メアリーは気分ええやろうなぁ

私はそんな彼女を横目に見ながら、戸棚に向かった。引き出しを開けて、薬はすぐに見つかった。でも、わざと棚の中身をひっかき回して、時間を稼いだ。　ヴィオラちゃんはシーツを掴んで、必死に痛みに耐えている。ああ。その姿。とっても滑稽で、愛おしい。　そのうちに、焦るような衣擦れのが聞こえてきた。何かに気づいたらしい。

「え、エレンちゃん、あ……足、足が……」

「え、なあに？」

「あ……」

聞こえないふりを装うと、ヴィオラちゃんはつばをのみこんで、それ以上何も聞いてこなかった。

足がどうしたって？やだわ。今更足がないことに気がついたのかしら。馬鹿じゃないの。

私はじゅうぶんにじらしたあと、薬を手に取り、ベッド脇のテーブルまで戻った。コップに水差しから水を注ぐ。水が注がれる音に、ヴィオラちゃんはいくぶんかの緊張を解いたみたいだった。それから飴玉のような薬をひとつぶ、コップの中に落とす。薬はあっという間に溶けてなくなった。水の色は、相変わらず透明。だけど、この薬は痛み止めなんかじゃない。

「はい。これ。ヴィオラちゃん、これ飲めば楽になるよ」

彼女の両手を優しく包み込み、コップを手渡す。ヴィオラちゃんはお礼を言って、薬の入った水を一気に飲み干した。