【閲注】すみませんここに来れば

  • 1二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 21:56:25

    下記スレみたいなミカの罪悪感を利用して身体の関係を持ってるナギちゃんが読めると聞いて来たんですけど、どうも難しそうなのでセルフサービスで用意しました

    ここだけナギちゃんが|あにまん掲示板bbs.animanch.com
  • 2二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 21:56:41

    このレスは削除されています

  • 3二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 21:57:10
  • 4二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 22:09:21

    共依存って素晴らしいよね
    百合って最高だよね
    ナギミカいいよね
    全部合わさったらもう語彙力消し飛ぶよね

    ごちそうさまです

  • 5二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 22:13:07

    >>4

    お粗末様です

    どっちかといえばナギサが依存してる割合高くなっちゃったし、なんなら全体的にめちゃ読みづらくなっちゃったけど許して


    それはそうとセイア何やってるんだろ

  • 6二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 22:19:16

    このレスは削除されています

  • 7二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 22:27:52

    最高すぎる
    助けられる権力を持つ立場にいるのにその立場が救いの枷となる苦しみは計り知れませんな
    全然読みづらくないしめちゃくちゃ心苦しくなったよ最高

  • 8二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 22:31:08

    >>7

    ありがとう 書いててしんどかったのでそう言ってもらえると嬉しい

  • 9二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 22:32:46

    セイアなりに救う手立ては考えてくれてそう
    でも恐らくナギサ以上にリアリスト・論理的なセイアのことだからこれもダメあれもダメで手が出せてないんではなかろうか
    セイアが復帰したてなら貯まってた首長としての仕事処理に奔走してるとかもあるやも

  • 10二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 22:43:59

    「恋愛経験豊富フォックスですまない」してくれ〜〜

  • 11二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:20:02

     ボランティア活動をしていて嫌がらせなんてしょっちゅうされるけど、その嫌がらせが全然目立たない場所で全然目立たないように置いてあるのは、さすがの私も初めてで。周囲には誰もいない静かな区域だったから、草むしりを中断して様子を見に行ってしまった。
    「……これ、私のロッカー」
     そう。今朝荷物を放り込もうとして、あまり綺麗じゃないのと変な臭いがするのが気持ち悪くてやめたロッカー。魔女だの何だの書いてあれば遠目でも私関連のなにかだってわかるけど、わざわざ文字のある面を横に向けてある。
    「なんで?」
     わからないで眺めていると、ぐさぐさと砂を踏む足音が一人分。何をされる覚悟もついているとはいえ、身構えてしまう。
     さあ次は何が来るのかな。あんまり汚れないやつで──。
    「ミカ様」
     現れたのは見知った顔だった。ちょっとほっとする。
     ナギちゃんの側近。何度も顔を合わせているし、今でも多少の雑談はする仲だ。軽く「やっほ」と挨拶すると、彼女は会釈を返してくれた。
    「まさかこちらにいらっしゃるとは思わず、とんだお見苦しいものを」
    「やめてよ。私ただの生徒だよ」
     いやいやそんな、と彼女は恐縮しきり。らちが明かないからひとまず尋ねる。
    「どうしてここに置いてあるの?」
    「私どもで運びました。邪魔にならない場所があまりなかったもので……ナギサ様からの許可はいただいています」
     代わりのものも置きました、と律儀に教えてくれる。置かなければ汚れないのに。へんなの。
     それより気になるのは。
    「ナギちゃんも見たんだ」
    「はい」
    「なにか言ってた?」
     こっちのほうが、よっぽど大事。ナギちゃんってば優しすぎるフシがあるし、変に気負ってないといいけど。
    「『トリニティの備品なのだから、清掃して誰でも使える状態にしておかなければいけませんね』、と」
    「それだけ?」
    「はい。あとは『スプレー塗料だからすぐには落とせませんね』くらいです」
     それまで平坦に喋っていた側近ちゃんは、そこで急にペースを落とした。
    「あまりお話ししていただけないのです。ミカ様のこととなると、なおさら」
     申し訳なさそうに言わないでほしかったかな。仕方ないことだもん。
    「そっか」と相づちを打って、なにか続けようとしたけれど、あんまりいいことは言えそうにない。
     数秒の沈黙をとっぱらったのは側近ちゃんのほうだった。

  • 12二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:20:55

    「……ミカ様」
     私の方を向いた側近ちゃんは浮かない顔。さっきからだけど。
    「ここならば誰も来ないことですし、打ち明け話をひとつ、よろしいでしょうか」
    「……私に?」
    「はい。本人にはあまり言えそうになくて」
     なにそれ。恋バナ? 私そんなに恋愛経験豊富じゃないんだけど。
     でも沈んだ表情じゃ聞かないわけにもいかない。教えて、と彼女を促すと、ぽつりと言った。
    「本当は……ナギサ様に怒ってほしかったのです、これを見せて。まるで嫌がらせになってしまいましたが……」
     短い打ち明け話。でもちょっとわかる。聞いてほしいよね。
     けれど、怒るって。私がされたいじめに対して。そんなことする必要、正直ないと思う。
    「裏切り者への仕打ちだよ?」
    「裏切り者でもミカ様です。一度は慕えた方に対して、ひどすぎる」
     あくまで私いち個人にとってですが、と彼女は締める。
    それはわかりきったこと。だから打ち明け話なんだし。
     それで私は表現をちょっと変えた。
    「フィリウスがパテルに言うことでもなくない?」
     彼女はどっちつかずに笑った。それから小さくお辞儀をして、校舎の表に歩いていった。

  • 13二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:24:08

         *   *


     ナギちゃんと、もうどれだけ世間話をしていないだろう。愚痴を言って、ほんのちょっとだけ言いすぎて、ナギちゃんに叱られて、なんかお菓子を口いっぱい詰め込まれて。そんな日常が大昔になっちゃった気がする。
     会えば会えるけど、今は意味が違っちゃう。
     昔とあんまりにも違いすぎる。ナギちゃんはナギちゃんなのに、変わってないのに変わったふりをして……いや変わってないわけじゃないか。目にクマばっかりできてる。普段はメイクで隠してるっぽいけど。私を呼び出して変なこと言い出した時から、健康体の顔をしてるところをあんまり見ていない。
     だからって、あんなになっちゃうのかな。
     私のこと好き勝手するのが楽しみになるように、変わっちゃうのかな。
     でも、たぶんナギちゃんは恋人になったら私を抱いてくれない。本人に訊いたわけでもなくて、ただそんな気がするだけ。
     姦.淫は罪だから、自分は罪人だから。私は幼馴染を襲ってセッ.クスするとんでもない極悪人です、みたいな。そういう建前なしに抱いてくれる気がぜんぜんしない。
     へったくそな演技だと思う。私は握った弱みで股を開かせる悪い女ですよって顔をして、いざ抱くときは壊れ物より丁寧に触るしいちいち触る許可だの動く許可だの取ろうとするし、あまつさえ恋人を誰にも渡さないみたいに抱きしめてくる。
     好きなだけじゃんね。私を。
     なんで好きだって言って、えっちなことしたいですって言わないんだろ。
    「魔女にでもなりたかったのかな」
     そうだったらよかったのかな、と考える。
     もし仮に、仮にだけど、あなたと同じ魔女になるってナギちゃんが言い出したら口にロールケーキ突っ込んででも止められたかもしれない。なろうとしたって、ナギちゃんは優しいナギちゃんのままなんだから。
    「ばか。ばーか」
     私もだけど。
     恋人じゃなくたっていい。どのみち私じゃナギちゃんをまた傷つける。
     なんでもいいから会いたかった。会いたいまんまで、私は草をむしり続けた。

  • 14二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:32:40

    魔女になりかけた、なってもいいと願ったミカだからこそわかる心の動きがあるよね……

  • 15二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:43:32

    素晴らしいスレだ

  • 16二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 05:56:04

    >>3

    >>11

    >>12

    >>13

    素晴らしい。本当に素晴らしい。

  • 17二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 07:01:52

    「忙しい中呼んですまない」
    ”お互い様。セイアも暇じゃないでしょ”
    「他派に仕事は振っている。ナギサと比すれば全く暇だよ」
    ”そっか。無理しないで”
    「無理できる身体じゃないものでね」
    ”なおさらだよ。…………それで、話したいことって?”
    「私にはあまり得意なたぐいの話じゃないんだ。ミカとはよく会うだろう」
    ”うん。ボランティア活動を見とかないといけないしね”
    「そうだろうね。彼女が話す中で、ナギサに言及することはどれくらいあった?」
    ”どれくらいって……多くはないよ。別の話をしていて「ナギちゃんならこう言ったかもね」とか、そのくらい”
    「そうか」
    ”それがどうかしたの”
    「いや……まあ、言うはずもないか」
    ”なになに。大変なことになった?”
    「大変ではないが……まあ、うん。大変だな。
    彼女らは互いを好いている。体も重ねている。だが付き合っている訳ではない」
    ”……えっと、どういうこと……?”
    「複雑なのはわかるだろう」
    ”私の理解が間違ってなければ”
    「細かいことを一切捨てて言えば、要はセッ.クスフレンドなんだよ。両思いの。厄介だろう」
    ”……それは、まあ、その。大変だね”
    「大変なのはこれだけじゃないのが辛くてね。むしろこの中身を相談したいんだ……実のところミカ本人から相談されたんだが」
    ”中身”
    「ああ。ミカは恋人どうしになれるならなりたいが、ナギサはどうも違う。
    そもそもナギサの認識としては『ストレスの捌け口に脅してセッ.クスしている』なんだそうだ。ミカが考えている限り」
    ”捌け口”
    「……先生、ついてこれているか?」
    ”たぶん……。要するにナギサに振り向いてほしいってことで、合ってる?”
    「随分端折ったな。それで合っているよ」
    ”合ってるかあ。……うーん”

  • 18二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 07:02:29

    「すまないね、面倒ごとを」
    ”いいよ。もう乗りかかった船だもの。
    さっき「両思い」って言ってたけど、それの確認はできてたりする?”
    「ミカの自己申告だ。『好きじゃなかったら絶対あんなに優しいえっちにならないもん。無理やりされたこともないし、体調悪かったら普通に帰してくれるし』と」
    ”惚れた弱みって感じがとてもする”
    「同感だよ、ミカは惚れっぽい気がしていた」
    ”セイアも頭を抱えたんじゃない?”
    「はは、ご明察。だが腹が立ったのも正直なところでね」
    ”腹が……立った?”
    「孤独のグルメみたいに言わないでくれたまえ、まだ昼食前なんだぞ。
    ……いや、ね。おそらくミカの言ってることは本当だ。ほぼ間違いなくナギサもミカに惚れてるだろう」
    ”どうして?”
    「勘だよ、女の。これは人類史二万年を見てもよく当たることが知られていてね。
    ……冗談はさておき。惚れているし惚れられているのに、愛してやらないのではミカが報われない。ミカが愛そうとしても受け入れない風にすら見える。十年来の幼馴染に体を許してもらって、それは無しだろう……」
    ”……”
    「……すまない、少し感情的になりすぎた。だが、どうすればいいだろうね」
    ”そうだね……”
    「……」
    ”……私はあくまでちょっと長く生きてるだけだから、偉そうなことを言うものじゃないんだけど”
    「うん」
    ”喧嘩してでも本人たちに話し合って貰うしかないような気がするね”
    「やはりそうなのか。荒療治だな」
    ”口先だけでどうにかしたくないでしょ?”
    「もちろん」
    ”じゃあ、その方向だね。私から話してみようか?”
    「いや、私がやる。早ければ今度の茶会で焚き付けられるかもしれない」
    ”まあ、時期は様子を見つつ。あとあんまり責めないでね。あまり二人に負担をかけちゃいけないし”
    「わかってる」
    ”セイアにも”
    「わかったよ」

  • 19二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 14:51:45

  • 20二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 19:25:58

    「ミカは最近どうかな」
     午前の茶会で、百合園セイアはまず鎌をかけた。
     ゆっくりと休みたいであろう午後は避けた。ナギサにとってはきつい話になるのだろうから。
    「どう、といっても。前回話したのは半月以上前ですし、セイアさんのほうがよくお話しされているのではないですか」
     特に反応なし。深い関係だと思っていないことの裏付けは、もう必要でもないが、まずは取れた。
    「いいやナギサこそ。
     ミカから聞いたよ。付き合っているんだって?」
     もうひとつ切り込む。今度は鋭敏な反応が返ってきた。動きが止まり、視線も泳ぐ。知るはずもないと思っていたのだろう。
    「どうして」
    「どちらかといえば、それは私が聞きたいね」
     感情的に繊細な部分をちくちくと刺す。蜂にでもなった気分だ。
    「根掘り葉掘り聞き出したい訳でもないが、私だって年頃の少女だ。恋バナくらいしてみたくもなる」
     恋バナ。恋愛感情ゆえにミカは君のそばにいるのだと、これで伝われば万々歳。もし既に彼女が気づいているのなら、もっと根も深い問題なのだが。
     ナギサは黙って様子を伺っている。私がまるで敵であるかのように。
    「二人の様子を見て、ああ楽しそうだなこの恋愛脳め、なんて君らを冷やかしてみたいと思ったわけだ。けれど」
     紅茶を一口飲んで続ける。
    「君は恋愛感情を隠すのが上手なようだから」
     ミカにまでそれを隠さないでほしい。
     伝わってくれ。あわよくば根腐れした部分に突き刺さってくれ。一刻も早く。あまり友人に刺々しい言葉ばかりかけたくはないんだ。
    「……これが恋愛に見えますか」
     ナギサ。じゃあ何故抱いた。
    「全部、聞いたんでしょう」
    「聞いた」
    「それでわかりませんか」
     わからない。納得の行く説明を要求したい。どうやったって納得できる気もしないが。
    「私が言いたいことも、わからないかな」
     返事はない。すでに棘が刃に近くなっているが、私とて感情を整理できていない。伝わるほうを優先しよう。
    「好きだという言葉くらいかけてほしいと思うんだ」

  • 21二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 19:27:10

    「できるはずがないでしょう!?」
     ああ。そうなってしまうか。
     悲しみが半分と怒りが半分。テーブルを両手で叩きながら立ち上がるナギサを見ながら、私はひどい気持ちになる。
    「この学校にいる限りずっと傷つけられなきゃいけないのに、言葉だけでミカさんを守れますか!」
     君の言葉が彼女の杖にならないと何故思っているんだ。
    「私がひと言伝えたところでそれ以外の時間ずっと貶められ続けて、その間私は何もできなくて、あまりに卑怯でしょう!?」
     その一言をかけられずに貶められるほうが辛いじゃないか。
     君だって力を振り絞って耐えているだろう。それを卑怯と言うなら、私の罪のほうが重い。ナギサほどに心を痛められなかった私のほうが。
     備品の落書き、報告は上がっていたんだ。私が横から書類を引き抜いて私の名で確認して決済しようとしたら、君がもう現物を見たあとだった。あの時の君がした目を、私はできなかった。なのにどうして、君が卑怯だと言われなきゃいけない。
    「私は脅したんです。脅してまでミカさんを手元に置こうとしたんです。これが犯罪じゃなければ何になりますか」
     知るか。ミカはそれで良かったと言ったよ。押し倒されてもいなければ傷をつけられてもいない。優しかったとも言っていたんだ。これのどこが犯罪か教えてほしいね。
    「ミカさんの喜ぶことひとつできない私にいったいなんの権利があるというんですか……!」
    「じゃあ盗ってやろうか!?」
     気づけば胸ぐらを掴んでいた。
    「知らないだろうが百合園セイアは君とは比べ物にならん大愚図でね! 友人への罵倒を見て可哀想だとも言ってやれない冷血だ!
     好きな女には愛なぞ囁かれないからと! ただ手近で多少認めてくれるだけの悪い女と引っ付いて! 幸せを追う気にもなれやしないまま一緒に暮らして! せめて君の恋人であったらよかったと空想しながらありふれた不幸になる!
     そんな姿を……そんなミカを見たいなら幾らでも見せてやろうか!! ええ!?」
     勢い任せに怒鳴る。

  • 22二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 19:27:32

     涙が出るといった反応は期待していない。あれはもとより悲しみのための反応だ。今は私に対して怒ればいい。
     私だって怒っている。ああ激怒しているさ。おかんむりだ。なんで好き合った人を愛してやらない。今日日ただの愛くらい誰も咎めやしないよ。傍から見れば悪人どうしの恋愛だ? 大変結構なことじゃないか。百合園セイアを舐めるな。この学校にいる限り二人まとめてずっと守り続けてやる。トリニティじゃ駄目なら職権でもサンクトゥス派でもシスターフッドでもシャーレでも何でも使って君ら二人くらいどこへだって逃してやれるんだ。
     君たちの為なら何でもしよう。好き合っているなら尚更。
    「……今君が言ったことのどこが罪だ。仮に犯罪者だろうが、せめて誰よりも愛している人のそばにいたいのは道理だよ」
     頭が冷えてきた。言いすぎている自覚がじわじわ浮く。
     ナギサは黙ったままだ。
     襟を握った手を離しても。
     そのまま一歩二歩と彼女から離れても。
     応接間を出る扉をゆっくり押し開いても。
     廊下に出てすぐ、応接間から誰かが座りこむような衣擦れが聞こえた。一人きりにさせたかったから、戻らずにそのまま歩いた。

  • 23二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 19:27:43

     本当はそのままうろうろと歩き回って時間を潰す気だったが、「ねえセイアちゃん」の声に呼び止められるのが先だった。
    「聞こえてしまったか」
    「あんな大声誰でも聞こえるよ」
    「すまない」
    「ううん、スッキリした」
     ミカは笑っていた。
    「ナギちゃんのばーかって言いたかったもん」
    「ばーかとは言っていないよ?」
    「言ったようなもんだよ」
     ならば、ナギサにも伝わってくれたか。受け止めてくれるかはわからない。あまり強く言い過ぎた。
     言葉を尽くせてもろくに物事を伝えられない私にとっては上出来と言えるが、もう少しナギサを傷つけない言葉を探すべきだった。次は考えよう。次なんてあってほしくもないというのは横に置いて。
    「これで考えてくれたらいいのだが…」
    「大丈夫だよ。もう私も踏ん切りついたし、ちゃんと話せるかも」
     それは良かった。私が焚き付ける必要もなかったかもしれない。
     私も表情を緩めて言葉を継いだ。
    「ならひとつ忠言だ。私のように怒鳴らないほうがいい」
    「気をつけまーす」
     そう軽くては不安になるが、本人がわかっているならいいだろう。
     分かれ道でミカは小さく手を振って、私と別れる。
     しかし直後、また私を呼び止めた。
    「あ、あとね、セイアちゃん」
     振り返るとミカはより一層にこにこと笑った。
    「私はセイアちゃんのにはならないよ」
     それが改まって伝えることか。
     相変わらずの能天気かつ直情ぶりに、私は思わず苦笑した。
    「知っていて言ったんだ」

  • 24二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 01:31:43

    全員が全員を大事にしているのにこんなにドロドロになってるの美しいな

  • 25二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 01:49:14

    ティーパーティーにはドロドロが似合う

  • 26二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 08:14:34

    ナギサは無力感でミカの代わりに魔女になろうとする
    ミカは恋愛諦めてもナギサのそばにいたがる
    セイアは自己認識が大愚図の冷血だけど二人を守りたがる

    この結果がドロッドロなのはままならないね

  • 2724/08/20(火) 19:41:29

    今日中にもう一個蛇足的なのを書きます

  • 28二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:54:01

     ナギちゃんの部屋のドアを開けた勢いで、開口一番。「ケンカをしに来ました」と私は宣戦布告した。
     セイアちゃんに押してもらった勢いのまま、とはいかなかった。フィリウス派内の会議や校外との交渉なんかがあるってナギちゃんから連絡を貰って、一昨日も昨日も会えなくて、今日ようやくナギちゃんの部屋まで来ることができた。
     久しぶりなのに、ナギちゃんはなんにも反応しない。
     ソファに姿勢よく座って、揃えた脚の上にこれまた揃えた手を置いたナギちゃんは、私のほうをちらっと見てすぐ元に戻る。その顔を見て、ちょっと引く。
     うわあ。たった二日でこんなにクマ真っ黒になる? 肌も荒れてるし頬もやつれてるし。さてはナギちゃん昨晩メイク落とさないで寝たね。
     テーブルの紅茶なんて湯気のひとつも立ってない。冷めてるじゃん。
     悲しくなる。泣きそうになる。なのに私の方なんて見向きもしない。言葉は返してくれた。
    「帰ってください」
    「やだ」
    「嫌でもです」
    「やだ。好きな人とお話したいもん」
     好きな人、という言葉にナギちゃんがぴくりと反応する。
    「そんな人はここにいません」
    「私の目の前にいる。ソファに座ってる」
    「セイアさんの所にでも行ったらいかがですか?」
    「私が好きなのはナギちゃんだけど?」
     いらっ。スネてるだけだ。頭の固い人だけど、こんな状態のナギちゃんはそうそう見ない。
    「もう来る必要はないんですよ。嬉しくありませんか」
     嬉しくない。はいここで終わりです、もう会えません。それでナギちゃんとの十年以上のいろいろが全部なくなるって、あまりにも横暴だ。
    「ナギちゃん」
     ねえ。こっちを見てよ。そう思う感情が強すぎて、言葉を選ぶことをどこかに置いてしまって。
    「私、好きでもない人とえっちするタイプに見える?」
     言って、後悔した。
     ナギちゃんは自分の太ともに爪を立てた。思いっきり。ストッキング越しでも血が滲むんじゃないかと思うくらい。
     その言葉が一番聞きたくなかった。そんな風に見えた。
    「……どうして、あなたは…………」
     ちょっとやばい。言い過ぎた。セイアちゃんに言われてたのに。とりあえず黙ると、ナギちゃんも黙ってしまった。
     我慢比べなら、今日の私は弱い。ナギちゃんが何も言ってくれない時間を耐えられない。
    「ねぇ」
     ナギちゃんを掴まえるのに、私はこれを言うのが精一杯だ。

  • 29二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:54:24

    「好きになっちゃ、だめなのかな」
    「────ッ!」
     髪と羽根が逆立つくらいに感情が爆発して、ナギちゃんは私に駆け寄った。
    「どうしてわからないんですか!!!」
     私の襟をぐしゃっと掴んで引き寄せた。
    「私はミカさんの何なんですか。あなたを不幸にする女をどうして好きになるんですか!?」
     大きい声を出したって騙されないよ。ロールケーキ片手に迫ってくるときの半分も怖くない。
     怖いっていうのはこういうやつだよ。
    「私の大大大っ好きなナギちゃんをバカにするのもいい加減にして」
     じゃないと怒る。そりゃもう本気で怒る。ナギちゃんが大好きだから。
     目の前にいる顔はよく見れば全然怒ってない。怖くてパニック寸前みたいな、泣き出す寸前の子供みたいな顔。
     そんなに怖かったかな。やっちゃったなあ、と思う。
    「ナギちゃん」
     表情をゆるめた。ついでに笑ってみた。
    「好きだよ」

  • 30二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:55:07

         *   *


     初めて彼女とした時のことを、今でも夢に見る。
     私は何をやっているのだろう。ミカさんに何をさせているのだろう。それを想像すらできないほどにひどく未熟だった。未経験なのに付け焼き刃の知識が役に立ちすぎて、ミカさんの知るはずもなかった部分を見てしまった。たくさん。 
     女性どうしの交わり方など、インターネットを介せばいくらでも指南するものを見つけられる。こうすると喜ばれますよと、事細かに書いてある。
     「喜ばれます」。私にとっては、うまく汚せます、の間違いだ。ミカさんの身体に触れるまで、そのことに気づけなかった。
     なぜ行動を起こす前にわからなかったのだろう。誰にも取られたくなくて、ミカさんの身体を求めた。そんなことしかできない自分が、ひどく汚らわしい。
     次第に早くなる息遣いも。上気する頬の色味も。感じたことのない体温も。それらすべてを、可愛いと思ってしまったことも。すべて罪だ。
     罪人め。好くことなんてやめてしまえ。
     ミカさんを貪る私を見て、私が言う。
     お前は友人を欲のために使い潰す女だと。
     ごめんなさい。こんなはずじゃなかった。もっとあなたの友人でいればよかった。あなたの味方でいればよかった。ちゃんと一緒にいればよかった。全部をなげうって、ずっとずっと守ってあげればよかった。
     けれど、もう、何もできなくなってしまった。 
     だからミカさん。
     お願いだから許さないでください。
     そう思っていたのに、あなたは私のところへ来た。

  • 31二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:55:28

         *   *


    「離してください」
    「やだよ」
     ナギちゃんを抱きしめていた。
     もう我慢できなかった。ナギちゃんをそれくらい好きになっていた。とっくの昔に。
    「ミカさん」
    「いやだ」
    「離してっ!!!」
     もっと強く抱きしめた。
     私も余裕がない。離したらどこかへ行ってしまいそうなナギちゃんを、それでも離すなんて難しすぎる。
     柔らかい身体だった。知ってるつもりで全然知らない、細くて華奢な身体だった。私のことや学校のこと、いろいろなものを背負ってもらっているのに。
    「……ううん、ごめんね。苦しいよね」
     腕の力を緩める。逃げる素振りはないから、そのまま手を離した。
    「どうして……」
     ナギちゃんは両手で顔を覆った。手まで肌荒れ。全部済んだらハンドクリームを塗ってあげよう。
     えっちするときに、私、気づかなかったのかな。いつもはちゃんとケアしてたのかな。もしそうなら私は愛されてる。もっと早く気づけばよかったな。
    「好きなものは好きだもん。私を触ってくれて嬉しかった。ムードなさすぎだけど」
     慣れてないのは手つきでわかった。でも身体を任せた。そしたらすごく優しくって、ああやっぱりナギちゃんだって思った。
     してる最中、ナギちゃんはずっとナギちゃんだった。私の大好きな人がそこにいた。だからお願い。私の好きな人をそこまで嫌わないで。
     ナギちゃんは顔を覆ったまま、その場に座り込んでしまった。緊張の糸が切れたみたいに。
     私も視線が遠くならないように、そばにしゃがむ。

  • 32二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:56:50

    「私、ナギちゃんを責めないよ」
     責めるような理由はひとつもない。ナギちゃんを傷つけると思って、私も逃げてた。
     全力でナギちゃんを追いかけるべきだった。いくらでも傷ついて、それでもナギちゃんを離さないでいればいい。やるべきことはただそれだけの、とっても簡単なことだった。
    「あんなことを、私が言ったせいで」
     どれのことだろう……なんて言ったら逆効果かな。ナギちゃんにかけられたどの言葉をとっても、私は全然気にしてない。
    「酷いことをしたのに……」
    「ひどくないよ。全然」
     ナギちゃんはぼろぼろ泣いてる。
    「ナギちゃんだからなんにも怖くなかった」
     顔を覆った指の間から涙がこぼれてて、袖にだんだん染みる。私、ナギちゃんを泣かせたんだ。もっと早く言えばよかった。こういう好きだってこと。
    「私が魔女になっちゃって、ナギちゃんがセイアちゃんと一緒に私を守り通してくれた時もね」
     一回で伝わらないなら、何回でも言っていい。
     気が済むまで全部言う。
    「幸せだな、って思ったの。生きててよかったって」
     なんにも言わなかった、なんにも話そうとしなかった今までを全部取り返すつもりでぶっちゃける。
    「ナギちゃんに私をあげること、これっぽっちも怖くなかったの。本当だよ」
     初めてがこれかあ、とは思ったけれど。そんなことは、思い出として百年経ってから話せばいい。
     私が伝えたいのは、もっと大事なこと。

  • 33二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:57:00

    「私はずっとナギちゃんのだよ。でもちょっと寂しいから、私にもナギちゃんをください。……ううん、ちょっと違う」
     これじゃ駄目だ。一番言いたいことを全然伝えられてない。
     告白っていうなら、こう言わなきゃ。

    「ずっと好きでした。恋人になってください」

     はい、は正直よく聞こえなかった。涙声どころか泣いちゃって表情筋もろくに動いてないんだもん。
     でも何度も言わなくていいよ。ナギちゃんのことは私が一番よく知ってる。聞き取れないくらいでナギちゃんの声がわからないなんて、そんな訳ない。
     三回も、四回も言わないで──五回目も言ったね。
     もう。ずっとそうしてるつもりかな。
     それじゃあキスもできない。
     ねえ、こっち向いて。
     聖園ミカは、今までに何十回もえっちした人と、今日はじめて恋人になって、人生で最初のキスをした。

  • 3424/08/20(火) 21:58:16

    以上です
    ハッピーエンド書けばいいってもんじゃないね 9割蛇足になっちゃった

  • 35二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 23:20:59

    こんな良スレを今まで見落としてたのが悔しい

  • 36二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 03:04:37

    素晴らしいナギミカ、素晴らしいティーパーティーだった

  • 37二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 10:55:30

    ありがとう1 ありがとうセイア

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