- 1二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 13:16:45
- 2二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 13:26:08
『象を撃つ』
多分多くの人がオーウェル短編の最高傑作に上げるんじゃないっスかね
主人公が不本意ながら、期待に満ちたビルマ人たちによって象を撃ち殺すことを強いられる出来事を通じ、植民地主義、「白人の優越性」といった観念の虚しさを短い頁数で鮮やかに示されていて見事やな…
「白人が暴君となる時、彼が破壊するのは彼自身の自由なのだ」
「最初は仮面をつけていたはずが、次第に仮面の方が顔に合うよう変化してしまうのだ」
と言った節が心に残ったのん
感覚のみでは把握できず、物事を単純に考える人物にも理解できない小説と評されていましたね ワシにも無論完全な理解はできていないと考えられる - 3二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:03:30
『あなたと原爆』
日本人にとってはある意味一番興味を惹かれる作品と考えられる
内容としては、原爆が「非民主的」な兵器だという指摘が面白かったんだよね
ライフルや手榴弾などの単純な武器は民衆が体制に対して使用できる一方、戦車や戦艦といった複雑で国家にしか扱えない武器は専制権力に資するっていう話なのん
そして極端に複雑で大国しか保有できない原爆は大国を強くし、原爆を少数の超大国が保有して睨み合う「平和なき平和」の時代が予言されているんスよ
・・・・・・・・
当たり前だって？オーウェルが本当に凄いのはこれを広島・長崎への原爆投下2ヶ月後に書いているということなんだよね
先見の明が凄すぎる…さすが1984年の作者だ - 4二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:05:36
- 5二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:07:21
ほう…＂未来＂が見えていますね…！
- 6二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:23:29
- 7二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:28:57
- 8二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:32:20
オーウェリアンとしては絶対に読むべきだと考えている
1984年と動物農場のイメージが強いので反共作家のイメージと思われがちだけど、植民地主義に心の底から反対する良心的な社会主義者だったんだよね
実際にビルマに赴任して植民地主義を嫌い、スペイン内戦にも従軍するなど色々なことを経験しているから文章の説得力がすごいのん
ちなみに1984年が売れて屋台の売り子に「この本を読めばボリシェヴィキの頭の上に原爆を落とすべき理由がわかるよ」なんて著者なのに言われて残念に感じたらしいですね
しかも巷の「進歩的知識人」とやらに反対し母国愛を訴える柔軟さもある...!
- 9二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:35:04
- 10二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:36:55
面白い奴が現れた...オーウェルにも明るい作品があるんだぜ
しゃあっ『おいしい一杯の紅茶』
紅茶の飲み方だけで一編の随筆を書くのはイギリス人以外にはできない芸当っスね
おまけにその手順も12段階に渡り、産地やらミルクを入れる順番、砂糖を入れないことまであって並々ならぬ拘りがある…
英国魂を感じますね - 11二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 14:47:42
そうだ、この『あなたと原爆 オーウェル評論集』には『スペイン内戦回顧』が所収されていて、カタロニア讃歌が内戦後すぐに書かれたのに対し、これは少し時間が空いているので対比して読むと面白いですよぉ
スペイン内戦から「歴史の記録」にまで考察対象を広げていて、歴史修正主義が問題となっている現代にも大いに重要だしな（ﾇｯ）
- 12二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 15:02:51
このレスは削除されています
- 13二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 15:42:28
『絞首刑』
作者の投影と思われる白人の主人公がインド人を絞首刑に処する話なのん
絞首刑という陰鬱で重大な出来事なのに、作中人物たちは奇妙に無関心な様子で、死刑囚自身ですら自らの運命に関心がなさげなんだよね
おまけに絞首台での護送中、犬が無邪気に駆け寄ってきて死刑囚にじゃれつくんだア
そして死刑囚が歩きながら水溜りを避けた途端、主人公は五体満足な人の命を奪うことが言語に絶するほど間違っていることに、真の意味で気がつく…
死刑囚の首に縄がかけられると、死刑囚は神に向け「ラーム！ラーム！ラーム！ラーム！」と繰り返し叫び、それが絶えるとき彼が死ぬということを嫌でも実感させられた一同が感じる緊張感には鬼気迫る物が感じられますね
最後、男を処刑した後一同が友好的に酒を酌み交わすものの、100メートル先には死体がぶら下がっているという事実を提示することによって読者に嫌悪と恐怖を呼び起こさせる構成が上手いですね…ちなみにこれを書いた時オーウェルは28歳なんだよね
（この若さでこれは）見事やな… - 14二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 16:29:01
『ナショナリズム覚え書き』
ここで述べられている「ナショナリズム」はあくまで便宜的な名称で、ネイション（国家）に対するものとは限らず、団体でも階級でも何らかの観念に対して抱く、忠誠心に近い感覚のことなのん
ここで述べられている極めて深い洞察について解説するのにこの掲示板の余白は短すぎるし、そもそもできないっスけど、ワシが重要だと感じた幾つかの特徴を列挙する芸を見せてやるよ
1.ナショナリズムは純粋に否定的な感情である
2.有益な母国愛とは異なる。害を齎す権威的な悪名高いものである
3.ナショナリストの目的は威信争いであり、自己を埋没させた対象の権威がひたすら高まることを望む
4.ナショナリズムとは自己欺瞞によって強化された権力欲である
5.ナショナリストは皆最も破廉恥な不誠実さえ辞さないが、それでいて自らの正しさを確信している
伝タフ 以上の特徴はインテリによく見られるというのも面白いのん
こうはなりたくないと思うのと同時に、自らの中にもこの種の感情が存在するという厳然な事実に直面させられますね
読者へ自己の内面に対する省察を促す作品は麻薬ですね…何度も読んでます - 15二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 17:12:18
『英国における反ユダヤ主義』
これは『ナショナリズム覚え書き』と併せて人々の心の奥底に眠る暗い想念を描いていると思うんですよ
民衆は隠しもせずに反ユダヤ主義を顕にするが、一定以上の知性を持つ人々が実は差別を恥じ、「反ユダヤ主義」と「ユダヤ人嫌い」を区別したがるという辺りとか、「差別」というものの本質を抉っていて極めて鋭いものっスね
また、規約違反方面に発展しかねないから書かないけれど「シオニズムは反ユダヤ主義の裏返しに見える」というのは現在から見ると極めて重い指摘ですね…繰り返すけれどオーウェルの先見性は本当に素晴らしいのん - 16二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 17:49:43
『マラケシュ』
モロッコで貧しい暮らしを送る人々が白人から関心を払われない現実を巧みに描写した佳品なのん
白人知識層が惨めな扱いを受ける動物には義憤を感じるのに、人間に無関心な偽善に対する問題意識は他の場所でも読みましたね
最後に銃を持って行進する、白人に忠実なセネガルの黒人兵を見て「いつまでこの人たちを騙し続けられるのだろうか」と考える場面はその後の脱植民地化、そしてそれが完了していない現在読むとまた味わいがありますね - 17二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 19:02:44
『スポーツ精神』
一般に、スポーツは国境を持たず友愛で各国を繋げる効能があるとオリンピックなどを通じて言われるっスけど、逆にスポーツが引き起こす憎悪や暴力、権威主義に目を向けた小品ですね
それってネット掲示板でスポーツに関して調べれば掃いて捨てるほど見つかる代物のことか！ゲン！
「スポーツ崇拝」と呼んでいるものがいつ生じたかについて、19世紀以降だろうと述べているのが興味深いのん
また「ボクシングの観客というものは常に不快」なんて言われていて笑ったんだ
タフカテの猿治安ぶりを考えると首肯するしかないのん - 18二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 19:06:52
へーっオーウェルの短編なんてあるんだﾇｯ
ディストピア好きッスルとしては読んでみたいっス - 19二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 19:10:33
- 20二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 19:12:13
ねーなんなのこのスレ
知能指数高すぎてあにまんでやっていい内容じゃ無いんだよね - 21二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:12:16
短編というか、小説と随筆の中間なんだよね
近代日本文学には心境小説というジャンルがあって、欧米では随筆とされるものが日本では小説になったりするのん
和洋で文芸ジャンルの分類が変わるなんて刺激的でファンタスティックだろ
ムフフ...これ一冊で色んな味の作品が収められているから読むのん 表題作『あなたと原爆』なんかは『1984年』への影響が感じられるから特におすすめっスね
下にAmazonリンクを貼っておきますね
作中でも触れられているけどベルリン五輪なんか酷かったらしいんだよね
お言葉ですが本さえ読めば誰でも書けますよこれくらい
書いている内容も書評から貰ってきたものもあるしな（ヌッ）
- 22二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:16:45
『本対タバコ』
娯楽品の代表としてのタバコと本を比較し、数値に基づいて読書が金のかかる趣味だという（当時の）通念の間違いを看破しているんだ
読書家として同意なんだ マネモブよ本を読め…鬼龍のように - 23二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:17:46
以上で紹介作品は終わりっス 少しでも興味を感じたなら是非とも買って読んでほしいですね…ガチでね
大変だけどなんだか楽しかったなあ これは文学だからね
また文芸作品紹介はするつもりなのん リクエストでもしてくれれば読んで感想を書きますよ マネモブよサヨナラーッ - 24二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:22:15
- 25二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 21:52:09
ウム...正直リーフェンシュタールがアメリカやソ連に生まれていれば名監督かつ、映画界での女性の地位向上に貢献した偉人として記憶されていた可能性は高いと思うのは俺なんだよね 歴史の悪戯じゃない？
- 26二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 22:44:08
ガキッのころに動物農場を読んでお馬さんが死ぬシーンで泣いた……それが僕です
大人になってから読むと「何やってるこのバカは？」「しゃあけど……」の板挟みになるんだよね - 27二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 22:54:37
ほうオーウェルか 俺にも語らせてくれ
と参加したくなる反面 なんでタフカテでやってるんだと…言いたくなる衝動に駆られる - 28二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 22:59:38
オーウェルの評論は平凡社ライブラリーの方で読んだんだ
政治関係はもちろんだが英語論や当時のB級作品への愛憎やトルストイのシェイクスピア嫌いをイジったり文学ネタもキレてるぜ - 29二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 00:05:26
オ、オーウェルって凄いんだな…
- 30二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 00:21:32