【ブルアカ二次創作】或る女先生と口悪A.R.O.N.Aなキヴォトス

  • 1スレ主24/07/15(月) 12:36:26

    スレ主の勝手解釈な女先生と、口が悪いA.R.O.N.Aによって回っていくブルアカ二次創作です。ssを垂れ流していく感じになります

                            ⚠注意事項⚠
    ・ゲーム本編でいうところのプロローグ、チュートリアルから始まります
    ・内容の改変はあまり考えていませんが、もしかするとあるかもしれません
    ・ゲーム本編を見直しながらssを書いていくので、更新に時間がかかることが多いと思います
    ・メインストーリーのみを進めていく予定です。時系列を大事にしようと思ってるので、時々皆さんに相談することがあると思います
    ・このキヴォトスの先生は色々不穏です。それを前提に読み進めることをお勧めします。

  • 2スレ主24/07/15(月) 12:38:34

     まぁ、要は私という人間は大人なわけで。
     このキヴォトスという数えきれないほどの学園が寄り集まって構成されているある種の連邦国家じみたゆるい結合の中、私はたった一人の“先生”として仕事を日々こなしているわけだ。それ以外でキヴォトスのみんなが知っているのは、私がヘイローを持っていないということ、銃弾一発が生死に関わるということ、出身地がキヴォトスの外であること、の三つくらいだろう。
     それ以外のことは知ってもらうつもりはないし、積極的に公表するようなものではない。事実、私が本来話すつもりではいなかったことを知っているのは、今私と向かい合うように列車に揺られているたった一人の女子生徒だけなのだ。
    「アタシの……いいえ。私の、ミスでした」
     私の目の前の座席に腰かける少女が、震える言葉を紡いだ。多くの者に向けて発せられる耳触りの良いソプラノボイスではなく、私を含めたごくわずかな人物しか聞いたことのない、少し粗野な、しかし落ち着いたアルトボイスで。
     少女は、純白に近い制服と、淡い水色の髪の一部を乾いた血に汚していた。背後には落ちていく夕日。無性に物悲しく、空しい。物語の全てが終わってしまった後、エピローグ映像でも見ているような印象を私の脳に刻み込みつつ、少女は言葉を紡いでいく。
    「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」
     とてもやりきれないといった様子で彼女はそこで言葉を区切った。私の脳裏にも強烈な事件のフラッシュバックのように、いくつかの断片的な記憶が鎌首をもたげる。うつむき気味な少女の脳裏にも、私の海馬の中で暴れるPTSDのような記憶と似た情景が浮かんでいるのだろう。
    「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……今更図々しいですが、お願いします。先生」

  • 3スレ主24/07/15(月) 12:43:28

    >>2

     少女は私のことを呼び、どこか儚げな、しかしそれでいて毅然とした視線でもって、私を真正面から見据えている。

    「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから」

    「ですから……大事なのは経験ではなく、選択。貴方にしかできない選択の数々」

     少女はそこで、一度言葉を区切った。それから何か昔のことを懐かしむような口調で、私にとっても懐かしい話題を提示してきた。

    「責任を負う者について、話したことがありましたね。あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。それが意味する心延えも」

     責任を負う者。それは、本当に私が語ってよいものだったのだろうか。私という人間が語るに落ちるものであったのだろうか。否、その答えは誰にも出せない。問うた私以上に“先生”という立場を理解している存在は、ここ(キヴォトス)にはいない。

    「ですから、先生。私が信じられる大人である、あなたになら、この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……そこへつながる選択肢は、きっと見つかるはずです」

     それは、本当に目の前の少女の判断ミスが産み落としたものなのだろうか。その始まりがほんの小さなことだとしても。一匹の蝶の羽ばたきが竜巻を引き起こすほどの重大な気圧変化の要因になることがあると言う。これをバタフライ・エフェクトというらしいが、竜巻によってもたらされた被害を蝶に責任転嫁できるのだろうか。

    「だから先生、どうか……」

     そこから先の会話が滲み始めた。水性インクで描いた文章に水滴を垂らしたように記憶が滲み、意識も遠のき始める。不思議と聞いていたいのに。まって、まだ聞かせて……

  • 4スレ主24/07/15(月) 12:46:05

    >>3

    「……い」


     なんだ、今いいところだったのに……


    「先生、起きてください」

     まだ寝かせて、あと5分だけ……それだけでいいから……


    「蘭(あららぎ)先生!!」

    「う……あれ、寝てた……?」

    「そうですよ。全く……少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。なかなか起きないほど熟睡されるとは……夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください」

     その夢から私の意識を引き上げたのは、夢で見た少女とよく似た白い制服を身にまとった少女だった。長く伸びた耳に青い瞳。髪も、もはや黒かと見まがうほどに濃い濃紺だった。彼女は私が眠りこけていたソファの前で呆れ顔を私に向けたまま、話を始めた。

    「私は七神リン、学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会所属の幹部です。そしてあなたはおそらく、私たちがここに呼び出した先生……のようですが」

    「なんでそんなに不確かそうに私に言うのかな。」

     おや……と小さく声を漏らしたリン。

    「大人を呼び出すってことは、きっと何か生徒たちの手では解決しきれないような事態が起きているからなんだとは思う。それで私を呼んだんだろうけど、こう……手元にないけど絶対に欲しいものが、いきなり自分の手元に現れたみたいな反応だよね。私の事、あまり聞かされてないのかな?」

     自分でも何でここにいるのかよくわかってないけどね、と付け加えると、彼女は感心した様子で私に目を向けた。

    「……さすがの観察眼ですね。ええ、先ほど私が推測系で話したのは、私も先生がどのような経緯でここに来たのかを詳しく知らないのです」

     それはなんとなく想像していた。彼女の、七神リンの態度から感じる困惑。それは扱いにくい何かの管理を任されたのと同じだ。突然現れた見ず知らずの大人が自身、ひいては自身の周囲の多くの人間が抱える問題の解決策になるかもしれないなんて、ちょっとした理不尽だろう。

     それでも彼女は、おそらくこのキヴォトスの最高機関であろう連邦生徒会の一員として、私に真摯に対応してくれようとしている。きっと、とても心の強い少女なのだ。

  • 5スレ主24/07/15(月) 12:50:06

    >>4

    「突然のことで、きっと混乱されていますよね。わかります。私自身、このような状況になってしまったことを遺憾に思っています。でも今はとりあえず、私についてきてください。どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります」

    「私が、やらなくちゃいけない事?」

    「ええ、そうです。大雑把な言葉選びにはなってしまいますが……学園都市の運命をかけた大事なこと、ということにしておきましょう」

     そう言って、リンは奥の方にあるエレベーターの方へと向かう。ずっとソファに座りっぱなしだった私も、彼女に倣って腰を上げ、エレベーターの方へ向かった。

     乗り込んだエレベーターはかなりの速度で上昇していく。地面と同じ目線だったのが、あっという間に鳥瞰視点へと切り替わっていく。不思議な浮遊感を楽しみつつ、ガラス張りになっているエレベーター越しに、これから自分が仕事をすることになる場所を見ておこうという気持ちになった。

    「『キヴォトス』へようこそ、先生」

     同時に、リンが私に歓迎の言葉を送ってくれた。私達がいる建物がある中央行政区ともいうべき区画は、幅の広い川で他の区画から分かたれていた。背の高いビルが幾棟も立ち聳え、蒼く澄み渡る快晴の今日でさえ、地平線の向こうさえ見えないほどの数の建物が立っている。

    「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。きっと先生がいらっしゃったところとは色々なことが違っていて、最初は慣れるまでに苦労するかもしれません……でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう」

    「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね」

     連邦生徒会長。そのワードが出てきた瞬間、夢の光景がフラッシュバックする。そのまま気絶してしまいたいような衝動に駆られたが、こんな狭いエレベーターの中で急に昏倒されても困るだろうからと思って昏倒はしなかった。

    「詳しいことは後でゆっくり説明することにして……そろそろ着きます」

  • 6スレ主24/07/15(月) 13:58:50

    >>5

     エレベーターのゲートが開くと、そこはよく整頓されている印象を受ける、生徒会のロビーらしき場所だった。受付のあたりに異なる制服を着た何人かの生徒が集まっていて、エレベーターから出てくる私とリンを視界に入れるや否や、そのうちの蒼い髪をしたスカートスタイルのスーツを着た少女が私たちに詰め寄ってきた。

    「あぁっ、やっと見つけた! 代行! 見つけた、待ってたわよ! 連邦生徒会長を呼んできて!」

     憤懣冷めやらぬといった様子でリンに食って掛かっていく少女の視界には私は収まっていなかったようで、今にも喉笛にかみつきそうな勢いでリンの制止も聞かずに言葉を弾丸のように発している。

    「主席行政官、お待ちしておりました」

    「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の儒教について納得のいく回答を要求されています」

     落ち着いた声でリンに声をかける生徒が二人。最初にリンのことを「主席行政官」と呼んだのは、黒いセーラー服に身を包み、腰のあたりから立派な黒い羽根を生やしている少女だった。もう一人の少女は亜麻色の髪をしていて、左腕に「風紀委員」と書かれた腕章をつけている。

    「あぁ……面倒な人たちにつかまってしまいましたね」

     どうにかスーツの少女を引き剥がしたリンが、聞こえよがしにそんなことを呟いた。

    「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員、その他時間を持て余している皆さん。こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よくわかっています」

    「暇そうとは、委員会の仕事で来ている私たちにずいぶんなことを」「そこまでわかってるなら何とかしなさいよ! 連邦生徒会なんでしょ! 数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ! この前なんか、うちの学校の風力発電所がいきなりシャットダウンしたんだから!」

     黒いセーラー服の少女の言葉をさえぎって、再びスーツの少女が少々ヒステリック気味に叫ぶ。それに続くようにして、他の少女たちも口々に不満や申し立てを述べ始めた。

  • 7二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 15:33:14

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  • 8スレ主24/07/15(月) 15:46:45

    >>6

    「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました」

    「スケバンのような不良たちが登校中のうちの生徒を襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」

    「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」

     武器の不法流通が2000%上昇……? ちょっと待ってと言いたくなるじゃないか。ほら、私の隣にいるリンも呆れた顔をしている。私が来る前と、しかも少女たちの話しぶりからするとほんの数週間前と比べて20倍近くの武器が裏側で流通しているとなると、その爆発的な流通量増加それ自体より、今までそれを強烈に押さえつけ続けてきた抑止力の存在が気になってくる。

     銃どころか戦車やヘリを当然のように学校単位で購入しているあたり、きっとここではそう言ったものを使う戦闘が日常茶飯事なのだ。一つ一つの学園が国家のように振る舞い、その生徒たちは国民にして兵である。私が来た場所とは、まるっきり異なる場所なのだ。

    「こんな状況で連邦生徒会党は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの? 今すぐ会わせて!」

    「……連邦生徒会長は今、席におりません」

    「はぁ? 席にいないってどういうことよ」

    「非常に端的に言うと、行方不明になりました」

    「……え!?」

     素っ頓狂な声を上げたのは、スーツの少女。無理もない、目的の人物が何週間も前から行方不明だと聞かされたのだから。私だって突然こんなことになったら確実に困り顔を浮かべるだろう。集まってきていた他の生徒も、思い思いの驚き顔を浮かべていた。

    「結論から言うと、『サンクトゥム・タワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探していましたが……先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした」

    「それでは、今は方法があるということですか、主席行政官?」

     セーラー服の少女からの質問に、リンは自信ある声色でうなずき返した。

    「そういえば、さっき代行と一緒にエレベーターから出てきたわね。この大人は誰なのよ? まさかとは思うけど……」

  • 9スレ主24/07/15(月) 16:00:57

    >>8

    「この方は蘭(あららぎ) 櫟(いちい)先生。この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」

    「えぇっ?!」「っ!」「この方が?」 「私が……?」

     驚きよりも不信感が前面に現れているリアクションに若干心が痛んだ。私自身、それなりに驚いてしまっているのが正直辛い。突然連れてこられた見ず知らずの大人が自分たちの問題に幕引きをしてくれるから信頼しろ、というのは確かに酷だし、ともすれば自由のない理不尽なことだろう。

    「な、何でここにいるのかしら……」

    「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね」

    「はい。こちらの蘭先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

    「行方不明になった連邦生徒会長が直接指名? ますますこんがらがってきたじゃないの……」

    「え、えーっと……みんな、これからよろしくね」

     私の挨拶は少々ぎごちないものだったように思う。一人が挨拶を返そうとしてくれたが……

    「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……」

     そこまで言って首を激しく横に振ってやめてしまった。

    「い、いや! 挨拶なんて今はどうでもよくて……」

    「その煩い方は気にしなくていいです。続けますと……」

    「誰がうるさいって!? わ、私は早瀬ユウカ! 覚えておいてください、先生!」

    「うん、よろしく」

    「挨拶は終わりましたか? 私からの話の続きになりますが……蘭先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の顧問としてこちらに来ることになりました。その名も、連邦捜査部『シャーレ』」

     その名は、不思議と聞き覚えがあった。私には本来耳馴染みのない言葉であるはずなのだが、妙な納得感を帯びて、その単語は私の頭の中にスルリと滑り込んできた。

    「シャーレとは単なる部活ではなく、一種の超法規的機関です。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを制限なく加入させることも可能で、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です」

    「ちょっと、冷静に考えてあまりにも権力が強すぎない? 学園自治区内で制約なしに戦闘行為って……ひょっとすれば外交問題モノなのよ?」

    「それは私もそう思うよ。そもそも私はキヴォトスに来たばかりだけど、かなり危ないことになるんじゃないかな」

  • 10スレ主24/07/15(月) 16:24:24

    >>9

     さっき自己紹介してくれたユウカの疑問に乗っかって、私も疑問を口にしてみた。だが、リンいわくそのような心配は殆どないとのこと。そもそもシャーレを設置したのは連邦生徒会長個人の判断のようで、最側近と言っても過言ではないリンでさえ、その胸中は計り知れないという。

     皆からしたら私が言うことではないだろうけど、なんというか、その連邦生徒会長という人は不思議でつかみどころがないんだろうなという感想を抱いていた。

    「シャーレの部室はここからおよそ30km離れた外殻地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令でそこの地下に「とある物」を持ち込んでいます。これから、先生をそこにお連れしなければなりません」

     リンはそこまで言って端末を開き、誰かに連絡を取り始めた。

    「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」

     なにやら返答が返ってきたらしいが、その瞬間リンの長い耳がピクッと動いた。そのまま集中した様子で電話に聞き入り、かなりすさまじい表情に次第に変化していった。電話は向こうが切ったらしい。

    「……」

    「えーっと、深呼吸でもする?」

     プルプルと腕を震わせるリンに声をかけると、びっくりするほど怖い顔でこちらの方を向いた。

    「……だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」

     そして、連邦生徒会長に会わせろと押しかけてきた四人に視線を向ける。どうやら何か嫌な予感を感じ取ったらしい彼女たちは、若干顔を引きつらせてリンの方を見ていた。

    「ちょうどここに各学園を代表する、立派で、暇そうな方々がいるので……私はとても心強く思っています」

    「え?」

    「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」

     ツカツカと靴音高く歩き去っていくリンの背中を追いかけて、ユウカも小走りで向かう。赴任して初日でこの騒動……先が思いやられるというか、これからの仕事の予想がなんとなくつくというか……

     それでも、私のこれからの生活のことを考えれば行くしかないし、生徒たちが行くなら私もついていくしかない。先生としての責任もあるが、私個人の信条としても行かなきゃいけない。

     そして、目的のシャーレ部室付近……

    「何で私たちが不良たちなんかと戦わなきゃいけないの?!!」

  • 11スレ主24/07/15(月) 16:25:11

    ここまでで一度更新をストップさせていただきます。なにぶん筆が遅いもので、しばらくお待ちください……

  • 12スレ主24/07/17(水) 08:38:01

     戦場と化した一帯の状況は予想以上にひどかった。ヘリでここまで来るまでにリンが説明してくれた通り、この騒ぎの発端は、連邦生徒会長の失踪とほぼ同時期に連邦矯正局から脱走した停学中の生徒たちらしい。自分たちを牢屋にぶち込んだ連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良を巻き込みあたりを焼け野原にして回っていると。
     また、シャーレの部室周辺が特に大きな騒ぎになっているのも理由があるようで、どうやらリンが言っていたシャーレの地下にある「とある物」の存在をかぎつけたかららしい。
     辺りの建物の壁は無数の弾痕が刻まれ、地面には跳弾の後だけでなく、明らかに何かが爆発したような焦げ跡も残っている。ヘリから見ていて分かったが、きっとロケットランチャーを持っている不良がいるのだろう。戦車も何台か見られる。
    「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから……」
    「それは連邦生徒会でもヘリの中でも聞いたわよ! 私これでもうちの学校では生徒会メンバーで、それなりの扱いなんだけど!? 何で私が……!」
     イライラした様子で前に出るユウカだが、当然のように一斉射を食らってすぐさま別の遮蔽に身をひそめる。
    「いったぁぁ……! あいつら違法JHP弾使ってるじゃない!?」
    「前に出るときは気を付けてください、ユウカ。それにホーローポイント弾は違法指定されていません」
    「うちの学校ではこれから違法になるの! 傷跡が残るでしょ!」
     冷静に返すハスミの態度が気に食わなかったのか、ユウカはハスミに食って掛かるように言葉を返す。しかし当のハスミは気に留めず、淡々と引き金を引き、一人、また一人と不良のおでこに弾丸を命中させていく。
    「今は先生が一緒なので、その点に気をつけましょう。先生を守ることが最優先、あの建物の奪還はその次です」
    「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトス出会ないところから来た方ですので……私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります! その点ご注意を!」
    「わかってるわ。先生! 先制は戦場に出ないでください! 私たちが戦っている間は、ここから動かないようにしてくださいね!」
    「わかった。代わりと言ったらなんだけど、私が戦闘の指揮を取る。みんなは私の指示に従ってほしいんだ。いいかい?」

  • 13スレ主24/07/19(金) 15:47:20

    「え、えぇっ? 戦術指揮をされるんですか? ……ま、まぁ先生だし」
    「分かりました。これより先生の指示に従います」
    「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします」
     どうやら任せてもらえるらしい。期待されているに恥じない指揮をしなければ……
    「それじゃあ、よろしく頼むよ」
    「えぇ、それじゃあ行ってみましょうか!」
     事前に全員にインカムを渡しておいてよかった、お陰でこちらの声がすぐに皆に届く。ユウカの一声で一時的にみんな集まっていたのが、さっと散会した。反転攻勢……というわけでもないけど、今度はこちらから攻めさせてもらおう。
    「皆、聞こえる? ユウカはスズミと一緒に遮蔽に隠れながら敵のマガジン入れ替えの隙を縫って前へ。スズミ、君はスモークグレネードで敵の視界を封じるんだ。事前にユウカと進行方向を示し合わせるようにして。ハスミは狙撃に適した場所を移動しつつ前に出てきたりユウカとスズミの死角からの攻撃を未然に防ぐこと。チナツは周囲の観測をして、逐一私に状況を知らせて。いいね?」
    『了解!』
     その次の瞬間には、銃撃音とスモークグレネードの破裂音が響き渡った。硝煙と火薬の臭いがあっという間に運ばれてきて、不思議と私の脳内に懐かしい記憶を呼び起こす。それは私を高ぶらせるようで、しかし静かに揺らめく焔のように心は落ちついてゆく。
    「ユウカ、スズミ、進行方向を12時として4時方向に敵。チナツ、ハスミはユウカたちから見て9時方向にいるから君は3時方向へ移動、死角をなくして。ハスミ、反対側はチナツに任せたから自分が見える範囲と背後に注意。今来てる」
    『っ!?』
     ハスミとの回線から、激しい打撃音と、続けざまに発砲音。想定通りハスミの背後にヘルメット団が来ていたようだ。
    『すごい……私たちもうかなり先生と離れているはずなのに、まるで戦場全体を上から見てるみたい』
    『まさか私の背後にいる敵に、私より先に気付くとは……先生の指揮はもはや予知のようですね』
    「感心している場合じゃないよ。まだ敵はたくさんいる、できる限り消耗しないよう最善手を踏んでいくよ」
     その後、戦闘自体はあっという間に片が付いてしまった。敵が全員逃げるか、連邦生徒会の乗り物に回収されるかした後、私は四人のところへ駆け足で向かっていった。

  • 14スレ主24/07/21(日) 12:31:13

    筆休めにここでの先生の設定

    名前:蘭 櫟(あららぎ いちい)

    年齢:26歳

    性別:女性

    身長:だいたいツクヨやハスミと目線が同じくらい

    体形:全体的に体の線が細い、というか出っ張りがない

    髪型:ウルフカット(ボサボサともいう)

    髪色:黒。ブルーブラックのメッシュを入れている(光の反射でたまにわかる程度)

    性格:淡々と喋り、興味があったり好きなものを前にしても表情筋が仕事しない。それはそうとして明らかにソワソワするしすぐポチる。自分のことを「研究者気質」「娯楽至上主義者」という

    趣味:仕事や日常生活で気になったことを各学園の図書館やネットで片っ端から調べること・筋トレ・ボードゲーム全般

  • 15スレ主24/07/21(日) 12:39:31

    この先、とりあえず赴任初日をどうにか書き終えることを目標としてまずは進めていきます。それが終わったら次は対策委員会編1章へ……という流れです。先生の個性が出てくるのはおそらく対策委員会編ですので、それまでは懐かしいやり取りをご覧ください

  • 16二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 10:50:57

    保守

オススメ

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