【ポケモン児童書】アクジキングの腹

  • 1二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:11:23

    ハリケーンが去って、すばらしい青空になった。
    A諸島の中でもっとも自然豊かなP島でも、被害があった。村はずれの山でがけくずれが起きたのだ。
    朝になってそれを知った村人たちが被害を調べにやってきた。
    「ひどくやられたものだ」
    「このへんだったかな」
    「いや、もう少しあっちだったようだ」
    その時、一人が声を高めた。
    「おい、この穴はいったいなんだい」
    彼が指を差した先には山腹にぽっこりと開いた大きな洞窟の穴があった。のぞき込んでみたが、なかは暗くてなにも見えない。
    「デカグースの巣穴かな。嵐で崩れたんだろう」
    そんなことを言った者もあった。

  • 2二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:13:03

    わっふるわっふる

  • 3二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:13:03

    「おーい、でてこーい」
    若者は洞窟にむかって叫んでみた。すると奇妙な鳴き声と共に洞窟から見たことのない巨大なポケモンが出てきた。村人たちは驚いて、手持ちのポケモンに攻撃を命じようとした。
    「反撃されるかもしれないから、やめよう」
    と老人がとめたが、彼らのポケモンは勢いよく技を繰り出した。しかし、じゅうまんボルトと、かえんほうしゃ、れいとうビーム、その他さまざまな技に対しても巨大ポケモンは全くダメージを受けていないようだった。やがて飽きたのか巨大ポケモンが洞窟の奥に引っ込むと、村人たちは諦めて、木を切って縄でむすんで柵をつくり、洞窟のまわりを囲った。そして、ひとまず村にひきあげた。

  • 4二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:14:45

    星新一で一番好きな話だ!

  • 5二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:15:18

    「どうしたもんだろう」
    「こちらに危害を加えてくる気はないようじゃないか」
     相談がきまらないまま、数日たった。早くも聞きつたえて、新聞社の自動車がかけつけた。まもなく、E財団の研究員がスリーパーを連れてやってきた。そしてわたしにわからないことはない、といった顔つきで穴の方にむかった。
     つづいて、物好きな野次馬たちが現れ、その野次馬を相手にしためざとい商人みたいなものも、ちらほらみうけられた。駐在所の巡査は、好奇心で中に入る者があるといけないので、つきっきりで番をした。

    巨大ポケモンが洞窟の出口に現れると野次馬たちは大きな歓声をあげた。
    最初は遠巻きにだったが、こちらを攻撃してこないことがわかると誰よりも近くに見たいと柵に乗りかかって見物しようとした。

  • 6二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:15:20

    元ねたあるん?

  • 7二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:15:31

    >>6

    あるよん

  • 8二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:16:43

    >>6

    星新一の「おーいでてこーい」

    先に元ネタを読んでからこのスレを見る方がいいかも

  • 9二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:17:02

    新聞社の一人がためしにきのみを投げつけると、巨大ポケモンはそれを大きな口で吸い込んだ。ついで、山盛りのきのみを置いてみたが、それも一口で平らげてしまった。
    巨大ポケモンがなんでも食べるので、誰かのアイデアで大量の毒物が混ぜられた食糧が置かれた。しかし巨大ポケモンはまったく苦にせず食べ切ってしまい、最後にはやけくそ気味に金属やらゴミやらが置かれたが、それすらバリボリと消化してしまった。いくら食べても食欲はおさまらない様子だった。

    食事面からの追究が失敗すると、今度は巨大ポケモンを倒して名を上げようとする者が現れた。
    けれども、野次馬の中の腕自慢が勝負を挑んでも毎回傷一つつけられず帰って行った。
    研究員はいちいちその様子を記録していたが、ぶつりわざでもとくしゅわざでもほじょわざでも、17種あらゆるタイプのわざ全てがこうかがないようだったので首をかしげたが、みんなが見つめているので、調査をやめるわけにいかない。

  • 10二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:18:59

    >>7

    >>8

    ありがと!読んでみるよ

  • 11二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:19:05

    「普通の技が効かないなら音技を試してみましょう」
    研究員は各所に連絡して、フライゴンやオンバーンを持ってこさせ、洞窟の中にばくおんぱを向けさせた。
    音をいろいろ変えさせてみたが、中から反響はなかった。続けて数を増やし、かわりばんこに長いあいだ鳴らしつづけた。
    普通なら、洞窟から反射した音が返ってくるはずだが、洞窟からはなんの反応もなかった。

     研究員はすまし顔でこう結論した。
    「中のポケモンは熱、光、音などあらゆるエネルギーを分解して体内に吸収してしまうようですね。名前をつけるとするなら…そうですねなんでも食べるので『アクジキング』とでも呼びましょうか」
    村人たちは難しい理屈がわからないので困って尋ねた
    「ではどうすればいいんですか?」
     研究員も内心は弱ったが、落ち着いたそぶりで帰り支度をしながら、もっともらしい口調で言った。
    「放っておきなさい」
     わからないことは、放っておくのが無難だった。

  • 12二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:22:41

    見物人たちは、なんだこれでおしまいかといった顔つきで、引きあげようとした。その時、人垣をかきわけて前に出た商人の一人が、申し出た。
    「その洞窟の所有権を、わたしにください。損はさせません」
    村人たちはお互いに顔を見合わせて怪訝な顔をしたが、商人の提示した額を聞いて口々に賛成の意を表したので、とんとん拍子に売却が決まってしまった。

    村人たちが臨時収入を得てホクホク顔で家に帰って行った後、商人の設立した新会社は、洞窟のそばの小屋で小さな看板をかかげた。
    商人は、仲間を役所で猛運動させた。なんでも吸収してしまう便利なポケモンがいますよ。洞窟内を調査したところ排泄もしないで全て体内に取り込んでしまうみたいです。従来とは一段上のゴミ処理方法でしょう。

    役所は許可を与え、A地方各地からゴミが運ばれてくる手筈となった。疑いの目を向ける者もいたが、最初は格安にしときますよ。ゴミをあと千円安く処理できるかどうかで会社の命を拾うかもしれませんよ。と言われるとなんとなくそっちに頼まなくてはならない気がしてくるのだ。

  • 13二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:24:24

    >>12

    「ゴミをあと千円安く処理できるかどうかで会社の命を拾うかもしれませんよ。」

    シュウゾウくんさあ...

  • 14二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:25:41

    村人たちはちょっと心配したが、絶対に村に害は出ないと説明され、また利益の配分をもらうことで、なっとくした。しかも、まもなくP島に立派な港湾が作られたのだ。
    港に積み上げられたゴミは洞窟までベルトコンベアで運ばれ、巨大ポケモンのエサになった。
     役所や研究所から、不要になった機密書類箱を捨てにきた。監督についてきた役人たちは、ゴルフのことを話しあっていた。作業員たちは、指示に従って書類を投げこみながら、バトルロイヤルの話をしていた。
     巨大ポケモンの胃はいっぱいになる気配を示さなかった。ゴミ処理会社は、少しずつ事業を拡張した。
    A地方だけでなく世界中から処分に困ったゴミが集められるようになった。
    研究所で謎の実験に使われた氷漬けの死体も運ばれてきたし、発電所から排出された危険物質もくわわった。海に捨てるよりいいと、A地方最大の街Hシティの汚物を海底パイプで洞窟まで導く計画も立った。

  • 15二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:29:12

    アクジキングは街の住民たちに、安心感を与えた。つぎつぎと生産することばかりに熱心で、あとしまつに頭を使うのは、だれもがいやがっていたのだ。
    この問題も、アクジキングによって、少しずつ解決していくだろうと思われた。
    P島だけでなくA地方全体で人口が急増していった。

    不安に思う人もいたがごく少数だった。
    P島に住む村人の一部は「もししまキングがご存命ならこんなことは許さなかっただろうに」と嘆いたが移住してくる人の多さの前には無力だった。
    職を失い野生化したベトベトンのことを心配する声もあったが、色が薄くなって逆に元気になったようだった。

    夫が失踪した女の子は、古い日記を捨てた。かつての思い人との思い出を捨てて、新しく発見されたポケモンたちとの生活を始めようとしたのだ。警察は、押収した巧妙な島めぐりの証を始末して安心した。スカル団たちは、犯罪の証拠を洞窟に投げ込んでほっとした。
    アクジキングは、捨てたいものは、なんでも引き受けてくれた。彼は、街の汚れを洗い流してくれ、空や海が以前にくらべて、いくらか澄んできたように見えた。
    その海の果てから、人々がつぎつぎと船でやってきてA地方に上陸していった。

  • 16二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:31:49

    ある日、アクジキングが急に体調を崩し食べるのをやめた。ゴミ処理会社の職員たちも、呼ばれたポケモン医も原因がわからず、結局Hシティの研究所まで運ばれて、そこで検査を受けることになった。

    ゴミ処理会社の要請もあり、世界中から研究者が集められた。
    研究者たちがアクジキングを取り囲んでいると、
    「おーい、でてこーい」
    と叫ぶ声がどこからか聞こえた。
    研究者たちはあたりをキョロキョロしたが誰が発した声かは不明だ。
    不思議に思いながらも調査に戻ろうとした時、アクジキングの口から火、電撃、冷気が混じった光線が発射された。
    研究者たちはその場から逃げ出しながら、どうして急にアクジキングが攻撃を仕掛けてきたのか疑問に思った。

  • 17二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 21:32:47

    もちろんアクジキングは人間を攻撃し始めたのではない。ただ、与えられた物を返していくだけだ。

    おしまい


    元ネタ
    「おーい、でてこーい」星新一

  • 18二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:15:12

    おつです!

    アクジキングの攻撃はポケモンで対抗できるから元ネタよりはましな結果になりそう

  • 19二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:27:22

    元ネタがあるけど、アクジキング側からしたらこれって「なんかご飯くれる!!」→「お礼にお返ししよっと」ってことなのかね

  • 20二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 22:29:04

    ハラさんが亡くなってるし、人間たちが好き勝手やってるからこの世界だとコケコ達もいなくなってそうだな…

  • 21二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 02:51:07

    >>19

    許容を超えたのを吐き戻ししてるだけでそこに悪意も善意も無いと思う

    まぁ穏やかな気性の個体みたいだから全部吐き終えたら辺りにあるご飯を食べてのんびり過ごすんじゃないかな

  • 22二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 07:53:57

    P島=ポニだから
    しまキングってのはハプウの祖父だろ

  • 23二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 08:02:30

    実際アクジキングの口内ってどうなってるんだろうか
    ウルトラホール説とかあるけど

  • 24二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 11:12:22

    >>21

    >辺りにあるご飯

    ふむ

  • 25二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 12:36:19

    「どりゃあああああ!」
    あ!!いきなり現れたM島のしまキングがアクジキングをぶん投げた!
    アクジキングはしまキングを恐れて吐き出すのをやめた。
    こうしてA地方に平和が戻ったのだった。

    人々は彼を称え、こう呼んだ
    「アクジキングのハラ」と

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