- 1二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 04:46:35
- 2二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 04:47:03
「16人ギュッと固まる!いや、15人だ!1人は前を走っている!」
後ろを大きく突き放す。それが私の、生き様だから。
もう脚が重くなり始めてる。あの頃ならそんなことなかったのに。私にあの頃の力はもう残っていない。そんなことは私が一番わかってる。
でも。
それでも…!
『エフちゃん!引退するって、本当!?』
『…大阪杯で、私が揉まれたまま最終コーナーを回った時、観客席からは悲鳴が聞こえてきました。私は、私を応援してくれる人たちを裏切ってしまった。それから、私は走るのが怖くなってしまいました。中途半端な気持ちでレースに出続けて、中途半端な着順をとる度、走るのがいつの間にか苦痛になっていました。それで、京都記念で胸が苦しくなったとき、ふと思ってしまったんです。『これでもう、走らなくていいんだ』って。……私は、最後まで足掻くことが出来ませんでした。結局私は、最後まで弱いままだったんです。』
『そんなことない!!!エフちゃんは私にとって、強い光だった!!私がここまで来れたのも、エフちゃんが居たから…』
『なら、今度は貴方が、私に夢を見させてください。私に、足掻く勇気をください。』
それでも、最後まで足掻くって決めたんだ!!!!!
「ラストラン、全ての思いを込めてタイトルホルダー先頭!」
ドゥラメンテ先輩。キッドちゃん、イクイちゃん。そして、エフちゃん。見てるかな?これが私の生き様だよ。そして…
「これが私の、最後の"悪足掻き"だーーーーーっっっ!!!!!」 - 3二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 04:48:12
「直線向いた!まだ差がある!」
脚が痛い。視界がぼんやりとする。
「頑張り切れるかタイトルホルダー!」
足音が近づいてくる。差はもうあまりない。でも…
「ドウデュース来た!!!」
勝たないといけない!勝ちたい!!勝ってみせる!!!
最後の力を振り絞って、懸命に脚を前に出す。痛みは激しさを増すが、構わない。もう動けなくなるまで、ここで全部出し切る!!!!
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
──風の音が聞こえた。
「並んだ!捉えた!ドウデュースだ!!!!!」
ゴール板を駆け抜け、止まったその場で膝を付く。
(ああ、もう、脚、動かないな。)
自然と涙が零れてきた。私…負けちゃったんだ…。
「…うあああああああ!!!!!」
ぼろぼろと涙が溢れる。これで、本当に終わりなんだ。 - 4二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 04:49:08
「…タイトル。」
「シャフ…ちゃん…?」
「今回は負けた。でも…今日のタイトルの走りは、これから未来永劫、忘れることはないよ。」
「…あっ。」
ふと観客席を見る。
「よく頑張ったぞタイトル!!!」
「カッコよかったぞ!!!感動した!!!」
多くの人が、私に声をかける。その中には…エフちゃんも居た。
「タイトルさん!ありがとう!!!」
「エフちゃん…!」
私は、みんなに勇気を与えることができたのだろうか。私は、その名を刻みつけることができたのだろうか。
「さあ、行くぞタイトル。この後引退式があるんだろう?」
「…うん!」
私は笑顔で、差し出された手を握り返した。
引退式。会場に詰めかけた多くの人が、月明かりに照らされた私を見守る。
「いつまでも、いつまでも、このウマ娘の名前を、忘れないでください。
その名は──」 - 5二次元好きの匿名さん24/08/10(土) 04:50:19
以上です。後半がなんか薄っぺらくなってしまった気がします。やっぱSS職人はすごいわね…