- 1スレ主24/09/01(日) 19:11:21
- 2二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 19:12:11
ポストアポカリプスモノは大好物だ
- 3二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 19:12:15
最終編で止められなかった世界か
- 4スレ主24/09/01(日) 19:19:14
オリキャラ紹介
名無しの生徒
崩壊したキヴォトスを、当てもなく旅する生徒。
昔は明るかった彼女も、荒れ果てた世界の影響で、冷たい性格となってしまった。
なぜ旅などするのかはわからない。
もしかしたら、この壊れた世界にも何かあるのではと、あわい希望をどこかに抱いてるからかもしれない。
そしてその何かとは、誰にも、彼女自身にもわからない - 5二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 19:36:33
「や、ソラちゃん」
「あ、お久しぶりです」
エンジェル24。
キヴォトスを歩いていればどこにでも点在している小売店。まあ、それもう昔の話だ。
知ってるかぎりでは、あらゆる企業も含めてまとも動いているお店はここくらいだ。
……それにしても。
「前々から思ってたけど、今どきお店を切り盛りするなんてめずらしいことするよね。今はみんな、自分のことで精一杯なのに」
「いや、あはは。 なんというか、ここ以外行く当てもありませんし、アルバイトとしての活動が骨身に仕込んでしまったというか」
よほどブラックな職場だったらしい。
証拠に目が死んでいる。
「……それに、もしかしたらここで待っていれば、また先生がきてくれるんじゃないかな、て」
「……先生、ね」 - 6二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 19:48:58
先生。シャーレの先生。
突如としてキヴォトスに現れた大人。
そしてさまざまな学校の問題を解決していった頼れる存在。
私が先生を初めて見たのは、私が落とした携帯を先生が届けてくれた時。
そしてそれが、私が最後に見た先生の姿。
その数日後に先生は重傷を負い、病院へと入院した。
そのあとは、私自身実際は体験していないが、報道やSMSなどでキヴォトスがめちゃくちゃになっていることを知った。
先生を重症に追いやった犯人探し、それによる学校同士の抗争、カイザーコーポレーションによる連邦生徒会の占領、アビドス砂漠で起きた大事件。
そして、全てが変わった、空が赤くなった日。
……もし、先生がいれば、あんなことにならなかったのだろうか。
私は今でも学校に通い、日常を過ごしていたのだろうか。
「……大人って、すごかったんだなあ」 - 7二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:01:05
「そういえば」
「ん?」
ソラちゃんが何か思い出したかのように話し出した。
「先生が入院する前、アビドスについていろいろ調べてましたけど。あの時何があったんでしょう」
「アビドスに?」
「あ、はい。お店にやってきてエナジードリンクを山のように買いに来て、少しだけ世間話をしてたらそんなことを」
アビドス。
アビドス高等学校か。
「……面白そうな話ありがとソラちゃん。あ、この缶詰たち買っていくね」
「あ、ありがとうございます。えっと、弾丸20発ですね」
「あ〜……。ちょっと今弾を減らしたくないから手榴弾2個でもいい?」
「はい、大丈夫ですよ」
またお越しくださいませ〜、という元気な声を背にお店から去っていく。
……久しぶりに、長旅をしようか。 - 8二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:02:57
いいね、銃弾が通貨代わり
メトロを思い出す - 9二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:50:43
『次は〜。アビドス〜。アビドス駅〜』
「ご乗車ありがとうございました〜!」
厳重に武装された列車を降りる。
インフラなどはほとんど使い物にならないが、それでも一部は今でも動いている。
たとえば、私が今乗った列車はハイランダー鉄道学園が運営している。
全盛期の10分の1にまでその影響は縮小したが、彼女たちの鉄道魂により今でも線路が使える。
とはいえ1日に一本列車が駅に来るか来ないかだ、今回は運があったらしく、切手を買ったその日に列車に乗れた。
さて、本題のアビドスだ。
私はそこまでアビドスに詳しくないが、噂程度なら知っている。
曰く、億単位の借金を抱えている。
曰く、あそこの砂漠には財宝の数々が眠っている。
曰く、キヴォトス最強がそこにいる。
曰く、大企業に勝利した学校。
曰く、美味しいラーメン屋がある。
曰く、覆面の強盗団がいる。
曰く、曰く、曰く……。
少なくとも、噂が絶えない程度には、色んな意味で名のある学校だった。 - 10二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:00:05
世紀末世界で装甲列車はロマンだよな
- 11二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:00:27
なぜ私は、今更こんなことをしているのだろう。
先生が怪我をした真相。
なぜ空が赤くなったのか。
キヴォトスが滅んだ原因。
たしかに、なぜ、どうして、疑問が絶えないことだらけだ。
けど、それがどうした?
全てがめちゃくちゃになったこの世界で、今更真実を見つけようとして何になる?
そんなことよりその日の食料や身の安全を最優先にするべきだろう。
……わかってる。ああ、わかっている。
けど。
『"この携帯、キミのだよね?"』
『"よかった。届けられて"』
『"またね。●●●ちゃん"』
あんないい人が、いなくなってしまう理由くらい、知りたいじゃないか。
それにどうせこんな世界なんだ。まともな人生が送れるとは思っていない。
ならせめて、行けるところまで行こうじゃないか。
……そう思っていたけど。
道に、迷いました。 - 12二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:01:17
falloutみたいに完全に終わった感じじゃなくて、the last of usみたいにかろうじて統治機構が残ってる感じか
- 13二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:04:11
タワーの制御権自体も無くなってインフラも緩やかに機能停止し始めているって感じかな。カイザーが乗っ取り成功して生徒に戻る見込み無ければアロナもタワー止めるだろうしね
- 14二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:05:59
- 15二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:23:24
アビドスは広い。その言葉を甘く見ていた。
もともと生徒や住人がほとんどおらず、インフラもまともに整備されなかった中で、キヴォトス崩壊でさらに荒廃したことで、道の悪さに拍車がかかり、迷いやすくなっている。
事前に手に入れた地図が全く役にたたない。
食料も、まだあるにはあるがこの状況では心許ない。
……あれ、これってもしかしてまずい? - 16二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:24:01
不安になり、これから先の悪い予感が全て頭の中をめぐる。
すると、後方から一台のジープが走ってきた。
私はすぐに物陰に隠れようとするが、身を隠せる場所がない。
仕方がない。グロッグを構え、戦闘体制に入る。
ジープが、数メートル先で停止した。
窓が空き、恐る恐るといった感じで人の顔が現れる。
「あ、あの。もしかしてお客さんだったり……する?」
その言葉に私は無言で相手を睨む。
相手は少し困ったような感じで、顔を引っ込めて、ジープから姿を現した。
その腕には、アビドス校の腕章がついていた。
「……あなた、アビドスの生徒?」
「……ええ、そうよ」
「アビドス高校3年。黒見セリカよ」 - 17二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:34:22
アビドスの校舎。
いや校舎だった建物に案内された。
校舎はボロボロだったが、よく手入れが行き届いている。
たぶん、キヴォトスが滅んだ後の建物の中では、1番綺麗なのではないだろうか。
「ごめんね。飲み物でも出してあげたいけど、こんな状況だから」
「いや別にそんな。あなたが来なかったら私餓死してたかもだし」
「そんな大袈裟な」
大袈裟でもないんだよなあ。
「ところで、あなたはなにしにアビドスに来たの?自慢じゃないけど、何もないことだけに関しては、うちはキヴォトス一よ!」
いや、そんなどうどうということじゃないような。
「……えっと、じつはシャーレの先生がいなくなる前にアビドスに来たって話を聞いて、それでここに」
シャーレの先生。その言葉を聞いた瞬間、彼女は、黒見セリカの顔が俯いた。
少しの間無言が続き、そして彼女は落ち着いたように息を吐いた。 - 18二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:44:00
「……ごめんなさい。その時私は、いろいろあっていなかったの。だから……」
苦々しく、そしてどこか後悔しているかのようだ。
たぶん、彼女にとってよくない思い出だったのだろう。
「……そっか、ごめんなさい。嫌なこと思い出させちゃって」
「……うん、でも……そうね。久しぶりのお客様だし、それにわざわざ来てもらったから、私の知ってる範囲でなら先生のこと話してあげる」
「それはありがたいけど……」
「そんなに気にしないで。久しぶりに誰かと話せるんだもん。こんな世の中だからこそ、他人との関わりは大事にしないと。それじゃあまずはーーー」 - 19二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 21:59:01
夜。校舎の屋上で夜空を見る。
彼女の、セリカの話を聞いたあと、私はなんとも言えない想いを抱いた。
『……そのあと私は誘拐されて、キヴォトスが崩壊した後、あの時の混乱のおかげで私の存在自体どうでも良くなったんだと思う。簡単に脱走できて、私はすぐにアビドスに戻ったわ』
『帰ったら、何もかもが無くなってて、何もかもが変わっていた。……最初はどうして相変わらずに泣いてたけど、もしかしたらみんなが帰ってくるかもって学校の整備だけはしているの』
『まあ、いろいろあったけど、おかげで借金は有耶無耶になったし、ヘルメット団が攻めてくることはなくなったし、ちゃんといいこともあったのよ?』
最後に、明るく締めくくっていたが、明らかに無理をして振る舞っているがわかる。
突然攫われ、ようやく帰れたかと思ったら、友人も先輩も、みんないなくなっていた彼女の心境は想像できない。
だけど、セリカだけではない。
大事な人が行方不明になったり、亡くなってしまったのは、今のキヴォトスではありふれた話だ。
……けど、直にあんな顔を見たら。
……はぁ。 - 20二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 22:23:40
みんな程よく疲弊してて、でもまだ余裕があってって感じでしんみりして良い感じ
- 21二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 22:25:25
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- 22二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 22:29:46
「セリカ、こっちの教室の掃除終わったわよ」
「ありがとう。次は……」
私はアビドス校舎を拠点に、先生の痕跡を探すことにした。
もちろんただで屋根を借りようとは思っていない。
清掃や物資集めなど、手伝えることは全て手伝っている。
「……あのさ」
「ん?」
「……先生の件、何かわかった?」
「……まだなにも」
「……そっか」
たまに、本当にたまにだが、セリカは私の痕跡探しの状況を聞いてくる。
セリカが、先生のことを気にしているというのもあるが、先生が怪我をした時、少なくともアビドス高校のなにかに関わっていたのだ。
もしかしたら、他かのアビドス生徒の行方がわかる情報があるかもしれないと思うのは当然だ。
だけど、アビドスという土地はあまりにも広い。
少なくとも学校やその周辺地区は探索できたが、それでもアビドス自治区の中ではほんの一部だ。
……せめて、なにか手がかりが見つかればいいのだけど。
考えながら掃除していると、棚からヒラリと一枚の紙が落ちてきた。
「なにこれ?……ネフティス……サインの名前は……梔子ユメ、てだれ?」
それは砂漠横断鉄道を企業から買い戻すための、売買契約書と書かれた紙だった。 - 23二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 22:47:26
瓦礫が散らばる道路モドキをジープで走っている。
向かっている場所はアビドス砂漠。
あの契約書、セリカに聞いたところ覚えがないそうだ。
まあ、契約している日付もセリカが入学する前だから当たり前だ。
とはいえ、あんな類の書類はそ校内を探してもあの一枚だけだった。
なにかある。そう思い私は、いや私たちはアビドス砂漠に向かっている。
「ねえ、本当に学校にいなくて大丈夫?襲撃とかされたら」
「言ったでしょ。アビドスは何もないことに関してはキヴォトス一。いまさら変わり者以外は誰も来ないわ」
「はいはい。私は変わり者ですよ〜だ」
「え?あ、ご、ごめんなさい、そういうわけじゃあ!」
「わかってるからちゃんと前見て運転して。道悪いんだから」
「わ、わかってるわよ!」
……なんか、こうやって誰かと騒ぐのは、久しぶりだな。 - 24二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 23:07:54
物語はある程度できているのですがどの展開にするか悩んでいるので少し投稿遅れます。
- 25二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 23:32:40
アイデア出るまで、生徒紹介。
ソラ
エンジェル24の店員。
なのだが本社が壊滅しているため小売店としての機能は完全に停止している。
だが彼女の頑張りにより、なんとか経営が続いている。
商品の支払いは弾丸やその他兵器で可能。
壊れた世界で貨幣など、何の役にも立たない。 - 26二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 23:37:13
ハイランダー鉄道学園
キヴォトスでも名のある学校だったが、今やその影もない。
たが、彼女たちの熱い鉄道魂は滅び程度では決して折れない。
日々苦労しながら線路を整備し、なんとか列車を走らせている。
「なぜ列車を走るかだって?そこに線路があるからさ」 - 27二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 23:40:30
カイザーコーポレーション
数年前は大企業で合ったが、キヴォトス崩壊に巻き込まれ倒産した。
それによって行き場のなくなった社員たちは、複数の小規模の団体を作り、各地で活動している。
もはやその蛸足は、全て切り落とされたのだ。 - 28二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 00:12:51
砂、砂、砂。辺り一面砂ばかり。
他の場所にも砂で埋もれていたところはあったけど、別の大陸に来たのではないかと思うほどだ。
……さて。
「で、どこから探そうか」
「いや、私に聞かれても」
「セリカの暮らしてる土地でしょ。何か心当たりとかないの?」
「そんなこと言われても、私砂漠地帯を歩いたことそれほどないし……」
「……アビドスは私が案内するって言ってなかった?」
「わ、わるかったわね!……とりあえず、線路に沿って探索してみましょう。あの契約書には砂漠鉄道のことが書かれていたんだし、駅の中に何かあるかも」
「ま、それしかないよね」
私たちは砂に埋まった線路を道標に、ジープを走らせた。 - 29二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 00:13:37
今日はここまでとします。
続きは明日の夕方あたりから。 - 30二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 00:14:11
楽しみにしています!
- 31二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 00:14:59
キノの旅思い出した。心にしみる
- 32二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 00:15:57
カイザーも滅んだのか…
- 33二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 04:38:56
セリカが生き残ってるのも珍しいな…
- 34二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 08:21:59
少女終末旅行的な…
- 35二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 16:13:57
falloutやりたくなってくるわ
- 36二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 20:08:11
遅くなりましたが再開します。
- 37二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 20:10:44
何か見つかるとすれば、それは今はなきアビドス生徒の遺品とか売買契約書関連の何かだろうと予想した。
だが……。
「……なによあれ」
「でかいロボット、かな?」
目線の先にいるのは、蛇のような見た目をした巨大な白いロボット。
装甲が所々損傷しており、ぎこちない動きで砂漠を動き回っている。
あれがなんなのか、それが分かるものはこの場にいない。
そして問題は、あのデカブツのいる場所は砂漠地帯の外に近いということだ。
最悪、町に出てキヴォトス中で暴れるかもしれない。
けど……。 - 38二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 20:19:58
「……なんとかしないと」
「なんとかって、どうするの?」
「それは、連邦生徒会とか他の学校に助けてもらうとか」
「連邦生徒会はもう機能してない。他の学校も同じよ。……かろうじて生き残っているところもその日を凌ぐので精一杯で助けなんて出せる余裕はないわ」
「で、でも!」
「セリカ」
なんとかしたい。どうにかしたい。そう思う気持ちはわかる。
だが私たちには、キヴォトスにはもう余裕がない。
「あの怪物が、砂漠を出て暴れ回ったとしても、だれも何もできないわ。みんなその日を生き残ることで精一杯で、インフラも物好きな人たちがギリギリで稼働させているだけの状態で、何かできると思う?」 - 39二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 20:30:02
みんなわかっている。たぶん、セリカも。
キヴォトスは緩やかに終わりを迎えている。
町中に溢れ出ているイカれたロボットたち、狂ってしまった住民、倒壊したサンクトゥムタワー、崩壊した連邦生徒会。
数え出したらキリがないほどの、緩慢的な滅びの要因。
今すぐではないにしろ、いずれ訪れる目に見える終焉。
あのデカブツを、仮に倒せたとしよう。それがどうした?
どうせわかりきった終わりが見えているのなら、今更そんなことをしてなんになる?
いいじゃないか。今更災害が一つ増えたところで。
「どうせ、全て虚しく無くなるんだから……」 - 40二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 20:42:00
セリカが、まっすぐな目で私を見つめる。
「あなたがアビドスに来るまで、同じこと考えてた。……あの時の日常はもう戻ってこないって、ずっと思ってた」
「でも、あなたに出会えた」
「一緒に校舎の掃除したり、廃墟を探索したり、使えそうなものを集めたり、誰かと一緒に何かをすること、本当に久しぶりだったの」
「私、思うんだ。壊れたこの世界でも、あなたと出会えたことは、虚しいことじゃないって」
「……だから私は諦めない」
「みんなの思い出の場所、あなたと出会ったこの場所、これから起こるかもしれない、いろんな奇跡」
「私は、それを守りたい!無くしたくない!」 - 41二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 20:42:59
「……セリカ」
「ごめんなさい、変なこと言って。……これはアビドスの問題だし、あなたは関わらなくても大丈夫よ」
「大丈夫って、あれを1人で倒すきなの?何か手でも考えてるの?」
「まあ、そこは勇気とか根性とか」
「……はぁ〜〜〜」
今まで生きてきた中で、1番のため息を吐く。
やめておけばいいのに、おバカ。
……私は、この先、この選択を後悔するかもしれない。
でも。
だとしても。
「セリカ」
怪物に向かおうとするセリカを引き止める。
「ますば情報収集よ」 - 42二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 21:05:16
この数日。少し危険を冒しながらもあの怪物について色々と調査した。
ます機動力について。
大きさに見合わない速度を出しているが、外見の通り故障しているのかたまにぎこちない動きをする。
しかしこのまま移動を許すと本当に砂漠地帯から抜け出し、町に出ることが判明した。
時間はまだあるが、ゆっくりとはしていられなくなった。
次に防御力。
ところどころ外装が剥がれている場所もあり、小火器でもダメージは与えられるが、こちらの物資が絶望的にないため、一撃必殺で倒すのが現実的だろう。 - 43二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 21:05:46
そして最後に攻撃力。
主な攻撃はその巨体を生かした突進やミサイルだ。
突進はよく見てよければ対処できるし、ミサイルも標準機が壊れているのかほとんど当たりはしなかった。
問題は、あいつが放つ極大のレーザービームだ。
凄まじい広範囲にレーザーを放ち、直撃すればヘイローがあってもタダでは済まないだろう。
けど、その大技こそがあいつの弱点だ。
レーザーを放ち終わった瞬間、あいつの動きは数秒だけ静止した。
あの瞬間を見計らって攻撃すれば勝機はある。 - 44二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 21:24:32
「それで、どうやって倒すの?」
「それなんだけど、砂漠に残ってる線路を使おうと思う」
「線路を?」
「そう。作戦は単純。列車に爆薬を満載に乗せて、あいつにぶつけるだけよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。ぶつけるって言っても、あなた列車運転できるの?言っておくけど私はできないからね」
「もちろん、私もできないわ。だからできる人たちに頼んだわ」
「?それってだれ」
「ハイランダーの生徒」
「⁉︎どうやって協力させたのよ!」
「あの怪物を倒したら、その部品の何割かをあげるって言ったら手を貸してくれたわ」
「それ私聞いてないんだけど」
「あとアビドス自治区内で好きに線路敷いていいことも条件に」
「本当に何やってるのよ⁉︎」 - 45二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 21:25:10
「な、納得はできないけど一旦置いておくわ。それで、爆薬の方はどうするの?うちにある火薬はせいぜい弾薬に使うものくらいよ」
「……まあ、それに関しては少し悩んだけど、ちょっと危ない場所に盗み、取りに行こうかなと」
「今盗みに行くって言いかけたわよね。……それで、どこにあるの?」
「ゲヘナ学園」 - 46二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 22:04:41
ゲヘナ学園。
自由と混沌を体現したかのような治安の悪さだが、キヴォトスでも有名なマンモス校の一つだった。
だが今はその反対。
ゲヘナ風紀委員会によって秩序ある場所として今も存在している。
「みろ!コレがゲヘナの秩序を犯したものの末路だ‼︎」
その光景は、目を逸らしたくなるものだった。
痩せ細った生徒が、柱に逆さ吊りにされており、身体中がボロボロだった。
頭の上に浮かぶヘイローは消え掛かっており、衰弱しているのがわかる。
「コイツは自分から空腹だったからという理由で他所の自治区にまで足を運び腹を満たした!自分だけ満足し、まるで我々の配給では足りないと言わんばかりの愚行‼︎このような秩序なき人間は、我々ゲヘナ風紀委員会にやって処罰される!!!」
その後も風紀委員の演説は続き、みんな黙ってそれを聞いていた。
もし途中で立ち去ろうものなら、何をされるかわからないからだ。
そう、今のゲヘナは風紀委員会による秩序というなの恐怖と暴力が蔓延していた。 - 47二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 23:04:07
「私、他の自治区のことは噂でしか聞いたことなかったけど、これは」
「ここだけじゃないわ。ミレニアムも、トリニティも、D.Uも百鬼夜行も、全部変わってしまったわ」
「……それで、ゲヘナのどこに探しているものがあるの?」
「万魔殿よ」
「確かゲヘナの生徒会だったわよね」
「そ。風紀委員会によって壊滅したけど、万魔殿の保有していた兵器はまだ風紀委員会によって保管されているわ」
「……それってつまり、風紀委員会の本拠地に忍び込んで盗むってこと?」
「……そうなるわね」
セリカが呆れたようにこっちを見る。
しょうがないじゃない、私の知ってる情報じゃあゲヘナ以外知らないし、それ以外を調べようにも時間もない。
とはいえ、2人だけで風紀委員相手に盗みを働くのは無謀だ。
もう少し仲間が欲しいところなんだけど。
「おい、そこの2人」
……ああ、早速問題が起きた。 - 48二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 23:21:49
「見ない顔だな。どこからきた」
「いや、私たちは旅のものでして、少し物資が欲しくでゲヘナによったまでです。問題を起こそうとは思っていませんよ」
セリカも同意するように頷く。
「……怪しい奴らだな。連行させてもらう」
「っ!いや、ちょっと勘弁してもらいたんですけど」
まずい。
風紀委員会に捕まれば、こちらがどれだけ反論しようと、最悪さっきの柱に逆さ吊りされていた人と同じ目に遭う。
今のゲヘナ風紀委員会は、それほど危険だ。
「ちょっと、放しなさいよ!」
「反抗する気か!貴様らも処罰の対象にしてやろう‼︎」
ああ、もう!本当に話の通じない!
ことを荒立てたくなかったが、ここで捕まるわけにもいかず、風紀委員を制圧しよう構える。 - 49二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 23:22:49
だがその時、風紀委員の後ろに立つ幽鬼のような存在に気づいた。
風紀委員も寒気を感じ、後ろを振り向く。
「き、貴様は便利屋ハルっ⁉︎「さない」」
「許さない許さない許しませんっ‼︎」
突如、ショットガンが放たれ、風紀委員は私とセリカの間を横切って吹っ飛んだ。
「お、応援だ!応援を呼べ‼︎」
「クソ!この違反者どもめ‼︎」
複数人の風紀委員が対処しているが、まるで相手になっていない。
……よくわからないけど、逃げるなら今だ。
「ねえ、そこの2人」
瞬間、退路に立ちはだかるように誰かが現れた。
「さっき言ってた泥棒計画、よかったら私たちも手伝おうか?」
どうやら、会話が聴かれていたらしい。
「……あなた、だれ?何者なの」
「私は鬼方カヨコ、便利屋68の課長だよ」 - 50二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 23:23:29
続きはまた明日。
- 51二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 09:35:02
保守
- 52二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 20:10:58
お待たせしました。
続きです。 - 53二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 20:11:11
案内され、ついた場所は事務所のような部屋だった。
天井や壁はボロボロでところどころ穴が空いている。
だが必要最低限の家具一式は揃っていた。
「それで、私たちの計画を手伝うって話だけど……何が目的?」
睨むように相手を、鬼方カヨコを見つめる。
それに反応するように、紫色の服を着た子がショットガンを構え前に出ようとするが、それをカヨコが制止する。
「ハルカ、大丈夫だから。……あなたたちには協力する代わりに風紀委員会に捕まった私たちの仲間を助けて欲しいの」
「仲間?」
「そう。名前は浅黄ムツキ。便利屋68の室長だよ」
「なんか妙にしっかりと役職が決まってるわね。それじゃあなたはどの役職なの?」
セリカが紫色の服の子、伊草ハルカを指差した。
「わ、私は平社員です」
「じゃあ、社長はどこにいるの?」
その言葉に、カヨコとハルカの表情が変わった。
その理由は、なんてことはない。今のキヴォトスではありふれた ことだった。
だから私もセリカもすぐに理解した。
「その、ごめんなさい」
「いいよ。もう昔の話。……それより話の続きをしようか」 - 54二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 20:42:57
カヨコの出した提案はこうだ。
まずカヨコとハルカ、そして今の風紀委員会に一泡吹かせたいものたちが協力して騒ぎを起こす。
その間に私とセリカで風紀委員会の建物に入る。
幸いなことに独房と火薬や燃料のある部屋はそう遠くない。
そこから二手に分かれて、救出と泥棒の二つを同時に行う。
そう簡単にうまく行くか不安だが、カヨコは言った。
「風紀委員会は委員長が亡くなったことで内部分裂して、過激派が勝利したことで今のゲヘナの実権を握っている。でも、そんな思想のせいか違反者や敵対者には容赦がない。本部を襲ったともなれば総動員で対処するはずだよ」 - 55二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 21:11:46
「……ほんと、変わっちゃったよ。ゲヘナも、風紀委員も、そして私たちも」
悲しげに、そして懐かしむようにカヨコが呟いた言葉が頭から離れない。
そう、本当にそうだ。前の私ならこんな大胆なことはしていない。
学校に通って、友達とくだらない会話をして、勉強やテストを嫌がって、帰りにゲーセンや喫茶店とかに立ち寄って、それから……
「ねえ、そろそろ時間よ」
「……そうだね」
少し思い出にふけていた。
深呼吸して、気持ちを切り替える。 - 56二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 21:37:19
遠くから、爆発音がなった。
微かに離れた場所にいる風紀委員の声が聞こえた。
「本部が襲撃されている!すぐに応援を‼︎」
「くそ、違反者どもめ!捕まえて自治区内を引きずり回してやる‼︎」
足音が遠くなる音が聞こえ、人の気配がきえる。
行動するならいまだ。
「行くよセリカ」
「ええ!」 - 57二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 21:37:39
驚くほどだれとも会わない。
カヨコの言っていた通り、建物内の人員1人残らず鎮圧に駆り出されているらしい。セキュリティはどうした風紀委員。
ある程度暴れたら引くとは言っていたが、向こうが心配になる。けど信じるしかない。
そして目的の別れ道で私とセリカは二手に分かれた。
私が泥棒。セリカが救出だ。
しばらく移動し、何事もなく目的の部屋まで来た。
だが。
「なあ、本当に外に行かなくていいのか?」
「流石に見張りを辞めていくわけには行かないだろ」
「でも他の人たちは行ってるよ?」
「よそはよそ、うちはうちだ」
すぐに物陰に隠れる。
扉の前に2人。制圧できなくもないが増援を呼ばれたら面倒だ。
さて、どうしようか。
「ねえねえ、お姉ちゃん」 - 58二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 22:03:11
子供の声が後ろから聞こえた。
ゾワリと背筋が震え、反射的に後ろを振り向いた。
そこにいたのは、金髪のかわいらしい女の子だった。
その着ている服は、昔テレビやSMSでたまに見かけたことがある。
「万魔殿の、制服?」
「うん、そうだよ。私丹花イブキ。よろしくお姉ちゃん」
「え、あ、うん」
なんとも元気な声に、間抜けは返事をしてしまう。
「あのお部屋に入りたいんだよね?ついてきて」
トテトテと奥の道に走って行く。少し迷ったがここにいても仕方ないのでついていく。 - 59二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 22:24:36
カポッ、と気持ちの良い音が鳴る。
そのまま外した蓋を持ち上げる天井から降りる。
「こんな道があるなんて」
「ここはね、鬼ごっこをしてた時にイブキがよく使った秘密の道なんだよ!みんなには内緒にしてね!」
「ええ、わかったわ。2人だけの秘密ね」
「あ、それと。はいこれ!」
そう言って渡されたのは車のキーだった。
「みんながいろんなものをトラックに乗せたの。でもどこかいく前に風紀委員の人たちがここにきちゃって……」
「そっか……大変だったね」
「……お姉ちゃんが欲しいものは、あのトラックにあるよ」
そう言って、一台のトラックを指差した。長い袖で指は見えないが。
いや、それより。 - 60二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 22:28:47
セリカが3年だからイブキは13歳?
- 61二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 22:52:52
「なんで私が欲しいものを知ってるの?」
「……イブキは全部無くしちゃったけど、お姉ちゃんには無くして欲しくないから。……こんなことしができないけど頑張ってね」
答えにはなっていない。
けど私はその言葉を信じることにした。
「……わかったわ。ありがとう、イブキちゃん」
トラックの方に駆け寄り、ドアを開ける。
「ねえイブキちゃん。一緒に……」
振り向くと、そこにはだれもいなかった。
代わりにイブキちゃんの被っていた帽子と、かわいらしいクマのバッグが落ちていた。
……私はそれを拾い、ギュッと抱きしめた。 - 62二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 23:08:24
イブキ・・・おまえ・・・。
- 63二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 23:33:32
睡魔がやばいので本日はここまでです
- 64二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 10:38:50
保守
- 65二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 20:55:41
★
- 66二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 21:29:10
「脱走者どもだ!」
「撃て撃て!もう一度捕まえろ‼︎」
「ああ、もう!ついてない!」
セリカは足止めを喰らっていた。
独房に辿り着き、聞いていた特徴と一致する生徒を見つけたまでは良かったが、他の牢屋にいられれたボロボロの生徒たちを放って置けず助けたばかりに時間が取られ、外に出た途端風紀委員に見つかってしまったのだ。
今は防戦一方、向こうは人数が多く、牢屋にいた生徒たちは疲弊して戦えない。
一か八か、大胆な行動を取ろうとするが。
「ホラホラ!どいたどいた‼︎」
「⁉︎なんだ?トラックがっ!」 - 67二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 22:01:46
突如、風紀委員の間を凄まじいスピードでトラックが通り抜け、セリカの元で急停車した。
「セリカ、大丈夫!」
「あ、あなた!そのトラックどうしたの⁉︎」
「説明はあと、早く乗って!て、なによその大人数?計画と違わない⁉︎」
「後で説明するから!みんな早く乗って!」
大型のトラックなおかげもあってか、セリカが連れてきた生徒はなんとか全員乗ることができた。
「後ろの貨物には触らないでね!少し飛ばすから捕まってて!」
アクセルが全開に踏まれ、再び猛発進する。
風紀委員会はたまらず、迫り来るトラックに道をあけ、突然のことに呆然としてしまう。 - 68二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 22:26:32
「は〜っ、危なかったわ」
「……あなたのことだから、弱ったあの子達放って置けなかったんでしょうけど」
チラリと、荷台に乗っている生徒たちを見る。
皆一様に、脱獄できたことに喜んでいる。
「その、ごめんなさい。勝手なことして……」
「別に怒ってないわよ。そう言ったところがあなたの美点なんだし、逆に褒めてあげたいわよ」
「……うぐっ」
セリカが一緒に連れていた子。浅黄ムツキが目を開けた。
「大丈夫?無理しなくもいいからね」
「……あなたたち、だれ?」
「そうね……。あなたのお友達に頼まれ手助けにきた通りすがりの泥棒よ」
「……そっか。あの2人……大丈夫って言ったのに、ふふ」
弱々しくも、嬉しそうに笑う。
その姿に、自然と顔が綻んでしまう。 - 69二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 23:00:34
「違反者ども!逃げられると思うなよ!」
どうやら和む時間は終わりらしい。
すぐ後ろから風紀委員の車両が数台追ってきた。
「大丈夫、なの?逃げ切れる自信ある?」
ムツキが心配そうな声で尋ねてくる。
「大丈夫よ。ちゃんと作戦があるから」
「風紀委員会には、アビドスの大迷路を味わってもらうわ」 - 70二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 23:57:21
短いけど今日はここまで。
- 71二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 09:59:32
保守 続きも楽しみにしています
- 72二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:47:41
そろそろ保守るか…♤
- 73二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:48:25
リアルで少し忙しいので今日は投稿できないかも……
- 74二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 22:55:51
めちゃくちゃ面白いので保守しつつ待ってます!
- 75二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 08:36:30
朝保守
- 76二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 19:32:27
大変お待たせしてしました。
再開します。 - 77二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 20:15:35
「カコヨ課長、来ましたよ」
「やっとか。……なんか予定より大人数なんだけど……まあいいか」
ふぅ、と安堵の息を吐き、協力者たちと助け出された仲間が乗っているトラックに近づく。
「随分遅かったね。それと……迷子を拾ったみたいだね」
「まあいいじゃない。あなたたちの仲間はちゃんと助けてあげたんだから」
「それもそうだね。にしても本当にアビドスは迷路みたいだね。道がめちゃくちゃになっているから地図があっても迷いそうだったよ」
「でもおかげで風紀委員は撒けたでしょ」
そのころ
「隊長ダメです!こっちの道も砂で埋まってて!」
「あちらの道は瓦礫だらけで車が通れません!」
「タイヤが砂にはまって動けない!」
「く、くそ、違反者ども!」
「隊長、こっちに『帰り道はこちらです』という看板が!」
「おのれえぇぇぇ‼︎」 - 78二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 20:47:08
「ごめんカヨコっち……ハルカちゃんも……迷惑かけちゃった……」
「迷惑だなんてそんな!ムツキ室長無事ならそれで!」
ハルカはソファの上で寝ているムツキを介抱している。
一方でカヨコはセリカたちと今後のことで話し合っていた。
「アビドス砂漠に現れた怪物、それを倒すために爆薬が必要だったんだ」
「あなたたちのおかげで倒す目処ができたわ。ありがとう」
「お礼を言うのはこっちだよ。……にしても、このご時世で酔狂なことをするんだね」
カヨコはひび割れた窓から、ボロボロの街並みを眺める。
「今更怪物が暴れたからって、たくさんの不幸がある今のキヴォトスに、また一つ不幸が増えるだけだよ。わざわざ風紀委員会を敵に回してまでやる価値があるの?」
「じゃあなんであなたたちは、その子を助けようとしたの?それもたくさんの不幸のうちの一つでしょう?」
カヨコは何か喋ろうとするが、言葉が思いつかなかったのかすぐに口を閉じた。 - 79二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 21:20:47
「……そうだね。私たちも似たようなもんか。……ごめんね。怪物退治の助けにはなれないけど、幸運を祈ってるよ」
「ゲヘナに帰るの?」
「まさか。けどほとぼりが冷めたらまた戻るつもりだよ。あんな場所でも、わたし達のふるさとみたいなものだから」
行くよハルカ、ムツキ。
そう言って教室を出ようとするカヨコだが、ハルカは何か考えている様子で微動だにしない。
「?ハルカ」
「……あ、あの。カヨコ課長!」
何かを決心したかのように、ビシッと立ち上がる。
「え、えっと、ですね。アビドスの怪物退治、その、私はお手伝いしたいな、て」 - 80二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 21:59:25
その言葉にカヨコもセリカたちも驚く。
ハルカはオドオドとした口調で続けた。
「わ、わかってます!ムツキ室長がこんな状態なのに何を言っているのか!で、でも、アル様なら、きっと、そうするんじゃないかな、て……」
「……ハルカ」
「わ、私一人で行きます。だからカヨコ課長はムツキ室長を」
「……」
大事な仲間の一人が欠け、カヨコは仲間たちに対する想いが強まっていた。
もし怪物退治でハルカの身に何かあれば。そう思わずにはいられない。 - 81二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 23:31:24
「……ねえ」
しばらく続いた静謐を破るように、ムツキの声が聞こえた。
「その怪物退治てさ……いつやるの?」
「えっと。準備とか怪物が砂漠から向け出す時間とかを考慮して3日後に」
「そのくらいあれば……少しはまともに動けるか」
「ムツキ!まさかあなたも?」
「カヨコっち。私たちは……便利屋68でしょ?……借りを借りたら返す。……アルちゃんも言ってたよね」
「ムツキ……」
「別にアルちゃんの意思を継ぐとか、そう言うのじゃないんだ。……ただ、みんなと引き合わせてくれた大事な人の思いを、無くしたくないだけ」
その言葉に、カヨコは諦めたようにため息を吐いた。
「……勝手にいろいろ決めちゃったけど。その怪物退治に協力者3人が入っても問題ない?」
セリカたちは互いの顔を見つめ合い、嬉しそうに頷いた。 - 82二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 08:03:06
協力者が増えたな…それにしてもまったくクソな世界だ……
- 83二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 11:30:26
少しだけ設定公開。
ゲヘナ風紀委員会
キヴォトスでも随一の治安の悪さを誇るゲヘナの風紀を正していた彼女たちは、風紀委員長である空崎ヒナの訃報を受け入れられず、さらにはキヴォトスの破滅という自体が発生したことで混乱し、結果内部分裂が起こった。
過激派と穏健派の二つの派閥に分かれ、互いに争い、その争いに万魔殿を含んだ多くの組織が巻き込まれ、ゲヘナはさらなる混沌に陥った。
結果、行政機関は風紀委員会の過激派のみが残り、恐怖と暴力による治安維持が執行され始めた。 - 84二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 11:35:38
便利屋68
金さえ積めばどんな仕事でも行う何でも屋。ゲヘナでも名の知れた問題集団。
しかし社長である陸八魔アルは、キヴォトス崩壊に巻き込まれて帰らぬ人となった。
残った社員は今でも便利屋を続けている。
それは大事な人の残したものを忘れたくないためか、それとも過去に囚われている故なのか。 - 85二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 18:57:35
保守