【SS】マキとヒヨリが一緒にグラフィティを描く話(初スレ)

  • 1二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:15:59

    初めて立てるスレになります。
    youtubeのスレまとめ動画から興味を持って、初めてながら二次創作のSSを書いたら3万字を越えたので、反応が欲しくなってスレ立てすることにした次第です。(SS自体は書き終わり済み)
    現状、スレ主はエデン条約4章までと、アリスクの夏イベを読んだところなので、最終編以降の情報や各キャラのイメージ違いなどがあるかもしれませんので、そこはご了承ください。(先にアビドス海編見るからね、ちょっと待っててくださいね…)
    あと、掲示板は初めて使うので、至らぬところがあると思われますが、何卒助力して頂ければ幸いでございます。

    SSの内容自体は、ヴェリタスの小塗マキと、アリウススクワッドの槌永ヒヨリをメインとした、ややシリアスよりのイベントストーリーみたいな内容です。
    途中、曇らせはあると思いますが、最後には必ず晴れるので、安心して読んで下さればと思います。

  • 2二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:22:10

    あたしの名前は小塗マキ。ミレニアムサイエンススクールのハッカー集団、ヴェリタスに所属する1年生だ。
    普段は他のヴェリタスの先輩でもある、小鈎ハレ、音瀬コタマ、各務チヒロと一緒に活動している。
    そしてその一方で、私にはそれとは別に、意欲的に取り組んでる趣味がある。

    グラフィティ。壁にスプレーやフェルトペンを使って絵を描く、芸術活動の一つだ。とはいっても、壁の多くは公共施設のものや他者の所有物に該当することから、その活動は違法になることが多い。

    以前のあたしは、先生が来るまでは、自由奔放に目についた壁にグラフィティを描いては、ミレニアムの会計のユウカに怒られたりしていた。当時のあたしにとって、そんなことは些細なもので、壁があたしを呼んでいるような気がしてならなかった。

    先生と会って、それがいけない事だとわかってからは、そのグラフィティ活動も、無闇矢鱈としなくなった。勿論、完全に辞めたわけじゃ無くて、やる場合はちゃんと先生と相談して、壁の持ち主に許可を貰ったりするようにはしてる。無論、今でも壁を見てると描きたくなってウズウズするのは本音だけど。

  • 3二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:23:24

    そんなあたしに、ハッキングやシステム関係以外の依頼が入ってきたって聞いた時は、流石に驚いた。
    まぁ、あたしも自分のグラフィティには自信があったわけだけど。
    これは、その時の話。グラフィティを通じてできた、あたしともう一人の「友達」のお話だ。

  • 4二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:28:59

    あたしにその依頼が入ってきたのは、先生に国語の宿題を手伝ってもらい、代わりに仕事を手伝ってから、ヴェリタスの部室に帰ってきた直後だった。

    「ミレニアム自治区でやる、屋内DJイベントのステージ背景を描いて欲しい?」

    「なんでも、前にマキが描いたグラフィティを見たらしくて。それを見て、ビビッときたみたい」
    椅子の上に体育座りしながら、エナジードリンクをグビっと飲み、ハレ先輩はそう告げた。

  • 5二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:31:29

    「基本的にストリートで名を上げた人たちがメインらしくて、パンチの効いた背景がいるらしいんだ。そこで、街中で見かけたマキのグラフィティが目に留まったんだって」

    「へぇ…あたしは可愛く描くことが多いと思ってたけど、言われてみればそうかもね。でも、絵だけの情報であたしまでよく辿り着いたね」

    「あれ、マキは知らなかったのですか?意外と街中でも噂になっているんです」
    隣にいたコタマ先輩が、持っていたスマホの画面を私の顔にかざす。

  • 6二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:32:58

    「これは…ニュース記事?」
    「マキがボランティアをした上で描いたグラフィティが、社会貢献として認められてるみたいです」
    「まぁ、先生との約束だし…『描くんだったらちゃんと手続きや交渉を踏むべきだよ』って言ってたから、それをなぞっただけだよ?」

    「動機や形はどうあれ、マキがやったことを社会が功績として認めたってこと」
    pcで作業をしていたチヒロ先輩が、椅子を回してこちらに向き直ってくる。

  • 7二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:33:48

    「本当なら、その時間で普段から、ホワイトハッカーとしてちゃんと仕事して欲しいって言いたい所だけど…この件に関しては、マキの功績だから、誇っていいと思うよ」
    「うっ、前置きが耳に痛いけど…そっか、あたしのグラフィティが…あはは、嬉しいなぁ!」
    「それでどうするの?依頼は受けるの?」
    カン、という音と共に、飲み終わった缶をおいたハレ先輩が聞いてきた。

  • 8二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:34:24

    「当然!あたしが描いていいって言うなら、断る理由なんかあるわけないじゃない!
    最高の絵を描いて、あたしがイベントを成功に導いてみせる!」
    「そっか。まぁそれなら楽しんできな。ただし、ちゃんとやることをやってからだよ?」
    「わ、分かったよチヒロ先輩…」

  • 9二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:36:23

    後日、依頼主に指名されたステージ近くに行くと、イベントスタッフが待っていてくれた。
    「お待ちしておりました、小塗マキさんですね?」
    「はい、あたしが小塗マキです!こ、今回はよろしくお願いします!」
    「いえいえ、こちらこそ。それでは、まずステージの方をご覧頂ければと」
    案内されたステージ付近は、まだ開催一週間前ということもあって、簡易的な設置しかされていない。
    そして、肝心の描くための壁は、何故か見当たらなかった。

  • 10二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:37:23

    「ここは元々開けた広場でしか無く、後日に新たに壁を設置する予定です。マキさんには、その壁の片側に、グラフィティを描いて頂きたいと思います」
    「えっ、まだ壁無かったの!?てっきり、すでに用意されてるものかと…」
    「描く上で、事前にステージを見てもらった方が、イメージしやすいかと思いまして。また、取り付けた後で描く場合では、ステージの地面などに影響が出る可能性を考慮した結果です」
    「一応、下に布を敷いたりして対策出来ないわけではないと思うけど…」
    「万が一を考慮した結果ではありますので…とはいえ、逆にいえばマキさんが周囲を気にせず描けるようにセッティングさせて頂ければと思った次第です」

  • 11二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:38:59

    そう言われたスタッフについていくと、ステージとは別の簡易施設が設置されており、中には真っ白な巨大キャンバスが用意されていた。その周囲は広く、汚れても問題ないように作られた場所のようだった。
    「うわ、大っきい…!成る程、うん、ここならのびのび描けそう」
    「お気に召して頂けて何よりです。イベントは2週間後に控えておりますので、その前日までに完成していただければと思います」
    「よーし、分かりました!あとはあたしにお任せ下さい!」
    「ありがとうございます!では早速、後はお任せ致しますので、よろしくお願いいたします」

  • 12二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:40:49

    そして数時間後。
    「うーん…ここはもう少しパステルカラーの方がいいか…いや、それだと薄すぎるし、もうちょっと派手めな色でもいいかも」
    流石に描き慣れてることもあり、作業自体は非常に順調だった。迷いながらも、派手めなイベントということもあって筆(という名のスプレー缶)の進みは早かった。

    ふと、スプレーの重みが減ったのを感じ、カラカラと振ると、中の塗料がすっからかんになっていた。
    「あ、やっば…補充し忘れたんだった。仕方ない、買いに行ってくるとするかぁ…一任されてるおかげで、かなり自由に動けるしね。とりあえず、近くのホームセンターへと…」

  • 13二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:41:36

    その後、スプレー缶と多少のフェルトペンをホームセンターで購入し、ついでにコンビニで糖分補給用のお菓子をいくつか買って、戻る途中のことだった。

    「やばっ、雨が降ってきた。急いで帰らないと」
    幸い、簡易設置されたスペースには天井があるので、雨で壁が濡れることは無いだろう。
    ただ、自分が濡れた状態で再開するのは、壁の塗料に水滴が垂れてちょっと危ないかもしれない。なるべくリスクは避けたかった。
    しかし、降ってきた強い雨の中を走ること10分。あっという間に服や髪から水滴が滴るようになってしまい、これは流石に一旦着替えないとな、と思い始めた時だった。

  • 14二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:42:35

    途中で通った道の付近の路地裏から、ガラガラという音と共に、「うう…」という呻き声が聞こえてきた。
    続いて、ドサッという、鈍く大きい音が聞こえてきたかと思うと、その後はしんと静まり返ってしまった。

    「だ、誰かいる…?」
    急ぎたいのは山々だが、あたしにとってその好奇心を拒むことはできなかった。路地裏に近づいて、中を除いた時──あたしは、思わず息を呑んだ。

  • 15二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:43:55

    非常に重そうな荷物を幾つも抱えた、淡い緑色の髪の女の子が、息も絶え絶えになりながら地面に横たわっていたからだった。
    雨でずぶ濡れになっている所から見ても、体がすっかり冷えきってしまっているように見えた。

    「え、ちょっと、大丈夫!?生きてる!?」

  • 16二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:49:16

    「う、うぅ…あ、熱い、です…」
    「熱い!?もしかして、熱が出てるんじゃ…えーと、どうしよ、取り敢えず助けないと…こういう時は…そうだ、先生!」

    あたしは、モモトークを通じて先生に助けを呼ぶことにした。倒れている子の情報を聞いた先生は、少し驚いた後、誰かに連絡をしたかと思えば、すぐにそっちに行くと伝えてくれた。

  • 17二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:50:46

    「病人がいると聞いて来ました、大丈夫ですか?」
    「うわぁ!?いつの間にそこに!?」

    声が後ろからしてびっくりして振り返ると、そこには看護服のような姿をした、ピンク色の髪をした子が来ていた。
    「救護騎士団のセリナと言います。こちらの子が、先生のおっしゃられた方ですね?」

  • 18二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:51:13

    「そ、そうなのかな?…もしかして先生が連絡してた人?いや、いくらなんでも到着が早すぎない!?」
    「話は後です、まずはこの子を運びましょう!荷物を取りますので、すみませんがお手伝いをお願いします」
    「わ、分かった…って重!?この子、こんな荷物を持ったまま動いてたの!?」

    そうして私たちは、彼女を一先ず、先生のいるシャーレに運び込むことになった。途中で合流した先生が衰弱していたその子を抱えてくれたこともあり、無事にシャーレまで辿り着くことができた。

  • 19二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:57:03

    「ん…あれ、私…」
    「あ、先生!起きたよ!」
    「マキさん、患者の前ですので、なるべくお静かに…」
    「ご、ごめん…」
    シャーレ到着後、セリナと先生と一緒、その子をベッドで看病し続け、1時間くらい経った頃。
    その子はゆっくりと目を開けて、周囲を確認した後、パチパチと驚いたように瞬きをした。

  • 20二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:57:33

    「…え、えぇ!?な、なんで私、シャーレのベッドの上でぐっすりと寝れるように看病されている状態なんですか!?」
    「状況理解早っ!?ええと…君、路上で熱を出して倒れたんだよ、覚えてる?」
    「そ、そうだったんですか…?じゃ、私をここまで運んできてくれたのは、貴方達ですか…?」
    「そ、そうだけど…」
    「ま、まさか、ここで私をぬくぬくと看病して安心させることで、後で高額の治療費を請求させるつもりなのですか…!?あ、或いは代償として何かの治験対象として使われるとか…!?」
    「いやそんなことしないよ!?被害妄想強いね君!?」

  • 21二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:58:22

    「で、でも今は体がダルくて動けないのに…うわぁぁぁぁん!もう終わりです!やっぱりこのまま安心した途端に絶望する運命なんです!人生なんて痛くて苦しい惨めなものなんですぅ!」
    「いや勝手に絶望しないで!というか話聞いて!」

  • 22二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:58:48

    「うわぁぁぁん、どうせならそこのリンゴとスポドリ取ってください!」
    「そして案外図太いね!?」

    「あの…お静かにして下さいね?」
    「「あ、はい…」」

  • 23二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:03:07

    こういうの待ってました

  • 24二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:04:08

    「とりあえず無事で良かった、ヒヨリ。こんな状態だったのに、すぐに来られてあげられなくてごめんね」
    「い、いえ…先生は悪くないです。それに、お二人もありがとうございます…しゃくしゃく…」
    そういい、りんごを頬張りながらそのヒヨリと呼ばれた少女は私たち3人にお礼を言ってくれた。
    「ど、どういたしまして…なのかな?先生、なんか面白い子だね…?というか知り合いだったんだ。まぁ、先生の顔の広さならそりゃそっか」

  • 25二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:05:33

    「そうだね。改めて、彼女の名前は槌永ヒヨリ。訳合って、僕とは知り合っている子なんだ」
    「は、はい、槌永ヒヨリです…改めて、よろしくお願いします…へへ…」
    「よろしく、あたしは小塗マキ。ミレニアムのハッカー集団、ヴェリタス所属の1年生だよ」
    「私はトリニティの救護騎士団の2年生で、鷲見セリナと言います。よろしくお願いします、ヒヨリさん」

  • 26二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:07:40

    「それで、ヒヨリはどうしてあんな所にいたの?」
    「じ、実はですね…私、普段は他に姫ちゃ…じゃなくて、2人の仲間と一緒にいるのですが、途中で逸れてしまって…逸れて探している道中で、段々頭がふわふわしてきたんです。
    その上雨が降ってきてしまって…気づいたら、体がいうことを聞かなくなってしまってたんです」
    「そうでしたか…それは大変でしたね。体調を安定させるために、今日のところは安静にしておいて下さい。シャーレであれば先生もいますし、ここであれば一先ずは安全だと思います」
    「は、はい...!わ、分かりました、セリナさん」

  • 27二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:09:02

    「それで、私は救護騎士団の仕事に戻らないといけなくて…すみません、マキさん、先生。あとは、お任せしても構わないでしょうか?」
    「うん、あとは任せて」
    「あたし達がいれば大丈夫!」
    「ありがとうございます、2人とも。ヒヨリさん、後日また状態を確認しにまいりますね。では、私はこれで。あと、それと先生」
    「ん?どうしたの、セリナ?」

  • 28二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:10:01

    「…何か事情があるということは、私も分かってはいるつもりです。なので、私は“患者”を救助しただけ、ということにしておきますね」
    「…察しが良くて助かるよ、セリナ」
    「私は、救護騎士団ではあると同時に、先生の生徒ですから」
    そう言い、にっこりと笑った救護騎士団の少女は、一足先に去っていった。
    …今の言葉は、どういう意味だろう?

  • 29二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:11:19

    「取り敢えず、今日はあたしと先生がいるから、安心して休んで大丈夫」
    「は、はい…あの、本当に裏とかは、無いんですよね…?」
    「あの咄嗟に助けないといけない場面で、そんなこと考えてる暇ないでしょ」
    「そ、それもそうですね…へへ…あれ?」
    「ん?どうしたの?」
    「それは…?」

  • 30二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:12:09

    「…あぁ、これのこと?グラフィティに使う為のスプレーだよ」
    「グラフィティ…あ、もしかして、荒れている地域の壁に時々描かれてる、凄く色の激しい絵でしょうか?」
    「まぁそうかな。多分あたしが描いたものじゃないけどね」
    「描いたもの…ってことは、普段から、マキさんはその、グラフィティをよくやってるんですか?」
    「んー、確かに少し前はよくやってたけど、今は控えめ。ぶっちゃけると、許可がないなら器物損壊になっちゃうからね」
    「それもそうですね…世知辛いというか、残念というか」
    「それに、あたしは先生と約束したからね。グラフィティをやるなら、人様に迷惑をかけないようにって」

  • 31二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:12:48

    「成る程、先生とですか…でも、完全に禁止しない辺り、そこはやっぱり先生ですねぇ…あれ、じゃあ今持ってるスプレーは?」
    「今は、あるDJイベントの運営から依頼を貰っちゃってね。さっきもそれで…それで…あっ」
    「『あっ』って、どうしt…」
    「し、しまった!気がついたらこんな時間に!?…ま、まぁ急いで完成させる必要はないし、今日ぐらいは大丈夫か」
    「えっと…もしかして、私を見つける前にも、依頼として描いてたり、してました…?」
    「ま、まぁそうだけど…」

  • 32二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:13:32

    そこで、私はヒヨリが私の持ってるラッカースプレーに、視線が向いてるところを見て、一つ思いつくことがあった。
    「…もしかして、グラフィティに興味ある?」
    「い、いえ、そういうわけではなくて…」
    「でも、このスプレーが気になった訳でしょ?…ねぇ、せっかくだしさ。元気になったら、私と一緒にグラフィティしない?」
    「…えぇぇぇぇ!?そ、そんな気軽なノリで私を誘って大丈夫ですか!?ま、まさか…足りない人手を補う為に、私を只働きで散々こき使うために…」
    「君は私のことなんだと思ってるのさ!?あと、別に私一人でも描き切れるから!」

  • 33二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:14:09

    「な、なら尚更どうして…」
    「うーんとね…だって、せっかく久々に描くもの!誰かと一緒に描く方が、一人で描くよりもずっと楽しいし!」
    「そ、そういうものでしょうか?」
    「それにね…なんか君とこうしてあったのは、何か芸術的運命を感じるんだ。君の描くものを、私が見てみたくなって!ただそれだけのことだよ」
    「私の…ですか…?」
    「そういうわけで先生!ヒヨリが元気になったら、彼女を連れて行きたいんだけど、どうかな?」

  • 34二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:18:14

    それを聞くと、先生はしばらく考えたあと、こくりと頷いた。

    「分かった、いいよ。ただし、いくつか守ってほしいことがある」
    「守ってほしいこと?」

    「まず、彼女の体調を治してから。ここは絶対にね。
    そしてもう一つ。…訳合ってあまり話せないけど、彼女はあまりミレニアムにはいれない生徒なんだ。
    もしかしたら、マキの思ってるような子ではないかもしれない。
    でも、僕は彼女の先生で、彼女は僕の生徒だ。だから──何があっても、彼女のことを信じてあげて」

  • 35二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:25:35

    「…何があっても、か。先生がそんなことを言うってことは、きっとヒヨリは、私が知らない秘密を抱えてるんだね?」
    「あ、あぅ…」
    「…分かった。何か理由がありそうだけど、先生を信頼してるから、あたしは聞かない。信じるよ」
    「ありがとう、マキ。体調さえ良くなれば、ヒヨリも2人の元には帰っていけるから。僕の方から、2人に連絡はしておくよ」
    「あ、ありがとうございます…」

  • 36二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:26:54

    「帰る時は気をつけてね。今僕がしてあげられるのはここまで。それでも何か困ったら──僕が助けに行くよ」
    「ありがとう、先生!」「は、はい!」
    「それじゃ、今日は2人とも寝よう。マキは、ヴェリタスの子達を心配させないように、ちゃんと連絡しておいてね」
    「はーい」「で、では、お休みなさい…」

  • 37二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 11:27:40

    一旦休憩。
    また後ほど書きに来ますんで。ではでは。

  • 38二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:20:00

    そして次の日。
    前日にしっかり休んだこともあり、ヒヨリの体調はほとんど快調になっていた。
    最も、夜中に先生が作ったお粥をヒヨリが常人の3倍頬張って、その上「あとバナナも欲しいです…!」と言った時は、流石のあたしも驚いたけど。
    何なら次の日に治ってるって、どんな修羅場潜ってきたんだこの子…。
    体調確認に来たセリナも、かなり驚いてたりしていた。

    「まさか先生に夜通し看病して貰って、その上お粥まで頂けるなんて…私、こんな幸せで良いんでしょうか…」

  • 39二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:21:01

    「まぁ羨ましがる子は多そうだけど…幸せのハードルが随分と低いような…ま、まぁいっか。
    それじゃヒヨリ、あたしについてきて。
    あ、一応ヒヨリはあたしのアシスタント(助手)って言う扱いで向こうには話を通してるから、その設定でよろしくね」
    「わ、分かりました…よろしくお願いします、マキさん」
    「じゃ、行ってくるね先生!昨日はありがとう、ゆっくり休んで!」
    「い、行ってきます…!」

  • 40二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:21:33

    「行ってらっしゃい2人とも。…さてと。セリナ、僕はちょっと休むから、今日の当番の子にはよろしく伝えてくれるかい?」
    「はい、分かりました!今日はミレニアムのセミナーのユウカさんみたいですね」
    「そういえばそうだった…はぁ、またユウカに怒られるかなぁ…ハハハ」

  • 41二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:25:47

    「私もそこまで厳しくはしませんよ、先生」

    「ユ、ユウカ!?もう来てたの!?」
    「全く、先生はお人好し過ぎます…自身の身体や現状に合わせて動かないと、普段の業務にも支障が出るんですよ?私だから良かったものを…」
    「はは、ごめんねユウカ。ちょっと休んだら、私もするから」

  • 42二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:26:44

    「ちょっとと言わず、そこはちゃんと休んでください!中途半端な休憩は、帰って体に影響を及ぼすんですから。メリハリをつけてしっかりと。その後で、きちんと手伝って貰いますからね」
    「…分かったよ、ユウカ。それじゃ、また後で…zzz」

    「…全く、マキのあんな嬉しそうな顔見たら、怒るに怒れないじゃないですか。
    …それにしても、隣の子、どこかで見たような…」

  • 43二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:28:04

    -ヒヨリ視点-

    「うわぁ…お、大っきいですね…」
    「そ、これがあたし達のキャンバス。具体的には、あと10日で描き切る必要があるんだ」
    「10日…ですかぁ…」
    「ま、あたしだけでもいけなくはないけど、せっかくだしね。ヒヨリには、左半分をやってもらおうかな」
    「えぇ!?いきなりそんな大部分を任せて貰うなんて…大丈夫でしょうか…!?」

  • 44二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:30:23

    「まぁ、確かに急にやるのは難しいかー。ふむ…よし」
    すると、マキちゃんは持っていたバックから一冊のスケッチブックを取り出して、3枚ほどペリッと剥がす。

    「そしたら、まず今日は慣らしてみよう。ヒヨリ、この紙に思ったままにスプレーで描いてみて」
    「こ、これにですか?」
    「そう、何でも良いよ。思ったものを、思った通りに描いてみてよ」
    「思った…通りに…」

  • 45二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:38:31

    スレ立て初心者みたいだから一応言っておくけど、反応が欲しかったらこんな時間に立てるもんじゃないよ
    今は夏休み期間だからマシにはなっているとはいえ、平日の昼間だとかなり人数少ないからね、反応が欲しかったら夜の8時以降に立てるといいんじゃないかな
    それはそうと、話が面白かったので頑張って

  • 46二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:43:27

    >>45

    ありがとうございます。言われてみれば、そりゃそうですね…

    時間空けて、夜にまた書きますので、引き続き頑張っていきたいと思います

  • 47二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:11:50

    そろそろ頃合いかな、と見たので、再開していきますよぉ。
    場合によっては、スレを立て直した方がいいのかしら…?


    ~ここまでの大方なあらすじ~
    ミレニアムのハッカー集団所属の小塗マキ。グラフィティを趣味としている彼女の元に、ある日DJイベントの背景を描いてほしいという依頼が来る。
    早速描き始めたマキだが、描くために必要な道具を補充しなければいけなくなった。その帰り道に、途中で路地裏にて熱を出して倒れているヒヨリをみつけ、一旦シャーレまで連れていくことになった。
    ヒヨリは介抱する中で、マキはせっかくだからとヒヨリに、グラフィティの共同制作を提案する。
    戸惑うヒヨリだったが、マキは先生の了承を得た上で彼女と一緒に描くことにした。
    まずは、マキはヒヨリに紙を何枚か渡し、何でも描いてみてと促すが…

  • 48二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:14:50

    -ヒヨリ視点-

    「あたしは壁の方のグラフィティに取り掛かっているから、できたら教えてね。それじゃ!」
    「あっ、マキちゃ…」
    私が声をかけようとして束の間、マキちゃんは壁の方にスタコラと行ってしまった。

    「どうしよう、何でも描いていいって言われましても…」
    そもそも、私にはそんなものが思い当たらないのだ。

  • 49二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:15:02

    マキと……ヒヨリ……!?

  • 50二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:18:32

    確かにグラフィティの話をマキから聞いた時。
    彼女が持っているスプレー缶を見た時。
    心のどこかで、興味が湧いてきたのは事実だった。
    それは確かだった。だったのだが──

    一体どんな風にやるのか、どんなものができるのか。それが丸っきり──イメージなんてできないのだ。
    何でも──思ったものを、思った通りに──

    「Vanitas Vanitatum, et omnia Vanitas.」
    (全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ)

    ──最初に浮かんできたのは、何度反芻したか分からない、脳内に染みついて離れない言葉。
    そして──この言葉を自分に刷り込んだ、『彼女』──ベアトリーチェの姿だった。

  • 51二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:20:35

    「…っ!」

    そうだ──この絵だって、最後には朽ちていって、何も無くなってしまう。
    ましてや、紙に書かれたものなんて燃えてしまえば終わりなんだ。
    なら、何を描いたところで同じだ。
    最後にはきっと──虚しいだけ。


    ──でも。

    でも──どうせ同じなら。

    いっそのこと、思いついたまま、がむしゃらに、貪欲に──ただただ、手の動くままに描いてしまっても、良いんじゃないだろうか。

  • 52二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:22:04

    そう思いついた私は、用意されたスプレー缶を、手当たり次第につかむ。
    目についた色のスプレーを、直感のままに紙に描きつける。

    赤、青、黄、緑、黒、白、数多の色が、独特なシンナー臭と共に、紙に吹き付けられていく。

    それを繰り返しては描きつけた結果、出来上がったのは──

    ありとあらゆる色が混じり合った、カオスそのものだった。

  • 53二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:23:43

    「…へへ…そりゃ、そうですよね…」

    その絵に、自分なんてものはどこにも見当たらないように見えた。
    いや、そもそも自分の中に中身なんてなかったのだろう。

    いつだって、アリウススクワッドのみんなと一緒にいて。リーダーの後をついていって、いつもみんなから貰ってばかりだった私には、自分で生み出したものなんて何一つ無かったのかもしれない。

    あえて言うなら──虚空。絶え間なく、全てを呑み込む暗闇。
    貰ってばかり、奪ってばかりの自分。
    「彼女」が私たちを搾取したように、その子供である私も、結局は搾取する側に成り下がってしまうのだろうか。
    誰かから奪うばかりだから──最後には、全部奪われるのだろうか。
    そんな考えを持った時には、心の中は、痛くて、苦しくて──とても、虚しかった。

  • 54二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:26:44

    そんな風に考えて、込み上げたものを抑えきれなくなった時──

    「ちょ、ちょっと!?大丈夫!?どうして泣いちゃってるの!?」
    「!?」
    後ろから、マキちゃんの声がして、ビックリして反射的に仰け反ってしまう。

  • 55二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:28:14

    「ご、ごめんなさいぃ!こ、これはその…すみません、私なんかには、やっぱり芸術を騙るセンスなんて無かったんですぅ...!そもそも、私なんかが何かを残そうなんて…とてもじゃないですけど…へへ…」
    いつものくせだろう、気づいたら自虐的な言葉と笑いが、漏れてしまっていた。

    マキちゃんは、自分の意味不明になってしまい、無惨に広がったその絵を見ていた。
    そしてそれを拾い上げ、口を開き──

  • 56二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:29:17

    「うわぁ、凄っごい…良い迫力!あたしが始めた時も、こんな感じだったなぁ〜」

  • 57二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:29:55

    「…え?」
    飛び出すとばかり思っていた酷評とは全く違う、感嘆と懐古の声が、彼女の口から綴られた。

  • 58二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:30:48

    「まさか最初から、何の躊躇もなくこんなにも大胆に描くなんて!どこかヤケにも見えるけど、それも味があって魅力的!ん〜、懐かしいなぁ!」

    マキちゃんが浮かべた笑顔に──疑いの欠片は、どうしてだか全く見えなかった。
    「…マ、マキちゃん」
    「ん?どうしたの、ヒヨリ?」

    「へ、下手くそとか、大雑把だとか…何を伝えたいか分からないとか…そんな風には、思わないんですか?」
    恐る恐る、そう聞いてみたら。

  • 59二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:32:21

    「…うーん。…うん!それはそうかも!」

    「…ふえぇぇぇぇぇぇぇ!?」
    …あっという間に上げて落とされた。

  • 60二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:32:54

    「うわぁぁぁん、やっぱりそうだったんですねぇ!分かってはいましたけど、実際に言われると辛いですぅ!」

    「あぁ、待って待って!最後まで聞いて!…確かにこの絵はあたしからみたらよく分かんないけれど…でも、白紙じゃないじゃん」
    「…え?」

  • 61二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:33:51

    「何も描かなかったわけじゃなくて、何か分からなくても衝動的に何かを描きつけた。その時点で、これは確かにヒヨリの絵だよ。そりゃ、最初からうまくいったら天才だけどさ──」
    そうして、私にそのカオスを見せつける。目をそらしたくなるそれを──マキちゃんはじっくりと見ていた。

    「こうして形にした以上、ヒヨリは確かに自分を出してる。これが今のヒヨリだとしても──この先変わっていく途中のヒヨリでもある」
    「変わっていく、途中…」

  • 62二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:34:28

    「うん。だから、これは最初にして原点。次に生まれるその先が、私は楽しみだよ!」

    楽しみ──。私が作ったものの未来が、マキちゃんにとっての楽しみ…?

  • 63二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:35:10

    「…そんなこと、は、初めて言われました…」
    「え、そうなの?少なくとも、私はこういうのも好きだよ?」
    「そ、そうですか…」
    その後、再びその絵をみる。カオスで、歪で、目に痛いはずのその絵が──何故か、どこか愛おしく思えてしまった。
    そう、思いたくなっていた。

  • 64二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:37:39

    「へへ…うへへへへ……」
    「うわっ、ヒヨリの笑顔、凄いだらしなっ!」
    「ふえっ!だ、だらしないんですか…?」
    「あ、ほっぺた柔らかそう!どれどれ〜?」
    「ふぃ、ふぃっぱららいへふひゃひゃいぃ…!」

    その後、暫くもちもちと、ほっぺをマキちゃんに引っ張られつつも、ニヤけてしまうような笑いが、消えることはなかった。
    強制とも、信頼とも違う──それは、『期待』という、それまでの私が受けたことのない、他者からの感覚だった。

  • 65二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:41:05

    初書きとは思えん……名作の予感

  • 66二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:45:50

    一先ずPART1として、ここで〆ましょうかね…
    21時くらいに、PART2のスレを立てておきますので、続きはそちらへ書こうかなと

  • 67二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:00:52

    次スレができましたので、ここまでをご覧になられた方々はこちらへ。


    https://bbs.animanch.com/board/3768682/?res=2

  • 68二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:15:15

    それじゃあここからはここまでの感想ということで……いいのかな?

  • 69二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:30:21

    そうですね…
    ここから下は、ご自由にご感想などがありましたら、書いてくださってOKです(なのかな?)

  • 70二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 09:00:49

    >>66

    >>67

    なぜ半分も行ってないのに次スレへ?

  • 71二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 09:28:03

    1スレ埋まり切らずに感想スレに移行して、次スレ立てて続き書いちゃったから見るところ2倍に増えて見づらいとか、
    次スレで早々に指摘された時点で早々に次スレを爆破(削除)してこっちで続きかいてほしかったとか
    掲示板の扱いで言いたいことはメチャクチャあってモヤモヤするけど

    それはそれとしてSSの内容は面白くて好き。

  • 72二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 18:16:40

    スレ主です。
    皆様、まずはここまでのSSを見てくださってありがとうございます。
    面白いと言ってくださった方々もおり、非常に嬉しい限りです。二次創作でSSを書くのは初めてだったため、イメージを損なってないだろうかと不安になってましたが、少しほっとしております。

    一方で、掲示板の使い方に対してはかなり指摘があった点に関しては、弁解の余地もございません。真に申し訳ありませんでした。
    特に、次スレを早々に立ててしまった件については、「新しくスレッドを立てれば、新着の欄から見てくれる人が増えるだろう」という承認欲求から来た、浅はかで自分勝手な所があったと思っております。
    また、「早々に指摘された時点で削除しておく」という手段も、そのまま書き進めてしまった自分の考え不足からなるものでした。
    読んでくださった方々に様々な負担を強いてしまい、本当にすみませんでした。

    現状、次に立てたスレッドに関してはかなり書いてしまったため、これを消すと更に負担を強いることになりかねないと判断し、このまま次スレッドで限界まで書ききる予定にしております。

    嬉しい反応も、的確なご指摘も、できる限り受け止めたうえで、それでもSSは最後まで乗せ切りたいと今は考えております。ご期待に沿える物でありたいと、今は切に願っております。
    思慮不足で至らぬところばかりではありますが、何卒よろしくお願いいたします。

  • 73二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 18:34:30

    >>71

    なあに皆最初はそんなもんさきっと

    まあだからこそ半年ROMれなんて言葉が生まれるわけだが

オススメ

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