【⚓️🎲】興行聖杯戦争/GRAIL GRAND-PRIX

[1 二次元好きの匿名さん 24/08/12(月) 21:10:58]

グレイル・グランプリ
亜種聖杯戦争が世界中で行われる現代においても、一際異彩を放つ亜種聖杯戦争。3つの亜種聖杯が連動し舞台を整え、7人の英霊とマスターが相争う。それを現代コロッセオとして運営されたのがこの戦い
選ばれたマスターの中にはこの大会の運営のスポンサーやオーディエンスが自らのら「推し」を出場させてその戦い振りを楽しむ事も少なくは無いと言う……
そんな戦いに巻き込まれた青年、御剣識は月下の夜、自身が召喚したサーヴァント・ライダーと共にこの戦いに身を投じる事になる
死を湛える瞳は、その先に何を観る──

[2 二次元好きの匿名さん 24/08/12(月) 21:11:32]

なんとか復活──！
漸く落ち着いてきた……よかったあ……

[3 スレ主 24/08/12(月) 21:12:15]

落ちちゃった前スレ

【⚓️🎲】神性だらけの興行聖杯戦争｜あにまん掲示板

[4 二次元好きの匿名さん 24/08/12(月) 21:13:38]

建て乙です！お待ちしとったで〜！！！

[5 二次元好きの匿名さん 24/08/12(月) 21:14:11]

立て乙ー！待ってたよー！

[6 スレ主 24/08/12(月) 21:17:07]

参加者リスト
⬛︎セイバー：源頼光
⬜︎楠正雪(YAMA育ち)
・初出場
・オッズ第3位
⬛︎アーチャー：ケイローン
⬜︎天童誠(混沌魔術師)
・初出場
・オッズ第6位
⬛︎ランサー：クー・フーリン
⬜︎ガラン・ギリアム(魔術使い)
・過去2度出場
・オッズ第2位
⬛︎ライダー：源頼光
⬜︎御剣識(暗殺者の末)
・初出場
・オッズ第4位
⬛︎キャスター：Unknown
⬜︎土御門柚子(陰陽師)
・初出場
・オッズ第7位
⬛︎アサシン：unknown
⬜︎ガルム・レイズナー(錬金術師・ワルキューレ模倣ホムンクルス)
・初出場
・オッズ第5位
⬛︎バーサーカー：酒呑童子
⬜︎坂田晴信(先祖帰りした鬼主の混血)
・過去全出場、前回優勝
・オッズ第1位

[7 スレ主 24/08/12(月) 21:26:27]

一応まとめのあらすじ

グレイル・グランプリの最中、これまでよりも早い段階で行われたゲームプログラム「ハンティング・ゲーム」
夜が明けるまでの間に出現したターゲットを仕留めた者に現在侵入禁止区画である霊地の一角を解放する報酬が与えられる。霊地があればその分サーヴァントに供給でから魔力が増大し、自分達の戦力向上にも繋がる
しかし当然、英霊……サーヴァントが相手取る事が前提な以上その獲物は一筋縄で行くようなモノではなく、今回出現したターゲットはしんちょうにして5mに届かんと言うほどの巨体を誇る真紅の鬼
バーサーカーをして生前に従えた鬼を想起させるほどの威容を持つ獲物を前にいち早く駆けつけたバーサーカーとキャスターであったが、仕留め切る事は叶わず、そこはアーチャーが参戦。しかし英霊3騎を以てしても、その鬼を斃すには火力不足であろう事をアーチャーは指摘する──

[8 スレ主 24/08/12(月) 21:36:26]

「ンンンンンン、それでは依然火力不足ですねぇ──」
キャスターが其々の申告からそう結論づける
例えバーサーカーが宝具を用いたとしてもあの鬼にどれほどの効果があるかは不明な以上は下手に打って出るわけにもいかない。それに制限時間にもまだ間はあった
現状の火力では依然あの鬼を傷付ける事は出来ても斃すには足りないと言う現状でさて、如何にして斃すか──
「やはり、もう少し人数が必要ですね」
アーチャーは現状からそう結論づける。確かに今の時点で火力不足ならば他のサーヴァントが来るのを待つと言う手もある。ライバルが増えるのはあまり歓迎できる事では無いが、今はとにかく手数と火力を確保しなければならなかった
アーチャーが弓で鬼を牽制しながら状況を冷静に俯瞰する。矢は鬼へと飛翔し、その大半が鬼の手によって叩き落とさながらも何本かはその身体に突き刺さる
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！」
鬼が吼えながら矢を放つアーチャーへと突撃する。その突進をアーチャーは当然、その範囲に巻き込まれる形となるバーサーカーやキャスターも、マスターを伴い回避する。回避しながらもアーチャー、バーサーカー、キャスターは其々己が攻撃手段で鬼の外皮を削りとるが、それでも対したダメージにはなっていないだろう。アーチャーやキャスターの攻撃は兎も角、バーサーカーの攻撃さえも痛手になってはいても命には届かない様で、やはり聖杯からの魔力供給があの鬼を支えているのだろうか
その様子を見て、アーチャーの言葉に柚子と晴信が反応する
「他のサーヴァントと言いますが、何か宛でも──」
柚子の言葉を遮るかの様に、戦場に一筋の颶風が奔る。突風と共にキャスター達の後ろから二つの影が躍り出た
「──Burner」
片腕に赤炎を纏い、電光奔る両脚で地面を削りながら鬼の眼前へと肉薄する。紫電の残光を残しながら一直線に駆ける。その疾さはつまり重さとなって繰り出される一撃の破壊力を増す
そして、腕に纏う炎が拳に集約され──電光の矢を撃ち落とす様に振り下ろされた金棒に一歩先んじて、炎の拳は振るわれた
「弾けろオラァ！」
打ち込まれた拳が鬼の表面をめり込み、炎が炸裂する。爆薬のように瞬間的に爆縮した炎は鬼の厚い外皮を焼き、めり込んだ拳と共に弾けた爆風と熱がその下の肉を弾けさせる
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎──！！」
「オッラァ──！」

[9 二次元好きの匿名さん 24/08/12(月) 22:03:11]

これはランサーマスターだな

[10 スレ主 24/08/12(月) 22:50:12]

炎を纏う拳を両腕に、鬼の肉を焼いた一撃をそのまま終わらせずに二度三度、連続して拳を撃ち込んでいくのはランサーのマスター、ガラン・ギリアム。今の世を生きる彼は現代の魔術使いにしても有り余る破壊力を発揮してその牙を存分に振るう
全身に漲る殺気は即ち彼がここへ来るまでに練り上げた気功の業。それは肉体を鋼のように鍛え、躯体に炎と紫電を宿す
連続して拳が鬼の身体に打ち込まれる度、硬質な外皮を弾き飛ばし肉を抉る。一発一発が攻性手榴弾に匹敵する爆風と爆炎を伴う拳を浴びせる毎に、鬼を構成するエーテルの血肉を散らし鮮血が舞う
「ハッハァ──！」
その様子はあまりにも凄惨で、拳を振るうギリアム自身も飛び散る返り血を浴びて身体を染め上げていくが、彼は一切頓着する事なく拳打の雨を浴びせ続ける
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！！」
鬼は身体を抉る連撃に声にならない叫びを上げながら腕を振り下ろす。自身の身体を抉り続ける己を叩き潰すように落とされた拳の一撃に対して、ギリアムはその拳が振り下ろされる直前には一気に間合いに入り込んだ時のように再び紫電を纏い電光の様な速度でその場から離脱した
「⬛︎⬛︎⬛︎──！」
拳は空振りして地面を大きく抉り周囲の地面を瞬間、弛ませる。しかし、例えサーヴァントさえ回避に徹する一撃も回避されれば意味は生じない
ギリアムは鬼から距離を取り、炎が消え、煙を吐く拳を振り払う
拳が振り下ろされる前にその危険を察知した回避行動。数多の戦場を生きた経験が研ぎ澄まさせた戦闘勘は尋常に無い戦いの場においても、変わらず彼を支えている
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！」
唸り声を上げて鬼はギリアムはと迫る。5mに迫る巨躯が生み出す一歩は一度開いた彼我の間合いを容易く埋め、そしてその巨体が背負う金棒は既にその必殺の威力を生じる間合いにギリアムを捉えていた
当然、直撃どころか掠っただけでも人間の肉体はその威力に耐えられない。余波だけで人体はバラバラになりあっさりと挽肉になる事請け合いだろう
「ランサー！！」
迫る死を前に獣の様に嗤い声を張り上げるギリアム。同時に彼を殺さんと迫る鬼の横から迫る緋い閃光が、その脇腹を抉り取った
「──任せな！」
声と共に閃く閃光が鬼の側を通り抜ける度に、鋭く肉を刺し抉る音が鳴り、鬼の身体から鮮血が吹き出す

[11 スレ主 24/08/13(火) 08:01:51]

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！」
「へっ！このまま一気に仕留めてやらぁ！」
肉を抉られながら金棒を振り回す鬼の連撃を器用に躱しながら閃光は絶えず鬼の周囲を縦横無尽に駆け巡り鬼の表面を次々と削り取っていく
常人にはただ赤い光が駆け抜けている様にしか見えないだろう。しかし、その閃光と同じ英霊達には、一歩下がった距離という事もあって、その様子がはっきりと見えていた
真紅の光の正体は月光に反射した朱い槍。それを繰り出していくのは青い身を包んだサーヴァント。ギリアムの言葉とその敏さ、そして何よりその手に持った朱い槍を持った様からはランサーのサーヴァントと見て間違いないだろう
槍兵には最速の英霊が選ばれると言う話だが、この速さはその中でも選りすぐりのものだろう。一歩離れた距離で見ているからこそこうして目でとらえら捉えられているが、これが鬼の立ち位置であれば同じ様に翻弄されていたかもしれないと、サーヴァント達はその速さを評する
だが、ランサーの攻撃は鬼の身体から血を噴出させるが、それだけでは鬼を仕留めるには足りない。
何故なら傷を与えても与えても、鬼の身体は徐々に再生を始めていた。如何にランサーがどのサーヴァントよりも疾く、鋭い槍の連撃を見舞ってもこの鬼に対しては文字通り表面的な効果しか与えられない
純粋な攻撃力で言えばバーサーカーの方が遥かに高く、それでも仕留められないのだから、如何にランサーの攻撃が鋭くてもその命には届かない
「おいおいどうしたよ？ボケッとしてたらこっちでハンティングは貰っちまうぜ？」
だと言うのに、ランサーとそのマスターにはその事実に対する驚きも焦りも見受けられなかった。寧ろマスターのギリアムは此方を挑発する余裕さえ持ち合わせている
「──ふむ」
アーチャーは弓に矢を番えながらも現状に対して様子見に徹していた。それは他のサーヴァント、キャスターとバーサーカーもまた見に回っている
恐らく、ランサーはここで切り札を切ってでもあの鬼を仕留めるつもりでいるのだろう。ランサーのマスターは以前にもこの戦いに参戦している。例えここで己がサーヴァントの真名を晒す事になったとしても、解放される霊地を抑える事を選んだのだ
その為、彼等はこのハンティング・ゲームに於ける報酬と引き換えにランサーの真名を把握するつもりでいた

[12 二次元好きの匿名さん 24/08/13(火) 19:27:12]

保守

[13 スレ主 24/08/13(火) 23:37:14]

尤も、バーサーカーのマスターは既に以前の戦いの時にランサーの真名を把握していた。その為他の参加者達と違い、妨害は出来ないまでも多少強引にでもあの鬼を仕留めに行くと言う選択肢もあった。バーサーカーの攻撃力はランサーのそれを大きく上回る。ともすれば強引に押し切る事も出来るやもしれない
だが、晴信は敢えてその選択を取る事はしなかった。理由は明白──ランサーの真名を、宝具を知っているからだ
既に機先を制された以上、ランサーから獲物を横取りする術はもはや無いに等しいと、血気に逸るバーサーカーを抑える
そう、バーサーカーの攻撃力を以てしても、眼前で鬼を前に立ち回る槍兵に先んじる事はほぼ不可能──何故ならば
「さあて……！」
一歩距離を離して鬼の眼前に槍を特異な持ち方で構えるランサー。穂先を地面スレスレに降ろして石突を顔の横の高さにする構えはあまりにも不合理で、これでは下にしか突くことが出来ない筈だが、そんな事等知った事ではないとばかりに不敵に嗤うランサー
そして、槍から溢れ出す尋常ならざる魔力
これは正しく宝具──サーヴァント、英霊を象徴する秘奥をここに曝け出すと言う事実に他ならない
他のサーヴァントが見ているこの場において、誰よりも先んじて自らの真名を明かすと言う等半ば自殺行為に近い行い。だからこそアーチャーは自身の宝具を言葉巧みに使わない事を宣言し、キャスターも他のサーヴァントに言葉を投げかけのそすれ、自身は宝具について一才触れる事はしなかった
しかし、ランサーは根っからの「英雄」である
己の真名、隠すに及ばず。元より聖杯に賭ける願いなどは無く、ただまだ見ぬ兵との戦を望みこの場に立つ
故に出し惜しみはしない。情報戦で不利を背負う程度、生前の頃を思えばハンデにすらなりはしないと獰猛に肉を張り詰めさせる
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！！」
鬼もまた、ランサーから放たれる魔力を警戒してか、一歩離れた間合いから動かなかったが、それが本能か、大きく吼えながら今一度金棒を振り上げてランサーへと突撃する
「その心臓、貰い受ける！」
ランサーも鬼の動きに一拍遅れて動き出す。一歩大きく踏み込み、紅く煌めく槍を突き下ろす。それとほぼ同時に鬼の振り下ろした金棒がランサーを捉え──

「『刺し穿つ──』」

紅蓮の光が、瞬く──

「『──死棘の槍』！！」

[14 スレ主 24/08/14(水) 07:59:08]

それは、実に可笑しな出来事であった
ランサーは確かに槍を突き下ろした。つまり槍の鋒は鬼を一才捉える事はなく、そのまま地面を抉るだけ。それが現実であり、物理的にそうならなければならない
物理現象として下に突き出した槍がそれ以外の方向へ動く事はない筈なのだ
──しかし、ランサーが突き下ろした槍はまるでこの世界の基盤となるルールをねじ曲げるかの様に、まるで初めからそうなる事が「定まっていた」かの様に不自然に赤い軌跡をVの字を描きながら跳ね上げて、気がつけば槍は鬼の厚い胸板を深々と貫いていた
「──悪いな。この槍は必殺が売りでね」
「────ッ───」
鬼は声にならない声を掠れる様に、呻くように漏らし、振り下ろした金棒も力無く地面に落ちる
紛れもなく、ランサーの槍は鬼の心臓──霊核を破壊していた
あっさりと、誰にも届かせることのできなかった鬼の霊核を貫いてみせたランサーの宝具。それは良い。仮にも英霊の宝具だそれくらいの奇跡は起きるだろう
しかし、問題の本質はそこでは無い。鬼を仕留めたと言う結果よりも、この場の誰もがその過程にこそ着目していた。せざるを得なかった
「今のは──」
「「因果逆転」……はじめに「命中した」と言う結果を作り、然るのちに槍を繰り出す事で成立する必殺の槍……成程、アレがゲイ・ボルク」
誰かの呟きにその答えを出したアーチャー。そして同時にその恐ろしさを端的に説明して見せた
因果逆転──発動すれば最後、決して防ぐ事の出来ない正に必殺の一撃。何せ槍を繰り出す前にその一撃が「命中した」と言う結果が存在しているのだ
それでは何をしようとも既に結果が出ている以上意味は無い。放たれたら最後、決して外さず急所を貫く朱色の魔槍
ゲイ・ボルク──その槍を手繰る英霊はこの世でただ一人のみ。成程、確かにその存在は槍兵の器に相応しき
「『クー・フーリン』……これはまた、強力な英霊が参戦しているものですね……」
アーチャーの言葉に思わず息を呑む土御門柚子。彼女もまたこのグレイル・グランプリに参加するにあたり英霊の下調べに抜かりはなかった
故に当然、クー・フーリンの事も知っているし、その逸話もまた同じ
アルスターの大英雄、太陽の御子。凡そランサーとして召喚しうる英霊の中でも最強格を誇るだろう存在。それが今後、自分達の敵として立ちはだかると言うのだ

[16 スレ主 24/08/14(水) 21:44:08]

「───」
心臓……即ち霊核を貫かれた鬼は無言のまま横たわり、最早これまでの様な暴威を振るう事はない
因果逆転の呪いの槍。アレを受けては如何に頑強な肉体と高い再生能力を有した鬼といえどもひとたまりもないだろう
何せ既に「心臓を貫いた」と言う結果があったのだ。この一撃から逃れるには、発動した時点で既に槍の射程から退避する事で「命中した」という結果を生じさせないか、単純に槍の魔力を上回る魔力量と神秘の強度で相殺する他は無いだろう
つまり、巨大に似合わぬ動きを見せたといえど、ランサーは愚かバーサーカーより遅い鬼ではどう足掻いても不可能な事であった
「クー・フーリン……」
土御門柚子は改めてランサーの真名を口にした。ケルト神話はアルスター伝説に名高き赤枝の騎士、今尚生きると云われる影の国の女王スにして神殺しの女神スカサハよりその武芸を学び、その朱槍を賜った正に大英雄の一角
聖杯戦争に参加するマスターは、視認したサーヴァントの霊基情報を確認できる。契約したサーヴァントならばその詳細を、契約外の敵対するサーヴァントも表面的なステータスの確認はできた
筋力：B
耐久：C
敏捷：A
魔力：C
幸運：D
宝具：B
一見、バーサーカーと比べて頼りない風に見えるが、槍兵に相応しい最大級の敏捷に高ランクの筋力を持つ。耐久は平均的なランクと言えるだろうが、ランサーの最期……数多の敵を道連れに戦い続けた逸話からして何かしらのスキルは持っていると考えた方が良いだろう
そして、何よりも宝具。アレを使われては如何に胡散臭く用意周到なキャスターと言えどもどうなるか
「キャスター……あの槍兵に勝てますか？」
「ンンンンどうでしょう？あの槍を使われては如何に拙僧と言えど、変わり身では躱せますまい」
しかし、とキャスターは一度言葉を区切った
「聖杯戦争とは、英霊同士の戦いだけでは御座いますまい。戦って勝てないのならば、戦わずして勝つのもまた、肝要なれば」
キャスターは妖しく口元に微笑みを浮かべている
確かに、ランサーが如何に強敵でも、正面から戦わなければならないわけではない。何せ此方はキャスター。元々が正面での白兵戦は不得手と云われるクラスであり、寧ろ自身の陣地を作り敵を待ち構える戦法の方が得手
戦うにせよ、相手の土俵ではなく自身の土俵で戦うべきであり、それ以上に戦わない方向で策を練るのも立派な戦い方だろう

[17 二次元好きの匿名さん 24/08/15(木) 08:43:21]

保守

[18 スレ主 24/08/15(木) 17:57:46]

もうちょいもうちょい

[19 スレ主 24/08/15(木) 21:09:27]

「ですが……やはり格の高い霊地を持っていかれるのは苦しいですね」
ランサーの能力は当然だが、その直前で見せたマスターの方も剣呑だった。あの鬼の肉を削り取る程の火力と瞬く間に敵へ接近・離脱を可能にする速さ。どんな魔術や理屈で動いているかは分からないものの、戦闘力はマスターとして見るなら破格の力だと言えた。アレだけの力を持った主従がもしも格の高い霊地で工房ないし陣地を確保して盤石の態勢を築いたらと思うと……
「ンンンン、それはまだ早計というものですぞマスター？」
「キャスター……？」
普段に輪をかけて胡散臭い声色で語りかけてくるキャスター。その顔に貼り付けた様な微笑みもまた胡散臭い。しかし、胡散臭いだけでこれ迄の彼の発言そのものは正しいものであるのも事実である
「気を抜くには些か速いですぞ？まだ、狩りは終わってはおりませぬ」
キャスターが視線を向けるその先には、心臓を穿たれ自ら流した血の池に横たわる鬼の骸があった
「──ま、ざっとこんなもんだろ」
ランサーは槍を回して肩に担ぐ。槍は確実に鬼の霊核を貫き破壊した。彼の槍で破壊された傷は簡単には治ることはない。ましてや霊核、心臓を破壊された以上はどの様な存在であれ生存は先ず不可能と言って良いだろう。クー・フーリンとゲイ・ボルクの逸話は魔術世界においては有名である
「これでゲームは俺たちの勝ちだ。格の高い霊地霊脈があれば、バーサーカーだろうとも簡単には崩せん要塞を作れる。背後の心配をせずにより目の前の戦いに集中できると言うもんだ」
クハハ、と笑い声をあげてランサーの元へ近寄るギリアム。ランサーは少しだけ呆れた風に笑う。改めて、随分と戦狂いな男に呼ばれたものだと思うが、悪い気はしない。寧ろ陰気な権謀術数やせせこましい手を使わずに戦いに赴く姿勢には戦士として共感を覚えた
「霊地ねぇ……あんな寂れた建物に潜んでた割には拘るじゃねえの」
「当然だ。格の高い霊地を確保すればそれだけ魔力に都合が付く。魔力があればお前への供給量もより多くなる。つまりそれだけ戦いに余分な思考を持ち込まないで済むんだからな」
だからこそ格の高い霊地が手に入るまでは簡易な拠点でやり過ごすつもりだったが、こんなに速いタイミングでハンティング・ゲームを行うとはまさに僥倖。真名の露呈というリスクを背負ってでも獲りに行くべきだと決断したのだ

[20 二次元好きの匿名さん 24/08/15(木) 21:18:44]

キャスターの不穏な発言
まぁ、メタ的に主人公がまだ来てないのにイベントが終わるはずねぇよな。

[21 二次元好きの匿名さん 24/08/16(金) 08:41:54]

保守

[22 二次元好きの匿名さん 24/08/16(金) 20:32:06]

保守

[23 スレ主 24/08/16(金) 20:36:14]

「──あん？」
──その違和感に気が付いたのはランサーだ。彼は生粋の戦士であり生涯に於いてその最期まで戦いに身を捧げたアルスターの勇士にして赤枝の騎士団最強の槍使い
生涯を戦いに生きた彼はその最期に、彼を執念で追い続けたコノートの女王の奸計と張り巡らせた策謀によって死を迎える事になったと言う。しかし、それまでに乗り越えた策略や修羅場の数は多く、かの女王もまた非道を以ってクー・フーリンを追い詰めたのだ
ランサーが戦場を駆け抜けて数多の敵や策、罠を乗り越えた要因はその実力も当然だが、同時に彼は戦士として培われた勘が存在していた。まるで臆病な小動物の様に鋭敏な感覚は彼に戦場で数多の危険を察知させ乗り越える支えとなったのも事実だ
その勘が彼に警笛を鳴らしたのだ。マスターは振り向いた事で背を向けた屍に感じた僅かな違和感──
ランサーは生前より己を助けて来たその勘に従い一度斃した筈の鬼へ振り返る
「────」
ランサーは決して見逃さなかった。血の海に倒れ伏した鬼の手、その黒い指先が僅かに動いた事を──
「ランサー？どうした──」
「下がってなマスター」
ランサーは自身の手で己がマスターを制し、担いだ槍の鋒を斃れた鬼へと向ける
「……なに？」
「コイツ……」
それは、あまりにも異常な光景だった。ランサーの槍は必殺。発動したら最後、確実に心臓を穿ち殺す呪いの槍。それは確かに黒き鬼にも効果を発揮しその霊核を貫いた
霊核を破壊された以上、その存在は息絶える他はない。これはサーヴァントでも鬼でも、聖杯によって呼び出された存在である以上このルールから流れる術は無い
その、筈が──
「まさか、生き返ったってのか！？」
「さあな！」
心臓を穿たれ、斃れた筈の鬼が、再び立ち上がるなど、異常という以外に言い表す他はない──
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！！」

[24 二次元好きの匿名さん 24/08/16(金) 22:52:46]

まぁ、やっぱり死んでないよな

[25 二次元好きの匿名さん 24/08/17(土) 09:13:33]

知ってた

[26 スレ主 24/08/17(土) 20:41:59]

再び戦場に轟く悍ましい咆哮
ランサーの宝具を喰らって尚立ち上がる黒き鬼。ランサーの宝具、必殺の朱槍を受けて立ち上がる常軌を超えた姿にランサーは警戒度を一気に引き上げる
「参ったな……コイツを出すからには必殺でなけりゃなんねえってのに」
「チッ、……どうやってランサーの宝具を受けて──」
ギリアムもこの展開には表情を顰める。吼える鬼から身体に紫電を纏わせて距離を離す。ランサーは吼える鬼へ再び槍を構え間合いに踏み込む
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️！！」
「ハァア！」
振り下ろされる金棒を紙一重で躱しながら槍で鬼の胸に穂先を突き刺す。心臓部に穿たれた穴を更に抉り込む様に朱槍を突き刺し、捕まえようと迫る黒い腕を避ける様に槍を捻りながら引き抜き離脱する。傷口を深く抉り出した事で鮮やかな血が噴き出し地面をまた紅く濡らす
「──◼️◼️◼️◼️！」
捻じられた傷口から疾る激痛からか、狂った様に咆哮を上げながら金棒を振り回す。金棒の狙いも滅茶苦茶でランサーすらも範囲から外れ、ただ外敵から自分に近づけさせない為に只管力任せに金棒を叩きつけている。金棒を振り上げる度、地面を叩く度に地面が割れて土や泥を飛び散らせ、周囲の樹木さえ金棒の乱撃がヘシ折り吹き飛ばしていく
「──ははぁ、成程ねぇ」
その場から離脱しながら、荒れ狂う鬼の身体をよく観察していたランサーは、何を見たのか1人納得した様子で蜻蛉を切る。鬼の間合いから既に遠ざかり、様子見に徹していたサーヴァント達の所へ着地した
「災難やったねぇ」
ランサーに真っ先に声をかけてきたのは、バーサーカーであった
「あん？」
「宝具まで使うて、仕留めきれへんてのは今後が辛いんとちゃう？」
「──ハッ」
バーサーカーの皮肉の効いた台詞に、ランサー、クランの猛犬はまるで気にしていないかの様に鼻で笑う
「これくらいのハンデなんざ俺にとっちゃあ日常茶飯事なんでな。今更気になることもねえよ」
そう、ランサーにとっては自分に不利な戦場は当たり前の光景、当たり前の出来事である。その程度のことで赤枝の騎士は揺るがない

[27 スレ主 24/08/17(土) 21:12:55]

「それに、俺の槍で仕留められねえって事はこの場の誰もアイツを仕留めらるかわかんねぇぞ」
ランサーの赤い瞳が鬼を貫く。宝具で穿った筈の心臓が、胸の傷が鬼の身体から消え始めていた。そう、これまで受けた全ての攻撃がそうだった様に、呪いの槍を受けた傷もまた修復された塞がっていっているのだ。仮にも宝具による傷、それも不治の呪いを宿した朱槍による因果逆転の攻撃。サーヴァントであれ受ければ即死。よしんば何らかの手段で即死を免れたとしてもそう簡単に治ることのない深い傷を負う筈の一撃を受け、黒い鬼の肉体はこれまでと変わらずに塞がり出している
その様子はサーヴァントだけでなくマスター達も見ていた──
「聖杯からの魔力供給……これ程ですか」
「聖杯の力によるゴリ押しって事か……イラつくが正攻法は無理って事だなぁ」
聖杯のから魔力を直接供給されている以上、並の攻撃では瞬く間に治ってしまう。それはキャスターの呪いも、ランサーの朱槍も本来なら簡単に癒せるような物ではない。しかし、聖杯の力は万能の願望器と言われる程の力を有している。その力は宝具の神秘を塗り潰してしまえるほどであった
「これ程の獲物……まだ序盤のゲームで出すとはな」
晴信はこれまでのグランプリの経験にはない展開に内心驚きを隠せなかった。本来はこんな序盤にゲームを行う事はなかった。しかし今回はいきなりハンティングゲーム。それもこれ程の獲物を標的にしたものは初めてであった。現状仕留める手段は無い。ともすると単独撃破を想定していないにかもしれない。さて、どう攻略すべきか──
「──ほう」
思考を巡らせようとした時、新たに接近した魔力に顔を上げる。これ程の魔力は魔術師でなくサーヴァント。現在ここにいるサーヴァントはバーサーカー、キャスター、アーチャー、ランサーの4騎。そして接近する魔力は2騎
『成程──』
「出遅れましたが、どうやら間に合ったようですね」戦場に迸る2条の電光。その光の規模と魔力は先のランサーのマスター、ガラン・ギリアムのそれとは比べ物にならない神秘を伴い鬼の姿を一瞬、大気を灼熱に灼きながら轟音と共に貫いた
そして、鬼の眼前に降り立ちは2騎の武者──
「──鬼であれば、我が刃で斬り捨てるが必定でしょう」
「この程度、跡形もなく屠るのみ」
魔性殺し、神秘殺し。剣と騎乗の英霊、真名を同じくする両者が満を持して刃を抜いた

[28 二次元好きの匿名さん 24/08/18(日) 08:44:16]

保守

[29 二次元好きの匿名さん 24/08/18(日) 19:53:42]

保守

[30 二次元好きの匿名さん 24/08/18(日) 23:51:09]

保守

[31 スレ主 24/08/19(月) 00:32:37]

セイバーとライダー、2騎のサーヴァントが戦場に立つ。平安は京の都、鬼に限らず多くの魔性が跋扈する時代に於いて魔性を狩る事も多くあった源氏武者の中で、最大最強の源氏にして棟梁として君臨し果ては鬼の首領たるバーサーカー、酒呑童子の討伐を果たした者
即ち、源頼光──正に、ハンティング・ゲームの標的である鬼を打ち滅ぼすにはうってつけの人材であった
そして、この場に立つのは魔性殺しのサーヴァントだけでは無い──
「どうやら美味しいところに間に合った様だ」
「これはまた……聖杯戦争ってなんでもありなのか？」
セイバーとライダー。それぞれのマスターもまたこの場に立つ。セイバーのマスター、楠正雪は特徴的なコンバットブーツにグローブを身につけている。見た目からして徒手格闘戦を意識した出立に見える
対象的にライダーのマスターである御剣識の方は右手にホールディングナイフを握っている
サーヴァントとマスター、両者の視線は雷光が貫いた鬼へ向けられている。魔性殺しの撃ち放った2条の雷光。奔った光は一瞬だが、その破壊痕は鬼のいた箇所もろとも地面を大きく抉り焼き焦がしていた。魔力放出というスキルが生み出した一撃はジェット噴射の様に肉体を強化するだけではなく、雷鳴として放射する事で強烈な攻撃を可能にする
雷光が着弾と共に焼いた地面や鬼の肉体から黒煙をあげ視界を阻む様に鬼の姿を隠している
ランサーの宝具を受けても斃せなかった頑強さを持つ程の存在だ。如何に魔性殺しの一撃とは言えどれ程の効果が見込めるか……
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️……」
煙が薄れていき、苦しそうな呻き声と共に姿を晒した鬼。ランサーやバーサーカー、アーチャーの攻撃を受け傷こそ負えども受けた側から反撃を繰り出してきた鬼。しかし、今は呻くばかりで反撃の気配が見えずにいた
それも当然だろう。鬼の肉体に刻まれた傷跡はこれまでのサーヴァントの攻撃で与えられたどの傷よりも深く痛々しく刻まれている。雷撃は黒い鬼の肉体を焼き焦がすだけでは無く、まるで巨きな刃で斬り付けられた様に鋭い裂傷が2本、刀傷と共に電光の熱が傷の内側から鬼を焼き尽くす。そればかりか──
「再生が遅いですね……」
「あの牛女の攻撃やさかい、そりゃあ効くやろなぁ」
「ンンンンンン、ここは流石、と言うべきですなぁ」

[32 二次元好きの匿名さん 24/08/19(月) 09:08:02]

は

[33 二次元好きの匿名さん 24/08/19(月) 20:46:43]

鬼の身体に刻まれた斜め十字の斬痕。その表面はまるで炭化した様な様相を見せており、黒い色の体表と見比べてもはっきりと分かる程に酷い有様で、焼けこげた肉のむせ返るような匂いと併せて黒煙と共に漂ってくる。黒い鬼は傷口を抑えたまま低く唸る様な声を発しながら2騎の闖入者を睨みつけている。しかし、やはりセイバーとライダーの雷の威力は凄まじく、これまでの様にすぐさま再生して反撃とはいかない様子であった
切り傷の深い所まで魔性殺しの雷撃に焼かれたのだから無理もないだろう。日の本最大最強と謳われた魔性殺しの名は伊達ではないと言うことだ
「──まだ息がありますか」
口を開いたのはセイバー。冷ややかな口調と声色は眼前の敵を最早敵ではなく外注と同列に認識している事の現れである
「……手を抜いたわけではありませんね?ライダー」
「戯言を」
顔の向きは変えず、視線だけを向けてセイバーはライダーを睨む。手を抜いたのでは？という疑問ではあるが、その言葉の裏には「その程度の力なのですか?」という挑発が込められていた
が、全身を甲冑で包み込み顔さえも面頬で覆い隠すライダーからは表情が読み取れず、ただくぐもった声で発せられた一言でセイバーの言の葉を切り捨てた
「貴様こそ、よもや今の一撃が全霊とでも言うつもりか？だとしたら堕落したものだが」
「言ってくれますね……」
あからさまな挑発の応酬、互いに痛烈な皮肉を交えた言葉を交わすたび、その手に握られた太刀に雷光が迸る──
「今の言、取り下げは効きませんよ、ライダー？」
「戯けが。今の催しの最中に刃を向ける気か？セイバー」
一見、セイバーの剣幕をライダーが受け流している様にも見られるやり取りだが、互いの握る刃からは、漏れ出していた紫電が徐々に大きくなり始めている。これ以上は一触触発になりかねない雰囲気の中、その空気を破るものがいた
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！」
セイバーとライダーの雷撃に灼かれた鬼がら傷口を抑えたまま、叫びながら両者へ突撃を仕掛けたのだ。単純な威力でもダンプカーの全速力を上回るだろう破壊力の突進に、聖杯からの魔力を受けた鬼にはサーヴァントのそれに負けない神秘を備えている。これまでの鬼のどの攻撃も、サーヴァントにとって脅威に他ならないが、この吶喊も当然、受け止めればバラバラになってしまうかもしれないと思える程の破壊力を秘めていた

[34 二次元好きの匿名さん 24/08/19(月) 23:57:12]

保守

[35 スレ主 24/08/20(火) 09:57:01]

だが、その様な見え透いた攻撃が英雄たる両者に届くことはなく、鬼が両者の元へ到達した時にはセイバーはその頭上へ、そしてライダーは背後へと回り込んでいた
互いの刃に迸る稲光は既に臨界へと──
「邪魔です！」
「散れ」
頭上と背後、2方向からの電光が鬼を引き裂く。先の一撃よりも更に威力の引き上げられた斬撃が眼前の障害を屠らんと瞬いた
閃光の如き剣筋と雷光が奔り、それに刹那遅れて鳴り響く轟音。セイバーの一撃は地を割り、ライダーの一閃はその軌跡で地を削ぎ落とす
セイバーとライダー、純粋な攻撃力では共にバーサーカーには届かないだろう。しかし、こと瞬間的な破壊力・攻撃力に限定すればバーサーカーにも引けを取らない力を有している。それこそがあの雷光に他ならない
魔力放出(雷)、そして魔力放出(迅雷)
セイバー、ライダーの両名が其々有するスキルであるが、細かい違いはあれ本質は同じ雷を操るもの。魔力を雷に変化ささ武器や肉体に宿らせ、力を発揮する。それによって刀を振るうだけでは起こり得ない範囲の破壊行為を成し、瞬時に相手の懐へ入り込み、また背後を回る程の疾さを実現しうる。まるで雷神か帝釈天かの如き力。それこそがセイバーとライダーの持つ能力の一端であるのだ
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！！」
立て続けに繰り出された攻撃に絶叫の様な声を上げる鬼の異形。今度は正十字の形に鬼を襲う雷光と斬撃。唐竹に真っ直ぐに落とされた雷光纏う斬撃は頭から胴までを切り裂き焦がす。そして背後から繰り出される横薙ぎの紫電が背中から脇腹を深々と断ち斬り、内側から灼熱が血肉を焼いて激痛を与える
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！！！」
あまりにも深く届いた斬撃は雷光の熱で傷口を焼かれながらも腹に深いところから鮮血が噴き上がる。焼けた傷口から更に溢れでる流血が斬撃と共に焼かれた焦土に滴り落ちて赤く焼けた土にやって踊る様に蒸発して赤い煙に変わる。焼けた地面から抜ける水蒸気、焦げた中からのぼる黒煙と混ざり合い気味の悪い3色の煙が異形を覆う──

[36 二次元好きの匿名さん 24/08/20(火) 21:37:26]

保守

[37 スレ主 24/08/20(火) 23:59:58]

「……」
キャスターとバーサーカーと共にその光景を目の当たりにしていたアーチャーは、その雷光の程に驚きながらも、既に状況を細かく分析していた
(バーサーカー……酒呑童子のあの見知った風な口振り……そして何より彼女でさえ持て余す程の耐久力の標的に対するアレだけの攻撃力……成程)
アーチャーはその生前、賢者と呼ばれ数多の英雄を導いた存在であった。その智慧、見識は例え時代が変わろうと、死して英霊となろうとも翳ることはないその目は穏やかに、されど真実を見抜く力は鋭く隠された事実を暴いて行く
　(少なくとも、あのセイバーの真名は凡そ掴みました。ライダーの方は……まだ断定は禁物ですが、少なくともセイバーの関係者と見て良いでしょう)
2騎のサーヴァントがオニへ叩き込んだ魔力放出の雷。あの力の使い方は両者で異なる様子だが、本質的には同じ属性の雷光だというのはこの目で見たことで確認した。そして、どちらの攻撃もあのオニに与えたダメージはほぼ同じ、筋力で勝る筈のバーサーカーの攻撃を遥かに上回る損傷を与えている。つまりはあのオニに対して何かしらの特攻効果を有している……つまり生前においてオニを討ち果たし英霊として昇華された事でその逸話や功績が力となったのだ
有名な所で言えばかのジークフリート、シグルドと言った竜殺しが挙げられるだろう
そして少々風変わりな様相だがセイバーとライダーは種類こそ異なるが日本の武士が纏うと言う甲冑に相当する代物
魔性への特攻、酒呑童子と同時代を生きた日本のサムライ。そしてあの魔力放出──性別に関しては敢えて無視すれば、賢人の頭脳が真名を自ずと解き明かす
即ち──源頼光。セイバーの真名はこれでほぼ間違いはないだろう。ライダーの方もともすれば同じかもしれないが、余りにも見た目が異なる。サーヴァントは全盛期の姿で召喚されると言う。例えクラスが異なろうと全盛期が大きく変わる、と言うケースはあまり多くはない
それに、これまでの亜種聖杯戦争において同一の開催地に同じ英霊が同時に存在するというケースは聞いたことは無い
(まだ、結論をつけるには早いですね……)

[38 二次元好きの匿名さん 24/08/21(水) 08:32:43]

ほし

[39 二次元好きの匿名さん 24/08/21(水) 19:17:42]

夜保守

[40 二次元好きの匿名さん 24/08/21(水) 23:05:13]

ケイローン先生抜け目ない

[41 スレ主 24/08/22(木) 08:21:26]

雷光に灼かれた鬼を前にセイバーとライダーは太刀を構える。鬼は片膝を突き金棒を杖代わりにして俯きながらも、倒れない
身体に刻まれた傷跡は深く、痛々しく残っており再生も未だ遅いまま
ただでさえ特攻のこう側に加え雷光の灼熱で焼かれた傷は容易には修復しないだろう
「……これでもまだ斃れませんか」
セイバーは自身の太刀を二度受けても、斃れない鬼の耐久力に忌々しそうに呟く。英霊となって昇華された己の逸話。魔性に対して強力な攻撃力を発揮する己と、加えて同じ力を持つだろうライダーとの同時攻撃を受けて斃れない
聖杯からの魔力供給があるのだろうが、それでも非常にしぶといと言える
ある意味で、自分達が到着するまで4人の英霊がいても斃せなかった理由は理解できた。だが──
「虫は虫らしく……消えなさい！」
斃れていないだけで傷は何より深く刻まれている。そのどれもが命に届き得る程の焼けた刀疵。最早瀕死、死に体と言っても過言ではなく、その証拠に鬼は今もなお片膝をついて動く気配がない
これでトドメ、と太刀を大きく振りかぶり一閃。白銀の閃きと同時に稲光が放たれる。それはセイバーの魔力そのもの。当然の様に魔性殺し、神秘殺しの属性を濃く内包している
二度で斃れぬならば三度叩き込む
鬼に時間を与えて良いことなど何一つ存在し得ないと、生前の頃からいやと言うほど理解しているセイバー。拙速ではあるが、回復の隙を与えないと繰り出した一撃は確かに理にかなっていた
対するライダーは何を思ってか不動。このままではセイバーにハンティング・ゲームの報酬を持っていかれかねない。魔術師でないマスターを擁する陣営としては、獲れる所は逃したくない筈ではあるが──
「……え？」
「む──」
その異変に真っ先に気がついたのは、鬼に比較的近くにいた楠正雪と魔力探知の術に長けたガラン・ギリアムであった

[42 二次元好きの匿名さん 24/08/22(木) 20:16:46]

ほ

[43 二次元好きの匿名さん 24/08/22(木) 23:44:56]

最後のアサシン陣営かな？

[44 スレ主 24/08/23(金) 08:18:55]

鬼へ流入される魔力量──僅かに上昇している……？
霊脈を通して鬼へ供給されている魔力。その量が徐々にだが、確実に上昇していた。更に傍からはわからない様に霊脈を通るラインには巧妙な偽装を施されている様で鬼へ供給されるその時まで上昇しているかは全く解らない様になっている
「まだ何かあるってか?」
それまで弛緩した姿勢だったギリアムは感じ取った僅かな変化に警戒のギアを引き上げる。重心を落とし拳を握り、魔術回路を静かに回転させ始めた
「セイバー！」
正雪もまた変化に対してセイバーへと呼びかける。決して彼女が遅れを取るとは思わないが、戦いは決着が着くまではわからない
セイバーの繰り出した雷光が今一度鬼を貫く。伏した鬼は再び身体を灼く激痛に叫ぶ。ここまでは先程と何も変わっていない。鬼の耐久力はサーヴァント複数騎の攻撃力をしても中々倒し切れないものではあったが、セイバーの攻撃をそう何度も耐えられるはずは無い。このままセイバーの攻撃で決着か？感じた変化は杞憂で終わるのか──
そう考えた瞬間だった
「────！」
魔性殺しの雷を喰らい激痛に叫ぶ鬼の眼に、光が灯る。生命の明かりではない、まるで見るもの全てを呪うような、悍ましき赤い灯火
そして──
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！！」
それまでの叫びとはまるで質の異なる雄叫びを上げ、セイバーの雷光を握りしめた金棒で打ち払ってしまった
「な！？」
「──ほう」
雷撃を放ったセイバー、そしてこのすぐ近くにいたライダーもまた驚きの声を上げた。何しろ魔性殺し、神秘殺しの雷をその対象である鬼が正面から打払い掻き消してしまったのだから
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！」
天上を見上げ月へ向け吠える鬼。内から感じ取れる魔力量も先程までとはまるで異なっている
サーヴァントと同程度の魔力量しか無かった筈のそれが、この場に集ったサーヴァント6騎分の魔力に匹敵しかねない──それ程に莫大な魔力が鬼の内に渦巻いていた

[45 二次元好きの匿名さん 24/08/23(金) 19:54:59]

まさかあそこからさらにパワーアップすんのかよ

[46 二次元好きの匿名さん 24/08/23(金) 22:56:58]

ほ

[47 二次元好きの匿名さん 24/08/24(土) 09:29:47]

しゅ

[48 スレ主 24/08/24(土) 20:51:24]

「ここに来て……」
「──」
魔力が鼓動の様に脈打ちながら膨れ上がると共に、灼き付けられた刀疵や火傷の痕が修復されて行く。焼け焦げた傷が新しく精製される細胞によって剥がれ落ちて行き深々と付けられた切創が、魔性特攻と雷光によって焦がされた肉が鮮血を吹き出して生々しく蠢きながら塞がって行く
傷跡は再生した肉が僅かに膨らむ様な跡を遺すのみとなってしまった
「成程……聖杯の力、本物という事ですか」
アーチャーが鬼の変化を観察しながら弓を構える。ランサーが仕留めきれなかった以上、ともすればセイバーかライダーのどちらかが押し切ってしまうかもしれないと思っていたが、これは未だ此方にも機会があるかも知れないと、矢を番え視線鋭く鬼を見据える
「あれまあ……熊やないけど、えらい貌やなぁ」
「バーサーカー。どう見る？」
「どうも何も、ごっつう力になっとるし……首もいでサヨナラで済めば御の字やない？」
バーサーカー。酒呑童子はマスターである坂田晴信の傍らで酒を呷っている。生前に従えた鬼と似た様なものを感じているのか、彼が覚えている中でもいつにも増して深い笑顔で盃を傾けていた
「おいおい……マスターは気づいていたのか？」
ランサーは朱槍を構えマスターの前に立ちながら振り返る。ギリアムも重心を落とした姿勢を保ち体内の魔力を練り上げる様に回路を回転させている
「初めからではないがな。こう言った変化を見逃さないのは生き残るコツだからな」
「ハッ、違えねえ」
朱槍の一撃で仕留められず、真名も既に周りに晒してしまった。思い切ったアクションが裏目に出た形になったが、そんな程度の不利を不利とカウントする様な心構えではない。そして当然、この場の勝利も微塵も諦めてはいない。結果として奴を倒せれば結果オーライと言うものだ
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️！！」

[49 スレ主 24/08/24(土) 21:04:22]

鬼は傷が治ると共に身体全体がパンプアップしたかの様に膨れ上がり、黒い肉体に血脈の様に赤い筋がぼんやりと光り鼓動の様に魔力が渦巻いている。さらに肩に担ぐ金棒にも鬼の身体から溢れた魔力がまとわりつく陽炎にように輪郭をぼやけさせる
「セイバー……」
「ええ、お任せくださいマスター。如何に強大になろうと鬼は鬼。斬って仕舞えば終わりです」
マスターの言葉に力強く返すセイバー。今も尚膨れ続ける魔力の多寡は鬼が立つ地面さえボロボロにし周囲の樹木さえ鬼の身体から漏れる瘴気混じりの魔力に当てられて枯れて行ってしまう。鬼は姿勢を低く、少し前屈みになる様な姿勢を取り突撃の体勢を取る
「魔力が膨れようともやる事は変わらない──」
鬼の視線はセイバーとライダーに向けられている。魔力が膨れ上がろうとも、鬼であることに変わらない。存在そのものが変質していない以上は彼女達が持つ特攻も生きている。それならば依然彼女達の優性は揺るぎない
「◼️◼️◼️──」
油断はなかった。如何に優性の特攻を持つセイバーとライダーと言えども彼女達もまた英雄、英霊へと昇華されるほどの存在。その前に源氏武者たるセイバーに油断も隙も無い。さらに魔力が膨れ上がり、この場のサーヴァント複数に匹敵する魔力の量にまで膨れ上がった鬼を前に太刀を構え鬼へ先制する為に一歩踏む──
「──◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️！」
「──っ！？」
「！」
正面、それも離れた場所に居たはずの鬼が、金棒を振り上げて地面を抉り込むように踏み込んできていた──
「っ！？」
咄嗟に太刀でかち上げるように振り抜かれた金棒を太刀で受け止める。しかし、想像を絶する程の膂力で叩きつけられた金棒と火花を散らし太刀事吹き飛ばされた。さらに──
「◼️◼️◼️◼️！」
「っぐ！」
振り抜かれた金棒をさらに振り上げる。セイバーを吹き飛ばした一撃をそのまますぐ側にいたライダーへと牙を剥く。ライダーは両肩の大袖で金棒の一撃を防御する。しかし、ラセイバーを吹き飛ばした鬼の攻撃。不意を打たれて吹き飛ばされたセイバー。ライダーは第二撃で繰り出された一撃だった為か吹き飛びはしなかったものの、地面を削りながら大きく後退る

[50 二次元好きの匿名さん 24/08/24(土) 23:51:38]

夜保守

[51 二次元好きの匿名さん 24/08/25(日) 11:14:36]

ほ

[52 二次元好きの匿名さん 24/08/25(日) 23:05:16]

しゅ

[53 スレ主 24/08/25(日) 23:59:56]

「この力──」
辛うじて踏みとどまり、吹き飛ばされはしなかったライダーであったが、鬼に起きた急激な変化に内心驚きを隠せないでいた。それまでは膂力こそサーヴァントを屠るだけのものはあったが、捉えられるだけの速さも無く大した知性も感じられないケダモノであった。それこそ恐らく時間さえ掛かるだろうが己単独でも十分討滅出来ただろう
しかし、幾ら聖杯の魔力があるとはいえ急激に能力が格段に向上したかと思えば、不意を打たれたとは言えセイバーに一瞬反応を遅らせる程の速力と防御に上から吹き飛ばす程の膂力を発揮するとは想像だにしていなかった
セイバーと共々相当なダメージを与えた筈だと言うのに、それも快復してしまっている
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️！」
セイバーを吹き飛ばしライダーをも大きく後退させた鬼は天に吠え振り抜いた金棒を再び肩に担ぐ。その咆哮にも多大な魔力が上乗せられ物理的な振動と突風が草木や周囲のサーヴァントも髪を激しく揺らす
吠える鬼の背後へと回り込む影が疾駆する
「──オラァ！」
背後から朱槍を繰り出すランサー。背後から再び心臓を狙った刺突は鬼の表皮を貫き、肉へ抉るものの、肉体そのものの強度も上昇しているのか、心臓までは届かなかった
「チッ」
「◼️◼️◼️！」
ランサーの刺突を喰らった鬼は鬱陶しそうに金棒を持たない左腕で払う様に振う。それだけでもこれまでの攻撃を上回る速度と圧力を感じる。ランサーは槍を引き抜くと同時にアクロバットな動きで躱すと追撃を受けない様に距離を取る
「想像以上に硬え……」
「これやったらどうや？」
ランサーへ振り返った鬼の頭上から今度はバーサーカーが爪を振り下ろす。バーサーカーの爪が鬼の肩口から胸迄を引き裂く。酒呑童子の爪は強靭になった鬼の肉体を切り裂くが、傷は浅い

[54 二次元好きの匿名さん 24/08/26(月) 08:39:06]

運営的にこれほど魔力供給して大丈夫なのだろうか？

[55 二次元好きの匿名さん 24/08/26(月) 20:22:41]

余程魔力が豊富なのか霊脈がすごいのかな

[56 二次元好きの匿名さん 24/08/26(月) 23:55:28]

保守

[57 スレ主 24/08/27(火) 08:08:56]

「毎度のことやけど、面倒やなぁ」
酒呑童子は自身の攻撃の効果が薄いと見るや即座に身を翻し、鬼から離脱しようとするが──
「──あれま」
酒呑童子の上を巨大な影が覆う。黒い異形の鬼が、月の夜を遮り酒呑童子の頭上を支配していた
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎！！」
振り抜かれる金棒の一撃。酒呑童子と黒鬼は互いに宙空、後ろは離脱する酒呑と前へ追う鬼。人の領域を置き去りにする酒呑の膂力であるが、今この時は黒鬼の方が速かった
「ッッ！！」
セイバーを吹き飛ばし、ライダーを退かせる破の一撃を酒呑童子は防御もままならずに直撃を貰う。金棒が華奢な胴体にめり込む。身体が、手足が金棒のめり込む側へ折れ曲がり、肉がひしゃげ、臓腑が弾け、骨が圧壊する音が彼女の内に反響する
「──」
なすすべもなく吹き飛ばされ地面に叩きつけられる酒呑童子
彼女は鬼であり生前より人を超越した魔性のモノ。人の持つ技術のいろはを知っているはずもなく、そしてその様なものが必要になるわけもない程、人と彼女の間には隔絶した溝が存在していた
それはサーヴァントになっても同じ。そのステータスは今以てこの領域に召喚されたどのサーヴァントよりも高く存在のあるままに暴威を振り撒くだけで只管に強大な存在である筈だった
だが、何処まで行っても今の彼女はサーヴァント。特定の枠組みとして人類が召喚可能な領域まで押し込められた存在であり、クラスという一定のレベルで他と均一化された使い魔。聖杯からの魔力供給を受けて強化された黒鬼の一撃をまとも受ければその結果はこの通りであった
「バーサーカー！」
晴信は声をやや荒げる。レイラインで繋がっている以上バーサーカーが生存している事は把握しているものの、今の一撃は看過できるものではない。本来ならば如何に聖杯に支えられているとは言え、この時代に召喚された程度の鬼がバーサーカーをたたき伏せることなど出来るはずがない。しかし、このグレイル・グランプリを司る聖杯。その力の多寡を知る彼は歯軋りしながらも現状を受け止めていた
(やはり……魔力量に関しては破格の性能だ……！)

[58 二次元好きの匿名さん 24/08/27(火) 20:01:41]

保守

[59 二次元好きの匿名さん 24/08/27(火) 23:50:50]

保守

[60 二次元好きの匿名さん 24/08/28(水) 09:07:51]

朝保守

[61 スレ主 24/08/28(水) 09:32:31]

そして、この一部始終を命を張るマスターとしてでなく、クーラーの効いたクラブルームてにて一観客として眺めているオーディエンス達も、この展開にざわついていた
「おーっと！これは何ということだ！」
黒いサングラスの司会者も、その奥の眼に驚きを隠せない様子であるが、進行と盛り上げを同時に熟すのはプロと言うべきか
「鬼の強化に伴い、セイバーは愚かバーサーカーまでも吹き飛ばされてしまったー！太刀で辛うじて防御したセイバーとは違い、バーサーカーは直撃を受けてしまったぞ！優勝候補のまさかの事態、これは大番狂せもあるかー！？」
今回の「ハンティング・ゲーム」標的となっている鬼の強さのカラクリ自体は当然運営側である彼も把握しているが、正直此処までの物とは思っていなかったのと、前回優勝のバーサーカーを襲ったまさかの出来事。予想外ではあったがそこは何度もこの大会を回してきただけはあり、その回る口に澱みはなかった
「さて！我々が用意したゲームをどう攻略するか！あの鬼はサーヴァント1騎では仕留めきれない！5騎か6騎によるトドメの争奪戦で丁度良いくらいの難易度を想定しておりましたが、それでは目の肥えた皆様方にお届けするには薄味！何より我々も面白くはない！その為、一つの仕掛けを施させて頂きました！」
衆目の眼は激昂する鬼に惹かれているが、その上でオーディエンス達の耳に届く様にマイクを調整しながら、司会者の男は口を開く
「『サーヴァントが7騎揃い』、『ターゲットへの累計ダメージが一定量を超える』この二つの条件が満たされた時、ギミックが発動し今皆様方がご覧になられた様に、ターゲットは聖杯の力を受けて途轍もない強化を受けるのです！つまり、映像では6騎しか見受けられませんが、この場の何処かには既にアサシンが虎視眈々と漁夫の利を狙い息を潜めているのでしょうか！そしてその事で条件が満たされ、ターゲットはそれこそサーヴァントを凌我しかねない程に強くなってしまったー！」
(とは言っても、これはちょいとやりすぎな気もするけどなぁ……)
内心では若干ボヤきながらも回る口調は止まらない。しっかりと相手に届く様に声の大きさと喋るスピード、間の取り方も絶妙に調整しながら続けていく

[62 二次元好きの匿名さん 24/08/28(水) 21:05:03]

アサシン陣営は漁夫の利作戦かな？

[63 二次元好きの匿名さん 24/08/28(水) 23:55:49]

夜保守

[64 スレ主 24/08/29(木) 09:13:05]

「さあこの窮地をどう凌ぐ！どうやってあの怪物を攻略するというのか！？当然1騎では攻略は難しいでしょう。しかし他の陣営と共同戦線を張ろうにも報酬は1騎のみ。どうやっても最後はトドメの奪い合いになることは必定！」
なんとも厭らしい催しである。単独での勝利は難しく、例え特攻を有するセイバーとライダーの反応を不意とは言え超えて見せた鬼を相手に単独撃破という選択肢は取り辛い。しかし協同で当たろうにも結局のところは腹の探り合い裏のかき合いになだてしまうだろう
互いの消耗具合も当然変わってくるし、最低限の協力でトドメだけ貰う──と言う事も当然狙ってくる筈
「しかし、その駆け引きあってこその聖杯戦争！あの強大なターゲットを前に、トドメを奪りあいと戦力の温存という行動を取れるのか！？無理難題という他はない！無いがそれでこその英霊！その無理難題を成してこそかつて神話や歴史に名を刻みし偉人であると言えるでしょう！」
(クー・フーリンで堕とせないとなると……有力なのはセイバーがライダーのどっちかかねぇ)
司会者の男は熱い解説の裏では冷静に現状を鑑みていた。当然運営側の人間である彼は参戦しているサーヴァントの真名は把握している
一部隠蔽している奴もいるが凡そは間違いはない。その中では鬼殺し、魔性殺しとして名高いかの源頼光がターゲットの撃破に最も近い
だが、あくまでも近いというだけで、他のサーヴァントが横からトドメだけ掠め取る事は当然考えられる。特にアーチャーとアサシンがその筆頭だろう
ゲームの行方はまだ分からない──

[65 二次元好きの匿名さん 24/08/29(木) 21:01:54]

夜保守

[66 二次元好きの匿名さん 24/08/30(金) 08:40:57]

保守

[67 二次元好きの匿名さん 24/08/30(金) 20:09:40]

夜保守

[68 二次元好きの匿名さん 24/08/30(金) 22:58:36]

ほ

[69 二次元好きの匿名さん 24/08/31(土) 08:42:50]

朝保守

[70 二次元好きの匿名さん 24/08/31(土) 20:41:23]

保守

[71 二次元好きの匿名さん 24/09/01(日) 08:40:40]

朝保守

[72 二次元好きの匿名さん 24/09/01(日) 18:03:07]

まだかな？

[73 二次元好きの匿名さん 24/09/01(日) 23:37:42]

夜保守

[74 スレ主 24/09/02(月) 08:08:25]

果たして、どちらが狩る側なのか。戦闘は徐々に激しさを増していた
ライダー、セイバーのに騎が主軸となり、キャスターアーチャーの援護が随所に入る。更にその間を縫う様にランサーが鬼の身体を削り取っていく様に槍を繰り出す
如何に鬼が聖杯により強化されていると言えど、セイバー及びライダーの攻撃は未だ有効打になり得ている。展開としては拮抗しているものの、これを維持するだけではいずれ夜が明けて時間切れという消耗するだけの結末が待っている
「ハァアアア！」
「フンッ」　
鬼の攻撃を紙一重で躱しながらセイバーが雷光纏う太刀を振るう。先の鬼からの一撃は、突然能力が上昇し此方の反応を一瞬とは言え上回れたが、次は無いと無窮の領域に到達した武練が鬼の一挙手一投足を具に捉えている
セイバーの反対側からはライダーもまた紫電迸る太刀で鬼を斬る。神鳴る斬撃の応酬は確実に鬼の体へ損傷と痛みを累積させているがまだ足りない。鬼は切り付けられる度、刻まれる度に荒ぶる様に吠え立てて金棒を振り回し、一瞬でもセイバーの反応を超える速さで2騎の背後に回るものの、キャスターやアーチャーの呪術弓矢によって牽制され当たれば屠れる膂力を発揮しきれずにいた
ランサーもまた最速の英霊に名高き迅さは伊達ではなくセイバーとライダーの斬撃の間を縫う様に四方から紅光が走りその度に鬼の身体に癒え難い傷と出血を強いている
「……バーサーカー」
その様子を横目で見ながら、晴信は吹き飛ばされ横たわる自身のサーヴァントへ呼び掛けた。バーサーカーの肉体は最早限界を留めているのが不思議なほどの損壊具合であった
首はあらぬ方向へ折れ曲がり、両腕両足も関節が増えたかの様に折れるばかりか表面が破れ内側の千切れかけた肉が、裂けるように折れた骨が飛び出ている。血溜まりに沈む姿は誰がどう見ても無事ではない姿。サーヴァントでなければ即死しているだろう
そんな状態のバーサーカーを前に、晴信は淡々と告げる

[75 スレ主 24/09/02(月) 08:09:10]

いやはやごめんなさい
ちょっと新発売のゲームに夢中になりすぎてしまい……ゲフンゲフン

[76 二次元好きの匿名さん 24/09/02(月) 20:07:43]

保守

[77 二次元好きの匿名さん 24/09/02(月) 20:08:19]

>>75

なんという名称のゲームなんですか？

[78 二次元好きの匿名さん 24/09/02(月) 23:51:37]

保守

[79 スレ主 24/09/03(火) 08:08:29]

「立てるな、バーサーカー」
骨が砕け、肉が潰れ四肢が胴がひしゃげ歪んだ肉袋へと告げる言葉はあ無情な戦闘続行の指示。歪み壊された肉体は例えサーヴァントであろうとも下手をすれば死は免れない。未だに消滅していていないことが不思議なほどだ
そんな状態であろうが淡々と「戦え」と命じる様は一種異様にも映る
しかし、晴信は知っている。自身の契約したサーヴァントの正体を、その人ならざる在り方と力を
晴信が告げてすぐ、皮が千切れ肉を突き破り骨が裂けてあり得ない方向に折れ曲がっていた右腕。皮一枚程度で辛うじて繋がっている程度の、動かさないはずのその指先が、ピクリ、と微かに稼働した
「旦那はんも、えろういけずやわあ」
自身から流れ出た血溜まりに浸る肉袋──否、酒呑童子は潰れた身体で強引に起き上がる。その身体を動かす度に肉がちぎれる様な音と骨が割れ、血が至る所から激しく流れ出す
歪に歪んだ上半身だけで起き上がる様は正に人の身で出来得ることではない。しかし「ハンティング・ゲーム」ターゲットと同じ鬼種であるバーサーカーはそんな道理なぞ知らぬとばかりに動く度に壊れ続ける肉体に一切頓着せずに血塗れの顔で嗤う
「ウチ、こないにボロボロにされた言うのに、鬼使いが荒いわぁ」
などと言葉では言っているものの、その表情には深い愉悦の色が刻まれ千切れかけの腕から流れる血を舐めとっている
「お前があの程度でくたばるはずもないだろう。例え首を落とされても、その首だけで襲い掛かる様な奴にな」
「そない言うても、動くにはもうちょい時間は必要よ?こう見えて結構壊れてるさかい」　
「向こうもすぐに決着とはいくまい。最悪トドメだけ貰えばゲームは俺たちの勝利だ」
本来ならばもっと納得の行く手段での勝利が望ましいが、あのセイバーとライダーのに騎を同時に相手どるのは如何にバーサーカーとても厳しいだろう

[80 スレ主 24/09/03(火) 08:09:28]

>>77

ガン◯ムブ◯◯カー4です…

[82 二次元好きの匿名さん 24/09/03(火) 20:09:20]

保守

[83 二次元好きの匿名さん 24/09/04(水) 07:47:13]

保守

[84 スレ主 24/09/04(水) 08:17:23]

生理的嫌悪感を感じさせる様な気味の悪い音を立てながら壊れた肉体の復元を始まるバーサーカー。戦闘復帰にはもう少しの時を要するだろう
さしものあの二騎も今の標的の鬼を相手に瞬殺は難しいはずだ
「先ずは身体をどうにかしておけ。奴の狙いがこっちに向けばひとたまりもない」
晴信は視線をバーサーカーから標的へ移す
時間はある。だがのんびりもしていられないだろう。そろそろどこかの陣営が何かしらの手段を打ってもおかしくはない

「ンンンンンン──」
キャスターはこれまで積極的な攻撃はしないでいた。元来キャスタークラスは直接戦闘では他のサーヴァントと比べても一段劣る傾向にある。現代の魔術師と把握すれば当然圧倒的にキャスターが上手になるが英霊同士となれば途端に厳しいだろう
まして相手は一瞬とは言え、最優のセイバーの反応を超えた動きを見せた。その様な動きを此方に向けて来られたら今度は式神で逃げることもできないかもしれない
故にこうして手を出して狙いの矛先が此方に向かない様、見に回っていたのだ。そして、ただ戦いの行方を眺めている訳では当然なく──
「キャスター、どうですか?」
土御門柚子の問にキャスターは普段通り胡散臭い笑顔を貼り付けたまま、彼女の方は向き直る
「ええ、ええ。凡そあの鬼を強化している霊脈とその流れは把握できました」
「では」
「ただし、流石は聖杯。非常に強固な防衛網を張り巡らせておりますれば、拙僧の術式では1分も保てば儲け物かと」
鬼を強化する聖杯からの魔力を遮断してしまえば鬼の弱体化は免れまいと、その魔力供給を断つ術を模索していたが、どうやらそう甘くはないようだ