- 1二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:03:30
- 2二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:04:20
ある日の休日、昼過ぎ。
ナカヤマフェスタはトレーナー室のソファに身を預け、昼寝をしていた。
ほどよい陽の光と、こぽこぽと響く加湿器の音が心地いいのか、彼女はすやすやと寝息を立てている。
時折耳がぴくんと動いているあたり、とてもリラックスしているようだった。 - 3二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:04:54
「さて…と」
今日、俺にはある用事がある。
本当はフェスタにも付き合ってほしかったのだが、彼女は気持ち良さそうに寝入っている。
それに起きていたとしても、「アレ」がバレてはいけない……
時計を見ると、14時前だった。
約束の時間にまだ余裕はあるが、念には念を入れておこう。
俺は手早く外出の準備を済ませるとフェスタの手元に走り書きしたメモを置き、忍び足でトレーナー室を後にした。 - 4二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:05:17
「…んぁ?寝てたのか」
ふわあ〜っと大きなあくびをしながら目を覚ますフェスタ。
寝ぼけ眼で時計を見ると、14時を指している。
「よく寝たなぁ…ん、なんだこのメモ」
『フェスタへ ちょっと出かけてくるから留守番頼む』
「…………」
少しムッとした表情を浮かべるフェスタだったが、すぐに何か思いついたようにニヤリと笑い、メモをポケットにしまい込んでゆっくりと立ち上がった。
「よし、行き先を辿ってみるか…」
気分は正しく探偵業者。
ヒリつくものを探して、名探偵フェスタは動き出した── - 5二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:06:11
「よし、ここだな」
相棒はゆったりと歩いていたので、すぐに追いつくことが出来た。
そのまま付かず離れずで後を付けて行くが、何とも言えない緊張感で肌にピリピリとしたものを感じる。
これこそ私の求めていた感覚だ。
将来はギャンブルで生計を立てると考えてもいるが、探偵職も案外向いているのかもしれない。 - 6二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:06:28
気付けば、駅前の商店街を過ぎて市街地に入っていた。
相棒は未だ歩みを止める素振りは見せていない。
どこまで行く気だろうか、と思った時、相棒はふいと横道に外れていった。 - 7二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:06:45
バレたか、と思い電柱の陰に隠れたが、こちらに向かってくる様子はなかった。
ちらり、と相棒が来ていないことを確認し、横道へ駆けていく。 - 8二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:07:18
横道の奥には、ひっそりと佇む硝子工房があった。それ以外に店らしきものはない。
間違いなく、相棒はそこに向かったのだろう。 - 9二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:07:37
「…なんというか、地味な雰囲気だな」
店に少し近付き、外観を眺めて呟いた。
古びてはいるが、清潔感はある。
そろりそろりと窓から店内を覗き込むと、奥の方で白髪交じりの男と相棒が何やら話し込んでいる様子だった。 - 10二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:08:11
会話の内容は聞き取れないものの、相棒は何やら照れ臭そうに頬を掻いている。
(あの反応……もしかして)
私は確信を持った。
相棒は今、オンナへの贈り物を選んでいる! - 11二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:08:25
女っ気が無さそうな雰囲気をしているが、あれで中々やる男だったらしい…と、どうやら用事は済んだようだ。
急いでここを離れないと── - 12二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:09:13
相棒が店から出てくる前に、何とか表通りに出てきた。
物陰に隠れ、相棒が出てくるのを待つ。
そんな相棒は店の前で「いやぁ、いい買い物ができた…」と呟いて、呑気に紙袋を覗いていた。
私の存在に気付いた様子は無い。
そのまま立ち去ろうとする相棒の後をつけながら、私は考えた。
プレゼント選び。
これはつまり、そういうことだろう。 - 13二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:09:28
デートの前準備。
きっとそうだ。間違いない。 - 14二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:10:03
一体どんなオンナなのかが気になる。
私の相棒を射止めるなど、ただ者ではないことは確かだ。
だが、それはそれとしてだ。 - 15二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:10:20
何だろう。
この、胸の奥がモヤっとする感じは。 - 16二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:10:50
翌朝、トレセン学園トレーナー室棟。
「相棒も隅に置けないなぁ…」
唐突に担当ウマ娘、ナカヤマフェスタがそんなことを言ってきた。
目をしばたかせていると、肩をすくめてヤレヤレ、といったポーズをしてくる。
「惚けなくっても良いんだぜ?昨日、贈り物を硝子細工の店で買っていたじゃないか」
「え?」
驚いて声を上げた。確かに昨日の外出で、ガラス工芸の店に行った。
しかし、あの時フェスタは… - 17二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:11:51
「でもフェスタ、あの時寝ていたじゃ…あっ」
ニヤリ、とフェスタが笑った。
「やっぱりな」
得意気な表情のフェスタ。
その姿に、眉間を揉みながら溜め息を吐く。 - 18二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:13:21
「…カマをかけたな」
「まぁな。誘導尋問に引っ掛かるなんて、アンタらしくもない」
と、フェスタは楽しげに笑っている。
まるで、悪戯が成功した子供のように。 - 19二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:13:30
「全く……大体、なんでフェスタが知ってるんだよ……」
「そりゃあ、相棒の尾行をしていたからな」
くつくつ、とお腹を抑えて笑うフェスタ。
暫くして笑いが収まったのか、真面目な顔付きになる。 - 20二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:13:46
「それじゃ、ぜーんぶ話して貰おうか?」
- 21二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:14:35
「はぁ!?相棒の師匠の誕生日プレゼントだ!?」
「だから言っただろ…」
あまりの衝撃にポーカーフェイスが崩れ、大声を出してしまったフェスタをどうどうと落ち着かせながら答える。 - 22二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:14:46
今日は師匠のエビナトレーナーの誕生日だった。
昨日はエビナトレーナーの誕生日プレゼントとして、以前に注文しておいたグラスを受け取りに行ったのである。 - 23二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:15:16
真相を話すと、フェスタは何やら複雑な表情をしていた。
「まったく…私はアンタにとうとう春が来たのかと思ったぜ」
頭をガシガシと掻くフェスタ。
流石に可哀想かな、と思い、俺はデスクの引き出しからある物を取り出した。
「お詫びの品…というわけじゃないけど、これを受け取ってくれないか?」
そう言って、フェスタに木箱を渡す。 - 24二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:16:23
フェスタが木箱を開けると、その中にはすみれの花があしらわれたグラスが入っていた。
「これは…」
「ああ、以前頼んで作って貰ったんだ」
「ふぅん、良いセンスしているじゃないか」
しげしげとグラスを眺め、微笑むフェスタ。
「ありがとな、相棒」
その笑顔は、あの時見た硝子細工の何よりも綺麗だった。 - 25122/02/19(土) 23:17:28
と、いうわけでちょっと時間は遅いですが純愛フェスタでした。
蛯名先生、誕生日おめでとうございます。 - 26122/02/19(土) 23:18:08
…あ!蛯名先生誕生日来月だった!
- 27二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:18:44
乙
優しい気分になれた - 28122/02/19(土) 23:20:30
えーと…
蛯名厩舎の成功を祈って、前祝いということにします! - 29二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 23:23:17
ナカヤマもトレーナーもスレ主みんなかわいい
- 30122/02/19(土) 23:27:32
さて(ズンコ)
フェスタ貯金は皆さん貯めてますか?
私は…フェブラリーで稼ぎます! - 31二次元好きの匿名さん22/02/20(日) 11:21:26
いつのまにかSS新作きてた!いつもありがとう
さて、今日のフェブラリーSどうなるか…ご武運を - 32122/02/20(日) 16:44:21
ありがとうカフェファラオ