- 1二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:11:51ルビーはヘリオスの顔を見た。 
 一年ぶりに会ったヘリオスは、少し日焼けしていた。
 海外の日差しをたっぷり浴びたその顔はちょっと痩せたせいか丸みが少なくなり、何だか大人っぽく見えた。
 ◇◇
 どうして彼女たちが一年越しの再会を遂げたのかといえばこういう経緯があった。
 トレセン卒業後それぞれの進路に進みもう会うことはないかと思われたたが、しかしヘリオスは脅威のコミュ力とめげないしょげない泣いちゃダメ精神でルビーと連絡を続けていた。
 一応アポイントメントを取ることが重要らしいということも覚えたらしく、対談とパーティの合間、都内のケーキが美味しいというカフェで会ったのが最後だった。
 そこでヘリオスはキャラメリゼされたナッツをパリパリ噛み砕きながら、海外に行くのだと言った。
 海外で活躍する友人に会いたいと言ったら、来てはどうかと言われた。そしてどうせ海外に行くのなら他の友人のところも訪ねたいと思いつき一応計画を練れば、それはほぼ世界一周で丸々一年になりそうということだった。
 計画を一緒に考えてもらったという彼女の元トレーナーは「ヘリオスらしくていいな、気をつけて。あとさっきも言ったけど『コアラとペンギンとパンダならどれな感じ〜〜〜!?!?』ってLANEに『コアラかな』って返したくらいでコアラをお土産にしなくてもいいからな。動植物は持って帰れないからな」と再三念押ししたらしい。
 あまりに急な話にルビーは内心目を白黒させたが、ヘリオスはなんて事ない顔で「帰ってきたらなる早でお嬢と会いたいから〜、日にち決ーめよっ☆」と色とりどりの予定が詰められたスケジュールアプリを開いた。
- 2二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:12:20そして本当に一年海外を回って帰ってきたらしいヘリオスを待ち合わせの日にバーの前で見つけたルビーは、二三度瞬きをした。 
 ヘリオスは店の壁に寄りかかっていた。白いチューブトップの上にネックラインがざっくり開いたシャツジャケットを羽織っていた。左手はウエストに、人差し指から小指へピアノでも弾くようにタラララと繰り返し打ち付けていて、派手なストーンネイルを施した右手ではスマホをいじっている。ジャケットとパンツはセットアップのようで──オーダーメイドだろうか──ネイビーの生地が肌にぴたりと沿って、艶めかしく身体のラインを演出していた。
 つまらなさそうな顔でスマホを見る彼女は近寄りがたく見えた。少なくともルビーの思い浮かべるあのヘリオスとは異なった面を見せていて、少しだけ声をかけるのに躊躇した。
 一年の間にダイタクヘリオスは少女でなくなって、美しい女性になっていた。
 しかしヘリオスは、顔を上げてルビーの姿を認めると「お嬢ぉ〜〜〜〜!!!」と手を振りながら破顔した。先程までの空気が嘘のように霧散して、「おっ嬢ぉっ☆おっ嬢ぉっ☆おっひさっのおっ嬢ぉっ☆」と犬のようにルビーの周りでぴょんぴょん飛び跳ねる。
 「ヘリオスさん」
 「あい!」
 ぴし、と直立するヘリオス。低く落ち着いたルビーの声を聞く時、彼女はこうして「話を聞くのに全身全霊です!」という態度を取る。
 目の前で直立すれば、身長に差が生まれているとこにルビーは気づいた。もとからヘリオスの方が高かったがそれにしても──と足元を見れば、ロープ編みでカバーした高いウェッジヒールに金のストラップが光る白いラインサンダルが、筋肉の付き方が異なって曲線的になった足を包んでいた。
 ルビーはヘリオスの顔を見た。
 一年ぶりに会ったヘリオスは、少し日焼けしていた。
 海外の日差しをたっぷり浴びたその顔はちょっと痩せたせいか丸みが少なくなり、何だか大人っぽく見えた。
 そこにきて。
 ようやくルビーは、ヘリオスが長い旅から帰ってきたのだと実感したのである。
- 3二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:12:34このレスは削除されています 
- 4二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:12:52「お〜、おかえりヘリっぴ〜」 
 「たでーまー☆」
 あ。ルビーは心中で呟いた。
 先に言われてしまった。ヘリオスに「おかえり」と言っていなかったことに、今さら気づいたのだ。
 ヘリオスの友人らしい女性のバーテンダーは声をかけたついでに「記念に一杯サービスしたげる〜。お嬢?さんの分も〜」とふわふわウインクして、決まったら呼んで〜とまたグラスを磨き始めた。
 「お嬢なん飲む?」
 首を傾けたヘリオスの左耳で、ピアスが揺れてカチャカチャ鳴った。
 もうあの頃付けていたプラスチックのピアスはなくて、石や金属のピアスがいくつか無造作に、しかしセンスよく並んでいる。行った先で買ったものだろうか。
 「……ヘリオスさん」
 「え!? 何!? ウチのことしゅき!?!?!?」
 「いえ」
 「爆フラレぴえぱおん……」
 話が通じないのでとりあえずバーテンダーに甘くないカクテルを頼む。普段は甘いものを好むが、今日の気分ではなかった。
 ヘリオスは「もうヤケしかなくない!?」とテキーラをショットで頼んで窘められていた。ふわふわしたバーテンダーは友人思いではあるらしい。
- 5二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:13:20軽く乾杯して酒で唇が湿れば、ヘリオスは旅のことを語ってくれた。 
 それは夢のような話だった。
 知らない国の行く先々で友人に会い、知らない人と語り合い、友人を増やし、どんどん人を巻き込んで、大きな事を成していく。
 子どもたちと組んでフェスをぶち上げ廃校の危機にあった小学校を救ったり、スリをしていたウマ娘たちとレースをしてその国のトレセンに手を引いて連れて行ったり、おいしかった料理屋の店主の元気がなかった理由を聞いて街をまとめあげた結果、あーしーぴーぽー?(ICPOのことだろう)のおっちゃんと組んで大規模国際詐欺組織の摘発に協力することになったり、砂浜に落ちてた緑色の宇宙人と仲良くなって大星団でパしたり。
 色とりどりのスマホのアルバムには、いつも彼女と誰かの笑顔が写っていた。
 耳を動かせばシャラシャラカチカチ鳴るアクセサリは国々で友人になった人たちに貰ったものであったし、その上等でヘリオスにぴたりと合うセットアップはルビーが聞いただけで耳をぴんと伸ばすような高名なデザイナーと酒場で打ち解けた結果「バイブス合ったからウチのイメで服作らせてって言われて作ってもらった☆」とのことで誂えられた彼女のためだけのオリジナルデザインであったし、サンダルは海辺の街で即興ライブを開いた時に感銘を受けた靴職人を目指す若者が贈ってくれたものだと言う。
 ガチかわいくない!?今のお気に!とひょいと上げてサンダルを見せてからまたぷらりと下げてスツールの足掛けに置いたその足を、ルビーは不自然に思われないくらいちょっとの間、目で追った。
 バーの高いスツールの足掛けに、ルビーの足は乗らなかった。きっちり揃えた足の先を、ルビーは少しだけ揺らした。
- 6二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:13:49「帰りだぐない〜〜〜!!!お嬢と離れだぐない〜〜〜!!!お嬢コレからウチのダチのクラブ行かん!?朝までシャルウィーダンスでパせん!?アゲてこ〜ぜ〜〜〜?」 
 「明日の予定に障りますので」
 「ゔぇぇぇぇえええええ!!お嬢〜〜〜〜!!!」
 足下に縋りつかんばかりの勢いで騒ぐヘリオスをルビーは見下ろしていた。見上げたり見下ろしたりと忙しい相手である。
 「……今日は、という話です」
 「はにゃ?」
 「日程を確認したのち、追ってご連絡いたします。不勉強で恐縮ですが、そういった場所へ赴くのは初めてなのでナイトクラブの作法について留意点等があればお教えください。では」
 ルビーはぺこりと頭を下げた。それでも座り込んだヘリオスから答えが返ってこないので。
 「タクシーをお呼びしましょうか」
 「だいじょび…」
 「そうですか。それでは」
 そしてルビーは迎えの車に乗り込んで去っていった。ヘリオスは呆然とそれを見送りながらノールックでスマホを操作してズッ友に連絡する。
 「もしもしパマちん?クラブにさほーってありゅ?」
 「サホー?そんな名前のお酒あったっけ……ヘリオス?へーリーオースー?」
 そうしてパーマーが彼女の名前を冠した愛車で迎えに来てくれるまで、その場に座り込んでいたのであった。
- 7二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:13:56このレスは削除されています 
- 8二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:14:17ルビーは身を守る体勢──耳を折り塞いで地面に丸まり口を開ける──を取る訳にはいかなかったので、小さく口を開けるだけに留めた。 
 つま先から頭のてっぺんまで抜けるような衝撃かと思う爆音が流れていた。
 「手とか繋ぐ?」との提案に「必要ありません」と返してしまった手前、慣れたように人の間を歩くヘリオスの背に手を伸ばして、やっぱり触れることはできず、ルビーはクラブの混雑のなかを一生懸命歩いた。
 ヘリオスは一歩進むごとに友人に声をかけられるという状態だった。
 乱暴に肩を組まれていきなり写真を撮ったり、ガイコクゴ喋れるようになった〜?と聞かれてなっしん!(Nothing)と返したり。
 そして「てか後ろの子誰なん?」と聞かれて、「ウチの最高最きゃわ神しゅきぴのお嬢」と早口で紹介すると、「この子がヘリちが話してたあの!へーえ!」と様々な若者がルビーに挨拶した。
 その中の一人。高いヒールを履いた露出度の高い女性が屈むと、ルビーの目の前でとろんと谷間が揺れた。
 赤く厚い唇の端をきゅっと持ち上げて「ヘリちのお嬢お初ー♡かわい♡」と不思議な虹彩をした垂れ目がちな瞳をバチン!と閉じる。カラーコンタクトだろうかとルビーが考えていると、どこかから声をかけられた彼女がくっと向こうを向いた。横顔になると驚くくらい睫毛の長い彼女は、きらめくアイシャドウの軌跡が残るかと思うほどはっきりとしたメイクをしていた。長いネイルをヒラヒラさせながら去っていく彼女を見送ったルビーは、失敗した、と思った。
- 9二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:15:11このレスは削除されています 
- 10二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:15:23この場にルビーが付けてきた上品な発色のアイシャドウは、ダイイチ家が代々使うブランドのものだった。陶器のような白い肌と紅玉の瞳に合わせられた一級品。そこに派手さは一切ない。 
 赴くのが一族の主催するパーティであっても、客の年代層に合わせて華美なものは控える。
 だってなまじ舐められる。
 少しでも華美であれば、浮ついた娘というレッテルを貼られて終わりだ。大人は大人の価値観で子どもを測る。自分にだってやりたい放題やっていた若い頃があったにもかかわらず、まるでなかったことにして近頃の若い者はと嘲笑う。
 だから、ルビーはどんな大人が見ても理想である必要があった。
 彼女の顔の中で一番目立つ美しい瞳を彩るのは、血色を邪魔しない青みのあるマットなピンクのアイシャドウと、そこに細かいパールのラメを黒目の上の瞼にほんの少し乗せられるだけ。それでいい。
 柔らかな室内照明の下で語らう時さりげなく目を向けさせれば、それだけではっと息を飲むほどの美貌をルビーは持っている。
 けれど、ここではそれが通じない。薄暗闇と蛍光色のレーザーライトに負けない暗影をつけたメイクがマナーなのである。
 服だってそうだった。ナイトクラブの雰囲気を想像しながら外商員に頼らず自分で店に赴いて買った、ルビーの持ったことの無いような丈をした繊細な黒いレースのワンピースも、ここではちっとも目立たない。
 それにヘリオスのあの高いヒールのサンダルをイメージして買った艶めくヒールは足に合わなくて……。
- 11二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:15:54人に囲まれるヘリオスを見れば。 
 ヘソを出したレースアップビスチェの上にウエストをギュッと絞ったブルゾンパーカーを肩出しで羽織り、どこか懐かしいデニムのホットパンツからのぞく脚を惜しげも無く晒して踊っていた。誰もが彼女に視線を注いでいることを分かっているのかいないのか。
 赤いマスカラをぱっちりとした睫毛に塗り、ゴールドのアイシャドウに大粒のグリッターを重ねて目尻にも散らした彼女は、暗いフロアの中、目が合っただけで恋をしそうなほどロマンチックに輝いていた。
 考える間に足はじくじくと痛み出す。
 それでもフロアの中心で踊るヘリオスに近づいたその時だった。
 「っあ」
 僅かな囁きだった。紙より薄い眉間のしわだった。
 しかし、太陽の瞳はそれを見逃してはくれなかった。
 倒れかけたルビーを受け止めて。
 「──お嬢、イッタンあっち行こ?」
 踊る若者たちの間を、手を引かれて端へ歩いた。
 断頭台へ向かう囚人のような気分だった。
- 12二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:16:05このレスは削除されています 
- 13二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:16:27「どしたん?」 
 ルビーは答えなかった。しかしヘリオスは動じない。
 「ごめ、ちょっち触る」
 そうして座らせたルビーの前にしゃがんで小さな足を両手でそっと包んだヘリオスは、彼女が普段履かないテイストの青いヒールを脱がせる。
 足首の部分が擦れて、血が滲んでいた。
 罪人のように押し黙ってしまったルビーを見上げる。
 「お嬢、今日のためにコレ履いてきてくれたん」
 ヘリオスの言葉はルビーに答えを求める語調ではなかった。しかし、ルビーは花がしおれるように頷いた。
 ヘリオスは少し肩を震わせて、勢いよく立ち上がった。
 「っ飲みもん、取ってくっから!」
- 14二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:17:08お嬢には、笑っててほしい。 
 それがウチの前でだったらいっちゃんいーけど、別にウチがいなくても笑ってくれんなら、それでいい。
 でもさ!ちがくない!?
 ウチのせいでお嬢がサガるとかさ、俯くとか、ガチで!!!ありえんてぃーじゃない!?!?
 ──帰ってからのお嬢はきっともっと忙しくなってて、ウチに付き合ってくれるのも最後かもしれんくて。だから、デートしてくれたことも、クラブにまで来てくれたことも、マジ最アゲだったはずなのに。
 …バーでの帰り。本当に、帰したくなかったのだ。
 あんな顔したルビーを、そのまま帰したくなかった。音楽とダンスでカマせば、ウチなら一発アゲのはずだった。
 でも、それで頷いて来てくれたクラブですら、あんなサゲな顔をさせてしまってて。
 ──なんでだろう。
 会えなかった一年よりも、今の方がずっとさびしい。
- 15二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:17:38下を向いてもライトが床に反射するので、目をつむった。 
 足首の皮は薄く剥けていて、慣れないことをした代償のように思えた。
 ここではあの(・・)ダイイチルビーではなくて、あの(・・)ヘリオスの友人として接された。これまでの生活でそんなことはなくて、だから対処法も分からなくて。
 そもそもダイイチ家としての立ち回りは、この場にはそぐわない。
 しかし、俗世間の習俗に疎いのは学園を卒業しても変わらないままであった。むしろ家の事に割く時間が増えた分、一般の同年代との差は開くばかりで──
 一般の、普通といわれる生活をしていた人々との差、が。
 そこまで考えて、ふとあの人の声が浮かんだ。
 『「顔を上げて」
 「何かを成そうとするのなら、常に堂々たる態度で」
 「恥じることがあるのか。ないのなら、己に足る己であるよう、視線を真っ直ぐ前に、背筋を伸ばして立つべきだ」
 ──君が、言ってくれたから』
 その台詞はいつかの自分の台詞だったけれど、あの人が言ったままの声で思い起こされた。
 目を開けた。
 金色のグリッターが、指先で輝いていた。
- 16二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:17:38このレスは削除されています 
- 17二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:18:02「ちょっ、あっ、え何?足踏んだ?メンゴ!」 
 ヘリオスは両手にジュースを持って、人の波をかき分けるように進んでいた。
 一刻も早く彼女の元に駆けつけたいのに、マイルCS連覇という偉業を成した脚もこの場では本領を発揮できやしない。
 忸怩たる思いで、せめてと首を伸ばしてルビーの様子を伺う。
 ルビーは、小さな手をライトにかざしていた。
 その指はよく見ればキラキラ輝いていた。ルビーを受け止めた時のことだろうか、ヘリオスがつけていたゴールドのグリッターが彼女の指について、細い指先を輝かせていた。
 そして彼女は指先を自分の目元にやって──自らの瞼にひいた。
 フロア中の光を集めて星のように輝く瞳を開いた彼女は、鶴のような気高さで毅然と顔を上げて。
 そして、二度と俯かなかった。
 ヘリオスの心臓が鳴った。全ての音が止まったような気がした。
 ヘリオスは、この光景を一生忘れないだろうなと思った。
- 18二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:18:18このレスは削除されています 
- 19二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:19:41このレスは削除されています 
- 20二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:20:22このレスは削除されています 
- 21二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:20:43「お嬢!」 
 ヘリオスは肩で息をしながらルビーのもとに戻ってきた。汗で青い髪が束になっていた。
 「ウチ、ウチ!やっぱお嬢のことしゅきで、それだけじゃなくてガチで……、えっ、とぉ!」
 溢れる言葉を喉に詰まらせるヘリオスを見て、ルビーは少し微笑んだ。
 「とある方に教わったのですが……サゲの時はとりまシャルウィーダンスでパ、だそうです」
 「はえ…?」
 煩わしい痛みを生むヒールを脱いで、ルビーはヘリオスの手を取った。
 「シャルウィーダンス?」
 「あい♡♡♡」
 「完堕ちー!?」との周囲からのツッコミをものともせず、ヘリオスもブーツを脱ぎ捨ててルビーの手を握った。誰からともなく二人をステージに誘導する花道ができて、二人は裸足でステージに駆け登る。
 DJが目配せして、聞き覚えのあるミュージックが流れ始めた。
 笑っちゃえばほらパーリータイム!
 楽しいことは倍々にして!
 二人は顔を見合せて、踊り始めた。
 靴とは権威で、ヒールは見栄だ。
 だから、それをとっぱらった二人は丸裸の子どもみたいに自由に踊った。
- 22二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:21:15あのドロワの時のような練習はしていなかったから、合わないことの方がいっぱいあった。けれど、お互いアイコンタクトとちょっとした動きで次の行動が分かった。こうして何も言わないのに息が合っていって、それが本当に楽しかった。 
 ヘリオスはルビーの手を取ってターンさせた。
 ルビーはこともなげにヘリオスに体重を預けてターンを決め、その後二人でステップを決めて小さく笑いあった。
 ルビーの髪は湿気と動きで少し崩れていて、瞼と目尻でグリッターがチカチカ輝いていた。
 それを見て、踊りながらヘリオスは呟いた。
 「ぁせ……る」
 「はい?」
 ルビーが小さく首を傾げた。それを見て、ヘリオスは更にたまらなくなった。
 「〜〜っ、幸せにする!」
 「ヘリオスさ……」
 「幸せにする!!!お嬢のこと、世界一、んにゃ、宇宙一幸せにするから!!!ウチやっから!!!!マジだから!!!!!」
 若さだけで叫んで、ヘリオスはルビーを抱き上げてくるくる回った。まわって、まわって、まわって。
 ルビーは脇の下に手を入れられて抱き上げられていたから、遥か上からヘリオスの泣き笑いみたいな顔を見ていた。
 そして、その顔に手を伸ばしてキスをした。
 唐突な幸福のキャパ限突破に目を回しながら倒れていくヘリオスに抱きつきながら、ルビーは声を上げて笑った。
 太陽が輝いていたから。
 二人とも、もうちっともさびしくなかったのである。
- 23二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:21:40おしまい 
- 24二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:21:41このレスは削除されています 
- 25二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:22:05このレスは削除されています 
- 26二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:22:24このレスは削除されています 
- 27二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:22:42このレスは削除されています 
- 28二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:23:04このレスは削除されています 
- 29二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:23:05SS感謝 
 ヘリルビええよな……
- 30二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:23:08乙 
 良いヘリルビだった
 あと地の文がしっかりしてるなと思った
- 31二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:23:24このレスは削除されています 
- 32二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:23:31このレスは削除されています 
- 33二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:24:51銀魂みたいなタイトルに引かれた 
 しかしいいものを見た ありがとう
- 34二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:24:59お疲れ様 
 始まり方や途中途中のヘリオスとルビーの経験の差がタイトルと相まってちょっと切ない感じがして良いね
- 35二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:25:20乙 
 お嬢とギャルの組み合わせは良いものだ
- 36二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:25:26このレスは削除されています 
- 37二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:25:36お疲れさん 
- 38二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:27:03おつおつ、面白かったです 
 一度離れた時間と経験を経て、ようやく二人が屈託なく笑い合えるようになっていることがじんわりと喜ばしく感じる……
- 39二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:28:00太陽が輝いていたから 
 ここしゅき……
- 40二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:32:10ヘリルビの波が押し寄せて来てダメだった… 
 良い物を見れたありがとうありがとう…
- 41二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:38:52すごくよかった! 
 ルビーがヘリオスのグリッターを瞼に乗せるところ、ルビーが思う自身のあるべき姿を自ら壊してて非常にすき!!
 ヘリオスがルビーを少しずつわかっていったようにルビーもヘリオスに歩み寄れたんだね!!! 尊い!!!!!
- 42二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 00:15:15よかった… 
- 43124/08/26(月) 00:37:08
- 44二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 00:45:00アポイントメントネタってどっかストーリーとかであったっけ? 
 ここでよく擦られてるけど
- 45二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 00:56:47
- 46二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 01:52:53
- 47二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 03:37:28いいものを見せてもらいました、明日もこれで頑張れる 
 素敵なものをありがとう
- 48124/08/26(月) 14:10:14
- 49二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 17:23:38良い…凄く良い 
- 50二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 05:19:16時間をおいてこそ見えてくるものもあるんだな 
- 51二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 13:58:53お疲れ様です。遅ればせながら読ませていただきました。語彙力ないですが……。 
 ヘリオスの耳飾りのデザインが変わってたり二人とも普通にお酒を頼んでいたりとナチュラルに『大人になってる』感が出てるの好き。地の文と心情描写も丁寧で引き込まれましたし、お嬢はもちろん途中でヘリオスのが挟まるのも良きでした。
 良いもの読ませていただきましたわ。
 『ルビーは花がしおれるように頷いた』
 この表現わかりやすくて良いなと思いました。
 これからも頑張ってください!
- 52二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 19:04:45凄く良かったです 
- 53124/08/27(火) 20:01:45
- 54二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 02:52:03
- 55二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 02:58:27アッッッッッッ!!!! 
- 56二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 09:59:41大人ヘリオス素晴らしすぎる……よき…… 
- 57124/08/28(水) 17:02:51大人びて雰囲気が変わって見えるダイタクヘリオスという無茶苦茶な設定を絵に落とし込めるのが本当にすごいと思います。ありがたいです 
- 58二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 05:00:50滅茶苦茶良いです