もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart5

  • 1二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:34:18

    アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。

    ミネルバの活躍は起こるはずだった事象を前倒しにするだけでなく、世界のレールをも分岐させていくことになるかも知れません。彼らが進む航路には果たして何が待つのか。クルーとパイロット達、アグネスの運命は。

    悲劇と惨劇を乗り越えることが出来るのか、呼び寄せてしまうのか。選ばれて行く未来は。

    おつきあいをいただければ。

  • 2二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:43:32

    前スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart4|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。ミネルバとアグネスはその進撃…bbs.animanch.com

    1スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たら|あにまん掲示板アグネスが士官学校卒業ザフトアカデミー、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSを書く予定です。お付き合い頂ければ。bbs.animanch.com

    2スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart2|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。はたして、アグネスは、ルナマ…bbs.animanch.com

    3スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart3|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。己を取り巻く不可解な状況に四…bbs.animanch.com
  • 3二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:50:54

    たておつ
    この辺のイベント入ると中盤まで来たなぁってなる

  • 4二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:51:22

    10まで保守

  • 5二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:51:38

  • 6二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:51:55

    保志ゅ

  • 7二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:53:27
  • 8二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:55:50

    乙です
    アニメ本編から結構流れ変わってきたね

  • 9二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:56:05

    ho

  • 10二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 14:57:13

  • 11二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 15:00:10

    カガリが声明出してアスランがメンタル的にだいぶマシになったのは良かったかな?
    レイの反応的に議長の想定してたチャートがだいぶ崩壊したみたいだし

    このあと本編通りならダーダネルスだけどミネルバの修理が長くなるのと月戦線に戻す予定とでどうなるやら

  • 12二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 15:01:01

    アグネス「うぉっと!」
    危うくぶつかるところだったわ!空間認識能力が低いのか!喜びのあまりかな。

    ミーア ホテルに御出と聞いて急いで戻って参りましたのよ。

    ミーアがアスランに駆け寄って抱き着く。
    アスラン「な…。ミー…ぁ。はぁっ」
    もろにミーアって言ってるわ…。この人に隠し事は向いていないわね。

    議長は意味深にミーアを微笑みながら見つめ、艦長はそんな議長を怪訝な顔を向ける。
    ミーア「明日のステージは?見に来てくださいますか?」
    アスラン「え?あぁまぁ…」
    ミーア「本当に!?楽しみにしています!」

    どうやら、明日、ライブをやるらしい。今日来たばかりだものね。議長一行も。その後、授与式だったし。

    アグネス「(しかし、賑やかな子ね。本物とは感じが違い過ぎる。見捨てられないか今から心配ね)」

    権力者は残酷なものだから。

  • 13二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 15:02:03

    建て乙です
    毎回描写が細かくて更新楽しみにしてます

  • 14二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 15:25:08

    ミーアいつも議長の側だからアグネスの影響範囲から遠いんだよな…アスランががんばれ

  • 15二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 15:27:31

    まだミーア本人や議長はミネルバ組の大半に影武者がバレてるの知らないんだよな…w

  • 16二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 00:34:54

    保守です

  • 17二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 00:59:28

    その残酷な権力者にして彼女の飼い主、デュランダル議長は何時もの微笑を湛えながら平気で爆弾を投げつける。

    デュランダル「彼等にも今日はここに泊まってゆっくりするよう言ったところです。
    どうぞ久しぶりに二人で食事でもなさってください」

    ミーアは議長の言葉に顔を輝かせる。

    ミーア「まぁ!本当ですの!それは嬉しいですわ!アスラン、では早速席を」

    うむ。この茶番劇、どうしてくれよう。ここにいる議長、艦長、アスラン、私、シン、レイ皆、この子の正体を知っている。艦長には直接言ったことはないが、絶対クルー伝いに耳に入っているはず。

    アグネス「(あ~あ。なんか可哀想ね。本人、ノリノリみたいだけど。これ、当人たちはどういう感情なんだろう)」

    少なくともアスランは全く演技できていないわね。これはダメだわ…。う~ん。ミーアもとい『偽ラクス作戦』そのものが議長の独断っぽいけど。長期間はごまかせない以上、何時この子をパージするのでしょうね。

    そんなことを考えていると、議長は続いて、アスランにも声をかける。

    デュランダル「ああ、その前にちょっといいかな?アスラン」。
    アスラン「うん?」

    何かアスランは議長に連れられて中庭に行ったわ。ミーアも一緒に。どうせ議長はアスランにろくでもないことを吹き込むつもりでしょう。しゃっきりして欲しいわ。流石に前ほどの軽率さは無いと信じたいけど。

    議長とアスランとミーアを敬礼で見送り、今後の予定を考える。まあ、ミーアじゃないが食事ね。何食べようかな。

    タリア「アグネス、ちょっといいかしら?」
    アグネス「はい?」
    私は艦長か…。シンはちょっと気になっていそうな視線を、レイはなんか険しい視線を向けてくる。まあ、レイは無視ね。気づかないふり。

    軽く手を挙げて挨拶を送り、二人と別れて艦長について行く。

  • 18二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 01:02:30

    タリア「ごめんなさいね」

    艦長のホテルの部屋に招かれる。うむ。もうちょい豪華でも良くない?このホテル、やっぱりパチものだったわね。ビジネスホテルに毛が生えた程度じゃない。

    タリア「アグネス、それ。ばれるわよ」
    ギクッ。ちょっと…。

    アグネス「いえ、苦しい時勢の中、このような宿泊施設を用意して下さった…」
    艦長が私の弁解を遮る。

    タリア「別に査定に響かせたりしないわ。でも、注意なさい。男は女が思っている以上に聡い。一挙手一投足、貴女は『見られる側』になっているのよ。忘れないで」

    女性上司としての助言か。ありがたく聞いておこう。確かに、世の男性が副長の様な善人ではない。アスランやシンもアホだけど善よりだし、間違いなく。

    艦長から窓際のソファーを勧められ腰掛けると、横に艦長も腰を降ろしてくる。
    何とはなしにこの人の日々を思う。艦長は孤独だ。同期もいない、副長は善良でもあくまで部下。一体日々何を思い、どのように生活しているのだろう。

    アグネス「(今考えても仕方ないわね)」

    艦長と視線を合わせる。ソファーに2人で横に腰かけながら、身体をやや捻って向かい合って話し始める。

    タリア「アグネス、さっきの議長とのお茶会。ロゴスのこと、議長の話すことに異議がありそうだったわね」

    表情に出ていたの!?抑制していたつもりなのに…。

    タリア「大丈夫。さほど付き合いがない、異性の議長には。多分ね」
    アグネス「そうだと良いのですが…。はい。艦長のおっしゃる通り。いやしくもエリートの端くれ、ザフトアカデミーを卒業したものとして陰謀論に加担するつもりはありません」

  • 19二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 01:07:25

    艦長は目を細めながら、私の顔を見つめる。この表情はどっちの意味だろう。

    タリア「ロゴスの暗躍が嘘だと…」
    アグネス「いえ…。それは語弊があります。ロゴスなる独占的巨大資本を持つ経済同友集団が存在し、地球の政財界に大きな力を持っていること。その力が時に戦争や外交方針の決定にすら、作用を及ぼすものである事。主要メンバーの中にブルーコスモスの賛同者、主導者が居ることは私も事実であろうと考えています。それが望ましくないとも」

    頷く艦長に言葉を続ける。艦長は果たしてどこまで知っているのだろう。白服でフェイスなのだから、流石に『政治のこと、分かりません。上層部のこと、知りません』は困る。もう、タリア・グラディス自身が上層部の一員で、政治決定の重要ファクターなのだから。

    アグネス「個々の犯罪が立証できるかはさて置き、彼らの内少なくないメンバーが各国の法律。独占禁止法や税法、環境法、贈収賄、その他に抵触している可能性が有ります。民事責任を問われるはずだった案件も。すり抜け踏み倒してきたのでしょうけど」
    艦長「そうね。それに法に反してなかったと仮定しても、独占・寡占・公共財への侵害が大きな問題であることは中学生でも知っているものね」

    だから、議長が『ロゴスやばい』と言う分には別に嘘は言っていないわけだ。

    アグネス「それとブルーコスモスのテロ。仮に彼ら自らが手を下していなくても共同共謀正犯が立証されれば、かなりの数の上層部が絞首台送りになるのではないかと思います。あるいは終身刑」

    これに更に他の戦争犯罪・人道犯罪も加えれば結構やばいんじゃない?規模がどこまでか、メンバーの顔触れ全部は知らないけど。組織壊滅すると思うわ。

    アグネス「(合法的にね。でも、問題は彼らに法を執行するだけの体力のある機関がないことか。各個人・会社単位なら国が『お灸をすえる』ことは出来ても)」

    そう言えば前大戦の戦犯、ムルタ・アズラエルもロゴスのメンバーだと聞いたことがあるわね。全く、バカじゃない。前大戦が終わった時点で存在を公表し、『闇の組織』を合法的な経済同友会にすればよかったのに。そこで手が切れなかったなら、共犯扱いもやむなしだわ。

    やっぱり戦後は財閥解体ね。確定(私の中では)。

  • 20二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 01:14:45

    私の見解に艦長は一応納得しつつも、気になったように質問する。

    タリア「じゃあ、貴女は議長の何に異が有ったの?」

    うむ。なかなか言いずらいことを聞くわね。先ず話しやすい方を。

    アグネス「彼らが人類の歴史上ずっと軍需産業のために戦争をけしかけ、人々を躍らせて来た、という言い分は誇張の領域を超えています。

    そもそも軍産複合体の存在感を過大評価していますし、人類の戦争史が彼らの管理下に継続的にあったとも思いません。

    現にジェネシスは三隻同盟の活躍が無ければ地球に撃ちこまれ、ユニウスセブンも私達の奮闘が無ければ、彼らが逃げ込んだシェルターすら砕いたかもしれないのです」

    タリア「そうね…。確かに。世界の黒幕を名乗るには役者不足ね」

    艦長は、ある程度納得した表情を見せた上で、ちょっと手を挙げると部屋の冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを2本取り出す。私に1本渡してくれ、まず自分がキャップを開いて口を着ける。『遠慮せずに飲め』のサイン。

    数口飲んでのどを潤し、話を続ける。

    アグネス「もう一つ、異が有ったとすれば議長の話し方が…。アスランやシン、同期と戦友を丸め込み自分の派閥に加えることを目的にするように感じられたためです。あまり、見ていて気分の良いものではありません」

    ソファーに腰かけながら、身体をやや捻って向かい合って話していたのに、今の言葉を聞いて艦長は目を伏せ、膝に重ねて乗せていた両手をぎゅっと握り、体の向きを私から軽くそらしてしまう。

    アグネス「(あ~あ。こうなるから言いたくなかったのに)」
    『議長の愛人=デュランダル派』ですものね。世間から見ると。

  • 21二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 01:20:13

    アグネス「(私個人としてはこの人への悪感情が減っていることを最近自覚している。判断力や思い切り、政治力に欠けているように感じられるのは確かだけど。全くの無能でもないし。世間の風当たりも女性だから、というだけでかなりきつくなっていると思う)」

    これが男性同士の親友で、議長(男)が親友(男)を信頼して最新鋭艦を託す、と言ったストーリーならたとえコネが混じった決定だとしてもここまで悪し様に言われただろうか。
    プラントから遠い地球の基地まで。既に寡婦となった彼女が誰と付き合おうが、法的にも倫理的にも責められる謂れはないはずなのに。

    アグネス「(強いて言えば息子さんへの対応ぐらいかな。軍人は忙しい。幼くして父を亡くした子のメンタルケアは出来ていないかも知れないわね)」

    艦長がミネラルウォーターを一気に飲み、そのままの勢いで口を開く。それお酒じゃないわよ!

    タリア「なかなかね…!思うようにはいかないわよ。何事も」
    アグネス「はあ…。そうですね。確かに」

    ちょっと艦長の勢いに押されてしまう。

    タリア「貴女この後、予定は?誰かと食事?」
    アグネス「いえ。特には…」
    タリア「じゃあ、私につき合いなさい。アーサーもいない。一人で食べるのもどうかと思っていたのよ。議長もアスランと出かけたし。勿論上司と食事なんて嫌なら…」
    アグネス「いいえ。お付き合いします。お誘いいただきありがとうございます」

    何か妙なことになったわね。まあ、高い料理いっぱい頼んでやるわ。上司のおごりよ。

    アグネス「(飲みニケーション大事だものね。アルコール飲まないけど)」

  • 22二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 05:33:08

    アグネスは呑むのも仕事だと思ってそうだし結構強い気がする

  • 23二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 08:15:00

    ま、戦争で本当に儲かるのかって話を置いたとしても、商売で戦争をするなら、敵を滅ぼしたらあかんわけで。少なくとも前回終盤や、初手核バラ撒いた今回の戦争には、議長の理屈はあてはまらんわな。

  • 24二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 10:52:03

    保守

  • 25二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 11:47:06

    艦長との食事会を終えて部屋に。料理の味はそれなりね。

    制服をハンガーにかけベッドに大の字になりながら、何とはなしに艦長との会話をぼんやり思い出す。

    話が弾んで互いにいろいろ打ち明けられたのは良かったわ。個人的なことから公のことまで。
    艦長の息子さんの名前はウィリアムと言う名前で今は寮のある学校に就学しているとのこと。

    アグネス「(パブリックスクールかな。白服つまり将官の息子な訳だし。うーん。本人の希望で行ったのなら…。いや、議長とのことを考えると、やっぱりポジティブな動機ではないわね)」

    そこは親子で解決してもらうしかない。第三者から母親の責任を放棄している、ネグレクトだ、と責めるのは簡単ではあるけど、取り合えずそこは一旦置いておく。児童相談所に通報するレベルではなさそうだし。

    私からは軍隊生活で異性との出会い―交際相手の異性と言う意味ね―が全くないことのグチを溢す。
    タリア「なかなかこればかりはね。本艦女性軍人は―特にパイロットの貴女は―多くの功績を上げて勲章ももらっている。男性の方がちょっと引いてしまうかもしれないわね」
    アグネス「そんな腰抜けに興味はありません。自分に見合う相手を探すまでです」
    タリア「そうね…」

    それから、艦長の昔話も聞いたわ。なんでも議長とは結婚前からの『ご友人』らしい。流石に『友情の程度』までは話してくれなかったけど。

    まあ、この人の性格を思うに亡夫と結婚している間はあれこれしてはいないだろう。子供も授かったわけだし。でも、議長は未練たらたらね。青春時代を共に過ごした女性。それが今はフリーなんですもの。

    アグネス「(何で再婚しないんだか。互いに公職に就いていて立場があるせいかな…。もしくは結婚前の検査に引っ掛かったのか)」

    プラントに暮らすものとして、結婚前のチェックは避けて通れない。それが嫌で事実婚のような生活を送る場合もあると聞く。砂漠の虎ことバルトフェルド隊長も現地のコーディネイターと愛し合っていたと後で知ったけど、結婚してなかったのは、そういう理由かもしれないわね。

  • 26二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 11:55:09

    まあ、私はダメならさっさと切り替えて次を探すわ。ご縁が無かったのなら、いつまでも操を立てても仕方ない。子供をつくれるかの検査を国の制度として行うことにあれやこれや言うナチュラルもいるらしいけど、彼らとて結婚前に健康診断を受けるのが婚約者のマナーになっているとも聞く。健康問題や障害で破談になるケースも。良くある話なのだ。別に。

    アグネス「(完全に自由意志が無視されているってわけでもないしね。ただ、結婚、ゴール直前に待ったがかかるのも面倒だから、私はつき合い始めてしばらくたったら相性の検査を受けてみようかな。でも、相手に引かれるかも)」

    そこは迷いどころね。

    あと、レイが議長と養父子でることも艦長は知っているそう。まあ、特に隠していると言う訳でもないか。

    私からはやっぱり今後の世界情勢・戦争の推移について。特に月面情勢、アスハ代表・アークエンジェル一行とオーブ情勢、ユーラシアとファウンデーション王国のこと。それと月軌道艦隊への合流。ついでにフェイス制度の私的な運用に対する懸念。

    もろに政権批判になりそうなことは控えながらも伝えるべきことは伝えておかないとね。艦長も相づちを打ってくれていた。
    タリア「月行きに関しては直ぐに命令が来るわ。ここで詳細は言えないけど」
    アグネス「ミネルバの修理がまだということは…。艦長と副長、パイロット隊、メイリンやマッドエイブス等のクルー選抜隊が、ということでしょうか」
    タリア「多分ね…」

    そこまで決まっているなら、休暇が終わり次第すぐか…。そう言えばミネルバは月軌道艦隊所属艦。艦が大破、大規模修理中ならパイロットとクルーは別の船に乗って継戦するべきなのだ。特にパイロット隊は。

    アグネス「(宇宙往還機シャトル、スペース·シャトルで宇宙行きね。腕が鳴るわ)」

    タリア「それとちゃっと立場が不明確だったニーラゴンゴ組、甲板を守ってくれたガズウートの二人は正式にミネルバ所属になったわ。貴女からもフォローを頼むわね」
    アグネス「はい」

  • 27二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 12:03:29

    以上回想終わり。
    うむ。うむ。考えることも多いけど。今は…。寝る!今日も盛りだくさんで疲れたわ。久々のプライバートスペース、フカフカのベッド。勲章と同じくらい…訂正、勲章のちょっと手前くらいうれしいわ。ちょっと早いけど眠ってしまおう。最近大変なことが多すぎた。

    化粧を落としてシャワーを…。
    コン、コン、コン…。ノックの音。誰だ!非常識に。

    アグネス「少し待ってください」
    制服を着てドアに向かう。化粧を落とす寸前で良かったわ。カーペンタリア以降、ちょっと薄めにしているけど完全にすっぴん状態はあり得ない!

    ドアを開けると少し戸惑ったようなシンの顔。殺意が脳天に達しそう!
    アグネス「なに!こんな時間に女性の部屋に!私疲れてるんだけど。張り倒されたいの!!!」

    私の剣幕に押されながらも、シンがおずおずと口を開く。
    シン「いや…その。議長の話について…。アグネスの意見も聞きたくて。アスランさんとはちょっと…だし。レイはその…」

    なるほどね。確かに友達のレイは議長の養子。公平な意見は無理だと分かっているのね。そこは感心。アスランとは人間関係的にちょっと距離があるし。

    アグネス「ああ。もう!じゃあ、今から行けるホテルの…、カフェ空いてるかな?」
    シン「空いてた!」
    アグネス「いや、監視カメラと盗聴の心配が…」
    でも、それを言い出したら、このホテル全部が安全圏ではない。かえってオープンスペースの方が安全かもしれない。

    アグネス「じゃあ、そのカフェで。言うまでもないけど」
    シン「ああ。食事代は俺持ちで」

    ケーキにお菓子死ぬほど食べて、高いコーヒー、紅茶飲みまくってやるわ。どうせこいつも私同様、給金使う暇なかっただろうし。

  • 28二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 13:07:21

    真面目に軍務を果たしてる女性同士って観点からみればこのアグネスとタリアとは波長が合って当然なのかもしれない
    議長とのアレコレの噂からできた色眼鏡がとんでもねぇマイナスイメージだっただけで

  • 29二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 14:56:04

    タリアさんとは良好な関係を築けているしアスハの事等で頭に血がのぼりやすいシンのストッパーになったり疎い政治関連の相談役になったりコミュニケーションに難ありのアスランの緩衝材になったりアグネスかなり大切な立場にいるよなぁ
    各方面から頼りにされていて議長とレイは動きづらそう

  • 30二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 15:35:37

    ところでなんでこのSSのアグネスさんはプラントの国際的地位をここまで高く見積もってるんだろうか
    たまに妄想に片足突っ込んでるような未来展望図とかが出てくるのがなんとも…
    まあ主人公にそういう愛嬌もあるから
    下手すれば昔はやったア〇チSSにならない、いいバランス感が出てるよね

  • 31二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 16:45:11

    小洒落たカフェの窓際に席を取る。落ち着いた雰囲気の店だわ。夜間なのでお酒も提供しているが酔って騒ぐバカ者も居ない。程よい数の客が一日の寝静まる前の最後の数刻を楽しんでいる。

    シン「…」
    エースパイロット((笑)様と二人きっり、全くときめかないわね。相手がこいつでは仕方なし。ケーキを大口で食べ、紅茶を数口飲んで問いかける。

    アグネス「で、何?経済の話がしたいの?軍需産業が言われているほどに儲からないって話?」
    シン「ああ。先ずそれ特に平常時じゃなくて戦時の」

    それが気になるか…。やっぱり。
    アグネス「最初に言っとくと『諸説あり』ね。そもそも一言に戦争と言っても様々な種類がある。通常戦争、総力戦、絶滅戦争、非対称戦争、ハイブリッド戦争etc。儲かるも破産するも千差万別よ。例え儲かってもトータルで見ると…。ということもあるし、国からポッケナイナイされることもある。負けたら戦時国債踏み倒されたり、補償金は税金10割で相殺されることも」
    シン「それに関しては、そうだな。戦争の性質、規模、戦場でお金の使われ方は全然違う…」

    シンも一応同意する。良し良し。ちゃんと考えてるわね。ケーキの残り半分を食べ紅茶を飲み切る。アイサインで店員を呼びつけ、次のケーキと別の種類の紅茶を頼む。

    アグネス「あんた?」
    シン「いや、俺はまだ残っているから…」
    アグネス「そう。じゃあお願いします」
    店員が席を離れたところで、次を切り出す。

    アグネス「ちなみに平時・戦時、志願兵制・徴兵制、問わず、一番お金がかかるのは所謂『兵器』ではなく『人間』ね。大砲でも戦車でも戦闘機でも―議長が言うようなモビルスーツでもミサイルでも―ない。

    『人間』のコストが高いの。兵士のお給料、被服費、食糧費、兵舎の維持管理費、生活費全般、負傷兵・遺族への手当て・軍人年金、遺族年金、兵士一人一人への教育費、その他。当然、戦時になれば爆増するわ」

  • 32二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 16:49:23

    勿論、『食糧費や服代も含めて軍需だ!』と言えなくもない。言えなくもないが、じゃあグフ見せながら話すなっていう話でしょう。モビルスーツやミサイルを例示したのは議長なのだから。そういう小細工、自分の身を危うくするだけと思うわよ。

    シン「うん。それは分かる…。冷静に考えれば…そうだね。C.E.になった今でもそうだ。武器ではなく人が高い、その人を死なせることをご家族と国民に納得させるためのコストはさらに高い。じゃあ議長は俺達に…」

    『俺達に嘘を吐いたのか』とポロッと言いかけるシンのすねを蹴り飛ばして黙らせる。
    シン「…」
    涙目で睨んで来るけど睨み返す。あんた、私まで粛清されたらどうするのよ!!そうなったら100万回地獄に叩き落しても落としたりないわよ!

    頭が冷えてきたシンが『ごめん。俺が悪かった』のジェスチャーをしたので許す。ケーキ一個を一気に食べ、紅茶を半分飲む。心臓、止まるかと思ったわ。

    シン「『間違い』を話されたのかな?」
    そう。それ、言動には気を着けましょう。私も艦長に注意されたばかりよ。
    アグネス「一面を大きく切り取り過ぎている感はあるわね」

    次のケーキ…。もうちょっと待つか。
    シン「ロゴスは?」
    アグネス「そうねぇ―」

    艦長に話したことと同じことを話す。政治経済に大きな影響力のある問題の多い巨大すぎる団体で、是正の対象にしなければならないこと。しかし、世界、戦争を影で操っている、は言い過ぎの感があることははっきり伝える。

    アグネス「あれだけのことをしでかしたんだから、ロゴスのメンバー主要は、ブルーコスモスのテロ、戦争犯罪、人道犯罪の共同共謀正犯で全員処刑か仮釈放なしの終身刑ね。当てはまらないメンバーも叩けば埃が出てくるでしょう。独占禁止法違反、脱税を手始めに各国のありとあらゆる刑法・行政法・民法を動員して裁判にかけ、仮釈放ありの終身刑か返しきれないくらい膨大な債務を負わせてやるしかないわね」

  • 33二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 16:53:15

    言い切るとすかさずケーキのお代わり、イチゴショート、それにデカフェ。シンもデカフェを頼む。

    シン「それは…。まあ、それが良いとは思うけど。でもロゴスは強すぎて、各国が取り締まれていないんだろう?」
    アグネス「あんたが弱気になってどうするのよ!プラントが戦勝国になって国際法廷の場に連中を引きずり出せばいいでしょう。各国、現地の裁判は国際法廷で奴らの頭をぶん殴った後で進めれば良いわ。勿論、プラントの『協力』の下でね」

    デカフェを啜りながらシンがぼやく。
    シン「勝者の裁き…か」
    アグネス「それだけの業、重ねてきたのは彼ら自身よ。ロゴスの各グローバルカンパニーは戦後に財閥解体。資本はまず、プラントへの賠償金に充当して…。プラントの監査の下、同盟条約締結国、つまりは敗戦国の経済を民主化してあげるわ。一時の混乱はあるかも知れないけど、悪しき独占体制が打破されて、長期的には彼らのためになるわ」

    当然そこに至るロードマップはプラント最高評議会とそれを支える行政機関が作成する。敗戦国各国はプラントと自由貿易協定を結んでもらう。

    悪しき時代の遺物である理事国への関税優遇制度は廃止。というか戦争が始まって実質消滅しているけどね。カナーバのバカ者の失敗が吹き飛んだことは嬉しい誤算ね。

    アグネス「そして条約加盟国は戦後、大幅な軍事制限を。核を含む大量破壊兵器の保有は永久禁止。月面を含むカーマン・ラインより上空の宇宙空間に保有するすべての権益の放棄とプラントへの譲渡、それから…」
    シン「ちょっと待った。アグネス…。それ以上はいけない」

    シンに足をちょんちょんさせる。さっきの報復のつもりか!落ち着け、マインドフルネス、マインドフルネス。
    アグネス「確かにここで話すことでもないわね。それで?ちょっとは気がすんだ?」

    デカフェの最後の一杯を飲み切ってシンに尋ねる。
    シン「ああ。注意する。偉い人の言うことも、そのまま真に受けない。自分でも調べる」
    アグネス「小学生か…。まあ、エリートの自覚を取り戻せたなら良し。あと、あんたはおだてに弱いから。それも注意を。ああ、私は別ね」
    シン「ああ。分かった。というかアグネス、おだててくれたことあったっけ?いつも怒られてたような…」

  • 34二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 16:54:16

    し、シンが冷静…!
    ここで自分からアグネスを頼った以上は議長の犬にはならなさそうだね

  • 35二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 16:56:49

    (その頃のレイ・ザ・バレルくん)

  • 36二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 17:06:39

    アグネス「ウェイトレスさん!一番高い…」
    シン「分かったごめんって」

    近寄ってきたウェイトレスに『これだけは割り勘』と話した上で一番高いメニューを頼む。
    出て来たこのお店で用意できる最高級紅茶を二人で飲み切るとお休みを言ってそれぞれの部屋に分かれる。

    化粧を落として、シャワーを浴びやっとのことでベッドに横になる。
    議長が信用ならない男で、潜在的な、いや顕在的な政敵であることがはっきりしたわ。どんどん将来有用な人材に食指を伸ばして、真実が微妙にカクテルされた陰謀論を吹き込み自分の私兵に。ロクなもんじゃない。

    まあ、アスランもシンも薄々、あの男の影の部分を察している風だし、艦長は人間としては彼を愛していても、政治家・上官としては必ずしも…、と言った感じだった。

    アグネス「(少なくとも、世間でどう扱われているかはさて置き、タリア・グラディスはデュランダル派ではないわね。ただあの人、決断力があんまりなさそうだから…。世渡り下手そうだし。大勢のクルーとパイロットの人生を預かっているのだから、そこらへんも頼むわよ)」

    私自身は何かできることは有るだろうか?軍務以外に。う~ん。地球からだとアプリリウスの政情は距離が有り過ぎる。そもそもパイロットとしての仕事が忙しすぎるし―

    アグネス「今日は眠い。お休み」
    今度こそ目を瞑る。体の緊張が解れ、ベッドに体が吸い込まれた瞬間に意識を手放した。

  • 37二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 00:01:00

    目覚ましの音とともに起床。朝、カーテンを開け放つと黒海に面した美しい都市が朝日に煌めくのが見える。素晴らしい、黒海のラスベガスは。

    アグネス「おはよう…」
    何時も挨拶を交わす少女は傍らにいない。メイリンとその他の仲間達は別のホテル。

    私達は議長に呼ばれたから…。特別扱いされるのは大好きだし、プライベートスペースを満喫出来て嬉しいけど…。

    アグネス「常にいる存在がこれほど自分を保たせていてくれたとはね」

    自分は最強なんだ、トップに立つべく産まれた特別な存在なのだ、そう思って生きて来た。

    くだらない葛藤に苦しむ人間、『努力』を重ねても成果が出せず躓き落ちぶれていく人間をせせら笑いながら、彼らが越えられなかったハードルを楽勝で飛び越えてきた。弱者や無能者を尻目にアカデミーを優秀な成績で、次席で卒業した。

    自分はまだこんなものじゃない。一番成果が望める任地に赴いて―戦場に出て任務をこなして、手柄を上げて!上げて!上げ続けて!でも、正直、最近はかなり限界だった。こんなに弱い人間だと自分を思いたくなかった。

    アグネス「(本音を言えば、かなり辛かった。幾ら任務が苦にならないとは言っても、ここ直近は異常だった。気の置けない、同期で同性の仲間がどれほど自分の支えになってくれていたことか…)」

    アカデミーの時はそんなこと考えもしなかった。楽勝だったし、学校なんて。仮に戦場に出たとしても、通常の、いや、それなりの激戦区の部隊に赴任していたとしても、ミネルバレベルでないとこの気持ち、この気付きに至ることはなかっただろう。弱い内に、変に強くなってしまう前に自分の限界に直面できて良かったわ。

    まあ、だから何だという話なんだけどね。メイリンに合流したら、コーヒー奢ってあげよう。店で一番高いやつ。

    うん?
    窓から見るとディン2機に護衛された連絡用ジェットファンヘリが空を横切っていく。あれは議長か。
    一応敬礼、寝間着姿だから様にならないけど。我ながら間抜けな絵図なので急いで制服に着替え、部屋を出る。

  • 38二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 00:04:57

    コーヒーと言えば朝食ね。ずんずん歩いてダイニングを目指すわ。

    廊下を歩きながら考える。年頃の女性がボッチ飯と言うのも何か嫌ね。いちいち気にすることでもないんだけど。その場で誘っても男は寄ってくるだろうけど…、いや、寄ってこないわ。昨日の艦長のセリフを思い出す。今の自分の服装、何時もの略綬いっぱいの制服姿だわ。相手がビビって逃げてしまう。

    誰か道連れが欲しい。艦長は立場が違うからこっちからは誘いづらいわ。会って昨日のお礼がしたいけど今はパス。シンでも誘うか、いや、レイが付いてくるか…。
    アグネス「(あいつとは揉める。議長がらみで絶対に。昨日に今日だから猶更)」

    うーむ。

    そうなると、アスランね。というかアスランをまず誘って、それから艦長orシン、レイと合流すればいいじゃない。私はともかく、彼は放っておいたらボッチ飯確定だからね。コミュニケーションとらせないと。

    アスランの部屋の前に到着。アポイントメントしてないが、まあいいか。

    コン、コン、コン、とまずノック。起きてるかな。

    アグネス「おはようございます、アスラン先輩」
    アスラン「あゥッ!!」

    あー、これは寝てたわ。失敗したかな。事前に、昨日のうちに朝食のことまで気が回っていれば。

    アグネス「(昨日は昨日でそれどころじゃなかったわね)」
    これも云わば戦場の霧のようなもの。戦場ならば銃弾と剣で勝敗を決するまでだわ。ここまで来て引いたら私の体面に傷がつく。

    コン!コン!コン!コン!

    食らえ連続ノック。コンコンしている間にさっさと着替える!軍人なら瞬時にできるでしょう。女性に、いや、私に恥をかかせないでよ!

  • 39二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 00:07:36

    アグネス「お目覚めですか?朝早くからご無礼します。よろしければ一緒に朝ごはん、いかがですか?」

    アスラン「あ…ああ」
    Yesらしい。じゃあ早く出てきなさいよ。突然来た私が悪いんだけど気にしたら負けよ。

    アスラン「えぇっと…えぇ?あぁ…」
    バタバタと何やってるんだか、まあ、返事はもらえたから適当に待つか。

    ミーア「うーん!」
    アスラン「え?あぁこら…」

    中に誰かいるの?不味い場面に来ちゃった?でも…うーん。ラクスは今、アークエンジェルだろうから、というかアスランの話だと関係は円満解消(?)されているらしいし…。

    アグネス「(商売女でも呼び寄せたか?無いわね。確信を持って言える。となると、可哀想な花売りの少女を見捨てられなかったパターンかな)」

    『お父さんは戦争で行方不明、お母さんは不治の病、妹は風邪をこじらせ、弟だけは何とか学校に行かせたいんです』みたいなやつ。アスランのことだから、少女に『もっと自分を大事にしろ』とか説教かまして、財布丸ごと施しちゃってるのかな。それで一夜を共に過ごすが、やましいことは何もなし、と。

    何とはなしに展開の予想がついたところで、バッッとドアが開きピンク髪の透け透け下着をまとった花売りの少女が現れる。ふむ。貧乏なわりに商売の服にはお金をかけるタイプみたいね。後ろには『待った』のポーズをとるアスラン。すごいコミカルな顔ね。

    ミーア「ありがとう…」
    アグネス「ふふふぅ」
    思わず笑っちゃったわ。ここまで自分の予想が当たろう…とは…。

  • 40二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 00:12:58

    ミーア「でも、どうぞお先にいらしてくださいな。アスランは後からわたくしと参りますわ」

    自分の笑い声と相手の声が最初重なり、さらに続く声を聞いて慌てて顔を起こし相手の顔を見る!

    アグネス「ミぃぁ…」
    慌てて自分の口を押えて声を殺す。セーフ。

    ミーア「…」
    アウトね…。ミーアの顔がみるみる真っ青になる。しまった!

    何時もなら、何時もの『偽ラクス』モードならこんなへまは絶対にしない。こんな訳の分からない格好で出てくるから!それじゃあ、だって。

    アグネス「(ラクスは、そんなことはしないでしょ!プロデュース間違えてるわよ)」
    そっくりさんは、そっくりさんの格好して『舞台』に現れてよ。…、あんまりそっくりさんの格好してなかったわね。

    ミーア「…くださいな。アスランは…後からわたくし…と参ります…わ」

    頑張ってセリフを最後まで言った後、わあぁぁ、と座り込んでミーアは泣き出す。えらい!取り合えず、頑張れ、立って、今の出来事を気づかなかったことにするのよ。思い違いだったの、私の。

    アスラン「もうやめるんだ!」
    腕をアスランに掴まれ部屋に引っ張り込まれる。引っ張り込んでどうするの?

    バタンっと勢いよく締まる扉の音を背後で知覚しながら、何とはなしに食べるはずだった朝ごはんのパンとコーヒーを思う。一万光年先に飛んで行ったかも。

  • 41二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 00:24:20

    アレコレもしかして今回は潔白のアグネスの命ヤバい

  • 42二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 07:51:29

    朝食の道連れが欲しかっただけなのに…アグネス不憫
    アスランが錯乱気味だけど原作と違って潔白だとアグネスが知っているのが救いか
    ミーアと関わることになったしこれをきっかけに彼女の死も覆せるといいな

  • 43二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 08:41:31

    ミーアが議長に喋る前に「私は貴女の味方だから」アピールできればなんとか…?(アスランもフォローはしてくれるだろうし)

    どのみち議長にはレイから「シンやアグネスがオーブでラクス・クライン本人と会ったみたいです、こっちにいるのが偽物なのバレてますよギル」くらいの報告は上がってるだろうし

  • 44二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 09:54:51

    どうするミーア

  • 45二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 12:36:28

    ミーア「…」
    一瞬取り乱して涙したミーアだが、直ぐに涙を拭き、服を着替えてソファーに腰かける。男性の前でも物おじせず身なりを整え、既にラクス顔だ。素晴らしい。

    流石、6000万人を超えるプラント国民とさらに多くの親プラント国の国民、更には今回の戦争でプラント側に着いた諸勢力を声と度胸だけで相手取って来ただけのことは有るわね。60000000アグネスポイント(プラント国民分のみ換算)。

    さて、まだ間に合うわ(?)。隣でアスランがわたわたしているけど、何とか乗り切れる。多分…。

    アグネス「思い違いをしました。朝からお騒がせしてしまい申し訳ありません。ラクス様」
    ミーア「いいえ。お気になさらず。…。あっ、ギーベンラートさん!昨日の勲章授与式で!!」

    ミーアを制止。待ったのポーズ。それではバレるわよ。ばれたら粛清よ、あんた。急いで演技を修正。

    アグネス「これは…、少し悲しいですね。子供の頃から何度も両親と一緒にお会いしていますのに。パーティーの席上などで」
    ミーア「あ…あら?そうでしたの…。それは失礼しましたわ。えーっと、ギーベンラートさん?」

    呼び方に困るんじゃないわよ。しゃっきりしないと。それと、ラクスは基本、名前+さん付け、身分のある人間には、姓+役職名。
    アグネス「(そうか…。名家出身で現職軍人の私の呼び方が微妙なのね。う~ん。でもラクス本人なら…。多分前者ね)」

    アグネス「そこはアグネスさんで…」
    ミーア「はい」

    素直に応じるミーア。そんな私と彼女の茶番劇に辛抱できなくなったアスランが声を上げる。
    アスラン「二人とも、もうやめるんだ。ミーア…。彼女は知っている。無理をしなくて良い」

    制服に着替えたアスランはもっともな正論を言う。しかし、ここで演技を辞めてどうする?ミーアがそのうち議長に切り捨てられるのは既定路線だが、私まで巻き込まれたら…。と言うか貴方も危ないのよ、アスラン!

  • 46二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 12:42:52

    ミーア「知っている?何で…。アスラン!どうして!!」

    ああああ、ミーアの怒りがアスランに。『どうして他人に秘密をばらしたの?!』ね。彼がばらしたと思い込み、怒りに染まりつつあるミーアの誤解を急いで解く。

    アグネス「彼の名誉のために言いますが、アスラン先輩がミネルバに来る前から私達は事情を察していました。私達はオーブで本物のラクス・クラインと会っていますので」
    ミーア「オーブでラクス様に?何で?」

    きょとんとしたミーアの顔。そうか、そうね。この人はオーブにラクスが居たことを知らない。行方不明としか聞かされていないはず。

    そこからか…。そこから話すのか。そもそも、その話を議長の駒になっているであろうこの人に話していいものか?でも、アスハ代表のこともアークエンジェルのことも評議会に報告済みだし…。レイも多分、議長に情報は上げているだろう。

    アスランにアイコンタクト。これは逆に良い機会かも。偽ラクスと接触できる初めての、もしかしたら、最後の機会かも知れない。アスランから許可のサインを受けて戸惑いの表情を浮かべるミーアに話しかける。
    声の調子を再調整し、態度をやや改まったものに変え、丁寧に話しかける。

    アグネス「おはようございます。改めまして私はアグネス・ギーベンラート。ミーア・キャンベルさんお会いできて光栄です。貴女の歌声に何時も元気づけられています。私もミネルバの皆も。最大の敬意を。どう表現すればいいか分かりませんが…」

    『ミーア・キャンベル』の瞬間に真っ青になり、『光栄です』『元気づけられています』で顔が紅潮し、大忙しの彼女に右手を差し出す。

    私は貴女の敵ではない、貴女が私達の味方になってくれたのだと。目線、顔の表情筋で露骨すぎないように示す。

    戸惑いと心細さと―おそらく幾ばくかの満足感-を顔いっぱいに広げた後、涙ぐみながらミーアは私の手を握ってくれる。しなやかで細い女性らしい手。軍人の私が力を籠めたら握りつぶしてしまう、そんな儚い存在がこれまで多くのことを成してきたのね。

  • 47二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 12:49:20

    私も心を込めてしっかり握り、それからそっと離す。感謝の気持ちを。実は私もちょくちょく任務の合間に彼女の歌を聞いていたわ。戦場で心を守ってくれていた。暇つぶしだったのだけど、最上級の暇つぶしだったわ。。どうもありがとう。まあ、思う分にはタダだわ。

    彼女の横に腰かけ、もうしばらく手を握っている。ふむ。やっぱりラクスとはだいぶ違うわね。身体つきも雰囲気も。

    アグネス「(でも、それでよかったのかも。体まで整形したら、この人本来の部分が全て覆い隠されてしまう。そうなったら声も人格も何もかもがラクスの劣化互換にさえならない)」

    声だけならAI・合成音声で事足りる、形だけなら人型ロボットでも良い。でも、人の心を真に打ち振るわせることが出来るのは人のみの業。C.E.になっってもね。彼女自身、『ミーア』が消滅せず、ラクスの仮面の下からヒョコヒョコ顔を見せるからこそ偽ラクスが務まっていた。議長がそこまで気を回していたとは思えないけれど。

    アグネス「(あの男が求めていたのは自分の完全なコントロール下におけるアイドルとしてのラクス。その時点で偽ラクス作戦の破綻は見えていたわね)」

    アスランがコーヒーを二人分入れてくる。ついでに自分の分も。ありがたいわ。そして、遂に上司?じゃなかったわね、斜め上の先輩にコーヒーを入れさせた!勝った!

    アグネス「(何に勝ったんだか…。しっかりしろ、私)」

    コーヒーを一口、二口飲んでミーアが尋ねてくる。

    ミーア「でも、何でオーブでラクス様に?」
    アグネス「どこからお話したものか…。ミネルバがユニウス・セブン破砕作戦の後、アスハ代表をオーブまでお送りしたことはご存知ですか?」
    ミーア「ええ。その帰り道にオーブ近海会戦を戦ったんですよね。昨日勲章を授与されていた…」

    そう言えばそうね。話が早くて助かるわ。

  • 48二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 12:53:17

    アグネス「私達。私達と言うのは私とインパルスのパイロットのシン、ミネルバのオペレーターのメイリン、整備要員のヴィーノとヨウランですが…」

    敢えて全員の立場と名前を出す。見も知らない誰かに正体を暴かれたのではない。それぞれの人生のある個人を示すことで少しでも彼女の信頼を得ようと努力する。

    アグネス「オーブの、前大戦の慰霊碑の前で…、シンは家族皆をあそこで失ってしまったので…。祈りを捧げていた時、同じく現れたキラ・ヤマトとラクス様に。これが出会った経緯です」

    正確に言うと慰霊碑に現れたのはキラ・ヤマトで、ラクスはキラを呼びに来たのだけどここは二人で慰霊に来ていたように印象操作する。嘘は言っていないし、その方が『ミーアにとってのラクス』のイメージと合致するでしょう。

    ミーア「ラクス様が…。そうでしたか。でも、戦後はどこで何を?」
    アスラン「それは…」

    アスランが事情を話そうとするのを目線で制止する。ここで必要なのはありのままの真実ではない。ミーアが納得できるストーリー、事実よ。

    アグネス「戦後はご自身の存在が政治的に利用されるのをご心配されて一時隠遁を。ユニウス条約の賛否について、両陣営とも…、特にプラントは意見が割れていましたから。戦間期は三隻同盟時にご縁があったオーブ連合首長国で、高名なマルキオ導師とともに孤児院を運営し、戦禍により家族と家を奪われた子供たちの救済にご尽力されていました」

    ふ~。どう?『ラクスのイメージ』を棄損させず、嘘も言わず、綺麗に言えばこんな感じじゃない?
    ミーアの反応は?どう?

    ミーア「そうでしたか。そうとは知らずに私…。でも、ブレイク・ザ・ワールド後は?」

    うん。ミーアとしてはそこも気になるわよね。ある意味一番。自分の活動時期ともろ被りしているもの。

  • 49二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 12:56:37

    アグネス「孤児院はユニウスセブン落下時の津波で全壊。幸いマルキオ導師や子供たち、同居の皆さんは全員無事だったので、オノゴロ島に疎開していらっしゃいました。オーブの外交方針の急転換により、かの地はコーディネイターにとって、特に中立路線を堅持しようとなされたアスハ代表と所縁のある人たちにとって安住の地ではなくなりました。おそらく、アスハ代表達とともにアークエンジェルで亡命をされたのかと。今は、アスハ代表をご援助しつつ、オーブと世界のために舞台裏でご尽力なされているのだと思います」

    一応、こんなところでしょう。一気に話したので疲れたわ。温くなりかけのコーヒーを数口飲む。アスランがルームサービスを頼んでくれたので、朝食はもうすぐ届く。

    ミーアはマグカップを包み込み手を温めながら、真剣に私の話を聞いている。アスランの方に視線を遣ると話の後半部分については意見が一致している様子。やっぱり彼から見てもアークエンジェルと一緒にラクスは行動していると思っているのね。

    話をゆっくり咀嚼した上で、ミーアが最も核心的な―私もアスランも気になっている質問を投げかける。

    ミーア「それでは、なぜラクス様はプラントのお戻りにならないのでしょうか?舞台裏で頑張って下さるのもありがたいですが…。表舞台に戻られないのはなぜ?」
    アスラン「それは…」

    アグネス「(それについては私も確信が無いのよね。一応の答えは持ち合わせているけど)」

    取り合えず、それを伝えておくか。

    アグネス「ミーアさんはジンハイマニューバ2型という機体をご存知ですか?ユニウスセブン落下テロでテロリスト共が用いた機体です」
    ミーア「いえ…。軍事のことには疎くて。いつもと変わったジンが使われているなぁ、とは映像を見て感じていたのですが…」

    ここで視線をアスランに。さっきから地蔵になっているし、ミーアに最も馴染みがある専門家から解説してもらった方が良いわ。

  • 50二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 13:03:18

    アスラン「ジンハイマニューバ2型は高い戦績を誇ったジンハイマニューバ…、ジンの改良機だな。それをさらに改良したもので、連合のダガーにも太刀打ちできる優れた機体だ。ただ、直後にゲイツやゲイツR等が開発されたこともあり、性能のわりに生産数はかなり少ない…。うん…?」

    アスランが話しながら考え込み始めるので、仕方なく続きを話す。モビルスーツに疎いミーアは更に顔を『?』マークにしている。

    アグネス「つまり、ごく少数生産された高性能機ということです。本来、脱走兵やテロリストに入手できるはずもありません」
    アスラン「そうだな…。サトーとか言った首謀者、脱走兵達。前大戦のベテランだと思うが、少なくとも本人が高位の官僚や指揮官だったとは思えない」

    ミーアもバカじゃない。だんだん話の先が読めてくる。

    ミーア「つまり軍上層部に裏切者がいる、ということですか?」
    アグネス「もしくはもっと上。下手したら最高評議会議員の中にも。私は陰謀論に加担する気はありません。
    しかし、私達のとってもユニウス・セブンは大切な国立墓地であり、プラント独立の地でした。実際、厳重な監視・管理下にあった。にもかかわらず、テロリストはあの巨大な人工天体を高速で移動するのに十分な数のフレアモーターを設置し、地球衛星軌道上まで移動してのけた。
    国か軍の最上層部の協力か、少なくとも故意の見逃しが無い限り不可能であった、そう推測が働くことは否めません」

    敢えて断言は避ける。この内容は危険すぎる。もし―もしこの推測が正解だったとしても、プラントとコーディネイターの生存のため、絶滅戦争の勃発を防ぐため、真実は闇に葬らざるを得ない。しかし―

    アスラン「プラントは―『今のプラントは―信用できない。誰が敵で誰が味方かも分からない。』ラクスが内心そう思っていたとしても不思議はない。それなら、俺がオーブにいるときに言ってくれれば!いや、あの時打ち明けられても―」

    何ともならないでしょう。そもそも、最後のダメ押しをしたのはオーブの条約加盟と、それと同時に行われるはずだったアスハ代表の結婚式なわけだし。先のことなんて、だれも予想していないわ。

  • 51二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 13:27:44

    アスランも議長(の周り)がきな臭いことに気づいたか…?

  • 52二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 14:09:48

    ラクスは今のプラントを―プラントの上層部を信用していない。帰ってこない理由を推測するならこれぐらいしか思い至らないわ。

    ミーア「…」
    ミーアが虚無顔をしているわね。これどうしたものだろう。アスラン、私より付き合い長いなら何とか―
    アスラン「…」
    ダメだ、これは。考え込んでるわ。どうしよう―

    コンコンコン。
    ホテル従業員「失礼します。ルームサービスをお持ちしました」

    よくやった!パチモンホテル従業員。1000000アグネスポイント。このまま話しても沼よ。泥沼。美味しい朝食を食べて脳みそをリフレッシュさせましょう。

    簡素だが悪くない朝食を三人でいただく。焼きたての香ばしいパンにちょっとカリッとしたベーコンエッグ。ホテルの美味しいコーヒー。さっきのコーヒーはインスタントだったからね。

    ミーア「そんなことになっていたとは…。私、良く知らなくって。政治のこととか軍事のこととか」

    まあ、それはそうでしょうね。というか政治や軍事にもろに携わっている人達も何故かその話題に突っ込まないのよね。

    アスラン「無理もない。ブレイク・ザ・ワールドのあまりの惨状に皆思考が停止気味だった。俺も人のことは言えない。あの後、本当に少し、どうかしていた。今ではそう思う」

    結局はそれが答えね。あの惨事から皆が目を逸らしたかった。犯人が元同胞だったプラント国民なら猶更だわ。

    アグネス「プラント国民も自分の国を疑いたくはない。『悪いのはごく一部の心得違いをしたやつ等だけ。自分達も被害者だ』。そう思いたかったはず。実際そうなのですから」

  • 53二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 14:13:34

    自分達が選んだ政治家や信頼している軍があんなことに―主体的か否かはともかく―手を貸したかもしれないなんて思いたくない。それは『間接的に自分も加担したのでは…』という気持ちにも繋がってしまう。上層部の人間も仲間がそんな大それたことに関与したなど間違っても思いたくなかったはず。

    アグネス「(私でさえもね。今日この場で口に出すまで、ずっと心の奥に蓋をしていたわ。思い違いで済ませておきたい。そんな気持ちがずっとあった)」

    でも、一旦口に出したからには引っ込みは付かない。

    アグネス「このことは…」
    ミーア「絶対に言いません。家族にもマネージャんさんにも―」
    アグネス「議長にも」
    ミーア「勿論、議長にも…。アグネスさんは議長を疑っているのですか?!」

    人差し指を立てて静かに、のサイン。アスランにアイサイン。『盗聴器は無い』の返事。流石にそこはザフトの最精鋭なだけはあるわね。

    アグネス「先ほども言ったように、私は陰謀論に加担する気はありません。ただ、自分の身を守れるのは最後は自分だけ。仮に議長が白だとしても、議長がこの話を誰かに話せば?その誰かがテロ関与者もしくは黙認者であったなら。ミーアさんはご無事でいられると思いますか?無論、黒であった場合も含めて」
    アスラン「いや…。それは」
    ミーア「…」
    ぶるっっと身を振るわせるミーア。この人、豪胆なわりにはわきが甘い、というかノーガードで心配になるわね。元が普通の歌手なら仕方ないのだけれど。

    アグネス「どうかご用心を。プラントで…、この世界で『ラクス』をするということはそう言うことです」

    ミーアは体の震えを必死に抑えようとする。

  • 54二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 14:47:16

    アグネス「目を瞑って。数を数えながら息をして下さい。1.2.3.と三回に分けて息を吸って。ゆっくり三回に分けて息を吐きだして。私と一緒に繰り返して」

    ミーアの息が少し整って来るのを待つ。

    アグネス「両手、両足のつま先に意識を。次に両手首両足首。両肘両膝の順に。肩・腰。体と首。リラックスして。呼吸を続けて。両耳・こめかみから、目鼻先唇をなぞるように。『今貴女はどこにいますか?』」
    ミーア「ディオキアのホテルでアグネスさんとアスランの前にいます」
    アグネス「そこは危険ですか?」
    ミーア「いいえ。違います」

    ミーアがゆっくりと瞳を空ける。そう。ここは安全。ならばここを基点に考えるべき。

    ミーアの目を見て話す。ここは決め時だわ。

    アグネス「議長にもプラント上層部にもご用心を。身辺にも」
    ミーア「分かりました。でも、間違いなく安心できる人は?」

    コーヒーを口に着け、ミーアにも勧める。
    何か動揺しているアスランにも視線を向ける。しっかりしないと。別に議長が黒幕だと決めつけたわけじゃない。先ずは無防備すぎるこの人の安全を確保することが先決でしょう。

    アグネス「(ミーアに何かあれば、ミネルバの士気にかかわる。艦の皆はミーアのことを知って、なお彼女の歌と存在に力を貰っているのだから。艦の士気が落ちれば私も貴方も海の藻屑よ)」

    勿論、彼女を『ラクス』と信じるザフト全軍も。替え玉作戦も2度目は流石に通じまい。

    アスランからミーアに安全地帯をまず、示してもらう。

  • 55二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 14:56:21

    アスラン「アークエンジェルの人達は信頼できる。間違いなく。カガリもラクスも代役を買って出た君自身に含むところは無い筈だ。きっと、力になってくれる。あくまで君個人の、という意味だが」
    アグネス「貴女にとっての『アジール(「聖域」「自由領域」「避難所」)』のようなものです。正確にはアークエンジェルは現在オーブ亡命政権下の軍ですが、それならなおのこと」
    ミーア「でも、オーブは同盟条約締結国では?戦意向上のために演説をお願いされるかも」

    確かにプラントーつまりミーアとオーブ本国ないしはオーブ亡命政権が敵対関係になる可能性も今後の世界情勢ではあり得ることだわ。どうしたものか―

    アスラン「そうなったとしても、カガリが一歌手の君に害意を抱くはずがない。それは確信を持って言える。何かあったらあの艦を頼ればいい」

    アスランの力強い言葉が私達の懸念を吹き飛ばす。なるほど、アスハ代表はやはりそのようなお人柄なのね。
    アグネス「(オーブ国民が彼女に忠義を尽くそうとする気持ちがちょっと理解できるわ。そして、その性格に付け込まれてしまった理由も)」

    ただそれは今日の本題ではない。
    それから、ちょっと考えアスランは言葉を続ける。

    アスラン「プラント上層部では最高評議会議員のレイーズ・ライトナ―氏を頼るといい。亡くなった母の親友だ。俺の名前を出せば少なくとも邪険にはされないはずだ」
    ミーア「…。分かりました。本当にありがとうございます」

    仲間(仮)が居ることに少し安堵した顔をミーアは浮かべる。無理もない。彼女にしてみれば急転直下な展開だろう。それは私にしたってそうなのだから。
    アグネス「(しかし、そもそもアークエンジェルはスカンディナビア王国勢力圏に潜伏中。プラントからは距離も関係性も遠すぎるわね)」

    ミーア「ミネルバは?」
    アスラン「ミネルバは…」

    ミネルバは微妙ね。レイも居るし。大体、今は大破して旧アゼルバイジャン領バクーのドックの中だわ。

  • 56二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 15:00:28

    アグネス「ミネルバの皆。貴女のファンです。貴女がラクス本人でないことを知ってからも、いえ、知ったからこそ余計にミーアの歌に力を貰い励まされています。お姫様だけがヒロインになれるわけではありません」

    別にミーアは庶民の味方ではない。そう表明したこともない。でも、特別な存在ではない、ただ、プラントのために身を捧げてくれた同士が声援を送り続けてくれている。その事実と素晴らしい歌声に励まされている人間達がこの世界にいるのは事実。伝えてあげないとね。

    アグネス「だから直接赴けば、きっと皆力になってくれると思いますが…」
    アスラン「しかし、艦があれでは…。それにクルーもパイロットも軍人。いざとなれば任務を優先せざるを得ないだろう」

    まあ、しかしそれはアークエンジェルもライトナ―議員も同じことではある。言い直そう。

    アグネス「それでも皆力を貸してくれます。特に副長と整備兵のヴィーノとヨウラン!」
    ミーア「?」
    アグネス「貴女の大ファンです。今日のライブも楽しみにしてますよ」
    ミーア「…」
    何かミーアが口元を抑えてポロポロ泣き出した。『ミーア』が認められたことが嬉しいのね。

    アグネス「(そうね。この人にはラクスを辞めた後も人生がある。粛正されない限りは…。固定ファンが出来るのはセカンドキャリアを考える上で大切ね)」

    ミーアを利用して逆に議長へのスパイに使えればとも思ったけど、多分この人にそんな器用な芸当は無理。ならば、裏表のない味方に徹した方が良いわね。

    アグネス「(何も有能な人材に唾を着けるのは議長の特権ではない。私自身のためにも布石を打っておきましょう。何かの役に立つかもしれないしね)」

    朝食を食べきり、もう一杯コーヒーを飲んだところで、ミーアと別れる。互いの幸運と健闘に祈りを捧げつつ。私とアスランは下の階に。ミーアはライブ会場に。観客が彼女を待っている。

  • 57二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 15:49:16

    ライブ会場って…やっぱコレか?

    アグネス的には「最新鋭機こんなことに使って何やってんのよ!前線に回しなさいよ!」ってなるのか「敢えてこういう場に出すことに意義がある」って思うのかどうなんだろう

  • 58二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 18:20:51

    「『ミーア・キャンベル』としてのファンがいる」って事を知れたのが大きいかな
    少なくとも原作ほど追い詰められないとは思う

  • 59二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 18:31:15

    「私はラクスなの!ラクスがいい!」ってなることはないかもしれないね

  • 60二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 23:06:47

    ミーアと別れた後、アスランと一緒にダイニングへ。もう朝食は済ませたが、もし艦長やシン、レイがいれば挨拶を済ませておいた方が良いわ。

    アグネス「(特に艦長には昨日の夕食のお礼がしたい。礼儀として)」
    しかし、同じ士官に相当する身分とはいっても、一パイロットと艦長では立場に差が有り過ぎる。会えるタイミングが少ない上に個人として会話を出来る機会はまずない。

    試しに自分と艦長の立場を考察してみる。

    ザフトアカデミー、つまり士官学校卒の私達同期組は他国でいう所の尉官クラス。
    赤や緑はあくまで卒業席次を基準に割り振られているもので立場に差はないことになっている。
    私やシン、レイ、それに配属先は違うがルナマリアは他国でいう所のパイロット士官。
    メイリンは艦橋士官でヴィーノやヨウランは技術士官。

    副長は黒服。
    ザフトの黒服は、大体、ナスカ級、ローラシア級の艦長や大~中規模以下の基地司令官を務めている。マハムール基地のラドル司令官も黒服だった。
    他国でいう所の佐官クラスと言ったところだろう。だから、我らが副長ことアーサー・トラインはミネルバに乗っていなければ、今頃、ナスカ級の艦長席に座り、あるいはどこかの地上基地で一国一城の主をしていてもおかしくない立場だったりする。

    アグネス「(これまでの所だと、マハムール基地はかなり大規模な基地だったわ。陸上戦艦だけでも3隻あった。おそらくラドル司令官の立場がザフト黒服の上限。他国での大佐、いいえ准将と言ったところね)」

    そう考えると白服の重みがずっしりと感じられる。
    身近なところで言うとジュール隊長。ザフト最精鋭部隊の一つジュール隊を率いてユニウス・セブン破砕作戦の最高責任者を任せられたり、プラント防衛線の前線指揮を執ったりする。他国でいう所の将官クラス。パイロット隊だけでなく、自分の艦の指揮権も持っているから、おそらく准将から少将ぐらいは相当するのではないか。

    アグネス「(勿論、ある国の階級が別の国のどの階級に当たるのか、比較するのは難しいけど)」

  • 61二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 23:09:37

    艦長はフェイス、特務隊だからさらにその上。本人の性格が控えめというか、慎重なせいでうっかり見落としそうになるが最高評議会・国防委員会に直属している身分というのはそれこそ比類ないもの。

    アグネス「(というか白服特務隊って、制服組トップ層じゃない。あの精鋭部隊グラスゴー隊を率いるグラスゴー隊長すら白服どまりでフェイスに任命されてはいない)」

    流石に最高評議会議員には敵わないまでもそこらのモブ紫服や60人議会議員ぐらいなら吹き飛ぶぐらいのポジション。それがタリア・グラディス艦長。せっかくの地位と特権、有効に活用しないと自分も部下の私達も割を食うばかりよ。

    そして―

    そんな艦長と直接お話しできた昨日の席は相当な例外。比定するのが難しいけど、敢えて言えば中将以上のクラスの人物と、新任士官がお食事をしたようなもの。ザフトが建前上は階級制を導入しておらず、勲章授与式直後で女性士官同士という例外的な状況故に発生しえたイベントだった。

    お礼を言うこと自体、礼儀を果たすこと自体が至難の業なのよ。

    エレベーターから下りて、食事中の艦長を探してみる。入れ違いになってしまったか…。

    アスラン「どうしたんだ?キョロキョロして」
    アグネス「昨晩、艦長から夕食をご馳走していただいて。何とかお礼をと」
    アスラン「そうか…。困ったな」

    そんなことを言いながらダイニングの階段に差し掛かる。若いモブ顔の黒服3人がたむろしている。何でこのモブ顔が黒服なの!こいつら絶体、私より手柄上げていないわよ!

    理不尽だ!社会の不平等の構図がここにある。こいつ等の誰かから黒服剝ぎとってやりたいわ。もしくは私を黒服にして!

    アグネス「(うん?)」
    赤服が3人テーブルの傍に。二人はシンとレイ。もう一人は…。
    ビシッ!姿勢を一瞬で正し、アスランと揃って敬礼をする。左胸にフェイスの徽章。昨日私達を議長の下に案内して下さった『緋蝶』ハイネ・ヴェステンフルス隊長!

  • 62二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 23:13:32

    返礼をして下さったので直り、アスランとハイネ先輩の下に。

    ちょうど、ハイネ先輩が奥。その右手前にシンとレイが縦に並び、最後に来た私とアスランが横で並んでコの字になる。傍のテーブルの上には紅茶。単品!茶菓子が…ない。

    アグネス「(やはり。このホテルはパチもの。ハイネ先輩はVIPなのだから、仮に注文したのが紅茶単品でも気を利かせるべきなのに。お国のために戦ってくださっている軍人になんて非礼な)」

    アグネス「(パパに飛ばさせるわよ。ここの支配人)」
    そんな私の内心には構うことなくハイネ先輩は鷹揚に私とアスランに声をかけてくれる。

    ハイネ「やあ。昨日はゴタゴタしててまともに挨拶も出来なかったな。二人とも。特務隊、ハイネ・ヴェステンフルスだ。よろしくな、アスラン、アグネス」

    そう言って差し出してくれた先輩の右手をアスラン、私の順で握っていく。うん。武人の手って感じね。顔に騙されてはいけない。歴戦の軍人なのだ。この方は。

    アスラン「こちらこそ。アスラン・ザラです」
    私達が名乗るとちょっと砕けた口調で話を続けられる。

    ハイネ「知ってるよ、有名人。特にアスラン」
    アスラン「うん?」

    アグネス「先輩。うん、じゃないですよ」
    こそ、こっそアスランにアドバイス。聞こえないように…この距離では無理か…。
    アスラン「あぁ。はい」

    案の定、ハイネ先輩にクスッとされてしまった…。何時もの堅物パンチはどうしたの、アスラン?

  • 63二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 23:15:55

    ハイネ「そんなに気を使わなくて良いさ。復隊したって聞いたのは最近だけどな。前はクルーゼ隊にいたんだろ?」

    アグネス「(ちょっとハイネ先輩。黒歴史ですよ。それ)」

    S級戦犯クルーゼの名を口にするとは…。あと、横に立って居るレイが何か『クルーゼ』に反応した…。何故に?

    アスラン「はい」
    ハイネ「俺は大戦の時はホーキンス隊でね。ヤキン・ドゥーエでは擦れ違ったかな?」
    アスラン「ぁ…ぁ…。はい」

    ダメすぎる…。アスラン、いったい誰とならコミュニケーションとれるの?幼馴染と元婚約者とアスハ代表、イザーク先輩とディアッカ先輩だけってことはまさかないわよね。

    アグネス「(アークエンジェル組が他にいるか、ミーアとも話せてたわね。それと私と…後は?ゼロじゃないって言って!)」

    この人をどうフォローしたものか…。そもそも私がする義務があるのか。義務はないけど、しないわけにはいかないか…。

    大戦の英雄同士の再開が今一ぱっとしないのをハラハラ見守っていると、ハイネ先輩が気を聞かせて声をかけてくれる。

    ハイネ「お前達、仲いいんだな、けっこう」
    アスラン「え?ぁぁいや、そんなことは…」
    アグネス「良き人生の先輩であり、尊敬する先人のお一人です。これまで命が有ったのはアスラン先輩のお陰です」

    最大級のヨイショをする。これが私が出来る目一杯よ。

    有難いことに、彼はテーブルに腰かけながら、軽く感心したような顔を見せ言葉を続けてくれる。
    ハイネ「いいじゃないの、仲いいってことはいいことよ?うん」
    アスラン「はい。まぁ…」
    アグネス「はい。その通りです。ミネルバパイロット隊は団結がモットーなので」

  • 64二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 23:18:14

    言うだけ言ってしまうわ。言うだけならただよ。さっきから置物になっているシンにアイコンタクト、何か言え。

    シン「そ…、そうです。アスランさんや皆で何とかここまでやって来れました」
    レイ「シンの言う通りです」

    うん。うん、とシンとレイの必死のフォローに肯いた後本題に入る。

    ハイネ「で、この4人と昨日の授与式の7人で、全員かミネルバのパイロットは。二人は怪我をしていたが…」
    アスラン「え?はい」

    アグネス「(そうなるわね。私とシンとレイとショーン、デイルの5人が『元々のミネルバ』組。それにアスランを足して6人が『拡大ミネルバ組』、それにグーン三人衆と、マハムールで加わって来たガズウートコンビ―私が『甲板組』と呼んでいた5人が正式にミネルバ所属になったそうだから、合計して11名ね)」

    ハイネ「インパルス、ザクファントム2機、セイバー、バビ2機、ディン2機、グーン3機。ザク2機とガズウート2機は喪失したんだっけか」
    アスラン「はい」
    シン「そうです」

    指で数えながらハイネ先輩は話を続ける。そうね。二人のけがの治りも順調だし、休暇上がりには復帰できる。コーディネイターの身体とプラントの医療技術、素晴らしい!

    まあ、私もレイも基本バビに乗っているけどね。カーペンタリア以降。結局一度もザクに乗っていない。ショーンとデイルに至っては、自分のザクは、結局乗らないままカスピ海の藻屑になってしまったわ。二人はディンでチャフとフレアを撒いて、棒立ちになったアホと突っ込んでくるバカにビーム突撃銃撃つのが専らな仕事よ。

    ハイネ「で、お前フェイスだろ?艦長も」
    アスラン「はぁ…」
    ハイネ「戦力としては十分だよなぁ。なのに何で俺にそんな艦に行けと言うかね、議長は」
    窓から中庭を見ながらとんでもない発言をハイネ先輩が言い放つ。

    アグネス・シン「えええ…」
    レイ「…」

    驚愕するわ。なにそれ。

  • 65二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 23:21:14

    アスラン「ミネルバに乗られるんですか!?」
    ハイネ「ま、そういうことだ。休暇明けから配属さ。取り合えずパイロット隊に」
    シン「はぁ…」

    また、議長の謎采配…。うんざりするわ。軍事の素人が嘴を突っ込んで好き勝手に。
    軍隊は貴方の玩具ではありません。いい加減、実験室の科学者気分は止めなさい!

    レイ「…」

    ハイネ「艦長には後で着任の挨拶に行くが、なんか面倒くさそうだよな。艦もまだ直ってないのに。それにフェイスが三人っては」
    アスラン「いえ、あの…」

    そうそれ!どうなっているの。今でさえ、正直訳分からない中、手探りでやって来たのに。勘弁してよ。結局、『アスランと副長、艦内ではどっちが優先されるんだ問題』すら解決していないのに。

    アグネス「(う~ん。艦長が将官。副長が佐官。私達は尉官で、アスランが佐官待遇尉官(特別上申権・指揮権持ち政治将校、独断権あり)、それにハイネ先輩が先任の佐官待遇尉官(特別上申・指揮権持ち政治将校 独断権なし)が加わると)」

    アホか!ついて行けません。

    ハイネ「ま、いいさ。現場はとにかく走るだけだ。立場の違う人間には見えてるものも違うってね。とにかくよろしくな。議長期待のミネルバだ。なんとか応えてみせようぜ」
    アスラン「はい。ただミネルバは今バクーで…」
    ハイネ「あれ…。アスランはまだ聞いてないのか?ミネルバ・パイロット隊とミネルバ・クルー選抜隊は一旦、月軌道艦隊に出向っていうか帰還するんだぞ。ミネルバの大改修が済むまで遊んでるわけにはいかないから、慣らしておこうぜ」

    やっぱり、昨日、艦長が言っていたとおりね。向こうでゴンドワナかナスカ級に私達パイロット隊と艦長、副長を含めたクルー選抜隊は乗り込むことになるんだわ。

  • 66二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 23:23:16

    少し面食らっているアスランとシンだがハイネ先輩の笑顔に勇気づけられたのか返事とともに敬礼する。

    アスラン「はい。改めて、宜しくお願いします」
    アグネス・シン・レイ「よろしくお願いします」

    アスランに倣って私達も敬礼。
    ハイネ先輩の返礼を受け直る。

    ハイネ「さて、じゃあ俺もそろそろ…。ライブの準備があるからな」
    席を立つハイネ先輩がまたしても爆弾発言。
    アグネス「共演なさるんですか?ラクス様と」

    驚きだわ…。確かに良い声しているものね。
    私と同様の反応を見せる、アスランやシン、レイの顔を眺めてハイネ先輩は吹き出す。

    ハイネ「はは!そんなところさ。まあ、良かったら見に来てくれよ」
    アスラン・アグネス「はい」

    ライブの準備に向かうハイネ先輩をお見送りしつつ、先程の話を振り返る。
    やはり、私達はミネルバが直るまでに一戦することになりそうだ。心の準備をしておこう。確かに中隊規模のまとまった戦力。休ませておけるほどの余裕はプラントには無いだろう。

    アグネス「(ということは、少なくとも中規模以上の艦隊戦が発生する可能性が有るわけか、月軌道上で。アガメムノン級に一撃嚙まさなきゃね!)」

    見送りが終わってホテルの自室にいったん戻るエレベーターの中で、ふとシンに聞いてみる。

    アグネス「シン、あんたは今日どうする?何か、ライブに行くって顔じゃないけど」
    何か、ぼ―っとした表情のシンに一応声をかける。
    シン「いや、俺はそのライブとか…。歌と演出は後でビデオで見るよ」

  • 67二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 23:27:39

    ある意味、予想通りの回答。シンの顔をまじまじと見直す。
    アグネス「(うん。これは…)」
    アグネス「…。久しぶりに本物の陰キャを見たわ。ドルオタの下。あんた世界の最下層よ」

    シン「な…、なんだってそんなこと言われないと…」

    シンが怒り出す。
    アグネス「ハイネ先輩に失礼じゃない!接待鑑賞しないと」
    シン「いや、それはまあ…」

    横から聞きとがめたアスランが口を挟む。

    アスラン「アグネス…。もっと言い方があるだろう」
    レイ「そうだ。シンは静かに過ごすのが好きなんだ。察してやれ」

    何か形勢は私が不利ね。アスランの前じゃ仕方ない。
    アグネス「ごめん。言い過ぎた」

    素直に(嘘)謝って見せると、シンも慌てて応える。
    シン「いや、そのあんまりライブに慣れてないだけで…。でもそうだな。ハイネ先輩にも確かに悪いな…。バイクで海岸をドライブしたら、俺も後から見に行くよ」

    アスラン「そうだな。『ラクス』もきっと喜ぶ」
    そんな私達を見つめ、微笑みながら話すアスラン。
    アグネス「そうですね。私も今日は彼女を応援したい」

    これはきっと私の本音。ふと口をついて出てきてしまった。そうか―それでシンにむきになってしまったのか―。感傷に流されるとは、らしくないわね。我ながら。

    レイ「…」
    シン「そうだな。ビデオで見るぐらいなら生で見に行った方が相手も喜ぶ。確かに―」
    シンが納得したタイミングで調度、エレベーターが止まる。

  • 68二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:18:48

    ハイネ・ヴェステンフルスLIVE!(連ザ2ミッションモード)

  • 69二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:24:57

    >バイクで海岸をドライブしたら

    あー…あのイベントもそうかこのタイミングか

    エマージェンシー出したシンを迎えに行くのってスペエディだとルナの仕事だったんだっけ

  • 70二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:38:19

    ドライブ、精々楽しんで来たら、ああ、そうそう。

    アグネス「ヘルメット、被りなさいよ」
    シン「…。そうだった。ありがとう!」

    アスラン「ふふ…」
    アスラン…。まあ、礼を言われて悪い気はしないわね。


    アグネス「これは…」
    アスラン「なんだ…」

    お…恐ろしい物を見ているわ。私達、今!

    あの後、部屋に入って小休憩を取り、ホテルのフロントで私とアスラン、レイで待ち合わせて件のライブ会場に。

    会場は人だかり、人込み。まさしく。ディン2機が警備し、警戒線が張られる中、人の波が右から左に、左から右に。緑服の兵士たちでいっぱいの中、若い黒服発見。副長だわ。3人で敬礼しようとするが押し流される。遠方にメイリンとヴィーノ、ヨウランとマッド・エイブス達を視認。必死に手を振り挨拶をするが聞こえたのかどうかは不明。

    アグネス「(何だ!これは…。何時も家族と出かけるときはVIP席だったから。ライブがこういうものとは…。シンの気持ちが今なら分かるわ)」

    そう言えばシンはどこ?この状態じゃ、合流は無理ね。
    組み上げられた大型舞台、巨大スクリーンにミーアがいつも連れている赤いハロが跳ね回ると同時にミュージックスタート。

    流れ出す【Quiet Night(ミーアバージョン)】盛り上がるわね。
    やっぱりラクスは歌手、アイドルと書いて『偶像』。どこまで言ってもその活動は公務。
    ミーアは同じ歌手でも、『偶像』と書いてアイドルの方。出張でチャリティーに出演することがあったとしても、やっぱりプロパガンダの駒にするのはもったいないわ。

  • 71二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:41:18

    アグネス「(そう言えばラクスのハロはピンクちゃんね。もう、寄せる気なかったでしょ。最初から)」
    因みにハロシリーズは私と共に人の波にもまれているアスランが製作したらしい。なかなかに高性能で、適宜性能もグレードアップしているとか…。

    そして―

    ハイネ先輩のオレンジのグフとディンに支えられた、まっピンクのザクが空から降下してくる。肩ショルダーには赤いハート、コックピット前カバーには『LOVE!』の文字。シールドにも塗装と可愛らしい文字。そして極めつけは―

    アスラン「み、ラクス。何を…」

    ザクの両掌の上で下界の住民に元気よく手を振るミーア・キャンベルの姿。
    ミーア「みなさ~ん!!ラクス・クラインで~す!!!」
    ザフト兵達「うぉーうぉー!!」
    アグネス「うぉ?おおぉ!」
    レイ「おおぉう?うおおぉ!」

    舞台に無事着地したピンクザク。バックのスクリーンで赤いハロは元気に飛び回っている。ちなみにザクのハートじゃない方の肩ショルダーには赤ハロの画。
    ザクの片掌の上で気合の入った振り付けでミーアがノリノリで歌を歌い続けている。
    周りのザフト兵は曲の節目節目で『うおぉぉ!』とか『おぉぉおう!』とか器用に合いの手を入れているが、初心者の私もレイも要領が分からず、周囲に合わせて、『おー』とか『えーい』とか言っている。アスランに至っては言葉を失って周囲に飲まれている。

    真に驚くべきなのは結構な数の女性兵がライブに参加していることだわ。しかも顔の表情を見るにサクラじゃない。警戒線の向こうには沢山のディオキア市民。

    アグネス「『ラクスの名前』だけでこれは無理。ハッキリわかるわ」
    思わずつぶやいた私の声、レイに聞かれてしまった!粛正か!議長に告げ口を…。
    レイ「そうだな。真偽など…。いや、これが本当だ。そんなこと等、かまうものか!」

    周囲の声にかき消されながら、『真偽など』『本当だ』『かまうものか』の声は驚くほど澄み切って私の耳に届いてくる。
    アグネス「レイ?」

  • 72二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:42:44

    ライブ会場の両脇を守るオレンジのグフと紫色のディンがピンク色の会場を単調にしない良いアクセントになっている。どんな顔でハイネ先輩は参加しているのだろう。何かちょっと気になるわ。

    歌のさびの部分でプラカードやタオルが大きく天にかざされる。ちなみに―
    アグネス「タオルぐらい、持ってこればよかったですね!」
    アスラン「すまない!なんだって!」
    アグネス「だからタオル!」
    レイ「売り切れだった!気にするな!俺は気にしない!」

    ザフト兵達「うぅぅぅおぉぉぉ!!!」
    アグネス「うぉぉぉ?ぉぉぉ!」
    アスラン「ぉぉおおお?おおお!」
    レイ「うぉぉおおおお!!!」

    歌が終わった瞬間にザクの掌に花束が投げ込まれる!ピンク!
    ミーアがキャッチ!お見事。落ちたらやばかったわよ。

    アグネス「(というか花束の色までピンクにしなくてもよろしい。アクセントに白を混ぜるとかなんかあるでしょう。いや、黄色が混ざってたわね。訂正)」

    ミーア「ありがとう!わたくしもこうして皆様とお会いできて本当に嬉しいですわぁ!!」
    ザフト兵達「うおぉぉぉぉおおお!」
    ミーア「勇敢なるザフト軍兵士の皆さ~ん!平和のために本当にありがとう!そして、ディオキアの街の皆さ~ん!」
    ディオキア住民「うおぉぉぉぉおおお!!」

    アグネス「うぉぉ?!いつの間にあんなに」
    レイ「最初からだ」
    アグネス「最初は今のより…」
    アスラン「良いから静かに!」

  • 73二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:46:05

    おや、レイの様子が…?
    なんだか事態が好転しそうな予感がする

    それはそうとみんな仲良く人波に揉まれているの笑う

  • 74二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:47:55

    みんなでライブ満喫してるのほんと笑う
    でもこういうの見てみたいねぇ

  • 75二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:49:06

    アグネス「(誰も静かにしてないわよ)」

    ミーア「一日も早く戦争が終わるよう、わたくしも切に願って止みません!その日のためにみんなでこれからも頑張っていきましょう!」
    ザフト兵達「うぅぅぅおぉぉぉうぉー!!!」

    ふと、遠目でみると、ミーアの目から一滴の涙が流れ落ちた。それを目にして、何か自分の心が震えるものを確かに感じる。政治の駒などいくらでも代えが効く。私はトップに立ってプレイヤーの側になる人間だ、そう思ってきた。

    自分と『同格』の人間と世界という盤の上で駒を繰り出し、マスを奪いキングを狙う。

    たとえ、有能な、強い駒でも駒は駒。勝つためならいくらでも捨てて、必要なら拾えばいい。何なら育ててもいい。それもまた使い潰すまでのこと。そう思ってきた―

    アグネス「(自分が駒にならないことだけ考えれば良いと…。利用される側ではなく利用する側になり上がるのが正しく賢い生き方なのだと。そう思ってきたわ。それで間違いがないはずなのに)」

    ミネルバに乗ってから何か変だ。自分の中の何かが後戻りできないほど変わりつつある。その事実を不吉さと嬉しさが混ざり合った感傷と共に確かに受け入れる。

    アグネス「(今日はそれでいい。それをどう処理するかは別の話よ)」

    もう一度ミーアを見上げる。次の曲に全力投球する彼女。
    アグネス「(私が勝者になれば、彼女に報いる道もまた生まれる。戦争も人生も勝たなければ意味がない!)」

  • 76二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:49:49

    歌姫の力ってすげー!

  • 77二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 01:01:32

    ミネルバや行く先々で出会った人たちとの関わりが、共に死線をくぐり抜けてきた経験がアグネスの価値観の根底を変えたんだな
    元々ここのアグネスはプラント優性思考ながら常識的で政治的視野の広さと対人の観察眼がずば抜けていたけれど、人を駒ではなく人として見られるようになるなら上に立つものとしてとても優秀な人材になるのでは

  • 78二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 09:39:04

    大盛況のうちにライブは終了。
    大きく手を振るミーアにこちらもひときわ大きな歓声で応える。

    祭りの後の少し寂し気な余韻が漂う中、ようやく私達は副長達と合流する。

    副長「敬礼はなし、皆オフだからな。楽しめた?」
    一同「はい」
    副長「なら良し」

    ライブに来ている面々-私達以外のパイロット隊とクルーのほぼ全員-を見回す。
    うん。皆元気そうで何より。皆大いに盛り上がったわね。

    その中にちょんっと立って居るメイリンに歩み寄る。
    アグネス「おはようメイリン、いや、こんにちはかな」
    メイリン「おはようございます、アグネスさん」

    ヴィーノ「そう言えばシンは?」
    アスラン「シンは…」
    レイ「海岸をドライブしてからくると言っていた。さっきの会場を出る人たちの波にのまれて出て行ったのかもしれない」
    ヨウラン「あいつ、こういう場所、慣れてなさそうだからな」
    アグネス「(そう言えば会場から人が大分掃けたわね。片付けが始まっているわ)」
    アグネス「副長、ここで皆で固まっているとご迷惑かも」

    ミネルバ組がわらわら、まだ残っている。スタッフさんが困っているかもしれない。
    副長「おお…。そうだな。皆!いったん解散。町で昼食をとるなどして。ただ、門限は守れよ!」
    一同「はい!」

    街歩きの時間が出来たわ。何より。
    アグネス「じゃあ、メイリン。せっかくのオフを楽しみましょう」
    メイリン「はい」

  • 79二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 10:25:31

    でもこれって「戦時中」に「前線基地」で「軍人」に「頑張っていきましょう」って言ってるんだよね…
    国家間で政治家同士の話し合いがつかず戦争が終わらないときの状況で
    軍人が頑張れることって…

  • 80二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 17:17:59

    いうて慰問ライブなんだしそれ以外のことなんて言えんだろう

  • 81二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:21:52

    メイリンと共に市街に繰り出す。一応、アスランも誘って連れて行く。私達が誘わないとボッチ飯してそうだし…。ハイネ先輩が来ればちょっとは変わるだろうか。

    レンタカーで美しい街路を通り抜け、昨日、勲章授与式が行われたバトゥミ広場近くのお店に入店。

    さてさてジョージア料理のお味はいかがかな。

    メイリン「この辺りはジョージア料理の中でもアチャラ料理って言うらしいですよ」
    アグネス「へー。そうなのね。そうだメイリン。今日は私が…」
    アスラン「いや、俺がおごろう」
    メイリン「そんな悪いですよ」

    う~ん。アスランは日系のヤマト家にお世話になっていたからか、ジャパニーズなノリがあるわね。そう言えば日系の人は真面目で礼儀正しいけどシャイで引っ込み思案な所があるって聞くわね。

    アグネス「(もろに影響受けている(?)のかな)」

    私達が開放された窓際の席で、郷土料理のハチャプリ(チーズ入りのパン)とハルチョー(ジョージアの伝統的スープ)を食していると通りを行き来する人達の何気ない会話が耳に届く。どれどれ―

    ディオキア住人「いやぁ。しかし驚いたよ。プラントの議長が来てくれるとはよ」。
    ディオキア住人男「ああ、なんか昨日、急いで飛んで来たんだって。ラクス・クラインは少し回っていくんだって。この辺りを」
    ディオキア住人「前の戦争の時は敵だ敵だって戦ってさ、それが今じゃこうだもんな。ほんと分からねえもんさ」
    ディオキア住人「コーディネイターなんてやっぱりちょっとおっかない気もするけどさあ、あの乱暴者の連合軍に比べたら全然マシだよ。ちゃーんと紳士じゃないか」

    アグネス「ふふふ。ちゃんとわかっているじゃない現地民も」
    アスラン「戦禍に晒すことなく町を解放できて本当に良かった」

    少しのんびり食事をとりながら、この2日で遭った様々なことを3人で共有する。議長のしょうもないアジテーション。それに対する周りの反応。ミーアのことも話せる範囲で、メイリンに。この子には伝えておいた方が良い気がする。何と無く。

  • 82二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:25:42

    そして今朝炸裂した爆弾-


    メイリン「ハイネ・ヴェステンフルス隊長がフェイスに!?それでミネルバ・パイロット隊に?どうして…」

    アグネス「私が聞きたいわよ…。あの軍事素人、早く退陣して…」

    アスラン「アグネス!そこまでだ。いや、しかし、本当にどうしたものか…」


    ご本人の人格云々は関係なく、というかハイネ先輩自身が心配されていたようにミネルバの命令権は無茶苦茶よ。


    アグネス「多分、階級-ザフトには無いという建前ですが―から考えると、『艦長>副長>ハイネ先輩≧アスラン先輩』の順のはずなんですが。ただ、フェイス、特務隊というのが曲者、おまけにアスラン先輩は口頭とは言え議長から独断権を授けられています。本当、頭がどうにかなりそう」

    メイリン「その辺りどうなんですか?」


    メイリンから当事者のアスランに質問。そう言えば、当の特務隊メンバーにはなんて伝えられているんだろう。国防委員会や最高評議会から。


    アスランは、むむむっと困り顔を浮かべた後、予想通りの回答を話す。


    アスラン「俺は何も聞いていない。ディオキアに着くまで、というか昨日までヴェステンフルス隊長がフェイスになったことも知らなかった」


    メイリンはちょっとガクッとなっている。何かアスラン、スカウト先の議長からハブられてない?まあ、ハブられているから、『この人はディランダル派じゃない』と安心して接することが出来るのだけれど。


    アグネス「特務隊、と言いながら隊員同士の横の繋がりが全くないのは考えものです。前大戦時のように特務隊隊長、レイ・ユウキ氏のような方がいらっしゃればよいのですが…」


    アスランの顔が一瞬暗くなりかける。自分の父、ザラ議長を諌死し、刺し違えた恩師の名前が出たことから―。でも、そこで、うだうだされても困る。本人も分かっているのだろう、直ぐに表情を改め話を続ける。

  • 83二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:30:39

    アスラン「確かに。ユウキ隊長のような方が自分達を率いて下されば。だが、今のフェイスに隊長職はいない。どうしたらいい…」
    メイリン「いっそ艦長が特務隊長なり特務隊戦隊長なりに任じられれば、話はもっとまとまるのですが」

    まあ、ここで話していてもこの話題は進展しないだろう。ハイネ先輩が言うように、今は、現場は走るだけだわ。議長への疑惑はそれはそれとして対処しなければいけないけれど。

    アグネス「でも、やはりこれを放置するわけにはいけません。アスラン先輩からフェイス権限で国防委員会に問い合わせて頂けませんか?」

    アグネス「(そうよ。分からないなら聞けばいいのよ。子供じゃないんだから)」
    自分から国防委員会に問い合わせる、という発想が盲点だったらしいアスランは一瞬きょとんとした後、大きく頷く。

    アスラン「そうだな。それが正しい。今日中にでも問い合わせしよう。向こうも分かっていないかも知れないが…」
    メイリン「その時は『分かっていない』が分かることになります。大事なことです」
    アスラン「そうだな。いや、言われてみれば…」
    アグネス「先輩はちょっとなんでも自分で抱え込み過ぎです」
    アスラン「いや、本当にすまない」
    アグネス「いえ。謝らないで下さい。ふと思いつきを行っただけなので…」

    そんな会話を交わしつつ、食後のコーヒーを飲んで、お店を出る。食事代は結局アスランが支払ったわ。仕方ない。男の面子を潰すわけにもいかないわ。

    食後は私達3人はヴィーノ、ヨウランと合流。少し遠出しバトゥミ植物園に。何でも、旧ソビエト連邦で最大の植物園だったそうだわ。その後幾度も起こった戦乱で消失しなかったこと、本当に幸運だったわ。植物だけでなく、園からの眺望、バトゥミ湾の雄大な景色を目にすることが出来る。

    ヴィーノ「おお。すげぇ」
    ヨウラン「他に表現ないのかよ」

    まあ、ヨウランの言う通りだけど、ヴィーノの気持ちも良く分かる。

  • 84二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:34:48

    アスラン「素晴らしい眺めだな…」

    何かアスランは黄昏始めた…。反応に困るのよね、この人。なんかあると悲しき過去の回想始めるから。

    アグネス「(さっきユウキ隊長の名を出したのは失敗だった?でも避けては通れないし)」

    男子組は置いておき、私とメイリンは海岸線の眺めは切り上げ、植物園巡り。
    世界各地の貴重なコレクションを見学。ふむ。世界は広いわね。頭が悪い感想だけど。

    アグネス「平和になったら、いろんな場所に行きたいわね。それこそ、何時かの話じゃないけどヒマラヤに登ったって良い」
    メイリン「そうですね。戦争が終わって…。そして地球上でコーディネイターの迫害が止むと良いのですけど」
    アグネス「そうね。私達にとっては2段階必要ね。まあ、この戦争に勝てば一段飛ばしにことが済むのだけど。戦勝国として」

    メイリンは振り向いて静かに私の顔を見つめる。私もメイリンの顔を見つめる。何?勝ちたくないの?非国民なの?嘘だと言ってメイリン!!
    見つめ合っているとどちらともなく、ふふふと笑い始める。
    メイリン「確かにアグネスさんの言う通りですね」
    アグネス「そうよ。勝ち取らなければ!『勝利の和平』を!!戦後秩序で勝ち組になるわよ」
    植物園の入園料、メイリンの分は私持ち。普段のささやかなお礼だわ。

    退園後はそのまま、市街地に。既に太陽は最後の輝きを海に投げかけながら沈み始めている。
    そんな中、私達は市の中心部に佇む神の母のジョージア正教会大聖堂に参拝しようとして―

    ―ポケットの端末にエマージェンシーが届く―、シンから!どうした!

    アスラン「海で…。海岸で遭難したらしい。あのバカ!」

    今日は比較的穏やかに過ぎていたのに…、過ぎていなかったわ。でも、最後にろくでもないイベントをぶち込んできたわね。

  • 85二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:37:41

    ヨウラン「道理でライブ会場にいないわけだ」
    アグネス「仮にも赤服。自分で海に転落したとは思えません。人助けに失敗したとか?」
    ヴィーノ「うわ!ありそう…」
    メイリン「もう、日が落ちますよ。急がないと。海上警察かザフトの哨戒艇に!」
    アスラン「ああ。もう転送済みと思うが。えーと。じゃあ、アグネス」

    アグネス「はい」

    何か呼ばれた…。ああ、そうね。この面子からだとそうね。
    アスラン「君は俺とザフトの哨戒艇に。一応、潜水キットもお借りして。潜水救助訓練は?」
    アグネス「履修済みです」
    アスラン「よし。ヴィーノ、ヨウラン、メイリンは車を回してくれ。出来ればこちらに向かえを」
    メイリン・ヴィーノ・ヨウラン「はい」

    アグネス「(何か面倒なことになっったわね。どうも締まらないというか…)」

    ザフト現地部隊の助けを借りて哨戒艇を出してもらう。乗員は2名の船員と私、アスラン。一応、もしもの時のためアスランと私は救難潜水服着用。

    もう暗くなった岩がちな海岸線。ぶつかったら小型船はただでは済まない。本当に勘弁してほしい。救助は明日にしても良いくらいだけど―

    アグネス「休暇中にエマージェンシーとは。やる時はほんと派手にやってくれるやつだな、シンも。ただ、君が言うように…」
    アグネス「ええ。仮にもアカデミーを赤服で出たシンのことはさして心配する必要はないと思いますが…。彼が自ら遭難するとは考えにくいです。ドライブの後、ライブの約束をしていたので」
    アスラン「結局会場にも来ていなかったそうだからな。そうなると、海難救助の最中に二重遭難した可能性を考慮するべきだが…。その場合、側に要救助者がいるかもしれない」

  • 86二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:42:38

    それで、二人して潜水服に着替え、医療キットまで持って来た。アホかと。溺れている人が居たら自分では無理に助けず海上警察に通報、これ大事!

    アグネス「(ただ、ディオキアは解放直後。海上警察がどこまで機能するかは未知数。その場の人間が救助するのも間違いとは言えないかも)」

    入り組んだ岩場を探りながら進む。ライトの光とシンの信号、双方が頼りだ。ディンを飛ばして地形は一応把握済み。だから―

    海岸の岩陰、ちょっと洞窟になっているところにシンを発見!

    シン「あ…」

    ライトに照らされ眩しそうに手をかざすシン。上下の服は濡れてた後、乾かしたのか。
    アグネス「あ…、じゃない!休暇中に何やってくれてるの!!怪我は!?」
    シン「アグネス!アスランさん!俺は大丈夫。」
    アスラン「君一人か?他に遭難者・要救助者は?!」
    シン「少女一名。ただちょっと…おぉ…」

    シンの背後の洞窟から小柄な金髪の少女が現れ、心細そうにシンに横から掴まる。シンは彼女を毛布でくるんであげている。

    アグネス「(はぁー。案の定ね。あんなヒラヒラの格好で海に落ちたのか。あの子。よくシンも助けられたわね)」

    アスラン「その子か?!怪我は?低体温症は大丈夫か?」
    シン「右足首に軽度の切り傷。応急処置済み。体は温めて低体温症の症状は現在なし」
    アスラン「良し」

    哨戒艇から、小型ボートを下ろして二人を船に移乗させる。ありがたいことに私達が海に飛び込む事態は避けられたみたい。救助とは言え、出来れば濡れたくないからね。
    シンは頬に軽傷。まあ、あの高さから落ちたなら御の字じゃない?

  • 87二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:46:25

    哨戒艇の中で一応事情聴取。質問者はアスラン。記録係は私。

    シン「この子が崖から海に落ちちゃって。助けてここに上がったはいいけど、動けなくなっちゃって」
    アスラン「ディオキアの街の子か?」
    シン「いいえ、それがちょっとはっきりしなくて」
    アスラン「というと?」
    シン「多分戦争で親とか亡くして…。だいぶ怖い目に遭ったんじゃないかと」

    私から、追加質問。
    アグネス「彼女自身がそう言ったのですか?」
    丁寧口調に。当たり前か。

    シン「いや…。上手く話せないみたいで」
    アグネス「(PTSDか…。困ったわね)」

    アスラン「そうか…。名前は?」
    シン「ステラです」
    アスラン「家は?分かるのか?」
    シン「いえ、それが…。ネオ、スティング、アウルって言う人が家族、というか同居人みたいですが。」

    アグネス「(もしかして孤児院のスタッフと同じ施設の仲間かしら…。重傷ね。受け答えもままならないとは。本来、きちんとしたメンタルクリニックを受診するべきではあるのだけど。でも、そんな子、今の時代たくさんいる。地上ではどこも手が回っていない。シンはすっかり同情しているみたいだけど。う~む。どうすれば良いのか…)」

    ザフト軍人ではないから、軍の精神科に行かせることが果たして出来るのか。難しいわね。

    アスラン「名前しか分からないとなると、基地に連れて行ってそこで身元を調べてもらうしかないな…」
    アグネス「しかし…。この時世では果たして―。そうだ。血液と指紋のサンプルを。シン!」
    シン「あ、そうだな。ステラ…。ステラの指のしましまと手当の時の血。記録…、う~ん。俺達が残して調べていいかな。ステラのお家を探すために」
    ステラ「…。うん…」

    これで見つかるかな?どうかな?まあ、何処かで登録されていることを願うのみだわ。

  • 88二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:48:43

    うん?
    シンとステラが落ちたと思しき、崖の上に車のライト!傍に若い男性が2人立ち、大声を上げている。

    スティング「ステラー!」
    アウル「おーい!ステラー!どこだー!このバカー!」
    ステラ「は!」

    ステラが哨戒艇の中で満面の笑みで振り返る。
    アグネス「(なるほど。年齢的にあれがスティングとアウルね。一応、保護者が見つかって一安心だわ)」
    港には大型軍用ジープ。ヴィーノが借りて来てくれた。中には3人が心配そうにしている。
    私とアスランはその場で着替えを―

    メイリン「ストップ!!」
    メイリンがバスタイルで周りから姿を隠してくれるので、急いで潜水服から制服に着替える。着替えてきた意味があまりなかったけど、備えあれば患いなしね。

    大型軍用ジープでステラの家族(?)を探す。ジープの運転はヴィーノ。助手席にアスラン。後部座席に私、シン、ステラ、メイリン、ヨウラン

    海岸道を走りながら、窓からシンが顔を出す。
    シン「あれだ!」
    アスラン「止めろ」
    ヴィーノ「はい」

    ピッピーっとクラクションの音を上げながら一台のオープンカーがジープとすれ違い停車する。
    ステラ「スティング!!」

    どうやらあれで間違いないみたいね。
    ヨウラン「一安心だぜ」
    メイリン「見つかって良かったです」

  • 89二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:51:35

    スティング「ステラ!」
    オープンカーから下りた青年二人の内、年上の方がステラに声をかける。

    ステラ「スティング!」
    アグネス「なるほど。あれがスティングと…」

    記録係の仕事はまだ終わっていない。実はさっきからずっと状況を記録しているのよね。レコーダーも回しているし。

    アウル「おいおい、赤服だぜ」
    スティング「し!」

    ふむ。反ザフト感情が強いのね。仕方ない。そういう連中もいる。
    毛布にくるまったステラは二人の下に危なっかしい足取りで走っていく。怪我しているのに…。

    スティングはステラを受け止め心配そうに問いただす。
    スティング「どうしたんだお前、一体」

    シンとアスラン、記録係の私はジープを降りて三人の下へ。
    シン「海に落ちたんです。俺ちょうど傍にいて。でも良かった。この人のこといろいろ分かんなくって、どうしようかと思ってたんです」

    人助けができた満足感からか、シンは笑顔で話している。あんたは満足かもしれないけど、それに巻き込まれた私達は大困りだったのよ。

    うん?
    スティングが社交辞令的な笑みを浮かべる後ろから、アウルとか言う青髪の少年が殺意のこもった眼差しを私達に向けてくる。やはり、家族をザフトに殺されたのか。
    アグネス「(戦争だから仕方なし。戦争犯罪なら問題だけど…)」
    なんにしろ、私はそれどころではない。

    スティング「そうですか。それはすみませんでした。ありがとうございます」
    アスラン「ぁ…?」
    アスランが視線に気づいたらアウルとか言うガキそっぽを見きやがったわ!こっちが殺意がわいてきた。

  • 90二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:54:21

    ヴィーノがジープをバックさせてきた。そろそろか。
    アグネス「アスラン先輩?」
    アスラン「ああ。事件性なしだ。記録は後で俺から艦長とザフト哨戒部隊にそれぞれ」
    アグネス「はい」

    アスラン「では。私達はここで」
    アスランの暇乞いに。スティングはやや鋭い肉食獣のような笑みを浮かべながら応じる。
    スティング「ザフトの方々には本当にいろいろとお世話になって」

    腹立つわね。こいつ等。過去に何があったにしろ、今日は私達、あんた等の恩人でしょう。別れるまで本性隠せないの?内心苛立ちながらシンと一緒に車に乗り込む。

    ステラ「シン…行っちゃうの?」
    ステラはそうではないみたいね。ジープに寄って来て窓際の席に座ったシンに話しかけてくる。
    無邪気というか、心の成長が阻害されているというか。まあ、そういう境遇の人間もいる。世界の裏側まで救えるわけじゃない。そもそもその義務も無いからね。

    シン「え。あー。ごめんね」
    ステラ「ぅ…ぅ…」
    シン「でもほらお兄さん達来たろ?だからもう大丈夫だろ?」

    相当心細そうね。闇を感じるわ。
    アグネス「アスラン先輩。虐待のサインかも」
    アスラン「そうかもしれない。一応、彼女の指紋と血液はザフト海上哨戒部隊に提出済みだ。廃棄を差し止めよう。ディオキア警察にも証拠の共有を。ザフト保安部にも。車のナンバーは?」
    アグネス「控えてあります」
    アスラン「だが…。俺達に出来るのはここまでだ。管轄権の問題がある。戦争犯罪の被害者なら話も変わるが…」

    私達が小声で話している間に向こうのやり取りも終わる。

  • 91二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 23:56:42

    シン「あえっと…。あ、ほら!また会えるからきっと!ね?」
    ステラ「え?」

    出来ない約束をするんじゃない!優しい嘘かもしれないけど。この状況ではダメでしょう。

    アスラン「…。行くぞシン。いいか?」
    思うところが無いわけではない。が、一人の少女に余り情をかけすぎるわけにもいかない。
    シン「ああ、はい」

    ヨウランとメイリンに目配せ、敬礼。車が発進される。
    ステラ「ぁぁ…」
    遠ざかる車の窓から親に捨てられたような顔をしたステラの小柄な影。人身売買の犠牲者じゃなければいいけど。でも、保護者が来ていたから…。う~ん。しくじったか。ディオキア警察も呼ぶべきだったか。児童相談所に…。

    シン「ごめんね、ステラ!でもきっと、ほんと、また会えるから!」

    窓から顔を出したシンが必死にステラに声を張り上げている。あんた、情が移りすぎ。
    ステラ「シン…」
    シン「ってか会いに行く!」

    叶えられない約束をしても…。彼女の衣服の中をさっき探したけど、市民カードもパスポートもなかった。地元の人間でなければ、きっとそう言うことだろう。残念だけど、市民権がないなら、仮に私達が要請したとしてもディオキアの公的機関も動いてくれないだろう。

    メイリン「アグネスさん…」
    アグネス「まあ、善意の第三者として、やるだけのことはしたわ。ザフトとしても。後は地元に。レイの言うことじゃないけど、未来のことなんて誰にも分からないのだから」
    メイリン「はい…」
    シン「…」

  • 92二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 03:27:30

    本編通りなら次はオーブ軍との戦闘
    ただしカガリの声明がある上、ミネルバの修理が終わってない
    月へ赴任して本編とは別ルートになるのか?

  • 93二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 07:28:39

    ファントムペインは「(戦果の著しい)ミネルバ隊を追う」で地上まで来てたから宇宙に戻ったら向こうでまたやり合うのかな…?

    あと今のままだとロドニアに行かずに宇宙に上がることになるのか

  • 94二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 13:19:32

    アグネスとアスランはだいぶ打ち解けてきたな

  • 95二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:08:54

    ホテルに帰り、一服する。ベッドに大の字になって少しまどろむ。オフのはずなのにアホのせいで結局、仕事しているじゃない。

    アグネス「(でも、ライブ楽しかったな。疲れたけど。コーディネイターだから明日には全回復よ。ミーアには伝えられるだけのことは伝えたし…)」

    問題は議長ね。これまでは単に敵対派閥の長として見ていたけど、あいつ、真っ黒か、限りなく黒に近いグレーかもしれない。ユニウス・セブンのこと抜きにしても頓珍漢なアジテーションしてくるし。

    そこに来て、ステラ騒動-

    プルルルル!
    ホテルの内線電話で気持ちの良い微睡が破られる。今度は何?今何時?
    電話に出るとアスランの声。
    アスラン「休んでいるところすまないが、ホテルの応接室に来てくれ」
    アグネス「はい」

    次の任務の伝達か。早い。いや、そうでもないか。一応2日休み(?)があったし。さて、じゃあ、その部屋にダッシュ! 
    アグネス「(他の宿泊者に迷惑にならない程度にね)」

    応接室に入室するとアスランとハイネ先輩。傍らにはモニター。二人に敬礼。返礼を受けて直り、席に着こうとするとアスランが、つかつか近寄って来る。

    アスラン「不味いことになった」
    アグネス「不味いこととは?」

    もう十分不味いことになっていると思うけれど…。色々と。

  • 96二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:13:35

    ハイネ「まあ、座れよ。アグネス、アスランも。お前達。数時間前、ステラとか言う女の子を助けただろ」
    アグネス「はい…。手続きに問題が!」

    勧められた席に着きつつ自分の顔が真っ青になっていくのを感じる。やはり、ディオキアの公的機関にも出てきてもらうべきだったか。ザフトの『支配者顔』に向こうが切れているのか。そんな…。

    アグネス「(休日を返上してあんまりよ…。私の査定が…)」

    アグネス「う…うっ…。う…」
    テーブルにうつむく私を見て驚き、ハイネ先輩が急いで訂正する。
    ハイネ「いや、行政手続きは別に大丈夫だ。ただ、ザフトと地元警察であの後、一応、指紋の照合と血液検査をしたら…。まだ、簡易的なものなんだが…。やばいことが分かってな」

    うわーっ。そっちか。人身売買の被害者だったのかな。やっぱり帰しちゃダメだったか。
    アグネス「(でも、引き留める権限も…。いや、しかし―)」

    後悔の念と自己弁護が脳内で渦巻くが、アスランはそんなことお構いなしだ。

    アスラン「結論から言おう。彼女は特殊な薬物投与を受けている。おそらく、連合軍の違法な強化処置の被害者だ。まだ推測の域を出ないから、血液サンプルは本国フェブラリウス市(医学・生化学・生物学中心地)に既に発送した。軍本部にも。」

    アグネス「えっ…」
    どんな顔をして何をするのが正解なのか―

    アグネス「(そっちか。そういうことを連合軍が過去にしたとか、今もしているという風聞は耳にしていたわ。薬物処置や洗脳で特殊部隊を作って運用し、汚れ仕事や停滞した戦線の破城槌にしているという…。でも、自分がいきなり今日関わるとは…)」

    ストーリーに伏線があるのはフィクションの中だけ。現実は何時も突然…。そう言えば!

  • 97二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:16:37

    アグネス「シンには?あの子にかなり情が移ってましたが。」
    アスラン「電話で大枠を…」

    バッッと礼儀知らずに会議室の扉が吹き飛ぶように空けられる。シン!
    シン「アスランさん、ハイネ先輩!ステラのこと…」

    敬礼ぐらいしろ、アホ。走って来たのか息が上がっている。その後ろからレイ。こいつはちゃんと敬礼する。えらい、いや普通のことだわ。

    ハイネ先輩はシンの形相にちょっと驚きながらも席を勧める。
    ハイネ「まあ、座れよ」

    もう一度、二人から状況説明。
    シンの表情がやばいのは言うまでもないが、何かレイの様子も変だわ。必死に平静を装っているが…。
    アグネス「(これは怒りか…。何に対して?)」

    ハイネ「アグネス、お前記録係だったな」
    アグネス「はい。すべて提出済みです」

    ハイネ「ステラっていう子の写真はあるが、スティング、アウルって言うのの顔が分からない」
    アグネス「プライバシーの問題がありまして…。救助者本人以外は…。でも、今は…」
    ハイネ「いや、責めたいわけじゃない。モンタージュ作成に協力してくれ。そいつらも薬物兵士かもしれないからな」
    アグネス「はい」

    一旦話が途切れ。皆が顔を見合わせる。薬物強化兵か…。いや、まだ本決まりじゃない。単なる違法実験被験者の可能性も。そっちはそっちで厄介だが。しかし―

    アスラン「ディオキア市内にそんな連中の潜伏を許していたのは大問題だ。今、ディオキア警察にも協力してもらって捜索。検問も張ってもらっている」
    モニターに検問の様子が映し出される。ステラの顔と指紋は少なくても分かっているから、それが頼りか―

  • 98二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:20:26

    あーそっち経由で強化人間バレが起こるのか
    そりゃ崖から人落ちましたって事故の後なら軽くでも実況見分はやるよな…(駐留してくれてるエースパイロットも関わってるし)

  • 99二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:32:29

    レイ「しかし、ああいう手合いは勘が良いものです。過度な期待は出来ないでしょう」
    ハイネ「そうだな。だが、取り合えずアグネス。頼む」
    アグネス「はい」

    コンコンコン
    ザフト兵「失礼します」
    扉が開く。保安部の兵ね。早速モンタージュ作成…。忙しすぎ、何これ。

    それはそうと―
    チラリとシンの顔に視線を遣る。血の気が引き、怒りに満ちた顔に後悔が滲んでいる。

    アグネス「(久しぶりのPTSD発症か…。もう本当にどうしよう)」
    ただ逆に考えれば、連合の特殊部隊の尻尾を掴めたことになる。あの子達がどんな任務を実行してきたのか―汚れ仕事か、強力だが危険な機体のパイロット等か―はまだ分からない。でも、これをきっかけに部隊を壊滅できれば大手柄じゃない!何だったら、投降し応じてきたら、医療を受けさせ、連合の戦争・人道犯罪を告発できるわ。

    その前に―
    アグネス「シン、言わなくても分かっていると思うけど『貴方のせいじゃない』。慰めじゃなくて、これは確定した事実よ。分かってる?」

    拳を握りしめていたシンがビクッと震え、迷子の子犬のような目線を私に送って来る。
    シン「そうかな…。俺が…」
    アグネス「『俺がエスパーみたいにあの子の人生の背景を察知して居たら?』マンガの読み過ぎよ。人間は己の知り得ることしか対処できない。一々自責の念に駆られなくてよろしい」

    シンの横のレイに目で問いかける。静かに頷かれる。この件に関しては珍しく意見が一致するようね。

    アグネス「ハイネ先輩。彼にカウンセリングを。簡易なものでも」
    ハイネ「ああ。分かった。お前も受けとけよ。画が出来た後で」
    アグネス「はい」

    そうね。多分、それが正解ね。

  • 100二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 22:27:16

    アグネス「…」
    疲れた…。そう。疲れた自分を受けてめて褒めてあげることが…。
    アグネス「はッ!」
    いけない、いけない。もう緊急カウンセリングは終わっているわ。

    今、私はホテル自室、ベッドの上。とうに日付は変わっている。晩御飯-そう言えば食べてない―最悪。室内冷蔵庫から栄養ゼリーを取り出し一気飲みする。高級(嘘)ホテルに泊まってまで何でこんなことしているんだか。

    あの後、さらに事情を聞かれ、モンタージュを作成。緊急カウンセリング。飛ぶように時間は過ぎて、うーん。休日、無かったわ。実質。半休だったかな。

    アグネス「しかし、強化兵。特殊部隊か」

    今、ディオキアは蜂の巣をつついたような騒ぎだ。連合の非人道的部隊が町の中心部まで侵入していたわけだから、当然だけれど。

    戒厳令が発出され、ディオキア市警があちこちの宿や民家を捜索し、指紋やDNA、ゲソコン等あらゆる証拠をかき集めている。当然聞き込みも。

    あいつ等、能天気に海岸道をドライブしたり、ステラに至っては海遊びをしていたらしい。何やっているんだか…。
    いや、それを見落としていたザフトの手抜かりだわ。突然の勢力圏拡大に手が回っていない。足元をすくわれないようにしないと。

    アグネス「(そういう意味では今回のことは良かったのかも。追い駆けられる立場から追いかける立場にポジションが代わったわ)」

    ここディオキアでは警察犬も動員されている。クンクンされてしまったわ。シンがステラから貰った貝殻からも彼女の指紋とDNA、におい成分等を収集。貝殻に付着している汗などの体液も、投与された薬物が分析可能だそうだわ。

    アグネス「(シンの精神状態の安定のため、貝殻自体は後日、返却予定だそうだけど)」
    取り合えず3Dプリンターで作った複製品を代わりに彼に渡しておいたそうだ。

  • 101二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 22:35:17

    証拠はプラント(本国+カーペンタリア)から派遣された科学者が分析。捜査官も派遣され、地元警察や軍保安部と協力する。
    ただ検問は空振りかな。ナンバーは捨ててあったし。それっぽい車が猛スピードで町から出ていくのを目撃したという住民の証言も。

    今、コーカサスとジブラルタルでは対・薬物強化兵部隊を組織、捜索と討伐を実行するべく本部が立ち上がっている。どうやら上層部でもそう言った特殊部隊が連合軍内に存在すること自体は把握していたらしい。連合の強化兵団が彼ら3人だけということもあるまい。これを機に組織を壊滅してやるわ。

    アグネス「(とは言え、私達は月軌道にいかないといけないから、担当部隊はジブラルタルか中東方面軍から出すのかな)」

    そもそもミネルバ隊はそう言った任務には向いていないしね。結成経緯から考えても、これまでの戦歴からも。

    アグネス「(ただ、連合勢力圏に逃げ込まれたら打つ手なしね。というか、連合軍の一部な訳だし…)」

    いや、そうでもないか。そう言った『強化ナチュラル』の部隊が存在すると周知されていいるかいないかだけでも大きい。これで、部隊の編制、作戦、兵士の心構えまで大分改善されるだろう。相手から虚を突かれることは無くなるわけだから。

    シンはステラに同情していた。その気持ちも分からなくはないけど、果たしてどうしたものか。上手く捕虜に出来て治療が成功したら、世論工作的にも大成功なんだけど。果たして―

    ともかく―ともかく、寝る。考えること多すぎだけど、きっと私は疲れている。肝心なことは明日起きて考える。おやすみなさい!

  • 102二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 10:11:08

    ピピピピピ、ポチ。

    アグネス「(朝…)」
    一日の終わりに散々なことがあった昨日が終わると、直ぐに今日が始まる。いつも通り。
    ちょっと、頭が回らない。いやな感覚。

    まず服を着替える。略綬が一気に増えた制服。どこまで増やせるかチャレンジだ。

    ステラのことが脳裏を過ぎる。バカらしい。感傷に流されるのは味方までにしないと。今分かっている範囲では彼女は『敵側』。強化兵として見方を死傷させたかもしれない。同情するなら、まずそちらからでしょう。
    第一、可哀想な人が居る。悲惨な目に直面している弱者がいる。でも、それが何!私が彼らになんかした?

    アグネス「(まあ、プラントが戦勝国になって、敗戦国共を『指導』『協力』するようになれば、トータルでそういう人間も少なくなっていくでしょう)」

    敵を取り逃がした無念と人道犯罪の被害者を見過ごしてしまった罪悪感に折り合いを付けながら、制服に袖を通す。私も随分甘くなったわね。死ぬわよ。それじゃ。

    良い人ほど死ぬ。どんな悲惨で残酷な世界にも善人はいる。でも、そう云う人達は自分を後回しにしてでも他人を助けようとするから、だから、良い人ほど先に死ぬ。私は悪人に進んでなりたいわけではないが、無駄死に同然で死んで、何年もたってから『列聖』されたいわけじゃない。まして、『列聖』されされないなら―死後顕彰さえされないなら―そんな自己犠牲はまっぴらごめんだわ。

    アグネス「(まずは勝つ!勝ち組になる!まずそれが基点。他人やあれやこれやはそこからよ)」

    あの3人を見逃さなければ、あの場で確保できれば危険に遭遇しなかったであろう味方のことも一旦、意識の外に追いやる。不毛だ。蝶の羽ばたきの先の出来事に気を回したら、自分が息を吸うことすらできなくなる。そんなことよりハリケーン(あるいは砂嵐)にこそ立ち向かうべきなのよ。私達は!!

  • 103二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 10:14:23

    気合を入れ直したわ!さて、ダイニングに。気まずいがシンを呼びにいくか。何かやばそうだし―

    プルルルル!
    ホテルの内線電話。今朝は何?!

    アグネス「はい。おはようございます!」
    アスラン「おはよう。朝食ミーティングが行われる。15分後に会議室へ」
    アグネス「了解。シン、レイには」
    アスラン「伝達ずみだ」
    アグネス「了解」

    15分後か、取り合えずダッシュ!

    会議室のドアを開くと中には―艦長!朝の光に照らされた白服にフェイスの徽章!
    敬礼!返礼!息が合った…なんか嬉しいわね。直ると、艦長がこちらに微笑みかけて来た。不思議。安堵感に胸が包まれるのを感じる。

    アグネス「おはようございます。艦長。一昨日は夕食をご馳走下さり、誠にありがとうございました」
    タリア「おはよう。いいのよ。私もいろいろ話せて楽しかったわ」

    お決まりの会話を交わす。ともあれ、礼儀を守れてよかったわ。お礼を言う機会は当分ないと思っていたから…。

    席を勧められ、着席。少し、間が空く。重役出勤する上司もどうかと思うけど、平より早く来る上役もどうかと思う。まあ、この辺りは微妙なものだ。時と場合による。

    タリア「昨日は災難だったわね」
    アグネス「はい」

    私の目を見る艦長と視線が合わさる。艦長の顔色は比較的良い。なら、今日の話も悪いものではないだろう。

  • 104二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 10:17:28

    タリア「貴女は大丈夫そうね。でも一応、言っておくわ。『貴女のせいじゃない』。強化人間のこと。彼らを取り逃がしたとか、助けられなかったとか過度に考えないように。目前の任務に集中を」
    アグネス「はい!心の中で整理をつけたつもりです」
    タリア「よろしい」

    暫くして、レイとアスラン、ハイネ先輩がほぼ同時に。起立。敬礼を交わし、着席。各々自分の席に。シンは最後か…。

    取り合えず全員に挨拶。これ基本!
    アグネス「おはようございます。ハイネ先輩」
    ハイネ「ああ。おはよう、アグネス」
    アグネス「おはようございます。アスラン先輩」
    アスラン「おはよう、アグネス」
    アグネス「レイ。おはよう」
    レイ「おはよう。アグネス」

    良しクリア。そんなことをしていると、何かすごい顔のシンが扉を開けて入ってくる。
    アグネス「(あれはやばいわね。亡くなった妹を思わせる年下の少女は鬼門か)」
    眼が微妙に据わっているいるシンを見て、一瞬皆が言葉に詰まる。

    シンが思い出したように敬礼をしたため、一応止まった空気が動き出したわ。セーフ。

    艦長から目線で示された席にシンが付いたタイミングでルームサービスが呼ばれ、朝食が目前に並ぶ。取り合えず、お腹を満たしながらお話をしましょうか。そんな雰囲気じゃないけど。

    艦長とアイコンタクトを取った後、ハイネ先輩が話し出す。しっかり、シンと私の方を向いて、労りと強さのこもった声で。

    ハイネ「昨日は大変だったな。アグネス、シン」
    アグネス「はい」
    シン「…」

  • 105二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 10:22:40

    一つ頷くと言葉を続ける。

    ハイネ「残念ながら、薬物強化兵と推認される3人は取り逃がした。まあ、気にするな。誰のせいと言う訳でもない」

    シンがやっと顔を上げる。この表情は安堵か…。あんたねぇ。それどうなのよ。
    アグネス「(まあ、捕まった後どうなるか、分からない。非人道的作戦に従事した可能性もあるから、最悪、拷問まがいの取り調べや、死刑判決、実験動物扱いされるかも、とかアホなことを考えていたんでしょ。こいつは)」

    困ったものだわ。敵兵に同情が過ぎるのも考え物だ。私が言えた義理でもないけど。

    ハイネ先輩から促されたアスランが言葉を続ける。
    アスラン「艦長とヴェステンフルス隊長、そして俺でフェイス特権を使って上申しておいた。
    『敵、非人道部隊は速やかに壊滅させるべきであるが、薬物強化兵・洗脳兵本人に限っては、彼ら自身も戦争犯罪・人道犯罪の被害者であることを鑑み、特別な配慮が必要である事。彼ら・彼女達に対しては、可能であれば投降を促し、捕虜としての身分を保証した上で身体的・精神的な医療を提供するべきである事。健康を回復してもらい、証人として連合の犯罪を告発、国際法廷等でも証言してもらうことがザフト・プラントの正義に資すること。
    彼ら自身の裁判に当たっては、その精神能力の喪失や耗弱、育成環境などの情状を考慮し、恩赦や刑の大幅な減免がなされるべきである』、と。おそらく上申内容は国防委員会や最高評議会でも承認されるだろう」

    それを聞いたシンの顔が安堵感に包まれる。ようやく筋肉のこわばりが解け、目に光が戻る。ステラを助けたつもりが、全然助けになっていなかったこと、相当葛藤していたのね。

    シンの心が落ち着くのを待って、ハイネ先輩が私達に釘を刺す。
    ハイネ「ただ、投降に関してはあくまで可能であれば、だ。戦場では手加減している余裕なんてないぞ。割り切れよ。今は戦争で、俺達は軍人なんだからさ。でないと、死ぬぞ?」

    アグネス・レイ「はい」
    シン「…。分かりました」

    先程から、私達のやり取りを静かに見守っていた艦長から一言。
    タリア「さあ、話が一段落したわね。冷える前に朝食、いただきましょう」
    一同「はい」

    そう言えば、お腹すいていた筈よね。忘れてたわ。言われたら、一気に空腹感が襲ってきた。

  • 106二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 14:01:39

    ハイネがいると安心できるな
    なお

  • 107二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 18:48:23

    朝食を食べながら、暫し歓談。考えてみればフェイス3人という異常事態の中、行きがかり上とは言え『同じ釜の飯』をこの人達が食べる機会は大事ではある。3人とも、それぞれに癖のある人間かもしれないが、少なくとも悪人ではない。ちゃんとコミュニケーションを取らないとね。

    3人とも割と静かに食事を進めている。共通する話題が少ないからね…、この三人。ただ、雰囲気は悪くはない。

    ハイネ「しかし、ミネルバに乗艦できるのが先になるのは残念です。最新鋭艦、どれほどのものか、今から楽しみです」
    タリア「ええ。まあ。ただ、本国からも大勢駆けつけてくれて、急ピッチで進めてくれているそうですわ」
    ハイネ「そうですか。いや―」

    アスランをチラ見。特に何も話さず聞き役に徹している。う~む。それが悪いわけじゃないんだけど。

    アグネス「ハイネ先輩は今まではナスカ級に乗艦なさっていらしたのですか?」
    一球投げ入れて話題を広げて見ますか。この三人がちゃんと意思疎通できるようにならないと艦もパイロット隊も回らなくなってしまう。

    ハイネ「ハイネでいいよ。そんな堅っ苦しい。ザフトのパイロットはそれが基本だろ?アグネス」
    アグネス「え…え、え?はぁ。うん?」

    突如の名前呼びの提案にパニックになる。え?そりゃ同期生なら、年齢の上下はあまり関係ないわ。年が違うシンも私やルナマリアを呼び捨てにしているし…。

    でも、流石に卒業年次、入隊年次が違うと。う~ん。でも、アスランは結構、話の中で先輩のミゲル先輩を呼び捨てにしていたわね。この辺りどうなんだろう。

    まあ。ザフトは建前上階級無いから、その辺り結構、ケースバイケースで何とはなしにやって来たから…。でも困ったわね。う~ん。

    アグネス「いえ。アカデミーの先輩であり、先任である方を呼び捨てにするのは気が咎めます。ただ、尊敬する先輩からそのようなお心遣いをして頂けたことをとても光栄に思います」
    と、無難にお答えする。これ以外の答えが思いつかないわね。艦長にアイコンタクト。艦長も頷く。

  • 108二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 18:52:12

    タリア「鷹揚な先輩が来てくださって、あなた達は恵まれているわね。アグネス、シン、レイ?」
    アグネス「はい」
    シン「あ…はい
    レイ「はい」

    冴えない返事をする私達を確認すると、艦長とハイネ先輩が目で合図を交わす。
    ちょっとハイネ先輩は残念そうだわ。この人のポリシーでもあるのでしょう。それでうまくいくケースも。
    でも、なかなか下の立場の人間は大変なのよ。パイロット同士はそれで良くても、副長もいるから。まさか、副長をアーサー呼びは出来ない。第三者がいる場といない場で呼び方を変えるというのも手ではあるけど…。

    コホンと軽く咳払いした後、敢えて艦長は『説教ボイス』を出す。

    タリア「こんなことを言うと、またか、と思われるかもしれないけれど。私達の頃はこんなんじゃなかったわよ。あなた達。全く今どきの若い者は、コンプライアンスやら何やらで守られて。先輩も上官も良い人ばかりで。入隊時に私達の世代がどれほど大変だったか―」

    そういう話を艦長から聞くのは実は初めてね。ハイネ先輩の言葉を失言にせず、そのお人柄を頼りにしていることを伝えた上で、私達に調子に乗るな、と釘を刺している訳か。

    アグネス「(ありがたい心遣いね)」
    そのまま、艦長の世代の『ご苦労話』をハイネ先輩、アスラン、私、シン、レイで拝聴。
    朝から飲み会モードか!まあ、良いけど。
    案外、シンはしっかり話を聞いて一々相槌を打っている。どうでも良いけど、艦長、途中からハイネ先輩のフォローという目的忘れてない?
    自分が入隊後から今日までに受けてきたパワハラとセクハラの数々、その恨み節を微妙にループしながら話し始めたわ。

  • 109二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 18:58:47

    ハイネ「そ…それは」
    アスラン「ご…ご苦労されました…ね」

    こういう話を女性の上官からされる機会が少なかったのか、それまで余裕を持っていたハイネ先輩と朴念仁のアスランもたじたじになる。レイは地蔵になり、シンは…。

    シン「許せないですね。そんな奴。だって、それ犯罪じゃないですか。理不尽ですよ」

    何か艦長に同情して熱くなり始めた。じゃあ、もっと常日頃から艦長や副長に敬意を払ったら!?あんたがこれまで無駄に咬みついてきた上官や教官にもそう言った過去や苦労が有ったかも知れないのよ。

    アグネス「(まあ、直接話を聞く機会もそんなになかったか。ウザい教官はそれはそれとしてムカつくからね)」
    とは言え、シンにとっては、『上官』や『教官』が単なる『うるさい敵』ではなく、自分と同じ喜怒哀楽がある、それぞれに苦しみや悲しみを抱えた存在である事。早めに知っておくべきではあったわね。

    にしても、艦長。今しているセクハラの話、男子にはちょっときつ過ぎると思うわ…。

    艦長の嵐のような過去回想(外部に実況音声付)がやっと終わり、食後のコーヒータイム。

    一応、『呼び方問題』は『ヴェステンフルス隊長』はなし、で話は付いたわ。後は各々が考えて呼べばよいことに。ハイネ先輩から私達はアスランも含めて呼び捨てになるとのこと。アスランからハイネ先輩は、ご本人の強い勧めもあり『ハイネ(呼び捨て)』に決定したわ。
    それと、副長には敬意を。これはハイネ先輩を含むこの場の全員が艦長から厳命されたお約束。守らないとね。

    コーヒーを数口飲み、気分を切り替える。
    さて、今後のミネルバ隊の方針と命令について。後半戦のミーティング開始かな。

  • 110二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 20:28:50

    タリアさんこんな愚痴を周りに言えるくらい打ち解けたんだな
    本編ではずっと女性だからと舐められないように気を張ってそうだったから嬉しい

  • 111二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:27:43

    タリア「では、ここからは気分を入れ替えて、次の任務について説明を。ハイネ」
    ハイネ「はい」
    起立したハイネ先輩が会議室のモニターを起動。月の現状について説明を開始しする。

    ハイネ「フォックストロット・ノベンバー以降、地球連合軍は月面アルザッヘル基地を牙城にザフト月軌道艦隊とにらみ合い、小規模な衝突を繰り返しています。基地には複数の宇宙艦隊が駐留。おそらく、開戦時に戦略予備として出撃しなかった艦隊と撤退後に再編された艦隊が。地上からは開戦後から何度か月に補給が到着。防ぎきれなかった分は基地に」

    ふむ。ここまでは知っての通りね。それで、その先は?

    ハイネ「地球連合軍艦隊の内1つは第3艦隊、およそ40隻前後。もう一つは第8艦隊」
    アグネス「(第8艦隊か。前大戦でクルーゼ隊と戦い壮烈な玉砕を遂げたハルバートン提督旗下の艦隊と同じ番号ね)」

    そう言う名誉ある通し番号は大抵、大事に引き継がれるもの。確か、故ハルバートン提督は「G兵器」開発プロジェクトの立役者でもあったわね。

    ハイネ「新・第8艦隊は確認できている限り、アガメムノン級5隻、ネルソン級10隻、ドレイク級16隻程度です」

    アスランが隣から難しい表情で捕捉する。

    アスラン「かなりの規模だな。連合艦船のスペックを完全に把握しているわけではないが、仮にアガメムノン級、ネルソン級、ドレイク級の搭載モビルスーツ数をそれぞれ、20機、4機、4機とした場合。第8艦隊だけでもモビルスーツ204機。更に地球からの補給や現地生産された陽電子リフレクター搭載モビルアーマーが加わっている可能性もある」

    確かに結構な圧ね。こうして考えると。ここで質問しておくか。挙手。

  • 112二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:32:19

    ハイネ「どうぞ。アグネス」
    アグネス「ありがとうございます。第3と第8艦隊については理解しました。その他の、例えば1、2、4、5、6、7の艦隊はどうなっているのでしょうか?勿論、第8以降も艦隊が存在するかもしれませんが」

    質問が終わると、ハイネ先輩が待ってました、という顔で続きを話す。なるほど。こっちが本題ってわけね。

    ハイネ「そう!それが問題だ。地球軍は当然、第3、8艦隊以外も開戦後の混乱の後、艦隊を幾つか再編成させている。そのうちの一つがこいつだ」

    モニターにナスカ級と対峙するアガメムノン級2隻とそれを護衛するネルソン級、ドレイク級数隻の映像が映る。更に別映像、今度はユーラシア連邦所属のブラウン色のアガメムノン級と先程のアガメムノン級が並走する光学映像が映し出される。

    ハイネ「最近、月軌道にこの大西洋・ユーラシア合同混成艦隊がちょっかいをかけている。多分さっき話したフォックストロット・ノベンバー後に再建されたやつの一つだ。規模はおそらくアガメムノン級が3隻、通例に従うならネルソン級とドレイク級がそれぞれ10隻、20隻とついて艦隊を成しているだろうから…」
    アスラン「さっきの計算で行くと艦載モビルスーツ数は180機と言ったところか。厄介だな。そこまで回復しているのか」

    これらの艦隊に加え、基地直属の防衛部隊。なかなかアルザッヘルも堅いわね。

    敵情は取り合えず分かったわ。なるほど。これでは月軌道の完全封鎖もままならないわね。ちょくちょく地球からも補給や人員の移動が行われている節があるのはそのせいか。

    アグネス「(宇宙に出てまでザムザザーにゲルズゲー、そしてこの前のユークリッドの相手をしなければいけないかも知れないのね。なるほど。ちゃんと対策を考えないと)」

  • 113二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:34:52

    ここで艦長からハイネ先輩に質問、確認も込めて。

    タリア「こちらの月軌道艦隊の陣容は。どうなっている?」
    ハイネ「月軌道艦隊は現在ナスカ級30隻、ローラシア級20隻、それに旗艦にして母艦のゴンドワナ級1隻です」

    モニターの光学映像にゴンドワナ級を中心に展開する我が月軌道艦隊の姿が!成程、堂々たる威容ね。ただ―

    シン「50隻?そんなんで大丈夫なんですか?!」
    シンの不規則発言に咎めるような眼差しが艦長とアスランから注がれ、慌てて彼も口を閉じる。
    アグネス「(でも、そうね。ナスカ級、ローラシア級ともに艦載機は通常6機。300機だけで連合軍月艦隊を相手取るのは厳しい。しかし!)」
    ハイネ「シン、言う前にちゃんと挙手しろよ。でも、良い指摘だな。確かに。だが忘れてないか?こっちには旗艦ゴンドワナがあるんだぜ。移動要塞、何かカッコいいだろ」

    その場の空気を和らげるようにやや砕けた口調でハイネ先輩はシンをたしなめる。
    そう、私達にはゴンドワナがある。この前のプラント防衛戦でも活躍したわ。
    アグネス「(というか月軌道艦隊自体がプラント防衛戦の主力部隊だったのよね。そこから追撃して連合を月に封じ込めたわけだから、なかなかのものね)」
    惜しい。そこにミネルバがいれば…。オーブ近海で大忙しだったわ。無理ね。

    それはそうと、月軌道艦隊にゴンドワナがあるのは大きい。リニアカタパルトの数何と16!味方艦のためのドック機能付き。大型対空砲多数。当然、大量の艦載機が積まれている。仮にカタパルト1つの対応機数が10機だったとしても160機。もしかしたらそれ以上。

    アグネス「(この戦力、我が方の勝利に疑いあるなし!)」
    『疑いがある』を『ない』で打ち消し、『絶対にない』の意味よ。

    アスラン「だが、苦しいことには変わりない。それで、俺達は…」
    ハイネ「ああ。取り合えず、最近小競り合いを仕掛けてくる、この『大西洋・ユーラシア合同混成艦隊』を叩くことが今回の任務だ。勿論、他の艦隊が出てくるなら倒してしまっても構わないそうだ」

  • 114二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:39:49

    なるほど。そういうことね。そのための月行きか。
    アグネス「(アルザッヘル基地を陥落させる、までは行かず敵艦隊漸減が目的なのね)」

    確かに、一度にアルザッヘルまで―というのはちょっと厳しいかもね。その場合はザフト艦隊の大部分を動員する必要がある。乾坤一擲の勝負、私は好きだけど、リターンが大きい分リスクも大きい。

    シンやレイの反応を窺ってみる。レイは相変わらずな顔。シンは頻りに感心したり、『?』マークを浮かべたり、納得したりと忙しそうね。

    タリア「今日の正午前、ディオキア国際空港からバクー国際空港へ。向こうでインパルス、セイバー、ザク2機そしてグフと共に私達はスペース·シャトルに搭乗、宇宙に上がります。目的地はゴンドワナ。足りない機体の補充を受け、ナスカ級カーナヴォンに。私達の新しい艦よ。当面のね」
    ハイネ「グラスゴー隊にいく予定だったのをわざわざ議長が押さえてくれたらしいぜ。普通のナスカ級が6機しか運用できないのに、この最新改修型は12機程度の運用が可能だ。俺のグフは昨晩のうちにバクーに運搬済みさ」

    それは凄い。グラスゴー隊長が機嫌を損ねていないと良いが…。
    アグネス「(道理の分かるお方と聞いているから大丈夫かな。カーナヴォンもこの任務が終わったらお返しするわけだし)」

    ちょっと気になることがあるので挙手。
    タリア「アグネス。何?」

    アグネス「私達、パイロット隊12名と艦長、副長の宇宙行きは確定として、他のクルーは何人ほど連れていくことになりますか?」
    タリア「選抜メンバーはブリッジ組、チェン、 バート、マリクそれにメイリン。それから、整備班のマッド、ヴィーノ、ヨウラン。計7名。カーナヴォンのクルーに合流します」

    何時もの面子ね。ある意味やりやすいわ。火器・索敵・操艦を担うチェンさん、バートさんマリクさん、それに整備のマッド・エイブスはナスカ級の乗艦経験が豊富だろうし、私達も実習で体験している。元々、皆、ミネルバに行かなければナスカ級が本命だった。

    タリア「残りのクルー達はザフト軍ディオキア基地の立ち上げに加わってもらいます。このことは副長を通じて、他のクルーにも伝達済み。質問は?」

    特にない。

    タリア「では解散。1時間後に一階ロビーで集合。バスに乗り込みます」
    皆で起立。
    一同「了解!」
    艦長と敬礼を交わす。息が合って来て嬉しいわ。

  • 115二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 08:46:31

    このあつまりの始まりと終わりに艦長と敬礼の息が合って喜ぶアグネスにほっこりする

  • 116二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 11:25:26

    宇宙に上がればルナマリアとも再会できるかな?

  • 117二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 12:06:22

    特使のアレックス・ディノ(アスラン)は宇宙に上がってしまって大丈夫なんだろうか
    その間にアークエンジェル(スカンジナビア王国?)から連絡来ないかな

  • 118二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 21:30:00

    身支度を整えホテルのロビーに下りると、宿泊中のザフト軍関係者とホテル支配人・従業員が集結していたわ!私達を見送ってくれるらしい。
    その中には議長と会見した際に茶菓子を持ってこなかったメイド、さえないモブ顔の黒服三人衆の姿も。白服はいないけど、市の上役の人も駆けつけてくれている。

    アグネス「(良し。許す。無能なメイドや従業員も。支配人も飛ばさせないであげる。大事な任務の前だし、負の業(カルマ)を積みたくはないからね)」

    皆に格好良く敬礼しながら、艦長やハイネ先輩、アスランと合流する。

    シン「…」
    レイ「…」

    こういうシチュエーションに慣れていないのか、シンとレイ、特にシンは固まっているわね。勲章の授与式や表彰式以外に『偉い人』が自分を見送りに来てくれるのは彼にとって未知の体験なのか…。

    ちょいっと、シンの身体を軽く突っつく。
    シン「うん?」
    アグネス「せっかくだし、一言挨拶したら」
    艦長にアイコンタクト。GOサイン!

    レイ「せっかくだ、シン」
    レイからも促され、我らがエース(?)のシンがお集りの方達に向け一言。

    シン「お…、私達は…。必ずここに帰ってきます!」

    がくッ。すっ転びそうになる。しかし、私とは対照的に観衆の反応は熱い。
    支配人「いつでもサービスします!!」
    従業員「必ず…。この地に…」
    ザフト軍関係者「頑張ってこい!」

    まあ、皆が喜んでくれているなら何よりだわ。
    艦長と共に一同、敬礼。
    手を振る人々に見送られて、笑顔で応えながらバスに乗り込み。一路、ディオキア国際空港に。

  • 119二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 21:32:09

    バスの中、前の座席に座るシンに思わずツッコミを入れる。
    アグネス「ちょっとシン!さっきの挨拶、まるで特攻隊のセリフみたいだったわよ!?死亡フラグ立てないでよ!」

    挨拶を促したのは私だったけど、なんかこうお世話になったお礼とか無難なもので良かったのに。

    シン「?アグネス、特攻隊は『お国のために死んできます』って言うんだぞ。映画で見た」

    きょとんとした表情で返される。シンの隣に座るレイからは鬱陶しそうな視線を送られる。そっちは無視するとして―

    アグネス「(な、なるほど?死んできます、で死ぬから、帰ってきますで大丈夫…、なのか。そうか、そうなのかも!)」

    一人で納得していると、レイから一言多い余計なお言葉が降って来る。
    レイ「そもそもフラグなど意味はない」
    アグネス「パイロットはゲン担ぎにこだわるものなの。でも、良い。分かった。生存フラグなのね。これで!」

    目をパチクリしつつシンは頷く。
    シン「ああ。間違いない。帰還を前提にしない作戦は良くないけど、ザフトはそういうんじゃないだろう?」
    アグネス「当然よ!」

    勝って帰らねば意味が無いからね、私も皆も。うむ。なるほど!日系のシンは詳しいわね。

    そんなやり取りをするうちに空港に到着。
    副長やメイリンたちと合流。艦長以外の皆と共に副長と敬礼を交わす。ハイネ先輩と副長がぎくしゃくしないか内心心配していたけど、そんな人達じゃなかったわね。杞憂だったわ。

    アグネス「メイリン、ギリギリおはよう」
    メイリン「ギリギリおはようございま、アグネスさん。昨日は大変でしたね」
    アグネス「大変なんてものじゃないわよ…。まあ、良いわ。聴取を受けたのは車に乗っていた皆な訳だし」

    軽く他の面子とも挨拶を交わして回る。

  • 120二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 21:34:47

    怪我をしていたグーン、ガズウートパイロットとも。労りの言葉で高感度ゲットよ。

    アグネス「おはようございます。調子はいかがですか?」
    グーンパイロット「まずまずかな。しっかり戦えると思うぞ」
    ガズウートパイロット「甲板組でシュミレーター訓練をしていたんだ。ザク搭乗予定で。無論、俺達はガズウートでも暴れられるぞ」
    アグネス「心強いです」

    ハイネ先輩も皆に一人一人、声をかけて回っている。コミュ力がある人は強いわね。やっぱり。

    その後、皆で旅客機に乗り込む。安全を優先して汎ムスリム会議領空を回ってバクーに出発。

    昼食は飛行機の中。
    メイリン「美味しいですね。トルコ料理」
    アグネス「そうね。まあ、ディオキアも地理的にほぼ…。という気もするけど。ちょっとずつ違うわね」

    軍隊の楽しみなんて食事くらいしかないんだから、モリモリ食べるわ。
    ヴィーノ「にしても今度は宇宙か…。どんな感じなんだろう」
    ヨウラン「第八艦隊は確認されているんだろう?俺達の一応の目標は大西洋・ユーラシア混成艦隊だけど」

    座席の通路の向こう側の会話が何とはなしに耳に入ってくる。

    アグネス「(そうね。仮にアルザッヘル基地に連合軍宇宙艦隊が1~8まで駐留している、と仮定する。連合軍の一個艦隊は大体30隻から40隻ほどの規模。ザックリ35隻とすれば8個艦隊で280隻。モビルスーツの数は結構変動するけど、一個艦隊に着き180機とすれば1440機…)」

    勿論、こんな過程に意味はない。開戦時の戦闘から連合軍はまだ、立ち直れていないかも知れない。あるいはとっくに艦隊の再編を終え、出撃のカウントダウンを進めているかもしれない。艦隊が幾つあるのかも分からないし、『クルセイダーズ』のような連合司令部から半ば独立した部隊も独自行動しているかもしれない。

  • 121二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 22:37:35

    アグネス「(だからこそ。アルザッヘルを直ぐに陥落させられないなら、せめて奴らを漸減させ続けなければいけない。その点、月軌道艦隊はよくやってくれてると思うわ)」

    ルナマリアもなかなかね。流石、私のまあまあな友!

    隣のメイリンにも話してみる。

    アグネス「メイリン、ルナマリアは元気?最近、死ぬほど忙しくて連絡取れてないけど」
    メイリン「お姉ちゃんは元気だそうですよ。この前の小戦闘でも活躍して勲章を…」

    何と!やるわね!それで、まさか…。
    アグネス「ね…、ネビュラ勲章とか…。先を…越され」
    メイリン「だ、大丈夫(?)ですよ。銀星章だそうです」

    セーフ、良し。まだ、セーフね。どっちが先にネビュラ勲章、授与されるか頑張らないとね。

    残りの時間はミーアの曲を聞いて過ごす。リラックスしてうつらうつらしている内にバクー国際空港に到着していたわ。

    空港では意外な…そうでもない人物が私達を待っていた。

    タリア「最近、よくお会いしますわね…」
    デュランダル「はっはっはっ。どうだね」

    何か、またいる…。うざっ!バクー国際空港に着いて、スペース·シャトルに乗り込もうとしたら、議長が待ち構えていた。

    アグネス「(そんなに艦長に会いたいわけ?会いたいわね…。わざわざハイネ先輩までパイロット隊に押し込んでカーナヴォンまで押さえていたわけだし…)」

    男性の恋は永久保存とはよく言ったものだわ。そんなに青春時代の気持ちを引きずっているとは。

  • 122二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 22:41:44

    こちらに歩み寄って来る議長に副長以下皆で敬礼。やっぱり、レイは嬉しそうだ。

    レイ「ギル…」
    議長はレイと目線で挨拶。

    デュランダル「やあ、皆。ミネルバクルーの諸君とは初めましてだな。君たちともゆっくり時間を取りたいところだが…。すまない。月での任務、期待しているよ。プラント市民の安全、君たちに負うところ、大変大きい」
    アーサー「はい。ありがとうございます。ご期待に応えるべく力を尽くします」
    デュランダル「うん。ありがとう」

    副長以下敬礼。議長の返礼を受け、皆シャトルに向かう。

    アグネス「(機内のニュースによるとミーアは今日、トビリシでライブだそう。ドサ周りは彼女に押し付けて何しに来たんだか…)」

    背後から艦長と議長の話し声が聞こえて来たわ。

    タリア「わざわざお見送りありがとうございます」
    デュランダル「いやなに、私も急遽、宇宙に上がらねばならなくなってね」
    タリア「と、言いますと?」
    デュランダル「メサイアの完成式典に。他の人に変わろうとも思ったが、是非にもと…」

    ほう!ついにメサイアが完成したのね。プラントが誇る新たなる守り。移動要塞メサイア。その詳細は極秘事項も多いけど、開戦時には多分まだだったはず。中途半端な状態の実戦投入にならずに良かったわ。

    それで、スペース·シャトルの横に宇宙往還機シャトルが停船している訳か。

    アグネス「(にしてもえらい気合の入れようね。まあ、ボアズ以来の重要拠点。大切なのは間違いないけど)」

    まあ、一般軍人の私達とは違い用事が出来れば宇宙往還機シャトル乗り放題の議長様は勝手が違うのでしょう。私も自分専用の宇宙往還機シャトル、持てる身分に早くなりたいわ。

    そのためにも―
    轟音と閃光とともに滑走を始めるシャトルからカスピ海遥かガルナハンに目線を向ける。今は、只今為すべきことを!連合軍月艦隊、撃砕してくれるわ!

  • 123二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 01:31:20

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  • 124二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 01:33:19

    カーマン・ラインを越え、スペース·シャトルから眼下に地球を望む。ナチュラルなら―と云うか地球生まれの人間なら―『地球は青かった』とか『神はどこにも見当たらなかった』とかいう所なのだろうけど。宇宙産まれの私達にはそこまでの感慨はないわ。ただ、シャトルがカスピ海西岸バクーから上昇する際に見えた、干上がったアラル海が可哀想に思う。

    人類の愚行の象徴。かつての大湖は幾たびかの復元プロジェクトにより、一時期よりは持ち直したとはいえ、大部分がまだ砂漠のままになっている。

    アグネス「あれが世界4位の湖だったとは。目にすることが出来た人はどんなに幸運だったのでしょうね。縮小している、縮小していると騒げた時代の人はまだ幸せだったと思うわ」
    メイリン「はい。青き清浄なる世界を、もし実現するならあそこ以外ないでしょう。もしそれが彼らの本心なら」

    珍しくメイリンも辛口ね。ただ、いま旧カザフスタン西部はファウンデーション王国が実効支配し、旧トルクメニスタンもファウンデーションショックで半独立状態になっている。この波は旧タジキスタンや旧キルギスにも及ぶかもしれない。もし、ユーラシア連邦をプラントが屈服させることが出来れば、旧沿アラル海諸国を私達が指導し、あの湖の水を満たすことも出来るようになるかもしれないわ。

    アグネス「(地球という安寧の地を貪るばかりの愚民どもに喝を入れてやらないとね)」

    そのままシャトルは月軌道を目指す。後続して宇宙に上がって来た議長ご一行と私達は別ルートよ。各自睡眠、音楽鑑賞等思い思いに時間を過ごす。

    私達パイロット組はハイネ先輩から開戦日当日の戦闘の様子を詳しくお聞きして、ほー、とか、へー、とか感心して見せ、ハイネ先輩を面白がらせている。

    戦場に行った人の中には、自分が戦場で見聞きした話を他者に話すことを極度に嫌がる者もいる。善悪はともあれ、ハイネ先輩はそういうタイプではないみたいね。

    アグネス「(もしかしたら、私達やハイネ先輩が『綺麗な戦場』しか知らないから、そう言った感想になるのかも知れないけれど)」

  • 125二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 01:38:02

    実際、アスランは前大戦のことを話すことを嫌っている節がある。私やメイリンにはポツポツ話してくれるけれど。仮に『同じ戦争』に参戦した人たちの間でも、置かれた環境や本人の属性により、後の人生に刻まれる爪跡は全く変わったものになる。

    まして、『参戦した』のではなく『巻き込まれた』側のシンでは、全然思いが違うでしょう。

    瞼を閉じ、それから何とはなしに自分の祖父母等のことを思う。ナチュラル居住区に暮らしているお祖父様、お祖母様。親戚たち。小さい頃、よく遊びに連れて行ってもらったわ。

    ナチュラル居住区には第一世代コーディネイターと共にプラントに移住したコーディネイターの家族、親兄弟等とその子孫が暮らしている。コーディネイター本人のナチュラルの兄弟姉妹の中には同じくナチュラル居住区に住む別のコーディネイター本人の兄弟姉妹のナチュラルと結婚する人もいる。その子孫、私達プラントのコーディネイターから見れば『ナチュラルのおい、めい、いとこ』達も結構な数がプラントには住んでいる。

    同じく地球を巣立った同胞達。プラントのナチュラル国民。私達が出兵するなか、プラントの社会経済を支える一助となってくれている。

    アグネス「(コーディネイターの出生率は下がり続けている。私達ザラ派は人類の叡智がそれを克服すると信じているけれど。それでも―あってはならないことだけれど―コーディネイター主体でプラントという国を維持できなくなるのであれば、見も知らぬ連中より自分達の『おい、めい、いとこ』達に国譲りをするのも手かな)」

    ただ、それは本来あってはならないこと。親戚を大事にすることと、自分達の子孫の繁栄を望むことは両立しうる。

    アグネス「(しかし、私がそんなことを思う日が来るとは。不思議なものね)」
    アプリリウスに次帰ったら、久々にナチュラルの親戚にも会いに行こう。そして勲章を自慢して回るのよ。

    うとうとしている間に、シャトルは護衛に来たナスカ級2隻と合流していた。その後、月軌道に突入した私達は徐々にゴンドワナに近づいていく。
    しかし、接近すればするほど思うのは―

    ヴィーノ「なんかゴンドワナって思ったより小さくないか?」
    ヨウラン「お前もそう思うか。何か聞いてたのと印象が違うよな。ザフトが誇る移動要塞なんだよな?」

  • 126二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 01:43:14

    私も会話に加わる。

    アグネス「確かに。でも、それは私達の感覚がミネルバで麻痺している部分もあるわよ。ゴンドワナの全長1200mは宇宙艦としては破格のもの。ただ、何時も乗っているミネルバが全長350mもあるから」
    横からにょきっとシンとレイが顔を出し、話に加わる。
    シン「なるほど、大体ミネルバの3.4倍か。大きいけど巨大って感じじゃないよな。体感的に。何時も乗っているからそう思うのかもしれないけど」

    確かアークエンジェルが420m。エターナルが300mか。
    アグネス「(というかアークエンジェル大きすぎじゃない?アガメムノン級と比べても段違いだわ。流石、殊勲艦)」

    レイ「加えて言えば、俺達は大気圏内で甲板を直に歩き、陸上や海上、外部から自分の艦を見ることに慣れている。地球上の海や山と見比べることにも。それは他の宇宙艦乗りには少ない視点だろう」

    まあ、ともあれ心強い母艦なのは間違いないわ。月軌道艦隊の旗艦として、文字通り浮沈を共にする。

    そのまま、スペース・シャトルはゴンドワナに収容され、この大宇宙の中ではごく小さな艦に足を踏み出す―その前に艦長以下全員で敬礼。

    大海を漂流する遭難者が最後の希望として掴む木片。それがこの艦だ。大切にしないとね。
    艦長が手を下げるのを待ち、皆で直り、シャトルから荷揚げ作業に加わる。インパルスにセイバー、グフ、ザクファントム2機。その他の物資。

    今、ドック内で最終調整を終えているカーナヴォンに積み込まねば。何でも彼の艦には、既に複数回会戦を戦える分の補給物資が積み込んであるそうよ。勿論、新しく支給されるモビルスーツも。

    作業に入っていると、赤服の女性兵がこっちに敬礼してきたわ。返礼!礼儀大事って。
    シン「ルナ!」
    メイリン「お姉ちゃん?!」

    チャームポイントの寝癖が付いた赤髪にザフトレッド。私が友、ルナマリア・ホークが私達の出迎えに来ていたわ。

  • 127二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 07:53:40

    ルナマリア期待

  • 128二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 19:11:27

    互いに敬礼から直って、視線を交わす。なるほどなかなかに…。

    アグネス「久しぶり。叙勲おめでとう」
    ルナマリア「久しぶり。どういたしまして。そちらこそ。グラディス艦長はどちらに?」
    アグネス「ああ。艦長ね。こちらに」

    横に並んで、艦長の下にルナマリアを案内する。副長とお話し中だった艦長に2人で敬礼を交わす。どうやら、彼女は艦長をゴンドワナ司令部にエスコートしに来たみたいね。

    一歩前に出て、艦長に伝令を伝え始めたわ。

    アグネス「(軽くだけど、会った時、緊張感を感じたわ。アカデミー卒業から一回り大きくなっているわね)」

    勿論体の大きさではなく、存在の大きさだわ。やっぱり、出来るやつはどこでもできる。伸びる人はどこでも伸びる。私達はミネルバで死ぬ思いをしていたが、月軌道艦隊だってバリバリの前線。おまけに、気心の知れた同期が一緒に配属になったわけでもない。無論、顔見知りぐらいはいたかもしれないけれど。

    アグネス「(そこで勲功を上げてということは、そう言うことなのでしょうね)」

    軽く怖気づいてしまった…。しっかりしなきゃ。勲章の数と撃墜数は私の方が上よ。

    ルナマリアから司令部より言伝を受けた艦長は私達に命令を下し、ルナマリアと共にゴンドワナ司令部へ。

    タリア「少し席を外します。副長の命令に従い、カーナヴォンの補給を終えておく事」
    一同「了解」

    軽い足取りで艦長と歩み出す同期を見送る。ふ~む。

  • 129二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:22:54

    シンとの関係が色気はないけどいい感じに気のおけない悪友みたいになってきてるの面白い

  • 130二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:57:41

    アグネス「(うーむ。ルナマリア。流石ね。しかし!あなたが大きくなった以上に私も大きくなっている!多分!!)」

    上知と下愚とは移らず。元より素質有る者同士。実戦の洗礼を潜り抜ければ、伸びていて当たり前。その上で私は一番伸びることが出来るミネルバに乗艦できた。これが重要!

    荷物の搬入が進む中。カーナヴォンの現クルーと副長以下ミネルバ、クルー・パイロットで軽く自己紹介を済ます。

    本来グラスゴー隊に配属されるはずだったのに月軌道艦隊に出向になって、クルーは皆、不思議がっているわ。身に覚えのある話ね。それと、艦長以外にもフェイスが2人もいること驚いているわね。

    アグネス「(ただ、グラスゴー隊も赤服が複数配属されている精鋭部隊。元々、そこに着任予定だったからか、カーナヴォンクルーは私達に萎縮してはいない。何よりだわ)」

    皆でカーナヴォンに乗り込みそれぞれの持ち場に向かう。副長以下ブリッジ組はブリッジに整備班組はモビルスーツデッキに。
    アーサー「新たに配備された機体も含め、持って来た機体も艦載済みだ。ハイネ」
    ハイネ「はい」

    艦長との約束通り、いや、約束などなくてもそうしたのでしょうけど、ハイネ先輩は副長に敬意をもって接する。

    アーサー「パイロット隊の案内を頼む。モビルスーツデッキに皆を。機体の紹介などを済ませておいてくれ」
    ハイネ「了解しました」

    ハイネ先輩と合わせて副長に敬礼を交わし、皆でモビルスーツデッキに下りる。うむ。ナスカ級の全長は255m。やっぱり、何かと手狭に感じるわね。

  • 131二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:00:05

    デッキに下りるとハイネ先輩は雰囲気を変え、やや砕けた調子で皆を盛り上げようとしてくれる。もうすぐ戦闘が始まる。緩めるところはしっかり緩めなくちゃね。

    ハイネ「さて、パイロット諸君お待ちかね。モビルスーツの紹介タイムだ。さて、こちらは―」
    ハイネ先輩を先頭にパイロット組12人でぞろぞろモビルスーツデッキを探検。ナスカ級はアカデミー以来ね。最新改修型とは言え、なかなかにタイトなスペース。それでも不足なく艦も格納庫も良く整備・整理されている。

    ハイネ先輩の合図と合わせ、スポットライトがポンッと灯り、搬入したばかりのインパルスとセイバーが照らしだされる。ミネルバ整備班のみならず、カーナヴォンの人達ものりが良いわね。

    アスラン「無事搬入出来て肩の荷が下りました」
    シン「俺も。でもインパルス、そう言えばどう運用するんだろう。この艦、シルエットの射出は出来ないし…」

    シンのもっともな疑問に応えるべく、整備班長マッド・エイブスがカーナヴォンの整備班長(新整備副班長)を連れて説明に来てくれる。

    マッド・エイブス「シンの言うようにナスカ級にシルエット射出機能はない。インパルスはドッキング済みの状態で、艦内でシルエットを装着してカタパルトから発進。シルエット換装の必要が生じたら、その時は一旦艦内に収容してから行う。デュートリオンビームでエネルギーをチャージすることも出来ないから、他の機体同様、艦内に戻って充電する」

    アグネス「(なるほど。つまりはザクのウィザードシステムと同じ運用方法ね。シルエットがウィザードと同じような感じになるわけか)」

    マッド・エイブスの説明を聞き、納得したシンは返事をする。

    シン「分かりました。お願します」
    マッド・エイブス「おう」

    ちょっと顔を覗くと、シンは少し残念そうな顔をしている。複雑なインパルスを使いこなしてきたことに自信とプライドがあるのね。気持ちはわかる。しかし―

    アグネス「(シルエット射出・換装システムは良く出来ているとして、機体のドッキングはあんまり要らないわね。ガルナハンは例外的な状況だし。無理にインパルスを使うぐらいだったら坑道用の小型モビルスーツを開発した方が効果的よ)」

    あの時は時間が無かったから仕方なかったけれど。

  • 132二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:03:26

    そのまま、パイロットの大名行列は続く。
    ハイネ「次はアグネスとレイだ。驚くなよ。頼む!」

    バァーン!と効果音が鳴ったようにさっきよりも強くスポットライトが!眩しい光が2機のモビルスーツを照らす。何?なに?

    私とレイの機体と紹介され目の前に屹立するのは、型式番号ZGMF-X2000 先行試作機
    グフ・イグナイテッドが2機!カラーリング前で真っ白!!

    レイ「これは…」
    ハイネ「すごいだろう。まあ、俺が何かしたわけでもないが。議長が先行試作機を2つ回してくれたってわけさ。これまでの活躍を受けて」

    更にライトが灯り、ハイネ先輩のオレンジのグフが隣に並ぶ。

    アグネス「(嬉しいわね。大気圏内で飛行可能なのは勿論、宇宙空間でも高機動が可能な近接戦機。スラッシュ・ザクの上位互換と言った感じね)」

    ただ、遠・中距離砲撃戦を完全に投げ捨てているのは大いに不満。ザクならウィザードを変えていくらでも対応できるのに。私は飛べるザクが欲しかったのであって、格闘バカな機体が欲しかったわけではない。

    アグネス「(M68 キャットゥス500mm無反動砲でも持っていくか。片手に無反動砲、片手にテンペスト ビームソードを抜いても良い。最悪、無反動砲は使い捨てる手も。艦に予備をたくさん積んでおかないと)」

    でも、ハイネ先輩の嬉しそうな顔を見ていると、あんまり文句を言う気にはなれないのよね。レイも特に異存はなさそうだし。地球に戻ったら、状況に応じてバビと使い分けながらやって行こうかしら。

    そんなことを考えているとハイネ先輩から私とレイに『近寄れ』のジェスチャー。用件はもう予想が出来ている。
    ハイネ「…。良いか?」
    アグネス「はい」
    レイ「ベストな選択だと思います」
    ハイネ「ありがとうな」

    グフの配備に目を丸くしている皆にハイネ先輩が右手を指し示す。
    ライトがババ―ン。
    私とレイの一度も乗ったことの無いザク・ファントム。無事搬入済み。白と赤。パーソナルカラーにした意味なし!

  • 133二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:06:34

    ハイネ「艦長とも話し合った結果。この機体はショーン、デイルに譲渡することに。アグネスとレイも了承済みだ。どうだ。二人とも」

    ハイネ先輩のやや悪戯っぽい視線がショーンとデイルの目線と合わさる。

    二人の反応は?

    アグネス「(か、感動している!やっぱり、エース専用機は格別かな)」

    ショーン「あ、ありがとうございます。アグネス、ありがとう」
    デイル「本当に!レイ、大事にするよ」
    アグネス「はい。新しい主人を得て機体も喜んでいるでしょう」
    レイ「そう思ってくださると嬉しいです」

    まあ、地上に戻ったらザク・ファントムは格納庫行きで、またディンで空を舞う日々に2人は戻るかも知れないけれど。喜んでくれたなら何よりだわ。

    私達は徐々に明かりが広がっていく格納庫をゆっくり進む。ハイネ先輩が足を止め、ライトが今度はやや大人しく灯る。

    オレンジのザク・ファントム!ハイネ先輩の愛機。静かに見つめた後、先輩は話を進める。

    ハイネ「知っての通り、俺の大事な相棒だ。相応しい人に譲りたい。これを…。ガルナハン戦、パイロット隊の中では最も深手を負い、にも拘らず見事復帰してここまで来てくれた、グーン乗りの男に、海の勇者に、ザフト統一の守護者を贈りたい。受け取ってくれるか?」

    サプライズプレゼント。これは誰も予想していなかったわ。

    グーンパイロット「はい…。ありがとうございます!」

  • 134二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:08:52

    アグネス「おめでとうございます!」
    シン「おめでとうございます!!」
    レイ「おめでとうございます」
    一同「おめでとう!」

    パチパチパチパチ!パチパチパチパチ!

    思わぬ回復祝いを受け取ってグーンパイロットが涙ぐむ。ガズウートパイロットも負傷したのだけれど、重症度で彼に軍配が上がったらしい。人生万事塞翁が馬だわ。

    拍手が収まるのを見計らってハイネ先輩が最後に整備班に合図を送る。格納庫の残り三分の一が一気に明るくなり、そこに4機のザク・ウォーリアが新たな搭乗者を待っていた。

    ハイネ「海の勇者も砂上の勇者も宇宙で戦うなら相応しい鎧を着ないとな。どうだ?」
    グーンパイロット「はい。ありがとうございます」
    ガズウートパイロット「力闘します!絶対に!」

    パチパチパチパチ!パチパチパチパチ!パチパチパチパチ!パチパチパチパチ!

    その場のノリで、ハイネ先輩、アスランも交えて皆で拍手。なかなかすごいわね、これ。

    アグネス「セカンドステージシリーズ2機、グフ3機、ザク・ファントム3機、ザク・ウォーリア4機。もしかして、ザフト最精鋭部隊の一つじゃない!これ」
    シン「そうだな。うん。期待に応えないと…」

    シンの顔に目線を注ぐ。危ない、私としたことが…。
    そのままの状態をキープし、ちょっとシンが引いた後、周りに聞こえるように少し大きめの声で言う。

    アグネス「そうね。祖国プラントと国民、そして最高評議会の期待に応えないとね」
    シン「お…おう!そうだ。そうだな!」
    思い出したように肯定するシン。あんた、ほんと大丈夫?まあ、今言ったから良いか。

  • 135二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:10:20

    軽く周りを見回すと皆、少し、はッっとした後、大きく頷く。

    そう。機体の補充はありがたいけど、そこでの感謝をデュランダル議長個人への忠誠心に変換されては困る。向こうはそのつもりでも、こっちが思惑に乗る義理はない。

    そんな私にハイネ先輩は少し感心したような視線を向け、アスランに話しかける。

    ハイネ「はは。全く、俺達の後輩は真面目だな」
    アスラン「ええ…。まあ…」
    ハイネ「俺達もちゃんとしないとな」
    アスラン「ええ。はい…」

    アスランの反応はいつも通りだわ。レイは―何時もの無表情。
    多分、内心はむっっとしているでしょう。でも、ここは私としても譲れないところよ。ザラ派としてだけではない、自分の保身と保険としてちゃんとこういうことは表明しておかないと。

    アグネス「(まあ、『正論』だしね)」

  • 136二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 05:49:42

    みんな新しい機体を貰えて良かった

  • 137二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 09:14:04

    ハイネは自身のミネルバへの赴任にも思うところがありそうだったしアグネスと話が合うかも?

  • 138二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 13:31:54

    保守

  • 139二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 20:45:50

    さて、皆に機体の割り振りは終わったわ。じゃあ今からは―

    取り合えず挙手。
    ハイネ「はい。アグネス。ああ、それと普段は一々発言の度に挙手しなくて良いぜ」
    アグネス「はい。ありがとうございます。それでは、新機体の割り振りは終わりましたので…。これから皆でシュミレーター訓練を開始してはいかがでしょうか?シンもインパルスの運用方法が変わります。任務までには仕上げなくては」

    ハイネ先輩が、一々挙手しなくて良い、と言ってくれて良かったわ。この辺りのことも上官によってまちまちだから困るのよね。相手に合わせないと。

    ハイネ「良し。その通りだ。皆、一時退艦。ゴンドワナでシュミレーター訓練を始めるぞ」
    アグネス「了解」
    一同「了解」

    駆け足でモビルスーツデッキを出ようとすると、ヴィーノとヨウランが慌てて私とレイを呼び止める。

    ヴィーノ「待った!」
    ヨウラン「二人ともカラーリングどうするんだよ!」

    ああ。そう言えば。私達のグフ、無地だったわね。
    レイ「俺は今まで通り白で良い」

    ヴィーノ「分かった。上からしっかり白でコーティングしておくよ。アグネスは?」
    アグネス「私は…」

    困ったわね。赤いザクをショーンに譲ってしまったし、さっき、ニュースで確認したら、ルナマリアも赤い機体を使っているらしい。機体受領はほぼ同時期だから偶然だけど。

    アグネス「(誰が悪いと言う訳じゃないけど、色被りは面倒よね)」

  • 140二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 20:48:56

    アグネス「確かグフは量産の計画があるのよね。何色になりそう?」
    ヨウラン「えーっと…」
    マッド・エイブス「青色だそうだ。少し濃い目の」

    後ろから来たマッド・エイブスが教えてくれる。なるほど、それも避けたいから。

    アグネス「じゃあ、機体全体はスカイブルーで。左肩のショルダーにはザフトのマークを。モノアイの周囲にはワインレッドで、アイシャドーみたいに…。ちょっとケバイかな?」

    ちょっと口ではケバさを心配して見せたけど、本当に嫌なのは弱さだ。赤より白青系統じゃパンチが弱い。

    ヨウラン「う~ん。ちょっとな。そこまで来たらもう全体をワインレッドにした方が良いと思うぞ。あくまで俺の好みだけど」
    アグネス「それ!採用。結構いいじゃない。確かに他人との色被りに拘るなんてらしくないわね。これまでより濃いワインレッドでお願い。ワインレッドの中でもバーガンディーに。単調にならないよう左肩ショルダーにはザフトマークをくっきりと。よろしくお願いします」
    マッド・エイブス「分かった」
    ヴィーノ「かっこよく仕上げておくよ」
    アグネス「お願いね」

    整備班とのやり取りを終え、急いで皆を追う。何か律義にレイが待っていてくれたわ。珍しいこともあるものね。

    シュミレーター訓練を開始。やっぱりこの機体癖が強いわね。ただ、長所もいっぱいある。
    まず、ドラウプニル4連装ビームガンの使い勝手がとてもいい。ありがたいことに武器を持った状態でもこれは発射できる。とても重宝するわ。
    スレイヤーウィップはあの憎たらしい陽電子リフレクター発生装置を粉砕できる。テンペスト ビームソードは言わば対艦刀。実体剣としても使える。

    アグネス「(そして嬉しい対ビームシールド。これまで結構怖かったのよね。特に盗まれたセカンドシリーズの相手をする時)」

    ただ、やっぱり近接格闘にパラメーターを振り過ぎかな。設計局は何をしているんだか。一応、M68キャットゥス 500mm無反動の取り回しを重点的にトレーニングしておいたけど、困ったものだわ。

  • 141二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 20:52:47

    長時間のシュミレーター訓練で少し休憩。同じく休憩中のシン、レイと情報共有。
    アグネス「レイも無反動、持っていくわよね」
    レイ「そうだな。両手がふさがってしまうが、幸いテンペストは抜刀、納刀しやすい」
    アグネス「そうね。あれは良いわね」

    一緒に3人でスポーツドリンクをチビチビ飲む。
    アグネス「シンは?シルエット上手く使えそう?」
    シン「使える。でも、一々艦に戻るのは面倒だな」
    アグネス「あんたねぇ。その面倒をみんなやっているのよ」
    シン「それはわかってるけど…。最初はどのシルエットで行くべきかな?」

    そんなのハッキリしている。ここは―
    アグネス「ブラスト一択よ」
    レイ「ブラストだな」

    被ったわね。まあ、これに関しては即決だからみんな同意見だろうけれども。

    シン「やっぱり、そうだな。ブラストで敵モビルスーツ群を薙ぎ払う、と。でも、陽電子リフレクター搭載モビルアーマーが盾になって前進して来たら?」
    アグネス「そのためにチームを組んでいるんじゃない?そいつらはセイバーとグフで何とかする。開けたところでもう一回全力照射。エネルギー切れ近くなったらザクが護衛していくからカーナヴォンに帰還を」
    レイ「確かに。1機で全てをこなす必要はないな」

    小休憩後にまたシュミレーターに乗り込む。相手の艦隊の規模が未知数ね。どこまでを想定するべきなのか…。

    しばらく訓練は続き、頃合いを見たハイネ先輩の指示で切り上げ、解散。
    皆と挨拶を交わし、ハイネ先輩とアスランに敬意を交わす。もうハイネ先輩はタイミングを合わせてくれている。おそらくこういった一つ一つの所作が人の心を掴んで行くのね。言葉の文言だけでは人の心を動かすのに十分ではない。

  • 142二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 20:56:12

    アグネス「(それはそうと疲れたわね、正直。今日も盛りだくさんだった。これで、明日からカーナヴォンは僚艦であるナスカ級マルベース、ブルトンと共に哨戒任務開始と)」
    この3隻で今回は月軌道艦隊『グラディス隊』を結成すること、さっき通達が合ったわ。

    アグネス「(だから疲れを明日に持ち越してはいけない。そのためにはまず、疲れた自分をしっかり把握することが大事。ぶっ倒れない為の一歩だわ)」

    私だけじゃない。パイロット皆、疲れながらも緊張した顔をしていた。慣れない環境、初めての艦、新しい機体。ここで乗り越えられるかどうかが勝者と敗者の分かれ道ね。

    私は勝者になりたい。そして私が勝者になるにはこいつ等の一人でも死んでしまっては困る。一人欠ければその数の乗数だけ、負担が増える。12人からもし2名死者が出たら12-2で10じゃない、12-2の二乗でパワーは8まで減る。だから、私は仲間を守る。

    トレーニングルームから退出するとメイリンがこちらに走って来る。

    アグネス「メイリン?ブリッジは?」
    メイリン「交代です。アグネスさん、お姉ちゃんから、夕食のお誘いが。一緒に来れますか?」
    アグネス「勿論」

    話を隣にいるシンとレイも聞き付け、一緒に来ようとする。まあ、同窓会、悪くはないわね。

    アグネス「ヴィーノとヨウランも…。誘ってあげたいけど流石に大所帯ね。ルナマリアは何て」
    メイリン「いえ、元々は私宛のお誘いだったんですけど…」

    そうだったのね。こじんまりといたのが良かったのか…。姉妹水入らずを邪魔するのも悪いわね。

    アグネス「じゃあ、私は…」

  • 143二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 20:59:23

    シン「気にせず行って来いよ。女子会って言うんだろう?こういうの」

    隣からシンが口を挟んできた。こいつの口から『女子会』というセリフを聞くの凄い違和感ね!
    レイ「シンの言う通りだ。そもそも女性軍人自体多いとは言えない。せっかくの機会だ」

    う~ん。こいつ等に気を使われる日が来ようとは。人生何があるか分からないものね。ここで断るのはせっかく誘ってくれたメイリンにも悪い。

    アグネス「じゃあ、急いで行きましょう」
    メイリン「はい」


    ゴンドワナの食堂へ。なんやかんやで結構楽しみだったのよね。さて、良い男はいないものか…。何時もアホとコミュ障と議長の唾付きとモブに囲まれて過ごしていて、そろそろまともな出会いが欲しいのよね。

    さっきからチラチラ目線の合う男はいるけれど―

    アグネス「(うわぁ。また引いて行ったわ。胸の略綬見て…。外すべきだったか?いや、ポリシーに反する)」
    これで引くような腰抜けには元から要はない。虫除けになって良かったわ!

    メイリン「あ…。お姉ちゃん!アグネスさん、あそこ!」
    アグネス「ああ。結構いい席確保してくれたわね」

    メイリンと一緒にスタスタ歩いてルナマリアのテーブルに。彼女が振り向いたので片手を上げて挨拶。私を見てちょっと驚いた顔をした後、向こうも同じしぐさで挨拶を返してくる。

    さて、久しぶりにメイリン以外を交えて同年代の女子同士のお食事会ね。

  • 144二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 23:50:07

    アグネス「ルナマリア!改めて久しぶり。元気にしてた?」
    ルナマリア「ええ。久しぶり。メイリン?」
    メイリン「お姉ちゃん。久しぶり。アグネスさんもご一緒してもらっちゃった」
    ルナマリア「ええ。それはどうも…」

    ふむ。やはりルナマリアは姉妹での食事会を想定していたのね。それをメイリンがお邪魔虫を連れてきちゃったと。でも…。

    アグネス「(メイリンも案外ちゃっかりしているわね。ルナマリアとメイリンは仲が良い姉妹だけど…。正直、メイリンは姉にコンプレックスを抱いて抑圧されている感があった)」

    アカデミー時代は気にしていなかったけどね。そもそもメイリンがあんまり眼中になかった。ルナマリアの妹というだけ。今は正直、メイリンの方が私の中で存在としては大きい。

    アグネス「(そして、メイリンも、もう引っ込み思案の妹ではない。引っ込み思案の妹ではないけど、姉を前にして昔の自分に戻ってしまうかもしれない。それが嫌で私に来てもらったった、という所かしら)」

    私の横、姉の前に座り、アカデミーの頃より胸を張って話すようになったメイリン。仕方ないわね。今夜は力を貸すわ。

    アグネス「それでそれで?そっちはどう?というかあんたの隊は?」
    ルナマリア「あれ?メイリン、言ってない?」
    メイリン「あ、そう。アグネスさん。お姉ちゃんはマルベースのパイロット隊に。つまり、今回の任務では『グラディス隊』の同じメンバーです」
    アグネス「ほう?」

    なるほど、それで艦長を迎える係になっていたわけね。あの後、マルべ―ス、ブルトン両艦長達との会合が開かれたのかしら。

  • 145二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 23:54:47

    アグネス「それにしても奇遇ね。どうしたの。赤だから?私達と同期だから?それとも開戦以来ずっとマルベースなの?」
    ルナマリア「ええ…。そう…。そうね」

    我ながら質問多すぎか。相手の話を2つ聞いて、自分の話を1つ話す。基本に忠実に行くべきか…。ルナマリア引いちゃってるわ。もうアカデミーのノリとは一線を画して大人に―

    メイリン「それが…。お姉ちゃん。同僚を張り倒しちゃって」
    ルナマリア「メイリン!!」
    メイリン「別に降格人事とか処分とかじゃないんですが…。まあ、それとアグネスさんが今言ったような要素もあって、つい先日、マルベース、グラディス隊に移動したんですよ」
    ルナマリア「…!?…」

    目の前で頭を抱える友。というかメイリンそんな情報どこで?ルナマリアの反応を見るに姉から積極的に伝えた感じではないけど…。

    メイリンに『どうしてそこまで知っているの?』とでも言いたげなルナマリアの視線がチラリとメイリンを刺す。でも妹の方は、気づいているのかどうか、モリモリ食事食べているわね。私も食べよう、モリモリ。

    アグネス「で?どうしたの。セクハラで受けて一発張っちゃったとか?」
    ルナマリア「そうじゃないわよ。手を出したからには私が悪いの」
    アグネス「ふーん。で?」
    ルナマリア「でって…。まあ、分かったわ」

    ルナマリアは周囲を見回す。少し、人がまばらになっているのを確認し小声で話す。

    ルナマリア「人の悪口が言いたいわけじゃない。聞かれたから話すだけね」
    アグネス「相変わらずの委員長ね。分かったわ」

    そこから、ルナマリアが簡単にあらましを話してくれた。

  • 146二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 23:58:14

    何でもルナマリアが張り倒した同僚と言うのはレオナードとか言うパイロット。赤服でイケメンだそう。笑顔が魅力的でルナマリアも憎からず思っていたそうだわ。

    月での任務は連合と衝突が起きない日も多く、時に無聊をかこつ瞬間もある。そんな時-

    ルナマリア「そんな時、ミネルバ―シンやあんた達―の活躍をニュースで見て、思わず…」
    目を伏せながら気まずそうに話を進める。そうか…。多分。

    ルナマリア「つい口が滑って…。私もあの艦にのっていたらなぁ、って。もっと活躍できたかも、と。人の苦労も知らず本当にごめん!!」

    ああ、そう。なるほど。
    目の前で頭を下げ、『ごめんなさい』を全身で表す彼女。
    アグネス「(日系か?シンの影響かな。でも…)」

    メイリン「お姉ちゃん…」
    アグネス「…」

    今、目の前にいるのはもう一人の自分。いや、違う。
    私はルナマリア程、優しく思いやりのある人間ではない。仮にニュースを見て、そう言った感情が芽生えたとして、うっかり口をついて出たとして。罪悪感など抱くことはなかっただろう。

    アグネス「(『だから何?当たり前のことを言っただけよ』、と。周囲に咎められてもそう言い返したでしょうね、私なら。そこが私とルナマリアの決定的な違いだった…)」

    ルナマリアを押しのけてミネルバに乗ったから、私はそう言わずに済んだ。自分が言ったかもしれないセリフを間接的に友人に言わせて、今、謝られている。気まずいわね。
    マッチポンプみたいで自分に腹が立って来たわ。

    アグネス「謝らなくて良いわ。内心思う分には自由なんだし、つい言っちゃってもしょうがない。私は上に行く人間だから、気にしないわ!」

    ここでこれ以上、ルナマリアに『善い子ちゃん』されればされるほど、自分がみじめになる。ささっと話を進めましょう。

  • 147二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 00:04:52

    メイリン「アグネスさん…」
    ルナマリア「あんたどうしたの…」

    この姉妹、マイナスアグネスポイント付けるわよ!!特にルナマリア。

    アグネス「まあ、心境の変化?成長ってやつよ。それで?そのレオナードとか言うイケメン赤服がどうしたって?まあ、もう大体予想がつくけど」
    ルナマリア「…。そいつが、耳ざとく私の呟きを聞いて。ミネルバの活躍なんてプロパガンダだ、とか、ミネルバは議長のお気に入りだから贔屓されているだけ、みたいなことを言ってくるから。私のご機嫌取りのために―」

    アホかと。そう言うご機嫌の取り方は相手を選んでやりなさい。相手が正義感の強い人だと逆効果で自分の好感度-100だから。

    アグネス「(殷鑑遠からず、いや他山の石にしよう)」
    自分も同じようなことをこれまでして来た覚えがある。もう正規の軍人になっている。これからは洒落にならない。

    そんな私の内心を知ってか知らずか―知られているわね。ルナマリアはちょっと涙ぐみながら話し続ける。

    ルナマリア「私のご機嫌取りのためにシンやメイリン、皆が悪く言われて。でも、それは自分が一瞬前まで心の何処かで思っていたことで…。見透かされたような、二重の意味で情けなくなって―」
    メイリン「だからって、張り倒しちゃダメだよ」
    アグネス「そうねぇ」

    突っ込みを二人で入れるとルナマリアはちょっと怒って元気になる。

    ルナマリア「だから、その場では我慢したのよ!でも、そいつその後も私を試すように同じようなこと言ってくるから、つい…」
    アグネス「つい張り倒しちゃったか…」

    メイリンは呆れて天を仰ぐようなしぐさをする。しぐさだけする。顔はとても晴れやかだわ。姉が腐らず真直ぐなままでいてくれたことが嬉しいのだろう。

  • 148二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 00:19:06

    アグネス「(仕方ないわね民事訴訟に備えてパパの知り合いの弁護士事務所を紹介しておこうかしら…)」
    メイリン「まあ、その人の言動もあれでしたので…。見ようによっては『制服を着たまま政権批判をする同僚を鉄拳制裁した』とも言えますから。上司の口添えもあり、お咎めはなし。ただ、勲章授与のタイミングでゴンドワナからマルべ―スに『栄転』と」
    アグネス「『栄転』か。厄介払いされちゃったか…」
    ルナマリア「本当にしまったと思っているわよ。同期のあんた達なら兎も角…。自己弁護じゃないけど、あの人。後から思うと得体の知れないところがあったわ」

    ふーん。まあ、いろいろあるわね。あるいは、そんなこんななやり取りが上の耳に入り、それならいっその事とグラディス隊に入れたのかな。赤服だし。

    アグネス「ようこそ、グラディス隊へ。で、そのしょうもないクズのフルネームは?見えている地雷は回避しないとね」
    ルナマリア「ええ。レオナード・バルウェイっていうザフトレッド」
    アグネス「聞いた?メイリン。クズ男。心の中の『許さんリスト』に書き加えておかないとね」
    メイリン「はい。その人に騙されないように気を付けます。『許さんリスト』結構埋まっているんですか?」
    アグネス「ええ。もう心の中で1000人くらい名前書いたわ!出世したら覚えておきなさいよ」

    ルナマリアはそんな私達のやり取りを半ば呆れながら聞いている。

    ルナマリア「えぇ…。あんた、その性格治しなよ」
    アグネス「さっきまで塩らしくしていたくせに。まあ、良いわ。代わりに天誅を下してくれてたわけだし。その男、まだゴンドワナ?」
    ルナマリア「ええ」

    アグネス「最悪!!近寄らない方が良いわね。まあ、多分、グラディス隊で動くことが多くなるから、そんな機会無いだろうけどね」
    ルナマリア「それはそうね」
    メイリン「わざわざ会って、いやな思いしたくないですからね」
    かくして、男子の悪い噂は、はやてのごとく女子の間に伝わるのでした。

    アグネス「(それはともかく、時間があれば、マルベースやブルトンの人達とも挨拶・親睦を図りたいわね。そんな時間は無いかも知れないけど)」

  • 149二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 09:40:10

    ルナマリア「それで…。その…。ミネルバの方は?大破したと聞いて私…」

    ああ、心配してくれてたわけね。

    アグネス「あんたが知っての通りよ。今は旧アゼルバイジャン領バクーのドックの中だわ。クルーの大部分は旧ジョージア領ディオキアでザフト基地立ち上げのため現地部隊と協力中」

    クルーの戦死はあえて触れない。気が重くなるだけだし、ルナマリアも既に知っているでしょう。

    隣のメイリンも押し黙ってしまっている。そう言えば、この子の頭上で艦橋が吹き飛んだのよね。さぞ、びっくりしたでしょう。今更ながら、良く生きているわね、私達。

    その場の空気がずっしりと重くなってしまい、ルナマリアは慌てだす。うーん。私もそんなつもりはなかったのだけど。帰ったら自慢話、山程聞かせてやるつもりだったのに、何か喉に引っ掛かっちゃったわ。

    アグネス「(大破した艦と戦死した仲間。戦地に突き刺してきた銃剣がどうしても頭に浮かんでしまう。どうかしている。私はこういう人間ではないわ)」

    今がそういう気分でないだけ。ルナマリアが変な話題の振り方するからよ。後でしっかりたっぷり明るい方の話題を…。私の華麗な戦歴の数々と授与された勲章について、いっぱい聞かせてやるわ。

    ちょっと会話に間が出来たので、三人とも目の前の食事を食べることに専念。ムシャムシャ食べて、感想。

    アグネス「うむ。ミネルバの量も質もだいたい同じくらいね。やっぱり、軍隊は食事くらいしか楽しみが無いから、しっかりしているわ」
    メイリン「そうですね。流石にディオキアのホテルのディナーほどじゃないですけど」
    ルナマリア「ホテル!?どうだった?そう言えば議長とお話したのよね!?」

    おっ!この話題は食いつきが良いわね。

    アグネス「私のホテルは外見だけのパチモンだったわ。紅茶に茶菓子も用意しない。部屋はビジネスホテルに毛が生えた程度。メイリンの方は?」
    メイリン「そうですね。外見はちょっと簡素でしたけど、食事が凄く良かったです。ベッドもフカフカで」
    アグネス「茶菓子は?」
    メイリン「頼んでないのに持ってきてくださいました。コーヒーを頼んだ時に。サービスだと、町を解放してくれたお礼だと言ってくれて」

    そう!それがあるべき姿よ。やはりパチモンホテル許すまじ。-1000000000アグネスポイント。

  • 150二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 10:43:21

    アグネス、お前変わったな

  • 151二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 15:25:30

    レオナードって月光のワルキューレに出てきたフリーダム強奪犯か

  • 152二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 20:55:08

    思いっきりマイナスポイントを着けつつも、それ以上の悪口は自制する。

    アグネス「(仕事への愛が無い連中はどうせ自由市場原理の下では淘汰される。それに好意的に考えれば、従業員も余裕がなかっただけかもしれない。見送りの時の丁寧な態度に嘘があったとも思えない。今後に期待ね)」

    ホテルのサービスの話はさて置き、ルナマリアは議長との会見の様子も聞きたがる。

    ルナマリア「ねえ。議長はどんな方だっだ?」
    アグネス「…」
    この場で口に出すのは憚られる。表情を見て察して欲しい。

    顔面の全ての筋肉を使い『疑念』『批判』『嫌悪』の表情をルナマリアに示す。

    ルナマリア「ちょっとそれどういうこと…。いや、メイリン?」

    深く聞けないことを察したのか、自分の妹にも意見を求めるルナマリア。対してメイリンも私と同じ方法で姉に意思を伝達する。

    メイリン「…」
    『困惑』『疑念』『懸念』。私よりも少し大人しいもののどう見ても非好意的なメッセージ。

    私達の表情を見て、少しルナマリアが姿勢を正す。
    ルナマリア「…。なるほどね」

    『分かった。注意する』のサインを彼女の表情から読み取って一安心。流石にここで、ゴンドワナのど真ん中の食堂で議長批判は不味い。3人ともそれは分かっているわ。

    年頃の女子っぽい会話がしたいのに、これ何?本当…。
    アグネス「(私の会話回しが悪いの?いや、議長の問題は私のせいじゃないし)」

    メイリン「ああ、でもアスランさんはいい人だよ。ハイネ先輩も気さくで話しやすいお人柄で」

    それを聞き、ルナマリアがガバッと体を起こす。

  • 153二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 20:57:25

    ルナマリア「アスランって、あのアスラン・ザラね。フェイスで復帰した…。どんな感じ!?」
    アグネス「食いつきが良いわね。まあ、メイリンが今、言った通り『いい人』、善人よ。大業を成そうと志すなら、彼に助力を求めるべきね」
    ルナマリア「ああ…。そう言う系の人ね。残念」

    ちょっとウキウキした後、一気にダウナーになるルナマリア。私の言葉だけじゃ足りないのかメイリンに視線を振るが、メイリンも力強く頷き私に同意。ルナマリアはぺちゃんこになる。

    アグネス「(一級の人物だけど、あのコミュ力では…。まあ、そもそも彼はオーブからの変則的な出向みたいなものだし、順調にいけばアスハ代表の下に帰るわけで)」

    国際恋愛なんて面倒なだけよ。彼の場合、それ以前の問題だけれど。

    そんな話をしていると、ルナマリアは遂に核心的な事実に気づいてしまう。

    ルナマリア「と言うかグラディス隊ってフェイス2人?いや、グラディス艦長を含めればフェイス3人か。人間関係、すごく大変そう…」

    げんなりした表情になるルナマリア。彼女の顔を見て自分もガックリし始める。
    アグネス「(話す話題、話す話題、全部仕事になるわね。何か完全にプライベートがない感じ。任務直前だから仕方ないか)」

    取り合えず、自分と彼女に喝を入れる。

    アグネス「もう当事者よ。あんたも!私達が到着した瞬間から!」
    ルナマリア「そうだったわ…。実感が今、押し寄せて来た。どうしているの?普段」

    もっともな疑問ね。でも、これまで流れで騙し騙しやって来たから…。メイリンにアイサイン。彼女が頷き話始める。

    メイリン「まず、私達の直属の上官は副長だから。ブリッジ組もパイロット組も。黒服のアーサー・トラインさん。先ずはこの方の指示を聞いて…」
    アグネス「艦から出撃後は状況に応じてアスラン先輩の指揮に従ったり、艦長-グラディス艦長-の指示を仰いだりしてきたわ。今回に関しては…」

  • 154二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 21:05:31

    話しながら頭の中を整理する。誰が悪いと言う訳じゃないけれど、ザフト軍の体質と特務隊の仕組みの悪い部分が掛け合わさってすごく困るわね。

    アグネス「ええ…っと。特務隊タリア・グラディス艦長が、今回の作戦では『戦隊司令』的ポジション。グラディス『隊長』。副長はカーナヴォンの実質的な艦長として艦の指揮に専念することになると思うわ。マルベース、ブルトンはそれぞれの艦長の指揮下に。そして、私達パイロット隊はグラディス隊長の命令下で行動するのが多分正解のはず。二人のフェイスはオブザーバー?斜め上の上司ポジと思って」

    この辺り、階級制度を採り入れなかったことの弊害をもろに感じるわね。私の言葉に一先ずルナマリアも納得する。

    ルナマリア「分かったわ。でも、もしアスラン先輩やハイネ先輩が作戦中にフェイス権限を行使して矛盾した命令を出したら?」
    アグネス「知らないわよ!元々、想定されていないんだから。アスラン先輩にも国防委員会に問い合わせるよう頼んだけど、そんな暇なかったし。だから、いざとなったら流れよ、流れ」
    ルナマリア「流れって…。まあ、でも、そうね…」

    やることは戦闘哨戒任務で確定している。敵を探して、見つけて、ゴンドワナに報告を上げつつ、見敵必殺!これだけ。難しく考えすぎるのも良くない。
    ルナマリアと話をまとめながら、認識を共有しておく。結局、ミーティングに来たのか?私達は。

    楽しい(?)食事会の終り際、ルナマリアがふと尋ねてくる。

    ルナマリア「シンは元気にしている?」
    メイリン「元気よ。オーブにいた時はちょっと不安定でしたけど」
    アグネス「まあ、最近はそこそこね。何か巻き込まれた異質なのは相変わらずだけど…」
    ルナマリア「うん?」
    アグネス「海でおぼれてた女の子を助けて帰したら、後でその子が連合の強化兵、エクステンデッドだと発覚して。結構落ち込んでたわ。まあ、可能なら降伏させて治療する方針だと伝えられて今は納得しているけどね」

  • 155二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 21:15:28

    盛りだくさん過ぎる情報でルナマリアは目を白黒させている。
    ルナマリア「うん?…、ああ、なるほど?ね」

    そんな彼女の顔を見て、逆に少し冷静になることが出来る。
    アグネス「(多分立場が逆なら、私も混乱している。というより、今の十分混乱している。『今、混乱している』そのことをまず、自覚しなくては。良し、出来たわ)」

    アグネス「兎も角、目前の任務に集中しましょう。明日以降、敵艦隊を一隻でも多く捕捉し―」
    ルナマリア「これを撃滅せよ、当然、、これまで通り」
    メイリン「頑張りましょう!」
    アグネス・ルナマリア「おッー!」

    席で3人一緒に小声で「おッー」をして連帯を確認する。良し、大丈夫。困難な状況だからこそ同性同士協力せねば。ミネルバの日々で学んだことだわ。

    食事会の後、ゴンドワナから内火艇に乗ってマルベースに帰還するルナマリアを見送り、ようやく私とメイリンはカーナヴォンの自室に戻る。

    疲れた…。女子会のはずが…、食事会のはずが一気に疲れたわ。

    アグネス「(戻るというか初めて入るんだけど。やはり、ミネルバよりは手狭な部屋ね)」
    次々と起こる出来事、地上、宇宙、ゴンドワナと切り替わる景色。合間合間に挟まる小ミーティングと結構ハードなシュミレーター訓練。

    疲れているのはルナマリアのせいじゃない。もう完全に曜日感覚も昼夜の感覚もおかしくなり始めている。

    アグネス「メイリン、寝よう!おやすみ」
    メイリン「はい、寝ましょう!おやすみなさい、アグネスさん」
    アグネス「うん」

    慌ただしく明かりを消して、強引に瞼を閉じる。明日は明日の風が吹くはず。どんな風かは知らないけど。

  • 156二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 01:31:11

    ピピピピピ…。タイマーの音と共に起床!

    アグネス「おはよう。メイリン」
    メイリン「おはようございます。アグネスさん」

    短い挨拶と共に急いで制服に着替える。メイリンはブリッジに。私は栄養ゼリーを飲み干すとブリーフィングルームに。

    入室と同時にミネルバパイロット隊の皆とも手短に挨拶を済ませていく。シン、レイ、ショーン、デイル、甲板組の皆。

    アグネス「シン、昨日、ルナマリアに会って、あんたが元気か聞かれたから、いろいろあったけど元気だと伝えておいたわよ」
    シン「ああ…。ありがとう。ルナマリアは?」
    アグネス「元気よ。私達の悪口言ってくるアホを張り倒してくれたらしいわ。今回はマルベースに。力を合わせなくっちゃね」
    シン「ああ。うん。そうだね!」
    レイ「暴力は良くないが、ルナマリアらしいな」

    後から艦長、副長、ハイネ先輩、アスランが入室してきたので全員で起立して敬礼を交わす。
    モニターが点灯。マルベース、ブルトン両艦長とリモートミーティングが始まる。

    タリア「今から30分後、本艦カーナヴォンは母艦ゴンドワナを発進。マルベース、ブルトンと合流。戦闘哨戒任務を開始します。副長」
    アーサー「はい。現在、地球連合軍月艦隊はアルザッヘル基地を拠点に複数の艦隊、相当な数のモビルスーツ群が存在。月艦隊の内少なくとも第8と第3艦隊の存在は確認済み。他、複数の駐留艦隊、巡回艦隊が月軌道上を常時周回。今回の我々の主目的はこの敵巡回艦隊の撃滅である。第一目標は大西洋・ユーラシア混成艦隊。数30隻以上」

    モニターにすでに何度も見た青とブラウンのアガメムノン級が並走する光学映像。

  • 157二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 01:37:52

    アーサー「ザフト月軌道艦隊は開戦以来、敵艦隊と小規模衝突に終始して主導権を握ることが出来ずにいます。敵艦隊は不利を悟ると強固なアルザッヘル基地に撤退し、我らが去った後、再出撃」
    タリア「鼬ごっこね」
    マルベース艦長「いや、全く。ゴンドワナがあるとはいえ、宇宙を漂いながら見張りを続けるこちらと、しっかり月面に大規模基地を持っている彼方とでは勝手が違う」
    ブルトン艦長「だからこそ、ですな。特選されたモビルスーツ隊を乗せた快速艦ナスカ級3隻で油断している連合艦隊を一気に強襲。少なくとも1個艦隊は撃滅する、と」

    モニターの向こうの両艦長もこの作戦には乗り気みたいで何よりだわ。考えてみれば月軌道のにらみ合い、やはり不利なのはザフト側。マルベース艦長が言う通り、ゴンドワナは『謂わば』移動要塞、移動基地と言ったところで所詮1200m程度の宇宙空母。月軌道艦隊全てのフォローをするのは限界がある。ザフトは補給も休憩も敵前でプカプカ宙に舞いながら済ませるしかない。

    アグネス「(一方、連合軍はどっしり月の大地に陣地がある。膨大な補給物資を地下に蓄え、ある程度なら生産施設が存在する可能性すらある。安全安心な空間で兵士は休暇を楽しむことも可能。持久戦になったら息切れするのはこちら側だわ)」

    それなら、少数精鋭部隊で一気に強襲をかけ、片腕なり片足なりを捥いでしまおうということね。基地に逃げ込まれる前に。

    タリア「それ故に、今回の任務で我々は敵艦隊発見と同時に、ゴンドワナ・月軌道艦隊母艦隊との合流を待たず、攻撃を開始。敵艦隊を基地に逃げ込ませないことを最優先とします」
    アーサー「会敵予想ポイントはこれまでの索敵哨戒で割り出し済み。念のためマルベース、ブルトンにはジン長距離強行偵察複座型2機ずつ計4機を艦載。両艦には他ザク4機ずつ計8機を艦載中です」

    ハイネ先輩から、全員に捕捉説明が入る。
    ハイネ「ジンの武装は自衛用。戦闘時に攻撃防御に使用できる機体は、その8機のザクとカーナヴォンに乗っているセカンドシリーズ2機とグフ3機、ザク7機の12機。全部で20機の部隊ということになります。艦隊の直掩隊隊長は私がグフで、カーナヴォンのザク5機と共に」

    アグネス「(ハイネ先輩が甲板組を率いて直掩ね。でも、乱戦になったら厳しいかな。カバーしきれるか?)」

  • 158二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 01:45:55

    タリア「マルベース、ブルトンからも直掩にザク2機ずつを」

    艦長からモニターの向こうの両艦長に、提案とも命令とも取れる口調。こういう時の言葉の選び方は難しい。

    マルベース艦長「分かった」
    ブルトン「了解した」

    相手が通りの分かる人で良かったわ。年下の女性の艦長の言うことをちゃんと聞いてくれる。当たり前の事だけど、とてもありがたいわ。ムカつくやつはこんな些細なことでも勿体ぶるから。

    タリア「では、ハイネ。このメンバーで『ヴェステンフルス隊』を任せるわ」
    ハイネ「はい」

    これでヴェステンフルス隊結成ね。ふむふむ。『防御側』という言い方は適切じゃないけど、まあこちらの守りはグフ1機(ハイネ先輩機)+ザク5機(甲板組)+ザク4機(マルベース・ブルトンより)で計10機のハイネ隊。

    アグネス「(これがディフェンス、何とか10機で3隻。守り切りたいわね)」

    横に立つハイネ先輩から目線で促され、次はアスランが発言。

    アスラン「残りのメンバー、つまりセイバー、インパルス、グフ2機、ザク6機、計10機で奇襲を敢行する。このメンバーがザラ隊、隊長は私、アスラン・ザラが務める」

    モニターの向こうの二人も艦長の視線を受け頷く。
    アグネス「(ほう。ザラ隊長。何か新鮮な響きね。今回の任務限定の役職でしょうけど…)」

    モニターにそれぞれの隊の名簿が表示される。やっぱり、攻撃側のザクファントムに乗って行くのはショーンとデイルね。ルナマリアも赤いザクウォーリアでザラ隊に参加。

    アーサー「ただし、第一波で敵の戦闘能力が粉砕されない場合は、戦況の変化、エネルギーの消耗を考慮しつつ柔軟に対処する。今表示されているのはあくまで初期配置として認識するように。今回の戦闘では自軍より多数の敵との交戦を予定しているため、エネルギーの充電、シルエット・ウィザードの変更並びにその護衛のため、各機、着発艦を繰り返すことになる場合も想定しておくように」

    アグネス・一同「了解」

  • 159二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 01:50:53

    全パイロット起立。敬礼。艦長・副長・アスラン・ハイネ先輩・モニター越しの両艦長の返礼を受け、直る。モニターから両艦長が消えて合同ミーティング修了。

    退出する艦長・副長ともう一度敬礼を交わし、アスラン、ハイネ先輩と共にブリーフィングルームで待機する。

    ピリピリした緊張感を感じる。この感覚、生きているって感じね。
    アグネス「(中二病的意味で言っている訳じゃない。ここ最近、ゾンビみたいに戦ってばっかりだったから、新鮮に感じることばかりね。そう、元々ミネルバはこういった時のための艦だったのよ。思い出したわ)」

    肝心な時に地上にあるけど。仕方ない、大事なのは今。
    タイマーのカウントが遅く、永遠に近く、遥かに遠く感じる。勿論、錯覚だわ。ドンドン待ち時間は無くなっていく。

    ふと、脇で固くなっているシンを見る。何か言ってやろうか。シンと目が合った!!
    シン「何?!」

    気が立っているわね。当たり前だわ。皆そうでしょ。こんなときに言うことは一つ。
    アグネス「我らに天の加護をザフトのために!」
    シン「お…おう。ザフトのために」
    ショーン「ザフトのために」
    デイル・甲板組「ザフトのために」
    ハイネ「ザフトのために」
    アスラン「…」
    アグネス・シン・レイ・一同「ザフトのために!!!」

    皆の唱和をまるで待っていたかのように艦内放送が艦全体に響く。

    アーサー「カーナヴォン、発進シークエンススタート。本艦はこれより戦闘ステータスに移行する」
    メイリン「FCSコンタクト、兵装要員は全ての即応砲弾群をグレードワンに設定。本艦はこれより発進します。各員所定の作業に就いて下さい。繰り返します、本艦はこれより発進します。各員所定の作業に就いて下さい。パイロットはブリーフィングルームで待機してください」

  • 160二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 02:00:14

    アグネス「何か宇宙での発進シークエンスって久しぶりね」
    シン「そうだな」
    傍らのシンと会話、互いの声が弾んでいるのがわかる。レイと視線が交わる。お互い仕事モード、良し!

    手柄を上げる機会が欲しい私と違い、シンは戦争が楽しいわけではない。シンだけじゃない、認めがたいことだけど、私の心の中にすらそれを厭う気持ちがある。でも、それはそれ。今はすべきことがはっきりして、とても気分が良い。弓から矢が放たれようとしているみたいで、それが理屈を超えて心地いい。
    アグネス「(もっとも…。私は『矢』じゃないけど。勝って帰るから。アガメムノン級何隻も撃沈してネビュラ勲章欲しいわね)」

    タリア「これより本作戦を開始します」
    アーサー「機関始動。カーナヴォン発進する。コンディションレッド!」
    メイリン「カーナヴォン発進。コンディションレッド発令、コンディションレッド発令」

    ゴンドワナの船体から、カーナヴォンの艦首が宇宙空間にせり出していく。。艦前部…、艦後部…艦尾がゴンドワナから完全に離脱する。

    艦内放送で安全確認を伝える副長の声。
    アーサー「気密正常、FCSコンタクト、カーナヴォン全ステーション異常なし」

    ハイネ「良し!」
    一同「やったー!」「ははッ!」
    何か無性にはしゃぎたくなるわね。そんな状況じゃないことは分かっているけれど。

    アスラン「…」
    そして、アスランは何時もの難しい顔。もう、これがこの人の持ち味なのだと諦めるわ。

    ブリーフィングルームのモニターには、前方には合流を待つマルベースとブルトンの光学映像。マルベース内のブリーフィングルームにルナマリアも詰めていることだろう。

    アグネス「(『大漁』を祈念したいわね)」

  • 161二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 09:46:48

    クルーゼ隊にいた時のアスランもこんな感じでいつも仏頂面してたんだろうな

  • 162二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 20:51:53

    渦中にあったことで戦争をを厭う気持ちが芽生えたアグネス本当に変わったな
    しっかりシンのメンタルケアもこなしてる

    そしてザフトの為にとは言えないオーブ国籍のアスラン
    色々な事情が絡んだ結果だがややこしい所属だ

  • 163二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 21:52:19

    カーナヴォンは両脇にマルベース、ブルトンを従え全速力で会敵予想ポイントに突き進む。

    シン「ポイントに着いたら敵艦隊がいる…。とは限らないんだよんな」

    すぐ隣からシンの声。本人も答えは知っているだろう。

    アグネス「ええ。一応、これまで傾向から予想して、私達が到着、発艦が完了したタイミングで会敵するように時間は調整してあるけど。予想ポイントに敵がいない場合、ジンで偵察を。それでも見つからなければ、今日は空振りね」
    シン「我慢比べになるかも知れないのか…」
    アグネス「そうね」

    ただ、私はその点、あまり心配はしていない。確かに月での睨み合いはザフトに不利な部分も大きいが、アルザッヘル基地とて地球と補給線が切断されることを恐れているはず。貯め込んだ物資がいかに膨大でも駐留している戦力もまた膨大。基地内の自給自足など望めるべくもない。

    アグネス「(敵を漸減するために相手を探し回っているのは彼らも同じ。あるいは予想ポイントを『知られる』こと自体を予期してこれまで巡回を行っている可能性すらある)」

    艦内放送が流れる。
    メイリン「会敵予想ポイントまで後、30分。パイロットは搭乗機にて待機してください」

    12名が一斉に席を立つ音がする。私達は期待と不安が混じり合う不思議な顔をしながら、モビルスーツデッキに駆けて行く。

    アグネス「(空振りに終わるかも知れない…。動物の取材番組でもなかなかお目当ての動物が見つからず、スケジュールがどんどん押してきて…、というのが良くある展開じゃない)」

    皆でエレベーターに。流石に皆で乗るときつい。おしくら饅頭みたいになりながらモビルスーツデッキに到着すると、整備兵達と敬礼を交わしながら各自の機体の下へ。私はワインレッドのグフへ。

    ヴィーノ「キャットゥス500mm無反動砲だね」
    アグネス「そう。片手にシールドと無反動砲。片手にテンペストビームソード。無反動砲は止む負えない場合は投棄してくるから、その場合、戻ってきたら次の物を」
    ヴィーノ「了解」

    昇降機に乗り込みながらヴィーノと最後の打ち合わせ。コックピット座席に座ったら、機体を起動し、そのまま待機する。

    モビルスーツデッキ内を確認。ザラ隊の内、インパルスはブラストで出撃。出会いざまにモビルスーツ群を薙ぎ払ってもらう。

  • 164二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 22:07:51

    レイのグフの装備は私と同じ。ハイネ先輩は取り合えず無反動砲は装備しないそうだわ。ディフェンス側としてはそれが正解かもしれない。皆をフォローして回らなければいけないから。

    ザクはザラ隊、ヴェステンフルス隊に関わらず、ブレイズウィザード。機動力と、何よりファイヤビー 誘導ミサイルは重宝する。ビーム突撃銃を装備。ただ、ルナマリアだけは例外で、私の助言もありブレイズにファルクスG7 ビームアックスを装備してもらうことになったわ。

    アグネス「(ルナマリアはガナーが好きみたいだけど、今回の戦いは襲撃する側な訳だから、機動力が何より大事なのよね。そして、私の読みだとあの子に期待すべきは弾幕・制圧射撃か格闘戦のような気がするわ。狙撃が下手とまではいわないけど。今回の戦闘ではね)」

    まあ、アスラン・ハイネ先輩から話してもらったら納得してくれたわ。何より。頼りにしているんだから。

    自分の心の内で今の事態を考えてみる。議長は明らかに月での戦いに消極的だった。その理由を私は知らないけれど。今回の任務はアスランの上申もあり最高評議会が議長をせっついたから。私達に便宜を図ったのは艦長やレイへの思い故か、あるいは―

    アグネス「(保険をかけたのかな。もし、自分が反対した作戦が成功裏に終われば議長は立ち場を失う。それならいっそそちらに相乗りして、と言ったところかしら)」

    よせ、今考えることじゃない。今は―

    コックピットに通信。カーナヴォンブリッジより。

    メイリン「敵艦隊発見。アガメムノン級5、ネルソン級10、ドレイク級16隻以上。連合軍第8艦隊です。ザムザザー1機、ユークリッド10機以上を随伴しています」
    アグネス「(第8の方だったか…)」

    内心、心が小躍りしそうになる。戦闘への恐怖より、敵がいてくれたことの安堵と嬉しさが混ざった不思議な陶酔感が頭蓋骨の中を満たす。

    タリア「全モビルスーツ隊発艦開始。敵第8艦隊を撃滅せよ」

  • 165二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 02:17:27

    艦長の号令と共に止まっていた時が動き出す。
    メイリン「カタパルト推力正常。針路クリアー。全システムオンライン。発進シークエンスを開始します。セイバー、発進どうぞ」
    アスラン「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」
    メイリン「続いてインパルス、シルエットはブラストを装着します。進路クリアー。インパルス、発進どうぞ」
    シン「シン・アスカ、インパルス、行きます!」

    ザラ隊から発進が開始される。次は私。

    メイリン「続いてグフ、アグネス・ギーベンラート機。進路クリアー。グフ発進どうぞ」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、グフ、出ます!」

    ミネルバとは違う発艦方法、リニアカタパルトでまるで砲弾を打ち出されるようにカーナヴォンから弾き飛ばされる。

    メイリン「続いてグフ、レイ・ザ・バレル機-」

    先発したアスラン、シンの機体を追いかけ、さらに後続してくるレイ、ショーン、デイルと合流。マルベース、ブルトンから来たルナマリア機他3機のザクも加わり10機のザラ隊が揃う。後方ではヴェステンフルス隊の発進が続いている。

    アスラン「陣形は俺が中央を先行。シン、ショーン、デイル、ルナマリアはそれに続け。アグネスとレイのグフは左右両翼を。他3機は離れすぎず後に続け」
    アグネス・ザラ隊「了解」

    コックピットのレーダーに敵艦隊が表示される。数の多さに今更ながら背中がゾクゾクするのを感じる。

    アグネス「(この規模の艦隊戦…。未経験だ。私、中隊規模のモビルスーツ隊で連携して戦闘をするのも…。何時もは小隊規模)」
    そんなことに今気づくのか、何で!どうかしている。敵は目の前だ!向こうもこちらに気が付いて発艦シークエンスを開始しているのに。

  • 166二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 02:22:11

    アグネス「(もう脳内麻薬が引くのか…)」

    そもそも敵の精鋭である第8艦隊とのいきなりの戦闘は想定していなかった。想定していなかったのは私の思い込みだ!最初から想定されていた。迷うな!どうした?私はこういう人間ではない!

    アグネス「(もう、どのみち後戻りはできない。敵もこちらに気づいて発艦シークエンスを開始。ザムザザーとユークリッド10機、随伴モビルスーツ隊と陣形を組んでこちらに突進してくる!)」

    口の中が空からになる。これが恐怖…。敵を前にして怖いという感情を私が持つ日が来るなんて。

    アグネス「(信じられない…。私はエリートのはず。なぜ?!)」
    分からない。そんなものは雑魚の持つ迷いのはず。私に限ってそんな―

    カーナヴォンブリッジより通信!
    タリア「全モビルスーツパイロット及び全艦隊クルーに告ぐ。平常心を保って普段通り任務を遂行せよ。日頃の訓練の成果を十分に発揮するように」

    激励でも訓示でもない。普段の業務命令のような口調でグラディス隊長は皆に己の意志を伝える。それが、頭の中で起こりかけていたパニックを鎮静化させていく。

    訓練。そう、訓練通り。シュミレーター通りにやる。アガメムノン級もスレイヤーウィップで轟沈させられるわ!

    ザラ隊は敵艦隊、アガメムノン級高エネルギー収束火線砲 ゴットフリートの射程圏内に入る寸前になっても停まることなく猛進。

    こちらに向かってくる陽電子リフレクター搭載モビルアーマー群。ザムザザーの後方にウィンダム9機。ユークリッドの後方に3機ずつ。

    アスラン「シン、ブラストインパルス全力照射。ケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲、デリュージー超高初速レール砲で敵を薙ぎ払え!」

  • 167二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 02:28:33

    シン「でも…。はい!」
    号令と共にセイバーは高速飛行形態に変形。インパルスの広範囲攻撃を背中に受けるように突進してくる敵モビルアーマー、モビルスーツ群に向け、自ら突っ込んでいく。

    同時にブラストインパルスの広範囲攻撃が掃射される。
    ザムザザー、ユークリッドは機体を盾にビームシールドを展開、後背のモビルスーツを庇うが―

    突進したセイバーがインパルスの掃射から味方を庇ったザムザザーに肉薄、モビルスーツ形態に変形するやビームサーベルでコックピットを串刺しにして大爆発させる。

    それを皮切りに両軍の戦闘が開始。セイバーはザムザザーを撃破するや背後のウィンダムにアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲、スーパーフォルティスビーム砲をフルバースト。

    私とレイのグフは両翼で目前に来たユークリッドにアスランに倣って攻撃を敢行。

    機体を盾にして前傾した状態のユークリッドの脇腹をすれ違いざま攻撃。
    それを妨害しようと飛び出してきた随伴のウィンダム1機をキャットゥス500mm無反動砲で撃墜!さらに続いて飛び出してきたウィンダム1機を無反動砲を握ったままドラウプニル4連装ビームガンで撃墜!

    ユークリッドの死角を狙い通りテンペスト・ビームソードで切り裂き、飛び退き際、最後の随伴機にテンペストを握ったままドラウプニルで撃墜!

    ユークリッドの大爆発の閃光が二つ。もう一つは同じ方法で随伴機もろともに屠ったレイの手によるものだわ。訓練通りやれた!
    (カウントMS62 大型MA3 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    モビルアーマー・モビルスーツ混成群の先頭をアスラン、両翼を私とレイが砕き、元は大型モビルアーマー11機と随伴モビルスーツ39機であった混成群は最初の衝突の瞬間に8機と24機に数を減らす。そしてザムザザーとその随伴がセイバーに撃破されてできた空間を一気に突破したシンのブレストインパルスが反転。もう一度、今度は背後から、高エネルギー長射程ビーム砲と超高初速レール砲を広範囲一斉掃射。

  • 168二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 02:36:26

    眼の前で大爆発と爆発の閃光が弾け飛び、それが止むと残敵はユークリッド4機とウィンダム8機に。

    次の瞬間には赤いルナマリアのザクがすれ違いざまファルクスG7 ビームアックスでユークリッド2機を立て続けに撃墜しウィンダム8機にはザク4機のビーム突撃銃の連射が襲い掛かる。ショーンのザクは更にファイアビーミサイルを発射。一気に8機が宇宙の藻屑になる。

    私とレイは混乱の渦中にあるユークリッドを各々1ずつテンペストで撃破。
    (カウントMS62 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    アスラン「ハイネ。インパルスのエネルギーを補充させるため、ショーンのザクを護衛に付けてカーナヴォンに下がらせる。代わりに2機前に出してくれ」
    ハイネ「了解」

    セイバーはそのまま前進し、次々と前進してくるモビルスーツ部隊の前方を高速飛行形態に変形しアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲で薙ぎ払いながら指示を飛ばす。

    アスラン「シン、ショーン、聞いた通りだ。カーナヴォンでエネルギーとミサイルの補充を」
    シン「了解」
    ショーン「了解」

    私とレイもアスラン、セイバーに追いつく。アガメムノン級のゴットフリートが太い光線が何本も宇宙を横切る中、敵、モビルスーツ部隊は小隊ごとに突っ込んで来る。

    目前の3機。小隊長機に無反動砲を撃ちこみ撃破、更に両脇の2機をドラウプニルで撃墜。

    (カウントMS65 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    セイバーとグフ2機が捌ききれなかったモビルスーツが次々、背後に抜けていくが、後続するザク5機のファイアビーミサイルによって叩き落されて行く。

  • 169二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 02:38:13

    アグネス「(大体、今のミサイルの弾幕で10~15は落としたか)」

    他人のまで数えている暇などない。ゴッドフリートをよけながら次に接近してきたウィンダムの小隊3機。テンペストで右を切り裂き、中をドラウプニルで撃墜、背中を見せかけた左を返す刀で切り捨てる。
    (カウントMS68 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    アスラン「ザクのミサイルが切れている。ルナマリア、デイル以下一旦下がりミサイルと電力の補充を。ハイネ!」
    ハイネ「分かった。代わりにこちらのザクを行かせる!」

    後衛でもルナマリア達を通りこしたモビルスーツ隊を甲板組がビーム突撃銃で撃ち、ハイネ先輩がテンペストで切って回っているようだわ。

    アグネス「(ザク組は交代か)」
    ダガー隊が発射してくるミサイルの雨をドニウプニルで迎撃。目前に閃光が広がる中、見逃すことなく。無反動砲を撃ちこんで、1機、2機、3機と敵モビルスーツを撃ち減らす。

    (カウントMS71 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    セイバーはほぼ単機で戦術ユニットになったかのように敵モビルスーツ群を圧倒している。

    既に私達はアガメムノン級のゴットフリートのみならず、ネルソン級の大型ビーム砲の射程圏内に入っている。

  • 170二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 09:35:52

    カーナヴォンブリッジより通信。
    メイリン「後方警戒中のジンより緊急報告。グラディス隊後方より敵1個艦隊接近。敵の援軍です。ブラウンのアガメムノン級を発見。大西洋・ユーラシア合同混成艦隊です」

    アグネス「(『本命』のお出ましか。よりによって…)」

    タリア「こちらで対処します。ザラ隊は目前の第8艦隊に集中せよ」
    アスラン「了解」
    アグネス・レイ「了解」

    向こうにはハイネ先輩がいる。ルナマリアも今はそっちにいるはず!大丈夫。きっと!

    今は自分のなすべきことを!目の前に来たダガー3機。ビームライフルを躱しながら、接近。両手のドニウプニルを発射。2機を葬り、一機をテンペストで切り捨てる。

    (カウントMS74 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    アスラン「!アグネス、レイ。インパルスが戻って来た。射線から離れろ」
    アグネス・レイ「了解」

    後ろに回り込んできたウィンダムをテンペストで撃破しながら、更に隣のダガーをドラウプニルで撃墜。
    (カウントMS76 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6)

    ショーンのザクと共にブラストインパルスが敵モビルスーツ群の真ん前に急進。ショーンのザクファントムのファイアビーミサイル、ブラストインパルスの4連装ミサイルランチャーが近接しようとするモビルスーツを吹き飛ばす。2機は遂に第八艦隊を守る最後の直掩部隊の前に仁王立ちすることに成功。

    シン「うぉぉぉ!」
    ブラストインパルスのケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲、デリュージー超高初速レール砲が火を噴く。インパルスのフルバースト、広範囲攻撃!

  • 171二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 09:38:00

    敵の最後のモビルスーツ群。第8艦隊を守る直掩部隊が一度に吹き飛飛び、さっきまで隊列を組んでいたウィンダムを20個程度の火球に代えてしまう。

    命が一瞬で燃え尽きていくが感慨を抱いく間などない。直掩を失いがら空きになった艦隊にアスランと私、レイは突っ込んでいく。

    アスラン「インパルス、ショーンのザクファントムはカーナヴォン、マルベース、ブルトンの下に。ハイネの指示に従い、増援の混成艦隊の対処に当たれ」
    シン・ショーン「了解」

    シンのインパルスとザクが反転するのをモニターで確認しながら、グフに迫るドレイク級とネルソン級のミサイル群をドニウプニルで迎撃。

    大型ビーム砲を交わしながら、一気に急接近。

    ネルソン級1隻にキャットゥス500mm無反動砲を発射。命中!ネルソン級の下にいたドレイク級の対空砲火を躱しながらさらに無反動砲を発射。命中!

    宇宙護衛艦と宇宙戦闘艦が大爆発。更にその横のドレイク級にもう一発無反動砲を撃ちこみ爆散させる。

    (カウントMS76 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 ネルソン級1 ドレイク級2)

    アグネス「(宇宙艦を沈めるのは初か)」
    達成感を感じている余裕はない。ゴッドフリートの火柱がこちらに迫る。常に回避行動を続けていないと、半瞬後には自分が燃え尽きることになる。

  • 172二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 11:35:52

    格が違う
    やはりアスラン・ザラが最強か

  • 173二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 19:52:55

    宇宙じゃ地球の海上のような、浮かんでる人を救援する、なんてのも無さそうだよなぁ…救命活動が無い分、アグネスの精神疲労がキツそうだ

  • 174二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:03:35

    アスラン「アグネス、レイ。艦隊とハイネ達が危ない。手早く済ますぞ!ザラ隊に通達、残りはセイバー、グフ2機で対処。ザクはヴェステンフルス隊に再合流。ハイネの指示の下、味方艦隊と僚機を守れ」

    ネルソン級1隻とドレイク級2隻を大きな火球に変えながらアスランが指示と檄を飛ばす。
    アグネス「了解」
    レイ「了解」
    一同「了解」

    モニター上ではレイの側でも3つの大火球を確認。中央のアガメムノン級を守ろうとセイバーに向け2隻のネルソン級と4隻のドレイク級、数機のダガーが前進。
    レーダーからザク組が反転。遠ざかっていく。残りはこちらでやるしかない。

    レイの前にも3隻接近。私の目前にネルソン級1、ドレイク級2、ダガー2機接近。

    無反動砲でダガー1機、片手のドニウプニルでもう1機のダガーを撃墜。
    テンペストを握ったままドニウプニルをさらに連射し、接近してくるミサイル群を迎撃しながら3隻の宇宙艦に肉薄する。

    アグネス「(ドニウプニルすごいわね。他の武器を握ったまま使えるのが良い。本当に)」

    ネルソン級の艦橋付近に無反動砲を命中させ、ドレイク級をすれ違いざまに1隻、テンペストで切り裂き、もう1隻にドニウプニルを連続して命中させる。
    激しい閃光。大きな火球がまた3つ。暗黒の世界に数百の命が激しく燃え上がると一瞬で燃え尽きる。

    (カウントMS76 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 ネルソン級2 ドレイク級4)

    中央部ではアスランが敵艦をボコボコ撃沈させている。中央のアガメムノン級の5隻の内、3隻からこちらに向け、ゴッドフリート6本が発射され、巨大な火柱が、一瞬前に私がいた場所と半瞬後に進もうとしたポイントを焼き尽くす。

    不思議ともう恐怖を感じない。麻痺しているのか。ありがたい、助かるわ。

  • 175二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:05:48

    一旦テンペストをシールドに収め、キャットゥス500mm無反動砲をグフの肩に当て、一気に加速する。アガメムノン級5隻のうち先頭の1隻は既にセイバーに轟沈させられている。レイはネルソン級とドレイク級を始末して、同じく艦隊中央に突進してきている。

    右端のアガメムノン級に急接近、ドニウプニルでミサイルを迎撃し、対空機関砲を沈黙させ、艦橋から艦底に斜めに撃ち下ろすように無反動砲を発射。急速離脱、これまでにないほどの大爆発の衝撃を後ろから感じながら、最後尾のアガメムノン級に突撃する。中央のアガメムノン級はアスランが沈め、左端のもレイが切り裂いている。

    艦隊後列のネルソン級3隻とドレイク級4隻は味方の救援を諦め離脱を図っている。

    アグネス「(そうはさせない!)」

    眼下のアガメムノン級に無反動砲を撃ちこみ、更に艦橋部にスレイヤーウィップを叩き込む。背後の大爆発をレーダーで確認しながら、背中を向けているネルソン級に急迫し、無反動砲を真後ろスラスターから抜けるように撃ちこむ。
    前方での爆発を視認。
    (カウントMS76 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級2ネルソン級3 ドレイク級4)

    アスランのセイバーは追い抜きざまにネルソン級とドレイク級3隻を轟沈させ、レイのグフもネルソン級を沈める。私も目の前のドレイク級に無反動砲を撃ち、爆散させる。

    (カウントMS76 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級2ネルソン級3 ドレイク級5)

    レイが最後の1隻をテンペストで切り裂き、第8艦隊は再びC.E.から消滅した。

    コックピットに通信。アスランから。
    アスラン「カーナヴォンブリッジ。こちらザラ隊。第8艦隊殲滅完了」
    タリア「分かったわ。補給を済ませに来なさい。ハイネとインパルスがこちらを凌いでくれている」

    良し。帰る艦は、まだあるわね。

    アスラン「了解。アグネス、レイ。即時、反転。カーナヴォンに帰還する」
    アグネス・レイ「了解」

  • 176二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:08:53

    カーナヴォンに接近、着艦を目指す。レーダーと光学映像を確認。艦は3隻とも無事。敵味方識別反応によればモビルスーツ隊も全機生存。

    アグネス「(これが『緋蝶』ハイネ・ヴェステンフルス!敵機を落とすよりも僚機を落とさせないことは難しいというのに)」

    元々、皆が強い、ということを割り引いても、急な敵の増援にここまで対処できるのは途轍もないことだわ。

    ルナマリアを含む6機のザクがガナーに装備を変え、遠距離から敵を砲撃している。ファイアビーミサイルの補充を受けたザクが8機、再発艦を完了。戦線に復帰していく。

    アグネス「(味方艦隊付近に無数のダガー、ウィンダムの残骸が浮遊している。第一波を凌いだ直後か)」

    いや、カーナヴォン等3隻のナスカ級は敵艦隊に向け、高エネルギー収束火線砲を撃ち放ちながら速度を上げつつ前進している。ナスカ級と敵艦隊の間にも多数のデブリ。ブラストインパルスの広範囲攻撃の後だわ。

    アスラン「カーナヴォンブリッジ、セイバー、グフ2機。着艦の許可を」
    メイリン「着艦を許可します」

    艦内にインパルス、急速充電中。ショーンのザクファントムも。セイバー、グフに電源が差し込まれ、エネルギーが急速に満たされて行く。

    アスラン「ブリッジ。状況を」
    タリア「バート。報告を」
    バート「はい。敵艦隊は例の混成艦隊、アガメムノン級3隻、ネルソン級10隻、ドレイク級20隻。敵第一次攻撃隊はヴェステンフルス隊が撃滅。インパルス、ザクファントムが敵前衛を薙ぎ払いモビルスーツ30機以上を撃墜。現在はこちらが攻勢に出ています」
    アスラン「了解」

  • 177二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:13:57

    コックピットのモニターから戦況を確認。ナスカ級から光の槍となって伸びる高エネルギー収束火線砲に焼き尽くされるダガー、ガナーに換装したザクのオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲の直撃を受け爆散するウィンダム。

    光の嵐を潜り抜けてウィンダムの編隊がナスカ級に急接近してくるが、さっき出撃したブレイズザクのファイアービーミサイルで10個の火球になり、ミサイルを迎撃しつつ接近しようとした敵機はハイネ先輩のグフのドニウプニルとテンペストの餌食になる。

    アグネス「(不思議なものね。宇宙の大規模艦隊戦は何て言うか、もっと白熱しているものだと思っていた。この奇妙なほどの淡々とした静けさは何だろう)」

    コックピットにブリッジより通信。
    メイリン「シン・アスカ機、インパルス充電完了、ショーン機、ザクファントム充電完了。アスラン・ザラ機、セイバー充電率32%、アグネス・ギーベンラート機、グフ充電率61%、レイ・ザ・バレル機、グフ充電率67%です」
    タリア「インパルス、ザクファントム発艦シークエンス開始。アグネス、レイ行ける?」

    微妙な充電率。しかし、戦場は生き物。味方有利の流れを止めるわけにはいかない。

    アグネス「再出撃可能です。ギリギリまで充電をお願いします」
    レイ「アグネスと同意見です」

    タリア「分かった。インパルス。ザクファントムに続いて発艦を。アスラン、それで良い?」
    アスラン「はい。アグネスとレイは出撃後、ハイネの指示に従え」
    アグネス・レイ「了解」

    コックピットのモニターにまたも閃光多数。こちらに迫った敵編隊にファイアビーミサイルの一斉攻撃が命中。ビーム突撃銃も命中している。勿論、高エネルギー長射程ビーム砲も。皆、戦闘に慣れきっている。

    ハイネ「カーナヴォンブリッジ。ブレイズザクのミサイルが枯渇。一時収容、弾薬補充を」
    タリア「了解。収容前に発艦を、メイリン」
    メイリン「はい。カタパルト推力正常。針路クリアー。全システムオンライン。発進シークエンスを開始します。インパルス、シルエットはブラストを装着します。発進どうぞ」
    シン「シン・アスカ、インパルス、行きます!」

    エネルギーとミサイルを満載したインパルスがカタパルトから打ち出されて行く。

  • 178二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 00:43:58

    メイリン「続いてザクファントム、ウィザードはブレイズを装着します。発進どうぞ!」

    ショーンのザクが出た後はレイ、その次が私。充電が足りないものが最後。発艦シークエンスは続く。
    レイ「レイ・ザ・バレル、グフ、発進する!」

    充電率を確認する。
    アグネス「(71…、72%か)」

    メイリン「続いてグフ、アグネス・ギーベンラート機。進路クリアー。グフ発進どうぞ」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、グフ、出ます!」

    カーナヴォンのカタパルトから弾き出され、シンのインパルスとショーンのザクファントム、レイと私のグフ、2機ずつ編隊を組む。

    アグネス「ハイネ先輩、切り込みますか?」
    ハイネ「ああ。ガナーの一斉掃射後に―」

    グラディス隊3隻が前進し続けているため、既にこのポイントもゴッドフリートの射程圏内だ。

    ハイネ「ガナーザク、一斉射撃開始」
    ルナマリア他5人「了解!」

    オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲から吐き出される6本の太い光線が敵編隊をかき乱す瞬間を待ち、私達は一気に敵モビルスーツ群に突進、浸透を図る。

    インパルスが最も効率よく敵を撃ち減らせるポイント―つまり、最も敵から狙われるポイント―に到着。

    ケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲、デリュージー超高初速レール砲発射しようとする直前、その背後に回り込もうとしたダガーが6機!ショーンのブレイズザクファントムのファイアビーミサイルが彼らを撃墜する。

  • 179二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 00:47:19

    下に回り込もうとしたウィンダム2機をレイがドニウプニルで撃ち落とし、上を取ろうとしたウィンダム3機には私が対応する。

    シン「行っけー!!」
    ブレストインパルスが球を描き回転しながら全火力の一斉斉射を開始、私達はインパルスの背中を狙う敵機を撃ち落としながら、シンと追いかけっこをするように敵艦隊のど真ん中で同じく球をなぞる。

    ドニウプニルでさらに迫る先頭のウィンダムを撃墜し、無反動砲でその後ろのウィンダムを撃墜、脇に回り込もうとした一機はスレイヤーウィップを巻き付け爆散させる。

    (カウントMS84 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級2ネルソン級3 ドレイク級5)

    ブラストインパルスの一斉射は前方の20機、後方の15機、上方の20機、下方の28機を薙ぎ払う。83人分の命が一瞬で燃え尽き、インパルスは一斉射後にフェイズシフトダウン寸前までエネルギー残量が目減りする。

    アグネス「ショーン、シンを連れてカーナヴォンに。私とレイはこのまま突進。ゴットフリートを黙らせないと持たない。ハイネ先輩!」
    ハイネ「それでいい!アガメムノン級を黙らてくれ」
    アグネス・一同「了解」

    シンとショーンのインパルスとザクファントムが反転、転進し、私とレイは反対にナスカ級とガナーザクの援護射撃を受けつつ、アガメムノン級3隻に肉迫を図る。

    前方、左右、上、下で敵モビルスーツが弾けて閃光となり消えていく。味方の援護のたまものだわ。

    立ちふさがろうとするダガー隊6機をドニウプニルで乱れ撃ちにし、死にぞこない2機をテンペストで切り捨て、ネルソン級とドレイク級のミサイルを迎撃、火砲を躱しながら奥さらに奥に浸透。
    (カウントMS90 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級2ネルソン級3 ドレイク級5)

    アグネス「(ネルソンとドレイクは後回し、ゴットフリートを黙らせる)」

  • 180二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 00:51:37

    しかし、話はそんなにうまくはいかない。前方を遮るようにネルソン級3隻、ドレイク級4隻がミサイルと大型ビーム砲を雨のように、いや、雷の束のように撃ちこんで来る。

    ミサイルを2機のグフで迎撃しながら、必死で回避飛行を行い、レイと私両方が同時にネルソン級1隻に無反動砲を撃ちこみ、ドレイク級にスレイヤーウィップを叩き付けて突破する。
    (カウントMS90 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級2ネルソン級4 ドレイク級6)

    後方ではついにナスカ級の120cm単装高エネルギー収束火線砲が3隻のネルソン級と2隻のドレイク級を捕らえ、爆散させている。
    ガナーザクウォーリアのビームがさらに2隻のドレイク級を撃沈。

    ほぼ同時に私とレイはアガメムノン級各々1隻に取り付き、艦橋最下部付近を目がけ無反動を撃ちこみ、更に前進し、後部スラスターからも砲撃を加え、2つの大火球を発生させる。

    (カウントMS90 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級3ネルソン級4 ドレイク級6)

    最後に残された1隻のアガメムノン級を守ろうと駆けつけて来たウィンダムとダガー12機、ネルソン級1隻、ドレイク級2隻。

    はるか後方ではハイネ先輩がエネルギー補充のため、着艦。入れ替わりにアスラン、セイバーが発艦、高速飛行形態でこちらに向かってくる。

    ガナーザク隊も次々と各艦に攻撃を開始、ネルソン級1隻、ドレイク級4隻が瞬く間に轟沈する。

    目前に来た私とレイはウィンダムを3機ずつ撃墜。私は前進してアガメムノン級をレイは残りの直掩隊の相手を受け持つ。

    (カウントMS93 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級3ネルソン級4 ドレイク級6)

  • 181二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 01:04:08

    ネルソン級とドレイク級の艦列の内、ドレイク級1隻の船体中央にドニウプニルを集中して命中させて轟沈!
    他の艦の火砲をよけ、アガメムノン級から、こちらに吹き出されるゴットフリートを潜り抜けると彼の艦の艦底に潜り込むことに成功。

    テンペストを引き抜き切り裂きながら、後ろに抜けて、この巨艦のスラスターに無反動砲をぶち込み轟沈させ、遂に味方をこの艦の主砲の恐怖から解放する。
    (カウントMS93 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級4ネルソン級4 ドレイク級6)

    アスラン「良し。アグネス、残りのエネルギーは?」
    知らぬ間に、すぐ後方まで達していたセイバーからコックピットに通信。私に声をかけると同時にセイバーはアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲を発射。グフの脇腹を狙っていたドレイク級を轟沈する。

    アグネス「あと34%です」
    アスラン「了解。継戦を」
    命令を下すと同時にスーパーフォルティスビーム砲と高エネルギービームライフルを撃ちこんでネルソン級を追加で撃沈する。

    アグネス「(上官がこれでは断れないわね)了解!」」
    レーダーで確認すると、艦長達ナスカ級の砲撃でネルソン級1隻、ドレイク級2隻が轟沈。

    後方からのルナマリアの砲撃でさらにドレイク級が撃沈、追いついてきたデイルはドレイク級のブリッジに至近距離からビーム突撃銃を撃ちこむ。

    暗黒の闇に数百の命が一瞬の灯となり、直ぐに消えてしまう。

    甲板組を始めとしたザク組のファイアービーミサイルとビーム突撃銃が僅かに残っていたモビルスーツの残敵を閃光に変えるなか、高速飛行形態のまま艦列を抜けたセイバーの全力照射がネルソン級とドレイク級、そして最後の直掩モビルスーツ数機を吹き飛ばす。

  • 182二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 01:22:21

    私は目前のネルソン級を無反動砲で撃沈。両脇で護衛していたドレイク級の片側にスレイヤーウィップを叩き付けて爆散させ、残りの一隻をテンペストで刺し貫いて、ドニウプニルを撃ちこみ止めを刺す。後方でレイがほぼ同時に最後のドレイク級を沈め、艦隊の殲滅を達成する。
    (カウントMS93 大型MA4 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母3
    イージス艦2 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級4ネルソン級5 ドレイク級8)

    アグネス「(エネルギー残量、29%。肝が冷えるわね)」

    艦隊の殲滅は成功。空恐ろしい沈黙がコックピットを襲う。

    アグネス「(一体、何名?)」
    今日の戦いで奪われた、奪った命を考えずにはいられない。私は聖人君子ではないし、出世も勲章も望む人間だが…。

    タリア「皆、よく頑張ったわ。この宙域での戦闘は現時刻をもって終了。信号弾上げ」
    アーサー「はい。信号弾発射」

    カーナヴォン、マルベース、ブルトンから美しい花火のような光が何発も撃ちあがる。
    そんな情景を私は何処か現実離れしたもののように眺める。

    アグネス「(第8艦隊はアガメムノン級5隻、ネルソン級10隻、ドレイク級18隻と判明したわ。混成艦隊の方はアガメムノン級3隻、ネルソン級10隻、ドレイク級20隻…)」

    連合の宇宙艦の定員を私達は正確には知らない。アガメムノン級は宇宙母艦、ネルソン級は
    宇宙戦闘艦、ドレイク級は宇宙駆逐艦。仮にパイロットを含めた人員がそれぞれ1000人、300人、200人程度だと想定する。アガメムノン級8隻で8000名、ネルソン級20隻で6000名、ドレイク級38隻で7600名、計21600名の命がこの宙域でたった半日足らずで吹き消されたことになる。それをどう思うべきだろう?

    アグネス「(第一次の西部戦線ならよくあること、とでも思うべきなのだろうか…)」

  • 183二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 10:41:29

    半ば呆然自失に近い精神状態を打ち破るようにコックピットに通信が鳴り響く。
    セイバー、アスランから!

    アスラン「全パイロット!気を抜くな。別艦隊からの再攻撃があるかも知れない。それに連合軍にはミラージュコロイド装備艦、ガーティ・ルー級がいるんだぞ!艦長!」

    こんどはカーナヴォンブリッジ、艦長-グラディス隊長-より通達。

    タリア「全艦、全パイロットへ。ザラ特務隊員の言うように最後まで注意を怠るな。ジン長距離強行偵察複座型、全機発艦せよ。周辺宙域の警戒を。エネルギー残量が少ない機体は即時に着艦を。カーナヴォン、マルベース、ブルトンはガーティ・ルー級の襲撃に備え熱紋センサーも併用しつつ敵探査、艦は回避運動を続けるように」

    マルベース、ブルトン両艦長「了解」
    全パイロット「了解」

    タリア「エネルギー残量が60%以上の機体は敵の捜索救助を。撃墜したミビルアーマー、モビルスーツでコックピットが無事だったもの、撃沈した艦で区画封鎖が間に合った艦が存在するかもしれない。救命艇、シャトル、脱出ポッドの捜索救助活動も実行せよ」

    全パイロット「了解」

    タリア「国際救難チャンネルに接続『こちらはザフト月軌道艦隊所属グラディス隊。地球連合軍に通達。本隊は現在、連合兵の捜索救助活動中。攻撃を控えられたし』」

    アグネス「(果たして生存者はいるのだろうか?いたとしても…。いや、そういう姿勢を示し続けることも意味があるのだわ)」

    私はグフをカーナヴォンに。急いでエネルギーの補充を行い、捜索救命活動に参加しなくては。

  • 184二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:04:37

    保守です

  • 185二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:31:45

    カーナヴォンに帰投。途中、同じくエネルギーが消耗していたレイのグフと合流し、互いに庇いあいながら着艦。
    ヴィーノやヨウラン達、整備兵の皆が出迎えてくれている。グフを一旦降りないといけない。充電中は乗っていても仕方ない。

    アグネス「(何でだろう…。降りたくない。誰かに声をかけられるのが恐い)」

    腹立たしいわ。凱旋パレードに憧れることは有っても、歓声に怯えることなど、アグネス・ギーベンラートにあって良いはずがないじゃない!!

    急いで、コックピットの内でヘルメットを脱ぐ。汗に濡れた髪がもっさり飛び出し、気持ちが悪い。でも、やっと新鮮な空気に顔が触れたような気がする。

    アグネス「(気がするだけね…。実際はコックピットの中の密閉された空気だから)」
    マインドフルネス。私は皆から褒められるべき立派な行いをしたのよ。責められる謂れなどない。いつも通りの戦闘、何時も通りの帰還よ。
    アグネス「(良し)」

    隣のグフからレイが下りるのとタイミングを合わせて、同時にモビルスーツデッキに着地。
    ヴィーノ「アグネス、レイ!ほんとにすごいよ二人とも!」
    ヨウラン「ああ!みんな頑張ったし、アスランさんやハイネ先輩、シンもすごい。でも、二人がいっぱい敵艦沈めてたもんな!こりゃ、もう絶対勲章もんだよ!」

    パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。
    カーナヴォン整備班の拍手が鳴り響く。こんな時に言うべきことは決まっている。

    アグネス「ありがとう。本当にみんなのお陰よ」
    レイ「皆、整備。ありがとう」

    ヴィーノ「うん」
    ヨウラン「おう!」

    パチパチパチパチ!パチパチパチパチ!パチパチパチパチ!!
    気分がふっと軽くなる。徐々に喜びに満たされながら、隣に視線を移すと、私を見つめるレイと視線が合う。珍しい、微笑みかけてくる。私にレイが!

    礼儀として微笑み返す。確かにこの場にこいつがいてくれて良かったわ。もし、私一人だったら、皆の歓声に私は押しつぶされていただろう。耐えきれなかったかもしれない。

  • 186二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:45:19

    アグネス「(まあ、私とレイがたくさん敵艦を沈められたのは、主にアスラン、シンが前衛のモビルアーマー・モビルスーツを吹き飛ばし、蹴散らしてくれていたからなんだけどね。それと、ハイネ先輩が後方でバサバサ斬ってくれていたし)」

    とは言え、やはり拍手で迎えられるのは嬉しいわね。コックピットから出る前は他の人の顔を見る気にもならなかった。

    そのまま、レイと二人でブリーフィングルームに入室。少し休憩。アスランとハイネ先輩そして、甲板組とルナマリア達ザク組は現在、探索救助活動中。

    シンのインパルスも彼らと一緒。カーナヴォンに戻る時、すれ違ったわ。フォースシルエットに換装していた。

    アグネス「しかし、こうして考えるとデュートリオンビーム送電システムは偉大ね。正直、費用対効果にあっていないとさえ思っていたのに」

    何か言ってやろうと思ったが、結局仕事の話しか思いつかないわ。こいつとは。

    レイ「シルエット換装システムもな」
    アグネス「そっちは専用カタパルトじゃなくても使えるようになってほしいわ」
    レイ「確かに」

    それはレイとて同じ。元より(多分)生まれも、育ちも、政治上の立場すら違う。アカデミー時代からずっと険悪な間柄だったわ。

    ただ、今日、グフで混成艦隊に突入した時、無我夢中だったけど、それでも生きているのはこいつのおかげ。こいつが生きているのは私のおかげ。そして、さっき一緒にデッキに下りててくれたこと、下りてあげたことに互いに感謝している。

    本当にただそれだけのこと。

  • 187二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:50:59

    アグネス「(しかし、充電の都合で二人きりとは。ザク組はミサイルの補充のためにちょくちょく着発艦して、その度、こまめに充電していたからね。途中からウィザードをガナーに換装した機体もオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲は付属タンクのエネルギーを使うから…)」

    だから、実は皆、けっこう稼働時間が残っている。セイバーとハイネ先輩はタイミングが良かった。というか合わせて交代して戦っていたわけだし。そして―

    アグネス「(ヘロヘロになっていたグフ2機は仲良く充電中と)」

    ふと、視線を感じるとレイが私の横顔を見つめている。
    アグネス「なに?」
    レイ「元気が戻って何よりだ」
    アグネス「元から元気よ!」
    レイ「そうか」

    見透かされているようで腹が立つけど。こいつがいたおかげで気合が戻ってきたのは本当のことだわ。

    今もそう。傷をなめ合う相手じゃなく、殴り合う相手が隣に降りて来てくれたおかげで、ギブアップせずに済んでいる!こいつには弱ったところを見せたくない。

    何て言うのは半分、空元気。もう半分の本音は―

    アグネス「(本当に助かったわ。虚無感や絶望感に飲まれかけていた。さっき私を救ってくれたのは、ヴィーノやヨウラン、整備班の人達と憎たらしい同期のレイ。精神が砕けそうだった)」

    しっかりしろ!今日の働きでネビュラ勲章貰えるかもしれないんだから!ついでに救助活動頑張って人道記章ゲットよ。

    ブリーフィングルームのモニターに通信。
    マッド・エイブス「グフ、両方とも充電率65%を超えたぞ」
    アグネス「了解。出ます。準備をお願いします」
    レイ「同じく。お願いします」
    マッド・エイブス「分かった」

  • 188二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:58:07

    少しずつ、少しずつ、メンタルの均衡を取り戻していく。自分の都合はあくまで自分の都合。そして、私を守れるのは私だけ。他人の助けを適宜借りるとしても基本的には。

    メイリン「進路クリアー、グフ、発進どうぞ」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、グフ、出ます!」

    充電率67%でカーナヴォンを発艦。自分達が作ったデブリをかき分けながら、任務を遂行。
    これらの残骸はやがては月の引力に惹かれて月面に落ちていくことになる運命。

    アグネス「(月軌道上での会戦だから当たり前だけど、それでも何か不思議な気がするわね)」

    そう思うとなぜか心が安らぐのを感じる。ここで閃光となって燃え尽きたモビルスーツも宇宙艦も、そして彼らの亡骸も。永遠に冷たく暗い宇宙空間を彷徨い漂う訳じゃない。

    ちゃんと帰る場所、迎えてくれるところがある。母なる星のきょうだい星。遥か先祖が見上げ続けた人類にとって最も身近な天体。それだけで―

    アグネス「(救助ビーコンを受信!)」
    アグネス「アスラン先輩。救助ビーコンの受信を確認」

    第8艦隊方向は彼の指揮下になっている。コックピットモニターに、何時もにも増して難しい顔になっている彼の顔が映る。状況にそぐわないのは承知の上だけど思わず吹き出しそうだわ。テンションがグチャグチャになっている。

    アスラン「確認した。向かってくれ。周辺に注意を」
    アグネス「了解」

    グフのスラスターを微調整しながら、発信元に進んで行く。大破したダガーを視認。両足と両肩より上部が欠損。両腕も捥げて、良く誘爆しなかったわね。日頃の善行か前世の徳によるものか…。

  • 189二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 23:01:51

    アグネス「(ただの戦場の運ね)」

    ここで死んだ者が悪人だったわけでも、私達が善人だったわけでもない。ただ、今日はその日ではなかった。願わくば次の戦場もそうであって欲しい。

    グフのコックピットから目前の大破したダガーに通信を試みる。
    アグネス「国際救難チャンネル。当機前方の連合軍ダガーへ。貴官の勇戦に敬意を表します。これより救助を。応答は可能ですか?」

    コックピットに返信あり。
    ダガーパイロット「救援に感謝を…。機内で飛び散った破片が腹部に。幸いコックピットの気密は保たれている」
    アグネス「分かりました。大丈夫。貴方は助かります。重症ですか?」
    ダガー「ほどほど…、かな。応急処置はした。で、ここからどうする?」

    いかにも痛みに耐えている、と言った声が聞こえる。良し。痛い内なら平気だわ。声にも力がある。生きようとする意志が。

    アグネス「コックピットの機密が保たれているなら、機体ごと母艦に運びます。多少揺れますよ」
    ダガー「優しく運んでくれ。十分痛い思いはしたから」
    アグネス「努力します」

    図々しいわね。まあ、良いわ。ちゃんと身体を治して、捕虜交換で役に立ってもらわないと。

    アグネス「(いや、情報を聞き出すのが先ね)」
    ダガーの後ろに回り、誘爆の危険や機体の強度を確認後、グフの両腕でがっつりホールド。カーナヴォンに向け慎重に急いで帰還していく。
    今日の私の任務はあと少しだけ続くようだわ。

  • 190二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 07:01:27

    ザフトにとっては大戦果だけど、連合にとっては大惨事…かなりメンタルにきてるなあ。
    アグネスは最後まで戦い抜けるのだろうか。

  • 191二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 09:23:38

    戦闘規模で言ったらレクイエム中継ステーション攻防戦クラスの大決戦に…
    本編であの時ジュール隊とかと交戦したのも第八艦隊だったはずだし

  • 192二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 21:21:23

  • 193二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 21:45:52

    ゴンドワナに帰還。戦闘に参加したカーナヴォン、マルベース、ブルトンはドッグ入り。私達は旗艦に足を踏み入れ、兵舎、というか宿泊スペースに向かう。

    連合捕虜もここで降ろす。負傷兵はゴンドワナの軍病院へ。生存者を何とか2000名程、拾ってきた。

    アグネス「(おかげで艦内がぎゅうぎゅう詰め。ナスカ級のベイロードを完全に超えている。戦時下の疎開船のようなありさま。ゆっくり休むスペースも時間も無かったわ)」

    二万数千名のなかの2000余名。これを多いと見るかどうかは人それぞれだと思う。連合の再攻撃の心配もあり、長居は出来なかったわ。後は彼らに任せるほかない。もう、残りがそんなにいるとも思えないが…。

    アグネス「(撃沈までに艦を離れられた救難シャトルが何隻も有ったのは幸ね。戦況が連合不利になった時点で勘の良い艦長達はそれぞれ独断で傷病兵、年少兵、一人っ子の兵、老兵、非戦闘職種兵(特に女性兵)達を前もって脱出させ始めていた。気づかずに誤射しなくて良かったわ)」

    戦場の混乱と異常な精神状態で、今から振り返ると私達―というか私-は完全に視野狭窄に陥っていたと思う。

    イザーク先輩の失敗は繰り返すわけにもいかない。本当は事前に通告してからにして欲しいところだけど、そんな余裕はお互いになかったわ。そこは紳士協定というか戦場における騎士道精神が頼りだろう。お互いに…。

    アグネス「(戦争が絶滅戦争まで移行していた時、果たしてそこまでの気持ちを維持できるだろうか…。第二次世界大戦時、それでも時に上官や総統の意に反してまで勇気ある行動をした現場指揮官や兵士の逸話がC.E.にも伝わってこそいるが…)」

    その場になって見なければ何とも断言できない。実際、当時、非人道的命令に抗命した兵士の殆んどが咄嗟の判断によるものだったと後年、判明している。

    そんな判断を迫るような上官の下に配属されなくて本当に良かったわ。前大戦の教訓もまだ現場に残っている。

  • 194二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 21:54:44

    しかし―
    アグネス「ゴンドワナの兵舎。広い!最高!!」
    ルナマリア「あんたね…。ミネルバも十分広いでしょう!こっちなんかナスカ級よ。ゴンドワナで休憩できる順番が回ってくるまで長いんだから…」
    メイリン「まあまあ。お姉ちゃん」
    ルナマリア「メイリン…。あんたもそっち側よ!」
    メイリン「そんなひどい!」
    アグネス「僻まないでよね!」
    女性士官用宿舎でパタパタ扉を開け閉めして、私達は修学旅行の学生のようにはしゃいでいる。何と一人部屋だわ!私達は三人隣の部屋。枕投げは流石にできないわね。

    戦闘と救助活動の緊張感から解放され、脳内物質が異常分泌されて、皆テンションがおかしくなっている。他の女性士官たちもルンルン気分なのが向こうから伝わってくる。
    そして―修学旅行には怖い先生がつきもの…。
    タリア「貴女達!!そんなに元気が有り余っているなら…」

    眦を吊り上げた艦長-隊長-が出現!プラント本国軍本部と月軌道艦隊母艦隊司令部に報告を上げて、自分も宿舎に来たんだわ。上級士官のスペースは別なのに!
    アグネス・ルナマリア・メイリン・一同「申し訳ありません。大人しく寝ます」

    私達3人と付近の部屋の女性士官が、急いで部屋から飛び出し横一列でビシッと敬礼!
    艦長は少し呆れたような、優しい眼差しを私達に注いでくれる。
    タリア「はぁ~。よろしい。今日はよく頑張ったわ。疲れをしっかりとりなさい」

    アグネス「(『今日はよく頑張った』それを言いに来てくれたのね…)」
    そして、この表情。男子士官諸君もやらかしたに違いない!
    おそらく、一般クルーの下には各艦の副長が同じように労をねぎらって回っているのだろう。流石に全員とはいかないが、特に活躍したり、負担が大きかった部署に。

    アグネス・ルナマリア・メイリン・一同「はい!ありがとうございます。しっかり休息します」
    タリア「ええ。おやすみなさい」
    艦長の返礼と共にこちらも直り、後ろ姿を見送った後、各々の部屋に戻りベッドで布団を被る。

    ちゃんと寝れるかな…。今日はいろいろあり過ぎた…。
    でも、心配無用だったわ。限界を超えて活性化していた脳と体を泥のような睡魔が飲みこむのにそんなに時間はかからなかった―

  • 195二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 23:59:09
  • 196二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 23:59:47

    残りは好きに使ってね。

  • 197二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 00:07:01

    せめて今だけは眠れアグネス、そしてミネルバの戦士達
    疲れきった身体と心を一時でも休めるのだ

  • 198二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 04:51:13


    順調に親密になってる女性陣に和む

オススメ

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