- 1二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 11:21:22
彼女と結婚してアイルランドに来てから、2年の日々が経った。結婚生活は良好で、王族としてのふるまいや日常にも慣れてきた…とまでは言えないが、それなりにこなせてきたような気がする。
そんな中でも悩みはあって、それは彼女の不妊体質だ。前から言われていたらしく、それは世継ぎを残すことが必要とされる王族にとって大きな悩みとなっていた。
夫婦だからそういう行為もするし、当然そこには愛もあるのだが、子どもについては正直半ば諦めていた所もあった。
そんな中での彼女の一言に、どう返せば良いか分からなかった。だが何か言ってあげなければならない。今の感情は驚き、祝福、そして感謝。そんな気持ちをこめて「…ありがとう」と言っていた。 - 2二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 11:23:38
世継てピルサド殿下の方じゃないのか?
- 3二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 11:28:45
いざ妊娠したとはいえ問題も多い。安定期に入るまでは彼女の身も安全とは言えないし、下手にメディアに持て囃されても困る。その為彼女の身に安全が確保されるまで公表は避ける事にした。
実際彼女のつわりは見てる側からしても辛そうだった。食べたい物も食べられないし、食べても戻してしまったりする事もしばしばあった。そんな彼女を見て代わってあげたいと思った事が何度あっただろうか。そんな中でも公務はあるので彼女の近くにいられない日もあり、心ここに在らずといった感じだった。
せめて彼女といる日はずっと側にいて支えてあげようと行動していた。そんな日々が、しばらく続いた。 - 4二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 11:36:18
【ファインモーション様ご懐妊】
数ヶ月後、つわりも落ちつき彼女の身に安全が確保された為公表された。国中お祭り騒ぎで、これが王族なのかと改めて認知度の高さに驚くと共に彼女と夫婦になった事の責任を再確認した。彼女も動けるようになったので国民の前に出てくれば周り中から歓喜の声が上がり、殿下に手を振る。笑みを浮かべながら手を振り返す彼女は王族としての責務と母親になった事への幸せを噛みしめているようで、自分の知る彼女とは全く違う人にすら見える。そんな彼女を眺めているのを察したのか、こっそり笑顔を向けられた。可愛い。 - 5二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 11:44:54
久々に日本へ向かう事になった。走る事すら許されなかったファインモーションにG1を取らせたトレーナーというのをURAが手離す事もなく、たまにトレーニングの手伝いを頼まれる事もある。
「私も行って良い?」
彼女の提案に少し驚く。自分1人なら彼女の卒業後にカレンチャンのトレーナーと習得した瞬間移動で簡単に行って帰れるのだが…王族育ちの彼女、しかも身重の今ともなるとそうはいかない。SPがずっと共にいる事になるし、プライベートジェットは当たり前だし何ならメディアも密着する(正直、ちょっと邪魔だったりする)
身重の彼女を案じてやんわり止めようとするが、
「久々に友達に会いたくなったの。この子にも会わせてあげたいし」
と、愛しそうにお腹をなでる彼女を見て断れる訳もなかった。 - 6二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 11:55:01
しばらく来ていなかったので、懐かしさすら感じる。数多いウマ娘の走りを見て、彼女が現役だった頃を思い出す。ただまあ、彼女以上に響く走りはやっぱりなかったのだが。
G1トレーナーは人気らしく、7~8人から指導をお願いされる。1人1人向き合っていると、いつの間にか夜になっていた。その間に彼女はメディアの取材に答えたり、友達と会ったりしたらしい。
「…しっかし、本当にデキちまうとはなァ」
彼女の来日を知ってトレセンに来ていたエアシャカールと話す。自分より彼女に詳しいのでは?とも思っていたので驚きを隠せていないのを見て、こっちまで驚いてしまう。
「オメェは覚悟してたんじゃねェのかよ」
もちろん、できていた。
彼女の夫として、彼女の子の父としても。 - 7二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 13:48:34
「この子の名前、キミに決めて欲しいな」
以前なら驚いたりしていただろうが、今なら分かったと言える。俺はこの子の父親なのだから何かしてあげたいし、だからと言って産むのは彼女なのだからせめて名付けぐらいはしてあげたい。そう思って何通りも候補を出す。ただ責任は重大だ。
子どもの名前なんて考えたこともないし、それが王族ともなればメディアにも出るし国民にも認知される。誰もが納得する、とまではいかなくてもせめて人前に出しても恥ずかしくない名を付けなければならない。そんな事を考えてしまい、1週間とかでは全然決まらなかった。 - 8二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 14:01:56
結局どれだけ悩んでも決まらないので、彼女に相談することにした…自分のセンスのなさに若干の情けなさを感じてしまう。
「あははー、決まらないか。そういえば私のお父様も私の名前、なかなか決められなかったって言ってたなぁ」
様々な学びを重ねているであろう王族、しかも1度名付けを経験しているお父様ですら悩みに悩んだのだから、俺1人にできるはずもなかった。
「でも、そんな深刻に考えなくて良いんじゃないかな。キミが思いをこめて付けてくれた名前なら、きっとこの子もみんなも気に入ってくれると思うの」
名前なんて一生背負っていくものなんだから深刻にもなると思いつつ、ファインが言うなら案外そういうものかもしれないと感じるのは、彼女の性格とかをよく知っているからなのだろう。 - 9二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 14:11:53
さすさす。
彼女にお願いされたので、優しくお腹をなでる。ここに彼女と俺の子がいるんだ、と思いながら、それがどれだけ奇跡を重ねればできる事なんだと感じながら。
すっかり母親の顔になったファインが、手を重ねてくる。
「もう少しで、お母さんになれるんだね」
そこには嬉しさと、覚悟と、一握りの不安を感じる。彼女もいきなり母親になれる訳じゃない、だからせめて、やれる事は全部やろう。彼女はちょっと強欲だから、許してくれるはずだと思い、もう1つの手を重ねる。
彼女の手はやっぱり俺より小さい。ウマ娘なんだから当然力はあるが、それ以前に1人の女性だ。母親になろうがそれは変わらない。そんな彼女と一緒にいると決めたのは俺だ。だから、ずっと支えていこう。
彼女のお腹が動いたのは、そんな思いを感じてくれたからだと信じたい。 - 10二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 14:34:28
予定日より3日早く、その日はやってきた。ちょうど公務を終えた直後に慌ただしくなっている城の人々を見て、全てを察した。
「婿様、こちらです。着がえて下さい」
俺の希望で彼女の隣にいたいとお願いしていた。ファインの少し不安そうな顔を見て、共にいてあげなければと思っていたからだ。
彼女は既に破水していたみたいで、苦しそうな顔で汗を流している。これほどまでに代わってあげたいと思った事は、彼女の現役中にもなかった。
見ているだけじゃいけない。そう思って、せめて行き場のなさそうに棒をつかんでいる彼女の手を握る。
「…来て、くれたんだ」
何も言わずうなずいて、彼女の手を取る。正直人間に耐えられる痛みではなかったが、彼女はこの何倍も苦しいのだと思うと痛みなんてどうでもよくなっていた。
無事に産まれてきて欲しいと、無事に抱いて欲しいと、願いながら彼女の痛みを受け取る。
「はい!頭出てきましたよ!」
そしてその時は、来た。 - 11二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 15:11:54
ほぎゃあ…ほぎゃあ!
ああ、そうか。
涙って勝手に出てくるんだ。
「ありがとう」
自然とその言葉が出てくる。頑張ってくれた事、産まれてきてくれた事、そして俺を父親にしてくれた事。
「キミまで泣くんだ」
ありがとう…ありがとう。
彼女の手を握ったまま、涙を浮かべながらそう言い続ける。本当はずっとこのままでいたいが、彼女が自分の子を抱きしめられないのでゆっくり離す。
気付けば彼女の瞳にも涙が浮かんでいた。綺麗な瞳だ…この子にもそれが受け継がれてればいいな。
ゆっくり子を抱きしめ、母親になった彼女を、涙をぬぐってしっかり眺める。この光景は奇跡であり、彼女と俺の愛の結晶なのだろうと、今この瞬間を噛みしめる。
「ねぇ見て。この子、キミにそっくり」
この人を幸せにする純真な顔はファイン似だろうと思いながら、ゆっくり2人の顔を眺める。
「そういえばこの子の名前、決めてくれた?」
何個か考えていたが、彼女たちの幸せそうな顔を見た瞬間にたった1つしか出てこなかった。これから幸せに育ってくれるように。ファインや俺が、ずっと幸せであるように。
この子の、名前はーーー。 fin - 12二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 15:14:53
以上です。
駄文だったりキャラが崩壊してたりしたと思いますが、ここまで見てくださり誠にありがとうございました。
ソウルを乗り超えて母親としての幸せを感じるファインモーションを見たかったのでスレ立てさせていただきました。
最近出たssrサポカで彼女の可愛さを再確認したのもあります。ファインモーションってほんとに良いですね。 - 13二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 16:24:05
おつ
こういう原作で叶わなかった展開をトレウマでやるの何かいいわね