シルバーアッシュ「何!? ドクターが誘拐!?」

  • 1二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:27:30

    03:22PM イェラグ領内 カランド山脈の中腹

    がたり、と車内が大きく揺れる。険しい山脈を難なく走破できるはずの雪上車は、この数時間で何度目かの立ち往生を余儀なくされた。

    「また襲撃か。」

    「はい。これで4度目ですね……」

    シルバーアッシュの問いに、ハンドルを握るマッターホルンは緊張した面持ちで前を見据えたまま答えた。

    前方での喧噪は、程なくして雪風と共に消えてゆく。

    「報告を。何人やられた?」

    マッターホルンの問いに、無線越しのクーリエが答える。

    「2人。これで総勢8名がやられました。 今、陣形を整えています ……あの、シルバーアッシュ様。質問をしてもよろしいでしょうか」

    「言ってみろ」

    「……彼らを運び出してやることは……」

  • 2二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:28:21

    盟友が拉致ってすっとぼけてるのかと思った悪いドクターを許してくれ

  • 3二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:28:28

    「クーリエ。雪山で命を落とした者がどうなるか……お前が一番よくわかっているはずだ」

    カランドの美しい稜線の下には、多くの死体が打ち捨てられている。物好きな登山者、あるいは無謀な賭けに出た山賊、あるいは故郷を追われそこで終わらざるを得なかったものたち。
    氷点下の環境で腐ることも、野獣に食い漁られることもない彼らは、死してなお、生きているものの道しるべとして雪山に居座り続ける。
    彼らを運び出そうとする者はいない。理由は単純、できないからだ。過酷な雪山は、既に息絶えた者へ手を差し伸べる慈愛を、あるいは偽善を、一切許さない。

  • 4二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:29:25

    「ドクターが失踪しただと……!?」

    そのニュースは稲妻のようにロドスを走った。

    会議室の前には、一刻も早く報告を待ちわびるオペレーター達が列をなして待機している。 
    一件秩序立って行動している彼らの顔は、しかし焦燥と不安でいっぱいだ。

    「最後にドクターが目撃されたのは医療エリア。ロドスが最近収容した鉱石病患者の視察及び彼らのケアプログラムの説明を受けた後でした」

    そう説明するアーミヤの目の下には大きなクマができている。夜通しであちこちに連絡し、ドクターの行方を捜していたのだろう。

    「医療チームからドクターのオフィスまでの道のり、及びその周辺エリアはすべて調べました。押し入った形跡や争った形跡はありませんでした。
    ですが、連絡通路に設置されているエアロックが使用された跡がありました。人通りの少ない区間です……犯人はここでドクターを拉致し、ロドス本艦を脱出したと思われます」

  • 5二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:30:22

    「詳細な説明、感謝するアーミヤ。 しかし、肝心のドクターの居場所の目途はついているのか?」

    「それは……」

    言い淀んだアーミヤに助け船と言わんばかりに、ロドスの通信オペレーターが会議室に走りこんできた。

    「アーミヤさん! あ、シルバーアッシュさんも…… お疲れ様です。 先ほど、ロドス専用周波数で救難信号が発信されました。発信源は……
    イェラグです」

    オペレーターがその報告を終えるのと、シルバーアッシュのポケットの中にある端末が通知を出したのは、ほぼ同時だった。

  • 6二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:30:53

    「どういうことですか!?救出隊を派遣できないなんて…!」

    「アーミヤ、落ち着いて聞いて欲しい。 国家としてイェラグは今鎖国にあるといって過言ではない。 お前が捜索・救助隊を派遣したとしても、入国できる望みは薄いだろう。
    ロドスを我々カランド貿易の客として受け入れることはできるだろが…… 諸侯の監視は常に付きまとうことになる。 どれだけお前たちが手を尽くして状況を説明したとて、
    彼らは信じない。 干渉の言いがかりだと思われるのが関の山だ。 それほどに、イェラグの諸侯は疑心に塗れている」

    「ですが、ドクターは私たちの……ロドスの一員です!見捨てるわけにはいきません!」

    「それは重々承知している。だが、ただでさえ今は不安定な状態のイェラグにロドスが土足で踏み入れば……
    疑心と誤解が対立を生み、最悪の場合……戦争になるやもしれん。 
    ここは私を……我々カランド貿易を信じ、一任してもらえないだろうか。 クーリエやマッターホルンを見ればわかるかもしれないが、製薬会社であるお前たちがオペレーターを抱えているように、
    我々にも荒事の心得がある者たちがいる。そしてカランドの山脈は我々の領域だ…… あの稜線を走破する知識も装備も揃っている。

  • 7二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:31:20

    「しかし…!」

    「もちろんその行動に関する責任はすべて私が負う。簡潔にまとめよう、アーミヤ。 イェラグに逃げ込んだ犯人を追跡はお前たちロドスにとっては困難かつリスクを伴う任務だ。
    しかし我々にはそれを遂行できる立場と、リソースと、能力と、そして意欲がある。私はそのすべての責任を負う。 私には、負うことができる。
    私とてあの男は盟友だ。 全力を以て救出するとも。理解してもらえるだろうか」

  • 8二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:31:44

    アーミヤは唇を噛み締める。
    この男の言い分は最もだ。オペレーターとしてのシルバーアッシュがどれだけ有能であったか、それを否定できる者は彼と同じ戦場に立ったもので一人もいない。
    だが、何かがおかしい。 都合が良すぎる。 そもそも、いとも簡単にドクターがロドス本艦から誘拐されることなどあり得るのか?
    まさか、すべてシルバーアッシュが仕組んだことでは? そんな疑心が少女の心中に渦巻き始めたころ、再び拮抗を崩す声が会議室に響いた。

    「3日だ」

    普段よりいっそう表情を険しくしたケルシーが、ぴしゃりと背筋が伸びるような号令のように告げた。

    「カランドの長よ。 3日の猶予をやる。 その間に、彼を無事に救出して欲しい。その間に我々は準備を進める。3日後、ロドス本艦にドクターが戻っていない場合。
    いかなる理由があろうとも。 どんな事情があろうとも。 我々は必要な行動を開始する。 そしてその結果については私が責任を負う。 了承してくれるな、エンシオディス・シルバーアッシュ」


    そんなことにはならないという自信をもって、シルバーアッシュは頷いた。 代表各々のサインと企業印が書き加えられた正式に合意書が出来るまで、あっという間の出来事だった。

  • 9二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:32:17

    一日と半日後

    03:55pm イェラグ領内 カランド山脈の中腹

    「見えてきましたよ、シルバーアッシュ様。 5番倉庫です」

    ブリザードが晴れ、銀色の分厚いカーテンに包まれていたコンクリートの建物が姿を現す。
    聖山カランドの中腹、旅行客や聖職者が使う登山道から外れたその場所に、ひっそりとそれは建っていた。

    表向きはカランド貿易の倉庫。しかしその実、内部では私兵たちの訓練施設だった。しかし、天候の悪化とそれに伴う交通費・維持費の高騰により、しばらく前に廃棄されていたのだ。
    ロドス・アイランドの識別周波数を持つ救難信号は、そこから発信されていた。

    (これほど辺鄙な立地であれば悪用はされないと踏んだのだが、私としたことが見誤ったな。 更地にしてから廃棄するべきだった)

  • 10二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:33:09

    今更後悔したところでどうしようもない。とにかく、目の前の事態に集中しなければ。
    護衛車両に挟まれながら、雪上車がゆっくりと基地に近づいていく。
    その時、クーリエの声が再び無線機から響いた。

    「通信がありました。奴からです。繋ぎます」

    シルバーアッシュは唇を噛み締める。聞きたくもない不快な相手だが、状況が状況だ、聞かないわけにはいかない。

    最初に誘拐犯とコンタクトがあったのは、イェラグの拠点を出発する数時間前だった。

  • 11二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:33:36

    誘拐犯肉おじゃ「(身代金は)120億(龍門幣)くらいじゃないすか?」

    シルバーアッシュ「ロドスの人員を誘拐しておきながら、カランド貿易代表である私に身代金を要求すると? その行為が何を意味するかわからないようであれば、
    汝の知能はあまり高くないと言わざるを得ないな」

    その台詞のあと、電話の向こうから何かを殴打する音と、ぐぅっ……!という鈍い呻きが聞こえた。

    誘拐犯肉おじゃ「結構疲れますねこれ (関係ないと主張するならこいつはもう用無しの可能性が)濃いすか?」

    シルバーアッシュ「……そうか。汝の腹積もりは承知した。 その男の生死に関わらず…… 汝の運命は決した…… いずれ見える時が来るだろう」

    誘拐犯肉おじゃ「(それなら1人で俺のところまでたどり着いて)来いすか?」

    誘拐犯肉おじゃ「(タイムリミットは)2日ちょっとくらいっすね、案外待てないっす(小声)」

    シルバーアッシュは時計を確認する。ケルシーから提示されたタイムリミットも、あと2日で終わりを迎えようとしていた。

  • 12二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:34:21

    そして今、不快な誘拐犯の声が再びシルバーアッシュの耳に届く。

    誘拐犯肉おじゃ「(1人で来いって言ったのに部下をゾロゾロ引き連れてて)笑っちゃうんすよね」

    シルバーアッシュ「1人で来いと言いつつ刺客を4回に分けて放ったのは誰だ? まあいい。要求したものは手元にある。 今からそちらへ向かうぞ。お前の希望通り、私一人でな。
    汝はドクターを引き渡す準備をしておけ」

    そして倉庫についたシルバーアッシュは倉庫の扉を開ける。そこには確かにドクターがいた。安堵するのも束の間、闇の中から何者かに襲われてシルバーアッシュははノックアウトされた!
    ……ということはなく、闇の中の刺客の攻撃を素早くかわし、持っていた杖をみぞおちに叩き込む。
    ぐえ、という呻きを出しつつ、腹を抑えて刺客はうずくまった。

  • 13二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:34:50

    シルバーアッシュ「つくづくマナーがなっていないな。客人のもてなし方も知らんのか」

    誘拐犯肉おじゃ「クキキキキ…」

    誘拐犯は不気味に笑うと、懐からクロスボウを取り出し、ドクターの側頭部に押し当てる。

    誘拐犯肉おじゃ「(こっちに人質がいる状況下でイキるのは)ちょっと待ってもらって……」

    シルバーアッシュ「汝こそ落ち着くべきだ。穏便で済ませられる状況下において、なぜそうすぐ血を流したがる? 要求のものだ。受け取れ」

    シルバーアッシュが放ったアタッシュケースが、地面にぶつかる衝撃で口を開く。 確かに、その中にははちきれんばかりの龍門幣が詰め込まれていた。
    しかし、要求を出したはずの誘拐犯は青い紙幣には目もくれず。 ゆっくりと、クロスボウの銃口をシルバーアッシュへと向けた。」

    「……!」

    捕らわれたドクターが息を呑む。 刺客を放ってきた時点で、いやアーミヤではなくシルバーアッシュへコンタクトを取った時点で気付くべきだったのだ。
    狙いはドクターでも、身代金でもなく、シルバーアッシュ本人だったのだと。

  • 14二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:35:41

    誘拐犯が放った矢を、シルバーアッシュは横へ躱す。しかし……

    「……がはぁっ……!」

    倉庫の2階キャットウォークに潜んでいた刺客たちが放った矢が、シルバーアッシュの身体を貫いた。
    数本の矢を受け、シルバーアッシュが血を吐きながら倉庫の冷たい床に倒れた。

    誘拐犯肉おじゃ「(カランド貿易の長がこの程度でやられるとか)凄くねぇ」

    誘拐犯がクロスボウに次の矢を番え、シルバーアッシュにとどめの一撃を加えようとしたそのとき。

    倉庫の扉の影から、小さな影が滑り込み、誘拐犯にタックルを食らわせた。

    それと同時に、倉庫の扉、裏口、そして2階の窓から、一斉にカランド貿易の腕章をつけた部隊が押し入り、誘拐犯の仲間たちを制圧していく。
    そして喧噪が収まったのを見計らった頃に、2つの足音が倉庫内にこだました。

    「待たせたな、盟友よ」

    それは、先ほど刺客に撃たれ、床に伏せているはずのシルバーアッシュその人、そしてその前で盾を構えその主人を頑なに守るマッターホルンだった。
    シルバーアッシュの合図で、カランド貿易私兵の一人がドクターを解放する。

    「無事か、ドクター」

    「けほっ……なんとかな。何回か殴られはしたが」

    ドクターの無事を確認したシルバーアッシュは、今度は誘拐犯の横で横たわっているもう一人のシルバーアッシュへと歩み寄った。

  • 15二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:36:26

    「制圧は完了した。もういいだろう」

    その声で、もう一人のシルバーアッシュがすくりと立ち上がり、身体に刺さったクロスボウの矢を叩き落とした。

    「わが社新製品の防弾ベスト……随分と手荒な製品テストだったが、結果はまずまずと言ったところか。 少なくとも一般的なクロスボウの矢は十分に防げるようだな。
    君は下がって医師の検診を受けるんだ」
    「はい、シルバーアッシュ様。 この勤めを私に預けてくださったこと、 感謝いたします」

    もう一人のシルバーアッシュが、瓜二つの自分に深々と頭を下げた後、そそくさと退散していく。それを見て、混乱した誘拐犯も一つの結論に達したようだ。

    誘拐犯肉おじゃ「(影武者とか)なんすかそれ」

    影武者が吐いた血の跡を見てみれば、なるほど確かに、血糊を思われる小さな袋も見つかった。

    「さて……」

    シルバーアッシュが満を持して誘拐犯へと歩み寄る。小さな影、クーリエにタックルされ倒れた誘拐犯は、一瞬のうちに縛り上げられていた。

    「ここまでだな、下郎」

    誘拐犯肉おじゃ「あっ(自分を殺すのは)ちょっと待ってもらって……」

    「いや、汝はもはや役目を果たした。舞台から降りる時だ…」

    シルバーアッシュは杖に擬態した鞘から剣を引き抜くと、誘拐犯の鎖骨の下へ刃を滑り込ませる。切っ先は鋭く体内を穿ち、やがて心臓へと到達した。

  • 16二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:37:07

    (苦悶の表情を浮かべる誘拐犯肉おじゃ)

    「汝の背後にいるのがどちらの家なのか、あるいは山へ籠っている生臭坊主どもか? いずれにせよわかることだ。 だが、汝は我が社の社員、そして我が盟友に害を成した。私が知るべきはそれだけで十分だ」

    誘拐犯肉おじゃ「ピィ^〜……」(断末魔)

    シルバーアッシュが剣に付着した血を振り払い、鞘、もとい杖へと納刀する。 

    「さあ、終わりだ。 行くぞ、盟友。お前をロドスへ送り届けよう」

    そう語るシルバーアッシュの表情には、特に何の感慨も浮かんでいなかった。 刺客への対処を見るに、このような事態が発生し、そして対処したのは、これが初めてではなく、そして最後でもないのだろう。
    だが、それに関してドクターは深く立ち入るべき立場ではない。ドクターは黙って雪上車へ乗り込んだ。

    「シルバーアッシュ……」

    「何だ?」

    「……ありがとう」

    「例には及ばん。今回の件は少なくとも収穫があったからな。だが何より、お前が無事だ。それだけでこの山奥までやってきた甲斐はあった」

    「君の言う通りになったな。今回の件を解決できたのは君だけなんだろう」

    「ふふ……」

    シルバーアッシュは不適な笑みを浮かべる。 この男の底は一体どこにあるのだろう。 そしてこの事態は、この男にとって本当に予測外の出来事だったのだろうか。
    ドクターは救出された安堵の底に、一抹の不安を覚えた。

    その後、ヤンデレ化が進んだアーミヤは今回の事件をきっかけにドクターを軟禁するようになりドクターは仕事から更に逃げられなくなった。
    哀れ。

  • 17二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:37:39

    おまけ
    肉おじゃは極東の貴族の元に生まれ、何不自由なく過ごしてきた。 家や金だけではなく、体格と体力にも恵まれた彼は、当然のように高位な教育を享受し、親と同じように上流階級への道をエスカレーターのように進んでいくだけ。そのはずった。
    それは、肉おじゃがウルサスへ留学中に起きた出来事だった。

    『俺たちの痛みを思い知れ!*ウルサススラング*貴族どもめ!』

    肉おじゃが聞いたこともないような下品な罵倒と共に放たれた活性源石手りゅう弾は、運悪く肉おじゃからそう遠くないところで炸裂した。
    護衛の術師たちは、自分の責務に従い迅速に行動した。つまり、肉おじゃではなく、自分たちの主であり、肉おじゃのホームステイのホストであるウルサスの貴族を守った。
    肉おじゃにも護衛が付いていたが、彼らは現場での経験を積んでいない新米たちであり、急に目の前に放り投げられた危機に一瞬で対応することができなかった。
    爆風で押し出された源石は、肉おじゃの左腕に突き刺さった。  
    その瞬間、彼の人生は180度転換した。 
    留学中に襲撃に巻き込まれ、あまつさえ鉱石病に感染したと知った肉おじゃの両親は当然、そのウルサス貴族と護衛を寄越した警備会社に猛烈に抗議した。
    警備会社の方は、莫大な損害賠償の支払いを命じられ、程なく倒産・解散を余儀なくされた。だが、ウルサス貴族のほうは、そう簡単にはいかなかった。
    その貴族は自分の責任を認めないばかりか、逆に肉おじゃの両親を脅迫したのだ。 運悪く、その家はウルサスの軍閥の派閥の一つと深く結びついており、私兵すら抱えていた。
    翻って、肉おじゃの生家は富があるというだけの貴族。国際問題を独断で引き起こすほどの力などはなく、泣き寝入りするしかなかった。
    肉おじゃの生家は、家を守るために、考えうる限り一番手っ取り早い手段を取った。 つまり、感染者となった肉おじゃを追放し、弟だった捏おじゃを後継者として指名したのだ。
    鉱石病。鉱石病がこうして、また一人の人生を壊した。

  • 18二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:38:03

    家を追われた肉おじゃは各地を転々とした。 ずっと温室で育てられた彼には、事の重大さが未だ理解できていなかった。「どうにかなるだろう」。そんな甘すぎる楽観主義は、テラという大地の現実に早々に打ち砕かれた。
    実家から手向けとして贈られた多額の金は、鉱石病の治療法を騙るペテン師に毟られた。 自慢の筋肉も、鉱石病の影響で衰え、力仕事も健常者ほど役には立たなくなった。
    手を汚そうにも、身体の芯まで染みついた上流教育とわずかに残る良心がそれを許さなかった。
    ----僧だよ。僧になろう。高名な僧たちであれば、苦しむ自分を救ってくれるはず。 そう期待してカランドを訪れた肉おじゃは、ついに彼らからの拒絶で心折れた。
    雪山を彷徨い、ついに死を覚悟した時、彼を救ったのはイェラグを支配する3大貴族の一つに連なる者だった。
    以来、クーリエがシルバーアッシュに忠誠を誓うように、肉おじゃもその貴族へその命を捧げることを誓ったのだ。
    しかしその恩人から与えられらたシルバーアッシュ暗殺の命もあえなく失敗し、何一つ成し遂げることなくテラを去ることになった。
    哀れ。

  • 19二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 15:42:00

    盟友誘拐したんじゃなかったか……

  • 20二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 16:15:33

    肉おじゃの設定細かいですね…

  • 21二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 16:34:28

    やるのに最適な掲示板があるだろ…って思って調べたらそっちの方にもあった
    そっちの方が年月速いし間が空いてるから転載か?

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