SS オリウマ オレはオペラオーの同期でクラスメイトな大器晩成ウマ娘

  • 1◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:50:54

     テイエムオペラオーは、今日のレースをもって引退する。

    「はっ…はっ……はぁはぁ」

     勝った、アイツに、オペラオーの奴に!とうとう勝った!

    「は!ふっふふ……おいおい、引退ついでに世紀末覇王も辞めるつもりかよ──」

     オペラオー。そう言葉を紡ごうとして、喉でつっかえた。

    (なんだよ、その顔)

     アイツは満足したような、憑き物が取れたかのような、晴れ晴れとした表情をしていた。
     俺が話しかけた事に気づいたアイツは、肩で息をしながらも近づいてきた。

  • 2◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:51:59

    「おめでとう、よくこの世紀末覇王を打ち倒したロードボイジャー」
    「…………」
    「キミが言うようにボクはもう打ち倒された、であるならば舞台を降り、そして役を放棄するべきかね。ソレが他者へと役を強いってきたボクの責務だ」
    「…………だよ」
    「ん?何かなロードボイジャー」
    「なんで辞めるんだよ!」

     オレはオペラオーの両肩を掴み、〝怒り〟をぶつけた。

    「引退なんかすんなよ!今日だって、お前は確かに負けたけど他の奴らに引けを取らない走りをしてただろうが!」
    「ソレは世紀末覇王最後の集大成だからね!さながら──」
    「世紀末覇王も辞めるってんなら今くらい素の言葉で話せよ!〝テイエムオペラオーの言葉〟をオレにくれよ!」
    「ッ!………そうだね、キミの言う通りだ」
    「ッ!くそっ」

     オレの言葉を〝受け取った〟オペラオーに、怒りは更に燃え上がった。

  • 3◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:52:22

    「前々からトレーナーくんと話していたんだ、そろそろ舞台から去る日が来ると」
    「なんでだよ」
    「ボクは他者に対し世紀末覇王として振る舞い、役を求め、時には舞台から降ろさせる事も辞さない傍若無人さを見せつけた。ならば、〝世紀末覇王にそぐわなくなってしまったボク〟も舞台を去るのは当然さ」
    「お前はまだまだ強いじゃねぇか!今日だってお前は2着だった!お前の覇道は終わってねぇ!」
    「さっきも言ったように、このレースは最後の節目という事で全力を尽くした。身体中の絞れる力を一滴残らずね、そして……負けた」
    「…………あぁ」
    「それが何よりの証明さ、ボクはもう全盛をとっくに退いた。トレーナーくんの手腕とボクのワガママにより騙し続けてきた体も、とうとう根をあげたんだ」
    「そんなの、そんなのなんか……」

  • 4◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:53:06

     苛立ちのせいで、オレは言葉が上手く作れなかった、そんなオレを笑って嬉しそうに話すコイツを見て、もっとムカついてきた。

    「ふふっそんな風にボクの引退を惜しんでくれるなんて、ボクは良き好敵手に恵まれたようだ」
    「うるせぇ!何が好敵手だ!オレが今まで何度負けたと思ってやがる!」
    「今日以外でキミに先着を許した記憶は無いね」
    「そうだよこんちくしょう!っじゃなくてだな!」
    「寧ろキミはなんでそこまでボクの引退につっかかるんだい?ボクだけが本音トークなんてむず痒いじゃないか、キミも話したまえ」
    「え?」

     オレが、コイツの引退に拘る理由……

  • 5◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:53:25

    「オレは、お前に今日まで勝ったことが無かった」
    「そうだね」
    「なんならメイショウドトウ相手にもギリギリ勝ちきれない位の実力だった」
    「それでもキミの強さは本物だった」
    「お前たちの強さに憧れて、オレの成長の遅さに絶望した」
    「ソレばかり天運次第だ、ボクも運が良かった所なんて沢山あるし悪かった所も沢山ある」
    「お前に負け続けて、悔しいなんて言葉じゃ足らない位の恨みつらみが沢山ある」
    「覇道を歩む者の宿命だね」
    「けど」

  • 6◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:53:48

     そうだ、コイツに文句を言うのはそんなややこしい理由じゃない。答えはもっと単純すぎるんだ。

  • 7◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:54:09

    「オレは、お前と走るのが……楽しかった」
    「?!」

     急に泣き始めたロードボイジャーに面食らうオペラオーだったが、ロードボイジャーはそのまま話しを続けた。

    「お前と走るのが!楽しかったんだよ!オレは!レース場でも!トレセンでも!合宿所だったとしても!お前と走る事そのものが、オレは楽しくて大好きだったんだよ!」
    「そう、だったんだね……」
    「あぁ!それなのに急に引退だの、辞めるだの言いやがって……もっと走ってくれよ、もっと一緒に居てくれよ……」
    「ごめん……」

     オペラオーは泣きじゃくるオレを、優しく抱いてあやす様に頭を撫でた。

  • 8◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:54:20

     少しして、落ち着きを取り戻したオレは物凄い羞恥心に襲われた。

    「悪かったな、その……変な所見せて」
    「いや、友達の新たな一面を見れてボクは良かったと思うよ」
    「なめてんのか?!」
    「いや、本音さ。あんなにもボクに対して明るい感情を抱いてるとは思って無かったからね」
    「悪ぃかよ」
    「悪くは無いさ、ただ……むず痒いなと思っただけさ」

     そう笑うオペラオーは、ただの子供で、どこにでもあるような笑顔で、きっとオペラオーの素だと思う。

    (あぁ、本当に終わったんだな……)

    「今度、友人を集めてカフェテリアでパーティでもしようかね」
    「おや?それは一体どんなパーティかな?」
    「決まってんだろうが、題目は」

     ──さようなら世紀末覇王、これからもよろしくテイエムオペラオー

  • 9◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:54:30

    おわり

  • 10◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:57:43
  • 11◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:58:22
  • 12◆iGjCJthFblL724/08/29(木) 02:59:13

    昨日なんか唐突にオペラオー引退する時のオリウマ娘物書きたいなって思って書いてみた

  • 13二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 07:00:08

  • 14二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 18:12:22

  • 15二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 23:59:21

  • 16二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 00:03:35

    オペラオー王政下のモブって絶望してるのが大半みたいな妄想多いからなんだかんだでオペと走るの楽しかったって子が出てきたの新鮮だった
    良い読後感のSSをありがとう

  • 17◆iGjCJthFblL724/08/30(金) 00:08:41

    >>16

    感想ありがとうございます!本当に急に、仕事中『引退すんなら世紀末覇王なんて辞めちまえ!お前の言葉で話せよわっかんねぇんだよ!』ってのと『お前と走るのが、楽しかったんだよ……辞めないでくれよ、寂しいよ』ってシチュが湧いてきて思いのまま書きましたね


    …………どことなくロードボイジャーがジャンポケ味が薄ら感じて我ながら少し笑ってしまうんすよねww

  • 18二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 07:01:27

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 18:56:00

    保守

  • 20二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 19:10:50

    こんな素晴らしいSSを見逃していたとは…ありがとうございます

  • 21◆iGjCJthFblL724/08/30(金) 19:23:28

    >>20

    ありがとうございます!とっても嬉しいです!

  • 22二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 03:36:55

  • 23二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 15:17:53

  • 24◆iGjCJthFblL724/08/31(土) 18:10:38
  • 25二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 18:14:17

    王者に負けるたびに絶望しながらも必死に己を奮い立たせ
    振り返ってみれば己と戦い敵と戦い挑み続けたその道が楽しかったと誇れるものになる
    映画で示されたオペラオーが支配した古馬王道のあり方は煉獄のようでありヴァルハラのようでもある

    そんな世界観のSSだった

  • 26◆iGjCJthFblL724/08/31(土) 18:19:52

    >>25

    感想ありがとうございます!

    そんなにカッコよく見て頂けて、感激です!

  • 27二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 04:50:51

オススメ

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