[🎲]海世ユウのアーカイブ part3

  • 1◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 22:47:18

    オリキャラ海世ユウの3スレ目です。


    ステータス


    戦闘dice1d100=96


    神秘dice1d100=41


    常識dice1d100=48


    学力dice1d100=90


    倫理dice1d100=21


    友好dice1d100=34



    戦闘ステータス(戦闘力ボーナスで最低45)


    攻撃45+dice1d55=3


    防御45+dice1d55=7


    素早さ45+dice1d55=37


    HP45+dice1d55=48


    技能45+dice1d55=52

  • 2◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 22:48:03

    固有武器名:オラシオン

    (固有武器有のステータス)

    元の攻撃力+10+dice1d42=30



    あらすじ。


    中学校で悲惨ないじめを受け、人間不信になっていた所から多くの出会いを経て少しずつ変わってきた海世ユウ。過去の理不尽も、未来に抱いた願いも受け入れて、踏み出した一歩と共に彼女のブルーアーカイブを紡いでいきます。


    前スレ

    [🎲]海世ユウのアーカイブ|あにまん掲示板オリキャラ海世ユウの2スレ目です。ステータス戦闘dice1d100=96 神秘dice1d100=41 常識dice1d100=48 学力dice1d100=90倫理dice1d100=21 友好di…bbs.animanch.com
  • 3◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 22:52:52

    ミヤコからの友好度 dice1d100=37 (37)

    ネルからの友好度 dice1d100=55 (55)

    ホシノからの友好度 dice1d100=85 (85)

    ハルカからの友好度 dice1d100=85 (85)

    ノアからの友好度 dice1d100=48 (48)

    ワカモからの友好度 dice1d100=81 (81)

    カスミからの友好度 dice1d100=71 (71)

    ユウカからの友好度 dice1d100=70 (70)

    アリスからの友好度 dice1d100=50 (50)

    ナギサからの友好度 dice1d100=44 (44)

    セイアからの友好度 dice1d100=95 (95)

    ミカからの友好度 dice1d100=95 (95)

    アルからの友好度 dice1d100=99 (99)

    アコからの友好度 dice1d100=96 (96)

    ハスミからの友好度 dice1d80=41 (41) +20

    サキからの友好度 dice1d80=61 (61) +20

    イチカからの友好度 dice1d80=39 (39) +20

    マシロからの友好度 dice1d80=35 (35) +20

    モエからの友好度 dice1d80=80 (80) +20

    ミユからの友好度 dice1d80=58 (58) +20

    サクラコからの友好度 dice1d100=7 (7)

  • 4二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 22:53:45

    このレスは削除されています

  • 5二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 22:53:46

    建て乙です!
    いろんな人と交流していい方向に変わっていってるね!

  • 6◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 22:58:05

    カズサからの友好度 dice1d100=47 (47)

    ナツからの友好度 dice1d100=89 (89)

    アイリからの友好度 dice1d100=69 (69)

    ヨシミからの友好度 dice1d100=69 (69)

    アズサからの友好度 dice1d100=37 (37)

    ヒフミからの友好度 dice1d100=46 (46)

    コハルからの友好度 dice1d100=1 (1)

    ハナコからの友好度 dice1d100=51 (51)


    各種ステータスや友好度は物語の進行に連れて少しずつ変化する場合があります。特に他人への友好度は初期のユウと比べてかなり丸くなっています。


    プロフィール

    海世ユウ

    年齢・15歳

    所属・セレスティア連合学園

    学年・1年生

    帰宅部


    外見

    大きな翼が特徴的なショートヘアの青髪の女の子。身長は148㎝とかなり小柄です。金色の瞳をしています。


    ユウの事務作業適正(学力補正で最低値45)

    整理全般 45+dice1d55=21 (21)

    データ入力・作成 45+dice1d55=10 (10)

    筆記作業 45+dice1d55=53 (53)

    連絡全般 45+dice1d55=31 (31)

    会計 45+dice1d55=38 (38)

  • 7二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 22:59:33

    次の交流場所はどこにしようか…
    ゲヘナ…は羽あるからキツイかな…?
    無難なのだと百鬼夜行とかかな

  • 8二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 23:06:15

    立て乙

  • 9◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 23:10:24

    アリスクからの友好度

    サオリ dice1d100=55 (55)

    アツコ dice1d100=54 (54)

    ヒヨリ dice1d100=67 (67)

    ミサキ dice1d100=35 (35)


    また、ストーリーの展開上ミレニアム生徒複数とマリーからの友好度はダイスしておりませんが、いずれもユウに対してかなり親しくしてくれる関係になっています。


    現在ユウが心を開ける相手は

    先生(自分を救おうと本気で向き合ってくれる大人)

    マリー(人を信じることをやめてから出来た初めての友達)

    ミレニアム生徒多数(紆余曲折の末にミレニアム見学で沢山の関係を持った)

  • 10二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 23:21:30

    うめめ

  • 11◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 23:23:29

    前スレで起こった出来事。

    ・ユウちゃん呼び爆誕

    ・ネルと大喧嘩

    ・補習部との初対面

    ・マリーと遊園地

    ・バイトと放課後スイーツ部との初対面

    ・ユウのバイト練習(メイド)とネルと大喧嘩

    ・ユウのバイト練習(メイド)とホシノとの初対面

    ・ミカからの翼のお手入れ

    ・ミレニアム見学


    ユウのホラー耐性 dice1d100=6 (6)


    SR適正(能力の補正で+20) dice1d100=1 (1) +20



    ユウの技術知識(50以上で平均以上の知識)


    機械知識 dice1d100=6 (6)

    プログラミング知識 dice1d100=32 (32)

    電気工学知識 dice1d100=79 (79)

    古代技術知識 dice1d100=77 (77)

    生物知識 dice1d100=75 (75)


    記載漏れ

    銃種:ショットガン

  • 12◆TJ9qoWuqvA24/08/31(土) 23:30:26

    前スレでは沢山の保守やコメントありがとうございました!正直3スレ続くと思ってなかったので驚いてます………!広げた風呂敷がまだ畳めてないので、もう少し続くかな?


    >>5

    最初のころと比べたら凄く変わりましたね!あの棘だらけだったのが嘘のように丸くなりました………w


    >>7

    悩みますね~。前スレはミレニアム見学が長引き過ぎたので、暫くは日常でもいいのかなぁとは思っていますね。

  • 13◆TJ9qoWuqvA24/09/01(日) 01:10:58

    "ユウ、そこの書類頼める?"
    「ん、りょーかい」

     ミレニアム見学から数日、今日もシャーレの当番だった。あの日から、私の日常はほんの少しだけ変わった。ミレニアムでの例の事件で、暴走したクレーンから振り落とされた生徒を救った他校の生徒。………まぁ、私の事だけど。ご丁寧に動画付きで拡散されてしまって、色んな意味で注目されてしまうことになった。
     そのせいでうちの学校でも色々と噂されてしまうし、何となく街を歩いてるだけでも視線を感じる時がある。一々気にしてはいないけど。

    "なんというか………"
    「ん、なに?」
    "表情が良く変わるようになったなぁって"
    「………そう?………そうかもね」

     自覚は無かったけど、言われたらそうかもしれないと自分でも思う。先生と出会う前に見ていた空が無色だとしたら、今は澄んだ青だと言うくらいには私の世界は変わった。

    "ミレニアムでの体験、ユウにとってはどうだったかな?"
    「んー………凄く暖かくて、色んな色があって………私も、そんな色を持ってみたいと思った、かな」
    "ふふ、そっか。………うん。ユウならきっと持てるよ。自分がなりたい、好きな色に"
    「うん。頑張ってみる」

     あんな味気のない空なんて、前までは飛び立とうなんて思わなかったのに。
     今は、この翼で青い空をどこまでも飛んでみたい。………なんて、私らしくもない考えが浮かんでしまう。でも、きっと嘘なんかじゃない。
     『海』は、青空を反射して青く輝くと聞いたことがある。なら、きっと私だって。いつかそんな風に輝けると思う。

  • 14二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 01:17:44

    いつかマリーとかの友達と水着になって海で泳いだりはしゃいだりして欲しい
    あっ…でも傷跡が…

  • 15◆TJ9qoWuqvA24/09/01(日) 01:22:34

    >>14

    実は別衣装の要望があった時に、季節が季節なので海で水着は一番に思いついたんですよね。思いついたんですが………傷跡が残ってるので、長考の末に没にしました………w

    傷跡がある設定自体は後悔してませんが、こういう時に大変だなぁとは思いましたね

  • 16二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 08:19:51

    じゃあ何だろ
    浴衣とか?

  • 17◆TJ9qoWuqvA24/09/01(日) 12:48:17

    >>16

    百鬼夜行夏祭りとかやってそこで浴衣着させても良いかもですね~

  • 18◆TJ9qoWuqvA24/09/01(日) 13:49:00

    本日ユウと会うのは?

    1.カズサ

    2.ワカモ

    3.トキ

    4.補習部

    dice1d4=3 (3)

  • 19二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 15:37:23

    >>18

    ぴーすぴーす

  • 20◆TJ9qoWuqvA24/09/01(日) 17:50:19

    「………こういうのって、どう選ぶんだろ」

     ミレニアム自治区のショッピングモール。ユウカに連絡して、あの日用意してもらった寝衣が売ってあるか聞いたらここに売ってると聞いたから買いに来た。まぁ、それに関してはもう終わったんだけど。
     ついでに翼のケア用品を買ってみようかなと見て回っていたけど。こう言うのを悩んで選ぶなんて経験が無いから、全く分からない。昔に一番安いやつで選んで、それ以来ずっと使ってるだけだったし。

    「んー………」
    「ユウさん」
    「え?あ、あぁ、トキ?」
    「はい。ピース、ピース」
    「ピースピース」

     ………あれ、ピースって挨拶だっけ。まぁいいや。すると、トキは私の隣に来てさっきまで私が見ていたコーナーの商品に視線を流し始める。

    「………なるほど、翼のケア用品ですか」
    「うん。………今まで使っていたの、安いやつだったからさ。しっかり選んでみようかなって」
    「………ふむ。何かお力添え出来ればと思ったのですが、翼の事は私には分かりません」

     そう言いながらも、視線を移す目は真剣に見える。そして、私の翼に視線を移す。付け根から先端までに視線を流して、「ふむ」と小さく息を付く。

    「高い物が似合う、という訳でもないでしょうからね」
    「まぁ、多分ね。………調べた感じ、気を遣う人は羽質とか色々調べてから選んだりするらしいけど………」
    「………何か問題が?」
    「そういうのを見てくれる人、基本は自営業なの。だから、『不良生徒』は入店お断りされるの」

     公的な施設なら、まぁよっぽどじゃない限りは客を拒めないだろうけど。残念ながら個人となればそうもいかない。一応、電話で4つくらい近場でそういう所に予約を取ろうとして見たけど、私の名前を聞くや否や断られてしまった。
     それを聞いたトキは、暫く無表情のまま私の顔を見ていた。

    「………そうですか」

  • 21二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:18:52

    不良か〜

  • 22二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:29:51

    これからユウの世論も変わっていくんだろうなぁ。セレスティアでは変わらなくてもミレニアムやトリニティから変わっていくだろうね。個人的には友好度1のサクラコ様との対面を期待したいところ。

  • 23◆TJ9qoWuqvA24/09/01(日) 21:49:05

     まぁ、どれだけ私が変わったって世間はそういうわけにもいかない。巡り合わせが悪かった、とマリーは言った。私だってそれは分かっているけれど、それでもこうまでその事実を突きつけられると、少しくらい痛む心はある。

    「………セミナーの方々に話を通してみますか?」
    「いや、大丈夫。そこまで世話掛けたくないし」
    「しかし………」

     何とも言えない空気が流れてしまう。別に気まずくしたかった訳じゃなかったんだけどな。取り敢えず、ケア用品はまた今度でいいや。彼女も買い物の途中だったみたいだし、ここで――――

    「お客様。少しよろしいでしょうか?」
    「………ん?」
    「あなたは………こちらの店員でしょうか?」
    「はい。すみません。盗み聞きをするつもりは無かったのですが、聞こえてしまいまして………もしお悩みなら、一助になれるかと思ってお声掛けさせていただきました」
    「………と言うと」
    「私個人の話にはなってしまいますが、先ほど話題に上がっていた羽質などを検査する資格を持っていますので、もしお時間を頂けるのであれば、と」

     店員の言葉に、私は小さく「えっ」と声を零す。そんなピンポイントで?………いや、こういう店で働いているのならそこまで不自然じゃないのかな。でも、そこまでする義理は無いだろうし………

    「………いいの?」
    「勿論です。………件の事故であなたが救ってくれたミレニアムの生徒さん、当店に良く通ってくださっていたんです。そして数日前、彼女からあなたの話を聞きまして。お得意様の恩人ですから、これくらいはさせていただければと思います」

     ………そっか。あの子の。すると、その話を聞いていたトキが私を見て小さく頷いた。

    「………じゃあ、お願いします」
    「はい、承りました。では、あちらにおかけください」

     そうして私達は奥の方へ案内され………なんでしれっとトキは付いて来てるんだろう。

    「ねぇ、自分の買い物はしなくていいの?」
    「私は既に終わっておりますので。今は………そうですね。友人の買い物に付き合っていると言うことにさせていただければ」
    「………そっか」

  • 24◆TJ9qoWuqvA24/09/01(日) 22:33:35

     何を考えてるのか分かんないなぁと思ってたけど、ちゃんと友達だと思ってくれてるんだ。はっきり言葉にされた事で、ちょっとだけ嬉しくなって、つい口数が減ってしまった。そんな私達を微笑みを浮かべながら案内する店員に連れられた先にはカーテンで仕切られた幾つかの個室があって、その中には鏡と椅子が用意されていた。

    「ここでご購入された化粧品類をすぐに試せるコーナーなんです。こんな風に使うのは初めてですが………少々お待ちください。必要な道具をとってきますので」

     店員はそう言って個室を出て行く。それを見送って、個室の隅に立っているトキが声を掛けてくる。

    「良かったですね」
    「うん………こういう所で、あの時の事が繋がって来るとは思わなかったけど」
    「きっと、これからもっと増えるでしょう」
    「………うん」

     トキが迷うことなく告げた言葉に、私は小さく頷く。そうであってほしいな、と期待はあるけれど、やっぱりそう簡単な訳じゃないって言う現実的な問題を見てしまう理性が過度な期待をするなと訴えかけてくる。期待すればするほど、期待を外れた時が余計に悲しくなってしまうから。
     そんな複雑な心境を抱えていると、店員が幾つかの道具を持って戻って来る。そして、私に声を掛けて来た。

    「では、翼に触れますね」
    「ん」

     店員の言葉に短く頷いて、店員がそっと私の翼に触れた。………やっぱりちょっとくすぐったい。普段銃弾を受けるからか、優しく撫でるような触れ方はそれとは全く違う感覚がする。思わずあの時と同じように少しだけ翼を動かしてしまう。

    「すみません。くすぐったかったですか?」
    「………大丈夫」

     ミカの時とは違って今は手だし、触れ方もあの時以上に繊細なせいで正直に言えば大丈夫ではないけれど、折角厚意でやってくれると言うんだから文句は言えない。ただ、なんというか………ぞわ~っとするこの感覚に身動きを取らないでいると言うのは凄くキツイ。そんな私を見たトキが、声を掛けて来た。

    「ユウさん。身体が微振動していますが、大丈夫ですか」
    「大、丈夫………だから」

     大丈夫じゃないんだってば。店員は何かの道具を手に取って、それを使いながら羽を一枚一枚調べている。検査してくれるのは凄くありがたい。ありがたいけど………少しでもいいから、早めに終わってほしい。

  • 25二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 00:41:28

    もし羽根が鋭かったら羽根を投げつける攻撃とかも出来るのかなって思いました…でもダイスで決めたらまた悲惨な結果になりそう

  • 26◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 01:04:02

    >>25

    普段から鋭いと、翼に触れた人が怪我しちゃいそうですね………それを決めるとしたら、体質的な物で羽が硬化するなどになると思います。

    ダイスは………どうしましょうか。ダイスで決めてもいいですが、設定的には面白いのでそのまま採用してもいいかな~とは思っています。仮にもダイススレ(もう既にダイス省略をかなりやってますが)なので、こういうのをダイス無しで決めて良いのか分かんないんですよね………

  • 27二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 01:51:26

    ワックスとかで固めるのはどうでしょうか?

  • 28◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 01:54:38

    >>27

    それはちょっと羽が痛んじゃいそうですね………多分ミカに怒られちゃいそうです………w

    あと、羽を武器に使える程硬くさせるワックスがあったら、必然的にユウ以外も使ってないと………っていう話になっちゃうので………

  • 29◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 02:51:09

     10分前後くらいの後、店員さんは羽を一枚持って個室を出て行った。最後のあたりはもう体の跳ねと声が我慢できなくなったせいでとんでもなく気まずい時間が流れていたけど、ようやく一息つける。

    「………ユウさん。お疲れ様です」
    「ん………」
    「………その、そんなに敏感なのですか?ユウさんの翼は」
    「その言い方はやめて………感覚自体はそれなりに良いと思う。翼で風の流れを捉えたりするし」
    「………なるほど」

     見苦しい所を見られて、少し恥ずかしくて鏡越しに私を見るトキに視線を合わせられなかった。あんな声初めて出たかもしれない。見られたのがそこまで口数が多くはなさそうなトキで良かった。ネルだったら余裕で口封じに掛かってた。
     そんな気まずい思いしてから十数分が経った頃、店員が何枚かの紙を持って戻ってきた。

    「検査が終わりました。調べたところ、ユウさんの羽は普通より少し硬めですが、とても滑らかで艶やかな羽ですね。今まで手入れは適当だったと話していましたが、正直そうとは思えない程に毛並みも整っています。見た時から分かっていましたが、とても美人さんな羽ですよ」
    「そ、そう………」

     べた褒め、という言葉が似合う店員の言葉に思わず少しだけ赤面する。トキと店員がその様子を見て小さく笑みを浮かべた後、持っていた紙をクリップして渡してくれる。軽く目を通すと、さっきの言葉よりも詳しく私の羽について書かれた文章や、全体的な傾向、更には今の羽の状態まで書かれていた。

    「はい。そうですね………正直、手入れが適当でここまで綺麗な羽となると、強すぎるものは寧ろあまり良くないかもしれません。なので、純粋に毛並みと色映えを良く見せる商品が良いと思いますね」
    「そうなんだ………えっと、そういうのってこの店にある?」
    「ございますよ。お持ち致しましょうか?」
    「………お願いします」

     店員は「かしこまりました」と言って個室を再び出て行く。すると、トキは堂々と私の持っていた書類を覗き始めた。

    「ちょ………」
    「ふむ。とても褒められているように見えます。やはりユウさんの翼はとてもお綺麗なのですね」
    「や、やめてってば………!」

  • 30◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 02:57:57

     褒められ慣れていない私は、トキの言葉にとうとう完全に赤面してしまった。………けれど、やな感じではない。この翼は、私の誇りだから。嬉しいのは間違いない。
     そして、トキが何故か満足げな表情を浮かべてまた部屋の隅に戻った時、店員さんが戻って来た。

    「こちらがおススメですね。きっとユウさんの羽を更に輝かせてくれると思いますよ」
    「ん。じゃあそれにする。あと、他にもブラシとか櫛とか、ケア用品を一式で欲しいんだけど………」
    「えぇ、ございますよ。では、そちらもお勧めをお持ち致しますね」

     そうして店員さんが持ってきてくれた羽用オイルとクリームを買って、それ以外にも色々とお勧めのケア用品を買ってその日の買い物は終わった。実は最初少しだけ警戒していた値段だけど、どれも想定したよりは高くなかったし、セールスでぼったくられたとかそういうのではないと理解できた。………あそこは定期的に通おうかな。

  • 31二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 07:14:54

    照れてるユウちゃんはこれから見る機会が増えそうだ

  • 32二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 07:21:06

    良かったね

  • 33二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 09:13:23

    >>26

    了解ですスレ主さんの判断で良いと思います!


    良かったねユウちゃん…

  • 34◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 12:54:42

    >>21

    >>22

    少しずつユウに対する噂は変わっていきますが、それでも『キヴォトスの悪魔』という名前は早々消えることはないでしょうね……今のところ一番ユウに対する見方が大きく変わってるのはミレニアムだと思いますね~。トリニティは作戦関係者からの評価はもらってるでしょうけど……うん。



    >>32

    >>33

    少しだけ彼女の周りもいい方に変わってきているということですね~。



    >>31

    ユウもだいぶ感情豊かになってきましたからね。実はどこまで感情を表現させるか悩むところでもあります……

  • 35◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 15:10:55

    【シャーレ執務室】
     私がいつも通り当番で仕事をしていると、先生が声をかけてきた。

    "ユウ、翼のお手入れ始めた?"
    「え、あ、うん……分かるんだ?」
    "今日は一段と綺麗だなって思って"
    「っ、そういうこと簡単に言うなっての……」

     パソコンの画面に顔を隠す。最近自分でも感情が顔に出やすくなってるのを自覚してるから、あんまり見られたくない。ばーか。

    「……ミレニアムの店で親切にしてもらったから、そこで買ったの使ってみたの」
    "……そっか。よかったね"
    「ん」

     諦めなかったら、きっといつか私は堂々とみんなの前に立てるんじゃないかって希望が見えた気がする。昨日の出来事が、いつか来る未来の一部だったらいいなって思う。

    "ミカとおんなじの?"
    「ううん。店員さんのお勧めで別のやつ。羽を見てもらって、私の翼にはこれが合うだろうって」
    "ふふ、すごくいい店員さんだったんだね"
    「うん」

     そういった先生の言葉はすごく嬉しそうで。そんな風に思ってくれるのが嬉しくて、私も小さく笑みを浮かべていたのだった。

  • 36◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 17:39:23

     穏やかな時間が流れるなかで、仕事を進めていく。先生には絶対言わないけど、私はこの時間が好きだった。たまに変な事をする所はともかく、私が一番信頼してる人だし、出来る限り先生に恩返しをしたいと思ってる。
     まぁ、そうは言っても私は所詮ただの一生徒に過ぎないし、不器用な私に出来ることなんて限られてるけどさ。何かもっと私に出来ることがあれば良いんだけど。そんなことを考えていたとき、不意に先生の携帯が鳴る。

    "ん?アズサからだ………ごめん。ちょっと出るね"
    「ん」

     アズサ…………あぁ、あの日私と喧嘩した子か。ちょっと気まずいな。先生は一言断りを入れてスマホを取る。そして―――

    『先生!!学園で爆発事故が起こった!現場は混乱していて収集が付かない!すぐに来れる!?』
    "…………え?"

     先生の時が止まったかのような一瞬の沈黙。私も無言で顔を上げ、先生の表情を見つめる。そして、先生はすぐに血相を変えて口を開いた。

    "っ!?アズサ、君に怪我は!?"
    『私は巻き込まれていないから大丈夫だ!けど、爆発のせいで火事が起こってて、まだ被害人数も何も分かってない!』
    "すぐに行く!"

     先生は慌てて立ち上がって準備を始める。………トリニティで爆発事故?そんなミレニアムじゃあるまいし。それに、爆発で火事が起こったって言うのは少し不自然な気もする。あり得ないわけじゃないけど、爆発は基本的に周囲を吹き飛ばしてしまうし、熱も一瞬だから引火するなんて滅多に無いはず。………特定のケースを除けば。

    "ユウ!私は行ってくる!留守は頼んだよ!"
    「ん」

     先生を見送った私は、スマホを取り出してSNSを開く。………あぁ、やっぱりもう出てんだ。撮ってる暇あんならさっさと逃げるか対処するかすれば良いのに。

    「………トリニティの武器庫で爆発、ね」

     よりによって武器庫………火薬やらが大量にあったのなら、火事になっても頷ける。ただ、そんな事が分からない奴なんてこのキヴォトスにはいないし、トリニティともなれば厳重な管理がされてるはず。………そして、ミレニアムで不自然な事故が起こってから一週間も経っていないこのタイミング。


    「………まだ、終わってないってこと?」

  • 37◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 20:42:01

     その日の夕方。先生からモモトークが来て、"今日はシャーレに戻れそうにないから先に帰っていて"と言われ、私は帰路に着いていた。
     あの作戦に関わった両校で事故。………不自然にも程があるし、先日のミレニアムの件も大々的に報道されている。そして今回の件と立て続けに起こった出来事に、SNSでは既に何らかの第三者が関わっているんじゃないかと噂が立っていた。

    「………」

     もし私が今回の件をやるとしたら、もっとタイミングや規模は考えて裏で手引きする存在を悟らせないようにする。
     もしこんな真似をするとしたら………警告?それとも………



    「――――誰」
    「あら、気付かれてしまいましたか。流石はユウさんですね」
    「………私に何の用。『災厄の狐』」

     私の声に、仮面を被った少女は姿を表す。口では予想外を演じているけど、彼女は私が10分ほど前から尾行してるのを気付いていると知りながら、ここまで付けてきていた。
     故に、この人通りの少ない通りでやっと声が届くほどに接近してきたのだろうから。

    「今回の件………なわけないか」
    「………何故違うと断言されるのでしょう?」
    「あなたは無意味なリスクを冒す程バカじゃないから。いくら『災厄の狐』と言ってもあの両校から追われるのは望まないだろうし、何よりそれを知った先生はきっとあなたを良く思わないって分かるでしょ」
    「…………ふふふ」

     ワカモは仮面越しに満足げな笑みを溢す。その反応が示す意味は分かるけれど、ならば何故?喧嘩のため、と言う風にも見えないけど。

  • 38◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 22:13:49

    「今日は忠告をしに来たのです」
    「………は?」

     『災厄の狐』から出た言葉は、あまりにも意外な物だった。まさか、災厄を告げる狐にでもなるつもりなんだろうか。………なんて面白くもない冗談が頭を過ぎる。ただ、ワカモは私の困惑の言葉を意に介さずに話し続けた。

    「今回の連続事故………あなたなら分かっていると思いますが、裏で手引きしている者がいます」
    「………で?そんなの分かってるけど、まさかそれだけ言いに来たって訳じゃないでしょ」
    「勿論………ですが、答えを急かすのは感心致しませんよ?ふふふ………」

     仮面の奥の瞳が、私をじっと見つめる。………やっぱり、こいつの目は嫌いだ。思わず強く睨み返しても、やっぱり彼女は全く動じず言葉を続ける。

    「実は、最近ブラックマーケットに最近物騒な商品が並ぶようになったのですよ。………いえ、なっていたと言うべきですね」
    「………お前、まさか」
    「ふふふ。答えを急いてはいけないと言ったでしょう?私はそんなものに手を出していません。………ですが、えぇ。私はあなたもご存じの身ですから、そういった物も調べなくてはいけません………そこで、ちょっとした噂を聞きまして」
    「………」



    「三大校のいずれかの核となる戦力を破滅させ、代わりとなる力を売りつける………この意味がお分かりでしょうか」
    「………はぁ」

     汚い大人が考えそうなことだ。人命を利益のための道具としか考えない、先生とは対極にいる大人。………前にこいつを一番嫌いな奴だと言ったけど。撤回する事になりそう。

    「――――とは言っても、もう工場もなければ流通してしまっていた商品も先生のご活躍でルートを辿って全て回収されているのですが。ふふふ………♡あぁ、先生。なんと素晴らしい手腕なのでしょう………このワカモ、心から………♡」
    「はぁ………」

     さっきとは違うため息。結局何が言いたいのかを言う前に変なモードに入んないでほしいんだけど。そんな思いが伝わったのか、何故か仮面越しでも恍惚とした表情を浮かべていたと分かるワカモは再び私に視線を向ける。

  • 39◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 22:54:17

    「彼らにしてみれば、工場で最高戦力を一人でも落とせていれば………そう考えていた事でしょう。………そして、それは阻まれてしまった。他でもない、あなたに」
    「………なんでそこまで知ってんの」
    「あら、私が悪いお友達しかいないと思ったら大間違いですよ?ふふふ………話を戻しましょう。結局のところ、奴らにとってあなたは大事な計画を妨害した………仇敵です。つまり………」
    「………はぁ?私に復讐をするつもりってこと?じゃあなんでミレニアムとトリニティ――――――――人の目をそっちに向けさせるためってわけ?」
    「どうでしょう。私は奴らを知っている訳ではないので、断言は致しません」

     今の私の近くには、そう言った悪巧みに対しては最も厄介な存在………『先生』がいる。つまり、どうにかして先生と私を切り離さないといけない。先生は暫く例の事故の事を調べるために、私に構ってる余裕はないだろう。だから………

    「………ちっ」
    「忠告は以上です。ふふふ、怖がらせてしまったでしょうか」

     からかうようなワカモの言葉。多分、これは喧嘩を売ってんだろうな。ただ、そんな安い挑発に乗ってやる理由は無いし。そもそもな話、だから何だって言うんだろうか。

    「ま、私を狙うって言うんならそれでもいいよ」
    「………」
    「もう、昔みたいな強さを勘違いしてた子供じゃない。降りかかる火の粉は払うし、私に出来ない事は誰かが一緒に背負ってくれる。………だから、あなたの心配なんていらない」

     私はもう子供ではないのだから。こいつにそんな心配をされなくても、一人で膝を抱えて耐えるしかなかったあの時とは違うんだ。そう、だから………

    「――――違います」
    「は?」
    「その目は………違います。違う。そのような………あなたはそのような目をする方ではありませんでした………」

     急に様子がおかしく………いや、元からおかしいか。更におかしくなったワカモ。目が違うって………あぁ、そういう事?そりゃそうでしょ。言ったでしょ、もう子供じゃないんだって。まぁ、前の私が気に入ってたんなら………





    「その目………あぁ!このワカモ、もう昂ぶりが抑えられません………!!!」

  • 40◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 23:30:41

     ワカモが一歩こちらに踏み出す。私はそれに反するように思わず一歩後ろに下がってしまった。何を言っているのか分からない。どういうことなの?こいつは何なの?………何を見てるの?

    「な、何言って………」
    「その目………狂気も憎しみも怒りも絶望も恐怖も………優しさも、希望も喜びも赦しも受容も………全てを受け入れ、呑み込んだその瞳………前のようなただの歪みではありません………あなたの強さも弱さも自らの糧としたその瞳………」
    「は………?い、意味わかんないこと言わないで!私は、もう憎しみも怒りなんて――――」
    「いいえ、消えません」

     私の言葉を遮って、ワカモは告げた。その言葉は今までで一番力強く、私は言葉が喉で止まった。

    「人は、産まれ持った性があります。それは受け入れ、向き合うことは出来ても消えることはありません」
    「私を何だと思って………っ!?」

     ワカモの仮面の奥。そこから覗く瞳は………あの時とは比にならない炎が燃えていた。

    「本当は、分かっているでしょう。海世ユウさん。過去のあなたは………既に死んだのです」
    「――――」
    「『化け物』は打倒され、代わりに『悪魔』が生まれた。ですが、少しずつあなたは以前の姿を取り戻しているようにも見えます。しかし、死んだものは決して蘇ることは無いのです。あなたは………」
    「やめろっっ!!!!」

     その時、私は翼を大きく広げて羽を逆立てる。いつもの私の威圧行動。けど、今のそれは違った。逆立った羽が、鋭いものを擦るような独特な音を奏でていく。
     けれど、それを見て一番表情を変えたのは私………違う。こんな翼は、私のじゃない。こんな翼、私は………そして、それを見たワカモが視線をそれに向けた。

    「それが………『化け物』の姿なのですね」
    「っ!」

     私はもうどうしようもなくなって走る。けれど、ワカモはそんな私を追って来ることは無かった。痛い程高鳴る鼓動が、私の頭の回転を鈍らせる。頭が痛い。………違う、もう。私は、あの時とは違う。違うから。

  • 41◆TJ9qoWuqvA24/09/02(月) 23:33:03

    ―――
    ――――
    今回はここまでです。………実はダイスで決まった設定とステータスを見て前々から考えてたユウの設定があるので、どうしてもそれを盛り込みたいんですよね………そのためにシリアスになっちゃうのは、まぁ………うん。すみません。こういうユウの闇の部分を暴く役割に、頭が良くて遠慮がないワカモは使いやすい………

  • 42二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 00:32:42

    もしかして翼が異常に頑丈だったのは無意識にそうしていたから……?

  • 43◆TJ9qoWuqvA24/09/03(火) 02:54:49

     もう既に日も沈んでいると言うのに、彼は走っていた。トリニティでの事故は幸いにも大きな怪我を負った者はおらず、軽傷を負った者もすぐ救護騎士団の治療を受けて大事に至ることは無かったのだから。
     とは言え、大きな混乱が起こっていたのは事実であり、その解消の為に奔走した先生は当然疲労困憊だった。いつの間にかモモトークに入っていた、二人分のメッセージを見るまでは。
     一人は、ワカモ。『ただ親切をしようと思ったのに、自らの悪癖で想定を大きく外れてしまった』、と。要約するとこんな内容であった。そして、その親切の対象がユウであることと、彼女があまり良くない状況にいる事が述べられていた。。
     二人目は、ユウから。ただ一言『助けてほしい』とだけ。

    "ユウ!"

     彼女の家に着いた先生はインターホンのボタンを押す。だが、ユウからの返事は無い。先生は焦る気持ちを抑えながら、一度スマホを確認する。"今から向かう"という先生の返事には、既読が付いていない。しかし、待っていてもどうしようもないのだ。
     "家に上がらせてもらうね"とモモトークに書き残して先生は戸に手を掛ける。鍵は掛かっていなかった。

    "ユウ?"

     電気が一切ついていない暗い部屋。先生は一歩足を踏み出して………シャリ、と何か固い物を踏んだ。何かと思って先生はスマホのライトを下に向け………

    "………羽根?"

     それは、羽根だった。青く、スマホのライトを反射する美しい羽根。彼女と共に仕事をした時間が長い先生には、良く見覚えのあるそれだが、明らかに今までとは違う。それはまるで鋼のように固く、ナイフのように鋭い。そんな羽根が、家の中に続くように落ちていた。

    "………"

     先生は靴を脱いで、羽根を踏まないように足元を照らしながらそれを辿る。そうして辿り着いたのは、一番奥の部屋だ。先生はその扉に近付き、一呼吸置く。そして、そっと扉をノックした。

    "ユウ?"

     返事は無い。ただ、彼にはこの先に彼女がいることが分かった。ここで止まっていても、何も進まない。そう思った先生は、一言断りを入れて扉を開く。
     やはり電気の付いていない暗い部屋。その奥で、彼女は膝を抱えて蹲っていた。………その背に、まるで刃物のような羽を揃える、凶器の翼を広げながら。

  • 44◆TJ9qoWuqvA24/09/03(火) 03:27:09

    「………」
    "ユウ"
    「………先生。これ、治んないんだ」
    "………"

     初めて聞いた、彼女の震える声。よく見れば、彼女の周りには何枚もの羽根が落ちているが、それには血が付着している。………彼女の赤に染まった手は、今まで何をしていたのかを察させるのは難しくなかった。

    「抜いても、抜いても………全然、治らないの。………もう、化け物になりたくないのに………この翼で、誰も傷つけたくないのに………こんなの、見せたくなんて無かったのに………!」
    "ユウ………"

     震える少女に先生はゆっくりと近付いていく。………先生は、最初から知っていた。昔のユウは、今の翼がより特異な物だったと言うことを。その美しい翼が、時に鋭利な刃物となってしまっていた事を。
     彼女にとって不幸だったのは、虐められていた当初はまだ何とか助けてくれる友人がいたことだ。………その翼が意図せずその友人を傷付けてしまうまでは。

    「私、やっぱり変われないの………?なんで………ねぇ、先生。私、もう分かんない………違うって言い聞かせても、変わってくれないの………私が………『私』が生まれたのが、駄目だったの………?」

     優しかった少女はあの日『死んだ』のだ。そして、代わりに臆病な今の少女が『生まれた』。………それは、文字通りの意味であった。『彼女』が生まれたその瞬間、翼の特異な性質は消えた。消えたはずだった。

    「………ごめん、なさい………私、もう………」
    "私はね。以前にも、一人の生徒にこう言ったことがあるんだ"
    「………え?」
    "君がなりたい存在は、君自身が決めていい。化け物とか、悪魔とか。そんな言葉は、君がそうであると決めつけられるものじゃない"
    「………でも」

     先生はユウの前に座って、そっと彼女の手を握る。その目は、どこまでも真剣な物だった。

    "私の中では、ユウはとてもかっこよくて、強くて、凄く優しい生徒だ。悪魔なんてとんでもない、天使みたいな子だって思ってるよ"
    「ばっ、きゅ、急に何言って………!」
    "周りの言葉が怖いのなら、私がそう言い続けるよ。君が分かってくれる時まで。でも、もっと早く言うべきだった。君は、誰かに縛られる必要なんてない。もっと自由に飛んでいいんだって"

  • 45◆TJ9qoWuqvA24/09/03(火) 03:46:00

    「………」
    "何かにぶつかっても良い。時には落ちる事だってあるし、失敗することもあると思う。でも、それでも君は好きな姿で、好きなように飛んでほしいんだ。………責任は、私が負うから"
    「………私、は」

     視線を交わす少女の翼が、少しずつ見慣れた姿を取り戻していく。柔らかくも雄大で、何よりも美しい翼に。赤く腫れた目は、それでも先生の瞳から離さなかった。

    「………私は………私は………『海世ユウ』………ただの、一人の生徒でいたい」
    "うん。君がそう決めたのなら、きっとそれが正しい。だから、ね?"

     先生は立ち上がって、少女に手を伸ばした。そして、ユウはその手を掴む。

    「………先生?」
    "私は先生だからね。生徒を守らなくちゃいけない。………暫くは、シャーレで君を保護したいと思うんだ"
    「………聞いたの、あいつに」

     少し暗くなる声。こうなった原因が彼女にある以上、そうなっても仕方ないのだが。

    "ごめんね。ワカモも最初から悪意があったわけじゃないんだ。ただ………"
    「そ………まぁいいや。そのおかげで先生が来てくれたんなら」
    "いやいや、助けてって言われたらそんなの関係なく来てたよ"
    「………そっか」

     いずれにせよ、ユウが生徒であることを選んだのなら、先生の立場としてはやる事は決まっていた。少なく見積もっても、混乱が収まるまで短ければ1週間程度。あれだけの事故が起こって1週間は短いように見えるが、そこは物騒な事故事件が絶えないキヴォトス故だろう。
     つまり、もしユウを狙っている者がいるとすれば、明日にでも行動を起こしてもおかしくはない。故に、最も手っ取り早く、最も安全であるのは、いつでも先生の目が届く場所。………つまりシャーレであった。先生が良く利用する仮眠室もいくつか用意されているため、1,2週間であれば生活にも全く困らないようになっている。

    "勝手に決めてごめん。でも、私は君を守る義務があるんだ"
    「分かってる………正直、先生に相談したかったし。だから………その、暫くお世話になります」
    "うん。任せて"

     結局のところ、先生はどこまでも先生であり、困っている生徒を放っておくなど出来はしないのだった。

  • 46二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 04:21:44

    これを経ないで居たらどこかで致命的な破綻を起こしてた気がする
    やり方はアレだけどワカモなりの手助け、かも

  • 47二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 06:38:35

    なにやってんだワカモォ!

  • 48◆TJ9qoWuqvA24/09/03(火) 10:28:23

    >>46

    ワカモ的には、自分のライバルという訳でもないですし、先生もよく気にかけている相手なので純粋な親切心だったんでしょうね。少々荒治療すぎますが、多分彼女は先生以外に対しては憎まれ役をすることに全く躊躇ないと思いますし……あと、割とワカモ自身ユウに興味津々ですから、今壊れてしまうのは面白くないのかもですね。



    >>47

    暫くワカモにはまたおとなしくしてもらいます……w

  • 49二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 19:10:52

    再発防止の為にもやばい大人が出てきたら一人残らず捕まえないと…!

  • 50◆TJ9qoWuqvA24/09/03(火) 23:37:53

     見慣れない部屋で目を覚ます。暫くボーっとして、私はここがシャーレの仮眠室だったことを思いだした。体をゆっくりと起こして、スマホを開いて確認した時間は6時14分。
     昨日は疲れちゃって、シャーレに着くや否やすぐに眠気に襲われてしまった。………一応、自分の翼をもう一度確認する。そこにあるのは、間違いなく『私』の翼だった。

    「………起きよ」

     暫くは先生と常に行動を共にすることになる。当たり前だけど、仕事も手伝う。まだ始業時間じゃないし、執務室でお茶でも飲んでおこうかな。着替えすらしてないけど、あの人もまだ起きてないでしょ。………なんて、甘い考えを持っていた私が馬鹿だった。

    "ん?ユウ、おはよう"
    「は?え………お、おはよう。え?待って?先生ちゃんと寝た?」
    "安心して。今日は4時間も寝れたから"

     ………この人は何を言ってるのだろう。私がシャーレに来たのが多分0時くらい?………2時くらいまで仕事してたって事?

    「………早死にするよ」
    "ユウを残して――――"
    「それはもういいから!」

     また余計な事を言わせる前に黙らせる。生徒の事ばっかりじゃなくて、もう少し自分にも気を遣って欲しい。………先生に倒れられたら、流石に………その、困る。

    "というか、ユウ。流石に着替えてきたらどう?年頃の女の子が、そんな恰好で人前に出る物じゃないよ"
    「え?………っ!?!?」

     私は慌てて崩れていた寝衣を整えながら、先生の前から消えた。夏だし、着ている寝衣は半袖。いつもの私からしたら考えられない程に無防備で、見苦しい恰好を先生に見せてしまったことに信じられない程心臓が跳ねた。
     ばかばかばか、と頭の中で自分を叱責しながら仮眠室に戻って、私は持ってきていた服に着替え始める。ついでに翼とか、髪もちゃんと整える。なんでこんな朝から仕事してんの。
     始業時間まだなんですけど。ほんと馬鹿じゃないの。そんな理不尽な怒りが沸き上がりつつ、私はもう一度仮眠室を出た。

  • 51◆TJ9qoWuqvA24/09/03(火) 23:43:37

    "………おかえり"
    「………ん」

     先生が苦笑しながら声を掛けて来た。多分まだちょっと顔が赤いと思う。………ほんと最悪。

    "何か食べる?昨日は夜、何も食べてないでしょ?"
    「ん」

     短く答える。私の幼稚な子供っぽい不貞腐れだった。らしくないと思いつつ、私はもう甘えると言うことを知ってしまったから。………あぁ、でも、絶対他の人の前でこんな姿見せられないな。
     そんなことを思っていると、先生がコンビニのサンドイッチを幾つか持ってきてくれた。………良かった。先生も料理はあまりしないらしい。謎の安心感を覚えながら、私は小さくお礼を言ってサンドイッチを食べ始めたのだった。

    "そうだ。暫くユウがここで生活するにあたって、ちょっと護衛を頼んだ子がいるんだ"
    「………護衛。誰?」
    "トキだよ"

     あぁ、あの子………私はちょっとだけ安心した。これで知らない人が来たら、私は………いや、なるべく仲良くするように努力はするけど。トキならそういう緊張も要らない。それより、良くそんな仕事を引き受けてくれたなぁと思いつつ、サンドイッチを食べ終わった私はいつもの席に座る。

    「仕事手伝うよ。なにすればいい?」
    "………じゃあこれをお願いするよ"

  • 52二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 07:23:32

    翼大丈夫なのか・・・?

  • 53◆TJ9qoWuqvA24/09/04(水) 16:26:22

     先生と仕事を始めて、始業時間30分前になった頃だった。シャーレを訪れたトキが、執務室で小さく頭を下げる。

    「こんにちは。今のところ、ユウさんは無事ですか?」
    「こんにちは。私は大丈夫だよ」
    「………」

     私は彼女にそう返したが、トキは何も言わずに私を見ていた。そして、ゆっくりと私の方に近付いて来て、ぎゅっと私の手を取った。

    「………この手はどうされたのですか」
    「え、あ、えと………それ、は………」

     私の手には、昨日羽を抜いていたことで付いた切り傷が残っていた。既に完全に塞がってはいるけど、あとが残ってるのは誤魔化しようがなかった。翼は、あの時の状態だと次々と元に戻って行ってしまうから何ともないけど。

    「………誰かにされたんですか?」
    「いや、違う………んだけど」
    「………次にミレニアムに来た時は、傷跡を消しましょう」
    「………え?」

     傷跡を消す?……どういうことかと思ってトキを見たら、彼女は相変わらずの澄まし顔のまま言葉を続けた。

    「新素材開発部が、古傷すらも跡を消すことが出来る新製品を開発しています。あなたに傷があることを医療部から聞いたことで、開発を始めた物です。まだ完成には至っていませんが、近いうちに完成すると」
    「え………?な、なんで………そんなの………」
    「理由は今更言わずとも分かってると思いますが。なので、近いうちにまたミレニアムに招待するとユウカが言っていましたよ」

     そう言って微笑んだトキの顔を見て、私は胸の奥から何かが込み上げてくる感覚がした。昨日は我慢してたのに、やっぱ駄目かも。私は震える声と、頬を伝う何かを感じながら、ゆっくりと口を開いた。

    「………あり、がとう」
    「私は何もしていません。その言葉は、それに関わった人にお伝えください。………ですが、えぇ。そのためにも、私は必ずユウさんをお守りします」

     トキの言葉に、私は嗚咽を零しながら頷く。嬉し涙を流す日が来るなんて、思ってもいなかった。

  • 54二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 17:01:07

    少し泣く。

  • 55二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 17:46:48

    いい子や…

  • 56二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 17:50:15

    今水着イベが最も待たれる生徒

  • 57◆TJ9qoWuqvA24/09/04(水) 20:01:31

    ユウの消えなかった傷も、いずれ必ず癒えていきます。彼女の手の傷も、紡いだ絆によって消えることでしょう。
    あと、季節も季節ですし、やっぱり夏イベは外せないよね!と言うことで水着フラグを立てさせていただきました。

    海イベは今後必ずやります。
    安価ではないですが、期待されていた(と、勝手に思っているだけですが)イベントらしいので、折角ならユウにどんな水着を着せたいか、候補を募ります。
    最終的には候補の中からひとつを選びますが、水着選びパートで選ばれなかった物も試着させるとかやるかもしれません。

  • 58◆TJ9qoWuqvA24/09/04(水) 20:03:08

    海イベ始めるまで候補は募るので、それまでは常時募集とさせていただきますね。

  • 59◆TJ9qoWuqvA24/09/04(水) 21:18:10

    >>54

    ユウの物語でそこまで言って貰えて嬉しい限りです。


    >>55

    ユウも、その周りの皆もいい子が沢山にしたいです。………カスミさん、ワカモさん、ステイ。


    >>56

    水着は必ずやります。後は誰と行くかですね。ストーリーの流れ的にはミレニアム生の子と行きそうですが。

  • 60◆TJ9qoWuqvA24/09/05(木) 01:50:27

    トキは流石に護衛と言う事で、何かあるまでは部屋で待機するだけ。ただ、そこで見たのは彼女の意外な姿だった。今まで完璧なメイドだと思ってたのに、振る舞いはまるで………猫?甘えん坊な猫みたいだ。
    そして今は気ままに先生の私物が入った棚を漁ってる。………いいの?と視線で聞いたけど、帰って来たのは苦笑。諦めてるのかも。
     そんな時だった。

    「先生」
    "ん?"
    「これは何ですか?」

     そう言って彼女が取り出したのは………メイド服だった。私はそっと翼で自分の体を隠す。先生も無言で何と言うべきか悩んでいた。すると、トキはメイド服を広げて表と裏を交互に見る。
     そして、「なるほど」と小さく呟いて………待って。なんで私の方に来るの。こっち来ないで。

    「あぁ、やはりですか」
    「な、なにが………!?」
    「これはユウさんの物であると推測します」
    「なっ、なっ………なんで、なんで………!!」
    「この背中の空き具合、普通ではありません。きっとユウさんの翼を通すためだと思いました」

     淡々ととんでもない事を言いやがるトキ。と言うか、普通じゃないって言うな。私それ着させられたんだぞ。私が顔を真っ赤にしてしまうと、トキはそっとそれを私に差し出して来る。

    「ユウさん。一緒にメイドをしましょう」
    「は?………は!?何言ってっ………!!ヤに決まってんでしょ………!?」
    「そうですか………友達と同じを共有したかったのですが」
    「うっ………!?」

     処分しとけこのクソボケ先生。言葉に詰まって、数秒ほどフリーズ。まるで捨てられた子犬のような視線を向けて来るトキを見て、私は………………そっと、その服に手を伸ばしてしまった。

  • 61◆TJ9qoWuqvA24/09/05(木) 13:00:14

    すみません!夜しか更新できなさそうなので自己保守!

  • 62二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 18:43:51

    そっか、エデンはここに・・・

  • 63◆TJ9qoWuqvA24/09/05(木) 21:56:38

     ほんとに最悪だ。ほんとに。なんでこんなことになったの。私の隣には、無表情なのに何故かキラキラと顔を輝かせてる気がするトキが立っていた。

    「ユウさん。とてもよくお似合いです。一緒にC&C最強を目指しましょう」
    「え、いや、私C&Cじゃ――――」
    「まずはネル先輩を倒さなければいけませんね。自信はありますか?」
    「あ、あの、だから………うっ、その………負ける気はしないけど………」
    「やる気は十分ですね。共に最強のメイドを目指して精進しましょう」

     強すぎる。彼女のペースに振り回されることによる困惑と、今の恰好の羞恥心でおかしくなりそうだった。すると、トキは「ふむ」と一言声を零し………懐からスマホを取り出すと、私の肩を掴んで抱き寄せた。

    「は!?え!?なに!?」
    「ピース、ピース」
    「え、ぴ、ぴーす」

     瞬間、パシャリと音が鳴る。

    「ふむ。良い映りです」
    「撮った、の?」
    「えぇ。とても可愛いユウさんを残しておきたかったので」
    「っ………」

     顔が一気に真っ赤になった気がする。この子、先生以上に駄目かも。先生はそんな私達のやり取りを見てすごいニコニコしてる。私がそんな彼を睨んで、こっち見んなと視線で訴えた時だった。突如、思いっきり開かれた背中をつつーとなぞられる感覚が私を襲う。

    「ひぁっ………!?」

  • 64◆TJ9qoWuqvA24/09/05(木) 21:57:20

     当たり前っちゃ当たり前だけど、思わず飛び退く私。その様子を、トキは無表情のまま見つめていた。

    「なっ、なにすんの!?」
    「肌がきれいだと思いまして。傷を早く治してあげたいと思っただけです」
    「いや、それ触った理由になんないけど!?」
    「可愛い悪戯です。ぴょん」

     こいつ………!私はいつか絶対やり返してやると思いながら、立ち上がって席に戻る。………あぁ、もう。こんな馬鹿みたいなことしてるのに、ちょっと楽しいと思っちゃう自分が馬鹿みたいだ。でも、嫌いじゃない。………でも、この衣装は嫌いだ。
     もしまだ着させるつもりなら、ちゃんとしたの作ってこいって言ってやるんだ。絶対に。

  • 65◆TJ9qoWuqvA24/09/06(金) 02:01:59

     トキは私が思った以上に自由奔放だった。…………それとも、私に気を遣ってそうしてくれてたんだろうか。
     …………いや、多分素だな。

    「ユウさん。ポテチ食べますか?」
    「え、あ、うん…………ありがと」

     私に袋を差し出してくるトキ。本当はお箸とかで食べたかったんだけど。少しだけ貰ってから、手を拭いてまた仕事に戻る。
     対して、トキはポテチを美味しそうに食べてご満悦の様子。

    「…………私がここにいる間、トキもシャーレに泊まるの?」
    「はい。当然です。私の見ていない所でユウさんに何かあったら、私はもう二度とミレニアムの方々に顔向けすら出来ません」
    「…………そっか」

     何となく、そう口にしたトキの表情は少し硬く、強い決意を感じさせるものだった。何があったのかは知らないけど、彼女にとっては何か大きな意味があるのかもしれない。
     そもそも文句は無かったし、寧ろありがたいとすら思っていたけど。彼女の時間を奪ってしまうのではないかと言う心配は、余計になってしまうんだろうな。
     そう思っていたとき、彼女は先生に声を掛ける。

    「………そうでした。先生」
    "ん?どうしたの?"
    「明日、チヒロ先輩がシャーレのセキュリティの再チェックに来ると言っていました」
    "あぁ、うん。私にもチヒロから連絡が来たよ。…………なるべく他言無用でって話したんだけど、その様子だと皆に話したんだね"
    「頼れる人は多い方がいいと、ヒマリ部長が言っていましたので」

  • 66二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 11:01:56

    保守

  • 67二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 19:58:04

  • 68二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 00:25:48

    期待の保守

  • 69◆TJ9qoWuqvA24/09/07(土) 03:25:08

     その日の夜。私は明かりの消えた仮眠室のベッドの上に寝転んでいた。なんやかんやあったけど、とりあえず今日は無事に終わった。と言うか、私を狙ってる奴は、私がシャーレに匿われてると言うことを知ってるのかすら分からないけど。
     正直、戦って勝てないとは思わない。けど、守られるって事に安心感を抱いてしまうし、もしも私に何かあったら先生が一番悲しむだろうから、ちゃんと言うことを聞く。
     それにマリーや、トキとか、ネルとかユウカも………

    「………私、恵まれてるのかな」

     ずっと自らの境遇を憎み続けて、不幸だと思っていた。私は幸福になれないんだと。でも、こうして私は沢山の友人と、私に手を差し伸べてくれた人に恵まれた。どん底にいたのは間違いないけど、そこから引っ張り出してくれた人たちがいた。
     堕ちていくだけの人生に、羽ばたくチャンスをくれた。きっと、それは不幸なんかじゃないから。

    「………ん」

     袖を捲って、自分の手を見る。暗闇だから見えづらいけど、無数に刻まれた傷。………本当に、これが消えるんだろうか。そしたら、今まで諦めていた事が沢山出来るようになる。
     海に行きたい。半袖を着たい。少し大胆なおしゃれをしてみたい。この手を誰かに見せれるようになりたい。いくら私が変わっても、この手だけはきっと変わることは無いだろうと諦めていたし、それでも向き合おうと覚悟をしていたのに。

    「………ほんと、どっちもお礼って言い続けて終わんないじゃん………」

     こんなにも、貰って良いんだろうか。疑ってるわけじゃないのに、そんな疑問が浮かぶ。この様子じゃ、本当に傷が消えた時もまた泣いちゃいそうだな。
     でも、その後は………

    「………先生とマリーとか、ネル達とか………色んな人誘って、海に行ってみたいな」

     私の名前にも入っている、海。水着なんて着れるはずもないし、行くことは無いと思っていた。けど、それが許されるのなら。………私は、私を救ってくれたみんなとその海を見たい。
     きっと………きっと、綺麗なはずだろうから。

  • 70◆TJ9qoWuqvA24/09/07(土) 03:25:52

    保守ほんと助かってます………!

  • 71二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 08:48:34

    保守

  • 72二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 18:02:00

    保守

  • 73二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 02:43:08

    ほしゅ

  • 74◆TJ9qoWuqvA24/09/08(日) 02:54:07

     私がシャーレに保護されることになってから3日。今日は先生と一緒にトリニティへ来ていた。いくら私が保護下だからって、先生の仕事は無くならない。
     トキと私は、先生の連れと言うことで特別にトリニティ学内への立ち入りが許可されていた。とは言え、流石にティーパーティーの部屋へ入るのは駄目だったけど。代わりに別室で待機する事になったんだけど………

    「やぁ、直接会うのは初めてだね。座ってくれ」
    「ん」
    「失礼します」

     私達は小さな少女に案内されてソファーに座る。彼女は百合園セイア。ティーパーティーの一人で、本来なら私のような人が会うのは許されないだろう人物。そんな彼女が、自ら話したいとここへ呼んだ。………妙に用意が良く、既にお茶やお菓子も用意されていたけど。

    「何となく、私の話したい人物が来るんじゃないかと思ったんだ。まさか君を引き連れて先生がやって来るとは思わなかったけどね」
    「………なんとなく?」
    「勘ってやつさ。それより、以前の事でまだお礼を言えてなかったね。ツルギを助けてくれた事に感謝するよ」
    「別に………あー………ん、どういたしまして」
    「………」

     セイアは私の問いに、真面目な表情を浮かべてじっと私を見始めた。居心地が悪いけど、何となく目を逸らせない………っておい。トキ。リラックスしてお茶とお菓子を楽しむな。私すごく緊張してるんだけど。

    「なるほど。聞いていた話と随分と違う。これは、先生………いや、それだけじゃない。多くの出会いに恵まれたようだね」
    「………そうだね。大事な人と、大事な友達に恵まれたと思う」
    「えぇ、私とユウさんはとても親密な仲なので」
    「………まぁ、そういうことだけどさ」

     トキの言葉を否定はしない。はっきりと言われるのは恥ずかしいけど。すると、そんな私とトキのやり取りを聞いたセイアはふっと小さな笑みを零す。

    「そうか。友達は大事にするといい。失ってからでは遅いからね。………そういえば、君はシスターフッドの一年の子とも親しくしているそうだね」
    「あぁ、うん。マリーのこと?」
    「そうだね。彼女が君の事を心配していたよ。何か厄介な事に巻き込まれてるようだが」
    「………あー。まぁ………うん」
    「今回先生に同行しているのも、それが理由だろう?………良ければ話してほしい。力になれるかもしれない」
    「………ん。じゃあ―――――――」

  • 75◆TJ9qoWuqvA24/09/08(日) 03:06:32

     私の話を聞き終えて、セイアは真面目な表情で考え込むように視線を少し下に向けた。

    「ふむ………例の工場に関連する組織か」
    「あくまでも、ワカモがそう言ってただけだけどね。あいつの話がどこまで当てになるのか………」
    「【災厄の狐】も馬鹿や能無しではない。彼女が掴んだ情報なら、恐らく信憑性は高いと見るべきだ。………となれば、君の身が狙われていることは間違いがないようだね」
    「まぁね。………そのせいで、あなた達が狙われたのかもしれないって言うのは、ごめん」
    「………何故君が謝るんだい。謝罪をしなければいけないのは私だ」
    「………なんで?」

     私がそう訊き返すと、セイアは少し表情を曇らせて首を横に振った。

    「あの日、外部の人間に協力を求めた方がいいと先生に進言したのは私だ。そして、結果として君が呼ばれた。………つまり君が狙われるようになったのは、元を辿れば私が原因なんだ」
    「………そう」

     確かに、あの作戦に参加しなければ私はこんな事にはなっていなかった。トキもその話を聞いて少し表情を整えてセイアに視線を送った。ただし、お菓子を食べる手は止めてないけど。

    「………でもさ」
    「なんだい?」
    「私が行かなかったら、ネルとツルギが危なかったんでしょ。じゃあ良いじゃん。私は今生きてるし、あいつらだってあの日死んでない。じゃあ、きっと今が一番最善だと思うけど」
    「………そうか。君は心優しいんだね」
    「えぇ。分かりますか。ユウさんはとても優しいのです。この前のミレニアムの事故も………」
    「トキ!それはいいから!!」

     いち早く反応したトキを窘める。けれど、セイアは彼女の言葉に喰いついた。

    「そういえば、先日起きたミレニアムの事故で、ユウは少女を救ったヒーローだったそうだね。少し興味がある。詳しく聞かせて貰えるかい?」
    「勿論です。私はお昼休みにC&Cの先輩方と一緒に居たユウさんと知り合い――――」

     トキとセイアは私をそっちのけであの日の事を話し始めた。時間としては長くなかったけど………変に装飾後付けてかっこよく語るのやめてよ。隣に張本人いるんですけど。………まぁ、でも面白いからいっか。

  • 76二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 11:13:48

    今話しているミレニアムの事故の話も関連性あるからこういうのはしっかり話したら方がいいんだよな?

  • 77◆TJ9qoWuqvA24/09/08(日) 13:10:51

    >>76

    とはいえ、トキがハッキングの詳細を知ってることもなさそうですから、本当に詳細を知るのならミレニアムとの協力が不可欠になりますね…………ただ、相手の狙いはユウなので、そのためにトリニティが外部と協力するのか、と言われたら悩むところではあります……(相手への報復ならありえますが)

  • 78二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 21:52:23

    保守

  • 79◆TJ9qoWuqvA24/09/09(月) 02:51:04

    「ふむ。予想はしていたが、やはり単なる事故、という訳ではないようだね」
    「えぇ、ヒマリ部長はそう言っていました。既に解析も始めているそうですが………詳しい事は私には」
    「そうか………実はこっちでも元はと言えば機械の暴走が原因でね。武器庫の監視カメラのバッテリーが突如爆発して、火薬を巻き込んで………という訳さ」

     いつの間にか私の話は終わっていて、真面目な話に移っていた。その温度差ついていけないんだけど。

    「となると、やはり犯人は同一人物と」
    「そうなるだろうね。外部のそういったハッキングに詳しい人物を呼んで原因を調査してもらおうと思っているんだが………そちらの『全知』は何と言っていたんだい?」
    「それが、中々足取りが見つからないそうですね。進展があれば連絡すると言っていたのですが、この数日全く連絡がありません」
    「そうか………彼女ですら易々と行かないと言うことは………恐らく、何らかの古代遺物を使ったかな」
    「………また『廃墟』ですか」

     二人だけで話が進む。私は正直何のことかさっぱりだけど、あまりいい事じゃないのは分かる。

    「………私からもナギサに進言しておこうか。今回の件、ミレニアムと再び手を組んだ方がいいとね」
    「いいのですか?こう言ってはあれですが、トリニティは今回………」
    「無論、私達としてはユウを救う義務はないが、私個人の感情は別だ。それに、長い目で見ればそのような危険な存在は私達にとって害となり得る。そうじゃないかい?」
    「………確かに。それは間違いありません」
    「ナギサも分かってくれるさ………もっとも」

     セイアがそう言って扉に視線を向ける。その直後に扉がノックされ、入って来たのは先生。そして、ついさっき話に上がっていた桐藤ナギサであった。

  • 80二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 07:25:40

  • 81◆TJ9qoWuqvA24/09/09(月) 16:24:15

    自己保守!日が変わる前には更新します!

  • 82二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 22:29:51

    保守

  • 83◆TJ9qoWuqvA24/09/09(月) 23:10:00

    「お待たせいたしました」
    「いや、丁度いい所だったさ。話は纏まったかい?」
    「………いつもの事ながら、その察しの良さには少々困惑が先に来てしまいますね。ですが、えぇ」
    「じゃあ、聞かせてもらおうかな」

     先生は私達と同じソファーに座って、ナギサはセイアの隣に腰を掛ける。その僅かな動作すら気品を感じる彼女は、ゆっくりと私達を見て話し始めた。

    「トリニティは、今回の件で私達トリニティ総合学園は正式にミレニアムサイエンススクールと協力関係を結びたいと考えています」
    「え………?」
    「まぁ、予想通りと言ったところだね」
    「え?………え?まって、どういうこと?」

     なんでトリニティが今回の件に?こう言っちゃあれだけど、トリニティみたいな厳格な所はそんな個人の恩で動くようなフットワークの軽いところじゃ………

    「そのままの意味です。今回の件の詳細を先生から聞きました。恐らくセイアさんも同じような事を言っていたと思いますが、事実であれば将来的にはあなた個人の問題では留まりません。皆が安心して学園生活を送るために、取り除ける危険分子は予め排除しておく。ただそれだけの話です」
    「とは言え、もうティーパーティーも独断でそのような事を決めれる立場ではないからね。またミネやサクラコを呼んで会議をすることになるだろうが………まぁ、彼女達なら賛同してくれるだろう」
    「えぇ。………個人的には、ミネさんにまた誤解されるのではと少し怖いのですが」

     少し遠い目をするナギサ。何かあったのかな………まぁ、うん。気にしてもしょうがないかな。ちょっと震えてる気がするのは………気がするだけだし。

  • 84◆TJ9qoWuqvA24/09/09(月) 23:20:51

    「また先生に同席してもらえばいいさ。とにかく、動かないことには始まらないだろう?」
    「………セイアさん。いつにも増して積極的ですね」
    「おや、そこまで私情を挟んだつもりはなかったんだけどね。けど、間違った事を言っているつもりはない。自体は一刻を争うと思うよ。こうしている間にも、奴らの痕跡は薄れていくのだから」
    「………そうですね。なので、先生には明日もまたトリニティへ来ていただきたいのですが、良いですか?」
    "勿論だよ。ただ、またユウには来てもらうことになると思うんだけど………"

     そう言って先生は私の方を見る。私は全然かまわないけど………トリニティとしては、部外者をあまり中には入れたくないだろう。でも、ナギサはすぐに首を縦に振った。

    「勿論です。寧ろ、ユウさんにも少々聞きたいことがありますので」
    「え?私?………まぁ、巻き込んじゃったのは私だし、協力はするけど」
    「ありがとうございます。それでは、私は準備などがありますのでこれで」
    "うん。またね"

     ナギサは席を立って部屋を出て行く。………なんか、ちゃんと上に立つ人って感じだったな。流石に複雑な政治してる学園なんだろうか。
     私は隣に座る先生をそっと見上げる。

    「………先生、今日はあのために?」
    "それ以外にも色々ね。セイアも言っていたけど、動かなくちゃ何もならないから"
    「………そっか」
    「まぁ、君があまり気負う必要は無いさ。ナギサとしても、情だけで動いたわけではないだろうからね。仮にも三大校のトリニティなんだ。そこへ手を出したのなら、相応の報復はしなければ示しがつかないというのもある」

     ………そんなもんなんだ。政治って難しいんだね。まぁ、知ったところであんまり役に立つとは思えないけどさ。取り敢えず、今日の用事はこれで終わり。長居するのも良くないし、すぐに出て行くことになった。でもまぁ………やっぱり、悪い人たちばっかりじゃないんだなって少し思った。

  • 85二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 07:09:05

    保守

  • 86◆TJ9qoWuqvA24/09/10(火) 17:45:09

    「それでは、会議を始めましょう」

     ナギサの一声。その一言で、場が静まり返った。先生と一緒に会議に参加はしたけど、一応言っておくと私は完全にトリニティの外の人間で、それどころか明確な地位だってない。そんな中で、トリニティ総合学園のお偉いさん達が集まる会議に場違いにも出席している。
     先生と一緒だけど、流石に緊張はする。と言うか怖い。

    「まず、事前に送った資料には既に目を通したという前提で話を進めさせていただきます。よろしいでしょうか?」

     その言葉に、誰も反応する人はいない。無言の肯定だと言うのは、皆の視線がナギサに集中していることからも明らかだった。

    「今回の武器庫火災の件ですが、以前トリニティとミレニアムで合同作戦を行った例の集団の関係者である可能性が高いと思われます」
    「………それが何故かは、こちらに書かれていましたが。海世ユウさん。彼女が標的になっているという一点では少々確信足りえないと思いますが、何故そのような結論に至ったのでしょうか?」

     早速口を挟んだのは青い髪をした女性だった。青い翼もしていて………なんだろ。ちょっと似て………ないな。雰囲気が全然違う。目が強い。実力もありそうだけど、なにより心が強い感じがする。

    「先生との話し合いの結論です。端的に言えば、それ以外にこのような真似を出来る存在が考えられない、というものです」
    「………やはり、それだけ危険な物が関わっている可能性があると」
    「そう考えるのが妥当です。現在、ミレニアムサイエンススクールが総力を挙げて原因究明………つまり、犯人の痕跡を辿っていますが、一向に見つからないとの事です。ミレニアムの技術を以てしてもそれであれば、考えられるのは………」
    「なるほど。ご回答ありがとうございます」

     納得したように頷いた女性。………若干ナギサがホッとした表情をしたところを見るに、彼女が昨日言ってたミネって人なんだろうか。なんだか、誤解と言ってた場面が想像出来る気がする。………それと、彼女の隣に座るシスター服の人は誰だろう。なんだか、時々私にあまり良くない視線を向けてきている気がするんだけど。マリーの知り合いではあるんだろうけど………

  • 87二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 17:52:21

    トリニティの暗黒卿だよ

  • 88二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 23:19:32

    保守

  • 89二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 07:39:18

    保守

  • 90◆TJ9qoWuqvA24/09/11(水) 16:19:51

    自己保守!夜更新します!

  • 91二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 19:52:13

    ほほ

  • 92二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 23:18:33

    あまり良くない視線とは?

  • 93◆TJ9qoWuqvA24/09/11(水) 23:47:07

     私達が見ている中、トリニティの会議は進む。正直あんまり口を挟む機会はないけど、ずっと緊張しっぱなしだ。

    「つまり、今度は大本………更に、ミレニアムに対しそのような真似を出来る者へ攻撃を仕掛けると?」
    「はい。そうなります」
    「………今度こそ、私の『救護』が必要でしょう。以前は止められてしまいましたが、今回ばかりは見逃せません。そのような方々には、これ以上ない程強度の高い『救護』をしなければいけません!」

     ダン、と机を叩いて立ち上がったミネ。良いのそんなことしてと思ったけど、別に誰も気にした様子がない。ナギサ以外。

    「お、落ち着いてください………こほん。今回は、確かに前回以上に危険な作戦になる可能性もあります。場合によっては、ミネさんに出てもらうことになるかもしれません」
    「当然の事です!」
    「だ、だから落ち着いてください………しかし、以前はヘイロー破壊爆弾を危うくツルギさんが受けかけているのです。誰が受けてもいいという訳ではありませんが、あなたのような立場の人間が………」
    「私にはこの盾があります!」

     なるほど。こう言うタイプか。ナギサが頭を抱えていた理由が分かった。そして、それを聞いていたセイアが窘めるように彼女へ声を掛ける。

    「………ミネ。気持ちは分かるが一旦話を聞いてくれるかい?」
    「なんでしょうか!」
    「今回の件は、今までとはあまりに違う。君がもしヘイローを砕かれる結果になれば、トリニティ総合学園としては損失が大きい」
    「ですが、そこに救護が必要な人がいるのです!」
    「その通りだ。だから、最終的には君を止めないが………まずは、念入りに相手の情報を調べる必要がある。意気込むのは良いけど、独断での行動は必ず慎む事。私達ティーパーティーからの意見は以上だ」
    「………良いでしょう」

     セイアの言葉に頷いて席に座ったミネ。凄い人がいたもんだなぁ………ところで、本当に隣のシスターさんは?なんて思っていたら、次に立ち上がったのはその人だった。

  • 94二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 06:25:00

  • 95二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 17:16:47

  • 96二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 22:44:16

  • 97◆TJ9qoWuqvA24/09/13(金) 02:31:30

    「一つ………よろしいでしょうか」
    「なんでしょう、サクラコさん」
    「………ユウさんに、少し尋ねたいことがあります」
    「私?」

     なんだろ。私は一切関わりが無かったはずだけど………いや、だからかな。けど、なんだろう。私の勘違いであればいいんだけど………

    「今回の件、あなた自身がどのようにお考えか、お聞かせいただけませんか」
    「………私の?」
    「えぇ。私の立場としては心苦しいですが、あなたの噂は無視をするには少々大きな物です。それはご自身でも理解されているでしょう」
    「待つんだサクラコ。彼女は………」
    「セイアさん。すみませんが、今だけは少しだけお時間をください」

     ………そう来たんだ。なるほどね。でも、なんだかそれだけではない気がする。とは言え、今の私がそれを詮索する立場にはないけど。

    「ん。じゃあ言うけど。正直、私は」
    「………」
    「今回の件、あんまり関わる人を増やしたくないとは思ってる」
    「………え?」
    "ユウ?"
    「………何故でしょうか」

     セイア、先生、サクラコが驚いたような声を上げる。実際、ここまで話しといてその流れをぶった切るような事を言ってんだから当然と言えば当然。でも………

    「今回の件、ただでさえ私のせいで迷惑かけてるし。これ以上迷惑かけたくないって言うのが一つ。それに、私一人なら………もしも何かがあっても、犠牲になるのは」
    "ユウ!!"

     先生が立ち上がって私の言葉を制する。それは初めて聞いた、明確な怒気を含んだ声だった。

  • 98◆TJ9qoWuqvA24/09/13(金) 02:31:59

    "生徒が私の前で、そんなことを言わないで。自分が犠牲になっても良いなんて、絶対に私は認めないよ"
    「でもさ………前の件でも危ない人が出たじゃん。今回は、私じゃ守れないかもしれない。そうなった時に、あなたは………あなたは、それを抱えて生きていくんでしょ」
    "………ごめん。一度席を外させてもらっても良いかな?ユウと話がしたい"
    「………えぇ。構いませんよ。丁度休憩を挟もうと思っていた所ですから」

     ナギサの承諾を得て、私達は部屋の外へ向かう。ただ、きっと本気の説教が待っているんだろうなって、彼の顔を見て私はそう気づいていた。

  • 99二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 11:05:47

    これはトリニティ側はミネ団長案件とは別の意味で胃が痛いヤツだな…

  • 100二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 19:34:28

  • 101二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 22:58:38

    正直ここでのユウと先生との話し合いがある程度ヒートアップしたら全て会議室に聞こえていそうだな

  • 102◆TJ9qoWuqvA24/09/14(土) 00:17:18

    "ユウ"
    「………ん」

     会議室から少し離れた場所で、私達は足を止める。周りに人はいない広い場所だった。先生は………今まで一度も見た事のない顔をしていた。怒っているような、悲しんでいるような。

    "確かに、君が言ったことはその通りだよ。もし、万が一にでも誰かが欠けたら。私はずっとそれを覚えているし、忘れない。一生抱えて生きていくだろうね"
    「私はそんなの嫌だ。あなたが苦しむ姿を見るのは、私だって」
    "でも"

     先生は私の言葉を遮る。ここまで強引な先生は見たことが無くて、私はつい口を閉ざしてしまった。

    "数とか誰がなんて関係ないよ。ユウが居なくなったら、私はそれだけでもずっと後悔し続ける。先生をやめても、ずっとね"
    「………」
    "君がいつか空に飛び立つその日まで、私が君を導くと決めたから。だから、君は絶対に死んじゃいけない。大人は責任を負うものだから。私は、君の先生である責任があるんだよ"
    「………」

     違う。私はただ、あなたに苦しんでほしくないだけ。でも、私が死んでしまうだけでも彼は傷付いてしまう。けど、私以外でもそれは同じ。守れなかった『罪』の意識を永遠に抱えて生きていくんだろう。
     どうすればいいの?じゃあ、私はどうすればいいの?誰にも傷付いてほしくないだけなのに。先生が苦しんでほしくないだけなのに。

    「………ごめん」
    "………ううん。ユウが優しい事は知ってるよ。けど、これは私の責任だから。心配してくれてありがとう。でも、ユウ。一つ言っておくとね"
    「………うん」
    "私は、今度こそ失敗しない。きっと全員を守って見せる。だから、心配しないで。私を信じてほしい。

     私と視線を合わせて、いつものように優しく笑みを作る。先生はいつもこうだから。


    「………うん」

     私は、頷くしかなかった。

  • 103二次元好きの匿名さん24/09/14(土) 09:47:49

    保守

  • 104二次元好きの匿名さん24/09/14(土) 17:21:18

    一応の保守

  • 105二次元好きの匿名さん24/09/14(土) 21:46:25

  • 106二次元好きの匿名さん24/09/14(土) 22:04:40

  • 107二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 00:12:13

    保守

  • 108◆TJ9qoWuqvA24/09/15(日) 01:17:28

     私達が会議室に戻ると、そこにはよくわからない光景が広がっていた。

    「シスターフッドがあのように一人の生徒を尋問するなど!いったいどういったお考えでしょうか!!」
    「い、いえ、ですから、少し込み入った訳がありまして………」
    「また隠し事でしょうか!それも、先生が保護しているという外部の生徒に対してあの態度を取っておきながら!」
    「そ、それは申し訳ない事をしたのですが………!」

     サクラコが何故かミネにガン詰めされていた。ちょっと気を抜けば掴みかかりに行きそうなのを、ナギサとセイアが必死に止めてる。これはどういう事なんだろう。

    "えっと………?"
    「すまない先生。彼女を止めるのを手伝ってくれないか………!」
    「ミネさん!落ち着きましょう!確かに私達も驚きましたが、まずは理由をですね………!」

     先生がミネを止めに参加する。私も行った方がいいんじゃないの?と思ったけど、先生の声を受けてミネは止まる。

    「………ふぅ。サクラコ、とりあえず、訳を聞かせて貰っても良いかい」
    「………すみません。少々、個人的な理由だったのですが。以前、ユウさんは教会を訪ねておりましたよね」
    「え?あぁ、うん………あ、そっか。そういうことね………」

     合点がいった。私、あの時シスターが聞いたら間違いなく不快なこと言ってたし。ただでさえ私は悪評が広まってるのに、そんな発言まで聞いたとなったら信用できないでもおかしくはない。

    「ですが、あなたの言葉を聞いて考えを改めることにしました。先ほどの失礼、大変申し訳ありません」
    「いや、私が最初に失礼なこと言っちゃってんだし。寧ろ、こっちこそごめん」
    「………だから言っただろう。サクラコ。もう彼女は前とは違うのだと」
    「………そのようですね。早とちりをしてしまっていたようです」

     とにかく、誤解は解けたらしい。そこからは円滑に話し合いは進んで、特に問題もなく会議は終わった。ミレニアムと手を組むことは決まったらしい。私は、そこで何も起こらないように………先生がなるべく傷付かないように頑張らなきゃいけない。

  • 109二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 01:26:02

    過去や強さまで詳しく知ってたんだろうから警戒するのは仕方ないかも

  • 110二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 10:16:55

    地味にミネ団長案件起きてたか…

  • 111二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 20:55:54

    保守

  • 112二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 23:24:11

  • 113二次元好きの匿名さん24/09/16(月) 09:49:22

    期待の保守

  • 114◆TJ9qoWuqvA24/09/16(月) 16:49:27

    「先生、ユウさん。おかえりなさい。トラブルはありませんでしたか」
    「ん、大丈夫」
    "トキも留守番ありがとう。何か問題とかは無かった?"
    「私が寂しかったくらいで、特に問題はありません」

     トキの言葉に、私と先生は苦笑を浮かべる。言外に構えと言っているらしい。なんとも遠回しなようでドストレートな要求だなぁって思っていると、トキは再び口を開いた。

    「それで、トリニティはどのように動くと?」
    "トリニティともう一度協力関係を結んで事に当たりたいそうだよ。捜査も本格的に行うだろうね"
    「それは何よりです」
    "ヒマリやヴェリタスから連絡は?
    「ありません。ひま………心配になって一度連絡をこちらからしてみたのですが、やはり難航しているそうです」

     今暇って言いかけたのを聞き逃さなかったぞ。しかし、トキはそんなこと言っていませんと言わんばかりの澄まし顔。まるでこっちが間違ってるんじゃないかと勘違いしてしまうような堂々っぷりだった。

    「ここまで動きが無いんじゃ、ワカモが言ってたことが本当かどうかも分からないね」
    "まぁ、ね。でも、ワカモはいざと言う時は頼りになる生徒だから。間違いなく何らかの情報は掴んでると思うんだけどね"
    「もうちょっと詳しく教えてほしいっての………先生から聞いてみたら?」
    "聞いたよ。ただ、まだ確証が無いから下手な事は言えないって"
    「………ふぅん」

     そこまで慎重になっているなら、適当を言っているという訳ではないんだろう。ただ、仮説や確かな情報じゃなくても今は微かな手掛かりが欲しい。そんな焦りが私の中に生まれていることは確かで。

    「ユウさん」
    「ん?どしたの」
    「………いえ。焦っているように見えたので」
    「え?………あぁ、ううん。そんなことないよ。ただ、早く解決したいって気持ちは確かにあるけどさ」
    「………そうですか」

     けれど、それを言う訳にもいかなかった。

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