【SS】生きてこそ

  • 1二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 19:53:43

    私の一世一代の大勝負から季節は流れ、今私はトレーナーのチームの一員として活動している。チームメイトは学年や趣味に性格、見事にバラバラだ。その中に一人、ある後輩がいる。聞けばあの日の大勝負を見て、私に憧れてくれているらしい。少し小恥ずかしい気もするが、なんとも可愛いものだと思いながら過ごしていたある日。
    その後輩から「勝負してください。」と、一言。普段なら併走してほしいだの、レースに向けてのアドバイスだの色々とやかましい雰囲気の彼女。だがその時のアイツの眼から感じるのは羨望というよりは、どこか諦観に似たものだった。
    なぜ勝負しなきゃいけない、私とオマエ共にメリットのない事だなんだと言って断ろうとしたが、結局は私が折れて走ることに。その日の夜。学園の許可をもらってナイターでの勝負。普段と雰囲気の違う彼女が気になるとはいえ、レースはレース。きっちり全力で挑む。

  • 2二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 19:54:01

    レース後。ベンチに座り一呼吸。
    「なぁ、なんでこんなことをした?」そう彼女に聞いた。と言っても返答はある程度読めているのだが。
    少しの沈黙の後、彼女が言った。もうすぐトレセンを去ろうと思う、と。
    最近レースでいい成績を残せていない。なんだか伸び悩んできた気がする。走れば走るほど理想と現実の差に苦しみ続けている。そんな感じの悩みだった。この感じだとトレーナーにも相談してはなさそうだ。
    事実、理由は様々あるが学園を去るヤツらも少なくない。そいつらのほとんどはどこかホッとした表情で去っていく。もうこれ以上届かない希望を追いかけなくていいと。そんな顔をしているのだ。今、目の前の彼女はそんなヤツらと同じニオイがする。
    だったら、先輩としてやるべきことは。

  • 3二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 19:54:17

    「…だから、最後に憧れのセンパイと一レース勝負してもらってハイおしまい。そういう魂胆か?冗談じゃねェ。オマエのオーラスに付き合うほど暇じゃないんだよ、こっちは。」
    慰めの言葉でもかけてもらえると思っていたのだろうか。目を点にして見てきやがる。
    ああ、やっぱり生きちゃいねェ。あの時私の後を必死に追いかけてくれていた目は、もっと希望に、光に満ちていたはずなのに。
    「今日のレースで自分を納得させたいんじゃないのか。いつか見た希望に手は届かないから仕方がないって。ここでなくても自分は生きていけるって。それは単なる言い訳だぞ。」
    「…。」
    俯き、少し肩を震わせ始める彼女。まあストレートに言いすぎたな。頭を優しくなでて落ち着くのを待つ。鼻をすする音が止んで少しして、言葉を続ける。
    「私はな。ヒリつく勝負事、何かに賭ける事が好きで。そうすりゃ生きているって、そう思えたんだよ。この学園に来てからも、色んなコトに賭けてきた。けど、壁にぶつかった。越えるには賭けたくないものまで、無くしたくないモノまで賭けなきゃいけなかった。」
    凱旋門に挑むため。恩師の魂すらチップ代にして全てを賭けたあの日。トレーナーは私の選んだ道を逃げの理由にしないよう、生かしてくれた。教えてくれた。
    『自分』を生きるのに、言い訳などしてはいけないのだ。

  • 4二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 19:54:29

    流石に寮の門限も近い。帰る準備をしているアイツに言う。
    「なぁ、どうしてトレセンに来たんだ?」
    いままで一度も聞いたことはなかった質問。私に憧れているのは知っているがそれだけが答えではないはず。少し考えたのち、返ってきた答えは「誰かに希望を見せてあげたい。」
    私の走りを見て元気を貰えたように。自分も誰かの元気に、希望になりたいのだと。
    なんだ、『自分』の進む道は見えているじゃないか。
    「じゃあその道を進むために、生きていくために選んだんだのは誰だ?オマエだろ?
    なら、足掻け。勝ち目のない賭けにもビビらずフルベットしてやれ。後悔なんてしないように。過去の行動を言い訳にしないように。生きていけ。」
    言いたいことが伝わったかは分からない。誰かから教わってばかりの今迄で、誰かに教えたことなどないのだから。

  • 5二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 19:54:39

    まぁ、それ以来アイツのやかましさが3割増しになり、レースではヒリつく顔つきになって。
    面白い賭けで魅せてくれるのだが。ここに書くことではないので割愛させていただく。

  • 6二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 19:56:11
  • 7二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 20:01:45

    先輩フェスタとは良い趣味してるじゃないか
    やかましくなった後輩ちゃんとの今後の交流も見たくなったよ

    (ピリッとしたシリアスムードだしもっと改行して間を取ってもいいと思うぜ)

  • 8二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 20:07:59

    >>7

    ありがとうございます!

    反応もらえると嬉しいですね…!

  • 9二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 20:13:34

    あのスレの方か
    フェスタらしいアドバイス良いなぁ……
    先輩として振る舞うフェスタに先生もニッコリしてそう

    ちなみに上にも言われてるけど台詞と地の文は離した方が読みやすいと思うっす
    また良きSSオレハマッテルゼ

    ちなみにスレタイで曲の方を思い出したのは内緒

  • 10二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 20:18:08

    >>9

    ありがとうございます!

    次はカワイイ方のフェスタでリベンジしてみようと思います!

  • 11二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 20:27:11

    >>6

    ようこそウマカテSS書きの世界へ……

    あまり言及するとアレだけどSSスレは時々変な奴が来るからそん時は落ち着いてスレ管理するんだぜ

    これからも応援してます

  • 12二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 20:35:58

    >>11

    ありがとうございます!

  • 13二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 02:47:20

    昨日のあのスレの方でしたか……改めましてようこそSS書きの世界へ……。
    自分はナカヤマフェスタをお出迎えできてはいないのですが、この娘本来のシナリオが気になる良いお話だと思いました。地の文やフェスタの心情もしっかり書けていますし、練習したらもっと上達すると思います。生きてこそ、というタイトルも好きです。

    もしSSについて質問やアドバイスが欲しくなったり何か吐き出したいことができたら、SS書きの人が集まって悩み相談やら宣伝やらしてる『ようやく分かったSSを書ける人は凄いのだ』というウインディちゃんのスレがあるので、また良ければそちらも覗いてみてくだされ~

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