1が小説執筆するのを監視するだけのスレ

  • 1二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 11:25:36

    ゲームに逃げないように&執筆モチベを保つためにこんなことを考え始めました


    ルール

    ・このスレの投稿フォームに直接執筆していく

    ・5分毎に強制で投下

    ・1以外は監視するなり茶化すなり何でもどうぞ


    書くのはこれの最新話部分です。

    消極性FPS理論 ~オーダーが地味だとチームを追放されましたが、野良で会った美少女(?)と新しいチームを組んでゲームを楽しめるようになりました! あ、ちなみに元居たチームは崩壊R15 残酷な描写あり 青春 現代 FPS ゲーム コメディ 追放 ざまぁ ざまぁパート完了済み 現在大会パート ESN大賞3 OVL大賞7 集英社小説大賞2 新人発掘コンテスト 123大賞ncode.syosetu.com

    最初の五分


     カイトこと俺は変わらず周囲を警戒する。

     その間アポロンとアルテミスの二人は倒した三人の物資を漁り終えていた。


    「しかしオーダーのマモルだったか……あいつはどこに行ったんや?」

    「ここまで出てこないってことは逃げたんじゃないの?」

    「ああ……そうだろうが……」


     俺たちが完全に態勢を立て直した今からマモルが現れても何か出来るとは思えない。

     戦闘している間に逃げたと考えるのが当然だが……少し引っ掛かる。


     安全に逃げるのが目的……だったとしても別に3人を犠牲にしなくてもいいはずだ。

     

  • 2二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 11:30:16

     一人じゃ厳しくても二人は犠牲にすれば足止め出来るだろう。
     そもそも一人生き残ってどうする。
     マモルはオーダーの才覚あれど対面は疎いし、何よりSSSはチーム戦だ。このまま野垂れ死ぬのが見えている結末。
     見えている破滅に身を投じた……訳ではないとしたら……。

    「シズカ」
    「はい」
    「ここから『APG』がDAY2に進出するために必要なポイントを計算してくれないか」

  • 3二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 11:35:04

    「承知しました」

     細かい計算をしながらでオーダーに支障をきたしては本末転倒だ。『APG』に落とされてしまったシズカに頼む。

    「何や、まだ『APG』を警戒してるんか? もう終わりやろ、あいつらは」
    「そうよ、さっきのは自暴自棄になっただけでしょ。負ける前に和多田氏たちに少しでも一泡吹かせたいってだけよ」
    「まあでも実際面倒なことになったな。この付近じゃ蘇生出来ないし、このラストマッチはもう3人で戦うしかないな」

  • 4二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 11:37:57

    メンタル強者で草
    頑張れ

  • 5二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 11:40:20

     落ちてしまった人員を復活させるためにはその棺桶からタグを拾って、通信所に向かう必要がある。

     この近くには通信所は無く、また蘇生するときにかなり周囲から目立ってしまう。一人以上人数が欠けているということも教えてしまうため、他の部隊にとって絶好の攻め時となる。全国大会の本選ともなればそれを許すような甘いレベルではないだろう。

     3人では表立って行動するのは難しい。




    >>4 頑張ります

  • 6二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 11:45:38

     戦闘せずコソコソと動くしかない。
     やつはそれを狙って……いやだとしてもそれだけで勝てるわけもなく……。

    「計算出来ました」

     そのときシズカの報告が来た。

    「どうだ?」
    「『APG』は私たちと戦う前に3キル、そして私で1キル。合計で4キルポイント取っています。……がまだまだ25位には遠く、オーダー一人では到底稼ぐのは難しいでしょう」
    「ほらな、やっぱり無理やないか」

  • 7二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 11:50:34

    「……具体的な点差は?」
    「ええと――ですね」

     シズカが『APG』と25位のチームの点差を答える。

    「その点差だと……一人じゃキルも難しいだろうし、順位ポイントを狙うしかないけど……ここから2位になれば行けるか。でもまあ無理でしょうね」
    「2位…………2位だとっ!?」

     アルテミスがこぼした言葉に俺は反応する。
     ここから2位になればDAY1突破……そのために……だとすると……無理がある……だがやつは……やつなら……。

    「正気……なのか?」

  • 8二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 11:55:14

    ===========

    「正気……なんだよな」

     そろそろ『GD』のオーダー、カイト選手も気付いた頃だろう。マモルこと僕の狙いに。

     戦況(コード):非常事態(Emergency)

     部隊全員の生存が難しくなった場合を見越したチームでの取り決め。
     

  • 9二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:00:27

    ちょっとここまでの文字数カウントしてました

    1392字 2500~3000字目標なので半分か

     

  • 10二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:05:28

     3人が犠牲になってでも1人を生き残らせることで勝ちを諦めない。

     僕ら『APG』はそれぞれが特化した技能を持つ。
     平均的な技量を持つプレイヤーより、1人でもどうにか出来る可能性が高い。

     その際、誰を生き残らせるかは状況によって変える。

  • 11二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:10:17

     作戦『生存』
     乱戦に巻き込まれている場合は前線での生存力の高いアカネを残し。

     作戦『隠蔽』
     監視が強いときは状況把握の高いジイクさんを残し。

     作戦『無双』
     フラットな戦場なら『技能|模倣(コピー)』で一番対応力の高いリリィさんを残す。



     他の3人はいい。
     対面力のない僕が一人生き残らないといけない場合が一番不味い状況だ。

  • 12二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:15:49

    思考中

  • 13二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:20:07

    ルビの調整終わり 執筆戻る

  • 14二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:25:46

     それでもやるしかない。

     DAY1を突破、全国大会を優勝するためにも。



    「生存しているのは93人……か」

     まだ第一収縮も始まっていないということで僕ら以外に戦闘は起きていないようだ。

     キルを取るのは無理だ。
     生存し続ける、ここから2位に入ればいい。

  • 15二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:31:35

    「…………」
     僕はこの大舞台で自分の理想を叶えないといけない。


    『なるべく戦わない方がいい』
    『理想論ではあるが、単純に最後まで隠れることで戦わず、その間に他のチームが潰し合い切った場合、その時点で二位が確定する』



     でもこのレベルではただ隠れるだけではいずれ見つかる。
     生き残るためにはコントロールが必要だ。戦いを煽り、戦場を支配する。


    「作戦『煽争(アジテーション)』……スタートだ」

  • 16二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:37:54

    82話 コードE 了

    ということで勢いそのまま投稿。
    2054文字で一話分には少し少ないですがまあ誤差誤差。

    11時20分に始めて12時30分に完了ということで一時間で2000文字ならまあいい感じでしょう。

    ゲームに逃げることなく執筆できたのでこの方法いい感じかもしれない。
    メンタルがかなり必要ですが。

  • 17二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 18:04:13

    このレスは削除されています

  • 18二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 23:31:29

    >>17 ありがとうございます。


    やる気になったのでまた今からやります。

  • 19二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 23:35:39

     カイトこと俺はこの前のスター杯より前からマモルの名前を知っている。

     あれは今から一年ほどは前のことだろうか。

     俺はSSSのスキルアップのために非公式のソロの大会に出ていた。

     普段の四人一部隊とは変わって、一人一部隊。しかし、戦場には変わらず百部隊で百人。仲間に頼ることが出来ず対面力が磨かれるのを実感していた。

  • 20二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 23:40:11

     非公式といえど大会、賞品が出るということでポイント計算が行われる。それまでに行われた数マッチの順位表が張られていた。
     別に賞品が目当てでは無かったが、順位が付くなら気になるものだ。
     見てみるとどうやらここまでキルを多くとれたおかげで俺は1位だったが……。

    「……何だこれは?」

  • 21二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 23:45:21

     見ている内に気になるものがあった。

     順位表はキルポイントと順位ポイント、総合ポイントの欄に分かれて並べられている。
     総合ポイントは先述通り俺が1位なのだが、10位の人がキルポイントが0なのに順位ポイントだけでランクインしていた。

     順位ポイントだけならば1位の俺よりも上……何だこの異様なやつは。

     そいつをもっと確認してみるとこれまでに行われたマッチ全てで2位を取っていた。

     キルポイント0……戦わずにずっと隠れているのか? ソロの大会、部隊で動いていないから死角も増えるだろうがだとしてもそんなことが可能なのか?

  • 22二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 23:50:46

    「面白い……」

     大会に出たのはスキルアップのためであり賞品のためではない。
     それからのマッチ、俺はそいつを仕留めることだけに専念した。

     キャラもいつもの工作家から鳥使いに変えた。
     SSSのマップは広い。本気で隠れられると見つけるのも困難だ。そのため索敵スキルが必要だった。



     次のマッチ。それらしい人影は見つけた。が、距離があって追いつけず。

     その次のマッチ。見つからず。

     さらにその次のマッチ。しかし別の敵に絡まれてしまい対処している間に逃げられる。

  • 23二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 23:55:07

    すごいことやってるなスレ主さん

  • 24二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 23:55:49

     ガンメタした立ち回りをしているにもかかわらず、そいつは二位を取り続けた。

     そうこうしている内に大会の規定マッチ数が終了。

    「逃げ切られた……いや」

     ただ逃げていただけではないだろう。
     別の敵に絡まれた際に気付いた。やつは戦場を支配している。

  • 25二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:00:06

     追ってくる敵がいるのを見越して、別の敵を誘導して俺にぶつけさせた。

     敵に戦わせる、というのは有用なテクニックだ。

     そして弱ったところを漁夫する、バトルロイヤルの基本である漁夫の発展形。


     俺だって使うこともあるが……それを戦うこともせずに実行できるか……?



    >>23 自分でも何やってるんだろうと思う時があります。

  • 26二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:05:54

    「いや、違うな。そんなことする必要が無い」

     普通に銃を撃って敵を誘導すればいいだけだ。
     俺にはそれだけの実力がある、わざわざ戦わないことに価値を見出す必要は無い。

     おそらくやつにはその力が無いのだろう。だったらその力を身に着ければいいのに。

    「プレイヤーネーム……マモルか」

     歪なやつだ。

  • 27二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:10:41

    ここまで1200文字。約半分。

  • 28二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:15:10

    『煽争(アジテーション)』

     戦場を支配、自身以外を争いに煽ることによって、戦わずして少しでも長く生き残る作戦。

     『GD』が漁夫に来ていた時点で実行に踏み切ったが、それには二つクリアしないといけない条件があった。

     一つがこのままではポイントが足りないこと。
     2位の順位ポイントだけでは1ポイント足りなかったので、1だけキルポイントが必要だったこと。

     もう一つが『GD』の存在だ。

  • 29二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:20:35

     『完全指揮(パーフェクトオーダー)』ならば僕のしようとしていることを理解出来るだろう。
     DAY2突破も確実としており、このラストマッチはいわば遊んでもいい状態だ。

     昨日会ったカイト選手は負けられないと決意が固かった。
     『技能|模倣(コピー)』を有するもう一つの優勝候補、僕らのDAY2突破を阻止して優勝を盤石とするために損益を無視して妨害してくる可能性がある。

     そのために3人に頼んでシズカ選手を落としてもらった。

  • 30二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:25:47

     これにより足りなかった1ポイントが埋まり、シズカ選手が操る鳥使いが落ちたことで『GD』は索敵スキルが使用不能になった。

     SSSのマップは広大だ。本気で隠れれば中々見つけることは出来ない。
     だったらかくれんぼになりそうだが、だからこそ広域索敵の出来る鳥使いの人気が高いのだ。

     如何にこちらの意図が読めても、僕を見つけられなければ意味がない。

     

  • 31二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:30:25

    ちょっと迷い中。

  • 32二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 01:09:20

    「マモル君、どう!? ちゃんと逃げれた!?」
    「ええ、予定通り『観測基地』まで来れました」

    「ふん、アカネがわざわざ犠牲になったんだからしっかり仕事しなさいよね」
    「こらこらお嬢様」
    「いいんです、ジイクさん。その通りですから」

     3人は完璧に仕事をこなした。シズカ選手を落としてくれた。

     だったら次は僕の番だ。

     僕に全てがかかってるんだ、絶対に失敗できない。
     絶対にここで2位になるまで生き残って見せる。

    「マモル君…………」

     今は広い戦場。簡単には見つからない。
     だがこのゲームはステルスシューティングではなく、バトルロイヤル。
     いつまでも隠れることを許さないためのルール。

     戦場の制限、第一収縮が始まる。


    83話 了

    ラストってタイミングで掲示板落ちてビックリした。
    いいペースで執筆できた。
    小説書いてると迷って堂々巡りになったり手直ししたくなってくるのがあるあるだと思いますが
    この方法だと5分で強制的に次に進めないと行けないのがいい感じですね

  • 33二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 12:41:53

  • 34二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 12:43:16

    live codingみたいで面白いね

  • 35二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:15:09

    >>34 リアルタイムプログラミングって面白いことするなあ


    投稿ペース上げると宣言してしまったので夜も遅いですがやっていきたいと思います。


    習慣にして今の作品早めに完結させたい。

  • 36二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:20:32

     思い返すのは第二予選のときのことだ。

  • 37二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:25:43

     アカネちゃんとジイクさんが不調でリリィこと私を含め三人が早々に落ちてしまった。

     けどマモル君は一人で生存して2位を取った。

     予選を突破した後、当然気になってマモル君のリプレイを見返したし色々聞いたりした。



    『別に難しいことしてないですよ』
    『いや、絶対何かしているでしょ!? どうしてこんなに戦い巻き込まれないの!?』

     第二予選のマップは『工場』入り組んだ『中』と開けた『外』に分かれている。
     その『中』にいて乱戦が起きている中、マモル君は全く巻き込まれないで悠々と生存していた。

  • 38二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:30:21

    『中は色々込み入ってますからね。それに視界が暗いから見つかりにくいんです。戦わなくても戦局の誘導、戦場の支配がしやすい。流石に他のマップ、開けた場所だと苦労するでしょうね』

     苦労する。
     つまり難しいがやることが出来るということだ。

    『ふぉっふぉっ、ご謙遜を。十分にすごいことですぞ』
    『アカネだって一人で長く生き残ったことはあるわよ!』

  • 39二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:35:22

    『そうだな、確かに僕たちのチームは一芸特化のメンバーが多い。一人でもやれる場面は他よりも多いだろうな』

    『私は一人生き残っても大変だろうけど……』

    『こんどヤバいときがあったらアカネに任せなさい! 一人でも生き残って目立って見せるわよ!』

    『隠れるなら私の出番ですかな、どんな監視も把握して穴を見つけましょう』

    『そうですね……じゃあ一応取り決めておきましょうか』

     こうしてコードEとそれに伴う作戦が決まった。
     でもそれは戦いが終わってホッとした中での半ば与太話のようなもの。
     まさかこの大事な本選、しかもDAY2突破がかかる場面で使うことになるなんて……。

  • 40二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:40:12

    「第一収縮は範囲内……祈祷師がいる内に見た次の範囲は大丈夫……問題は第三収縮での立ち位置……そして最終的な範囲は……」

     マモル君がボソボソと呟きながら集中するのを私は見守ることしかできない。

     ジイクさんの使う祈祷師が落とされたことでスキルによって安全地帯を読めなくなった。
     しかしSSSにおける安全地帯の収縮はパターン化されていて、経験を重ねた人は大体どの場所になるか読めるらしい。
     だったらその中心に向かってじっとしとけばいいかというとそうでもない。

  • 41二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:45:12

     安全地帯は全ての部隊が目指してやってくる、中央にいて索敵スキルで見つけられた途端逃げる場所が無くなってやられてしまう。
     立ち位置が大事だ、どのタイミングでどんな場所を取るか。

     私も最近ちょっとプロの真似事みたいなことして頑張っているけど、それでもどうすればいいのか想像が付かない。

     マモル君にしか分からない計算が今行われているのだろう。

  • 42二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:50:35

    「よし、決めました。『火口』付近に向かいます」

     そうしてマモル君は移動先を決めると早々に動き始めた。

     グツグツとマグマが煮えたぎる様子が見える『火口』。スポットの特徴としては他より高い位置にあるため有利だが、蒸気や煙によって視界が悪いというところか。

  • 43二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:55:16

     その近く、物置小屋のようなところに身を隠すマモル君。

    「最初の部隊が通るときは賭けですね。見つからないように祈るしかありません」

     息を潜めると決めたら次に行動するまでやることはない。マモル君は見ているだけの私たちに説明するように言う。
     賭け……そうだよね、工場と違って火山地帯は開けた場所の多いマップだ。マモル君の言う苦労する場所。
     そして本選というレベルの高い舞台であることを考えると賭けに出ざるを得ないところもあるのだろう。

     そうしてしばらくすると小屋の外を歩く音。

  • 44二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:00:11

    「っ……!」

     釣られて私も緊張する。
     ゲームの中の出来事なのに、私が実際にプレイしているわけでもないのに、なるべく音を抑えて『見つからないように』と祈る。

     幸いにもすぐに素通りしていく足音が聞こえてきた。

    「ふぅ……」

     大きく息を吐きだす。

    「何とかなったわね」
    「寿命が縮みそうですな」

     アカネちゃんとジイクさんも同じ気持ちだったようだ。

  • 45二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:05:13

    「よし、これでしばらくは安泰ですね……いや、でも気を引き締めないと」

     マモル君も一瞬安堵するも、実際に戦場に立つ身としてすぐに気を入れなおす。

    「あ…………」

     私は声をかけようとするも集中を乱すかもしれないと留まった。



     それからしばらくして近くで戦闘が起き始めた。
     小屋の隙間からそっと覗くと、どうやら火口を挟んで部隊が撃ち合っているようだ。

  • 46二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:10:16

     そこで一つ恐れていた事態が発生した。

     ピュイー! と鳥の鳴く声が聞こえたのだ。

    「鳥使いの『索敵』!!」
    「マズいんじゃないの、これ!?」

     戦闘中の部隊が漁夫られないように周囲に部隊が近づいていないか確認したのだろう。
     続けざまに鳴き声があった。もう一方の部隊も同じように考えたのだろう。

     そして私たちが鳥の鳴き声が聞こえたということは索敵範囲内ということ。
     マモル君が一人隠れていることがバレた。
     すぐさま逃げるべきだ、今にも小屋の扉が蹴破られて侵入されるはずで――――。

  • 47二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:15:14

    「いえ、大丈夫ですな」
    「はいその通りです」

     しかしジイクさんとマモル君は落ち着いている。

    「どういうことなの、爺?」
    「交戦中の部隊はお互いにマモル様の位置が分かりました。しかし潜んでいる場所は火口より少し低い場所にある小屋。浮いた駒だと取りに行くと、それまで交戦していた部隊に上を取られて最悪全滅します」
    「なるほど……お互いにお互いを警戒して、マモル君を攻められないんだ」
    「よく分かったわね、爺」
    「状況を目前とすればそれはもう。マモル様のすごいところはこうなることを事前に見越して物置小屋を取っておいたことです」

     そうだ、これは偶然起きたことじゃない。マモル君は意図的にこうなるようにした。
     部隊がどのように動くか、どこで戦闘が起きるか、どのタイミングで潜伏場所が露呈するか、そこまで見通していた。

  • 48二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:21:27

    「もう少しすれば戦闘が激化するでしょう、そのタイミングで離脱。漁夫に急行しようと視野狭窄する部隊の脇をすり抜けて次の地点に向かいます」

     すぐに次の状況を見てきたかのように話すマモル君。

     実際その通りになってひとまずは危機を逃れることに成功した。

     しかし画面に映る生存者の数は85人。
     まだまだ道は始まったばかりだ。

  • 49二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:24:42

    84話 了

    ぴったり一時間で書きあがり、いいペースだ。
    2690字で分量も十分。

    投下は朝にすることにして寝ます。

  • 50二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 09:25:43

    保っ保っ保

  • 51二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 20:46:38

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:10:22

    昨日の保守は自分でしましたが今日は別人という驚くべき事実
    誰かが私を執筆に駆り立てている……

    というわけで今日もやっていきます
    今日は何となく書くこと見えているのでやりやすいはず

  • 53二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:15:48

     これがラストマッチで助かったな。
     僕らのように順位を上げるのに必要なポイントが各々分かっているため、無理矢理にでもキルムーブに出る部隊が多い。
     そのおかげで戦局がよく動き誘導がしやすい。

     これが初戦とかだと陣取りゲームのようになって、一人の僕が生存する場所は無かっただろう。
     ……って、まあその場合だと僕らだってこんな無茶なムーブしないし、意味ない仮定だな。

     第二収縮を終えて第三収縮の待機中。

  • 54二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:20:10

     『火口』付近から逃げてきた僕は『エネルギー研究所』の一隅に潜んでいた。
     第三収縮を終えるタイミングで安全地帯の端となる予定で、さらにこの『火山地帯』で一番大きなスポットであり隠れるのにもちょうどいい。

  • 55二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:25:41

     しばらく待っていると第三収縮が始まり、さらに研究所内に戦闘音が響き始めた。

    「よし、やってるな」

     『火口』付近での戦闘に引っ張られた部隊が、安全地帯の内側を目指そうとするも、同じように動いていた他の部隊と走りながら戦っている。
     そうなることは分かっていた。

     安全地帯に向かって急がないといけないが、無防備に走っては相手部隊に落とされる。それ故に交戦しながら進むが、もちろんスピードが落ちて泥沼といった状況。

    「さて仕上げに……っと」

  • 56二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:30:08

     僕は手榴弾を取り出して放り投げる。逃げてくる部隊、その背後に落ちるように。
     戦闘をするつもりはない。その証拠に手榴弾はダメージを与えていない。
     だがこれで二つとも部隊を倒せる。

     と、僕が目論んだとおりに爆発後、逃げていた部隊は一転、足を止めてもう一方の部隊に襲い掛かる。
     急な攻撃に攻められた部隊は壊滅。
     攻撃した部隊も範囲に飲み込まれてダメージを食らい壊滅した。第三収縮ともなれば大ダメージになる。

  • 57二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:35:31

     何故こうなったか? 逃げていた部隊の心理は手に取るように分かる。
     あの手榴弾一発で安全地帯の端で待ち構えている部隊がいると判断したのだ。このまま逃げても待ち構えている部隊に倒される。
     それだったらもう一方の部隊を倒して少しでもキルポイントを稼いだ方がいい。

     落ち着いていれば待ち構えている部隊の全容を把握する余裕もあっただろうが、戦場は瞬間の判断が重要だ。実際にちゃんと待ち構えられていたら正解の行動であり、そのまま逃げ続けるべきだった、というのは結果論でしかない。

     とにかくこれで部隊の数を減らすことに成功した。
     順位を二つは上げたということでちゃくちゃくと進んでおり――。

    「……っ!?」

  • 58二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:40:41

     その時近くで足音がした。慌てて隠れるが……姿を見られた気がする。

     マズい、マズい、マズい……!!

     くそっ、何でこんな安全地帯の端にまで部隊がやってきたんだ!? 漁夫を狙っているならもうちょっと早く来い! そしたらさっきの部隊の始末は任せてやったのに!!

     内心で悪態を吐くがそれで事態が改善するわけじゃない。

     戦場にイレギュラーは付き物だ。
     そんなことは分かっている。
     でもそれが起きるべきは今じゃないだろう……!!

    「……………」

     いやでもこの事態を予想してすぐに隠れるべきだったか……気を抜いた。

  • 59二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:45:02

     みんなの頑張りに応えるために、僕は完璧じゃないといけなかった。
     他じゃない、僕が悪い。

     どうする……ここからリカバリーするためには……気付いていない可能性に賭けるか? それとも一か八かで安全地帯の外の方に逃げるか……でも、体力が続くかどうか。

    「負けられない……みんなのためにも負けられない……!」

     小声で呟きながら僕は決断しようとして。





    「早く負けなさいよ、マモル!!」

     そんな声が聞こえてきた。

  • 60二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:50:16

    「……え?」

    「もうアカネちゃん何てこと言ってるのよ!! ……あ、ごめんね、マモル君。こっちの方は気にせず集中してね」

    「……いやいやいや無理ですよ!! 一体何があったんですか!?」



    「ふぉっふぉっ、どうやら会場の実況もマモル様の現状に気付いたようでして、場内が盛り上がっているのです」

    「現状……?」

    「『このまま2位まで上がればDAY1突破! さあ一人でどこまで粘れるのか!』……って大注目よ!! マモルのくせに、アカネよりも目立ってるんじゃないわよ!!」

    「えぇ……それは理不尽だろ」

     でもそうだ、ヘッドセット越しではあるが確かに周囲のボルテージが上がっているのを感じ取れる。

  • 61二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:55:27

    「もうほんとごめんね、集中を乱して」

    「……いえ、おかげさまで視界がクリアになりました」

     大きく息を吸って吐き出す。
     そう、気付けば周囲から足音はしなくなっていた。どうやらみんなと話している内に敵は立ち去ったようだ。どうやら僕に気付いていなかったということだろう。
     焦って飛び出したらそれこそ見つかって終わっていただろう。
     僕は完璧じゃない、でも敵だって完璧じゃない。

  • 62二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 00:00:11

     そして『完全指揮(パーフェクトオーダー)』だって完璧じゃない。
     ふとそう思った。

    「はっはっはっ、楽しくなってきましたね!!」

     僕は高笑いを上げる。

  • 63二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 00:05:37

     追い詰められて大切なことを忘れていた。
     これはゲームだ、楽しまないでどうする。
     こんな大舞台で、しかも大勢が注目する中で、大それたことをしでかそうとしているのだ。
     僕はワクワクするべきなんだ。



    「ジイクさん、一ついいですか?」
    「何なりとお申しください」
    「この試合勝つことが出来たら、こうかっこいい編集を入れて動画化してくれませんか? 後付けの解説でも何でも協力しますので」
    「……ここまでの注目度ならば動画化すればかなりの集客を見込めます。願ってもない提案ですな」

    「はぁ? そんなの絶対駄目よ! ア・カ・ネ・のSSS爆勝chなのよ! 何、堂々と乗っ取ろうとしているのよ!!」

  • 64二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 00:10:33

    「そうだな……じゃあ今度からマモルのSSS爆勝chに改名するか」

    「……もう一度言うわ。さっさと負けなさい」
    「ア、アカネちゃん。負けると私たちが優勝出来なくなるんだけど……」

    「じゃあ目立たないように勝ちなさい!」
    「この状況から勝てばどうしても目立つでしょうな」

    「……分かったわ。じゃあ終わったら訓練場に来なさい。一対一でボコるから。『生意気なオーダーをボコってみた』って動画出すから」
    「理不尽だろ、それ」

  • 65二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 00:17:02

     アカネの声音からして本気だろう、おっかない。



    「マモル君」
    「何ですか、リリィさん」

    「目一杯楽しんでね!!」
    「もちろんです」

     話しながらも周囲の状況確認は怠っていない。
     先ほどまでいた部隊が十分に離れたと判断して行動を開始する。

     残り生存者48人。約半分は残っている。
     2位になるとしたら生存者が5人以下となる計算だ。
     でも今の僕はそれが遠いとは思わなかった。

  • 66二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 00:20:27

    85話 了

    今日も約一時間、2500文字、いいペース!
    今のパートも終わりが見えてきて順調、順調。

    それでは寝ます、おやすみなさい。

  • 67二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 08:13:39

  • 68二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 19:55:18

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:20:28

    今日の執筆分どういう風に展開するかちょっとあやふやだけど書いている内にどうにかなるでしょう。
    というわけで始め。

  • 70二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:25:35

     カイトこと俺は戦場を眺めるしかなかった。

     ラストマッチの順位は9位。
     マッチ早々にシズカを落とされて、3人しかいなかったのに粘った方だろう。

     しかしそれよりも厳しい状況で挑んでいるマモルはまだ生きている。

    『どういうことだ!! 戦場に一人ポツンと残され、衝突すれば吹き飛ぶような命!! なのにこの乱戦の嵐の中、台風の目のように彼の周りには銃弾が届かない!!』

  • 71二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:30:00

    『ラッキー……では無いでしょうね、ここまでくると。解説なのに申し訳ないですが、私の目からは何が行われているのか分からないですね』


     会場の実況と解説の声が聞こえる。
     解説はプロゲーマーが呼ばれていたはずだが、確かアタッカーのはずだ。オーダーの立ち回りに精通していないのだろう。
     同じオーダーである俺の目からするととんでもないことをしているのだが……あれではその1割も伝えられていない。

  • 72二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:35:45

    「しっかし最初に聞いた時は無茶やろ思ったけど、本当にここまで生き残るとはなー」
    「作戦失敗……いえ、こちらのミスというより、あちらが見事だと言うべきでしょうね」
    「私が生存することが出来ていたら……」

     チームメンバーもそのプレイに釘付けだ。

     そうしているうちにマッチは最終収縮を残すのみとなった。
     狭いエリアには残り4部隊生存している。
     そんな中マモルは戦いに巻き込まれない位置を既に取っている。

  • 73二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:41:20

    「これはもう決まったな」

     後は手榴弾や銃撃で戦い合わせるように動けば、3部隊で潰し合って、残った1部隊とマモルだけになる。それでDAY1突破条件の2位だ。
     滑り込みではあるがチーム『APG』はDAY2に進出出来る。

  • 74二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:45:03

     『完全指揮(パーフェクトオーダー)』なんて呼ばれて少し天狗になっていたか。
     同じアマチュアでもここまでのオーダーがいる。

     総合値では負けていないはずだ。客観的に見ても違いないはず。

     しかし一点。

     なるべく戦わない立ち回り、消極的なオーダーにおいて、やつは俺を上回る。

     ……厄介だな。
     DAY2のルール、優勝するためにはスターの獲得が絶対条件。

  • 75二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:50:28

     明日は一日中やつと同じ戦場で戦うことになる。

     ……負けられない。俺には負けられない理由があるんだ。
     世界の滅亡を防ぐためにも――。

    「明日は絶対に上を行ってみせる」





    『さーて残り2部隊となった!! 何と序盤にチームメンバー3人を失ったはずのマモル選手がここまで生き残っている!! 一体どういうことだ!!』

  • 76二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:55:12

    『見に徹せるのはここまで、残り二部隊となれば戦うしかありません。どうやらマモル選手は早速仕掛けるようですね』
    『おおっと戦闘したばかりの敵の背後目掛けて突っ込む!! これは――!!』
    『……集中砲火で落とされましたね。まあ3対1だったのでひっくり返すのは厳しかったでしょう』

    『というわけでラストマッチも決着! 2位となった『APG』だがおそらくそれは目論見通り! なんと逆転でDAY2突破を決めたぞーー!!』





    ===========





    「はぁ……もうクタクタだな」

     その日の夜。

  • 77二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 00:00:17

     マモルこと僕は会場に併設されているホテルに用意された部屋のベッドに寝転んでいた。

     一日中大会本選という緊張感の中でSSSをプレイした上に、ラストマッチの『煽争(アジテーション)』作戦はこれまでにないというほどに集中した。
     それに終わらずマッチ後は大会運営からのインタビューに答えたり、こういうのは鮮度が命です、とジイクさんにSNS用にメッセージをまとめるようにお願いされたし、アカネからは本当に一対一に付き合わされたし。

     全部から解放されてようやくゆっくり出来るというわけだ。

  • 78二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 00:05:58

    「これでまた明日DAY2を戦うっていうんだからなあ……しっかり休んでおかないと」

     と、そのまま目をつぶろうとしたが。

    「喉が渇いたな……持ってきた飲み物は昨日の内に飲んだし……面倒だけど買いに出るか」 

     確かホテルの同じ階のエレベーターホール横に自販機があったはずだ。
     ちょっとそこまでだと思って僕は財布を持って向かう。

  • 79二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 00:10:45

     ホテルのフロアは静かだ。今日泊っているのはSSS全国大会の関係者しかいない。
     明日のDAY2のため、早めに休んでいるのだろう。

     普段は関わることもない高級ホテル。シンプルだが豪奢な装い。敷かれた絨毯も厚手で自分の足音さえかき消される。
     ちょっとした非日常感があるな。

     

  • 80二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 00:16:02

     そうしている内に目的地にたどり着く。
     自販機だけでなく、机とイスも置いてあり、ちょっと部屋の外で雑談するのにちょうどいいというスペース。

     そこには何と先客がいた。

    「君は……」
    「あ、えっと……」

     思わず視線を向けたところ目が合ってしまう。
     『GD』のオーダー、カイト選手。
     彼は一人で缶コーヒーを片手に何やら思いふけっている様子だった。



    「……ちょうどいい、少し時間があるか? 話したい事があるんだが」

  • 81二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 00:18:40

    86話 了
    2000文字ほど 昨日よりは筆が乗らなかった様子
    キャラが掛け合っているときの方が書きやすいんですよね

    それではおやすみなさい

  • 82二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 00:22:49

    お疲れ様

  • 83二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 10:21:39

    掛け合いは割と自動的だもんな~

  • 84二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:10:07

  • 85二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:15:11

    >>82

    ありがとうございます


    >>83

    ですね、ずっと掛け合いだけ書いていたい(駄目)


    今日の更新でブクマが1増えたので少し嬉しい

    いつもより早いですがスレ落ちそうだったので今から始めます

  • 86二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:15:51

    あら、待機してる間に保守来てたか

  • 87二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:20:26

    「これで良かったか?」
    「え、あ、大丈夫です」

     カイト選手が自販機から取り出したお茶を受け取るマモルこと僕。
     話を聞いてもらうせめてもの礼だ、ということで奢られたのだ。
     二人して椅子に座りテーブルを挟んで向かい合う。

    「そうだな……まずは今日のラストマッチ見事だった」
    「あ、ありがとうございます」

  • 88二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:25:16

    「インタビューは聞いた……『煽争(アジテーション)』作戦だったか。そのアイデアは俺の中に無かったものだ。もし俺が同じ立場だったら一か八かで抗戦していただろう」

    「カイト選手ほどの力があればその選択で十分だと思います」

    「何を言う。お前の戦わないためのオーダー、ベクトルは違えどそれもまた力だろう。……まあ歪だとは思うがな」

    「そうですね、自分でも真っ当では無いと思います」

    「…………」

    「でもこの力で明日は勝ちます、勝たせてもらいます」

  • 89二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:30:11

     何の意図をもって僕が呼び止められたのかは分からない。
     だが好都合だ。

    「でもこの力で明日は勝ちます、勝たせてもらいます」

     僕は言い切った。
     気持ちでは負けない、自分を追い込んで後に引かないように喝を入れる意味でも。

    「そうか……当然だな。誰だって勝つためにこの大会に参加している。当たり前のことだ」

    「…………」

    「それでも……俺には負けられない理由がある」

  • 90二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:35:15

     硬い表情で言い切られる。

     昨日、大会準備の会場入りで偶然出会ったときも同じような表情だった。

     何か抱えているものがあるんだろうか?





    「何で負けられないのか……理由を聞いてもいいですか?」

    「世界の滅亡を防ぐためだ」

    「……、…………、………………?」



     セカイノメツボウヲフセグタメダ?

     頭の中で反芻してみるもどうにもその言葉の真意が掴めない。

     SSSの全国大会で優勝することが……どうして世界の滅亡と繋がるんだ? え、そんな重要な戦いだったのか? あ、いやこれボケなのか?

  • 91二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:40:37

    『そんなわけないだろ!』とツッコむべきなのだろうか? いやでも真面目な表情しているし……いやそこまで含めたお笑いなのか……?

     混乱する僕を他所にカイト選手は説明を始める。



    「俺たち四人は『組織』で生まれた。『組織』ではエージェントを育てるため幼い頃から徹底した教育を施していた。俺たちのセクションで教育された子供たちは50人。毎日血の滲むような特訓、他の子どもたちとの競争があった。」

  • 92二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:41:54

    がんばれ

  • 93二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:45:25

     誰も信じられない日々。だが唯一あいつだけは……いや話が脱線しているな。そうして迎えた最終試験の日。俺ら四人は脱走を計画していた。腐った『組織』の内部にも俺たち子供たちを哀れんでくれるような聖人はいた。……そう、いたんだ。だがあの人は殺され、計画のバレた俺たちは窮地に。……ってこれも関係ないか。そうして掴んだ平和な日々。だが当然あの『組織』が存在している以上そんなわけはない。

  • 94二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:50:24

     この度俺たちはやつらの計画を傍受した。それはそう、SSSのプロゲーマー界隈で計画を実行することで世界を滅亡させる恐ろしい計画。計画の詳細は……部外者には教えられないが。だから俺たちはプロゲーマー界隈に潜入してその計画を防ぐ。
     そのためにも負けられないんだ」



    「……なるほどな」

     何がなるほどなんだ?
     一から百まで作り話としか思えないんだが。『組織』ってなんだ? っていうかそこまで言いかけたならちゃんと全部説明してくれ、色々気になる。あの人が殺されて窮地に陥って、どうやって生還したんだろうか?

     そんな中二病の妄想のような話をしていた間も真面目な表情だ。

  • 95二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:55:19

     どうやらボケではなく、本気で話しているようだ。

     世界の滅亡を防ぐ、そのために負けられない……か。




    「その話を僕にして何が言いたいんですか?」


    「っ……それは……」


    「詳しいことは分かりませんが世界の滅亡を防ぐ、とは大層な目標ですね」


    「…………」


    「じゃあ僕にも負けられない理由があるんですよ。この大会優勝したら賞金とともにプロゲーマーになれて大金を稼ぐことが約束されますよね。そのお金を使って僕は不治の病にかかった妹を助けたいんですよ。だから負けられないんです」





    >>92 ありがとうございます

  • 96二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 23:00:56

    「…………」

    「そうだとしたら世界が滅亡することが分かっていても、妹を助けるために僕らが勝つことを優先するのは悪ですか? 理由の大小で勝つべき、負けるべきが決められるべきですか?」

    「いや……違うな」

    現在1700字ほど

  • 97二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 23:06:13

    「僕らが勝つことで世界が滅びるようなら、そんな世界滅びればいいです。そんなに世界を滅ぼしたくないなら負けなければいいだけです」

    「……すまなかった。大変無礼だったな」

    「いえいえ。僕だって勝利宣言なんてしましたし、そもそも理由も僕が聞いたことですし。
     ちなみにさっきの話は嘘です。僕に妹はいません。勝ちたい理由はそれが楽しいからです。そんな小さな理由ですからお気にせずどうぞ」

    「……ああ、そうだ。負けなければいいだけ……そうだ」

  • 98二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 23:10:28

     カイト選手はブツブツと呟きながらその場を去っていく。



    「…………」

     何かすごいことになったな。
     今のやり取りを経て、僕の中に動揺は無かった。

     元々分かっていたことだ。この大会に出場するのは誰だって勝つことが目的だ。そこにちょっと世界の滅亡という理由が乗っただけ。
     だからって僕らが負けてやる理由にはならない。

     どちらかというと問題はカイト選手の方にある。
     わざわざ僕を呼び止めて、あんな理由まで話して……まるで僕らに負けてほしいと言わんばかりに。
     どう考えてもメンタルに異常を来たしている。

  • 99二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 23:13:36

    「だったら好都合だな」

     強敵が勝手に弱ってくれるのだ、これほど喜ばしいことはない。



     さて早めに寝て明日へ備えないと。

     と、立ち上がって部屋に戻る途中……どうしても頭から離れないことがあった。





    「うーん……やっぱりどうやって窮地から生還したんだろうか……気になるなあ」

  • 100二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 23:16:34

    87話 了

    約一時間、約2500字
    良いペースが出来上がってきている。大変すばらしい

    応援ありがとうございました
    早いのでゲームしてから寝ます

  • 101二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 09:13:15

  • 102二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 19:07:55

  • 103二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:26:44



    評価にブクマにポイント入ったのでウキウキ気分。
    今日もやっていきましょー

  • 104二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:30:17

    88話 SSS全国大会決勝

     翌日。
     SSS全国大会本選DAY2、決勝戦の朝を迎えた。

    「熱気がすごいなあ」

     会場入りして昨日と同じチームのスペースにやってきた僕は周囲を眺めて雰囲気に押される。

  • 105二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:35:17

     まだ朝の9時過ぎだというのに会場は既に満員だ。

    「この大観衆の前で戦えるなんて最高ね!」

     目立ちたがりのアカネが強がりでもなく言う。この時ばかりはそのメンタルが羨ましい。

  • 106二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:40:31

    「25位、決勝メンバーでは最下位からのスタートとなりますが、昨日のラストマッチのおかげで注目されているようですな」

     ジイクさんも楽しそうな様子だ。

    「また今日も一日みんなで遊べるね! 楽しんで行こう!」

     リリィさんも昨日からずっとテンションが高い。やっぱりこうして対面で意思疎通できるのが良いのだろうか。

  • 107二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:46:02

    「そうですね……悔いを残さないようにやっていきましょう!」

     僕も声を張り上げる。
     そうする内に時間となり、練習時間が始まった。
     SSSの訓練場にて決勝前の最終調整をそれぞれチームで行う。
     その間に実況と解説がルールの説明を行っていた。


    『さあて、やってきましたね! SSS全国大会、アマチュア部門、決勝! 本日アマチュア界の頂点が、新たなプロが誕生します!!』

    『いやあ楽しみですね』

    『二日に渡って行われる本選。昨日は予選を勝ち抜いた100チームで行われました。それを勝ち残った25チームでDAY2となる今日は戦います』

  • 108二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:50:27

    『25チーム……SSSの基本ルールであるバトルロイヤルにおける最初の部隊数と一緒ですね』

    『ええ、その通りです。今日はこの25チームで優勝者が出るまで戦い続けることになります! 詳しく説明しましょう!
     まず基本はこれまでと同じです! キルと順位それぞれに振られたポイントを集めていく。しかし25チームでは初期ポイントが違います。DAY1での順位に応じたポイントを持っています』

  • 109二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:56:29

    『昨日を高順位で突破したチームほど有利になるということですね。これはDAY1で予選を突破出来る順位を確保した後も上を目指して戦ってもらうための措置です』

    『25チームでバトルロイヤルを行いスター獲得者が出るまで戦います。マッチ終了後、10分の休憩を置いてまた戦います。そうして何度も戦い規定のポイントを超えると

  • 110二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:05:29

    超えたチームはビクトリースタンバイとなります! この状態でのマッチでスターを獲得したチームが優勝です!!』

    『ビクトリースタンバイになってから、どれだけポイントを稼いでも優勝とはなりません。スターの獲得、マッチで1位を取ることのみが条件となります』

    『先にビクトリースタンバイに入れれば有利ではありますが、当然ながらそのチームにスターを取られないよう、他のチームは徹底マークしていくでしょう! それでも尚スターを獲得できる力を示してこそ優勝できるのです!!』

  • 111二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:10:29

    『まあビクトリースタンバイに入ったチームが1,2くらいだとマークがきつく、4,5も出てくるとマークするのも難しいので本来の動きになる傾向ですね』

    1200字ほど

  • 112二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:15:22

    迷い中

  • 113二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:21:02

    『というわけでルールの説明は以上です! 決勝開始まで今しばらくお待ちください!!』








    「よし、最終調整も完璧っと。初戦のマップを確認……って『黄昏』からのスタートか」

     決勝のマップはマッチ毎に変わる。
     マップによって立ち回りは大きく変わる、既にこの時から僕の戦いは始まってるといってもいい。

  • 114二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:25:36

    「いいマップね。分かってるわよねマモル、アカネをちゃんと活躍させるのよ」
    「接近戦が強いマップだ、言われなくても働いてもらうぞ」
    「よろしい」

     建物の残骸など乱雑したマップのため接近、奇襲の行いやすいマップ。

  • 115二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:30:42

     決勝初戦、どのチームも最初は様子を見ていきたいところだろうが……。
     だからこそちょっと積極的に仕掛けるか……?
     ルール説明でも言われたが僕らはDAY1を25位の最下位で突破している。初期ポイントは0だ。優勝を目指すならまずはDAY1一位通過の『GD』に追いつかなければならない。

    「逆に『GD』は余裕がある……昨日それだけ頑張ったってことだけど良いなあ……」

     『完全指揮(パーフェクトオーダー)』ならその優位を着実に広げるに違いない。





    ===





     『GD』チームスペースにて。

  • 116二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:35:38

    「カイト様……?」

    「……ん、どうしたシズカ」

    「初戦のマップが『黄昏』に決まりましたが、どのように立ち回るか……ブリーフィングを行わないのですか?」

    「ああ、そうだな……アポロン、アルテミス、訓練場から上がれ」

  • 117二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:39:02

    「……(いつもと様子が違うような……気のせい……?)」



    =====



    『さて午前十時、開戦時刻が迫る!』

    『そうですね、最初の予選から約一ヶ月、長い長い戦いの決着が今日付くでしょう』



    『それではSSS全国大会、決勝戦開始!!!!』

  • 118二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:41:55

    88話 了

    約2000字
    今日は難産だった、振り返ると手直ししたくなるので勢いでこの後投稿します。

    それではおやすみなさい

  • 119二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 12:11:46

  • 120二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 19:30:08

  • 121二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 00:08:01

    本日は休みます

  • 122二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 10:59:29

  • 123二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 20:06:02

  • 124二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 23:31:36

    本日の執筆する部分の流れは決まっていますが、中身が詰められていないので捻りだす必要があって、何分気乗りがしません
    しかし頑張らないと話が進まないので頑張ります

  • 125二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 23:35:56

     SSS全国大会アマチュア部門、決勝戦第一マッチ。
     崩壊した町をモチーフとしたマップ『黄昏』。

     マッチ開始から五分が経過、序盤ともいえるこの状況でマモルこと僕たちは戦闘中だった。

  • 126二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 23:41:15

    「ねえ、もう突っ込んでいい?」
    「まだだ! 敵が崩れてない!」

     いつも通りスポット『忘れ去られた住宅街』に降りて十分に漁り、次のスポット『神の見放した教会』に向かうと内部から足音がした。
     どうやら敵がこの場所を漁っているらしい。
     そして一人がそろーっと中から出てきて、外にある物資のところに向かっている。どうやら手分けして漁るという判断をしたのだろう。

  • 127二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 23:45:02

     部隊ひと固まりになって漁ると何か起こった時に対応しやすいが効率は悪い。散開して漁れば効率は良いが……このように敵に会えばひとたまりもない。

    「まだ序盤だし近くに敵はいないと思ったんだろうな」

     僕らは銃撃を集中させてその一人をダウン、確殺まで入れる。
     大会決勝戦といえど、こういうことは起こりうる。人は完璧じゃない。

  • 128二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 23:50:12

     これで教会内部の部隊は3人となった。人数有利、チャンスだ。
     ということで撃ち合っているのだが、存外粘りが強い。3人なのに的確に連携して食らいついてくる。

     だがこの一手で崩す。

    「……良し! ダウン取ったよ!」

     リリィさんの報告。
     ここ『黄昏』ステージの建物は基本的にボロボロだ。それはやつらが立てこもっている教会にも当てはまる。

  • 129二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 23:55:31

    その崩落した隙間を縫って針に糸を通すように銃弾を届ける。壁だと思っていた方向から飛んでくるのだ、ひとたまりもない。
     これが技能『一点狙撃(ピンポイント)』の恐ろしさだ。

    「アカネ!」
    「ようやくね……! 攻めるわよ!!」

     応急処置を許さないように、間髪入れず動き出す。4対2なら物量で押し潰せる。

    「一丁上がり……ですな」

     こうして一部隊壊滅。4キルポイントを獲得した。

  • 130二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 00:00:47

     倒した敵から物資を漁る。鳥使いのスキルで周囲を索敵したから漁夫の心配もない。

    「良い出だしだな」

     ポイントが欲しいから積極的に行きたいと思い、そのため移動を早めにした結果掴めたチャンスだった。運も良かったが、運だけでもない。

  • 131二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 00:06:17

    「リリィ様ナイス狙撃でした、いやはや私も負けてられませんな」
    「そ、そんな。EXスナイパーのおかげですよ」

     リリィさんとジイクさんが武器を交換する。
     狙撃のためにジイクさんのEXスナイパーを一時的にリリィさんに預けたのだ。作戦が終わったのでそれを戻した形だ。

  • 132二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 00:11:15

    「初動で拾えたのは大きかったわね」

     EXウェポンとは普通の武器よりも性能の高い武器で、戦場にランダムに落ちている。そのため運が良ければ初動で拾えることもある。
     EXスナイパーは狙撃性能が高く、だからこそ行えた離れ業でもある。普通のスナイパーだったらリリィさんでも無理だっただろう。
     そう考えると運が良いの方が大きいか……? いや、ここ大一番では運の良さを引き寄せるのもまた大事だ。
     

  • 133二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 00:15:19

     良い流れだ、このまま波に乗って――。



    「キルログが流れたわね…………って、『GD』が全滅!? 嘘っ、何があったのよ!」



    「ビッグウェーブだな……」

     だいぶ追い風が吹いているようだ。





    ========





    『『GD』が全滅!! 違う場所を中継している間に一体何があったんだ!?』

  • 134二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 00:58:29

    またタイミング悪く掲示板が落ちましたね。
    執筆終わって投稿までしたので寝ます。

  • 135二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 12:51:11

    保守

  • 136二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 23:45:25

    スレが落ちたら落ちたでそれまでだなー、と思っているのですが毎度どこからともなく保守されています
    これが『お前が始めた物語だろ』ってやつですかね。ちょうど物語書いてますし

    始めます

  • 137二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 23:50:04

    「よし! 完璧よ!!」

     決勝戦第一マッチ終了。
     マモルこと僕らチーム『APG』は見事スターを獲得した。序盤からの良い流れを上手く最後まで保つことが出来たおかげだろう。

    「『GD』は首位転落……序盤に落ちて点数を稼げてなく、二位のチームが暴れていたからですかな」

     順位表を見ながらジイクさんが言う。優勝を目指す僕らにとって一位との点差が縮まるのはありがたいことだ。

  • 138二次元好きの匿名さん22/02/21(月) 23:55:31

    「『GD』……何か不調みたいだね」
    「分かるんですか?」
    「うん。前に学べるものがないかってたくさん過去の動画見たことがあるんだ。でも今日の『GD』はいつもと違うと思う」

     リリィさんが会場に流れる第一マッチのリプレイに映し出された『GD』の壊滅シーンを眺めている。
     『技能|模倣(コピー)』はプロの技能を観察して再現しているわけで、つまりリリィさんの観察力はかなり高い。

  • 139二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:00:16

    そのリリィさんだからこそリプレイシーンからだけでも推察出来たのだろう。

    「…………」

     みんなには昨夜カイト選手と話したことは言っていない。僕にわざわざ負けられない理由を話したほどの空回り具合。それがそのまま本日のプレイに影響しているのかもしれない。

     こっちの良い流れに加えてあっちの悪い流れ。
     チャンス……ではあるが。



    「上手く行っているときこそ堅実に、です。僕たちは僕たちのやるべきことをやっていきましょう次のマップが発表されましたので作戦会議をしますよ」

     みんなに呼び掛ける。

  • 140二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:05:07

     流れなんてものに頼りきるつもりはない。
     自分たちの実力で切り開く、それだけの力はある。

     それに。

    (アマチュア最強の称号は伊達じゃない…………相手の失態ばかりに期待できるはずがない)

     半ば確信めいた予感が僕の中にはあった。





    ========





     『GD』チームスペースにて。

     それから二マッチを終えて、第四マッチが始まろうとしていた。

  • 141二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:10:44

    (3マッチともパッとしない結果だ……)

     カイトこと俺は自身の不甲斐なさに憤慨していた。

     1マッチ目はほとんど最初に落ちて、その反省を踏まえて2マッチ目は慎重に行くもやりすぎて0キルの8位とポイントを稼げず、3マッチ目は中盤で1部隊壊滅させるも戦闘が長引いたせいでやってきた漁夫に負けるというよくある死に方で4キル12位。

  • 142二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:15:32

     気づけば総合順位も3位まで落ちている。1位とそこまで差は付いていないが、問題は上ではなく下だ。
     最下位からスタートしたチーム『APG』が猛追を見せて総合順位6位にまで付けている。追い抜かれるのも時間の問題だ。

    (原因は分かっている。俺のオーダーのせいだ)

  • 143二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:20:16

     いつものキレが全く感じられない。凡百のオーダーが出す指令しか出せていない。当然そんな立ち回りで戦えるほど甘い舞台ではない。

     アポロンにも、アルテミスにも、シズカにも非は無い。
     みんな俺の指示に100%応えてくれる。
     なのに俺は……どうして……。

    「………………」

     この大会は絶対に負けられない。世界の滅亡まで残った時間は少ない。

  • 144二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:25:17

    今すぐにでもプロ界隈に潜入して『組織』の陰謀を暴かないといけない。

     負けられない、負けられない、負けられない、負けられない、負けられない……!



    「なあ、カイト」

     そのときアポロンの声が耳に届いた。



    「……どうした?」
    「そういや聞いてなかったけど、カイトって大会の優勝賞金何に使うつもりなんや?」
    「………………は?」

     思考がフリーズする。
     まだ優勝もしていない、決勝戦の途中なのに、賞金の話……? いやそもそも賞金など知るか、プロ入りして世界の滅亡を防ぐことだけが俺の使命であり――。

  • 145二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:31:05

    「ワイはやっぱ旨いもん食おうと思ってるんや! 全国各地からお取り寄せするで!!」
    「…………」
    「カニ、ステーキ、メロン!!」



    「全く、アポロンも馬鹿言ってるんじゃないよ」

     アルテミスがその言動をたしなめる。



    「そ、そうだな……今は――」

    「食べ物なんて食べたらそこで終わりじゃない。お金をかけるべきは機材からでしょう。ゲーミングチェア、ヘッドセット、ゲーミングデバイス……全部最高級品で取り揃えたいわね」

  • 146二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:35:03

     アルテミスまでそんなことを言い始める。

    「ワイは今の機材で満足しているんですー。弘法筆を選ばずですー」

    「そうね、あんた程度のレベルじゃ違いが分からないものね」

    「ああん、何おう?」

    「その喧嘩買うわよ」



     そんな低レベルな言い争いを始めたところで。



    「全く二人ともそこまでにしなさい」

     シズカが仲裁に入る。

  • 147二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:40:13

    「聞いていれば食べ物だの機材だの……くだらない。真に買うべきは疲労回復グッズよ。マッサージチェア、バスグッズ、あと寝具周りは全部変えたいわね」

     いや、火に油を注いだだけだった。



    「疲労回復って……ババアかいな」

    「あんたみたいなガキの面倒を見ているから疲れているのよ」

    「あ、それも良いわね。候補に入れときましょ」
     

  • 148二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:44:46

     3人の話は止まらない。こうしている内に第四マッチの開始は迫っている。

     どうしてこんな……世界の滅亡を防ごうと思っているのは、負けたくないと思っているのは俺だけなのか……?



    「………………」

     いや、違うか。

     そういえばあのときもそうだった。

    『組織』からの脱走がバレて窮地に陥ったときに。



    『なあ、普通の暮らしを送れるようになったら何がしたい?』

     言い出したのはアポロンだった。





    「ふっ……ったく」

     苦笑混じりについ呟く。

     すると三人とも話を止めて、俺の方を向いた。

  • 149二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:50:41

    「旅行に行くぞ」

    「……ほう」
    「え?」
    「それは……」

    「プロ入りしても地盤を固めるまですぐには動けないはずだ。それまでの間で賞金を使って旅行に行く。場所は……そうだな、南の島がいい。昼は海水浴に夜はバーベキューだ」

    「気が合うやないか」
    「私は山がいいけど……」
    「近くに温泉があると嬉しいです」


    「場所の選定は終わってからだ。とりあえずまずは次のマッチ……勝つぞ」


    「りょーかい、っと!」
    「そうね」
    「承知しました」

     3人とも良い返事をする。

  • 150二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 00:55:53

     世界の滅亡を防ぐため負けられない。

     それはそれとしてこのメンバーで大会を勝ち抜きたい。



    (そういえば彼は言っていたな……)
     昨夜のマモルとの会話を思い返す。



    『勝ちたい理由はそれが楽しいからです。そんな小さな理由ですからお気にせずどうぞ』



    「そんな大きな理由のために戦っているものに……勝てるわけが無かった、ということか」

    「……ん、何か言ったかカイト?」

    「いや、何でもない。時間もない、作戦を話す」




     そうして始まった第四マッチ。

     チーム『GD』は序盤から他チームを圧倒。

     16キルのスター獲得で一気に首位に返り咲いたのだった。

  • 151二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 01:02:18

    90話 終了

    約3000字
    途中の掛け合いはほとんど全自動でいい感じに文字数が増えた。

    おやすみなさい。

  • 152二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 11:36:10

    good

  • 153二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 23:25:22

    今日もやりますぜー

  • 154二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 23:30:10

     決勝戦第四マッチにて『GD』のスター獲得。

     これまで不調だと見られていたのに、一転鬼のような強さを発揮して戦場を蹂躙した。



    「中々やるわね……」

     第四マッチの中で、直接『GD』のメンバー、アポロンと対決して、惜しくも敗れたアカネは悔しそうにしている。

    「復活したね……でも一体何があったんだろう……?」

     リリィさんが頭をひねる。



    「…………」
     今の『GD』……敵ながら見事だった。

  • 155二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 23:35:08

    『完全指揮(パーフェクトオーダー)』にこれまでの迷いが無く、思い切った作戦を次々と繰り出していた。

     昨夜の様子、負けられないという否定的な精神からは生まれない創造的な動きだった。
     メンタルが変化したんだろう……何があったのかは部外者の僕には分からないけど……。



    「それでも結果は悪くありません。また総合順位を一つ上げて5位となりました」

     ジイクさんの言う通り、『GD』はすごかったが、僕たちだって負けていない。マッチ順位3位にキルもしっかりとってちゃんとポイントを稼いでいる。

    「そうよ、DAY2だけで見れば私たちが一番ポイントを取っている計算じゃない。『GD』なんて目じゃないわ!」

  • 156二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 23:40:58

     アカネの言っていることも間違っていない。『GD』が復活しようともここまでに差は大きく詰めた。

    「やることは変わりません、頑張りましょう!」

     悩む暇はない、また次のマッチが始まる。

  • 157二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 23:45:06

    ========





     それから数マッチを経て第8マッチ。



    『さあさあ、マッチも終盤! 第八マッチ、マップ『天空都市』での決戦も大詰めだ!!』

    『残り部隊数は3。総合順位1位の『GD』と総合順位2位の『APG』も生存しているぞ!!』

    『『APG』は本日最下位スタートから驚異的な追い上げを見せている!! しかし最初数マッチこそギアがかかっていなかったが王者『GD』の強さも盤石だ!!』

  • 158二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 23:50:59

    『点数も『GD』はビクトリースタンバイに後一歩、『APG』はもう少し必要という感じですね』



    『おおっと睨み合っていた戦場に動きが! チーム『APG』が仕掛ける!』

    『『GD』じゃない部隊の方に向かっていますが……これはそのまま漁夫られる未来が見えますが』

    『突撃により部隊は壊滅! 残り二部隊! 『APG』と『GD』の直接対決だ!!』

    『しかし『APG』は今の戦いで消耗しています、これでは勝負に――って、なっ!』



    『何とチーム『APG』、メンバー揃って柵の方に向かっていく! だがここは天空都市! その先には落下死の未来しかないぞ!?』

  • 159二次元好きの匿名さん22/02/22(火) 23:55:22

    『まさか……』

    『いや、そのまさかだ!! 四人とも柵を飛び越えて落下死していく!! 『APG』は気が触れたのか!? 呆然と見守るしかない『GD』!! スター獲得だ!!』

    『いえ……これは考えましたね』

    『……というと?』

    『まだ集計が終わってないので出せませんが、手元で計算したところ『GD』はビクトリースタンバイに一点足りません』

    『なっ!?』

    『戦って勝てればいいですが、負ける可能性もあります。『APG』は自ら飛び降りることで『GD』にキルポイントを与えなかった。ビクトリースタンバイにさせずにもう一マッチで追いついてみせる、という魂胆でしょう』

    『まさか『APG』のオーダー、マモル選手は戦いながらそんなことを考えてたというのか!?』

  • 160二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 00:00:24

    『戦わないことに関しては流石の腕を発揮しますね』





    ========



    「いやいや、そんなの有りか!?」

     アポロンが『APG』のまさかの作戦に思わず不服を口にする。

    「マナー的には良くないでしょうけど……ここは大会、勝つための場所。すごい、って声の方が大きくなりそうね」

     アルテミスが分析する。

  • 161二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 00:05:05

    「ここに来てこんな立ち回りを見せるとはな……俺なら一瞬も考えない作戦だ」

     消極的オーダーとしてはやはり一歩先を行かれている。



    「何かしてやったり、思われてそうやな。……ああもうムカつく、カイト、『APG』相手に何かやり返せないんか!?」

    「もちろんこの借りはすぐに返す。次のマッチ、俺らはビクトリースタンバイまで1点稼げばいい。よほどのミスをしない限り取れる点数だ。
     対してやつら『APG』は普通にポイントを稼がないといけない。だから集中マークして邪魔する」

  • 162二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 00:11:15

    「ほほう……それは」

    「マナー的に悪くても……先にやったのはあっちの方よね」

    「ああ、そういうことだ。シズカ、次のマップで『APG』が降下しそうな場所を予測できるか」

    「はい、少々お待ちを」



    (流石だな、マモル。だが勝つのは俺たちだ……!)



    ========



    「次のマッチで一点稼げばいいだけの『GD』はおそらく僕らを集中マークしてくるでしょう」

    「なるほど……それはやり得ね」

    「じゃあ私たちはそれを躱して点数を稼がないといけない」

    「ふぉっふぉっ、少々厳しそうですな」

  • 163二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 00:21:22

    「何言ってるんですか、戦わないオーダーは僕の真骨頂です。引き続き『完全指揮(パーフェクトオーダー)』の裏をかいて見せますよ」



    (ギリギリ基準まで行かせなかっただけで、点数自体はあっちが上。地力では負けているかもしれないけど……それでも勝ってみせる……!!)



    ========






    『第九マッチ終了!! どうだったでしょうか!』

    『序盤から『GD』が積極的に動いて『APG』を補足。先ほどの意趣返しと言わんばかりに点数を稼がせないように立ち回っていましたね』

    『そうですね、『GD』は途中でキルにより一ポイントをゲット。ビクトリースタンバイとなりましたが適用されるのは次のマッチから。勝とうが負けようが結果は同じとなり無敵の存在となりました』

    『損害問わず追いかけられるなんて普通はあり得ないですからね。しかし『APG』のオーダーも曲者でした』

    『ええ、しっかり追跡から逃げ切ってポイントを稼ぎました! これにより基準のポイントに到達! 次の第十マッチからは『GD』と『APG』どちらもビクトリースタンバイに! この2チームがスターを獲得したその瞬間、優勝と成ります!!』

  • 164二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 00:28:13

    『このまま『GD』か『APG』が勝ち切るか、それとも他のチームが阻止するか……白熱した展開になりそうですね』



    91話 終了

    よしよし、良いペース。
    おやすみなさい。

  • 165二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 11:54:55

    保守

  • 166二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:13:25

    契約

  • 167二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 01:02:38

    本日は休みます

  • 168二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 12:36:31

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 23:49:34

    すいません、本日も休みます
    ちゃんと時間作らねば……

  • 170二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 11:35:36

    保守

  • 171二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 21:23:37

    しゅ

  • 172二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:14:51

    今日こそやります、頑張ります、始めます

    読んでいる方がいるか分かりませんが最終決戦開始です

  • 173二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:21:17

     SSS全国大会、アマチュア部門、決勝戦。

     第十マッチ。

     既定のポイント到達により優勝待機(ビクトリースタンバイ)状態へと突入したチームが二つ存在した。



     一つがDAY1突破一位、アマチュア界最強と言われているチーム『Golden Dragon』

     かたやDAY1ギリギリ滑り込みだが、破竹の勢いで登ってきた僕ら、チーム『Akane and Palace Guard』



    「本当ここまで来れるなんてなあ……」

     アマチュア最強と並び立ち、優勝まであと一歩というところまで来たとは。チーム『銀鷲』を追放されたときは思いもしなかったものだ。

  • 174二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:28:03

    「なーに浸ってんのよ。そういうセリフは勝ってから言いなさい」
    「おまえもおまえで既に勝った気でいるのはおかしいだろ」
    「は? アカネが勝つのは決定事項よ。当然じゃない」

     ビッグマウスを叩くアカネ。まあ前衛を張るものとしてこれくらい強気である方がいいのだろう、手綱さえ握っていれば暴走はしないだろうし。

    「ふぉっふぉっ、この緊張感……かつて某国で反体制派に協力して革命を成し遂げたとき以上ですな……」
    「……ん、何か言いましたか、ジイクさん」
    「いえ、何も」

  • 175二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:30:28

     ジイクさんがボソボソと呟いていたので聞き返すが素知らぬ顔で返される。……革命、とか聞こえた気がしたけど……気のせいか?

    「ねえ、マモル君、マモル君!」
    「どうしましたか?」
    「次のマップ決まったけど『熱帯雨林』だってさ! 私とマモル君が初めて一緒になったところだよね! 何か運命感じない!?」

  • 176二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:38:05

     リリィさんはときめいたような表情だ。

     ……リリィさんと出会わなかったら僕は今頃SSSを辞めていただろうな。
     ゲームの楽しさを今一度思い出させてくれた人。そしてここまで一緒に戦ってきた仲間。



    「運命って言ったら、スター杯で『GD』に敗れたのも『熱帯雨林』ですよ」
    「うっ……それは」
    「だからこそ今度は勝つ……そういう運命にしましょうか」
    「……うん、そうだね!」



     ビクトリースタンバイである僕らか『GD』が勝てば、その時点で優勝が決まり決勝戦は終了。
     他のチームが勝てば決勝戦はまだ続く。

     優勝できなくとも、とりあえず『GD』の優勝さえ阻めば次のチャンスが回ってくる。
     そういう考え方もある。

     でも。

    「次の試合で優勝決めますよ!!」

     僕は宣言した。
     強気からの発言ではない。

     それくらいの心構えで行かなければ『GD』に飲み込まれると思ったからだ。

  • 177二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:45:31

    ========



    「次のマッチで優勝を決める」

     カイトこと俺は宣言する。



    「何や、えらい強気やな」

    「もちろんそれが理想でしょうけど……いざとなったら『APG』にだけは優勝させないような備えも必要では?」



    「いざ、なんてない。俺らが優勝できなければ、『APG』が優勝する。これはそういう勝負だ」

    「根拠はあるんですか?」

    「ない。勘だ」

  • 178二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:50:32

     勘とは言うが……冷静に分析すると俺は強がっているだけかもしれない。
     『APG』のオーダーも俺を恐れているかもしれないが、俺だってあっちを恐れている。



    「……まっ、そうやな。『完全指揮(パーフェクトオーダー)』様の勘っていうなら正しいやろ。それにワイもまだるっこしいのは苦手や、次で決めるつもりやったからな」

    「そうね、負けた時のことなんて考えても仕方ないわね」

    「私は命令に従うのみです」

     

  • 179二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:55:26

     負けられない。
     世界の滅亡を防ぐために。

     そして。

    「勝ってみんなで南の島でバカンスを楽しむためにも!」



    ========



    『さて、ついにこの時がやってきて参りました。決勝戦第十マッチ!!』

    『ビクトリースタンバイに入ったチームが一気に二つも出て来ましたね』

  • 180二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:00:29

    『本選前にネットの反応をざっと調べたんですけど、優勝候補として挙げられていたのが『GD』と『APG』の2チームだったんですよね』

    『その2チームが順当に優勝へあと一歩と……いえ』

    『そうですね、どちらも苦難を乗り越えてここまでやってきました。力だけではありません、意地、心意気なども十分にあるでしょう!』

    『と、まるで最終戦みたいな雰囲気ですが、もちろんこの2チームがスターを取れなければまた次のマッチですからね』

    『わ、分かってますよ!!』



    『さて時間となりました。始めましょう。決勝戦第十マッチ!!』

    『スタートです!!』

  • 181二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:05:49

     戦場を横切る飛行船。

     マップ『熱帯雨林』
     僕のお気に入りの降下場所は『原生住民の住居』だ。物資は少し乏しいが、それ故に同じ場所に降りる部隊はほとんどいない。
     そこできちんと装備を整えてから移動するのが黄金パターン。

     優勝を決めるこの一戦でも当然それを踏襲――しない。

  • 182二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:11:11

    「やっぱり『原生住民の住居』に向かった部隊がいましたか」

     僕らが勝てば優勝でマッチが終わり、つまり他の部隊からすれば絶対に阻止しにくるわけだ。
     僕のオーダーのパターンを読み、一か八かで止めるために初動を被せる……そんなDAY1のラストマッチと同じ轍は踏まない。

     きっちりと他の部隊と被らない地点に降下、物資の漁りを開始する。

     とその間に安全地帯も発表。
     少し移動をしないといけないか、と移動ルートを考えているとキルログが流れてきた。



     流れるログは『GD』が一部隊を壊滅させたというもの。

  • 183二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:22:44

    「っ……!」

     銃声も全く聞こえなかったので、かなり遠い場所での戦闘だろう。
     それでもその意味はすぐに理解した。

     僕ら『APG』だけでなく、『GD』も他の部隊から何としてもスターを阻止される立場だ。
     同じように初動を被せに行った部隊が存在したのだろう。
     しかし『GD』はいつもと降下場所を変えず、そのファイトに応じて、正面から叩き潰した。



    「もういくらポイント稼いでも無意味のはずですが……」
    「降りかかる火の粉は払うだけ、ってことかな」
    「ああもう、絶対実況あっちを解説してるでしょ。アカネより目立つなんて!」

     3人もそれに気づく。

     初動ファイトはどうしても運が絡む……だから僕は避けたのに、堂々と受けてしかもそれをねじ伏せる。いつも通りを重視した王道のオーダー。

  • 184二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:23:28

    「無駄なファイトですね」

     消極性オーダーの僕なら絶対に戦わない、あり得ないオーダーだとばっさり切り捨てる。



    「僕はこの優勝が懸かった試合でも出来ることなら2位になるまで戦わず、何なら最後漁夫で勝ちに行きますからね」
    「えー、そんなの地味よ」
    「まあまあ、アカネ様」
    「一番目立つのは優勝者だから。ね」



     ここに至っても僕は信念を変えない。
     意地と意地のぶつかり合いだ。



     92話 最終決戦1 了


     よしよし、良いペース、それに盛り上がってきた。
     おやすみなさい。

  • 185二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 10:33:06

    ho

  • 186二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 21:51:40

    今日はやるか休むか分からないの保守

  • 187二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 09:30:52

    保守

  • 188二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 21:00:34

    保守

  • 189二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 23:53:29

    ポケモン見てました(´・ω・)

    始めます

  • 190二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:01:01

     優勝のかかった大一番とはいえ大きく流れが変わるわけでもない。
     『GD』が初動で一部隊潰した以外には動きが無く、24部隊で第一収縮を終える。

    「また移動が必要ですか……」

     範囲の情報が更新。祈祷師のスキルで見れる次の範囲からして、このままの場所に居るとマズイことになる。
     移動ルートの吟味が必要だが、速さが必要だ。先に他の部隊に場所を取られてから動き出しては遅い。

  • 191二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:05:35

    「マップにピンを刺しました。この地点に向かいます」

     今回の安全地帯はマップ中央寄り、スポット『神殿の廃墟』の辺りだ。

  • 192二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:10:31

    安全地帯が端の方ならば端に向かえば大体敵部隊に会いにくいのだが、中央となると色んな方向から目指されるので動線が読みにくい。

    「……ん、この地点って何があるの?」
    「『森林地帯』の一角で何もない場所だったはずですが」

     前線の鬼であるアカネはともかく、SSSに精通しているジイクさんもピンと来てないようだ。

  • 193二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:15:09

    「この地点は遮蔽も何もないんですが、微妙に窪地となっていて周囲から見えにくいんです」
    「えっと……じゃあそこに隠れるの?」

     リリィさんが困惑したように聞く。
     SSSの定石としてはなるべく遮蔽物の近くで行動するべきというものがある。開けた場所で敵に見つかれば滅多打ちにされかねないからだ。
     初心者ならともかく、セオリーが身に染み付いた経験者からすれば心許ないだろう。

     だが、だからこそ他の部隊もこんな場所に敵がいると思わないはずだ。

  • 194二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:20:15

    「リスクはかなり高いです。鳥使いのサーチに引っ掛かれば逃げるのも難しいでしょう。でも、おそらく『神殿の廃墟』の内部には既に敵部隊が陣取っているはず。外で隠れて待ち、戦闘が起きてから後入りするのが最適です」

     まだこの漁夫が来なさそうな時間帯の内に戦闘を仕掛けて『神殿の廃墟』の一角のスペースを奪う、という手段もある。
     だがそのように積極的に戦うのは僕のオーダーではない。

     初動ファイトは躱したが、それでも狙われる立場であることには変わりない。

  • 195二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:25:37

     この決勝戦でも僕は変わらず罠師を使っているが、不人気キャラであるため使っているのは僕だけ。姿を見られればすぐにチームがバレて狙われるだろう。
     そもそも姿を見せない、隠れるのがベスト。

    「……ま、分かったわよ。マモルなりの考えがあるんでしょう」
    「責任を押し付けるわけではありませんが、マモル様のオーダーによって動くのがこのチームですからな」
    「うん、きっと上手く行くよ!!」

     3人も了承したところで、ハイドが始まる。
     第三収縮まではこの場所で耐えられる、それから後のことも考えないとな……。

  • 196二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:30:24

    ========





    『GD』サイド。



    「いやはや運も味方しとるなー」

     カイトこと俺たちは初動を被せてきた敵部隊を排除した後、物資を求めて『神殿の廃墟』に向かった。そこで第一収縮を終えて、発表された次の安全地帯のど真ん中に俺たちはいた
     移動する必要が無いため不意打ちを食らうこともない。

  • 197二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:40:28

    「とはいえ最終的な安全地帯からは外れそうね……」
    「移動するタイミングが重要ですね」

     アルテミスの経験測とシズカの懸念は俺の内にもあった。

     移動距離は短くて済むが、多くの部隊がこの安全地帯中央を目指してくるわけだ。戦闘を起こせば漁夫は必至、そのためお互いが最初に戦闘することを避けるために保たれる平穏。
     だからこそ崩壊したら一瞬だ、漁夫の漁夫の漁夫の漁夫、くらいは平気で起こるだろう。

  • 198二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:51:22

     だがそれこそがバトルロイヤルの王道。
     いくら敵が来ようともねじ伏せる、それだけの力がこのチームにはある。

    「分かってるとは思うがしばらく待機だ」

    「ほいほーい」
    「そうね」
    「承知しました」

     『神殿の廃墟』の一角にある小部屋にてその時を待つ。
    ========
    『APG』サイド。

     何とか見つからないまま第三収縮となり、そして第四収縮を迎える一分前となった。
     生存部隊数は22。
     小競り合いがあって減ってはいるが、この狭い戦場に同居できる限界が来ているとみていいだろう。

    「始まったな」

     次の範囲内を目指して移動を始めた部隊と待ち構えていた部隊で戦闘が発生する。その戦闘が終わるのを待って漁夫したくなる気持ちもあるが、それは他の部隊も同じこと。漁夫スパイラルに巻き込まれないように気を付けて移動しないと。

     ギリギリまで待って、本当に収縮が始まるという直前。

    「動きます!!」

     僕らは移動を開始する。戦闘には目もくれず、一目散に『神殿の廃墟』の内部に潜入成功。どうやら漁夫スパイラルの方に人が寄っているようだ。
     これなら気付かれないままポジションを取ることも――。

  • 199二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 01:00:47

    「っ……! 廊下角の奥から足音です!」

     ジイクさんの『戦場把握』が一早く敵を察知。顔だけ出して覗くと確かに敵がいる。

    「こんな場所の敵……『GD』か!?」

     判別方法が無いため直観ではあるがポイントが必要な部隊の動きには見えない、おそらく『GD』だろう。

     どうする……!
     次のポジションまではどうしても開けた場所を通る必要がある。ただ走るだけでは蜂の巣にされる。だがここに留まり続けると拡大していく漁夫スパイラルに飲み込まれるだろう。

     立ち位置からしてあちらも状況は同じはず、戦いたくはないはずだ。
     だがそうは行かないのがこの戦場。



    「私が敵を引き付けるよ!」

     リリィさんの提案。確かに誰かが残って足止めしている内に通り抜ければ良さそうだが――。

    ========

    『GD』サイド

     移動を始めたところで鉢合わせた敵部隊。

     

  • 200二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 01:09:25

     その内の一人に罠師の姿があったため敵は『APG』で確定。
     『APG』をここで潰してしまうか……いや、そんなことをしたら漁夫が来て終わりだ。
     ここは戦わずに素通りしたい……だが停戦協定など出来ない。

    「足止めになるで」
    「アポロン」
    「誰か戦っている内に通り抜けるのがベストやろ。そんならワイの出番や」
    「だが」
    「ここは任せて先に行け……ふっ、決まった」


    「なーにかっこつけてるのよ、もし相手に『技能|模倣(コピー)』が来たら勝てるわけ?」
    「え、いや、それは話が違うやろ」
    「はー……およそどんな技能も再現する異次元の戦士……でも、そんな彼女でも模倣(コピー)出来ない技能はあるわ。
     『以心伝心』二人で協力するこの技能は一人じゃ模倣(コピー)出来ない」
    「アルテミス……」
    「私も残るわよ」



    と、200レス目なので今日はここまで。
    後は仕上げて投下します。
    また明日か明後日か2スレ目建てる予定です。

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています