- 1二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:21:52
それは、ある日のことだった。
エアシャカールが校内を歩いていると、自身のトレーナーが、クラスメイトであるマンハッタンカフェと話していた。正確には、トレーナーが彼女の話を聞きながら、熱心にメモを取っていた。
大して興味を抱かなかったエアシャカールはそれを気にも留めず、廊下の角を曲がってその場を後にした。
別の日の休み時間。ガヤガヤと騒がしい教室でエアシャカールが窓の外をぼうっと眺めていると、トレーナーがまたもやマンハッタンカフェと中庭で何やら話しているのが見えた。
(アイツ前にも...カフェと何話してンだ…?)
流石に少し気になった彼女の後ろから、誰かが声を掛けた。
「おやおや…あれはカフェと…君のトレーナー君じゃあないか?シャカール君」
振り返らずとも、声だけで分かった。彼女はアグネスタキオン。マンハッタンカフェと同じく、クラスメイトだ。 - 2二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:22:12
「…チッ」
「声を掛けただけで舌打ちとは…手厳しいねぇ…」
やれやれ…とわざとらしくジェスチャーをするアグネスタキオンだったが、それでも振り返らないエアシャカールに、アグネスタキオンはこう続けた。
「…それとも、何か腹を立てるような事があったのかな…?例えば…嫉妬…とか」
「…アァ?」
聞き捨てならない言葉にエアシャカールは思わず、アグネスタキオンの方へ顔をやり、彼女を睨み付けた。
「嫉妬だァ…?オレが何に嫉妬すンだよ」
「あれだよ、あれ」
睨まれているのを気にせず、アグネスタキオンは窓の外を指差した。彼女が指差した先を見ると、トレーナーとマンハッタンカフェが談笑していた。
先程までは真面目な表情をしていると思っていたが、今は二人共笑いながら、楽し気に話しているのだ。 - 3二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:22:32
あの二人に何か、共通の話題があるのか。エアシャカールは知らなかったが、彼女は心底どうでも良いと思った。
「ハッ、アレの何処に嫉妬すンだよ。適当なこと言ってンじゃねェ」
「ふぅん…それにしては、さっきからずうっと二人の様子を見ていたようだけれどねぇ…」
アグネスタキオンの指摘は正しかった。エアシャカールは中庭に二人を見付けた時から、今までずっと見ていたのだ。
「オレは窓の外を見ていたンだ。アイツらなンて見てねェよ」
しかしエアシャカールはそんな事はないと吐き捨て、アグネスタキオンに背を向けた。
「…まあ、自覚は無いか…」
アグネスタキオンの呟きは、エアシャカールの耳には届かなかった。窓の外の"景色"に集中していたからだ。 - 4二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:22:52
「お疲れ様、シャカール」
その日の夕方、エアシャカールがコースを上がると、トレーナーから労いの言葉と共に、タオルとドリンクを渡された。
「ン…」
彼女は短く返事をしながらそれらを受け取った。
ボトルを傾けて喉を潤しながら、横目でトレーナーの様子を伺う。彼はタブレットからエアシャカールのPCにデータを送っていた。
「……なァ、お前さ…」
「うん?どうかした?」
ボトルから口を離したエアシャカールがトレーナーに問いかけると、彼は顔を上げて彼女と目を合わせた。その顔を見ていると彼女は何故か尻込みしてしまい
「…いや、なンでもねェ…先に戻る…」
と、この後のミーティングを理由に、足早に更衣室へ向かってしまった。 - 5二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:23:01
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- 6二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:23:13
トレーニング後のミーティングも終わりエアシャカールが帰ろうとしていると、トレーナーも帰り支度をしていた。
彼女は疑問に思った。何故なら…彼は大抵、少し残業をするからだ。
「オイ…帰ンのか?」
エアシャカールはその言葉を口にした後、ハッとした。わざわざ聞く必要の無い事を何故…と。
「あー…ちょっとね…用事というか…」
トレーナーは苦笑いしながら、歯切れの悪い返事をした。
(相変わらず嘘が下手な奴…。言い辛ェことなのか…?)
ふと、マンハッタンカフェと話している彼の姿を思い出した。その瞬間、エアシャカールの胸の中に今まで感じた事のない、苦味のような…不愉快な思いが広がった。
「…まあ、良いンじゃね。たまにゃ早く帰ンのも…」
「うん…それじゃあ、お疲れ様」
「あァ…」
結局、無難な事しか言えず、この日はそのまま解散となった。 - 7二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:23:35
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- 8二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:24:11
トレーナー室の鍵を締めた後、急いでいる様子のトレーナーの背を見て、エアシャカールは小さく舌打ちをした。それが何の意味を持っていて、誰に向けたものなのか、彼女にも分からなかった。
それから数日、トレーナーはトレーニングが終わるとすぐに帰宅していた。それだけでなく、彼とエアシャカールは事務的な会話以外、言葉を交わすことが無くなった。
(いつもしつこく話し掛けてくるアイツが静かになって…オレはそれを望ンでたハズなのに...どうしてオレは…)
「つまンねェなァ…」
何時ものようにネカフェでデータ整理をしていたが、あの時感じた不愉快な苦味を思い出して胸がもやつき、どうにも集中出来ず(もういいか…)とPCの電源を落とした。
暗くなった液晶画面に映った自分の顔を見て、彼女はまた、舌打ちをした。 - 9二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:24:24
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- 10二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:24:42
ある日の昼休みに、エアシャカールは、トレーナー室の前に来ていた。
トレーナーはこの時間、大抵この部屋に居る。昼食を摂りながら資料を眺めていたり、ソファーで仮眠をしていたり…。
何かと構ってくる友人達から隠れる為にエアシャカールが来ると、彼は嬉しそうにコーヒーやお菓子を振る舞っていた。
初めは鬱陶しく思っていたが、次第にそれが当たり前になっていき、ほんの少し、居心地良く感じていた。
一呼吸吐き、ドアノブを掴んで捻る。しかし何度捻っても、ガチャガチャと音を立てるだけでドアが開くことは無かった。
(居ねェのか…?なンで…)
いつも居るはずの彼が居ない…エアシャカールの胸にまたしても苦い思いが広がり、溢れそうになった。
(…飯食いに外に行ってンだろ…)
溢れそうになったソレに無理矢理蓋をして、その場を去ろうとした時、こちらに向かってくる二人の人影が見えた。トレーナーと、その隣は…マンハッタンカフェだった。 - 11二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:24:48
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- 12二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:25:18
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- 13二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:25:38
「…ッ!」
エアシャカールは咄嗟に反対側の廊下の角まで走り、隠れた。
何故隠れる必要があるのか。そう思っていても、体は反射的に動いていた。
「あれ…?」
「どうかしましたか…?」
「いや…今シャカールが居たような気が…」
「シャカールさんが...?でしたら、早く隠しておかないと…」
二人の会話が聞こえてくる。一瞬しか見えなかったが、二人共白い箱のような物を、それぞれ一つずつ大事そうに抱えていた。
(隠す?何を…?)
「───!」「──…」
会話が聞こえてくるのだが、内容は分からなかった。処理しきれなかった…と言うべきか。何かに頭の中が塗り潰されてしまってようで。ただ、楽しそうに話していることだけ、理解出来た。 - 14二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:25:48
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- 15二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:26:09
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- 16二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:26:15
(ハッ…だよな…オレみてェな奴より、愛想の良い奴と話してる方がお前も楽しいよな…)
ギリ…と音がする程、歯を食いしばる。手の平に爪が食い込む程、拳を握る。こんな気持ちは初めてだった。怒り…苦しみ…悔しさ…様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざりあったこれは…
『例えば...嫉妬…とか』
アグネスタキオンの言葉を思い出すが、それを振り払うようにかぶりを振った。
(…そンなワケねェ。どうでも良い…アイツなンて、どうでも…)
エアシャカールは重い体を引き摺るようにして、その場を後にした。
その日のトレーニングは酷いものだった。エアシャカールは、怒りをぶつけるかのように、力任せなトレーニングをしていた。
見兼ねたトレーナーが注意しても、「うるせェ」としか返さなかったり、無視をしたりと…その様子を見ていた近くの娘達が怖がる程、彼女は荒れていた。 - 17二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:26:37
そしてトレーニングが終わり、ミーティングの時間。更衣室からトレーナー室に戻る道中で、エアシャカールの頭は少し冷されていた。
感情に身を任せ、無茶なトレーニングをしてしまった。大きな怪我を負ってしまったらどうするのか。だがそれ以上に、自分を心配しているトレーナーに理由も無く、いつも以上にきつくあたってしまった事を、彼女は悔やんでいた。
(ガキみてェだな、オレ…くだらねェ…)
やがて目の前に現れたトレーナー室の扉を一瞬躊躇しつつ、開いた。
「シャカール、戻ったか。じゃあ始めよっか」
「……アぁ」
さっきまであんなぞんざいな扱いを受けていたにも関わらず、普段と変わらぬ様子のトレーナーに、エアシャカールはぎこちなく返事をしてソファーに座った。 - 18二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:26:43
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- 19二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:26:56
「っと、その前に…」
テーブルを挟んでエアシャカールの向かいに座ろうとしたトレーナーが、部屋にある小さな冷蔵庫から何かを取り出して持ってきた。
トレーナーが持ってきたそれを見て、エアシャカールは思わずドキリとした。それは、昼間彼が抱えていた白い箱だった。
「…何だよ、それ…」
エアシャカールは、思ったよりも低く、怒気を含んだ声でトレーナーに尋ねた。
(オレにバレちゃマズイ物じゃなかったのかよ…)
と彼を睨み付けるが、トレーナーはその視線に怯む事無く続けた
「いつもはコーヒーとか飲んでるだろ?たまには、こういうのはどうかなって…」
そう言いながら彼は箱から中身を取り出し、エアシャカールの前にそれを置いた。
テーブルの上に置かれた際、表面がふるりと揺れたそれは、洒落たグラスに注がれたコーヒー…ではなく、コーヒーゼリーだった。 - 20二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:27:13
「……はァ?」
呆気に取られているエアシャカールを尻目に、彼は「あ、忘れてた」と冷蔵庫から牛乳とガムシロップを持ってきて漸く座った。
「シャカールはシロップはいらない?牛乳だけかな?」
「…いや、ちょっと待て…。お前…これどうした…?何なンだよこれは…」
能天気に聞いてくるトレーナーをエアシャカールは「訳が分からない、説明しろ」と追究した。
「コーヒーばっかりじゃ味気無いから、たまにはデザートとかどうかなって。でもシャカールは甘いものあんまり食べないだろ?」
「ならコーヒーゼリーなら食べるかなと思って作ったんだ。どうせなら驚かせようと内緒でね」
「これ…お前が作ったのか…?」
トレーナーの言葉にエアシャカールは驚愕した。グラスの中のコーヒーゼリーは市販とは比べ物にならない程香り高く、まるで豆から淹れたかのようだった。表面も気泡が無く、滑らかな舌触りを想起させた。 - 21二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:27:29
「いや、一人で作った訳じゃないぞ?マンハッタンカフェに相談したんだ」
「彼女コーヒーに詳しいだろ?だから、コーヒーゼリーに向いてる豆や、豆を挽く時のコツを教えてもらってたんだ」
「でもどうしても上手くいかなくて…。そしたら『良かったら手伝いましょうか?』って言ってくれたから、お言葉に甘えて、今日の昼休みに家庭科室を借りて手伝ってもらったんだよ」
あはは…と、照れ笑いをするトレーナーの話を聞きながら、エアシャカールは唖然としていた。
彼がマンハッタンカフェと話していたのは、コツを聞いたり、「中々上手くいかなくて」と相談していただけ。
二人で並んで歩いていたのは、直前までマンハッタンカフェがトレーナーのゼリー作りを手伝っていたから。彼女が抱えていた箱には恐らく、彼女のトレーナーの分が入っていたのだろう。
エアシャカールは、身体から力が抜けていくのを感じた。しかし、気になる事はまだある。
それは、最近トレーナーが早く帰ること。そして、自分に話し掛けてこなくなった事だ。ただ、なんとなく察しはついていた。 - 22二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:27:49
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- 23二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:28:04
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- 24二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:28:30
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- 25二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:28:59
「じゃあお前…最近早く帰ってたのって…」
「うん…。お菓子作りって勝手が違うし、コーヒーも豆から淹れた事なくてね...家で練習してたんだ…」
「…オレにいつもみたいに、ウゼェくらいに話し掛けてこなかったのは…?」
「いや~…余計な事喋っちゃいそうだからさ…。よく君に『そそっかしい』って言われてるし…」
照れくさそうに頬をポリポリと掻くトレーナーを見て、エアシャカールは呆れていた。
大の大人が、ゼリー作りと豆挽きの練習の為に早く家に帰って。
必要以上の事も喋りかねないから、ずっと黙っているしかなかった。
(…くだらねェ)
そんな事の為に自分を避けていたトレーナーと、そんな事くらいで"あんな気持ち"になっていた自分。そして、今は何故か…ホッとしている事実に少し腹を立てたエアシャカールであった。「じゃあお前…最近早く帰ってたのって…」
「うん…。お菓子作りって勝手が違うし、コーヒーも豆から淹れた事なくてね...家で練習してたんだ…」
「…オレにいつもみたいに、ウゼェくらいに話し掛けてこなかったのは…?」
「いや~…余計な事喋っちゃいそうだからさ…。よく君に『そそっかしい』って言われてるし…」
照れくさそうに頬をポリポリと掻くトレーナーを見て、エアシャカールは呆れていた。
大の大人が、ゼリー作りと豆挽きの練習の為に早く家に帰って。
必要以上の事も喋りかねないから、ずっと黙っているしかなかった。
(…くだらねェ)
そんな事の為に自分を避けていたトレーナーと、そんな事くらいで"あんな気持ち"になっていた自分。そして、今は何故か…ホッとしている事実に少し腹を立てたエアシャカールであった。 - 26二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:29:02
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- 27二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:29:17
「まぁ俺の話はいいから、とりあえず食べてみてくれ!」
トレーナーにそう言われたエアシャカールは、渋々手元に置かれていたプラスチックのスプーンを袋から取り出した。
表面にスプーンを突き立てるとほんの一瞬だけ抵抗を感じた後、スッとゼリーに切れ込みが入った。ゼリーを掻き分けて少し進んだスプーンを持ち上げ、ぷるぷると揺れるゼリーを一口、口に運んだ。瞬間、口の中に深く煎った豆の香ばしい香りと、目が覚めるようなスッキリとした苦味が広がる。数回咀嚼し、飲み込む。つるりとした喉ごしは、確かに普通のコーヒーでは味わえないものだった。
「……うめェ…」
彼女の口から飾り気の無いシンプルな、心の底からの感想が漏れ出た。
「よかった~…」
トレーナーは安堵のため息の吐きながら、にこやかな笑みを浮かべていた。 - 28二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:29:40
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- 29二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:29:40
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- 30二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:29:44
「あ、そうだ。普段ブラックが好きな人でも、ゼリーなら牛乳を入れるのもオススメだってマンハッタンカフェが…」
「うるせェ、オメーも食え。ぬるくなンぞ」
彼女が食べている様子を緊張した面持ちで見ていたと思ったら、嬉しそうに饒舌に話し始めたトレーナーに、エアシャカールはピシャリと言った。
彼女の言葉に「じゃあ俺も…」とトレーナーもゼリーを食べ始めた。
「うんっ!美味い!今まで作った中で一番だ!」
「カフェのお陰だな…」
「本当に彼女には感謝しかないよ。俺一人じゃこんなに美味しいの作れなかったし、また改めてお礼言っとかないとな…」
マンハッタンカフェへの感謝の気持ちを口にしながら食べ進めるトレーナーをよそに、エアシャカールは牛乳を手に取った。
粗く砕いておいたコーヒーゼリーに牛乳を注ぐ。すると牛乳は、ゼリーの隙間を白い軌跡を描きながら滑り落ちる。やがて溶け出したコーヒーと混ざって所々薄い茶色に変わっていった。 - 31二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:29:56
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- 32二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:30:45
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- 33二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:30:57
グラスの側面を見ると、漆黒のコーヒーゼリーと純白の牛乳、それらが混ざり合ったマイルドなカフェオレのような茶色の三色がマーブル模様を描いていた。
「綺麗なもンだな…」
普段は料理の見た目にあまり興味を持たないエアシャカールだったが、口をついて出た感想に、自分で驚いた。
そんな彼女の様子をトレーナーは、嬉しそうにニコニコと笑いながら見ていた。
「…何見てンだテメェ」
「いや、喜んでくれて良かったなぁって」
「…チッ」
トレーナーの言葉を聞いたエアシャカールは、スプーンにガリッと歯を立てて牛乳と混ざり合ったゼリーを口に運ぶ。
「…!」
苦味一辺倒だったゼリーに牛乳の仄かな甘さが加わり、深みが増す。
今度からは、ブラックコーヒーにもミルクを入れてみるか…と新たな知見を得たエアシャカールであった。 - 34二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:31:14
「なァ…」
「うん?」
特に会話も無く食べ進めていた二人だが、エアシャカールが口を開いた。
「…どうだったンだよ…カフェと、コレ作ンの…」
(何聞いてンだオレは…意味分かンねェ…)
「意味が分からない」と言ってはいるが、本当は分かっていた。トレーナーが自分以外のウマ娘と行動した時、彼はどう思っていたかを知りたい…と。それは、実に彼女らしくない行動原理だった。
「そうだな…始めは凄く緊張したよ。上手く出来るかなって。でも…」
「どうすればシャカールが喜んでくれるかな…とか…食べてくれる人の事を考えながら作っていると、とても楽しかったよ」
「だから、君が『美味しい』と言ってくれて、とても嬉しかった…ありがとう、シャカール!」
「…なンでお前が礼を言うンだよ…マジ意味分かンねェ…」 - 35二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:31:26
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- 36二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:31:32
彼は、ずっとエアシャカールの事を思いやって調理していた。
わざわざ聞くまでも無かった。コイツはそういう奴だった…と、エアシャカールはまた、コーヒーゼリーを口に運びながらそう思った。
気が付けば彼女の胸の内から、不愉快な苦味は消えていた。
「そういやお前、家で練習してたっつってたけどよ、それはどうした?」
「それがまだ結構残ってるんだよね…。毎日食べたり、たまに同期の人にお願いして、食べてもらったりしてるんだけど…」
どうやら彼の家には、まだ失敗した数多のコーヒーゼリーがあるようだ。
そこでエアシャカールは一計を案じた。
「ハァ…しゃーねェなァ。手作りっつっても、まだ期限あンだろ?オレが食ってやる」
「それは…でも、本当に美味しくないよ?食感とか味とか滅茶苦茶だし…」
「ンな不味いもン、これ以上他の奴らに食わせらンねェだろ。オレとお前で処理する」
「シャカール…分かった。じゃあ明日少し持って来るから…」
「いや...オレがお前ン家行く」 - 37二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:31:46
「えぇっ!?いや、そこまでしなくても…」
「うるせェ。とにかく、今度の休みに行くからな。分かったな?」
「わ、分かったよ…。なぁシャカール…」
「あァ?」
「ありがとう…」
「…礼なンていらねェ、仕方なくっつったろ…バァカ」
こうしてエアシャカールは、週末にトレーナーの部屋へと赴くことになった。
トレーナーに持って来てもらう方が遥かに楽にも関わらず彼女は何故、このようなロジカルで無い提案をしたのか…それは、彼女にしか分からない。
ただクールな表情とは裏腹に、彼女は尻尾を機嫌良さそうに揺らし、パタパタとソファーを叩いていたのだった。 - 38二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:31:57
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- 39二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:32:37
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- 40二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:33:15
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- 41二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:33:33
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- 42二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:34:14
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- 43二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:34:50
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- 44二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:35:52
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- 45二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:36:03
おしまいなんですけど、なんか凄い事になってますね
- 46二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:37:05
良いSSだったよ
- 47二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:37:15
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- 48二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:38:01
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- 49二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:38:11
トレシャカは健康に良い
コーヒーゼリー久々に食べたくなってきた - 50二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:38:56
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- 51二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:39:34
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- 52二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:40:01
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- 53二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:40:27
コーヒーゼリーの描写が上手すぎて久々にコーヒーゼリー食べたくなった
いいもの読ませてもらった!ありがとう! - 54二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:40:54
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- 55二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:41:34
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- 56二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:42:23
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- 57二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:42:42
上手く言えないんだけど、コーヒーに合わせてかちょくちょくシャカの感情に「苦味」って表現を使っているのいいなぁ…好き
- 58二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:43:15
- 59二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:44:50
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- 60二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:46:21
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- 61二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:47:02
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- 62二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:48:27
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- 63二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:49:16
- 64二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:49:58
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- 65二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:50:39
SSに荒らし最近沸くね
盆は過ぎたぞ - 66二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:51:06
- 67二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:52:09
スレ主は気にせんでもええからな
良いトレシャカ見せてくれてありがとう - 68二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:52:29
料理題材ってリアリティが大事だよなあと常々思う
色の表現とかしっかりと出来てて上手いし美味いね - 69二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:53:20
- 70◆pFIZNwHvsA24/08/28(水) 20:53:40
- 71二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:54:49
トリップ付きの作者を名乗るレスが消されたってことは……
- 72二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:55:16
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- 73二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:56:18
- 74二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:56:30
- 75二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:57:07
このレスは削除されています
- 76二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:58:59
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- 77二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 20:59:49
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- 78二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:00:22
- 79二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:00:41
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- 80二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:01:29
- 81二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:01:54
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- 82二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:02:43
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- 83二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:03:07
70だけど、次回作のスレ立ての時はトリップを付けた方がいいかも
単純なやつだとネットにあるツールで割られる可能性あるから、漢字ひらがなカタカナ英数字をランダムに混ぜたような複雑なやつにした方がいいよ
♯(シャープ)じゃなくて#ね
- 84二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:03:08
- 85二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:03:14
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- 86二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:04:41
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- 87二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:04:48
- 88二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:05:26
- 89二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:06:11
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- 90二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:06:30
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- 91二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:06:59
感想二つはもらえるの認めてて草
- 92二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:07:03
- 93二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:07:22
荒らし…聞いています
ルサンチマンだと - 94二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:08:10
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- 95二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:10:12
トレシャカって公式でも描写されんし
二次創作でもやべぇトレーナーと突っ込むシャカールが多いのに…トレウマしてんのいいな
もっと見たい(願望 - 96二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:10:53
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- 97二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:11:37
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- 98二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:12:06
スレ主さん管理頼む
この張り付いてるクズはスレ完走するまで粘着したことあるんで - 99二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:12:10
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- 100二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:12:32
- 101二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:12:36
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- 102二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:13:32
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- 103二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:15:59
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- 104【スレ主】◆vofsJHsOO8.A24/08/28(水) 21:25:15
テスト
- 105【スレ主】◆vofsJHsOO8.A24/08/28(水) 21:28:24
- 106二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:29:50
- 107二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:29:56
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- 108二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:31:03
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- 109二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:31:46
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- 110二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:32:08
- 111【スレ主】◆vofsJHsOO8.A24/08/28(水) 21:32:40
- 112二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:33:28
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- 113二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:33:47
- 114二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:34:27
- 115【スレ主】◆vofsJHsOO8.A24/08/28(水) 21:34:58
- 116二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:35:12
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- 117二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 21:36:01
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- 118【スレ主】◆vofsJHsOO8.A24/08/28(水) 22:03:03
感想書いて下さった方々、ありがとうございます。
悪口に関しては何とも思っていないので大丈夫です。
ただ読み辛くなってしまったのは、折角読んで下さった方達に申し訳なく思います。
最後になりますが、ありがとうございました! - 119二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 22:05:33