脱稿!ssが書き終わった!

  • 1二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:27:38

    拙い文章だが暇であれば読んでほしい!

  • 2二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:28:12

    しゃあっ!朗・読

  • 3二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:28:13

    待機ッ!

  • 4二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:28:21

    待機!

  • 5二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:28:33

    放棄

  • 6二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:28:36

    期待!

  • 7二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:29:19

    >>2

    深夜なんだから朗読はおすすめしない

  • 8122/02/15(火) 00:29:50

    肌に突き刺すような寒さが厳しい12月。
    住宅街を電車が走る。

    ガタンゴトン、ガタンゴトン

    車内には少なくない人々がおり、皆一様に俯いてスマホの画面に夢中になっていた。傍から見れば異様で、ある意味宗教的な絵面であり、一昔前の人間がここにいるなら昨日のバラエティー番組で滅亡論でも流れたのかと勘違いするだろう。そんな異様な光景が当たり前になっていることが、今がいつかの未来になったという証なのだろうか。

    さて、そんな異常で日常な車内で深く座席にもたれかかっている男がいた。
    少しばかりくたびれた茶色のジャケットを羽織り、今時珍しい有線のイヤホンをしているようだ。歳は二十代半ばくらいだろうか、会社への出社には少しばかり早い気がするし、何よりも男はスーツを着ておらず、比較的ラフな恰好であった。
    男の左隣に置かれたカバンに目をやると、使いつぶされてボロボロになった蹄鉄がパラコードで通してあった。
    なるほど、この男はウマ娘の競技トレーナー、それも専属のやつらしい。

    ウマ娘の専属トレーナーには、ある習わしがある。それは、担当のウマ娘が初めて勝利したレースで付けていた蹄鉄をお守りとして持ち歩くというものだ。これは、担当ウマ娘との良好な関係を保ち続けたれるようにという願いと、担当のケガを蹄鉄が割れることで肩代わりするという、昔からのウマ娘に関する風習からきているらしい。
    このような蹄鉄のお守り文化は、特にアジア圏に強く根差しており、近代にてそれまでのウマ娘とは段違いなスピードを出せる代わりに、肉体強度が低い「サラブレッド」と呼ばれるウマ娘群が世界中で発生が多発するようになってからは、世界中にその文化が広まった。
    日本では蹄鉄が普及したのが明治時代以降のことであり、それまでは藁でできた草履のような馬沓と呼ばれるものの藁の一部をお守りとして、婚姻を結んだ男に託すというのが主流であった。

    つまり、トレーナーが蹄鉄のお守りを付けているというのは、担当ウマ娘から少なからずの信頼を受けているという事であり、周りからは羨望の視線を受けるのである。
    ちなみに、蹄鉄を渡されたトレーナーとウマ娘が交際関係へと発展するというケースが少なくないが統計的な根拠は未だ出されていない。
    我々としてはこのトレーナーのこれからの発展に期待するのみである。

  • 9122/02/15(火) 00:30:38

    ガタンゴトンと電車が揺れる。車窓に映る景色は目まぐるしくその内容を変えて、景色はどこか散らかった印象を受ける。
    仕事場までは片道一時間ほど。この路線を利用し始めて、あと数か月で2年目だ。
    正直、この二年間、出勤がつらいなと思ったことは多々ある。朝起きる時間は学生の頃とは比べ物にならないし、夜、家に帰るのだって毎日終電ギリギリだ。家事だって自分一人でやらなくてはいけない。
    改めて、私が大人になるまで女手一つで私を育ててくれた母の偉大さを実感する。

    トレーナー寮への入居も何度か勧められた。そのたびに、断るのは私がいまだにあの狭いボロアパートへの情を捨てきれていないからなのだろう。決して裕福ではなかったし、幸せで溢れているドラマのような家でも無かったが、それでも幼少期から育った我が家だ。半端者の私に捨てる判断をさせるほど、ちんけな存在ではないのだ。

    最近、休日になると担当が家を訪ねることがある。たいていの場合は遊びのお誘いであり、そらならメールでもなんでも連絡を一本入れればいいのにと思おうが、「直接訪ねることに意味がある」と言われれば、その気持ちを無下にすることもできなかった。
    極まれに、家でご飯を一緒に食べることもある。お昼時の混雑したスーパーへと向かい、その日の献立を組み立てながら食材を選び、お昼過ぎから仕込みをし、「いただきます」を言うのは7時ごろ。食べ終われば担当を送り、一人で電車に揺られて帰る。そんな日が月に1度程度ある。

    この年になって気付いたことだが、私は私が思うよりも寂しがりだったようだ。全く、大人の男としては恥ずかしいことこの上ないのだが、一人ぼっちで家にいると言葉では表せないような不安に襲われることがある。そういう時は決まってご飯が美味しくなく、テーブルの向かい側に母の姿を幻視してしまうのだ。
    こんなことは恥ずかしくて誰にも言っていない。からかわれるのも嫌だし、心配されるのも嫌いだからだ。

    …同情が嫌いになったのはいつのことだろうか

  • 10122/02/15(火) 00:31:53

    小さい頃から、「自分だけがいなくなったような世界」が好きだった。
    正確に言えば、自分の存在を気にも留めず会話をするほかの人の音が好きなのだ。
    幼少期、まだ父が健在で母も専業主婦であった頃、両親とともにいる居間で寝たふりをしているのが好きだった。私が寝たふりをすると決まって母は膝枕をして、頭を優しくなででくれた。そして、楽しそうに両親は二人っきりで会話をするのだ。会話の内容はその日によってまちまちだったが、必ず一つは私がその日頑張ったことを母が父に嬉しそうに話すのだ。

    学校でも私は狸寝入りに没頭した。教室の喧騒は雑多でゴチャゴチャとしていたが、注意して一つ一つ聞くとグループごとに分かれていて、あまり仲の良くない子の交友関係も私には筒抜けだった。一種のスパイごっこのようでもあったのだろう。気分は洋画のハリウッドスターだった。

    今にして思えば、きっと私が狸寝入りをしていたことをみんなは分かっていたのだろう。
    分かったうえで、それをおかしなこととして否定してくれなかったことは、私という人格の形成に大きな影響をもたらしただろうし、感謝している。

    イヤホンとipodを手に入れてからは、イヤホンをしているだけで勝手にいないものとして扱ってくれるため、余計にこれが加速していった。大抵、音楽は流さずにただイヤホンを耳につけ周りの音を拾っていた。

    今でもこれは続いている。現に今でも世界から私がいなくなったかのように世界の音が聞こえる。
    電車の走行音も、金属のこすれる音も、隣に座る客のイヤホンからわずかに漏れる流行りモノのj-pop、周囲の人間の息遣い、そのすべてが、私に私の生を実感させるのだ。

  • 11122/02/15(火) 00:32:33

    昔は何か、別の夢を持っていたような気がする。
    もちろん、今の仕事も夢を叶えつかみ取ったものだ。だけどそれは、ある程度現実を知ってから持ち合わせた夢である。
    だから、ここで言う昔抱いていた別の夢は、言ってしまえば学園に来るウマ娘たちが持っているような、純粋で幼さを伴った少年時代の夢のことだ。

    それが自分の中から消えていたと気づいたのは、いつのことだっただろうか。
    父が人として誇らしく死んだときか
    母が床に伏したときか

    そのどれもが違うだろう。純粋な夢を壊すのは多くの場合、現実ではなくその理想の存在に限りなく近いものによって打ち砕かれるものだ。
    きっと、私もその一人であり、世間的に言えば「大人になった」という事なのだろう。
    もう、何を夢見ていたのかも思い出せないが、きっと大切ではあるが大事なものではなかったのだろう。
    だってそうだろう?その夢を失くしたことを絶望したことなどただの一度もないのだから。

    だが、この仕事についてから「夢」というものに随分と敏感になってしまった。あの場所には常に多くの夢があふれていて、多くの夢がシャボン玉のようにある日突然、はじけて消えるのだ。
    それは仕方のないことで、嘆いても、誰かを呪っても変わることなどないものだ。そんな暇があれば、誰よりも努力をしなければいけないし、立ち止まることが許されるほどやさしい世界ではないのだ。
    専属でトレーナーをやらしてもらっている身としては、担当が折れないか気が気ではない。もちろんそれは、担当に夢を叶えて幸せになってもらいたいというのもあるが、こちらも仕事なのだ。成果を上げなければお金はもらえないし、解雇だってあり得る。最悪、
    野垂れ死ぬことになる、そんな情けないところをどこかで見ているであろう、父と母にさらすわけにもいかない。

  • 12122/02/15(火) 00:33:21

    トレーナー業というのは、決して華のある職業ではない。
    他の職種と比べるものではないとはいえ、その仕事量は常軌を逸したものがある。
    何よりも、ウマ娘という未だに謎の多い隣人とその身一つで向かい合うなど、常識的に考えれば気がふれているとしか言えないだろう。
    彼女たちの走りに魅せられる人間は多いが、それは憧れとして手が届かない場所にいるからこそ生まれる感情であって、その裏側について考える人間は少ないだろう。いつだって大衆の眼には煌びやかな存在しか映らないものだ。

    収入も、決していいものではない。
    基本的に成果主義であるこの業界では、結果を出せないものは生きてはいけない。それは中央であっても同じだ。よく、中央のトレーナーは高給取りであると言われるがあれは半分間違いだ。ガッポリ稼げるのはそれこそ、G1ウマ娘を多数輩出している名門トレーナー位であり、私のような新人は生活費を切り詰めて生活するほかない。

    なら、ウマ娘が嫌いなのか、と聞かれるときっぱり否定することもできない。
    別に怖いわけではない。ただ、人生のたった一瞬のために命を燃やして走り抜け、結局自分の体をダメにする彼女たちの生きざまに、憧れに似たものを覚えると同時に、自らの体を壊して進む彼女たちにどうしようもない憤りを感じてしまうのも事実だ。
    人間よりもはるかに高い身体能力を持ち、人間よりもはるかに頑強なその体を、自ら壊しそれを誇らしげにすることが許せないのだ。
    「精神が肉体を超越する」聞こえはいいがこんなにもおぞましい言葉もない。
    それをやってたどる結末なんてたったの一つだ。父と同じようになることを美徳とするのなら、そんなモノはクソ以下だ。
    どんなものにも幸せに未来を生きる権利がある。それを無下にすることなどあってはならないのだ。

  • 13122/02/15(火) 00:34:11

    電車のアナウンスが車内に響きわたる。

    私も降りなくてはならない。外の空気はいつにもまして冷たく、雪さえ降りそうだった。

    たった一人、私は府中の町を行く。
    町というのは喧騒と騒音でできている。
    それは町の呼吸であり、生きている証だ。

    校門を抜け、トレーナー室へと向かう。イヤホン越しに様々な音が聞こえる。
    制服のこすれる音、廊下を靴がたたく音、しっぽが揺れる音、呼吸音。

    この音たちが私に生の実感を与えてくれる。
    それはトレーナーとしても、一人の人間としても。
    私は何者にもなれないがゆえに、これが私が生きている確固たる証拠だ。



    男はトレーナー室の前でイヤホンを外すと、部屋の中へと消えていった。
    廊下には未だ音が響いていた。

  • 14二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:34:11

    あの…思ってたのと文体も分量も違う…(畏怖)

  • 15122/02/15(火) 00:36:31

    終了!
    名無しのモブトレーナーの想定で書いたものだ!
    彼のようなものがトレーナーの多くを占める!
    私たちが当たり前に思っているトレーナー達は多くの場合エリートであると思っていただけたのならこのssの意味もあるというものだ!

  • 16二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:46:24

    うわぁ、なんだか凄いものを見ちゃったぞ…お疲れ様です!

  • 17二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:46:52

    こういうウマ娘の世界観に言及したss大好き
    ありがとう。いいもの見させてもらった

  • 18二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:47:49

    乙!
    面白かった!

  • 19二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:48:38

    これ純文学ですって言われてお出しされても何の疑問も持たないで読む自信がある…すらすら読めてしまった
    ありがとう、社会人の身には沁みる描写が沢山あってよかった…
    なんていうか、すごい感動ってわけではないんだが心の深くまで沁みる…

  • 20二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:52:30

    …これのどこが拙い文章だって?
    今後SS推薦スレとかで勝手に推してくぞ覚悟しろよ
    (そういう支援してもいいですか)

  • 21122/02/15(火) 00:55:40

    >>16

    >>17

    >>18

    >>19

    >>20

    読了感謝!

    支援は大歓迎だ!

    理系中学生レベルの国語力で書いたものだが喜んでもらえたなら嬉しいぞ!

  • 22二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:59:18

    >>21

    ヤホー!なら早速宣伝してくる

  • 23二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:11:38

    >>もう、何を夢見ていたのかも思い出せないが、きっと大切ではあるが大事なものではなかったのだろう。

    だってそうだろう?その夢を失くしたことを絶望したことなどただの一度もないのだから。


    これ、ほんとそのとうりだなぁ……

  • 24二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:17:08

    思ってたSSのノリと違う〜〜〜〜〜〜!!!

    ハーメルンとかpixivとかでも書いてらっしゃる…?

  • 25二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:20:55

    >>24

    否!

    小説自体は趣味で書くが、そういったサイトには投稿していない!

  • 26二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 01:25:21

    良かった

  • 27二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 12:37:04

    寝たふりして両親の会話を聞くのが好きってのはなんとなくわかる気がする

  • 28二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 18:58:23
  • 29二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 22:04:47

    >>22

    >>23

    >>26

    >>24

    >>27

    >>28

    読了並びに保守に感謝!

    現在、学生の身であり課題等に追われる日のため次の作品をあげられるのは少しばかり先になることを先に謝罪しておく!

  • 30二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 22:07:00

    >>28

    スレ主とあげてくれた人に感謝する。とても良いものが見れた。

  • 31二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 07:29:47

    保守

  • 32二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 12:48:23

    保守

  • 33二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 19:02:26

    長過ぎてまだ読んでないんでジャンルと登場人物だけでも教えて
    まずウマ娘関係ある?

  • 34二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 19:07:09

    貴方もしかしてその名も無きモブトレ本人だったりしません?

  • 35二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 19:09:07

    このレスは削除されています

  • 36二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 21:22:11

    文章から読み取る限り両親死んで独り身なのかこのトレーナー

  • 37二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 04:28:42

    美しい…

  • 38二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 12:47:03

    保守

  • 39二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 18:44:51

    はえ~すっごい

  • 40二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 00:23:57

    保守

  • 41二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 12:11:26

    保守

  • 42二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 14:22:24

    向こうのスレ保守し損ねたー! すまー/ん!!
    まー/んもNGワードなんかよー! 過剰過ぎないかー管理人ちゃーん!

  • 43二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 14:50:32

    めちゃくちゃ雰囲気が良くて好きだ
    名もなき歯車にも製造過程も仕事もある訳だもんね…

  • 44二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 00:25:56

    保守

  • 45二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 07:59:31

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 19:46:45

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 00:41:53

    保守

  • 48二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 00:44:21

オススメ

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