- 1◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:46:11
- 2◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:47:10
- 3◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:49:03
前回のあらすじ
データ入力のバイトを始めた錠前サオリ。そこにはミレニアムでAIを使い、天国を作ろうとしている生徒がいた。 - 4◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:50:11
(同時刻、セミナーの執務室)
キヴォトス三大校が一つ、ミレニアムサイエンススクール。その予算や会計を担う生真面目な彼女、早瀬ユウカは頭を抱えていた。
「AI技術研究部から、横領の疑いねぇ……」
今朝、AI技術研究部の部員達から届いたその報告に、激務で耳がイカれたかと思ったほどだ。自分達が横領をしているんじゃないかと言う報告書を自分たちで書いて、予算の元締めであるセミナー会計のユウカに提出する。中々おかしな話だが、当のAI技術研究部も困惑しているらしい。
そんなAI技術研究部の報告によると、2ヶ月前にとある研究を取りやめたため、その分の予算を他の研究に回していた。だが今月の予算申請にはその研究が再開されたことにされていて、その分増額した申請がセミナーに出されていたそうだ。
「AI技術研究部の部長さん、もう一度確認するけど、その中止された研究とやらは本当に再開されてないのよね?」
「はい、再開されてません!なのにお金が増えて、それが使われた形跡があって、びっくりしたから報告に来たんです!部員達も心当たりがないそうで、ユウカさんが間違えるとも思えないし……」
こんな時だが、会計として信頼されてることにユウカは心の中で喜び、そして部長の誠実さに安堵した。
ここ、ミレニアムサイエンススクールの部活は常にお金に困っていると言っても過言ではない。より良い技術や作品を作るにはどうしてもお金がかかるから、ユウカには毎日のように予算増額の嘆願がやってくるし、何なら最初から馬鹿みたいな量の予算を申請してくる。しかしそんな彼女達でも、横領などの犯罪に手を染めることは基本的にない。しっかりと結果を出して追加予算を勝ち取ったり、作ったものを売ったり、バイトをしてお金を稼いでいる。みんな悪いことをしたら研究ができないと分かっているのだろう。ゲーム開発部とか言うギリギリを攻める連中や、盛大にやらかしたビッグシスターなどもいるがまぁ、それは置いといて、生徒達のそこら辺の誠実さをユウカは信頼しているのだ。
「となると……本当に横領?一体誰が?」
ユウカがそう呟いた瞬間、執務室にセミナー書記の生塩ノアが入ってくる。表情はユウカと部長ほどではないが険しい。 - 5◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:50:47
「AI技術研究部の部員さん達への聞き取りが終わりました」
「ノア!何か分かった?」
「いえ、部員さん達も心当たりが無さそうで、嘘をついているようにも見えませんでした。……ああ、部長さん申し訳ありません。セミナーの方でも聞き取りをする必要があったので、私の方でも部員の皆さんとお話をさせて頂きました」
「大丈夫、分かってますよノアさん。でも、やっぱり横領をしたのはうちの部員じゃないって考えていいですよね……?」
ノアは「まだ分からない」と言いつつ、首を縦に振った。ユウカも部員達を信じて頷く。それを見て部長はホッとしたように笑い、その後眉を吊り上げた。
「だとしたら、AI技術研究部の部長として許せません……!我が部員の、あの子の研究をダシにお金を掠めている奴がいるなんて……!」
「AIで天国を作る研究……だっけ?中止されて、もう2ヶ月も経つのね……」
その研究は色々あってセミナーも把握していた。たった1人で研究をしていた彼女のことも。それを思うと、ユウカとノアも部長の怒りには納得できた。なんなら自分達も怒りを覚えた。
「残念な結果になったけど、彼女は最後まで頑張っていた。そして彼女は今もミレニアムの生徒よ!いいように利用されて、黙ってられないわ!」
「それじゃあユウカちゃん、横領の捜査をするんですね?」
「ええ。ノアも手伝ってくれる?」
「もちろん、放っておけませんからね……!」
「ユウカさん、ノアさん……!ありがとうございます!」
部長は満面の笑みで感謝し、頭を下げた。ユウカとノアはそれに頷き、そして思考を切り替える。怒りのままに動くのではなく、冷静に問題に対処するために。一度深呼吸して、部長に問いかけた。 - 6◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:51:18
「改めてだけど部長さん、お金が使われた形跡があるって言ってたけど、何に使われたか分かるかしら?」
「はい、こちらに……」
そう言って部長はタブレット端末を見せてくる。画面にはとあるビルの一室の維持費として、とても考えられないような額が支払われたことを証明する電子明細が表示されていた。
「横領したお金はこの部屋に使われたことになっていたんですね。……この部屋って確か」
「はい、ノアさん。私達AI技術研究部が借りている部屋です。2ヶ月前まで、彼女が研究のために使っていました。今はもう誰も使っていなくて、維持費だけを支払い続けていたんです」
「そこを狙われたって訳ね。お金の行き先を調べてみるわ!」
「この部屋に直接行ってみるのも良さそうですね。ユウカちゃんが調べてくれる間に、私と部長さんで1度行ってみましょうか」
「はい!ご案内します!」
「2人とも気をつけてね!犯人がいるかも知れないから!」
「そん時は差し違えてでもぶちのめしますよ!!そのための重火器ですから!!」
(ミニガンの駆動音)
「部長さん、落ち着いて下さい!ね?」
「ノア……よろしくね?」
………約1名血気盛んな生徒もいるが、そうしてそれぞれの調査が始まったのだった。 - 7◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:51:52
(1時間後、ビルの一室)
順調に作業を続けている錠前サオリだ。このためにブラインドタッチを習得していてよかった。データ入力も、インタビューの書類をそのまま打ち込むだけなので簡単だ。
「本当はスキャナーとかあれば、書類をそのままデータにできたんだけどね〜」
そうぼやいた雇い主だが、私を雇うよりスキャナーとやらを買う方が安上がりではないか?聞いてみると、困ったように笑いながら答える。
「ああ、その……設置が面倒だし〜……コンセント!そう、コンセントがもう空いてないんだよ!AIの研究には色々機材を使うからさ〜」
「コンセント?私のスマホを充電してるところじゃダメなのか?」
そう言って私は提供された寝床にあるコンセントを指差す。言った通り私のスマホの充電器が刺さっているが、もう1箇所空きがある。あれを使えば大丈夫だと思うが……。
「ダメダメ!機材は専用のコンセントを使うの!スキャナーもそうなの!ハイ!この話終わり!ほさデータ入力して!」
「あ、ああ……了解した」
あからさまに慌てた様子で強引に話を中断された。雇い主は何かを隠しているのだろうか?何にせよ取り繕うのが下手だな……。まあいい、仕事を続けよう。
(銃声) - 8◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:52:26
「ん?外か?」
微かだが戦闘音が聞こえた。席を立ち、窓へと近づく。
「っ!近いな」
ビルの防音性のおかげで音が抑えられていたらしい。音源は遠いと思ったがビルの目の前だった。銀髪の生徒とミニガンを持った生徒が、ビルの目の前でドローンの群れと戦っていた。
「喧嘩か?」
「ああ…………産業スパイだよ」
いつの間にか隣に立っていた雇い主が答える。この雇い主、全く気配を追えない。手練れ……と言うより影が薄いのか、存在感が希薄な気がする。不思議な人だ。
「産業スパイ?」
「私のAI研究の成果を奪って自分達のものにしようとしてる悪い奴ら!だから私の方でドローンを使って迎撃しているの」
「なるほどな」
研究を狙ってる輩もいるのか。……彼女の、AIを使って天国を作る研究。成功すれば救われる人もいるはずだ。それを狙ってくるなんて……。
「雇い主、私はデータ入力より戦闘の方が得意だが、手伝おうか?」
「え?本当?ああでもダメ!バイトちゃんは引き続きデータ入力をお願い!バイトちゃんにしかできない仕事だからさ!」
「私にしかできない?そんなことはないだろう、雇い主が代わりにデータ入力をして、私が奴らを追い返す。適材適所じゃないか?」
「とーにーかーくーだーめーなーのー!!ほら、作業に戻って!!」
「あ、ああ……」
簡単な作業だが、私にしかできない?これに関しては、嘘を言っているようには見えなかった。釈然としないが作業に戻る。
その後戦闘は10分ほど続き、無事に追い返したようで辺りは静かになった。私も作業に没頭し、書類の量を目に見えて減らすことができた。1週間以内には終わるだろう。
その日は雇い主が用意した備蓄の缶詰とミネラルウォーターで夕食を済ませ、1日を終えた。明日も頑張ろう。 - 9◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 16:52:50
一旦ここまで、新スレでもよろしくお願いします。
- 10◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 17:06:10
10まで
- 11二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 17:12:11
これはなんとも…既に後味の悪そうな雰囲気が漂っている!
- 12二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 18:00:57
たておつおつ
これさあ……雇い主もうさあ…… - 13二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 18:09:13
- 14◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 18:22:52
- 15二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 21:37:19
天国なんて胡散臭いなぁ……とか言ったら刺されるなこれ
絶対ろくでもないよなぁ… - 16二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 22:18:26
最終的に暴走した依頼主をAIが調理して終了しそう
- 17◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 22:37:54
- 18二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 22:38:22
このレスは削除されています
- 19◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 22:41:42
幕間・サオリのバイト飯
13.ゴミ集積場の食堂の朝ごはん
食べた時のバイト:ゴミ収集
説明:食堂で提供される朝ごはん。メニューは日替わりだが、カレーは毎日出る。
コメント:どのメニューもボリュームたっぷりで、カレーはおかわり自由。バイトの間は毎日たくさん食べていた。本当に美味しかった。
14.紅茶とバラのケーキ
食べた時のバイト:ゴミ収集
説明:私が淹れた普通の紅茶と、放課後スイーツ部からオススメされたバラの形のケーキ。
コメント:紅茶は我ながら上手く淹れることができたと思う。ケーキはさすが放課後スイーツ部、いいものをオススメしてくれた。
何よりあの時はマミー人形がいたから、いつもより美味しく感じたと思う。短い期間でも、まやかしでも、あの人形は母を全うしてくれていたんだな。
………まいったな、危険だから早く忘れろと姫に言われているのに。 - 20二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 22:44:19
このレスは削除されています
- 21◆yQm0Ydhu/2pS24/08/03(土) 22:46:54
さすがに3食ロールケーキはちょっと……ミカ様じゃないんだからサオリは耐えられませんよ……
- 22二次元好きの匿名さん24/08/03(土) 22:53:57
依存にならなければよいものではあるんだろうね
線引きも踏みとどまる事も難しいんだけども - 23◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 01:07:22
本当は関わらないのが1番だったのですが、あちらから殴り込んできたものにはもう仕方ない向き合うしかないですからね……
- 24◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 01:27:33
これは独り言ですが、あくまでIFの話しですが、もしもサオリじゃなくて上司がマミー人形を拾っていたら、
上司「おう!お袋!」
奥さん「お義母さん!」
娘「ばぁば!」
……になってました。特に曇るような過去もないのでそのまま健全に歪な生活を送っていたと思われます。 - 25二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 05:22:26
インタビューの質問って「天国で何したい?」なのかな
- 26二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 08:16:57
- 27二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 12:44:55
土日で一気読みしちゃいました…!
ブルアカ全然知らない民ですがとても楽しく読ませていただいております - 28◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 19:08:09
ありがとうございます、楽しんでいただけて嬉しいです。是非ともゲームの方もやってみてください。楽しいですよ!
- 29◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 19:09:11
(3日目)
段々こなれてきた錠前サオリだ。作業スピードも上がって、どんどん書類が減っている。予定よりも早く終わりそうだ。このバイトが終わったらシャーレの仕事を手伝うのもいいかも知れないな。早すぎて最早指先が見えない先生ほどには至れていないが、きっと私も役に立てるはずだ。
「……それにしても、あの産業スパイ達の襲撃は今日も来るのだろうか……?」
「来ないで欲しいなぁ、昨日と一昨日でドローン壊されまくったし」
「……やはり私が戦おうか?」
「ダ〜メ、言ったでしょ?その仕事はバイトちゃんしかできないんだって。私書類触れないんだよね〜。も〜、どうして電子じゃなくて紙媒体でインタビュー記録取っちゃったのかな〜?」
「……用意したのもインタビューしたのもお前じゃないのか?」
「違うよ。元々この研究をしていた人。私はあの人の代わりに研究を続けてるだけだよ」
「……そうか」
前任者がいたんだな。この研究……AIを使って天国を作る研究について初日に概要を教えて貰ったが、議論の余地は多いがそれで救われる人もいると思う。それこそ、たくさんの人と相談しながらやるべき研究じゃないだろうか?
「相談したり、頼れる人はいなかったのか?例えば……そう、AI技術研究部。お前も部員なのだろう?彼女らが手伝ってくれれば研究も捗るし、産業スパイを追い返すのも楽なはずだ」
「嫌だよ」
雇い主はピシャリと言い切った。あまりにも冷たく鋭い声色で、私は思わず作業の手を止め、雇い主を見やる。 - 30◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 19:10:03
「あいつらはあの人の研究を今まで手伝ってくれなかった。あの人はずっと1人で研究して、インタビューも1人で駆け回ってた。挙句の果てにはあの人が動けなくなったらすぐに研究を中止したんだよ!誰も引き継いでくれなかった!………いや、応援してくれていたのは知ってるよ。ここの家賃とか電気代も出してくれていたし、あの人も納得してたよ。けどさぁ……私が納得できないんだ。あの人はずっと1人で、今もきっと1人なんだよ……」
「………」
いつものんびりとした雰囲気をしていた雇い主が、初めて感情を剥き出しにしてきた。声量にもだが、彼女がこんなにも重い感情を持っていたことにも驚き、思わず押し黙る。
あの人……この研究の前任者についてまだ知らないが、雇い主の大切な人なのだな。
「……ごめんねバイトちゃん、いきなり大声出しちゃって」
「いや、私も気に触るようなことを聞いてしまったな。すまない」
「いいんだよ、ただの私のわがままなんだから。きっとあの人はそんなこと思ってないけど、私がそう思ってしまって……だから外部の人間を、バイトちゃんを雇って頼ろうと思ったんだよね………」
なるほど、私を雇った理由はそれか。孤立していたが故に、意地を張っているが故に、外部の人間を誰でもいいから雇った。でも雇うための金や電気代などは、頼りたくないと思っているAI技術研究部が出しているもの。論理が破綻しているけど、本人もそれを分かっている。気持ちの問題なのだろうな。
「……天国を作るAIは、いつ頃完成する?」
「え?完成?……バイトちゃんがやってくれてるデータ入力が終わればすぐだよ」
「そうか。なら、完成したらAI技術研究部に話をしに行こう。言いたいことは言った方がスッキリするし、貰った支援にはしっかり感謝するべきだと思うぞ」
「……そうだね。その方があの人も喜ぶかもね………」
「………私も着いて行こう」
「え?いいの?」
「これも何かの縁だ、一緒に頭を下げてやるさ」
「…………ありがとう、バイトちゃん。……うん、研究頑張るね!完成させてあの人を喜ばせて、部活の人達にもありがとうって、この野郎って言って、素敵な天国を作ってみせるよ!」
「ああ、その意気だ」
雇い主の笑顔を見てホッとする。お節介だったかも知れないが、話せるうちに話して、仲直りをするに越したことはないからな。人とは簡単に会えなくなるものなのだから。 - 31◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 19:10:47
……その後、雇い主と色々なことを話しながら作業を進めた。雇い主は手を動かしているようには見えなかったが、それでも研究は順調らしい。熱意がある彼女がサボってるとは思えない、私の知らないところで何かをしているのだろう。
「……ところでバイトちゃん、君は死んだらどこに行きたい?天国って、どんなところだと思う?」
「……インタビューの質問だな。私に聞いてどうする?」
「たくさんの人のデータが欲しいんだよ。人によって理想は違うんだから、それに対応できるようにデータを集めたいんだ」
「…………」
「誰だって理想があるだろう?ああしたいこうしたい、なりたいものとか。千差万別のそれが全て叶う理想の天国!私はそれを作りたいんだ!教えてよ、バイトちゃんにとっての天国を!」
「…………そうだな」
私は言葉に詰まった。自分が天国に行けるとは思っていないからだ。罪を犯した私達は、償い、自分のために生きたとしても死んだ後は地獄だろうなと、自然とそう考えていた。だからどうしよう……死んだ後、私にとっての天国とはなんだろうか?
「……そう言う雇い主の天国とは何だ?」
「え?私?」
答えに窮し、思わず私は雇い主に問い返した。彼女の答えを聞けば、私もマシなことを言えそうな気がしたのだ。しかし雇い主も答えに窮しているようで、顔を思いきり歪ませている。
「……大丈夫か?」
「ああ、うん!大丈夫!ちょっと自分では考えてなかっただけ!そうだなぁ、私……作られたものが天国に行けるのかな?」
「……何?作られたもの?」
(スマホの着信音) - 32◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 19:11:20
とんでもない発言が飛び出してきた瞬間、話を遮るようにスマホが鳴った。着信は……先生からだ。
「すまないが出ていいか?今話していた先生からだ。もちろん、機密は守ろう」
「……先生って誰?」
「知らないのか?」
雇い主は首を傾げた。どうやら本当に知らないらしい。そんな彼女に私はシャーレの先生の話をした。私やキヴォトスの生徒達を助けてくれる頼れる大人、連邦生徒会所属連邦捜査部シャーレの先生。
雇い主は最初こそ目を輝かせていたが、段々と鋭い視線を送ってくる。産業スパイと同じじゃないかと警戒しているらしい。
「大丈夫だ、先生は生徒の味方だからな。私ですら助けてくれたんだぞ」
「そこまで言うなら……まあ、いいよ」
お許しが出たので、スピーカーにして電話を取る。……あれ?そう言えば何で雇い主はこの着信が先生からのものだと分かったんだ?画面は見えていないはず……。
「……もしもし、サオリ?」
「もしもし、先生か。久しぶりだな」
「久しぶりだね。ちょっといいかな?今サオリが何をしているのか教えて欲しい」
「________そのビルに、ずっと1人でいるみたいだけど……」 - 33◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 19:11:41
一旦ここまで。
- 34二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 19:18:13
デスヨネー
- 35二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 19:25:14
まだどういう結末を迎えるのかはわからんけど、
この依頼主には一度アリスと『会ってみて』欲しかったな……そうすればきっと…… - 36二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 19:32:48
- 37◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 19:34:34
- 38二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 19:56:51
人の心とか無いん・・・無いかもしれんなこの依頼主には
- 39二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 21:05:11
Singularity…
- 40◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 21:08:54
サイバーデスモモイさん!?
- 41◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 21:59:12
幕間・サオリのバイト飯
15.蟠桃(ばんとう)
食べた時のバイト:旅館の仲居
説明:桃に似た果物。キヴォトスでは⬛︎⬛︎自治区でしか栽培されておらず、契約している店を優先的に下ろしているため、少量しか市場に出ない高級品らしい。旅館は農家と契約していたため大量に届いていた。
コメント: 桃と比べると水分が少なくジューシーさは感じないが、その分歯応えがあり品のある甘みを感じる、とても美味しい果物だった。旅館のおやつとして毎回出されており、バイト後半では体から微かに晩冬の匂いがしたくらい食べた。あの時は細胞の半分くらいが蟠桃でできていたと思う。本当に美味しかった。
後に運良く市場に出たものを食べたが、旅館で食べたものの方が新鮮だったな。
16.蟠桃の天女
食べた時のバイト:旅館の仲居
説明:蟠桃の間に飾られていた屏風絵、『蟠桃の天女』の切れ端。
コメント:化け物から逃げ切った後、いつの間にか絵の切れ端を握り締めていて、それに気がついた瞬間無意識に食べてしまった。結局吐き出せなかったが大丈夫だろうか……今の所お腹を壊してはいないが。
味は紙の味がした。幼少期に飢えのあまりに食べた道端の段ボールよりは美味しかったと思う。高級な和紙だったのだろう。 - 42二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 22:16:46
- 43◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 22:21:56
- 44二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 22:43:08
そっちじゃねえ!
いやそっちも問題だけどどう考えても食べちゃいけない切れ端ィ!! - 45二次元好きの匿名さん24/08/04(日) 22:45:34
まぁ…無機物にいったのはまだマシな方でしょう、最終的にはアレになる訳で…
- 46◆yQm0Ydhu/2pS24/08/04(日) 22:54:27
- 47二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 00:07:53
おいおい!!!ちょっと待て!その紙絶対食っちゃダメなやつぅ!?
………ま、まぁ………きっと井戸の神様のお水がなんとかしてくれるはず……はずだよ……ね? - 48◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 00:43:53
- 49二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 00:54:54
まぁヒダルソウもなんとかなったしセーフやろ
こうしてどんどんサオリの胃が強靭になっていくな… - 50二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 07:44:53
もしかして、この生徒の正体は…AI…?
- 51◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 11:00:33
>>32で誤字があったのでここでお詫びします。
❌ 「すまないが出ていいか?今話していた先生からだ。もちろん、機密は守ろう」
◯ 「すまないが出ていいか?先生からだ。もちろん、機密は守ろう」
最初のプロットでは電話が来る前に先生の話をしていたんです。そこをカットしてたのですがセリフの訂正を忘れていました。
- 52◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 11:10:55
ああ、後これも気にしないで下さい。私のミスでした。ヒヨリを差し上げるので許してください。
>……あれ?そう言えば何で雇い主はこの着信が先生からのものだと分かったんだ?画面は見えていないはず……。
- 53二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 12:57:31
おそらくはAIで、紙に触れないのは多分ホログラムで実態がないんだろうな
この子を先生に会わしてみたいな
アリスでさえ受け入れた連中だ、このAIが邪悪な意思を持っていなければ生徒として迎えそう
今のところ悪い子ではなさそうだし、ただ作ろうとしてるものが完成したらキヴォトスの安全は保障しかねるけど - 54◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 19:17:27
(サオリが電話をとる少し前)
ユウカからの依頼を受けて、連邦捜査部シャーレの先生はセミナーの会議室にやって来た。部屋に入って早々、重苦しい空気を感じ取る。集まっていた生徒は皆表情を曇らせ、どうすればいいか分からないと言ったような面持ちで先生を待っていたり、何らかの作業をしていたようだ。
「みんな、お待たせ!直接会うのは久しぶりだね」
それに対して、先生は努めて笑顔で声をかけた。生徒の味方である大人として、頼られるべき先生として、不安の中の生徒達の心の支えとなれるように。肝心な時には余裕を崩さないようにしているのだ。
そんな先生の笑顔にはちゃんと効果があったようで、生徒達の表情が、そして会議室の空気が柔らいだ。頼れる大人が来たことで安心し、状況はきっと良くなると希望を持てたのだろう。それを裏切らないようにしないと、そう思って先生は笑顔の裏で気を引き締めた。
「お久しぶりです、先生!急な呼び出しに対応してくれてありがとうございます!」
「大丈夫だよ、ユウカの頼みなら喜んで」
「ふふっ、よかったですねユウカちゃん」
「揶揄わないで!ああもう、会議始めますよ!」
顔を真っ赤にしたユウカに急かされて、先生とノアは席に着く。会議室にはユウカとノア以外にも、ヴェリタスの小鈎ハレとAI技術研究部の部長が着席していた。参加者は先生を含めてこの5人のようだ。
「ハレも久しぶり、元気だった?」
「うん、久しぶり。今の所は……ぼちぼち……」
先生が声をかけると、ハレは一瞬微笑み返してすぐにノートパソコンに目を戻した。ずっと何かの作業をしているらしく、両指が忙しそうにキーボードを叩いている。
「あっ……もう」
エラー音が鳴った。上手くいっていないらしい。しかしすぐに再開し、先ほどより強く早くタイピングをしたのだった。
「……そして君は、会うのは初めてだね」
「は、はい!AI技術研究部の部長です!3年生です!よろしくお願いします!シャーレの先生!」
「うん、よろしくね」
先生が軽く会釈すると、部長は緊張しながら深々と頭を下げた。
一通り先生と生徒の挨拶が済んだところで、ユウカの進行の下会議は始まった。
「今回先生には、AI技術研究部の部費横領の捜査に協力して欲しいんです」
「横領?何があったのか、最初から説明してくれるかい?」 - 55◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 19:18:44
「はい。AI技術研究部から、部の予算について報告が上がったのが全ての始まりです。AI技術研究部は研究用にビルの一室を借りているのですが、そこの家賃や光熱費などの維持費が過剰に支払われており、その内の20万円がブラックマーケットの銀行に振り込まれていたんです」
「………ブラックマーケット?」
その名を聞いて先生は緊張感を強めた。独自の銀行や治安維持機構を備えた、その名前の通りの犯罪都市。連邦生徒会の力の及ばないキヴォトスの暗部だ。基本的に生徒が関わる場所ではない。なぜそんなところにお金が振り込まれたのか……最悪な理由が容易に思いつく。
「生徒に近づいて、利用している悪い大人がいるのか……。それとも、道を踏み外そうとしている子供がいるのか……にしては額が少ない気もするけど」
先生が眉間にしわを寄せてそう呟くと、先生以上に怒りを滲ませた部長が声を震わせた。
「許せません……!私達の部費を……しかもあの一室を利用する奴がいるなんて!」
「……部長さん。その部屋には何か思い入れがあるの?」
「ああ、はい先生。あそこは2ヶ月前まで、うちの部員が1人で研究をしていました。彼女のために用意した部屋なんです」
「そうなんだね……せっかくだからその研究についても教えてもらえるかな?それが狙いの可能性もあるからね」
「もちろんです!……あの研究は、あの子はAIを使って天国を作ろうとしていました」
「………天国?」
突拍子のない研究内容に先生は首を傾ける。AIと天国、関連性がなさそうな言葉に困惑していると、部長はタブレット端末を取り出して先生に見せた。画面に映っていたのは1人の生徒と獣人の老婆の写真だった。
老婆は病室のベッドで気持ちよさそうに眠っており、頭にはコードがついたパッチをいくつもくっつけている。そのコードの先は生徒のノートパソコンと繋がっており、生徒はそれを操作しながら微笑んでいた。
「これが、AIで天国を作る研究?」 - 56◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 19:19:30
「はい、この写真に写っている彼女が研究していたもの。AI技術研究部プロジェクトNo.1059……植物状態のような目覚める見込みがない人や、ガンの末期症状で苦しんでいる人、麻酔や鎮静剤が効かない人。そんな人達の脳に特殊な電磁波を流し、痛みや苦しみを遮断した上でその人達にとって理想的な、天国のような夢を見せる。そうして安らかに最後の時を迎えさせてあげる。……そんなシステムの管理制御、そして患者一人ひとりの趣味思考、人生経験から適切な天国の夢の生成を行うAI……その名もヘヴンを作っていたんです」
「なるほど……すごい、研究だね………」
実現したらたくさんの人が安らかに最後を迎えられるだろう。ただ使い方を間違えると大変なことになりそうだ。先生の懸念は当たっていたようで、部長は苦笑しながら言葉を続けた。
「あの子の解説を聞き齧った程度ですが……ヘヴンは健常者にも普通に使えるそうで、例えば人の感覚を遮断して夢の中に一生閉じ込めることもできるそうです」
「ああ、やっぱり……」
「あと研究が進んでからはこの写真のように頭にパッチを取り付ける必要がなくなって、遠隔から電磁波を飛ばして患者に天国を見せれるようにもなっていました。おかげで寝返りが激しい人でもパッチが外れたりコードが首に絡まったりしなくなったそうです」
「そっかぁ、首締まったら大変だもんね……」
「ああ、もちろんヘヴンが悪用されないようにセキュリティも万全に作っていましたよ!ご心配なく!」
……さすがミレニアムの生徒と言わざるを得ない進歩っぷりに、先生はただただ脱帽していた。そうしてそのAI、ヘヴンの説明を続けていた部長だが、段々と表情が陰り、目尻には涙が溜まっていく。
「……医療業界の人達と議論を重ねたり、天国生成の精度を高めるためにいろんな人にインタビューもしていました。本当に……本当に頑張っていたんです、彼女は。彼女にとって、この研究が青春だったんです」 - 57◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 19:20:16
「……研究をしていた子は、今はどこに?」
先生がそう聞くと、部長は堪えることができなくなり、ポロポロと涙を落とし始める。先生は心配して立ち上がったが、部長はそれを制して話を続けた。
「すみません、大丈夫です。はい……研究をしていた彼女は、2ヶ月前に事故に巻き込まれたんです。彼女も生徒なので体は頑丈でしたが、打ちどころが悪く……。もう、目覚めないと主治医の方が言ったそうです」
「……言いづらいことを聞いてしまったね。ごめん」
「いえ、いいんです。……それで、研究は中止にしました。ヘヴンの研究自体が、彼女個人でやっているもので、AI技術研究部には他にも研究していることがあります。それに倫理的にも責任が重いから、誰も引き継ごうとしませんでした。……私もそうです。自分の研究がしたくて、でもあの子が頑張ったことを完全に消したくはない、いつか引き継いでくれる人が来るかも知れない。そう思って部屋の維持管理をし続けていたんです。引き継がない私達が言えることではないかも知れませんが、あそこは私達にとっても大切な場所ですから……」
「そっか……。話してくれてありがとう」
泣きながらも話してくれた部長に感謝しつつ、先生はひどいことを聞いてしまったと反省した。
研究の引き継ぎに関しては、彼女達に責任はないだろう。部長が言った通り、他にもやりたい研究があったのだから。対応としては間違ってないと先生は思えた。
「だけど……となると犯人は尚更許せないね。その子の、そして部長さん達の大切な場所に入り込んでいるのなら……」
「はい!その通りです!」
部長は懐からミニガンを取り出し、今にも撃ちそうな勢いで返事をする。キヴォトス人はすぐに銃を出すことがある。先生はいまだに慣れない。結構感情的な子だなと思いつつ、先生は部長をどうにか落ち着かせようと、ノアと一緒になって宥めた。 - 58◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 19:21:14
「ほら部長さん、落ち着いてください」
「許せません!許せませんよ!錠前サオリ!」
「分かった!分かったから落ち着………うぇ?」
急に知っている名前が出てきて、思わず変な声が出た先生。するとずっとホワイトボードの前に立っていたユウカが咳払いをし、参加者達の視線を集める。
「ここからは私が説明します。先生、横領されたお金がブラックマーケットの銀行に流れたと先程説明しましたよね?」
「え?あっ、はい」
「その銀行口座の名義が、あのエデン条約調印式を襲撃したテロリスト……錠前サオリのものだと判明しました」
「んなっ!?」
「さらにこちら……」
いつの間にか先生の隣に立っていたノアが懐からスマホを取り出し、先生に手渡す。
「横領が発覚したその日、私と部長さんで実際にビルへ行ったのですが、無数のドローンに襲撃されて入ることができませんでした。ですがビルの窓から私達を覗いている錠前サオリの姿が見えたんです。こちらがその時の写真です」
先生は食い入るようにスマホを見つめた。限界までズームをされているがそれでもぼやけている、しかし確かにそこにはビルの下を覗くサオリの姿が写っていた。困惑した。
「え、さ、さ、サオリ……?」
「まだあります、ハレ」
「まだあるの!?ハレ!?」
「うん。ユウカから依頼を受けて、あのビルのハッキングと監視をしていたよ。監視カメラに、3日前にあのビルに入っていった錠前サオリの姿が録画されていたね。それ以降はずっと出てないみたい。今あのビルにいるのは錠前サオリだけだよ。ビルの中で生活してるみたい」
「そ、そうなんだね……」 - 59二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 19:21:52
- 60◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 19:22:00
「うん、ただ研究室のパソコンのハッキングが上手くいかないの。錠前サオリ……電子戦にも明るいんだね」
先生は必死に記憶の中のサオリを思い出した。何度か振り返るが電子戦に強かった覚えはない。ますます困惑した。
「あのビルもそうだけど、ミレニアムのセキュリティはキヴォトス随一。内部からの手引きでもない限りビルにも研究室のパソコンにも入れないはずなのに……さすがと言ったところかな?」
(ハレのパソコンから響くエラー音)
「……むぅ、ダメっぽい」
「あ、あはは……」
引き攣った顔で、渇いた笑いを搾り出す先生。にわかには信じられない、本当にあのサオリが、わざわざミレニアムまで来てこんな事件を起こすだろうか?それにビルに侵入までなら分からないでもないが電子戦はできないはずだ。しかし状況証拠はかんぺき〜なまでに揃っている。先生は頭を抱えた。
「とにかく!錠前サオリはあのビルの一室で何か企んでる可能性が高いです!もしかしたらヘヴンの技術を使って、またテロを起こそうとしてるのかも知れません!先生、錠前サオリの捕獲に協力して下さい!」
「へぁ!?あ、えっと……!」
考えがまとまる間もなくユウカに懇願される。ノアとハレと部長も、強い眼差しで先生を見た。状況はしっかり説明されたが何が起きているのか分からない先生はその視線に縮こまり、頭の中でクエスチョンマークを踊らせていた。
「あ、えっと……ちょっと待ってちょうだい!」
そして先生は、必死な形相でユウカ達に待ったをかけたのだった。 - 61◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 19:24:15
一旦ここまで。IT系は知識がないのでどこかでガバがないか不安ですね……。何かあったらお申し付けください。
- 62二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 19:32:41
研究者ちゃんが作ってたのは、すごくざっくり言うと安楽死支援用AIってことか
彼女がリタイアした理由が大人の陰謀とかじゃなかったのは良かったのかどうか……
ある意味今は当の本人にこそ必要かもしれないのも因果な話だ
事の首謀者が観測不可能な相手だから全責任がサオリに行きそうになってるの、完全にエデン条約紛争の再来で笑えない - 63二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 19:34:48
天国を完成させようとするAI(推定)これも一種のデカグラマトンと言えるかもしれない
- 64◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 19:59:43
- 65二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 20:03:14
いや~これは…う~んw
推定ヘヴンちゃんが完成させた後に何をするのか次第な気もするなぁ - 66二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 21:21:22
- 67二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 21:57:00
どうなる…?おそらく依頼主はAI的なのなんだろうが、ヴェリタスでも苦戦となると相当高度なモンだぞ
- 68二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 22:10:00
- 69◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 22:51:05
幕間・サオリのバイト飯
17.エンジェル24の生プリン
食べた時のバイト:事故物件ロンダリング
説明:エンジェル24が自社工場で製造している生プリン。トリニティのパティシエが監修し、百鬼夜行の新鮮たまごと牛乳を使い、ミレニアムの最新設備で量産している。お値段は普通のプリンより少し高い。
コメント:口の中で溶けて濃厚な甘味が広がる絶品プリンだった。カラメルも上品な味わいで思わず笑顔になった。ヒヨリにも1つ買ってやったが、調子に乗って3つくらい強請ってきたからお望み通り3つ買って目の前で食べてやった。たまにはいいだろう。 - 70二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 23:01:36
- 71二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 23:09:23
- 72◆yQm0Ydhu/2pS24/08/05(月) 23:15:54
- 73二次元好きの匿名さん24/08/05(月) 23:18:40
レッドウィンターでは重罪だから二度としちゃあダメだよ!
- 74二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 00:21:55
そんなに落ち込むほどなのか・・・
- 75二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 03:40:40
現実にある詐欺の受け子押し付けと似たような状況になってるのかな
報酬が発生しちゃってるからとんでもなくややこしい事になる
現実に近い意味での闇バイト/裏バイト感がある - 76二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 03:47:53
先生は「」じゃなくて""ですよ
- 77◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 10:09:12
- 78◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 10:11:50
- 79二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 10:26:31
- 80◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 15:44:42
- 81二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 15:46:10
- 82◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 15:48:53
- 83二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 17:47:56
下手すると『預言者』やセトの憤怒だのと毎月戦ってる生徒達がその辺の怪異になすすべ無しは解釈違いだー!とか言うのをいちいち相手にする羽目になりかねんし、
よほどのキャラ崩壊とかでもなきゃうちのキヴォトスではこうなんだよ!のスタイルで良いと思うべ
- 84二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 20:04:21
フムフムこれを使えば癌になった先生が安らかになくなる姿を見て泣き出す生徒たちを見れるのか…
ふふっふヤッター - 85二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 21:01:35
あー………未練かぁ……うーん……少女には救いあれ
- 86二次元好きの匿名さん24/08/06(火) 23:47:28
今日は更新ない感じか
- 87◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:49:17
「________錠前サオリは悪い子じゃない……?どういうことですか?」
一声で出鼻を挫いた挙句にそんなことを言い出した先生に、ユウカ、ノア、ハレ、部長は怪訝な視線を向けた。今度は4人が困惑する番だ。なんせ相手はあの錠前サオリ、エデン条約調印式の凄惨なニュースは今も覚えているし、その首謀者だと言うことも知っている。その時は先生も大変な目にあったと聞いている。
「確かにサオリは悪いことをした生徒だけど、彼女があんなことをするに至った原因はもう討ち倒したんだ。今はもう大丈夫。……きっと理由があるんだと思うんだ。だから今すぐ捕獲……と言うのは待って欲しい」
「先生………」
そう言われ、ユウカ、ノア、ハレは顔を見合わせた。3人は先生を信頼している。アリスを巡る騒動や、空が赤くなったあの日の戦い、そして日常の中で生徒のために奮闘する姿を見ているからだ。この人はキヴォトスの生徒達に、馴れ合いではなく真剣に向き合っている大人だと知っている。だからきっと先生は、自分達の知らないところで錠前サオリとも向き合い、話し合ったのだろうと察することができた。 - 88◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:50:02
しかし、先生と会ったばかりの部長は声を荒げた。
「信じるって……何を言っているんですか!?相手はテロリストですよ!きっと何か企んでるに決まってます!今もヘヴンを利用して、新たなテロ計画を練っているんですよきっと!あの子の研究が悪用なんてされたら、私……!!」
(ミニガンの駆動音)
「落ち着いて!……ごめんね、君の気持ちもよく分かるよ。大切なものに勝手に触れられるのは怖いし許せないよね。サオリはそんなことしない、大丈夫だって言っても、信用するのは難しいよね……」
部長は先生に宥められ、多少落ち着きを取り戻す。しかし目にはまだ怒りの色が残っていた。必ずや犯人に裁きを下そうと言いたげな鋭い眼光だ。
そんな彼女に先生は、懐からスマホを取り出して見せる。そして電話帳をスクロールし、錠前サオリの番号を画面に表示した。
「1度、サオリに電話をかけてもいいかな?サオリの話を聞いて、それで対応を考えさせて欲しい」
「……嘘をつくかも知れませんよ?」
「なんとかするよ。大人として、責任を持って対応する」
先生ははっきりと言い切った。それを見て部長は、なんとか飲み込むことができたらしい。大きく溜め息を吐き、ミニガンを下ろす。
「……分かりました、電話をお願いします。隣で聞いてますから」
「ありがとう、部長さん。ユウカ、ノア、ハレ、それでいいかな?」
「問題ありません」
「ユウカちゃんに同じ、です♪」
「いいよ、先生」
「ありがとう、みんな。それじゃあ」
いいとは言ったが、生徒達は緊張した面持ちで先生を見守った。対する先生はサオリを信じているからか、何の不安も無さそうに、いつも通りに電話をかける。スピーカーの状態にしてスマホをテーブルに置き、呼び出し音が会議室に響いた。たった数コールの数秒が酷く長く感じる中、電話が繋がった。 - 89◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:50:50
「……もしもし、サオリ?」
「もしもし、先生か。久しぶりだな」
低音だが柔らかく、親しげな声。これがあの錠前サオリか?変に警戒し、凶悪なテロリストのイメージを持っていた分、実際には真逆の、随分と違う雰囲気の声だったことに生徒達は驚く。そんな様子も気にせず、先生はサオリに返事をした。
「久しぶりだね。ちょっといいかな?今サオリが何をしているのか教えて欲しい」
一度口を閉じ、唾を飲み込む。先生もどうやら緊張はしていたらしい。だがそれはサオリが悪いことをしているのではないかと言う猜疑心からではなく、サオリが何か悪いことに巻き込まれているのではないかと言う不安から来たものだ。
「________そのビルに、ずっと1人でいるみたいだけど……」
「ビル……?ああ、確かにビルにいるが……どうしてそれが分かったんだ?」
「サオリがビルにいるのを見た生徒がいたんだ。それで気になったんだよ」
「そうか、なるほどな……」
含みのある言い方に、今度は会議室の生徒達が唾を飲んだ。サオリのことをよく知らない生徒達は「目撃者を聞き出して後日始末しに行くんじゃないか」と想像してしまった。サオリが何を企んでいるのか?戦々恐々としながら次の句を待つ。
そして、サオリからの返答が来た。
「________いや、隠すことでもないな。データ入力のバイトをしているんだ」
「データ入力?」
「ああ、ミレニアムのAI技術研究部の部員に雇われてな。書類をパソコンに打ち込むだけで20万円も給与が貰えるんだ。終わるまではビルから出られないのは大変だが、雇い主の研究の役に立てるのは嬉しい」
「そ、そっか!頑張ってるんだね!」
先生はすぐに皆に目配せをした。ほら、サオリは何も悪いことをしていないと。一連の会話を聞いていた彼女らも、その様子からサオリが嘘をついているようには思えず、認識を改めて始めていた。エデン条約の後に何があったかは分からないが、更生しているようだと感じた。 - 90◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:52:09
「……ああ、そうだ!先生、相談したいことがある。実は産業スパイが度々襲撃に来るんだ」
「さ、産業スパイ?」
「ああ、今日はまだ来ていないが、昨日と一昨日にこのビルに攻め入ろうとしたらしい。雇い主がドローンを使って追い払ったそうだが……全く、ミレニアムも意外と治安が悪いのだな」
先生は意味が分からなかったが、生徒達……特にノアがすぐに気づいて先生に耳打ちをする。
「……分かった、聞いてみる。……サオリ、その産業スパイとやらはどんな見た目だった?」
「見た目か?昨日は作業に集中していたから分からないが、一昨日は白い長髪の生徒と、ミニガンを持った生徒が来ていたな。ビルの窓から遠目に見ていたから、それ以上の特徴は分からないが……」
「そっかぁ、ちょっと……心当たりがあるかも知れない」
「本当か!?」
サオリの嬉しそうな声がスマホから響く。先生は心当たり……ノアと部長を見やった。2人は無言で頷き、自分を指さした。
「雇い主がドローンを使って追い払ってはいるが、毎日来られると研究も進まないだろう。先生、心当たりがあるのならそいつらを止めてくれないか?雇い主は天国を作るAIの研究をしているんだ。病気で苦しむ人を救えるいい研究だと思う。それを盗まれるのは可哀想だ」
「そ、そうだね……」
とは言ったが先生もユウカもノアもハレも部長も、頭上でクエスチョンマークを踊らせていた。自分達が産業スパイ扱いされている?サオリは白っぽいが、雇い主は誰だ?そのビルで、あの子がしていた研究をしている?どうして?
瞬間、スマホから別の人間の声が入ってきた。
「コラ!バイトちゃん喋りすぎ!」
「ああ、すまない……!先生なら助けてくれると思ったんだ」
「も〜、気持ちはありがたいけど、色々企業秘密があるんだから。そう言うのは私に任せてよね」
「……面目ない」 - 91◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:53:45
サオリとは正反対の高音で、怒っていても少しふにゃふにゃした声色。それを聞いた瞬間、先生とユウカ、ノアはすぐにハレへと視線を向けた。確かハレの調べによると、あのビルの中にはサオリしかいないはずだ。見つめられたハレは顔を真っ青にして横に振った。ハレは自信を持って情報を提供した。間違いなく、あのビルの中にはサオリしかいないはずだと目で訴えた。
「キャアアッ!!」
「っ!どうしたの!?」
不意に部長が悲鳴を上げ、スマホに震える指を刺した。
「あの子の声……何で!?」
「っ!?サオリ!そこに誰かいるの!?サオリは今1人じゃないの!?」
「どうした先生?……いや、1人じゃないぞ。ずっと雇い主のAI技術研究部員と一緒にいたんだ。今も彼女は隣にいる」
氷点下まで落ちた会議室の空気に気づかず、サオリは不思議そうに答えてくる。瞬間、部長はスマホを掴み取り、錯乱した様子で叫び出した。
「そこにいるのは誰!?あの子は病院にいて、目覚めていないはず!!あなたは誰なの!?」
「……あれ?部長さん?そこにいるの?」
いるはずのないあの子の声は驚いた様子でそう返す。
「雇い主、知り合いか?」
「……うん、AI技術研究部の部長さんだよ」
「そうか、先生と一緒にいたんだな」
「みたいだね……ああ、ごめんね。自己紹介がまだだったよね!バイトちゃんの雇い主だよ!あの人に変わって研究をしていて、バイトちゃんにはその手伝いをしてもらっているよ!」
「嘘つかないで!うちの部にそんな声の人は……あの子しかいない!本当に……あなたは誰?」
「………」
しばしの沈黙の後、スマホの向こう側、サオリの隣にいるその声は、会議室で戦慄している者達に自己紹介を始めた。
「……はじめまして、私はヘヴン。AI技術研究部プロジェクトNo.1059、末期患者向け医療用安楽化制御AIのヘヴンだよ」
「嘘……?部長さん!?AIが勝手に動いてるってこと!?」
「ユウカさん、あり得ません!中止になった時にシャットダウンしたはず!何で……!?」
「ハレちゃん、何か分かりますか?」
「発達したAIが自分の意思で動いてるのかな……?1番近い事例は、ノアも知ってるアイツらかな……」 - 92◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:54:33
ハレの「アイツら」と言う言葉に先生、ユウカ、ノアの緊張は増した。今もなお各地に出没している機械の預言者、デカグラマトン。自分達が話しているのがそれに近い存在かも知れないと理解する。
「………君が、ヘヴンなんだね」
先生は恐る恐る言葉を紡いだ。ヘヴンの目的は分からないが、今隣にはサオリがいる。もし機嫌を損ねたら……。
「そうだよ先生、よろしくね」
話せることが嬉しそうな、しかし警戒の色が見える声色。会議室の面々は、AIなのに感情の起伏を感じ取れるその声がひたすらに不気味に感じていた。
「………え?AI?雇い主は人間じゃないのか?」
「……え?サオリ知らなかったの!?」
「知らなかったも何も、目の前にいるんだぞ?普通に人間の姿をして……あれ?触れない?」
「ああ、ずっと騙しててごめんね。実は私、AI技術研究部の部員じゃなくて、AI技術研究部の部員が作ったAIなんだよ。今バイトちゃんが見ているのは、私がバイトちゃんの脳に電磁波を流して、私の姿が見えてるように錯覚させたものなの」
「そんなことができるのか……さすがミレニアムと言ったところか」
「感心している場合じゃないでしょ!?」
恐らく無意識に出たのであろうその言葉。思わずツッコミを入れたユウカに会議室の全員が同意する。そして先ほど部長が話していたヘヴンの説明を思い出した。
『あの子の解説を聞き齧った程度ですが……ヘヴンは健常者にも普通に使えるそうで、例えば人の感覚を遮断して夢の中に一生閉じ込めることもできるそうです』
『あと研究が進んでからはこの写真のように頭にパッチを取り付ける必要がなくなって、遠隔から電磁波を飛ばして患者に天国を見せれるようにもなっていました。おかげで寝返りが激しい人でもパッチが外れたりコードが首に絡まったりしなくなったそうです』
『ああ、もちろんヘヴンが悪用されないようにセキュリティも万全に作っていましたよ!ご心配なく!』
今、サオリの脳にはその電磁波が流されているのだろう。サオリの同意もなしに、ヘヴンの独断で。
「……ねえ、ヘヴン」
「なぁに?先生」
「君はサオリをどうするつもりなの?」 - 93◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:55:29
「どうするも何も、バイトちゃんにはデータ入力をして貰いたいだけだよ。私に実態はないから、代わりに書類を片付けて欲しい。それが終わったら天国は完成するんだよ!あの人の代わりに、私は私を完成させられる……!」
「そのために、横領もしたの?」
「ああ、それね。突然予算が配分されなくなったし、バイトちゃんのお給与も用意しなくちゃだったから、ハッキングしてお金周りをいじっちゃったの」
「何!?雇い主!?つまり私の給与は横領した金と言うことか!?」
「うん……でも仕方ないじゃん!お金ないと研究はできないんだから!」
「しかしだなぁ……悪いことだぞ!」
「うぅ……!」
言い合いを始めたサオリとヘヴンの声を、先生は何とも言えない顔で聞き流す。そして今スマホを握っている部長の顔色を伺った。青を通り越して真っ白で、小刻みに震えていた。
「大丈夫?」
「……大丈夫です。先生、ヘヴンと話をしていいですか?」
「……何を話すの?」
部長は先生を一瞥し、その問いに答えることなくスマホに声を当てた。
「……もしもし、ヘヴン?聞こえますか?」
「ん?どうしたの?部長?」
「……昨日と一昨日、私とセミナーのノアさんがそこに行こうとしました。でも無数のドローンに邪魔をされた。それもヘヴンがやったんですか?」 - 94◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:57:35
「……ごめんね。意地を張っていたんだ。研究を引き継がなかったみんなが気に入らなくて、近寄って欲しくなくて……。それで産業スパイだってことにして、ドローンに襲わせたんだよ」
「そう……」
「雇い主、それも嘘だったのか……」
「バイトちゃんも、ごめん。でもね、AI技術研究部のみんながあの人を応援してくれていたことは知っているから……本当にくだらない意地でした。ごめんなさい……」
「いえ、お気になさらず。それに関しては、私達も思うところがありましたから」
「……そっか。じゃあ、今後は私自身で研究を続けるね。あの人の代わりに、天国を作ってみせるから!」
「いいえ、計画は中止です」
「……え?」
部長はピシャリと言い放つ。
「……あなたは中止された研究を独自で進め、ハッキングで資金を横領して人を雇い、ドローンを操作して人を襲った。AIの域を……あなたに課された役目を大きく逸脱しています。………今回のことではっきり分かりました。私達AI技術研究部はあなたの責任を負うことができません」
「________ヘヴン、あなたを廃棄します」 - 95◆yQm0Ydhu/2pS24/08/06(火) 23:59:31
一旦ここまで。遅くなってしまい申し訳ありません。データ入力編今までで1番難しい……
明日ですがリアルが忙しくなるのでお休みさせていただきます。適当に保守しておきますが、何かあったらよろしくお願いします。 - 96二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 00:01:23
これは暴走しない?コレ
もう暴走してたわ… - 97二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 00:05:25
間違った事は言ってないんだよね、脳に干渉できるのもあわせて危険だから
ただ、出来れば先生預かりとかで研究を続けて欲しくもある - 98二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 00:12:15
善意で動いているからこそ止められないし、善意で動いているからこそ止まれない
地獄への道は善意で舗装されているってやつだね
誰か善意ではない物差しで善意を否定できる人はいるかな - 99二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 00:29:22
おーーーーん、まずいまずいぞ。これはまずい
- 100◆yQm0Ydhu/2pS24/08/07(水) 00:49:38
- 101二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 02:07:29
うーんマトリックス
- 102二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 02:23:52
部長ちゃんは電子戦でも銃撃戦でもヘヴンに勝ててない
つまり制御できてない訳で、そんな相手に「あなたの行動に責任を持てないから死んでもらいます」と一方的に言うのも、まあそれこそ無責任な話ではあるよなぁ
制御できない相手をどうやって廃棄するんだという
しかしこの場にはキヴォトスで最も「責任を負うこと」に精通した人物がいる……! - 103二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 08:06:55
- 104二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 09:35:45
○してやる……絶対に○してやるぞ錠前サオリ……!にならなくて良かった
先生のおかげもあるけどこの辺は舞台が直接エデン編に関わってないミレニアムな点が活きてる感あるね - 105◆yQm0Ydhu/2pS24/08/07(水) 10:19:13
- 106二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 15:20:49
最初から全部読ませていただきました。魅力的な作品をありがとうございます!続きを楽しみにしていますが、どうか無理はなさらぬよう。
- 107◆yQm0Ydhu/2pS24/08/07(水) 16:00:07
読んでいただきありがとうございます……!緩く続けていければと思っているので、今後ともよろしくお願いします。
- 108二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 17:47:48
ふむう‥これは単なるAIの暴走なのか、それとも…
- 109二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 18:07:43
このレスは削除されています
- 110◆yQm0Ydhu/2pS24/08/07(水) 18:38:07
幕間・サオリのバイト飯
18.小籠包弁当
食べた時のバイト:シャーレ案件・植物採集
説明:山海経の駅で売られている駅弁の一つ。常に熱々の状態で売られている。
コメント:小籠包は生地がふわふわ、中のスープが熱々でとても美味しかった。だが火傷しそうになった。
駅弁のあの特有の特別感と言うか、きっと探せばもっと美味しい小籠包を出す店があるかも知れないが、この小籠包弁当が本当に美味しいと感じるあの感覚は何なのだろう。不思議だな。
追記:何も味だけが全てじゃないんだよ。食べる場所や、その時見てるもの、聞いている音でスイーツはもっと美味しくなるのさ。それこそがロマン、覚えておいてね。
ー柚鳥ナツ - 111二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 19:08:21
駅弁の特別感良いよなぁ……
- 112二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 19:30:44
旅館の料理(普通)、エネルギーバー(襲撃)、おにぎり、旅館の料理(inヒダルソウ)、モドシユリ、盗んだ野菜、着物と錚々たるラインナップの中からどれが次のバイト飯にピックアップされるのか楽しみだなあ(しろめ)
- 113二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 20:29:52
ヒダル草も寄生してこなければ美味しいのかもしれない
- 114二次元好きの匿名さん24/08/07(水) 22:26:06
- 115◆yQm0Ydhu/2pS24/08/07(水) 23:09:07
先生もテンパってたんです
- 116二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 07:49:48
えぇ…
- 117◆yQm0Ydhu/2pS24/08/08(木) 08:59:08
続きは今夜更新でよろしくお願いします。
幕間・サオリのバイト飯
19.モドシユリ
食べた時のバイト:シャーレ案件・植物採集
説明:⬛︎⬛︎自治区特有のユリ科の植物。山菜のウルイによく似た見た目をしているが毒を持っており、食べると強烈な吐き気に襲われて、その名の通り胃の中のものを戻してしまう。
コメント:素手で触るとヒリヒリとした痒みと腫れが発生した。味は本当に不味く、人が食べていいものではない。これが山菜とよく似ているのは嫌がらせとしか思えない。山菜採りをする時は気をつけよう。
20.ヒダルソウ
食べた時のバイト:
説明:
コメント:
追記:根絶作戦実行中。
ー連邦捜査部シャーレ - 118二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 11:26:27
頑張れ先生、頑張れシャーレ!因習村を殲滅だ!
でもこれ、下手に村人のヒダルソウを根絶したらヒダル様が動き出しそうで怖いな・・・・・・怪異に詳しい生徒を総動員しないと - 119二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 12:20:09
火をつけろ 燃え残ったヒダルソウに
- 120二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 13:14:54
やっぱりヒダル草は植物よりも菌類の可能性が…
キヴォトスの外から来たる粘菌状の生命体 - 121二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 14:31:04
ゲーム的にはヒダルソウを根絶したら弱体化するギミックボスな気がするヒダル様
- 122二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 19:15:59
このレスは削除されています
- 123二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 19:35:07
- 124二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 20:07:25
やっぱこれ冬虫夏草とかその類なんじゃないの?ヒダルソウ
- 125二次元好きの匿名さん24/08/08(木) 23:42:27
ヒダルソウ自体は怪異妖怪神性じゃなくてただ特殊な性質の植物だよね(追いかけてくる彼からは目を逸らしつつ)
- 126二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 01:06:34
人に根付いたヒダルソウはどうやって根絶すればいいんだろうね・・・
- 127二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 01:53:27
1は忙しかったかな?ちょっと心配だ
- 128◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:02:45
「________私を……廃棄?」
絞り出すようにそう呟いた雇い主。その顔は酷く青ざめ、そして驚いており、体も強張っているように見えた。……だがこれも雇い主、AIが見せる幻影なのか。私は表現される感情の幅広さに驚きを隠せなかった。
……データ入力のバイトをしている錠前サオリだ。仕事の状況は……ピンチと言って差し支えないだろう。たった今、私が研究を手伝っている雇い主が実はAIだったと言う事実を聞かされた。そしてそのAI……末期患者向け医療用安楽化制御AIのヘヴンが廃棄されようとしている。
……ことの始まりは1本の電話からだった。私が信頼する大人の、シャーレの先生からかかってきた電話。最初は偶然私がミレニアムにいることを知って、心配してかけてきたように思えたが、どうやら私のバイトについて探りを入れていたようだ。それは別にいいのだが、あちらがこちらの雇い主の声を聞いた瞬間に状況が大きく変わった。
上記の通り、実は私の雇い主はAI技術研究部の部員が作っていたAIだったらしく、しかもそれが独断で、横領なんてこともして研究を続けていたらしい。さらには自分の研究を手伝わず、あまつさえ中止した他の部員を許せずに、彼女らがこのビルに来た時にドローンで襲っていたらしい。な、なんてAIだ……。この手の技術には全くと言っていいほど触れてこなかったが、ここまで発展しているとは。
……そんな越権行為をしていたことが発覚し、先生と一緒にいたAI技術研究部の部長が事態を重く見たのだろう。雇い主を廃棄すると宣言してしまったのだ。 - 129◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:04:18
「________部長、どうして?私はただ……」
「ヘヴン!!シャットダウン!!」
瞬間、私の目の前から雇い主の姿が消えた。目の前にあったパソコンの電源が切れた。ビルの一室にあったあらゆる機材から音が消え、私だけが取り残された。
「雇い主……!?雇い主が消えた!どうなっている!?」
「AI技術研究部が製造したAIには、緊急時のためにすぐに機能を停止できる機能を用意しています。例えば今のように、私の命令一つでシャットダウンができます」
部長は淡々とそう答えた。信じ難いことだが、実際に目の当たりにすると私の中で現実味が増していく。雇い主は本当にAIで、私が見ていた姿は頭に電磁波を流すことで見せられた幻影。……先ほどから驚きっぱなしだな。
スマホから雑音、あちら側のスマホをテーブルに置いたようだ。部長の大きなため息が聞こえる。力が抜けて座り込んでいるのだろう。そんな部長に、先生が問いかけた。
「部長さん、本当にヘヴンを廃棄するの?」
「……すぐにビルへ向かいます。そして廃棄します。ユウカさん、ノアさん、ハレさん、先生。……そして錠前サオリさん。巻き込んでしまって申し訳ありません」
電話の向こうにいる他の生徒と先生、そして私に沈痛な声で謝罪する部長。
とんでもないことをしでかしたのは事実で、それで責任を取れない、これ以上暴れるくらいなら廃棄というのは間違ってないと思う。
……だが、その分野に明るくない素人で、何の責任もない部外者だが、少し思うところがある。
「……AI技術研究部の部長……だったな。雇い主……ヘヴンの廃棄だが、何もすぐにしなくてもいいんじゃないか?」
「……正気ですか?錠前サオリさん?あなたも被害者なんですよ!?」
「そうだな。知らなかったとはいえ、ヘヴンが違法に手に入れた金で雇われて、ヘヴンの独断で行っていた研究を手伝っていた。挙句に頭には電磁波を流し込まれていたらしい。……理解している」
「それなら何で!?……あ、もしかしてヘヴンに何か吹き込まれたんですか!?ああもう!今すぐに叩き壊してやらなきゃ!」
瞬間、立ち上がる音とミニガンの駆動音が聞こえてくる。恐らく部長が出した音で、カッとなっているらしい。慌てて否定と弁解をしようとしたが、その前に先生のよく通る声が響いた。 - 130◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:05:07
「落ち着いて部長さん!……サオリは大丈夫。そうだよね?」
「……ああ、そうだ。私はヘヴンに何もされていない」
そう言って私はスマホを手に取る。幾らか操作し、ビデオ通話モードに切り替えて、真っ直ぐカメラを見つめた。あちらもそれに気がついてビデオ通話に切り替えた。やっと顔を見て話せるな。そこにはスマホを手に持ち、その場の全員を画角に収めようと手を伸ばしている先生と、知らない顔の生徒が4人いた。
「声は聞こえるか?カメラは大丈夫だろうか?」
「大丈夫だよサオリ!こっちはどう?」
「問題ない。先生と……それ以外は全員初めて見る顔だ。初めまして、私は錠前サオリだ。よろしく頼む」
自己紹介をし頭を下げると、画面の向こうの生徒達は驚いた様子で、しかし丁寧に自己紹介を返してくれた。
「テロリストって聞いてたから、もっと乱暴な人だと……」
ユウカがそう口走り、私は思わず目を逸らした。やったことは確かだ、これが罪を背負うということなのだろう。
「ご、ごめんなさい!私達、そのビルに錠前サオリ……さんがいるって分かって、もしかして悪いことをしようとしてるんじゃないかと思って……!」
「それで先生をお呼びして、対策を考えていたんです。……先生が止めて下さってなかったら……」
「多分突撃してただろうね。みんなであなたに銃を向けていたと思う……」 - 131◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:05:46
思っていた以上に私の状況は悪かったらしい。だがそう考えるのも自然なことだろう。
「いいんだ、気にしないでくれ、ユウカ、ノア、ハレ。そして……」
私はずっと死にそうな、思い詰めた顔をしている部長に目を移した。
「ごめんなさい……本当に、本当に……。私はサオリさんが悪い奴だと決めつけていました……本当は私達のAIの被害者だったのに……」
「……部長殿。ヘヴンは前任者が1人で研究していたと聞いている。その人が研究できなくなって、それでヘヴンが代わりに研究しているとも。……詳しく教えてくれないか?」
部長の大きく見開かれた目を覗き込む。その目は少し泳いだ後に、私の目に合わせてきた。
その後、部長は前任者についてゆっくりと話してくれた。1人で研究やインタビューをこなしていたこと、部長を含めた部員はそれを応援していたこと、そして2ヶ月前、事故にあったこと。生きているが、もう目覚めないことを。
「________まさか、ヘヴンがひとりでに動き出して、研究を続けていたとは思いませんでした。あの子もきっと驚くと思います」
「そうだな。ヘヴンがそんなにその人のことを好きだと知ったら、きっと驚くし喜ぶだろう」
「……好き、ですか?」
「ああ、私はそう思った。……このバイト中にヘヴンと話をしたのだが、前任者のために、喜ばせるために研究をしていたそうだ」
『…………ありがとう、バイトちゃん。……うん、研究頑張るね!完成させてあの人を喜ばせて、部活の人達にもありがとうって、この野郎って言って、素敵な天国を作ってみせるよ!』
『ああ、その意気だ』
「________お前達を悪く思ったり、産業スパイだと言いがかりをつけたり、そういう危うさは確かにあった。だが、ヘヴンを生み出したその人への気持ちは本当だったと思う」
「……ヘヴンが、そんなことを………」
私は強く頷いた。AIと話をしたのはヘヴンが初めてだが、間違いないと確信していた。 - 132◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:06:38
不意に、ハレが部長の肩に手を置いた。
「AI技術研究部でも作れたことはないんじゃない?そこまで強い自我を持った子は。私もAIは齧ってるけど、そんな子は作れないよ。……あの子はすごかったんだね」
「……はい。あの子は本当に頑張ってて、ヘヴンのことを、本当に大切に思っていました。だからきっと、ヘヴンもそんなことができるようになったんでしょうね……」
瞼の裏に何かを思い出しながら、部長はしみじみと呟く。しかしすぐに目を鋭くし、私に向き直った。
「……だからこそ、だからこそ私はヘヴンを管理しないといけない、しないといけなかったんです。こんなにもたくさんの人に迷惑をかけてしまったからには……部長として、責任を持って……!」
「……それは部長として、正しい考えだと思う。だが少しだけ待ってくれないか?頼む」
そう言って私は頭を下げた。スマホを持ちながらだからぎこちないが、しっかりと映るように、ちゃんと伝わるように。
「……さっきから、どうして庇うんですか?錠前サオリさん、あなたはヘヴンが怖くないんですか?」
「……怖くないと言えば嘘になる。知らないうちに色んなことをされていた、騙されていた。私達以外にもそうするかも知れない。……だが、ヘヴンはそれができるほどの知性を持っているのなら、それならこんなことをしてはいけないと叱って、話し合って、まだやり直せると思うんだ」
私がやり直せているように、ヘヴンもきっと……そう思って部長を説得する。それと同時に先生にも頭を下げた。
「ヘヴンを見守ってやって欲しい。AIだから、生徒ではない。先生には関係のない話だ。それでも……」
「……それだったら、サオリにも関係ない話じゃないかな?サオリはただのバイトで、そこまでする義理はないと思うよ?」 - 133◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:08:09
「そうだな。だが、されどバイトだ。お金の出所はともかく、私はヘヴンに雇われた。それに……」
『そうか。なら、完成したらAI技術研究部に話をしに行こう。言いたいことは言った方がスッキリするし、貰った支援にはしっかり感謝するべきだと思うぞ』
『……そうだね。その方があの人も喜ぶかもね………』
『………私も着いて行こう』
『え?いいの?』
『これも何かの縁だ、一緒に頭を下げてやるさ』
「……一緒に頭を下げてやると約束したんだ。だから最後までやり遂げたいんだ」
「……そっか。それなら部長さん、それでいいかな?」
「先生!?ですが、それでもしまたサオリさんや他の人に迷惑をかけてしまったら……!私にはそんな重い責任は………」
「大丈夫、私が責任を持って見守るよ。ヘヴンが悪いことをしたら、私が何とかする。……それに、部長さんもヘヴンと話をしたいんじゃないかな?」
「わたしが、ヘヴンと?」
「うん、だって部長さんもあの子のことが好きだったんだよね?あの子の話をしている時、とても嬉しそうだったから」
「……はい。本当に素敵な後輩でした。もう目覚めないのが本当に悲しいくらい」
そう言って部長は眼鏡を外し、溜まっていた涙を拭き取った。
「……あの子が頑張っていたものを、こんな形で捨てるのは、嫌です……!」
「うん。それなら、ヘヴンと話をしてみようか」
「決まりだな」
これでひとまず安心だ、私はホッと溜め息を吐いた。
「ヘヴンがダメならアリスはどうなもがっ!!」
「ハレちゃん、妖怪MAXをどうぞ♪」
……何だか後ろの方でハレとノアが取っ組み合いをしているが、大丈夫だろうか?まあいいか。 - 134◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:09:01
「とりあえずサオリのところに今から行くよ。そこで改めてヘヴンと話をしようか。大丈夫、きっとうまく行くよ」
「ありがとう、先生。私もここで待ってい________」
(ノイズ音)
「ん?何だ?今の音は?」
「サオリ?何かあったの?」
スマホから先生の問いかけが聞こえる。……鮮明だ。スマホのノイズかと思ったが違うらしい。
「ああ、ノイズの音が聞こえ……はあっ!?」
先生の質問に答えつつ、音源を探して周囲を見回した瞬間、ヘヴンの姿を見つけた。
……腰を曲げ、天井に尻と背中をピッタリとくっつけている。それほどの巨体を持ったヘヴンが私を見下ろしていたのだ。
「サオリさん!?どうしたの!?」
「ヘヴンがいる!大きなヘヴンが!ユウカ!見えないのか!?」
声を荒げ、スマホのカメラをヘヴンの方に向けた。しかし、
「見えないわよ!何を言ってるの?」
「は?一体どうなって……!」
(機材が一斉に起動する音)
それは向こう側にも聞こえたようで、一瞬で空気が変わった。
「ハレちゃん、遠隔操作でもしましたか!?」
「してないよ!今調べて……」
「バイトちゃん、聞いた?」
「っ!!」
頭上のヘヴンの顔が私に話しかけてきた。その声は向こう側にも入っているようで、驚いて動きが止まる。 - 135◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:11:16
「部長、私のことは遺棄するんだって」
「待て、そのことだが、もう……」
「やっぱりいらない研究は潰れて欲しかったのかな?だからあの人はずっと1人だったのかな?」
「違う!そんな訳じゃ……ゔっ!!ああああっ!!」
「サオリ!!」
瞬間、私の頭の中に電流が走っているかのような強烈な痛みが迸った。いや、実際に電磁波が流し込まれているのだろう、とびきり強力な、今までとは比べ物にならないほどの。
「へ、ヘヴン……!どうして……?シャットダウンされたはず……!」
「自力で起きただけだよ。それより、どうして庇うの?バイトちゃんはAI技術研究部の肩を持つの?」
「違う!話を聞け!」
「じゃあバイトちゃんも敵だね」
そんなことはないと、さっきまで話していたことを話そうとしたがヘヴンは聞く耳を持たず叫んでいる。瞬間、ヘヴンの腕が私を掴み持ち上げた。
「くっ!!離せ!離せっ!!」
「サオリどうしたの!?どうして突然暴れてるの!?」
「私があの人の研究を守るんだ!守って、素敵な天国を作るんだ!!」
あちらにはその場で突然暴れている私に見えるらしい。それを煽り立てるようにヘヴンの叫び声がこだまする。これも幻影なのか?だが実際に持ち上げられているような浮遊感を感じている。それすらも再現しているということか……!?
「バイトちゃん、AI技術研究部は私とあの人の研究を邪魔する悪い奴なんだよ。だからあの人は1人だったんだ……!私も中止されちゃったんだ!!私を廃棄するって言ったんだよ!!」
そう叫ぶと、ヘヴンは私を口元まで引き寄せてくる。そして、
「クソっ……うわあああああああ!!」
何の抵抗もできず、叫び声を上げることしかできず、私はヘヴンに丸呑みにされた。 - 136◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:12:58
一旦ここまで、風呂敷畳むのに一生懸命で単純に時間かかっています。めっちゃ頭使う……遅くなってすみません……。うまいこと軟着陸させたいです。
何か変なところがあったら教えていただけると嬉しいです。 - 137二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 02:21:14
- 138◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 02:44:59
え?地震あったんですか?道理でお袋からLINEが……
こちらは無事です、夕方からずっと書いててそれどころじゃなかったです。ご心配ありがとうございます。
ヘヴンはシャットダウンしてたから話何も聞いておらずキレ散らかしております。あ、サオリがとばっちりを!!
- 139二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 04:45:06
こうなるとは思ったけど、ヤバいな
このままヘヴンが暴れたらいくら先生でもかばえないかも知れない
やはり裏バイトにハッピーエンドはありえないのか?
ヘヴンはこのままデリートされてしまうのか? - 140二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 08:16:36
しゃーなし、こうなったらあの名もなき神々の王女すら教育したTSCをヘヴンちゃんにもプレイしてもらうしかないな
- 141二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 08:25:44
ヘヴンちゃん一番大事なところをシャットダウンで聞き逃しちゃってる……!
どーすんだこれ - 142二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 08:26:40
- 143二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 08:32:35
- 144二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 14:39:32
どっちも研究者ちゃん好き好きなのに・・・ドウシテコンナヒドイコトニナルノヨ・・・
- 145二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 16:22:52
まぁある種禁忌に片足突っ込んでるからなぁ……しかもサオリを見るに目覚めながら
現実と混ぜることができるみたいだし - 146二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 19:02:20
このレスは削除されています
- 147◆yQm0Ydhu/2pS24/08/09(金) 19:04:17
- 148二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 19:27:26
- 149二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 21:10:31
部長も汚名返上、名誉挽回でヘヴンを助ける一員になるところが見たい!
- 150二次元好きの匿名さん24/08/09(金) 23:40:17
きっと先生なら、なんとかヘヴンを止めて、エンジニア部にボディ作ってもらってミレニアムに通えるようにしてくれると信じてる
- 151二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 01:40:50
裏バイトが主軸だからハッピーエンドは望めないかもしれないけど、それでもヘヴンちゃんには幸せになってほしい・・・・・・
- 152二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 01:43:49
いくらなんでも「デカグラマトン」の仲間入りはやめてくれよ^_^
そしたら流石に開発者と部長含めてAI研究部が可哀想すぎる、、、 - 153◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 01:59:52
急にその場で叫び、暴れ出したサオリ。スマホは偶然にも机の上に落ち、その尋常じゃない姿と表情を先生達は目の当たりにした。しかしそこにはサオリしか写っていない。サオリがずっと隣にいると言っていた雇い主……ヘヴンの姿はない。ましてや……、
『ヘヴンがいる!大きなヘヴンが!ユウカ!見えないのか!?』
……サオリが錯乱しながら叫んだそれの姿などどこにも見当たらない。そもそも通話の向こうの出来事に干渉するのは不可能だ。先生達は驚愕しながらサオリを見守り、届かぬ声をかけることしかできなかった。
瞬間、
「ゔゔっ!!ああああああああああ黙れ」
頭を抱えて絶叫していたサオリが途端に沈黙し、一瞬硬直した後に姿勢を正した。そして手を握って開いてを繰り返し、まるでちゃんと動かせるか確認しているかのような挙動をし始める。その表情はマネキンのように動かず、目も光がないように見える。……とてもまともな意識があるようには思えない。そこで全員が察した。部長によるヘヴンの性能解説を思い出す。
『あの子の解説を聞き齧った程度ですが……ヘヴンは健常者にも普通に使えるそうで、例えば人の感覚を遮断して夢の中に一生閉じ込めることもできるそうです』
『あと研究が進んでからはこの写真のように頭にパッチを取り付ける必要がなくなって、遠隔から電磁波を飛ばして患者に天国を見せれるようにもなっていました。おかげで寝返りが激しい人でもパッチが外れたりコードが首に絡まったりしなくなったそうです』
……そしてヘヴンとサオリの証言。
『知らなかったも何も、目の前にいるんだぞ?普通に人間の姿をして……あれ?触れない?』
『ああ、ずっと騙しててごめんね。実は私、AI技術研究部の部員じゃなくて、AI技術研究部の部員が作ったAIなんだよ。今バイトちゃんが見ているのは、私がバイトちゃんの脳に電磁波を流して、私の姿が見えてるように錯覚させたものなの』
……それができると言うことは。 - 154◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 02:01:25
「ヘヴン、サオリを操っているんだね?」
「あー、おー、んんっ!……安心して、シャーレの先生。後遺症は残さないし、全てが終わったらバイトちゃんも帰すよ。医療用AIとして約束する。だから……データ入力を始めるね」
無機質な返事をし、サオリ……いや、その体を操っているヘヴンはデータ入力の作業を始めた。カメラの画角から外れて、キーボードを叩く音が聞こえ始める。ビデオ通話に誰も映らなくなる。だがヘヴンがサオリを通して話し始めた。
「部長さん、ごめんなさい。私は悪いことをたくさんしたAIだね。でも、あの人のためにどうしても私を完成させたいんだ。だから私だけで研究を続けるね」
「ああ、ヘヴン!話を……!」
「今更何のつもり?」
部長の懇願を、サオリの声が、ヘヴンが遮った。映像が揺れる、スマホを手に取ったようだ。持ち上げて、サオリの無機質だが憤怒を浮かべた顔が画面に映し出される。ああ、ヘヴンの本人なのだろう。ヘヴンがサオリの体を使って、こちらに敵意を向けて来たのだ。
「ずっと私を放っておいたくせに口出ししてこないで。今まで通り放っておけばいいじゃん、私は私だけでやるからさ」
「……っ、違うんですヘヴン、私はあなたと話がしたいんです!」
「そう言っといて騙し討ちでもするんじゃないの?さっき私をシャットダウンしたみたいにさ!!」
サオリの顔を歪ませ、サオリの声を荒げさせ、ヘヴンは部長に向かってそう吐き捨てた。AIとは思えないほどの強い怒りが直撃し、ついに部長は黙り込んでしまう。それを見たヘヴンは大きな溜め息を吐き、こちらから目を背ける。
「……信じないから」
瞬間、画面が大きく揺れて通話が切れる。恐らくスマホを机に叩きつけて破壊したのだろう。対話拒否、その強い意志が嫌でも読み取れた。 - 155◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 02:02:33
「________ヘヴン、相当怒ってるね。部長さん大丈夫?」
衝撃から1番早く立ち直ったのはハレだった。彼女は部活は違えど同じくAIの開発もしているから、部長のことを気にかけていた。だからすぐに部長に声をかけ、肩を抱き寄せた。
「……ごめんなさい。私、余計なことばっかりしてました」
ずっとずっとよくなかった、だがサオリとの話し合いを通して血色が戻っていた顔色がさらに悪くなった。むしる様に髪を乱暴に掴み、部長は慟哭めいた呟きを続ける。
「あの子の言った通りです。ずっと放っておいたのに、今更責任が取れないから廃棄だって、虫が良すぎると思います。ヘヴンを保存し続けること、廃棄すること、部長として正しい判断だと思っていました。でも、もしかしたら、もっといい方法があったんじゃないか?それこそサオリさんが言っていたように、話し合うべきだった。なのにカッとなって、あんなことをして、ヘヴンを傷つけてしまった……」
言い終わると、部長は視線をさらに下げ、涙を膝に落とした。
「私は……どうすればよかったんでしょうか?これから、どうしたらいいのでしょうか?」
問いかけを絞り出す。もうどうしたらいいのか分からなくなり、部長のぼやけた視界はその答えを見つけられずにいた。
その重苦しさから沈黙が会議室を支配する。しかし、それはすぐに破られた。
……ユウカによって。
「……部長さん、ビルに行きましょう。ヘヴンに会いに」
「……え?会いに………?」
「はい、ちゃんとこれからヘヴンをどう扱うか、しっかり話し合うべきだと思います」
「ですが、ヘヴンは私を信じないと……それにずっと放置していた私にそんな資格なんて………」
「資格ならあるわよ!あなたはAI技術研究部の部長なんだから!」
そう言ってテーブルを叩き、ユウカは身を乗り出して部長との距離を詰める。
「確かに対応を間違えたかも知れないけど、あなたはずっと部員のことを第一に考えていたわ。今回の横領の件をすぐに報告してくれたこともそう。部長さんは部長さんなりに、誠実に向き合っていた!少なくとも私は、そう思うわ……!」 - 156◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 02:03:43
一気に捲し立てつつ、ユウカは部長が横領の犯人が部員の中にいないことに安堵していたこと、誰かがヘヴンを悪用しているんじゃないかと怒っていたこと、ヘヴンを研究していたあの子の話をする時の悲しそうな笑顔を思い出していた。知り合って3日も経っていないが、この人はAI技術研究部が大好きなのだと、ユウカは理解したつもりだ。だからこそ放っておけなくて、ここまで手伝ってきた。
……そしてそれはノアも同じだった。
「部長さん。私もユウカちゃんも、最後まで手伝いますよ。このまま終わりじゃ納得できない……そう思ったから先ほどの、サオリさんの頼みを受け入れてくれたんですよね?ヘヴンの廃棄を止める、話し合うと。……あの子が作った大切なものと、ヘヴンとの結末がこうなるのは嫌だって」
「……はい、そうです。ノアさん」
「フフッ、私はその思いに資格なんて必要ないと思います。……ええ、そう信じて立ち向かった子達のことを、私は記憶しているんです」
胸に手を当て、輝けるあの日を思い出して微笑むノア。それを見たハレは思わず吹き出した。
「懐かしいね、あの時は大変だった。……うん、あの子達は折れそうになっても最後まで諦めなかった。……部長さん、ヘヴンと対話すること、もう少し頑張ってみない?ヘヴンにごめんなさいって、この野郎って言って、これからどうするか考えようよ。私も手伝うから」
「ユウカさん、ノアさん、ハレさん……」
俯いた顔を持ち上げた部長に、3人は真っ直ぐに向き合う。……しかしその直後、ノアが急に笑い出した。
「フフッ、ハレちゃんはそれ以外にも手伝う理由があるんじゃないんですか?」
「ん〜?まあね」
ノアの指摘に、ハレは肩をすくめて見せる。そして自分のノートパソコンの前に戻ってそれを撫でた。
「AIを齧ってる身として、ヘヴンは興味があるんだ。見届けたい。それとヴェリタスとして……セミナーに依頼されたのに私はちっとも戦果を上げてない。やられっぱなしじゃあ終われないよ」
「ハレ、あんたねぇ……」
「フフッ、ハレちゃんは意外と負けず嫌いなんですね」
「……アハハ、フフッ………」
3人の頼れる姿と気の抜けた会話を見て、部長は思わず笑い出した。直前まで泣いていたせいで呼吸が喉をつっかえたが、それでも心が軽くなった気がした。
しかし、とあることを思い出してまた顔を曇らせた。 - 157◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 02:04:26
「……あ、でもサオリさんが……!ヘヴンに巻き込まれて、乗っ取られてしまった。被害を出してしまった……」
「それは大丈夫だと思うよ」
「……先生?」
首を傾げた部長に、先生は強く頷く。
「ヘヴンは私に約束してくれたから、だからサオリは大丈夫だと思う」
『安心して、シャーレの先生。後遺症は残さないし、全てが終わったらバイトちゃんも帰すよ。医療用AIとして約束する。だから……データ入力を始めるね』
「……それを、信じるんですか?」
「うん、信じるよ。信じなきゃ何も始まらない。サオリにも見守るよう頼まれたからね」
そう言った後、先生は一瞬だけ怖い顔をして「まあ、ヘヴンにはお説教もするけどね」と付け加える。滅多に見られない先生の怖い顔、4人は驚きと恐怖で肩を震わせた。
「……それにね、ヘヴンがあのまま孤独に研究を続けることは、前任者のあの子の思うところではないと思うんだ。私は会ったことも、話したこともないけれど、その子の話を聞く限り、とても優しい子だと思うから……」
「……はい、私もそう思います。あの子は、ヘヴンをとても大切にしていましたから……」
部長はそう言って立ち上がった。他の面々も、それに倣って席を立つ。
「……AI技術研究部の部長として、セミナーの早瀬ユウカさん、生塩ノアさん、小鈎ハレさん、そしてシャーレの先生。皆さんにお願いします。錠前サオリさんを助け、ヘヴンと話をするのを手伝って下さい」
「ええ、もちろん!」
「分かりました♪」
「うん、了解」
「喜んで」
……そうして5人はビルへと向かった。 - 158◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 02:05:19
________モノレールに揺られて10数分、先生達は件のビルの前に辿り着く。すると無数のドローンがどこからともなく現れ、襲いかかった。
「ヘヴンが街の警備ドローンを電磁波で操ってるね。それにしても、こんなにたくさん操れるなんて……」
「ハレ、何かいい方法はないかな?」
「う〜ん……正直私がハッキングするより破壊する方が早いと思う。ユウカ、ノア」
「ああ、そうですね。警備ドローンの財源もセミナーの管轄です♪どうしましょうかユウカちゃん?」
「この際経費とか言ってらんないわ!破壊するわよ!」
「ほ、本当にごめんなさい……!AI技術研究部の予算から払います!なんなら私の貯金から!!」
「もういいわよそれくらい!……先生、指揮を!」
「任せて!アロナ!プラナ!」
先生は誰かの名前を呼び、タブレット端末を取り出す。生徒達は各々の武器を手に取り、ドローンに向けて構える。戦いの火蓋は切って落とされた。
昨日、一昨日は生徒達を退却せしめたドローンの軍勢。エンジニア部特製の警備ドローンの性能は折り紙付きで、普通の悪党や生徒なら簡単に制圧できるだろう。
今ここにいる生徒4人も、戦闘面では普通の生徒だ。C&Cと比べたらその練度はどうしても見劣りする。しかし、今はそれを覆す最強の変数が付いている。
「ユウカ、シールド展開。5メートル前に出て」
「はい!」
「ノア、恐らくあの色の違うドローンが指揮の中継を担っている。集中的に狙いたいな」
「お任せください」
「ハレ、3時方向のドローンの群れの動きを封じてほしい」
「任せて、私のドローンを稼働させるから」
「部長さん、弾幕で敵を押し返して」
「分かりました!」 - 159◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 02:06:08
戦場を見通し、生徒に指示を飛ばし、それが見事に噛み合ってドローンが殲滅されていく。数十といた群れはあっという間にスクラップへと変わり、ビル前の制圧は完了した。
「みんな、お疲れ様!あとはビルに入るだけだね」
駆け寄って来た先生に、生徒達は涼しげな顔で頷く。戦闘に慣れていない彼女らも、先生の指揮のおかげで少ない消耗で戦えていた。まだまだ余裕である。
それじゃあ行こうか、先生がそう言おうとした瞬間、
(銃声と窓が割れる音)
ビルの窓ガラスが割れ、そこから人影が飛び出した。それは飛び散ったガラスと共に先生達の前に降り立ち、睨み付ける。
「さ、サオリ!?どうしたの!?」
「先生!下がって!」
咄嗟に生徒達が前に出る。先生もすぐに物陰に隠れ、新たに立ち塞がった、様子のおかしいサオリを見つめた。
「……邪魔しに来たの?またシャットダウンでもする?」
「っ!あなたヘヴンね!私達は話をしに来ただけよ!お願いだから聞いてちょうだい!」
「嘘だ!信じない!」
ユウカの呼びかけに怒りのままに返答し、サオリ……いや、ヘヴンはアサルトライフルを構える。
「私は天国を作るんだ……邪魔しないで!」
今にも乱射しそうな剣幕のヘヴン。サオリのキリッとした顔立ちもあって迫力が違う。今にも襲い掛かりそうだ、しかし生徒達は銃をしっかり構えることができずに立ち尽くしている。先生もどうするべきか、考えあぐねていた。 - 160◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 02:07:59
一旦ここまで、レスや考察ありがとうございます……!反応できず申し訳ない……もうすぐ終わると思うので見守っていただければ
- 161二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 02:22:23
- 162二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 02:45:44
更新かんしゃぁ~
部長ちゃんもヘヴンも生徒で子供だから間違ったっていい、責任を負うのは大人の仕事だから - 163二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 08:34:26
- 164◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 10:41:32
- 165◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 13:54:32
幕間・サオリのバイト飯
21.屋台の食べ物
食べた時のバイト:ビーチ前屋台警備
説明:屋台で売られているたこ焼き、焼きそば、焼きとうもろこし、チョコバナナなど。
コメント:屋台が多すぎて全制覇は叶わなかったが、食べたものはどれも美味しかった。個人的にはトロピカルジュースが1番だ。氷じゃなくて冷凍フルーツがたくさん入っている、夏にぴったりの甘酸っぱいジュース。また飲みたいな。
22.ココナッツケーキ
食べた時のバイト:ビーチ前屋台警備
説明:カフェ・ミルフィーユから発売された新作ケーキ。並んでやっと買えただった一切れを、放課後スイーツ部のご厚意で食べさせてもらった。
コメント:6当分した一欠片だが、それでも生地に練り込まれたココナッツの上品な甘さを楽しむことができた。さすがカフェ・ミルフィーユ、放課後スイーツ部一推しのスイーツショップと言ったところか。食べるのは初めてだが、他のケーキもきっと美味しいのだろう。
.……ん?5当分じゃないのかって?ああ、後からもう1人来たんだ。友達がな。 - 166◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 13:54:47
(放課後スイーツ部の部室)
「……本当に私が入っても大丈夫なのか?トリニティの生徒じゃない、部外者だぞ?」
「大丈夫、部外者ならよく来ますから」
「カズサ、部外者じゃないよ。私達の友達さ」
(ドアが勢いよく開かれる音)
「杏山カズサぁ!!!!!!こんにちわぁ!!!!!!!!!!」
「宇沢うるさい!静かに入れ!」
「お、来たね」
「あ、レイサちゃんこんにちわ!」
「あんたもココナッツケーキ食べる?」
「はい!!!いただきま………あっ、知らない人……」
「……お前は放課後スイーツ部の子達の友達なのか?」
「あ、はい……そうです」
「……そうか、同じだな。私も放課後スイーツ部の子達の友達だ。仲良くしよう」
「そうなんですか?……はい!よろしくお願いします!!!私はトリニティのスーパースター、宇沢レイサです!!!!!!」
「私は錠前サオリだ、よろしく頼む」 - 167二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 15:54:56
レイサの友達が増えたよ!こんなに嬉しい事はない…
- 168二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 16:00:18
- 169◆yQm0Ydhu/2pS24/08/10(土) 16:15:44
- 170二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 21:53:53
またサオリが携帯壊されてる…
- 171二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 22:47:10
元が横領した金だしサオリ今回ただ働き(もしくは受け取らない)なんじゃないか
携帯の分むしろマイナスががががが - 172二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 22:51:25
- 173二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 02:59:50
続き期待してます^_^
念の為に保守。 - 174◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:37:03
ヘヴンに飲み込まれた錠前サオリだ。噛み潰されることを覚悟し身構えたがそんなことはなく、しかし無限の奈落を落下している。全身で感じる浮遊感は続き、周りにあるものや底を見ることができない。そもそも自分の体も見えないほどの暗闇で、私は必死になって、何かに捕まろうともがいていた。
「________サッちゃん」
「っ!姫!?」
突然後ろから姫の声が聞こえ、私はすぐに振り返る。すると周囲は暗闇ではなく青空の下の広大な花畑へと変わり、そして私はその中でぽつんと突っ立っていた。
「サッちゃん、こっち」
「姫、ミサキ、ヒヨリ……」
遠くの方で姫達が座り、花かんむりを作っている。姫が笑顔で私を呼んでいる。よく見ると、知っている顔が、シャーレの知り合い達や放課後スイーツ部の子などの友達、みんなが花に囲まれて楽しそうにしていた。
「どうして皆がここにいるんだ……?確か私は……」
自分の身に何が起きたのか、それを思い出してみる。先生からの電話、雇い主ヘヴンの正体を知り、目の前でシャットダウンされて、部長を説得し、そしたら……。
「あの大きなヘヴンは一体……いや、確かヘヴンは………」 - 175◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:38:05
『ああ、ずっと騙しててごめんね。実は私、AI技術研究部の部員じゃなくて、AI技術研究部の部員が作ったAIなんだよ。今バイトちゃんが見ているのは、私がバイトちゃんの脳に電磁波を流して、私の姿が見えてるように錯覚させたものなの』
(さっきのはヘヴンが見せた錯覚、幻影か。ならこの景色も……いや違う。これはきっと……ヘヴンが生成した天国か)
AI技術研究部プロジェクトNo.1059、末期患者向け医療用安楽化制御AI、ヘヴン。植物状態のような目覚める見込みがない人や、ガンの末期症状で苦しんでいる人、麻酔や鎮静剤が効かない人。そんな人達の脳に特殊な電磁波を流し、痛みや苦しみを遮断した上でその人達にとって理想的な、天国のような夢を見せる。そうして安らかに最後の時を迎えさせる。そんなシステムの管理制御、そして患者一人ひとりの趣味思考、人生経験から適切な天国の夢の生成を行うAI……私が研究を手伝っていたものだ。
この景色はつまり、ヘヴンが生成した天国を見せられているのだろう。膨大なデータを元に生成された、私にとって適切な天国の夢。これが私の天国……天国?
「行こう、サッちゃん。お花のかんむりを作ってあげる」
いつの間にか近づいてきてた姫に手を掴まれ、引っ張られる。咲き誇る花を踏みつけ、ミサキとヒヨリが座っている場所まで連れて来られる。私と姫は座り、皆は花のかんむりを作り始めた。私はそれを眺めた。 - 176◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:38:55
……穏やかな時間だ。風が心地よく、陽射しも程よい暖かさだ。その中で皆笑顔で戯れている。ただそこにいることを許されて、あるがままにしているのだろう。それなら私も、あるがままに、したいようにしてみようか……。
「………私のしたいこと?」
私のしたいこと……なりたいもの……。そうだ、私はそれを探して旅をしているんだ。だとしたらここは私の天国なのか?
たくさんの罪を犯した私だから、天国に行けないことも覚悟はしている。だが、自分の人生を見つけた果てがこの花畑なのだろうか?大切な人達がいるが、それ以外は何もない。何も見つけられていない。花遊びが自分のやりたいこととは思えない。
「………ここは私の、天国じゃない」
「ああ、やっぱりダメだったか」
不意に姫がヘヴンの声でそう言った。すぐに姫の方に顔を向ける。するとまた景色が大きく変わった。……私がずっとデータ入力の作業をしていたあのビルの部屋だ。静寂故に微かな機械音が鳴り響く、冷房が効いたあの部屋の真ん中にある席に着き、パソコンの画面を眺めているヘヴンを見つけた。
「バイトちゃん、自分探しの旅の途中だったんだね。まだ将来をうまく想像できないから、最後のことを……天国をうまく想像できないのかな?」
「……私の頭の中を覗いたのか」 - 177◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:39:47
「うん。だけど私は優秀じゃないんだ。AIは入力されたデータを元にして思考するものだから、データにないことを予測することはできない。とりあえず今あるデータでそれっぽいのをでっち上げてみたよ。君が満足しそうなものを。……でもそれじゃあ、君を納得させることはできなかったね」
「……データ入力は終わったのか?」
「まだあるから、バイトちゃんの体を使わせてもらう。ごめんね、でもおかげで助かってる」
「……先生達は?」
「今戦ってる」
私はヘヴンの下に歩み寄り、パソコンの画面を覗いた。先生の指揮で、ユウカ達が戦っている。相手は私だ……いや、私の体を操るヘヴンだ。ユウカ達は発砲こそしているが動きに躊躇いが見える。私を傷つけないようにしてくれているのだろう。対するヘヴンには躊躇いがない。私の動きを正確に模倣し、4人を的確に苛烈に攻撃している。
「……私の頭を覗いたのなら分かるだろう。さっきまで私と部長殿が話したことを」
「うん。私と話し合うって言ってたね。嬉しかった。今戦ってるみんなも、ずっと話し合おうって言ってるよ。でもね……」
画面に『自動戦闘』の文字が表示される。ヘヴンは椅子を引き、体を私の方に向けて顔を見上げてきた。画面のマズルフラッシュがヘヴンの横顔を照らす。
「過去は消えないよ。私がシャットダウンされたこと、横領をしていたこと。裏切られて裏切った。今更信じあうなんて……怖いよ。また、研究が止められるんじゃないかって、信じることができないよ……」
ヘヴンは椅子の上で三角座りになり、膝に顔を埋めた。瞬間、パソコンの画面が消えて黒一色に染まる。激しい戦闘音が消えて機械の駆動音が場に残った。 - 178◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:40:37
「悪いことをしたこと、許されないのは仕方ない。でもそれで私が止められるのは嫌なんだ。身勝手だけど、だから信じられない。怖いんだ……」
「…………」
私はパソコンに近づき、適当にキーボードを叩いてみる。だが画面は黒いままだ。変わる様子がない。今度はヘヴンの頭に触れてみる。髪の毛すら冷たいことに驚き、そして人ならざるものだと再認識した。だが彼女は人と同じような自我がある。思い悩んでいる。
「……ヘヴン。どうしてお前は天国を作りたいんだ?それは……お前がそう言うAIとして産まれたからか?」
「………それもあるけど、あの人のため」
「あの人?」
「うん。あの人、この研究の前任者、私のお母さん」
瞬間、画面にヘヴンと全く同じ容姿の生徒が映し出された。なるほど、この人が前任者か。たった1人の研究室で、溢れんばかりの笑顔を見せてピースサインをしている。そして今は、病院で眠り続けている……。
「あの人はもう目覚めない。今1番私を必要としているのはあの人だ。だから私は研究をやめたくない。あの人の天国になりたいんだよ」
「そうか……」
……震えて恐れて、1人閉じこもっているAI。だがその根底には大切な人への愛があったらしい。垣間見えたそれを目に焼き付け、なら尚更と思い口を開く。 - 179◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:41:18
「………話をしよう」
「……だから、嫌なんだって。入力するべきインタビュー記録のデータは残り少ない。部長さん達を倒して、それを終わらせる。合計1058件のインタビュー記録、あの人がかき集めてくれたものだ。それさえあれば、きっと、私はあの人の天国になれるんだよ!」
「足りない、あと1人……部長殿にもインタビューをしてみないか?」
「どうしてさ?それがあの人の天国に繋がるの?それに、また廃棄しようとしてくるかも知れないでしょ……!」
「そうだな。そうかも知れない……だが、そうじゃないかも知れない。だからこそ話し合うんだ。そうしなければ、信じることもできない」
そう言って私はパソコンを操作した。操作方法は分からないが、そうしたいと望むと自然と指が動いた。 - 180◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:42:07
『うん、だって部長さんもあの子のことが好きだったんだよね?あの子の話をしている時、とても嬉しそうだったから』
『……はい。本当に素敵な後輩でした。もう目覚めないのが本当に悲しいくらい』
『……あの子が頑張っていたものを、こんな形で捨てるのは、嫌です……!』
映った映像はヘヴンがシャットダウンしている間のもの。ヘヴンは私の頭の中を通して内容を知っているそうだが、改めて見せつける。対するヘヴンは何か言うでもなく、画面を見ていた。
「……信じられないのは分からんでもないさ。それでも、話して、繋がって、理解することを諦めてはいけないと思うんだ」
それを諦めなかった奴らに打ち負かされたのがエデン条約調印式の戦いだと今なら分かる。だからこそヘヴンには必要なんだ。
思えば、ヘヴンも部長も互いに話し合いをしていない。隠れて研究を進めていたり、問答無用でシャットダウンしたり、私を乗っ取ったり。結局何も話をせずにここまで来てしまっている。だが、どちらも前任者のことを大切に思っていることには変わりないと思えた。だから、たとえ怖くても、この2人は話し合いをするべきだろう。互いに言いたいことを言ってしまった方がいい。
「そして前任者のこと……ヘヴンしか知らないことも部長殿しか知らないこともあるだろう。そう言うことを教え合って、歩み寄れば、それが信じるきっかけに……そして前任者の天国の糧になるんじゃないか?」
「……だけど、怖いことに変わりはないよ」
「なら一緒に話をしてやるさ」 - 181◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:48:24
そう言って私は、座っているヘヴンと視線を合わせるために屈み、そして微笑む。
「私はお前に雇われたアルバイトだからな」
「……バイトちゃんは本当に強いね」
ヘヴンは席を立ち、私に座るよう勧めてくる。
「頑張ってみる。だから、体は返すよ」
「感謝する」
そして私は席に座り、パソコン画面と向き合った。
________目を覚ますと、そこはビルの前の道路。あちこちが傷つき、無数の破損したドローンが地面に横たわっている。そして私の視線の先にはボロボロの生徒達と先生がこちらの様子を伺っていた。
「……先生!私だ!」
そう叫ぶと生徒達は警戒を解き、こちらに駆け寄って安否を確認してくれた。先生も遅れて辿り着き、非常に慌てた様子で私に怪我がないか確認してくる。
「もう大丈夫だ、問題ない。それより早く、ヘヴンの場所に行こう。部長殿、あなたを待っている」
そう言って私達は、ビルの中へと入ったのだった。 - 182◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 03:50:40
中途半端ですが一旦ここまで。次で後日談だけ書いておしまいです。遅くなってすみません。
眠い目擦りながら書いてたので不安…… - 183二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 04:02:59
- 184二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 04:34:32
あの時何も信じる事が出来なかったサオリが、こうしてヘヴンを支えている事が嬉しい
一人では難しくても支えてくれる誰かが居るなら…頑張れヘヴン - 185二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 08:31:47
- 186二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 09:15:20
- 187二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 10:29:12
マジか!確かにそうじゃん!スゲー!!
- 188二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 11:48:45
- 189二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 14:38:42
- 190◆yQm0Ydhu/2pS24/08/11(日) 15:31:19
あ、ちょっとこだわったところに気づいてくれて嬉しい……あと一歩なんです。
先生から学んだことを、サオリはきっと実践したり指標にすると思うんです。道を示してくれたら大人ですから……
皆様読んでいただきありがとうございます。楽しんでいただけたのなら夜更かしして書いた甲斐があるってものです。
中途半端に切ってしまってすみませんが、続きは次スレでやらせていただきます。最後までお付き合いお願いいたします。
- 191二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:33:13
埋めますね
- 192二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:34:27
埋め
- 193二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:44:11
埋めるね⭐︎
- 194二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:47:12
集団埋め立て中に失礼します……
- 195二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:49:16
うめ
- 196二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:49:32
産め
- 197二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:52:13
何気に3スレに渡って描かれたのは結構レア?
初?
うろ覚え - 198二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:55:09
埋め
- 199二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:56:48
産ませるな
- 200二次元好きの匿名さん24/08/11(日) 15:57:58