- 1二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 18:06:11
必ず、かの邪智暴虐の委員長を除かなければならぬと決意した。ユウキにはシングルがわからぬ。ユウキは、村の牧人である。猫を爆破し、つぼを突きながら暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明ユウキは村を出発し、野を越え山越え、海を越え、千里はなれた此このテーブルシティの市にやって来た。ユウキには父も、母も無い。女房も無い。同い年の、陽気な幼馴染と二人暮しだ。この幼馴染は、隣町の或る律気な青年を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。ユウキは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。ユウキには竹馬の友があった。ハルトである。今は此のテーブルシティの市で、学生をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにユウキは、まちの様子を怪しく思った。
- 2二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 18:18:00
ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなユウキも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。ユウキは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
「委員長は、技を消します。」
「なぜ消すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの技を消したのか。」
「はい、はじめはねこのてを。それから、御自身のよこどりを。それから、たがやすを。それから、オウムがえしを。それから、たたみがえしを。それから、エルフーン様の草笛を。」
「おどろいた。委員長は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、学生をも、お疑いになり、少しく派手なコンボをしている者には、人質1匹ずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば技を一つ一つ消されます。今日は6匹消されました。」
聞いて、ユウキは激怒した。「呆た委員長だ。生かして置けぬ。」
メロスユウキは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそリーグにはいって行った。たちまち彼は、巡邏のアオキに捕縛された。調べられて、ユウキの懐中からはねこのてパが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。ユウキは、委員長の前に引き出された。 - 3二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 18:35:53
頭トリプルだからシングルは分からんわな
- 4二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 18:36:26
ご両親殺すな
- 5二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 18:37:41
時々メロス本人の幻影が顔出してるな
- 6二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 18:43:18
「このねこのてパで何をするつもりであったか。言え!」暴君オモダカは静かに、けれども威厳を以て問いつめた。その委員長の顔は蒼白そうはくで、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「市を暴君の手から救うのだ。」とユウキは悪びれずに答えた。
「あなたがですか?」委員長は、憫笑した。「仕方の無い人です。あなたには、私の孤独がわからぬ。」
「言うな!」とユウキは、いきり立って反駁した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。委員長は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、私に教えてくれたのは、あなたたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟き、ほっと溜息をついた。「私だって、平和を望んでいるのですが。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはユウキが嘲笑した。「罪の無い技を消して、何が平和だ。」
「だまれ、トリプルの者。」委員長は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言えます。私には、人の腹綿の奥底が見え透いてなりません。あなただって、いまに、ダムに沈められることになってから、泣いて詫わびたって聞きませんよ。」
「ああ、委員長は悧巧だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、ユウキは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに一週間の日限を与えて下さい。たった一人の隣人に、亭主を持たせてやりたいのです。一週間のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴君は、嗄れた声で低く笑った。「とんでもない嘘を言いますね。逃がした小鳥が帰って来るというのですか。」 - 7二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 19:24:58
さも当たり前のように猫を爆破しながら暮らすな
- 8二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 19:40:31
何でパルデアが混じってんの?
- 9二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 19:58:24
血縁でもない幼馴染女子と二人暮らし…??そもそもユウキって幼馴染キャラいないだろ
- 10二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:19:00
- 11二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:25:54
「そうです。帰って来るのです。」ユウキは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、一週間だけ許して下さい。隣人が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にハルトという学生がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、1週間後の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を退学して下さい。たのむ、そうして下さい。」
それを聞いて委員長は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、一週間後に殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、私は悲しい顔して、その身代りの男を退学に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩やつばらにうんと見せつけてやりたいものさ。
「願いを、聞いた。その身代りを呼びなさい。一週間後には日没までに帰って来なさい。おくれたら、その身代りを、きっと処す。ちょっとおくれて来るがいい。あなたの罪は、永遠にゆるします。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。いのちが大事だったら、おくれて来なさい。あなたの心は、わかっています。」
ユウキは口惜しく、地団駄じだんだ踏んだ。ものも言いたくなくなった。
竹馬の友、ハルトは、深夜、リーグに召された。暴君オモダカの面前で、佳よき友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。ユウキは、友に一切の事情を語った。ハルトは無言で首肯うなずき、ユウキをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。ハルトは、縄打たれた。ユウキは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。 - 12二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:35:50
ユウキはその夜、一睡もせず千里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌々日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て孵化をはじめていた。ユウキの同い年の隣人も、きょうは隣人の代りに卵の番をしていた。よろめいて歩いて来る隣人の、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく隣人に質問を浴びせた。
「なんでも無い。」ユウキは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
隣人は頬をあからめた。
「うれしいか。綺麗な衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」 - 13二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:36:46
ユウキは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。
眼が覚めたのは夜だった。ユウキは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。婿の青年は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、GAMEの季節まで待ってくれ、と答えた。ユウキは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。婿の青年も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺らえ、陽気に歌をうたい、手を拍うった。ユウキも、満面に喜色を湛たたえ、しばらくは、委員長とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。ユウキは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。ままならぬ事である。ユウキは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。明後日の日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。ユウキほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、 - 14二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:38:27
✕GAME(ゲーム)
◯GAME(ガメ) - 15二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:38:54
「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの隣人の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの隣人は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」
花嫁は、夢見心地で首肯うなずいた。ユウキは、それから花婿の肩をたたいて、
「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、隣人と冷静最遅色噴火ドランだけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、ユウキの弟になったことを誇ってくれ。」
花婿は揉もみ手して、てれていた。ユウキは笑って村人たちにも会釈えしゃくして、宴席から立ち去り、猫小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。 - 16二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 21:18:31
眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。ユウキは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの委員長に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる。ユウキは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、ユウキは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢印の如く走り出た。
私は、明夜、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。委員長の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若い時から名誉を守れ。さらば、ふるさと。若いユウキは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止やみ、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。ユウキは額ひたいの汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。隣人たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐにリーグに行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気さを取り返し、好きな聖剣士のテーマをいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧わいた災難、メロスの足は、はたと、とまった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流滔々と下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵に橋桁を跳ね飛ばしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟は残らず浪に浚れて影なく、渡守りの姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながら毛玉に手を挙げて哀願した。 - 17二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 21:36:29
ミ・3・ミ
- 18二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 02:06:17
恐らくハルカかな
- 19二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 11:25:19
村はダムの底に沈んだはずだが…
- 20二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 12:18:42
今日のトリプルバトルの亡霊スレ
- 21二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 13:42:45
途中やじるしになって!のオマージュあるな
- 22二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 17:59:47
「ああ、鎮しずめたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。あれが二度沈んでしまわぬうちに、リーグに行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」
濁流は、ユウキの叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はユウキも覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と誠とワイガの偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。ユウキは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻かきわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍を垂れてくれた。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。ありがたい。ユウキは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の七賢人が躍り出た。 - 23二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 18:25:16
後半完全にメロスになってて草
- 24二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 20:42:02
しょあ!!!!
- 25二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 20:54:23
邪悪に対しては、人一倍敏感(正義の心袋叩き)
- 26二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 21:02:29
「しょあ!」
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちにリーグへ行かなければならぬ。放せ。」
「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」
「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから委員長にくれてやるのだ。」
「その、いのちが欲しいのです。」
「さては、委員長の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」
七賢人たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。メロスはひょいと、ファストガードをし、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、
「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を爆破、残る者のひるむ隙に滅びの歌を聴かせて、さっさと走って峠を下った。 - 27二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 21:05:40
〜鳴り止まぬクラッカー〜
- 28二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 07:12:25
保守
- 29二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 13:06:17
一気に峠を駈け降りたが、流石に疲労し、折から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、ユウキは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、七賢人を三人も撃ち倒し韋駄天、ここまで突破して来たユウキよ。真の聖剣士、ユウキよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、稀代の不信の人間、まさしく委員長の思うツボだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎なえて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、聖剣士に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺あざむいた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。
- 30二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 13:35:22
もうトリプル要素ゼロ…
- 31二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 21:40:06
GAME ( ガ メ ) OVER
- 32二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 08:47:47
七賢人ってことはゲーチスも棍棒持ってその場にいたのか?
- 33二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 16:01:50
最後の相手に滅び聞かせて逃走とかこいつの方が邪智暴虐だろ
- 34二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 17:14:37
「そこで今回は疲労を打破する新たなギミックを考えてきたぜ」
「他に方法なんてある?」
「実際の対戦にいこうか」 - 35二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 17:36:57
これが、私の定った運命なのかも知れない。ハルトよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、ハルト。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。ハルト、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。七賢人の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。委員長は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は委員長の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は委員長の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。委員長は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。ハルトよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。ダムには私の家が在る。猫も居る。隣人夫婦は、まさか私をダムから追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉かな。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。