- 1◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 17:18:27
オリキャラ海世ユウの2スレ目です。
ステータス
戦闘dice1d100=96
神秘dice1d100=41
常識dice1d100=48
学力dice1d100=90
倫理dice1d100=21
友好dice1d100=34
戦闘ステータス(戦闘力ボーナスで最低45)
攻撃45+dice1d55=3
防御45+dice1d55=7
素早さ45+dice1d55=37
HP45+dice1d55=48
技能45+dice1d55=52
(固有武器有のステータス)
元の攻撃力+10+dice1d42=30
あらすじ。
中学校で悲惨ないじめを受け、人間不信になっていた所から先生と出会い少しずつ変わった海世ユウ。過去の理不尽も、未来に抱いた願いも受け入れて、踏み出した一歩と共に彼女のブルーアーカイブを紡いでいきます。
- 2◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 17:23:40
ミヤコからの友好度 dice1d100=37 (37)
ネルからの友好度 dice1d100=55 (55)
ホシノからの友好度 dice1d100=85 (85)
ハルカからの友好度 dice1d100=85 (85)
ノアからの友好度 dice1d100=48 (48)
ワカモからの友好度 dice1d100=81 (81)
カスミからの友好度 dice1d100=71 (71)
ユウカからの友好度 dice1d100=70 (70)
アリスからの友好度 dice1d100=50 (50)
ナギサからの友好度 dice1d100=44 (44)
セイアからの友好度 dice1d100=95 (95)
ミカからの友好度 dice1d100=95 (95)
アルからの友好度 dice1d100=99 (99)
アコからの友好度 dice1d100=96 (96)
- 3◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 17:27:11
性格の細かい部分
気の強さ(ここが低いとハルカと被っちゃうので、最低値50にします)50+dice1d50=42 (42)
アウトローdice1d100=70 (70)
素直さdice1d100=28 (28)
慈悲dice1d100=22 (22)
面倒見dice1d100=40 (40)
甘え度dice1d100=65 (65)
メンタルdice1d100=8 (8)
外見
1.普通の人間タイプ
2.ケモ耳
3.翼
4.角付き
dice1d4=3 (3)
身長 128+dice1d40=21 (21)
髪の長さ(50以下でショートヘア) 20+dice1d80=10 (10)
ユウの事務作業適正(学力補正で最低値45)
整理全般 45+dice1d55=21 (21)
データ入力・作成 45+dice1d55=10 (10)
筆記作業 45+dice1d55=53 (53)
連絡全般 45+dice1d55=31 (31)
会計 45+dice1d55=38 (38)
- 4二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 17:36:17
建て乙です!
皆からの好感度が結構高い… - 5◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 17:36:21
ステータスは物語の進行に連れて少しずつ変化します。特に他人への友好度は初期ユウと比べてかなりマシになっています。
現在彼女が心から気を許せるのは
先生
マリー
以上の二名です。
海世ユウ
年齢・15歳
所属・セレスティア連合学園
学年・1年生 - 6二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 17:38:43
前スレは…
- 7◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 17:39:04
そうなんですよね。なので、どうにかして気難しいユウへの評価を良くさせる展開に持ち込んだり、ユウ自身の態度を軟化させるなどで頑張りました。
幸いダイスに恵まれたので、ストーリーに整合性は生まれてくれたのでとても助かりました………
- 8◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 17:39:43
- 9◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 17:48:38
現在、海世ユウの固有武器の名称を沢山候補を貰っています。ありがとうございます。現在私が頂いた中で候補にしているのは
farewell to the past
バードストライク
アンビバレンス
以上前スレからは3つを候補とさせていただいています。
それに追加し、私自身が考えている候補もあります。
また、他作品と絡めたものや、ユウ自身との繋がりが見えなかった案は申し訳ありませんが除外させていただきました。近いうちに決定しようと思っていますので、よろしくお願いします。 - 10◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 17:53:42
海世ユウの戦闘スタイル
ショットガンでの接近戦がメイン。ただし、自らの翼を盾にしたり、移動の補助に使った変則的なスタイル。
そして何より、極めて高い感知能力で微弱な音と空気の振動をキャッチして、自身が作り出した霧のフィールドで一方的な不意打ちを行うスタイルも存在します。
彼女のモチーフは
狩人、鳥類、霧の三つを主としています。 - 11◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 19:38:51
【シャーレ執務室】
あの作戦から2日。今日のシャーレはめちゃくちゃ地獄。理由は今まで見たこともないような書類の山。正直、ここまでとなると執務机が重さで壊れないかと心配になるレベル。
先生は例の作戦の後処理に負われているし、その書類は機密情報だから私には手伝えない。だから、本来のシャーレの業務は殆どを私とユウカで担当していた。
"お、終わらない………"
「泣き言言ってないで手を動かしなよ。それ先生しか出来ないんだから」
"うぅ…………"
なんだこいつ。自分でやると言ったんだから頑張んなよ。………ま、こっちはこっちで頑張りますけど。いつもより二割増しで書類を片付けていると、ユウカが手を止めないまま声をかけてきた。
「ユウちゃん、腕も立つのに仕事も出来るのね。感心するわ」
「ま、慣れ…………ユウちゃん?」
待って。初めてそんな風に呼ばれたんだけど。思わず聞き返すと、ユウカはキョトンとした顔で首をかしげる。
「え?だって、あなた1年でしょう?」
「え、や………まぁ、そう、だけど」
「ならいいじゃない。………あ、そうだ。改めてユウちゃんにはお礼を言うわ。私達の大事な友達を助けてくれてありがとう。貴女がいなかったら、今頃ネル先輩がどうなっていたか分からないもの」
真っ直ぐに私を見て、頭を下げるユウカ。その態度に、私は頬を掻いて窓の外へ視線を向ける。
「いや別に………先生の頼みだった、し」
「それでもよ。ネル先輩を助けてくれたのは事実なんだから。………それにしても、噂は当てにならないわね。こんなに良い子なのに、あんな噂が立っていたなんて」
「………」
あの後は、私も色んな意味で大変だった。関係各所から次々に感謝の言葉を述べられるし、後始末の連絡のために、あの日だけでかなり連絡先が増えたし、コールサイン00からは機会があれば一戦交えてみたいと言うお言葉まで貰ってしまった。
普通にヤだけどさ。 - 12二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 20:46:33
スレ建て乙!頑張れユウちゃん!
- 13◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 21:29:22
「そう言えば、ユウちゃん。あなた、自分の学園の治安維持部隊には所属してないの?」
「…………してない。私帰宅部だから」
「あら、勿体ないわね。事務作業も出来て戦闘も出来るなんて、どこからでも歓迎されるでしょうに」
「私の噂、聞いたことあるって言ってたでしょ。別に全部嘘って訳じゃない。自分で言うのもなんだけど、良い子ってほど優等生でもないし」
「そのくらい、うちじゃ可愛いものよ………」
は?何?ミレニアムサイエンススクールってそんな修羅の学園なの?ミレニアムであまりヤバい噂なんて聞いたことないんだけど、もしかしてゲヘナ以上の魔境だったりするのだろうか。
「みんな仲はいいのよ?仲はね………」
とても疲れた顔をしている。詳しく聞かない方が良さそうだ。そこで、ふとユウカが思い出したかのように顔を上げて先生を見た。
「あ!そう言えば、ユウちゃんを巻き込んだこと、セレスティア連合学園に連絡は終わってるんですか?先生」
"ん?………あー。いや、実は今回はしない方針なんだ。ユウ自身の希望でね"
「え!?で、でも!今回の件を連絡しないって言うのは、彼女の今回の活躍について一切評価されずとも、ユウちゃんは声を上げられないということになりますよ!?」
"…………とのことだけど。ユウ、どうする?"
先生が私に尋ねてくる。けれど、その確認は先生に私の意思を伝えたときに、既に彼からされている。その上で、私は頷いたのだから。
「別に、見返りとか打算でやった訳じゃないし。それに、私への正当な評価は私が信頼してる"大人"がしてくれる。それだけで今は十分だから」
「…………凄いのね」
「………どーも」 - 14二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 22:18:36
少しずつ仲良くなっていくね
- 15◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 23:41:28
ユウカは昼過ぎ頃に、まだミレニアムの方でやる事が残っているからと言って帰っていった。まぁ、彼女も当事者の一人なのだから当たり前と言えば当たり前ではある。
その点、私の立場は気楽だ。学園に連絡されない以上、あくまでも今回の働きは完全に個人の範疇。そして、その責任はシャーレが持っているのだから、なんとも楽をさせてもらっている。目の前の仕事が無ければ。
"………ユウは頼りになるよね"
「は、はぁ?な、なに、藪から棒に」
"強い子だって言うのは分かってたし、真面目な子だって言うのも分かってたけどね。正直、不安でもあったから"
「………まぁ、その不安が分からない訳じゃないけど」
そもそも、私という存在が他からしてみれば危うい存在であるのに間違いないだろうし。暴走して残虐事件を引き起こした上に、現状正式な立場としては帰属意識のある場所もない。
自分で言うのもなんだけど、そこそこキヴォトスで腕が立つ自負もある。だからこそ、余計に周りからすれば爆弾そのものであるはず。
"けど、君は私の招集を受けて迷わず飛んできてくれて、その上私の望む事を全て叶えてくれた。あの作戦の成功は、間違いなく君が居てくれたからこそだ"
「あ、あのさ………そんなに褒められるとこそばゆいんだけど」
"それでも、あの作戦で生徒たちみんなの命を預かっていた先生としては、言わなきゃいけないからね。………改めて、本当にありがとう、ユウ"
「………」
やっぱり、とても真っすぐで嘘のない目だ。私もいつかこうなりたいと憧れた瞳。普段はバカで、親しみやすくて、計画性が無くて、頭がいいのにアホで。生徒に向き合う時は、誰よりも正直な人。
私もいつか、こんな風に誰かと向き合えるだろうか。
「………うん。どういたしまして」 - 16◆TJ9qoWuqvA24/08/19(月) 23:47:59
- 171224/08/19(月) 23:50:58
頑張れ!ユウちゃん!(^^)
- 18◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 01:42:55
本日ユウが会う相手は?
1.ネル
2.サクラコ
3.ノア
4.イチカ
dice1d4=1 (1)
ついでに友好度ダイス(作戦に参加したメンバーは補正+20)(ツルギは友好度とかそういう次元の話じゃねぇので省略)
ハスミからの友好度 dice1d80=41 (41) +20
サキからの友好度 dice1d80=61 (61) +20
イチカからの友好度 dice1d80=39 (39) +20
マシロからの友好度 dice1d80=35 (35) +20
モエからの友好度 dice1d80=80 (80) +20
ミユからの友好度 dice1d80=58 (58) +20
サクラコからの友好度 dice1d100=7 (7)
- 19二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 01:54:30
モエとサクラコ様は一体どうしたんだ
- 20◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 02:03:45
モエがユウ大好きで、逆にサクラコ様が海世ガチアンチでびっくりしました。理由を少し考えてみたんですが………
ユウ、よりによって教会で神様に対して割りと失礼な発言してるんですよね………ツンツンしてた頃の尖った発言の1つですし、マリーはその場にいませんでしたが(もし聞いていてもユウの境遇を知っているので流しますが)、サクラコ様が聞いたのだったら…………
モエはなんでしょうね?もしかしてユウを重火器(失礼)とでも思ってるんでしょうか。飛んできましたし。
- 21◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 02:31:10
ちょっと欲しい物があって、今日はミレニアム自治区に来ていた。なんでも、最新式のスモークグレネードが発売されたんだとか。
今までは濃霧を作り出すのにスモークを5つくらい焚いてたけど、最新式があれば2つで済む程らしい。
ま、実戦で使うのなんて私くらいなもんだろうけどさ。取り敢えず、絶対爆死して発売停止されるのは目に見えてるから、さっさと買い溜めするに限る。………終わったら、またシャーレに顔だしてみるかな、何て思ってたら。
「お?オメーはあんときの………」
「は?………あぁ、C&Cのリーダー……ネル、だっけ?」
「おう。例の件では世話になったな」
「………なんか誤解受けそうな言い方やめてくれる?」
不良とつるんで悪いことしてたなんて噂が広まったら最悪なんだけど。しかし、そんな私の言葉を鼻で笑うネル。
「ハッ。体裁なんざ気にするタマじゃねぇだろ。されより、こんなとこでなにしてンだ?」
「……買い物」
「へぇ、以外と女の子らしいところあんだな」
「………私をなんだと思ってんの」
……言えねぇ。買いに来たのが最新式のスモークなんて口が裂けても言えない。けど、それとは別問題として、このちびっこは私が女以外の生物に見えているんだろうか。だとしたら喧嘩だけど。
「あたしらと同類だと思ってたんだよ。あたしやあのツルギとか言うやつを見ただろ?オメーもこっちと同類なら、強い奴を見て燃えるタイプだと期待してたんだがな」
「………あっそ。残念だけど、私あんまり喧嘩好きじゃないから」
「………へぇ、なるほどな」 - 22二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:57:24
買うものが何かでアンジャッシュみたいになりそう(小並感)
- 23◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 15:19:05
ネルは私の言葉を聞いた後、暫く黙って私の目を見ていた。その瞳は、先生とは違う真っ直ぐな瞳だけど、どちらかといえば私を試すようなそれに、私も思わずじっと彼女の瞳を見つめ返す。
「......ハっ。いい目をしてんじゃねぇか。それなら心配はいらなそうだな」
「は?......急に何」
「自分の評判を知らねぇわけじゃないだろ?こういっちゃあれだが、私の立場からはどうしても警戒をしなきゃいけない奴だったんだよ。あんたは」
「......それで?」
「けどまぁ、今のお前を見てたら杞憂だと思ってな。試すようなことして悪かったな」
ニヤリと笑みを浮かべるネル。なんのため......っていうのは今言ってたか。見た目に似合わず真面目な奴だ。そして、彼女は軽く手を振ってくるりと踵を返す。
「んじゃ、あたしは今から仕事があるからな。あぁ、あと新発売のスモークならあっちで売ってるぞ」
「は!?な、なんで知って......」
「え?」
「......え?」
自分で言っておいて、驚いたような声を出したネル。は?まさかこいつ......私は少しずつ顔が赤くなるのを感じるのと反比例するように、ネルは少しずつ口角が上がっていく。
「くっ、くくくく......お、女の子......っぷ」
「っ!」
結局喧嘩した。それはもう、ド派手に。任務をほっぽり出して喧嘩してたネルを呼びに来たアカネに止められるまで、そこは誰も近づけない危険地帯と化していた。
戦うのは嫌いなはずだったけど、笑みを浮かべて心底楽しそうなネルを見ていると、なぜかいつものような引き金の痛みは感じなかった。
それはそれとして、喧嘩をしたことはあとで先生に怒られてしまった。ちょっとだけ落ち込んだ。 - 24二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 16:09:52
うん…まぁ…うん…
- 25◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 17:28:05
カズサからの友好度 dice1d100=47 (47)
ナツからの友好度 dice1d100=89 (89)
アイリからの友好度 dice1d100=69 (69)
ヨシミからの友好度 dice1d100=69 (69)
アズサからの友好度 dice1d100=37 (37)
ヒフミからの友好度 dice1d100=46 (46)
コハルからの友好度 dice1d100=1 (1)
ハナコからの友好度 dice1d100=51 (51)
- 26◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 17:30:04
コハルーーー!?!?!?
- 27二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 17:35:22
コハルに何があった
- 28二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 18:17:15
エ駄死関係なら良いんだが…
- 29二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 18:19:01
シンプルに欠片もあったことがないだけかもしれない
- 30二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 19:06:03
面識皆無+ツルギを庇って助けるくらいに強い+先生に会うまでツンツンしてた
- 31◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 19:22:36
【シャーレ執務室】(※今回ユウ視点ではありません!)
例の作戦から一週間。両校は徐々に落ち着きを取り戻し始めているらしいが、シャーレはそうもいかない。
違法兵器の処理手続き、安全かつ信頼出来る解体業者への連絡、万が一流出してしまっている兵器がないかの情報収集、更には再発防止策の提案資料の作成………他にも数えきれないほどの仕事が積み重なっているのだ。
「………ねぇ、増えてない?」
"はは……実は、例の工場から押収した兵器で厄介なのがまた見つかっちゃってね……処理は確定してるから問題はないんだけど、報告書とか処理手続きが……"
「はぁ………あなた本当に死ぬよ」
"大丈夫。ユウを残して死んでいられないからね"
「なっ!?な、何言ってんのさ!!」
かつては『悪魔』とまで呼ばれた少女に、その面影はなかった。やや素直さに欠ける所は変わらないが、前よりも浮かべる表情が増えたのは間違いなく最も大きな変化であり、過去の彼女が今のユウを見れば、それこそ自身が最も信じることが出来なかっただろう。
だが、彼女も分かってはいたのだ。未来がどれほど変わろうと、過去は変えられない。
しかし、最近は失念していたのだ。海世ユウの名を知っても、分け隔てない者達のせいで。
故に………
「先生!みんなで課題の提出に来ました!」
「先生、お邪魔する」
「お邪魔しますね、先生」
「じゃ、邪魔する――――ひっ!?」
これが、本来の当たり前なのだと言うことを、忘れていたのだ。 - 32二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 19:52:01
あ〜…なるほど…
- 33◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 20:12:42
"みんな、いらっしゃ………コハル?"
「?コハル、どうした」
「あ………っ………はっ、はっ……」
「こ、コハルちゃん!?どうしたんですか!?」
「……あら」
執務室に入るや否や、腰が抜けたようにへたりこむコハル。呼吸は荒く、その表情は明らかに恐怖一色に染まっていた。
揺らぐ視線で見つめる先には、大きな翼。そして、騒ぎを聞いたその少女が振り向いた。
あの、『悪魔』を象徴する黄金の瞳だった。
「う、海世………ユウ……」
コハルが彼女の名を呼ぶ。当然ながら、事情は分からずともそうなれば皆の視線も彼女に向く。そして、こんな時に最も行動が早いのは仲間思いであり、良くも悪くも迷いのないアズサだった。
「………コハルに何をした」
「……はぁ?なにもしてないし。てかまず誰、そいつ。私知らないんだけど」
「とぼけるな。普通に考えて、何もないのにこんな風になるわけがない」
「ちっ………」
アズサの一方的なコミュニケーションに苛立ったユウは思わず舌打ちもする。そして無意識ではあるが、ユウは瞳を細め、翼を逆立てて敵対的な雰囲気を放ってしまう。それが、最後の一線だった。
「ひゅっ………」
息の詰まったような声。そして、ユウの放つ雰囲気を感じ取ったアズサはついに銃を向けてしまう。
その瞬間。
「―――なっ!?」
一瞬たりとも目を離していない筈だった。だと言うのに、いつと言うのも分からないまま、アズサの向けた銃口の先には空の席と、舞い落ちる青い羽だけが残されていたのだ。 - 34二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:09:25
強キャラの風格
- 35◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 21:23:29
「ど、どこに……」
「弱いんだよ」
「なっ―――ぐっ!?」
アズサがその声に振り向いた瞬間、足元を刈られて姿勢を崩す。そのまま彼女の青い翼で殴られ吹き飛び、執務室の壁に叩きつけられたアズサはユウの細い手で首を捕まれ、その細腕からは考えられぬ怪力で持ち上げられる。
苦しそうな呻き声を上げるアズサの顔に、非情にも銃口が突き付けられた。
「ぐッ……あぐ……!?」
「アズサちゃん!!!」
「あ、あ、アズサ…………っ!」
「動くなッッ!誰一人ッ!」
ユウの鋭い怒号に、コハルは大きく肩を震わせて動きを止め、ヒフミも口を閉じる。唯一、ハナコは最初から慌てる様子もなく事の成り行きを見ていたが、チラリと先生に視線を送った。
"ユウ"
「………」
"大丈夫。大丈夫だから、ね?どっちも銃を下ろして。喧嘩はやめよう"
「…………」
先生の言葉に暫く沈黙が走った後、ユウは乱暴にアズサの首から手を離した。突然解放された事でアズサは受け身を取ることも出来ず、床に倒れて苦しそうに息をする。
「げほっ、げほっ………」
「アズサちゃん!?大丈夫ですか!?」
「ヒ、フミ………私は、大丈夫だ。それより――」
"アズサ、怪我はない?"
いつの間にか補修部の近くに来ていて、心配そうにアズサの顔を伺う先生。しかし、本人としてはそれどころではなかった。
「っ……先生。彼女は危険だ。すぐに…………」
"アズサ、落ち着いて。良く思い出して欲しいんだ。まず、ユウとコハルの話しを最後まで聞いた?" - 36◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 21:35:51
先生の諭すような声。それを聞いて幾分か冷静になった彼女は、ゆっくりと首を振った。
"ユウも急に銃を向けられて驚いてしまったんだ。だから、一度ちゃんとコハルに話を聞くべきだと思うよ"
「………そうだな。すまない、先生」
"謝るなら私じゃなくてユウに、ね?
「……分かった………その、すまなかった」
「………」
アズサの謝罪に対してユウは何も言わない。しかし、向ける視線が未だにアズサへの敵意を納めた訳ではないのは、こう言った荒事が得意なわけではないヒフミにすら感じ取れた。
無言のまま、元の席に戻って自らの散らばった羽を捨てて仕事に戻るユウ。そんな彼女を確認した後、先生は補修部を別室へ移動させるのだった。
【シャーレ内の通路】
先生はコハルをソファーに座らせ、ヒフミ達に任せてある間にシャーレのショップから飲み物を買ってきて、補修部の皆に渡していた。
"コハル、落ち着いた?"
「う、うん…………その、ごめんなさい。私のせいで、アズサに喧嘩させちゃった……」
「気にするな。私が先走っただけだから。………だが、コハルは何故彼女のことをそんなに恐れているんだ?」
「………その」 - 37◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 22:31:24
聞いてみれば、それは先生とハナコにとっては予想通りと言うものだった。過去に海世ユウが引き起こした事件は、キヴォトスでも類を見ない残虐性と狂気を持ったものだとして、瞬く間にキヴォトスに広まってしまった。
ニュースでは名前が出なかったものの、この情報化社会は恐ろしい物であり、調べればすぐに彼女の名前に辿り着くことが出来た。過去の環境が劣悪だったアズサや、そういった事にあまり関心がないヒフミは彼女の事を知らなかったらしいが、コハルは見てしまったのだ。
ネットに挙げられていた、例の事件………それも、彼女のクラスメートが撮った事件当時の写真がネットにアップされているサイトを。
「………わ、私、その、名前を知るだけのつもりで………写真まで上がってるなんて、思ってなくて………!!」
"大丈夫。そう言うのは………まぁ、完全に対策するのは難しいからね。それで、見てしまったんだね?"
「う、うん………」
「そ、そんなに酷い物だったんですか………?」
ヒフミが怖い物見たさに思わず聞いてしまう。しかし、その問いに対してコハルはやや顔を青ざめる。聞いてはいけない事を聞いてしまったと後悔したが、少し遅かった。小刻みに震えだしたコハルを見てどうしようかと思った時、ハナコがしゃがんでコハルと視線を合わせると、そっとコハルの手を握った。
「………コハルちゃん。そこまで見てしまったのなら、ユウさんが何故あのような凶行に至ったかも知っていますよね?」
「………うん」
「私の見立てですが、あの人は理由もなく人を傷つけるような人じゃありません。それに、先生の所にいると言うことは………きっと、彼女も変わろうと頑張っている所なんだと思います。なので、アズサちゃんやコハルさんの態度は、きっとショックだったと思います」
思い返せば、彼女はアズサに銃を向けられるまで一切手を出していないし、先生の言葉にも従って銃を降ろしたのだ。コハルが最初に想像したような残虐非道な人物なら、警告もなくアズサの顔面に散弾を見舞っていただろう。 - 38◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 22:47:05
「………」
「………」
「無理に仲良くした方がいいとは言いません。苦手な人と言うのは、どうしてもいますから。でも、噂で人を判断するのは良くない事だと思いますよ」
普段のハナコと違って、真面目でどこか優し気な声だった。もし彼女がハナコの言う通り、自分を変えたいと思っていたのなら。そのための一歩を踏み出している中で、あんな態度を取られてしまったら。
そこまで想像して、過去の経験から理不尽というものを良く知っているアズサは先ほどの自分の行動を悔いる。
「………先生。すまない。もう一度、彼女に謝らせては貰えないだろうか」
"アズサは優しい子だね。でも、多分今のユウも冷静じゃないと思うから。それはまた今度にしよう。まだ謝りたいと思うのなら、日を改めて私に言ってほしい。そしたら、ちゃんとその場を用意するから"
先生のその言葉を最後に、今日の所は皆で帰ることにした。勿論、課題は受け取ってだが。先生も何となく予想はしていたのだ。彼女は確実に良い方向へ変わっているが、それは彼女の過去が消えたわけではない。
彼も彼女の先生として、彼女の過去に起こした事件については詳しく調べていた。その悲惨さと拡散度を考えれば、彼女が卒業しても早々忘れ去られるものではない。
だからこそ、先生は彼女に強くなってほしいと願った。辛い過去が呪縛のように絡みつこうとも、それでも前に進み続ける本当の強さを。口で言うのは簡単かもしれないが、その道は茨だ。でも、きっと彼女なら。
先生は通路から見える広い空を見上げ、いつか自由な大空に飛び立つであろう少女の未来を夢想するのだった。 - 39◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 22:55:23
――――
――――
今回はここまで。聡明なハナコが丁度いい友好度だったのが救いでした。実際、ユウの事件を知っていればハナコはユウに対して好きも嫌いもなく、客観的な視点の立場になれると思いますし。これでハナコまで友好度が50切ってたら大変だった………
でも考えてみれば、今まで周りからの友好度が高かったのが寧ろ変なくらいで、本当ならコハルくらいの友好度が普通なんだろうなとも思いましたね。
ただ、何の捻りもない仲違いではちょっとあれなので、未来のある終わり方にさせてもらいました。補修部の皆凄くいい子ですからね………ちょっと溝は出来てしまいましたが、それも「これから」があると言うことで。 - 40◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 23:01:22
- 41◆TJ9qoWuqvA24/08/20(火) 23:57:08
最近コメントや感想が増えてきて、とてもモチベーションになっています!全てに返信出来るわけではないですが、全て読ませて貰ってニコニコしてます。
次の展開を決めなきゃですので、ダイスします!
本日ユウが会うのは?
1.マリー
2.ミカ
3.ワカモ
4.アル
dice1d4=1 (1)
- 42二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 00:03:48
癒し回だ!!!!
- 43◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 01:49:11
アズサと喧嘩してしまって2日ほど。今日は当番も無くて、何となくD.Uの公園のベンチに座ってボーっとしていた。最近はセレスティア自治区にいる時間もそう多くない。別に悪い所じゃないけど、あそこは私が好きな物が少なすぎる。
………喧嘩って意味では、ネルとやりあった時と変わらないのに。どうしてこんなに悲しいんだろう。
「………あーあ。変わったと思ってたのにな」
「私もそう思いますよ?」
「別に慰めなんて………え?」
「?どうされました?」
キョトンとした表情を浮かべて隣に座る私服姿のマリー。なんであなたがここに??驚きのあまり言葉が出ない私を見て、マリーはくすりと笑みを零した。
「実は、とある方に相談を受けまして。相手の事も知らず、流れる噂を鵜呑みにして傷つけてしまったと。なので、今日はそのお相手を探すために、色んな所を回っていた所です」
「はぁ………相変わらずというか、なんというか………他人に気を遣ってばかりだと疲れるよ」
「ふふ。お友達の力になりたいって思うのは、迷惑ですか?」
「………ううん。ありがと」
本当、心の根っこから善性の塊なんだな。でも、今は彼女のそんな言葉に何よりも救われて………そして、マリーの口から出た『とある方』がそんな風に思っていた事を知って、私はほんの少しだけ胸の痛みが和らいだ気がした。
「………過去は過去です。忘れてしまう事はあっても、消えることはありません。でも、それを悔やんで、変わることは出来ます。未来は過去と違って、自由なのですから」
「………」
「私も、出来るだけその歩みを支えたいと思っています。だから、ユウさん。時には立ち止まることも、悩むこともあると思います。でも、どうか。そんなときは私や先生がいることを思いだしてほしいんです。あなたの歩みが間違えた時は、きっと先生が導いてくれます。あなたが立ち止まって悩むときは、私が背中を押します………だから、どうか諦めないで。一緒に、進んでみませんか?」
本当に、この人も真っ直ぐな目をする。というか、傷心してる中でこんな事を言われたら、下手をしたら同性でもころっと行ってしまうんじゃないだろうか。………言っとくけど、私にその気はないからな。まぁ、でも……… - 44◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 02:03:27
「………マリーってさ。人たらしって言われない?」
「たらっ!?な、何故ですか!?」
さっきまでの真面目で優しい表情とは一転して、とても情けない表情に崩れるマリー。それを見て、私は自然と笑みがこぼれていた。
「あ!………ふふ。ユウさん、笑ってくれましたね」
「マリーが面白くって」
「だから何でですか!?」
「なんか………へにゃってなるところ」
「へにゃ!?どういうことですか!?」
「………っふふ」
「………ふふ」
あぁ、良い反応をしてくれるなぁ………いつの間にか、私達は互いに声を上げて笑っていて。痛みは、いつの間にか消えていた。
「あ、そうだ。折角でしたら、このまま遊びに行きませんか?今日は………スイーツ巡りでもどうでしょうか?」
「へぇ。………マリー、甘いの好きなんだ?」
「えぇ、好きですよ。………実は、サクラコさまにも秘密にしてるパフェの美味しいお店があるんです。一緒に行きましょう?」
「ふふ。そうだね。とても楽しみだ」
過去は過去だ。そんなことは分かっていた。だから、私は未来に願いを託して、こいつに名前を付けたんじゃないか。信じることが怖い今を変えたくて。ただ、名と言う祈りをそのまま形にして。
柄じゃないけど、友達と似たような名前にしたくて。そう、だから、この子の名前は――――
『オラシオン』
未来に託した、純粋な『祈り』。マリーと一緒に付けた、この名前が傍にある限り。きっと、私は一人にはならないはずだ。 - 45◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 02:07:47
――――
――――
今回はここまで!銃の名前ですが、悩んだ末にこれに決めました。案を沢山出して頂けてとても感謝していますが、やっぱりユウには友達と方向性が似てる名前にしたい。という女の子らしい青春の名付けをしてほしかったので。本当にすみません!
今後、彼女の銃の名前は『オラシオン』とさせていただきます。よろしくお願いします。
癒し回です!実は選択肢に不穏な一人があったのですが、奇跡的に今のユウにとって一番必要な相手がちゃんと来るのは流石唯一のお友達といったところですね………
- 46◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 02:21:41
今日は寝ます!ユウ自身の決めて欲しい事、見たいシチュエーションは随時募集しております!
あと、前スレ200で別衣装を希望されてたので、思い付き次第やるかもしれません………? - 47二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 02:46:26
オラシオン…前を向けてる良い名前だね!
マリーがユウちゃんの友達になれて本当に良かった…!
やはり癒し…!癒しは全てを解決する! - 48二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 03:22:54
マリーはズッ友でいて欲しい…でもいつかユウちゃんとイチャイチャしてその後カップルとかの親密な関係になって欲しい…!
とりあえず考えてるのは遊園地で一緒に遊ぶシチュ
マリーと一緒に遊園地に行きイチャイチャするカップルを見てユウちゃんはイライラ或いは(人を怖がらせてしまう自分は恋、出来ないのかな)って思ってた時にふとマリーを見るとカップルがキスしてるのを見てすごいドキドキして恥ずかしがるマリー…という感じとか…
あとは遊園地のお化け屋敷でマリーが怖がるのをユウちゃんが支えて王子様ムーブしたり或いはユウちゃんが怖がってマリーに抱きついたりするのも見たい…!心が二つある〜!
(ホラー耐性を決めたいのでダイスが欲しい)
シチュが使いにくいなら遠慮なく改変して下さい!
応援してます! - 49二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 06:47:50
オラシオンかぁ…おしゃれ…
- 50◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 08:38:01
- 51◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 08:40:32
ホラー耐性がお亡くなり…………
- 52二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 08:57:45
下手するとお化け屋敷が悲惨なことになるか……
- 53二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 12:48:16
戦闘は得意だけどホラーは苦手なのね
- 54◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 14:24:16
ある日のことだった。以前のこともあったし気分転換に二人で遊びに行ってみたらどうかと先生に遊園地のチケットを2枚渡されたのが始まりだった。先生も引率するか悩んだらしいけど、まだ例の件の仕事が終わっていないらしく、しばらくはシャーレに箱詰めだとか。
まぁ、そんなことを言ってるくせに、困っていると生徒から連絡があったら迷いもなく行ってしまうのが馬鹿なんだ。ほんと馬鹿だ。まぁ、それはともかく。折角の厚意を無碍にするのもあれだし、マリーを誘って遊園地に来ていた。
「あら、見てください。ユウさん。あれ、前に話してたペロロですよ」
「ほんとだ。……相変わらず凄い顔だな」
「あはは……で、でも、愛嬌は……ある、かもしれません?」
「愛嬌……愛嬌?」
あれを愛嬌と言っていいんだろうか。……何故だろう。若干寒気がした。これ以上この話を深堀するのはやめておこう。
「それにしても、ユウさんが遊園地に行こうと言い出したときはびっくりしてしまいました。嬉しかったんですけどね?」
「あぁ……まぁ、"大人"の気遣いってやつ?」
「ふふ、そう言ってましたね。先生らしいといえば先生らしいのですが、あの方は本当に大丈夫なのでしょうか……」
「毎日のように仕事に忙殺されそうになってるよ。今日の当番の子は大変だろうね」
他人への気遣いは信じられないほど丁寧なくせに、自分に対しては本当にとことん雑だ。……ま、今日は流石に手伝ってやらないけど。
「そういえば、ここで限定のアイスがあるんだってね」
「あら、そうなんですか?」
「ん。ちょっと気になってるから行ってみようよ」
「ふふ、そうですね。今日は少し暑いので、丁度いいですし」
「ほんとね」
ま、私は相変わらず長袖だけどさ。ちなみに、慣れたとか暑さに強いとか別にそんなことないから。普通に暑い。けど、こんな傷だらけの体を回りに見せる方がヤだし。
まぁ、それはともかく。ようやく私も、今は少し普通の女子高生ができてるかな、って。少しだけ浮かれていたのだった。 - 55二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 19:38:10
Dandan心救われる〜♪
- 56◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 22:45:17
「ユ、ユウさん凄いですね………絶叫マシンに乗っても眉一つ動かさないなんて………」
「まぁ、あれ以上の速度で飛んでるしね」
「飛ぶ………?そ、そうなんですね………」
まぁ、何を言ってるか分からないかもしれないが、実際に飛ぶから仕方ない。とは言っても、定期的に木や壁を蹴って勢いを足さないと高度と速度を維持できないけど。ま、それでも移動速度だけなら下手なヘリよりは早い自信はある。ショットガンと言うリーチの比較的短い武器を使うために覚えた、私の特技の一つだ。
「さて、次はどこいこっか?だいぶ回り切った気もするけど………」
「じゃあ次はあそこに行きませんか?」
「………あー」
マリーが指差した先。おどろおどろしい雰囲気を纏ったそこには、やや古ぼけた看板で○○○○病棟とか書かれている。誰がどう見てもお化け屋敷だ。………私が思わず微妙な反応をしてしまうと、マリーは少し驚いたような表情を浮かべた。
「………え?ユウさん、もしかして………」
「え、や………いや、うん………大丈、夫だけど?」
「全然大丈夫そうには見えませんが………」
そりゃそうだろうね。………情けない話、私は幽霊とかそういった類がかなり苦手だ。いや、正直な話をすれば人と関わることすら怖いと言う意味では、人間すら怖い。けれどまぁ、そっちは銃で撃てば何とかなるからまだいい。幽霊は撃ってもどうにもならないから無理。
マリーは苦笑しながら、そんな私を見て口を開く。
「………やめておきましょうか?」
「いや………全然、大丈夫………」
「無理はしない方が………」
「いや………うん………本当に大丈夫だから………」
お化け屋敷なんて今まで一度も入った事が無い………そもそもな話、ホラー映画すら避けて生きていた私にお化け屋敷なんてあまりに敷居が高すぎる話なのだ。けれど、折角友達と遊園地に来た手前、遊びつくさないと勿体ない気もして。私は意を決して、お化け屋敷の方へ向かうのだった。 - 57二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 22:55:12
よし逝ってこいユウちゃん!
- 58◆TJ9qoWuqvA24/08/21(水) 23:47:46
覚悟を決めてお化け屋敷に入った私。最後にホラー系の映画を見たのは昔だし、あれから大きくなった今なら大丈夫………そう思っていたが、そもそも外観を見ただけで若干ビビってた私にそんなことがあるはずなくて。
「ひゃっ………!?」
「あ、あの、本当に大丈夫ですか………?」
「っ、ぜ、全然………っ!?」
「大丈夫、では無さそうです………」
初っ端から柄にもなく仕掛け一つ一つに甲高い悲鳴を上げる。正直、怖がっているのは受付の人から見ても一目瞭然だったらしく、入る前に結構怖いから引き返すなら今の内だと念入りに忠告された。心配そうに私を見るマリーと受付の言葉を振り切っていざ入るとこれだ。
普段より明らかに思い足を必死に動かしながら進んでいた所で、唐突に誰かの甲高い悲鳴が聞こえる。
「――――!?!?!?」
「わっ、わ………あはは………ユウさん。ほら、大丈夫ですよ」
思わずマリーに飛びついてしまって、その事に驚きながらも彼女は苦笑しながら私の手を握ってくれた。マジで情けないけど、私は本当にこういうのが駄目なんだと再認識した。この事は、絶対に先生には知られたくない。
「ご、ごめん………」
「ふふ、大丈夫ですよ。でも、少し意外でした。ユウさん、苦手な物なんてあったんですね」
「………この際言っちゃうけど、私本当は苦手な物ばっかりだよ」
私が情けなくそう告白すると、マリーはそれでもニコッと笑って私の手をもう一度握り返した。何だかんだ、マリーは全く怖がっていないし、こういうのが得意なのかもしれない。………それか、私の怖がり方がヤバすぎて逆に冷静になっているかだけど。
「あら、そうなんですね。じゃあ、これから上達できる物ばっかりですね。………お化け屋敷は、もうやめておいた方が良いと思いますが………」
「わ、私もそうおも………ひっ」
「あはは………」 - 59◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 01:14:54
(※ユウ視点から離れます)
二人がお化け屋敷から出てすぐ。一人の少女はベンチに腰掛けて死んでいた。そんなユウを、マリーは苦笑しながら介抱している。
「ユウさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫………あぁ、声枯れた………」
普段より明らかに低い声で答えるが、ぐったりとしている彼女を見れば大丈夫と言う言葉も詭弁であることがすぐに分かった。
「凄く叫んでましたからね………」
「………ごめん、うるさかったよね」
「ふふ、ちょっとだけ。でも、それ以上に楽しかったですから」
隣に座るユウの顔を覗き込みながら、ニコーと笑みを見せるマリー。間近で彼女の輝くような笑みを見たユウは、思わず少し視線を逸らす。すると、マリーは立ち上がって話し始めた。
「私、飲み物買ってきますね。ユウさんはここで待っていてください」
「ん………ありがと」
マリーは近くの自販機に向かうためにその場を後にする。今日は平日な事もあって、そこまで人は多くない。自販機までの道を歩きながら、マリーはくすりと笑みを零す。
「ユウさんにも意外な一面、ですね」
恐らく、ユウの口ぶりからして彼女の意外な一面はマリーが思っているよりも多いのだろう。そういう意外な一面を少しずつ知っていって、友達としての理解を深めていきたいなと思いながら自販機に辿り着き、無難にお茶を選ぶ。自分の分のも買って、取り出し口から二つのペットボトルを取ってユウの下へ帰ろうと思った時だった。
「な、なによ!今日だって――――!!!」
「お前こそ、いつもいつも――――!!」 - 60◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 01:49:21
遊園地と言う場にそぐわない言葉の応報。驚いたマリーは振り向いてそちらを見ると、周りの人たちも二人の男女に視線を向けていた。………喧嘩だろうか。恐らくここでの男女だと言うことはカップルなのだろうが、その雰囲気は和やかとは程遠い物だった。
徐々に過激になっていく言葉の数々。少しずつ二人の雰囲気が剣吞なものへとなっていくのをみて、天性のお人好しであるマリーは黙っていることが出来なかった。
「あの………その、すみません。喧嘩は良くないと思いますが………」
「っ、ごめんなさいね。ちょっと………」
「は?なんで俺が悪いみたいに………」
「なに!?だから元はと言えば――――」
「あぁ………」
マリーはわたわたと二人の仲裁をしようとするが、ヒートアップした口論は止まることを知らなかった。
「す、すみません!ここ、皆さんもいらっしゃるので………」
「うっせぇなッ!!!!」
「ッ!?」
二人の間に割って入ったマリーは、冷静さという物を完全に失っていた男に胸倉を掴まれる。流石にここまでされるとは思っていなかったのか、彼女は息を呑んで声を上げる事も忘れていた。それを見た女性は流石の事態に驚いたのか、一瞬で冷静さを取り戻して男性に掴みかかったが、力づくで振り払われる。
実際の所、フラストレーションが溜まっていたのだろう。元より、この男は気が短かったのだ。それでも付き合いを続けてくれる女性から離れることは出来なかったが、そもそもの話互いにあまり相性も良くなかった。
結果的に、身近にいた非力で無縁の少女にそのストレスをぶつける程に冷静さを欠いてしまうのだが。………しかし、ついに拳を振り上げた男は知らなかった。
「………」
既に、周囲の視線は男に向いていない事を。代わりに、視線だけで彼を射殺すほどの鋭い眼でその様子を見ていた、一人の少女が居たことを。 - 61◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 02:03:16
瞬間、注目の的になっていた少女が姿を消す。比喩などではなく、周りの人々の目には本当にそう見えたのだ。そして、ついにマリーに拳を振るおうとした男の懐に、その姿が現れる。
そして、ユウは彼の振るう拳の何倍もの速度で男の腹部に拳を叩きこむ。
「――――っ!?」
小さな体躯からは考えられぬ力に、一瞬男の体が浮かぶ。だが、ユウはその程度で止めてやるほど生易しい性格はしていなかった。浮いた男に対し、容赦なく追加された蹴りによって男は吹き飛ばされる。そして、何が何だか理解が追い付いてないマリーを、大きな翼でそっと包み込む。
そして、ちらりと彼女に視線を送って口を開く。
「………マリー。怪我は?」
「へっ!?あ、あ、その………大丈夫です!」
「………そっか。良かった」
ユウはそう言って視線を男に向ける。マリーの手前、かなり手加減したのだろう。特に大きな怪我もなく立ち上がった男だったが、憎々し気な表情を浮かべてユウを睨んで………そして、目を見開いた。
「ひっ………お、お前………『悪魔』………!?」
「………」
男の言葉に、一瞬だけ瞳が揺らぐ。しかし、ユウはマリーを包む翼を離し、代わりに大きく翼を開いた。そう、それは紛れもない威嚇だ。動物や鳥類は、翼や腕を広げることで身体を大きく見せ、相手に威圧感を与えることがある。
人間にとっては可愛らしいと表する場合もあるが、それは動物の中でも大きい部類に入る人間だからこそ。………人を包み隠せるほどの翼を有した少女が、『悪魔』と呼ばれた少女がそのような行動をすれば、男の目に映ったそれは明確な自身への恐怖。
結果として男が取れた唯一の行動は、この場からすぐに逃げ出す事だった。しかし、『悪魔』の名を知らない者は、生憎この場に居なかったようで。野次馬たちもそれに乗じて足早に立ち去っていく。
「………」
ユウはそんな周囲を、特に何の感情も無いような表情で見つめていた。だが、マリーには分かった。その瞳の奥には、確かに寂しいと言う感情が隠れていることを。 - 62◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 02:13:26
「ユウさん」
「………ん?どしたの。やっぱり、どっか怪我してた?」
「いえ、怪我は本当にありません。………助けてくれて、ありがとうございます」
「いいよ。お礼なんて。友達を助けるなんて当たり前でしょ」
不器用な笑みを浮かべるユウ。その笑顔を見て、なんと声を掛けようかと思ったマリーだったが、ユウが先に彼女の手を取って歩き出した。
「ほら、次のとこ行こ」
「で、でも………」
「大丈夫だよ」
「………え?」
マリーの言葉を遮ったユウ。けれど、その声色は決して後ろ向きな物では無くて、マリーは驚いて小さく声を上げる。
「私、いつか、私を嫌う奴らより、もっといっぱいの友達を作って、目一杯青春してやるからさ。だから………だからさ、今を全力で楽しまなきゃ損でしょ」
「――――」
振り向いたユウが浮かべた笑みは、さっきまでの不器用な笑みとは違って………いや、不器用ながらもそれでも心からの笑みだった。それを見たマリーは、小さく目を見開いて………そっと微笑む。
「えぇ。そうですね」
「ん。じゃ、次あっちいこうよ。夜の花火まで、今日は目一杯遊ぶつもりだから」
「ふふ、はい!私も楽しみです!」 - 63◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 02:23:25
――――
――――
今回はここまで!予定ではもう少し短くなるつもりだったんですが、うーん………
ところで、別衣装イベントって考えてみて、今のユウの学生服がどういった感じかもあんまり決めてないな~と思ったり。腕があれなので、長袖なのは決定してるんですけどね。
ミレニアムみたいなジャケット羽織ってるのとか、カズサみたいな上からパーカー着てるのとか個人的には好きです。
さて、次は誰と会わせようかな……… - 64◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 02:36:17
- 65二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 02:59:14
面白かった…!ユウちゃんかっこいい!!作者さんの文才がすごい…
見てて引き込まれる展開で最高でした!
ユウちゃん百花繚乱編とかで出てたらめっちゃパニックになってそう…撃てば消えるから問題無いかな…? - 66二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 03:07:35
- 67二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 11:03:11
過去に囚われず自分から積極的に人と関わろうとして成長してるんだなって思った
このままたくさん友達作って青春を謳歌して欲しいな - 68◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 12:55:30
- 69二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 20:13:38
ほっしゅあぁぁぁぁ
- 70◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 20:54:28
ちょっと用事があってD.Uに来ていた。………久しぶりにバイトだ。別に金銭的に困ってるわけじゃないけど、最近使っちゃったし。D.Uで最近よく騒いでるバカタレ共を懲らしめてくれってことらしい。戦うのは相変わらず好きじゃないけど、最近は………何と言うか、誰かの為にって思ったら、少しは胸の痛みがマシになって来た。その代わり、前みたいに過剰なまでに暴力を振るうのは出来なくなってきたけど。
でも、私はそれを弱いとは思わない。嫌いだったこの力を正しく使えるのなら、きっとそれは………
「………はぁ。よく騒いでるとは言ってたけど、騒ぎすぎでしょ」
依頼にあったスケバンの奴らが誰かを取り囲んでるらしい。………こんだけ騒いでたらヴァルキューレが来ても良いんだけど、生憎近くにはいないらしい。意外と見境ないように見えて、綿密にヴァルキューレの行動を統計してから計画を立ててるのかもしれない。
ま、だからわざわざヴァルキューレが見回りから外れる時間帯の場所を回ってたんだけど。
「ちょ、ちょっと!なによあんたら!」
「ふむ………まるで狼の群れに狙われた羊………」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないよ………!」
なるほど。荒事とは無縁そうな奴らが襲われたらしい。………ったく。依頼された以上、あの馬鹿共が余計に被害を増やしたんじゃ依頼達成とは言えない。仕事は真面目に、完璧にやるのが私のモットーだから。
翼を大きく広げてオラシオンを構えつつ、懐から取り出したスモークのピンを咥えて外した。さて、お痛が過ぎた奴らに、灸を据えてやんなきゃね。 - 71◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 21:15:40
「怪我したくねぇだろ?財布の中身だしゃ、殺しはしねぇよ」
「………」
ピンを抜いたスモークを転がす。さて、ここからは私のステージだ。………人数はそこそこ。まぁ問題ない。
「………霧?」
「………このスモーク、まさか………」
周囲が濃いスモークに包まれる。なるほど、煙の性質も若干変わってるのか。………これはいいね。空気の流れが良く分かる。だから………
「まずはお前」
瞬時に回り込んで、声を掛けて振り向いた所に頭に一撃。この銃ならそれで十分だった。更に銃声を頼りに乱射される銃弾を、空に飛んで回避する。残念だけど、あんたらの銃を向ける動作すらも全て手に取るように分かる。この霧の中にいる限り、こいつらは哀れな被食者以外の何者にもなれない。
「はぁッ………!」
全力で翼を羽ばたかせ、空気を殴って急降下。途中でグレネードのピンを抜き、三人のスケバンが纏まってるところに突撃。同時にグレネードをショットガンで撃ち抜き、爆発を起こす。え、私?残念だけど、急降下する直前で翼を使って軌道を変えて、爆炎に紛れながら離脱してるよ。
相手からしたら、急降下してきた奴が着地と同時に自爆したように見えたかもね。まぁ、そもそも意識を失ってるから見えるはずもないけど。
「クッソ何なんだよ!?」
混乱したように銃を乱射する奴がいる。そんなの当たる訳ないけど、それは私だから。一般人もいるっつーの。
「ったく」
「きゃ………!?」
偶然銃口が向けられていたチビに近付いて、銃弾を翼で守る。あいつ先に片付けないと駄目だな。爆弾のピンを抜いて、宙に放る。それを全力で翼で殴り、銃を乱射してるバカタレの顔面にシュート。そして爆発。最後の一人は………は?霧の外に逃げてるし。………けどさ
「そもそも遅いんだよ」
「――――」 - 72◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 21:44:13
最後の一人が倒れる。そうして少しずつスモークが晴れていくと、襲われていた4人の姿が見えて来た。
「………え、えっと?」
「な、何が起こったのよ………」
「おぉ………」
「………」
混乱している様子の4人。別に興味は無いけど、チラリと振り向いて………少し、目を見開いた。取り乱す様子もなく、無言で私を見つめる猫耳の生えた少女。その姿に、見覚えがあった。
視線が合う。お互いに何も言わず、様子を伺っていた。
「か、カズサちゃん?もしかして知り合い?」
「なに?ここまで強くて、カズサの知り合い………まさか『キャスパ――――」
「ナツ、それやめて」
「むぐっ!?むぐぐぐぐぐぐぐぐ!?」
ナツと呼ばれた少女が、カズサに顔をむぎゅっと掴まれてじたばたと暴れる。特に逃げ出せはしないようだけど。………なるほど。
「えっと、知り合いって言うか………」
「誰、あなた。少なくとも、私は知らないけど」
「え?あ、そ、そうだったんですか………えっと、助けてくれてありがとうございます」
「………はぁ。まぁ、仕事だから。それより、さっさと行ったら?私は後始末しなきゃだし、ここに居たらヴァルキューレの取り調べに巻き込まれるよ」
「………あ!や、やばい!早くいかなきゃ限定ケーキが売り切れちゃう!早く行くわよ!………え、えっと、助けてくれてありがと!また今度会ったらお礼をするわね!」
「またね。『キャスパリーグ』の――――」
「ナツ!!!」
カズサが走り去るナツを追いかけて去っていく。それを追うように金髪の少女が走っていく。私はスマホを取り出して、ヴァルキューレに連絡を入れる。
「………あなたもさっさと行けば?」
「え、あ………その。カズサちゃんの、昔のお知り合い………ですよね?」
「………はぁ。知らないってば。悪い知り合いならいっぱいいたけど、私みたいな不良とは無縁な『普通の女の子』の知り合いなんて、私にはいないの。変な事気にするより、さっさと行く。分かった?」 - 73二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 22:10:21
普通の、ねぇ・・・
- 74◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 23:01:57
私の言葉におずおずと頷いた少女は、3人の後を追って走って行った。………なるほどね。『キャスパリーグ』………ちょっと羨ましい。あなたはもう、『普通の女子高生』になれたんだ。………でも、だからこそ。わざわざ彼女を過去に引っ張る理由が無い。そもそも、言う程深い関わりがあったわけじゃないし。
過去に一戦交え、少し話したことがあるくらいだ。関わりと言えばそのくらいだけど、互いに互いの異名は知っていた。あいつは伝説のスケバン………私はキヴォトスの悪魔。ベクトルは違うけど、悪い子だったのは変わりが無い。
それでも、今は『普通の女子高生』をやってるみたいで。………私も、いつかああなれるだろうか。
「連絡があった場所はここです!」
あぁ、来たみたいだ。めんどくさい聞き取りの時間だけど、下手に目を付けられるよりはマシ。手短に終わったらいいんだけど。 - 75◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 23:04:00
- 76◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 23:12:22
カズサとの絡みは実は前から考えていて、こうだったらいいなぁとは思ってたんですよね。友好度ダイスでも、好きかと聞かれたら即答で違うと答えられるけど、嫌いかと言われたら悩みつつもそうではないと答えるくらいの微妙な数値になったので、過去に絡めても結構違和感ないかな?と言う事でこんな感じにして見ました。
とは言え、自ら『キャスパリーグ』となっていたカズサと、望まず『悪魔』の業を背負わされた二人は違うところも多いですが………
次はどういうお話を書こうかなぁ……… - 77◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 23:20:34
- 78◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 23:21:55
意外と高い訳ではない………まぁ、弾とか爆弾とか色々買い込んでこれなら、余裕はある方なのかな?
- 79◆TJ9qoWuqvA24/08/22(木) 23:22:49
すみません!+50付け忘れてました!
- 80◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 00:29:15
前みたいな途中で参戦する感じじゃなくて、ユウ中心のちょい大きめのストーリーやってみたいけど、中々イメージが浮かびませんね………少しずつキャラとの絡み増やして、ユウの設定とかももう少し詰めてからやってみようかな?
- 81二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 00:48:36
ユウに恨みを持つ生徒達が直接銃を向ける事は出来なくても、いつか陰湿にやり返そうとしていた。
そんな彼女達にこれまたユウを目障りに思う大人が甘言を囁き彼女らを利用して潰しに掛かる。
とかどうでしょう? - 82◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 00:59:01
過去の業が牙を剥くのは確かにアリですね………ただ、悪い大人を絡めるのが中々難しいです。
ユウ本人はやられたらやり返すを徹底してたので、力を持った大人に狙われるだけの理由が今のところ見当たらないんですよね………
神秘も経済力も高くない純粋な暴力兵器ステータスなので中々………うーん
- 83二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 01:05:29
先のヘイロー破壊爆弾の一件で儲ける予定がご破産になり、主力生徒を何名か殺せていれば各校のバランスが崩れて何かをしやすくなったはずなのに、それすらも防がれたので障害として認定されたとか?
- 84◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 01:18:26
おー……とてもありですね………後はちょい話を進めてどこかに厄ネタ要素を詰め込めたら良い感じでイベストくらいの内容には出来る………かな?
- 85◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 02:29:42
ストーリー練ってたらこの時間になってたので寝ます!
見たいシチュエーションとか、設定とかはいつでも募集してるのでお気軽にどうぞです!お休みなさい! - 86二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 02:37:02
- 87二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 03:05:45
- 88二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 03:18:49
- 89二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 03:35:21
髪色や顔は決めない方針ですか?
- 90◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 09:14:47
- 91◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 11:22:53
あと、空中からの銃撃はやってみたいんですが、いかんせん射程に恵まれてないショットガンなので……爆撃は出来るでしょうけど、こっちは周りに人がいなかったとき限定ですかね~
- 92二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 11:30:32
- 93◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 11:40:25
- 94二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 12:09:19
可愛い⭐︎
- 95◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 12:33:19
まぁ、お顔の雰囲気ダイスはしないで、基本は個人のイメージに委ねたいと思います。目つきは時と場合によってはかなり鋭くなりますが、それくらいですかね。
基本美少女ぞろいのキヴォトスなので、特別ユウちゃんは可愛い!みたいな表現はしないので悪しからず。(先生にからかわれるくらいはあるかもしれませんが) - 96◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 13:14:23
友好度ダイス
宇沢レイサ dice1d100=54 (54)
才羽モモイ dice1d100=89 (89)
才羽ミドリ dice1d100=80 (80)
花岡ユズ dice1d100=46 (46)
- 97◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 15:33:43
「先生、こんにちは」
"こんにちは。今日もよろしくね"
「ん」
当番の日。仕事の量は前よりはマシになってる気がする。随分と頑張ったらしいね。……さて、今日も頑張るかな。
"あ、そういえば遊園地はどうだった?楽しかった?"
「ん?あぁ……うん、すごく楽しかったよ」
私は前と同じようにスマホの画面を付ける。待ち受けの写真はまた変わっていて、それは遊園地の花火をバックに撮った私とマリーのツーショット。そこに映る私は、前よりも自然に笑えていた。
「どう?よく撮れてるでしょ?」
"うん。二人ともすごくいい笑顔だね。可愛いよ"
「……一言余計だっての」
こうやってからかってくるところが先生の悪いところの一つだ。え?他に何があるって?仕事を溜め込むところに決まってんじゃん。
ニコニコとしている先生に居心地が悪くなって、私は微妙な表情をしながら普段の席に座った。そうして普段と同じように書類を片付け始めた。暫くは特に何事もなく、普段通り静かな空間が広がる。
そこで、ふと先生が思い出したかのように話し始めた。
"そういえば、最近D.Uで暴れてた子たちを懲らしめてくれたらしいね"
「……先生ってそんな情報まで入ってくんの」
"まぁね"
そんな直接関係なさそうな情報まで取り入れてるから余計に仕事が進まないんじゃないの?……というか、先生には私の荒っぽいところはあんまり知られたくない。言っとくけど、もう遅いとかそんなの聞いてないから。
なんとなく気まずくて、口をついて出たのは言い訳だった。
「……普通のバイトとかしてみたいけどさ。私が接客もできるわけないし、料理もダメだし、不器用だし……ああいう荒事しかできないの」
"ふむ……料理は私も得意なわけじゃないから教えられないけど、接客は練習に付き合えるかも"
「いや、接客態度……もそうだけど、『悪魔』なんて呼ばれてる私を雇ってくれるところなんてあると思うわけ?」
"そこは大丈夫。バイト先には私が口添えするから、やってみない?" - 98◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 21:10:44
「………そこまで言ってくれるならやってみてもいいけど………何すんの?」
"ふふふ………それはね"
先生はそう言ってデスクの棚を漁り始める。………なんだろう。凄くヤな予感がする。とても、めちゃくちゃ。それでも先生なら大丈夫だろうと思いながらその姿を伺っていた時、先生が"あった!"と妙に嬉しそうな声を上げて取り出したそれを見て、私は硬直した。
"あったあった。今日はこれを着て当番を頼めるかな?"
先生が取り出したそれは、綺麗に畳まれているが、見紛うことなきメイド服。………メイド服だ。
「………」
"………"
「………」
"………ユウ?"
「………は?」
たった一言。その一言を絞り出すので精いっぱいだった。は?この人は何を考えてるの?というか、なんでそんなの持ってるの?なんで私にそれを着せようとしてるの?そもそもなんで接客とメイドが………あらゆる感情が乗った一言が出てきたら、もう勢いですべて爆発した。
「は?………は!?メイド服って、先生何考えてるわけ!?どう考えてもおかしいでしょ!?ってかなんでそんなの持ってんの!?」
"ユウがそういうバイトを良くしてるって聞いて、ちょっと違うお仕事をさせてみたいなと思って"
「だからってなんでメイド!?接客の練習って言ったでしょ!?関係ないでしょ!?メイドカフェにでも行けってこと!?」
私は思わず声を荒げて畳みかける。しかし、先生は至って真面目な表情で首を横に振った。
"ユウ。それは違うよ。メイドって言うのは、いつでも丁寧な振る舞いを求められるんだ。つまり、メイドの練習をするって言うのは、必然的に接客態度も分かっていくはずなんだよ"
「それは………いや、だからってメイドは………」
"………やってくれないの?"
「うっ………」 - 99◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 21:13:42
先生があからさまに残念そうな声を出す。先生には沢山の恩がある手前、そんな風に言われると強く出れない。絶対分かって言ってんだろ。ただ、流石にメイドは………
"………"
………………今日、私の生涯で一番の黒歴史が、ここに生まれるだろうな。 - 100二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 21:19:31
先生さぁ…
やるじゃない - 101二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 21:31:00
ネルがメイド姿見たら楽しいことになりそうだなww
- 102二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 21:34:48
うん先生通常運転
- 103◆TJ9qoWuqvA24/08/23(金) 22:49:53
いつものシャーレの執務室。ただ唯一違うのは私自身。似合わないと自分でも思いながら、顔を真っ赤にしてる自覚が会った。………ほんっと最悪。っていうか………!!
「ね、ねぇえええええ!背中開きすぎでしょこれ………!?」
"だって、ユウは大きな翼があるからそうしないと着れないでしょ?"
「ふ、普通はチャック式にして閉じるか、採寸してスリットを空けるっての………!!」
"そうだったんだ?でもさ。私がユウの翼の大きさ知ってたら怖くない?"
「怖い、けど………そこは、でも………これはさ………!!!」
めっちゃ背中がスース―する。寒いとかはないけど、あまりに慣れない。しかも背中は丸見えの癖に、袖は私に配慮してかちゃんと長袖。………いや、気遣いしてほしいのそこじゃないんだけど!
"さて、それじゃあ今日一日はユウはメイドだから、言葉遣いもそれっぽくお願いするね"
「っ………分かっ………り、ました」
ゆでだこより真っ赤な自信がある。翼が意に反してバタバタと忙しなく動いてしまう。本当に恥ずかしい。本当に恥ずかしい。本当に恥ずかしい。マジで今日は急な来客とか来ないでほしい。もし私の顔を知ってる奴が来たら、私はそいつをどうしてしまうか分からない。いや、生かしておけない。
"それじゃあ、仕事の続きをしようか"
「っ………わかり、ました………」 - 104二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 23:44:35
こういう時に知人が来るものなんだよなぁ
マリー?きっと忘れてくれるよ - 105◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 00:00:31
メイド服を着ての当番。いつも通りに仕事なんて出来るはずが無くて。恥ずかしさを紛らわすために、必死に仕事に集中する。普段より手の動きが早い代わりに、普段より開放的な翼は落ち着きがなく動く。
先生はそれを分かっているだろうに、ずっとニコニコしてる。マジでこいつを良い人だと思った私が馬鹿だ。こいつマジで意地悪だ。
"ユウ、コーヒーを淹れて貰えるかな?"
「えっ、あ、うん………あっ………かしこまりました」
"まだ慣れない?"
「な、慣れる訳ないでしょ!?」
"ユウ、口調が………"
「うっ!………な、慣れる訳ない、です………」
なんの罰ゲームなの?ってか、これ練習って言うか先生の趣味8割入ってない?だとしたら私は無礼を承知で言うと、先生も生かしておけないかもしれない。私で遊んで楽しいわけ?………さっさとコーヒー淹れてこよう。
慌てる気持ちを抑えつつ、コーヒーを淹れて先生の下へ持って行く。
「お、お待たせいたしました」
"うん、ありがとう"
ニコッと笑ってお礼を言う先生。普段は別に何ともないのに、この衣装だと無駄に意識してしまって、翼がまた忙しなく動く。そこでふと気になったことがあった。
「ね……あ、あの………これ、先生が買ったんですよね?」
"ん?うん。そうだね"
「………いくらしたんですか?」
"………"
先生は笑顔のまま硬直する。詳しい値段は分からないけど、それだけで全てを理解してしまった。バカ、アホ、ヘンタイ。そんな言葉を今すぐぶつけてやりたいけど、今は一応メイド。下手な言葉は使えない。
「………えっと、仕事に戻りますね」
"………うん。お願いね?"
この人、本当に変人なんだなぁ………と、改めて認識する機会にはなった。それはそれとして、この背中は本当に許さないけど。 - 106◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 00:01:27
- 107二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 00:37:15
- 108◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 01:06:28
お昼前当たり。仕事はいつも以上に進んでいくけど、私は全く落ち着かない。というか、席を移動したい。私は窓側の席だから、丸見えの背中を窓に向けてることになる。いやまぁ、覗きなんて居やしないだろうけど、気持ち的に凄く嫌だ。
ため息を付きたくなるのを我慢して仕事をしていた中………私が最も恐れていた事が起こってしまった。
「先生、邪魔するぞ」
"あれ、ネル?いらっしゃい"
「会計が今日は来られなくなっちまったらしくてよ。代わりにこの書………る、い………?」
「………」
言葉の途中で目が点になって私を見つめるネル。大して私は、顔を真っ赤にして書類に視線を送りつつ、プルプルと震える体でそれでも表情だけは何とか崩すまいと耐える。しかし、寧ろそんな姿は滑稽でしかなくて。
「………ぷっ」
「っ………」
「ぷっ………っくく。あははははははは!!!」
「ちょ、こいつっ………わ、笑うなぁっ!?」
大爆笑。腹を抱え、目じりから涙が見えるほどにネルは腹を抱えて大笑い。幾ら何でも酷い。私は思わず傍に置いていた銃を持って立ち上がる。
"ユウ、口調"
「は、はぁ!?こんな時にそんなの気にしてられる訳ないでしょ!?」
"メイドはいついかなる時も冷静かつおしとやかに、だよ"
「じゃあこいつは何なわけ!?」
"ネルはまぁ、うん。………うん。でもほら、ユウは今回練習のためだし、衝動的な部分も抑えなきゃ、ね?"
え?マジ何なの?この人それっぽいこと言って窘めるプロなの?相変わらずの口のうまさに、私は何も言えずに顔を赤くして震えるだけ。そんな私を見て、ネルは笑いを必死に堪えながら途切れ途切れに話し始める。
「ひっ、うひひひひひ………お、お前………ウチに入んのかっ………っくく!」
「っ………この………わ、笑いすぎです………!!」
「あっははははははは!!!!」
私の敬語を聞いてとうとう堪え切れなくなったネルは更に声を上げて笑う。あ、ダメだコイツ、生かしておけない。私は手に持ったオラシオンの薬莢を確認し、翼を大きく広げた。 - 109二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 01:08:11
背中がガッパァって開いてるの完全に癖だろ…
最高だな! - 110◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 01:35:56
数分後。あれた執務室で私とネルは正座していた。え、待って?私が悪いのこれ。
"………ネル。ユウ。流石に暴れすぎ"
「いや、だってよ………ぷっ」
「っ!」
"ユウ"
「………はい」
このチビガキメイドと関わったら先生に怒られる呪いでもあるのだろうか。だとしたら私はこいつを消さなければならない。………今はしないけど。
"………ネルも流石に笑いすぎだよ。ちゃんと理由あっての事だから、あんまりからかわないであげて"
「いや、わりぃ。流石に不意打ちで油断してたもんでよ。今度からはちゃんと言ってくれよな」
「もうしないし」
「おいおい、めっちゃ似合ってんぜ?」
「だまっ……ちっ!」
こんなの似合ってると言われて喜ぶと思ってんのだろうか。からかうなって言われたばかりだろうに。私がそっぽを向くと、ネルはまたニヤニヤと笑いだす。それを分かりつつ無視していると、先生が話し出した。
"ユウ。今回メイドになった理由は?"
「………接客とかの、練習のためです」
"そんな時、こんな風に暴れたらだめだよね?"
「………はい」
"じゃあ、今回はペナルティだね。まだまだ練習が必要みたいだ"
「………」
は?もしかして、今日で終わらないって事?………しかし、私はそれに対して反論する手札を持っていない。仕事の部分には被害を出さないようにしたとは言え、暴れ回ったのは事実。………これが実際の仕事なら即刻クビ待ったなしだ。
「………分かり………ました」
せめて、この背中だけは何とかしてくれないだろうか。 - 111二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 01:44:18
言うてネルも普段同じ格好じゃんね
- 112◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 01:44:19
今回はここまで!海世ユウ (メイド)でした!
題するなら、『ドタバタ!見習いメイドのバイト訓練!』って感じでしょうか。
とち狂った時の先生ならこれくらいはやると思って書きました。多分ここ最近の多忙で数本ネジを落っことしちゃったんでしょうね。お労しいです。
という訳で、50/50を見事に引き当てたネルパイセンでした。ミカだったら結構平和√になる予定だったんですが、まぁダイス神が決めた事ですからね。
マリーは悩んだんですが、あの子も多忙な身ですし、当番以外でシャーレに来る事はあんまりなさそうだなと………もし見せることがあったとしても、次の機会ですかね!
- 113◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 02:12:01
今日は寝ます!前からやってみたいと思ってたユウの別衣装書けて満足しました!リクエストがあると、芯が出来るので話を書きやすいですね~。
それではおやすみなさい! - 114◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 08:36:29
おはです!今日は何書こうかなぁ
- 115◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 08:56:30
友好度ダイス
サオリ dice1d100=55 (55)
アツコ dice1d100=54 (54)
ヒヨリ dice1d100=67 (67)
ミサキ dice1d100=35 (35)
彼女らは絡められるかわからないけど後々ダイスするより早めにしておいた方がいいかなと思いました
- 116◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 09:29:27
- 117二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 09:39:05
おっ
- 118◆TJ9qoWuqvA24/08/24(土) 15:59:40
当番の日。……そうですが。またメイド服ですが、なに?ただ、正直初日に最悪の相手と当たったから、ある意味割り切れた。……いや、やっぱまだ恥ずかしい。背中も相変わらずだし。ヘンタイめ。そして、今日は来客が来るらしい。いやまぁ、知らない人だから前よりはマシ。
「先生~、こんにちは~」
"ホシノ。いらっしゃい"
小鳥遊ホシノ。アビドス高等学校の3年生らしい。眠そうな顔とふにゃっとした雰囲気は、あの廃校寸前の学校の年長だとは思えないけど……しかし、彼女は私を見て目を点にする。
「あれ?先生、メイドちゃん雇ったの~?」
"いや、彼女は……"
先生は事情を説明し始める。あたかも何もおかしいことがないかのように、あくまでも接客の練習のためだと白々しく言っているが、絶対半分くらい趣味が入ってる。ホシノは事情を聴いて納得したのか、「なるほど~」と言いながらソファーに向かう。
「メイドさんの練習かぁ。じゃあ、今日はおじさんをおもてなししてもらおうかな~」
「は?あっ、ちがっ……こほん。な、なんでですか」
「えぇ?だって、今日のおじさんは先生の客人だよ?メイドさんなら、ご主人様の客人をおもてなしするのもメイドさんのお仕事だと思うなぁ~」
「それは……っ、わかり、ました......」
……まぁ、これも練習だ。私はそう自分に言い聞かせる。
「おじさん暑い中歩いて疲れちゃったから、お茶をもらえるかな~?」
「……かしこまりました」
けど、この人適応が早すぎない?メイドとわかるや否やこき使うじゃん。……まぁ、ある意味では練習相手にはちょうどいいのかもしれない。しかし、お茶を淹れに向かおうとしたときだった。
「うへ~。先生いい趣味してるね~」
"?なにが?"
「だって、あの子のメイド服。背中が全部丸見えだよ~」
「っ!!!」
あ、ダメだ。やっぱりこいつも......いや、我慢しろ。ここで暴れたら、また期間を延長されてしまう。 - 119二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:09:49
ほ
- 120◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 00:24:07
「そういえば、メイドちゃんってどこ通ってるの?」
「ユウです………………セレスティア連合学園ですけど」
「ん~………」
心当たりがないと言った様子。まぁ、そこそこの規模があるとはいえ、トリニティやゲヘナのようなマンモス校と比べれば無名も良い所。個人主義を極め過ぎてるせいで、最低出席日数と成績さえあるならそれ以外はなにも求められない。ただ、課外活動の内申点が大きいから帰宅部は少し不利だけど。私もまぁ、成績があるから留年はしないだろうけど。
正直、シャーレに来る前だったらどんな成績になってたか分からない。うちの生徒会にシャーレへの加入書類を出したら、シャーレでの活動も課外活動に含むと言われたから、ここでの活動は私にとって利が大きい。
………まぁ、そういう打算抜きで来てる理由の方が大きいけどさ。
「………そっかぁ」
「………なんですか?」
「ん~ん………今のメイドちゃんを見てると、ちょっと昔を思い出しちゃってね~」
「………?」
何の話だろうか。彼女自身の話か、それとも別の誰かか。ソファーで寝転がるホシノは、相変わらずへにゃっとした表情で何を考えてるか分からない。ただ、何となく彼女のそれは彼女の本質ではないように見えて、何故か彼女だけは油断してはいけないと私の中の何かが告げていた。
「あ、メイドちゃん。私ちょっと寝るから、2時間くらいしたら起こしてね~」
「分かった………りました」
そう言ってホシノは眠ってしまった。なんだかよく分からない人だ。………はぁ。いくら夏だからって、冷房の効いた部屋のソファーで寝たら風邪引くでしょ。客人に風邪を引かれたって言うのは………まぁ、私の責任ではないかもしれないけど。
接客なんて、ちょっとした気遣いをする仕事だし。備品として収納されてたブランケットを取り出して、ソファーで眠っているホシノに掛ける。ってか、この人わざわざシャーレに来て寝に来たわけ?
"ふふ。ユウは優しいね"
「………仕事ですから」
ニヤニヤしないでほしい。少し頬が赤くなりながら、私はデスクに戻って仕事を再開した。弄られないだけで、随分とやりやすいものだと思ったけど。取り敢えず、今日は問題ないはずだし、次からは普通に当番が出来るはず。………出来れば、もう二度とこれを着る機会が無い事を願うしかない。 - 121◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 00:26:04
すみません!今回はここまで!なんか調子悪くてすごい難産になってしまった………ホシノとはもうちょい濃い絡め方しないと難しいですね………どっちも自分から歩み寄るタイプではない分、とても難しい………話数を重ねるごとにって感じかなぁ?
というか、翼の手入れ回もそろそろしたいですね。 - 122二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 00:41:17
- 123◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 00:53:16
あ、それ凄くやりたい………w
- 124二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 01:44:23
- 125◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 02:06:41
ある意味新しい関係性の開拓にはなりそうですが………ただ、ホシノの地雷は言わずもがなあの人ですし、ユウは彼女に意図して危害を加えようとしない限りは本気で起こるのはなさそうですが、ホシノはそんなことするとは思えませんしね………
- 126二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 08:24:29
ほしゆ
- 127二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 11:51:37
ゆほし
- 128二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 12:03:13
百鬼夜行とかミレニアムとかに行く話とか面白いかも
ゲヘナも修学旅行とかあったから修学旅行とか… - 129◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 15:40:25
今日は普通に当番。というか、あれは本当に練習になっていたんだろうか。今更ながらに疑問を持ちながらも普段通り書類を片付けていく。最近は一週間に2~3回くらい来てることもあって、書類はあまり溜まっていない。まぁ、先生が色んな自治区へ行くこともあるから、絶対という訳ではないけど。
「せんーせ!やっほ~☆」
「あ、ミカ。いらっしゃい」
今日の来客は聖園ミカ。前にあったのは例の事件の前だろうか。相変わらずキラキラとした人だ。態度で結構色々分かりやすい人ではあるんだけど、今日は先生に挨拶をしてからすぐにこちらに気が付いて、にこにこと笑みを浮かべながら近づいて来た。
「ユウちゃんもおはよ☆」
「………おはよう」
「えへへ………あれ?ユウちゃん、翼の毛並みが乱れてない?」
「え?あ、あぁ………そういえば、手入れするの忘れてた」
「もー!前に手入れは念入りにするって言ってたのに!」
ぷんぷん、なんて効果音が似合うように頬を膨らませるミカ。っていうか、一目見たくらいで翼の状態を見極められるのはどういうことなの?………普段から自分の翼とかにも気を遣ってるからだろうか。
最近は色々と変わることばかりで、すっかり頭から抜けてしまっていた。………というか、翼を特別手入れするってことはあんまりないせいで、意識付いてないのが問題なのかもしれない。
流石に最低限はするけど、それくらいだし。
「ユウちゃん、そのままで良いから翼伸ばしてくれる?私がお手入れしてあげるよ☆」
「え?いや、でも………」
「いいからいいから!華の女子高生なんだから、身だしなみに気を遣わないと勿体ないよ!」
ミカに言われるままに、翼を少し広げる。それを見て、ミカは「わーお………」とどういう感情なのか分からない声を漏らす。
「広げたら思った以上に大きいね………これ、普段のお手入れ大変じゃない?」
「前も言ったけど、盾に使う事ばっかだから、たまにしかやんないし………」
「えぇ………」
本当に心の底から出た落胆のような声だった。そんなやり取りをしながら、ミカは自分の持っていたバッグから手入れ用の道具やクリームを………え?待って?それ私ですら聞いたことある高級ブランドの奴なんだけど? - 130◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 16:00:02
「………それ、いくらすんの」
「んー?………全部揃えたら10万ちょっと?」
「は………?」
嘘じゃん。私が装備に掛ける費用より少し高いくらい。買えないという訳ではないけれど、翼の為にそこまでの出費をしようとはあまり思えない。私が絶句する中で、それを聞いた先生がミカに声を掛ける。
"ミカ。本当に大丈夫?前にお金の扱いは計画的にって………"
「だいじょーぶだいじょーぶ!最近は物の管理は慎重にやってて、そんなに失くすことも無くなってるから!」
"………そっか"
………?なんだろう。今の違和感。ただの紛失癖にしては、そんな感じでも無い気がする。そんな疑問を抱いていた間に、ミカはブラシにクリームを塗って準備を始めていく。そして私が何と言うか言葉も選べない中で、ミカは私の翼にブラシを通し始めた。………割れ物を扱うかのような、丁寧で繊細な手つきだった。
自分でやる時は適当にやっていたし、他人に翼を手入れしてもらうなんて初めての経験だから少しくすぐったい。思わず翼を動かしてしまうと、ミカは小さく笑い声を零しながら口を開いた。
「あはは!くすぐったいかもだけど我慢してね?」
「………ん」
とは言え、やってくれると言うのなら文句は言えない。それに、初めての経験だから少し嬉しいという気持ちも確かにあった。………今度、ケア用品を見に行ってもいいかもな。
そんな事を考えながら、私はミカの手入れを受けながら仕事を進めて行った。それが終わった頃には、いつもより艶やかで、自分の物とは思えない程に毛並みが整えられた翼になっていて、先生とミカはそれを見て感嘆のような声を上げていた。
「おぉー!ユウちゃんの翼、とってもきれい!」
"本当だね。前から綺麗だったけど、ミカの手入れも腕がいいおかげかな?"
「えへへ」
私をそっちのけで盛り上がり始める二人。………その間に私は片方の翼を少し広げて羽ばたかせて見る。………ほんの少し、その翼は前より生き生きとしてるように見えて。少しだけ、こんな所でも変われたのかなって思った。 - 131◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 16:09:16
今回はここまで!今後ショッピング回とかもやりたいです。
他の学校に行かせるのはやってみたいですね。ただ、修学旅行だと彼女が所属する学校の他の生徒まで出さなきゃ不自然になるので、ちょっと形を変えて考えていることがあるためそっちでやってみようかと思います!
沢山の保守ありがとうございます!!
- 132二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 19:09:00
うおおお保守
- 133◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 19:49:44
また、夢を見た。もう既に懐かしいと感じる教室で、辺り一面が赤く染まっていた。私自身も、自分の赤とそれ以上の他人の赤を浴びて、特に酷いのは私の羽だった。その頃から翼を武器にする術を編み出していた私の翼は、彼女らの赤を一身に受けてしまっていた。
前とは違って、夢だと分かっているからその翼を冷めた目で見つめる。過去は過去だと分かっているけれど、この赤は私を、『お前は決してそちら側にはなれない』のだと言っているようで、久しく感じていなかった胸の痛みが再来した。
そんな時だった。
「ユウちゃんの翼は綺麗なんだから、ちゃんとお手入れしてあげなきゃ駄目だよ」
誰かが、そんな私の翼に触れた。霧吹きを掛けて、ブラシを通し始める。少しずつ、少しずつ私の翼にこびりつく赤を洗い流していく。
「どんな使い方をするものでもね?自分が誇れるようにするっていうのは、それだけでちょっと心持ちが変わるんだよ☆」
つい最近、そんな言葉を掛けられた。………その時も、こんな風に翼を他人に触れさせていた時だったと思う。とても丁寧で、繊細な手つき。少しずつ、私の翼は元の姿を取り戻していく。そして、少女は慈愛に満ちた声で言葉を続けた。
「………だから、あなた自身も、この翼も。しっかり大切にしてあげてね?」
何故、彼女はそんなにも、私の事を理解していたのか。その時掛けられた言葉は、夢の中でもはっきりと響く。………あれだけ真っ赤に染まっていた私の翼は、いつの間にか輝く青に変わっていた。 - 134二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 21:24:09
そういえばだがこの子学力90あるんだな・・・
- 135◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 21:35:41
昔は成績が悪いのも虐められる原因の一つだったので、その後死に物狂いで勉強して今はキヴォトスでもトップクラスの学力を手に入れた感じですね~
- 136◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 21:58:27
「………」
瞳を開いて、ゆっくりと体をベッドから起こす。久しぶりにまたあの日の夢を見た。………けれど、いつもとは少し違っていて。自分の翼に視線を移すと、あの日手入れされた瞬間程ではなくとも、まだ綺麗に整った翼。
………なんとなく自分の翼を撫でて、彼女の言葉を思い出した。
「………ん。よし、いこ」
今日はいつもより凄く大きな予定が入っている。………こんなの柄じゃないけど、凄く楽しみで。私はベッドの傍に置いていた『一枚のカード』を手に取って、準備を始めた。
【ミレニアムサイエンススクール】
まだ朝早い時間。私は普段ならあり得ない場所にいた。ミレニアムサイエンススクール。キヴォトスでも屈指の最先端技術が揃う、最先端の自治区と言ってもいい。無名の学園に通う私には、本来無縁な場所。そんな私の首には、一枚のカードには、『ミレニアム特別招待者証』と書かれている。
"どう?初めて来た感想は"
「………ビルが大きい」
天高く聳え立つタワーを見て、私は呟く。ここに来る途中も、掃除ロボットだのと色んな自動ロボットとすれ違った。流石『最先端』を行く学校だと思っていると、私と先生に声が掛けられる。
「ふふ、初めてここに来る人は皆そう言うわね」
「よう。早かったじゃねぇか」 - 137◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 22:50:49
声を掛けて来たのは、私も顔見知りであるユウカとネル。………今日、私をここへ招待した二人だ。
「久しぶりね、ユウちゃん。今日は来てくれてありがとう。歓迎するわ」
「ははっ。柄じゃねぇが、今日はメイド部部長として精一杯おもてなししてやるぜ」
二人は笑顔で私を歓迎してくれる。何でも、例の作戦での恩返しとして、ミレニアムサイエンススクールを見学させてくれるとの事だった。
自治区はともかく、学内まで来る事は無かったから凄く新鮮で。最初は凄く悩んだけど、先生の後押しを受けて招待を受けることにした。
「………お招きいただき、ありがとうございます」
私がそう言って頭を下げると、ネルが首を横に振った。
「頭なんか下げんなよ。今日はあたしらからお前への例って事で招待したんだぞ」
「そうよ。貴方に何か返してあげたいって、ネル先輩ったらここ数日は慣れもしない書類手続きを真面目にやってその招待者証を――――」
「おいコラ!余計なこと言うんじゃねぇ!!」
顔を真っ赤にしたネルにユウカの言葉が遮られる。………今までクソガキチビメイドだと思ってたけど、それは彼女の一つの面でしかないことを知った。
「こ、こほん!とにかく、今日は精一杯楽しんで行けよ!あたしらが――――」
瞬間。ドーンと巨大な音を立ててビルの一角が爆発する。………は?いや、なんで爆発?私が爆発音がした上を見上げると、ユウカとネル、先生もそちらに視線を向け、ユウカは「はぁ~~~」と大きなため息を付いた。
「あそこは………電気工学部ンとこか」
「もーーー!!今度は何をやらかしたのよ………!」
「………また?」
まるで慣れたような言葉に、私は別の意味で困惑する。そんなしょっちゅう爆発事故が起こんの?………私はそこで、以前ユウカが遠い目をしていたことを思いだした。
………なるほど。と一人納得する中、ユウカは申し訳なさそうに私と先生の方へ振り返った。
「ごめんなさい。ちょっと用事が出来ちゃったから、私は案内できないわ………ネル先輩。よろしくお願いしますね」 - 138◆TJ9qoWuqvA24/08/25(日) 23:57:52
恐らくさっきの爆発事故の件で離脱したユウカを見送って、ネルは私に視線を戻した。
「んじゃ、今日はあたしがお前を案内してやるよ………先生は知ってるだろうが、まぁ付き添いだろ?」
"まぁね。もしもなんてことはないだろうけど、引率がいた方が互いに気が楽かなって"
「ははっ。ま、折角なら一緒に楽しんで行けよ。ちょっとした休暇だと思ってな」
"うん。よろしく頼むよ"
「おう。………んじゃ、行くか。まずは周りから見て行こうぜ。気になるもんがあったら遠慮なく聞けよ。ま、全部答えられるかは分かんねぇけどな!」
ネルはそう言って歩き出した。私が少し先生の顔を見上げると、彼はニコリと笑って頷く。それを見て、私は彼女の後に続いた。綺麗に清掃がされているけど、さっきの爆発でタワーの破片が飛び散っている。………下に人が居たらどうすんだろ。そこまで私が心配する事ではないのかもしれないけど、もし私がこの学校に入学していたら、こんな事故にも驚くことは無くなっているのだろうか。
「あぁ、あの爆発なら気にしなくていいぞ。うちじゃよくあることだからな」
「………良くあって良いわけ?」
「ダメだろうな」
あっけらかんと答えるネル。ある意味、もう諦めの境地に至っているのかもしれない。そういえば、ユウカはセミナーの会計なんだっけ。………彼女が頭を悩ませる理由が分かったかもしれない。
「ん?なにあれ」
「あ?あぁ、あれか………」
私が視線を向けた先は、周囲を使用禁止のテープとコーンで囲まれたトランポリン。なんであんなのが使用禁止になってるんだろうと思ったら、ネルは頭を掻いて話し出した。
「新素材開発部の発明品で作った奴なんだが、反発率が高すぎてな。テストした奴が15mくらい打ち上げられて怪我して、それ以来使用禁止になってンだとよ」
「何で解体しないの………」
「そりゃあ、硬すぎて撤去するにも大掛かりな工事が必要になるらしいな。あの会計も、取り敢えず後回しにしてるらしい」
最先端を誇るミレニアムの懐事情は私が思った以上に大変らしい。いやまぁ、それでも何だかんだやれてるのは分かるんだけど………失敗したら爆発。成功してもトンデモ発明品。これは愚痴の一つや二つ言いたくなっても仕方ない。 - 139◆TJ9qoWuqvA24/08/26(月) 00:45:39
「そういえば、ウチがどんな学校かは知ってるか?」
「………あらゆる最先端を行く開発と研究をしてるっていうのは知ってるけど、それくらい」
「んじゃ、折角だし教えてやるよ。ウチはな――――」
そう言ってミレニアムの事を色々と教えてくれるネル。案外面倒見が良いんだなと思う反面、一応部外者の私にそんなことを教えても良いのだろうかとも疑問に思う。別に、知ったところで話す相手もいないし、それを悪用しようとも思ってないけどさ。
「ま、研究熱心な奴が多すぎて、さっきみたいなことになるのも多いけどな!」
「………どこもそんな感じなの?」
「全部が全部って訳じゃねぇけど………まぁ、割と似たようなもんなんじゃねぇか?」
「………」
本当にいつか破産しないだろうか。私が心配する事じゃないけど、ミレニアムが破産なんてしたら数日は新聞の見出しを飾るレベルの大事件になるだろう。
「そういや、あんたはそういうのは得意なのか?」
「は?………え、なに?私がしょっちゅう爆発事故を起こすように見えるわけ?」
「あぁ、いやそっちじゃなくて。機械とか、プログラムだとかの知識………っつーの?まぁ、そんな感じのやつ」
ユウの技術知識(50以上で平均以上の知識)
機械知識 dice1d100=6 (6)
プログラミング知識 dice1d100=32 (32)
電気工学知識 dice1d100=79 (79)
古代技術知識 dice1d100=77 (77)
生物知識 dice1d100=75 (75)
- 140◆TJ9qoWuqvA24/08/26(月) 00:48:00
すみません!一番上の機械は最先端機械知識です!途中でこれが低かったら下も矛盾しないかと思って書き直そうと思ったのに、そのままやっちゃった………!
- 141◆TJ9qoWuqvA24/08/26(月) 01:36:20
「まぁ、電気とか、生物とか………あと、古い技術のとかなら?」
"なんで逆にそんなニッチな分野を………"
「べ、別にいいでしょ………」
先生の言葉に、私は目を逸らしながら言い返す。正直、電気以外はあまりメジャーではない分野だとは自分でも思う。しかし、ネルは意外そうな顔をして私を見た。
「へぇ。案外勉強は出来んのか」
「案外って………」
「さ、そろそろ中に入るか!」
ネルはそう言ってタワーの方へ向かう。………なんか納得できないけど、まぁいいや。ここで喧嘩する必要ないし。………変な爆発が起こって巻き込まれなきゃいいけど。そんな心配をしてしまうのは仕方ないだろう。
「………先生。ミレニアム生ってどんな人が多い?」
"それは自分の目で確かめてみるといいよ"
「………」
カンニングは駄目だそうだ。ちょっと不安だけど、私はネルの後に続いてタワーに向かう。まぁ、先生も一緒だし早々な事は起こらないだろう。………まぁ、今の所私の中では爆発事件をよく起こすやつらがいっぱいいるって印象が植え付けられたせいで、ちょっと怖いのも事実だけど。
ちょっと旅行に来てる気分になっていて、心の中ではとても楽しみにしているのも事実だった。 - 142◆TJ9qoWuqvA24/08/26(月) 01:36:49
ちょっと長めになる予定なので今日はここまで!続きは明日から書きます!それではおやすみなさい!
- 143二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 06:50:42
保守
- 144◆TJ9qoWuqvA24/08/26(月) 14:09:41
今回ミレニアム生徒が何人か出てきますが、友好度が事故ったらだいぶ大変なことになるので今回ダイスなしで行きます!補正かけてやってもいいんですが、それだとダイスの意味があまりないので……
一応、みんな特殊作戦の立役者だとは聞いてるはずなので、そこまで低くはないということで…… - 145◆TJ9qoWuqvA24/08/26(月) 15:49:03
ネルにまず案内されたのはエンジニア部。……ちなみに、ここへ来る前に先生から気を付けてと耳打ちされた。あの先生が気を付けてと警告する集団。いい予感がするはずがない。やや警戒しながらエンジニア部の部室に入ると、何らかの機械を弄っていた長身の女性がこちらに振り向いた。
「おや、早かったね。その子が例の見学者さんかい?」
「あぁ。他校からの客人なんだから、今日は事故なんか起こすんじゃねぇぞ。客の前でミレニアムの失態をそう何度も見せるもんじゃねぇ」
「ふむ……善処しよう」
「おいコラ」
ネルが目じりを釣り上げて女性に詰め寄ると、彼女は特に慌てる様子もなく苦笑する。その落ち着きようは幾度とない戦場を経験した人のようであるのに、立ち振る舞いや雰囲気は決して強者側ではない。……一見真人間のように見えるけれど、口ぶりからして恐らくそうではないんだろうな。
「冗談だよ。まぁ、今日は大型の機械を開発する予定はなくてね。もし何かあったとしても、ちょっと火花が散るくらいさ」
「だといいんだが」
「それより、まだ自己紹介も出来ていないね。ようこそ、エンジニア部へ。私は部長の白石ウタハ。よろしく頼むよ」
「海世ユウ。よろしく」
私も簡単に自己紹介をする。やっぱり態度や性格は真人間そのものにしか見えないけど、爆発事故を起こすこと自体は全く否定しなかったところを見ると常習犯なのだろうか。
ウタハがそのまま「部室を少し案内するよ」と言ったとき、ネルが辺りを見渡す。
「そういえば、あと二人いたよな?今はいねぇのか?」
「あぁ、ヒビキとコトリならさっきの電気工学部での爆発の関係者だからとユウカに呼び出されていたよ」
「またテメェらが関わってやがったか……」
ネルは呆れたような声を零し、先生は苦笑する。なるほど、さっきの爆発はこの人たちが関わっていたと……そっか。こんなトラブルメーカーでも廃部にされないあたり、ミレニアムはだいぶ甘いのかもしれない。
うちで爆発事故なんて起こしたら、退学……まではいかないでも、厳しい罰則が下るはずだし。それとも、トラブルを上回るほどの実績を積み重ねてるのか……まぁ、どっちにしろ胃痛の種にはなりそうだけど。 - 146二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 20:14:06
保守
- 147◆TJ9qoWuqvA24/08/26(月) 22:05:32
「………へぇ。これ、あなた達が作ったんだ」
「あぁ。その様子だと愛用してくれてるみたいだね。技術者としては嬉しい限りだよ」
エンジニア部にお邪魔して少し。私達は以前買った新型スモーク弾の話題に花を咲かせていた………って程ではないけど、たまたまこれが棚に並んでるのを見て話題に挙げた。
これを作ったのはこのエンジニア部らしく、超自然的な濃霧を目指したスモークというテーマで作ったらしい。そのおかげで私にとっては凄く都合がいいけれど、スモーク量が多すぎてやはり売れ行きはそこまで伸びていないらしい。
「まぁ、残念ながら少しずつ販売規模は縮小するだろう。君のように扱いこなせる人がもう少し増えれば、価値も見直されるかもしれないが………」
「無茶言うなよ。コイツは色々と例外なんだぞ」
「………あなたにそれを言われるのは少し癇に障るんだけど」
ヤンキーメイド沸点10℃の戦闘狂チビとか言う特徴しかない人間に、異常人扱いされるのは不服でしかない。そんな思いで返した言葉だったんだけど、ネルはクワッと独特なキレ顔をして私を見た。
「あ!?アタシはまともだろーが!」
「「………」」
"ははは………"
私とウタハは互いに沈黙し、先生も苦笑している。余計な事を言えば喧嘩になるのは目に見えてるけど、言いたいことは先生も含めて一致してるはず。………言わないけど。
「こほん。まぁ、しかし愛用してくれている人がいると言うのなら、技術者としては期待に応えない訳にはいかない。もし君さえ良ければ、連絡先を交換しないかな。少し時間はかかるが、受注生産でこれを作ってもいい」
「………いいの?」
「あぁ、勿論だ。無論タダという訳にはいかないが、店頭に並ぶものよりは少し安くなるだろう」
「………じゃあ、お願い」
「あ、おい待て!アタシとも連絡先交換しろよ!」
ネルが入ったことで、何故か騒がしい連絡先交換になってしまった。………先生とマリー以外と連絡先を交換したのは初めてだ。先生はそんな私達の様子を笑顔で見つめている。………柄じゃないけど、ちょっと楽しい。 - 148◆TJ9qoWuqvA24/08/27(火) 00:06:01
ウタハとネルとの連絡先を交換した後。ウタハは満足げに頷くと、スマホを仕舞ってもう一度私の方を見る。
「もし何かあれば、気軽に連絡してくれて構わないよ。いつでも返せるとは限らないが、時間があれば対応しよう」
「これ、失礼かもしんないけどさ………なんでそこまでしてくれんの」
「?………学友を救ってくれた恩人に礼を尽くそうと思うのは当然の事じゃないかい?」
「………そ」
そんな事を、当然だと言える人。きっとユウカやネルも直接口には出さないだけで、そういう人なんだとこの短時間で思った。そんな当たり前を当たり前だと言える彼女達が少し眩しい気がして。………まぁ、そんなウタハも開発したものでしょっちゅう事故を引き起こすと考えたら、錯覚のようにも思えて来たけど。
何とも言えない気持ちになって少し沈黙してしまう。すると、ウタハはそんな私を見て小さく笑みを浮かべた。
「君にもいつか分かるだろう。ここでの体験が、その一助となる事を願うよ」
「………ありがと」
私が小さく礼を言うと、ウタハはもう一度頷いてくるりと振り返った。
「さて、そろそろ他の所にも顔を見せに行ってはどうかな?他校からの見学者と聞いて、準備をしていた所も多いだろうからね」
「ん………またね」
「あぁ、また」
「んじゃ、邪魔したな」
そう言ってエンジニア部の部室を後にする。………心配はあったけど、正直とてもいい人だとは思った。………いや、きっといい人で間違いは無いんだろう。それはそれとして事故を起こすだけで。もしかして、ここはそう言う人ばっかか。
「次はどこに行くの?」
「ゲーム開発部ンとこだ。まぁ碌なゲームを作らねぇせいで、しょっちゅう会計に廃部廃部ってガン詰めされてるけどな」
「なんで逆に廃部になんないのそれ」
「アタシが知る訳ないだろ」
"ははは………まぁ、彼女達も情熱はあるから………"
「情熱だけで成果は出ないっての………」 - 149◆TJ9qoWuqvA24/08/27(火) 01:44:30
ネルに案内されてゲーム開発部とやらの部室に向かう。碌なゲームを作らないとは言ってたけど、流石にゲーム開発で爆発なんてしないでしょ。………しないよね?
「先生、次は気を付けないと行けなかったりする?」
"いや、ゲーム開発部は大丈夫じゃないかな?ただまぁ、元気な子達が集まってるから、そういう意味では覚悟しておいた方がいいかも"
「ふぅん………」
元気な子達ね………ま、ネルと同じ方向で元気な訳じゃないなら何でもいい。ネル2号なんて出てきたら流石に私の身が持たないし。………っていうか、ちょっと気になったけど。
「ねぇネル。あなた、あの子と誰にも言ってないよね?」
「あ?………あー………あぁ。言ってねぇよ」
おい、なんだ今の間。………やっぱりこのガキ〆とかないと駄目かもしれない。私の視線が鋭くなる中、ネルは視線をふいっと逸らし、それを見た先生は苦笑しながら声を掛けて来た。
"ユウは普段ゲームするの?"
「はぁ………全然」
"そっか。まぁ、イメージ通りかな"
「お、じゃあアタシと対戦するか?」
「やだ。負けんの目に見えてるし」
いくらゲームとは言え、負けると言うのは気分が良くない。ゲームを得意じゃないのを知って対戦に誘う奴は大抵初狩りなんだから。
「ハッ、まぁあいつらに会えばどうせ巻き込まれると思うけどな!」
「………」
ちょっと面倒くさそうだけど、折角だしそうなったらそうなった時だ。ウタハの言葉を思い出して、ここで経験できる一つ一つを避けるのはしないようにしようと思った。………何となく、この場所に私が探してた何かがあるかもしれないと、何故かそんな気がしたから。 - 150◆TJ9qoWuqvA24/08/27(火) 02:03:10
- 151二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 07:30:34
ほっしゅ
- 152◆TJ9qoWuqvA24/08/27(火) 15:07:24
「邪魔するぞ」
「あっ!来た!」
「パンパカパーン!ゲストキャラとマスコットが合流しました!」
「......あー」
こういう感じかぁ……まぁ、うん。ちびっこ部ってイメージでいいのかな。ただ、私と先生を見るや否やよくわからないテキストログのような発言をした少女は何かが違う。……何と言えばいいかは分からないけど、纏う雰囲気や感じる気配がネルやヒナとも違う。
思わずじっと見てしまったのが不思議だったのか、黒髪の少女はこてっと小首を傾げる。
「?アリスの顔に何かついていますか?」
「え?あ、や、ごめん。なんでもない」
思わず首を横に振った私を、今度はネルが私をじっと見つめていた。今までとは違う、少しシリアスな表情に気が付いた私は彼女を見返す。
「……なに?」
「いや、なんでもねぇ。とりあえず……ってか、オメーらまたこんな散らかしてんのかよ」
「……ってか、電気くらい付けたら?こんなとこでゲームしてたら目が疲れるでしょ」
っていうか、若干私がキツイ。暗い部屋でピカピカと強い光を放つモニターの画面がとても目に来る。若干目を細めてしまった私を見て、アリスが小走りで部屋に隅に向かうと、パチリと音を立てて部屋に光が差し込んだ。
「あああああ!目があああああ!」
「お姉ちゃんちょっとうるさいよ……お客さんの前なんだから」
「えー!だからこそ騒がしくやるんでしょ!これが私たちなんだよーっ!って」
「……ごめんなさい。こんな姉なので」
黙々とゲームをしていた、騒がしい子と瓜二つの少女は丁寧に頭を下げる。なるほど、姉妹ってわけね。随分と性格が真逆なように見えるけど。……とりあえず、自己紹介だけでもしたほうがいいか。
「海世ユウ。よろしく」
「モモイだよ!よろしくね!」
「ミドリです。よろしくお願いします」
「アリスです!よろしくお願いします!」 - 153二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 21:54:45
保守
- 154◆TJ9qoWuqvA24/08/27(火) 22:45:36
ゲーム開発部にお邪魔してから少し。ネルに言われてた通り、彼女達………と言うよりは主にモモイがやんちゃ娘らしく、私を引っ張るようにゲームに誘っては無理やり対戦させられていた。あと、部室の隅にあるロッカーには部長が隠れているらしい。ホラーかよ。
「わーー!!負けたぁ!!」
「あっぶな………」
そんな私とモモイの対戦。一般的に見れば、モモイは決してゲームの腕前が良いとは言えないらしい。ゲーム開発部でそれはどうかと思うけど、まぁ開発自体にゲームの腕前そのものは求められないかもしれない。とにかく、モモイは大してゲームが上手いわけではないとアリスがさらっと言っていたし、先生も"まぁ………"と微妙な反応をしていたからそうなんだと思う。
でも、私から見たら話は別。さっきから接戦に次ぐ接戦。7戦やって3勝4敗。最初は絶対ボコボコにされると思っていたから、良い意味で期待を裏切られたと見るべきか、それとも下手同士の底辺の争いに興じてる今を虚しいと思うべきか。楽しくない訳ではないから、多分前者だとは思うけど。
"いい勝負だね"
「ですね。凄い接戦です………」
「なんか、ギリギリの戦いが続いてんな………」
「どっちも初心者ムーブなのに、見ててドキドキします………!」
悪かったな初心者で。ってかこのアリスとか言う子、遠慮も知らず何でもかんでもストレートに物を言うんだけど。最初にマスコットと言っていたのを何のことかと聞けば、肉体的に弱い先生は魅力『だけ』が99のマスコットだそうだ。………苦笑する先生を見てちょっと同情したけど、まぁ本人が何も言わないならそれでいいんじゃないかなって流した。悪意はなさそうだし。
「もう一戦!」
「やだ。疲れた」
「えー!?やっと熱くなってきた所なのに!?」
「私、ゲームあんまりしないから。先生、代わって」
"え、私?まぁいいけど………"
コントローラーを先生に渡して後ろのソファーに移る。私の隣にネル、その隣にアリス、そして更にその隣にミドリが座っていた。ミドリはなんかタブレットのようなものにペンを走らせていたけど。何をしてるのか気になったけど、まぁ邪魔する必要もないと思った矢先、ミドリが私をチラチラと見ている事に気が付いた。………正確には、私の翼を。 - 155◆TJ9qoWuqvA24/08/28(水) 00:24:53
「………なに?これがそんなに気になるの?」
視線に耐えかねて、私は少し翼を伸ばしてミドリに声を掛ける。別に怒ってるつもりではなかったけれど、私の雰囲気のせいかミドリは慌てたように肩をびくりと揺らした。
「え、あ!ご、ごめんなさい!」
「いや、別に怒ってるわけじゃないけど………チラチラ見られる方が気になるってだけ。何かあるの?」
「あ、えっと………その、私はゲーム開発でビジュアルを担当してるので、絵を描いたりするんですけど………」
「………あぁ、そういうこと」
つまり、丁度鳥か翼を持ったキャラを描くところだったんだろう。………翼は案外描こうと思うと難しい。適当に描くだけなら苦労しないけど、凝ろうと思ったら羽の揃い方やらでずっと迷うことになるから。
だから、私の翼を見て参考資料にしようと思ったわけね。本人は悪い事をしたと思ってるらしいけど、別にそれくらいなら何も思わないんだけど。
「はい………勝手にごめんなさい」
「だから怒ってないって。別に堂々と見たらいいでしょ。減るもんじゃないし」
私はそう言って翼を広げる。今日はちょっとだけ朝の支度で翼をケアしてきたから、それなりに綺麗に出来てるとは思う。そんな私の翼を見て、ミドリだけではなくアリスとネルも視線をそっちに集中させた。
「わぁ………!凄いです!とても頼もしい翼です」
「………綺麗」
「へぇ………前から思ってたが、立派な翼してんな」
「………ありがと」
口々に褒められ、私は少し視線を逸らしてしまう。別に褒めてほしい訳じゃなくて、参考資料になればと思っただけなんだけど。その時、はらりと私の羽が一枚落ちる。抜け羽の処理が甘かったかな。そのまんまにしとくわけにもいかないし、さっさと捨てようと思ったら、私が手を伸ばすより先にアリスがそれを手に取った。
「アリスは激レアアイテム、『ユウの羽』をゲットしました!」
「あ、アリスちゃん………一応それユウさんの一部だし、勝手に取らない方が………」
「………別にいいけど。抜けたやつは捨てるし。そんなものゲットして喜ぶんなら持っとけば?」
「あ!アリス知ってます!物語に出てくる隠れ最強キャラが、使い古した伝説の装備を渡してくれる時のセリフです!」
「………」 - 156◆TJ9qoWuqvA24/08/28(水) 01:20:11
あまりの無邪気さにツッコむ気も起きない。良くも悪くも素直で、それでいて嫌味に感じさせないのはある種の才能なのかな。少し羨ましい。そんなことを思いつつ、ミドリに見えやすいように暫く翼を伸ばしてボーっと先生とモモイのキャラが戦う画面を見つめて30分くらい。
「うわあああ!?負けたぁ!!」
"ははは………連打癖は抜けてないみたいだね"
決着がついて………うっわ。HPに圧倒的な差が出てる。勝ち星のマークも比べるまでもないくらいだし。先生以外とこう言うの上手かったんだ。………いや、私とモモイが下手なだけの可能性もあるな。というか、あの子一々リアクションがオーバー過ぎる。勝っても負けても大声ではしゃいで全身で感情を表現する。アリスと同じく無邪気と言えるはずなんだけど、彼女はシンプルにガキという感想が一番に浮かんできてしまうのはなんでだろう。
「さて、ちょっと長居しちまったな。終わったんなら次行くぞ」
「え!?チビメイド様は今日はゲームをしていかないんですか!?」
「あぁ!?誰がチビだ!!………今日のアタシはコイツらの案内役だからな。お前を負かすのはまた今度だ」
………なんだかんだ、仕事に関してはしっかり責任を持ってやる辺りは好感を持てる。別にちょっとくらいゲームしてても良いんだけど、ネルがこういうからには従った方が良いんだろう。
「それじゃ、私達は行くから………翼、参考になった?」
「はい!ありがとうございました!」
「………そ。じゃあまたね」
「あ、待ってください!アリス、ユウと連絡先を交換します!」
「………決定事項なんだ?まぁいいけど」
「あぁ!私とも私とも!」
「よ、良ければ私も良いですか?」
また連絡先に名前が増えた。………友達が増えるって言うのは、こういう感覚何だろうか。登録された名前を見て何故だか嬉しいような気がして、私は自分でも気づかないうちに小さく笑っていた。 - 157二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 08:52:53
ミレニアム生との繋がりが広がる……このままキヴォトス中の皆と交流していこう!
- 158◆TJ9qoWuqvA24/08/28(水) 10:31:45
ミレニアムの子たちも個性的なのにいい子揃いですからね~。キヴォトス中は……今後次第ですねw
- 159◆TJ9qoWuqvA24/08/28(水) 14:36:16
ゲーム開発部を後にした私たちは、さっき少し話していた新素材開発部を見学した後にAI開発部やら海洋研究部やらを回ってメイド部……C&Cの部室に来ていた。
「あ!リーダーやっと来た!ユウちゃんと先生もいらっしゃい!」
当然ではあるけど、あの作戦で会った3人のメンバーがいた。アスナ、アカネ、カリン……だったかな?ゲーム部と違って身長が高い人ばっかだ。ちんちくりんなのはこのチビメイド様だけか。
「おいコラ、なんだ今の視線」
「なんでもない」
無駄に察しがいい奴。またキレられそうだったからふいっと視線を逸らすと、そんな私とネルのやり取りを見たアカネが小さな笑みをこぼす。
「ふふ。ここに来るまでにとても仲良くなられたようですね」
「あ?別に元々悪くねーけど。なぁ?」
「……まぁ、そうかもね」
少なくとも、険悪とは真逆の雰囲気だったとは思う。それはそれとして喧嘩はするけど、彼女が嫌いだという感情はなかった。悪友とかいう奴なのかな。
「さて、それでは少しおもてなしを……と思ったのですが、もう昼食の時間ですね。せっかく外の天気もいいですし、みんなでお弁当を持ってピクニックでもどうですか?」
「おー!いいね!みんなでいこ!」
「……とのことだが、お前はどうしたい?」
「私?……別にいいんじゃない?」
「んじゃさっさと準備するぞ!メイド部のおもてなしを見せてやれ!」
そういってネルたちは私と先生をソファーに案内した後、準備のためにそれぞれ散らばっていった。その時アカネが出してくれたお茶を飲みながら、先生は私に声をかけてくる。
"どう?ここまで回ってみた感想は"
「……なんか、みんな元気だね」
"はは、そうだね。ミレニアムの子たちは、他と比べても情熱にあふれてるから"
確かにね。方向性や性格は違っても、それぞれの分野に対する熱量はどこも凄いものだと思った。まぁ、そのせいで爆発事故やら廃部の危機になってたりしてるのは、素直に褒めていいのか分からないけれど。 - 160◆TJ9qoWuqvA24/08/28(水) 21:40:54
C&Cの皆が戻ってきて、私達は外へ向かった。………こんな風に、大勢でご飯を一緒に食べると言うのも初めてかもしれない。C&Cの人たちがてきぱきと準備を進めて、数分もした頃には準備も終わってご飯をシートの上に広げて皆で食べていた。
"ん。すごくおいしいね"
「ハッ、今日は腕によりをかけたからな!当然だ!」
「………料理、出来たんだ」
「ったりめーだろ。一応部長だぞ」
………なんか負けた気になってしまった。不公平だ。私は料理どころか………いや、やめとこ。余計に悲しくなるだけだし。
「………んで、どうだよ?」
「ん?………あぁ、美味しいけど」
「そっちじゃねぇよ。美味いのは当然だ。そうじゃなくて、今日の見学。まだ回るところはあるが、楽しめてるか?」
先生にも同じことを聞かれた。………そんなに分かりづらいか、とも思ったけれど、当たり前だと自分で納得してネルの言葉に頷く。
「楽しいよ。皆活力があって、好きな事に全力で。少し眩しいくらいだけど」
「へぇ………そうか」
ネルは満足げに頷き、他のC&Cメンバーや先生も優しい笑みを浮かべて私を見た。………なんだろうと思った時、ネルが言葉を続けた。
「んじゃ、なんであいつらはあんなに生き生きしてんだと思う?」
「え?………さぁ?」
「おいコラ少しは考えやがれ」
ちっ、適当に答えたのがバレたか。………なんで、か。皆それぞれ違って、やる事も、性格も、やりたいことも全部違う。けれど、なんで同じように誰もが輝いて見えたのだろう。………そう考えた時、彼女達の共通点を一つだけ見つけた。 - 161◆TJ9qoWuqvA24/08/28(水) 21:57:14
「………好きな事に全力だから?」
「ハッ、正解だ」
ニヤリとネルが笑って、先生も小さく頷いた。………好きな事………好きな事か。そういえばあの日先生にも同じこと言われた。でも、私の好きな事は自分でも分かっていない。あれから少しずつ変わって来たけど、まずは人並みの幸せが欲しいと思った私は、自分の『好き』を見つけるのは後回しにしていた。辛いのは好きだけど、あれは熱意を掛けるものって訳じゃないし。
「オメーにはその『好き』が足りねぇからな。………別に、細かく考えなくて良いんだよ。自分のやりてぇって思ったことを全力でやってりゃ、いつの間にか『好き』になってる」
「………よく見てんだね」
「言ったろ?最初のお前は危なっかしくて意識せざるを得なかったって。だが、お前に会って関わるうちに、お前はそんな危険な奴じゃねぇって思ったんだよ。ただ、ちょっと足りねぇもんがあるだけで」
「それで、ここに連れてこようと思ったってわけ?」
「んな大層な理由じゃねぇけど。礼のつもりなのは事実だし、それで見つけてくれるんなら、それに越したことはねぇって話だ」
………本当に面倒見が良いんだ。一応、3年生なんだっけ。あらゆる経験で私より上なはずなのに、対等だと思っていた彼女は、やっぱりずっと先輩なんだなと思った。………やりたいと思った事、ね。
「………まだ、見つかんないけど。いつか見つけたいとは思ってる」
「ま、答えとしちゃ100点じゃねぇが、後ろ見てるよりはそれくらいの気持ちで生きてた方が楽しいぞ」
ネルはそう言ってまた食事に戻る。………私がここで探してた『何か』は、そういう事なのかもしれない。『好き』を軽視し過ぎていたんだろう。だから、好きに夢中なここの生徒達が私には眩しく見えた。………私も、探してみようかな。
まだ、朧げにすら輪郭は無いけれど。………先生や、新しく出来た友達と一緒になら、見つけられるかもしれない。 - 162◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 01:53:33
「そういえば、ユウさん。少しよろしいですか?」
「ん?………なに?」
「以前の作戦で、音や空気の流れを感じ取ったと言っていましたが、あれは具体的にどのような感じなのでしょう?」
「えぇ………?どのようなって言われても………そのまんまとしか。呼吸音とか、小さな身動きでの空気の揺らぎとかで場所と動きが分かるってだけ」
「………それを『だけ』とは言わないと思うのですが」
「スナイパーライフルは持たないのか?そこまで探知能力に長けていて、移動まで素早いのなら優秀な狙撃手になれると思うんだが」
カリンの言葉に、全員が確かにと言う風に頷く。………正直、あんまり考えたことなかった。実際どうなんだろう?私でもやった事が無いから分からないとしか言えない。
「………私はこの子があるし、今はいいかな」
「そうか。まぁ、もし気が変わったらここに連絡をくれ。スナイパーライフルの扱いなら、自信があるからな」
「あら、カリンが連絡先を交換するのなら、私もお願いしてよろしいでしょうか」
「あ、私も私も!リーダーはいいの?」
アスナの問いに、ネルはニヤリと笑って答える。
「あたしはもう交換してるぞ」
「え!早い!リーダー、本当にユウちゃんとめっちゃ仲良くなってるんだー!意外!」
「そうだろ………意外?オイ意外っつったか今?」
「あ、これ私のね!」
………この部長、少しカッコいいと思ったのは幻だったのかな。アリスと言い部員といい、若干舐められてる気がしないでもない。この性格でこんな慕われ方をしてるのは珍しいかもしれないけど。
食べ終わった後は少し休憩してからもう少し色んな所を見て回るらしい。………次はどこだろうな。 - 163二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 09:24:56
SRの適正あるのかな
- 164◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 13:58:38
- 165◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 13:59:32
うわぁ…………
- 166◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 16:57:31
昼食を食べ終わった後。C&Cと先生の雑談を聞きながら、たまに話題に参加すると言うことを繰り返していた時。そんな私達に、一人の少女が近付いて来ていた。
「先輩方。こちらにいらっしゃいましたか」
「あ?後輩、お前どこにいたんだ?」
「少々所用で。………そちらの方が、今日のお客様でしょうか?」
「………海世ユウ。よろしく」
「飛鳥馬トキです。よろしくお願いします」
トキは丁寧に頭を下げる。表情が全く変わらないし、声にもあまり抑揚がなくて感情を読み取るのがちょっと難しい。個性的が過ぎるこの学校の中では、少し珍しいようにも思ったけど。トキはそのまま無言で私の方をじっと見ていた。
「………」
「………」
「………え、なに?」
よく分からない時間。凄く気まずい。何も言わないし、表情も変えない。私が思わず困惑の声を上げても、それでも何も言わない。ネルたちもそんなトキの様子に疑問を持ったのか、彼女に声を掛けようとした時だった。
「ユウさん」
「え、な、なに?」
「ピース、ピース」
「………は?」
無表情。全く表情を変えないまま、両手を顔の横に持ってきてピースサイン。しかも、その時の台詞も全くの抑揚が無い。そのせいで、彼女がふざけてるのか別の意図があるのかも分からなくて、ただただ困惑するしかない。そして、トキはそのピースのまま私をじっと見て動く様子がない。謎の圧を感じる。
訳が分からなくなった私は思わず………
「ぴ、ぴーす、ぴーす………?」
「!」 - 167◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 18:02:24
思わず、片手だけではあるけどピースを返し、同じような言葉を返してしまう。その時、一切表情を崩さなかったトキが僅かながら目を見開き、何故だか雰囲気が少し明るくなったような気がする。
「ユウさん。あなたとは気が合う予感がします。連絡先を交換しましょう」
「は?え、あ、うん………うん?」
違う。この子個性的揃いのミレニアムの中でも一際個性的だ。………え?本当になんなのこの子。気が合うって、どこでそういう予感をしたんだろう。急転直下の展開過ぎて、ネルたちも笑うでもなく困惑が先に来ているし、先生も苦笑をしている。多分普段からこういう感じなんだろう。………連絡先を交換し、トキは当たり前のようにシートの上に座る。………ちらりとネルを見たけど、彼女は諦めた様子でどさりとシートの上で倒れ込んだ。
「先生。来ているのであれば連絡をして頂ければご一緒したのですが」
"あぁ、ごめんね。急に来ることが決まっちゃったから"
「まだミレニアムを回るのなら、お供させていただいてもよろしいでしょうか」
"………良いんじゃないかな?"
と、これから彼女が同行する事がしれっと決定してしまった。………まぁいいや。深く考えても意味が無いと思って思考を放棄すると、そんな私達にまた近付いて来る人影。ちょっと不安になりながらも視線を向け、私はその人物を見てホッと安堵した。
「遅れてごめんなさい。今はお昼休みかしら?」
"ユウカ、おかえり。そっちは終わったの?"
「はい。今修理に取り掛かってもらってますよ。………全く、お客さんが居る時まで勘弁してほしいわ」
ため息を付くユウカ。タワーを見上げたら、屋上から釣り下がる足場が幾つか降りていて、そこに乗った生徒が爆発で壊れてしまっていた場所を修復していた。聞いた所、普段やらかすのは1階にあるエンジニア部の部室であることが多く、あの高層階で事故が起こることはあまりないとか。
また出費が~と先生に愚痴ってるところを見た感じ、随分と大掛かりな作業になっているらしい。どんまい。 - 168二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:04:56
ほ
- 169二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 22:31:09
- 170◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 22:36:07
想像以上にクリティカルで遠距離適正ありませんでしたが、近接全振りは全振りでちょっと良いアイデアがあるので、ある意味良い誤算かもしれませんw
まぁ、飛行しながらのかっこいい狙撃とかもしてみたかったですけど、ここまで適性が低かったら飛びながらどころか止まってても当てれなさそうです………w
今日はちょっと台風とかで更新が遅れちゃったので、保守やコメントには凄く助けられてます………ありがとうございます
- 171◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 23:11:42
お昼休みも終わって、シートなどを片付けた後。私達は校舎内に戻るために歩いていた。この時間となると大掛かりな作業を始めるところも多いのか、外の人通りもそれなりに多い。
"今日は久々にゆっくり出来てる感じだなぁ………"
「先生はいつも働き過ぎなんです。………ここ最近は、私達にもその原因があるので強くは言えないですけど」
"まぁ、明日はまた書類を頑張らないと駄目だけどね………"
「………今日は私のために来てくれたんだし、手伝うよ」
"本当に?それは助かるなぁ"
今日の先生は多くを語る訳じゃないけど、それでもコミュニケーションが滞らない程度に話題をくれる。多分、私自身の力でこの場所で関係を築いてほしいって事なんだと思う。その気遣いに気が付いたのは、普段から先生といる時間が多いから。
本当に、この人は私の未来を考えてくれているんだなと実感して、少しだけ感謝していた。そんな時だった。ユウカのスマホが着信音を鳴らし始めた。
「あ、ごめんなさい。ちょっと待ってくれる?………ノア?どうしたの?………………なんですって!?」
ユウカが急に切羽詰まった声を上げ、全員の視線が彼女に集中する。またどこかが爆発事故でも起こしたのかな。そんな1日に2回も事故が起こるような学校だとしたら、もうドンマイを通り越して本格的に再発防止に全力を注いだ方が良いとおもんだけど。しかし、徐々にユウカの表情は青ざめていく。それを見たネルは彼女に声を掛けた。
「会計、どうした」
「ちょ、ちょっと待って!それどうなってるの!?………修復作業は………っ!?」
ユウカが急に上を見上げる。私達も釣られてそちらに視線を向けて………は?なにあれ。
"クレーンが………暴走してる?"
「おいおい、あの動きやべぇんじゃねぇか!?」
足場を吊り下げていた全てのクレーンが、めちゃくちゃに動いては足場を振り回していた。………なんであんなことになってるわけ?先生もそれを見て慌てたようにユウカに声を掛ける。
"ユウカ!あの足場に生徒は!?"
「ほ、殆どは直前で建物内に飛び移れたそうですが………」
「一人逃げ遅れてる。一番左の足場」 - 172◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 23:26:44
私の視力にはしっかりと見えていた。振り回される足場の手すりから身体を投げ出され、それでも必死に手すりにしがみつく一人の生徒が。ネルにも同じ物が見えているんだろう。すぐにメンバーに声を掛け始めた。
「おい!すぐにシート広げろ!あいつ受け止めんぞ!」
「待ってください!あの高さからの落下では、とてもシートで勢いを殺しきれるとは――――」
「だから黙ってみてろってか!?いいからさっさとやるぞ!」
「わ、分かりました!」
ネル達がピクニックで使ったシートを持って修復場所の下に走っていく。………ただ、アカネの指摘の通りだと思う。あの高さからの落下じゃ、最終的な落下速度は100kmを超えるはず。とてもあんなピクニック用のシートで受け止められる衝撃じゃない。
"ユウカ、ドローンは飛ばせる!?上空でマットを広げて受け止めるのは………"
「あ、あと3分あれば………!」
"それじゃ間に合わない!クレーンの電源は………"
「バッテリー式になってて、制御も一切………」
なんで強制停止を………それすらダメなんだろうか。とにかく、このままじゃ彼女が落下するのは時間の問題。いくら頑丈なキヴォトス人でも、あれは死ぬ。
「………」
………何もしなくたって私にはなんの関係ない話だ。落ちそうになってるのは、少なくとも私が今日面識を持った誰とも違う。今回は先生が責任を持ってるわけでもないし、何かあってもシャーレの面目には一切関わらない。故に、『先生のため』なんて理由もない。だから―――― - 173◆TJ9qoWuqvA24/08/29(木) 23:56:20
「………!」
"ユウ!?"
「ユウちゃん!?どこに――――」
私は走る。翼を羽ばたかせ、風を薙いで少しでも速く。目指す先は一つ。別に、見捨てたって私には関係ない。先生のためでもない。落ちそうになっているのは、今日私が会った奴ですらない。以前の私なら、きっと関係ないと見て見ぬ振りをして、関わるまいとしただろう。でも。
私の視線の先にあるのは、使用禁止が貼りつけられたトランポリン。………近くに生えている木を蹴って飛ぶ。更に次の木を蹴ってさらに加速。それを何度も繰り返して、すぐにあの作戦の時と同じ速度まで達する。
そのとき、周囲で悲鳴が上がった。ちらりとタワーの上を見ると、少女はついに限界を迎えて足場から振り落とされている。
「っ………!」
翼を羽ばたかせ、更に加速する。そして私は、その速度で使用禁止のトランポリンに翼を大きく広げながら突っ込んだ。とても普通のトランポリンとは思えない引き絞る音を鳴らし、直後に射出される。
瞬間、私は空気の壁を突破した。翼を閉じて風を切りながら空を駆ける。流石の私も身体が軋んで痛みが走る。それでも、速度を落とすわけにはいかない。今なら間に合う。
別に、私には関係ない。先生もそうだ。それでも………たった一つでもいい。私は自分が誇れるものが欲しい。だから、これは別に誰のためとかじゃない。他でもない、自分の為だ。
この翼で、誰かを助けられるのなら。私が、私の意思で助けたいと決めたのなら。
「――――届いたっ!」
落下する少女に接近し、翼を大きく広げて一気に速度を落として勢いを殺す。そして、私は少女を受け止めた。直後にくるりと体を反転させて殺しきれなかった勢いを受け流しながら、少女と私自身を翼で包み込んでタワーのガラスを突き破った。 - 174二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 00:55:22
ユウちゃんかっけぇ…(二回目)
- 175◆TJ9qoWuqvA24/08/30(金) 02:34:09
ガラスが砕け散る音を立てながら、私と少女はタワーに飛び込んだ。運がいい事に、そこはどこかの部室とかではなく廊下だったらしく、周りに人もいなかったために割れたガラスで怪我をしてしまった人もいなかった。
「………いっつ」
私を除いて。とは言っても、別に大きい怪我とかじゃない。ガラスの破片で足を切ってしまったらしい。ってか、この子の無事を確認しなきゃ。
「………大丈夫?」
「えっ!?あ、は、はい!………で、でも、あの、あなたが怪我を………!」
「これくらい別に大丈夫だっての………」
………傷、残んなきゃいいな。思ったよりしっかり切ってしまったのか、血が結構出てる。………なんとなく昔を思い出すようで、ボーっとそれを見ていたら、不意に少女がハンカチを取り出して、私の足に押し当てた。
「………汚れるよ」
「そ、そんなのどうでもいいです………!命の恩人を放っておけるわけありません………!」
「………そ」
あの時は、私がどれだけ傷付いても誰もこんな風に気遣ってくれなかった。………私、あの時からどれくらい変われたかな。でも、私は出来たんだ。この翼で、自分の意思で助けたいと思って助けることが出来たんだ。誰も助けてくれなかったと嘆く事は簡単だった。
そうするのが当たり前だと思うのは楽だった。でも………こうして誰かを助けることが出来た私は、何とも言えない晴れやかな気持ちになっていて。夢で浮かんだ言葉の意味が、何となく理解できた気がした。
そんな風に思って、また少しボーっとしてしまっていたら、先生とユウカ、そしてC&Cの皆が慌てたように走って来た。
"ユウ!"
「ユウちゃん!!大丈夫!?」
「おい、無事か!?」 - 176◆TJ9qoWuqvA24/08/30(金) 02:56:04
「………大丈夫だよ。この子も無事」
「無事で本当に良かった………!またあなたに助けら………れた………っ!?」
"ユウ!怪我したの!?"
「ちょっと怪我の具合見せろ!!」
私は軽く手を上げて無事を伝えるけど、すぐに血に染まったハンカチが私の足に押し当てられてるのを見て血相を変えたユウカがどこかに連絡を始め、先生とネルが怪我の具合を看始める。
それからは、見学どころじゃなくて。すぐにミレニアムの医療部が来て、私はたかが切り傷だと言うのに最新技術を使った縫合を受けた。このくらいの傷なら、絶対に傷跡が残らないとか。手当てが終わった後は、特に大きな傷でもなかったからすぐに歩けるようになっていた。………ただまぁ、予想以上に時間が掛かってしまっていて。見ればもう日が沈み始めていた。窓の外を眺めていると、ずっと付き添ってくれていたユウカが声を掛けて来た。
「えっと。ユウちゃんさえ良かったら、今日はミレニアムの居住スペースに泊まって行かないかしら?こんなことになっちゃったし………二度もうちの生徒を助けられたんだから、このままさようならって言うのもちょっと申し訳ないのよ」
「………じゃあ、お世話になります」
私が軽く頭を下げると、ユウカは小さく首を振った。
「さっきも言ったけど、寧ろ私が頭を下げなきゃいけないわ。恩返しのつもりで招いたのに、またあなたに助けられてしまったもの。………正直、もうどんなふうにこの恩を返せばいいか私には分からないわ」
「別に、恩を売りたくてやったわけじゃないし………それに、こっちだってあなた達がここに呼んでくれたおかげで、沢山の物を得たから。さっきのは………私が、そうしたいと思ったからやっただけ」
「………そう。本当に強いのね。ユウちゃんは」
そう言って、ユウカはそっと私の頭を撫でる。褒めるためとか、子ども扱いとも少し違う。その手は凄く優しくて。………なのに、私を見る目は、なんだか少し悲しそうにも見えた。 - 177◆TJ9qoWuqvA24/08/30(金) 03:01:57
「………こんなに優しいのに、誰からも理解されなかったなんてね」
その言葉に、少しだけ目を見開いて彼女の顔を見上げる。そんな私を見たユウカは小さく微笑みながら、更に言葉を続けた。
「私達、仲は良いって言ったでしょう?どうでもいい人なんて居なくて、誰一人欠けていい人じゃないの。だから、どれだけ仕事を増やすようなおバカ達でも、大事な仲間で、友達。そんな友達を、あなたは2度も助けてくれた」
ユウカはそっと頭を撫でる手を止めて、代わりに私の肩に両手を添えて続ける。
「だから、せめて私達はあなたがとても強くて優しい人だって分かっていたいの。きっと、これからもあなたは大変な事がいっぱいあると思う。でも、そんなときはいつでも私達に相談してね。………それが、友達って事だから」
「………うん」
なんとなく、この学校がこんなにも眩しくて、温かかったのか分かった気がする。きっと皆好きな事をして、その中に皆を好きな気持ちが沢山あって。その繋がりが、少し羨ましかったんだ。
だけど、私が気付いてなかっただけでその繋がりは私にもいつの間にか繋がっていて。夕焼けに照らされる中、芽生えたこの温かさに、私はほんの少しだけ涙が出そうになってしまっていた - 178二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 07:36:51
ほ
- 179◆TJ9qoWuqvA24/08/30(金) 15:41:51
ミレニアム居住スペースの一室。居住スペースとはいっても、作業が長引いて泊りになってしまった人が夜を明かすための個室で、常用してる人はいないらしいけど。先生は流石に一度シャーレに戻らないといけないからと、申し訳なさそうに帰っていった。別に気にしないんだけど。
けど、流石三大校と言われるミレニアムだけあって、設備はめちゃめちゃ整ってる。私の家なんて比べ物にならないくらいだ。お風呂もあんなに早く沸くなんて思ってなかった。
「……」
ベッドで横になりながら、私は自分の翼をそっと撫でる。こんな私でも、たった一つでも誇れるもの。悪魔の象徴だったこの翼で、私は自分の意志で誰かを救うことができたんだということが、いまだに実感が持てなかった。
それはきっと、今までの繋がりのおかげで。ただ空虚な日々を過ごす私を見つけてくれた先生のおかげで。人を信じるとか、慣れあうなんて弱い奴のすることだと思ってたのに、今の私は沢山の手を差し伸べられて、ここまで来てしまっていた。
でも、もうそれを弱さだとは思わない。たった一人では気付けなかった、見失っていた物をこんなにも見つけることができたから。この繋がりは、きっと強さなのだと思う。
体を起こして、手当の終わっている自分の足を見る。大きな怪我ではなかったこともあって、既にほとんど消えかかっている傷。
「………私は」
貰ったこの温かさを、私はどれだけ返せるだろう?でも、不安はなかった。私の唯一誇れるこの翼がある限りは。きっと、私はもっと高く飛べるはずだから。 - 180◆TJ9qoWuqvA24/08/30(金) 15:44:18
――
――――
「んで?原因は分かったのかよ」
「……動作ログの解析が終わったところだが、例の暴走が起こった時刻に妙な痕跡が発見された」
「つまり」
「これは、外部からの意図した攻撃というわけだ」
夜のタワーの最上階。バッテリーが空になったことでようやく完全停止していたクレーンを調べていたウタハに、ネルが付き添っていた。これ以上不慮の事故を起こさないため、という理由だが、事故というにはあまりにも不自然な話ではあったからだ。
一台ならともかく、すべてのクレーンの暴走。そして、おそらく外部からの電波攻撃。何を意図してかは分からないが、それがわかっただけでもネルとしては十分だった。
「――――そうかよ」
たった一言。しかし、そこに込められた感情を察せないほど、ウタハも愚かではなかった。何より、冷静にふるまう彼女も、その内は恐らくネルと大差ないであろうから。
「ヴェリタスにミレニアム自治区内の電波状況の解析を頼んでおいた。時間はかかるだろうが……こんなふざけた真似をしてくれた奴を、野放しにしておくわけにはいかない」
「当然だ。相応の落とし前は付けてもらわなきゃな」 - 181二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 16:20:21
あの工場の奴らと関係あるのかな
- 182二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 21:11:36
ほ
- 183二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 23:07:11
工場の奴らの報復が一番可能性高そうかな
- 184◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 03:32:16
コンコン、とノック音を聞いて目を覚ます。見慣れない天井に少しボーっとしたけれど、ここがミレニアムであることを思いだして一人で納得する。体を起こした後、扉に向けて声を掛けた。
「どーぞ………」
「失礼します」
そう言って入って来たのはトキだった。なるほど、朝にメイドが起こしに来ると。ちょっとどこかのお嬢様にでもなった気分だけど、この子変人だからなぁ………
「おはようございます。お体の方は支障ございませんか?」
「ん?………あぁ、平気。もう痛みもないし」
私は布団から足を外に出して傷のあった場所を見る。でも、私自身傷の治りが早いのもあって、もうほぼほぼ傷跡すらないと言って良いくらい。それを聞いたトキはやはり表情はあまり変えないながらも、小さく安堵したかのような息を吐いた。
「………安心しました。あと、こちらはユウさんの制服です。既に洗濯も済んでおりますが、破れてしまったソックスだけはこちらではどうしようもなかったためミレニアム指定のものとなっておりますが、ご容赦ください」
「ん、ありがと」
「では、支度を済ませたらお声掛けください。朝食の準備が終わっておりますので、外でお待ちしております」
「え?あ………うん」
一瞬わざわざ待たなくても大丈夫だけどと言いかけて、ミレニアムの食堂がどこか分からない事に気が付いてすぐに頷く。朝から迷子とか流石に勘弁だし。と言うか、メイドとしては案外普通なんだね。
トキが外に出て行ったのを見送って、私は受け取った着替えを広げてみる。………すごい。本当にちゃんと洗濯されてる。昨日の事があってから数時間だって言うのに、乾燥まで完璧にされてるのは流石ミレニアムの技術力なんだろうか。まぁ、作業することも多いだろうし、洗濯する作業着は常に増えるだろうしなぁ。
「………早く着替えよ」
待たせるのは流石に申し訳ないし。借りていたミレニアムの寝衣を脱いでいく。この寝衣、新素材開発部の新素材を使ってるとかで、かなり着心地が良かった。チャック式で翼も問題ないようになってたし。どっかのおバカさんとは大違い。これ、ミレニアムのどこかで売ってたりするのかな。後でちょっと聞いてみよ。 - 185二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 08:46:52
ほ
- 186二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 12:32:28
ほほ
- 187◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 13:59:21
少し急ぎ目に着替えと髪のセットを軽くしてから部屋の外へ出ると、トキがすぐに声を掛けてくる。
「もう良いのですか?」
「大丈夫。食堂いこ」
「かしこまりました。こちらです」
トキが歩き出し、私もその後に続く。昨日は色々と忙しくて、ご飯はユウカが作って部屋まで持ってきてくれていた。もちろん美味しかったけど、なんとなく彼女からの扱いがまるで妹に対するものに感じるのは気のせいだろうか。………全く関係ないけど、名前もちょっと似てるし。そういえば髪色も似てるな。………余計な事は考えないでおこう。
エレベーターで下の階に降りて、少し歩いた所に食堂があった。朝の時間だからか、人は結構多いように見える。ただ、当たり前っちゃ当たり前だけどこの中で唯一ミレニアム生じゃない私。浮いてるような気がしてちょっと気まずい。周りの視線から隠れるようにさりげなく翼で自分を隠した時、トキが声を掛けて来た。
「あちらにユウさんの席を取っております。落ち着かないでしょうから」
「ん、ありがと」
正直、その気遣いが少しありがたい。人混みって程ではないし、ここにいる人は私の敵ではないってことは頭で理解してはいるけれど、慣れない者は慣れないから。トキに案内された席は、指定席のプレートが置かれていて、誰も座っていなかった。………一人で使うにはちょっと勿体ない気がするけど。
「座ってお待ちください。朝食をお持ちします」
「え?いや、そこまでしてもらわなくても………」
「メイドの務めですので。お任せください」
「………じゃあ、お願い」
トキはそう言ってどこかへ歩いていく。………プロフェッショナルと言うのは聞いていたけど、こういう所でもちゃんとプロなんだ。………表向きはメイド部って事になってるんだから、当然と言えば当然なのかな。彼女達がエージェントだって言うことが、今の時点でどれくらい秘密に出来てるかは知らないけど。 - 188◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 15:04:48
トキがご飯を取りに行ってすぐだった。二人の影がこちらに向かって来ていた。
「おや、ユウ。おはよう」
「………ウタハ?おはよ。そっちは………」
「各務チヒロ。昨日の事は聞いてるよ。よろしくね」
「よろしく」
朝食の乗ったプレートを持った二人に挨拶をする。昨日の事って言うのは何の事かすぐに分かるけど………それ関係でってなると、ハッキング関係とか?最先端技術のことはからっきしだけど、流石に昨日の件が偶然の産物じゃないと言うのは私でも分かる。
「どうだい?チーちゃんとユウは初めましてだし、彼女も関係者だ。一緒に食べながら、少し話すと言うのは」
「………私は別にいいけど」
「私も構わないよ。ちょっとこの子の事も気になってたし」
二人が席に座る。指定席として用意してもらっていたけど、まぁ多分大丈夫でしょ。そんな事を考えていたら、トキが朝食を二人分持って戻って来た。
「ウタハ先輩、チヒロ先輩、おはようございます」
「おはよう」
「トキ、おはよう。ご一緒させてもらうよ」
「かしこまりました」
トキは私の前に朝食を………ちょっと多くない?別に小食って訳じゃないけど、そんなにたくさん食べる訳じゃないんだけど。………ま、文句言うもんでもないか。トキも席に着いて、私達は一緒にご飯を食べ始める。………うん、おいしい。 - 189◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 16:29:26
食べ始めて少しした時、チヒロがバッグからファイルとを取り出して、話し始めた。
「そういえば、昨日の件を調査するために監視カメラの映像を見てたんだけど、君すごいね。生身であそこまで空を駆ける事が出来るなんて、思ってなかった」
「あぁ、それについては同意だ。あの飛行はとても素晴らしかった。次の開発テーマにしようと思ったほどだ」
「………また戦闘機能とか付けるんでしょ」
「それがロマンと言うものだよ」
気安いやり取りを聞いて、多分長い付き合いなのだろうと察する。でも、ロマン………ロマンなのかな。私にはわからない世界だ。それを聞いたチヒロは小さくため息を付いて話題を戻す。
「あの事故の関係者って言っても何か聞きたいって訳じゃないけどね。ただ、昨日の事がネットにアップされちゃっててさ。ユウの名前もそこで上がってるんだ」
「あぁ………まぁ、そういうもんでしょ」
今の時代、何かあればすぐにSNSに投稿されるし。あんな事故が起こったのに、寧ろ一切情報が漏れない方がおかしい。そういえば、まだスマホを確認してなかったなと思ってSNSを起動する。………あぁ、トレンドに上がってんじゃん。『ミレニアムで事故』か。………まぁ、あくまでも事故として処理できたんなら良かったんじゃないかな。
「………別に、そういうのは慣れっこだからいいよ」
「随分と達観してるんだね。………けど、別に悪名って訳じゃないんだ。情報の真偽は物議を呼んでるのは間違いないけど」
「要は変な目で見られるかもって事でしょ?」
「そうだね。情報統制が出来ればいいんだけど、こういうのっていたちごっこになっちゃうんだよ」
「だから大丈夫だって。最初からどう見られてたかなんて知ってるし。私は私のやりたいことをするだけだから」
まぁ、さっきも言ったけど元々好い目で見られてた訳じゃないからそんなのどうでもいい。私に絡みついた過去が、一朝一夕で晴れるなんて最初から思ってない。けれど、それが未来を目指さない理由にはならないから。
「へぇ………君は聞いてた話と随分違うね」
「私もそう思う。変わったのは………ここ最近だし」
「そう。まぁ、その感じなら大丈夫かな」 - 190◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 20:05:44
朝食が終わったら、当然後はやる事も無くて。長居するのもあんまり良くないし、早めに帰ることにした。ユウカはもうちょっとゆっくりしても良いと言ってくれたけど、先生の仕事も手伝わなきゃだし。そうと決まったら早くて、私は学区の出口に向かうモノレールの駅に来ていた。
「それじゃあ、ユウちゃん。気を付けて帰りなさい。それと、色々巻き込んじゃってごめんなさいね」
「気にしてないってば。そっちも頑張りなよ。後始末大変だろうけど」
「まぁ、それについては何とかするわ。………また遊びに来なさい」
「ん」
まぁ、そう簡単に来れて良いのかっていう疑問もあるけど。あぁ、でもネルには少し挨拶しておきたかったな。連絡先は好感したしいつでもできるか。そんなことを考えていると、同じく見送りに来てくれていたトキが声を掛けてくる。
「ユウさん」
「なに?」
「ピース、ピース」
「ん、ピースピース」
また無表情でのWピース。ただ、流石に2度目となればこの流れは読んでいた。だから私も片手でそっとピースを返す。それを見たトキは、ほんの僅かに笑みを浮かべた。明確な表情の変化を見たのは初めてかもしれない。
「では、またいつでもお越しください。私が喜びますので」
「え?あ、うん………ん。じゃあ、またね」
「えぇ、またね」
そう言って私は到着したモノレールに乗り込む。たった一日だけど、少し寂しいような気がする。けれど………なんだか、それ以上に得たものは多い気がした。さて、先生はどんな泣きっ面でデスクに座ってるかな。 - 191◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 20:10:39
- 192二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 21:54:10
最高ですありがとうございます
- 193◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 22:41:06
- 194◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 22:48:39
- 195◆TJ9qoWuqvA24/09/01(日) 01:17:53
海世ユウのアーカイブ、2スレ目は完結です!沢山の保守とコメントありがとうございました!
どこまで続くか分かりませんが、少しずつ成長していくところを書いててとても楽しい子ですのでもう少し続きます!
それでは、3スレ目もよろしくお願いします! - 196二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 13:14:33
うめ