もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart4

  • 1二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:17:42

    アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。

    ミネルバとアグネスはその進撃過程で少しずつ運命の歯車を狂わせ、入れ替えていきます。それはC.Eの世界に何をもたらすのか。そして、ミネルバの運命は。

    本編時空では蚊帳の外であった彼女は、この世界で望むような活躍は出来るのか、それとも…。

    おつきあいをいただければ。

  • 2二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:19:09

    ミネルバ内に穴兄弟だらけになりそう

  • 3二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:20:56

    >>2

    ミネルバが穴だらけなんだよなぁ…

  • 4二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:22:16

    たておつ
    なんだかんだずっと頑張ってるし応援してるよアグネス

  • 5二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:23:02
  • 6二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:29:12

    たておつー
    ミネルバ大破はこれからの展開にどこまで影響するかな?

  • 7二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 22:30:52

    >>5

    スレ貼る時はレス番消した方が良いですよ

    表示がURLになるし開くとレス番まで飛んだりと少し不便なので

  • 8二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 23:17:05

    建て乙
    これはディオキア入港したらしばらく動けないかな…まずそこまで行けるかも怪しいが

  • 9二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 23:18:16

    このレスは削除されています

  • 10二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 23:21:06

    ピートリー級オペレーター「進路クリアー。グーン2機、発進どうぞ!」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、グーン、出ます!」
    レイ「レイ・ザ・バレル、グーン、発進する!」

    アグネス「(出ます!といっても文字通り歩いて出ていくだけなんだけどね)」
    グーンでノコノコ、後ろからレイのグーンもノコノコ歩いてきたわ。

    ピートリー級からは手隙要員が浜辺に駆け出している。
    丁度、降下歩兵が乗ってきたボートから下りたところだわ。
    アグネス「うん?」

    小柄な人影がボートから下りて盛んに手を振って来る。映像を拡大すると…。コニールだわ!
    歩兵から受け取ったメガホンでコニールが叫ぶ。

    コニール「アグネスさん、レイさん!無事?!町の人達に呼び掛けて、漁船!ボート!出してもらうから。機械工も!」

    何やら、彼女なりに必死のようね。ありがたい。今度ばかりは。でも―
    アグネス「ありがとう。でも、無秩序になると困るから、町の人に声をかけるときはレジスタンスの統制下で、グラディス艦長の指揮に従って!」
    外部スピーカーで彼女の声に応える。
    コニール「分かった!そう伝える」
    アグネス「ありがとう」

    ボートにピートリー級の船員が乗り込む中、改めて我らがミネルバの姿を目の当たりにする。

    アグネス「(これは...。何と言うべきか)」
    足を止めるわけにはいかない。レイと一緒に湖面に分け入る。

  • 11二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 23:28:13

    不幸中の幸い、とでもいうべきか。あくまで外から見た範囲だが、機能が集中している艦後部の損害は軽度に見える。艦橋は装甲区画より上は吹き飛び、欠けており、左右甲板は割れて捲り上がっているし、おそらく艦底にも穴が開いているが。海中から見てもカタパルトやスラスターそのものは無傷。機関部も多分、無事。

    アグネス「(艦後部は左右甲板、ヘリポートとモビルスーツを配置できる箇所が多かった。最終的にパイロット脱出後、ガズウートとザクは喪失したが、十分その役割を果たしていたのね)」

    それと、マリクさんの必死の操艦によるものだろう。

    艦底の損傷が多いのは、ディンのフレアとチャフが尽き、補充のためにカタパルト内に収容した後、さらに攻撃が激しくなり、発艦が不可能になったため。これもまた、仕方ない。そんな状況でディンを無理に出しても何もできずに墜とされるだけ。フレアとチャフの残弾は何ともならない。

    グーンで艦の周辺をまず捜索。上では人がせわしなく動きまわっている。海中作業中のクルーを巻き込まないよう遠巻きに行動する。徐々に沖に行けばいい。

    アグネス「(艦後部に比べて、艦首、艦前部、艦中部に損傷は集中している。タンホイザー、イゾルデ、魚雷発射管は使い物にならない。というか、タンホイザーとイゾルデがあったはずの箇所。大穴になっているから。タンホイザーから先の艦首も激しく損傷・欠落。内部構造が剥き出しになっている)」

    おそらく、墜落の致命傷になったのはイゾルデが吹き飛んだ時の衝撃。良く艦ごと誘爆・大爆発しなかったわね。ダメージコントロールの訓練が生きたわ。

    アグネス「(それに加え、やはり艦底と艦腹の損傷。逆に大きな面積を占める翼の損傷が余り見受けられないのは意外ね。操艦の妙と副長達が翼を集中的に防御したのと、敵がブリッジ等重要機関が集約されている後部の方を優先して攻撃したのが要因かしら)」

    おっ!ウィンダムから脱出した連合兵1名発見。グーンの掌で救助っと。
    こういう時はクローじゃなくて助かるわ。腹を上に向けて浮上。外部スピーカーON。

  • 12二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 23:40:07

    アグネス「意識はありますか?連合兵!意識があれば合図を!」

    取り合えず、両手両足は付いているわね。
    連合兵はグーンの掌の上で両手を上げる。ビビってるわね。いい気味だわ!

    アグネス「貴官の勇戦に敬意を表します。当方に危害を加える意図は有りません。救護所にお連れします。理解できるならもう一度合図を」
    連合兵はもう一度両手を上げて合図をする。

    アグネス「うん?もう1名発見」
    もう片方の掌で拾い上げる。こっちはちょっとやばそうね。ぱっと見、生きているけど意識がない。

    アグネス「ブリッジ。連合兵2名救助。1名は意識不明の重体」
    アーサー「了解。デズモンドが到着して仮設救護所を湖畔に設けている。急行せよ」
    アグネス「了解」

    浜辺に向かう。マハムール基地を始めとしたザフト拠点から到着した中型輸送機から、物資や医療部隊がガルナハン市街と周辺に展開し始めている。そして、なにより、汎ムスリム会議の赤新月社が仮設救護所を開いてくれているのはありがたい。赤十字・赤新月に攻撃をかけるほど連合もバカではないだろう。

    アグネス「(いや、たまにバカになるわね。まあ、今回は大丈夫...だと良いな)」

    医療スタッフに連合兵を引き渡し、グーンと共にまた水中へ。これ、また徹夜モードね。

  • 13二次元好きの匿名さん24/07/29(月) 23:47:09

    みんな大好きホスピタルザクの登場

  • 14二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 05:49:18

    このレスは削除されています

  • 15二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 05:50:47

    このレスは削除されています

  • 16二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 09:16:03

    アグネス「…」
    サーチライトで照らされた湖面での救助活動。脳みそが半分麻痺しているように感じるが、任務は続行。幸いそっちの部分だけは脳内回路が繋がっている。

    今日の―昨日の―戦闘で、連合は旧アゼルバイジャン領とカスピ海から大量の援軍を投入してきた。撃沈したフレーザ級8隻とザムザザーはカスピ海小艦隊の主力艦隊ほぼ全部。旧アゼルバイジャン領からはウィンダム隊が第5波・計110機がミネルバに襲来。
    返り討ちにしたのは良いが、1500名近くの敵兵を捜索しなければいけない。過半数以上はもうこの世にいないと思うけれど。

    ローエングリン砲台方面はラドル隊が担当してくれている。あの連鎖爆発。どうかな、生存者いないんじゃない?隔壁封鎖が間に合った区画があれば居るかもしれないか。
    アグネス「(ああ。発見。ライフジャケットで浮かんでる連合兵発見)」
    アグネス「意識はありますか?連合兵!意識があれば合図を!」
    何度目かの呼びかけ、応答の後、彼を仮設救護所に移送する。

    アグネス「うん?」
    移送途中にグーンに通信が入る。

    アーサー「アグネス、レイ。体調はどうだ?いや、良いわけないな。一旦二人は交代せよ。仮眠を取るように。赤ザクに乗っていたグーンパイロットが交代を申し出ている。他の2名も希望しているが、負傷しているため制止した。その代わり、ガズウート隊のパイロットのうち、グーン操縦経験者が志願した」

    アグネス「了解」
    レイ「了解」

    救護所に連合兵を引き渡し。やっとグーンから下りる。
    待機してくれてるグーンパイロットに挨拶。敬礼しようとすると、向こうから『それは無し』のジェスチャー。

  • 17二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 09:21:01

    グーンパイロット「よく無事で!」
    アグネス「良くご無事で!」

    被った。戦友っぽくていいわね。こういうの!
    見たところ、彼は負傷していない。

    アグネス「改めて、ご無事で何よりです。他の2人は?」
    グーンパイロット「腕や足を折っているが、無事だ。アグネスのザクファントムも何とか無事だ。交代する!休め」
    アグネス「はい。ありがとうございます」

    ザクファントムか…。無事なのは素直に嬉しいけど、ほぼ使わないわね。まあ、良いわ。
    レイと一緒にフラフラ進むと小柄な影が突っ込んで来る。
    コニール「アグネスさん、レイさん!」
    アグネス「うわっ!ミス・コニール」

    どうやら、彼女も仮設救護所の手伝いをしていたらしい。連合兵だけでなく、負傷したレジスタンスや市民、そしてミネルバクルーが運び込まれている。

    レイ「ミス・コニール。無事か?」
    鉄面皮のレイもやはり、人間か。少女にかける声音は優しさがこもっている。

    コニール「私は無事…。でも艦の人達が…。一緒に夕食を食べた人も」
    それは…。結構犠牲者が出たでしょうね。ミネルバの、特に艦首・艦前部、中部にいたクルーには。
    見知った人は無事だろうか。艦後部の損傷から見て、ヴィーノやヨウラン、マッド・エイブス達は無事と思うけど。

    アグネス「ありがとう。コニールも休んでね。私よレイは今から全力で休むわ」
    コニール「うん」

    さり気なく、コニールに離れてもらい、レイとも別れて女性兵仮眠スペースに向かう。

  • 18二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 09:29:51

    メイリン「アグネスさん。良かった。無事で!」

    メイリンが先に来ていたわ。あと、モブ緑女性兵が何人も。
    アグネス「メイリンこそ、よく無事で!」

    戦闘艦橋に装甲区画を採用したのはナイス判断ね。あれが無ければブリッジクルーは艦長含め全員戦死していたわ。
    でも、これからどうするのか?明日はどうするのか?ブリッジの様子や判断は?ミネルバの浸水箇所を何とか塞いで、水を排水して、それだけでも一苦労なのに。スラスターは無事でも艦前部の水流ジェットは損傷しているし。

    アグネス「(う…。頭が…。メイリンの顔を見た安心感で)」

    ふらつき出した私を支えながらメイリンは、私を仮設ベットに。

    メイリン「おやすみなさい。アグネスさん」
    優しくも強い差がこもった口調。彼女、やっぱりタフね。艦があんなことになったのに。感心するわ。

    アグネス「ありがとう。おやすみ。メイリン」

    まあ、余り長時間寝れないけど。朝日が昇る頃には、交代命令が出るかもしれない。それまでは―

  • 19二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 20:32:14

    保守

  • 20二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 21:18:05

    メイリン「アグネスさん!見て下さい!!」
    仮眠中にメイリンに叩き起こされる。いや、叩かれてはないんだけど。

    アグネス「なに…。メイリン?」
    眼を開くと周りの女性兵も仮眠スペースを走りだして行く。どうした?何が?!
    制服を羽織ってメイリンと走り出すと―

    朝日に輝くカスピ海にミネルバが浮いている。浮いている!!

    アグネス「ミネルバ…。こっ…。これが…」
    メイリン「アグネスさん。…」

    これが、私達コーディネイターの底力よ!どうだ!野蛮なナチュラルどもめ。奴等に思い知らせてやったわ。この世界の新たな担い手が誰かということを!

    アスラン「町の人達のご協力もあり、先程何とか。まだ、穴は塞ぎ切れてはいないが…」

    私が歓喜に震えていると、横から空気を読まない男の声が聞こえる。取り合えず敬礼。
    アスランから返礼を受け直る。そう言えば、町の人達ナチュラルだったわね。バタバタしてて忘れるところだったわ。

    アグネス「(ぶっちゃけ敵じゃなきゃ何でもいいわ。今は)」

    アグネス「おはようございます。アスラン先輩」
    アスラン「おはよう。アグネス、メイリン。疲れがまだ残っているな」
    アグネス「いいえ。…。はい」
    メイリン「でも、アスランさん程では。さっきまで上空警戒続けてらしたんですよね?」
    アスラン「いや。俺は艦内で実際に体を動かしたり、海中に潜ったわけじゃない。救助も他のパイロットに任せざるを得なかった」

    それもまた救助活動の一部。グーンで連合兵を拾い水面に浮かぶたび、上空を舞う赤い機体に勇気づけられたわ。

  • 21二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 21:22:55

    アグネス「いえ。先輩のお力によるものです。ありがとうございます」
    これは本心。アスランの目を見て伝える。
    アスラン「うん。ああ。ありがとう」

    周囲を見ると女性兵だけでなく、仮眠スペースから飛び出してきたレイを含む男性兵。ガルナハン市民、ラドル隊、連合負傷兵も。何で連合負傷兵まで、嬉しそうな表情をするのか意味不明。人間の心理とは摩訶不思議だわ。

    破壊された甲板に上から手を振る兵士たちの姿が見える。近くの女性兵から双眼鏡を借りて除くとヴィーノやヨウラン、マッド・エイブス達。ヘロヘロになりながら『やり遂げたぜ!』と得意顔だわ。頑張った!偉い。∞アグネスポイント。いや、出し過ぎか100000000アグネスポイントで。

    アグネス「今の上空警戒はインパルス、シンが担当しているんですね」

    朝日の中、宙を舞うインパルスの青い姿が視界に映る。飛びながらでも、シンの嬉しそうなテンションが伝わってくる。パイロットとしてはどうかと思うけど。

    アスラン「そうだ。1時間前に交代した」
    アグネス「もし、艦内の状況をご存知なら教えてください」
    メイリン「お願いします」

    ふむ、といって早速、真顔になるアスラン。この人、もっとテンポよくして欲しいわ。

    アスラン「俺も戦闘の後、途中小休止を挟んで、ずっと上空警戒をしていたから。中のことまでは直接は分からない。ブリッジの報告によると、まず、パイロット隊は全員無事だ。ガズウートとザク、君が甲板組と呼んでいる人達の内3人が脱出時と脱出直後に負傷したが、骨折や打撲程度ですんだ。プラントの技術なら後遺症を残すことなく早期に回復、任務に復帰できる」

    良し。先ずは良し。3名ということは、内2名はザクに乗っていたグーン組ね。ガズウートと2機とザク2機は失ったんだっけ。

  • 22二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 21:44:11

    アグネス「戦時に口にするべきか迷いますが…。機体の代わりなどいくらでも生産できます。兵士の命に変わるものではありません。人道的にも人的資源-国力、戦争能力的にも」

    アスランはこちらを向くと何とも言えない顔を浮かべ、ややあって微笑む。

    アスラン「そうだな。いや、戦時だからこそ、そう言った観点が必要だ。パイロット隊が、皆助かって良かった」
    メイリン「はい!」

    ただ、ミネルバは―

    アスラン「残念ながら…。ミネルバクルーは艦首、タンホイザー付近で10名、イゾルデ付近で20名、他8名、計38名が亡くなった。これまでの戦闘でタンホイザーに苦汁を嘗めさせられたからだろう、艦後部以外ではタンホイザー付近が一番の標的に。イゾルデは使用中の爆発だったから…。シルエット射出機能が温存されたことが奇跡だ」

    パイロットほどじゃないにしても訓練されたクルーは貴重なのに。38名か…。
    大穴が空いてるものね、イゾルデがあった部分。仕方ない。飲みこまねば。

    アスラン「トリスタンは健在だか、甲板は見ての通り破壊され、使い物にならない。ヘリポートは無事だが。カタパルトの排水は終了、洗浄作業と点検が終わり次第使用可能に。モビススーツデッキ、スラスターは無傷。ただ、艦前部4つの水流ジェットは4つとも完全に破壊されている。後部のは生きているから、完全に行き足を失ったわけではないが…」

    アグネス「それと艦橋。流石にずっと装甲区画のまま運行し続けるわけにもいきませんよね」

    艦の『首』が無いのは、実務の面でも、見た目、精神的な面でも結構響くものがある。

  • 23二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 21:57:16

    アスランも頷き、さらに補足する。

    アスラン「艦橋も問題だが、言うまでもなく塞いだ穴もあくまで応急処置だ。衝撃を受ければ容易く浸水が始まる。ミネルバを何とか大規模ドッグまで。ジブラルタルかカーペンタリアまで行ければ一番だが…」
    アグネス「地中海の制海権を握れていません。連合軍スエズ基地は健在です。元々、その攻略のために来た訳ですから」
    メイリン「そうなると、カーペンタリアに帰るべきでしょうか?インド洋の制海権は一応ザフトにあります。スラスターが無事なら」
    アスラン「翼の機能にもダメージは蓄積している。艦体そのものにも。ジブラルタルは無理だが、カーペンタリアなら楽に行けるかというと…。かなりのリスクだな」

    アグネス「(そうだからと言って、このままガルナハン沖で浮きつ沈みつしているわけにもいかないわね。どうしたものか)」

    アグネス「うん?」
    コニールとレジスタンスが数名こちらに小走りに向かってくる。第一印象が大事ね。

    アグネス「おはようございます!皆さん。ミス・コニール、よく眠れた?」
    喰らえ!先制挨拶攻撃!!

    コニール「おはよう!アグネスさん、アスランさん、それと…」
    メイリン「メイリンです。コニールさん、皆さん。おはようございます」
    コニール「おはようございます。メイリンさん。眠れたかというと…、実はそんなに…」

    まあ、それはそうでしょうね。

    アスラン「おはようございます。ミス・コニール。皆さん」
    その場にいた皆で、挨拶と自己紹介をすます。レジスタンス、皆モブのナチュラルね。男として興味なし。
    ただ、皆から町を開放してくれたことのお礼を言われるのは嬉しいものね。どんどん褒め称えなさい。

  • 24二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 22:34:44

    >>9

    1スレ目2スレ目などのコメント部分は問題なくって

    URLの末尾 ?res=*** これがレス番部分なのでURLからこの部分を削除したほうがいいよって意味です

  • 25二次元好きの匿名さん24/07/30(火) 23:05:30

    >>24

    ありがとうございます。

  • 26二次元好きの匿名さん24/07/31(水) 07:20:33

    ほしゅ

  • 27二次元好きの匿名さん24/07/31(水) 09:28:39

    アスランとレイ、メイリン、コニール、側にいた女性兵とレジスタンス数名、一緒に朝食。他のクルーもラドル隊やガルナハン市民と自然発生的にささやかな祝勝会を兼ねた朝食会。

    中には連合捕虜と一緒にご飯食べてるクルーまでいる。まあ、日露戦争の頃までは休戦時間に両軍兵士がお喋りしたり、場合によっては酒盛りしたりすることはままある光景だったそうだから、そんなものかもしれない。

    アグネス「(これまで人道的対応に努めてきたかいがあったわね)」

    沖でヴィーノ達がボートに乗るのが見える。彼らは今から休憩タイムね。朝食を食べたら私達が艦に戻らなければいけない。

    コニール「それで、ミネルバの人達はこれからどうする?あっ、軍事機密だから聞いちゃダメなのかな」
    アスラン「すまない。ミス・コニール、その通りだ」
    コニール「ごめん」
    アグネス「謝ることは無いわ。当然の疑問よ。貴女も当事者だしね」

    コニールにフォローを入れつつ、さっきから私も思案しているわ。まず、ミネルバは今、飛行が難しい。翼の修理とメンテナンスをしないと、そもそもカスピ海を出れないわ。戦闘なんてもってのほか。

    アグネス「(カスピ海を出れないなら、汎ムスリム会議旧イラン領ラシュトのバンダレ・アンザリー港に入港する以外選択肢はないわね。他は全部ユーラシア連邦領だし、ガルナハンに艦を修復できる施設はない)」

    幸い昨日の戦闘で、ユーラシア連邦はカスピ海の制海権を喪失したも同然。ラシュトまでなら行けるわ。

    中立国(嘘)の汎ムスリム会議に感謝ね。中立国(嘘)だから、ユーラシア連邦も直接手出しできないでしょう。勿論、国際法上、今の汎ムスリム会議は中立違反をしているわけだから、攻撃しても合法ではある。合法だけど、その場合、自動的に汎ムスリム会議は正式参戦。ユーラシア連邦がそれを選べるはずもない。

  • 28二次元好きの匿名さん24/07/31(水) 09:32:38

    アグネス「町の方はどうなってますか。皆さん落ち着いていますか?」
    暴動なんて起こしてないでしょうね。

    レジスタンス「昨日からお祭り騒ぎだよ。ミネルバを手伝ってたやつらは今頃寝てるかな。特に大きな暴動は起きていない。ちゃんと約束通り、連合捕虜は人道的に扱っているよ」

    セーフ。私のキャリアは無事ね。勲章貰えるといいな。

    アグネス「ありがとうございます。町の開放にご助力できて、私もうれしく思います」
    レジスタンス「おう!」

    あんたは従、私達が主だったでしょう!とは思っていても言わない、我慢だ。レジスタンスが頑張った。嘘ではないのだから、彼らのプライドを傷つけないようにしないと。

    しばらく、和やかな朝食タイムを過ごし、時間が来ると彼らと別れ、アスラン、レイ、メイリンと一緒にブリッジに指示を仰ぐ。

    モニターに艦長の上半身が映る。顔の隈がやばいわね。
    タリア「おはよう。おつかれさま」
    アスラン「いえ、艦長こそお疲れさまです。我々も今からミネルバに」
    タリア「あなた達はもう少し休んでなさい。今艦に戻ってもらっても、余りしてもらうことが無いわ。私も休むわ。そちらの取りまとめはアスラン、貴方に頼める?」
    アスラン「はい」
    タリア「アグネスとレイはアスランを補佐しなさい。仮眠が終わり次第、私か副長も其方に向かう」
    レイ「はい」
    アグネス「はい。湖上の救助・捜索活動はいかがします?」
    タリア「救助・捜索活動はショーンとデイルが交代してくれているから、心配しなくとよいわ」
    アグネス「了解」

  • 29二次元好きの匿名さん24/07/31(水) 09:37:45

    う~ん。何か宙ぶらりんで困るわね。アスランの顔を見ると、この人もゲッソリしている!
    アグネス「アスラン先輩。お休みされては?」
    アグネス「いや、君とレイこそ」

    メイリンが挙手
    メイリン「じゃあ私が他の兵士と番をします。皆は仮眠してください。アグネスさん。起こしてごめんなさい」
    アスラン「ああ。ありがとう」
    アグネス「ありがとう。それと、むしろ、起こしてくれてありがとう」
    レイ「すまないな」

    取り合えず、もう一回仮眠スペースへ。今更になって頭がまた、ぼーっッとして来たわ。

    ベッドにもぐりこみながら、様々な気持ちが頭をグルグルする。
    月軌道に向かうどころかカスピ海を出ることすらできない現状。ラシュトに行った後はどうする?
    修理は続けるとして、艦の穴は塞げるかもしれないが、被害が大きい箇所は何ともならない。その先は?
    う~ん。分からないわ。考えても無駄なことは考えるな。頭が回っていないのだから。今はお休みなさい!

  • 30二次元好きの匿名さん24/07/31(水) 12:28:19

    >>11>>22 を読みつつミネルバの画像見てたけどほんとに前半分(特に上部)は原型留めてなさそうだな…

  • 31二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 00:08:55

    ho

  • 32二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 00:17:10

    3時間ほどの仮眠の後スッキリ目を覚ます。気分爽快。頭の整理もついたわ。
    現状の把握もだいたいOK。次やることも、まあだいたい決まった来たかな。

    仮眠スペースを出てしばらく歩きメイリンを探す。衝立の向こうにメイリン発見!その横に…。げっ!艦長。敬礼。

    艦長は私の敬礼に気が付くとやや感慨深げに丁寧な敬礼を返してくれる。
    嬉しいわね。やっぱりそう言うの。直り、そちらに歩み寄る。

    アグネス「艦長、おはようございます」
    タリア「おはよう、アグネス。お疲れね。メイリンに用だった?」
    アグネス「はい。その…」

    ちょっとメイリンを貸して…。メイリンに目で合図。困った表情で返される。何で?

    タリア「残念だったわね。メイリンは仕事中。ここはブリッジじゃないけど。まあ、仮設ブリッジよ」

    言われてみれば、CICっぽい配置ね。そういう気分が大事ってことかしら。そばにモニターと有線電話もある。
    艦長席に、オペレーター席、あそこは副長席。良かった。副長の席、ちゃんとある。
    艦橋直すなら、通常艦橋にも副長席あげて欲しいわ。これ上申したら、高感度ゲットかも。

    タリア「…。また、妙なこと考えてるわね。貴女、大事な用事ならこの場で話して。何時もこそこそされては仕事にならないわ」
    女上司には要注意ね。良いわ。

    アグネス「実はメイリン本人というよりは、アスラン先輩に用があったのですが…。良い機会なので艦長にも打ち明けます。何とかアークエンジェル、というよりアスハ代表と連絡を取る手段を講じたく思いまして」

    話した途端、艦長が眉を顰める。

    タリア「オーブもアークエンジェルも大事だけどこんな時に…」
    アグネス「いえ。こんな時、というか今回の戦闘が決定打になったかもしれません」

  • 33二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 00:23:44

    にゅっと首を伸ばしたメイリンの目、興味深々ね。艦長もうんざりした表情を改める。
    そこに背後から…。
    アスラン「失礼します!アグネス、どういう話だ?!」
    シン「何の話だよ!」

    オーブのことになるとうるさい男子二人の声が背後から聞こえてくる。
    休憩明けに一緒になったのかしら。で、何となく一緒に歩いていたら、『オーブ』『アスハ』を聞きつけて来たと。
    アグネス「(シンのウザい体質が今回ばかりは役に立ったわね)」

    タリア「それで、話って?」
    人払いをした後、衝立で囲まれた空間。テーブルをパイプ椅子で囲んでコーヒーを啜りながら会議モード。
    艦長、アスラン、私、メイリン、シン。何気にこの面子もレアね。

    シン「ミネルバがこんなことになっているのに何で今、オーブなんだよ!?」
    また始まった...。その近視眼的な考え、辞めれないの?士官学校行った意味ないじゃない。
    アホの相手は本当に疲れるわ。

    アグネス「シン!大声出さないで。威圧しないと人と話せない系、本当勘弁して。艦長の前よ。
    私が問題にしているのは、この地方のユーラシア連邦の戦力が昨日の一戦で大打撃を受けた、ということ。
    カスピ海小艦隊が壊滅して、縁カスピ海における彼らのプレゼンスは消滅したわ。
    旧アゼルバイジャンの110機のウィンダム部隊と、ガルナハン・ローエングリンゲートを守備していた15機+15機のダガー隊、そして大要塞級の防衛拠点ローエングリン砲台もろともね」

    このアホは艦長の前ですら大人しく出来ないのか。つられて私まで、こんな口調に。マイナスポイントになったらどうしてくれるのよ。出世に響くでしょう。

    アスラン「なるほど。俺たちは…。ミネルバが大破し、大事な仲間を失った。でも、あくまでそれは1隻の艦に起きたこと。プラント全体としては、マハムール基地を始めとした汎ムスリム会議支配地域に展開しているザフト軍は無傷。もっと言ってしまえば、ミネルバもパイロット隊も再起不能、とまでは行っていない」

  • 34二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 00:27:54

    あごに手を当てたアスランが一つ一つ確認するように言葉を紡ぐ。
    アグネス「はい」
    タリア「なるほどね」
    シン「???」

    艦長は察してくれたのに…。シン、アカデミーの補修に今から行く?いや、今行かれたら私が困るわ。
    アグネス「シン・アスカ。私、アグネス・ギーベンラートは今日この場で貴方を大西洋連邦大統領に任命します。役立たずのコープランドはポイで」
    シン「何だ?寝不足か…。ごめん」

    可哀想な子を見る目で私を見るな!

    アグネス「もう睡眠は十分!思考実験よ。あんたが、もし今コープランド大統領ならこの状況、今この世界情勢、どう考え、どんな手を打つと思う?」

    シン「どうって…」

    艦長がちょっと、本当にちょっと面白がるようにシンに話を振る。

    タリア「ユニウスセブンが落ちた日から、順に考えなさい」

    グラディス教頭先生からのありがたいアドバイス。シン・アスカ生徒しっかりテストに答えるように。
    思案顔をしながらシンは話始める。

    シン「分かりました。あの日、ユニウス・セブン落下テロは最初、事故だと思われていました。プラント、ジュール隊とミネルバはその破砕作業に。でも、ボギーワンの一味とテロリストのせいで…」
    タリア「破砕作業は不十分となり、ユニウスセブンは地上に降り注ぎ『ブレイク・ザ・ワールド』と称されるほどの大惨事となったわね」

    アスランがまたすごい表情になっているが、無視。話が進まない。

  • 35二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 00:40:44

    メイリン「上海、北京、ゴビ砂漠、ケベック、フィラデルフィア、大西洋北部地域には破片が落下し、壊滅的な被害がが発生しました。赤道付近は特に被害が集中。加えて、大津波により、サウスカロライナからメイン州一帯が水没。それと、東アジアの被害は凄惨なもので、北京と上海は、『ほとんど地図からなくなってしまった』と表現されるほどのダメージを受けました」

    グラディス艦長は片手でメイリンを制しながら補足する。

    タリア「ただ、あなた達。アスラン、アグネス、シン、レイ、デイルそしてジュール隊の活躍が無意味な訳だったわけではない。再現シュミレーションによると、もしメテオブレイカーの発動回数が実際より少なくなった場合、被害地域にローマ、アテネ、フォルタレザ、サルヴァドール、スリランカ等が加わってもおかしくなかった。よく頑張ったわね、本当に」

    この人もこんな優しい眼差しが出来るのか。愛人の立場を利用して最新鋭艦艦長の椅子を手に入れたはずなのに。

    アスラン「…」
    やっぱり、飲みこめないか、この人は。

    もう一度、艦長。タリア・グラディスの表情を見つめ返す。
    アグネス「(赴任後にパパから手に入れた情報によると、この人、未亡人で男の子がいるのよね。プラントから遠く離れ、今、どんな気持ちなんだろう)」

    感傷に流されるな!人は皆、それぞれの事情を背負って生きている。私だってそうだわ。
    『悲しい過去がある』、だから何?「分かるってばよ」が通じるのは漫画の中だけよ!

    アグネス「はい。ありがとうございます。さて、シン・アスカ大統領。次は?」

    シン「え~と。ボギーワンのやつ等…。ゴホン。ボギーワンからの情報で、ユニウスセブン落下がテロであることが判明したぞ。プラント政府は無関係と説明され、私は納得したが、メディアも世論も騒ぎ出した…。
    このままでは政治家生命が危ない。一発開戦するか!
    あと、開戦するから仲間が欲しい。世界中を脅して同盟条約を結ばせるぞ。文句を言う国は侵略してやるぞ」

  • 36二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 00:46:21

    それコープランド大統領の物まね?
    思考実験しろとは言ったけど。声まで、物まねしろとは言っていないわ。それと彼奴にそんな覇気はないわ。

    メイリン「一発開戦って…」
    タリア「まあ、コープランド大統領本人は穏健派だったとも聞くし、一発開戦!というほどの勢いもなかったかもね」
    アスラン「演説でも不承不承といった雰囲気でしたね」
    アグネス「そこはどんな過程があったにしろ戦意を鼓舞しなければいけないところなのに。あの人に戦争指導の力量は有りません。相手が無能で本当に良かった、はい。大統領、次」

    テンポよく行きましょう。

    シン「ああ。はい。うん。フォックストロット・ノベンバーは大失敗したぞ。アホなブルーコスモスが核攻撃したら、返り討ちにあったぞ。私は聞いてなかったぞ。ジブラルタルとカーペンタリアに派遣した部隊どうしよう。開戦しちゃったし。オーブ沖に派遣した部隊、開戦と同時にミネルバとかいう艦に殲滅されてしまったぞ。月軌道で宇宙艦隊はストップしたぞ」
    アグネス「これは案外そんな感じかもしれませんね」
    タリア「そうね。とは言え拳を振り上げてしまったのだから」
    メイリン「墜とし所…。ですね」

    シン「落とし所を迷っていたら、プラントから、オペレーション・スピア・オブ・トワイライトを発動されてしまった。普通に負けるはずの戦いだったのにカーペンタリア方面ではミネルバがまた活躍したせいで、ボロ負けしたぞ。
    大洋州周辺の部隊全部殲滅されたぞ。カーペンタリア方面は、ザフトの降下部隊も地上部隊もほぼ無傷だぞ。
    ついでにオーブは、アスハ代表・アークエンジェルがユウナと婚約破棄の末、亡命したから条約結べなかったぞ。
    でも、今更それは通せないから、ウナト宰相を脅して国家元首のサインないけど無理やり締結させたぞ」

    アグネス「無効だけどね。オーブ連合首長国アスハ派としては」
    タリア「あくまで法律論としては、ね」
    アスラン「国際社会でその言い分が通るかどうかは、時と場合次第ですね」

  • 37二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 00:55:46

    アグネス、頭に血が上り気味なシンにも分かるように世界情勢を噛み砕いて教えてるし内心はどうあれ案外教導する立場が合ってるのかも
    上手いこと連絡が取れたらアークエンジェルと共闘するルートになったりするのかな?

  • 38二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 00:58:49

    ここでコーヒーを半分ほどのむ。シンにアイコンタクト。
    さっきからコープランド大統領やって口が渇いたでしょう。飲んだら?
    シンは、ちょっと急温くなったコーヒーを口に含み、『大統領の執務』を続ける。

    シン「カーペンタリアの側のスマトラ島基地が取られたぞ。インド洋の制海権も失ったぞ。基地はザフトが完成させて一大拠点にしてしまったぞ。ついでに人道犯罪もばれたぞ。全部ミネルバのせいだ。あと、世界中が何かやばいぞ。
    皆がやれって言うから開戦したのに世界中で反戦運動が起こってるぞ。条約もほころび出したぞ。
    結んで1か月も立ってないのにどうなってるんだよ…、じゃなくて、本当にどうなっているんだ。ユーラシア連邦は全く当てにならないぞ。それどころか、あいつら西側がめちゃくちゃだぞ」

    ここでシンをじっと見つめる。あいつの目を射抜くように。目線がかち合う。さあ、続きは?

    シン「ああ。でも、大西洋連邦大統領としてはライバルのユーラシア連邦が弱って嬉しいぞ。アラスカの再来みたいで気分が良いぞ。でも、この局面で役立たずなのは本当に腹が立つぞ!」

    何か、だんだん熱演?になって来たわね。

    シン「ミネルバが中立国(嘘)の汎ムスリム会議のマハムール基地に入港したぁ!!中立国なのに何でザフトの基地があるんだ!あれ?何でザフトの基地があるんだ?!」
    アグネス「真顔で言わない!親プラント国が中立な訳無いでしょう!アカデミーの国際関係論のコマ、必修だったでしょ!」
    シン「ああ。そうだった…。でも、割りと酷いな。大西洋連邦の立場になると。一応中立国なのに」

    何か大西洋連邦の肩を持っているみたいでムカつくわね。

    アグネス「それを言ったら、先の大戦のオーブだって似たようなことをやってたじゃない。
    交戦国の一方の次期主力戦闘機と主力戦闘艦の製造。国内でやってたのよ。連合軍の技術兵どもと一緒に。
    戦争中に兵士を入国させて引き渡しまでやろうとしてた。立派な中立義務違反よ」

  • 39二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 02:02:43

    より正確に云うなら局外中立違反かな。中立国の定義や要件は時代によって左右するけど。

    第二次大戦前基準でも限りなく黒よりのグレー、いやアウトかな。
    第二次大戦後基準なら、ほぼアウト。というか当時は、戦争が外交手段として非合法化していたから。建前上は。

    シン「いや、だからってコロニー破壊は…」
    アグネス「あれは事故みたいなもんじゃない!危険が現に明白に切迫してたの!やむを得ないことなのよ」

    タリア「はい。ストップ。ヘリオポリスの議論は別で。ただ、汎ムスリム会議はありがたいことに中立(真)ではないわね。プラントにとっても」
    アスラン「そうですね。彼らの存在は本当にありがたい」

    いけない。私としたことが。頭に血が上ってしまったわ。話がそれるところだった…。

    メイリン「ゴホン!大統領閣下。首席秘書官のメイリンです。何はともあれ、ミネルバはペルシャ湾に。いかがされます?」
    シン「急いでユーラシア連邦に連絡を。ミネルバを倒さなくては。あの艦には…。あの艦には何度も連合は敗北。殲滅されてきた。ユーラシア連邦大統領にホットラインをつなげ!」

    メイリン、ナイスフォロー。この話題、結構揉める上にアスランの鬼門なのよね。プラントの国民として、国の正当性をしっかり主張したいから、言わずにはいられないんだけど。

    アグネス「こちらはユーラシア連邦大統領。大西洋連邦大統領シン・アスカ閣下。ご連絡誠にありがとうございます。しかし、マハムール基地は汎ムスリム会議領土内にあるため、こちらからは手出しできません。この状況でさらに交戦国が増えるとなると我が国は持ちません。幸い奴らの攻撃目標は予測できています。メイリン参謀長!」

  • 40二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 02:14:38

    メイリンにバトンパス。ノリノリのメイリン『参謀長』が応じてくれる。

    メイリン「ミネルバとマハムール基地より出撃するザフト軍はガルナハン・ローエングリンゲート攻略を目指すものと予想されます。プラントはユーラシア西側地域に進駐軍を派遣。人道目的を隠れ蓑に勢力を東進させつつあります。
    最終的には、黒海、コーカサス、カスピ海を衝き、我らユーラシア連邦を瓦解させる狙いと思われます。
    急いで守備部隊の増員を。更に、カスピ海小艦隊は南下準備を急げ!コーカサス・カスピ海方面軍から何とかウィンダム100機、出来ればそれ以上、何とかかき集めよ」

    アグネス「巻き戻って今ここ、ハイ」
    ぽんっ!っと無礼にならない程度に手を叩く。この場の皆にアイコンタクト。
    シンにもう一度、視線を送る。大統領、どうします。

    シン「ゆ、ユーラシア連邦の連中。予想の遥か斜め下の結果を出しやがったぞ。
    ミネルバを墜としたが、沈められなかったらしい。代わりにガルナハン・ローエングリンゲートが落ちた、ということはコーカサスの南側の城門が破られてしまったぞ。
    おまけに、カスピ海小艦隊が壊滅させやがった。ということは...。ザフトがカスピ海を越えて、直接アストラハンやヴォルゴグラードを衝いてくるかも。それでなくてもあのあたり、民族問題がやばいのに。おまけに周辺地帯の戦力まで消滅したぞ…」

    シンが、ああ、ああと言った顔になる。ちょっとは納得してきた?
    ミネルバが落ちて、クルーにも死者が出て。私もちょっとパニック気味だったけど、寝たら回復したわ。考えてみれば、向こうが勝手に自滅してくれたわ。ラッキー、でもないのよね。

    タリア「洒落が効いた芝居を見せてくれてありがとう。そうね。見方を変えれば、彼らは今頃、大弱りでしょうね。大西洋連邦もユーラシア連邦の弱体化こそ望んでも、崩壊までは想定していない。それだけは防ぎたいはずよ。でも、大西洋連邦に余力はない。東海岸とグレートブリテンの部隊はジブラルタルで消耗している。西海岸・ハワイ方面の部隊はカーペンタリアで消滅している。援軍に出せる部隊がいない」

    ついでに言うと私もユーラシア連邦の崩壊など望んでいない。というかプラントの国益にも反するのよね。
    ユーラシア連邦が崩壊したら、戦後、地球は大西洋連邦一強になってしまう。よりによってあそこがプラントの主敵なのに。

  • 41二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 02:22:15

    崩壊後のユーラシアはテロの巣窟になり、周り回ってプラント、コーディネイターに被害をもたらすことになってしまう。貿易の回復だって遅れてしまう。

    アグネス「(もともと、今回の戦争でユーラシアは戦力的に微妙だったわ。ここまでの事態にする必要なんてなかったのに。あの無能議長め!なんで旧EU圏分離までにしなかったのよ)」

    ここでさっきから地蔵になっていたアスランがようやく口を開く。

    アスラン「東アジア共和国は北京と上海を失い、ほぼ力を失っています。南アメリカ合衆国と赤道連合は、もともと力のある国ではない。その上、南アメリカ合衆国は先の大戦で大西洋連邦の侵略を受けた側ですし、赤道連合はユニウスセブン落下の被害も大きい。スリランカが無事であったとは言え…。スマトラ島基地建設で被害にあっていたのも彼らでした」

    そろそろ仕上げかな…。
    アグネス「そうなると…。シン?いや、大統領。どこから部隊を引っ張ってきますか?」

    ここからが本題だ。さあ、アスカ大統領。アカデミー赤服卒業したんでしょ。しっかりして。

    シン「そうなると。南アフリカ統一機構は、あんまり強いイメージから…。スカンディナビア王国は条約加盟国だけど、元々中立志向が強い国だし…。そもそも地理的に、もし刺激してプラント側に裏切られたら、ユーラシア連邦が留め刺されてしまう」

    中立志向と言えば聞こえが良いけど、あいつ等風見鶏でしょう。リンデマンのふざけた草案(ユニウス条約の原案)の恨み忘れてないからね。それはそうとして―

    アグネス「それで?」
    シン「残るは...。オーブに援軍を依頼、というか強制するしかない。というか他に思い当たらないと言うか」
    アスラン「条約を締結してしまったからな…。いや、無効を主張できるのか?そもそもセイラン派にそんな意思は無いだろうが…」

    やっと結論部分に来たわ。アスランとシンの表情がめっちゃ曇っているけど、気にしてもしかたない。

    タリア「それで、アグネスはアスハ代表とアークエンジェルに連絡を取りたいのね。オーブからの派兵を防ぐために」
    アグネス「はい!」

    艦長の言葉を全力で肯定。今、伸るか反るかの所なんだから、オーブに余計なことされたら困るわ!

  • 42二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 11:49:43

    コーヒーを飲み終わったので2杯目を皆に配ろうとするとメイリンがスッと立って代わりにしてくれる。偉い!
    それにしてもシン、あんた腰が重いわね。
    天然で気が付かないだけか…。

    入れたてのコーヒーに角砂糖を投下!頭使うと糖分ほしくなるわね。

    アスラン「アグネスの意図は理解した。一応、カ…、アスハ代表の事とアークエンジェルのことは、昨日の朝にプラント本国の最高評議会と軍本部にも上申してある。しかし、昨日の戦闘で、その必要性がさらに増した、ということだな。
    アグネス「そうです」

    大統領役を任期満了したシンが思案顔をしている。『再選』してもらうこともあるかもだからよろしくね。

    シン「俺も話は分かったけど、ザフト軍人のアスランさんが亡命中のアスハ代表とアークエンジェルに連絡することって出来るのか?そもそもどこにいるのかすら…」
    アグネス「アークエンジェルはスカンディナビア王国の庇護下よ。100%ね」
    シン「なんで、断言できるんだ?100%って」

    艦長が、察しの悪いシンのため、やや困り顔で話を補足してくれる。

    タリア「アークエンジェル、というかアスハ代表はオーブの戦争参戦を回避するために亡命した。である以上、大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国、南アフリカ統一機構の勢力下には向かえないわ。赤道連合は条約加盟国内では中立より、というか無理やり加盟させられたという意味ではオーブと同じだけど、ブレイク・ザ・ワールドの被害が大きすぎて、厄介ごとの種を匿えるはずもない。南アメリカ合衆国も条件は同じね。そもそも、あそこは大西洋連邦が地理的に近すぎる」
    アグネス「一応、スカンディナビア王国も条約加盟国ではあるけど、あいつ等じゃねぇ。同盟条約締結国(嘘)ってところじゃない?」

    シンも理解し出す。『オーブ』『アスハ』で頭が変になってるだけで、一応、赤服になれる脳みそはしているんだからら、シャンとして欲しいわ。

  • 43二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 14:19:44

    もしここで上手いことカガリが本国に戻るのを前倒しできればダーダネルスやクレタでのオーブ軍との戦闘はなくなるし、エンジェルダウン作戦も発生しなくなるな…
    そこまで上手くいくかは別として

  • 44二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 17:24:31

    ラクス暗殺の件でプラント(というか議長)を疑ってるのがなぁ…
    最寄りの基地までのミネルバ護衛は引き受けてくれるだろうけどオーブ奪還の援助は断ると思う

  • 45二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 21:42:18

    アスラン「逆にここ、汎ムスリム会議は実質的にプラント陣営だ。やはり適切ではない。地球にある国家で、中立志向が強く、ブレイク・ザ・ワールドの被害が軽微にとどまり、かつ主戦場からも大西洋連邦からも地理的に遠い。となるとスカンディナビア王国以外ない。月面中立都市コペルニクスも候補に入りそうだが、アークエンジェルに大気圏単独離脱能力はない」

    アスランがダメ出しの補足を追加。シンもようやく納得したように頷く。
    勿論、可能性のレベルなら、公海の底に潜って潜伏、とかもなくはない。それでも最低限の補給と情報入手のための母港が必要であり、それをどこにするかというと―やはり選択肢はスカンディナビア王国一択。

    アグネス「オーブ連合首長国、アスハ首長家とスカンディナビア王国、スカンディナビア王家は以前から深い交流があります。更にスカンディナビア王国はプラントのクライン派と太いパイプがあると父から聞いています。ああ、ここでいうクライン派は『本流の方』ですね。100%と言ったのはそういう意味よ、シン!」

    シン「分かった。ごめんって。アークエンジェルと連絡を取るべきなのと彼らがスカンディナビア王国庇護下にいると言うのは分かったけど、肝心の連絡手段は?どうするんだ?」

    メイリン「私もそれ、さっきから気になっています。アスランさん、もしかして、秘密の連絡網を持っているとか?」

    メイリンが超期待してアスランを見る、私も一応確認したい。実際そこのところどうなのよ。

    アスラン「特に…ない」
    ボソッと気まずい表情で答えるアスラン。期待して損したわ

    シン「特にない、って。あんまり言いたくないけど…。プランBとかは?」
    アスラン「ない」

    シンにすら呆れられている。ノープランであの情勢下、プラントに行ってたのか、この男は!-100000アグネスポイント。

  • 46二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 21:46:40

    タリア「よくそれで…。今言ってもしょうがないわね」
    艦長も呆れ顔だ。
    アスラン「本当に、返す言葉もありません」
    アスランはすまなそうな顔をしている、大いに反省して!本当に。

    メイリン「じゃあ、これでこの話は手詰まりってことですか?本国評議会の動きを待つしかない?」
    ちょっと落胆気味のメイリンに良いお知らせを。
    アグネス「ないでもないわよ」
    メイリン「え…」
    タリア「アグネス…。『裏口』を使おうとしているなら、上官として注意せざるを得ないわよ」

    咎めるような口調。艦長の顔が恐くなる前に勿体ぶらず話そう。

    アグネス「使うのは、表口です。アスラン先輩が、堂々と駐汎ムスリム会議スカンディナビア王国大使館の門を叩き、大使に会いに行けばいいんですよ。勿論、本国最高評議会と何かとお世話になるルイーズ・ライトナ―最高評議員、あと、気になるなら議長に一報入れてから。大使と会って、スカンディナビア王国、王家にアスハ代表とアークエンジェルにお取次ぎをお願いしましょう」
    タリア「…」
    シン「え…」
    メイリン「ほう!」
    アスラン「?」

    ただこの方法を取るには前提条件がある。
    アグネス「艦長、アスラン先輩の部屋、無事ですか?攻撃が直撃したりとか」
    タリア「無事よ。しかしね。裏口を使うなとは言ったけど…」

    アスラン「申し訳ない。俺も話が読めない。ザフト軍人の俺が仮にも交戦国のスカンディナビア王国大使館に入館できるわけないだろう」
    未だに話が読めなさそうなアスラン。コーヒー飲んで頭をスッキリさせましょう。カップを持ち上げ、『一緒に飲もう』のサイン。しぶしぶアスランがコーヒーを飲むのを見計らって口を開く。

  • 47二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 21:50:03

    アグネス「オーブ連合首長国市民にして、国家元首特別選任の遣プラント特使、アレックス・ディノが駐汎ムスリム会議スカンディナビア王国大使に会談を申し込む分には自由なのではないでしょうか。会う会わないは大使次第になりますが」
    アスラン「…」
    シン「あれ?あれ…」
    メイリン「あ~あ。なるほど」
    タリア「アスラン。貴方、まさかまだプラントの帰化申請終えてなかったの?!」

    艦長の剣幕にアスランは気押される。
    アスラン「ええ…。まあ。あの後、立て込んでいて…」
    タリア「立て込んでいて…。本来、入隊前に帰化しておくものでしょう。まあ、良いわ。アグネス続きを」

    正直、アスラン先輩のフラフラッぷりに皆呆れ顔だが、今はそこに突っ込んでもしょうがないので話を進める。というかこの話の肝はまさにそのアスラン先輩の身分をフル活用することになるのだから。

    アグネス「分かりました。話を続けます。まず、アスラン先輩は実はプラント国民ではありません。
    前大戦終了後、事実上の追放処分になり、市民権は停止状態です。本来、ザフト軍入隊前に済ませるべきだった帰化申請、もしくは市民権停止解除手続きは議長の謎采配と先輩の…、こう、多忙故、行われていません。先輩の身分は『ザフト軍人特務隊アスラン・ザラにして、オーブ連合首長国国民市民番号2500474C アレックス・ディノ』です。そこは変化していません。市民番号が付いた身分証明書。まだお持ちでしょう?」
    アスラン「いや、しかし…。俺は現に入国を断られた。戦争中の国のモビルスーツに乗ったままだったから、どの道俺が悪いわけだが。しかし、なんにしろ市民権は剥奪されているのでは?」

    もっともな意見ね。
    アグネス「シンはどう思う?」
    シン「俺!?え~と。アスランさんがプラント国民になってなかったことに今更驚いたと言うか。ほんとは怒るべきなんだけど、それはさておき。セイラン家はアスランさんの市民権、剥奪していると思う」

    なるほど。そうね。

  • 48二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 21:52:50

    アスランの手持ちのアグネスポイントが全て剥奪されて借金する勢いで急落してるの笑う
    アグネスは特使(文民)としてプラントに来た時のアスランの立場を使うのかな?

  • 49二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 21:54:41

    アグネス「メイリンは?」
    メイリン「はい。それは『解釈』によると思います。確かに現オーブ政権。つまりセイラン政権をオーブの正統政府と見なすなら、『オーブ市民アレックス・ディノ』は法的には存在しません。でも、もしオーブの正統がアークエンジェル内に存在すると思われる亡命政府にあると考えるならアレックス・ディノという存在は法的に消滅しません。それに宰相が権限を乱用して、国家元首のあずかり知らぬところで個人の権利をはく奪したなら、アレックス・ディノは国家元首宛てに被害を訴え出ることも理論上は可能です」

    タリア「確かに『解釈』は出来る。そして、オーブ正統政府アスハ代表が庇護されているであろうスカンディナビア王国の大使館の扉を叩くと。でも、ちょっと苦しいわね」

    艦長の指摘はもっともだわ。これだけではごり押しするのは難しいかも知れない。でも―

    アグネス「アスラン先輩。先輩が特使としてプラントに入国した際に国家元首たるアスハ代表から直接いただいたであろう外交旅券(外交官用パスポート)、アスハ代表からの特使任命状・信任状、それと外交封印袋、捨ててないですよね?」

    アスラン「…。ああ。帰りに他の荷物や着替えと一緒にセイバーに入れて来たな。部屋の中だ。そうか、それを見せれば、いや、しかし…」

    シン「でも、スカンディナビアの大使館にいざ行って。『それはそれとして、貴方、ザフト軍人でしょう』とか『アスハ代表は我が王国にご滞在ではありません』とか言われて追い返されたらどうするんです」
    アグネス「シン、あんた大使首ね。さよなら」
    シン「えっ?え…」

    豆鉄砲を喰らったような顔をするシン。しっかりしなさい。って何回しっかりしなさいって思わせるのよ、あんた。
    艦長は私とシンのやり取りを相互にみながら諭すように話す。

    タリア「アグネス、言い方。気を付けなさい。悪い癖よ。シン。さっきまで大統領をやっていたように今度はスカンディナビア王国国王、首相、駐汎ムスリム会議スカンディナビア王国大使になったつもりで考えなさい。特に大使になったつもりで」

  • 50二次元好きの匿名さん24/08/01(木) 21:59:04

    シン「大使になったつもりで…。えっと、今、スカンディナビアはアスハを匿っていて…」
    アグネス「巻いて!」
    シン「コーカサス南端・カスピ海でザフトとユーラシア連邦が大会戦。結果はユーラシア連邦軍殲滅。隣国のユーラシア連邦がどうなるかはスカンディナビア王国にとって一大事。おまけにオーブが軍を派遣したら、アスハ代表を匿っていた手前、国のかじ取りが一気に難しくなる。アスランを追い返すよりは一旦、話だけでも聞かないと!」

    ポンッと今度はメイリンが手を叩く。

    メイリン「なるほど。アスランさんがザフト特務隊でオーブ市民権者(仮)で国家元首直選の外交官であることをフル活用すれば、大使の面会までは漕ぎつけられる公算があるんですね。しかも、汚い手段を使わず、堂々と正面突破で」

    これぐらいのテンポが大事。偉いわメイリン。

    アグネス「そう言うことよ。勿論、フル活用しても面会謝絶されるかもしれない。それならそれで他のルートを考えるまで。殺されはしないわ。最高評議会もスカンディナビア王国、アスハ代表との対応を模索しているはず。早速、ライトナ―評議会議員が議題として提出して下さったそうだわ」

    とは言え―

    タリア「とは言え順序は守らないといけない。それで、最高評議会とライトナ―議員への連絡を条件にあげたわけね」
    アグネス「はい。ただ、最高評議会の答えを悠長に待っている時間は有りません。最高評議会に連絡を上げ、最低限、ライトナ―評議員のご同意さえいただければ大使に突撃するべきです」

    そう言ってアスランの方に視線を向けると、まだ、迷っている。しっかりして!今の世界情勢、ミネルバの状況、『拙速はあれども巧遅はなし』よ。一分一秒が大事なの!

  • 51二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 09:16:52

    アスラン「話は分かった。つまり君は俺に、事前に最高評議会に連絡、ライトナ―評議員からも同意を得た上でスカンディナビア王国大使と面会するべきというんだな」

    そうよ。長い話を要約するとそうなるわ。

    アグネス「はい。そして大使にスカンディナビア王国と王家にアスハ代表・アークエンジェルに連絡の取り次ぎを依頼して欲しいです。以後のパイプ役になっていただけないかお願いも。また、オーブ(アスハ派)特使として、国家元首たるアスハ代表に連絡・報告書の提出を。そちらは外交封印袋に入れて。スカンディナビア王国大使館に大至急、本国、アークエンジェルに郵送をお願いしてください」

    ちょっと、ムシが良すぎるか?でも、アークエンジェルを勝手に匿ったのはスカンディナビア王国なわけだし。毒を食らわば皿まで、と腹を決めてもらわないと。

    アグネス「(私達プラントにとって、本当の『毒』はセイラン家な訳だけどね)」

    シンは今頃になって、うん、うん、と頷いている…。まあ、理解してくれて助かるわ。めっちゃ話が長くなったけど。

    アスラン「アスハ代表に報告。確かに内容は?」
    タリア「言うまでもないことだけど、プラント、ザフト軍、そして本艦ミネルバの利益に相反する内容は見過ごすことは出来ないわよ」

    艦長はしっかり釘を刺してくる。これも当然、私も同感だわ。
    メモ帳から、紙を破り、そこに皆の前で、今思いつく限りのことを書いてみる。
    細かい形式は後回しで要約を。

  • 52二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 09:21:37

    『神の恩寵に寄りてオーブ連合首長国代表首長たるカガリ・ユラ・アスハ閣下。
    閣下の僕にして国家元首直任特使、アレックス・ディノがご報告します。
    (① この報告書が特使としての文章であることの明示)

    国家危急の折、プラントに特使として派遣されながら、十分な働きを出来ず、また今日まで連絡することが出来なかったこと誠に申し訳ありません(②特使として力不足の謝罪)。

    私は当地においてギルバート・デュランダルプラント最高評議会議長の説得を直接受け、ザフト軍に特務隊(フェイス)として復隊しました。閣下の信頼に背く重大な背信行為と責められても致し方ありません。万死に値すると自覚しています。(③アスハ代表とオーブに対する不義理への謝罪)

    ただ、復隊、フェイス任命時、デュランダル議長から私をザフト軍の通常の指揮系統の中に組み込まないこと、自分の信念や信義に忠誠を誓いそれを優先して良い旨、言質を得ています。『我等が誤った道を行こうとしたら君もそれを正してくれ』とも。
    無論、こうしてザフト軍の軍服に袖を通した以上、私はザフトの戦友とプラント国民に義務を負っていますが、それと相反しない限りにおいて、私の忠誠心は閣下と平和と中立を希求するオーブ国民の下にあります。フェイスとしての権限も活用しながら、プラントとオーブの友好、オーブ連合首長国の国是たる真の中立国の地位の回復に粉骨砕身していく所存です。
    ( ③への釈明、復隊時の条件の報告、今後の行動方針の表明、プラント、ザフトと相反しない限り忠誠義務を果たす旨の宣誓)

    閣下とアークエンジェルの行動が政治亡命であり、その意図がオーブ連合首長国の中立を守り、大西洋連邦の属国化とこの戦争への参戦を防止することにあったこと、既にプラント最高評議会に報告済みです。私の母、レノアと生前親交が深かったルイーズ・ライトナ―最高評議会議員も力をお貸しして下さっています。(④プラント本国、最高評議会についての説明)

  • 53二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 09:29:45

    閣下が正式に亡命政府樹立を宣言しない理由はオーブ国内がそれをきっかけに内乱状態になることを危惧してのものだと、こちらも理解しています。

    しかし、やはり何らかのメッセージを国際社会、オーブ本国に発信しないことには話が先に進みません。私見ではありますが、現在の国際情勢・戦況を鑑みれば、連合はオーブに兵力派遣を強要すること明らかと思います。

    それは、ただオーブの国是に反し、軍と民を戦禍に晒すのみならず、プラントとオーブの関係を決定的に断絶させることにも繋がります。私の忠誠心は永遠にオーブと閣下のものではありますが、戦時にはプラント国民とザフトの戦友への義務を優先せざるを得ません。

    閣下からも、今一度、オーブ軍並びにオーブ国民にご自身のお言葉で、国際救難チャンネル等を用いて、この戦争に不参戦を貫くよう厳命してください。合わせて、プラントと亡命政権・アークエンジェルとの協力について、一度、ご考慮して下されば幸いです。(⑤アスハ代表に直接アドバイスとお願い。オーブ不参戦を軍と国民に呼びかけ、プラントとの協力について選択肢に入れてもらう)

    物理的な距離は遠く離れても、閣下に対する私の忠義と友愛の念は一切変わることは有りません。閣下の栄光が千年先まで及びますように。
    オーブ連合首長国特使アレックス・ディノ。貴女の永遠の僕にして、友アスラン・ザラ。』

    メモをアスラン先輩を始め、艦長、メイリン、シンに回し見してもらう。細かい形式や言い回しは後で、アスラン自身に直してもらうとして、今までの話をまとめるとこんな感じじゃない。大体は。

    艦長の反応は?プラントの利益とミネルバの安全と相反していない?大丈夫。目線でお伺いを立てる。

    タリア「これで大枠は良いんじゃない」
    アグネス「ありがとうございます、メイリン、シンは?どう」
    シン「まあまあじゃないかな。ちょっと固いけど」
    アグネス「これでも十分簡略化しているわ。アスラン先輩ご自身に細部は修正していただくから」
    メイリン「そうですね。第一球はこれで行きますか。アスランさん?」
    後は、アスラン待ちね。

  • 54二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 20:28:30

    たしかラクス暗殺未遂が12月でベルリンデステライが年明けだっけか
    本編だと13話〜32話だから一ヶ月にイベント詰めすぎよ

  • 55二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 20:44:16

    >>54

    一年でイベント詰め込みすぎ問題はガンダム界あるあるだけどSEEDは特に詰まってるよね…

  • 56二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 20:50:58

    アスラン「俺は僕(しもべ)じゃない」
    メイリン「え…?」
    アグネス「(うん?なに…)」
    アスラン「俺もオーブ国民も彼女の僕じゃない。カガリはそんなことを望まない」

    ああ。文言に一過言あるのね。めんどくさいわ。と言うか代表と二人の時はファーストネーム呼びなんだ、この人。

    むっとした顔をするアスラン。そんなに変な表現だった?君主国でしょ、オーブって。

    アグネス「細かい様式や言葉遣いはアスラン先輩ご自身の言葉で。内容は?大枠ではどうですか?そもそも大使に面会することの是非は?」
    本題を進めなきゃ。艦長も私も貴方も暇じゃないし、暇であってはならないの。今は!

    アスラン「艦長。私は今からマハムール基地に一時帰還し、基地通信設備を用いて、本国評議会に一報を。ライトナ―評議員に同意をいただき次第、ジッダの大使館に赴きたいと思います。私からアスハ代表に提出する書簡はアグネスの原案を若干文言修正した上で、概ね同じ内容の物を作成。3部用意し、一つはアスハ代表に、一つはプラント本国評議会に提出し、残りは私が保管を」
    タリア「許可します。行ってらっしゃい。互いに務めを果たしましょう」

    一気呵成に話しだすアスランを見て一安心。迷いがなくなったようで何より。この勢いなら、大使の面会までやり遂げるわ。

    アグネス「(やる気になった、と言うか爆走し始めてくれて良かった。正直コミュ障のこの人が外交官やれるのかが一番心配だったけど。今の顔つきなら大丈夫。元々のスペックは高いんだし)」
    胸をなでおろす。ここまで来てアスランが断ってきたら、私の面目が丸つぶれになるところよ。さて、一仕事終わったから…。

  • 57二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 20:59:38

    タリア「アグネス。貴女も同行なさい。軍隊は単独行動厳禁よ。バビでセイバー、『ディノ特使』を護衛するように」
    アグネス「はい!」

    そうなるわよね。カスピ海の辺、ガルナハン(西暦時代のイラン・アゼルバイジャン、アスタラ市付近)から、ペルシャ湾のマハムール基地へ逆戻り。そこでアスランが本国に連絡して、さらにジッダ(紅海沿岸都市。メッカの西70キロ。西暦時代イスラム協力機構の本部があった)まで。超高速で今日中に要件を終わらせたいわね。

    アグネス「(回り切れるかしら?)」
    まあ、ここは重大局面。数日かけてでも…。いや、時間は大事、巻きで行く。
    そうこうしている内にも話は進む。一旦回り始めると早いんだこういうのは。

    アスラン「メイリンはガルナハンで俺達とミネルバの取り次ぎを頼む」
    メイリン「はい」

    シン「お、俺は?」
    アグネス「シン!仕事は自分で取りに行く!じゃなくて…、そうね。今日、ここで行われた話し合いを簡潔にまとめ、公式書面にして艦長に提出、でいかがでしょうか?」

    『いかがでしょうか』で艦長にアイコンタクト。正直、シンに書類仕事ができるイメージがないけど、これでもこいつは赤服。良い訓練になるんじゃない。

    タリア「いいでしょう。シン。この場のミーティング内容を簡潔正確にまとめ。昼までに提出せよ。ミスがあれば何度でもやり直しよ」
    シン「はい…」
    渋い顔をするシン。あんたアホ?白服の艦長が『ミスに何度でもつき合う』と言ってくれてるのに。出世したら書類仕事ばかりになるんだし。もっと志を高く持って欲しいわ。上手くスキルツリーを伸ばしたら、私の副副副官ぐらいにはしてあげなくも…。いや、やっぱり別部隊で頼むわ。

  • 58二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 21:15:12

    あのシンをキープくん(第四候補)くらいまで昇格させてるアグネスいいぞ

  • 59二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 23:48:14

    さて締めね。

    アグネス「烏滸がましい言い方かもしれませんが、私の話に時間を取って下さった艦長、アスラン先輩、シン、メイリンに感謝を。ありがとうございます。これより、アスラン先輩の護衛の任を果たします」
    アスラン「直ぐに出発します」

    アスランと一緒に艦長に敬礼。返礼を受けるやピートリー級へダッシュ。バビを調整確認しなきゃ。アスランは文言修正等準備を全速力だ。

    アスランの準備の後、ピートリー級から皆に見送られ、セイバーとバビ発艦、出発。周囲には手短に事情を伝えておいた。

    メイリン「何かあれば、直ぐ連絡してください!」
    コックピットにメイリンの通信。助かるわ。心強い。

    眼下で帽子や手を振ってくれているミネルバの皆、ラドル隊、汎ムスリム会議赤新月社医療スタッフ、ガルナハン市民にバビのコックピット内で敬礼して応える。外から見えるわけないけど。
    それと、ヴィーノとヨウランは無理して出てこなくていいから寝ていなさい!

    『オーブの参戦阻止』という目的に賛成してくれた人がこんなに多かったのは嬉しい誤算だわ。すでに国交断交済みとは言え、元友好国と干戈を交えたい人間なんていないものね。考えてみれば。プラントだけじゃない。汎ムスリム会議にとってもガルナハン市民にとってもオーブは仇敵ではない。戦わずにすめばそれに越したことはないんだ。

    アグネス「(バッテリーを充電しきった機体でのびのび空を飛ぶのは気持ちいいわ。昨日は本当に危なかった)」

    コックピットに通信。セイバーから―
    アスラン「アグネス、すまない。いろいろ気を使わせてしまって。本来なら、俺がもっと、しっかり考えて立ち回らなければいけなかったのに」

    本当にそうよ。子供のお使いに来た訳ではないのよ。貴方、特使でフェイスでしょう!

  • 60二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 23:54:00

    アグネス「いえ。僭越に僭越を重ねるようで申し訳なく思っています。出しゃばりをお許しください」

    我慢だわ。我慢。我慢…。落ち着け。確かに出しゃばりではあるのだから。

    アスラン「いや、そんなことはない。ありがとう。カガリにも何とか君の親切を伝えるよ。書簡に添えてメモを入れておこう。君のこれまでの献身を伝える。そもそもカガリはミネルバ乗艦時の君を忘れているはずもない」
    アグネス「ご随意に…」

    反応に困ること言わない!あ…、でも勲章欲しいな。
    オーブがこんなことになってしまって、オーブ連合首長国最高名誉勲章、貰いそびれてしまった。あんなに頑張って、ユニウスセブン粉砕したのに。せめて、アスハ首長家勲章は欲しいわ。お願いします。

    アスラン「それと、その。君はどれくらいのタイムリミットがあると思っている?」

    オーブの派兵のタイムリミットの事か…。
    アグネス「本来軍の動員には国家元首の同意が必要…、などと言うのは無意味ですね。今となっては。先輩の言うタイムリミットは派遣オーブ軍とザフト軍が最初に砲火を交えるであろう日時、と言う意味ですよね」

    アスラン「そうだ。勿論、派兵決定に憤慨したザフトがカーペンタリアからオーブを攻撃する可能性もある。その場合は全てのタイムスケジュールが変更になるが…」

    本国最高評議会がオーブ艦隊出航をレッドラインとした場合、その時が開戦日時となる。
    取り合えず、一旦それは除外して『派遣オーブ軍艦隊』とザフト軍が交戦するケースのみを考える。

    アグネス「まず、最短のケースを考えましょう。政治日程等を抜きにした、極端な話。『派兵が今日決定し、即時出港した』とします。オノゴロ島を出たオーブ艦隊はまず、パナマ運河に向かうはず」

    アスラン「カーペンタリア基地、我々が奪取後、完成したザフト・スマトラ島基地はいずれも強力で、インド洋の制海権はザフトが握っているから、自然とそうなるな。主戦力として攻め込むなら兎も角、援軍であるならば」

  • 61二次元好きの匿名さん24/08/02(金) 23:57:46

    眼下に広がるイラン高原、空を舞う時代に流血の相談をする我らをゾロアスターはどう思うのか。きっと愚者の砲声など賢者の眠りを妨げるに足りないだろう。

    アグネス「はい。ソロモン諸島から毎時30ノット。乗組員、全艦体が万難を排し、悪天候をものともせずパナマまで突き進んで、13600㎞以上、10日は最低必要です」
    アスラン「そうだな。オーブ艦隊はミネルバとは全く違う水上艦。しかも艦隊行動は最も遅い艦に原則合わせざるを得ない。カーペンタリア出航時に是が非でもボズゴロフ級を置いてきた君とシンの上申は正しかった」
    アグネス「ありがとうございます」

    あの判断が無かったら、下手したらまだ、マハムール基地に着いてないわ。鈍足艦を切り離して空路を進んで本当に良かったわ。

    アグネス「交通渋滞で有名なパナマ運河を大西洋連邦の圧力で最優先に通してもらったとして、ここで半日以上費やします。オーブから10日半で旧パナマ領大西洋側都市コロン。ここが基準点です、あくまで彼らが航路を取ればですが」

    アスラン「もし、オーブの提供兵力がムラサメ等の航空戦力主体だった場合は話が変わる…。だが、取り合えず、空母を主軸とした艦隊で派遣という想定で話を続けよう」

    アグネス「はい。コロンから、どこに向かうかで日程は分岐します。まず、彼らがジブラルタル攻略を目指し、途中で連合軍と合流しながらタリファ沖合まで7992㎞以上、そのまま30ノット毎時で突き進んだとします。6日かかります。

    万難を排し、悪天候をものともせず、運河は最優先で通してもらい、戦闘準備は全て全速力で進みながら整えて、今日から、16日半後。これがザフトとオーブ派遣艦体の最短接敵時間です」

    勿論これは、全てを単純化した上での話。過程を変えただけで、いくらでも前倒しも後ろ倒しもあり得る。
    あくまで目安。極論、『実はオーブ艦隊はブレイク・ザ・ワールド当日からアスハ代表に内緒で出航していた』も成り立つと言えば成り立つ。考え出せばきりがない。

  • 62二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 00:06:18

    このレスは削除されています

  • 63二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 00:10:11

    アスラン「そこから先は…」
    アグネス「もし、彼らがジブラルタルを目指さず、スエズ基地に直接援軍に向かう場合。コロンから喜望峰を回ることになります。『インド洋の制海権はザフトにある』とは言いましたが、正確には南インド洋西部、つまり、南アフリカ統一機構領海~200海里付近までは連合勢力圏です。ザフトと連合の制海権がぶつかり合うソマリア沖が次の接敵予想ポイントです。旧イエメン・ソコトラ島は汎ムスリム会議領土なので、丁度『アフリカの角』の沖でぶつかることになります。ここまでパナマ・コロン市から約19000㎞以上。14日~15日と言ったところでしょうか。オノゴロ島から通算で25日程度。これがもう一つの開戦予想日時です」

    バビの左手遥か彼方にイスファハーンを視認。『世界の半分』と称されたこともある都市。せっかく文明の栄えたペルシャの地を踏みながら、私達戦争以外何にもしていない!手柄も欲しいが観光もしたかった!

    アグネス「もし、最高評議会がソマリア沖をレッドラインとしなかった場合。紅海内での戦闘は恐らく避けるのではないでしょうか。紅海はイスラムの聖地メッカ、メディナにも近く親プラント国の汎ムスリム会議に配慮せざるを得ません。巡礼者に万一死者が出れば国際問題になります」
    アスラン「確かに。ソマリア沖で決戦しないなら、スエズまでは逆に素通りになるだろうな。オーブ艦隊がアデン湾を抜け、紅海を通過し、旧エジプト領スエズ市(スエズ運河紅海側入り口)までコロン市から約22225㎞以上。16,6日。オーブから通算27日程度」
    アグネス「はい。つまりオーブ軍スエズ基地入城が今から最短で27日後。もう一つの開戦予想日時です。それまでにザフトがスエズを落とし、オーブが逃げ帰ってくれるのが一番ですが」

    ザグロス山脈通過。スシアナ平原を南下し続ける。

    さらに、もしオーブ軍と連合軍がザフトのスエズ基地攻略を待たず、逆に打って出てきた場合を想定する。
    う~ん。そんなことあるのか?
    ジブラルタルを攻撃するならスエズ行かずに大西洋から攻撃するか、さもなくばグレートブリテン島で連合軍と合流すればいい。中東・アナトリア半島は旧エジプト領より西は汎ムスリム会議領土だから手出しできないはずだし…。

    アグネス「(でも、バカの考えることは想定を超えるからね)」

  • 64二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 00:18:59

    一応算定するとスエズ運河からボスポラス・ダーダネルス海峡入口まで向かったとして、コロン市から23600㎞前後。スエズ運河通過に半日かけるとして(よその国にすごい迷惑ね)18日~19日は最低必要。

    アグネス「(オノゴロ島から通算すると28日半から29日か。でも、オーブがわざわざ黒海に来る意味も無いような。ユーラシアを助ける為ならスエズで持ちこたえるか、ギリシャに部隊を上陸させてあげればいいんだし。何だったらブリュッセルにムラサメを下ろしてもいい。ユーラシア連邦このままだと、西側諦めてモスクワに遷都不可避よ)」

    マハムール基地を視認。着陸準備。誘導ビーコン捕捉。

    アスラン「つまり、どんなに早くとも、あと半月以上はある…、かもしれない」
    アグネス「ここまで話しておいてなんですが…。あまり意味のない想定です。先ずはオーブ派兵阻止に全力を。そのために来ました」

    隙あらば希望的観測。ただ、これはアスランを責めれば済む問題じゃない。私も時間があればいいと思う心は同じだわ。ミネルバを修理する時間が欲しい。月面を攻撃する時も欲しい。
    『最悪の想定をせよ』と賢者は言うが、ではその最悪はどの最悪を想定すればいいのか。歴史に学べと言うが、長い人類の歴史どの一ページを捲ればいい?
    答えなど誰も持ち合わせてはいないんだ。勿論、私も。

    空港に着地。

    モビルスーツから下りて敬礼を交わす。
    アスラン「ああ。勿論その為に来た」

    そのために来た(キリッ)。じゃないでしょう。ちゃんと考えている?いや、この人考えると迷走する人だわ...。

    アグネス「はい。急ぎましょう」
    また、二人で基地内に向けダッシュ。この人は動き回っている方が性に合っている。
    しかし、走ってばかりで一日が過ぎるわね。

  • 65二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 09:41:27

    アスランは本国とライトナ―評議員に連絡・会談中。私はアスランから委任を受けガルナハンにマハムール基地到着を報告。

    アグネス「道中特に異常は見受けられませんでした」

    モニター画面に映るのは艦長。大分表情がましになって来たわね。隈が薄くなってきてるわ。

    タリア「無事到着して何より。アスハ代表とアークエンジェルの件よろしく頼むわ」
    アグネス「(副長はまだミネルバで指揮中か。もうしばらくしたら、艦長と交代するのかな?)」

    メイリン「艦長!ニュースを!アグネスさんも基地で確認して下さい!」
    メイリンが横から緊急報告。何?モニター画面の半分をニュースに切り替え。

    ニュースキャスター「ここ旧アゼルバイジャン領バクーでは、昨日のガルナハン・カスピ海会戦におけるユーラシア連邦軍敗北を受け、現在市民の抗議活動が激しさを増しています。自然発生的に始まったデモは既に数万人規模に。さらに規模が拡大しつつあります。旧首都バクーのみならず、大規模デモは、各主要都市ギャンジャ、スムガイト、ミンゲチェヴィル、シャキ、シルヴァン、レンキャランも波及。一部都市は市民が市庁舎を占拠しつつあります」

    最悪…。でも仕方ないか。カスピ海小艦隊が一夜にして消滅したわけだし。ウィンダム隊も居なくなってしまったしね。

    アグネス「旧アゼルバイジャン領、特にレンキャラン市はガルナハンと隣接しています。厄介ですね」
    タリア「面倒ごとに巻き込まれたくはないわね。勿論、現地住民の生命は尊重されるべき。勘違いしないように」
    アグネス「はい。ただ一番はプラントの国益…」

    ニュース画面が切り替わる。
    ニュースキャスター「ここは旧ジョーシア領ディオキア旧名バトゥミでは市民が政府市庁舎を占拠。ザフト軍の救援を求めています。旧ジョージア領では旧首都トビリシほか、クタイシ、ポティ、ルスタヴィ、ゴリにて民衆が大蜂起。ユーラシア連邦軍の現地人部隊からも離反者が続出しつつ有り…」
    ニュースキャスター「アブハジア、南オセチアではユーラシア連邦残留派が、なお多数を占めるものの、分離・自治権獲得を目指すデモ活動が…」

    タリア「…」
    アグネス「…」
    メイリン「ディオキア。どうします?」

  • 66二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 20:54:54

    ようやく書き込めた
    勝ち過ぎたことの弊害か

  • 67二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 21:28:30

    アグネス「どうもこうも。ミネルバ、そもそもカスピ海から出れないわよ。何ともならないわ。と言うか早い、世界の流れが速い。これ私達のせい?」
    タリア「誰のせいと言う訳でもないわ。目前の任務に集中するように。プラント本国、軍本部との連絡を密にしてこちらもしっかり構えておくから、安心するように」
    アグネス「はい」

    バビをしっかりエネルギチャージしておく。アスランのセイバーも同じように。マハムール基地の現場兵士にも挨拶。
    以前お世話になった『軍使組』の黒服幹部とも面会し、汎ムスリム会議内での便宜を図ってもらえるようお願いしてみる。現地組がこういう時は頼りだわ。ミネルバがあんな状況だしね。

    しかし、驚くばかりだわ。世界は私が思ってた以上に流動的…、と言うのもおかしいか?元々私が生まれる前から世界は変だった。

    アグネス「(2年前。人類は滅んでいるはずだった。私も彼らも。流動的なんてものじゃない。ジェットコールターみたいなものね。C.E.は。下に下に流れていく感じの)」

    失った命は帰ることはない。吹き飛んだ文化遺産も国富も。減った分を取り戻す前にこの惨状。誰もがどこか疲れて、救いを求めているのかもね。

    見方を変えれば今はボーナスステージ。元々無くなるはずだった命ですもの。私でさえも。せっかく拾った命なら、これを元手に勝って勝って勝ちまくって、トップを狙わなきゃ噓でしょ!周りが何かテンション下がっているなら、それは好機。蹴落としてやるわ!

    私達は『古き良き世界』を目の当たりにしたことのない世代の人間だ。
    C.E.56に私とルナマリア、その一年後、C.E.57にシンとメイリンは生まれた。
    S2インフルエンザ流行の流行が始まったのがC.E.54。55年にナチュラルにワクチンを開発・供給してやったにも関わらず、激化した迫害が収まることはなく、ほとんどのコーディネイターのプラント移住が始まったのがこの頃。

    アグネス「(ちょうど歴史の分水嶺に私達は生まれたことになる。私のパパとママはプラント高官、つまり黄道同盟時代からの古株だから、私はプラント生まれ。シンのやつは地球か…。タイミング逃した組ね。トロくさいわ)」

    そして、C.E58.にシーゲル・クラインとパトリック・ザラがプラント評議会議員に初当選。

  • 68二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 21:53:07

    私はザフトに『入った』側の人間じゃない。創建した側の人間なんだ!
    ラクス・クラインやアスラン・ザラと同じ側。私の家はちょっと家格が下がるが…。
    イザーク先輩やディアッカ先輩、ニコル先輩やラスティ先輩と同じ立場の人間。

    『建国の父母』の娘。同じプラント国民でも庶民のホーク姉妹、移民組のシンとは立場が違う。
    ここで名を上げなきゃ、バカにされるわ。『勝利の平和』の中で勝ち組にならなきゃね!

    アグネス「(悲観論はポイして進まないとね。ウジウジするの、大嫌いだし)」

    評議会に一報を入れ、ライトナ―評議員と通信会談を終えたアスランが部屋から出てくる。敬礼を交わす。最近、息があってほぼ同時にするようになってきたわね。

    アグネス「結果はいかがでしたか?」
    アスラン「ライトナ―評議員の賛同が得られた。ジッダの大使館に向かう!」
    アグネス「了解!」

    良し!ポイントゲットか?まだ判断は付かないが、兎に角良し!

    マハムール基地を出て、旧クウェート領上空を一息に抜けた後、広大なアラビア半島を横断する。砂漠って本当に砂漠ね。我ながらバカみたいな表現だけど。

    本物の砂漠。今の時代にオアシスにラクダ。信じられない。ラクダなんか動物園でしか見たことがない。あれ、観光資源?それとも本当にまだ乗っているの?

    アグネス「(遥か先にリヤドを視認。砂漠のど真ん中に大都市。恐るべきね。宇宙の中で人生を送って来た私が言うのも変だけど)」

    紅海沿岸の高原地帯を通過。北にメディナ、すぐ南にメッカ、恐れ多い。上空からジッダを視認。西暦時代から世界都市として名高い。

    ジッダの空港に到着。アスランはスカンディナビア王国大使館に。私はプラント大使館に。
    大使館で情報を交換したい。あと、いくら宗教が寛容になって来ているとはいえ、私の格好で街中を闊歩するわけにもいかない。トラブルは困る。友好国なのだから。

  • 69二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 07:25:50

    権力欲強めで内心相手を見下しがちだけど名家に生まれたものとしての誇りやそれに見合う視野の広さや知識を持ったここのアグネスは応援したくなるね

  • 70二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 12:57:29

    駐汎ムスリム会議プラント大使館に入るや否や大使館員に質問攻めにされ、大使のもとに案内される。注目されるのは大好きだが、ここまで根掘り葉掘り聞かれても困る。歩きながら質問に必死に答えつつ、執務室に入り大使に面会。

    オーブ、アスハ代表・アークエンジェルの件に関して、アスランが作成した報告書を大使に代理で提出する。元本を議会に持って行ってもらわねばいけないわ。電子では、もう基地通信設備を利用して、本国に送信済だけど。
    プラント大使「任務ご苦労。確かに受け取った。ミネルバ、パイロット隊の祖国への献身、大変心強く思っている」
    アグネス「ありがとうございます」
    一応、こっちの任務は達成ね。

    プラント大使「それで、ガルナハン市内の状況は?」

    やはりそれね。最初は。

    アグネス「静穏を保っていました。地元レジスタンスが一時的に公務と保安を担当してくれています。捕虜の殺傷、拷問、連合側住民への迫害も発生しておりません。少なくとも本官がこちらに出発するまでは…」
    プラント大使「館内は安全だ。機密は保証するから、本当のことを教えてくれ」
    アグネス「いえ。本当に連合軍捕虜や連合側だった住民への迫害は行われていません。私も軍使に同行しました。あの場での約束を現地民は遵守してくれています」

    正直、これは私も驚いている。もし、レジスタンスの制止にも関わらず住民が暴発したら、どうなっていたことか。ミネルバがあんな状況だった以上、こちらの配慮も限界があっただろう。

    事前にしっかり現地勢力と協議し、協定を結んでいたこと、連合軍が比較的あっさり負けてくれて市街地での戦闘が少なかったこと、ピートリー級が急行してザフト歩兵部隊が速やかに市街地を制圧できたこと。いくつもの好条件によるものだろう。

    プラント大使「驚いたな。ザフト軍を信頼していないわけではないが、先の大戦での様々な出来事を考えると…。地元の住民も、よく辛抱してくれたな。軍はともかく地元レジスタンスたちは、必ず暴発すると予想していた」

    アグネス「はい。一回で勝てた、と言うのがやはり大きかったかと」
    プラント大使「そうか。そうだな」

  • 71二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 13:01:40

    ガルナハンのことは良い。後から詳細な報告書がいくらでも届くはずだし…。『生きた情報』に関しては、さっきから職員に散々話したわ。

    アグネス「私達からも伺いたいことが…。本国はアスハ代表・アークエンジェルの件、今どの様に対処するご意向ですか?ザラ特務隊員も確認してくれているとは思いますが、こちらでも」
    プラント大使「ふむ…。正直、短期間で情勢が二転三転していて。本国…、というか外務省としてはオーブ連合首長国本国のセイラン政権を交渉相手とするべきなのか、本格的に亡命政権-というか国家元首のアスハ代表を立てるべきなのか、判断に困っているんだ。ほら、あちらの通りに駐汎ムスリム会議オーブ連合首長国大使館があるだろう」
    アグネス「はい」

    汎ムスリム会議は中立国(嘘)だから、プラントとも条約加盟国とも外交関係を断交していない。おかげで、交戦国間の様々な交渉が領内で可能な訳だが…。

    プラント大使「言うまでもなく、あの大使館の大使はセイラン派だ。実は昨日も接触してきた。困っているんだよ。私達も。アスハ代表達を悪く言いたいわけじゃない。オーブを参戦させまいと努力してくれていることに感謝している。しかし…」

    しかし、正式に亡命政府なり正統政府なり立ち上げてくれないと、こちらも交渉することすらできない。宛先不明のハガキを延々とポストに入れ続けるようなものだわ。

    アグネス「はったりでも虚勢でも、亡命政府樹立を宣言して。出来ればここジッダに簡素でも良いから『大使館』を開いて欲しいのですが。それかスカンディナビア王国大使館に間借りして窓口を設けるとか」
    プラント「そのためにも、今回『ディノ特使』がスカンディナビア王国大使と面会しているわけだな。吉報を待とう。他にグラディス艦長にお伝えした方が良いことはあるかな」

    山ほどある。でも、時間が限られているから絞って。外務省に聞くべきことは。

  • 72二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 13:29:09

    アグネス「プラントの対ユーラシア連邦方針について。特に西側と黒海・コーカサス・カスピ海方面の外交方針をお伺いしたいです。旧ジョージア領、旧アゼルバイジャン領は風雲急を告げています。旧アゼルバイジャン領はガルナハン市と接していますし、ディオキアは多少、距離がありますが、急に救援を求められても…」
    プラント大使「それが、今朝から連絡をしても返事が…。上もパニックだよ、実際。君は旧ジョージアと旧アゼルバイジャンを例に上げたね」
    アグネス「はい」
    プラント大使「まあ、これを見てくれ」

    大使が執務室のモニターのスイッチを入れると、ニュースキャスターが絶叫気味に報道を読み上げている。冷静になりなさい!

    ニュースキャスター「ユーラシア連邦旧アルメニア首都エレバンでは連邦残留派と離脱派双方のデモ隊が大規模衝突。すでに多数の負傷者が発生しています。地方政府は緊急事態宣言を発令し、連邦中央政府に追加の軍派遣を要請しています。続報です。旧アゼルバイジャン領と旧アルメニア領付近で住民間の軋轢が再燃し…」

    大使が番組を切り替える。
    ニュースキャスター「ここ旧ウクライナ領キーウでは今朝から、ウクライナ再建を訴える民衆が独立広場を占拠。参加者の数は数万人規模に…」

    大使が視線を私に向ける。向けられても困るわ。ユーラシア連邦がしっかりしないからでしょ!普段からの統治が上手く言っていたら、戦争が始まってもこうはならないわよ。

    ディオキアがどうこうじゃないわね、既に。いや、大事なことはまず目前の課題を解決すること。

    アグネス「せめて旧アゼルバイジャンの対応だけでも本国に決めてもらわないと…」
    大使「無論だ。何とか今日中に。今夜か明日の朝にもミネルバに連絡がいくはずだ」
    アグネス「お願いします」

    執務室の電話が鳴り、ちょっと私に手を挙げてから大使が受話器を取る。
    プラント大使「私だ。うん…。ああ。お通ししろ」

    私に向き直ると告げる。
    プラント大使「『ディノ特使』が大使館にお見えだ」
    アグネス「分かりました。では、本官は一旦、下がります。続きはディノ特使と…」
    プラント「すまないね。お父上によろしく伝えてくれ」
    アグネス「はい」

  • 73二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 18:20:08

    階段で『ディノ特使』とすれ違う。敬礼しようとすると制される。顔色が良い。まあまあの感触だったのね。

    アスラン「俺は大使とお話を。君は少し休んでいてくれ」
    アグネス「はい」

    一安心、じゃないわね。ユーラシアがえらい騒ぎよ。ミネルバの修理どうしよう…。
    執務室を出て大使館員休憩室で暫し休憩。昼食がまだだったので、栄養ゼリーで手早くパワーをチャージ。何か、感覚がバグっているわ。

    コツ…。
    直立。敬礼。返礼を受け直る。
    プラント大使館駐在武官が休憩室に来たわ。

    駐在武官「楽にしてくれ。本官の執務室に」
    アグネス「はい」

    執務室に入ると席を勧められ、副官がお菓子と紅茶を持ってきてくれた。待遇がいいわね。

    駐在武官「突然、失礼した。マハムール基地から本官も連絡を。あそこの黒服参謀の一人と私は懇意でね。君のことを気にかけていたよ」

    軍使の人ね。さっき会ったばかりだけど、律義ね。モブ顔なのが惜しい。

    駐在武官「ガルナハン市の様子は別ルートからも確認済みだ。大使は前大戦の過ちが少しトラウマ気味で、『羹に懲りてあえ物を吹く』の感があるな。ミネルバの奮闘はこちらでも話題になっているよ」

    それは嬉しいわね。しかし、私に何の用かしら。あんまり駐在武官に提供できるような情報は無いわね。大体の情報は艦長や副長たちと共有しているし。

    アグネス「それで、本官にどのようなご用件でしょうか?」

  • 74二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 18:23:54

    駐在武官「実は…。ディオキアについてだが、君たちに行ってもらうことになりそうだ。本官から先に知らせておこうと。ディノ特使が大使と会見を終えたら、ザラ特務隊員に正式な命令が下りるはずだ」
    アグネス「…」

    意味が良く分からないわ。ミネルバはカスピ海。現在、飛行機能はメンテが必要だから、黒海には逆立ちしてもいけない。よしんば行けたとしても、あのボロボロの船体で戦闘は不可能。カーペンタリアに一度帰って大規模修理しないと。汎ムスリム会議のドッグを借りる手も無きにしも非ずだけど、あれだけの損傷だと…。

    アグネス「ミネルバの修理が終わり次第、ということでしょうか?」
    駐在武官「いや…。スエズ基地、ポート・サイドからディオキア鎮圧のため、連合南アフリカ統一機構軍がディオキア鎮圧のため出動したという報告が来た。空母一隻と護衛艦複数だとのことだ。ディオキア市民の蜂起が予想外で連中、慌てて飛び出したらしい。勿論、ザフトも予想なんてしていない。ジブラルタルとディオキア旧名バトゥミまで直線距離でも4000㎞以上。地中海の制海権はまだ、我らにない」

    アホかな。いや、誰がアホなのか私にも分からない。皆がアホなのか?
    アグネス「…。地政学的に微妙な地域です。精神的な支援に留めるべきでは?」
    駐在武官「地政学的に微妙な地域なのは私も同意だが…。ここで彼らを見捨てると今後プラントに味方しようという地上勢力に悪印象だし、国内世論にも悪影響が出る。すぐにでも救援を出さないと」

    えっ…。アスランと私だけで行くの?ここジッダから旧エジプト領ポート・サイドから出航した空母機動艦隊を追いかけるのか?
    アグネス「他に部隊がいませんものね。カスピ海でミネルバと共にいるインパルス等は…。まさにカスピ海が最前線ですし」
    駐在武官「申し訳ない。詳しくは…」

    執務室の電話が鳴る。今の隙に急いで出されたお菓子を全部食べる!紅茶も飲み干す。落ち着け。マインドフルネス。マインドフルネス。手柄を上げる機会到来よ。同期を出し抜いてやるわ。

    アグネス「(鎮圧部隊、スエズ基地から急発進、迎撃に向かえる部隊なし。ディオキアは見捨てるしかない、というところにフラフラと最新鋭モビルスーツと護衛機が現れたってことね)」

  • 75二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 18:30:13

    連合のディオキア鎮圧部隊がボスポラス・ダーダネルス海峡に入られたら、汎ムスリム会議に迷惑がかかる。

    国際海峡とは言え、アナトリア半島は彼らの領土だわ。というか汎ムスリム会議的に言えば、そもそも連合軍にエーゲ海に入ってもらいたくないわけね。エーゲ海諸島の殆んどは旧ギリシャ領つまりユーラシア連邦領土だけど、旧トルコ領のギョクチェアダ島、ボズジャ島、ジュンダ島、フォチャ諸島は汎ムスリム会議領土だから。

    紅茶を素早く飲み干したところで駐在武官から退出を命じられる。

    駐在武官「本当に君にもミネルバにも無理ばかり言ってすまないと思っている。本官からも必ず働きに報いるよう軍本部に強く上申しておくから、そこは安心して欲しい」
    アグネス「はい!ありがとうございます」

    敬礼を交わして休憩室に。空手形はもう、うんざりだわ。ネビュラ勲章か最高評議会名誉勲章もしくは両方、早く頂戴。記章・メダルはどんどん増えるけどそれだけじゃね…。

    休憩室で座ると直ぐにアスランが来た。敬礼を交わす。

    アスラン「急で悪いが、俺と君で、旧エジプト領ポート・サイドからディオキア鎮圧に緊急出航した連合軍空母機動艦隊へ威力偵察を行うことになった」
    アグネス「威力偵察ですか…」
    アスラン「建前上は。敵はスペングラー級1隻、デモイン級6隻。所属は南アフリカ統一機構軍。スペングラー級にはウィンダム、ダガーの混成部隊が中隊規模。軍本部から先程、フェイスである俺に直接命令が。親プラントの旗を立てたディオキアを見捨てられない、頼める軍事ユニットが近隣に存在しないと。連携して対処しよう」
    アグネス「了解」

    わざわざ入口まで見送りに来てくださった、大使と駐在武官、大使館員たちに2人で敬礼し、タクシーに乗り込む。セイバーとバビを置いてきた空港へ全速力。
    今の状況を鑑みるに、その中隊さえ海に沈めれば、ともあれディオキア解放はなる。陸上のユーラシア連邦軍ははっきり言ってそれどころじゃないわ。

  • 76二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 18:35:37

    アグネス「ディノ特使、結果はいかがでしたか?」

    空港までのタクシーの中で、『ディノ特使』にスカンディナビア王国大使との会談結果を質問する。

    今更、中隊規模の敵に憶すつもりはないが、スペングラー級にザムザザーや盗まれたセカンドステージシリーズが乗っていた場合は別だ。その場合、バビでは手に余る。最悪死ぬなら、今日の成果ぐらいあの世への餞に聞いておきたい。別に死ぬ気はないけど。

    アスラン「スカンディナビア王国大使は、『スカンディナビア王国はその領海内に、カガリ・ユラ・アスハ、オーブ連合首長国代表首長が乗艦したアークエンジェルが滞在していることを認知している』とオーブ連合首長国代表首長直任特使アレックス・ディノに明言してくれた。ディノ特使がその情報をプラント大使に伝えることも内諾済みだ」
    アグネス「やりましたね!」

    良し、成果その一。アークエンジェルの位置特定。スカンディナビア王国の認知も言及させるとはなかなかね。
    向こうの内諾済みなら、これで『アスハ代表・アークエンジェル⇔スカンディナビア王国⇔プラント最高評議会』のラインが成立したわ。よくやった。10000アグネスポイント。

    アスラン「それから、アレックス・ディノ特使の報告書入りの外交封印袋をスカンディナビア王国政府を通してアークエンジェルに届けて頂けることになった。お預けしてきたよ。今後、非公式ではあるがスカンディナビア王国が、プラントとアスハ代表との仲介役をお引き受けする旨、お約束いただいた。今日の便で外交封印袋はスカンディナビアに、スカンディナビア・プラント両大使のオーブ・アークエンジェル問題第一回会談は今夜に行われる」

    素晴らしい。100点ね。するべきことはしたわ。あとはアークエンジェルがボールを投げ返す番よ。これだけ頑張って何の返答も無かったら、流石に怒るわよ。ただ、気になるのは―

    アグネス「懸念はオーブのセイラン政権ですね。公式ルートを利用した以上、いずれ、あちらの大使館も状況を把握するはずです。一応、セイバーとバビは空港内の秘密スペースに隔離してもらっていますが…」
    アスラン「分かっている。カガリも難しい対応を迫られるな。スカンディナビア王家にも悪いことをしたかも知れない」

  • 77二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 18:36:08

    ここまで酷い連戦に次ぐ連戦になるとアグネス位の精神でないと参ってしまいそうだな
    母艦を傷つけられてクルーは全てでないとはいえ死んでるし

  • 78二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 18:45:04

    まあ、スカンディナビア王国に関しては風見鶏外交のつけでしょう。しっかり払ってもらわないと。あのふざけた草案(リンデマン・プラン)の恨み、晴らさでおくべきか!

    空港に到着。急いで着替え5分後には出撃準備完了。
    ジッダを出撃したら、セイバーとバビ、2機編隊でアラビア半島を一気に縦断、地中海に抜ける。ボスポラス・ダーダネルス海峡に向け進んでいる連合ディオキア鎮圧艦隊を背後から強襲し、少なくとも相応の打撃を与える。

    アグネス「(ちょっと、目が回りそうね。しゃっきりしないと!歴史の変動期なんだから、なんだって起こるもの)」
    出撃前にアスランと共に空港通信施設を使い、メイリンに連絡。ガルナハンの艦長、副長に繋いでもらい成果報告と新作戦の参加を伝達。

    副長「えー。ディオキア鎮圧艦隊と戦闘…。こっちは聞いていないよ」
    アグネス「急展開ですから。本国も大使館も相当混乱を」
    艦長「フェイスは最高評議会と国防委員会に直属しているから仕方ないけど…。私にも事前に知らせて欲しかったわ」
    アスラン「なにぶん自分も…。説明してくれた駐在武官殿も四苦八苦されていて…」
    メイリン「アグネスさん大丈夫ですか?モビルスーツ2機で空母機動艦隊と戦闘なんて」
    アグネス「大丈夫も何もやるっきゃないでしょう。壊れたミネルバを置いてシンやレイまで引き抜くわけにもいかないし。ラドル隊はガルナハンだけでなく旧アゼルバイジャンのこともあるし。でも、ありがとう」
    メイリン「はい。気を付けて下さい。二人とも」
    アグネス「ええ」
    アスラン「ああ」

    艦長と副長に敬礼してモニターを切り。機体に乗り込む。

    ジッダ空港管制「セイバー、バビ発進願います。進路クリアー、セイバー発進どうぞ」
    アスラン「アスラン・ザラ、セイバー発進する」
    ジッダ空港管制「続いてバビ、発進どうぞ」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、バビ、出ます」

    紅海沿岸を全速力で北上、シナイ半島を避けガザ沖に突き進む。

  • 79二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 18:49:08

    アグネスタフだなあ
    艦長にこの件が伝わってないくらい目まぐるしく状況が変わっているんだろうね

    現状打破の為にかなりいい働きをしているのに進呈されるポイントがアスラン相手だと相変わらずしょっぱいの笑ってしまう
    オーブの参戦阻止はAA組にとって絶対に守りたい部分だから意地でもボールを投げ返してくるだろうしカガリの覚醒も早まりそう
    トダカさん生存なるか

  • 80二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 18:52:40

    カガリのアグネスイメージ良さそう…色々聞いてるだろうし

  • 81二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 23:05:28

    まさか奮闘してるアグネスも、(この世界の視聴者視点で)一番の懸念事項が自国の議長とは思うまい
    あと、ちょくちょくリンデマン・プランへの恨み節が出てくるけど、第三者視点ではよくやれたなってカナーバさんの賞賛に繋がるあれも、旧ザラ派視点だとそうなるよね
    頑張っているけど視野の限界があるのが良く現れてる感じ

  • 82二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 01:30:52

    発進と直後にバビを高速飛行用のモビルアーマー形態に変形させる。同じく機体をモビルアーマー形態に変形させたセイバーと編隊を組んで飛行。世界が飛んでいく。今日はずっとそんな感じだわ。

    アグネス「(こうしてみると、飛行専用のモビルスーツも必要ね。ハッキリ言ってザクのフライトウィザードが開発されたら、ディンもバビも全廃してかまわないと思っていた。でも、いざ、自分が乗ってみると、物事はそんな単純なものではないわね)」
    とはいえ、ミネルバを母艦として考えると、やはりザクのフライトウィザードは欲しい。飛べる飛べないは、やはり大きな制約になる。ザクファントム+スラッシュウィザードにフライト機能を加えることが出来れば最強じゃないかしら。中距離戦ならビーム突撃銃を使えばいいし。

    アグネス「(いや、海上戦闘だと砲戦になるから、ガナーも捨てがたい。そう考えるとザクそのものにフライト機能を付けて、各ウィザードシステムを利用していくのが良いのか)」

    アラビア半島を縦断していくと遥か先にトンガリ頭のシナイ半島が視認される。スエズ湾の奥には私達の一応の攻略目標、スエズ基地が存在する。当然ながら、カチコミを入れるわけにもいかないので、やや回り込んでパレスチナ地方上空を通過する。

    紀元前から、それこそ創世の時代から数多の悲劇が刻まれた地が眼下に広がっている。おぞましい、そんな印象を抱いてしまう私は不遜であろうか。いくら地政学的な要地とは言え、こんな狭い土地をめぐって、いったいどれほどの屍山が築かれ、血河が流れたことか。ヨルダン川の水流はこんなに衰えているというのに。

    怨念の地を抜けて、レバント海(東地中海)に出る。北にはキプロス島…。ぜんぜん怨念の地、抜けてなかったわ。北キプロスは汎ムスリム会議領土(未承認)、南キプロスはユーラシア連邦領土、主権基地領域アクロティリおよびデケリアは大西洋連邦の租借地。

    アグネス「(北も南も興味ないけど、アクロティリおよびデケリアはプラントが分捕って永久租借地にしたいわね)」

    さて、レバント海に出たは良いものの…。どこに行った、やつ等は!こういう時にAWACSディンが欲しいのに。私も必死で探しているけど、機体性能が高いセイバー、アスランが頼りよ。

  • 83二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 01:34:22

    アグネス「(航跡、どの航跡?)」
    アスラン「発見した!アレクサンドリア沖。スエズ基地から200キロ地点」
    アグネス「確認しました。事前情報通りスペングラー級1隻、デモイン級6隻」

    スペングラー級空母を中に挟みデイモン級が左右に3隻ずつ。

    アレクサンドリア沖、まだ基地から近すぎる、もっと沖合に行くのを待って…。

    アスラン「攻撃準備。全武装起動。安全装置解除」
    アグネス「了解。全武装起動。安全装置解除」

    見敵必殺、仕掛けるのか。今!まだスエズ基地が近いのに。

    アグネス「(いや、これが正しい。偵察機なしで素通りさせたら、もう見つけられないかも知れない。それにセイバー、バビ共に一撃離脱戦法を得意とした、というよりそれに特化した感のある機体。特にバビは接近戦をあまり想定していない。一撃、敵がモビルスーツを発艦する前に何が何でも一撃を入れる。

    セイバーと共に大きく弧を描きながら連合軍艦隊の横腹に回り込む。
    デモイン級の対空兵装が空を睨む。あれ怖いのよね。

    アスラン「攻撃開始」
    アグネス「了解」

    防御力が高い方のセイバーを先にして一気に降下、艦隊の左横腹に突っ込む。
    急接近を敵艦隊は察知するが間に合わない。

    セイバーのアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲が一撃でデモイン級を2隻轟沈させる。敵艦隊は対空戦闘を開始、回避運動を開始し大きくUターンをして、何とかスペングラー級はスーパーフォルティスビーム砲と高エネルギービームライフルを避けるが、避けたビームが右側先頭を進むデイモン級に直撃!さらに1隻轟沈。

  • 84二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 01:38:07

    後続する私、バビの真ん前に必死にウィンダム、ダガーを必死に発艦させようとするスペングラー級!
    22.5mm4銃身機関砲、12連装航空ミサイルランチャー、ビームライフル、航空ガンランチャーを一斉射。発艦直前のモビルスーツ隊もろとも誘爆、轟沈!

    そのまま22.5mm4銃身機関砲で弾幕を張りつつ、アルドール複相ビーム砲を斜め後ろのデイモン級に撃ちこむ、轟沈!

    アグネス「(カウントMS53 MA1 対MSヘリ1 輸送機1 リニアタンク2 対空砲7 空母3
    イージス艦1 駆逐艦1)」

    艦載していたウィンダム、ダガー混成部隊20機はあえなく海の藻屑だ。
    残りデイモン級2隻、上空で宙返りしたセイバーが先導して攻撃、それぞれ別方向に脱出を図るデイモン級1隻にプラズマ収束ビーム砲が直撃、轟沈。残った一隻にバビで22.5mm4銃身機関砲で弾幕を張りながら、ビームライフル、航空ガンランチャー、止めにアルドール複相ビーム砲を撃ちこみ轟沈させる。
    (カウントMS53 MA1 対MSヘリ1 輸送機1 リニアタンク2 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦1)

    勝負はあっけないほど一瞬で着いたわ。イージス艦6隻と空母一隻が地球上から一瞬で消えた。一撃離脱戦法とはそういうものだけど。イージス艦1隻に乗員が300名乗っていたとして6隻で1800名、スペングラー級の定員は知らないが、仮にモビルスーツパイロットを含め1000名ほどとした場合、併せて2800名が…。

    アグネス「(破壊は創造の母とか、戦争が多くの発明を産んだとか言うアホがいるけど、この光景を見せて道徳教育させたいわ。そんなもの戦争が無ければそれで失った人材と富を元手に更にすごいものが出来たに決まっている。ここで沈んだ人間と死ななければ生まれたであろう子孫の中には、大勢を救う活躍をした人だって輩出したはず。感傷じゃなく事実としてね)」

    でも、私は勝ちたい。それだけだ。勝って上に行きたい。特に恨みはないけど、私の勲章の錆になってね。

    うん?何か少し、運が良い者があっぷあっぷ海面に浮いてるわね。沈む前に飛び降りたか爆風で吹き飛ばされたやつ等が漂っている。

  • 85二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 01:41:16

    アグネス「アスラン先輩!」
    アスラン「ああ。『国際救難チャンネル。こちらはザフト軍ミネルバ所属特務隊アスラン・ザラ、同艦所属パイロット、アグネス・ギーベンラート。これより地球連合軍将兵の救助活動を開始する。攻撃を控えられたし。繰り返す…』

    アグネス「(うおぉ。人道記章ゲット。まあ、沈没艦のエアポケットの中の生存者は連合軍に任せましょう)」

    アグネス「手がふさがっていては救助活動が出来ません。ビームライフルと航空ガンランチャーを投棄してよろしいですか?」
    アスラン「投棄を許可する。道中の護衛は俺がする。救助した兵士は汎ムスリム会議の旧パレスチナ領ガザで降ろそう」
    アグネス「了解」

    両手の武器を海中に投棄。波間を漂う兵士を摘み上げては手に乗せてく。大人でも両手で10人は行けるか。ちゃんと指に掴まってなさいよ。

    私に加え、セイバー、アスランも片手で5名、拾い上げる。これが限界ね。後は連合軍が救難チャンネルの放送内容を尊重することを願うばかり。攻撃が始まったら、こいつ等は放り出さざるを得ない。

    アグネス「とか思ってたら、思いっきりスクランブルが始まってる!最悪!」
    アスラン「待て。ギリギリまで。絶対、君に攻撃は命中させない。このままガザに向かうぞ」

    アレクサンドリア沖からガザに向けて、ウィンダム、ダガー共に並走されながら海上を飛行する。両手いっぱいに救助した兵士を乗せているから、速度など出せるわけもない。
    のろのろとさっきまで散々『怨念の地』とか思っていたパレスチナに進む。

    しくじったかなこれ。

  • 86二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 01:43:56

    上空に信号弾!

    私達を追い回していたウィンダム隊の隊長機からオープン回線。

    スエズ基地ウィンダム隊隊長「こちら連合軍スエズ基地防衛隊。貴官の勇戦に敬意を表する。そして、仲間を救助してくれたことに最大の感謝を。9時間の休戦を提案する。中立地帯に彼らを下ろしたのち速やかに退去されたし」
    アスラン「提案を受け入れる。汎ムスリム会議ガザ地方ラファ市に彼らを下ろす。以降のことは国同士で決めてくれ」
    ウィンダム隊隊長「了解。ありがとう」

    モニターの向こうで敬礼している彼にアスランと私、二人で敬礼して返す。危ない危ない。間抜けの一人になるか戦争美談になるか、本当に紙一重ね。

    2時間ほど飛行したところで、同じく国際救難チャンネルを聞きつけて緊急出航した汎ムスリム会議海上警備隊の高速船と合流。私とアスランで拾ってきた15名を船に引き渡す。

    帰り際に海上警備船から通信。救助した兵士の士官がモニター画面に映る。

    連合軍士官「どうして助けてくれた?」
    アグネス「(へぇ。本当にこういう時、『どうして助けてくれた?』って聞くのね。映画の中だけかと思ってたわ)」

    もしかしたら、これまでも敵兵救助後に聞かれたかも知れないけど、忙し過ぎて忘れたわ。

    アスラン「いや…。その」

    こういう時はビシッと決めてよ、映画みたいに。だいたいこういう時は『人として当たり前のことをしたまで』とか格好つけていうものでしょう。仕方ないわね。

    出しゃばりにならないようにアスランにアイコンタクト。了解が取れたので私が代わりに答える。

    アグネス「私達の中には2000年の歴史が血肉になって流れています。『海の中では誰もが等しく神の手を握る権利を持つ』とも。海より過酷な宇宙空間で産まれた私達がそれを厭うでしょうか」

  • 87二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 01:48:02

    格好つけつつ、さり気なく祖国の道徳的優位をアピール。まあ、これくらいは良いでしょう。

    連合士官「ありがとう。道中の無事を祈る。戦友よ」

    向こうも恰好を付けて敬礼してくるので、こちらもアスランと返す。こういう時、ヒーローごっこも任務の内なのだと自覚するわね。いや、どちらかというと今日のはシーマンシップかな。

    帽子を振る汎ムスリム会議海上警備隊と手を振る連合兵士に見送られ、今度こそ私とアスランは、あれっ、どこに行くの?ミネルバに帰れば良いのよね。ちょっと混乱しながら飛行を続行。アスランも気になって、そわそわし出すが、途中、通信を受信。

    アスラン「向かう先はディオキアだ。市庁舎に地元の旗とプラントの旗を両方立てて記念写真を撮りたいから、全速で向かえ、と命令が来た」

    なんか、何処かで見たことのあるしかめっ面のアスランがコックピットモニターに映る。
    う~ん。この顔どっかで見たことあるような。取り合えず今は良いか。

    アグネス「先輩。スマイルスマイル。怖い顔になっています。しっかりしてください。記念撮影に行くんですよ。道中、また戦闘になるかも知れませんけど」
    アスラン「すまない。ニコニコ笑うことも戦争の内なんだな。最近、ちょっと良く分からないな」

    私が聞きたいわよ。まあ、きっとそうなんでしょうね。取り合えず、『ディオキア解放の大手柄』を上げたのは確かなのだから、しっかりメディアに取り上げてもらわなくっちゃね。

  • 88二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 09:42:31

    ガザ沖で汎ムスリム会議海上警備隊に連合兵を引き渡した後、ディオキア(旧名バトゥミ)に向け、改めて高速飛行形態に変形し、セイバー、アスランと一気に突き進む。

    バビは武装を投棄している。極力戦闘にならないよう、汎ムスリム会議領空を通過する。旧レバノン、旧シリア。嘆きの大地はなおも続く。いくつもの歴史ある都市が目の前を後ろに飛んでいく。

    アグネス「(旧トルコ領に到着)」

    このままアナトリア半島の付け根を飛び越える。ギリギリまで汎ムスリム会議領土からははみ出す気はない。手柄は上げたいが流石に時間が押している。

    アスラン「もうすぐバトゥミ。一瞬だけ黒海を通過する。厳重注意」
    アグネス「了解」

    旧トルコ領ホバ市東方から一度、黒海に。そこから一気にディオキアに突入。私達に気が付いた市民達が歓呼の声を上げ、手や地元旗、プラント国旗を振り回すのを見る。

    アグネス「(これはなかなか気分が良いわね)」

    無事、市庁舎の駐車場に着陸。現地住民との合流を果たす。長かったわ。時間的にはパレスチナ沖からは直ぐだったけど。

  • 89二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 19:56:54

    ヒーローごっこも任務の内

    戦争だから相手を害するしかないけれど助けられるなら助けるのも大切だね
    勲章の為でも死線を潜りながらそういう行動をとれることは立派だよ

  • 90二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 20:58:28

    バビから、降りつつ周囲に集まってくる民衆の輪に加わる。大英雄扱いは最高ね。頼むから後で手のひら返すんじゃないわよ!
    上空から確認した限り、ディオキア旧名バトゥミの町はほぼ無傷。冗談向きで砲弾の穴ぼこが一つも無かったわ。『黒海のラスベガス』が港湾施設、国際空港、市街地、工業地区
    まるごと親プラント都市として寝返って来るとは。

    アグネス「(要らない子扱いだけど、もうここまで来たら毒を喰らわば皿までよ。プラントの永久租借地にしてやる!というか、どこから租借するなっだろう?ユーラシア連邦?旧ジョージアもとい新生ジョージア?めんどくさいから、もうカーペンタリアやジブラルタルみたいに直轄地みたいな扱いでも良いかしら)」

    聞くところによると、旧ジョージア全土で民衆蜂起がおこったため、汎ムスリム会議国境に近いディオキアは無血開城みたいなものだったらしいわ。
    午前中にディオキアを民衆に引き渡す形で逃走したユーラシア連邦軍はポティ、クタイシ、ゴリ、トビリシのラインを死守するつもりだったそうだけど。そこに援軍に来るはずだった連合軍空母機動艦隊、モビルスーツ部隊殲滅の報告が来て、さらにパニックが広がっているらしい。

    ディオキア市臨時市長「ようこそ。アスラン・ザラさん。アグネス・ギーベンラートさん。アレクサンドリア沖海戦勝利おめでとうございます。これで我らの命もつながりました」

    臨時市長とアスラン、私の順で握手。さっきからひっきりなしにカメラのシャッターが切られている。最高にハイになるわね。自分が世界の中心にいるみたいで、とても気持ちいいわ。

    市庁舎の一室でパイロットスーツから制服に着替える。こういう事態を想定していなかったから、記章のメダルは持ってきていない。何時も付けている略綬だけ。まあ、仕方ない。なんか『いかにも準備してました』と言うのも陰謀を疑われそうで嫌だしね。

    着替えを済ませて、同じく着替えたアスランと合流。ディオキア臨時市長、臨時副市長、臨時議会議長と会見に行く。

  • 91二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 22:02:47

    その後、夕暮れの中、美しい市街地を車で進み、神の母のジョージア正教会大聖堂で下車。

    下車したので取り合えず、大聖堂に向け顔を向け、右手を左胸に当てて敬意を表する。この地が流血の巷にならなかったことを神様も善しとなさるだろう。

    アグネス「(いや、神の御心を推し量ることは不敬かな。まあ、信徒じゃないけど)」

    臨時市長が何やら、長々とした演説を開始。プラントとザフト軍への謝辞は良いとして、祖国の歴史がどうたらこうたら。神の栄光がなんたらかんたら。我らの未来がどうだこうだ…。

    アグネス「(長い!歴史的瞬間でテンション上がるのは分かるけど、こっちは任務中。これからカスピ海まで帰らないといけない。だから、最初の演説は手短に、私達が帰ったら第二演説を、と。車の中で取り決めたでしょう!)」

    臨時副市長が見かねて臨時市長に耳打ちする。ちょっと残念がりながら、臨時市長が今度はアスランにマイクを渡す。マイクを渡す!?

    アスラン「…」
    なんか言いなさいよ。それが仕事でしょ。まさか本当に写真撮影だけだと思っていたわけじゃないわよね。

    アグネス「(うっかりしていたわ。車の中でもっと打合せして居たら…。正直私も頭が回らなくなってきているのよね。一日にいろいろ起こりすぎて...)」

    アスラン「この名誉ある場に私達を立ち会わせて頂けたこと。本当に嬉しく思います。苦難の歴史を歩まれたこの町と市民の皆様の未来に幸あらんことを。黒海とボスポラス・ダーダネルス海峡が願わくば争いの舞台ではなく、和解の海になりますように…」

    アスランに必死のジェスチャー。これだけは挨拶に入れて!必死にザフト軍制服を引っ張って示す。

    アスラン「…。我々ザフトはこの地の安全を…、永遠に守護いたします。この地の復興と発展にプラントは助力を惜しむことはないでしょう。どうか市民の皆様も…」

  • 92二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 22:07:41

    自助努力、自助努力。頼むわ、このジェスチャー、伝わって!
    当然、援助漬けにするんだけど、それでもこの都市と住民の力強さがあってこそだわ。持ちつ持たれつ植民地支配もとい対等なパートナー関係を構築しなければ。

    アスラン「プラントがディオキアに何をしてくれるかを問うのではなく、ディオキアがプラントとどんな未来を描くことが出来るかを問うてください。そして、どのような未来を平和を望む全世界の人民と築いていけるのか、不断に考え実現していきましょう」

    パチパチパチパチパチ!パチパチパチパチ!パチパチパチパチパチ!!

    取り合えず、雰囲気で場は大いに盛り上がる。『永久に守護≒永久軍隊駐留・永久租借』良し。臨時市長と臨時副市長と臨時議会議長の前で言ってやったわ。特に異論はなさそう。本国の許可?後でフェイスのアスランと艦長が評議会を説得するでしょう。とういうか軍本部はその目算で私達をわざわざ派遣したんでしょうし。

    アグネス「(ダメなら、『あれはリップサービスでした』で済ませるまでだわ)」

    いよいよ締め、大きなプラント旗を私が、ジャンボサイズの地元旗を臨時議会議長殿が天に掲げる。カメラのシャッターが一斉に切られる。

    やっぱり気持ちが良いわね。こういうの。旗を掲げる乙女、最強ね、この構図。
    アグネス「(とは言え、もし旧ジョージアが再独立したら、プラントが安全保障条約も考えなきゃいけなくなるのか…。コーカサスは鬼門なのよね。テンション上がって永久租借がどうのこうのと考えたけど、デメリットの方が多いかも)」

    頭が回らない。考えが雲散霧散する。そこから先のことは本当に本国最高評議会で決めて。ジョージアは誇り高い国なんだから、ちゃんとつき合えば良き味方になってくれるはず。紛争地帯の爆弾付きで…、はぁ~。

    アグネス「(別にそれに関しては、誰が悪いと言う訳でもないんだけど...。頭が痛いわね)」

  • 93二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 23:53:58

    市庁舎に戻り、パイロットスーツに着替えてバビの元に行くと空から、グゥルに乗ったシグー2機とジン1機が飛来。マハムール基地においてあったやつね…。また資源ごみを持ってきて。案山子の役にしかたたないわよ。

    アグネス「(いや、正にその案山子が必要なのね。取り合えずの抑えとして)」
    後続部隊もマハムール基地等から向かっているはず、それとマハムール基地の業務がパンク寸前だから、増援がスマトラ島基地やカーペンタリアから間違いなく出発している。

    アグネス「(頑張って。こんな資源ゴミを押し付けられて可哀想に…。いや、私も昨日、資源ゴミとバカにしていたグーンに乗っていたわ)」

    案外、使い勝手が良いところも有るのよね。旧型機。特にジンの信頼性と汎用性はなかなかのものだわ。でも、流石に厳しいから、現役のジンは全部アサルトシュラウド追加した方が良いわよ。

    ディオキア市民の皆に見送られ、旧型機小隊のパイロット達とコックピットモニターで挨拶を交わし、ようやくガルナハンへの帰路につく。

    旧アルメニア領を避けて遠回りしつつ、何とかガルナハンに到着。

    皆が歓迎してくれるなか、ピートリー級に着艦し、バビから下りてヘルメットを脱ぐ。
    首が捥げたような錯覚に襲われる。

    アグネス「(しっかりしなさい。もうちょっとだから。私は選ばれし人間。プラントと人類の未来を担うべくして生まれたエリート…)」

    隣でセイバーから下りたアスランと目が合う。敬礼を交わす。なんであの人平気そうなの?自分で言うのもなんだけど、はっきり言って今日の私達、強行軍の極みよ。

    よろつく私を見かねたピートリー級の女性兵が駆け寄り肩を貸してくれる。みっともない。モブ緑女性兵の助けなくして、歩けない。一気に気が抜けて疲れが溢れ出す。

  • 94二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 23:56:17

    そのまま、モブ緑女性兵の背中におんぶされ、ピートリー級艦内の一室に…。陸上戦艦、あんまり馴染みがないのよね。もう感覚も良く分からなくなる中、モブ緑女性兵と駆けつけた軍医の『ゆっくりお休みください』の言葉を合図にしたように泥の様な眠りの中に引っ張り込まれる。

    アグネス「今何時!」
    ピートリー級従軍看護師「うわっ!」

    ここは…。ピートリー級の艦内か…。腕に点滴。情けない…。あの後、意識を失っていたのか。

    アグネス「最悪。あれぐらいの日程で。まだまだ修行が足りないわね。我ながら」

    もっと鍛えて、強行軍の極みを連続してこなせるようにならないと。
    微妙に怯えたようなまなざしを向ける従軍看護師に点滴を抜いてもらい時刻を確認。朝6時。最悪。あの後寝込んでこんな時間…。どうしよう…。

    アグネス「(軟弱な人間と思われたかも…。仕事を回してもらえなくなっちゃう)」
    悔しくて涙が溢れて来る。もう私終わりかも…。

    ピートリー級軍医「ギーベンラートさん。その…。精神安定薬を」
    アグネス「要りません!!」

    藪医者を一喝して、医務室を退出しようとするが。一応、出る直前に非礼を詫び、治療のお礼を述べる。

    アグネス「繰り返しになりますが、本当にありがとうございます。昨日私を背負ってくださった女性兵にもお礼を言いたいのですが」

    ピートリー級従軍看護師「今、こちらにミネルバのメイリンさんと」
    ピートリー級軍医「そもそも軍人はスーパーマンではありません。人間です。そのことを自分でも忘れないように。男女差別と受け取らないで欲しいのですが、女性の身体はそもそも…」

  • 95二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 23:57:42

    アスランは強靭だな誰も止められないわ

  • 96二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 23:58:22

    メイリンもこっちに来ているの?ああ、ミネルバがあんなんだから、業務でね。そして軍医殿は、まだ何か言っている。ハイ、ワカリマシタ、イゴキヲツケマス。自分の体の周期が男性軍人より、ままならないものであることぐらい分かっているわよ!昨日のはそれが原因じゃないでしょう!!

    メイリン「アグネスさん!」
    うぉ。メイリン。久しぶり、でもないわね。昨日の朝に会ってたわ。感覚がおかしくなってくるわ。メイリンの後ろに昨日のモブ緑女性兵。姿勢を正して私から敬礼。メイリンとモブ緑女性兵が急いで返礼してくる。メイリンは別につられないで良いわよ。

    右手を差し出して握手を求める。

    アグネス「昨日はどうもありがとうございました」
    モブ緑女性兵「いえ、本当に任務ご苦労さまです。アレクサンドリア沖海戦勝利、ディオキア解放、おめでとうございます!」
    アグネス「ありがとうございます」

    そう言えば、そうだったわね。それはそれとして、アスランの下に出頭して、無様を晒したことを謝罪しなければ。

    メイリンと一緒にピートリー級から出て、ミネルバクルー、パイロットの仮設キャンプと化した湖畔に。流石ザフト工兵隊。既に立派なものが建って居る。カーペンタリアの基礎を48時間で建設した力、衰えてないわね。

    アグネス「タイミング遅れだけど、おはよう。メイリン」
    メイリン「おはようございます。アグネスさん」
    アグネス「ミネルバはどう?」
    メイリン「艦内の補修を含め、この場で応急的にできることは全部。何とかドッグに…」
    アグネス「何とかドッグに、って言ったって…」

    やはり旧イラン領ラシェト、バンダレ・アンザリー港に行くのがベストかな。さっさと飛行機能のメンテを終えたい。大規模ドッグが有るかはちょっと分からないけど。

  • 97二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 00:01:28

    一部の兵士が朝のランニングをしている。ミネルバの修理は今も続いている。

    朝の準備体操をしているアスランを発見。メイリンと一緒にアスランと敬礼を交わす。

    アグネス「おはようございます。アスラン先輩。昨日はご迷惑をかけ誠に申し訳ありません」
    敬礼を交わすや開口一番謝罪砲を放つ。言う分にはタダよ。どう?

    アスラン「いや、本当に…。いや、君はよくやってくれた。俺だけではできなかった」
    何か褒められる。

    アスラン「それより体は?」
    アグネス「平気です。ただの過労なので」
    アスラン「ただの過労って…。いや、すまない。配慮不足だった」
    アグネス「昨日の場合、選択肢がありませんでした。謝るのは私の方です」

    一応、アスランの表情的に特に査定に響きそうじゃないわね。何よりだわ。
    そうこうしている内にランニングから帰って来たシンとレイが近寄って来る。

    シン「おはようございます。アスランさん。おはよう、アグネス、メイリン」
    アグネス「おはよう。シン、レイ」
    メイリン「おはよう。シン、レイ」
    レイ「おはよう。アグネス、メイリン。アグネス、昨日はご苦労だったな」

    一応、レイでもそのぐらいは言えるのね。何か偉そうというか、微妙に不満げだけどなんだって良い。

    アグネス「どういたしまして。デイルとショーンは今、上空監視ね」
    アスラン「ああ。皆おはよう。それと怪我したパイロット二人も元気だ。ミネルバの負傷兵と一緒に必死にリハビリしているよ」

    仮設病院を指さす。結構けっこう。ささっと治してくれないと困るわ。パイロットもミネルバクルーも。傷つき病んだ人はそれが仕事よ。

  • 98二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 00:02:38

    ミネルバを出てから会見まで1日か
    そりゃあ強行軍の極みだわ、本当にお疲れ様

    アスランの頑健さは規格外なので参考にならないね

  • 99二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 09:37:48

    そのまま何とはなしにその場の面子に、甲板組の中でけがをしていない人達、ガルナハン戦でミネルバに乗っていたバクゥのパイロット達も加えて『ガルナハン・パイロット組』とメイリンで一緒に朝食を食べる。甲板組以外のガズウート組は旧アゼルバイジャン領を睨んで国境警備。ジン組はガルナハン市街地で防衛任務中だ。
    食事中に昨日一日のアスランと私の仕事について皆に話、共有を図る。細かい報告はアスランが艦長に伝えてくれたそうだけど、皆まで下りてきているとは限らない。

    シン「そうか…。連絡取れそうなのか。」
    アグネス「セーフよ。セーフ。状況が二転三転するなかで、いつまでもこのまま問うわけにもいかないからね」

    シンはホッとしているが、レイはなんか微妙な顔をしている。何か気にくわないことでもあるの?

    アグネス「レイ、何か言いたいことあるの?」
    レイ「別にない。首尾よく事が進んで何よりだ」

    ならもっと…。いや、これ以上絡んでも喧嘩になるな…。朝から勘弁だわ。

    側のモニターから流れるニュースは相変わらず絶叫気味だ。

    ニュースキャスター「昨日のアレクサンドリア沖海戦直後、ファウンデーション王国軍を名乗る武装組織が地域住民と共にユーラシア連邦旧カザフスタン領のアティラウ、アクタウにて蜂起。

    両都市に駐留していたユーラシア連邦軍現地民部隊も抵抗することなくその傘下に。既にアティラウ市とアクタウ市はファウンデーション王国軍を名乗る武装組織の実効支配下にあります。

    ファウンデーション王国軍を名乗る武装組織は旧王家の子孫アウラ・マハ・ハイバル氏を国家元首・女帝とし、アティラウ市をイシュタリアと改名した上で首都と宣言。王国再興を世界各国に通達。ファウンデーション王国軍を名乗る武装組織は各地のユーラシア連邦軍と交戦しながら、旧カザフスタン領アティラウ州、マンギスタウ州に勢力を拡大しつつあります」

  • 100二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 09:40:09

    ニュースキャスター「ユーラシア連邦旧ロシアチェチェン共和国ではファウンデーション王国を名乗る勢力の独立宣言に触発された民衆がチェチェン共和国独立を掲げて蜂起。現地に駐留していたユーラシア連邦軍の一部兵士がデモ隊に発砲したことがきっかけでさらに衝突は激化、昨夜から旧ロシア領チェチェン共和国全土が騒乱状態にあります」

    ニュースキャスター「昨夜に行われたアレクサンドリア沖海戦の連合軍敗北、ディオキア解放、ファウンデーション王国独立宣言とファウンデーション王国軍を名乗る武装勢力の現地における優勢に触発され、ユーラシア連邦旧ロシア領において、カルムイク地方議会がエリスタにてカルムイク共和国の独立を宣言しました。現地住民はこの宣言に賛同するデモを決行、ユーラシア連邦と一触即発の…」

    ニュースキャスター「旧ロシア領チェチェン共和国。カルムイク共和国の情勢悪化を受け、先程から、旧アゼルバイジャン領駐留ユーラシア連邦軍が総撤退を開始しています。撤退中のユーラシア連邦軍に現地住民からの投石が相次ぎ、現地は騒然とした…」

    アグネス「…」
    メイリン「アグネスさん、大丈夫ですか?
    レイ「無理もない。昨晩から立て続けに。俺達も驚いている」
    アグネス「じゃあ、もっと驚いた顔しなさいよ!私は今朝起きて、なにこれ!頭が追いつかないわよ。だいたいファウンデーション王国、ジョチ・ウルスの後裔国なのに何で女帝なの?チンギス統原理はどうしたのよ!!」
    シン「気になるのそこかよ!?」
    アグネス「気になること多すぎで、ツッコめるところからツッコむのよ」

  • 101二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 09:57:32

    未来で関わる国名が出てきたけど、まぁこの辺で名前が出てきてもおかしくないよねぇ…

  • 102二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 12:04:20

    アウラ「出陣するのじゃ」

  • 103二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 20:25:34

    アスラン「チンギス統原理については、さっきニュースに映っていた宰相のオルフェ・ラム・タオがチンギス・ハンの男系子孫なら逸脱しないのではないか。明言されては無かったがニュアンスとしては彼が皇太子格のようだ」
    アグネス「『年下の母上』ですね。たいていの文化圏で、そう言った家族・親族関係は発生しうるものですが…。絶対後で、もめそう…」

    ニュースの番組を切り替えて、もう一度そのタオ閣下の顔を拝む。ふむ。悪くはない。家族関係の爆弾さえなければ。

    アグネス「ポジション的には宰相というよりは摂政、『持統天皇と聖徳太子』みたいな関係ですね。う~む。聖徳太子の子孫の末路を考えると…。亡国前の王位継承権順位とか事情があったのでしょうけど、多少の無理は押し通して最初からタオ閣下を皇帝なりハーンに推戴した方が良かったでしょう」
    レイ「それは俺達がどうこう言う問題ではない」

    確かにね。そもそも―

    アグネス「(見えている地雷ね。ファウンデーション王国自体が。ただの地雷じゃない。核地雷、出来ればかかわりあいたくないわね)」

    でも、カスピ海で面しちゃっているし。私達ミネルバが立ち去ったとしても、プラント保護下のガルナハンと親プラント国の汎ムスリム会議は嫌でも『ファウンデーション王国』の隣国にならざるを得ない。そうなると、要はプラントとあの国は隣国同然な訳で...。

    どうするんだろう。ユーラシア連邦が崩壊したら困るけど、敵の敵は味方でもあるし。最高評議会の方針を早く知りたい。

    アグネス「(受け身になったら負けよ。どうするべきかはまず、自分の意見を固めて、それから外界と向き合わないと。この局面、下手したら破滅よ。私達はカスピ海の中に閉じ込められているわけだし)」

    受け身になるな。勝ちに行け。さてどうする。

  • 104二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 20:33:34

    また別のニュースが流れる。何々。

    ニュースキャスター「昨日のアレクサンドリア沖海戦における南アフリカ統一機構軍大敗を受け、南アフリカ統一機構内で最大の域内GDPを持つ旧南アフリカ共和国ではナイロビを中心とした統一機構への反発が噴出。南アフリカ共和国分離独立派と反戦団体が大規模集会を旧首都であるプレトリア、ケープタウン、ブルームフォンテーンで決行しています。
    同様の集会はヨハネスブルグ市でも開催され、また、旧南アフリカ、オルドリン地区では同地区をプラント直轄の経済特区とするべく請願運動が展開され、急速に支持を…」

    バクゥパイロット「南アフリカ!?正気か。オルドリンってどこだ?」

    もっともな意見に別のバクゥパイロットが応じる。

    バクゥパイロット「カナジ市と川を挟んだ隣らしい。でも、カナジ市ってどこだ?」

    う~ん。地名変わりすぎ。ニュース画面は切り替わってしまったし…。

    アグネス「ニュースを見た感じだと、敢えて言えば旧南アフリカ共和国東ケープ州バッファローシティー都市圏イースト・ロンドンでしょうか。南アフリカで大規模河川が中心部を流れる都市というと、まず思い浮かぶのはあそこです。バッファロー川の河川交通が有名です」

    シンが困り顔で首を傾げる。レイはなんか良く分からない。

    シン「それでそのオルドリン地区だかイースト・ロンドンだか、分からないところに俺達が行くんですか?」

    そんなこと聞かれても、フェイスのアスランも多分このニュースで初めて情報を知った側よ。

    アスラン「俺達自身が、かは分からないが…。ユニウスセブン落下後、各地でコーディネイターへの迫害が行われていると聞くし。多分その地区にも」

    だからって、南アフリカ?まあ、仮にカナジ・オルドリンがイースト・ロンドンなら海に面しているし空港もあるからましと言えばましだけど。

  • 105二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 01:20:58

    朝食を終え、気分転換に仮設キャンプを出て、皆とそぞろ歩き。と言ってもメイリンはピートリー級に戻り、バクゥパイロットは別件で駆けだして行ったわ。

    カスピ海の湖畔がにわかに慌ただしい空気に包まれつつある。休憩タイムの残り時間は短い。

    アグネス「それで直近の予定はどうなっていますか?」
    アスラン「マハムール基地からラドル司令官が直卒するレセップス級デズモンド、ピートリー級バグリィーが間も無く到着する。次の作戦の布告が近い」
    アグネス「では…。旧アゼルバイジャンに?目標はバクー?」
    アスラン「恐らくは」

    なるほどね。バクーはかつてのアゼルバイジャン共和国の首都であり、ソ連カスピ海小艦隊、アゼルバイジャン海軍の母港だった。ユーラシア連邦軍カスピ海小艦隊の母港の一つでもある。

    そうした歴史的背景から、造船設備もかなり充実している。もし、ミネルバが寄港可能ならラシェトより望ましい。そして、今、旧アゼルバイジャンからユーラシア連邦軍は一時的に逃げ出している。

    アグネス「旧アゼルバイジャン・カスピ海制圧作戦を敢行する、ということですね」
    アスラン「それは俺の口からは言えない」

    Yesってことね。もうすぐ命令が発せられる、と。

    シン「…」
    レイ「それが現地の人々にとっても最善です」

    ふむ。ならやるっきゃないわね。もうすぐガルナハンともお別れか。

    アグネス「もう時間がないなら、最後にコニールに会っていきませんか。お世話になりましたし…」
    アスラン「そうだな」
    シン「うん…」
    レイ「ああ」

  • 106二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 01:24:38

    彼女、案外、この地で将来政治家、市長ぐらいになっているかも。『おらが町のジャンヌ・ダルク』なわけだし。しっかり好感度、稼げる限りは稼いどかないとね。


    コニールの知り合い、レジスタンス達に案内してもらうと、意外な場所に連れていかれる。戦死した連合軍兵士の墓地。所謂、バトルフィールド・クロス(戦場の簡易墓標。銃剣を付けた小銃を地面に突き刺してヘルメットを銃床に被せる)。そこにコニールが佇んでいる。

    アグネス「おはよう。ミス・コニール」
    コニール「おはよう。アグネスさん、アスランさん、シンさん、レイさん。ごめん、敵の墓参りなんて。まだ三日も立ってないのに」

    まあ、文字通り墓土も乾いていないわね。でも、別にミネルバに気兼ねすることはないんじゃない?私とアスランは昨日留守だったから、両軍の合同葬に参加できなかったけど。

    シン「その人知り合いか。連合軍の…」

    大地に突き刺さった銃剣に被さるヘルメットがこちらにちょとお辞儀している。
    コニール「知り合いじゃない。昨日、看取ったんだ。この人…。ベッドでお母さんの名前を呼んでいて。名前が私のお母さんと同じだったから、他人と思えなくて…」
    キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒あるあるね。名前被りが多いのよね。
    アグネス「(私も『アグネス』だから、まあ、同じなんだけどね。特にご先祖の信仰に拘る気はないけれど。三教の神が同じなら猶更)」

    アグネス「この方の名は」
    コニール「アリーって…」

    ありがちな名前ね。

  • 107二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 01:28:16

    コニール「ベッドで手を握って、包帯だらけだったけど、この人の肌の色、私と同じだった。目の色も。片目はダメだったけど…。同じ言葉を話していたこと、もっと早く知っていたら。せっかくアゼルバイジャンから連合は出て行ったのに」

    うわぁ。紛争地あるあるな話題を、一気に雪崩を打ったように半泣きになりながら訴えだした。ちょと、こういうのに弱いやつを二人、こっちは連れてるのよ。止めてよね。

    アスランはぐっとこらえるが、シンはもう目がショボショボだわ。
    レイ、君に任せた。
    レイ「…」
    何か言え。最悪…。涙ながらに戦争の残酷さを訴える少女に軍人が返す言葉もない、というのは、誠に遺憾だわ。適当にこの場を乗り切らなければ。

    アグネス「コニール。私は実はあなたと3歳しか違わない。17歳なの、私は。だから人生の先輩として貴女にかけてあげられる言葉は何もない」

    コニールは涙目でこっちを睨んで来る。ちょっと私は味方でしょう。別に私がガルナハンとユーラシア連邦に国境線を引いた訳でも、ユニウスセブンを叩き落として戦争を始めたわけでもない。ただ、その役職にいたからここに来て戦っただけ。貴女達の側でね。

    アグネス「(でも、シンにはいい薬ね。ただ、その立場にあっただけで散々、アスハ代表をを責め立ててたんだから。でも、私が責められるのは我慢ならない)」

    アグネス「その上で、あくまで伝えられるのは一般論だけ。この人と貴女と私が同じ祖先をもち、ここにここに集ったのだということ。そして生けるものは死者の尊厳を守るべきであって…」

    取り合えず、片膝をつく。膝小僧が痛いわね。スカート丈、再考しなければ。
    そのまま手を合わせ、瞼を閉じる。ここは一般論で乗り切るわ。

    アグネス「ご先祖様。どうか我が同胞アリーの御霊を御受入下さい。我が戦友、コニールにとり彼は更に血の近い『いとこ』の一人でした」

    瞼を閉じて両手を合わせ30秒数えて立ち上がる。どう!

  • 108二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 01:30:50

    コニールが毒気を抜かれたような顔をして私を眺めてくる。何よ。
    コニール「ご先祖…っていうのは、もしかしてアダムとイブ?」

    まあ、平たく言えばそうね。

    アリーに皆で祈りをささげた後、5人でゆっくり歩く。歩きながらコニールに一般論の話を続ける。

    アグネス「諸説は有るけど、私達は…―ここで言う私達はコーディネイター、ナチュラル、諸人種、民族問わず、現生人類はという意味ね―遠祖を辿るとごくごく少数の共通祖先に行きつく、とされている」
    コニール「アダムとイブだろう」
    アグネス「『Y染色体アダム』と『ミトコンドリア・イブ』ね。その他にも『父』と『母』はいたとする学説もある。トバ・カタストロフで人類は2000人まで減ったとも、そこまでではなかったともされる。どちらでも良いわ。結論としては、『今生きている人間全部ご先祖様達は同じです』、これは多分変わることは無いから」

    何とはなしに私達の足は、今度は戦死したザフト軍人墓地に向かう。遺体はもうマハムール基地に移送済みだから、象徴的な墓地ね。同じく銃剣が地面を突き刺している。
    戦死した38名のクルーと同じだけの銃剣、同じだけのヘルメット。今の時代に銃剣とは、剣と槍の穂先が鍬や鋤に打ち直される日はまだ遠いようね。

    祈りはまだ捧げない。コニールが納得するまで待つ。

    コニール「ご先祖が同じでも敵は敵だろう」
    アグネス「そうね。でもあなたは怒っていたわよ。『同じ肌と目の色をして、同じ言葉をしゃべる人だったのにあんたたちのせいで』って」
    コニール「そうは言ってない!」

    半分ぐらい言ってたでしょう。流石に地球連合に向ける怒りの方が割合としては大きいと思うけど。『余所者が同胞を殺し合わせている』、とかそんな感情をプラントに持たれても困るわ。もし仮にその気持ちに一理あったとしてもね。

  • 109二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 01:33:49

    じ~~と。コニールの目を見る。このガキ、コックピットを吐瀉物塗れにしたことをこっちは水に流してやったのに。どういう了見なの。

    見つめ合っている内に何か変な顔になって来る。お互いが…。違う。顔が変なのはこいつだわ。私が釣られただけ。

    互いの顔が緩んできたところで、コニールに目線でシンを示す。
    コニール「?」
    アグネス「こいつの母国はオーブよ。元ね」
    シン「…」
    コニール「!ごめん。私…」
    シン「いや…。そのごめん」

    良し。お涙頂戴にはお涙頂戴をぶつける。分かるってばよ、して、シン。あなた日系ならこういうの得意でしょ。固有結界(?)の中で対話して和解するやつ。適当にやっておいて。

    シンにコニールを預けて、アスランと私とレイはほんの少しだけ距離を空ける。

    アグネス「アスラン先輩、彼方に行かれては…」
    『戦争被害者の会』メンバーに行って、分かるってばよ、して来たら?

    アスラン「俺は…。行けない」
    アグネス「そうですか…」

    その辺りの折り合いは本人しか付けられない。適当に頼むわね。

    ただならぬ雰囲気を感じたのかヴィーノやヨウラン達が遠くから見守っている。そう言えばそろそろ、時間が迫っているわね。巻きに行くか。

  • 110二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 01:40:00

    もう一回瞳を閉じ、右手を左胸に当てる。さて、ここは『ラクス様』のマネといくか。

    アグネス「Amazing grace! how sweet the sound That saved a wretch like me!
    I once was lost but now I am found Was blind, but now I see」

    レイ頼む。空気を、読め!私も歌うから。

    レイ(アグネス)「Twas grace that taught my heart to fear. And grace my fears relieved How precious did that grace appear The hour I first believed」

    チラッ。チラッ。分かるってばよ、しているシンとコニールを薄眼で見る。良かった。ちゃんと和解っぽい雰囲気になっているわね。というか私は喧嘩なんてしてないけど。

    でも、コニールが今日ぶつけて来た感情は、絶対ガルナハンの人達が内心で抱いている思いでもあり、ともあれザフトはそれを汲み取ろうと努力はした、というアリバイが欲しい。

    アスラン(レイ、アグネス、シン)「Through many dangers, toils and snares.
    I have already come Tis grace has brought me safe thus far,And grace will lead me home.]

    びっくりした!シンが向こうで空気を読んで唱和してくれているのは良いけど、アスランがやたら気持ちを込めて歌い出すから。隣で大声で。汎ムスリム会議の人近くにいるけど大丈夫?小声じゃなくて…。三教の神は同じだから、私は気にしないけど…。まあ、西暦時代じゃないから大丈夫か。コニールも肌や髪を隠していないしね。

    アグネス「(多くの危険、苦しみと誘惑を乗り越えてここまで来たこと。その方の恵みがここまで自分を無事に導いてくれたこと。その人の恵みが自分のやがて帰るべき家への導きになること。めっちゃ言いたそうね。この人。隣で本当にうるさいわ)」

  • 111二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 01:46:20

    「Amazing grace! how sweet the sound That saved a wretch like me! I once was lost but now I am found Was blind, but now I see」
    最後にもう一節リピートして終わりにする。流石に教義の違いがあるから、コニールは唱和しないが、一緒に祈ってくれる。この地に眠るミネルバクルーとアリーと大勢の連合兵と私達がこの地に来るまでに斃れたガルナハンの民のため。

    さて、チラっと目線でアスランに合図。年長者がビシッと決めて。と思ったら目線で私に言えと促される。柄ではないと。仕方が無いので、3人でシンとコニールに距離を詰めて私が短く弔辞(?)を述べる。何と無く皆あてに。

    アグネス「いつの日か人類の最後の一人が天に召され。その身を雪が覆いつくし、太陽さえも光を失う日が来るかもしれない」
    コニール、シン、アスラン、レイの順に目線を交わしていく。

    アグネス「でも、それは今日じゃない。私達もいずれ祖先の列に加わり、一万年先に届くべく感謝の歌を唱する時がくる。でも、それは今じゃない」

    ほいっ。分かるってばよ、したシンにバトンタッチ。コニールに何か言ってあげたら?

    シン「…。今は…。戦う時だ。平和のために。コニールたちは日々の生活のために…」
    アグネス「(ずっこけそうだわ…。『勝利の平和と日々の営みのために』でしょう)」

    まあ、この場で大事なのは細かい言い回しじゃない。コニール、どう。これでダメなら私はもうお手上げだわ。

    コニール「ありがとう。本当に…。神様」

    コニールの顔の筋肉がようやくリラックスしたのを確認。セーフね。やっぱり、いざとなったらご先祖、神様、傷のなめ合い、これで何とか乗り切れるわ。

    何か、遠巻きに見ているミネルバとレジスタンスとその他大勢がほっこりしている。効果抜群なのは良いけど、あんた達も、もっと紛争地域の子供のメンタルケアに気を配ったら!

    アグネス「もうすぐ私達も新しい任務。この地を離れるかも知れない。今日の仕事も始まる。最後に一緒にお茶でも飲む?超速度で」
    コニール「うん」
    アスラン「ああ」
    シン「うん」
    レイ「いいだろう」

    はぁー。朝からどっと疲れたわ。ともあれ、皆で仮設スペースに腰を降ろして温いお茶を一気飲み。良し。儀式修了!

  • 112二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 09:33:36

    保守保守

  • 113二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 09:40:22

    コニールたちと別れ、整備兵と共にバビのメンテナンスをしている中、マハムール基地から次々と部隊が到着。

    レセップス級デズモンド、ピートリー級バグリィー、連結合体6輪装甲車7両、電源車 / 弾薬運搬トレーラー / 給水車7両、指揮車2台。

    勿論、モビルスーツ山盛り。歩兵すし詰め。

    ガルナハンに既に展開中のピートリー級とミネルバに合流。

    ヴィーノ「これは相当気合入っているね」
    ヨウラン「マハムール基地。冗談抜きで空だろう。これ。一応、ボズゴロフ級と艦載機が留守番しているのかな?」

    艦を降りて集合場所に集まって来たヴィーノとヨウランの話が聞こえる。静かに!
    一部の当番を除き、ガルナハン戦に参加したミネルバ、ピートリー級パイロット隊が整列している。上空監視は新しく来たモビルスーツ隊がしてくれている。負傷兵も来れる人は皆集合。作戦発表と訓示かな。

    アグネス「(この一戦をもって旧アゼルバイジャンを占領するとともに叶うなら、旧ジョージアまで打通するつもりかな。その場合、旧アルメニア領はユーラシア連邦の飛び地になるか…。まだ、態度が固まってないみたいだし)」

    レセップス級から下りてきたラドル司令官が正面、朝礼台に。朝礼台使ったことあんまりないわね。艦長、アスランの副長組は他の黒服組と私達とは別に並んでいる。

    ラドル司令官「軍人らしく簡潔明瞭に移行。これから、ガルナハン戦に参加した戦友諸君諸姉の表彰式を行う。高位の勲章については、どうか、もうしばらく…」

    アグネス「(しばらく待てね。一体いつまで待たせるのよ)」

    ラドル司令官「…。諸君の奮戦力闘に応えるべく、最速で授与できる記章を準備してきた。
    ガルナハン・ローエングリンゲート攻略の重要性は諸君も知っての通りだ。また、連合の圧政からの助けを求めるガルナハン市を素早く、余計な犠牲を増やすことなく解放できたことは、素晴らしいことだ。投降した連合兵、連合は住民への加害行為を防止したこと、激戦後も敵味方区別することなく、救助救命活動をザフト軍が続けたことは、いかにそれが当然のこととはいえ、特筆に値する」

  • 114二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 12:23:05

    アグネスの方がシンより勲章多いだろうし議長とレイの計画がぐちゃくちゃで困ってそう

  • 115二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 19:04:37

    めっちゃ大変だったわ。マハムール基地到着から、まだ、そんなに経って居ないのにかなりの時間が過ぎたような気がする。

    アグネス「(所謂『激動の時代』なんてそんなものね。このペースについて行けない者は敗者になるだけ。私は勝者になりたい!)」

    ラドル司令官「この作戦に参加したミネルバクルー、ピートリー級クルー、パイロット各位には、それぞれ『ガルナハン・ローエングリンゲート攻略戦従軍記章』『ガルナハン解放記念記章』『人道記章』を授与する」

    黒服参謀「記章授与。代表、アーサー・トライン副長。前に」
    アーサー「はい」

    副長がラドル司令官の前へ。
    ピートリー級艦長「総員、気を付け」

    姿勢を正す。

    うぉ。艦長さん?そう言えばこの人はフェイスじゃないから、こっちか。艦長さんがいるのに副長が代表なのは同じ黒服で、かつ、ミネルバの奮闘に敬意を表して、と言ったところかな。

    ラドル司令官が直接、副長の左胸に3つのメダルを加える。正確に言うと2つと飾版一枚ね。人道記章は複数回、受賞済みだわ。

    ラドル司令官「おめでとう」
    アーサー「はい。ありがとうございます」
    パチパチパチパチ!

    列席した黒服、艦長、アスラン、ガルナハン市民、レジスタンス幹部の拍手を受け、こじんまりとした授与式はつつがなく進む。あとは、艦内で―今回は仮設スペースかな―小規模な式をやり、個別にメダルと略綬と証明書を貰えば良し。

  • 116二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 19:07:51

    黒服参謀「クルー、パイロット各位は各艦長よりメダル、略綬、証明書を授与されたし。諸君、改めておめでとう」
    アグネス、全クルー、全パイロット「はい。ありがとうございます」

    さて、次は訓示…

    ラドル司令官「続いて、『アレクサンドリア沖海戦従軍記章』、その後の救助活動に対する『人道記章』、『ディオキア解放記念記章』を授与する」

    黒服参謀「代表アグネス・ギーベンラート、前へ」
    うん?私?ああ、アスランはフェイスだからラドル司令官が授与するのは『?』なのね。
    アグネス「はい!」

    いそいそと前に良く。昨日に今日とは。大急ぎで本国軍本部に連絡を上げ、メダルと略綬と証明書を作成した各担当者の苦労がしのばれるわね。そうまでして急いだのは『ディオキアの戦果』を早めに確定することを軍本部が望んでいるのか…。

    ラドル司令官が私の左胸にメダルをまた、加える。

    うむ。これで貰った記章(メダル)は『アーモリーワン事変従軍記章』、『ユニウスセブン破砕作戦従軍記章』、『アスハ代表護送任務達成記章』、『フォックストロット・ノベンバー並びに同日発生した戦闘に対する参戦記章』、『オペレーション・スピア・オブ・トワイライト参戦記章』、『戦闘時における敵味方救助を表して人道記章(1回目メダル)、『インド洋攻防戦従軍記章』、『敵前上陸作戦参加記章』、強制労働収容所開放の功績『人道行動記章』、敵兵救助の『人道記章(2回目飾版1枚)』
    それとカーペンタリア司令官から共同受賞した感状1枚

    加えて今日、メダル4つと飾版2枚…。計メダル13枚と飾版3枚が胸に。内ポケットには感状の写真。流石にちょっと重量があるわね。この重さの分だけ出世の足取りが軽くなるのよ!

    ラドル司令官「おめでとう」
    アグネス「はい。ありがとうございます」
    パチパチパチパチ!

    最高に気分が良いわ。レイにちょっとだけ差をつけてやった。勿論、この記章はアスランと共同授与だけどね。

  • 117二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 19:11:18

    ラドル司令官「君たちも察しての通り、ユーラシアの情勢は風雲急を告げている。祖国のため、諸国民の安全と世界の平和のため、各人が己の責務を全うするように。諸君諸姉の更なる奮起を期待する」

    ピートリー級艦長「総員、敬礼」
    敬礼
    ピートリー級艦長「直れ」
    直る

    授与式が終わり、小規模授与式が終わり、早速、略綬を追加。うぉりやぁ!どうだ。人道記章の略綬は星3つだわ。

    メイリン「おめでとうございます、アグネスさん」
    アグネス「貴女もおめでとう、メイリン。共同受賞ね」

    メイリンは略綬を早速追加して胸を張る私を感心したような、ちょっと面白がるような目で見てくる。あんたも略綬付ければいいのに。ザフトでは何か少数派なのよね。勿体ない。

    ちなみにアスランの顔は渋い。なんでも、キラ・ヤマトを撃墜してネビュラ勲章をもらったのがトラウマだそうだ。こっちは知った事じゃないわよ。

    サイダーを空けてささやかに祝賀、テントの下で。任務開始と共に少なくともクルーはぼろ舟と化したミネルバに乗り込む。危険はどこも変わらないが…。無事バクーまで行けるか?

    メイリン「コンディションイエロー発令!コンディションイエロー発令!パイロットはブリーフィングルーム(仮)に集合せよ」

    いつの間にかCIC(仮)に行っていたメイリンの声がスピーカーから聞こえてくる。テントで行われていた昼食会兼祝賀会もお開きだわ)」

    その場にいた『ガルナハン・パイロット組』と一緒に仮設ブリーフィングルームにダッシュ。

  • 118二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 00:29:10

    仮設ブリーフィングルームで『ガルナハン組』と合流。
    私、アスラン、シン、レイ、ショーン、デイル(元々のミネルバ組)+甲板組(5名中2名負傷につき欠席)+その他の攻略メンバー(ガズウート組6名、バクゥ組3名、ジン組2名)

    計20名。通信設備で他のパイロット隊とも連絡可能。艦長、副長はラドル司令官と一緒にデズモンドか。

    ブリーフィングルームのモニターに通信。ブリーフィング開始。

    モニターに艦長を真ん中に左右にラドル司令官と黒服参謀が映し出される。やはり、白服フェイスは強いのね。黒服参謀がカスピ海周辺地図を表示しながら状況説明。

    黒服参謀「まず、現状把握だ。カスピ海・コーカサスの情勢は混とんを極めている。だが、我々の第一目標はカスピ海のとりわけ南カスピ海の制海権と制空権の掌握だ」

    ガルナハンから時計回りに黒服参謀が状況を説明していく。

    黒服参謀「先ず、ガルナハンと国境を接する。旧アゼルバイジャン領は民衆、反戦派と独立派が決起。先日の敗戦もあり、連合軍は総撤退をしている。お隣の旧ジョージアではディオキア旧名バトゥミがザフトに解放され、汎ムスリム会議領土アナトリア半島を経由してザフト軍が続々と進駐。ユーラシア連邦は旧首都トビリシを手放すかどうかの瀬戸際だ。そして―」

    黒竦参謀は旧アゼルバイジャン北方カスピ海沿い、旧ロシア連邦タゲスタン共和国を拡大。さらに拡大、州都マハチカラのすぐ南、カスピスクを拡大。

    黒服参謀「ここカスピスクがユーラシア連邦軍カスピ海小艦隊の母港。ここに先日の戦いで出撃しなかったため、温存…というか取り残されている部隊がいる。独立ヘリ中隊15機~20機、コルベット艦3隻、砲艦4隻」

    アグネス「(まず、その死にぞこないを潰さないとミネルバはバクーに入港できないわね。旧タゲスタン共和国カスピスクはすぐ北だから)」

  • 119二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 00:33:27

    黒服参謀「旧ロシア領タゲスタン共和国の西隣、ユーラシア連邦旧ロシア領チェチェン共和国は独立派と残留派、独立を阻止しようとするユーラシア連邦軍で内戦状態。一応戦局は、五分五分。更にカスピ海沿いに北に進むとエリスタを旧首都とした旧ロシア領カルムイク共和国。ここは地元議会が独立を宣言して、民衆が決起したところでユーラシア連邦は一旦諦め撤退した。その北東、ヴォルガ川沿いのアストラハンは辛うじてユーラシア連邦の安定支配地域」

    何かユーラシア連邦。ほぼカスピ海喪失してない?タゲスタンもアストラハンも回廊地帯になっているじゃない。何しろアストラハンの東側は。

    黒服参謀「アストラハンの東側、ユーラシア連邦旧カザフスタン領アティラウ州、その南のマンギスタウ州は驚くべきことに…。全域をファウンデーション王国が抑えつつある。驚嘆するばかりだ。よっぽど下準備をしていて、今の状況を好機とばかりに挙兵したのだろう」

    それにしたって急速だわ。一晩でほぼ2州を制圧しているじゃない。旧王家の威光、恐るべしだわ。

    黒服参謀「最後にユーラシア連邦旧トルクメニスタン領。ここはギリギリ静穏を保っている。同地方唯一の港湾都市トルクメンバシがあり、小規模な哨戒艇艦隊が存在」

    黒服参謀の説明が終わり、ラドル司令官の横に座っていた艦長が口を開く。

    タリア「ミネルバのバクー寄港と旧アゼルバイジャン領制圧のためにはカスピ海の制海権獲得が必要。そこで本国最高評議会は小規模な、あくまで領土拡大を目的としない、最小限の自衛目的で衛星軌道上より、セントヘレンズを旗艦とするボズゴロフ級3隻を専用モジュールを用いて降下配備する。その3隻と艦載モビルスーツがザフト軍カスピ海小艦隊の先駆けとなるわ」

    モニターの向こうの艦長に向け挙手。
    タリア「許可します。アグネス、何?」

    起立して質問、というか確認。

    アグネス「セントへレンズはカーペンタリア配属予定と聞いていましたが、なぜ今、衛星軌道に?」
    タリア「オペレーション・スピア・オブ・トワイライトのカーペンタリア方面が、予想以上の成功であったため、温存していたそうだわ。私も昨晩知ったけど…」

    少し思うところありそうな顔で艦長が答える。まあ、今、生きたなら良し。
    アグネス「ありがとうございます」

  • 120二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 00:40:52

    ラドル司令官「さてここから忙しくなるぞ。分刻みだ。まず、制空権は航空戦能力があるミネルバモビルスーツ隊。セイバー、インパルス、バビ2機、ディン2機が頼りだ。追加部隊もスマトラ島基地から向かっているが、一刻を争う。説明を」

    黒服参謀「はい。まず、カスピ海・コーカサス制圧作戦の前段階として、ミネルバモビルスーツ隊にはガルナハンからカスピ海を横断。比較的弱体な旧トルキスタン領トルコメンバシの哨戒艇艦隊に止めを刺します。その直後にマハムール基地陸上部隊は旧アゼルバイジャン領進出を開始。現地で蜂起した民衆軍とユーラシア連邦軍を離脱した現地民部隊と合流しながら、アゼルバイジャン全土を制圧していきます」

    ふむ。トルコメンバシの引きこもり部隊を掃除して、南カスピ海を掌握しろと。
    アグネス「(弱体な哨戒艇艦隊より、ユーラシア連邦空軍が鬱陶しいかもね。モビルスーツがトルキスタンに大量配備されているとは思わないけど、スピアヘッドやスカイグラスパー、対MS戦闘ヘリコプターは配備されているでしょうし)」

    黒服参謀「ミネルバ飛行モビルスーツ隊諸君には旧トルキスタン領を叩いた後、即時に旧アゼルバイジャン領に急行。ロストフ・ナ・ドヌーから発進する敵航空部隊を迎撃。成功次第、
    セントヘレンズを旗艦とするボズゴロフ級3隻の衛星軌道からの降下シークエンスを開始する」

    東に西にと忙しいわね。というかもっと空戦部隊を…。急だったから用意できなかったのね。

    アグネス「(でも、6機でそこまでやるのはきついわね。正直)」
    無論、他の部隊もアナトリアから発進するだろう。現に旧ジョージア領、特にディオキアの制空権を確保してくれている。この作戦にも当然参加だ。旧アゼルバイジャン領も支援してくれるだろう。

    アグネス「(それでも…、ね)」

    黒服参謀「ボズゴロフ級3隻は南カスピ海に着水と同時にモビルスーツ隊を発艦。ミネルバ飛行隊と合流し、カスピスクのカスピ海小艦隊残存戦力を殲滅。それが終わり次第、ミネルバはバクーに向け出港を開始する」

  • 121二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 00:43:17

    黒服参謀が発言を終えると艦長が補足する。

    タリア「元よりこの作戦はミネルバパイロット隊に大きな負担をかけることになる。しかし、これをやり切らなければ、ミネルバは飛行どころか外洋航行能力を回復させることもおぼつかない。奮起を期待します」
    ラドル司令官「本作戦では陸上モビルスーツ隊発艦後、レセップス級デズモンドはカスピ海に進出。水上航行能力を利用して、ミネルバ隊を支援。グラディス艦長にはオブザーバーとしてご乗艦していただき、隊の指揮を。ミネルバの運行はトライン副長にお願いする」

    アーサー「了解しました」
    モニターに映らない位置にいた副長の声。慌ててモニターが操作され、副長の顔を映す。良かった。ちゃんと椅子は用意してくれていたわね。
    タリア「他に質問は?ないなら、作戦開始!」

    アグネス・一同「了解」

    レセップス級いる?ああ、電源と弾薬補充ね…。護衛はグーン2機+αかな。使えるものは何でも使うの精神ね。

    周りを見渡す。シンはちょっと怖気づいているわね。作戦の規模が大きくて、ちょっと複雑だから仕方ないか、レイは無表情で良く分からん。いや、何か不満げね。

    アグネス「(不満なのは私も同じよ。何でカスピ海・コーカサス制圧作戦なんてことになるのよ。月面はどうした?アークエンジェルは?なし崩しにわけ分からない方向に行って…。でも、取り合えずバクーは抑えないと話が始まらないじゃない!)」

    まあ、淡々とやるでしょう。こいつと編隊を組むことになる。仕事上ではそこそこ頼りになるのよね。

    アグネス「(アスランは余裕そう。流石ね。ショーンとデイルは…。ちょっとフリーズ気味ね。撃ち落とされでもしたら、困るから後で声掛けしないと。一機でも欠けたら、この作戦は破綻しかねない)」

    モニターのスイッチが切られた。それと同時に作戦の火蓋も、また切られる。

  • 122二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 09:10:36

    仮設ブリーフィングルームから出るとガルナハン組パイロット全員、皆で一人一人握手をする。グーン三人衆のうち負傷していない二人は、トルクメンバシの残存部隊の殲滅が完了し次第グーンに搭乗、デズモンドと共にカスピ海に乗り込む。バクゥ組3機とガズウート組の半分3機は本隊と共に旧アゼルバイジャンへ。残りはガズウート3機とジン2機はユーラシア連邦の逆上陸に備え、ピートリー級とガルナハン・仮設病院を守る。

    だから、この面子がそろうのは最後かもしれない。

    アグネス「ご武運を」
    互いに差し出した手を無礼にならない程度にしっかり握る。無骨に握り返される!躾がなっとらんわ。
    バクゥパイロット「ご武運を。アグネスさん」

    心に僅かな痛みの様なものが走る。寂寥の念か…。無理に否定しても仕方ない。この人達に私は仲間意識を持っていたわ。多分これからも。

    アグネス「ありがとうございます。皆さんのおかげでミネルバも私も助かりました」
    ちょっと、リップサービスしちゃおう。言う分にはタダよ。

    最後の一人と握手を交わすと、もはや第二の母艦となった感のあるピートリー級に向かう。
    艦内、モビルスーツデッキにてショーンとデイルに声をかける。

    アグネス「ショーン、デイル、貴方達大丈夫?何かさっきから顔がやばいわよ?」
    ショーン「え…。そんなことは…」
    デイル「お…、おう」

    ダメじゃない。

  • 123二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 09:14:23

    アグネス「この作戦は、ううん、この戦争においてミネルバパイロット隊は一人でも欠けたらダメ。道徳的な観点は元より、実務としても。一人欠けたらみんな死ぬ。皆で帰るか皆で死ぬか。二つに一つ。死体になっても仲間を見捨てない。これまでそうしてきたよね」

    タダだ、言う分には。言っちゃえ言っちゃえ。

    ショーン「はい!」
    デイル「おう!」

    アグネス「パニックにならないで、目前の任務に集中を。それをこなすのに頭をフル回転。常に考え続けて。ただし、固まるのも棒立ちになるのもダメ。棒立ちになったアホから撃ち落とされて行ったの、見て来たでしょ。私達が墜とす側だったけど」

    ショーン「はい」
    デイル「おう」

    返事が簡潔でよろしい!

    アグネス「我らに神の加護を。ザフトのために」
    ショーン「ザフトのために」
    デイル「ザフトのために」

    二人の目を見て、大丈夫と確信が持てた瞬間に敬礼を交わして、バビに向かう、っとシンに呼び止められる。

    シン「アグネス…。その旧トルクメニスタン領攻撃。どう思う?何か実感がないというか…。別に旧トルクメニスタンの人達に恨みは無いし…」

    あ~あ。コニールとの会話のこと引きずっちゃてるっわね。

  • 124二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 09:17:31

    アグネス「戦うのはトルクメニスタン国民ではなく連合軍。特にユーラシア連邦軍。勿論、ユーラシア連邦軍の中には領土の一部たる旧トルクメニスタンの住民出身者がいるはずだけど、それはこれまでもそうだったでしょ?」
    シン「それはそうだけど、議長はこの戦争は積極的自衛権の行使と言っていたのに、こんなことになって」

    ああ、まだそれ、言ってるんだったわね。もう、この期に及んで何言ってるんだか。

    アグネス「確かにユーラシア連邦解体の流れが速すぎるし、私もそんなこと望んでなかったけど。もう、仕方がないわ。ミネルバが来ても来なくても、ユーラシア西側の内戦・独立運動は始まっていたし、プラントは野心ありません(嘘)で進駐を進めていた。ファウンデーション王国は勝手に独立戦争を始めたでしょう。タイミングが多少前倒しになったかも知れない、というだけ」

    レイがチラチラこちらを見ているわね。鬱陶しい。

    シン「…」
    アグネス「私達の働き次第で流血は抑えられる。『手術は大胆にサクッと』しないと。討つべきものはさっさと討っておいた方が良い。戦争の長期化は住民を苦しませるだけ。違う?」

    シンの顔、『理解は出来ても納得が出来ない』って書いてあるわね。いい加減にして。

    アグネス「あんた、しゃっきりしないと私かレイかデイルかショーンが死ぬわよ。アスランはなんか大丈夫そうだけど、それでも良いの?!」
    シン「ダメだ!」
    アグネス「ならやることは一つじゃない。違う?」

    奮戦せよ。互いに。私は手柄のために。こいつは…、まあ好きにすればいいんじゃない?どの道『戦友』を守り合わないといけないことは間違いないんだし。

    シン「うん。そうだな。ありがとう」
    アグネス「どういたしまして」
    レイに視線を送ると不承不承ながら頷く。まあ、こいつはなんも言わんでいいわ。

  • 125二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 13:03:42

    保守

  • 126二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 22:12:17

    アスランはもうセイバーに乗り込んでいるか…。どんな気持ちなんだろう。あの人、大義にこだわるタイプだから少し心配だけど、全員は手が回らない。たまには自分で頼むわ。

    私もバビに搭乗。発進許可を待つ。

    アグネス「(あれだけ嫌がっていたのに、結局、ユーラシア連邦袋叩きにつき合うことになるとは。ユーラシア連邦に嫌がらせをしまくることまでは、本国…、というかディランダル議長の方針なんだろうけど、ここまでことが大きくなるとはね)」

    メイリン「インパルス、セイバー、バビ2機、ディン2機、発進願います」

    メイリン、今日はピートリー級でオペレーターか…。忙しないわね。お互いに。
    ピートリー級には、当然、インパルスのフライヤー専用カタパルトがない。インパルスは最初からドッキング済みでシルエットはフォースに固定。

    メイリン「進路クリアー。インパルス発進、どうぞ」
    シン「シン・アスカ、インパルス行きます!」

    メイリン「続いてセイバー発進、どうぞ」
    アスラン「アスラン・ザラ、セイバー発進する!」

    メイリン「バビ、アグネス・ギーベンラート機、バビ、レイ・ザ・バレル機発進どうぞ」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、バビ、出ます!」
    レイ「レイ・ザ・バレル、バビ、発進する!」

    ピートリー級から発進。レイと揃ってバビを高速飛行形態に変形させる。先発したインパルス、セイバーを視認。セイバーは同じく高速飛行形態に変形している。

    ディン2機、ショーンとディルの後発を確認。

  • 127二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 22:14:04

    コックピット回線をオープンに。デズモンドに乗り込んでいる艦長から通信。

    タリア「全員、発進したわね。作戦地との距離を考えるとここからの細かい指示は難しい。アスランの命令に従いつつ柔軟に連携せよ」
    アグネス・全員「了解」
    タリア「民間インフラの破壊は厳禁。民間人への損害は最少となるよう努力!」
    アグネス・全員「了解」

    アスランから通信。
    アスラン「高速飛行形態のセイバー、バビとインパルス、ディンでは速度の差が大きい。俺とレイとアグネスで小隊を組み先行。シンとショーン、デイルでもう一つ小隊を組み後続せよ」
    シン「隊を分けて大丈夫ですか?」
    アスラン「戦力の分散も憂慮するべきだが、今回の作戦はスピードが要だ。先行組が威力偵察も兼ねる。後続はその情報を生かせ」
    シン「了解」

    シンにしてはナイスな質問ね。アスランの回答も理にかなっている。今回の作戦はなし崩しで始まったから、シュミレーターの事前トレーニングもしていない。

    アグネス「了解!」
    レイ「了解」

    元気に返事をして不安を吹き飛ばす。一旦、インパルス、ディンを置いて、3機で先行を開始。

    ガルナハンからカスピ海をやや斜めに横断し、トルクメンバシ湾入り口まで392㎞ほどを吹き飛んでいく。私達の飛行中に民間人への退避勧告が繰り返しなされている。あまり、時間が無いから、これはアリバイ作りかな。

    眼下には大小の民間船舶に漁船が行きかう。日常に戦争が入って来るとはこのことね。

  • 128二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 22:24:32

    アグネス「(そもそも、カスピ海はカーペンタリアからもジブラルタルからも距離がある。お隣は一応中立国の汎ムスリム会議。ここの住民にとってプラントと連合の戦争は遠い世界の話だったはず。ユニウスセブンが落ちてからでさえも)」

    バカな議長が謎采配でガルナハンにちょっかいかけ出すまでは。この地がそれまで天国だったわけではない。でも、均衡を崩す最後の一滴を入れたのは…。

    アグネス「(考えても仕方ないわね。取り合えず、誤射には注意しましょう)」
    アグネス「後続へ。民間船舶多数。要注意!」

    シン「え…。民間船?なんで?」
    アスラン「避難が間に合っている訳無いだろう!十分な時間なんてなかった」

    戦争はボードゲームではない。地図の上、無人の荒野に軍事ユニットだけが並んで向かい合っている訳じゃないんだ。チェスの駒が進むマスは誰かの家であり、田畑であり、漁場であり…、人間の頭上でさえあるかも知れない。

    当たり前のことなのに、これまで宇宙空間と海上戦が多かったせいでちょっと麻痺していたわね。私達。猛省だわ。

    アグネス「(まあ、戦乱の時代には付き物でしょう。いちいち気にしても仕方ない。でも戦犯にはなりたくない。う~む。失敗だったかな。今回の作戦…)」

    コーカサス・カスピ海があっと言う間に総崩れになったせいで、軍民、ユーラシア・プラント双方、全く収拾がついていない。6機だけの作戦でかえって良かったかもしれない。私は英雄になりたいのであって戦犯になりたいわけではない。巻き添えをあまり出すのは困る。この分じゃ、都市住民の避難なんて全くできていないだろう。

    トルクメンバシ湾まであと60キロ。

    アスラン「敵スクランブルを確認。スカイグラスパー21機、スピアヘッド12機、対MS戦闘ヘリ25機を視認」
    アグネス「了解」
    レイ「了解」

  • 129二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 22:40:35

    アグネス「(数が結構多いわね。スカイグラスパーは傑作機。ランチャーパックか)」

    セイバーを先頭に小隊を組んでスカイグラスパーとスピアヘッドを襲撃!

    まず、セイバーがアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲をロングレンジで発射。
    躱せなかったスカイグラスパーとスピアヘッドが炎上しながら海面に落下していく。

    アグネス「(今のでスカイグラスパー3機、スピアヘッド2機落ちたわね)」

    スカイグラスパーの高インパルス砲『アグニ』から、18本の光の槍が襲ってくる。
    こちらもセイバー、バビで、高エネルギービームライフル、スーパーフォルティスビーム砲、ビームライフルを連射、回避運動を取りながら一度離脱する。

    高速機動・回転、旋回する機体の中で自分が3連続で放ったビームが3機、スカイグラスパー1機とスピアヘッド2機を撃墜したのを視認。

    アグネス「(カウントMS53 MA1 対MSヘリ1 輸送機1 リニアタンク2 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦1 戦闘機3)」

    更に14機、炎上しながら海面に木の葉のように落ちていくのを確認。セイバーとレイのバビが墜としたものだわ。セイバー、アスランすごいわ!

    アグネス「(それにしてもアグニ、恐いわね。自分が突っ込んでみて痛感したわ。クルーゼ隊の凄さを実感するわね。クルーゼS級戦犯だけど)」

    態勢を立て直して、生き残った11機と戦意喪失気味な対MS戦闘ヘリ25機に再攻撃をかける。

    今度はセイバーとバビ2機で、まず、プラズマ収束ビーム砲、次に『アグニ』を回避しながらの高エネルギービームライフル、スーパーフォルティスビーム砲、ビームライフルの連射。

    さらにピクウス76mm近接防御機関砲、22.5mm4銃身機関砲で弾幕を張り、ミサイルを迎撃しながら、12連装航空ミサイルランチャー、航空ガンランチャー掃射。

  • 130二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 23:16:28

    最後にセイバーのプラズマ収束ビーム砲を撃ち放ってトルクメンバシ湾上空から、連合航空隊を一掃する。

    アグネス「(私が10機、レイも10機。残りはアスランが墜としたわね。機体性能のせいには出来ない凄さがやはりこの人にはあるわ)」

    戦士としてなら満点ね。

    (カウントMS53 MA1 対MSヘリ6 輸送機1 リニアタンク2 対空砲7 空母3 イージス艦2 駆逐艦1 戦闘機8)

    アスラン「敵戦闘機体、攻撃ヘリコプター隊を全機撃破。これより港湾内に停泊している敵艦艇に攻撃を開始する」

    港湾突入。浜辺から始まったパニックが町全体に広がる様が上空からでも見て取れる。悪いわね。

    軍港内には対モビルスーツミサイル搭載トラック『ブルドック』が8両。

    赤いビームがひとなぎして大爆発が起こると次の瞬間には8両のブルドックは細長いクレーターの中で人員ごと焼け焦げた残骸になる。アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲、本当、味方だと心強いわ。

    アグネス「(戦場の女神って感じね)」
    アグネス「哨戒艇10、小型軍用艇14、フレーザ級1、攻撃開始します」

    言うが早いかアルドール複相ビーム砲発射。狙いはこの中で一番大きいフレーザ級。轟音と閃光とともに軍港の一画が焼けこげ砕けた駆逐艦で埋まる。当時に発射したビームライフルとガンランチャーで軍用艇2隻も吹き飛ぶ。

    アスラン「了解」
    レイ「了解」

    フレーザ級撃破とほぼ同時に2人の声が聞こえる。
    (カウントMS53 MA1 対MSヘリ6 輸送機1 リニアタンク2 対空砲7 空母3 イージス艦2 駆逐艦2 戦闘機8 軍用艇2)

  • 131二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 23:23:14

    そのまま、レイも複相ビーム砲とビームライフル、ガンランチャーを発射。アスランもセイバーもそれに加わり、港湾内の軍用艇が3分も立たないうちに全て着底する。着底って言うほど優しくないかな…。消し炭みたいになってるし。

    アスラン「『グラディス艦長、トルクメンバシ湾内の連合戦力殲滅を確認しました』シン、お前達の現在地は?」
    シン「今ちょうど湾の入口です。終わったんですか?」

    ちょっと不貞腐れたようなシンの顔がコックピットモニターに映る。戦えなかったらそれはそれで不満なのね。違うか、力を発揮できなかったことが不満なのか。

    アグネス「(人間心理は難しいわね。戦争は嫌いなくせに。変な奴)」

    同じく変な人の声がコックピット内に聞こえる。

    アスラン「まだだ!撃ち落とした連合軍機からパラシュートで脱出した兵士がいた。見えるか?」
    シン「…。哨戒機じゃないから。困ったな…」
    デイル「いました!」
    アスラン「拾ってやれ」
    デイル「了解」

    アグネス「(アスラン。良く見えたわね。私、それどころじゃなかったわ…)」

    信号弾を上げ、国際救難チャンネルに一報入れた後、トルクメンバシ湾を合流した6機で15分ほど捜索。3名連合兵を救助し、撤収。

    アグネス「(確かさっきの報告でデズモンドが洋上に進んできてくれるのよね。う~ん。わざわざ、来なくてもいいかな)」

    とは言え、一応予定通りバクーに向けて洋上を進みだしたデズモンドに向け着艦を目指す。

  • 132二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 23:47:57

    ランチャーグラスパー×21、恐怖すぎる
    アニメで見てみたかったなぁ…

  • 133二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 07:23:12

    ムウ程イカれた操縦はしてなくても赤ビーム出してくるスカイグラスパーの大群は普通に脅威だわ…

  • 134二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 07:41:48

    基本厳しめ採点のアグネスが素直に満点だと認めているし戦士としてのアスランは本当に優秀なんだなぁ
    アグネスがカガリ関連込みで色々フォローしてくれてメンタル安定気味なのも理由だろうけれど

  • 135二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 09:37:41

    レセップス級デズモンドはカスピ海に分け入り、旧アゼルバイジャン領ランカラン市沖合を進む。
    バビ2機で着艦。私達に弾薬と電力を急速補給する間、セイバーは上空警戒。

    セイバーの番になったら、今度は私達が上空警戒。
    インパルス、ディン2機は救助活動後、一定時間同時飛行した後に分離し、後続させている。

    救助活動は全機で行ったが、バビは両手がふさがっている。拾った連合捕虜は、ディンに任せざるを得ない。3名は負傷していたから速度も出せない。負傷兵を掌に『寝かせた』デイルとショーンのディンをインパルスが護衛しながら、私達にやや遅れてデズモンドに。

    アグネス「(いっその事、掌に乗せて運べないほどの重体だったら、ユーラシア連邦トルクメンバシ市に引き渡したんだけど、それなりに元気そうだしね。仕方ない)」

    目の前の負傷兵を目の当たりにしたせいか、シンは文句を言わず真面目にディンを護衛している。

    横道にそれるけど、バビも両手の武装をマウントできるような部品が欲しいわ。両手がずっと塞がっているのも困る。

    デズモンド艦内で急いで水分補給を兼ね栄養ゼリー一気飲み。モニターに緊急臨時ニュース。

    ニュースキャスター「先ほど、旧ジョージア領港湾都市ポディでデモ活動を行っていた民衆が市庁舎に侵入してこれを占拠。隣接するディオキア市郊外に展開していたザフト軍は『市民の命と財産を守るやむを得ざる人道的介入』を通告し、現在市内に進軍を開始しています」

    側のレイに話しかける。仕事の話は出来ることに定評のある(私の中で)彼の意見を聞きたい。
    アグネス「旧ジョージア領も同時に進駐開始なんて聞いてないわよ。旧アゼルバイジャン解放後、というニュアンスだったじゃない?」
    レイ「民衆の蜂起に引っ張られる形で、なし崩し的に…、と言ったところか」

  • 136二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 09:39:36

    戦闘機の機動性に持たしていい火力じゃないよな
    ランチャーグラスパー

  • 137二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 09:39:41

    ニュースキャスター「先程、当局が入手した情報によりますと、ザフト軍の旧アゼルバイジャン進駐作戦の開始と旧ジョージア領ポティ市の失陥を受け、ユーラシア連邦軍は非公式ながらトビリシ、クタイシの維持を断念。現地民主体の部隊は既に『民衆の側に立つ』と声明を発して軍を離脱しています。旧ジョージア領大部分から撤兵するユーラシア連邦・地球連合は、拠点を旧南オセチア、旧アブハジア拠点を移す見通しとなります」

    アグネス「地球軍は離反者・裏切者続出、と言う訳でもないかな」
    レイ「現地民部隊、地元出身軍人にしてみれば、一番の忠誠の対象は本心では『地球』や『ユーラシア』ではなく自分の故郷だろう。その辺りの線引きは各個人で異なるのだろうが…」
    アグネス「『おらが国』が国ごと離脱するなら、自分達の部隊も丸ごと離脱と…。他山の石にしたいわね。プラントが各区ごとにどうだこうだは無いでしょうけど」

    ニュースキャスター「ザフト軍はユーラシア連邦が撤退時に焦土作戦を行い、住民の命と財産に回復不可能な損害を与えることに懸念の意を表明。ユーラシア連邦はこれを否定していますが、既にザフト軍はクタイシ、トビリシに向け飛行部隊を…」

    艦内放送!
    タリア「バビの電力補給辞め。弾薬補給終了とともに、即時発艦せよ。セイバーと共にコーカサス山脈でユーラシア連邦軍飛行隊に対処せよ。アスラン、エネルギーは?」
    アスラン「もう一戦可能です。その次は…」
    タリア「現地部隊に電源車 / 弾薬運搬トレーラーを手配させる。バビ発艦を」

    アスラン「了解」
    アグネス「了解」
    レイ「了解」

    元々の予定に大体そっているとはいえ、忙しない。
    レイとバビに乗り込む。

    メイリン「進路クリアー。バビ、アグネス・ギーベンラート機、バビ、レイ・ザ・バレル機発進どうぞ」

    メイリン…。貴女今度はデズモンドに出向か…。そっちも忙しないわね。

    アグネス「アグネス・ギーベンラート、バビ、出ます!」
    レイ「レイ・ザ・バレル、バビ、発進する!」

  • 138二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 20:12:23

    レイに対してはシンやアスラン以上に厳しい目で見てるのに、いつもコンビで戦闘では抜群の連携なの見ると、DPに関連して仕事と仕事以外での相性の違いを考えさせられるな

  • 139二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 23:06:21

    セイバー、バビ2機でカスピ海、旧アゼルバイジャン領ランカラン沖から一気に、コーカサス山脈まで南端まで。飛行時間にすれば長くないけど、敵地上空をポンポン飛ぶのは結構疲れるわね。

    都市の上空を通過するたび、もうもうと煙が立ち込める光景が目に入る。街道沿いに連合軍が投棄していった物資に群がる住民がいたり、放棄された軍用車両が乗り捨ててあったりもする。それすらも解体して小金にでもするつもりか、トラクターでブルドックを引っ張って行く地元農民までいる。

    アグネス「(でもこんなもんじゃない?一つの国の支配体制がひっくり返るってことは。正直、もっとやばい光景を目にすると思っていたからちょっと拍子抜けかな。良い意味で)」

    戦争犯罪の加担者扱いされたらキャリアに傷がつく。やるなら私の目の届かないところで、もっと言えば作戦区域外でして欲しい。そもそもやらなきゃいいのだけどね。

    地対空ミサイルのアラートが鳴ることはなく、無事、旧アゼルバイジャン領カバラ上空に到着。ここから、コーカサス山脈を北西に横切って行けば旧ジョージア領の北端をなぞっていくことが出来るが…。

    アグネス「アスラン先輩。ユーラシア連邦飛行部隊は?」
    アスラン「セイバーのレーダーに反応なし」
    レイ「哨戒機がいないと目視では…」

    旧アゼルバイジャン北部を飛行するが敵影なし。そのまま旧ジョージア領に。
    トビリシ上空で味方機の反応を確認。ディン三個小隊、9機が旧ジョージア首都トビリシ上空を警戒飛行中だわ。

    アグネス「(マハムール基地以外の中東・アナトリア部隊からも引っこ抜いてきたのね。やっぱり)」

    通信回線をオープンに。
    アスラン「トビリシ上空のザフト部隊へ。こちらは特務隊アスラン・ザラ、他ミネルバパイロット隊2名。状況を伝えて欲しい」

    ディン隊隊長「了解。こちらはザフト中東派遣軍所属部隊。旧イラク領から昨日ディオキアに到着。ここに到着したのは1時間前。トビリシには空挺隊が突入済みだ。哨戒部隊が連合軍の動きを探るため北西へ向かっている」

  • 140二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 23:14:19

    アスラン「了解。作戦成功を」
    ディン隊隊長「お互いにな」

    トビリシ上空からさらに北上。必死でバビのレーダーを睨み、目視でも空を見回すがウィンダムもダガーもスカイグラスパーさえ飛んでいない。ロストフ・ナ・ドヌーの部隊が出動しているというのは誤報だったの?艦長の判断ミス?

    こんなに哨戒機が大事な存在とは…。アカデミーを出たものにあるまじき感想かもしれないけど、自分がミネルバのレーダーに頼りきりになっていたことを実感せざるを得ないわ。

    広範囲を高精度にカバーできる最新鋭戦闘艦のレーダー等とタッグを組んで初めて私はエースパイロット面が出来ていたんだ。今でもセカンドシリーズのセイバーが傍にいるから、まだ余裕をもって構えていられる。

    もし、これがバビ3機の小隊だったなら―。存在するのかしないのかも分からない、でもいつ襲い掛かって来るか分からない敵を相手にどこまで冷静さを保っていられただろうか。
    まあ、保てちゃうんですけどね。私は!

    とは言え―

    アグネス「(偵察、哨戒を怠って大敗を喫し、あるいは勝機を逃した歴史上の馬鹿どもの列に私も並びかねなかったことは認めざるを得ないわ。愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶというのに)」

    今、悟ったから私は賢者側ね。というか、そもそも惑星強襲揚陸艦『ミネルバ』に偵察機を配備していない軍本部のせいよ。AWACSディン1機乗せとけばこんな苦労はなかったわ。

    アグネス「うん?」
    眼下に異常を認識。次の瞬間には、地対空ミサイル接近のアラートがけたたましく鳴り響く。

    アスラン「回避・散開!」
    アグネス「レイ!」
    レイ「分かっている!」

  • 141二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 23:20:47

    赤外線センサーに導かれたミサイル多数飛来。義理堅いのかアホなのか分からないバカなブルドック(対モビルスーツミサイル搭載トラック)が攻撃してきた!そのまま死んだふりしておけばよかったのに。

    回避旋回しながら、飛来したミサイルを22.5mm4銃身機関砲で撃ち落とす。セイバー、バビ2機が宙返りして再確認すると12両のブルドック。ミサイルを空一杯にばら撒いてくる。もう赤外線センサーは諦めたか。

    セイバーのピクウス76mm近接防御機関砲が補充できていないため弾切れに。レイと私で弾幕を張りながらミサイルを撃ち落としていく。

    鬱陶しい。そんなに撃ったらすぐミサイル、切れるわよ。切れた後どうするつもりなんだこいつ等?

    眼下を赤い閃光がひとなぎして10両が消し炭になる。セイバーのプラズマ収束ビーム砲!?
    これ、何気に最強じゃない!
    そもそも敵が撃ち切ったらどうするつもりなのかを考えるのではなく!

    アグネス「(私がどう敵を先に撃ち抜くかを考えるべき!)」
    レイのバビは上昇旋回、上空警戒!
    私のバビはセイバーに続いて、アルドール複相ビーム砲発射!残りのブルドック2両撃破。

    脇の林に隠れて狙っていたブルドックを4両、追加で視認。逃げ遅れたんじゃなくて待ち伏せしていたのかこいつ等は!
    アグネス「ブルドック…」
    アスラン「了解」
    12連装航空ミサイルランチャーを発射。4両撃破!

    4両が同時に吹き飛ぶ。セイバーを視認すると私が外した場合に備えて、もう高エネルギービームライフルを構えていたわ…。

    (カウントMS53 MA1 対MSヘリ6 輸送機1 リニアタンク2 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 戦闘機8 軍用艇2 対MSミサイル搭載トラック6)

  • 142二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 23:32:08

    アグネス「(戦闘ではアスランにまだ及ばないわね。セイバーの残量が少ないエネルギーを節約できたことを良しとするべきかしら)」

    鳴いたばかりに撃たれて消し炭になったブルドックを離れて、さらに北上。
    アグネス「(ナイスガッツだったんだけどね。う~ん。敵ながら惜しいかも。アホか、私は。周りの甘ちゃんに流されたら負けよ)」

    旧ジョージア領アブハジア手前でディン3機に護衛された早期警戒・空中指揮型ディン特殊電子戦仕様を目視。待ちに待った哨戒機!!!さっき、伝えられた哨戒部隊がこの隊か。

    アスラン「こちら―」
    哨戒部隊隊長「特務隊のアスラン・ザラだな。連絡は先程。ミネルバ隊の協力に感謝を。ロストフからの連合飛行部隊は引き上げた。ユーラシア連邦軍は旧アブハジア・旧南オセチアを除く旧ジョージア領を放棄する模様」
    アスラン「了解」
    哨戒部隊隊長「ボティ市郊外に電源車、弾薬運搬トレーラーが用意されている。活用されたし」
    アスラン「了解」

    そう言えば、何気に電源車や弾薬運搬トレーラーを利用するの。私とレイは初めてかも。アカデミーの実習では体験したけれど。

    だから、何だと言う訳ではないけど、自分は『自分の戦場』しか知らないことを痛感するわね。
    アグネス「(いい機会になったわ。私は上に行く人間だから。キャリアがずっと戦闘艦パイロットかは分からないからね)」

    ともあれ、旧ジョージア領港湾都市ボティ市に着陸を果たす。向こうはどうなっているのだろう。
    シン達は?デズモンドは?ミネルバは?

    う~ん。全体の戦況が良く分からない。戦闘艦のパイロットは、やっぱり艦に多くを依存しているわね。再確認できたわ。

  • 143二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 09:09:34

    やっぱりアスランは戦士としては超一流なんだよなぁ
    議長が欲しがるのも分かる

  • 144二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 20:40:52

    ディオキアの北方、約55㎞、今日解放されたばかりの町、旧ジョージア領ポティ郊外。現地に展開中のザフト軍と合流。おっとり刀で駆けつけてきた兵士がせわしなく駆け回っている。私達もその一人ではあるけど。
    セイバーとバビ2機を電源車に接続、弾薬運搬トレーラーからの補充をその場の兵士に依頼し、近くの戦闘指揮車輌に3人でお邪魔する。カスピ海の方はどうなっているのか。

    アスラン「デズモンド応答せよ。こちらは特務隊アスラン・ザラ他2名。コーカサス山脈上空での任務は終了。敵航空隊は撤退した。現在セイバーとバビは旧ジョージア領ポティで補給中。そちらの状況を」

    戦闘指揮車両の通信にメイリンの声。

    メイリン「こちらデズモンド。先行していたバクゥ部隊、グゥル搭乗ジン部隊とインパルス・ディン小隊がバクーに到着。現地のレジスタンス、ユーラシア連邦軍離反現地民部隊と合流し、バクーの解放を確定させました。港湾施設、造船関係施設は無傷です」

    良し!よくやった。バクゥ隊、グゥル搭乗ジン隊、インパルス隊に10000000アグネスポイント。

    アグネス「(今回の作戦の『ミネルバの目標』は半分達成ね。あとは…)」

    アスラン「ボズゴロフ級3隻の降下作戦は?」
    タリア「上空の援護態勢を固めてからシークエンスを開始します。何時頃、ポティを発進できる?」

    艦長が代わって応える。

    アスラン「1時間後には可能です」

    1時間という言葉を聞いて艦長が思案顔になる。もう少し早めることは出来ないか、そう聞き返すような視線を私達に向けるが何ともならない。バビはまだ動けるがセイバーは結構エネルギーが減っている。無理すれば行けるか?

    タリア「1時間…。良いわ。エネルギーの補充が終わり次第、バクーに向け発進せよ。セイバー、バビのカスピ海到着をもって、降下作戦を開始します」

    アスラン「了解」
    アグネス・レイ「了解」

  • 145二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 21:42:35

    アスラン「二人はコックピットの中で休憩を。俺も同様に休憩を取る」
    アグネス「了解」
    レイ「了解」

    コックピットの中で休憩か…。休んでいる感じ、しないわね。
    アグネス「(いや、休んだ感じを覚えたら死か。まだ任務はやっと半分。ボズゴロフ級を南カスピ海に降ろして、カスピスクの残存艦隊を殲滅し、ミネルバをバクーに入港させるまでは終わらない…)」

    休むこと暫し、脳が緊張状態のせいか、時間感覚がおかしくなっている。ここ数日ずっとそうだ。流石に自分が疲弊しつつあることを自覚せざるを得ないわ。

    手柄も良い、男も良い。しかし、眠れなければ意味がない!
    アグネス「(まともに休んだの、何時だっけ?そう言えば…。しっかりしろ!戦場に休みなんてあるものか!)」

    とは言え、非番すらないのはどういうことなんだろう。こんなものなのかな。塹壕戦の兵士と比べたら天国、そう思って乗り切るしかないか…。

    コックピットに緊急通信。
    メイリン「報告。カスピスクのカスピ海小艦隊残存艦隊に動きあり。アストラハンに逃走を企てている可能性が有ります。バビ、アグネス・レイ機は即時発進せよ。旧タゲスタン共和国テルベント沖でインパルス、ディン小隊と合流し、敵艦隊を殲滅せよ。セイバーは充電を継続のこと」

    アスラン「了解」
    レイ「了解」
    アグネス「了解」

    作戦の順番が変わったわね。というか逃走を図るなら、もっと早めに行動しないとダメでしょう。敵がトロくさくて良かったわ。

    手信号で合図を送ってくれる、味方兵士に敬礼。電源コードを抜き放つと発進スタンバイ。
    セイバーと別れるのは戦力の分散に成るし、戦場で単独行動をさせるのは本来厳禁だが、致し方ない。多分、セイバーには国境を越えるまで、現地部隊の護衛が付くでしょう。

  • 146二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 21:45:47

    アスラン「バビ2機。アグネス、レイ発進。敵艦隊を殲滅せよ」
    アグネス「了解。アグネス・ギーベンラート、バビ、出ます」
    レイ「レイ・ザ・バレル、バビ発進する」

    コーカサスを今度は西から東に2機編隊で横断、旧タゲスタン共和国沖でインパルス、ディン2機と合流か。コロコロ作戦も命令も変わるが今の状況、仕方ない。

    セイバーと別れ、ゴリ、トビリシを飛び越え、旧アゼルバイジャン領ザカタラ近郊でリニアガン・タンク中隊12両を視認。一列で道路を進んでいる。どっちだ?味方か敵か。連合は総撤退と聞いているが…。離反した現地民部隊か?

    識別反応を消している。困るわ、そう言うの。
    アグネス「レイ、リニアガン・タンク中隊を発見」
    レイ「確認した。呼びかけよう」
    アグネス「ええ」

    国際救難チャンネルで呼びかける。
    アグネス「こちらザフト軍、ミネルバモビルスーツ隊。目前のリニアガン・タンクに告ぐ。敵味方識別信号を…」

    リニアガン・タンクの発砲準備動作を確認!回避運動開始!
    下から発砲、12発!
    機体を掠めるように空に飛んでいく砲弾…。こいつ等、識別信号を消して…。ゲリラにでもなるつもりだったのか。

    アグネス「攻撃開始」
    レイ「了解。攻撃開始」

    ミサイルの急上昇した後、機首を下にして12連装航空ミサイルランチャーをバビ2機で発射。私とレイでキッチリ6両ずつ撃破する。
    (カウントMS53 MA1 対MSヘリ6 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 戦闘機8 軍用艇2 対MSミサイル搭載トラック6)

    アグネス「たまにああいうのいるのね」
    レイ「そういうものだろう。撤退戦では。急ぐぞ」
    アグネス「言われるまでもなく!」

  • 147二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 00:36:42

    旧タゲスタン共和国テルベント沖、何とかインパルス、ディン2機と合流。そのまま、旧ロシア領タゲスタン共和国沿岸沖合を北上。カスピスク沖を通過。

    インパルスより通信。
    シン「見えた。2時の方向!」
    アグネス「確認」
    デイル「良く見えたな!」

    アグネス「(流石、最新鋭機ね)」
    シン自身も感が良いんだろうけど。どれ、コルベット艦3隻、砲艦4隻。上空には護衛の対MS戦闘ヘリコプター21機。

    これを潰せば…。

    シン「…!!1時の方向よりモビルスーツ群、大型モビルアーマー3機。急速接近!迎えに来たのか!?」
    アグネス「!デズモンド応答せよ。敵大型モビルアーマー、モビルスーツ群接近。アストラハンからの増援の可能性!」
    レイ「ともあれ、合流前に叩くぞ!」

    シン「了解」
    アグネス「了解」
    ショーン・デイル「了解」

    7隻の小型軍艦隊に接近。対MS戦闘ヘリコプターのうち12機が殿として方向転換。
    方向転換した瞬間に、インパルスの高エネルギービームライフルが隊長機(推定)を撃墜。レイと私のバビのビームライフルが同時に2機撃墜。

    バビ2機でさらに先行、22.5mm4銃身機関砲を撃ちながら、ビームライフル、航空ガンランチャーを発射。後ろからはインパルスの援護射撃。殿部隊12機全て海面に撃ち落とす。
    アグネス「(私は4機墜としたわ)」

    (カウントMS53 MA1 対MSヘリ10 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3 イージス艦2 駆逐艦2 戦闘機8 軍用艇2 対MSミサイル搭載トラック6)

  • 148二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 00:42:11

    殿部隊を屠った地点で援軍のモビルスーツ群とモビルアーマーを再視認。ダガー15機と…あれはなんだ?手や足がないけど、50メートル級の大型陽電子リフレクター搭載モビルアーマーが3機突っ込んで来る。ダガー隊と一緒に!!

    殿部隊を屠った地点で援軍のモビルスーツ群とモビルアーマーを再視認。ダガー15機と…あれはなんだ?手や足がないけど、50メートル級の大型陽電子リフレクター搭載モビルアーマーが3機突っ込んで来る。ダガー隊と一緒に!!

    レイと共に対MS戦闘ヘリコプター残り9機に22.5mm4銃身機関砲、12連装航空ミサイルランチャーを発射。後方で爆発9。どっちの取り分か分からない。確認は後!
    今はそれどころじゃない、交差しUターン。直後に回避運動。

    半瞬前までにいたポイントをあの大型MAのガトリング機関砲が薙ぎ払い、回避運動で翻した機体の裏側を高エネルギービーム砲が掠める。あの左右にあるやつが主砲か。

    光学映像をインパルスとディンのコックピットモニターに転送。

    アグネス「あのデカいの、結構強い。高エネルギービーム以上にガトリング砲に注意を!」
    レイ「対MS戦闘ヘリは全て撃墜。コルベット艦3隻、砲艦4隻が水面から対空戦闘を開始、そちらも注意!」

    シン「了解」
    ショーン「分かった」
    デイル「おう!」

    インパルスとディンが前方から急接近。私とレイが下がって来たから当然か。
    インパルスの放った援護射撃の高エネルギービームを前にモビルアーマーは機体を斜めに。前傾姿勢でビームシールドを展開、ダガー隊を守りながらなおも突っ込んで来る。

    アグネス「レイ、見た!腹」
    レイ「見た。あの機体。下と横が無防備だ!シン」
    シン「分かった!」
    アグネス「私とレイでやる。あんたは援護」
    シン「分かった!」

    小艦隊を飛び越して突っ込んで来るMS・MA混成隊に向け機首を向けるため、レイのバビともう一回交差、やつ等に再突撃を図る。

  • 149二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 00:46:58

    ダガーから放たれる15本のビーム、それよりはるかに太いモビルアーマの6本のビームの束を越え、ダガーとコルベット艦から飛んでくるミサイルを22.5mm4銃身機関砲機関砲で撃ち落とす。

    アグネス「今!」

    後続するインパルスの高エネルギービームライフルがダガーに向けて発射され続ける中、大型モビルアーマーも前傾姿勢を続けている。レイのバビが機体を水面にぶつかるほど下降し大きく旋回。あのモビルアーマーの腹をビームライフルで狙う。
    意図を悟った5機のダガーがレイの上を取ろうとするが、そこに向けて私がビームライフルと航空ガンランチャーを発射。立て続けに4機を撃ち落として急上昇。絶対そこに来るとわかってるところに飛び込むとは!
    モビルアーマーの下腹にビームライフルを撃ちこみレイも私のバビに続いて上昇。

    背後で大型モビルアーマーの大爆発が起こり巨大な水柱が上がる。
    爆発を逃れようとしたダガー1機はインパルスに撃たれて撃墜。

    (カウントMS57 MA1 対MSヘリ10 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 戦闘機8 軍用艇2 対MSミサイル搭載トラック6)

    そのまま、私とレイ、シンは15機と3機から早速10機と2機に減ったMS・MA混成隊を飛び越える。飛び越えざま、眼下のコルベット、砲艦にアルドール複相ビーム砲を薙ぎ払うように照射、後続するレイも同じように照射。コルベット艦2隻、砲艦2隻が轟沈。

    (カウントMS57 MA1 対MSヘリ10 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦1 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    更にバビ2機を追うように来たインパルスのビームライフルが砲艦一隻を轟沈させる。

    これで『艦隊』はコルベット艦1隻と砲艦1隻。

    ショーンとデイルのディンは左右に分かれて上空を散開退避。それでいい。あんた達は撃ち落とされず、戦力として『そこにあること』に意味がある。

  • 150二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 00:50:03

    『艦隊』を飛び越えてレイと交差。今度はあの混成部隊を潰す。その前に―
    複相ビーム砲をバビ2機で照射。コルベット艦と砲艦を轟沈させカスピ海小艦隊に最後の止めを刺す。

    (カウントMS57 MA1 対MSヘリ10 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    機首を混成部隊に、インパルスが後続。ディンを一瞬追い駆けようとしたダガーは急いで大型モビルアーマーの傍に。モビルアーマー1機にダガー5機でセット。

    先頭のモビルアーマーは方向転換できたが、後ろのはまだ曲がり切れず横腹を向けている。そちらに向け、私のバビを先頭にレイのバビ、インパルスで突っ込む。

    一瞬混乱したダガー隊に舞い戻って来たデイルとショーンのディンからビーム突撃銃2×2と6連装多目的ランチャーからミサイルが放たれ、計4機のダガーが撃墜される。ちゃんと言わなくても76mm重突撃機銃と90mm対空散弾銃から武装を取り換えてたわね。感心。

    文字通り波しぶきを上げながら機体を低空飛行させて、方向転換に成功した方の高エネルギービーム2本を躱し、狙った方のやつの側部にビームライフルを撃ちこみ、やや機体を上げアルドール複相ビーム砲を撃ちこみ、さらに機首を上げ、上から私を撃ち落とそうとしているダガーに航空ガンランチャーと機関砲を叩き込んで2機を撃墜する。

    上空からさらに4機撃墜されたダガーが降ってきたのはシン?レイ?どっち?

    上空に急上昇した眼下でモビルアーマーの大爆発が2つ。正解は4機ダガーを落としたのはレイで、私と同時にモビルアーマーを撃墜したのがシンでした!

    ビームサーベルで普通に撃破してやがったわ…。そうね。その手もあるわね。
    それで、さっきのヘリ、私は4機、レイが5機だったか。なかなかね。

    (カウントMS59 大型MA2 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    カスピ海艦隊とアストラハンからの援軍を殲滅し、ようやく今日の…。戦いは終わらないんだな。これが。

  • 151二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 01:00:07

    アグネス「こちら、ミネルバモビルスーツ隊。デズモンド応答せよ」
    タリア「こちらデズモンド。状況は?」
    アグネス「カスピ海小艦隊残存艦隊、アストラハンから増援MS・MA混成部隊を殲滅。これより救助活動に移行します。許可を」
    タリア「許可します。捜索・救助活動に全力を。ただし、ボズゴロフ級の降下作戦がまだ残っている。時間は30分以内に」
    アグネス・シン・レイ・ショーン・デイル「了解」

    コックピットに国際救難チャンネルの放送を受信。
    タリア「こちら、ザフト軍戦艦デズモンド。これよりカスピ海西岸にて、ミネルバパイロット隊が連合兵の救助活動を開始する。地球連合軍は攻撃を控えらせたし。繰り返す―」

    アグネス「(おっ!早速、運が良いのを発見。あのデカいモビルアーマーの名前、聞き出せると良いな)」

    勿論、拷問とかしちゃいけない。でも、質問する分には自由なのよ。そう言うのはプロの尋問術を学んだ係に任せましょう。

    要救助者発見をディンに知らせる。ホルスターがあるから拾えるのよね。レイは万が一のための上空警戒。シンもコルベット艦から飛び降りたっぽい連中を拾っている。

    アグネス「(あの気持ち悪いのはゲルズゲーって名前だったわね。今日のは何かしら?)」
    正直、ザムザザーが一番強く感じたわ。今日のは何か、あんまり…。いや、バビ1機で相手をしろと言われたら…、案外できるかも)」

    あくまで、護衛機が無ければだけど。やっぱり、手や足は大事ね。
    そしてどれも近接戦闘が弱い。ザフトが大型モビルアーマー作るときはそこを考慮しないとね。作る機会無いだろうけど。

  • 152二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 07:48:30

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 10:17:57

    ユークリッドかな?
    初登場がヘブンズベースだからだいぶ前倒ししてるな

  • 154二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 13:22:04

    短いが極限まで集中力を使い救助活動を敢行。ディンとインパルスの両手を救助した連合兵でいっぱいにして旧ロシア連邦タゲスタン共和国沖合からデズモンドに向かって飛行を開始。私とレイ、バビ2機は護衛。デズモンドは遂にバクー沖にまで到達している。

    前方はるかに信号弾が上がる。デズモンド上空は駆けつけたセイバーが護衛・上空哨戒中。

    アグネス「(国際救難チャンネルで通告済みとは言え、敵国沖合を飛行するのは神経が磨り減るわね。何時ものことだけど)」

    そう。いつも通りだ。違うのはのろのろ飛行中の味方機のお荷物付きなこと…。これが相当堪える。いざとなったら、私とレイが盾か。まあ、ユーラシア連邦軍に再度攻撃するだけの戦力はないでしょう。

    デズモンドに着艦。
    タリア「ご苦労だったわね。もう少しよ。任務に関して追加命令。ボズゴロフ級3隻に加えて宇宙往還機シャトルも2機降下させるとのこと」
    コックピットモニターに艦長から通信。敬礼を交わす。何か息があって来たわ。思い違いかもしれないけど。

    アグネス「シャトルまで降ろす…。旧アゼルバイジャン領・ジョージア領の占領が予想外にスムーズに進んだとは言え」
    レイ「アグネス、それは俺たちの領分を越えている」

    確かにね。しかし、誰を乗せているんだろう。

    タリア「各自、思うところがあるのは分かる。でも、今は目前の任務に集中を」
    一同「了解」

    インパルス、バビ、ディンから下りることは出来ない。乗ったまま電力と弾薬の補充を受ける。直ぐに降下作戦が開始される。

  • 155二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 13:25:08

    補給終了。デズモンドから全機発艦。上空にいるアスラン、セイバーと合流。

    アスラン「ボズゴロフ級3隻シャトル2機はガルナハン、汎ムスリム会議旧イラン領ラシュト沖合に降下する。シャトルはそのままラシュト国際空港に。ボズゴロフ級は着水と同時に潜航。降下作戦終了と同時にガルナハンからバクーに向け出航するミネルバの護衛につく」
    一同「了解」

    バビとセイバーは上昇。インパルス、ディンは低空を守る。

    タリア「降下シークエンス開始!」
    メイリン「全艦、全機。軌道降下最終フェイズを発動せよ」

    セイバーとバビに守られた空をシャトルが2機まず降下。通り過ぎるシャトルに誰が乗っているのやら。

    その後から、竹とんぼ状の降下モジュールによって落下速度を調整されたセントヘレンズ他2隻、合計3隻のボズゴロフ級をカスピ海目指して降下してくる。

    アグネス「(ボズゴロフ級の降下を実際に目撃するのは初ね)」
    シン「タケコプターだ…」

    はぁ?なにそれ?
    アスラン「シン!」
    シン「あ…はい」

    なんだろう…。『タケコプター』う~ん。思い出したわ!未来の世界のネコ型ロボット!雪だるまみたいなやつ。2個しか丸い部分ないけど。

    警戒中、脳みその半分を分割してシンのアホな発言の意味を割り出す。流石、日系ね。

    シャトルが無事、ラシェト国際空港に着陸した報告を確認。ボズゴロフ級の着水・潜航を視認。我らがミネルバの出航報告をコックピットモニターで確認し、護衛はボズゴロフ級に引き継ぐ。

    アグネス「(カスピ海小艦隊は消滅。グーン3人衆改め2人衆によれば敵潜水部隊は無し。副長、後は頼んだわ)」

    6機で最後まで気を抜かず、デズモンドに再着艦。ようやく長い一日が終わった。もう日付が変わる寸前だ。結局、夕食は栄養ゼリー。そんなもんでしょ。任務中は。

  • 156二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 13:31:59

    コズミック・イラでもまだF先生の御威光は健在なんやな…w

  • 157二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:39:53

    時期的に降下してくるシャトルの中身って議長ミーアハイネか…?

  • 158二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 18:42:14

    デズモンド着艦後、手早く着替え、シャワーを浴びるや船室へ。本来の主たるデズモンドパイロットは今、旧アゼルバイジャンをひた走っている。そう考えるとなんやかんや自分は恵まれているかもしれない。

    アグネス「(とは言え…。もう頭が回らない)」
    シンが東洋文学の古典の名を挙げてくれたこと。正直、少し助かった。本人にそのつもりはなかっただろうけど、戦場にもユーモアが必要な時がある。私にとってはあの瞬間がそうだったのだろう。

    身体がベッドに沈み込むような感覚。動けない。相当眠いが、頭が覚醒して…。

    アグネス「(落ち着け。マインドフルネス、マインドフルネス。ここが潰れるか這い上がるかの分かれ目。上に行けば、それこそ365日スクランブル!な部署に行くこともあるかも知れない。ここで頭のスイッチを切り、明日に備える。1.2.3...。)」

    まだ、私は大業を成せていない。トップの人間にならないと…。

    タイマーの音とともに目覚める。

    隣のベットにはメイリン。この子もこの部屋が割り当てだったのか。

    アグネス「おはようメイリン」
    メイリン「…」
    返事がない…。ほっそりとした体が一瞬ビクッっとしただけ。

    アグネス「(かなりタフなメイリンが…。私も人のことは言えないか)」
    とは言え、このまま放っておくわけにもいかない。ここは私も心を鬼にして…。

    アグネス「メイリン起きて。ここは多分バクーよ。もしかしたら上陸許可が下りるかも」
    町の中がどうなっているかは敢えて考えない。ザフトが先に占拠した地区は無事でしょう。
    メイリン「う…。う~ん。コンディション…」
    アグネス「今はコンディションブルーよ!!」

  • 159二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 18:51:03

    私が一喝するとようやくメイリンが瞼を開く。そう言えば、この子も何気にコンスタントにいや、コンスタントを思いっきりオーバーして業務をこなしていたわね。ミネルバクルー全員そうだけど。

    メイリン「お…、おはようございます。アグネスさん」
    アグネス「改めまして、おはようメイリン。食堂に…、レセップス級の食堂に行くわよ」
    メイリン「はい!」

    デズモンドの食堂は大賑わいだ。元々のクルーに加えて数こそ多くないがメイリンのように艦長と一緒にこの艦に乗艦してきたミネルバクルーもいる。ヴィーノやヨウランもその中には含まれていて、昨日は私達の機体の整備を担当し…。

    ヴィーノ「バクーって何があるかな」
    ヨウラン「港湾施設と造船所だろう。昔は石油が…」
    ヴィーノ「違うって観光スポット」
    ヨウラン「おいおい…」

    何か、私とメイリンの前で朝食をがっついている。まあ、良いんだけど。

    アグネス「旧市街地はユネスコの世界遺産だったそうよ。西暦時代の話だけど。そもそも国連自体、前大戦前に無くなっちゃっったし」
    メイリン「観光マップによるとアゼルバイジャン国立美術館が有名だそうですね。観光やショッピングも」

    何気に観光マップを確認していたのね。どのタイミングで?メイリンおそるべし。

    アグネス「とは言え、この政変でどこがどの程度無事なのか。あっちこっち煙が立ち込めてたから…」
    ヨウラン「まじ。降りたら怖いな…。恨んでる人も居るかも」
    アグネス「そうね。完全な無血開城だったディオキアとは違うかも。とは言え、ザフトが管理している区画は大丈夫でしょう」
    メイリン「行動するときはまとまってですね」
    ヴィーノ「そうだな」

  • 160二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 18:53:27

    ミネルバは私達が御眠のうちにバクーに入港。今はドックの中だそう。しっかり修理してもらわないと困るわ。

    相変わらず物騒なニュースが食堂には流れ続けている。
    ニュースキャスター「ファウンデーション王国軍を名乗る武装勢力は遂にユーラシア連邦旧カザフスタン共和国アクトべ州を占領。一部部隊は西カザフスタン州に…」

    メイリンはやや戸惑った表情を浮かべる。
    メイリン「ファウンデーション王国…を称する勢力。どこまで攻めるつもりでしょう」
    アグネス「思うにここらが攻勢限界じゃない?旧王国の版図であるアティラウ、マンギスタウ、西カザフスタン、アクトべの4州を切り取って『独立』を達成するつもりでしょう」
    ヨウラン「その後は?」
    アグネス「さあ?」

    ニュースキャスター「ファウンデーション王国の独立宣言と王国軍を称する勢力の進軍に触発され、隣国のユーラシア連邦旧ウズベキスタンでも独立運動が…」
    ニュースキャスター「すでに独立派がタシケントとサマルカンドを…」

    う~ん。ファウンデーション王国も困ったものね。私達が言うことではないけれど。プラントはどうするつもりなんだろう。

    食後に皆で甲板に出て風に当たってみる。シンやレイたちも一緒だわ。アスランはちょっと離れたところに。まあ、一緒に出てこれるようになっただけ良しとしますか。

    アスランの方に向かって進み敬礼を交わす。
    アグネス「おはようございます。アスラン先輩」
    アスラン「おはよう。アグネス」

  • 161二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 19:00:17

    朝食の頃から気になって仕方ないことを尋ねる。
    アグネス「ミネルバの修理ですが…。バクーでは飛行機能のメンテナンスのみを?」
    アスラン「いや。修理を全部行うことになりそうだ。昨日の下りてきたシャトルが2機あったろう」
    アグネス「はい」
    アスラン「俺も今朝知ったんだが…。うち1機は軍事・造船・軍艦製造専門技術者集団が搭乗してきたらしい。マティウス市、及びマティウス・アーセナリー社からの派遣職員が大半を占めるそうだ。他にもマイウス・ミリタリー・インダストリー社なども」
    アグネス「それは心強いですね」

    宇宙往還機シャトルは定員一杯24人程度。国家の最高人材が24人派遣されてきたとしたら凄いことだ。下っ端や部品は汎ムスリム会議内やカーペンタリアから呼び寄せ取り寄せればいい。

    アグネス「(勿論、最高人材じゃない可能性も…。無いな。あの議長。愛人に最新鋭戦艦プレゼントしちゃうバカ者が派遣技術者の質をケチるはずもないもの)」

    一安心した、そんな顔をする私を見てアスランも微笑み返してくる。この人がアホと知る前なら靡いていたわね。

    シン「これから、俺たちどうする?」
    レイ「さあ」

    何か後ろでは話声。どうするって。艦が直るまで冬休みとはいかないだろう。少なくとも私達パイロットは。

    手をパンパンと叩いてシンとレイに歩み寄る。
    アグネス「次の戦場でしょ。皆戦っているのよ。私達もどこかしらに投入されるだけ。気合を入れるわよ」
    レイ「そうだな」
    シン「それはそうだね」
    レイも珍しく同意。まあ、常識論に一々嚙みつかないか。いつもこうだとやりやすいのだけどね。

  • 162二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 22:33:11

    暫く風に当たった後は艦内に引っ込む。
    シュミレーター訓練がしたい。デズモンドにあるか聞かなければ…。そう思って、食堂の前を皆で通り過ぎると望外の出来事を目にする。

    もう聞き飽き始めた『ユーラシア連邦やばいです』のニュースがかき消されると各番組が一斉に国際救難チャンネルの放送を受信する。

    カガリ「私はオーブ連合首長国代表にしてウズミ・ナラ・アスハの子、カガリ・ユラ・アスハ。突然の事で真偽を問われるかも知れないが、オーブ軍、そしてオーブ国民、どうか話を聞いてくれ。先ずは先日の結婚式を一方的に中止したこと心から申し訳なく思っている。夫になる予定であったユウナ・ロマ・セイランのみならず列席者、警備に当たっていたオーブ軍に多大な迷惑をかけたことここでお詫びしたい。すまなかった」

    金の肩章と飾緒が付いた白い軍服姿のアスハ代表がモニターいっぱいに映っている。『すまなかった』で頭を下げるのは正にジャパン的ね。流石、オーブ。日系文化が流れてる。

    アスラン「カガリ…」
    シン「…」

    アスランの顔には喜びが、シンの顔には戸惑いと期待が、レイの顔には―
    アグネス「(あれ?何か怒ってる?困惑寄りの怒り、何で?)」

    カガリ「私があのような形で国を一時離れることにしたのは、オーブの世界安全保障条約機構加盟を阻止するためだ。勘違いしてほしくないのは私は加盟に賛成した首長会とウナト宰相を批判したいわけではない。彼らもまた、政治的意見は違っても国を守ろうという想いは私と同じと思っている。しかし―」

    レイが拳を握り、何かを呟く。アスランとシンは気づいていないわね。何々。
    レイ「先を越された…」
    うん?意味不明。アホか。

  • 163二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 22:37:06

    カガリ「…こうした現状を鑑みるにこの戦争に加担することはただ、オーブの主権と安全保障を脅かすだけでなく、人類文明の荒廃を招くこと必定だ。戦争が泥沼化し、ユーラシア連邦の現状を見るにつけ、そうした確信が深まっていくことは否めない。私のことを単なる理想主義者と考え、連合につくことを是とする者もいるだろう。しかし、我らの最も馴染みの深い国の一つが近海の向こう側に存在することもまた、忘れるべきではない」

    ザフト軍カーペンタリア基地のことね。『連合に付かなきゃオーブが攻撃されるぞ』に対して『連合に付いてもそのリスクは増えるぞ』と反論していると。

    カガリ「オーブ国民・オーブ軍は『他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない』というオーブの理念に立ち返えり、この戦争への積極的関与を強く自粛するよう求める。特にオーブ軍の国外への派兵等、連合に対する軍事力の直接的供与はこれを絶対に禁ずる。日々の営みを通常通りに送り、自分と大切な人の命を守るよう努めるべきだ」

    シン「…」
    『自分と大切な人の命』でまた、シンが拳を握りしめ、モニター越しにアスハ代表を睨んでる。うざっ!ちゃんと聞け!
    こいつの片足を思いっきり踏込む。
    シン「う…」
    振り向いて睨んできたから睨み返して、放送の続きを聞くよう目線で促す。
    一応伝わり、シンが頭を多少冷やし、モニターを見直した瞬間に足をどけてやる。

    カガリ「オーブ国内の秩序を維持し、悪戯に混乱と動乱を起こすことなく、今は社会と経済を通常通りに機能させるよう務めよ。例え未熟で非力であったとしても私もまた、今は国外においてオーブの代表としてなすべきことをする。必ず皆の下に帰るので信じて欲しい。
    オーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハ」

  • 164二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 22:56:22

    国際救難チャンネルの放送が終了する。

    う~ん。やっぱりオーブ国内の反対勢力に気を使っているわね。彼女からすれば自身に反対する者もまた大切なオーブ国民なんでしょうけど。困ったわね。取り合えず、オーブの直接参戦拒否を訴えてくれただけ、今は良しとするか。

    レイ「どうやって…」
    レイが何かぶつぶつ言っている。そりゃ、アークエンジェルの機能とスカンディナビア王国の力を借りたんでしょう。

    アグネス「レイ!何言ってるの」
    レイ「いや…。特に何も」

    ごまかせてないわよ。なんか変ね。オーブの不参戦が近づいたなら喜ぶべきじゃない?

    アスランは?
    アスラン「…」
    何か感極まってるから、後で話しかけようっと。実際『ディノ特使』が頑張ったことは事実な訳だし。

    アグネス「(でも、亡命政府立ち上げは宣言しなかったわね。困るわ…。内乱を恐れるのもわかるけど…)」

    まあ、対外声明が出て、まず一歩。良し。ここから、プラントとも交渉が進んで行くでしょう。

  • 165二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 23:15:27

    アスランはそろそろ自前の副官雇おう
    できたらニコルくらい気の付く副官を

  • 166二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 07:52:39

    セイラン家はどうするかな

  • 167二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 10:18:17

    >>165

    アスランの圧縮言語を解凍して周囲との通訳と折衝をこなし細やかな気遣いができる副官……

    キラを呼んでこよう

    キラがめんどくさがりそうな仕事はアスラン自分でできるし性根はぐうたらなキラが根を詰めずにのびのびできる

    あれ、これ割と理想的なコンビかも?

    本編はキラのほうが階級高いからダメだったけど


    なお、その場合はラクス暗殺未遂の件があるためPLANTの電子機密データは根こそぎ引っこ抜かれます(ダメじゃん)

  • 168二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 10:50:57

    今後の世界情勢、オーブ国内の政争の行方に考えをめぐらす私の思考回路のスイッチを艦内放送が切り替える。

    デズモンドオペレーター「デズモンドに乗艦するミネルバクルーは手荷物を持ち速やかに下船せよ。港湾内広場に向かうこと。繰り返すデズモンドに乗艦するミネルバクルーは手荷物を持ち速やかに下船せよ。港湾内広場に向かうこと」

    何?今度は?

    シン「どうしたんだろう?」
    レイ「行ってみればわかる」
    アグネス「確かにね」

    次の任務か。休暇はまだのようね。一晩寝て、スッキリしたから良いけど。

    港湾内広場には私達デズモンド組だけでなく、ミネルバ全クルーが負傷者も含め集合していた。負傷兵の傷の治りも良好。流石、コーディネイターね。久しぶり(でもない)に会ったグーン負傷兵とも交わし、挨拶をする。

    アグネス「おはようございます。お加減は?」
    グーン負傷兵「まずまずだな。もうあと少しで復帰だ。ここには来ていないが、一緒に怪我をしたガズウートパイロットもだな」
    アグネス「何よりです」

    しかし、皆で何処かに行くのか…。装甲車に守られた大型バスが何台も並んでいる。
    艦長が皆の前に進んで行く。

    アーサー「全員整列」
    無理で撃たれたようにさっきまでのざわめきが消え、ビシッとクルー、パイロットが即時に整列する。階級がないという建前になっているザフトも流石に軍隊。

    アーサー「全員敬礼。直れ」

  • 169二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 10:54:53

    艦長が皆の前で話し始める。
    タリア「皆、ここまでの連戦ご苦労さま。これより、私達はバクー国際空港へ移動。空路でディオキアに向かいます。道中は汎ムスリム会議領空を飛行し他部隊の護衛も付くので安心するように」

    艦長が皆の前で話し始める。
    タリア「皆、ここまでの連戦ご苦労さま。これより、私達はバクー国際空港へ移動。空路でディオキアに向かいます。道中は汎ムスリム会議領空を飛行し他部隊の護衛も付くので安心するように」

    はて?皆でディオキア。特別休暇かな。確かに『黒海のラスベガス』で過ごす休日も悪くない。

    アーサー「ディオキアに着き次第、プラント最高評議会議長閣下出席の下、我々の叙勲式が執り行われる。威儀を正して出席するように。各自、服装、心の準備をするように」

    アグネス「!!!」
    いよいよね。というか議長来てるの?!というかいつ来たんだ?

    アグネス「(昨日のシャトルか。ミネルバ修理技術者集団ではない方の1機。ラシュト国際空港に下りた後、私達がバクーで睡眠を取ったり、ミネルバを入港させたりしている中、ディオキアに移動していたのね)」

    しかし、何考えているの、あの男は?ディオキアは無血開城したとはいえ、まだ解放されて間がないのに。危ないじゃない。危険を省みず前線に赴く指導者カッコいいがしたいのか。あるいは―

    アグネス「(まさか…!ミネルバクルーを丸ごと『ディランダル派』にしようと…。それでわざわざ自ら叙勲式に!)」
    そうはいくものか。勲章は…貰うけど、それはギルバート・ディランダル個人から貰うものではない。『最高評議会議長』とプラントから貰うものだわ。気をしっかり持って、もし勘違いするやつがクルーにいるようなら、その都度注意しないと。とは言え―

    アグネス「(ついに待ちに待った叙勲だ!最高!!)」

  • 170二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 14:04:32

    旧アゼルバイジャン領上空から汎ムスリム会議旧イラン領上空を抜ける。結局、旧アルメニア領はユーラシア連邦勢力圏に留まったため、飛び地になってしまっている。

    アグネス「まあ、ここら辺はいろいろと複雑だからね」
    メイリン「そうですね」
    隣の座席に座っているメイリンが相づちを打ってくれる。
    機内では皆、思い思いに過ごしている。たった1時間半もない道程だ。その間に少し早めの昼食をすます。まともな昼食!素晴らしい。

    機内ではまた、うんざりするようなニュースが流れ続けている。
    ウクライナは一旦デモが収まったと思いきやファウンデーション王国の快進撃を見て武装蜂起が発生。中部、西部が独立賛成派勢力圏になっている、と。旧トルクメニスタンの旧首都アシガバートでも武装蜂起発生。全土が騒乱状態に。

    メイリン「世間ではこの事態を『ガルナハン・ファウンデーション・ショック』と呼んでいるらしいですね」
    アグネス「ユーラシアがしゃっきりしていないからよ。結局、ファウンデーション王国に西カザフスタン州も取られて『完全独立』を宣言されちゃったじゃない」
    さっきそれもニュースでやっていたわ。宰相のオルフェ・ラム・タオが歯の浮くような言葉を並べてペラペラ演説していた。アウラ女帝は置物ね。神輿はそんなものか。

    シン「『年齢・出身、ナチュラル・コーディネイターを問わず国民一丸となって各人の役割を果たし国家を再建する』、『公正で平等な社会を目指す』。本当かな」

    後ろの座席からニョッキリ顔を出してシンが私達に話しかける。ちなみにアスランは艦長、副長とファーストクラスだ。後ろの座席にはシンとレイ。

    アグネス「まあ、言う分にはタダでしょう。やっと旧カザフスタン共和国西部を切り取って
    独立したのにその中で内戦するのもバカだろうし」

    私の返事を受けてシンも何とはなしに頷く。建前は大事だ。国家にも戦争にも。

  • 171二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 14:08:16

    メイリン「ファウンデーション王国からは、やや距離がありますが中央アジアではキルギスプラント襲撃事件が起こっています。連合軍はその報復として―名目はゲリラ掃討ですが―非武装の現地のコーディネイター難民を関与の具体的な証拠がないにも関わらず集団虐殺しています。王国としても無関心ではいられないかも知れませんね」
    レイ「…」

    ユーラシア連邦に取り残されたコーディネイターの同胞をどう脱出させるのかも考えなくっちゃね。本人たちの希望次第でもあるけれど。

    シン「連合にもそんな奴らが…」
    シンが怒りに震えている。こいつ怒ってばかりね。冷静に話が出来ない様じゃ出世は頭打ちよ。

    アグネス「とは言え、何やってるんだか連合も。世論に響くわよ。どの部隊がやったの?」
    メイリン「それが…。この事件の詳細が良く分からないんです。余りニュースでも取り上げないし。ブレイク・ザ・ワールドの余波でそれどころではなかったかもしれませんが…。調べてみますか?」

    『調べてみますか?』で彼女の利発そうな目が光る。うむ。布石は多い方が良いわね。

    アグネス「お願いするわ。ごめんね。便利屋みたいに…」
    メイリン「いいえ。何か自分がいろいろできることが分かって嬉しくて」
    シン「そんなもんかな。でも、放ってはおけないよな」
    レイ「とは言え、まずは今日の任務をこなすことだ」

    レイが同じく後ろから会話に参加。起きてたのね。そうね。流石に中央アジア行きは勘弁だわ。月が気になるし。

    空から、黒海の全景を見下ろしつつ、ディオキア国際空港に到着。やっぱりいいわね、ディオキア。バクーはまだ殺伐とした空気が漂ってるし、気楽に過ごせないわ。叙勲式を終えたら何をしようかしら。

  • 172二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:03:57

    空港を降りて、バスで移動。おしゃれな市街地に向かう。浜辺の道を通ると、右手前方には前にアスランと来た『神の母のジョージア正教会大聖堂』の尖塔も見えてくる。

    沿道の人達が手を振ってくれているのがとても嬉しい。英雄の帰還って感じね。

    叙勲式の会場になるバトゥミ広場で下車。何でもここは西暦時代からこの町で最も訪問され、人気のある観光スポットの一つだそう。中央の美しいモザイクを中心とするイタリア風の広場の周囲にはカフェ、ホテル、ショッピング等おしゃれスポットが広がっている。

    そんな広場には現地で展開中のザフト軍部隊手隙組と市長を含む現地住民がわんさか集まっている。大きなスクリーンモニターは何に使うつもりなのか。

    そして広場の上座にはデュランダル議長と青服議員、紫服、黒服の集団と―
    アスラン「…」
    アグネス「『ラクス様』もいらっしゃっているとは」

    そう。ぴっちりきっちりした一軍に混じっていかにもアイドル風な服装のミーア・キャンベルが並んでいる。席次で言えば議長の次。公務か。大変ね、影武者も。

    副長「全員整列」
    アグネス「はい!」
    一同「はい!」

    さて何が貰えるかな。頼む、ネビュラ勲章来てくれ、もしくは最高評議会名誉勲章!

    大型スクリーンモニターのスイッチがつけられる。
    スクリーンの向こう側にはジュール隊が整列している。リモート参加ね。
    イザーク・ジュール隊長、ディアッカ・エルスマン先輩、シホ・ハーネンフース先輩他ユニウス・セブン破砕作戦に参加した人達。何か懐かしい。月日にしたらそんなに経ってないんだけどね。

  • 173二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:11:08

    前方の議長が話し始める。微笑みを浮かべながら、ホストか。

    デュランダル「皆、よく来てくれた。ミネルバクルー、ミネルバ・ジュール隊パイロットの働き、プラント市民そして我々、最高評議会含め、心強く有難く思っている。すぐにその働きと貢献に報いたいと思っていたが、何分手続きがあってね。だが、一先ずペルシャ湾到達までの分は整った。頼む」

    紫服「はい。代表タリア・グラディス前に」
    タリア「はい」

    艦長が呼ばれるということは共同受賞か。

    議長のやや前に艦長が進む。互いにどんな感情なんだろう。後ろ姿から、その気持ちを読み取ることは困難だわ。

    緑服のいかにも写真映えしそうな美人軍人が勲章を修めた箱を青服議員に持ってくる。この青服も議長に引っ張られてアプリリウスから来たのか、大変ね。

    そして―箱が青服に空けられると―そこには黄金のメダルが!!

    青服議員「ユニウス・セブン破砕作戦に参加した全ミネルバクルー、同艦パイロット、そしてジュール隊にプラント最高評議会・プラント60人議会両議会の名において『議会名誉黄金勲章』を授与する。この勲章は知っての通り最高評議会議長自由勲章と並ぶプラント最高位の賞である」

    艦長に黄金のメダルが手渡されると艦長の後ろ姿が微かに震え、ほんの一瞬私達に、その中でもクルーに抱えられている38名の遺影に視線を投げかける。写真の中では皆笑顔だ。
    艦長が名残惜しそうに姿勢を正す。モニターの向こうのジュール隊もビシッとする。シホ先輩もすごくうれしそうだわ。真面目そうな顔に滲み出ているのが分かる。

    議長は微笑みかけながら口を開く。
    デュランダル「本当に皆よくやってくれた。地球は我々にとっても母なる星であり、それだけでなくカーペンタリア、ジブラルタルを始め多くの同胞が暮らす家でもある。君たちの貢献は歴史に長く刻まれるだろう」

  • 174二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:14:51

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    割れんばかりの大きな拍手。嬉しい限りだわ。でも、共同受賞だから、私達はどうしたものか。

    艦長から返却された金メダルを青服が受け取り、緑服兵が受け取っていったん下がる。
    気になるポイントを青服議員が補足する

    青服「この金メダルは国立博物館に常設展示される。破砕作戦に参加した全ミネルバクルー、パイロット、ジュール隊、そして遺族には市民からの寄付金で作られたブロンズの複製メダルが授与される」

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    また拍手。

    素晴らしい。なら良いか。文句ない無敵の経歴ね。
    アグネス「(アグネスポイントいくつにしよう?)」

    そう言えば、私達まだ退役前だから文民身分になってない気がするけど。『地球を守ったプラント市民』って言うことだから良いのか。軍人が貰った例もあるし。

    紫服「では続いて、ザフト軍より同じくユニウス・セブン破砕作戦における勇敢な功績を称えて惑星強襲揚陸艦ミネルバ及びミネルバパイロット隊に『プラント最高評議会議長部隊表彰』を。代表タリア・グラディス」
    タリア「はい」
    紫服「おめでとう」

    紫服が艦長の右胸に新しいリボン(略綬)を着ける。

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    また大きな拍手。

    部隊表彰だから、今後ミネルバに着任するクルーやパイロットもあのリボンを着けられるが、離任したら外さなければならない。
    アグネス「(でも、表彰された時点で部隊に配属されている者はずっと着けられるのよ。良し。いい加減左胸ばかりいっぱいになってバランスが悪いと思っていたところだったわ)」

  • 175二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:18:19

    紫服「次に大気圏に落下しつつあるユニウス・セブンに最後まで踏みとどまり任務遂行に努め、テロ首謀者とその僚機撃墜に功績を上げた者に『特殊十字章』を。アスラン・ザラ、アグネス・ギーベンラート、シン・アスカ前に」

    うおっ!個人受賞だわ。周りがざわつき脇から小声で『おめでとう』の声。

    アスランとシンと一緒に紫服の前に出て左胸に新しい勲章を着けてもらう。
    デュランダル「おめでとう」
    アスラン「ありがとう…ございます」
    アグネス「ありがとうございます」
    シン「ありがとうございます」

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    アグネス「(う~ん。惜しい。あのメテオブレイカーが上手く作動したら、これがネビュラ勲章か名誉勲章に化けたんだけど。まあ仕方ない。プラントの公式見解は『ユニウスセブン破砕作戦は任務成功』これで決めたみたいね)」

    チラっとアスランとシンの顔を見る。アスランはまた何とも微妙な顔。彼の勲章アレルギーはなかなか深刻ね。法と倫理に背かない範囲なら勲章のために働くのも大いに結構と思うのだけど。シンはまあまあ嬉しそうね。当然か、私も嬉しいし。

    一旦下がる。取り合えず、ユニウスセブン関連は終わりね。

    紫服「ではユニウス・セブン破砕作業関連に続き、オーブ近海会戦の叙勲を開始する。かの海域における惑星強襲揚陸艦ミネルバ及びミネルバパイロット隊の勇敢な功績を称えて『プラント最高評議会議長部隊表彰』を。代表タリア・グラディス艦長。前に」
    タリア「はい」
    紫服「おめでとう」

    さっき右胸に付けたばかりのリボンが2度目受賞を示す星が一つ付いたものに交換される。忙しないわね。そっちも。

  • 176二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:22:27

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    モニターの向こうのジュール隊も祝福してくれる。良し。

    紫服「また同海域の戦闘において我が国が初めて直面した大型陽電子リフレクター搭載モビルアーマーの脅威に敢然と立ち向かい、見事これを撃墜したアグネス・ギーベンラート、シン・アスカに『銀星章』を。両名前に」

    アグネス・シン「はい!」
    名前順に私、シンの順番で勲章が追加される。
    紫服「おめでとう」

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    拍手されながらシンと視線を交わす。まあ、いいんじゃない。単独ならネビュラ勲章が…、とも思うが、そんな状態ならミネルバの被害ももっとやばかっただろうし。

    取り合えず一旦下がる。

    後は―
    紫服「オペレーション・スピア・オブ・トワイライトにおける惑星強襲揚陸艦ミネルバ及びミネルバパイロット隊の勇敢かつ顕著な功績を称え『プラント最高評議会議長部隊表彰』を。代表タリア・グラディス」
    タリア「はい」

    艦長…前に出たり、下がったり大変ね。右胸のリボンの星。3度目だから2つになったわ。
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    艦長が下がろうとするとデュランダル議長がそれを留め口を開く。

    デュランダル「ミネルバ艦長タリア・グラディス。同作戦によりアラフラ海、珊瑚海両海域の連合軍艦隊を撃滅し、カーペンタリア・大洋州の安全を確保、南太平洋におけるザフト軍の優位を確立したことを賞し、プラント最高評議会の承認の下、ここにネビュラ勲章を授与するものとする。おめでとう」
    タリア「ありがとうございます」
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  • 177二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:28:39

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    うっかりクルーとパイロットも拍手始めちゃったわ。私も一緒に思わずやってしまう。儀礼的にどうなのだろう?でも、副長も思いっきり拍手しているし良いか。知らん。おめでたい席なのだから良いでしょう。

    ちょっとびっくりしながらも艦長が一旦下がる。

    紫服「では最後にインド洋攻防戦についての叙勲を始める。インド洋の戦いにおいて顕著な功績を上げ、その勇敢さを示し、インド洋の制海権をザフトにもたらしたことを称え惑星強襲揚陸艦ミネルバ及びミネルバパイロット隊に『プラント最高評議会議長部隊表彰』を。タリア・グラディス艦長前に」
    タリア「はい」

    紫服が右胸のリボンを星3つのものに付け替える。4度目だから。
    紫服「また、タリア・グラディス艦長個人には国防功労勲章を授与する。おめでとう」
    タリア「はい。ありがとうございます」

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    紫服「それから、アグネス・ギーベンラート、シン・アスカ。前に」
    アグネス・シン「はい」
    紫服「敵スマトラ島基地に怯むことなく踏み入り、また上空を抑え、基地防衛隊を降伏させ、基地を再建・利用可能な状態で奪取したこと。何より、かの地で連合の人道犯罪に直面していた強制労働収容所内の現地住民を解放したこと。その功績は誠に大きなものである。ここに…」

    アグネス「(いけ!ネビュラ勲章もしくは名誉勲章!)」
    紫服「ここに『殊勲十字章』を両名に授与する者である」

    ずっこけそうになるわ!勲章順位2位。ランランク下じゃない。さっきも同じの貰ったから。まあ…良しとしましょう。2度目だから、柏葉が追加されたものに勲章が取り換えられる。略綬にも柏葉が追加ね。

  • 178二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:31:53

    シンはめっちゃ嬉しそうだわ。お気楽でいいわね。まあ、人生は長い、私も今日は大いに喜んでおきましょう。

    パチパチパチパチパチパチパチ!パチパチパチパチパイ!
    皆の拍手のシャワーも大いに嬉しいわ。フラッシュの光もね。
    シンと一旦下がって皆の列に加わる。

    紫服「諸君のペルシャ湾到着以降の勲功については現在審理中だ。昨日の戦闘については…」
    話中の紫服に黒服が近づき耳元で話しかける。
    紫服はコホンと軽く咳払いをして仕切り直し。
    紫服「昨日の戦闘に関しても、高位の勲章は審理中。下位の記章については本日授与する」

    駆け足で作りたての記章を持った緑服が紫服に手渡している。これは本当に直前までかかって作ってたわね。

    紫服「『黒海・コーカサス解放作戦従軍記章』を授与する。代表、タリア・グラディス」
    タリア「はい」
    紫服「おめでとう」
    タリア「ありがとうございます」
    紫服「続いてカスピ海における敵兵救命活動を賞してミネルバパイロット隊に『人道記章』を。代表、特務隊アスラン・ザラ」
    アスラン「はい」
    アスラン「ありがとうございます」

    パチパチパチパチパチパチパチ!パチパチパチパチパイ!
    救助活動で貰った勲章だからかさっきよりアスランの顔色が良い。何より。

    紫服が下がり、議長が話し出す。長いのは勘弁してほしいわ。
    デュランダル「プラントは今後も君たちの働きに大いに期待している。平和のために戦え、と命じることは我ながら矛盾しているとは思うが、どうか皆の力を世界のために生かして欲しい」

    議長の目配せで副長が号令をかける。

  • 179二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:38:55

    アーサー「総員気を付け!」
    ザッと集団が足をそろえる音が広場とモニターの向こうのジュール隊から聞こえる。
    アーサー「敬礼」
    サッと一斉に敬礼し、議長の返礼を持って直る。これで―

    議長が軽く右手を振りミーアに皆の視線を誘導する。
    ミーア「皆さん。日々平和のため戦って下さりありがとうございます。ささやかながら、感謝の気持ちを込めて皆さんに歌を」
    何時もと違うやや厳かな話し方でミーアが歌い出す。【水の証】ね。
    アグネス「(流石に授賞式でアップテンポの曲は無しか)」

    艦長と副長が悲しさと嬉しさが混じった眼差しをクルーが持ち上げ続けている38名の戦死した仲間の遺影にもう一度向けている。艦長と目が合う。

    アグネス「(あ~あ。合ったからには仕方ない)」

    議長たちに背を向けにように調整しながら遺影に向けそっと敬礼。それに気づいた周りの人達もつられて敬礼していき、終いにはモニターのジュール隊も敬礼している。そう言えばジュール隊にも戦死者が出ていたわね。モニターの向こうに並ぶ遺影にも改めて敬礼する。

    アグネス「(歌の力ってすごいわね)」
    雰囲気にのまれて黒服と紫服も双方の遺影に敬礼。歌の終わりの方で議長が両隊に敬礼してようやく皆が直る。

    ミーアの歌が終わると辺り一帯が静寂に包まれる。
    ミーア「この悲しみの連鎖を断ち切るために、どうか皆さんの力をお貸しください。怒りを沈め、正しい世界に向け力を尽くしましょう」

    一同「はい!」
    アグネス「はい!」
    思わず返事をしちゃったわ。この偽ラクスすごいわね。見直したわ。100000000アグネスポイント。これでこの場の人達の士気は急上昇だわ。正体を知っているミネルバ組でさえもね。

  • 180二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:42:19

    しかし、特に私は悲しみの連鎖云々にはあまり興味がない。持久戦になったり、絶滅戦争になったらプラントが困るからサクッと勝って和平を結びたいだけ。それよりも―

    勲章が爆増したわ。これこそが私にとって大事なことよ。

    え~と。
    これで貰った記章(メダル)は『アーモリーワン事変従軍記章』、『ユニウスセブン破砕作戦従軍記章』、『議会名誉黄金勲章』(最高位、共同受賞 複製のブロンズメダル授与)、『プラント最高評議会議長部隊表彰』(1回目)、『特殊十字章』(1回目)。

    これに『アスハ代表護送任務達成記章』、『フォックストロット・ノベンバー並びに同日発生した戦闘に対する参戦記章』、『プラント最高評議会議長部隊表彰』(2回目 星1)、『銀星章』、『人道記章(1回目メダル)』

    『オペレーション・スピア・オブ・トワイライト参戦記章』、、『プラント最高評議会議長部隊表彰』(3回目 星2)、感状(共同受賞 カーペンタリア基地司令官より)、『人道記章』(2回目飾版1枚)。

    『インド洋攻防戦従軍記章』、『敵前上陸作戦参加記章』、強制労働収容所開放の功績『人道行動記章』、『人道記章(3回目飾版2枚)』、『プラント最高評議会議長部隊表彰』(4回目 星3)、『殊勲十字章』(2回目 柏葉1個)

    ペルシャ湾以降では高位勲章は審議中で今のところは。
    『ガルナハン・ローエングリンゲート攻略戦従軍記章』、『ガルナハン解放記念記章』『人道記章』(4回目飾版3枚)、『アレクサンドリア沖海戦従軍記章』、『ディオキア解放記念記章』、『人道記章』(5回目飾版4枚目)」。

    これに『黒海・コーカサス解放作戦従軍記章』と『人道記章』(6回目飾版5枚)だから銀の飾版5枚を金の飾版1枚に引き換えね。

    数えると記章(メダル)が14個(飾版1枚付メダル1個)、個人勲章2個(内一つは柏葉付)、部隊表彰(略綬。星3つ)を身に着けられるわけか。早速、略綬追加しないとね。最近、右胸が寂しく思っていたから部隊表彰が右に来て嬉しいわ。

    感状とメダルの写真は内ポケットに入れておきましょう。本物は実家に。

  • 181二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:44:50

    しかし、やっぱりネビュラ勲章や議会名誉勲章は難しいわね。艦とパイロットという軍事ユニット、チームで戦っているから、なかなか一人で突出して手柄を上げる機会はないわ。

    単純な撃墜数ならシンがミネルバのエースで多分、プラントでも最上位層だし、私も累積カウントならネビュラ勲章に手が届かなくもないはずだけど、なかなかね。
    共同で上げた手柄が多くなるから、強いて言えば指揮官の艦長が貰う形になるのは仕方ないことだわ。残念。

    さて、無事授賞式も終わり、皆でバスに乗り…。

    私達の列に緑服の女性兵が駆け足で近づいてくる。
    緑服女性兵「アグネス・ギーベンラート、シン・アスカ、レイ・ザ・バレルはこちらに。グラディス艦長とザラ特務隊員はすでに」

    ああ。何かお褒めの言葉貰えるのね。う~ん。他の人に感じ悪いか。下っ端に嫌われたら今後に差し支えるかも…。

    ショーン「良いから行って来いよ」
    シン「えっ、でも」
    デイル「何時も頑張ってくれてるだろう!」
    アグネス「ありがとう」

    私の列から位置が離れているがメイリンやヴィーノ、ヨウランも、ぐっとガッツポーズを取ってくれている。『頑張れ』『行ってこい』のサイン。
    アグネス「(これなら、妬みや僻みは気にしないで良さそうね)」

    アグネス「分かりました。どうかご案内を」
    シン「よろしくお願いします」
    レイ「お願いします」

    緑服女性兵に案内され、バスに向かう皆とは別方向に停まっている高級車に乗り込む。中には艦長とアスラン。

  • 182二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:52:11

    アグネス「お待たせして申し訳ありません」
    タリア「良いのよ。私達も今乗ったところだから、ね?」
    アスラン「はい」

    艦長が敬礼は要らないのアイサインを出してきたため、黙礼して車に乗り込む。
    シンは高級車に乗り込むと内装の豪華さや中の広さにしきりに感心している。

    アグネス「(庶民か!いや、庶民だったわ)」
    とは言え、もう勲章持ちになったのだから、エリートらしい振る舞いも身に着けてもらわないと同じ部隊の私が恥をかくわ。

    レイ「…」
    レイは何かそわそわし始めた。何?何か気が急いているわね。
    アグネス「(ああ、そう言えば、養父の議長に久しぶりに会えるかもしれないわけね。この車が議長の下に向かえばだけど)」

    いや、絶対に向かうでしょう。でなければ艦長とレイに声をかけるわけはない。私とシンはおまけか。お邪魔虫か。
    アグネス「(いいわ、別に。大いにお邪魔してやるわ。敵対派閥のドンの面を拝む機会も久しぶりですものね。身の程知らずにも『デュランダル派』立ち上げに東奔西走した結果を見てみようかしら)」

    因みにアスランは失敗ね。ハッキリ言って。アスハ代表命みたいだから、あんたの駒にはなりようがないわ。

    皆がシートベルトを締めた段階で黒塗りの車は発進。美しい町並みは、傾きつつある太陽に照らされ徐々に黄金色を帯び始めている。

  • 183二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 10:41:41

    車は市街地を進み、やがて宮殿の様な豪華で大きいホテルの玄関前で止まる。玄関前階段左右には武装した警備兵。階段の上には…

    アグネス「(ハイネ・ヴェステンフルス隊長!!来ていたの!?)」

    前大戦時からの英雄『緋蝶』で有名な彼自らお出迎えとは、なかなか粋な計らいね。

    アスランと私達がまず車を出てハイネ先輩に敬礼。返礼を受けて直り、艦長が車から降りるのを待つ。艦長が下りたタイミングでハイネ先輩と皆で揃って敬礼。

    アグネス「(うん…?)」
    ふと、ハイネ先輩の赤い制服を見ると左胸にフェイスの徽章!最悪…。
    この人も議長の唾付きか。あの議長、本当に許し難し。人材コレクターか?

    アグネス「(自派閥の立ち上げ、強化に全力ね。早く失脚して欲しいわ)」

    とは言え―私は貰えるものは貰う主義でもある―。どう立ち振る舞うのが正解だろうか。
    いや、フェイスは断固拒否ね。こいつの政権下では。厄ネタにしかならないわ。そもそも派閥違うし。ライトナ―政権かエザリア政権で貰うわ。

    取り合えず、ハイネ先輩に案内されつつホテル上層階へと足を運んでいく。
    ふむ。悪くはない内装ね。最近、こういう所来れてなかったのよね。軍務中だから当然だけど。

    ホテルの簡素だが大変趣味の良いテラスにでる。テラスの向こう側中庭には見慣れないオレンジ色のモビルスーツ。新型か?近接戦特化っぽく見受けられるが…。

    そしてテラスの手すりには―

    タリア「まったく、呆れたものですわね。こんなところに御出とは」
    アグネス「(本当にあきれるばかりだわ。まあ、予想通りの展開ね)」
    デュランダル「はッはッはッ。驚いたかね」

    アグネス「(何が『はッはッは』よ。)」
    我らが(大変遺憾ながら)プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル氏が我らをお待ちかねだったのでした。

  • 184二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 12:32:12

    ハイネの「割り切れよ」のスタンスをこのミネルバ隊はどう受け止めるか気になるねぇ

  • 185二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 12:46:31

    保守

  • 186二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 13:54:53

    タリア「ええ。驚きましたとも。が、今に始まったことじゃありませんけど」
    艦長が呆れ半分、親しさ+嬉しさ半分の表情で応じつつ敬礼。私達もそろって敬礼し、直る。
    議長はこちらに歩み寄って来る。

    デュランダル「元気そうだね。活躍は聞いている。嬉しいよ」
    この言葉は艦長、いやレイに向けた言葉かな。

    レイ「ギル…」
    デュランダル「こうしてゆっくり会えるのも、久しぶりだな」

    レイが議長に抱き着き、議長も彼を抱きしめ、微笑みを浮かべている。

    シン「え…」

    日系のシンには刺激が強いみたいね。
    さり気なく、本当にさり気なく、場の空気・礼儀を失しないように最大限の配慮をしつつシンに囁く。
    アグネス「議長とレイは実質、養父子よ」
    シン「そうなのか。知らなかった」
    シンもささやき声で返す。良し。空気を読めてえらい。

    テラスには大きなテーブルと席が6つ。手前に2つと4つの席が向かい合っている。

    ハイネ「失礼します。お呼びになったミネルバのパイロット達です」
    デュランダル「ああ。ご苦労だったね、ハイネ」

    レイとの抱擁を終えたタイミングでハイネ先輩が声をかけ、議長もそれに答える。そのままハイネ先輩は敬礼して、ややテラスの後方に下がる。

    議長は今度はアスランの前に進み、気さくに声をかける。
    デュランダル「やぁ。久しぶりだね、アスラン」
    アスラン「はい、議長」

  • 187二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 13:56:24

    うむ。まあ、こんなもんかな。この二人は。

    今度は私の前。
    デュランダル「あぁ。それから久しぶりだな。君たちのことはよく覚えているよ。アグネス・ギーベンラート君、シン・アスカ君」

    流石に覚えていたか。まあ、パパと仕事で会っているからね。

    アグネス「はい。お久しぶりです」
    シン「お、お久しぶりです」

    しっかりしなさいよ、シン。まあ、普通ならこうか…。

    デュランダル「このところは大活躍だそうじゃないか。例のガルナハン・ローエングリンゲートの戦いでも素晴らしい活躍だったそうだね、君たちは」

    アグネス「お褒めに預かり光栄です」
    シン「あぁ…。ありがとうございます」

    しっかりせい!恥ずかしい。所詮任期1年の男でしょ。再選狙ってるかも知れないけど。例外的に。

    議長に促され皆で席に着く。
    艦長は議長の隣。私達は前の4席。メイドが紅茶を注いで回る。

    アグネス「(茶菓子は?まさか紅茶だけ?教育が成ってない!支配人を呼びなさい!)」

    前に座った議長はペラペラ話し続ける。

    デュランダル「アーモリーワンでの発進が初陣だったというのに大したものだ。この街が解放されたのも、君達があそこを落としてくれたおかげだ。いやぁ、本当によくやってくれた。」

  • 188二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 13:58:18

    アグネス・シン・レイ「ありがとうございます」
    アスラン「…」

    アスラン…。ここはお礼をいう所でしょう。まあ、黒海沿岸とコーカサス、カスピ海沿岸があんなことになって、私も言いたいことがいっぱい、いっぱい、山ほどあるけど。

    タリア「でも何ですの?」
    デュランダル「うん?」
    タリア「大西洋連邦に何か動きでも?でなければ貴方がわざわざ御出になったりはしないでしょ?」

    『貴方』ね。艦長もちょっとリラックスモードかしら。
    議長も艦長に肯き、その後顔を少し『議長』に戻す。
    デュランダル「兎も角今は、世界中が実に複雑な状態でね」
    タリア 宇宙の方は今どうなってますの?月の地球軍などは」

    そうそれ!ずっと気になっていたの。議長の見解は?

    デュランダル「相変わらずだよ。時折小規模な戦闘はあるが、まあそれだけだ。ただ、彼らの脅威、我らもよく理解している。評議会でも議論になってね。月に君たちも行ってもらうことになりそうだ」

    良し。ライトナ―評議員ナイス。月軌道で連合軍を千切って話投げてやるわ。
    アグネス「(ミネルバが直り次第かしら?それとも…)」

    アグネス「そして地上は地上で何がどうなっているのかさっぱり判らん。この辺りの都市のように連合に抵抗し我々に助けを求めてくる地域もあるし。一体何をやっているのかね、我々は」

    手を組み自嘲するような表情を浮かべる議長。まったく、本当に何をやっているのだか。火中の栗を拾ったからこうなっている。私達にしてみればいい迷惑だわ。

  • 189二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:00:03

    タリア「停戦、終戦に向けての動きはありませんの?」

    それも気になっていたのよね。ちょっと泥沼化してない?サクッと勝って賠償金と領土もとい租借地を分捕って、有利な軍事協定と貿易協定結びたいのに。

    デュランダル「残念ながらね。連合側は何一つ譲歩しようとしない。戦争などしていたくはないが、それではこちらとしてもどうにもできんさ。いや、軍人の君達にする話ではないかもしれんがね。戦いを終わらせる、戦わない道を選ぶということは、戦うと決めるより遙かに難しいものさ、やはり」

    シン「でも…」
    アグネス「失礼ながら」
    デュランダル「うん?」
    アグネス「発言を許可していただけるでしょうか?」
    シン「あ…すみません」

    シン…。あんた何!うるさいわね。

    デュランダル「いや構わんよ。思うことがあったのなら遠慮なく言ってくれたまえ。実際、前線で戦う君達の意見は貴重だ。私もそれを聞きたくて君達に来てもらったようなものだし。さあ」

    アグネス「では僭越ながら私から。思うに今回の事態を受けユーラシア連邦は総崩れ、連邦崩壊の危機に瀕しています。連合…、同盟条約加盟国全てとの包括的休戦は不可能でも、ユーラシア連邦との単独講和なら可能性が有るのでは無いでしょうか?」

    軍人の領分を越えた話ではあるかも知れないが、向こうが先に領分を越えたのだ。言ってやるわ。どう?

    デュランダル議長は少し含みのある微笑を浮かべた後、私に答える。
    デュランダル「興味深い考えだね。うん。単独講和か。覚えておこう。いや、素晴らしい」

    社交辞令か。余り興味がなさそうね。どうするつもり、本当にユーラシア連邦崩壊までやるつもりなの。

  • 190二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:02:53

    デュランダル「シン・アスカ君は、何だったのかな?」

    シンは少しためらいがちにおずおずと話し出す。でも途中からは、心がしっかりこもった強い声で。

    シン「確かに戦わないようにすることは大切だと思います。でも敵の脅威がある時は仕方ありません。戦うべき時には戦わないと。何一つ自分たちすら守れません。普通に、平和に暮らしている人達は守られるべきです!」

    アグネス「(そんなこと言うまでもないでしょうに。わざわざ何言っているんだか。大事な時間を無駄にしないでよ)」

    シンの言葉を受け、曇った顔のアスランが言葉を続ける。

    アスラン「しかしそうやって、殺されたから殺して、殺したから殺されて、それでほんとに最後は平和になるのかと、以前言われたことがあります。私はその時答えることができませんでした。そして今もまだその答えを見つけられないまま、また戦場にいます」

    聞き捨てならないわね。余人が口を挟む前にその言葉を打ち消しにかかる。ややもすればプラントの大義に異を唱えていると思われかねない発言だわ。

    アグネス「僭越ながら、ザラ特務隊員。それは通常の自衛戦争にのみ当て嵌まる観点です。この戦争は連合内一部勢力の全プラントを標的とした核攻撃…、つまり絶滅戦争からの防衛戦争として始まりました。であるなら、少なくともその勢力の戦力と交戦意思を粉砕する必要があります。これが我らの正義であり人類の普遍的価値観とも完全に合致しています」

    私の言葉に艦長とレイがビックっとする。ちょっと語調が強すぎたか。アスランは何か言いたげな顔で私を見返す。悲し気な…何かを思い出すような顔。何か文句あるの。逆にシンは感心したような表情をしている。あんた、私をなんだと思っていたの。

    その場に張り詰めた空気が流れる中、議長は立ち上がり、テラスに向かって歩き、町の夕陽を見ながら話を切り出す。

  • 191二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:04:31

    デュランダル「そう、問題はそこだ。何故我々はこうまで戦い続けるのか。何故戦争はこうまでなくならないのか。戦争は嫌だといつの時代も人は叫び続けているのにね」

    話の論点をずらしてきたわね。でも、ありがたい。自分が言ったことが間違っているとは全く思わないが、仮にも最高評議会議長の前で論争を始めるわけにもいかない。

    デュランダル「君は何故だと思う?シン」

    ここはこいつに話を振るのが正解か。艦長、アスラン、私、レイだとどうしても『色』が濃くなりすぎてしまう。

    シン「え!それはやっぱり、いつの時代も身勝手で馬鹿な連中がいて、ブルーコスモスや大西洋連邦みたいに。違いますか?」

    訂正。不正解だわ。あんたどうやってアカデミーの入試合格したの?今からでも補習受けてきなさい。

    デュランダル「いや、まあそうだね。それもある。誰かの持ち物が欲しい。自分たちと違う。憎い。怖い。間違っている。そんな理由で戦い続けているのも確かだ、人は」

    議長も軽く呆れた微笑を浮かべ、言葉を返す。う~ん。はぁー。恥ずかしい。しっかりしなさいよ。まあ、間違ったことは言ってないけど、言い方がね。

    議長はそこで表情を一気に改め、微笑を消し、声の音程を落として話を続ける。

    デュランダル「だが、もっとどうしようもない、救いようのない一面もあるのだよ、戦争には。たとえばあの機体、ZGMF-X2000グフイグナイテッド。つい先頃、軍事工廠からロールアウトしたばかりの機体だが、今は戦争中だからね。こうして新しい機体が次々と作られる」

    中庭に立って居るオレンジ色の機体はグフイグナイテッドというらしい。

  • 192二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:06:40

    デュランダル「戦場ではミサイルが撃たれ、モビルスーツが撃たれる。様々なものが破壊されていく。故に工場では次々と新しい機体を作りミサイルを作り戦場へ送る。両軍ともね。生産ラインは要求に負われ追いつかないほどだ」

    まあ、国家総動員令はまだ本国で出てないみたいだし、西暦の第一次・第二次大戦ほどじゃないかな。まだまだ余裕でしょ。

    アスラン「議長…」
    デュランダル「その一機、一体の価格を考えてみてくれたまえ。これをただ産業としてとらえるのなら、これほど回転がよく、また利益の上がるものは他にないだろう」

    いや…。大損でしょ。軍需産業は案外儲からないって、それ一番言われてるから。まあ、時代と状況によるところも有る。戦争太りした企業も過去になくもないけど。

    アグネス「(プラントの場合、実質国営企業だしね。オーブもそうだったわね。たしか)」

    シン「えぇ!」
    えぇ…。じゃないでしょう。アホか。あとで経済の話する?シン。

    タリア「議長。そんなお話…」
    シン「でもそれは…」
    デュランダル「そう、戦争である以上それは当たり前。仕方のないことだ」

    ああ、アジテーションね、議長の。真面目に聞くのもアホらしい。適当に聞き流しておこう。

    デュランダル「しかし人というものは、それで儲かると解ると逆も考えるものさ。これも仕方のないことでね」
    アスラン「あぁ…」
    シン「逆…ですか?」
    デュランダル「戦争が終われば兵器は要らない。それでは儲からない。だが戦争になれば自分たちは儲かるのだ。ならば戦争はそんな彼等にとっては是非ともやって欲しいこととなるのではないのかね?」
    シン「そんな!」

  • 193二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:10:02

    シン…お前の両親の勤め先は…

  • 194二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:10:23

    いや…。その武器余り。大量の在庫を抱えて大損でしょう。だから儲からないって。どんなに政治工作をしても、永遠に戦争できるわけもなし。大抵特需の後には不況が来る。大体、大規模戦争になれば貴族や資本家の子弟でさえも前線に行って死ななければならないのだから、世の中そう単純じゃないって。

    しかし、猶も議長はペラペラまくしたてる。うざっ!

    デュランダル「あれは敵だ、危険だ、戦おう、撃たれた、許せない、戦おう。人類の歴史にはずっとそう人々に叫び、常に産業として戦争を考え作ってきた者達がいるのだよ。自分たちに利益のためにね。今度のこの戦争の裏にも間違いなく彼等ロゴスがいるだろう」

    うん…。ロゴス。聞いたことのある名前ね。確か、巨大グローバルカンパニーの協調協力団体。プラントが勝ったら財閥解体して、資本は賠償金に全部没収したいと思ってたのよ。

    タリア「…」
    デュランダル「彼等こそがあのブルーコスモスの母体でもあるのだからね」
    シン「そんな…」
    アスラン「ロゴス…」

    へぇー。前に聞いたことがある風聞も強ち間違いでもないかもね。こいつの言うことだから割り引いて考えた方が良いのかもしれないけど。

    アグネス「(ブルーコスモスの母体がロゴス。最高評議会議長は少なくともそう認識している訳ね。主要人物の中には関係が深い奴も居るという噂は聞いたことがあるけど)」

    というかアスラン…。お父様から聞いてなかったの?途中から関係悪くなってたから無理か。

    デュランダル「だから難しいのはそこなのだ。彼等に踊らされている限り、プラントと地球はこれからも戦い続けていくだろう。できることならそれを何とかしたいのだがね。私も。
    だがそれこそ、何より本当に難しいのだよ」

  • 195二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:24:51

    格好をつけて、空に視線を遣る議長。は~あ。流されやすいアスランとシンに解説しなきゃいけないのか。後で―。軍需産業は有力な圧力団体ではあるけど、あくまで数ある圧力団体の一つだ。けれど―

    アグネス「(ロゴスは別ね。私も半信半疑。存在は陰謀論かも知れないと思っていたけど。もし、そんな独占的経営団体が地球に君臨しているなら、ぶっ潰して資本を接収しないと。賠償金と経済民主化を名目に。上手くいけば、戦後秩序でプラントが無双できるわ)」

    豪華なホテルの通路を赤いカーペットを踏みながら議長を先頭にして闊歩する。まあ、悪くない気分ね。何時かは一番前に私が立つつもりだけど。

    アスラン「ほんとに、よろしいのですか?」
    タリア「ええ、休暇なんだし。議長のせっかくの御厚意ですもの。お言葉に甘えて今日はこちらでゆっくりさせていただきなさい。確かにそれくらいの働きはしてるわよ、あなた方は」

    アスラン、人が良いわね。付け込まれそうで心配になるわ。…、もう付け込まれてたわね。

    アグネス「(というか私は最初から泊まるつもりだったけど。そういう流れだったでしょう)」

    見掛け倒しでないことを祈るわ、このホテル。さっき、メイドが茶菓子持ってこなかったこと忘れてないわよ。支配人呼び出してやろうかしら。でも、下々のものに鷹揚に接するのもエリートの務めではあるし…。

    ミーア「アスラン!」

    パタパタと元気な足音を鳴らしながら、ミーア・キャンベルが突然現れ、天真爛漫に駆け寄って来る。

    デュランダル「これはラクス・クライン。お疲れ様でした」
    ミーア「ありがとうございます」

    ミーアは軽く議長と艦長にお辞儀をするとアスランの下へ。う~ん。プロデュース失敗してない?偽物だとバレバレよ。これ。ラクス研究ちゃんとしたの?

  • 196二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:37:58
  • 197二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:39:04

    残りは好きに使ってね。

  • 198二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 15:18:35

    乙でした
    埋め埋め

  • 199二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 19:43:30

    大分本編と流れが変わりつつありますね
    ここからどうなるか楽しみにしています

  • 200二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 22:20:29

    うめ
    次スレもアグネスがんばれ

オススメ

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