはないけれど...。
    いや、ここはむしろ率直さが評価されるタイミングね。単なるおべっか使いではなく『きちんと諫言・アドバイスができる有能な部下』であることをアピールするべき。

    アグネス「この軍事行動の主体が事実上ザフト軍であることはどの勢力から見ても明らかです。
    ザフト軍が起こした軍事行動に起因し、連合捕虜が虐殺されれば、その犯人がザフト兵でも地元住民でも相手国にとっては関係ありません。殺された連合捕虜と同数かそれ以上のザフト兵捕虜が報復の危険に晒されます。
    捕虜交換で仲間を開放することもできません。決して、レジスタンス相手には言えませんが、連合捕虜1人の命は現地住民100人の命より重いのです」

    副長はやや意外そうな顔をして私の横顔を見つめるが、納得したように一つ頷く。

    アーサー「そうだね。100人かはともかく、その通りだ。もし、捕虜になった連合捕虜のうち特定の個人が犯罪行為を行っていて、それが立証されたなら、軍事法廷で有罪を宣告すればいい。ただ、彼らは自分達で裁判がしたいらしい」

    人民裁判か、ただのリンチね。ザフトが加担したと思われたら迷惑だわ。

    アグネス「認められません」
    アーサー「そうだな。その通りだ」

  • 129二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 00:16:44

    気まずい沈黙が流れそうになるが、流石に副長たちも無策ではあるまい。

    アグネス「何か良案が?」
    アーサー「勿論。艦長とラドル司令官からいくつか譲歩案を持ってきた」
    アグネス「良かった」
    アーサー「うん?」
    アグネス「流石にワルシャワ蜂起のポーランド国内軍やテト攻勢における南ベトナム解放民族戦線のような扱いをすると今後に差し障りますから。ここは良くとも、他の方面で」
    アーサー「確かに」

    意外ね。もっと、リアクションがあるかと思った。
    この副長はもっとお調子者だと思っていたけど。意外と冷静というか...。

    アグネス「(とは言え、相手方の対応次第。副長たちもそれは分かっていることでしょう。現地民慰撫のためにも『ヒーローごっこ』が出来れば、それに越したことはないんだけど)」

    『悪徳代官に虐げられる可哀想な農民を懲らしめに行くヒーロー』が私達の役目というか任務の一部ではある。
    なら、悪徳代官に下されるのは『お沙汰』。農民自身が磔・獄門にするのはマナー違反。
    そんな勝手は許さない。私のキャリアのためにもプラントの国益のためにも。

    正直、ローエングリンゲートさえ潰せればガルナハン開放はおまけだ。ザフトはスエズに続く『道』をコントロール下に収めたいんだ。途中の『町』が焼け野原になろうと知ったことではないが...、国際世論に関わるから、多少はね。

  • 130二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 08:54:11

    アーサーも軍人らしくなってていいね

  • 131二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 10:14:17

    「青き清浄なる世界のために!」
    「ナチュラルの捕虜なんかいるかよ!」

    SEEDを象徴するセリフだよな

  • 132二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 21:21:57

    アグネス視野が広いから本当に一パイロットではもったいないな
    エリートを自負するだけある

  • 133二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 22:10:32

    アルダビール州ナミーン市に到着。モビルスーツは現地の警察署に一旦預ける。盗む奴なんていないだろうけど、念のためね。ロックをかけておくだけでは不安だし。

    アグネス「(汎ムスリム会議が親プラント国でつくづく良かったわ。中立(大噓)だものね)」

    中立国は本来、国内の土地を軍事提供したり、軍隊の移動を許可したり等、交戦国に便宜を図ってはならない。
    ここまで来たら、汎ムスリム会議もこちら側で参戦しちゃってもいいくらいだけど、『中立国』のままでいてくれた方がプラントとしても便利なことが多い。そもそも足を引っ張りそうだし。

    副長、基地参謀、レイと共に警察署長たちに敬礼する。向こうからの返礼を受け、敷地外へ。
    着替えは警察署の中で済ませたわ。アミーン市内のホテルに移動よ、署長さんの車をご厚意でお借りしたわ!

    ホテルに到着。ぼろくて埃っぽい。ナチュラルにお似合いね。こんな宿、私の居住区なら営業許可下りないわ。

    入室すると若い男性とガラの悪そうな少女が2人待っていた。こいつ等が向こうの軍使?!やる気がないなら帰れ!!

    ともあれ、両者一旦整列。互いに身分と名前を名乗る。モブ顔のレジスタンスはモブっぽい名前ね。ガラの悪そうな少女はコニール・アルメタ、レジスタンスの連絡員で14歳だそうだわ。

    アグネス「(私と3歳、シンと2歳差ね。その割には小柄。女性の14歳なら、ほぼ体格の成長は止まってしまうだろうに)」
    何と無く、ガルナハン市民の苦境が伝わってくるが、結局、それは私達に関わりのないこと。戦後にガルナハンを領土に組み込む予定はプラントにないからね。

    向かい合わせのソファーに腰かけ話は進んで行く。私は護衛隊長だから、起立したままだけど。
    会談は形式的なものから始まり、これまでの合意内容の確認、そして―

    レジスタンス男「連合捕虜を保護しろ!ガルナハン解放直後の混乱で降伏した連中がリンチ・虐殺されるのを防げ。そいつ等をザフト側に引き渡せ、軍法会議はこちらがやる…。虫が良すぎないか。流石に!」

    レジスタンスの男はすごんで見せ、隣のコニールは恨みがましい視線を向けてくる。超ウザいわ。

  • 134二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 22:18:02

    アーサー「こちらにも立場というものがある。前大戦では両陣営が互いに捕虜を虐殺し合ったことが戦争のエスカレーションのきっかけに…」
    コニール「こっちの知った事じゃないだろう!先の戦争だって、あんた等が勝手にやったことだ!こっちは本当にいい迷惑…」
    レジスタンス男「コニール。言い過ぎだ」

    それまで、置物になっていた基地参謀がここで口を開く。

    基地参謀「レジスタンス諸君の怒りはこちらも重々承知だが、連合軍の恨みを不用意に買って困るのはそちらではないかね。ガルナハン・ローエングリンゲート及び市街地から連合軍を退けたところで、カスピ海の向こう側にはユーラシア連邦本土が広がっている。当然、大量の予備兵力も」

    基地参謀の言葉を副長が繋げる。

    アーサー「戦死と戦闘後の虐殺は意味合いが全く異なる。連合側が復讐心から、軍事的合理性を超えて報復行為に出てきた場合、そちらは対処できるのか?」

    コニール「その時はあんた達が…」
    レジスタンス男「コニール!」

    アグネス「(図星ね。解放後のガルナハンの安全保障はプラント頼みになる。汎ムスリム会議はこいつ等を引き受けたくないでしょうし。結局、強く言えないのよ。プラントに対して、あんた等は)」

    アーサー「こちらとしても、大変な思いをして来た地域住民に可能な限りのことをしたいと思っている。
    ザフトはガルナハン開放後、戦犯訴追に協力し、連合の暴虐によって被害にあった住民に経済的支援も行う。希望者には裁判を傍聴できるよう配慮もする」

    レジスタンス男「経済的な援助…」

    やっぱりね。レジスタンスというか、住民にとって、死者の流した血と涙よりも、明日をどう生生き延びるか一番大事だものね。
    アグネス「(こっちで軍法会議やる以上、一応のけじめもつけれるわけだし)」

  • 135二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 23:39:35

    コニール「金かよ…。やっぱり…」
    レジスタンス男「…」
    コニールの呟きに一瞬、男は躊躇いとも苛立ちともとれる表情を浮かべたものの、結局こちらの話に喰いつく。

    レジスタンス男「援助の額は?物資は?何時届く?どう配分する?」
    アーサー「ガルナハン開放後すぐにでも。物資と資金はその日の内からマハムール基地を通して。配分の窓口はあなた達レジスタンスに一任しようと思う。ただし―」

    副長は、若いレジスタンスの軍使に強い視線を送った後に言葉を続ける。

    アーサー「こちらの『良きパートナー』である限りにおいて。分かるな」
    コニール「…」
    レジスタンス男「分かった。リーダーの代理として同意する。ガルナハン開放後、レジスタンスは市の治安回復・維持に協力する。投降を図る連合兵、投降した後の連合兵に人道的な対応をして、彼らをザフト軍に引き渡す」
    アーサー「ザフトはガルナハン市の安全を保障し、連合からの報復攻撃、再占領の試みを退ける。戦犯訴追に協力し、裁判の傍聴機会を住民に与え、市の復興に協力し、市及び市民に経済的援助を行う。その際のパートナーは貴方たちレジスタンスに」

    基地参謀が、より細かく様式の整った同意書をテーブルに広げる。
    副長がサイン、ペンがレジスタンスの代表に。コニールが何事か言いたそうにしているが、彼女に発言権はない。
    男がサインし、会談の山場は終了。もう一通の同意書にもサインし、それぞれが本部に持ち帰ることになる。

    レイはカメラを片付ける。あとは別れの挨拶をして―

    コニール「待った。あんた達、私をそのミネルバっていう艦に連れて行って!」
    突然コニールが私達に声をかける。

    アグネス「?」
    アーサー「え~!」
    ああ、副長の『え~』が出ちゃった…。まあ、私も正直困惑。この少女は何を…。

  • 136二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 23:44:56

    レジスタンス男「俺からも頼む。少しは、あんた達の力になれるはずだ。攻撃が失敗したら…、俺たちの命もないからな」
    コニール「こっちにはとっておきの情報があるんだ!」

    視線をレイと基地参謀に向けると、彼らも成り行きに驚いている。どうやら完全に想定外らしい。
    アグネス「(情報ね。正直、要らないわ。どうせ、あの坑道の事でしょう。もうこっちも把握済みよ。恩着せがましい)」

    とは言え、レジスタンスから、『人質は取って置く』と考えれば、この申し出、損は無いわね。
    この小娘一人にどこまで価値があるかは知らないけど、案外地元でジャンヌ・ダルク的ポジションかも知れない。

    困り顔の副長に助言。
    アグネス「お連れしましょう。何とかバビに…。味方領空内で戦闘発生の可能性はほぼ無いですし。パイロットスーツは予備の物を」
    アーサー「しかし、いや、何とか乗せれるとしても…」

    やはり、3人乗りはきついか…。何とか押し込んで帰り880キロメートル。

    この少女の持ってくる情報にさほど価値が有るとは思っていない。
    でも、最近、艦全体の空気やモチベーションの弛緩を感じ始めている。ユニウスセブン破壊時の様な良い意味で緊迫した空気は見る影もない。意味不明な任務と日々の訓練の疲れが神経を摩耗させている。

    ここらで『可哀想な被害者少女』名案かもしれない。
    皆が義憤に駆られてくれるなら、それはそれで結構なことだ。
    この目付きの悪いガキはちゃんと悲劇のヒロイン役をやれるだろうか。怪しいところではある。そこのところ、ちゃんと言い聞かせた方が良いのか、いや、変に演技させてもばれるか?

  • 137二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 23:50:43

    アグネス「副長に窮屈な思いをさせ恐縮ですが…」
    アーサー「いや、うん。アグネスが飛べるというなら、自分に異存はない。信頼している」
    『信頼している』ゲット!100000アグネスポイント!

    コニールに声をかける。
    アグネス「少し窮屈な旅路になるわ。気持ち悪くなったら、すぐに言って。降りられる街を探すわ」

    笑顔で優しく。私達は正義の味方、プラント・ザフト軍です。

    コニール「旅行じゃあるまいし。私もレジスタンスだよ。そんな柔じゃない」

    このガキ、Gを思いっきりかけてやろうかしら。自分がナチュラルの小娘にすぎない事を思い出させてやるわ!
    待て、落ち着け。副長も乗せるのよ。我慢、我慢。最上級キャビンアテンダント、もしくは豪華客船の船長になったつもりで。

    アグネス「では、ミス・コニール。同行を」
    コニール「分かった」

    連れて行ってシンとトラブル起こしたらどうしよう。しくじったかな。

    アーサー「幸運を」
    レジスタンス男「お互いに」

    副長とレジスタンス代表がお別れの握手をして、会談は正式に終了した。

    警察署にタクシーで戻り、バビを見上げる。
    複座式でないモビルスーツで3人も乗せるのは初めて...。やっぱり拒否すれば良かったかも...。

  • 138二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 00:48:17

    警察署長にナチュラルにタクシー扱いしていた車をお返しする。
    何かお返しするべきだけど、賄賂扱いになっても困る。ただ、連合軍を打ち払えれば、国境近いこのエリアも多少今より安全になる。それでよしとしてもらいましょうか。

    中で着替えて、地元警察署員に敬礼し、バビでマハムール基地に向け出発。
    程なくして、コニールがコックピット中で吐きやがったわ!言わんこっちゃない!私は気を付けて操縦していたわよ!

    レイのバビに通信で連絡。

    アグネス「レイ、ミス・コニールが嘔吐した」
    レイ「引き返すか...」

    コニール「…」
    コニールが首を振る。頑としてミネルバ行きを譲らない。
    一緒に乗っている副長は完全に困り顔だ。というか、彼女に貸した予備ヘルメットゲロ塗れに…。

    コックピットが異臭に満ちる。貰いゲロしそう。
    ここでこの子を放り出せれば、どれだけ楽か...。

    アグネス「引き返すわけにもいかないから…。もう、こうなったら全速でミネルバに向かうしかないわ。勿論、彼女をGで潰さぬ程度に」
    レイ「了解。時速300ぐらいは行けるか」

    コニールに声をかける。これで死んだら、私って戦犯?いや、要件には当てはまらない。でも、懲戒処分に―ギリギリ、セーフかアウトか。乗り物酔いで死ぬことは有るのか?ともかく語り掛ける!

    アグネス「ミス・コニール行ける?300キロ?」
    コニール「う…、ゲェ」
    副長が差し出してくれたビニール袋にゲロゲロ吐いている。
    こんなことなら―いや、大事なのは今よ!

  • 139二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 00:54:09

    アグネス「ミス・コニール。貴女を子ども扱いしたこと、謝るわ。初めてモビルスーツに乗って、初めて空を飛んで。まったく動じない!大したものだわ」
    コニール「…、ゲェ…、う…うん」
    頼むわよ。逆恨みしないでよ…。無理についてきたのはそっちだし、意地悪な操縦をしたわけでもない。
    仕方ないでしょう。

    アグネス「今日まであなたがどんな人生を歩み、あの地の人々にどんな献身をしたのか私は知らない。ガルナハンがどんな街で、どんな人達が、今何を思い生きているか。ミネルバの皆は知らない。伝えられ、懸け橋になれるのは貴女だけ、頑張れる?」
    コニール「…」

    白目で頷いている…。これは肯定よね。副長に視線を送ると困ったように頷く。

    アグネス「良し。偉い」
    軽く、本当に軽く、彼女の肩にボディタッチ。吐くんじゃないわよ。

    コニール「...」
    アグネス「レイ、300キロで行くわよ」
    レイ「了解。大変だな」

    ここで、ポイントを稼ぐ!副長聞いて!

    アグネス「大変なのはミス・コニール。でも、一緒に戦ってくれているわ」
    レイ「…。そうだな」
    アーサー「うん」

    バビ2機でトロトロ時速300キロ。イラン高原を超え、スシアナ平原を超え、何とかミネルバへ。
    結局、3時間近くかかった。途中で町に下りて酔い止め薬と経口補水液を買って飲ませ、何とかここまで来た。
    機体から降ろしたコニールを医療班に引き渡す。コックピットは酷い有様。

  • 140二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 00:59:03

    シンがひょっこり顔を出す。休憩時間かな。
    シン「アグネス…。大変だったな。勿論、あの子もだけど」
    アグネス「ミス・コニールね。まあ、確かに。遠足の先生ってこんな感じかしら」

    副長もバビから下りて体をグゥッと伸ばしてストレッチしている。うむ。何とか3人乗れるものね。救助活動時の参考になったと考えよう。

    アグネス「とは言え、心配してくれてありがとう。ガルナハン・ローエングリンゲート開放戦、ミス・コニールと彼女の所属するレジスタンスと正式に共同戦線を張る。彼女に相応の礼儀で接しなさいよ」
    シン「うん。小さい子だと思ったけど…。うん。分かった」
    アグネス「ミス・コニールって呼びかけてね。最初は」
    シン「分かった」
    アグネス「なら良いわ。訓練進んでいる?」
    シン「坑道突破最短記録がまた、更新できた!」
    アグネス「良し!」

    シンと別れてシャワールームに。介抱している途中でコニールの吐瀉物がパイロットスーツにかかった...。
    洗い流さないといけない。それから、着替えて、シャワーを改めて浴びて、昼食とってないから―。
    落ち着け、マインドフルネス、マインドフルネス。その後、食べればいい。それだけだわ。

  • 141二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 03:33:44

    >>135

    割と有能な面ばかり見てきて若干ちょっと寂しみ感じてたけど、やっぱ副長の「え~!」は実家のような安心感があるな

  • 142二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:41:57

    着替えを終え、遅めの昼食を副長と私、レイ、基地参謀の軍使組4人で食べる。レイも流石に副長、基地参謀の前では大人しい。

    基地参謀「ずいぶん遅くなったが…。ユニウスセブンの件、改めて私からもお礼を。どうもありがとう。君たちの働きが無ければ親プラント国である汎ムスリム会議の被害はより大きなものとなっていただろうし、もしかしたらマハムール基地だって地上から消えていたかもしれない」

    頭を下げようとする基地参謀を副長、レイと共に制する。

    アーサー「いいえ。軍人として、何より人間として当然のことをしたまでです。もし、それでもとおっしゃるなら、危険を顧みず任務を遂行してくれたパイロット達、ジュール隊と本艦ミネルバパイロット、シン、アグネス、レイ、デイル、それから外国人の身分であるにも関わらず参加してくれたアスランに」

    基地参謀「ほう…。君たち二人と、デイル君、それにアスラン・ザラが…」

    アーサー「はい。特にアスランとシン、アグネスは最後まで踏みとどまって破砕作業を続行、首謀者を含むテロリストを撃破しています。3人は大気圏を突破して生還、今日もまた任務に精勤しています」

    結局、破砕作業は不発に終わってしまったんだけどね。まあ、今さら言っても仕方ない。
    基地参謀は私とレイ、特に私の方をしっかり見つめ、再度、お礼を口にする。

    基地参謀「アグネス・ギーベンラート、レイ・ザ・バレル。改めて感謝を。本当にありがとう。本官で君たちの力になれることがあれば、何でも言ってくれ」

    どうやら、社交辞令ではないらしい。こういったことも起こるから、他部署との任務も積極的にこなさないとね。

    アグネス「ありがとうございます。副長のおっしゃるように、軍人として、人として、なすべきことを成したのだと思っています」
    レイ「ありがとうございます。副長、アグネスの言う通りです」

  • 143二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 21:48:35

    途中からずっと思ってたけど、このアグネスはアスランと一緒に脱走しそうだし普通にレイに撃ち返しそう。
    理由:ルナの代わりにアスラン尾行して、ラクス暗殺の事聞く上にエンジェルダウンやって、ミーア襲来時にアスランと話してるorアスラン襲来時にメイリンと話してる。

  • 144二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 21:51:37

    議長への疑念マシマシだしカガリにわりと同情的だし確かに離反もあり得るのか…?
    その場合も出世は諦めないだろうからザフトではなく議長派閥と敵対してザラ派復興を目指すのかな

  • 145二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 22:02:49

    基地参謀と敬礼ではなく握手で別れる。う~ん。この縁を何かにつなげたいと思うが、今は思いつかない。

    訓練再開まで、身体を落ち着けようとレクリエーションルームに。アスランが一人で飲み物飲んでる…。誰かと話せばいいのに。孤立したくてしてるわけじゃないでしょ、貴方!

    アグネス「アスラン先輩!」
    敬礼しようとしたらアスランに止められた。逆にそう言うの困るわ。
    アスラン「今、いいか?」
    アグネス「はい」

    アスランに誘われるというか、頼まれる形で一緒に士官室に。本国との通信について知らせてくれるのか。
    取り合えず、二人分のコーヒーを入れてお出しする。互いに一口飲んだところで、アスランが切り出す。

    アスラン「任務ご苦労。軍使の護衛だったな」
    アグネス「はい」
    アスラン「協定は?」
    アグネス「無事に締結出来ました。女性レジスタンスが情報提供を申し出てくれたため、現在ミネルバの医務室に」
    アスラン「医務室?負傷しているのか?」
    アグネス「いえ。乗り物酔いです。バビに3人で搭乗してきたので…。予定外の事でしたから」

    一人用のコックピットに3人で乗り込んだことに何か言いたそうなアスラン。しかし、止むを得ない事態であったことを悟り、それ以上は言わないでくれる。

    私の任務はこの際どうでも良い。アスランの結果が知りたい。
    目線で『先輩のお話を聞かせて下さい』のサインで、続きを促す。

  • 146二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 22:09:15

    アスラン「昨日君と話したこと。つまり、ザフト軍は、月面戦線を重視し、ミネルバも早期に母艦隊に合流するべきという旨、そして、アスハ代表・アークエンジェルは現在事実上の亡命政権を樹立している可能性が高く、彼らとプラントは連携を図るべきという考え。この2点を俺と艦長、つまりフェイス2名で、プラント本国の最高評議会と国防委員会、国防委員長にお伝えした」

    よし『上申した記録』を公文書で残すことは大事だ。でも、それだけでは十分ではない。
    この問題は上層部のアクションが不可欠だ。

    アスランの表情を観察。真顔がさらに真顔になっている。ここは真顔になるべきタイミングだけど、はたしてどっちの結果なのだろう。

    アスラン「君のアドバイス通り、ライトナ―最高評議会議員にもご連絡をした。ご迷惑をかけたくなかったが…。快く応じてくれた。やはりプラントに対する核の脅威、そしてオーブの動向を評議員も関心を持たれているようだ」

    ちゃんとコネも使えて偉い!
    アグネス「(ライトナ―評議員は、上申内容と同じくらい、親友の忘れ形見である貴方のことも心配していると思うけど。おそらくね)」

    まあ、今指摘することではないわね。今知りたいことは―

    アグネス「結果は?」
    アスラン「最高評議会と国防委員会の議題に取り上げると確約してくれた。早ければ今日にも。アスハ代表とアークエンジェルはスカンディナビア王国内にいる可能性が高いから、汎ムスリム会議国内において、スカンディナビア王国大使館を通じて連絡する方法を考えているとのこと」
    アグネス「(good!)」

    アグネス「汎ムスリム会議は事実上プラント陣営ですが、表向き中立。つまり、スカンディナビア王国と外交関係を断絶していません。
    ですから、『プラント⇒(汎ムスリム会議外交官の仲立ち)⇒スカンディナビア王国・駐汎イスラム会議大使館⇒スカンディナビア王国本国⇒アークエンジェル』のルートが使える、ということですね」

  • 147二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 22:15:26

    アスラン「ああ。カガリとアークエンジェルが身を寄せられそうな場所というと、地球上だとスカンディナビア王国くらいしか思いつかないからな。これまでの交流などから推測しても。月面中立都市コペルニクスに行こうにもアークエンジェルは大気圏を単独離脱する能力は無い…」

    ここまで一気に話した後、アスランは大きく息を吐く。アスハ代表の事、アークエンジェルの事。相当参っていたのね。一段落着いた、と言ったところかしら。

    アグネス「(よしよし。ここまででテストなら60点。あと気になるのは…)」

    2人でコーヒーを飲みながら、次の問題に。今度から私が切り出す。

    アグネス「アスラン先輩、お疲れの所申し訳ありませんが…」
    アスラン「ああ。もう一つの方、今後の戦争方針への疑問についてだな。こっちに関しては俺の権限で、評議会と国防委員会、国防委員長、それから、ライトナ―評議員にお伺いしたが…」

    あんまりよい結果ではなさそうね。やっぱり権限外だったかな。

    アグネス「余計なことをお願いしてしまいましたか…」
    アスラン「いや、そんなことはない。回答もちゃんとしてくれた…。しかし…」

    アスランは難しい顔をする。つまり、いつも通りの顔をする。

    アスラン「どうやら、本国の方でも混乱しているようだ…。評議会と国防委員長、国防委員会は回答を保留。ライトナ―評議員がおっしゃるには戦争目標の設定について、まだ最高評議会の中でも意見が割れているらしい。前大戦のような大規模戦争を避けたいと言うのは一致したお考えのようだが。君が気にしていた積極的自衛権の定義に関しても」

    アグネス「定義に関しても?」

    アスラン「開戦から、戦況が変わり過ぎて。ジブラルタルとカーペンタリア、親プラント国防衛は良いとして、ユーラシア連邦をどうしたいのか、統一見解がないそうだ。取り合えず、スエズを落とす気は有るらしい」

  • 148二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 22:25:30

    アグネス「(それでもスエズは落としたいのか…。落としてどうする?拠点を落としてザフトが利用したいのか、それともスエズを狙うことで敵主力軍を引きずり出した上で一気にこれを撃滅したいのか。同じスエズ攻略でも意味合いは全然異なるのに…。無能すぎ!)」

    アグネス「自衛戦争だから、こっちはどうしても受け身になるのは仕方ありませんが…。結構行き当たりばったりですね」
    アスラン「あまり、軍人の身分で政治批判はしたくないが…。正直、俺も同感だ」

    アスランに『少々お待ちください』のジェスチャー。二人ともカップが空になっている。二杯目のコーヒーを入れなければ。

    アスラン「ありがとう。言い忘れたかもしれないが、君もお疲れさま」
    アグネス「いいえ。副長と基地参謀のお力によるものです」
    アスラン「女性レジスタンスの話も聞かなければいけないな。どんな人だ」
    アグネス「14歳の女性です。小柄な人で。逞しい外見のわりに…。町の人達にも多くの苦難があったのでしょう」
    アスラン「そうか…。そうだな」

    おそらく、その多くの苦難の内、いくらかは先のプラント・地球連合との戦争の余波によるものだろう。そして、また今回のテロ、ブレイク・ザ・ワールド。追い打ちをかけるように、今の大戦。町の住民は踏んだり蹴ったりだろう。

    私の知った事じゃないけど。コーディネイターがこれまで被った苦難に比べれば、そんなもの!

    一方、向かいのアスランは当事者意識、自責の念に顔を曇らせている。その顔を見るとコーヒーがまずくなるわね。

    アグネス「彼女の体調が整い次第。シン達と一緒に話を聞きましょう。彼女の情報も」
    アスラン「ああ。そうだな」
    苦めのコーヒーを最後まで飲み干して、部屋を後にする。

  • 149二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 07:28:37

    保守

  • 150二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 08:44:37

    ユーラシアはともかく月面は最優先だよな
    ダイダロスにあるレクイエムの情報を隠したいデュランダルがアルザッヘルへの攻撃を遅らせるのは分かるけど他の議員は何をしてるのか

  • 151二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 11:57:56

    アスラン頑張れ

  • 152二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 22:30:08

    士官室を退出後は、レイと合流。アスラン、私、レイでシュミレーター訓練再開。
    本番では私達が切り込み役だわ。テンポよく決めていきたい。

    敵モビルスーツ部隊は事前情報によればダガー15機程度、それに陽電子リフレクター搭載モビルアーマーが一機。

    ミネルバのタンホイザーでモビルアーマーを誘いだしたらアスランが接近戦を挑んで切りかかる。

    私とレイはダガーを蹴散らしてアスランを援護。
    22.5mm4銃身機関砲で弾幕を張り、ダガーのミサイルを迎撃しつつ、敵モビルスーツ群を両翼から襲撃する。
    12連装航空ミサイルランチャー、ビームライフル、航空ガンランチャーを全力照射しながら、突っ込み、アルドール複相ビーム砲を発射しながらバレルロール。敵モビルスーツ群を抜けたら、急旋回して、私とレイが交差。生き残った連中にもう一度、同様の攻撃を加える。

    訓練を繰り返したところ、旋回後のバビ編隊・第二波攻撃でダガーを十分殲滅可能なところまで持ってきた。第二波とだいたい同じタイミングでセイバー、アスランはモビルアーマーを撃破。
    第三波が必要なら、セイバー、バビ2機で生き残りにとどめを刺す。

    シュミレーターで3度、ダガー部隊とモビルアーマーを殲滅し、アスラン、レイと一緒に一息つく。
    それから、アスランに頼んでモニターを現在、基地で訓練中のブリッジクルーに繋いでもらう。

    ブリッジクルーの皆さんに敬礼。返礼を受けながら、階級が不明確なザフト軍の体制を今更ながら不便に感じる。

    私がパイロット、尉官相当なのは良いとして、マリクさんってどれぐらいなんだろう?
    『操艦』を総舵手と考えるなら下士官相当だけど、航海長と考えると士官なのよね。ザフトアカデミーを私と一緒に卒業したメイリンが尉官相当なのは確かなんだけど。いつも階級ではなく役職で対応しているから、こういう時困るわ。それはさておき―

  • 153二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 22:32:58

    アグネス「マリクさん、お疲れさまです。アグネスです。訓練の調子はいかがですか?」
    マリク「アグネスか。そっちもお疲れさま。こっちは、結構うまく言っている。回避訓練、シュミレーターの中でなら、もうバレルロールもできるようになっているよ」
    アグネス「すごい!」

    取り合えずの誉め言葉『すごい』言ってみたわ。

    チェン「アグネス、チェンだ。マリクと息を合わせて、砲撃、ミサイルの命中率が上がって来ているよ。といっても武器周りは副長が号令してくれるから、手柄は半々かな」
    アグネス「良かったです!こちらもモビルスーツ群に対して成果が上がって来ています。作戦決行まであとわずか。お互い頑張りましょう」
    マリク「ああ。一発ももらわないようにしないとな」
    チェン「期待していてくれ」
    アグネス「はい」

    2人に敬礼して、通信を終える。向こうも大分形になって来ているようね。
    アスラン、レイとアイコンタクト。二人とも私と同じ、作戦が成功する確信を深め始めている。後は、シン。
    ローエングリン砲台本体ね。

    艦内放送が流れる。
    メイリン「医務室より報告。協力者コニールさんの体調が回復。副長、アグネスは医務室に向かってください」

    アグネス「え、私!?」

    副長はともかく、なぜ私?ああ、女性だからか…。
    そう言えば、艦長と私とメイリン以外、幹部級に女性軍人いないものね。

    レイが肩をすくめる。なによ。言いたいことあるの!
    アスラン「彼女の情報、俺も頼りに思っている。必要ならレイやシンと後から向かう」
    アグネス「お願いします」

    アスランに敬礼し、返礼を受けた後、足早に医務室に向かう。

  • 154二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 08:31:23

    医務室前で副長と合流。敬礼 返礼を受ける。
    副長からの眼差しに籠る親し気な光がいつもより強く感じる。任務を一緒にこなしたことに加え、一緒にゲロに塗れたことが効いたのか…。これも吊り橋効果ってやつ?
    副長からの好感度が上がって何よりね。ゲロと言えば―
    アグネス「(そういえば、そろそろ夕食時ね。昼食が遅くて気が付かなかったけど)」

    そんなことを考えながらも、医務室に入室。医官、衛生兵に通されコニールのベッドに。なるほど、大分顔色は良くなったわね。ちょっとゲッソリしているけど。

    アーサー「ミス・コニール。大分具合が良くなったそうだね。安心したよ」
    副長はそう言いながら、スポーツドリンクを勧める。コニールはまだ本調子ではないのか、それをちょっと口に含み、私達に礼を言う。

    コニール「ありがとう。副長さん、アグネスさん。迷惑かけたね」
    アグネス「(ちゃんと話せるじゃない。あの生意気な態度はやっぱり考えものね。連携に支障をきたすわよ)」
    アーサー「どういたしまして」
    アグネス「どういたしまして。回復してきたようで何より」

    コニール「うん」
    ちょっと気恥し気な様子を見せた後、コニールは表情を改める。

    コニール「来てもらってありがとう。早く伝えなきゃいけないことがある!」
    アーサー「なんだい?」
    コニール「昨日、連合の増援が上陸していた!ダガー15機とあの化け物みたいなモビルアーマーがもう一機。渓谷に向かっていた!明後日にはウィンダムの部隊も来るって!!」
    アーサー「!?」
    アグネス「!!」
    思わず副長と顔を見合わせる。
    アーサー「それは…。疑うわけでは決してないが、実物を見たのかい?」
    コニール「ああ。間違いなく」

  • 155二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 08:35:27

    天を仰ぎたくなる気持ちとはこのことかしら。
    会合の時に話してよ!!いや、傍受の恐れがあるから無理か…。それにしてもこの展開…。まずいわね。

    アグネス「てっきり私達は…。砲台に続く坑道の事を知らせに来てくれたのかと」
    コニール「ああ。それはもう知っていたのか。そっちも伝えるつもりだった。これ、地形図だ」
    勿体ぶらず、あっさりと地形図を私に渡してくれる。もうそれどころではないが、一応シンにも見せておくか…。

    アーサー「しかし、急にどうして?」
    コニール「ミネルバってすごい艦なんだろう。アーモリーワンから戦い続けて、何度も勝っているって。そんな艦がインド洋で連合を倒して、遂にマハムールに来た。町は大騒ぎで、連合のやつ等は締め付けに躍起になっている。滅茶苦茶酷い目に遭わされた人もいる...」
    アーサー「なるほど…」
    アグネス「そう言えば、インド洋の戦い自体は秘匿されたわけではありませんでしたね…」

    むしろ、本国とカーペンタリア基地は、ザフトの人道的・模範的な行動として、あの戦いを大いに宣伝している。当然、戦果も大いに喧伝している。
    ミネルバの行先やスエズ攻略作戦の参加自体は伏せられているが、連合に察知されている可能性をもっと考えるべきだった。汎ムスリム会議は表向き中立なんだ!連合のスパイだって、きっと潜んでいたはず。

    アグネス「何か写真とか映像は?」
    コニール「これ!はい」
    あっさり渡してくれた…。じゃあ、艦に着いたとき渡してよ!...。この子ダウンしていたわね。

    それに信頼できる相手にしかこういうものは渡せない。逆に言えば、副長と私は一応の信頼は勝ち得たのか。
    アグネス「副長!」
    アーサー「ああ。艦長とラドル司令官に今すぐ!」
    アグネス「それと…。坑道の実寸大模型、既に完成していますか?できていたらすぐ、シンに最終訓練を!」
    アーサー「分かった。そちらも確認する」

  • 156二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 08:50:27

    副長は目線をコニールに。
    アーサー「ミス・コニール。危険を承知でよく伝えてくれた。本当にありがとう」
    アグネス「私も。心からの感謝を。ありがとう」

    ベッドの中のコニールはちょっと満足げだ。一仕事終えた、と言ったところか。
    コニール「頼んだよ」
    アーサー「ああ」
    アグネス「うん」
    疲れが出たのか、コニールはまた、目を瞑る。

    副長は医務室のモニターで艦長に緊急通信を入れている。
    私は艦内電話でアスランに連絡。今、呼び集められる限りのパイロットをブリーフィングルームに呼び出してもらう。

    アグネス「副長。私はアスラン他パイロット達とブリーフィングルームに。このことを伝えてきます」
    アーサー「頼む。自分は艦長とラドル司令官たちと会議に」

    慌ただしく、医務室を飛び出す。時計の針が加速し出すのを感じる。

    シン「あのモビルアーマーがもう一機!?それは…」
    アスラン「まずいな。それにダガーの戦力も2倍になったか…」

    ブリーフィングルームにはアスラン、シン、レイ、甲板組5人がそろっていた。他は基地の方で訓練中か?
    部屋に入るなり、敬礼もそこそこにコニールからの情報を皆に伝達、共有。

    デイル「いや、それより明後日ウィンダムの部隊も来るってことは、今日、今からでも基地を出発しないと」
    ショーン「艦長、ラドル司令官は何と?」
    アグネス「今、会議中よ!」

    皆、さっきまでの余裕が吹き飛んでいる。単に増援があったこと以上に、自分達の動向が伝わり続々と敵部隊が集結しつつあると言う状況が危機感を増幅している。

  • 157二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 17:48:16

    アスラン「皆、少し落ち着け。ユーラシア連邦の国力は何も無限じゃない。モビルスーツも、モビルアーマーも、それを乗りこなせるパイロットも。今は、彼らにとっては貴重なんだ。ユニウスセブン落下による被害から、本来、彼らは立ち直れていない」

    アスランが左右に声をかけ、皆の負の思考の連鎖を一旦ストップさせる。

    アスランと目線が合い、茹で上がっていた頭がようやく冷める。
    アグネス「(危ない危ない。私も一旦冷静に。流される所だった。自分が持ってきた情報に!)」

    完全に視野が狭窄しているわ。落ち着いて、落ち着け私。
    モビルアーマーが2機になったこと、ダガー隊が30機になったこと。確かに大問題ではある。でも、まだ、ローエングリンゲート攻略が不可能になったわけではない。なにより―

    アグネス「ガルナハン・ローエングリンゲートにユーラシア連邦が増援を送って来たということは、逆に言えば彼らがその分何処かを手薄にさせざるを得なかったことを意味する。モビルアーマー1機とダガー15機。明後日来ると言うウィンダム部隊。今の連邦にとって決して安い出費ではないはず。ミネルバはその存在感を持って他の戦線を直接戦わずにアシストした。それが月なのかユーラシア西側なのか、中央アジアなのかはともかく…、ということですね。アスラン先輩」

    アスランにボールを投げ返すと、こちらを向いて、一度、大きく頷く。そうだわ、敵も苦しいんだ。
    コーカサスの南端、カスピ海の西南をとられない為に彼らは必死なんだ。

    シン「アスランさんやアグネスの言うこともわかるけど…。他の戦線を助けるのも大事だけど、でも俺たちはあそこを落とさなきゃいけないんじゃ…」
    レイ「そう言うことになるな。それはそれ、これはこれだ」

    これはシンの言うとおりね。むしろ、ユーラシア軍を引きずり出すことが出来たなら、これを撃滅して、牙を折っておくべき。ユーラシアの不安定化は私の本意ではないけれど、仕方ないわ。
    『ミネルバ』の知名度が開戦以来上昇し続けてきたことを見落としていた…。

  • 158二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 17:52:52

    アグネス「シン、あんた坑道を突破した直後にあのモビルアーマーを相手に出来る?」
    シン「…」

    質問しにくいことだが、聞くしかない。陽電子リフレクター搭載モビルアーマーを2機に増やしたということは、必ず一機はローエングリーン砲台に張り付けるつもりのはず。シンの本来の任務は砲台破壊。
    ここにモビルアーマー撃破まで加えられるか?

    アグネス「私達パイロット隊とミネルバ、ガルナハン市民全員の命がかかっている。意地を張らずに正確に答えて。この攻勢が失敗したら、レジスタンスは皆殺しにされるわ。家族もろともね」

    シンの本心を聞き出すために最悪の想定を伝える。実際これは起こりうることなのよ。

    シンはやや気圧されながら、本心を口にする。
    シン「正直に言えば、砲台とモビルアーマー、両方を一度に相手にするのは難しいと思う」

    以前より素直に言えてよろしい。じゃあ、モビルアーマーは私達で対処するしかない。

    アグネス「アスラン先輩、最初のモビルアーマーを撃破した後、砲台に飛び込めますか?飛び込んでもう一機のモビルアーマーを―」
    アスラン「対空砲を何とかできれば。やるしかないだろう」
    アグネス「レイ、私とダガーを2度攻撃したら、即、対空砲つぶしに行ける?」
    レイ「行けるが…。その場合、ダガー隊の半分は対処できない。ミネルバが危ない」

    甲板組とショーンとデイルに視線を向ける。

    デイル「やってやるぞ!艦底は任せろ!」
    ショーン「バクゥの人達と力を合わせて。向こうにも連絡しないと」
    グーンパイロット(ザク)「こっちにはミネルバ自体の武装もある。何とかしのげるはずだ」

  • 159二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 17:55:03

    ガズウートパイロット「俺達も地対地対艦ミサイルを対空砲に撃ちつつ、艦を守ります。ミサイルは4発あるから」
    ガズウートパイロット「俺とお前で必中させれば8門の対空砲を撃破できるな」

    アスランと目線を合わせる。アスランが何か微笑んだ。皆の活気が戻って来て安堵しているの?それなら―

    アグネス「(それなら、私も同意見だわ)」

    艦内放送
    メイリン「コンディションイエロー発令 コンディションイエロー発令 全クルーはミネルバ発艦の準備を開始してください。繰り返す―」

    アスラン「艦長、ラドル司令官の会議もまとまったようだな」
    アグネス「シンの最終訓練だけはやっておきたいのですが。何とか副長に話を。坑道の実寸模型が出来ていれば―」
    シン「工兵隊の人達が夕方ごろに完成させてくれた。俺も一度は慣らしておきたい」

    シンの言葉にアスランも頷く。
    アスラン「俺から副長のもとに言ってみる。シンは準備を」
    シン「了解」
    アグネス「ピートリー級が先発して、シンの訓練が終わり次第、ミネルバも発信するはず。皆も準備を!」
    レイ「そうだな」
    ショーン「ああ」
    デイル「おう」
    甲板組「了解」
    アスランに目線を送ると首肯してくれる。

    皆で足早に部屋を出ながら、しょうもないことを思い出す。
    アグネス「(今から、発艦準備開始…。今日も夕食時間はまともに取れないわね)」
    まあ、そんなものかな。多分どこの部隊も。

  • 160二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 18:57:16

    規制のせいでずっと書き込めなかったけどようやく書き込めた
    続き楽しみです

  • 161二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 21:15:09

    やだ…アスランが頼もしく見えてきた…

  • 162二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 21:55:46

    保守

  • 163二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 23:11:09

    ピートリー級がマハムール基地より出撃。彼らはこれから昼夜兼行、ペルシャ湾からイランを縦断し、今日、私が午前中赴いた旧イラン領アルダビール州ナミーン付近を通過、アルボルズ山脈の麓に隊旗を立てる。バクゥ3機、ガズウート6機、ジン2機が同行。

    ミネルバには甲板組のガズウート2機を通常メンバーに加え、合流ポイントに向け、後発する。本艦は市街地制圧用の降下歩兵も乗せていく。超特急で物事が進む。ブリーフィングもピートリー級のメンバーとはミニター越しだ。

    一方、インパルスの最終訓練の準備が基地内で整ったため、私とアスラン、レイ、コニールたちは訓練の成果を確認しようとレクリエーションルームのモニターを眺めている。ブリーフィングルームを使っていないのは、そっちでも艦長とラドル司令官らが、別の会議をしているためだ。

    副長「坑道突破訓練準備良し」
    メイリン「了解 コンディションレッド発令 コンディションレッド発令 パイロットは搭乗機にて待機せよ―」
    メイリンのオペレーションが流れると共にモニター画面がインパルスのコックピットモニターと同期する。シンの目線から見た訓練が確認できる。

    シン「シン・アスカ、コアスプレンダー行きます!」
    続いてチェストフライヤー、レッグフライヤーが射出される。模型の坑道突入まではコアスプレンダーのコックピットが映し出す仮想現実の『渓谷』をシンは進むことになる。

    私達は、何もない基地敷地内を3つのユニットが飛行するさまと、シンがコックピット内で目撃している仮想現実の両方を確認する。

    レッグフライヤー射出と共にタイム測定開始。
    『渓谷』侵入から坑道突入まで、シンは今、コックピットが映し出す険しい山岳地形を縫うように進んでいる。
    実寸大坑道模型に突入開始寸前にモニターが仮想空間から現実に切り替わる。

    アグネス「(65秒!レッグフライヤー射出から渓谷飛行、坑道突入まで1分5秒)」

  • 164二次元好きの匿名さん24/07/27(土) 23:14:59

    直線距離から考えると時間が長いが、これは仕方ない。低空を蛇行しながら飛行しなければいけないから。問題はここからよ。

    アグネス「(わざわざ、水まで流して再現しているんだから。無駄にするんじゃないわよ!)」

    坑道突入から、38秒後。坑道3分の1にあったあの地底湖を突破!偵察で苦労したポイントだ。
    地底湖通過後から6秒後。一番の難関だと思っていた坑道最狭部をコアスプレンダーが通過。
    ちゃんと翼を掠めずギリギリを通過。よくやった!

    横目でコニールの横顔を見つめる。最初は平静を装っていたが、さっきから表情がやばい。町の住民の命がかかっているから当然ね。

    アグネス「(思ったより、最狭部突破通過後に時間がかかっているわね)」
    アドレナリンが出ているせいかタイマーの進みが長く感じる。

    シン「コール。ここか!距離500。ミサイル発射!!」
    アグネス「(最狭部突破から7分43秒)」

    モニター画面に閃光と爆音!坑道を塞ぐ岩盤(模型)が吹き飛ぶ!!

    メイリン「フォースシルエット射出!」
    メイリンのオペレーションとほぼ同時に砂煙と爆風を突き破ってコアスプレンダーが姿を現す。そのままドッキングを開始、シルエット装着。
    タイマーを確認。ミサイル発射から26秒。

    横に座るコニールがハラハラしている。
    コニール「なあ…。これって成功…だよな。ここまで来て中止ってことは…」
    アスラン「大丈夫だ。ミス・コニール。シンは良く仕上げていると思うよ」

  • 165二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 01:45:17

    アグネス「そうね。上出来よ」

    渓谷飛行1分5秒、坑道突破(ミサイル発射まで)8分前後、岩盤突破後のシルエット装着完了まで26秒。計9分58秒か。直線距離から考えると結構遅く感じるけど、飛行空間を考えればこれぐらいが限界だろう。早すぎるのも考え物だが事態が流動的になり過ぎて調整は不可能。私達がシンに合わせるしかない。

    メイリン「シン!副長がよくやったって!」
    シン「本当!ありがとうございます」

    アスランにアイコンタクト。アスランもこちらに目線を返す。『行けるだろう』のサイン。
    レイの顔を見る。満足げだわ、あんたが飛んだわけではないでしょう!
    レイ「…」
    レイと目線がかち合う。しかし、今だけはこいつは同志。
    アグネス「今度は私達が示さないとね。本番で」
    レイ「そうだな」
    相変わらず不愛想ね。こいつ。

  • 166二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 07:49:45

    レイの後方彼氏面が目に浮かぶ

  • 167二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 08:42:05

    遅めの夕食会というか時間だけ見れば晩餐会。
    ミネルバに乗っているパイロット全員と手隙要員、降下歩兵部隊の幹部、そして本日のゲスト。ミス・コニールで。

    コニールを案内しながら通路を歩く。
    コニール「それで…。私は何を話せばいい?」

    勘が良いわね。
    アグネス「あなた自身の話を。変な誇張は要らないわ。多くの人がレジスタンスに参加しているってことは『そういうこと』でしょう?」

    連合の圧政と暴虐があればこそ、ガルナハンの抵抗運動が激化している。
    私達はガルナハンを開放するために戦う。スエズのためじゃない!

    アグネス「(と皆に思ってもらい、士気をアップ!見たこともないスエズの間接支援のために命をかけるのは難しい。でも、目の前の少女のためなら。そういうパイロットやクルーも多いはず、特にあのお人好しは…)」

    目の前に何とはなしにシンの顔がチラつく。
    私自身はお涙頂戴は勘弁してほしい人間だけど。正直ガルナハンに1ミクロンの興味もないし、スエズすら月面の後で良いと思っている。しかし、この作戦に参加する皆には―

    しばしば、言われるように戦争にはどちらの陣営にも正義があるのかもしれない。
    それでも戦争を遂行するには建前と正義が不可欠だ。国民を納得させ、兵士に死を受け入れさせるに足る正義が。
    『少女と町を救う』。騎士(ナイト)が我が身を投げ打つには十分な理由じゃない!

    もし仮に軍人はヒーローじゃなかったとしても、そう思わせようとすることは大事だ。本人にも家族にも、国民にも。ヒーローごっこ、皆で頑張りましょう!それが一周して我が身を守ることにも繋がるわ。

  • 168二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 08:52:26

    コニール「上手く話せるかな。私そう言うの苦手で…。あんた…、アグネスさんや副長さんのことも最初は…」
    アグネス「良いわよ。上手くしゃべれなくても。それを含めて『ガルナハンの現実』ということでしょう」

    もう、食堂の扉の前だわ。コニールにアイコンタクト。一緒に深呼吸。
    アグネス「大勢人が居るけど大丈夫ね?」
    コニール「当たり前だ。こっちはレジスタンスだ」
    ニッコリ笑ってくるコニールに、私も笑顔を返す。決めて!私の明日の手柄と命のために。

    扉を開きコニールを中に。
    食事会の司会をしているメイリンに片手を振って合図。
    メイリン「はい。ここで本日のゲスト。カスピ海の辺から、ここペルシャ湾、マハムールまで駆けつけてくれた私達の戦友、コニール・アルメタさんです」

    パチパチパチパチパチ!

    ヴィーノ、ヨウラン、マッド・エイブス達に黙礼しながらコニールを前方中央へ。
    アスラン、元々のミネルバパイロット組、甲板組に目線で合図。
    皆に『注目して』のジェスチャー。
    シン、その山もりの皿、一旦置きなさい!ああ、私もお腹減ったわ…。

    コニールの肩をポンッ!と叩いてマイクを渡し、『リラックス。リラックス。頑張って』のジェスチャー。皆にバレないようにコソッとさり気なく。マイクを渡されたコニールが頷くのを確認し、それから、自然に彼女と距離をとる。

    やや緊張しながらもしっかりした口調でコニールは話し出す。

    コニール「初めまして。こんばんは。私はコニール・アルメタ。私達レジスタンスと一緒に戦ってくれるザフトの戦友に感謝を。今日は私とガルナハンの町についてお話します」

    アグネス「(良し。クソガキ成分を抑えられて偉い!100000アグネスポイント!)」

    彼女の話を片方の耳で聞きながら、脳みその半分を休ませる。色々ありすぎよ、本当に。

  • 169二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 11:45:23

    保守

  • 170二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 19:58:49

    アグネス「ただいま、おかえり、おやすみメイリン」
    メイリン「ただいま、おかえり、おやすみなさいアグネスさん」

    食事会と最低限のかたずけの後、メイリンと部屋に直帰。コニールはよくやった。やっぱり不幸自慢も時には大事だわ。自室に入るなり二人で制服をポンポン脱ぎ捨て部屋着を着るや布団に潜り込む。シャワーは明日。かなり疲労が溜まっている。明日までに回復させないと。昼頃には会戦だ。今頃、ピートリー級は最大速度で北上を続けている。ミネルバは、明日の朝- 意識が落ちた -

    アグネス「おはようメイリン」
    メイリン「おはようアグネスさん」

    シャワーを浴び、身支度を整え食堂へ。アスランを含むパイロット組と朝食。もう、全員異様な雰囲気に包まれている。この食事を終え、1時間後、ミネルバはマハムールを発進する。

    作戦では、まず、ガルナハン・ローエングリンゲート前の手前、作戦開始地点ポイントAでピートリー級と合流。ミネルバとピートリー級地上戦艦でモビルスーツを積み替える。

    今も北上を続けているピートリー級はそこに隊旗を立てるために必死だ。最大速力で旧イラン領を縦断している。おそらく正午ごろには作戦開始ポイントに辿り着く。

    ミネルバもこの食事が終われば発進。万が一連合が打って出た場合を考え、ピートリー級の上空支援に。だから、合流ポイントの前から実質同行することになる。ポイントAを通過したらコンディションレッド発令。

    無理やり、パンを牛乳で押し込んでいるとアスランと目が合う。私と目線を合わせた後、ふぅっと微笑む。『落ち着け』のサイン。
    アスランに諭され正気を取り戻す。コミュニケーション下手な彼が珍しい。

    アグネス「(危ない危ない。また、飲まれかけていた)」
    私もショーンとデイルに目で合図。表情筋も使って、肩の力を抜くように示す。伝わった!
    グーン三人衆に目を遣ると、流石サブマリナー上がり、落ち着いているわ。

  • 171二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 20:03:39

    ただ、ガズウートコンビは、もうアドレナリンが出すぎている。死ぬわよ。今から出したら。

    アグネス「…」
    ガズウートパイロット達「…」

    アスランが今、私にしてくれたこと同じしぐさをする。私の微笑みパワー、受け取れ!

    ガズウートパイロット達「ふぅ…」
    よし。力を抜いてくれた。頭を冷やせ。クールに戦うわよ。

    もう一度アスランを見ると満足げに私を見つめ返す。たまに正気に戻るわね。この人。

    一方、シンとレイはというと―

    シンは何か思いつめてるわね。まあ、こいつは追い込まれてゾーンに入るみたいだから、良いんじゃない?
    レイは…。良く分からないわ。こいつの脳内。何時もどおりっぽいから放置、と言う訳にいかないから一応、『頑張りましょうね』のアイコンタクト。『無論だ』と目線で返される。元気そうで何よりね。

    朝食タイム終了。いよいよか。各自持ち場に向かっていく。私達は別命あるまで待機。レクリエーションルームで過ごすことになる。ミーアの歌でも聴いてましょうか。

    艦内放送

    アーサー「全艦に通達する。ミネルバはこれよりガルナハン・ローエングリンゲート攻略戦、及びガルナハン市開放作戦に出撃する。ガルナハン・ローエングリンゲートの攻略はスエズ攻略の第一歩であり、連合の圧政に苦しむガルナハン市を開放することはプラントの人道主義を国際社会に示すものとなる。各員の一層の奮起を期待する。」
    メイリン「ミネルバ、発進します」

    ミネルバがついにペルシャ湾から離水。マハムール基地上空を飛行し初めると基地の兵士が一斉に帽子を振ってくれる。眼下のレセップス級デズモンドも発進準備を完了しつつある。彼らはミネルバに続いて基地を発進。陥落させた渓谷と町を占領確保する役割を担う。

  • 172二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 20:18:03

    原作に比べてアスランが大分安定してるな
    アグネスがカガリの状況とか世界情勢とかしっかり説明してくれてよかったね

  • 173二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 21:02:47

    何度目かの旧イラン領縦断。長い文明の大河が流れるこの地を舞台に、また血が流れることになる。ある意味何時もどおりか。歴史は繰り返す、とか、歴史は繰り返さないが韻をふむ、って言うものね。

    アグネス「(どっちの格言も要は同じ意味でしょう。めんどくさい)」

    荒々しい山脈と高原の先にピートリー級を視認。レクリエーションルームを出てパイロットスーツに着替え、ブリーフィングルームに向かう。

    ピートリー級と合流。彼らと共にアルボルズ山脈へ。アルダビール市郊外を通過。険しい岩山と砂地が広がる荒涼とした大地を進む。

    メイリン「間も無くポイントA。コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ」

    ブリーフィングルームにいた全パイロットが全員腰を上げる。
    アグネス「(さあ、行きましょうか)」

    おっと、その前に。
    アグネス「シン。ちょっと」
    アスランとレイが何事かと見るが、『すぐに向かう』とジェスチャーして先に行ってもらう。
    レイが何か言いたそうだが気づかなかったふりをする。

    シン「アグネス、どうしたこんな時に!」
    険しい顔のシンが私を咎める。この劣等生が!私に講釈垂れる気?うざっ!

    シンにコニールから預かったデータディスクを押し付ける。戸惑いながらそれを手に取るシン。

    アグネス「シン、これ地形図データ。コニールが持ってきたやつ。見ないでね。私達のものの方が詳しいから。でもお守り代わりに持っていきなさい」
    シン「なんで…?わざわざ」

  • 174二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 21:07:42

    アグネス「一応渡しておかないとあの子に悪いし。危険地帯を越えて14歳の少女がわざわざこれを持ってきた。自分とガルナハン全市民の命をかけて。この攻勢が失敗したら、蜂起するレジスタンスは皆殺しになる。彼女の帰る家も無くなる」
    シン「…」

    シンの目をずっと見て離さない。こいつは追い込まれて本気を出すタイプだわ。さあ、作戦開始と同時にゾーンに入れ、火事場の馬鹿力を発揮しなさい。

    アグネス「今のあんたに相応しい贈り物だと思うけど。後は、あの子に解放された街を返すだけ」

    シンは黙ってデータを受け取り、握りしめる。こいつ、こういう人情噺好きでしょう。

    アグネス「ミネルバが来てから、町の人達の締め付けが一層酷くなった。その意味、分かってるわね」
    シン「ああ…。分かってる」

    決意がこもっていてよろしい!シンの瞳が力に満ちたタイミングで視線を離す。
    ここで出来る女はワンポイント。

    アグネス「私達はミネルバと一緒にあんたを迎えに行くから、頼んだわよ」

    全パイロット、クルーが力を合わせると、あんたと共に戦うのだと伝える。
    シンは頷くと意外なことを言う。

    シン「ありがとう。アグネス」
    アグネス「あんらが礼とは!殊勝でよろしい!頑張ってね」

    さて、私はバビへGO!

    モビルスーツデッキの中は何時もの10倍大忙しだ。地面と平行して低空飛行するミネルバと砂漠を移動するピートリー級。並んで移動しながら器用に機体交換・配置を行っていく。

  • 175二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 21:11:41

    まず、カタパルトから『甲板組』を発進。ミネルバ左右甲板にガズウートとブレイズ・ザクウォーリア1機ずつ。それに艦橋裏ヘリポートにブレイズ・ザクファントム1機。計5機を配置に着かせる。

    ヘリポートのザクファントムは本来、私専用の赤く塗った機体だ。一回も実戦で乗ったことはないけど。バビばっかり乗っているから。

    次に、アスラン、セイバーと私とレイのバビ2機、ショーンとデイルのディン2機が発艦する。

    メイリ「セイバー、アスラン機、発進スタンバイ。全システムオンラインを確認しました。気密シャッターを閉鎖します。カタパルト、スタンバイ確認。
    アグネス・ギーベンラート、バビ発進スタンバイ。レイ・ザ・バレル、バビ発進スタンバイ。」

    ショーンとデイルのディンも発進スタンバイ状態に。

    メイリン「進路クリアー。セイバー発進、どうぞ。バビ発進、どうぞ!」
    アスラン「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」
    レイ「レイ・ザ・バレル、バビ、発進する!」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、バビ、出ます」

    続いてディン2機も発艦。ミネルバと並行飛行する。

    ミネルバは一旦機体を上昇させグーン3機をパラシュート降下させる。作戦中はピートリー級に預かってもらうためだ。ザク一機は迷った末に補機として押し込んでいく。
    再び地面すれすれに降りて、カーゴハッチを下ろし、今度はミネルバにバクゥ3機、ガズウート6機、ジン2機を搭乗させる。

  • 176二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 21:24:47

    アグネス「準備完了ね」

    ピートリー級はこのA地点で別命あるまで待機。連れて行っても足を引っ張るだけだから。
    敵のローエングリンがミネルバではなく陸上戦艦を狙ったら、助かる術はない。あの艦にも歩兵部隊を乗せて来たから、町に突撃・占領し、連合捕虜を保護する役目も担ってもらう。ミネルバの降下歩兵が無事、出撃できるかは戦況次第だから。

    停船するピートリー級に見送られ、ミネルバは渓谷に突入。インパルス発進予定場所。ポイントBを視認。


    飛行中のバビとミネルバブリッジの回線を固定。

    タリア「ブリッジ遮蔽。対モビルスーツ戦闘用意。インパルス発進」
    アーサー「CIWS、トリスタン、イゾルデ起動。ランチャーワン、セブン、1番から5番、全門パルシファル装填」
    メイリン「ハッチ開放。射出システムのエンゲージを確認。カタパルト推力正常。進路クリアー。コアスプレンダー発進、どうぞ」
    シン「シン・アスカ、コアスプレンダー行きます!」
    メイリン「カタパルトエンゲージ。チェストフライヤー射出、どうぞ。レッグフライヤー射出、どうぞ」

    アグネス「(始まったわ。もう引き返せないわね)」
    インパルスはここから別ルートに進出。坑道に続く渓谷を飛行していく。坑道突入まで1分前後。

    そろそろ連合のスクランブルが始まり、モビルスーツ群が展開され始める頃だ。

    アグネス「?」
    アスラン「どういうことだ?」
    レイ「スクランブルが始まらない。俺たちの接近に気づいていないのか?」
    アグネス「この距離で!?そんなわけないでしょう!」

  • 177二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 22:42:41

    ローエングリン砲台前に陽電子リフレクター搭載モビルアーマー2機を視認!

    アグネス「(こいつ等!ブリッジの反応は?)」
    さっき固定した回線を利用しブリッジの状況を確認。

    アーサー「艦長!?」
    タリア「…。してやられたわね。現存艦隊主義ならぬ現存モビルスーツ主義と言ったところかしら。援軍を待つつもりなのね」
    アーサー「明日、来ると言うウィンダムの部隊ですか?」
    タリア「ええ。今頃、急発進しているはず」
    アーサー「!!」
    タリア「上昇」
    アーサー「でも艦長!どうするんです?」
    タリア「貴方も考えなさい!メイリン、シンは?戻れる?」
    メイリン「無理です。もう通信が…」
    タリア「そう…」

    アスラン「グラディス艦長!」
    アスランがブリッジに通信をいれる。

    アスラン「ミネルバをこのまま上昇させてください。上空を旋回しながら山を越えて火力プラントにトリスタンの照準を!」
    タリア「え…」
    アーサー「えー!いや、火力プラントは…」
    アスラン「分かっています。住民の生活再建のため破壊できません。あくまで陽動です」

    アグネス「(なるほどね。というか最悪の場合『うっかり』撃っちゃってもいい。それでも砲台無力化は一応達成されるわ)

    タリア「ミネルバこのまま上昇。旋回しつつ、山を越えて」
    アーサー「了解」

  • 178二次元好きの匿名さん24/07/28(日) 22:47:31

    ミネルバがあの山を迂回しようとした瞬間。敵ローエングリンが起動を開始する!

    バート「敵砲台、本艦に照準!」
    タリア「機関最大!さらに上昇!躱して!」
    マリク「はい!」

    セイバー、バビ、ディン散開!ミネルバはクジラがジャンプするように上空に跳ね上がる。一瞬前までミネルバが存在した影をローエングリン砲の真っ赤な光線が掠めていく。
    甲板組は跳ね上がるミネルバに必死にへばりつく。

    アグネス「(良し。一発躱し…)」

    ミネルバが、砲台の山を越え火力プラントにトリスタンの照準を合わせようとした、その先に恐ろしい現実が広がっていた。

    バート「カスピ海ガルナハン沖にフレーザ級8隻とザムザザー。ユーラシア連邦軍カスピ海小艦隊です!」
    バート「さらにユーラシア連邦旧アゼルバイジャン領よりモビルスーツ群の接近を確認。数88以上。後方、ローエングリン砲台より敵スクランブル開始、モビルスーツ群急速発進・展開中数30。陽電子リフレクター搭載モビルアーマー1機を先頭にしてこちらに向かってきます!」

    アスラン「…」
    レイ「…」
    アグネス「(挟み撃ちにするつもりが挟まれてしまったか…)」
    戦場の霧ってやつね、これも。ユーラシア連邦を過小評価していたのか。それともこれが彼らの全力なのか。

    アグネス「少なくとも、戦力を出し惜しみして各個撃破されるの愚をおかすまいとしたことは確かね…」

  • 179二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 00:03:14

    ブリッジより通信

    タリア「地球軍は本艦の出撃を予期し、援軍部隊をローエングリン砲台に急行させていたと思われ、カスピ海、旧アゼルバイジャン領より本艦に。また、後方、砲台本体からも敵防衛部隊が現に出撃展開中である。
    さらに我々が退却を選べば、今、眼下に広がるガルナハン市民が地球軍の報復に晒されること明白である。
    我々には後方のローエングリン砲台を陥落させ、前方から押し寄せる地球軍を打破する以外、他に活路はない。
    これより開始される戦闘はかつてないほどに厳しいものになると思われるが、本艦はなんとしてもこれを成し得なければならない。このミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する」

    アスランより通信。
    アスラン「パイロット全員、聞け。我々は大枠では予定通り敵を引きずり出した!順番を間違えなければ、まだ各個撃破は可能だ。アグネスとレイは後方のモビルアーマーとダガー隊に集中せよ」

    アグネス「了解」
    レイ「了解」

    アーサー「ディンは艦底をフレアとチャフ散布!」
    バート「フレーザ級より本艦にミサイル接近!」

    ミネルバの戦闘は彼らに任せる。私とアスランとレイはダガー隊とあの虫野郎を!
    接近する30機+1機にバビ2機とセイバー1機、飛行形態で突っ込む。

    アスラン「はあぁぁぁぁ!!」
    アスラン、セイバーはモビルアーマーに牽制のビームを数発撃った後、盾を放り捨てながら、MS形態に変形、両手のビームサーベルを抜き放つや、上半身ダガー部分の両腕を切り飛ばす。

    アグネス「レイ、互いに援護」
    レイ「分かっている」

  • 180二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 00:08:19

    私とレイは訓練通り、ダガー隊に突撃してアスランを援護。違うのはモビルスーツ群を両翼から挟むように攻撃するのではなく、互いに庇いあうように突破していくこと。15機が30機になって厚さが増しているから。

    飛行形態のまま、22.5mm4銃身機関砲で弾幕を張り、ダガーのミサイルを迎撃しつつ、敵モビルスーツ群を中央突破する。
    12連装航空ミサイルランチャー、ビームライフル、航空ガンランチャーを全力照射しながら、突っ込み、眼前のモビルスーツに直撃を浴びせる。

    アグネス「(ビームライフル、命中! ガンランチャー、命中! ミサイルランチャー右、命中!命中!左、命中!命中!命中!(カウントMS44 MA1 リニアタンク2 対空砲3 空母2)」

    ダガー隊を突き破ったらレイとタイミングを合わせ宙返りしながら、アルドール複相ビーム砲を発射。後ろに食らいつこうとしたダガーをまとめて薙ぎ払う。
    命中!命中!命中!

    アグネス「(カウントMS47 MA1 リニアタンク2 対空砲3 空母2)」

    第一攻撃、私単機で10機、レイと合わせて20機を屠る。
    ダガー隊に再攻撃、連中の奥でモビルアーマーにセイバーのプラズマ収束ビーム砲が命中!大爆発を発生させる。

    余りの現実に一瞬棒立ちになりかけた。ダガー10機に私とレイのビームライフルとガンランチャー、機関砲が立て続けに命中。4機ずつ撃墜し、同時にセイバーがスーパーフォルスティスビーム砲で2機を撃墜。ダガー隊を殲滅する。

    アグネス「(カウントMS51 MA1 リニアタンク2 対空砲3 空母2)」
    アグネス「(こちらは順調だわ。アスラン、ミネルバの陽動に釣られた、というか釣られざるを得なかった時点でこいつ等の運命は決まっていたわ)」

    しかし―

  • 181二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 00:18:57

    メイリン「ミサイル被弾!4発目です」
    タリア「ダメージコントロールを」
    アーサー「既に手隙要員全員で」
    ミネルバにカスピ海のフレーザ級からミサイルが降り注ぎ、ウィンダム隊第一波が取り付いている。ディンは?ショーンとデイルは。墜とされた?ミネルバの艦底に更にミサイル1発被弾。

    アグネス「ミネルバ、ブリッジ。こちらダガー隊殲滅、モビルアーマー1機撃破。そちらに…」
    タリア「砲台撃破を優先せよ。シンは?」
    アスラン「シンと砲台は俺とアグネスが。レイはミネルバの直掩に。ディン2機は?」
    アーサー「二人はフレアとチャフが尽きたから一旦カタパルトに収容…」
    バート「ザムザザー。本艦に急速接近!」

    アグネス「アスラン先輩。上申。セイバーは盾を拾ってミネルバに。砲台とシンは私とレイで」
    アスラン「了解。許可する。頼む」

    セイバーは自分が放り投げた盾を急いで回収に向かう。あれが無いと飛行形態に変形できない仕様になっている。無能か!

    私とレイは飛行形態のまま複相ビーム砲で対空砲を潰しにかかるが…。

    アグネス「モビルアーマー。ホバーで前進。リフレクターを展開!」
    もはや、誰も聞いていないであろう報告を怒鳴る。私とレイの複相ビーム砲が弾かれ、対空砲を破壊できない。おまけにビームライフル撃って来くる。

    でも、これでもいい。ホバーのモビルアーマーがバビに追いつくことは不可能だ。今はこいつの関心を引き付ける。そうすれば―

    爆音と共にインパルスが岩山を突き破って出現。
    同時に私とレイはビームライフル、ガンランチャー、複相ビーム砲を2機で全力照射して、モビルアーマーにリフレクターを展開させる。ミサイルは尽きた。でも、これで後ろが、がら空きになる。

  • 182二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 00:59:03

    インパルスをドッキングさせながら、シンが叫ぶ。
    シン「メイリン。フォースインパルスは!?」
    シンに通信、代わりに答える。
    アグネス「ミネルバは危機的状況。シルエット射出不可能。後ろからそいつを切って!」
    シン「何だって!!分かった!」

    インパルスは高エネルギービームライフルをモビルアーマーの後ろから接射。あれの後ろにも何か砲があったみたいだが、シンに一瞬で避けたわ。
    リフレクターが前にしか展開できないことが仇となり、モビルアーマーは爆音と共に撃墜される。

    一方、ブリッジからは回線越しにミネルバの危機的状況がリアルタイムに流れてくる。

    メイリン「ミサイル着弾3。艦底に1。艦首に2」
    アーサー「弾切れになっているザク3機をカタパルトに!ガズウートは湖上に投棄。パイロットだけでも」
    グーンパイロット「了解」
    ガズウートパイロット「了解…」
    アーサー「甲板昇降口を開放!」
    タリア「アスラン。カタパルトが今のままじゃ開けない!」
    バート「敵機直上!」
    アスラン「両甲板のザクをデコイに!パイロットは脱出せよ」
    グーンパイロット「了解!」

    通信越しに2つ大きな爆発音!まさか沈んでないわよね…。

    アグネス「ブリッジ!ザムザザーは?」
    タリア「アスランが墜とした。目前の任務に集中せよ!」

    アグネス「(言われなくとも)」
    レイと必死になって対空砲を潰している。今も撃破!対空砲3つ目!
    アグネス「(カウントMS47 MA1 リニアタンク2 対空砲6 空母2)」

  • 183二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 01:16:22

    問題はローエングリンが引っ込み始めてること。シン、インパルスが必死になって駆け上がっている。砲台の防御壁に付随する対空砲をレイと破壊。
    アグネス「(カウントMS47 MA1 リニアタンク2 対空砲7 空母2)」

    シン「そこだぁぁぁ!」
    ローエングリン砲にインパルス、ビームライフルを発射!もう一発発射!ローエングリン砲が爆散する。

    ローエングリン砲が中途半端に爆発したせいで、装甲シャッターが半開きになっている。
    シン「アグネス、レイ」
    アグネス「了解」
    レイ「了解」

    インパルスが装甲シャッターの中にビームライフルを連射。飛び退くのを待ち、私とレイ、バビ2機で複相ビーム砲をシャッター内に発射。上空からビームライフルも発射。ガンランチャーは弾切れだわ。更にもう一回複相ビーム砲を撃ちこむ。岩山の中で巨大な爆発が連鎖する音が響き渡る。
    レイ「シン!」
    アグネス「行くわよ!」
    インパルスをバビで両側から抱えてミネルバに向かって飛ぶ。
    山を飛び越す私達の目前でミネルバがカスピ海に墜落していくのが見える―

    アグネス「えっ…」
    レイ「なに?!」
    シン「そんなっ!」

    マリクさんの意地で墜落を何とか着水に持っていくが、着水した途端ミネルバは艦底と艦腹から大浸水。艦が一気に沈み、傾き始める。

    ミネルバの上空では必死にアスランがウィンダムと戦闘するのが見える。甲板組はもう、ヘリポートでビーム突撃銃を撃っているザクファントム1機だけだ。

  • 184二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 07:34:45

    まさかミネルバが堕ちるとは…

  • 185二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 09:14:09

    『絶望』という言葉は自分には無縁と思っていたのに。
    あの大破した船が私の現実…。

    シン「おっ!」
    アグネス「なに?」
    グゥルが後方から飛来!ピートリー級より通信。

    ピートリー級艦長「インパルス。それを使え。ミネルバに急行するんだ!バビも」
    シン「ありがとうございます」
    グゥルに飛び乗ったシン、インパルス。私とレイはバビを再び飛行形態に変形させ高速飛行。
    ミネルバ上空のウィンダム隊目がけて!

    後方に待機していたはずのピートリー級が全力でポイントBを突破し、直ぐ近くまでたどり着いていたんだわ。独断専行上等ね!臨機応変でよろしい。100000000アグネスポイント!

    ピートリー級艦長「本艦はこのままガルナハン郊外を踏破。湖畔まで進出し全武装をもってミネルバを支援する。グラディス艦長許可を!」
    タリア「許可します。ありがとう」

    アグネス「艦長生きてた。何より」
    私が家族以外の人の無事を喜ぶ日が来ようとは…。

    シン「メイリン、副長!シルエット射出機能は?」
    アーサー「射出機能は健在。しかし―」
    ウィンダムが邪魔ね。死にぞこないが30機。
    フレーザ級はあの湖面に漂う残骸が成れの果て?でも、まだ4隻戦闘を続行中。

    アグネス「ブリッジ、レイと私が何とか一瞬追い払います。その隙に」
    タリア「言う通りにして」
    メイリン「了解!」

  • 186二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 09:17:46

    レイのバビと共にミネルバ上空のウィンダムに突撃。なけなしの22.5mm4銃身機関砲で弾幕を張りながら、ビームライフルを発射。命中!

    メイリン「フォースシルエット射出」
    フレーザ級からミサイルと主砲発射を視認。ミネルバのCIWSがミサイルを撃ち落とす中、艦橋に砲弾が直撃!装甲区画より上の艦橋が吹き飛ぶが…。シルエットの射出は間に合う!

    シンはグゥルの6連装ミサイルランチャーをウィンダムの編隊目がけ、全弾発射。牽制に。
    そのまま飛び降りるとシルエット換装を開始。

    タリア「カタパルト開放。モビルスーツ発進。開放と同時にカタパルトにも浸水が始まる。クルーは退避を」
    アーサー「艦長!」
    タリア「水深から見て、沈没は免れる。着底するかもしれないだけ。早く!」

    私とレイのバビ後方に、ウィンダムが食らいつく。早い。バレルロールしながら必死に振り切ろうと苦闘する。アスランのセイバーは?

    アグネス「エネルギー切れ?まじ!」
    セイバーの機体の色が灰色になっているのを視認!

    そこに、カタパルトから飛び出したバクゥ3機の13連ミサイルポッドが火を噴く!
    ウィンダム9機が爆散。私とレイに食らいついてたやつとアスラン、セイバーに纏わりついていたやつ。

    まるで犬かきするように浅瀬を辿り着き、バクゥはこちらの援護を開始。
    ピートリー級の接近も視認。湖畔に辿り着く手前から対空ミサイルを発射し援護を始める。

    シン「うぉぉォォォォォ!!!」
    シンがゾーンに入ってこちらに突進、ウィンダムをすごい勢いで撃墜し始める。

    アグネス「うるさい。命中!」シンの乱入に一瞬棒立ちになった馬鹿を撃墜。
    (カウントMS53 MA1 リニアタンク2 対空砲7 空母2)さっき、混乱してMSカウント。間違えてたわ!

  • 187二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 09:23:51

    回線から、アスランとブリッジの通信音。
    アスラン「艦長!ご無事ですか?メイリン、デュートリオンビームを!機関が生きていれば」
    タリア「無事よ、メイリン」

    アスラン「アグネス、レイ。援護を」
    アグネス「了解」
    レイ「了解」

    メイリン「デュートリオンビーム照射開始」
    遂にカスピ海に着底したミネルバにセイバーは接近、デュートリオンビームビームの照射を受け取る。

    私とレイはそれを飛び越え、まだ戦闘を続けるフレーザ級4隻のうち2隻に複相ビーム砲を発射。爆発、轟沈を確認!
    (カウントMS53 MA1 リニアタンク2 対空砲7 空母2 駆逐艦1)

    私達の背後からエネルギー補充が終わったセイバーのプラズマ収束ビーム砲が発射され、カスピ海小艦隊駆逐艦、最後の2隻が一度に轟沈!

    振り返るとシンも最後のウィンダムを撃墜していた。大破着底したミネルバの先でピートリー級から歩兵部隊がガルナハンに侵入を開始。

    町から撤退しようと連合のVTOL輸送機が飛び立つ。対MSヘリコプターも!ピートリー級が危ない。

    バビをガルナハン郊外に!
    アグネス「ブリッジ、アスラン先輩!VTOL輸送機、対MSヘリコプター撃墜許可を」
    タリア「許可します。ヘリコプターを優先!レイも。アスランはミネルバ上空を守って」
    アグネス「了解」
    レイ「了解」
    アスラン「了解」

  • 188二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 09:28:10

    ヘリに突進する途中で鈍間なVTOL輸送機とすれ違う。撃墜!
    (カウントMS53 MA1 輸送機1 リニアタンク2 対空砲7 空母2 駆逐艦1)
    アグネス「(ビームライフルがエネルギー切れ?最悪!)」
    まだ、ビーム砲が残ってるわ!

    アグネス「(うん?)」
    対MSヘリコプターはピートリー級もガルナハンを占領し始めたザフト歩兵部隊も蜂起したレジスタンスも―勿論脱出に間に合わなかった味方も―一切省みることなく、旧アゼルバイジャン領に逃走を開始。

    アグネス「(腹立つ!こいつら最悪だわ)」
    無論、こちらに見逃す道理はない。

    レイのビームライフルがもう1機ヘリを撃ち落とし、私も奴らの上をとって複相ビーム砲を発射。命中!
    (カウントMS53 MA1 対MSヘリ1 輸送機1 リニアタンク2 対空砲7 空母2 駆逐艦1)
    敵ヘリコプターの残数は3機になる。

    アグネス「連合ヘリに警告!武装解除を宣言し、こちらの誘導に従い着陸せよ」
    前方に回り込み、国際救難チャンネルで呼びかける。

    連合兵「分かった。武装解除に応じる」
    アグネス「レイ!」
    レイ「分かっている!」

    3機のヘリをガルナハン郊外に引き返させ、着陸させる。
    アグネス「艦長。ヘリコプター隊の降伏を確認」
    ピートリー級艦長「こちらも、逃げ遅れた連合兵将兵より降伏の申し出あり」
    タリア「了解。連合兵の降伏を許可します。人道的対処を。信号弾上げ」

    上空に輝く信号弾を見て、涙が出そうになる。やっと終わった。
    アグネス「いや、これから救助活動か…」死にそう...という言葉は使わないようにしたいけど、まさにそんな気分よ。

  • 189二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 12:11:06

    セイバーのデュートリオンビーム!
    セカンドステージMS共通機能なのにセイバーは使わなかったんだよな

  • 190二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 13:39:40

    オーブ沖でのミネルバの被害が本編より軽く済んだ分こっちが大惨事に

  • 191二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 13:43:16

    本編ではシンとアスランの関係向上イベントに近いガルナハンがどえらい総力戦になってしまった…

  • 192二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 20:32:47

    (どうしようこれ…)

  • 193二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:03:06

    ブリッジとアスランに通信
    アグネス「ブリッジ、アスラン先輩。本戦闘はこれにて終了したと理解してよろしいでしょうか?敵の再攻撃の可能性は?」
    タリア「バート?」
    バート「敵、再攻撃の兆候なし。さっきの隊が最後かと」
    アーサー「アスラン、アグネス、シン、レイは湖面の救助・捜索活動を」
    アスラン「了解」
    シン「了解」
    アグネス「了解…!ブリッジ!バビのエネルギー残量が…」
    レイ「…。ブリッジ!バビのバッテリーが切れる」

    タリア「ピートリー級。バビ2機着艦許可を」
    艦長の強い声にピートリー級艦長も呼応。
    ピートリー級艦長「了解。バビ2機急げ」

    アグネス「了解」
    レイ「了解」

    私とレイ、バビ2機。湖畔で未だ宙を睨むピートリー級に着艦する。
    バビのコックピットには、なお緊張が張り詰めたブリッジのやり取りが聞こえる。

    アーサー「ザクは万一の事態を考慮して、そのままヘリポートにて待機せよ。ミネルバ全クルーは引き続き本艦のダメージコントロール、排水作業を続行せよ。カタパルト閉鎖。艦長、降下歩兵は?」
    タリア「降下歩兵にはボートを。湖畔に上陸して、先にガルナハンを占領した部隊と合流せよ」
    アーサー「一部歩兵が、本艦の復旧に協力を申し出てくれているそうです」
    タリア「歩兵隊指揮官の同意を条件にお願いして」
    アーサー「了解!」

    ピートリー級艦内でバビから下りる。艦内整備兵に敬礼しようとすると全員の拍手で迎えられる。このタイミングだと、どんな顔をするべきなのか迷うわ…。横を見ると同時に下りたレイも戸惑っている。

  • 194二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:05:32

    アグネス「(ミネルバが大破着底している状況で自分だけ一抜けしたようで、気まずいわね。何か他人を気遣うのも、私らしくないけど)」

    ただ、ここで彼らを責めるのもお門違いだ。彼ら整備兵にとっての戦場はピートリー級の中のモビルスーツデッキ。勝利をそこで喜ぶのは当然なんだ。そして、私の戦場はたぶんここではない。何より、救助活動に加わらないと勲章を一つ逃してしまうじゃない!

    アグネス「皆さんありがとうございます。生還できたのは貴方方のお陰です。ただ、私とレイはミネルバの元に戻らないと…。お預かりして頂いたグーンは発艦可能ですか?」

    あの資源ゴミ。この艦に預かってもらっているのよね。歩く魚雷発射管扱いしていたけど、そろそろ役に立ってもらわないと!

    レイ「もし可能なら、すぐにでも発艦許可を」
    レイも行く気だわ。よろしい。助かる。連合の反撃があったらバディで動かないと危険だわ。

    ピートリー級艦長「いつでも発艦できる。本艦の手隙要員全員でミネルバのダメージコントロール・修復に向かう」

    背後から人の気配がしたと思ったら、強くて頼もしい声。振り向くと有能そうなモブ顔の艦長。

    アグネス「ありがとうございます」
    レイ「ありがとうございます」

    ピートリー級艦長「本艦は引き続き、ガルナハン市、カスピ海沖合の警戒を続ける。レセップス級デズモンドも間も無く到着する。もう少しの辛抱だ」

    アグネス「はい」
    レイ「はい」

    レイと揃って敬礼。返礼を受けるやグーンに駆ける。

  • 195二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:10:44

    ミネルバ撃墜にショックを受けたり艦長の無事を喜んだりミネルバが大破着底中に安全地帯に居ることを気まずく思ったりと順調に絆されてるなぁ

  • 196二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:19:01
  • 197二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:19:54

    埋め

  • 198二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:20:13

    残りは好きに使ってね

  • 199二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:24:29

    うめうめ
    アグネスのこれからが気になる

  • 200二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 23:14:41

    200ならミネルバ隊全員無事生存

オススメ

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