- 1ツチノコT21/09/08(水) 19:52:31
「初めて描いた。記念上げ。」
「これが初めてノコ?驚いたノコ~」
「手を描くのムズカシイ」
「わかるノコ~でもこの絵の手はいい感じノコよ」
「○○描いた。褒めて。」
「凄いノコ!○○の絵あんまり見ないから嬉しいノコ~」
ここには色んな人の絵が貼られる。それを褒めるのが今の自分の日課だ。時々下手な絵もあるけれど、それをどう褒めるのかが腕の見せ所だ。みんなの絵を褒めているとどこからかゴリラ君の声が聞こえてきた。
「ツチノコ君、ウッホ~」
「ゴリラ君、久しぶりノコ」
もう何度繰り返したかわからない挨拶だ。
「久しぶりウホね。最近どうウホ~?」
「相変わらず人の作品褒めてるノコ。ゴリラ君はどうノコ?」
「こっちも変わらないウホ。あ、これ新作ウホ」
そう言ってゴリラ君は数枚の紙を差し出す。
そこにはいつも通り短い文章が書かれている。今回は青春物だろうか?
「フムフム…いい感じノコね~終わりも爽やかノコ」
「ホッありがとうウホ!分野が違うとはいえやっぱり褒めてもらえると嬉しいウホね」
ゴリラ君はとても嬉しそうだ。様子を見るに相当な自信作だったのだろう。確かに作品は良くできていた。
「…ツチノコ君は最近は描かないウホ?」
ゴリラ君の質問。一瞬、答に詰まる
「…ノ、ノコ」
「どうしたウホ?」
「最近は忙しくて描いてなかったノコ」
そういえば最近は見るばかりで絵を描いていなかった。
「そうウホ?また描いたら見せてほしいウホ~」
「当然ノコ」
明るく返事をする。
「約束ウホよ。今日はこれを見せに来ただけだし、そろそろ戻るウホ。またウホ~」
「またノコ~」
ゴリラ君が帰っていく。その小さくなっていく背中を見ながら、内心その成長に舌を巻いた。ゴリラ君の書く文章はどんどん上手くなっている。自分も頑張らなければ。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:53:20
ツチノコ曇らせかな?
- 3二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:54:25
切磋琢磨しあってて素晴らしい!
- 4二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:56:02
ツチノコくんを曇らせるな😡
- 5二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:56:11
保守
- 6ツチノコT21/09/08(水) 19:56:58
口に筆をくわえ、絵を描いていく。線画は悪くない。塗りは上手くいかなかった。
「ま、久しぶりに描いたから最初はこんなものノコね」
切り替えて次を描き始める。これも悪くない。
「でも、まだまだノコ」
次を描く。もっと丁寧に。
「…なかなか感覚が戻らないノコね~」
そんなに鈍ってしまったのだろうか。
「…う~ん、今一つノコ」
良いとは言えない。
「……もっとノコ」
もっと上手く描ける…はず。
「……ちょっと調子が悪いだけノコ」
こんな程度じゃない…
「…ないはず、ノコ…」
「…こんな…」
「……」
結局その日は、何も描き上げられなかった。 - 7二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:57:35
ツチノコくんを曇らせるんじゃあない!
- 8二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:57:35
やめろ
やめてくれ
やめてください - 9ツチノコT21/09/08(水) 19:58:33
~ 数日後 ~
「ツチノコ君、ウッホ~」
「……」
「ウホ?ど、どうしたウホ?元気ないウホよ?」
「……何でもないノコ」
「とてもそうは思えないウホ。何かあったウホね?」
「……何でもないノコ」
「…ウ、ウホ…」
ゴリラ君が動揺する。あたりに散らばる絵に気づいたようだ。
「…なるほど、ウホ」
「……放っておいてほしいノコ」
「そういうわけにはいかないウホ」
ゴリラ君が適当な絵の写真を撮っている。どこかに送ってるのだろうか?しばらく間があいた後、ゴリラ君がこちらに何かを向けた。
「ほら、見るウホ。褒められているウホよ」
そこには、称賛の言葉が並んでいた。
「凄いノコ!上手いノコね~」
「線がキレイで良い絵ノコ」
「色使いにセンスを感じるノコ~」
ゴリラ君が優しく語りかけてくる。
「時にクリエイターは壁にぶち当たるものウホ。でも、自信を無くしちゃ駄目ウホ」
ゴリラ君は続ける。
「ツチノコ君は色んな人を褒めてきたウホ。その言葉が色んな人を励まして、巡り巡って帰ってきているウホ」
真っ直ぐな瞳でこちらを見ながら。
「だから、もう一度、挑戦するウホ」
その視線に、自分は── - 10二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:58:58
ハッピーエンドじゃなかったら、お前を殺して俺も死ぬ!
- 11二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 19:59:29
ハッピーエンド頼む!
- 12ツチノコT21/09/08(水) 20:01:48
──耐えられなかった。
「どんどん上達してるゴリラ君にはわからないノコ!」
そう叫ぶとゴリラ君の前から逃げ出した。
自分には逃げるしかなかった。
何が、褒められているものか。
「心の底から褒めたことなんてないノコ!」
逃げながら無様に鳴く。
「いつも、いつも自分より下って思ってたノコ!」
「きっとあの絵を見てみんな、下手だと思ったノコ!」
さめざめと泣きながら走り続ける。
「下手な絵を褒めて上手くなった気になっていたノコ!」
「でも、でも…!自分はそれ以下だったノコ!!」
恥ずかしくて恥ずかしくてたまらなかった。
見せられた称賛の言葉全てが、憐憫の言葉に見えた。
もう、いっそ消えてしまいたかった。
逃げて、逃げて、疲れ果てて。
気がつくとツチノコは一人、川辺にいた。
「…ノコ…もうこれじゃツチノコじゃないノコ」
人を褒められないツチノコに存在価値はない。
「…もう、ここまでノコ」
ゆっくりと息を吐き出すと、いくらか気が静まった。
川へ近づいていく。
水面に顔が映る。 - 13二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:03:39
別にいいじゃねぇかよ…
それで救われたやつらはいくらでもいるんだぞ… - 14二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:03:44
やめろ!
やめてください… - 15二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:04:36
悪魔の末裔が!拙者が成敗してくれる!
- 16ツチノコT21/09/08(水) 20:05:06
- 17二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:06:09
満足したか?それでは処刑を開始する
- 18二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:06:45
このレスは削除されています
- 19二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:12:09
- 20二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:13:52
唐突な李徴でダメだった
- 21二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:15:21
ツチノコ曇らせ文を書けるのは小説家であるゴリラという皮肉
- 22ツチノコT21/09/08(水) 20:16:42
拙者クリエイターの苦悩わかる侍!
ツチノコは皆に愛されていると知れども、その欲望抑えること極めて難し。書かずにはいられず、また書いた以上載せずにいられぬ。
しかし、その罪は重く消えることなし!
よってこの場で腹を切る!
以下は煮るなり焼くなりゴリラに殴らせるなり感想を書くなり好きにすればよい。
では、御免!(ザシュ - 23二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:22:59
- 24二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:24:28
- 25二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:25:34
- 26二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:25:54
ツチノコくんに曇ってほしくないのに、最後の李徴オチは面白かったから悔しい…
- 27二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:26:04
- 28二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:28:39
腹立つことに文章は面白いんだよ、コレ。創作の苦しいとこ書いてるから共感するし
- 29二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:30:25
- 30二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:33:33
- 31二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:36:11
- 32二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:38:00
この曇り方は分かる でもバッドエンド好きなのにこのツチノコには立ち直ってほしいと思ってしまったよ畜生… いいssだ
一つだけ気になったことを言うと勝手に写真撮って上げるのはちょっとどうかと思った 俺ならそこでギスらせてしまう
…ツチノコ曇らせを考えてしまった某も後追いさせていただく 切腹! - 33二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:39:13
友のために身内を裏切るのいい・・・
- 34二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:43:37
- 35二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 20:57:17
ギスらせでまた曇っちまう〜!
- 36二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 21:31:26
- 37二次元好きの匿名さん21/09/08(水) 22:05:49
まぁ善きツチノコになりきれなかった結果虎になったのでそれで正しい。