- 1二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:27:24
- 2二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:28:28
(ジェンティル持ってないからオリウマなのか疑似ネームドなのかわからん)
- 3二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:47:49
「併走のお誘い感謝します。」
目の前の可憐な少女はそう言って頭を下げる。
「こちらこそ、受けてくれてありがとうございます。」
こちらも礼儀として頭を下げる。今回の併走は私から誘った。トレセン学園に入って、数人と走ったけど、当然私が勝っていた。小手調べも兼ねて体が出来上がっていない子を選んでいたところもあるけれど、それでも私は常勝だった。
…だから、今日は他とは違うオーラの子と走ろうと思っていた…“浅はかにも”
結局走ったところで、私はこのウマ娘に理解させられた。 - 4二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:50:24
- 5二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:51:54
ピー!
開始の笛と手旗が上がる。同時に私は飛び出した。距離は1600m、芝。ゲートが開くと同時に飛び出し、逃げ切るのが私のやり方、私の勝ち方。流れは上々で、私は自分の勝ちを疑わなかった。コーナーをすぎ、残り500m。併走前のオーラとは打って変わって後ろで着いてくる鹿毛に思わず笑みがこぼれる。
(後ろにいては勝てないわ)
残り400m。第4コーナーあたり、まだ来ない。これはもらったわ。
残り300m。(期待はずれだったかし…)
「フンッ!!!」
揺れた?地震??いや、違う。揺れたのは一瞬だけ…まるで私の後ろに何かが落ちたような…
一瞬の戸惑いのうちに、横を彼女が押し通る。気づいた時にはもう彼女はゴール板をすぎていた。
何が起こったのかさっぱりだった。ただ分かることは、走り終わった後に相手は息も切らしていなかったこと、隕石でも落ちたかのようにターフがえぐれていたこと…そして追い抜かされた時の彼女の表情と後ろ姿。
そのどれもが苛烈で、強烈で…
(次に挑めば“潰されるかもしれない”)
そんな思考に体を震わせる - 6二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:53:43
- 7二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 20:58:11
- 8二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 21:16:20
ドンナのシナリオ読んでない人はレスしちゃいかんのか
- 9二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 21:19:49
――あれから私はいろいろなウマ娘を併走に誘った。
流石はトレセン学園。私では勝つことができないようなヒトたちが大勢いた。ギリギリで勝てたり、突き放されたりして私はクラブ時代よりもたくさん走った。でも...
「これでもない...」
満たされない。自分と拮抗した実力の同級生と走っても、どれだけ強い先輩に負けても、あの時...ジェンティルドンナに任された時の高揚感が訪れない。何か得体のしれない欲望に突き動かされながらトレーニングを続けていた。
ある日、とある噂が耳に入った。どうやらジェンティルドンナとヴィルシーナが併走をするらしい。あの二人は今年の注目株だから話はあっという間に広がった。私は実は二人に勝ててはいない。ジェンティルドンナはあの日以来走ってないし、ヴィルシーナは2~3回走ってすべて負けている。
(それだけ強いなら、トレーナーもすぐに決まるでしょうね)
上の空のように考えつつも、煽り合いをする二人を見ていて、自分の中で不思議な高揚感が湧き上がってきた。
しばらくすると二人は位置についた。ついに始まる。
初めはヴィルシーナが先頭だった。あの時の私と同じ、けれども私と違って油断していない。そのままヴィルシーナが引っ張る形で進んでいた。
......よくあるレース展開、それなのに私は次第に強くなる自分の鼓動に困惑していた。目の前にあるのはただの併走。一人は先頭を行き、一人は後ろで足を溜める。それだけなのに、私は、彼女の足が解放される瞬間を待ち望んでいた。
残り500m。私はここで油断した。
残り400m。彼女はヴィルシーナの後ろから這い出て来た。
残り300m。...来る、来る、来てしまう。
「フンッ!!!」ドゴォン!
地響き。あの時はわからなかった彼女の全容。彼女の足はターフを踏み鳴らし、抉り、走り去った。
(ずるい)彼女と併走しているヴィルシーナが。(ずるい)すべてを従えさせられるほどの力を持つジェンティルドンナが。
しかし、それ以上に...
「羨ましいなぁ...ヴィルシーナ」
あの子は今、彼女に力の差を思い知らされた。そして、強者になぶられた敗者になった。彼女には勝てないと理解させられた。
私はそれが無性にほしくなった。
ジェンティルドンナにレースで負けたい。
それが、私がターフを走る理由の一つになった。 - 10二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 21:33:17
モブウマ娘さんは負けたい......
- 11二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 07:11:35
その併走を見てから、私は必死になって練習した。
聞き飽きたレース学をしっかり受け、高負荷のトレーニングをし、勝てる模擬レースは全て勝った。
ただ負けるだけなら簡単だ。サボったり、怠けていたりしていれば、必然的に勝てなくなる訳だから。でも彼女は、ジェンティルドンナはそんなことは許してくれない。きっと彼女は重賞を走る。彼女に負けるには、私も重賞に出ないといけない…それもG1レースだ。私の本能が言っている。「彼女にとって重賞は赤い絨毯に違いない」と。だから私はジェンティルドンナに敗北するために、誰にも負けないほど強くならねばならない。
「矛盾した望みね」
つい口から出てしまう程、自分のでたらめさに辟易していたし、それと同時に高揚もした。他の娘に勝てば勝つほど、ジェンティルドンナに負けた時の敗北感が深く味わえる。そう考えて、トレーニングに熱が入る - 12二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 08:08:12
まあ同じ負けるのなら目の前の最強に捻じ伏せられたいという欲求は分からないでもない。
相手の記憶に残れるのなら尚ヨシ。 - 13二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 18:48:56
今日は私の選抜レース。ここで私の強さを示せば、レースの世界に挑める。これを勝ちきって、専属トレーナーもしくはチームに所属出来れば、あの貴婦人に対面することが出来る。それに彼女はもうトレーナーがついたらしい。ここで遅れをとっては、彼女とのレースに間に合わないかもしれない。そうなってしまっては、私は彼女にあの気持ちを味わせて貰えなくなる。自分の両頬をパシンと叩き、気を引きしめる。ここで勝って、必ずジェンティルドンナに負けに行くんだ。そう決心してゲートに入る。
- 14二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 18:52:43
なんかこの流れだと予想がつかなさある選抜レースだあ
- 15二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 22:19:40
「負けに行くんだ」
これは健気に想うウマ娘だな() - 16二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 07:08:02
保守
- 17二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 17:22:55
続きに期待
- 18二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 21:34:13
選抜レースは1着で終わった。専属トレーナーは付かなかったか、チームには入ることが出来た。これでようやくスタート地点に立てただろう。
でも、安堵は出来ない。レースで勝てたといってもクビ差の1着、しかも最終コーナーで1度差された。何とか差し返したが、この程度ではジェンティルドンナと戦うには不安が多すぎる。
(せめて、影が踏まれない程度にキープしないと…)
最初から最後まで影が踏まれない。これがあのジェンティルドンナと戦うための最低条件だと思っている。それはたとえ相手がチームメイトであっても同じだ。全てを圧倒する力を持つ者に挑むには、他を置き去る強さを持たなければならない。
それから私はチーム練習の合間、自主練に勤しんだ。もちろん、過度な負荷で走れなくなったら終わりだ。彼女に負かされることは叶わなくなってしまう。だから負荷が高すぎると感じた時は、休日にトレーナーから指導を受けているウマ娘を見学している。この見学が案外バカにならない。ウマ娘のフォームは見れるし、走り方への指導も聞こえる。それに個人差はあるが、同世代ということもあり、指摘されるところに共通点も見えてくる。私はその様子を普段の練習に取り入れ、レースも安定して勝てるようになった。チーム内では、いつの間にか1番とまで言われている。先生からは「ティアラへの情熱が凄まじいんですね、まるでみんなのお手本ですね!」とまで言われた。
(そのお手本が、負けるためなんて知ったら失望されるかしら?)
そんな自嘲を含んだ笑顔で、私は「ありがとうございます。」とだけ返した - 19二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 07:17:12
チームって強いイメージないな
- 20二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 14:15:30
チーム次第じゃない?
専属も当たり外れ大きそうだし - 21二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:07:39
理子ちゃんと温泉行ってこいよ。
- 22二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 04:37:41
続きが見たい
- 23二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 09:19:31
しばらくして、デビュー戦を勝ち進み、無事トゥインクルシリーズを走り始められるようになった私の耳に入ってきた話しに驚きを隠せないでいた。
「ジェンティルドンナがシンザン記念を走る?」
ティアラ路線を明言したウマ娘は桜花賞をまず走ることになる。しかし、GIレースは実力が認められなければ出走することはできない。だから基本はグレードの低いレース、GII以下のレースを前走とするのが通例で、ティアラ路線ならチューリップ賞やクイーンカップを走ることが多い。しかし、あの貴婦人はシンザン記念、クラシック3冠路線のウマ娘が出るレースを走るらしい。
「ティアラ路線辞めちゃうのかな〜?」
チームメイトのムードメーカーの差しウマ娘がボヤく。
ほとんど見た事のないような選択にそう思うのも理解できなくは無いが、私はひとつの考察までたどり着いていた。
(ジェンティルドンナはどんな相手でも勝てると証明するつもり?)
クラシック3冠はレースの世界ではメジャーなもので、見に来る人も、目指す人も多い。よって強いウマ娘が毎年多く集まる。そんな相手がいる中でもし、ティアラ路線のウマ娘が勝ってしまえば…
(…私なんて、軽く潰されてしまうでしょうね)
想像して、つい口元が緩んでしまう。私はチューリップ賞を走る予定だが、このレースで入賞すれば、私の欲望は満たされると確信した。