- 1二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 19:13:57
セイウンスカイはバ群から6バ身程差をつけて先頭を走っていた。
序盤から先頭の位置につき、大きく逃げてからのペースダウン。上手くペースを調整してスタミナを温存しつつ、競争相手のスピード感覚を狂わせる技術。レースのペースをコントロールし支配する逃げの極地。
これこそ彼女が積み上げてきた、真の天才を凌駕するための手段。彼女がトレーナーと創り上げた努力と頭脳の結晶だ。
並のウマ娘なら追い付くことの出来ない状況。だが、彼女は油断しない。気を抜かない。何故ならーー
『第4コーナーを通過して最終直線に…これは!!』
実況の息を呑むような声が聞こえる。何があったかは言うまでもない。既に視界の隅にその姿がちらついている。
『エルコンドルパサー!エルコンドルパサーが来た!』
真紅のマントをはためかせたウマ娘、エルコンドルパサー。彼女が差を縮めてきているのだ。いや、それだけでは終わらない。
蒼、紫、緑ーーー更に後方から見覚えのあるシルエットがやって来る。
『スペシャルウィーク、グラスワンダー、キングヘイロー!先頭集団を猛追!何という末脚!!』
そう、今日のレースは【特別】だ。『黄金世代』と呼ばれる私達が、初めて一堂に会するレースなのだから。
「そりゃあ…追いついてくるよね」
同期の実力を目の当たりにして苦笑が溢れる。私の仕掛けた策を真正面から破るなんて、どんな化け物だって話だ。以前の私なら諦めていたかもしれない。けどーーー
ターフを踏み締める足に力が入る。今日は、今日だけは、何が何でも負けられない。
「まだまだァ!!!」
残ったスタミナと足を総動員して加速する。他のウマ娘がついてこれなくなる中、4つの影は足を緩めない。その差は最早数バ身まで縮まり、リードなど無いも同然だ。
「あはっ」
自然と口角が上がる。これが恐怖か。あるいは歓喜か。私の体が、魂が、奴らを叩き潰せと叫んでいる! - 2二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 19:14:19
『やはりこの5人だ!最早言葉は要らないのか!!』
実況の煽りと共にボルテージが最高潮に達する会場の片隅で、『皇帝』と『スーパーカー』はレースを見守っている。その視線は先頭争いをする5人の姿に注がれていた。
「ルドルフ、あれって…」
「ああ、そうそう見れるものではない。まさか…」
ソレを見て笑みを浮かべるルドルフ。その言葉の節々に、彼女らへの称賛と羨望が籠もっている。その理由はただ一点。
己の全身全霊を振り絞り、一着を譲るまいとする5人の目からは、鮮やかオーラと紫電が放出されていたのだから。
「5人同時に【領域(ゾーン)】に入るとはな」
「私が」「私が」「ワタシが」「私が」「私が」
「「「「「勝つ!!!!」」」」」
残り200m。決着はすぐそこに。
- 3二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 19:14:54
- 4二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 19:38:11
- 5二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 21:15:56
感想ありがとうございます
- 6二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 23:08:59
ほ