- 1二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 15:15:08
ウマ娘には特有の匂いがある。
その匂いはいわゆるケモノ臭に近いものだ。
ケモノ臭と言っても嫌なものではなく、その匂いを一定数好む者もいるらしい。
かく言う俺もその匂いを嫌だと思ったことはない。
俺は調香師ではないので上手く説明できないが、上品なケモノの匂いに木と土の匂いを足した感じと言えばいいだろうか。
いつだったか、有名なモデルのウマ娘の匂いをイメージした香水が発売されてたっけ。
トレセン学園では当然その匂いを嗅ぐ機会が多いのだが、俺はここに勤め始めて3ヶ月でその匂いに慣れてしまった。
そんなある日、たづなさんと一緒に空き教室の片付けをしていた時にふとあの匂いがした。
「ふぅ、少し疲れてしまいましたね・・・」
そう言うたづなさんはパッと見で汗ばんでいるように見える。
あれ、もしかして?いやそんな訳は。
俺のその思考を読んだのか、たづなさんは“ハッ”と驚いた表情をした。
「あ、あの、匂い・・・ました・・・?」
たづなさんは頬を少し赤らめてそう聞いてきた。
「すいません!気になったとかではなく、ただそのなんと言うか・・・」
俺が慌ててそう返すと、たづなさんはいたずらっ子の様な顔をして、
「・・・トレーナーさん。この事は内緒でお願いしますね?」
と言った。
その後、俺は何事もなかった様にトレセン学園での仕事を続けている。
少しだけ前と違うのは、学園でたづなさんと目が合うと手を振られるようになった事と、俺がウマ娘特有の匂いを好きになってしまった事だ。
新しい担当の子にその事を伝えたら、顔を真っ赤にしながら蹴られてしまった。
この発言はさすがにデリカシーが無かったと反省した・・・。
たづなさんがなぜウマ娘であることを隠しているのかはわからないが、俺には測り知れぬ理由があるのだろう。
だから、あの空き教室で嗅いだ匂いもたづなさんの表情も俺だけの秘密だ。
そんな事を考えながら、俺はかつて空き教室だった自分のトレーナー室から出た。