【ばんえいウマ娘】オリウマ娘が北の大地を駆ける6

  • 1◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:36:57

    あたしは、特にこれといった特徴のない、どこにでもいる平均的なウマ娘!
    それでも、ウマ娘に生まれたからにはレースの世界に飛び込んでみたい!
    輝いてみたい!

    その念願がかなって、帯広トレセン学園に入学できました!
    そう、あたしことカミノクニスノウは、ばんえいウマ娘です!

    勝利と敗北を積み重ねて、ジュニア級最強決定戦の重賞BGⅠイレネー記念を制し、ジュニア級のシーズンもそろそろおしまいです!

  • 2◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:37:48

    ※注意事項

    このスレは、ばんえい競馬を見に行って脳を焼かれたスレ主がなんとなく作ったダイスを使ったレースゲームのテスト用です。

    スレ進行とノリでゲームルールが改訂/アップデートされます。

    まだキャラの外見や特徴が未定な点が多く、最低限の特徴を捕らえただけなので、絵は今後も変わっていくかもしれません。

    あと、だらだらとフレーバーが書かれています。

    それでも良ければお付き合いください。


    現在、テレグラフが貼り付けられないため、短縮URLを貼っておきます。

    今までにスレに載せたイメージイラストもこちらにまとめてあります。

    x.gd
  • 3◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:38:11

    5スレ目

    【ばんえいウマ娘】オリウマ娘が北の大地を駆ける5|あにまん掲示板あたしは、特にこれといった特徴のない、どこにでもいる平均的なウマ娘!それでも、ウマ娘に生まれたからにはレースの世界に飛び込んでみたい!輝いてみたい!その念願がかなって、帯広トレセン学園に入学できました…bbs.animanch.com

    4スレ目

    【ばんえいウマ娘】オリウマ娘が北の大地を駆ける4|あにまん掲示板あたしは、特にこれといった特徴のない、どこにでもいる平均的なウマ娘!それでも、ウマ娘に生まれたからにはレースの世界に飛び込んでみたい!輝いてみたい!その念願がかなって、帯広トレセン学園に入学できました…bbs.animanch.com

    3スレ目

    【ばんえいウマ娘】オリウマ娘が北の大地を駆ける3|あにまん掲示板あたしは、特にこれといった特徴のない、どこにでもいる平均的なウマ娘!それでも、ウマ娘に生まれたからにはレースの世界に飛び込んでみたい!輝いてみたい!その念願がかなって、帯広トレセン学園に入学できました…bbs.animanch.com

    2スレ目

    【ばんえいウマ娘】オリウマ娘が北の大地を駆ける2|あにまん掲示板あたしは、特にこれといった特徴のない、どこにでもいる平均的なウマ娘!それでも、ウマ娘に生まれたからにはレースの世界に飛び込んでみたい!輝いてみたい!その念願がかなって、帯広トレセン学園に入学できました…bbs.animanch.com

    1スレ目

    オリウマ娘が北の大地を駆ける|あにまん掲示板※注意事項①このスレッドは、スレ主がなんとなく作ったダイスを使ったレースゲームのテスト用です。②バランスが悪い、あんまり面白くないと感じたら削除するかもしれません。③初スレ立てで進行が不慣れなのに加え…bbs.animanch.com
  • 4◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:40:08

    キャラクター紹介

    【概要】1/2

    名前:カミノクニスノウ

    種別:ばんえい種(日本輓系種)

    耳飾り:左耳

    目の色:濃い青灰色

    学年:不明

    毛色:青毛

    身長:191cm

    スリーサイズ(いずれも100に近いほど大)

    B:dice1d100=31

    W:dice1d100=9

    H:dice1d100=50


    脚質:先行

    特技:未定

    苦手な事:未定


    ルックス:dice1d100=59(100に近いほど美形。1に近いほど可愛い)

    雰囲気:dice1d100=9(100に近いほどボーイッシュ。1に近いほどガーリー)

    髪の長さ:dice1d100=32(100に近いほど長い/100で腰以上。1に近いほどショート/1でシャカール並み)

    髪の癖:dice1d100=91(100に近いほど直毛/ストレート。1に近いほど癖っ毛/ウェービー)

  • 5◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:40:34

    【概要】2/2
    趣味:
    イラスト描き
    ほとんど熱中しておらず、暇な時にちょっと描いたりするくらい。
    描き始めて5年ほどで腕前は人並みか、やや下。

    得意な事:
    ・動物(特に猫)の扱いが上手い
    ・ヘアアレンジが得意

    備考:
    ・出生地は北海道上ノ国町(かみのくにちょう)。檜山管内。
    ・実家はコメ農家。
    ・五人姉妹の長女。妹はヒトミミが二人。ウマ娘が二人。
    ・祖母はめちゃくちゃ強かった。通算成績109戦50勝の通称”上ノ国の女傑”。
    ・トレセン入学前の一時期が残念な環境だっただけで幼少期の実績はある。
    ・実は怪我からの復帰直後(入学前に肋骨を骨折。現在は回復済み)
    ・実はすごい寂しがり屋。
    ・愛用のどきゅーとタイシンを実家に置いてきている。二体目を寮にお迎えするのは断念した。代わりのぱかプチ六体の為にアルバイト奮闘中。
    ・各種職業への適性がやたら高い。むしろレースより仕事した方がいいくらい。
    ・ジンギスカンはタレ派。

    直近の戦績:
    赤鼻のトナカイ特別 (ばんえい200) 8着
    BGⅡ ヤングチャンピオンシップ (ばんえい200) 4着
    インフラ保守に感謝しよう記念 (ばんえい200) 1着
    BGⅡ 黒ユリ賞 (ばんえい200) 1着
    BGⅠ イレネー記念 (ばんえい200) 1着

  • 6◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:44:01

    寮の同室

    名前:シャコータングラム

    種別:ばんえい種(日本輓系種)

    耳飾り:左耳

    目の色:暗緑色

    学年:不明

    毛色:芦毛

    身長:208cm

    スリーサイズ(いずれも100に近いほど大)

    B:dice1d100=95 / W:dice1d100=5 / H:dice1d100=42


    脚質:逃げ

    特技:未定

    得意な事:未定

    苦手な事:未定


    ルックス:dice1d100=18(100に近いほど美形。1に近いほど可愛い)

    髪の長さ:dice1d100=4(100に近いほど長い/100で腰以上。1に近いほどショート/1でシャカール並み)

    髪の癖:dice1d100=15(100に近いほど癖っ毛/ウェービー。1に近いほど直毛/ストレート)


    趣味:

    タロット占いとビデオカメラ(ハマリ具合は不明)


    備考:

    ・出生地は北海道積丹町(しゃこたんちょう)。後志管内。

    ・ジンギスカンは塩コショウ派。


    判明している直近の戦績:

    BGⅢ ナナカマド賞 (ばんえい200) 2着 / 南北海道地区選抜特別 (ばんえい200) 2着 / BGⅡ ヤングチャンピオンシップ (ばんえい200) 2着 / BGⅡ 黒ユリ賞 (ばんえい200) 2着

    BGⅠ イレネー記念 (ばんえい200) 3着

  • 7◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:44:36

    カミノクニスノウのトレーナーさん

    【概要】

    名前:正式名は未定

    種別:人間男性

    年齢:27歳

    実力:dice1d100=55(100に近いほどハイスペック)

    ルックス:dice1d100=32(100に近いほど美形。1に近いほど地味)

    体形:dice1d100=69(100に近いほどグラマー/デブ。50で標準。1に近いほどスレンダー/痩せ)

    性格:dice1d100=46(100に近いほど明るい/ポジティブ。1に近いほど厳格/物静か)

    人格:dice1d100=83(100に近いほど人格者)

    人脈・コネ:dice1d100=41(高いほど広い)


    趣味:

    ゴルフとクロスワードパズル

    どちらも結構ハマっている。ゴルフ歴7年、クロスワード歴3年。

    腕前は不明。北海道だしゴルフはパークゴルフかも?


    備考:

    ・カミノクニスノウを勧誘した理由は、たまたま模擬レースを見て、磨けば光るものを感じた。

    ・スレ主の解釈としては「チームのサブトレ上がりか新人トレーナー」「地味だけど爽やかな体育教師」。

     ただし未定部分が多いので、大いに変化する可能性あり。

    ・名前はまだない。

  • 8◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:45:37

    名前:クインルゴサローズ

    種別:ばんえい種(日本輓系種)

    耳飾り:左耳

    目の色:ローズレッド

    学年:不明

    毛色:芦毛

    身長:205cm

    スリーサイズ(いずれも100に近いほど大)

    B:dice1d100=69 / W:dice1d100=44 / H:dice1d100=67


    脚質:先行

    特技:未定

    得意な事:未定

    苦手な事:未定


    ルックス:dice1d100=79(100に近いほど美形。1に近いほど可愛い)

    髪の長さ:dice1d100=85(100に近いほど長い/100で腰以上。1に近いほどショート/1でシャカール並み)

    髪の癖:dice1d100=81(100に近いほど癖っ毛/ウェービー。1に近いほど直毛/ストレート)


    備考:

    ・出生地は北海道美唄市。空知管内。

    ・大輪の花のような雰囲気のほわほわ口調ウォーモンガー。


    判明している直近の戦績:

    いちい賞 (ばんえい200) 2着

    北央地区選抜特別 (ばんえい200) 1着

    BGⅡ ヤングチャンピオンシップ (ばんえい200) 1着

    BGⅡ 黒ユリ賞 (ばんえい200) 3着

    BGⅠ イレネー記念 (ばんえい200) 2着

  • 9◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:46:33

    名前:モチモッツァレラ

    種別:ばんえい種(日本輓系種)

    耳飾り:なし

    目の色:マゼンタ

    学年:不明

    毛色:鹿毛

    身長:219cm

    スリーサイズ(いずれも100に近いほど大)

    B:dice1d100=23 / W:dice1d100=11 / H:dice1d100=32


    脚質:逃げ

    特技:未定

    得意な事:未定

    苦手な事:未定


    ルックス:dice1d100=38 (100に近いほど美形。1に近いほど可愛い)

    髪の長さ:dice1d100=25 (100に近いほど長い/100で腰以上。1に近いほどショート/1でシャカール並み)

    髪の癖:dice1d100=20 (100に近いほど癖っ毛/ウェービー。1に近いほど直毛/ストレート)

    性格:dice1d100=47 (100に近いほど明るい/ポジティブ。1に近いほど厳格/物静か)


    備考:

    ・出生地は北海道美深町。上川管内。

    ・粘り強い足腰が持ち味。

    ・試しにパラメータを振ったところ根性がほぼ最低値だった為に他ステと入れ替えられた。


    判明している直近の戦績:

    白菊賞 (ばんえい200) 2着

    BGⅢナナカマド賞 (ばんえい200) 3着

    BGⅡ ヤングチャンピオンシップ (ばんえい200) 3着

    BGⅠ イレネー記念 (ばんえい200) 4着

  • 10◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:47:59
  • 11◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/24(土) 10:50:30

    【ルール説明】

    ・コースについて

    ――ばんえい競バで使用されるコースは、直線200メートルのダートのみ。

    ――スタートからゴールまで走るレーンが決まっているセパレートコースとなる。

    ――ばんえい競バで使用されるコースの直線200メートルは、五つのエリアから成り立っている。


    ――スタートから第1障害までの約35メートルの直線。『第1直線』。

    ――続いて、高さが1メートルになる『第1障害』。

    ――降りた後が、第1障害から第2障害間で約77メートルの『第2直線』。

    ――続いて、高さが1.6メートルになる『第2障害』。

    ――最後が、第2障害からゴールまでの約62メートルの『最終直線』。

      なおゴール手前40メートル地点には、上り勾配5パーセントになる10メートルの坂がある(冬季は撤去される)。


    ・判定について

    ――対象エリアごとに2d6を振る。

    ――対象エリアは、それぞれ難易度に応じた基準値を持つ。これに『ばんえい重量補正』を加えた値が、その対象エリアの最終的な基準値となる。

    ――各エリアでは使用するパラメータが決められている。

      ( 2d6の出目 + パラメータ補正 + 根性補正 + 脚質補正 ) が、そのエリアでの自分の走りの値となる。

    ――( 2d6の出目 + 各種補正) - ( 基準値 + 『ばんえい重量補正』 ) = 成功量となる。

    ――成功量が大きいと、そのエリアでの走りが良かったことになり、小さいと悪かったことになる。


    ――5エリア分の成功量を出したら、最終着順ダイス1d10を振る。

    ――1d10の出目 - ( スタミナ補正 + やる気補正 + 天候/馬場補正 + 5エリア分の総成功量+ライバル補正) = 最終着順となる。

    ――各エリアをスムーズにクリアしている(総成功量が大きい)と最終着順ダイスの出目が悪くても勝利となる。

    ――いずれかのエリアで成功量がマイナスになってスタミナ補正でカバーしきれなくなると、そこがスタミナ切れの表現となる。

    ――天候/馬場補正は、スキルの天候/馬場○×とレース状況にあわせて最終着順ダイスに補正値(-1~+1)を受ける。

    ――同じレースに名ありのライバルが出走していると、ライバル一人につき-1の補正を受ける。


    他、詳細について>>2のまとめ先を参照してください。

  • 12二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 18:23:34

    新スレ乙!

  • 13二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 23:47:14

    体格がいい…

  • 14二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 08:47:11

    保守

  • 15◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/25(日) 18:17:52

    「グラムさん、久しぶりにアルバイト行きませんか?」
     グラムさんに声をかけます。
     寮の自室。
     既に夕食もお風呂も終わって、消灯時間までの自由時間。部屋にはホコホコとうっすら湯気を漂わせている湯上りばんえいウマ娘が二人。
     イレネー記念の疲れはまだ抜けきっていませんが、しっかりご飯を食べて、寮の温泉に入って、学園の圃場実習で適度に身体を動かしているうちに調子は良くなってきています。それはあたしだけでなくグラムさんも同様。アルバイトに行くくらいなら、もう問題ありません。
    「お、いいねぇ。そろそろシーズンも終わって春休みになるし、軍資金は欲しいっしょ」
    「ですね、あたしもちょっとお金が必要で。シーズン終わったら実家に帰ろうと思うので、妹達へのお土産代が欲しくって。
     あぁ、何買ってってやりましょうかねー」
     ばんえい競バのシーズンは、四月中旬から、翌年の三月中旬まで。
     三月中旬頃、ばんえい記念が開催されます。
     毎年のばんえいウマ娘最強を決定すると共に毎シーズンの締めくくりを飾る、数あるばんえい競バのレースの中で最も栄誉があって歴史の深い重賞競走。
     それが、ばんえい記念です。
     ばんえい重量、まさに5000kg。
     あたしが勝ったイレネー記念はジュニア級最強決定戦でしたが、ばんえい記念は帯広トレセン学園最強を、つまりは日本で最も強いばんえいウマ娘を決めるレースとなります。
     それが終わると、その年のシーズンが終わります。
     シーズンオフの約一か月間はレースがありません。トレセン学園自体も春休みとなります。
     だいたいのトレセン生徒はそれぞれの実家に帰省します。そして、そのうちの少なくない生徒が実家の農作業手伝いで休みなどなく働きづめになります。何を植えるにせよ、春直前の圃場は目覚めの時期なので、仕方ないでしょう。
     あたしも帰省したら田んぼの準備が待っています。嫌という事は全くなく、子供の頃から慣れ親しんだ田んぼの仕事は、むしろ今から楽しみですらあります。
     そんな実家で待ち構えているであろう妹達への土産ですが、前に帰省した時のようにキーホルダー一個ずつにしてやると、文句が出るのは確実です。
     イレネー記念の時にわざわざ遠くから応援に来てくれたこともありますし、妹達が可愛くない筈がありません。

  • 16◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/25(日) 18:18:18

     ですが、それはそれとして下手に甘やかすと『お姉ちゃん寂しかったんでしょ~?』とか言ってきやがりますし、かと言ってお土産無しにしてGⅠ勝った癖にけちん坊な姉だと学校で言い触らされるのは腹に据えかねます。きっちり買っていってやらないと、たぶん妹達の事なので、やるでしょう。面倒くさい。
     そんな事が頭の中を巡っている最中にもシュッ、シュッっと優しい音が室内の空気をゆっくり震わせています。 
     背後から聞こえてくるのは、優しく尻尾を梳る音。
     それがウマ耳をくすぐると、頭の中で並べ立てていたお財布の中身とお土産候補達が、蕩けて消えていってしまいます。
     あたしの背の向こうでは、グラムさんがあたしの尻尾に櫛を入れて、漉いてくれているのです。
    「はふぅ……」
     思わず、声が漏れてしまいます。
     尻尾を梳くのを一人でやると、どうしても自分の手の届く範囲まで尻尾を曲げて櫛を入れる形になるので、真っ直ぐにしようとすると結構難しいのです。
     上手く左右均等に曲げて毛繕いしないと、右曲がりになったり、左曲がりになったり。
     誰かに後ろから梳いてもらえると、まっすぐ延ばした状態がキープできるので非常に助かります。
     特にグラムさんにお任せすると非常に丁寧に梳いてくれるので、とても気持ちいいです。実家では妹達の尻尾のケアはしてあげこそすれ、やらせると碌なことにならないので触らせませんでしたので、誰かに尻尾を委ねるというのは新鮮ですし、してもらうとなぜか心が温かくなります。
     グラムさんに尻尾を預けるのは、信頼の形というか友情の証というか。
     あらためて言葉にしようとするとくすぐったいですが。
     あたしとグラムさんのように、同じ部屋の子に尻尾のケアを頼むのは、わりと多いようです。みんなやってるべさ、とはグラムさんの言葉。
    「スノウ、んじゃオイル付けんよー」
     グラムさんがわざと大きくボトルを振って、チャプチャプと音で伝えてきました。
     充分に櫛を入れて毛並みを揃えたら、テイルオイルを使います。この手の尻尾ケア用品は尾の絡まりを防いで、サラサラとして毛並みをキープしてくれます。
     髪にも似たようなアイテムがありますが、ウマ娘用のテイルオイルはより保湿力が高くなるように調合されているアイテムです。寝る前にテイルオイルを尻尾につけることで水分と油分を補ってくれます。

  • 17◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/25(日) 18:20:36

     特にあたし達のようなレースを走るばんえいウマ娘は、トレーニングやら何やらで乾燥や強い摩擦にさらされるのが常なので、しっかり尻尾ケアしないと使い古した箒さながらのだいぶ見すぼらしい見た目となってしまいます。年頃の乙女達としては、それは我慢できません。
     あたしとグラムさんはテイルオイルを共同で使っています。広いとは言えない寮の部屋から少しでも荷物を減らそうと苦心した結果です。
     二人で選んだラベンダーの香りが、ふわりと部屋に広がって、グラムさんがオイルを出したことを知らせてくれる。
    「うひゃぅ……」
     ぬるりと来ました。
     ブラッシングした時と同じように毛先から真ん中部分、根本の順番。
     テイルオイルを載せたグラムさんの掌が撫でつけて、オイルを毛につけていきます。各部にオイルを載せたら、それを満遍なく、丁寧にゆっくりと引き伸ばしていきます。手のひらは大きく、繰り返されるトレーニングでごついのに、その指の持つ繊細さは見た目とは正反対。
     ヌルリヌルリと尻尾の毛の中を這いまわる指使い。
     櫛で毛を梳く時とはまた違った気持ち良さが、弱い電流のように尻尾の先から伝いあがって背筋と延髄をぴりぴり痺れさせます。
     尻尾全体にグラムさんの二つの手のひらと十本の指が全て同時に這いずり回るようなイメージ。テイルオイルが丁寧に伸ばされて、揉み込みまれて、馴染まされていきます。
     ふひゃぁ……。
     お風呂上りと尻尾ケアのダブルパンチが気持ち良すぎて、寝惚けたような変な声が出るのが止められません。
    「……いい具合に尻尾、仕上がってきたべさ」
    「ふぁいかわらず、うみゃいでふねぇ」
     尻尾を編んだり飾ったりのヘアアレンジなら得意なのですが、尻尾ケアの腕前についてはグラムさんに負けてしまいます。
     いつもお互いにケアし合うのが常なのですが、グラムさん先手ですと、いつもこの有様であたしの番は飛ばされてしまいます。毎回申し訳ないのですが、いつもグラムさんは笑って『ウチが好きでやってる事だし、気にしなくていいべさ』と言ってくれます。
    「とりあえず、明日にでも学生課にバイトの求人、見に行くべさ」
    「ふぁい……そうひまひょう……」
     尻尾ケアが気持ち良すぎて、さっきまで入っていた温泉に浸かり直したかのよう。
     グラムさんの言葉に、あたしは舌ったらずな返事を返すのが精一杯でした。

  • 18◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/25(日) 18:21:15

     連日のケアで、激しいレースを走った後の身体に残る熱感や疲労感も抜けてきました。

     なんでか尻尾から腰にかけて妙に力が入らない感じはありますが、身体も戻って来ている途中の今なら仕事でヘマはしないでしょう。

     約束通り、グラムさんと一緒に学園の学生課に来ました。

     さて、現在、学園に来ているアルバイト募集ですが…

    dice7d2=2 2 2 2 2 1 2 (13)

    1.ある

    2.ない

    1.道路 2.建設 3.農業 4.林業 5.畜産 6.水産 7.その他

  • 19二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 19:28:48

    枯れ尽くしてて草

  • 20◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/25(日) 23:19:27

     あたしとグラムさんは、どうしようもないといった風情で、呆然と学生課の掲示板の前で立ち尽くしていました。

    「すっかすかですね……」

    「……やられたべさ」

     シーズンオフ目前。

     帰省前。

     と、くれば、お財布の中身を心配するのは誰だって同じことでしょう。

     その結果が、目の前にある求人票がほとんど貼られていなくて表面の緑のクロスが見えている、学生課の求人掲示板です。

     一手遅かったようですね。

    「一手かぁ?ホントに一手だけですむかぁ?」

     イレネー記念のレース明けで碌に動けない期間。三月上旬が過ぎた頃までには、めぼしいアルバイトは売れ尽くしていたのでしょう。ほとんど選択肢がありません。

     めぼしい募集が軒並み喰い荒らされている中、辛うじて良さそうな水産関係で一件ありました。

     車で三十分かからず、自分の脚で走っても帯広トレセンから四十分くらいで着く内水面漁業のお仕事。つまりは海ではなく河川での水産関係。近場なのは非常に魅力的です。

     さけ・ます人工ふ化場で、孵化してある程度大きくなり、飼育池に移されて放流間近となった鮭の稚魚のお世話です(6.水産)。

     どうして、こんなアクセスがいい仕事場の募集が手つかずで残っていたのか。

     けしてブラックだからではありません。帯広トレセンとの繋がりもあるしっかりした組織からの募集ですし、アルバイト代もきっちり出ます。そして、学校の勉強の点数も付いてきます。

     なぜ残っていたのか。

     それは、これが座学付きかつレポート提出義務付きの短期インターンシップだからです。

    「うぐぐぐ、いきたくねぇー……普通に働かせてほしいっしょ」

    「あたしもいきたくないです、半分くらい授業だからバイト代が安く……くっ、背に腹は代えられません」

     呻くばんえいウマ娘が二人。

     しかし選択肢の無さが、あたしとグラムさんに求人票に手を伸ばす事を余儀なくさせたのでした。


    今回のお給料(適性の分だけ振るダイスが増える。まだプロではないのでランクAがカンスト)

    dice7d2=2 1 2 2 2 1 2 (12) × \500


    提出したレポートの出来

    カミノクニスノウ:dice1d40=30 (30) (賢さ補正値6なので 6×10のプラス補正)

    シャコータングラム:dice1d50=49 (49) (賢さ補正値5なので 5×10のプラス補正)

  • 21◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/25(日) 23:38:56

    ※本日の進行はここまでとします。

    スノウちゃんとシャコたん、やけくそフルパワーのレポート提出。


    JRAジョッキーDAY 騎乗練習の様子

    見ているこちらも楽しくなってくるような、ジョッキーの皆さんの楽しそうな様子が印象的です。

    あとはズリ金が砂を噛む音がはっきり聞こえて新鮮でした。


  • 22二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 07:05:05

    水産はなぁ、一日中同じ作業で飽きるのよなぁ

  • 23二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 07:58:39

    これでもかとイチャイチャしとる

  • 24二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 16:34:57

    レポートの内容もお給料もめっちゃ上振れで草

  • 25◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/26(月) 22:43:19

    ※シャコたん水産Fですが、たぶん今回のでガッチリ勉強しましたし成長チェック入っていることでしょう。

    セイコーマートで販売されている山わさび塩ラーメン改を、劇中に出せないものか思案中のスレ主です。
    食べる催涙ガスとか言われてますが、ラーメン自体はちょっと癖はあるものの美味しいです。啜ったりしなければ。

  • 26二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 09:32:06

    保守

  • 27二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 20:15:06

    それはまたすごそうなラーメンだな
    殿下が知ってしまったら…

  • 28◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/27(火) 23:13:51

    スノウちゃんのお財布の中身 \30,902 → \36,902

    やる気は絶好調をキープしている
    ----
    「お疲れ様。いやいや、君ら二人があのアルバイトを引き受けてくれて助かったよ」
     初老の担当教官が、見た目同様の柔らかな口調でレポートを受け取ってくれました。
     まだ本格的なトレーニングが出来ないので、その時間をつぎ込んだレポートはかなりの自信作です。
    「トレセンにある学科とは関連の薄い水産関係だし、時期も時期だったからね。なかなか引き受けてくれる生徒がいなくて困ってたんだ。
     お互いにインターンやりましたって実績はあげときたいし、それにこういうのは一回でも伝手が切れちゃったら再開がなかなか難しいんだ。
     これで互いにコネを確保しておける。ありがとう」
     一礼して、あたしとグラムさんは教官室を後にしました。

    「教官かなりぶっちゃけてたねぇ。いいんかな、あれ」
    「良くも悪くも半端に取り繕おうとしないのが、この学校のいいとこなんじゃないですかねぇ。
     世の中の仕組みも勉強するのが学校だーってトレーナーさんも言ってましたよ」
     廊下をぶらぶら歩きながら、取り留めのない会話に花を咲かせます。
     実際、人と人との繋がりは力です。
     とは言え、あたし達がそれを使うのはだいぶ先。それこそレースを引退した後の話にはなるでしょうけれど、なんの心構えも無しでいきなり使うのが当たり前の環境に放り出されるよりかは、少しはマシでしょう。
    「お父ちゃんらの仕事を見ちゃいるけど、大切だって実感は沸かないしょ」
    「それは確かに」
     パキパキと身体を伸ばしながら、二人、並んで歩きます。
    「あ!そうだ、グラムさん、部屋に帰ったらちょっと服を見立ててもらっていいですか」
    「ん?いいけど、どしたん?」
     怪訝そうなグラムさん。
    「トレーナーさんがですね、勝ったお祝いでホテルにディナーを食べに連れてってくれるそうなんですよ!
     ただ、そこが結構いい所みたいで。制服じゃマズいですし、私服もそんなに持ってないですし上手くあわせられるか心配なので、ちょっと一緒に見てもらいたいなって」

  • 29◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/27(火) 23:16:41

     合わせ具合では、バッグとか小物も貸してもらえると嬉しいです。
     服そのものは、あたしとグラムさんではちょっとわずかに少しだけサイズが違いますので、そちらは借りられません。
    「……どこで食べるって?」
     妙に冷たい風が、どこかからかヒュルリと吹きました。
     廊下にいるのに、まるでそこだけ窓の外で吹いている、まだまだ冷たい三月の風が首筋を撫でたかのよう。
     誰かが窓を開けっぱなしにしたのでしょうか?
    「イオンの近くに観光客向けの大きなホテルがあるじゃないですか、あそこです。美味しかったらお土産買ってきますね」
     祝勝会の意味も勿論あります。
     それと同時に、GⅠに勝った以上、今後はメディアの対応などであたしも引っ張り出される可能性もあるとか。どこに出ても恥ずかしいことをやらかさない程度にはテーブルマナーを覚えておく必要があるので、今回のお店のチョイスにしたそうです。
    「……スノウと、トレーナーが?二人きり?……ホテルで、ディナー?」
    「あれ?グラムさん?」
     並んで歩いていたのに、気が付いたらあたしだけが廊下を歩いていました。
    「は?」
     グラムさんの足は、第2障害手前まで来た時のように、ピタリと止まっています。
    「はぁーー?!」
     そして、グラムさんの素っ頓狂な声が、あたしの頭の後ろから飛んできました。

  • 30◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/27(火) 23:22:35

    「それじゃ、いってきます!」
    「……いってらー」
    「どうぞ楽しんでいらしてくださいねぇ」
    「いってらっしゃーい」
     四者四様に挨拶を交わす。
     出かけるもの一人、見送るもの三人。
     カミノクニスノウのいで立ちは、着慣れたトレセン学園の制服やトレーニングウェアではなかった。
     白いシンプルなブラウスに、ブラウンのチェック柄のスカート。腿丈のスカートが若さを演出し、かと言って生足はあまりに子供っぽくなり過ぎるので、スカートの茶に負けない濃い目の黒いストッキングを履いている。その上に羽織るのはピンク色のカーディガン。安物ではあるが金のネックレスに、小さなハンドバック。
     十勝平野を吹き抜ける風はまだまだ冷たさが残るものの、ようやく見えてきた春を心待ちにして先取りしたかのような装いで、いかにも十代の少女らしい可愛らしさに溢れていた。
     レースに、トレーニングに、学業である農業実習に、と忙しさに明け暮れる帯広トレセン生徒は私服の着用機会が少ない分、かなり新鮮である。
     普段であればカミノクニスノウのよそ行きのコーディネートは、シャコータングラムの目を大いに楽しませてくれたであろう。
     だが、その新鮮さは、今の彼女にとってはただただ苦々しいものでしかなかった。
     カミノクニスノウの姿が視界から消えた途端、シャコータングラムの表情が露骨に歪む。眉間には深い溝が刻まれ、鼻っ面には皺が寄る。その有様は、まるで敵に飛び掛かる寸前のライオンを連想させた。
     猛犬――2メートルを超えた筋骨隆々な彼女の体格を考えれば猛獣と言うべきか――注意と、注意書きのポスターを背中に貼られかねない。
     周りが同じばんえいウマ娘であり、シャコータングラムがそこまで不機嫌になっている理由を知っているからこそ、クインルゴサローズもモチモッツァレラも普段通りにしているのだ。これが彼女一人で街中にいたのであれば、剣呑さに周りから誰もいなくなっていた事だろう。
    「もし、そういう事になったら……二人ともウチを止めないでよ。
     スノウがどう思おうが、ウチがあいつをブチ転がしてコースに埋めてやる」
     大の大人でも、回れ右して逃げ出したくなりそうな、低く昏い声音。
     抑揚なく呟く彼女のウマ耳は、ギュッと引き絞られて後方に向けて伏せられている。
    「おお、怖い」
     大袈裟な身振りで肩をすくめるクインルゴサローズ。

  • 31◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/27(火) 23:25:23

    「カミノクニスノウさんのトレーナーは、しっかりされている方ですわぁ。トレーナーと生徒との線引きは心得ていますでしょうに」
     言い換えれば、学生視点からでは色恋からは程遠い堅物、とも言える。
    「とは言え、世の中、どこもかしこも間違いだらけですわ~」
     視野狭窄状態のままに吠えるシャコータングラムをからかうような、どこか面白がっているような色を湛えたクインルゴサローズの目付き。
     彼女の名と同じ、そのローズレッドの瞳だけが、シャコータングラムにツイと向けられる。
    「間違い。あるかどうか、賭けてみますぅ?」
    「んっな事ある訳ねぇべさ!」
    「私も、スノウちゃんはそういうのないかなーって」
     クインルゴサローズは大袈裟な溜息を一つ。
    「賭けになりませんわねぇ。ふぅ……カミノクニスノウさんを信じなさいなぁ」
    「スノウは信じてるしょ!でも、男と銀行の言い分は信じちゃなんねぇってお母ちゃんが言ってたべ!」
     ライオンの咆哮の如き表情を、柳に風と受け流すクインルゴサローズ。
    「社会人と生徒の差を見せつけられたグラムさんの横顔は、本当に美しいなって」
    「おらぁ!本人目の前にして変なの垂れ流してんじゃねー!あそこのマンガの中身から戻ってこい、モッチ!」
     寮の談話室の一角。
     寮生の間では"図書室"と通称されるそこには、卒業して寮を去っていった歴々の先輩が残していった漫画、誰かが買って読み飽きて置いていった雑誌、休み中に都会まで遠征した子が手に入れてきた薄い本。いかがわしいシーンが全くない本から、バレないように厳重にガードが施されたいかがわしいシーンがある本まで。それらがそれこそ山積みになっており、寮にひしめくうら若き乙女達の偏った知識の源泉となっていた。
     興奮のあまり、徐々に大声になり始めているシャコータングラムの声を聞きつけたのか、誰かがわざわざご注進あそばしたのか。いずれにせよ、騒ぎの元凶を確かめに寮長である先輩がこちらにやってくる。
     その姿が目に入ったクインルゴサローズは、やにわに沸き起こり始めた頭痛を宥めるように、コメカミを指で揉み解すのだった。

  • 32◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/27(火) 23:28:08

     時刻は、消灯時間前。
     果たして、カミノクニスノウは普段通り、いや普段以上に良い笑顔での帰寮と相成った。
     右手にホテルメイドのスイーツパン、左手にチェーン店でテイクアウトした牛丼を引っ提げて。
     彼女を寮の門前まで送り届けたスバルの、水平対向エンジン独特の響きがどんどんと小さくなっていく。
    「いやー、なまら美味しかったです!グリルした人参が絶品で!お肉も美味しかったです!ただ量が物足りなかったので、ちょっと買ってきました!
     うわぁ!グラムさんいきなり抱きついたら危な……なんか泣いてます?無事で良かった?
     え、え?そんなに一緒に食べたかったんですか?それじゃ、一緒に夜食にしましょうか。
     それに今日行ったとこ、アフタヌーンティーやってるみたいですし、今度一緒に行ってみましょうよ!」

  • 33◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/27(火) 23:34:40

    ※テイルオイルなどのウマ娘専用のケア用品があると考えるなら「ゴールドシチーがCMに出演してる化粧品」だとかネームドをフレーバーとして盛り込んでおくべきだった、と後悔したスレ主です。

  • 34二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 09:20:33

    朝保守

  • 35二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 17:27:55

    ばんえいウマ娘達は普段は気性穏やかな乙女達だし、やはり恋愛コミックとか流行ったりしてるんだろうか
    お姫様抱っこされるのが夢とかありそう

  • 36◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/28(水) 22:54:15

    ※クラシック級以降をどうしようか、かなり悩んでいるスレ主です。

    全体的には、アプリ同様に3年間のスケジュールに圧縮するかどうか。
    圧縮しようとした場合は無茶苦茶なレースの詰め込み方になって、実際ですとシニア級相当(明け5歳)では1割も勝てない、ばんえい記念を3年目のシニア級の最大目標に据えざるを得なくなってきます。あるいは、古馬路線を別リーグに切り分けるか。
    ばん馬はサラとは脂が乗り始める時期が違っていて、古馬になってからが本番な為、アプリと同じスパンを持ち込むとかなりの歪みが生じます。
    圧縮しない場合はシニア級が5~6年間ほど続く事になってしまいますが、歪みは出ないのでレースはやりやすくはなります。ただ、そうすると学園生活のネタが切れます。

    システム的には、疾病判定を作るかどうか(レース中の判定で2d6=2を出した際にファンブル扱いにして)。
    ドラマチックにはなるでしょうが、スレ主的にお労しい展開はあまり好きではないので、そういう意味で悩みどころです。

  • 37二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 10:00:46
  • 38二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 21:08:15

  • 39◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/29(木) 22:37:23

    「男と銀行の言い分は信じちゃなんねぇってお母ちゃんが言ってたべ!」

    ※AIを使って描いた、吠えるシャコたんのイメージイラストで保守します。台風による気圧変化で体調悪化中で進みません。

    シーズンオフになりトレセン学園は春休みに入るので、それぞれ帰省します。
    スノウちゃんの妹達四人へのお土産を募集します。
    安価は無しで、数が揃えばダイスで決めたいと思います。

    スイーツにするなら帯広に本店のある六花亭か柳月あたりかなと考えています。

  • 40二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 08:28:01

    お土産、トレセンの購買でしか買えないグッズとかあったらおもしろいかも?

  • 41二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 15:56:49

    滑らないお守りに磨いた刻み蹄鉄(しかも自分の使い古しを)を持って帰り、おばあちゃんのが一杯あると妹達にキレられる

  • 42二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 22:05:06

    9/14-15にウマ娘とのコラボイベントやるね

    ばんえいウマ娘と一緒にレースは出来ないから中央との交流イベントって形になるんだろうけど、この面子でトークショーは大変そうだ

    ウマ娘 プリティーダービー×ばんえい十勝コラボイベント ばんえい競馬ばんえい競馬場にて2024年9月14日から9月15日までウマ娘 プリティーダービー×ばんえい十勝コラボイベントを実施!k-ssl.jp
  • 43二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 08:00:49

  • 44二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 16:53:59

    このレスは削除されています

  • 45◆Lj.vT9ErJJ7R24/08/31(土) 17:00:04

    ※AIを使って描いた、モチモッツァレラの勝負服試案のイメージイラストで保守します。

  • 46二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 01:32:54

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 13:19:41

    保守

  • 48◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/01(日) 23:55:47

    「これ、本当に持って帰っちゃってもいいんですか?!」
    「別に良いんじゃないかな」
     あたしの驚いた声に反して、トレーナーさんは落ち着いています。
     指差す先にかかっているのは、三枚の優勝レイ。それぞれナナカマド賞、黒ユリ賞、イレネー記念のものです。
     あたしとトレーナーさんが二人で掴んだ、大切な勝利の証の筈。
    「トロフィーは別にあるし、両方置いておこうとするには、この部屋はだいぶ手狭だよ。
     まさかカーテン代わりにするわけにいかないだろう?」
     優勝レイは、ばんえいウマ娘であるあたしが首に掛けたら足元まで届くくらいには、長く幅も広いです。
     ナナカマド賞のレイが一枚だけ部屋にあった時は、トレーナー室がとても強豪チームっぽくなったと単純に喜んでいました。初めてもらった優勝レイをニヤニヤしながら見ていた頃が、半年も経っていないと言うのに、なんだがすごく昔のように思えます。
    「スノウ君の人生でここまで密度の高い時間は無かったからじゃないかな。
     実際、僕も担当を持つのは初めてだけれど、サブトレをやっていた時とは仕事の量と濃さが違うね」
     でも、その甲斐は十分あるよ、と目を細めてレイを見つめるトレーナーさん。
     まさか、たった一枚ではしゃいでいた時は、似たようなサイズのものが三枚も集まるとは思ってもみませんでした。いずれはGⅠ、と目指しはしましたがナナカマド賞に勝ったあたりでも、それが現実的に手が届く範囲なのかどうかは別問題でした。でも、あたしはそれを現実にした。その証拠のレイ達。
     複数のウマ娘が所属していて専用の部室を持っているようなチームならまだしも、ばんえいウマ娘一人トレーナー一人のチームに与えられるトレーナー室は正直そんなに広くないです。トレーニング器具や資料なども詰め込まれていますし、壁にぶら下げていますと圧迫感ありますし、レースの優勝者があんなに誇らしげに首にかけていてもいざ保管しておこうとすると結構邪魔だというのは新鮮な発見でした。もっとも誰かに聞かれたらめちゃめちゃ怒られそうな、贅沢な悩みでしょうけれど。
     そんなトレーナー室の一角には、真新しい飾り棚が据え付けられています。

  • 49◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/02(月) 00:02:19

     レイがそうならトロフィーも保管を全く考えていませんでいた。
     さすがにGⅠ級のトロフィーをトレーナー室の机の上に文鎮よろしくずっと置きっぱなしにするのもまずいので、あわてて用意しました。見た目はそれっぽいですが、全国にチェーン展開している北海道発祥の家具屋で買ってきたお値段次第の物です。予算少ないですからね。
     棚のガラスの向こうには、ぴかぴかのトロフィーが三つ。当然ながらレイと同じ数だけ鎮座して、ガラス越しに受けた天井の照明を跳ね返して鈍く煌めています。
     その輝きが、とても愛おしい。
     と、同時に、その輝きは何度見ても顔のニヤニヤが止まらなくなります。
    「うふへへへへ、なんか二つ名とか考えちゃいますよね~」
    「そうやってすぐ調子に乗らない」
    「はい」
     結局、三枚の優勝レイは折り畳んで実家に郵送することにしました。実家にはあたしが使っていた部屋がまだ残っているでしょうし、そこならぶら下げておけます。あたしがいない分、空いた箪笥にも仕舞っておきやすいすし。
     あたし本人より先に着くので、あとで実家には一報いれておきましょう。
    「イレネー記念はだいぶハードなレースだったから、スノウ君はしっかり休んだ方が良い。
     僕も年度締めの仕事やら、新年度に向けての準備とかがあるから、あまりトレーニングの指導も出来ないな。
     まぁ、そんなだから、久しぶりに親御さんのところでゆっくりしておいで。
     ただ、この一年間、レースに勉強に寮生活にと、ずっと皆と一緒になって走り続けた反動が出る子も、たまにはいるんだ。
     あとで自主トレのメニューは渡すから、気は抜き過ぎないように」
    「その辺りは大丈夫だと思いますよ。あんまり、ゆっくりは出来ない、いや、しないかなーって」
     待ち切れないとばかりに無意味に両手の指を曲げ伸ばししながら答えるあたしに、トレーナーさんは怪訝な表情を見せたのでした。
     カレンダーの日付は三月も中旬に差し掛かっています。
     雪は無くなっていて育苗用のビニールハウスは起こし直し終わっている頃でしょう。おそらく、圃場からも雪はなくなっています。もともと上ノ国町は雪が少ないので、融雪の手間は豪雪地帯ほどかかりません。帰ったら育苗の手伝いからですかね。他に畑もありますし、そちらはまずは土づくりからでしょう。
     自然、むふんと鼻息が一つ。
     今から腕が鳴るというものです。

  • 50◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/02(月) 00:03:26

     ばんえい記念。
     その年の最も強いばんえいウマ娘を決めると共にシーズンの最後を飾る、まさに大トリをつとめるレースです。
     当然、あたしも皆と観戦です。
     出走するのは、寮内でも学園内でも見たことのある先輩達。ジュニア級より一回り以上も厚い体躯を勝負服で包み、見たことのない恐ろしく真剣な殺気すら漂う表情でゲートに収まっています。
     応援。
     歓声。
     喝采。
     怒号。
     そして、今までにあたしが経験したことのないほど濃密で、帯広競バ場全体に漂う熱狂。
     たったの200メートル。されど200メートル。
     それを曳くのに、1着でさえ、あたしが走ったイレネー記念の二倍から三倍のタイムがかかります。出走メンバー全員がゴールしきるまで、十分以上もかかる場合だってあります。
     ばんえい重量5000kgとは、それほどの重さなのです。
     世界一長い1ハロン戦の異名は、伊達ではないのです。
     最後尾の選手が入着した時には、惜しみない、割れんばかりの拍手が贈られました。
     帯広競バ場を揺らすような拍手が次第に落ち着いていき、潮が引くように消え去った時。あたしの頭に浮かんでいたことはただ一つ。
     走りたい。
     曳きたい。
     隣に並んでいるグラムさんや友人達が、うずうずもじもじと、まるでトイレでも我慢するように身体と脚を小刻みに蠢かしています。
     皆揃って、うっすらと笑みを浮かべて、頬を紅潮させています。それは友人達だけではありませんでした。その場でレースを見ていた全ての帯広トレセン生徒が、そうでした。何を我慢しているかはよく分かります。同じようにあたしも我慢しているのですから。
     帯広トレセン上位10名によるトップ争奪戦。コースを走る選手の気合の叫び。荒く激しい呼吸の音。それを間近で見た今、全身の血が滾るような興奮が体を包んでいます。
     それぞれのトレーナーが傍にいなかったら、ほんのちょっとした切っ掛けを引き金に、興奮によって大勢のばんえいウマ娘が一斉に走り出していたことでしょう。
     おそらく、これは確信に近いのですが、観戦していた全てのばんえいウマ娘それぞれの胸に共通した想いが生まれていたのだと思います。
     走りたい。
     いつか、あのレースで、走りたい。

  • 51◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/02(月) 00:09:17

    ※本日の進行はここまでとします。

    スノウちゃんの物語はジュニア級にて一旦締めたいと思います。
    次回、最終回となります。

  • 52二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 10:11:46

    保守

  • 53二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 20:21:25

    保守

  • 54二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 01:18:40

    終わりかぁ

  • 55二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 12:15:45

    だだっ広いところだとどうしたってトラクターには負けるから、農機を入れづらいとこ耕すので輝くのかね
    林業も土地の権利と人間関係がややこしくて、目的地まで機械を入れる道が作れないとかって話も聞くな

  • 56二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 14:36:04

    マッチョ…好き

  • 57◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 21:15:36

     帯広駅から、汽車で南千歳駅まで。
     甲高い汽笛とボゥロロロと重々しく唸るディーゼルエンジン。ゆっくりとプラットホームを離れていく特急列車の車内には、あたしと同じように里帰りするトレセン生徒の姿が、ちらほらと。
     トレセン生は帰省の時期が被るので列車は混みあいがちかと思いきや、特急と言っても普段からそんなに混んでいないので席はわりと余裕があります。
     席は余裕でも、乗客にばんえいウマ娘が多いので、見た目の圧迫感は結構なものがあります。何も知らずに乗ってきて、車内の様子に一瞬たじろぐ人間のお客さんの姿も、ちらほらと。
     列車の加速も一段落して、荷物をどうにか押し込もうとしているざわめきも減って、じょじょに落ち着いてきた車内。
     あたしの隣ではグラムさんが、ハセコマで買っておいた北海道山わさびプレッツェルを開けています。
     隣にいてもなお飛んでくる、ツーンと鼻にぬける強烈な山わさびの風味。
     山わさびは、北海道で長く愛される薬味です。ホースラディッシュ、西洋わさびとも呼ばれる植物で、その名の通りに鼻にツンとくる爽快な辛みが特徴です。お刺身やお寿司で使われる本わさびよりも辛みが強くて、強烈な一撃は癖になります。よくローストビーフに添えられたりしますが、みじん切りにして醤油に漬けた山わさびを白米に乗せて食べるのが最高です。実家のお米と合わせれば、丼ご飯が何杯でもいけます。
     プレッツェルを一本貰って、グラムさんと並んでポリポリ食べると、これが辛いのなんの。
     たっぷり振りかけられた山わさびパウダーが、一口ごとに鼻の後ろから殴りつけてくるかのようです。とてもじゃないですが一気に消費できないので、ジュースをちびちびと飲みながら長い時間をかけて食べるには最適です。
     持ち込んだお菓子を摘まみながら、大して中身のない、でもとても楽しい会話に花を咲かせます。
    「今だから言っちゃうか」
     グラムさんが摘まんだ山わさびプレッツェルをふりふり、照れくさそうに笑います。
     その暗緑色の瞳には、今と同時に、昔を見ている気配があります。

  • 58◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 21:17:05

    「トレセンに入学した時はさー、正直、どんな子が同室になるんか不安だったんよ。けど、スノウと一緒になれてよかったさ。
     スノウ……ウチと一緒に走ってくれて、ありがとう」
    「あたしこそ、グラムさんと一緒でとても楽しかったですよ。
     もちろん、今も、ですけど」
    「なんもなんも。
     ただ、まさかウチも寮の同室がベソかきそうになりながら、人の布団に潜り込んでくる奴とは思わんかったっしょ」
     ボッと火がついたように両頬を赤らめるあたしと、その様子がおかしかったのか、悪戯がとびきり上手くいったいたずらっ子のようなニンマリとした笑顔を浮かべてあたしを見つめるグラムさん。
     一緒の年に入学して、一緒の部屋になって、グラムさんが言ったようにたまに一緒のお布団で寝て。一緒にご飯を食べに行ったりアルバイトしたり勉強したり。
     そして、なによりも、一緒に走っている。競い合っている。
     あたしの、いえ、お互いの一番の友達で、一番のライバル。
     たぶん、山わさびの風味が効き過ぎたのでしょう。笑い合う二人のばんえいウマ娘の目尻にはうっすらと涙が浮かんでいました。
     列車のシートに収まった二メートル近いばんえいウマ娘の体躯。満杯のコップから水が溢れ出るようにして、シートの隙間からはみ出た青毛と芦毛の尻尾が、ぱさりぱさりと揺れています。
     ちらほらと人家の見える牧場や原生林の真っただ中を貫いていく線路。その上を疾走する列車が体を震わせるたび、つられて揺れる尻尾も近づき、触れ合い、離れては、また近づき絡まる。
     あたしとグラムさんとの楽しい時間は、汽車が目的地に着くまで途切れませんでした。
     グラムさんもあたしも、ここから一人旅です。
     南千歳駅でグラムさんと別れました。彼女は函館本線で小樽まで行って、そこからバス。
     あたしは南千歳駅から、グラムさんとは反対方向に行く函館本線に乗って、新函館北斗駅まで。
     バスに乗り換えて、新函館北斗駅から江差ターミナルまで。

  • 59◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 21:18:37

     トータルで七時間半。
     途中、南千歳駅で乗り継ぎ待ちはありましたし、特急を使いましたから鈍行の薄っぺらく硬いシートに座り続けるのを思えばよほど楽とは言え、こうも長い時間乗り続けていると、やっぱりお尻が固まってしまいます。トレーニングでギュッと岩のように引き締まったあたしの大臀筋ですが、今は別の意味で石になったような感じです。尻尾の付け根が強張っています。
     狭いシートにお尻と足を押し込めるように座って、山道で揺すぶられ続けた身体。そこには、まるでトレーニングした後のようなじっとりと粘るような疲労感がへばりついています。
     とにかく、お尻の肉が痛い。
     何もしていない筈なのに、妙に手足が重く、疲れました。トレーニングやレースで痛みや疲労には慣れている筈なのに、動けないだけだと言うのに、どうにも耐え難いです。
     強張った体と、みっちりと中身の詰まった大きなスーツケースを、バスから引っ張り出します。
     トレーニング用具とかは出来るだけ減らしましたが、実家へのお土産がどうしても増えてしまいました。妹達へのお土産は、帯広競バ場限定発売の、ぱかプチメムロボブサップです。現役最強と名高い先輩で、引退前から既に様々なグッズになっていて、帯広競バ場でしか手に入らないぱかプチです。四体それぞれ別ポーズで、ぬいぐるみなのに盛り上がった筋肉がきっちり再現されています。
     バスの中で、もう無理と泣き言を言っていた筋肉達が伸びて、手指の隅々にまで血が巡り始めます。簡単にストレッチして、狭いシートで丸め気味だったせいで固まった三角筋と広背筋を伸ばしてやります。
     夏に同じように長くバスに揺られて帰って来た時に比べると、ちょっとは盛り上がって育った筋肉の束。
     そこに血流を送り込んでやるために、大きな身振りで深呼吸を一つ。
     帰ってきた。
     一呼吸して、鼻からするりと入ってきた空気が、そう教えてくれています。

  • 60◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 21:20:50

     北西から吹き付ける強い季節風の"たば風"に真冬の荒々しい勢いはなく、風は強いものの真冬に比べれば少しは優しげな雰囲気で潮の香りを運んできては、豊かな森から下りてくる湿った土と木の香りと混ざり合わさって、ここにしかない風の香りになる。
     心の奥をかき毟るようなのに、とても落ち着く久しぶりの香り。
     真冬に吹く、全ての熱を奪っていく風は既にいませんが、それでも春風というにはまだ遠い。それにも関わらず、そんなに風が冷たく感じないのは、切りつけるような冷たさをしたもっと厳しい風の吹く帯広で一冬を過ごして、寒さに耐性が付いたからでしょう。
     汽車に乗ったのは午前中だったのに、時刻は既に夕方。
     遠く水平線まで連なって見える雲と波。
     広い広い日本海を、沈みかけの大きな夕陽が鮮やかなオレンジ色に照らしだしています。日本海から山へと急激に立ち上がる地形の、海から山に繋がっていく間に広がるほんの僅かな平地。溶け残りの雪の白と枯れた草木の茶の混じったそこに、小石をばらまいたようにまばらに立つ建物。太陽から明るさは失せかけて、そんな家々の屋根や海岸線は既に黒いシルエットになりかけている。頭上には、夕方から夜にかけてのオレンジから黒に繋がる柔らかなグラデーション。
     帰ってきた。
     幼い頃から、それこそとねっこの時から数えきれないほど見た、愛おしくなるほど雄大で、鮮やかな夕暮れ。
     肘で大きく円を描くように、腕の付け根から回して腕と胸のストレッチが、我知らず、途中で止まっていました。
     そんな感傷を、軽トラの気の抜けたクラクションが遮ったのでした。
    「スノウ!おけぇりよー!とぉくっから、よぉけえってきたべさ!」
    「あっ!おばあちゃーーん!」

  • 61◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 21:22:56

     路線バスの永らくクッションを変えていないようなシートから、ばんえいウマ娘が使い込んで潰れた軽トラのシートに。
     同じような薄っぺらいシートの筈なのに、どうしてこうも違って感じるのでしょう。
     波打つようなアスファルトで跳ね上がるタイヤも、ばんえいウマ娘二人分の重量を支えていて効きの悪い独立懸架サスペンションも気になりません。
     スーツケースは軽トラの荷台に放り込んで、狭い運転台に体をねじ込んで、実家まで束の間のおばあちゃんとのドライブです。
    「スノウよぉ、トレセンはどうじゃね?」
    「んーー?」
     答えに困って、気のない生返事で時間をつなぎます。困ったのは答える事がないからではありません。その逆。色々あり過ぎて、何から話していいか悩んだからです。
     たった一年。
     なのに、振り積もった思い出は山ほどです。入学書類を無くして、あたふたしていたのが、はるか昔のよう。
    「んーーと、そだねぇ……とってもいいお友達がたくさん出来たよ」
     日本海に沈んでいく夕陽が投げかけている熱の無い光。
     全てをオレンジ色に染めている陽が、あたしの横顔も同じ色に染めています。
     コツンとサイドウィンドウに頭をもたせ掛ける。
     色々な記憶を引っ張り出して並べていけば、脳裏に受かぶのは、いくつもの顔。
     シャコータングラム、クインルゴサローズ、モチモッツァレラ。アンデスレッド、インカアウェイクン、シーニーグローム、マネーマーケット、ビッグアイアン。クラスのみんな。
     ぽつりぽつりと口にしていくと、どう答えようか悩んでいたのに、どう言えばいいのか分からないと思えていた言葉達は後か後から、まるで最初から糸で繋がっていたように唇を押し開いては出ていきます。
     最初の一言が出てきた時から、ずっと聞き入っていて口を開かないおばあちゃん。
    「夏に帰って来た時さ、一緒に田んぼの草刈りしたでしょう?
     おばあちゃんさ、あたしに『お前は競走バか?』って聞いたじゃない」
    「おや、覚えてたかね」
     わざとらしくすっとぼけたような、どこか愉快そうな笑みを含んだおばあちゃん。
     あの時に聞こえたおばあちゃんの言葉は気のせいかとも思いましたけど、夏の空気越しに触れたあの感触は忘れられません。

  • 62◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 21:26:23

     夏なのに背筋だけ真冬になったようなゾッとする感覚。腹の底にいきなり鉛でも詰め込まれたかのような、胃の底がズシリと重くなる感覚。
     あの気配が、どんな気配なのか今では分かります。一緒にコースを走って曳いて全力をぶつけ合って死にもの狂いで1着を奪い合った友達が、先輩達が、あたしに教えてくれていました。
    「覚えてるよお……あたしは、トレセンで色んな人に、色んな事を教えて貰った。
     まだまだ分からない事だらけだけど、それでも少しは分かったの。トレセンと、トレーナーさんと、一緒に走るたくさんのばんえいウマ娘が教えてくれた。
     走ることの楽しさ、負けることの悔しさ、勝つことの嬉しさ。
     あたしは、もっとコースに立っていたい。もっとレースをしていたい。もっと走りたい。もっと橇を曳きたい。そして、もっと勝ちたい。
     だから、あたしは競走バだよ」
     上ノ国の女傑。
     かつて、そう称えられた老いた競走バがカッカッカッと、とても嬉しそうに大きく笑いました。
    「上等さー。それだけ分かってりゃあ、上等だべさぁ」
     うんうん、と何度も嬉しそうに頷きます。
    「スノウ、お前、なまらい~い顔付きんなって帰ってきたべや」
     ハンドルを握りながら、おばあちゃんは一時、現役時代に戻ったかのようです。
    「カミノクニスノウ、お前はたしかに競走バだよ。そいつは、お前のおばあちゃんで"無敵の華"と言われた、このカミノクニフラワーが保証してやる」
     気が付けば軽トラは海沿いの国道を離れ、山に向かっています。
     山裾は夜が降りてくるのが早い。
     軽トラの小さなヘッドライトが夜闇を払うようになり、久しぶりの家路を照らし出しています。
     それが導く先で待っているのは、懐かしい家と、お父さんお母さん妹達。
     軽トラは再開に向けて急ぎ足で走っていきます。
     その助手席で、あたしは呟きます。
    「ねぇ、おばあちゃん」
     同じばんえいウマ娘。
     鋭い聴覚をもつウマ耳がある。あたしの呟きが聞こえている筈のおばあちゃんは、嬉しそうな微笑みを浮かべるだけで、何も応えません。
    「あたしは競走バだよ。頑張って、いろんな人に支えられて、あたしは競走バになれたよ」

  • 63二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 21:28:24

    このレスは削除されています

  • 64◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 21:31:26

     『ばんえいウマ娘』。彼女たちは、曳くために生まれてきた。
     ときに数奇で、ときに輝かしい歴史を持つ別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで輓曳する――。
     それが、彼女たちの運命。

     この世界に生きるばんえいウマ娘の未来のレース結果は、まだ誰にもわからない。
     彼女たちは北の大地で、愚直に、ひたむきに駆け、曳き続ける。
     瞳の先にあるゴールだけを目指して――。


    『オリウマ娘が北の大地を駆ける -ジュニア級編-』
     完

  • 65◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 21:35:56

    約四ヶ月にわたって繰り広げられましたカミノクニスノウのお話ですが、ここで一旦締めたいと思います。
    初めてのスレ立て、初めてのオリウマ、初めての長編かつ連載SS、そしてスレ主が把握している限りあにまん唯一のばんえいウマ娘と、初めて尽くしの挑戦でしたが、どうにか一つの区切りまでこぎ着けることが出来ました。
    これも様々なアイデアや感想をスレに書いてくれた方々、スレを保守してくれた方々のお陰かと思います。
    特にカミノクニスノウの名付け親となって頂いた初代スレの27には、厚くお礼申し上げます。彼女が名を持ったお陰で、このお話はスタートすることが出来ました。ありがとうございました。

    スレ主の当初の目論見としてはダイスでレースをどんどん行っていくパターンとしたかったのですが、平地競争とあまりに差異があり且つマイナーなばんえい競馬が元ネタである為に、前提知識が共有されておらず説明を省けない箇所が多すぎる事に気が付き、結果的に解説という態のSSがどんどん増えていってしまいました。
    既存のネームドキャラは使えず、キャラも世界観もほぼオリジナル設定となったのも、これまたSSパートが増える一因となりました。
    最終的にはレースでダイスを振るよりSSのような文章の方が多くなってしまいましたが、文化・風習・観光名所なども盛り込むようにしたりと、スレ主としては色々と挑戦し甲斐があり非常に楽しいひと時でありました。スレを覗いてくださった方々も同様に楽しんで頂けていれば、幸いです。

    生き生きと活動している物語にピリオドを打つのは非常に辛いのですが、現状ダラダラし続けている気配もあって、劇中のシーズンの区切りをもって一旦完結といたします。
    そのままクラシック級編へと続けられれば良いのですが、アイデアと語彙の充填に時間がかかる為、期待せずにお待ち頂ければ幸いです。
    とりあえずは全体的に加筆修正して、渋に上げようかと思っています。

    劇中で出たスノウの祖母の名前ですが、新しいオリウマwikiにて無敵の華と紹介されていましたので、それをもってカミノクニフラワーとしました。
    最後の最後でスノウの祖母に素敵な名を贈る事が出来まして、編者の方にはお礼申し上げます。

  • 66◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/03(火) 23:57:24

    スレは適当に落ちるか完走するまで、ネタ作りを兼ねてばんえいウマ娘に対する妄想などを吐き出していこうかなと。
    色んな好きや妄想が見れると嬉しいです。

  • 67二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 10:04:25

    農作物を狙う窃盗犯対策で、畑の夜警のアルバイトがある帯広トレセン
    窃盗犯は発見されると、ばんえいウマ娘のパワーで投げられたオニグルミが飛んでくる

  • 68二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 20:19:39

    寮内で大量のアイヌネギの醤油漬けが作られたとき下ごしらえの皮剥きと茹でで発生した匂いで騒ぎが起きた

  • 69二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:18:44

    >>68

    ロードワークついでに秘伝の群生地から採って来たのかもしれないが、中でやるのは迷惑過ぎるw

  • 70二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:32:06

    完走かぁ…!!
    マジでジュニア1年とは思えない重厚さだった、なるほど最長の1ハロン。

    なんだろうか、原作的に東京というか白河の関より南(東北は野良戦というか馬力大会があるという話がこのスレにも出てきた)への遠征がすっごい稀なもんだから誰かが「東京に出る」ってだけで寮の話題がそれで持ち切りになりそう

    軽種とのクロス(?)でいうなら、中央の学園祭か何かで「生徒 vs 保護者会・地域代表連合」の綱引きを(一般的なヒトの学校の運動会とは)逆の文脈でやって、学園生徒がきゃいきゃいした後に"ゲスト"として遠征してきた帯広軍団が即座に片づける様子は見てみたい
    ……でもその時期お互い大レースで混雑しまくってるんだよな

  • 71◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/04(水) 22:42:26

    カミノクニスノウのヒミツ

    幼名はユキ

    祖母の幼名はハナ


    >>70

    ジュニア級の一年間だけで5スレ使ったのと、設定的にばんえい競バはシニア2回生以上(実際の5~6歳馬に相当)が本番なのを考えると「ばんえい記念でバチバチやるまでに何スレ続ければいいのか?」と我に返って、下手に続けてグダった挙句にエタる前に一旦締めねば、となり完走させました。

  • 72◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/04(水) 22:54:05

    どうせなら、作るだけ作って使わなかったAIによるイメージイラストも放出しておきます。
    ジャガイモ軍団の一人、勝負服姿のインカアウェイクン。

  • 73二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 10:24:03

    帯広トレセンの学園祭でトレーナーチーム vs 各ばんえいウマ娘の対決は見てみたい

    交流イベントとして中央にお呼ばれして、特設コースでネームド5人曳きとの対決というのも面白いかも


  • 74二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 17:47:59

    >>70

    中央のファン感謝祭に交流イベでスノウが来校

    ジュニア最強の触れ込みに、鈍重そうな巨体を侮ったモブがちょっかいかけてきて、なんかダート1200で勝負になるけど、当然まるで勝負にならず

    その後、交流イベ本番での模擬ばんえいレースを見て、ちびりかけるモブ

    謝って仲良しに


    みたいな?

  • 75二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 22:06:57

    このレスは削除されています

  • 76◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/05(木) 22:09:25

    作るだけ作って使わなかったジャガイモ軍団の一人、勝負服姿のアイリシュコブラー。
    色々なネタは助かります。

  • 77二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 07:47:43

    筋肉マイフレンド

  • 78二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 13:23:07

    ばんえいウマ娘の先祖がヨーロッパから移民してきた重種ウマ娘ってことは、あちらで重装騎兵やってた頃から家に伝わる先祖伝来の剣とかあるお宅もありそう

  • 79二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 22:31:04

    太ももでスイカ割りして販売したら飛ぶように売れそう

  • 80◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/06(金) 23:28:26

    作るだけ作って使わなかったジャガイモ軍団の一人、勝負服姿のアンデスレッド。

    実習で作って今一な出来だったスイカとかで、オヤツ食べがてらスイカ割りとかしてそうです
    フルパワーで叩くと木っ端微塵になるので、適度な力で丁度よく割れるように叩く、独特のゲームになりそうです

  • 81二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 09:41:34

    フルパワーで叩いちゃってスイカ爆裂からの全身スイカ汁塗れからのシャワーシーンが無理なくいける流れに

  • 82二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 19:25:54

    ララポート行ったら北海道のアンテナショップあったんで、ソフトカツゲンと山わさびカップメンと乾燥ホタテ買ってきた
    山わさび醤油漬けは賞味期限が早くて食べきれなさそうなんで止めた

  • 83◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/07(土) 22:45:03

    作るだけ作って使わなかった、シャコータングラムにイヤリングを付けてもらうカミノクニスノウ。
    二人の関係性を深堀りしようとしても、女の子同士の友情やうすーい愛情モノは造詣が浅いので描写と加減に苦しんだスレ主です。

  • 84二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 10:39:16
  • 85◆Lj.vT9ErJJ7R24/09/08(日) 22:05:33

    ジュニア級では余裕がなかったのですが、クラシック級なら7月上旬のばんえい大賞典から8月下旬のはまなす賞まで重賞開催が空くので、夏祭りに出ようと思えばいけそうです。
    法被に褌スタイルは少し筋肉を誇示しすぎな衣装だったので、下は袴でお祭り参加するスノウちゃんのイメージイラストです。
    結構、クラシック以降のネタ出ますね……。

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