- 1二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:12:59
- 2二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:13:29
- 3二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:14:43
- 4二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:23:05
「あれか。」
アダムとの通信を切ってから数分、採掘施設の出口にようやくたどり着いた。
少し離れたところに例のエネルギー生産施設が見え、横に目を向けると堤防らしきものが建っていた。
(アダムが言っていた湖はあっちか。)
この方向にSA-XとYがいるのだ。
しかし、水上をエア・カーで移動できる奴らと湖で戦うのは不利だ。
やはりエネルギー生産施設で待ち構えるのが得策だろう。
そう思い、正面を向いた瞬間‥‥爆音が響き、衝撃が大地を揺らした。
「っ!!?」
湖のほうに向きなおると、堤防越しでも見えるほどの水柱が立ち昇っていた。
巻き上げられた水が重力に従って降ってくるなか、アダムから連絡が入った。
『サムス、緊急事態だ。』
「まだ悪化する余地があったとはな。さっきの爆発は、パワーボムか。」
『そうだ。イシュタル種が素となった生物兵器と交戦したSA-Xが、パワーボム能力を取り戻したのだ。』
爆発音と衝撃に何か馴染み深いものを感じていたが、案の定だったようだ。
だが、これだけで緊急事態と警告してきたわけではないだろう。
私にはパワーボムは効かないのだから。
爆発時に凄まじい熱量を放つパワーボムだが、使用時には爆心地近くには私がいる。
ならば、その熱波に耐えられるようにパワードスーツが設計されているのは当然の理というものだ。
「なにか被害が出たのか?」
『いや、爆発したのが湖底付近だったこともあって、大量の水がクッションになり、周辺への被害はほとんどない‥‥Yのエア・カーの推進器が故障したようだが。』 - 5二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:25:32
つまりYの移動手段はなくなったわけだ。
それは私たちのとって好都合であり、緊急事態には程遠い。
いったい何が問題なのだろうか、疑問に思っていると、バイザーにある画像が映し出された。
それはエネルギー生産施設の3Dマップで、ある場所が赤くマーキングされている。
「ここは‥‥貯蔵室か?」
『そうだ。パイレーツが、捕まえた民間人を強制労働させて生産したエネルギーが限界近くまで貯めこまれている。』
『この量のエネルギーがパワーボムによって誘爆すれば、この惑星の地表の数%が焦土と化す大爆発が起こる。』
明かされた"緊急事態"の意味に絶句する。
それほどの爆発では、私はもちろん、今居住区に避難してる民間人たちも消し飛んでしまうだろう。
だが…
「それだとYも消し飛ぶぞ。自分も巻き込まれるとわかっていながら、なんの対策もうたないとは思えないが…。」
『それに関しては同感だ。…ただし相手が"X"だというのが問題なのだ。』
『X特有の変異能力によって、天敵であるメトロイド‥‥つまり君の排除を優先しようと、Yのコントロールをふりきる可能性がある。』
アダムの言葉に、B.S.Lのシークレットラボを思い出す。
そのラボでは絶滅したはずのメトロイドを飼育・研究しており、そこをSA-Xが襲撃したのだ。
SA-Xは天敵の大軍‥‥ではなく、シークレットラボそのものを攻撃した。
研究員の知識を吸収していたSA-Xは、シークレットラボの機密保持のための自爆機構を利用することでメトロイドを排除したのだ。
自分諸共‥‥。 - 6二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:28:10
『SA-Xの、Xの"メトロイドに対する敵意"は異常だ。Yの制御よりも、天敵である君の排除を優先する可能性は大いにある。』
「ではどうすれば‥‥。」
『とりあえず君は予定通りエネルギー生産施設に向かい、貯蔵されたエネルギーに対処できないかどうか調べるのだ。SA-Xはパワーボムの衝撃で意識を失っている、今のうちだ。』
とにかく今はエネルギーの誘爆を防ぐのが最優先事項ということか。
『それからパワーボム能力に制限をかけろ。君がそのようなミスをするとは思ってないが、念のためだ。』
「了解だ、アダム。異論などない。」
エネルギー生産施設に向かいながら、パワーボム能力にロックをかける。
‥‥こうしていると、ボトルシップでの…"人間としてのアダム"を失った事件を思い出す。
あるボトルシップから救難信号を受け取った私は、そこでアダムと彼が率いる部隊と遭遇、そのまま協力することにした。
その際に"部隊に被害を出さないように"という名目で、パワードスーツの能力に制限をかけられたのだ。
だが今思えば、それは私の命を守るためだったと思っている。
そのボトルシップは、銀河連邦の生体兵器秘密研究所であり、そこで低温という"弱点を克服したメトロイド"が生息していたのだ。
もし能力を制限されなければ、私はそのまま突出し…弱点を持たないメトロイド相手に為す術もなく斃れていただろう。
アダムは、私を弱体化させることで、私の命を守ろうとしたのだ。
そのアダムも、いまや頭脳だけの存在となってしまった。
この状況をどうにかできるのは、私しかいないのだ。
行くべき者が行き、残るべき者が残る‥‥‥‥今度こそ、私の番かもしれない。 - 7二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:28:56
エネルギー生産施設に侵入し、貯蔵室へと向かう。
途中、非武装のパイレーツによって強制労働させられる民間人を発見したが、今はどうしようもない。
(すまない…あとで必ず助ける。)
救われるべき人々に心のなかで詫びながら、地下への階段にさしかかる。
この先が貯蔵室だ、という時にアダムから通信がはいった。
『‥‥あぁ、レディー。その、実は…。』
「どうした、アダム。」
『‥‥‥‥いや、なんでもない。無用な通信をしてすまない。』
アダムが困惑している。冷酷ともいえるほど、常に冷静なアダムが。
それほど衝撃的なナニかを、SA-Xから感じ取ったということか。
「私なら大丈夫だ。今はどんな情報でも必要なはずだ、アダム。」
『…そうか。君が、そう言うのなら‥‥。』
いまだに困惑を感じさせるアダムの言葉を聞きながら、階段を下りようとして…
『SA-XとYがキスをした。』
足を踏み外し、階段を滑り落ちた。
痛みはない。痛みはないが、それどころではない。
「どういうことだ、アダム‥‥。」
『SA-Xがマスクだけ解除したと思ったら、Yが奴を抱きしめてキスしたのだ。』
「どういうことだ!?アダム!!」 - 8二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:31:54
いったいなんだというのだ!?
キスすることが、Xの制御方法だとでもいうのか!?
『‥‥もしかしたら、我々は根本的なところで思い違いをしていたのかもしれないな。』
「なにか心当たりがあるのか‥‥?」
『‥‥とにかく、君は貯蔵室に行きたまえ。あの量のエネルギーを放っておけないのは変わらない。』
問いに応えず、通信をきるアダム。納得できないが、彼の言うことはもっともだ。
自分と同じ顔が、見知らぬ男とキスしている‥‥湧き上がる怖気になんとか耐えながら、私は貯蔵室の扉を開いた。
スレ作成、および保守もかねたss投稿です。
ボトルシップでの能力制限に関するサムスの考えは、私自身の考えです。
アダムの不器用すぎる性格から「多分こういう感じだったのでは…」と思ったのです。
無論、個人的な意見であります。 - 9二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:36:57
保守もかねて、説明し忘れたことを
サムス・アラン(X)の能力復元について詳しく
まず能力の復元には
・Xの本能に基づいて
・対メトロイドに基づいて
・サムスXの無意識に基づいて
の3パターンに分かれます - 10二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:38:18
いやまあ本人視点からするとそうだろうなとしか
- 11二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:40:30
・Xの本能に基づいて
ミサイル、モーフボールやボム、スピードブースターなどがこれで復元されました。
Xは相手の細胞を複製…つまりは"模倣"しようとする習性があると考えました。
それでパイレーツの武装や、生物兵器の攻撃などから
「これは使える」
とXの本能が反応したことで、類似する能力を優先して復元したわけです。 - 12二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:47:18
・対メトロイドに基づいて
これはもうそのまんま、アイスビームはこれで復元されました。
・サムスXの無意識に基づいて
チャージビームやスーパーミサイル、プラズマビームなどが該当します。
チャージと酢味噌については、サムス(本人)の真似をしようとしてたことに
プラズマに関しては、サムスから複製した
『リドリーに蹂躙された家族と故郷』
という記憶と経験を想起したことで湧き上がった激情に反応する形で復元されました。
なおパイレーツと戦うまで、能力が復元されなかったのは
単純に必要な養分が足りなかっただけです(普通に暮らすぶんには問題なかった) - 13二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 23:41:47
- 14二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 07:11:10
- 15二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 19:00:13
保守
- 16二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 19:46:48
まあ食事とエネルギーそのまま吸収するのでは効率とか段違いだろうしそりゃそうか
- 17二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 06:13:22
保守
- 18二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 11:57:45
保守パワーボム
- 19二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 20:18:26
一応保守パイレーツ
- 20二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 07:32:32
保守
- 21二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 14:45:52
保守ビーム
- 22二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 18:00:42
お待たせしました。
本日22時頃 投稿したいと思います - 23二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 22:01:11
貯蔵室のコンソールを操作して、エネルギーをどこか遠方に送れないか、試してみるも結果は芳しくなかった。
「ご丁寧なことだ…。」
ここで生産されたエネルギーは、採掘施設へと送られるのだが、その転送ケーブルが破壊されているのだ。
『どうだ?レディー。』
「転送ケーブルが破壊されている。パイレーツの仕業で間違いないだろう。」
『ふむ‥‥バッテリータンクに移し替えてシップに積み込むつもりか。』
「大気中に放出するくらいしか手段はないが…。」
『それだとパイレーツに気づかれる。その施設にむけて、シップから砲撃がくる可能性がある。』
その砲撃でもエネルギーに誘爆する危険がある。
パワーボムよりも爆発の規模は小さいだろうが、それでも被害は甚大だ。
パイレーツも巻き込まれかねないが、奴らにそのような思慮深さを求めるのは、それこそ愚かというものだ。
『サムス、SA-Xが施設に侵入した。パワーボムを使う様子はないが、君を発見したら使用する危険がある。注意するんだ。』
アダムから警告が入った。SA-Xに追いつかれてしまったのだ。
エネルギー自体をどうにかできない以上、袋小路であるこの場所に長居する理由は無い。
貯蔵室から出て、物音を立てないように階段を上っていきながら、これから先のことを考える。
(エネルギーの誘爆の可能性を考えれば、この施設を戦場にするわけにはいかない‥‥SA-Xをパイレーツシップまでおびき寄せれば‥‥だが本当に奴がパワーボムを使わないという保証は…)
「っ!誰だっ!」 - 24二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 22:02:02
「気のせいか…。」
‥‥危ないところだった。
身体を透明にできるアビリティ…ファントムクロークが間一髪間に合ったのは、SA-X自身が何かに気を取られていたおかげであった。
そのまま奴はどこかへと向かう。あっちは…居住者が強制労働させられてる作業現場だ。
(彼らが、SA-Xとパイレーツの戦いに巻き込まれるかもしれない‥‥!)
アダムならば、リスクは大きすぎると苦言を呈するだろう。
しかし私には、彼らを見捨てることなどできはしない。
今にも消されようとしている命を守る…宇宙の平和を守るということは、そういうことだと信じているからだ。
ファントムクロークを適時使いながら、SA-Xの後に続く。
そして辿り着いたのは、やはり作業現場だ。
そこでは非武装のパイレーツが二匹、居住者たちを見張っていた。
そのパイレーツたちにSA-Xはそのまま襲い掛かり‥‥はせずに、物陰に隠れながら近づいていく。
(これは、まさか…いや、しかし…)
その動きに、ある疑念が湧き上がる間もパイレーツ達の死角を慎重に進んでいくSA-X。
そして、射線上に居住者たちがいない位置からアイスビームを発射した。
(速い…!)
パイレーツ二匹とも凍りついたことから、おそらく二連射だろうが私の眼でも、ほぼ同時に発射されたようにしか見えなかった。
アイスビーム強化のために犠牲にしたスペイザーの3発同時発射能力を、アームキャノン自体の連射性能を向上させることで補ったのだ。
さらにアームキャノンによる殴打…ダッシュメレーによってパイレーツ達が粉砕された。 - 25二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 22:02:32
(先ほどよりも更に強くなっている…)
前回の遭遇から30分と経ってないにも関わらず、SA-Xの戦闘能力は段違いに上昇していた。
改めてXの脅威を目の当たりするが、本当に驚くべきはこの後だった。
「サムス!サムスだ!」
「助けに来てくれたのか!」
「静かに!…これで全員か?」
SA-Xに対し、我先にと駆け寄る居住者たち。
それは救助に喜んでいるだけではない、まるで"日常をともに過ごしてきた"ような親密さがあった。
「サムス!私の、私の子供が…!」
「なんだって!」
一人の女性が縋り付くようにSA-Xに、我が子の危機を訴えてきた。
どうやらあの女性が、特にSA-Xと親しいようだ。
(アダム、聞いていたか?)
『うむ、信じがたいことだが‥‥あのコミュニケーション能力ならば諜報員としての活動も可能であろう。』
(そこではない。)
『どうやらSA-Xは、この惑星の住人として活動していたようだ。我々が思っていたような"生物兵器"としてではなく…。』
SA-Xと居住者たちから離れた物陰で、アダムと通信する。
私たちは、YとSA-Xがこの惑星に"潜伏"しているものだとばかり思っていた。
しかし実際には、奴らはこの惑星で"暮らしていた"のだ…居住者たちと共に。 - 26二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 22:07:14
「そのパイレーツは、この施設のコントロールルームにいる。」
「案内したいところだが…」
「いや、場所だけ教えてくれれば大丈夫だ。みんなはシェルターに退避しておくんだ。」
「サムス…。」
「任せてくれ、君の子供は必ず取り戻す。」
居住者たちをシェルターに誘導したSA-Xは、人質となった子供を救出に向かった。
…SA-Xがパイレーツと戦っているのは、Yの指示によるものだと思っていた。
だが今の光景をみるに、奴は自分の意思で戦っているようにみえた…居住者たちを、この惑星の平和を守るために。
『サムス、SA-Xの後を追え。他者を害する意思があるように思えないかもしれんが、だからといって奴を野放しにしていい理由にはならない。』
(ああ、わかっている。)
指示を下すアダムだが、その言い方に釘をさされたような感覚を覚える。
私の中に一瞬、SA-Xに共感を抱いたことを彼は見抜いたのかもしれない。
今回は大変お待たせしました。
保守していただき 本当にありがとうございます。
次回からいよいよ サムスとサムスが本格的に対峙することになります。
サムス(X)にとってのサムスが【得体のしれない敵】から【心強い味方】へと変わったように
サムスにとってのSA-Xが【危険な生物】から【一人の人間】へと変わったのを描写できたら、戸思っております。 - 27二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 08:26:32
保守ミサイル
- 28二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 19:08:56
保守ディフュージョンミサイル
- 29二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 22:11:37
保守ぱいレーツ
- 30二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 07:14:13
保守
- 31二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 16:12:51
そうか、ある意味で彼女もまたotherMなんだな
- 32二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 22:48:27
保守
- 33二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 06:23:56
保守
- 34二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 08:24:05
元ネタ読み返したからタイムリーなスレ
- 35二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 18:47:10
大変お待たせしました。
本日 22時 投稿します - 36二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:00:39
コントロールルームへと向かうSA-Xの後ろを、ファントムクロークで姿を消し、物音を立てないようについてゆく。
警戒しているのか、時折立ち止まっては周囲を見渡している。
(‥‥私を警戒しているのか?)
考えてみれば私が奴を見過ごせない危険生物と見なしているように、奴にとって私は"天敵"なのだ。
狙われている、と思っても不思議ではない。
周囲を警戒するSA-X、を警戒しながら尾行する私。
そのような牛歩の歩みで、私たちはコントロールルームにたどり着くのだった。
「…いた。」
コントロールルームを覗き込むSA-Xがボソリと呟く。
私の眼にも気絶した子供と、彼を抱える非武装のパイレーツが見えた。
なにかギィギィと喋っている様子をみるに、パイレーツシップと通信をとっているのかもしれない。
(さて…どうしたものか。)
SA-Xはパイレーツに攻撃を加える様子はない。
人質となっている子供に危険が及ぶのを恐れているのだろう。
それは私も同じだった。姿を消している今ならパイレーツから人質を取り返すのはたやすい。
だがそれを実行すれば、SA-Xに私の存在を感づかれてしまう。
「ギギィイ!!」
奇妙な膠着状態を打ち破ったのは、後ろから忍び寄っていたパイレーツだった。
背後から聞こえた金切り声に、SA-Xは咄嗟にアームキャノンを構える…姿を消した私を挟んで。
間一髪しゃがんだ私の頭上をナニカが高速で通り過ぎ、ついで炸裂音が響く。
もしも撃たれたのがミサイルではなくビームだったら‥‥冷汗が背中を流れるが、本当に問題なのはここからだ。 - 37二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:01:47
「ギ…ギィ!ギギィ!!」
騒ぎに気付いたコントロールルームのパイレーツがコチラに近づいてくる…腕に抱えた子供の首に爪をそえながら。
いくら武装してないとはいえ、地球人種の子供の命など、それこそ一瞬で奪われてしまう。
SA-Xもそれを理解しているのだろう、一度は敵に向けたアームキャノンをゆっくりと下した。
「…抵抗しない。だから子供には手を出すな。」
「ギギ、ギィイイ。」
全てを諦めたかのようなSA-Xに対してパイレーツは下劣な笑い声をあげる。
だが‥‥本当に諦めたのだろうか。
(もしも、私が同じ状況なら‥‥。)
足音を立てないように、パイレーツの背後に回り込む。
パイレーツの肩越しからみえるSA-Xのバイザー、その奥に見えたのは‥‥
決して諦めることのない闘志を宿した眼だった。
私と同じ"志"を宿した、心だった。
「ギィアッ!?」
気づけばパイレーツの横っ面を殴り飛ばした。
そのまま子供を抱き寄せたSA-Xを横目に、ビームでパイレーツにトドメをさし、数舜悩むもファントムクロークを解除することにした。 - 38二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:02:36
「お、お前は…!」
子供を自らの背に隠し、こちらを見据えてくるSA-X。
しかしコチラを攻撃してくるような様子はみせなかった‥‥私の予想通りに。
今ここで私と戦えば、せっかく救出した子供も巻き込んでしまう。
姿をみせても、すぐに戦闘にははいらないと踏んだのだ。
「待て!お前の狙いは、私なんだろう…。この子供は、ここに捕まっている人たちは関係ないはずだ!」
「………。」
戦う気がないのは私も同じだ。
確かめなければいけない…そう思ったのだ。目の前のXが、本当に討つべき存在なのかどうかを。
「…なぜ、その子供を助けようとした。」
「…‥‥?」
「なぜ、他の連中のことを気にかけているのか、と聞いている。」
「…彼らは、素性のわからない私を受け入れてくれたんだ。」
(素性……そうか、そういうことだったか…。)
私とアダムが訝しんでいたSA-Xの行動、それにようやく納得がいった。
なんのことはない…奴は、自分が"X"であることを忘れているのだ。
どういう要因でそうなったかは知らないが、目の前のSA-Xは自分のことを人間だと思い込んでいたのだ。
「私にとって、彼らは同じ惑星で生きる仲間たちなんだ!失いたくないんだ!」
必死で叫ぶSA-Xの姿‥‥それは私に、在りし日の私自身を思い起こさせるものだった。
科学者だった両親と暮らした採掘惑星、天涯孤独となった私を引き取り育ててくれた鳥人族、第二の故郷たる惑星ゼーベス。
どれも私が、この手で守りたかったものだ‥‥もう、失われてしまったものだ。
もうそれらは帰ってこない…だが、このSA-Xの故郷と同胞たちは、まだ間に合うのだ。 - 39二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:03:09
「………。ならば早く避難させるべきだ。」
「…え?」
ついてこい。とだけ言ってコントロールルームを出ていく。
子供とともについてくるSA-Xを、気配だけで確認しつつアダムに連絡をとった。
(アダム、例のモノは準備できているか?)
『すぐにでも実行可能だ。だが、結果的に上手くいったが軽率だったな、レディー。』
(私なりの確信はあったつもりだ。)
『それでも私に一言相談すべきだったはずだ。‥‥下手すれば君の命が危なかったのだから。』
(‥‥すまない。)
説教しながらも心配してくれるアダム。
申し訳ないと思いながらも、それが嬉しかった‥‥故郷も家族も失ってしまった私だが、決して孤独ではないのだ。
SA-Xと共にシェルターに戻り、民間人を施設入り口まで誘導する。
‥‥もっとも彼らは、突然現れた私を警戒している様子で、それを宥め実際に誘導しているのはSA-Xであったが。
(人付き合いは得意ではないと、自覚してはいたが‥‥)
人間の私が怖がられ、(人間に擬態しているとはいえ)Xが信用されている。
なんとも言えない複雑な気分に苦笑していると、じきに施設入り口についた。
そこにあったのは、長距離運搬用の特殊合金コンテナだ。
この施設に民間人が捕まっているのは最初にわかっていたことだ。
彼らを避難させるために、この施設で使われているコンテナを借用する…そうアダムが提案したのだ。 - 40二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:03:55
「このコンテナに全員入るんだ。私のスターシップが居住区まで運んでくれる。」
「スターシップ…?」
「私の相棒が動かす。安心しろ、必ず無事に送り届けてくれる。」
荷物のように運ばれるのに不安を覚えたのか、彼らがざわめくも、数秒後にはコンテナの中へと入り始めた。
多少乗り心地は悪いだろうが、アダムが操縦するのだ。何の心配もない。
そう思いながら避難を進めていると、SA-Xが話しかけてきた。
「すまない。この近くに動けなくなったエア・カーがあるのだが、それに乗っている男も避難させてもらえないだろうか!」
「…採掘施設に来ていた奴か?」
「ああ、そうだ。彼は、私の夫なんだ。」
「(オット…Yの名前はオットというのか‥‥いや、現実逃避はやめよう)夫、か。わかった。アダム、聞こえていたな。頼む。」
自分と同じ姿の人間が、見知らぬ男性と結婚している。
その事実にゾワゾワしたものを感じながらアダムに依頼する。
了解。と短く答えた彼は、まず先に民間人を乗せたコンテナを運んでいった。
「私の名はサムス・アラン。ありがとう、M。みんなを助けられたのは、君のおかげだ。」
小さくなっていくスターシップを見送っていると、SA-Xに今更ながら自己紹介された。
奴が、私の名を名乗っているのは薄々予想していたが…
「…M?」
「あぁ…すまない、私が勝手に呼んでるだけなんだ。」 - 41二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:06:54
私たちがXやYと呼称していたように、奴もまたこちらのことをMと呼んでいたらしい。
しかし、よりによってメトロイドの頭文字で呼ばれていたとは‥‥。
「…そうだな、そんな記号のような呼び方は失礼だな。すまない。」
一度は命を狙われたのも関わらず、コチラに向かって謝罪するSA-X。
その言葉に私は、ある女性のことを思い出していた‥‥。
大変お待たせしました。コメントと保守ありがとうございます。
サムス(X)視点では何を考えてるかわからないサムスでしたが、実のところ色々考えたという話でした。
今だにSA-X呼びのサムスですが、次回はいかにして『SA-Xではなくサムス・アランと呼ぶようになったか』を描きたいと思います。 - 42二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 01:04:55
保守グラップリングフック
>(オット…Yの名前はオットというのか‥‥いや、現実逃避はやめよう)
かわいい
- 43二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 09:44:28
保守Y
- 44二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 20:03:13
保守
当然スーパーもOtherMも経たあとのサムスだから、自分の姿をした人間が家庭を築いてることには思うところあるよね… - 45二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 02:00:32
生命体X、生存のために変異と適応を繰り返すその生態は感情と共感、そして社会性の獲得により人間社会に適応したんだな。
かつての恐ろしい戦闘力が他の誰かを守るという指向性を持ったが故に自分の命を守る大きな力に繋がったんだ。
それはそれとしてアイスビームばんばん撃てるのってサムスには無い強みだよね。 - 46二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 12:50:01
保守
- 47二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 20:38:45
本日 22時 投稿します。
今回の前半部分 文字びっしりで読みづらいかもしれません。
先に謝っておきます、申し訳ありません。 - 48二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 22:00:54
かつて銀河連邦は、メトロイドやスペースパイレーツを生物兵器として利用するための研究で、ある存在に着目した。
鳥人族の手で産み出されてながら彼らを裏切り、スペースパイレーツに与した機械生命体マザーブレイン。
メトロイドに、親としてマザーブレインを"刷り込み"することで、支配を超えたコントロールをしようとしたのだ。
そうして造りだされたのが、マザーブレインの思考パターンを再現した人工知能、そしてそれを搭載した女性型アンドロイド‥‥"MB"であった。
銀河連邦の期待通り成果をあげるMBだったが、自我や感情が発達するにつれて周囲との衝突するようになる。
そんなMBにも"特別な存在"として慕う相手がいた。
研究の責任者‥‥マデリーン・バーグマンだ。
マデリーンはMBに"メリッサ・バーグマン"と名付け、娘のように接した。
MB、否メリッサもマデリーンを母親のように慕った。
親子のように絆を深めあう二人だったが、それも長くは続かなかった
銀河連邦は、次第に思い通りにならなっていくメリッサの思考プログラムを修正しようとしたのだ。
自分の"心"を捻じ曲げられようとしたメリッサは、母親にも見捨てられたと思い暴走。
研究施設を壊滅させるほどの被害をだし、そして自らも命を落としたのだった。
もしも銀河連邦が彼女の"心"を認めていれば、メリッサとマデリーンは今も一緒にいられただろう。
人間の愚かしさが、一つの家族を引き裂いたのだ。
そしてそれは‥‥私にも言えることだ。
目の前のXは、命を付け狙ったはずの私を気遣う優しさを持っている。
他の人間を同胞として守りろうとする意志を持っている。
そして、家族を愛する"心"を持っている。
「…いや。気にしなくていい、サムス。」
ならば私も、"彼女"のことをSA-Xなどという記号で呼ぶべきではない。
彼女は心を持つ一人の人間…"サムス・アラン"なのだ。 - 49二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 22:01:29
「パイレーツの討伐に向かうのだろう。私にも同行させてもらえないだろうか。」
「なぜだ。」
「ここは私にとって故郷だ。さっきの人たちは同胞だ。それを守れるなら、戦いたい。少なくとも…この力はその為にあると思っているんだ。」
サムスの存在を受け入れた私に、彼女は共闘を申し入れてきた。
故郷と同胞を守りたいという気持ちはわかる、それこそ痛いほどに…。
実際、助けを借りられるなら、これほど心強いものはないだろう。
とはいえ、民間人として暮らしている彼女をこれ以上戦いに巻き込んでいいものか‥‥
『協力してもらい給え、レディー。』
「アダム?」
『先ほどのように人質を取られていないとも限らない。少なくとも彼女の存在がなければ、あの子供を助けるのは困難だった』
思い悩む私の背を押したのは、アダムだった。
『突然失礼した、Mrs.アラン。私は彼女を支援するA.I、アダムという。』
「そ、そうか。夫の避難は?」
『これから行う手筈だ。」
サムスとの話を進めるアダムであったが、それとは別の回線を私に繋いできた。
(どういうつもりだ。)
『もう少し彼女を観察したい。Xのデータを収集する、またのないチャンスだ。』
(Xの?)
『X関連の事件は君に一任されているのが現状だ。これから先の任務達成率の、そして君自身の生存確率を上げるためにも必要なモノだ。』 - 50二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 22:02:23
「ならメッセージを頼めるか。そのほうが、彼も貴方を信じてくれるはずだ。」
『了解した。それではメッセージの録音を開始する。』
「Mと呼んでいた人物を和解することができた。彼女は思っていたよりもずっと心優しい人物だったよ…これから彼女と一緒にパイレーツ撃退にむかうつもりだ。」
器用に、私への説明とサムスとの話を同時進行するアダム。
どうやら彼女と共闘することは決定事項になったようだ。
「お前は居住区に戻って、あの子のそばにいてくれ。そして…帰ってきた私を、一緒に出迎えてくれ。」
…文脈から察するに、Yと…彼女と彼女の夫の間には子供もいるようだ。
自分の生き写しともいうべき存在が子供を産んでいる…その事実に起こる眩暈を振り払いつつ、今後のことを考える。
そして私は、サムスに釘を刺さなければならないことを思い出した。
「…ついてきたなら、ついてくるがいい。ただし条件がある。」
「条件?」
「パワーボムだけは絶対に使うな。最悪の場合、貯蔵されたエネルギーが誘爆しかねない。」
私たちの能力のなかでも、特に強力であり危険でもあるパワーボム。
それを安易に使ってはいけないと言っておかなくてはいけなかったのだ。
「わかった。パワーボムとやらは絶対に使わない。」
素直にこちらの要求を呑むサムス。
…そういえばアダムからの報告に、彼女の夫のエア・カーがパワーボムの余波で破損したとあったな。
彼女からすれば、一歩間違えれば夫の命を奪いかねなかったパワーボムは忌むべきものだったか。
「よし、では行くぞ。」
至急言っておかなければいけないことはもう無くなった。
これ以上ここにとどまっていると、パイレーツシップからの攻撃がくる恐れもある。が… - 51二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 22:02:45
「待ってくれ!君の名前を教えてくれないか?」
そう呼び止められて、コチラの自己紹介をしていなかったことに気づく。
しかしどうしたものか…。
下手に私の名前を言えば、Xだった頃の記憶を思い出してしまうかもしれない。
そうでなくても、私と彼女が同じ名前であることをどう説明すればいいか…。
「…残念だが、言えない事情がある。好きに呼んでくれて構わない。」
「そうか…
呼び名に関しては、彼女に任せることにした。
別にどう呼ばれてもとくに問題は…
では、イヴという名前はどうだろうか?」
と ん で も な い 名 前 が 聞 こ え た
ビームを撃たれたわけでもないのに固まった身体を無理やり振り向かせ、カラカラになった唇でなんとか言葉を紡ぐ。
「………なんだと?」
「だからイヴだ。君のパートナーがアダムだからな、ぴったりだろう?」
「待て、ちょっと待て。」
自分が既婚者だからか、サムスはとんでもない発想をしてしまったようだ。
なんとか誤解を解かなければ…そう思い、真っ白になった頭をフル回転しようとするも… - 52二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 22:05:11
「さあ、行こう。イブそしてアダム、パイレーツシップまで後少しだ!」
「待て!本当にその呼び名で通すつもりなのか!?」
『進行ルートはもうすでに計算し終えている。今後は私の指示に従って進んでくれ。異論は無いな、ミセスそしてイブ。』
「アダムッ!!」
私の言葉を待たずに駆け出すサムス。
さらに味方のはずの支援AIすらも敵に回ってしまった。
SA-Xの集団を相手にするほうがまだマシだったかもしれない、そんなことを考えながら後を追いかけるのだった…。
コメント&保守 ありがとうございます。
SA-Xの心を認めるには"前例"が必要だとおもい、レディーにメリッサのことを思い出してもらいました。
そして今後しばらく、このssで『サムス』と名前が出たら ミセス・アランのことだと思ってください。
(ややこしくてごめんなさい) - 53二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 07:02:18
保守
- 54二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 09:12:35
>と ん で も な い 名 前 が 聞 こ え た
可愛い
- 55二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 20:11:27
保守
- 56二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 02:23:20
このレスは削除されています
- 57二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 08:11:32
保守
- 58二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 19:43:46
このレスは削除されています
- 59二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 06:03:02
保守
- 60二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 17:11:34
お待たせしました。
本日22時投稿します。 - 61二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:00:21
『…以上の理由から、このルートを進むことを推奨する。他に質問は?』
「いや、大丈夫だ。…ありがとう。君たちがいなかったら、私は無策のまま突っ込むところだった。」
(‥‥随分と素直なものだな。)
エネルギー生産施設からパイレーツシップまで直進…はせずに、大きく弧を描くように反対方向へと回り込む。
万が一シップから攻撃が来たとき、生産施設に被害が出ないようにと、アダムが提案したルートだ。
私も特に異論はなかったが、サムスはそれに加えて感謝の言葉を付け加えた。
しばらく一緒に行動してわかったことだが、サムスの性格・人格は私のものとは大分異なるようだった。
この平穏な惑星で過ごしていたのもあってか、私と比べて実に素直だ。
アダムもやりやすいことだろう‥‥自分で言うのもなんだが。
『どう思う?レディー。』
(いきなりどうした。)
そんなことを考えていると、アダムから通信が入った。
わざわざ別回線を開いてサムスに聞こえないように、だ。
『彼女の人格についてだ。随分と物分かりが良い。』
(まるで物分かりが悪い誰かがいるかのようだな。)
『そう、重要なのはそこなのだ。』
言いたいことはわかるが、それを認めるのも癪だ。
そう思っての返しだったが、アダムが言い出したのはそういうことではなかった。
『彼女の人格は、君のそれと大きくかけ離れている。それは彼女の自我・人格は彼女自身のものとして確立されたものだということだ。』
(‥‥!) - 62二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:00:42
ようやくアダムが言いたいことがわかった。
彼女の人格は、私のソレを模倣・複製したというような曖昧なモノではないということが。
『今の彼女は限りなく人間に近い。Xとしての他者を害することは無いといっても良いだろう。』
今までの会話は、彼女のパーソナリティを調べるためだったらしい。
なんともしたたかなものだ。
とはいえ、これで彼女に…サムス自身に問題となる部分はないと思っていいだろう。
となれば、懸念すべきは…。
「サムス。走りながらでいい。話を聞いてくれ。」
「なんだ、イヴ?」
「私たちは銀河連邦からの依頼で、この事件を解決しに来た。だから、解決後の銀河連邦への対応は私たちに一任してほしい。」
「それはつまり私に、この件に関わったことを話すな、ということか?」
彼女の‥‥"理性をもったSA-X"の情報を銀河連邦に渡すわけにはいかない。
そう思い銀河連邦に関わらせないように言ったが、サムスは怪訝な声で聞き返してきた。
確かに自分の手柄を横取りされそうになっているのだから無理もない。
「自分で言うのもなんだが、パイレーツとの戦闘で色々と壊してしまってな。それが全部、君たちの責任になってしまうぞ。」
手柄を気にしているのではなく、コチラを気遣ってくれていたらしい。
気持ちは嬉しいが、それを聞き入れるわけにもいかない。
どうしたものか、頭を悩ませていると助け船を出してくれたのはアダムだった。
『ミセス。このような事件が起きた場合、銀河連邦から復興援助金が出され、周辺宙域のパトロールが強化される。」
「そうなのか、それは助かるな。」
『だが、その惑星に復興や防衛が可能な人員の存在が判明されれば、復興援助金も削減され、パトロール強化も行われてなくなってしまうのだ。』
「‥‥私のせいで、みんなの生活が苦しくなるということか。」
『勘違いしてはいけない、ミセス。貴方に責任は一切ない。ただ役人という者は、経費削減できる要素を粗探しせずにはいられないのだ。』 - 63二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:01:09
今のアダムの言葉は機械音声によるモノのはずなのだが、今の言葉にはどこか実感がこもっていた。
そういえば銀河連邦に所属していた頃、勘定方とアダムが度々話し合っているのを見かけた記憶がある。
司令官ともなれば、部隊を指揮する以外にもやるべきこともあったのだろうと今更ながらに気づく。
…依頼報酬に口うるさく言ってくるのも、そういう経験があったからだろうか。
『今後の復興活動のためにも、銀河連邦に君の存在を知られるのは問題がある。避難している人々にはコチラから連絡するので、君も解決後は身を隠すのをお勧めする。』
「わかった。銀河連邦への対応は君たちに任せるよ。」
サムスにとって有益な情報を話しつつ、Xについての情報は隠すアダム。
詐欺師の手法。そんな言葉が頭に思い浮かぶ。
もっとも、この場合の詐欺の対象は銀河連邦だが。
「「「「「ギャオァァアアアアア!!!」」」」」
そう話をしながら進んでいるところに、パイレーツの生物兵器たちが群れをなして襲ってくる。
彼らも、悪意によってその身を歪められた被害者だが、だからといって手加減するわけにもいかない。
プラズマビームを発射、群れの大半が蒸発し、残りもサムスのアイスビームとスーパーミサイルの連続攻撃で全滅した。
(やはり‥‥私の使うスーパーミサイルとは違う。)
観察する余裕ができたことで気づけたことだが、サムスのスーパーミサイルは私のソレとは形状が異なる。
彼女のスーパーミサイルは細長く、先端が鋭角化し金属コーティングされている。
それにより対象の身体に突き刺さり、内部から爆発するのだ。
‥‥そしてそれは、アイスビームにより凍結した状態だと更に効果的となる。
アイスビームとミサイルの組み合わせは、私自身も何度も行ったことがある‥‥メトロイド殲滅の際に。
(対メトロイドへの変異がさらに進んでいるのか…)
Xとしての本能は、まだ私への警戒をやめてはいないらしい。 - 64二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:01:31
「君が味方になってくれて本当にホッとしているよ、イヴ。」
もっとも彼女自身は、私を信用してくれているようだが。
先ほどのアダムが言ったことを考えれば、私のほうが敵対しない限り彼女も攻撃はしてこないだろう。
あとは…
「…その名前だけはどうにかならないか。」
「そんなに気に入らないのか?」
この呼び名を変更させることだけだが、これが中々うまくいかなかった。
というのも
『私にはピッタリの名前だと思うがね、レディー。』
「余計なことは言わなくていい。』
『良い名前を思いついてくれた、Mrs.アラン。今後、名前を明かせないミッションで偽名として使わせていただこう。』
「アダムッ!」
アダムが度々口を挟んでくるのだ。
いったいどこを気に入ったというのか‥‥。
「む…イヴ、あそこにも生物兵器が。」
「どうやら襲ってくる様子はないな…とはいえ、見逃すわけにはいかないが。」
生物兵器の存在に、やり取りを中断する。
今のパイレーツの技術はかつてと比べて随分低下しているようで、このように戦意を持たない生物兵器が混ざっていた。
ガタガタと震えている姿に、憐みの感情が湧き上がる。
せめて苦しまないように一瞬で終わらせようと、プラズマビームをチャージするも…。 - 65二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:03:28
ギィヤォォオオオオオオオオオオオ!!!!
聞き覚えのある、何度生まれ変わっても忘れることはないだろう叫び声が響き渡る。
その瞬間、恐怖に震えていたはずの生物兵器たちの様子が一変した。
「なんだ?急に狂暴になったぞ…!」
「…今の叫び声のせいだ。来るぞ。」
これも記憶にある現象だ。
どうやら今の叫び声は、聞き間違いでも気のせいでもないらしい。
いいだろう。何度でも蘇るというのなら、何度でも地獄に送ってやろう‥‥リドリー。
今回は、本編では出なかった銀河連邦対応に対する補完という名の後付けと
イヴさんのヤル気スイッチがONになるという話でした。
折角の休日なのに、こんな時間になってしまってごめんなさい。明日からも頑張りましょう! - 66二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 07:37:51
保守
- 67二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 18:40:59
保守
- 68二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 03:39:14
このレスは削除されています
- 69二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 09:06:27
保守
- 70二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 19:28:18
保守
- 71二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 06:18:03
保守
- 72二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 17:44:12
保守
- 73二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 22:53:01
何度も保守していただき、ありがとうございます。
明日には投稿しますので、もう少しお待ちください。 - 74二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 07:59:06
オッケー
- 75二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 19:11:56
保守
- 76二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:04:04
リドリー‥‥ドラゴンのような姿をした、スペースパイレーツの最高指揮官に君臨したエイリアン。
人間だった頃のアダムをして"生物兵器としてのメトロイドと同等の脅威"と称されたほどの高い戦闘能力と残虐性を持っている。
この宇宙の悪魔ともいえる生物も、惑星ゼーベスへのファーストアタック…通称"ゼロミッション"にて、私自らの手によって葬られた…はずだった。
しかしその後も奴は幾度となく蘇った。。
ある時はクローン再生されて、ある時は遺伝子情報を得たXが擬態したことで、様々な形で私の前に立ちはだかった。
まるで、自分を葬った相手を道連れにしようとしているかのように‥‥。
『バイタル値、正常。動揺はしてないようだな、レディー。』
「毎度のことだからな、ウンザリするほどに。」
パイレーツシップまであと少し、といったところでアダムが話しかけてきた。
バイタルや精神状態に口出ししてきたのは、かつての私の失態を知っているからだろう。
あのような無様は二度とさらさない。
それが私と、私以外の人間の命を奪うということを痛感しているのだから。
『ここで戦うとなれば、リドリーの飛行能力が十全に発揮されると思われる。戦闘開始直後は、ミセスのサポートに徹するんだ。』
「サムスの?」
『彼女は記憶を失っている。つまり君から複製した戦闘経験もない。かつての君と同等の能力を持っているとはいえ、この状態でリドリーと戦うのは危険だ。』
確かにそれは私も気になっていた。
厳しい言い方をすれば、サムスの戦い方は単調だ。
アイスビームで凍結させて、スーパーミサイルで粉砕する。
戦術として完成しているといえないことも無いが、リドリーに通用するかどうかは話が別だ。 - 77二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:05:03
『今回の戦いでは、ミセスの存在が鍵になると予想している。』
「なるほど‥‥それまで私が彼女を守る、ということか。」
リドリーと戦うにあたって、最大の脅威となるのは機動力だ。
それを、サムスのアイスビームならば封じることができる。
『無論、忘れてはならないことがある。』
「まだなにかあるのか。」
『君自身の命も失われてはならない。』
「‥‥!」
『これについては、異論は認めない。レディー。』
いつか聞いた言葉だが、そこに込められた想いは真逆で。
それに私は言葉で返さず、小さくサムズアップで返した。
これだけでも、アダムにはきっと伝わると知っているからだ。
「止まれ。」
パイレーツシップを目前にして制止を呼び掛けると、サムスはコチラの指示に従ってくれた。
ここを過ぎればシップへの侵入を許すことになる。
…仕掛けてくるとするならココだろう。
『上だ、レディー。』
簡潔すぎる連絡。それ聞くよりも前から、私は奴の存在に気づいていた。
この、悪意を隠そうともしない殺気。決して忘れはしない、邪悪な気配。
それから私たちの頭上から猛スピードで迫ってきていたのだ。 - 78二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:05:55
「ギィヤォォオオオオ!!」
雄叫びに揺らされた大気の振動が、パワードスーツ越しに伝わってくる。
横目でサムスを見てみれば、彼女は驚きつつも怯えてはいないようだ。
‥‥これならいける。
「‥‥リドリー。」
「え?」
「リドリー、コイツの名前だ。気をつけろ、今までの生物兵器とは桁違いだ。」
戦闘開始の合図代わりに短く警告し、アームキャノンを構えた。
リドリーとは幾度も戦ったが、そのほとんどが基地内部などの閉所空間だ。
それ故に、お互い至近距離での短期決戦という形になっていた。だが…
(速い…!)
今回は遮蔽物など何もない、荒野が戦場となっている。
飛行能力を持つリドリーからすればうってつけの場所だろう。
上空から強襲し、反撃を受けるまえに上空へと戻る。
単純なヒットアンドアウェイだが、コチラからすれば厄介極まりない。
(合点がいった…。)
なぜエネルギー生産施設から遠く離れた荒野にシップを降ろしたのか、うっすらと疑問に思っていたが、その答えがわかった。
奴らは合わせたのだ。
自分たちの最高戦力にして旗印、それが最も力を発揮できる条件に。 - 79二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:06:24
「喰らえっ!!」
サムスも必死に応戦しているが、その動きから動揺しているのがみえた。
無理もない。
彼女にとって、同格以上と戦うのは初めてだろう…その相手がよりにもよってリドリーなのだ。
彼女の武装が"対メトロイド"に特化しすぎているのも問題だった。
彼女のスーパーミサイルは 貫通能力を付与するために、爆発の規模そのものを犠牲にしてしまっていた。
アイスビームも、リドリーの巨体では一部を凍らせても効果が薄かった。
「ギィヤォォオオオオ!!」
炸裂したスーパーミサイルをものともせずに、サムスに向かって突撃するリドリー。
攻撃に備えて身構える彼女に迫る、槍のような尻尾を間一髪ビームで弾き返した。
「しっかりしろ!距離を取れ!!」
「ああ、すまない・・・!」
サムスが態勢を立て直す時間稼ぎにビームを連射するも、リドリーはそれを全て躱して上空へと舞い戻った。
「またか…!」
「焦るな、落ち着いて攻撃に備えるんだ。」
‥‥さきほどは危ないところだったが、サムスにはリドリーの攻撃ははっきりと見えていた。
戦っているうちにリドリーの動きに対応できるようになりつつあるのだ。
頃合いだろう。 - 80二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:06:49
「聞け、サムス。作戦がある。」
「え、ああ、なんだ、イヴ。」
彼女の戦い方をみて、気づいたことがある。
アイスビームを単発または連射するばかりで、チャージする様子はみられなかった。
アイスビームの凍結能力が高すぎて、チャージする必要性を感じなかったのだろう。
今がその"必要な時"なのだ。
「奴を倒すには、まず動きを止める必要がある。」
「それは同感だが、あの巨体をどう止めればいいか…。」
それを口にすることはしなかった。
これから先も、故郷を守るために戦うであろう彼女には、できる限り自力で強くなってほしかったのだ。
「わかった、イヴ。奴の動きは私が封じる!」
「攻撃のほうは任せろ‥‥来るぞ!!」
ハッとした…まさにそのような様子をみせたかと思ったら、サムスのアームキャノンが白銀に輝く。
コチラの意図は伝わったようだ。
光がアームキャノンだけでなく彼女の全身を包みこんだ瞬間、白銀の光線がリドリーめがけて発射された。
真っ白な爆発が起こり、翼が凍りついたリドリーが落下してきた。
「くらえっっ!」
今度は私が応える番だ。
リドリーの巨体をロックオンし、大量のミサイルを同時発射‥‥"ストームミサイル"を叩き込む! - 81二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:07:18
「ギャオオァァァァァ!!」
絶叫をあげるリドリー…だが、私は知っている。
奴がこれしきのことで狼狽えはしないということを。
「「「「「ギィヤァアアッ!!」」」」」
「新手か!!」
パイレーツシップから生物兵器の群れが雪崩れ込んでくる。
どうやらリドリー指示に従うように改造されている、そう思っていたが…
「な…なんだ…これは!?」
「リドリー‥‥貴様…!」
現れた生物兵器たちは、"我先に"とリドリーに殺到し‥‥貪り食われた。
彼らはただ兵器として改造されただけではない。
自らリドリーのエサとなるようにマインドコントロールも施されていたのだ。
さらに、私たちの動揺を見透かしたかのようにリドリーの口が醜悪な笑みを浮かべ…
「また空中に、いや違う…!?」
「逃げるつもりか!!」
再び飛び上がったリドリーは、私たちに目もくれずに"ある方向"へと移動し始めた。
あっちにあるのは確か…
「させるかぁぁあああああっ!!」
サムスが怒号と共にアイスビームを乱射する様で気づいた。
あの方向は、居住区がある方向だ。
奴は‥‥サムスの仲間を、家族を襲うつもりなのだ。 - 82二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:07:56
(もしかしたらお前のママも喰われちまって、俺の細胞として生きてるかもしれないなあ?ここか、ここかな!?挨拶ぐらいしろよ!)
あまりにも残酷な所業に、忌まわしい記憶が蘇る。
これ以上…奴の好きにさせてたまるものか!!
(多少の攻撃ではリドリーを撃墜できない…ならば!)
グラップリングビームで、リドリーの尻尾を捉える。
そのまま奴を地上に引きずり降ろそうとするも、体格差からか足止めで精一杯だった。
「イヴ…!」
「お前も引っ張れ!グラップリングビームだ!!」
「グラップリング、ビーム…?」
サムスの力を借りようとするも、彼女はまだグラップリングビーム能力を復元していないようだ。
戦闘に対処するばかりで、探索用の能力は後回しにされていたのだろう。
「私にできることは、ほとんどお前にもできる。…自分を信じろ!」
私は、多くのモノをリドリーに奪われた。
科学者だった両親、第二の父グレイヴォイス、そして…ベビー。
彼らはもう帰ってこない…永遠に失われてしまった。
だが、彼女の仲間は…家族はまだ間に合うのだ!
(やるんだ、サムス・アラン!君に、私と同じ悲しみを味わってほしくない!!)
心のなかで必死に祈る。
それに応えるように、彼女の腕からグラップリングビームが放たれた。
二本筋のエネルギーに絡めとられ、とうとう地べたに叩きつけられるリドリー。 - 83二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:08:43
「お前だけは…生かしておけないっ!!」
「サムス!」
もがく翼竜に向かって飛び掛かるサムス。
その右腕のアームキャノンから、緑色の閃光が迸る。
「うぉぉおおおおおおおおおっ!!!!」
灼熱のプラズマが、狡猾の死神の頭を吹き飛ばした。
沈黙したリドリーの前でへたり込むサムス。
彼女の姿をみて私は…奇妙な感覚にとらわれていた。
(守れたのか…私は、リドリーから‥‥。)
守れたのは"私の家族"ではない。
"私の家族"を取り戻せたわけでもない。
だが、"もう一人の私の家族"は守れたのだ。今度こそ…。
「よくやったぞ‥‥サムス。」
「…全て君のおかげだ。ありがとう…イヴ!」
気づけば差し出していた左手を、もう一人の私はしっかりと握ってくれた。
本日はここまでです。
ありがとうございました。 - 84二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 23:41:36
乙です
おもしろすぎて発端スレまで遡って一気に全部読んできました
スレ主&スレ民の溢れるメトロイド愛を感じる… - 85二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 11:44:25
保守
- 86二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 22:48:57
保守
- 87二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 10:14:21
保守
- 88二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 21:22:45
とても良いSSだ……保守るぜ。
- 89二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 07:32:22
保守
- 90二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 18:43:28
本日20時 投稿いたします。
- 91二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:05:10
バウンティーハンターとして、パイレーツのみならず多くのならず者たちと戦ってきた。
その中には、相手の艦船に乗り込んで制圧することもあった
スペースパイレーツなどの、ならず者共が艦に求める性能は次の通りだ。
・相手の抵抗力を奪うための武装
・獲物を逃がさない機動力
・奪った品々を運搬するための積載力
要は略奪行為に必要な性能ということだ。
要求される性能が同一ならば、自然と構造も似たような造りになってくる。
「道はこっちで合ってるのか?」
「ああ。不本意ながら、この手の艦の構造は頭に入っている。」
今回も例にもれず、過去に乗り込んだ艦と大した違いはなかった。
…いや、違いがあるといえばあったが。
「それにしても、まあ…なんというか…。」
「涙ぐましいものだな。」
サビとヒビに覆われた壁に傾いた通路、補修なのかジョークなのか所どころに巻かれたダクトテープ。
流石にこんな有様な艦は、見たことがなかった。
この艦の様子が、そのまま今のパイレーツたちの状況を物語っていた。
(奴らが、この惑星を狙ったのは‥‥ただ自衛能力がないからという理由だったのかもしれんな。)
私とアダムは、パイレーツが鳥人族の遺産を狙って襲来したと推測していた。
だが理由はもっとシンプルで、切実なモノだったのかもしれない。 - 92二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:06:19
「こんなもの…B級映画でも見ないぞ、今時。」
「この執念をもっと良い方向に活かせなかったものか…。」
リドリーを撃退して以降、パイレーツや生物兵器は現れなかった。
それもあってか、サムスは周りをキョロキョロと観察する余裕を見せていた。
(のんきなものだ‥‥。)
まるで子供のような仕草に苦笑する。
実際、記憶がない彼女からすれば物珍しい光景なのだろうが。
いつしか私は、彼女の保護者になったような気分になっていた。
(アダムも、こんな気分だったんだろうか‥‥。)
かつて銀河連邦軍に所属していた頃、アダムは私のことをよく気にかけてくれていた。
幼い私はソレに反発するばかりだったが…今なら理解できる気がした。
「流石にブリッジにはパイレーツ共がいるはずだ、そいつらを倒し…。」
「ブリッジを制圧すれば、後は任せればいいのか。」
「ああ、私が艦を衛星軌道上まで操縦し、アダムが銀河連邦に引き渡す手筈だ。お前はブリッジ制圧後にすぐに降りろ。」
だが、サムスと共にいるのも終わりの時が近づいていた。
この艦の無力化がすめば、ほとぼりが冷めるまで彼女には身を隠してもらわなければならない。
‥‥銀河連邦に彼女の存在を察知されないためにも、私やアダムは、彼女に近づかないほうがいいだろう。
これが今生の別れになるかもしれない。
そう考え、思わず振り返ると‥‥ - 93二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:07:24
(‥‥?)
サムスは急に立ち止まり、動かなくなってしまっていた。
バイザーの向こう側の瞳は、どこか遠くを見ていた。
「サムス!サムス!」
「え、あ…イヴ?」
「急にどうした?いきなり立ち止まって…。」
「い、いや…なんでもない…。」
呼び掛けるとハッとするように動き出すサムス。
何でもないと言ってはいるが、心ここにあらず…といった様子だった。
さっきまで何ともなかったはずが、今の一瞬でいったい何が起こったというのか。
「おい、どうした?本当にだいじょ『サムス!そこから離れるんだ!』 っ!?」
私にとって、"サムス"は目の前の彼女も当てはまる。
それ故にアダムが、"どちらの"サムスのことを言っていたのか一瞬迷ってしまい、それは隙というには十分だった。
「イブ!!」
「来るな!お前はこのまま‥。」
壁を突き破って現れた"手"が私を捕まえ、そのまま外へと引きずり出す。
高々と掲げられたと思った瞬間、近くにあった大穴に叩きつけらる。
そこでようやく私は、相手の姿を確認できた。ソレは…
「リドリー‥‥!?」
頭部を失ったリドリーだった。
いくらリドリーといえど、頭を潰されて生きているはずが… - 94二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:09:04
『レディー、大丈夫か。』
「ああ…すまない。警告に反応できなかった。」
『いや、こちらの対応が遅かった。…どうやらこのリドリーは、シップからリモートコントロールされているようだ。』
「リモート、コントロール‥‥。」
パイレーツは今まで何度もリドリーを再生させてきた。
それは奴が、パイレーツの象徴ともいえる存在だったからだ。
パイレーツが一つの勢力として団結するために、旗印として必要されたから、リドリーは何度も地獄から蘇させられてきた。
「‥‥‥‥。」
そのリドリーが、地獄へ還ることも許されずに、動かないはずの身体を無理やり動かせられていた。
面と向かって戦うこともできない卑怯者によって…。
「哀れだな、リドリー。」
同情したわけではない。
リドリーは、同情の余地があるような存在ではない。
だが、私には目の前の操り人形が‥‥どうしようもなく虚しく思えたのだ。
私自身、宇宙の悪夢とも呼んでいた"宿敵"が、自分が従えていたはずのパイレーツの"道具"に成り下がっている事実が…。
私は"左手"に意識を集中した。
"リドリー"だった頃の面影すら見えないほどに、ぎこちない動きで襲い掛かってくる"操り人形"。
それを余裕で躱す瞬間、左手で微かに触れる。
一瞬、私たちの間に激しい光が走り‥‥操り人形は動かなくなる。 - 95二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:10:16
「‥‥地獄に還れ。リドリー。」
操り人形から奪った光を‥‥"メトロイド"の能力によって奪ったエネルギーをアームキャノンにこめて、撃ちだす。
通常時を遙かに上回る巨大なビームは、操り人形を木端微塵に粉砕したのだった。
‥‥あれほど欲したメトロイドの力で地獄に還れたのだ。
リドリーも本望だろう。
「っっ!!?」
宿敵を送ったのも束の間、パイレーツシップが急に動き始めた。
それに驚きつつも、空中を連続でジャンプ‥‥"スペースジャンプ"能力によってシップに取りつく。
『聞こえるか、レディー。』
「アダム。サムスに何かあったのか?」
『どうやらリドリーが破壊されたショックで、シップのシステムに何らかの異常が発生し、それが原因で自爆装置が作動したようだ。』
「いくらなんでもオンボロにも程があるだろう…!」
アダムからの連絡に、耳を疑う。
この惑星にパイレーツが辿り着けたこと自体が奇跡だったようだ。
『シップの爆発は、エネルギー生産施設にまで及ぶ。そうなれば貯蔵エネルギーが誘爆するのは確実だ。』
「では、サムスがこのシップを動かして…。」
『彼女は、自らを犠牲に「そんなことはさせない。」
アダムの言葉を遮り、私はシップへと再侵入した。
システムの異常からか、船全体が大きく傾きながら動いている。
この状態では時間内にブリッジに到着できるかどうかは怪しかった。
すると、バイザーにシップのマップが映し出された。 - 96二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:15:48
『君たちが侵入した時から、シップのスキャンを始めていた。私の指示するルートを進みたまえ。』
「了解した。」
アダムが提示する、最適解ルートを走る。
サムスの故郷を、もう一人の私の故郷は今度こそ守れたのだ。
だから‥‥だからこそ!
「お前が犠牲になってどうする…!」
そんなこと、許しはしない。
彼女には帰りを待ってくれている家族がいるのだ。まだ生きているのだ‥‥!
今回のサムスに”違和感”を感じた方もいるでしょう。リドリーを哀れむサムスに。
私は、サムスにとってリドリーはある種の"特別"だと思っています。
メトロイドやXとの戦いが、鳥人族に託された"最強の戦士"の使命ならば
リドリーとの戦いは、一人の人間である"サムス・アラン"の宿命のようなもの…いわば人生の一部になってしまったのではないかと。
そう思うと、気づいたときには私の中のサムスがリドリーを哀れんでいました。
無論 解釈違いだと思う方もいるでしょうし、それはまぎれもない事実です。
不快に思った方がいるならば、申し訳ありませんでした。 - 97二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 01:53:02
エ◯同人ネタからここまで良質なssが見れるなんて。最後まで見届けたいか保守るね。
- 98二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 07:02:05
保守
- 99二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 18:51:09
保守
- 100二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 00:28:49
- 101二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 12:17:31
保守
- 102二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 22:36:16
明日には投稿したいと思います。
もう少しお待ちください。 - 103二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 09:49:56
保守
- 104二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:04:41
保守
- 105二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:11:11
アダムの補佐もあって、2分とかからずブリッジのゲートまで到着できた。
教えられた残り時間は、あと3分弱。
急いでサムスを連れて脱出せねば、とゲートに近づくも
「開かない…!?」
どうやら開閉機能が故障したようだ。
もはやポンコツを通り越してジャンクだ。
いつもならミサイルで強引に破壊するが、今やれば艦そのものが壊れかねない。
「ふんっっ!!」
となれば、残る手段は手動で開けるしかない。
ゲート脇の壁からバキバキッと音が聞こえるなか、ゲートを力づくでこじ開けようとすると…
「ぐうぅ…。うっ、うぅぅ‥‥!」
ブリッジの中から嗚咽のような声が聞こえる。
金属がひしゃげ砕ける音と、スクラップ寸前の艦があげる断末魔のようなエンジン音でよく聞こえないが、サムスが泣いている。
ゲートがこじ開けられる音にも気づかないくらい、追い詰められているようだった。
「かえりたい…。あのひとの、ところに…。あのこのところに…!」
(ああ、そうか‥‥。)
彼女は、良き人に出会い…幸せに暮らしていたのだ。 - 106二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:11:41
素敵な男性と出会い、良き家庭を築く。
そのような空想をしていたのは、実の両親と暮らしていた頃くらいだ。
鳥人族に保護され、彼らの後継者として育てられ、銀河連邦軍に入隊…そうこうしてる内に、自然と戦士としての人生を送ることに疑問を持たなくなっていった。
別にそれを悔いたことはない。
戦士だからこそ、出会い守れた人々がいる。
それは私にとって誇りであり、今の人生が決して誤りなどではない証明である。
彼女は違う。
記憶を無くし、自分が誰かもわからないところを、後の伴侶となる男性と出会った。
右も左もわからないなかで、手助けしてくれる友人に出会った。
愛する人との結晶たる、我が子が生まれてきてくれた。
彼女は、戦士ではない。平和の中で生きていくべき人間なのだ…愛する人と共に。
「ならば、帰ればいい。」
その彼女を、愛する人の元へと帰す。
それこそが、戦士たる私の使命なのだ。 - 107二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:12:03
パイレーツシップが爆発し、その姿を消した空をサムスは半ば呆然とした様子で見上げていた。
その姿に妙な既視感を覚える。
(……ああ、なるほど。あの時の私は、アダムにはこのように見えていたのか。)
1分ほど考えて、既視感の正体に気づく。
BSLと共に自爆しようとした私を、アダムが止めてくれた時のことだ。
命と引き換えにXを滅ぼそうとした私が、自らを犠牲にしようとした元Xの人間を救うとは、人生とはわからないものである。
『レディー、銀河連邦が報告を催促している。パイレーツシップの爆発は彼らにも察知されたようだ。』
どうやら頃合いのようだ。
任務完了と報告せねばならない…サムスの存在を秘匿して。
「シャインスパーク。」
「え?」
「今やった技の名前だ。スピードブースター能力の"裏技"みたいなものだ。」
無言で去るのもどうかと思うが、かといって別れセリフにちょうどいい言葉が思い浮かばずに、脱出手段に使った"テクニック"を口に出す。
「知らなかったのも無理はない。私も"あるモノ"から教わらなければ一生気づくことはなかっただろう。」
こればっかりは記憶がなければ、使用する以前の問題だ。
オリジナルの面目躍如だな。そんな自画自賛をしながら背を向けて歩き出す。
結局別れの言葉は思いつかなかった。
そのようなモノは私には向いていないということだろう。
「待ってくれ、イ‥‥サムス!」
だが、彼女は納得しなかったらしい。 - 108二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:12:24
それどころか、私にとって聞き流せない"名前"を出してきた。
確認しない…訳にはいかないだろう。
「‥‥思い出したのか?」
「いや、記憶が戻ったわけではないんだ。ただ‥‥パイレーツが君をそう呼んでいた。」
「パイレーツ…そうか、その線があったか。まあ、記憶が戻っていないなら‥‥」
私と"長年の付き合い"があるパイレーツ、そこから記憶を取り戻す可能性を失念していた。
実際には記憶を取り戻していないわけだが。
「記憶に関してはあまり気にするな。それがお前と…お前の家族のためでもある。」
言葉にはしなかったが、彼女が記憶を失ったままでいるのは、私自身のためでもある。
正直、もう彼女とは戦いたくないというのが本音だ。
彼女自身に悪意は無く、そして愛し合う家族がいる。
もう、誰かに家族を失う悲しみを味わってほしくはない…。
「…自分自身のことを知ることが悪いことだと?」
「‥‥お前の場合はな。それに‥‥」
「お前が、私と同じであることがそんなに重要か?」
それでも食い下がってくるサムスに、彼女自身の本質をぶつける。
どうか気づいてほしい。
例え始まりが遺伝子の複製だったとしても、この惑星での出会いと過ごした日々は自分だけの"記憶"だということを。
私の問いに戸惑うサムスであったが、急に様子が変わった。 - 109二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:12:47
『彼女の夫から、「サムスは無事か!?」と通信がきたので、スターシップを経由してミセスに繋いだのだ。』
「中々気が利くじゃないか。」
「ああ、わかった。今から帰る…もう少しだけ待っててくれ。」
通信が終わったのだろう、こちらに向き直るサムス。
先ほどと違い、その佇まいは堂々としていた。
「答えは出たようだな。」
「ああ。」
今度は彼女のほうから差し出された左手を、しっかりと握り返す。
…思えば、奇妙な戦いだった。
"二つの"故郷を思い出させる惑星で、人間となったSA-Xと出会い、彼女と共に戦った。
こういうことを…ヒトは"運命"と呼ぶのかもしれない。
「ありがとう。みんなを、私を助けてくれて…全ては君たちのおかげだ、"サムス・アラン"。」
「さらばだ、"サムス・アラン"。お前と、お前の家族が平和に生きられるように願っている。」
別れの言葉を交わしあい、今度こそスターシップに飛び乗る。
その時、ふとあるイタズラ心が生まれた。
スターシップに入る瞬間に、パワードスーツを解除する。
ちょっとしたテストのようなものだ。
自分と同じ姿を前に、自分が何者であるか、それを今一度彼女に問う。
最後に見えたのは、コチラに向かってサムズアップする"サムス・アラン"の姿だった。 - 110二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:13:47
コメント&保守ありがとうございます。
次回、エピローグと、ちょっとしたキャラクター紹介のようなものをしたいと思います。 - 111二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:42:00
最終話乙ですー
エピローグ楽しみにしてます - 112二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 06:51:32
保守
- 113二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 18:28:45
保守
- 114二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 01:58:55
保守アイスビーム
- 115二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 06:37:57
保守