【閲覧注意】俺は何も知らないうちにヴェリタスに軟禁されたい先生

  • 1二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:45:22

    好意でもヤンデレでもなんでもいい、とにかく一生監視されて管理されたい
    特にコタマに盗聴されながらハレにドローンで監視されてるのとかすごく刺さる

    建て直しです、今回は落とさない様に努力します

  • 2二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:45:49

    「先生、いつもありがとう!」
    そう言って、小さなプレゼント箱を渡される
    “どうしたの?”
    「今言ったじゃん、日頃のお礼だって」
    「だから、もらってよ!先生!」
    そう言ってマキからのプレゼントを受け取る
    “開けてもいい?”
    「勿論!」
    中身は時計型デバイスだった、もちろん時計としても使える、高級品といえば高級品だが、どうやら…
    “もしかしてオリジナル?”
    「流石先生!わかってる!」
    “うわあ!嬉しい!ありがとう!”
    「早速つけてよ!」
    “うん!”
    至って普通の時計、だからこそ気兼ねなく受け取れた
    …これが騒動の始まりとも知らずに

  • 3二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:46:09

    “はー、今日は忙しいな…”
    書類仕事が終わらない、今日は休日のつもりだったから当番も呼んでいない
    もう何時間も椅子に座り、何時間も書類と睨めっこしている
    “気分転換に外にでも出ようかな、お腹も減ったし…でも仕事がなぁ…”
    そんなことを考え始めて結局動けないまま30分ほどたった頃だろうか
    「あ、開いてる!先生!」
    “マキ?どうしたの?”
    「いやー、ヴェリタスでピザパーティーをしようとしてたんだけど、食べ切れそうになくて、食べてくれない?」
    “え、ピザ!?”
    思わず立ち上がる、こんな空腹な時になんでジャンキーで魅力的な提案なのだろう
    “食べる食べる!”
    「やった!じゃあ、先生食べるって!」
    「良かったです、ピザが無駄にならずにすみました」
    「先生、ドリンクもあるよ、どれがいい?」
    “コタマに、ハレ?”
    「…先生、ずいぶんと煮詰まってるみたいだね」
    “チヒロも!?珍しいね…”
    「…何か不満?」
    “ううん、そうじゃないよ、ちょっと意外だっただけ、むしろ嬉しいよ”
    「そっか」
    チヒロが複雑そうに笑ってオフィスのソファに腰掛ける
    “……あれ?ピザは?”
    「まだだよ?」
    何を言っているのかと言った様子で答えるハレ
    「今デリバリーがこちらに向かっています」
    そして絶望的な事実を突きつけるコタマ
    私はもうしばらく空腹と戦う事に内心喘ぐこととなった
    “……ピザ…”

  • 4二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:46:45

    「ピザが届きましたよ」
    “やった!!……て、多くない?”
    「だから言ったじゃん、食べ切れないって」
    「それにしたって八枚は多いよ…」
    “…まあ、冷める前に食べちゃおう!”
    とりあえず一つの箱を開く、もわっとした蒸気、刺激的で爽やかな香り…
    “あ、これは…!ジェノベーゼだ!”
    薄切りのジャガイモにバジルのソースとチーズのシンプルなピザ、だがこれが美味しい
    「先生、行儀悪いよ」
    “ごめんごめん、お腹減っちゃってて”
    「副部長は細かいですね、早いところ食べてしまいましょう」
    「…コタマ?」
    ムッとしたチヒロをコタマが惹きつけている内にピザを一切れ取る
    ぼとぼととジャガイモや固まったソースが箱に落ちるが、もはやそんなことはどうでもいい、かぶりつく
    “うん!美味しい!”
    ホクホクのジャガイモに程よく塩気のあるジェノベーゼソース、バジルの爽やかな香りがしつこさを打ち消してくれる
    「え、それそんなに美味しいの?…一切れちょうだい!」
    「先生、わかってるね、私のチョイスだよ」
    ハレはカスタムで薄めの生地にしてある様だが、私の本音を言えばクリスピー生地にして格子状に切ったものをクラッカーの様につまむのが堪らない
    「あ、意外と美味しいかも…炭水化物と炭水化物だから、カロリーが怖いけど…」
    「…マキはまだそんなこと気にする必要ないでしょ?」
    「ねえ、そればっかりじゃなくてこっちも食べて」
    チヒロの声で他のピザの存在を思い出す、次に手に取ったのは…
    「お、これ私のやつ!マヨネーズとお肉の香ばしさが最高だよね!」
    “え、私これ食べたことないや…もぐ”
    マヨネーズを全体にかけていることから、胃もたれが気になって敬遠していたが…これは美味しい…!甘辛い肉とマヨネーズが合わないわけがない!ピザ生地との相性だって、悪くはない
    “しかも、耳にチーズ…背徳的…!これは、ヤバい…!”
    若さゆえの胃の強さ、脂への耐性をこれでもかと見せつけられる様なカスタム…
    “…美味しいけど、二枚目はいいかな…”
    「えー!?」

  • 5二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:47:25

    “お、これはマルゲリータ?”
    「だね、私が頼んだやつ、流石にデリバリーでもハズレはないかなって」
    “チヒロらしいね”
    持ち上げるとビヨーンと伸びるチーズ、トマトソースの香りがたまらない
    口に運べばまずはトマトソース、そして荒く刻まれたバジルの風味、所々に塊のチーズがあるのもいい
    トマトソース自体も美味しい、だが塩気が物足りない、そこでチーズの塊が口に含まれるとちょうど良くなる
    “これには私、途中で辛味ソースが欲しくなるんだよね”
    「さすが先生、わかってる」
    普段はかけることはないが、このマルゲリータだけは別だ、シンプルな味わいのマルゲリータを食べ続けるのは正直辛い
    差し出された辛味ソースをすこしかけ、口に運ぶ
    先程の物足りなさを吹き飛ばすほどの刺激的な味わい、耳を折りたたみ、トマトソースを纏わせて口に運ぶ
    “うん、美味しい”
    「先生、コーラとジンジャエール、どちらがいいですか?」
    “……ジンジャエール!”
    コーラと言いたいところだったが、それでは足りない
    カップの蓋を外してジンジャエールを一気に流し込む、コーラより甘さが控えめなジンジャエールだからこそ、まだ食べられるのだ
    「先生、口元、汚れてるよ」
    “あ、ごめん…さて、次は…”
    その後もたくさんのピザを食べ続けた、もちろん全ては無理だったので、残りは冷蔵庫に入れた
    食べ終わったら休憩して、なぜか仕事を手伝ってもらえて、夜までかけて終わったら残りのピザを食べた
    結局8枚のピザは箱を残してその日のうちに消え失せた

  • 6二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:48:03

    「これでよしっと」
    最初は、仕方ないからって理由だった、先生が疲れで倒れそうだと思ってたから、体調管理のためのデバイスを渡した
    倒れた時すぐに駆けつけられる様に自分の端末にデータを常に送る様に設定した
    先生の目はいつも深いクマがあって、優しく笑っていてもどこか影があった
    それに、先生は私の聞いた限り、2度命の危機に瀕している
    一度はエデン条約で、一つは、キヴォトスが終わる危機で
    …私はなんとなくわかっていた、先生は、私たちのために簡単に命を投げ出してしまう
    でも、私が怖かったのは、そんな事故みたい死に方じゃなくて
    先生が誰も知らないところで、静かに死んでしまうこと
    苦しくても、誰も寄り添ってあげられなかったら?
    先生は私達の辛くて苦しい時、自分のことを投げ捨てでも寄り添ってくれる
    でも、先生が辛い時は?誰が、気づけるのか?
    ふと、そう過ぎってしまったから…私は……

  • 7二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:48:22

    「…まだ起きてる」
    私は、先生と同じ時間に寝て、先生と同じ時間に起きる様になっていた
    先生の睡眠を監視し、体温を監視し、食事や休憩を監視していた
    はじめ常に時計をつけていてくれることが嬉しくて眺めていたこのデータも
    いつの間にか常にパソコンの端に写していないと気が済まなくなった
    (……♡)
    この気持ちの名前は知っている
    でも、先生はきっと受け入れてくれない
    だから伝えずに見守るだけ、私の気持ちは伏せたまま
    先生に心の中でおやすみと呟いて眠って、おはようと呟いて目を覚ます
    それだけで幸せだった
    そんな生活をしばらく続けた頃…

  • 8二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:48:37

    「あれ、まだ食べてない…私もお腹減ったのに」
    先生が食事を取らない日があった、私も先生が食べるまでは食べないでおこうと思っていたのでその日は時間の流れが嫌に遅かった
    「マキ、ご飯どうしますか?」
    「…んー…まだいいや」
    コタマ先輩の誘いを断り、パソコンを眺める
    「……こんな事なら、盗聴機能でもつけておけばよかった」
    そんなことを思いながらキーボードの上に上体を投げ出す
    (そういえば今日はおやすみだったはず…)
    先生のパソコンに仕込んだバックドアにアクセスする
    (うわ、すごい量の資料…仕事してたんだ……)
    「コタマ先輩、どう?」
    「ダメです、何をやってるのかわかりませんが、今朝から何も食べてませんし、これは副部長辺りに相談を…」
    「そうだね」
    2人の会話が耳に入る
    (副部長…?そうだ!)
    そして、この状況において、最高の作戦を思いつく
    「ピザ食べたい!」
    「え、マキ?」
    「どうしたんですか、いきなり」
    「ピザのデリバリーを取ろうよ!」
    「…いいけど」
    「悪くないですね、ピザなら早いし美味しいですし…」
    「副部長も呼んでピザパーティー!」
    「…ええ…?」
    勢いのまま2人を丸め込む

  • 9二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:49:05

    「コタマ先輩がエビマヨのチーズとペパロニで、ハレ先輩がジェノベーゼの生地うすいやつとスパイシーの耳チーズ」
    「それからチヒロ先輩がマルゲリータと4種類のやつ、私が炭焼きカルビのマヨネーズ耳チーズとチキンチーズ…と」
    「それからドリンクは、妖怪MAXを3本にコーラとジンジャエール、アイスコーヒーを3つずつ…届け先は…」
    「シャーレで!」
    注文を一通り終え、作業中の先輩たちに声をかける
    「頼んできたよ、1人2枚ずつ!」
    「はぁ!?」
    「ま、マキ、そんなに食べられませんよ…?」
    「え?もしかしてみんな2枚聞かれたの?…てっきり私が選んでいいのかと思ったのに」
    「ハレも聞かれたの?コタマも?」
    「…はい」
    「そんなに頼んでも、食べられないよ…?」
    予想通りの大混乱が起きた、こんなに食べられないことくらい私もわかってる
    「うーん、いけると思うんだけどなぁ…あ、そうだ!」
    「「「?」」」
    「先生と食べない?」
    「えっ」
    「先生と、ですか…」
    「……いや、5人いても別に食べ切れるわけじゃ…」
    困惑はあれど、否定の言葉は上がらない
    「…まあ、セミナーと食べるよりはマシかな」
    というチヒロ先輩の言葉で全員が納得し、私はシャーレに届け先を変更するフリをして全員でシャーレに向かった
    そこからは空腹と疲労で倒れかけている先生を見つけたふりをして
    ピザを食べ、仕事を手伝い、先生を助けた
    「……♡」
    今日は全て、上手く行った
    すごく素敵な気分だった

  • 10二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:49:25

    “え?メンテナンス?”
    「そう、それ、マキが作ったやつでしょ?」
    “うん、そうだけど…でも、どうして…?”
    「…何か変だった?」
    “いや、私はてっきり…”
    “こういう機械系のメンテナンスは、エンジニア部や、ハレがやるものだと思ってたんだ”
    “チヒロ”
    「まあ、後輩の作ったものだから、見るくらいはできるよ」
    “……?”
    「マキが何か仕込んでないか、気にならない?」
    “えっ”
    「急にシャーレのパソコンがレトロなFPSしかできなくなったりして」
    “……いや、流石にそれは……”
    “……”
    “……お願い、確認してくれる?”
    「うん、任せて」

  • 11二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:49:48

    「何も問題なかったよ、ごめんね」
    “ううん、ありがとう”
    時計を受け取り巻き直す
    “…あれ?”
    「ごめん、バンドが弱ってたから似たやつに変えちゃった」
    “……そっか、ありがとう、でも次は一声かけてほしいな”
    「うん、ごめんね、もしかしてお気に入りだった?」
    “うーん、そうじゃないけど、マキに貰ったものだったから”
    「そっか、配慮が足りなくてごめんね」
    (……ふーん)
    “…チヒロ?”
    「私がプレゼントを渡したら、それも大事にしてくれる?」
    “それはもちろんだよ、でも──”
    「じゃあ、今度選んでくるね、私のだけ受け取らないなんて無しだから」
    “う、うん…”
    “(断る隙も無かったな…)”
    「楽しみにしてて、とっておきを用意するから」
    そう言ってその日のチヒロは帰ってしまった
    正直、チヒロのセンスは予想できない、彼女の性格からしてふざけて物を贈るタイプではないけど
    “何を渡されるんだろう…?”

  • 12二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:50:06

    「先生、きたよ」
    “チヒロ、ってことは…”
    「うん、はいこれ」
    “…万年筆?”
    「先生は仕事柄サインをする事も多いし、いつもボールペンじゃカッコつかないと思って」
    “よく考えてくれたんだね、ありがとう、嬉しいよ”
    「もちろん、適当なものなんて渡したりしないよ」
    「インクの補充が簡単なタイプにしたから、使ってみて、あ、もちろん手に馴染まなければその辺に転がしてくれて良いから」
    “いやいや、そんなことできないよ”
    「でも、きっと先生にペンをプレゼントする生徒はこれからも出てくるし、何より消耗品だからね」
    「いつまでも使ってほしい、って言うのはみんな思う事だけど」
    「壊れたり、他に使いたいのが出てきたりした時、迷わないでほしいから」
    “チヒロはやさしいね”
    「ううん、これは私のわがまま」
    「それじゃあまたね」
    “うん、また、ありがとうね”
    チヒロを見送り、万年筆をよく眺める
    “(……うーん、不必要な装飾もないし…)”
    簡単に分解、再組み立てもできる…
    “(…心配しすぎたかな?)”
    隠しカメラや盗聴器の類はない、そもそも電力供給できないので、そんな心配は必要ないのだが…
    “(でも、なんだか気になったんだよね、うーん)”
    チヒロのプレゼントを贈りたいと言う気持ちを疑うわけではないが…
    まるで、マキへの対抗心の様な物を感じた…気がしただけだったが、どうやら考えすぎだったらしい
    “早速使おうかな”

  • 13二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:50:26

    カリ…ズッ……カリカリ…
    「……なるほど、これは悪くないね」
    ヘッドホンを抑えて音に集中する
    目を閉じて、ジッと聴く
    紙とペン先が擦れる音、時たま聞こえる息遣いや独り言
    「……うん」
    音質はそこまで良くは無い、だけど決して悪くも無い
    唯一気になったのはバッテリーだったけど、それも解消済み
    (盗聴器もカメラも、万年筆には仕込んで無いけど、ちゃんと仕込んであるんだよ、先生)
    先生がカメラを覗き込む
    バレないとわかっていても、つい一瞬心臓が跳ねた
    “うーん、もうこんな時間かぁ…”
    そう、全て、そこに仕込んだ
    マキの時計の中に…
    時計のベルトは中身をくり抜いて、予備のバッテリーをそこに埋め込んだ
    画面が起動するとカメラも起動する様になってる
    そしてそのデータは、常に私のパソコンに流れ続ける
    (マキにバレるのは時間の問題だけど、それまでは)
    それまでだけで良い
    (独り占めさせてもらおうかな)

  • 14二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:50:45

    「マキが気づくまで1週間…いや、流石に見積もり甘過ぎかな、いつか、いや、3日かな」
    「気づいたら、私にデータを要求するだろうし…それはいいとして…どうやって丸め込むかな」
    マキは賢い、だけどそれ以上に、自分の楽しみを優先する節がある
    なら、マキを丸め込むのは簡単だと思う
    「…他の2人にバレた時の方が面倒かな、うーん…マキからバレるのは避けないと…」
    単純に頭数が増えるのも面倒だけど、コタマは盗聴に関しては私よりも色々やり手だ、バレるとめんどくさい
    それにハレの技術、特にアテナ3号を作ったりしたのもそうだけど…機械製作の腕がいい
    だから、あの腕時計の細工はハレには簡単に見抜かれそうだ
    「……はぁ…」
    ズズズ…と、缶コーヒーを啜る、ぼんやりと作業をしながら、のんびりと過ごして…
    やることが一通り終われば、先生の様子を見る…
    ただでさえ忙しいから、先生と関わる時間は人より少ない
    だからこそ、このくらいの特権があってもいいはずだ
    このくらい、許されないはずがないのだから……

  • 15二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:51:10

    「……はぁ」
    そう考えていた自分を殴りたかった、ペチンと音を立てて頭に手を叩きつけ、ため息をつく
    理由は目の前にいる“3人”、そう、3人だ…考えればわかるはずだった
    私よりも、ハレとコタマの方が親しいのだから…こんな時、1人で危険地帯に乗り込むわけがない
    「それで、何か申し開きはありますか?副部長」
    「チヒロ先輩、私のデバイスに何したの…?」
    「待って、いっぺんに喋らないで、整理させて…」
    少し怒っているコタマと、泣きそうなマキ、ハレは…アテナ3号に現状を記録させている様だ
    思った以上に深刻な事態になってしまった、これはマズい、矯正局行きの可能性まで見えてきた
    (……使いたくなかったけど、この手段は)
    …だが、ここでこの3人を敵に回しても得はないし、なによりお互い協力した方が身の為だ
    ……唯一にして最大のデメリットは、先生を共有する必要があること
    「…わかった、全部話すよ、でも…聞き終わったらこっちからの提案も聞いて」
    「提案?」
    「…まあ、こんなことした理由は、マキと同じ」
    「同じ…?じゃ、じゃあ…先輩も…?」
    「先生が好きだから、それ以上の理由なんている?」
    「……なるほど」
    コタマが深く頷く、私たちにとってすればコタマが先生を盗聴してるのは公然の事実だ
    そんなコタマに責められる謂れは、最初からない、けど…今はそれも利用できる
    「正直、マキのデータも、コタマのデータも、ハレのも抜こうと思えば引き出せたけど…」
    「でも、それじゃ意味がないと思って、私が好きな人の事は私の手で知りたい」
    3人が黙る
    「でも、こうなっちゃったし…ここで提案なんだけど」
    「淑女協定…っていうのはどう?」
    「淑女…」「協定?」「って何?」
    3人が口々に呟く
    心配ない、だって3人とも、いや、私達みんな、先生が好きなんだから……この提案は断れない

  • 16二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:51:26

    すごく単純で、簡単な話だった
    私達4人は、お互いの行為を黙認する、そして、先生をそれぞれで監視し、管理する
    4人で協力して、先生を自分のものにする、自分だけの先生を見つめている…
    それが協定の内容、もちろん先生に好意を伝えて玉砕しようが付き合おうが、好きにすればいい
    その勇気が誰かにあればの話だけど
    「……」
    そんなもの、誰にもない、ギークでナードな私達に、そんな勇気はない
    明るくて元気なマキも、趣味のためにはある程度芯のあるコタマとハレも
    そして、私自身も…踏み込めない、だって、一度失敗したら、立ち直れないから
    だから、入念な、入念すぎる下準備のために、これは必要だった
    そのまま勇気ある愚かな誰かに先生を取られるなんて耐えられるわけがないのだから

  • 17二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:51:46

    “やあ、よく会うね”
    「そうだね、まあ、シャーレに来てるんだから当然だよ」
    “うん”
    間抜けな会話をして、2人で笑う
    今日のハレはどこか機嫌が良いらしい
    大きな声で笑うタイプでは無いが、にへらとした笑みをよく見せてくれる
    「アテナ3号、お昼ご飯を注文してくれる?…えーと、先生、何がいい?」
    “え、うーん…”
    顎に手を当て頭を悩ませる、空腹感は感じているが、食へのこだわりは最近とんと失せてしまった
    簡単に手軽に、とは思う、だがそれは1人での話だ
    ただでさえ栄養の足りてない様な華奢な女の子に普段の私の様な適当な食事を食べさせたくは無い
    『提案、対象、シャーレの先生はビタミン、タンパク質が不足していると推測』
    『サラダをメインに据えたレストランのメニューの一覧を表示します』
    “…今の、アテナ3号の?”
    「うん、そうだね、すごく簡単なメディカルチェックもできるから」
    …サラダが足りていない、確かに炭水化物ばかり食べているから、それはそうなのだが
    “くっ……”
    否定できない事実だが、自身の不摂生を指摘されるのは、悔しいし認めたく無いものだ…
    「じゃあ、これとこれ、それから、メインはこっちのオードブルでいいよね?」
    “あ、うん”
    生返事で応えてしまったが、まあ悪くは無いだろう
    サラダボウルを2つにチキンをメインにしたオードブル、普段の自分なら決して、何があっても選ばないだろう
    だが、私は大人だ、見栄を張る必要がある時もあるのだ…
    “(…こんなに高いサラダなんて食べたことないな、これなら4つでフィギュアやプラモが買える…)”
    しばらくの仕事の後、フードデリバリーが届く、普段のおにぎりやカップ麺とは違う、健康な食事
    “(だけど…)”
    普段のボリューミーで不健康な食事に比べると物足りなさも感じてしまう
    「早く食べよう?先生」
    “うん…”

  • 18二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:52:23

    むしゃ…
    “(うん、少しいい野菜なのかも…?)”
    それくらいの気持ちだ、ドレッシングもかけたが、味はそこまで濃くはない、悪くはないのだが…
    オードブルも鳥の胸肉をメインにしたヘルシーな肉料理なのが物足りなさを加速させる、せめてソースが欲しい
    “(ハレには悪いけど、何か物足りないな…)”
    「…あれ?先生、混ぜてないの?」
    “え?”
    「サラダボウルはドレッシングを入れた後、こうやってよく混ぜてから食べるんだよ?」
    “……?”
    「それじゃあんまり美味しくないでしょ?
    だから、ちゃんと和えてから食べるんだよ」
    “…そ、そうなんだ”
    「ここのドレッシングは分離しやすいから、そのままかけて食べると油っぽくて味もしないから美味しくないんだよね」
    ハレの言う通りによく混ぜる
    底の方からひっくり返すように混ぜてみると粒々した小さいナッツの様な何かも顔を見せる様になってきた
    そしてそれを食べる
    “…うん、美味しいよ”
    さっきよりは全然美味しい、これは美味しいサラダだ
    「…ふふふ、まだ物足りなさそうだね、先生」
    “え?”
    「そんな先生にさらに提案、オードブルのチキンスライスにサラダを包んで食べてみて」
    “ドレッシングじゃなくてサラダに?”
    ハレがチキンスライスでサラダを包んで口に運ぶ、美味しそうに顔を綻ばせる
    “……あむ……美味しい!”
    「でしょ?」

  • 19二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:52:52

    そう、味の薄いチキンにドレッシングの味わいが足されることで、物足りなさが消えるのだ
    肉の食感も最初に食べた時は歯切れの悪さを感じた
    だがシャキシャキとしたサラダを包む事で食感に変化が生まれて悪くない
    “これ、すごく美味しいよ…!”
    「先生もこれで健康になれるね」
    “うん、こんなに美味しいサラダ初めて食べた…!”
    オードブル、と言うと前菜やおかずの盛り合わせ、と言うイメージだったが
    これはサラダ用のトッピングのオードブルだったのか
    ひょいひょいとベーコンやチーズなどをサラダに加えて口に運ぶ
    特に塩気の効いたベーコンが良い、市販のチーズも粉チーズではなく、削りチーズで味わいもしっかりしている
    “…あ”
    いつの間にか、トッピングを残したままサラダを食べ切ってしまった…
    「あ、余っちゃったね、オードブル」
    “うん、残念だけど今度別の何かで…”
    「…ふっふっふっ……」
    “…まだ何かあるの?”
    ハレがオードブルのこんがりと焼かれたパンを皿に取り、レンジで温める
    てっきり、クルトンの様な物だと思っていたが…
    ボウルに残ったドレッシングをたらり、そして余ったチキンとチーズを乗せて…
    「はぷ…うん」
    “…ごくり”
    それに倣って、トッピングしたパンを一口…
    じわぁ…と広がるドレッシングの旨みに、かけらになった野菜がしっかりいる
    そしてチーズとチキンも良い…これがオーブンならもっと美味しかっただろう
    “…これは、完敗だな”
    サラダを頼んだ時のガッカリ感はどこへやら
    最高のランチタイムになったのだった

  • 20二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:53:23

    「先生、先生1人じゃ健康管理ができないみたいだから」
    ふわふわと浮かぶアテナ3号がディスプレイを投影する
    そしてそのディスプレイの操作が終わった頃に、サイン画面が現れる
    「先生にあげる」
    “えっ?”
    「この子を先生にあげる、私も他の人の使用感が知りたいから、テスターになってくれない?」
    「特別なことはしなくても良いよ」
    “……いいの?”
    「うん、いつものお礼だと思って」
    お礼、最近お礼ばかりもらっているのが気になるが…
    だが、正直有難くもある、健康管理はアロナやプラナには任せられない
    その上、アテナ3号は様々な機能が備わっているし、私が面倒に感じる日常生活を手伝ってくれる
    “……”
    だけど、そんなおんぶにだっこな大人が許されるのだろうか?そんなわけがなく、大人は生徒たちの見本
    私は自立した大人を見せるべき、なのだ
    「それに、アテナ3号ならフィギュアやチケットの売りはじめにパソコンに張り付かなくても、決済まで自動だよ」
    “ありがとうハレ!!!”
    …こうして、情けなく大人の威厳は消え去ったのだった
    (……♡)

  • 21二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:53:50

    淑女協定からしばらくが経った
    私達は、それぞれ思いついた様に先生の様子を眺める日々を送っていた
    こちらから何をするわけでもない、ただ気になってるから様子を見るだけだった
    ……それを不満に思い始めたのは、やはりマキだった

    “今日はありがとう、ほんとに助かったよ”
    「こっちこそ、これで今月もなんとかなりそう…でも、仕事を溜め込みすぎるのはよくないよ、先生」
    “あはは、面目ないな…”

    先生の周りには常に誰かがいる

    「先生、最近体調はどうですか?少しやつれて見えますが」
    “うーん、どうだろう…自分では悪くないと思うんだけど”
    「…もし、隠す様でしたら救護が必要になりますが」
    “本当に自覚症状はないんだよ!?”

    それはシャーレの中に限らなくて

    「先生、最近ちゃんと食べてますか?」
    “いやー、時間がなくてね”
    「せっかくですから、食べて行ってください、お昼の余りの材料ですが、すぐに作りますから」
    “いいの?ありがとう!”

  • 22二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:54:12

    どこへ行っても、必ず誰かが居て、先生も毎日の様に誰かに会いに行って…

    「先生、今度またみんなでアクアリウムに…」
    “うん、またみんなで行こうか”

    どんな学校に行っても、先生は人気者、ミレニアムに限らず、トリニティ、ゲヘナ、それ以外だって…
    「……むぅ…」
    これは、そう、盗聴盗撮が始まってしまったせいだ
    先生はみんなの物…それが、不満で仕方ない、そんなマキの気持ちも、確かによくわかる…
    「…あ、そうだ」
    そんな時、私は1つ、良いことを思いついてしまった
    先生が人気なのは、生徒達にとって先生が近くて、大きな存在だから
    ならば、存在を遠ざければ段々とその人気は薄れていく
    …そうすれば、私達だけのものになる…
    「どうしたの?ハレ先輩…」
    さっきまで膨れっ面だったマキも、私が何かを企んでいるのに気付いたのか、近づいてくる
    「マキ、少し手を貸してくれる?あとは…コタマ先輩にも手を借りようかな…」
    「え?何?何するの?」
    「…先生を私達のものにしちゃおう」
    チヒロ先輩にも協力は取り付けなくてはいけない
    だけど…これは絶対に協力してくれない
    なら、すでに出来上がった状況を突きつけて、向こうがした様に断れない状況を用意して
    「…ふふっ」
    絶対に断らせない、だって…先生が好きなのは、みんな一緒なんだから

  • 23二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 22:56:20

    とりあえず前回スレとホスト規制で投下できなかった分を投下
    ここからはゆっくりやります

  • 24二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:20:55

    「先生、今日はいい天気だね」
    “うん、だけど珍しいね、ハレが買い物に誘ってくれるなんて”
    「欲しいものがあったから、でもおかげで揃ったよ」
    “うん?”
    「そうだ、先生、少しお茶して行かない?」
    “いいよ、どのお店がいいかな”
    “(…今日のハレ、なんだか変な様な気がする…)”
    そのあとカフェでコーヒーを飲み、一服してシャーレへの帰路に着く
    「ねえ、先生?」
    “うん、どうしたの?”
    「……先生、壊れやすいものって、どうやって保管してる?」
    “電子機器?”
    「ううん、フィギュアとかの話かな?」
    “うーん、じゃあガラスケースなんておすすめだけど、でも私は手元に置いておきたいし、すぐに手に取れる位置に置いちゃうな…”
    「やっぱりそうだよね」
    「やっぱり、できるだけ安全で、できるだけ近くにあって欲しいよね」
    “うん、そうだね…ハレ?”
    「先生、早くシャーレに戻ろう」
    “う、うん…?”
    シャーレに戻ろう、その言葉を肯定したことを私は後悔した
    シャーレは私にとって、第二の家の様な場所だ
    そこに逃げ込めば私は安全だと勘違いしていた
    其処こそが、私の檻になるとも知らずに

  • 25二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:32:46

    このレスは削除されています

  • 26二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:50:11

    あれ、消えてる?

  • 27二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:50:52

    やりそうな手前で止まってる……

  • 28二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:56:43

    復活したな

  • 29二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 09:47:35

  • 30二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 19:38:00

    このレスは削除されています

  • 31二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 22:55:16

    復活ありがたい

  • 32二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 10:07:53

    このレスは削除されています

  • 33二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 21:19:44

    保守するZ

  • 34二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 08:40:22

    がんば

  • 35二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 16:45:32

    ホスト規制に負けるな!

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