すいませんここに来れば

  • 1二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 09:45:21

    フラッシュとお菓子作りをすることになってあまりのバターと砂糖の使用量にウマドルとして葛藤するファル子が見られると聞いたんですけど…

  • 2二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 10:07:36

    お前が始めた物語だろ

  • 3二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 10:07:58

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  • 4二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 10:24:35

    ケーキって自作しようとすると思ってたよりバターと砂糖の塊だなって思うもんな…

  • 5二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 10:25:19

    >>4

    だから砂糖バターをケチって失敗する奴が多いのよ

  • 6二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 10:26:44

    美味しいものは脂肪と糖で出来ている
    これは本当にそうだと思う

  • 7二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:08:08

    美味しさのためには太るなど些細な犠牲だ

  • 8二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:14:29

    >>1

     食塩不使用のバター、グラニュー糖、製菓用クーベルチュール、生クリーム、卵、小麦粉、ココアに飾りの粉糖も忘れずに。ひとしきり揃った材料達はパティシエを父に持つウマ娘によって完璧に計量され、それぞれがボールやお皿の中でその出番を待っていた。

     オーブンは160℃に設定して既に余熱を始め、これで準備は完了。


    「それでは、始めましょうか……ファルコンさん?」


     エプロンと三角巾を制服の如く身に纏い、エイシンフラッシュが拳を握って気合を入れたのに対し、彼女の隣に立ったスマートファルコンはどうにも渋い顔をしていた。

     手ずから準備したという勝負服柄のエプロンに似合わない表情で、フラッシュの方へと向き直る。


    「……フラッシュさん、これ本当に分量合ってる?」

    「ええ、勿論。1g、寸分の違いもありません」


     自信たっぷりに笑みを浮かべるフラッシュに対し、ファルコンは苦笑いを浮かべた。

     そも、彼女が何故、トレセン学園のキッチンでフラッシュと並んでケーキ作りを始めようとしているのかと言うと、それは1週間程前に遡る。


     ダートに煌めくウマドルとしての知名度が上がると、当然SNSへの投稿もファンの注目を集めるようになっていく。トレーニング中の一幕は勿論、日常の何気ない一コマを切り取った投稿にもファンの反応が返ってくるようになるが、そのコメントの一つがファルコンの目に留まった。


    『デパ地下スイーツ巡り、超楽しそう! ファル子ちゃんって自分でもケーキ焼いたりするのかな?』


     投稿したファンにとっては、ファルコンの投稿に何気なくコメントしただけなのかもしれないが、これを目にしたファルコンの反応は違った。

     ウマドルとしての知名度向上は勿論だが、将来的なことも考えるとお菓子や料理に明るくなっているのは大きな武器になるかもしれない。


     そう思い至ったファルコンは、すぐさま自身の師匠になり得る人物の元へハヤブサのように飛んで行った。


     『フラッシュさん! ファル子にお菓子作りを教えて下さいっ!』


     そうして自室に飛び込むなり頭を下げたファルコンに、フラッシュは目を丸くしていた。しかし、事情を聞くとフラッシュは快くファルコンの頼みを聞き入れ、こうしてキッチンの手配までしてくれたのであった。

  • 9二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:15:58

     その尽力に応えるべく、ファルコンもまた材料の調達やエプロンを始め身の回り品の準備を万全にしてキッチンに臨んだのだが、いざこうして材料を前にすると、どうしても圧倒されてしまう。

     トゥインクル・シリーズを走るウマ娘としても、ダートに煌めくウマドルとしても、太り気味は絶対厳禁。そうした事情もあるが、こうして実際に並べられると想像以上に砂糖とバターの量が多く感じるのは気のせいではないと思う。
     スイーツバイキングに並んだプチフールの数々はどれも甘くて美味しそうな輝きを放って女の子を夢の世界に誘うが、その原料を並べられると色々な意味で現実を突きつけられたような気分にさせられるから不思議だ。
     そんなファルコンの内心を悟ったのか、フラッシュがふふ、と笑みを浮かべる。

    「心配には及びませんよ、ファルコンさん。摂取したカロリーは消費すれば良いのですから」
    「ふぇ……?」

     ファルコンが空気の抜けたような声を上げると、フラッシュは何やら書類を取り出してファルコンへと差し出す。一瞬首を傾げたファルコンだったが、一目見てそれが何かを理解した。

    「これって、ファル子の……」
    「はい、本当は私が責任を持って、と思ったのですが……トレーナーさんに事情を説明したら、すぐに対応して下さいました」

     差し出された書類は、ファルコンのトレーニングメニューであった。フラッシュと一緒に作るお菓子と、ティータイムにファルコンが食べるであろう量をカロリー単位で計算してトレーニングメニューが書き換えられている。
     トレーニングの質は維持しつつ、ファルコンがウマドルしてファンの為にしたいと思った事をフラッシュと一緒にこなせるように組み直されたトレーニングメニュー。摂取カロリーの計算にフラッシュが協力したのは火を見るよりも明らかだろう。
     そうして目の前に差し出された"ファン1号"の心遣いに、ファルコンの瞳が輝き始める。そんなファルコンに、フラッシュも嬉しそうに微笑んだ。

    「完成したら、是非トレーナーさんにも渡してあげて下さい」
    「……うんっ! ありがとう、フラッシュさん!」

     ウマドルらしいまぶしい笑顔を見せると、ファルコンはふんすと気合を入れ、改めてキッチンに並んだ食材に向き直る。

  • 10二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:16:08

    「よーし、パティシエファル子、頑張りまーす☆」
    「では早速、チョコレートの湯煎から」

     そうして、ファルコンはフラッシュの指示の元、まずは製菓用クーベルチュールとお湯の張ったボウルを手に取った。少し苦くて甘いチョコレートの香りがキッチンに広がると思わずファルコンの口元が緩むが、即座にフラッシュが矯正する。

     そんな一幕を何度も挟みながら完成したガトーショコラは、見事ファルコンのSNSで大きな話題を呼ぶことに成功した。何気ないコメントを拾って新しい活動を始めるファルコンの姿勢が評判を呼び、更に多くのフォロワーが集まったのであった。
     そして、フラッシュが太鼓判を押したそのガトーショコラは、ファルコンの友人達と、ファルコンの一番側にいるファンにも好評を博したという。

  • 11二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:17:16

    仕事がはえーよ

  • 12二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:17:41

    ゴウランガ!見事なワザマエ!

  • 13二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:17:49

    このレスは削除されています

  • 14二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 11:41:39

    >>1

    フラッシュとファル子のケーキ作りと聞いて筆を取らせて貰いました、お納めください

    最後ちょっとはみ出したのは許せ(※13間違って消したので改めて)

  • 15二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 17:03:18

    >>14

    お主、さては割と作る側の人間だな?良SS感謝だぜ

  • 16二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 23:23:33

    「フラッシュさんフラッシュさん、見てこれ!」
    ファルコンが突き出したスマホに、フラッシュは表情を変えず「近すぎて見えません。15センチほど引いていただけると助かります」と答えた。

    言われた通りそっとスマホを引くと涼し気なブルーの瞳は画像を一瞥したのか、重たげなまつ毛をパチリと上げてファルコンの瞳を捉える。

    「それで……これが何か?」
    「一緒に作って欲しいな〜って☆」

    見せたのはひとつのケーキ。ハリネズミを模したそれは針を絞ったクリームで表していて、チョコレートのつぶらな瞳がこちらを見つめている。

    ファルコンがこんなことを言い出したのには彼女なりに訳があった。

    ある日、活動内容をSNSにアップし終え、他の投稿を覗いてみるとかわいいお菓子の写真が並んでいた。最近同じような投稿を見ていた分、おすすめ欄にもよく並ぶようになったらしい。それは隠れた喫茶店のレトロパフェであったり、和菓子屋の見目涼やかな寒天のお菓子であったり──手作りの、あたたかみのあるお菓子であったりした。
    そういったものを自分で作ったことはないなと思った時、ふと浮かんだのは同室の顔だった。

    バレンタインにも活躍したというフラッシュはお菓子作りにおいて並々ならぬ情熱と腕前を持っているらしい。
    『夕春チョコレート・コンテスト』。スケジュールが合わず協力できなかったファルコンは、自室に帰ってからのフラッシュと結果を見守るだけだったけれども。

    一緒に何かがしたかった。それが、相手の好きで得意なことであれば、なおさら。


    そういうわけで、なかでもとりわけ可愛らしく、また一人では作れそうにないケーキを見つけてフラッシュに頼みに来たというわけである。

    しかしそう切り出してからも、断られたらどうしようとは思った。フラッシュが愛用している手帳を取り出した時には、もっとドキドキした。

    「では、7日後の14時から開始でいかがでしょうか」
    「…え!?」
    「これ以上早めるとなると難しいです。3日後にも時間は捻出できますが、その時間は試作に宛てたく…」
    「そうじゃなくて! その…いいの?」
    「Natürlich──もちろんです」

  • 17二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 23:23:53

    フラッシュは手帳を閉じて微笑んだ。それがなんだかとても嬉しくて、ファルコンは思わずフラッシュの手を握ってぶんぶん振った。

    「ううん、すっごく嬉しい! あっでも待って、試作って…?」
    「作ったことの無いケーキですので、目標とするレベルの完成のためには試作が必要かと思います。3日と1時間25分後より2時間35分を予定していますが…」
    「それ、ファルコもやる! というか、それを本番にするのがいいよ!」

    ファルコンはずいと身を乗り出した。今度はその勢いに押されるように、フラッシュが顎を引く。

    「しかし、ファルコンさんのことですからできたケーキはSNSにアップし、ファンへのサービス──または、トレーナーさんへの日頃のお礼とするつもりなのでは? やはり失敗は…」

    ファルコは握っていたフラッシュの手を離し、にっこり笑った。胸の前で手を組み、顔をわずかに倒す。

    「ファル子、フラッシュさんと作りたいの」

    アイドルの特訓の一端として鏡の前で何度も練習したポーズだった。別にこれでフラッシュの気を引こうというのではない。そんな姿は嫌というほど見られてきたし、たまに指導だってしてもらったし。
    けれど、これが精一杯だった。

    ファンのことやトレーナーさんのことを出された時、ほんの少しだけモヤモヤした。その意味は分からなかったけれど、違うと伝えたかった。上手く言葉にはならなかった。
    でも、言葉を介さないやり取りのことは、よく知っていたから。

    唐突なウマドル仕込みのスマイルに、フラッシュは少しきょとんとして──しかし頷いた。
    ちょっと眉を下げた、気の抜けたような笑顔だった。

    それを見て、ファルコンは。
    ──ウマドルやっててよかった!

    と。心の中で、拳を突き上げたのである。

  • 18二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 23:24:18

    「それでは作業を開始します」
    「よろしくお願いします☆」
    「作業時間は3時間を予定しています」
    「しゃい☆」
    「ですが──」

    フラッシュにしては歯切れの悪い様子だった。ファルコンはその理由を聞こうとしたものの、「それでは始めましょう」との号令にひとまず気持ちを切り替えた。

    「まずは計量からです」
    「1mgの誤差もなく、だねっ」
    「──それが喜ばしいですね。まずはバターを450g、お願いします」
    「うん☆」

    元気よく作業を始めたファルコンだったが、しばらくしてふと手が止まる。

    「どうしましたかファルコンさん。予定を30秒ほど超過していますが」
    「ねえフラッシュさん…これ全部入れなきゃダメ?」
    「はい。お菓子作りにおいて過不足は許されません」
    「でも……」

    暴力的な量のバターが、ボウルの中でとてつもない存在感を放っている。

    「バターが用意できたら泡立て器で混ぜていてください。混ぜながらグラニュー糖を入れたいので」
    「ところでその量って…」
    「2カップです」
    「カップ? グラムじゃなくて?」
    「Hoppla──すみません。アメリカのレシピを参考にしていたので。グラムに換算すると──」

    ファルコンは耳を折った。目も閉じたかったところだがそれで失敗するわけにはいかないので、目を開けながら心を閉じることで暴力的なグラニュー糖から必死に意識を逸らすのであった。

  • 19二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 23:25:41

    「スポンジが焼き上がりましたね。爪楊枝でガイドを作り横に三等分します。一段目にはアーモンドのシロップを塗り、上から先ほど作ったスイスメレンゲのバタークリームを──」
    「二段目にはシロップの後にアプリコットジャムを塗り──」
    「三段目は一段目と同じくシロップとクリームを──」

    もうお菓子を作っているのか兵器を作っているのか分からなかった。どんどんと目が死んでいくファルコンに、フラッシュが声をかける。

    「その、フラッシュさん」
    「ん!? な、なーに?」
    「あとは飾り付けだけです。メレンゲをケーキの周りに絞っていくのですが、お願いしてもよろしいですか」
    「…フラッシュさん。それ、ファル子がやっていーの?」

    ファルコンは静かに問うた。
    フラッシュの几帳面さは折り紙付きだ。今回だって計量にミリの誤差も表れないよう、焼き加減にミスがないよういろいろ気を回していたのは分かっている。
    デザインだって、彼女のノートには何度も描き直されたデザイン画があるのを知っている。
    絞り出しの量も、長さも、毛並みもきっと彼女のなかには正解がある。

    「ファル子、完璧にはできないよ? それならいっそフラッシュさんが──」
    「私、は!」

    フラッシュが声を荒らげた。その顔は、今日幾度も見た、何かを言いたげな顔をしている。

    「──ファルコンさんに、楽しんでほしいのです」
    「…え?」
    「今日、幾度も沈んだ顔をされていました。私も、ジョーダンさんのように『テキトーでいいよ』なんて言うことができれば良かったのですが…。
    お菓子作りにおいて一ミリの誤差も許さないのは正しいことです。けれど、これは大会でなく、店に出すものでなく、誰かのためでもないのなら──私と、あなたとの二人で作るのが目的だと言うなら──
    これが正解だと、思うのです」

    ファルコンは、丸い目を更に丸くした。
    あの笑顔の意味をフラッシュが余すことなく受け取っていたこともそのために彼女が考えを寄せてくれたことも驚きで──じわじわと、嬉しくなった。

  • 20二次元好きの匿名さん24/07/25(木) 23:26:15

    「ううん。ファル子はちょっとカロリーが心配だっただけ。フラッシュさんとお菓子を作るのは、本当に、ほんと〜〜に! 楽しかったよ!」

    メレンゲの詰まった絞り袋を受け取る。

    「あとは任せて! ファル子、がんばっちゃう!」


    まあ、初心者がそんな大役を仰せつかっても完璧にこなせるわけはなく。
    メレンゲを絞り出し終わりバーナーで炙って固めるころには、メレンゲ毛並みはちょっと乱れていてハリネズミと言うよりは太った子犬のようなできになっていたわけだけれど。
    それでも二人して大笑いして、写真を撮って、みんなの分を切り分けてから先に二人で食べたケーキの味は完璧だったので、よしとする。

    おしまい

  • 21二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 00:06:26

    良SSが集まってきてる…

  • 22二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 08:24:29

    ケーキ食べたくなる

  • 23二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 08:28:33

    >>22

    今日の晩にでも食べるといいぞ

    こんなくそ暑い中一週間頑張った自分を労っていいんだぞ

  • 24二次元好きの匿名さん24/07/26(金) 16:47:20

    いいSSをありがとう

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