【閲注?】相澤先生関連のSSを書いていく

  • 1二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:40:41

    先生関連のSSを書いていく
    スレ主が相澤先生最推しで夢BLNL左右非固定の人間なので何が飛び出てくるかわからねえ、覚悟してくれ

  • 2二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:40:58

     差し出された資料と、気まずそうな笑顔を浮かべている男を見比べる。
     外面の信用度で言えばどちらも同程度だったが、今までの付き合いを加味すると男の方に軍配があがった。
    「……個性抑制薬、ですか」
    「はい。個性特異点は最早終末論の域を超え、市民に根付きつつあります。ウラビティをはじめとしたヒーローたちが個性カウンセリングや一人一人のケアに当たっていますが、現状は焼け石に水と言って良いでしょう。現状を打破すべく進められている研究です」
     頭が良すぎる人間が無知な人間にもわかるように必死にかみ砕かれた資料に目を通しても、相澤には少しも理解できそうになかった。
     高校時代の勉強を及第点に至ったらすぐに手を抜いていたせいではないだろう。羅列される文字から目を離し、相変わらず固い顔をしているホークス……現公安トップ鷹見啓悟に視線を移した。

  • 3二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:41:19

    「良い話じゃないですか。……と言いたいところですが、アンタがそういう顔をするってことはまあ、それだけじゃないんでしょうね」
    「はい。まあ人が産まれ持った個性をそのまま抑制するので当然人体実験が付いて回ります。……さらに言えば、ゼロから試行錯誤するには時間がなく、現状存在する類似個性を元に作る方がよほど効率がいい」
    「……なるほど、だから俺ですか」
     鷹見が持ってきた資料には一枚の誓約書が挟んであった。こちらは相手に意味が伝わらないよう小難しく書かれているのにすらすらと頭の中へと入っていく。
     その誓約書はいったん奪い取られる。舌打ちをしそうなくらい凶悪な表情が一瞬覗き「すみませんどうやら資料を作った人間が忍ばせていたみたいです」と紙をぐしゃぐしゃに握りつぶした。
     ヒーロー時代には考えられなかったスーツと革靴を履いた男はいつものヘラヘラした笑いをしまいこみ、一つの小さな冊子を差し出した。

  • 4二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:41:55

    「……これは」
    「パスポートです、貴方の」
    「冗談言わんでください。俺と名前が違う」
    「茶化さんでください。言わんでもわかるでしょ」
     差し出す方と受け取る方、どちらも傷だらけの手だった。相澤は渋々受け取りながらある程度の渡航履歴が書かれているクリーンなパスポートを繁々と見つめる。
     鷹見は苛立ちを紛らわせるように頭を掻いていた。
    「ホークス」
    「鷹見で良いです。もうヒーローじゃないんで」
    「……これをするのはヒーロー以外居ないでしょう」
    「ははっ、お世辞がうまか~」
     ひどく疲れ切った目で鷹見は笑った。
     彼のつけている香水の匂いがふわりと香ってくる。ムスクの香りは童顔の彼には不似合いで、少しでも立場を強固にするための足場台のようだった。

  • 5二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:43:49

    「もしも」
     相澤はパスポートをぱらぱらとめくる。
     国のスタンプがたくさん押されているけれど、どこの国の物かまではわからない。だがきっと、十分治安の良いところばかりなのだろう。これから先暮らしていっても誰にも怪しまれないような。
     けれど相澤の目はこれから先にある海外生活よりも、もっと近い別のものが映っていた。
     白髪、小さな角がある少女の笑顔。たった一人敵を救えず泣いてしまった教え子の決意。
    「もしも、俺が断ったら……その個性抑制薬とやらの研究はどのくらい遅れますか」
    「……」
    「ホークス」
     かつてのヒーロー名で呼ぶと、彼の表情は固まっていた。笑顔をどうにか保ってはいるが泣きそうで、自分よりも八つ年下の男の顔とは思えない。
     まだ三十代に足をかけてほどない年齢の彼が、何かを背負って隠そうとしているのは明白だった。
    「えっ……と、ですねえ」
    「簡潔に答えてくれ」
    「ん~~~~、あー、えーと……その、ですね。言いたく、ないです」
     もはやそれは答えだ。
     完全に固まってしまったままの笑顔で、下手くそに笑うホークスがどうにか絞り出した言葉は、相澤に確信を与えてしまう。

  • 6二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:45:30

    面白いです
    期待

  • 7二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:46:00

    「俺が居なければかなり遅れる……もしくは、研究が頓挫する、そういうレベルなんですね?」
    「……でも、ほら、最近は研究の質もレベルも上がってきてますし! イレイザー一人が居ないからってそんな」
    「個性消失弾はエリちゃんが居なければこの世に生まれていたのは数十年先だったとすら言われていますよね」
    「っ……」
    「あまりあの子のことを引き合いに出したくはないが……元にできる個性があると無いとでは、研究速度に明確な差が出るのは歴然でしょう」
     ホークスの反論が消える。
     相澤は仕切り直すように咳ばらいを一つした。近くにあった茶を飲もうとしたが手を止める。
    「ここ数年、『見て』ほしいという依頼が増えてるんですよ。俺だって痛感しているんです、この個性は個人が持つより技術として広く人に使われるべきだ」
     相澤の声は落ち着きを払っていた。手も震えておらず、湯呑をとって茶を一口すする。出されていた焼き鳥を口に含み、リラックスした様子で咀嚼し、嚥下した。
     すっかり冷えてしまったそれはけれども美味しいままで、久しぶりのまともな外食に舌鼓を打つ。
    「緑谷も教職に就いてだいぶ使いモンになってきました。ヒーロー活動との並行作業は骨が折れるでしょうが、俺でもできたんだし優秀なアイツならば問題ないでしょう」
    「いや、あの……でもですね」
    「ホークス、合理的に行きましょう。アンタだって同じ立場なら同じようにしたで」
    「っ、アンタはツクヨミの先生でしょうが!」
     大声で言ってから「あ」とホークスは自分の口を押える。相澤は一瞬目を瞬かせたが「そういうことですか」とあからさまなため息を吐いた。
     手元にある焼き鳥の塩は肉質が良く内側からため込んだ油がじゅわりと口内ではじけた。それを二、三口噛んでから飲み下して茶を飲む。
     大声を出したホークスはまるで少年の様に背を丸めてしまう。きっと親しいエンデヴァーですら見たことが無いだろう姿に相澤は視線を逸らした。

  • 8二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:47:34

    「おかしいと思ったんですよ。アンタこういう時倫理や正義がどうのこうので判断鈍らせるような人じゃないでしょうに」
    「いや罪悪感くらいはありますって。ただ……まあ、必要ならそういう判断だってできるってだけで」
    「公安トップらしい人材だ。あと三十年くらいは安泰ですね日本も」
    「嫌味っすか~?」
    「褒めてます」
     相澤が焼き鳥を食べきったタイミングで追加が来る。もう若くはないのでそんなに食べられるとは思わないが、腹は若者気分でぐうと鳴った。
     ホークスも同じように焼き鳥を食べ始める。気を張った公安トップの表情は既に鳴りを潜めていた。
     串を二本分食べてから、行儀悪くその先端を振って相澤の方へと示す。
    「アンタが居なくなったら、ツクヨミ、絶対傷つきますって」
    「まるで自分が今まで人が傷つく判断をしてこなかったような口ぶりだ」
    「はーあ~なんも通じん、ヤダヤダ。泣き落としすりゃいい感じにいけると思ったんですけどね」
    「そういうのは自分が泣き落としに効くタイプかどうかを考えてから行動に移したほうが良いですよ」
    「おっしゃる通りで」
     腿の焼き鳥が今までにないほど美味で「うま」と思わず口にだした。するとホークスの方から一本串が寄越される。白く輝く賄賂をいただき、口に放り込んだ。
     次いで相澤の方に寄せられたのはA4の紙だった。先ほど奪い取られた誓約書と書かれた書類に目を通し、上から下まで眺めてはあ、とため息を吐く。
    「ちなみにこれっていつから?」
    「半年後からっすね。向こうとしては今すぐにでもやってほしいらしいっすけど。それだと流石に怪しまれますし」
    「俺は行方不明って形ですか? それとも死んだことになります?」
    「行方不明だとおたくの元生徒さん達一生探しちゃうでしょ~、アンタどんだけ多くのプロヒーローの担任してきたと思ってんですか。偽装で死んでもらって葬式挙げさせてもらいますよ、遺体はニセモンですけど」
    「死体無い状態にはしないんだな」
    「死体がない状態の葬式に違和感を抱きそうなご学友がいらっしゃるでしょうが」
     驚いて普段の口調になった相澤に、ホークスは苦笑しながら答える。言われて思い当たるサングラスの友人に相澤は眉間を抑えた。
    「あー……山田はそう、ですね」
    「でしょ」

  • 9二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:48:48

     相澤は渡されたボールペンでサラサラと自分の名前を書いていく。更に注意事項と書かれたところにうつり、きっちり上から下まで読み込んで、問題がある部分もない部分も全て「OK」の項目で埋めていった。
     それを見ていたホークスは畳に寝ころび行儀悪く串を口にくわえる。
    「常闇くんにバレたら絶縁される……どうしよ」
    「頑張って隠してください」
    「こういうのはいつか絶対バレる宿命なんですわ」
    「AFOも結局バレましたからね。まあアンタならうまく出来るでしょう、ほら、書きましたよ」
    「早すぎでしょ。早すぎる男の異名要ります?」
    「半年で使えなくなる異名はちょっと」
    「ははっ、イレイザーヘッドって冗談言うんすね」
     書類の項目を全て確認してホークスは「ありがとうございます」と礼を言う。
    「ああ、あとこれ」
    「……本当に要らないですか?」
    「要らないですよ」

  • 10二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:49:35

    イレイザーはそうするよな…
    マイクは親友2人とも失うのか、辛いな
    イレイザーが大好きなA組の皆もホークスもお辛い…

  • 11二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:50:02

     自分の物ではない名前と、自分の顔写真がつけられたパスポートを返す。彼は酷く残念そうな表情をして見せてから、近くにあった灰皿にそれを落として火を点けた。
     灰になっていくそれの熱さがここまで来ていて、若干の息苦しさを覚える。紙の焼ける匂いは鼻の奥まで入り込んでこびりついた。
    「火災報知機とか大丈夫なんですか」
    「話は通してありますから」
    「さすがは公安御用達の店」
    「……本当は、ここで燃やすのはこっちだと思ってたんですよね」
     彼は疲れた笑みで笑って回収した誓約書を掲げた。言外に「どっかの誰かさんのせいで」と言われたような気がして「そりゃすみませんね」というが、お互い棘も読モ抜けきって、抜け殻みたいだった。
    「じゃ、また詳しい話は後日」
    「はい。待ってます」
    「……どうにかして今からちょっと後悔してみたりしません? 今ならパスポート作り直せますし書類も燃やせますよ」
     ホークスはそう言ってやはり疲れた笑みを張り付けた。
     相澤はいつもとは違う窮屈なスーツから漸く解放されるのだと思うと、それだけでどうでも良い気持ちになる。
    「いいえ、良い死に場所だと思ったくらいですよ」
    「はー……ソウスカ」
    「常闇に関しては……まあ、頑張ってください」
     一応労いの言葉をかけると信じられないものを見る目で見られてしまう。その視線を合わせてお互い笑ってしまうと、それが合図になったように座敷から立ち上がる。
     ネクタイを締め、鞄を持ち何事もなかったように部屋から出ていく。
     どちらも、来たときと同じ空気を纏うただの男だった。

  • 12124/09/08(日) 19:51:00

    >>11

    読モ抜けきってて草

    毒もです

  • 13124/09/08(日) 19:51:35

     ‡

     線香を備え、花を飾り二回手を叩いて頭を下げる。お墓は先に来た人たちが奇麗にしたのだろうか、曇り一つもないぴかぴかな状態で、緑谷がやるようなことは何ひとつとしてなかった。
    「先生、今年も来ました!」
     今日は緑谷一人きりだった。暑い夏の日差しの下、汗をかきながら緑谷はもう一度頭を下げる。無機質な墓の下に自分の担任が眠っているとはとても思えなくて、三年も経つのに未だに泣いてしまいそうだった。
     それをぎゅっと堪え、ノートを開く。
    「今年の一年生もすごい優秀です! ただやっぱり毎年個性の複雑化が進んでいるせいか増長も激しく、そのあたりは僕らがきっち締めていかなければいけないところだと痛感してます。複合個性の子は自尊心と同じくらいうまく扱えないことへの劣等感も強く刺激されているようで、最近開発された個性抑制薬を併用しながら少しずつ自分の個性との付き合い方を模索している状態です。そうそう、個性抑制薬と言えばこの薬が開発されたおかげで麗日さんのカウンセリングやケアがより効果的に効くようになって」
    「あれ、デク?」
    「うわぁはい!」

  • 14124/09/08(日) 19:52:24

     ノートに書き貯めていた話したいことをぶつぶつと墓に向かって話していたら、突如として後ろから声をかけられる。勢いよく振り返るとそこにはかつてのウイングヒーローホークスが喪服を着て立っていた。
    「ホークス……?」
    「ああ、今は公安の鷹見ね」
    「た、鷹見さん……? 先生のお墓参りですか? あ、もしかして別の誰かの……」
     そんなにこの二人に交友があったとは思えずつい質問口調になってしまった。近くに他の知り合いのお墓があるのだろうかと見回すが「ここであってるよ~」とホークスは昔の様に笑顔を見せる。
    「ほら、なんてったってイレイザーヘッドはツクヨミの先生だからね、俺にとっても恩があるし。これくらいはさせてもらいたいんだよ」
    「なるほど……義理堅いんですね!」
     ここで会うと思っていなかった人に思わず緑谷は目を輝かせてしまう。ヒーローを引退したと言っても若干二十二歳でNo,2にまで上り詰めた才覚は本物だ。
     チームアップをしたことはあったけれど、こうして対面で一対一になることは初めてだ。
     聞きたい話がたくさんあると言わんばかりの顔に鷹見は苦笑して「今は君の方が立派なヒーローだからね」と言って墓に水をかけ流した。

  • 15二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:53:13

    文章うますぎて泣いちゃった…
    イレイザーなら絶対そうするけど生きて帰ってきて…生徒達に怒られて…頼む…

  • 16124/09/08(日) 19:53:15

    「……奇麗なお墓だね」
    「命日に来れない人や他の先輩方が定期的に来てお掃除されているようです。昨日は命日だったのでみんなが着ていたせいもあるんじゃないですかね」
    「デクは……ああ、昨日は仮免試験か」
    「ええ。どうしても来れなくて。皆には昨日行ってもらってたんです。ホークス……鷹見さんも今日来たのはお仕事の都合ですか?」
    「ん? そう。俺も昨日は色々忙しくてね」
     普段の授業ならばいざ知らず、仮免試験に担任が来ないのは流石にまずい。命日に墓参りにはいけないことを昨日は相澤の机に散々謝った。それを見ていたマイクが「あんま頭下げっと逆に叱られるZE~」と揶揄ってきたのを思い出す。
     昨日は今まで受け持ったクラス全員が時間帯をずらしてきていたらしく、そのことを伝えると鷹見は目を見開く。

  • 17124/09/08(日) 19:53:57

    「そっか。やっぱり慕われてたんだね、イレイザーは」
    「そうですね、僕も……みんなも、先生のこと、大好きでした」
     思わず喋り口調に涙が混じる。
     三年前のことだ。イレイザーヘッドが全盛期で活動していた頃の敵が逆恨み目的で彼を襲い、命を奪った。敵は相討ちとなり同じように死亡した。
     残った遺体は身元が確定できないほどにぐちゃぐちゃで、かろうじて歯型で本人確認がとれたくらいだった。
    「……あの日、僕、先生に次の授業のことで聞きたいことがあって。呼び止めようとしていたんです。でも、もう先生は帰っていて……僕、明日で良いやって……そう、思ったんです」
    「……」
    「明日が確かな物じゃないって、僕らは分かっているはずなのに……なんでですかね、なんであの時僕は先生のことを無理やりにでも呼び止めなかったんだろうって」
    「君のせいじゃないよ」
     思わず泣きだしてしまった肩を鷹見が支える。

  • 18124/09/08(日) 19:55:30

     君のせいじゃない。そんなことはこの三年間沢山の人から言われてきた。けれどもそれは結局、守ることが出来ないほど遠くにいた人たちの言い分だ。
     緑谷はあの時近くに居た。相澤に届くとしたら、自分の腕以外にはなかった。それを届かせることが出来なかった。
     結果論だけれど、強くそう思ってしまう。
    「……わかってます、わかってても、納得は出来ないんです」
    「……そっか」
    「すみません鷹見さん、こんなことを聞かせてしまって……」
    「いやいや良いんだって。そんだけ先生のことを好きだったんならイレイザーヘッドも本望だよ」
    「そうですかね……いつまでもグチグチ言ってんなよって言われてるかも」
    「それは否定できないな~」
     ははは。
     軽口にようやく笑うことが出来て涙をぬぐうと、腕時計が時間を知らせてくる。

  • 19124/09/08(日) 19:56:51

    「わっ、もうこんな時間! 鷹見さん、すみません僕抜けます!」
    「はいはい、行ってらっしゃいヒーロー」
    「先生も! こんなにあわただしくてごめんなさい! また来年……いや、時間が合ったら来ますからね!」
     緑谷はそう言って大急ぎで走っていく。
     途中、鷹見のSPらしき人たちとすれ違う。彼らに会釈をしながら、その手に持っている大きめの包みに視線が移った。
     ──なんだろ、あれ。
     そうは思ったが、疑問は遅刻の焦りにかき消される。こんなところでスーツを使うわけにはいかず、緑谷は悲鳴をあげそうになりながらも全力で走った。

  • 20124/09/08(日) 19:58:02

     緑谷が完全に居なくなってから、SPがホークスのところへとやってきて包みを渡した。浅葱色の包みから現れたのは骨壺だった。

  • 21124/09/08(日) 19:58:47

     ホークスは無言で墓の骨をしまうスペースを開けると、そこから今まで仕舞われていた骨壺を取り出し、全く同じ柄の──けれども重量はずっと少ない──それを中へと仕舞いこむ。

  • 22二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 19:59:40

    えっあっそんなまさか…

  • 23二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:00:01

    あっあっあ…うわぁ…好き…

  • 24124/09/08(日) 20:00:13

    「……ご帰宅が遅くなってしまい申し訳ありません、イレイザーヘッド」

  • 25二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:00:33

    あっ(断末魔)

  • 26二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:00:56

    もう泣いてる もう無理 救いはないんですか???

  • 27二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:01:06

    たすけて
    状況の理解ができない
    だれか簡潔にまとめて教えて

  • 28二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:01:27

    きっっついな…
    しんどすぎる
    文章上手すぎるし展開が人の心あり過ぎて好き

  • 29124/09/08(日) 20:01:29

     奇麗に元に戻し、骨壺を包みに巻いてSPを下がらせる。仕立てたばかりの喪服が汚れることも厭わず、ホークスは墓の前で正座をした。

    「全て貴方のおかげです。有難うございます」

     涙を流す資格はない。
     けれども、謝辞を述べる義務はある。翼の代わりに背負った責任に潰されぬように、ホークスは頭を下げた。

  • 30二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:01:49

    イレイザーの大馬鹿者
    白雲に怒られてろ

  • 31二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:01:56

    >>27

    相澤とホークスが個性抑制薬について話す

    半年後実験開始(世間的には死んだことになる)

    さらに半年後おそらく相澤死亡

  • 32二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:02:08

    相澤先生の死因は何だったんだろうか?

  • 33124/09/08(日) 20:02:22

     個性抑制薬が承認されて二ヵ月になる。
     世界は、確かに平和へと向かっている。

  • 34二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:02:33

    実は生きてましたドッキリでいいよ ね?そうだよね……

  • 35124/09/08(日) 20:03:07

    >>33

    以上でこちらの文おわりです!

    お付き合いいただきありがとうございました!


    これからまた別のSS書いて来るのでかけたら投げます!

  • 36二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:03:17

    …これ相澤先生の命と引き換えに世界が平和…
    ……いやそんなことはないよね、うん

  • 37二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:04:28

    アーーーーーーッッッッッスレ主さん人の心ある?
    そうだよねあるからこんな苦しいお話が書けるんだよね……ありがとういい話だった

  • 38二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:04:39

    相澤先生は薬を生み出すための実験で死んだんだろうか?
    それとも別の要因で亡くなったんだろうか?

    とても面白かったです
    素敵なSSありがとうございます!
    他のSSも楽しみに待機しています

  • 39二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:05:50

    好きだ…とんでもなく…

  • 40124/09/08(日) 20:11:35

    一応話の補足
    ただ解釈は様々あると思うので「なんかスレ主が勝手に言ってんな」と思ってもらっても大丈夫です
    ・相澤先生は研究途中に死亡
    ・因子提供をしていたが研究が大詰めになった際どうしても通常の提供方法では足りなくなる
    ・その際生命活動が維持できないほどの提供を余儀なくされる
    ・ホークスが気付いたときには既に体の三分の一も残っておらず、生命維持装置に繋いでもギリギリの状態
    ・薬の臨床試験が終わったのち国の決断として結果として延命措置を打ち切り
    ・火葬
    ・ただいま!

    って感じです

  • 41二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:13:31

    ただいま!!ってそんな明るく言うなよ人の心ないんか??(号泣)

  • 42二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:19:00

    相澤先生、実験中に亡くなったんか…そうか…
    全てが手遅れになってから知るホークスも可哀想だな
    補足ありがとうございます

  • 43二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:23:55

    あーーーーつっっっらい…

  • 44二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 20:25:03

    イレイザーはそんなことする
    それはそれとして白雲と香山先輩に怒られてくれ

  • 45124/09/08(日) 21:43:08

     相澤は前日、ほぼ眠ってなかった。
     もう流石に四十を目前とすると体もついてこないことが多く、一晩程度の徹夜で辛くなってしまう。眼精疲労用の目薬を差して、仕事をさっさと終わらせる。
     学校から支給された型落ちPCをシャットダウンすると、一日半ぶりのベッドへとダイブする。もう寝袋でどうにかなる体ではなく、オールマイトが退職時の餞別としてくれた最高級マットレスなくしては生きられない体となっていた。
     ごろり、と仰向けになると視界に煩わしい物が入っている。
    「……マジかよ」
     所謂疲れマラというやつだった。

  • 46124/09/08(日) 21:43:31

     こんなに体はだるいというのに、空気を読まない自分の体に辟易して上体を起こす。
    「さっさとやってぱっぱと寝るか……」
     相澤はマリアナ海溝よりも深いため息をついて携帯の画面を点ける。登録しているサイトにアクセスして、人気の物を幾つか見繕う。
    「これもしこのタイミングで俺が死んだらどうやって報告されんだろうな」
     意味のない独り言を言いながら、バスケットに入れた物の中で特にシチュエーションが好みの動画のサンプルをタップする。
     けだるげに自分のブツをズボンから取り出し、手を添えた。携帯は近くのスマホスタンドで立てかけ、Bluetoothのイヤホンをつける。
     流れてきた音声に自分の興奮が高まってくるのが分かる。これならばさっさと射精も出来るだろうな、と思った次の瞬間。
    『先生……♡』
    「うわ」
     相澤は声を失った。

  • 47二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 21:44:57


    2作目も全裸待機

  • 48124/09/08(日) 21:45:40

     ‡

     深夜。
     相澤。
     電話。
     もう全部ド地雷の物だ。
     マイクは明日早いし眠っていたいと思いながらも鳴りやまないコール音に舌打ちを一つする。大変友達想いの親友なので、仕方なく受話のマークをフリックした。
    『……山田?』
    「山田で~す。相澤くんコンバンワ。いったいなによこんな夜中に」
    『お前って先生生徒設定のAVって抜けるタイプ?』
    「なんなんだよ本当によ」

  • 49124/09/08(日) 21:46:40

     完全に覚めてしまった眠気にマイクはもう一度舌打ちをした。けれど電話口の相手はまったく気にした様子もない。相澤消太という男はこういう人間だ。
     図太く、人より物事に気が付き、それでいて少し人より傷つきやすい。面倒くさい男だ。
    「本当に何?」
    『いや……今抜いてたんだが』
    「四十間近でもオナるもんか? 俺そこまで溌溂としてねーからちょっと羨ましいわ」
    『サンプルで聞いてた音声の中に学園設定があったらしくって……』
    「俺の嫌味聞き届けてマイフレンド~!」
    『普通に萎えたからやってらんねえなって思ってお前に電話かけた』
    「なんでそんな学生のノリみたいなこと出来んだよお前」

  • 50二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 21:47:33

    平和物きたな
    ありがとう

  • 51124/09/08(日) 21:49:03

     マイクはポットからお湯を注ぎ粉末状のココアを入れる。もう完全に寝る状態ではなくなってしまった。やってらんねえなはこっちのセリフだ、と言ってやったがやはり相澤には効いている様子はない。
    「は~、で、俺はどうすりゃいいワケ」
    『いや、なんも』
    「あ゛?」
    『別にお前にはなんも求めてない。ただ「うわ……」って気持ちを共有したかった』
    「ガキみてえなことに巻き込むなよ! 俺をよ!」
    『お前だってこないだ虫が出て怖かったって二時間くらい俺に電話してきただろうがよ、お相子だろうが』
     そこまで言うと相澤は「まあ少しすっきりした、寝るわ」と言って電話を一方的に切る。
     ツー、ツー。

  • 52124/09/08(日) 21:50:03

     電子音がマイクの耳に届き、信じられなくなって画面を見るがやはり電話は切れている。「いやまさかな」と思って再度かけ直すが電話は繋がらない。
     本気で寝た、あいつ。
    「……っざけんな」
     思わず、低い声が出る。
     マイクはココアを飲み干してコップを置き、代わりに近くにあった携帯ゲーム機を手に取る。家族や友達と一緒にプレイすることも出来る最新型だ。
     そして校長からもしもの時の為にと渡されている各部屋のマスターキーがポケットにあることを確認して、自室の扉を開く。

  • 53124/09/08(日) 21:51:04

    「朝までスマブラしようぜ相澤ぁ……!」
     ギンギンになった目でマイクは部屋を出ていく。
     この間二時間虫の愚痴を聞いてやった相澤は、まさかマイクがこの程度のことでキレるなど思いもせず、すやすやと寝息を立てていた。
     怪獣の襲来まで、あと二分。

  • 54124/09/08(日) 21:51:33

    >>53

    短いですがこの話はここで終わりです!

    お付き合いいただきありがとうございました!

  • 55124/09/08(日) 21:52:37

    相澤先生とマイクは…なんかこう、お互い二人になると学生時代のノリが抜けきってないところとかあると良いなって思っててえ…
    先生も山田には「まあここまでならええやろ」のラインが他の人と比べて滅茶苦茶高かったりしてほしくてえ…

  • 56二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 21:57:10

    めっちゃ好きです
    ありがとう!!!!

  • 57二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 21:57:19

    オレ スレ主の深い解釈 スキ
    負担でなければ モット続けてホシイ

  • 58124/09/08(日) 21:57:27

    次書けるのが明日の夜なんですが自分が保守するのちょっと難しいんで誰かやってくれるとトテモタスカル
    あとスレは消費しすぎなければ適当に雑談とかで使っててくれて構わんす
    相澤先生関連の話しだったらなんでも。ただ好きな設定あったら書いちゃうかもしれんのでそういうのが嫌な人は気を付けて

  • 59124/09/08(日) 22:00:36

    >>57

    嬉しいって言われて嬉しい

    もっと書いちゃお

  • 60124/09/08(日) 22:03:31
  • 61二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 22:05:36

    このレスは削除されています

  • 62二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 22:06:22

    相澤先生に対する妄想をぶちまけます

    相澤先生が放課後の教室を覗いてみたら、いつも明るい上鳴とかの生徒がひとりだけポツンと残って真面目に勉強してる。生徒は先生に気づかぬまま、一人夕方の教室にいる恐ろしさとか上手く解けない自分への苛立ちとかでメンタルが不安定になりはじめる。
    そこに見かねた相澤が入ってきてカウンセリング(お話)するのずっと考えてる

    スパダリならぬスーパーティーチャー相澤先生が観たい

  • 63二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 22:14:57

    相澤先生さぁ……喫煙しなさそうだけどさぁ……ふっと偶に吸って揺蕩う煙を見て白雲のこと思い出したりしないかなって1人で想像して泣いてる
    (ちなみにこれは大戦後でもアングラヒーローやってる若い頃でもいいです)

  • 64二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 22:31:53

    ハイ!!!見回りに来たら眠れねえ生徒のために慣れない手つきでココアやらホットミルク作ってるイレイザーが見たいです!!!!幻覚!!!
    「…おいし」って言ってほっとする/ぽろりと涙が溢れるティーンエイジャーを不器用ながら優しく慰めてまだ幼い子供なんだなぁ、って改めて思う先生

  • 65二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 22:33:38

    遅ればせながら一作目を読んでガチ泣きしてる
    どうせ生きて帰ってくるんだろうなと思って読んでた
    軽い会話の中にお互いのヒーローとしての価値観みたいなのが見えてめちゃくちゃ好き
    それはそれとして情緒が死んでる

    これのマイク視点とか書いてもらえませんか…

  • 66二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 22:35:06

    一作目の骨壷出てきた時の絶望感がすごい
    死って説明しなくてもこんなわかるように書けるんだ…

  • 67二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 03:20:15

    ほしゅ

  • 68二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 04:35:59

    >>64

    わかる

  • 69二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 06:34:02

    めちゃくちゃ好きな文体だから他の死ネタとかあったら見てみたい…胸がキュってなる感じの話し見たいです

  • 70二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 08:06:18

    保守

  • 71二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 09:33:17

    普段飄々としてる瀬呂くんとギリッギリ生徒とできるラインの会話してほしい
    放課後の教室とかで偶然二人きりになって、適当に言ったノリの言葉に対して普通にノリ良く帰ってきて!?ってなる瀬呂くんがみたい
    なんかよくわからん人だなって思ってたけどあれこの人意外と面白い!?って思う瀬呂くんと割と三馬鹿時代色々やってきたのでDKノリが分かる相澤先生

  • 72124/09/09(月) 18:28:12

    ただいま


    >>40

    冷静によく見たらここ最初と最後で二回相澤先生死んでて笑った

    >>・相澤先生は研究途中に死亡

    ここは無視してくれ

    先生が死んだのは薬完成したあと

    蛇足を何度もすまん

  • 73124/09/09(月) 18:30:09

    保守ありがとう
    今から書いてくるね
    何が飛び出てきても許せサスケ

  • 74二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 18:30:45

    お帰り
    楽しみにしてる

  • 75二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 18:34:21

    まってた
    なんでもこいや

  • 76二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 18:41:22

    待ってましたァ!!!

  • 77124/09/09(月) 18:43:58
  • 78124/09/09(月) 19:40:57

    出来たやつちょっとずつ投げていく~

     朝。
     まだ日差しが東の地平線から出てきたばかりの時間帯、緑谷はアラームよりも先に目が覚めた。まだ眠気が抜けていない目を瞬かせながらのっそりと起き上がり、洗面台へと向かう。朝の清潔な空気が部屋の中に充満していて、フローリングの上を歩く足がペタペタと音を立てた。
     歯を磨き、顔を洗い、自分の顔を見つめる。最近メディアで活動するようになった上鳴から「初心者ならこれ!」とおすすめして貰ったオールインワンジェルで顔を潤すと、いつもよりも若干顔色が良くなったように見えた。
     更に顔面を注視し、剃刀を持って葉隠から教わった通りに眉毛の形を整える。小さなすきバサミを手に眉毛全体の主張が少なくなるようにして、剃った痕を隠すように少量のコンシーラーをつけた。指先でぼかせば肌との境目は分からない。

  • 79124/09/09(月) 19:41:24

    >>78

     仕上げに少量のワックスを手に取って心操と散々練習したスタイリングでナチュラルにまとめる。出来上がった顔や髪は何もしていないように見えるけれど、確かにいつもよりも精悍に見えた。

    「女の子の言う「今日は何もしてない」ってたぶん、こういうレベルのことなんだろうな……」

     言語化が難しい変化に緑谷はため息をついた。

     ブレスウォッシュを飲んで、口臭の確認。

     頬をはたき、深呼吸を一つ。

    「よし」

     緑谷は全ての準備を整えて玄関の扉を開ける。

     今日は、決戦の日だ。


     ‡


     敵の退治が直前に入ってしまい遅れること一時間。メッセージを確認したところ、まだ飲んでいるらしく『三猿』へと爆豪は向かう。扉を開けると無口な店主とその見習いが出迎えた。奥の座敷から聞こえてくる賑やかな声の中には涙にぬれたそれが合って「ああそうだろうな」という納得の感情が顔に出そうになる。

     それをこらえて、座敷へと顔を出した。

  • 80124/09/09(月) 19:43:48

    >>79

     それをこらえて、座敷へと顔を出した。

    「遅くなった」

    「お疲れ~! もう飲んでるよ!」

    「見りゃわかるわ。で、クソ迷惑なメッセージ寄越したカスは?」

    「こちらで~す」

     座敷には芦戸、麗日、轟、瀬呂、上鳴が机に突っ伏している人物を囲む形で飲んでいる。爆豪の問いかけに芦戸は大口を開けて笑うと丁寧に両掌を上にして突っ伏している人物を指し示した。

     巨大なブロッコリーにも見える人物は爆豪の声を聞くとかろうじて顔をあげる。

    「ゔっ、うぁっ、がっぢゃん゛」

    「随分な出来上がり方だな。親父ー、生一つ」

     学生時代はよく見た、涙でおぼれそうなくらいの勢いで泣く緑谷に特に感動もなく爆豪は注文をして座敷に座る。近くにいた轟にコートをかけてもらうと、運ばれてきた生ビールを持って緑谷の頭に軽くぶつけた。

  • 81二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 19:45:48

    wktk

  • 82124/09/09(月) 19:46:51

    >>80

    「いたっ」

    「本日の主役にかんぱ~い」

    「おっ、爆豪良い飲みっぷり!」

    「初飲酒の時「こんくらい余裕だわ!」つって盛大に戻した時とは大違い!」

    「いつまで引きずってんだてめえらは! ああ!?」

     ジョッキの半分ほどを飲み干すと、瀬呂と上鳴が囃し立てる。それに怒鳴り返しているとようやく緑谷がしゃんと背筋を正した。スタイリングに苦労しただろう髪も整えた肌もぐしゃぐしゃだ。いっそ哀れみすら覚える。

     だがそれを口にすることはない。爆豪は既に食い荒らされているつまみに追加して串焼きを何本か注文する。大将はこちらがどれだけ騒いでも何も言わず、無言で調理に取り掛かっていた。

    「で? なんて言われて振られたんだよ」

    「振られた前提なんだ、振られたんだけどさ」

    「この状況でOK貰えてたら逆に引くわ」

    「それはそう」

    「ほら緑谷~、かっちゃんに答えたげて」

    「かっちゃん言うなや」

  • 83124/09/09(月) 19:49:30

    >>82

     近くにあった枝豆をつまみつつ、緑谷が苦手な酒を飲むのを見守る。グラスは都度片付けられているのだろうが、今さっき来たばかりの爆豪の目から見てもペースが速いのは明らかだった。

     顔が赤い状態でグラスを離さない緑谷に、隣に居た麗日と轟が心配そうにお冷を渡そうとしていた。

    「デクくん、お水飲みな?」

    「そうだぞ緑谷、さっきから飲みっぱなしだ」

    「麗日さん……轟くん……うん、でももうちょっとだけ」

     彼が酒に逃げるのは珍しい。爆豪ですら初めて見たかもしれない。どんな時も付き合い以上で飲むことのない男だ。

     緑谷は手元にあった梅酒を半分ほど飲んでからため息をついた。

  • 84124/09/09(月) 19:53:06

    >>83

    「ええと……」

     言葉を選んでいるのか言い淀む。

     芦戸たちはすでに出来上がっていて「ええとだって~ウケる~」と意味の分からないところで笑っていた。まあ一時間も放置していればこうもなるだろうか。

     緑谷は騒がしい空気をたしなめることもせず、音量を静かに下げた。

    「……好みじゃ、ない、らしく」

    「は?」

     聞こえてきた言葉が信じられなくて爆豪は聞き返すが、これ以上言いたくないのかまた緑谷は残っている梅酒を飲み始めた。

     どういうことかわからず麗日に視線を送ると、眉を下げて肩を竦めた。

  • 85124/09/09(月) 19:55:36

    >>84


    「好みじゃなかったんだって。相澤先生の」

    「好み? あの人好みとかあるんか?」

  • 86124/09/09(月) 19:56:12

    >>85

     爆豪は追加できた串焼きとウーロンハイを飲みながら「好み」と復唱した。思い浮かべる人物と似合う言葉ではなかった。

     幼馴染の緑谷出久が恋をしたのは十四歳年上の元担任だった。それだけ聞けば何を馬鹿な事を、やめておけと同級生たちも止めることが出来ただろう。だが担任……相澤消太は自分たちにとって特別な教師だった。駆け抜けた高校生活、魔王と戦った一年間。そのすべてにあの人が居た。

     さらに緑谷は職場も同じだ。好きになってしまうのはもう仕方ないという物だろう。そこまではいい。

    「センセーってちゃんと恋愛に好みとかあんのか」

    「意外だよなー。俺も振られるなら「元教え子だから」とか「男は無理」とかだと思った」

    「あと私は「流石に一回り以上年下とは付き合えない」かなって思ってた!」

    「もしくは「恋愛なんてしてる場合じゃないだろ、合理的じゃない」とかな!」

  • 87二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 19:57:12

    デク→先生ですね…

    最高です

  • 88二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 19:59:27

    ありがとう…ありがとう…生徒→先生も生徒×先生(逆も好き)も大好きなの…スレ主天才…

  • 89124/09/09(月) 20:00:00

    >>86

     散々な評価だが、爆豪も概ねこの三人と意見は同じだった。轟はお冷を飲みつつ爆豪が頼んだ串を頬張る。

    「これ美味いな」

    「おいこら轟ィ! 勝手に食ってんじゃねえぞ!」

    「金は払う。これ美味いぞ爆豪」

    「知っとるわだから頼んだんじゃ!」

    「好みの話だが」

    「おいこら無視すんなや」

     爆豪の怒鳴り声をどこ吹く風でいなしながら、轟は二本目の串を食べる。奇麗になった皿に怒鳴り散らしつつこれ以上言っても無駄だと悟ったのか爆豪が追加注文した。

    「先生にも好みくらいあるだろ、昔ゼリー飲料いつも同じ味だけどなんでですかって聞いたとき味が好きだからって言ってたぜ」

    「それとこれ同列かなあ」

    「って言うかなんでさっき言わなかったの?」

    「さっきまで爆豪が来てなかったからあんま話進めねえほうが良いと思って」

  • 90124/09/09(月) 20:03:14

    >>89

     爆豪が来る一時間前から話されていた話題にしては随分と初歩的なことを話すのだな、と思ったら気遣いだったらしい。「要らん気遣いだわ」と最早ツッコミ疲れて勢いのなくなった声でいい、爆豪は運ばれてきた串を口に運んだ。

     「じゃあさあ」と、麗日の声が通った。

    「先生の好みって何なんやろ、それさえ満たせばデクくんにもチャンスあるってことじゃない?」

    「いや、ないよ……」

    「うわあ喋った!」

    「そら喋るだろ」

    「ってことは緑谷は先生の好み聞いたってことか?」

     一人だけお通夜のような空気になっている緑谷に、「先生の好み」という特大の餌に釣られた芦戸が食いついた。瀬呂や上鳴も興味はあるらしく瞳だけがらんらんとこちらを見ている。

     爆豪はくだらないと口では言いつつも、同じように緑谷を見ていた。

  • 91124/09/09(月) 20:06:13

    >>90

    「えー! 聞きたい聞きたい聞きたい~! 先生の好みってどんななの!?」

    「やっぱセクシー女優系?」

    「いや男もいけるならやっぱ高身長イケメンとかじゃね?」

    「先生の好み……猫派、とかか?」

    「あー、それ大事そう!」

    「身長、二メートル以上」

     皆が予想をしてはしゃぎ始めた頃、地を這うような声が響く。あまりにも低く、思わず爆豪は手に持っていたウーロンハイを落としかけた。

    「体格、最低自分以上」

    「で、デクくん?」

    「年上、収入はどの程度でもいいが自立している、ギャンブル癖がない、リーダーシップがある、顔は良ければ良いほど良い」

    「りーだーしっぷ」

  • 92124/09/09(月) 20:08:38

    >>91

     いくつかの「好み」に思わず爆豪の発音が幼くなる。しかしそれを揶揄うことが出来る人は今いなかった。

     元担任の、「好み」少々生々しいそれを緑谷が言うとは誰も思わなかった。彼は人の個人情報を言うような人ではない。恐らくその担任が「別に誰に言ってもいい」と言ったのだろうが。

     出てきた内容は少しばかりどころではなく衝撃的で、全員の意識を停止させるには十分だった。

     自分から知りたいと言った芦戸も目を瞬かせている。

     いち早く立ち直ったのは麗日と轟だった。

    「つまり、ぐいぐい引っ張られたい……ってこと?」

    「まあ今のところ緑谷はちょっと当てはまらないな」

     二人がいつもの調子で言うので、衝撃で固まっていた爆豪が再始動する。

    「ちょいどころじゃねえだろ、こいつの身長先生より低いぞ」

     そこでようやく、瀬呂、上鳴、芦戸の三人が動き始めた。

  • 93124/09/09(月) 20:11:10

    >>92

    「体格が良い人が好きって言うのも難しいね。砂藤みたいなタイプが好きってこと?」

    「そんで性格は飯田みたいな?」

    「顔は轟か」

    「砂藤の体に俺の顔をつけてもちょっと違うんじゃねえか。爆豪とかはどうだ」

    「それは違うな」

    「うん違う」

    「違うなあ」

    「じゃかあしかぁ!」

    「っていうか顔も重要なんだな。緑谷も結構可愛い感じの顔だと思うんだけど」

    「えっ、瀬呂……」

    「そういうんじゃねえってわかるだろ! ややこしくすんなよ!」

    「まあでも緑谷は可愛い系の顔だよね、違うってなると格好いい系とか王子様系? やっぱ轟か~」

    「すまん緑谷、顔を交換できるならしてやりたいんだが」

    「あ、ああうん、有難う轟くん、気持ちだけで十分だよ」

     轟の斜め上の気遣いに緑谷は少々困惑気味に辞退の意を示す。

    「……実はもう一つあって」

    「多いな」

    「先生案外好みに拘りある人なんだな」

    「本人あんな無頓着なのに」

    「それで? 最後の好みって?」

     緑谷はここまで来て言い淀む。

  • 94124/09/09(月) 20:12:02

    >>93

     「別に好きに言って良いって言われてるんだけど」と前置きをしながらも中々言い出さない。全員がやきもきし始めた頃、爆豪が飲みきったウーロンハイを机に叩きつけた。

     その音に驚いたのか肩を跳ねさせて、口から言葉が飛び出る。

    「ト、トップ、の、人っ! ぁ……だ、そう、です」

    「え」

    「あ」

    「マジ?」

    「トップ……一番上ってことか? ルミリオン?」

  • 95124/09/09(月) 20:12:54

    >>94

     意味の分からなかった轟以外が驚いているので、轟は隣に居た芦戸を肘で小突いた。

    「なあ、トップってなんだ?」

    「え? あー……私も聞いた話でしか知らないんだけど、男の人同士でエッチする時に……えーと、挿入れる、側の、人?」

    「いれる? どこに?」

    「ケツの穴」

    「ば、爆豪くん!」

    「男同士はケツ使うのか、わり、教えてくれて助かる」

     轟の天然が炸裂するが、場の混乱は収まっていない。相澤消太という人のことを皆思い浮かべる。年上でいつも落ち着いていて自分たちを導いてくれて、あの学校生活で出会った頼れる大人だ。

     相手にトップであることを求めている、ということはつまり相澤はボトム……つまり、抱かれる側だということだ。

    「そ、そうなんだ先生……」

    「はー、意外だな」

    「でも引っ張ってほしいってタイプならまあ抱かれたいっていう人でもおかしくはないよな」

  • 96124/09/09(月) 20:15:27

    >>95

     担任の意外な一面を見たというところで驚きすぎてしまったが、一同は冷静さを取り戻しつつあった。

    「先生だって人間だもん、俺らの知らないところあるよな」

    「緑谷と合わない部分があってもしゃーないって」

     相澤消太は担任であって友人ではない。

     友人ですら知らない一面があるというのに、大人と子供として接していた担任ならばなおさらだろう。

    「で?」

     だが爆豪はそこで話を終わらせなかった。

    「で? ってどういうことだよ爆豪」

    「そんで、お前はなんて返したんだよ」

    「あ、そか。今までのは相澤先生の話で、デクくんが降られた後なんて言ったかはまだ私たち知らないや」

    「まさか「いや僕先生のことは抱けません~」ってしっぽ巻いて逃げたんか?」

  • 97124/09/09(月) 20:16:27

    >>96

     爆豪の挑発的な言葉に、緑谷はぎっと視線を鋭くして睨みつける。


    「そんなわけないだろ! 僕はそれでもいいですって! それが良いですってちゃんと言ったよ!」


    「おっ、緑谷おっとこまえ~!」

    「いいぞ~!」

    「で?」

     爆豪の追及は終わらない。

     一度は怒鳴り返した緑谷だが、酒に浮かされているのもあるのだろう、ぼろぼろと涙が零れ落ちる。

    「そ、そしたらぁ……お前は好みじゃない、ってぇ……」

    「あー、振られたの二段構えだったのね」

    「最初に体関係を理由に振られて食い下がったらそもそもお前眼中にねえよって言われたんか」

    「う、うぁああああ」

    「デ、デクくん! お水飲も! ほら、お水だよ~! 美味しいよ~!」

  • 98124/09/09(月) 20:17:51

    >>97

     緑谷は再度麗日から水を勧められ、ようやく爆豪が来てから初めての水を摂取した。コップの中身が底をつくほど一気に飲み干してから、涙にぬれた目をぬぐう。

    「……それでも僕、諦めきれないんだ」

    「おいいきなりまともになるな」

    「これだから酔っ払い嫌いなんだよ」

    「水ってこんな即効性あるっけ?」

    「いやこれまだ酔ってんな」

     意思の強い目で正面を睨みつける緑谷だが、目線は虚空を見つめている。それにいち早く気付いた爆豪が携帯のアプリでタクシーを呼んだ。

     適当に荷物をカバンの中に詰めてやり、やけにキリッとした表情をしている緑谷の膝に置く。

  • 99124/09/09(月) 20:18:49

    >>98

    「もうコイツ駄目だ。さっさと雄英に帰す、タクシー呼んだわ」

    「りょ~」

    「デクくん大丈夫? 気持ち悪くない?」

    「ぼく、ぼくは……僕は、まだ……」

    「諦めねえんだろ、良いんじゃねえのそれで」

     やはりキリッとした表情は束の間の幻影だったのか、すぐに眠気に襲われたふにゃふにゃの顔へと変わっていく。爆豪はため息をつきながらも律儀に緑谷の言葉に返答してやる。

     ここまで酔いつぶれるこの男は珍しいが、記憶はしっかりと残っているタイプだ。きちんと答えてやれば、あとは勝手にどうにかするだろう。

    「センセーだって老い先みじけぇんだ。押して押して押しまくりゃいつかは落ちんだろ」

    「かっちゃ……」


    「こんなクソ忙しい時に人呼びつけといてやっぱ諦めますなんてクソみてえな事言うなよ、出久」

  • 100124/09/09(月) 20:19:15

    >>99

     眠気でもうほとんど聞いていないだろう頭をぐしゃぐしゃとかき回してやれば、小さく「ありぁとかっちゃ……」と声が聞こえる。

     それに満足げに笑って、爆豪は店先に出てタクシーを待った。


     ‡


     二ヶ月後。

     相澤の方から「お前の幼馴染から猛アタックを受けてるんだが何とかしてくれないか」という相談が来て、思わず全てを投げ出してしまうのはまた別の話

  • 101124/09/09(月) 20:22:14

    >>100

    こちらの話これで以上になります!

    私はな……酔っ払いながら「あの人のことが好きなんですよ~」って管巻く奴が好きなんだ…

    相澤先生はあんまり元生徒だからとかそういう部分ではなくて「自分がお前を好きじゃないから」っていうちゃんとした理由で振ってくれそうっていう願望

    ちなみに先生生徒時代に告られた場合は普通に「嫌無理」だけで振られる。生徒と教師という関係性を壊してきたのは相手なので誠実な返答をする意味が無いから


    あともう一本今日書ければ持ってきます、かけなかったら明日また持ってきます

  • 102二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 20:23:32

    ありがとうありがとう最高だった
    デクくんがんばえ...

  • 103二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 20:30:50

    こんな場末の掲示板で消費されていい才能じゃないだろという気持ちとスレ主の癖がちゃんぽんすぎてここじゃないと無理やろなと言う気持ち二つがある

  • 104二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 20:34:53

    スレ主ありがとう 全てのお話がなんでも食う俺の癖にクリーンヒットしてる

  • 105二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 20:45:59

    いや、…いや、えぇ?
    これ無料?金払って読むもんじゃなくて?

  • 106二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 20:46:29

    雑食で良かったと心から思う
    何でも読める

  • 107二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 20:53:12

    ssって言うかこれ文字数全部ですでに一万超えてないか?ほんとにこんなとこで公開してて平気?

  • 108二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 20:56:48

    なぁこれ本にするだけで多少の収入になるぞ!?
    こんな…こんな巣窟で吐き出していいのか!?!?

  • 109124/09/09(月) 21:01:38

    何かめっちゃ褒められてて照れるな
    でも小説で本にするなら最低10万字~は必要だし、CPもシチュもバラバラで今はまとめたりする気はないかなあ
    昔はヒロアカに居たけど今完全に別ジャンルおるし
    そもそも載せてるやつは書きたいものをノリで書いてるせいで起承転結もまとまってないし
    売り物にはならんよ

  • 110124/09/09(月) 21:06:16

    >>109

    あ、ごめん

    褒められてることを否定してるわけではなくて「売り物を意識して書いてないから本にするつもりはない」って意味

    褒められるのはめちゃくちゃ嬉しい

  • 111二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 21:14:55

    >>109

    そうなのか厳しい世界…

    でもありがてえ、じゃんじゃん書いてくれると俺の命が助かる

  • 112124/09/09(月) 21:42:45

    >>111

    世界というよりも個人的な心構えと言うか

    小説って単価がどうしても高くなっちゃうから赤字すれすれにしても一冊1000円とかになったりするのね

    それでも買いに来てくれた人がいるのに「いや~w起承転結ぐっちゃぐっちゃのやる気ない本だけど本になればヨシw」みたいに書いた人が言ってたら自分は悲しくなってしまうから

    なんか高説垂れてるみたいで申し訳ない


    風呂入ってきたから今から書いてくる~

  • 113二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 21:44:34

    >>112

    直々の返答ってだけで飛びそうなほど推してるよ今あなたのこと

    沢山書いてくれ…命の糧…

  • 114124/09/09(月) 23:13:04

    全部かけなかった~前編だけあげるね

     初めて親友を亡くしたのは高校二年生の頃。俺は現場に居られなかった。雨の降る冷たい日、もう一人の親友を俺は一人にした。
     次に先輩を亡くしたのはそれから十五年後。また俺は死に目にすら会えなかったが、立派に戦ったらしい。俺たちはまた取り残された。
     周りの景色が変わって、人が変わって、時代が変わって。
     それでも。
     それでも、ただ一人残ったこの親友だけは傍に居るのだと、なぜかなんの根拠もなくそう思っていた。
     そう思っていたんだ。

     ‡

     閑静とは言い難い街並みをマイクは一人歩いていく。長い脚が朝日に照らされてコンパスみたいな影を描いていた。

  • 115二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 23:13:06

    全部読んで全部刺さりました
    ありがとうございます

  • 116124/09/09(月) 23:13:36

    >>114

     駅からほど近い場所にあるビルを見上げ、中へと入っていく。関係者パスを見せればスタッフが何も言わずに通してくれた。

     関係者用通路を通って入ると、慌ただしい音が聞こえてくる。音の発生源を特定すると分厚い扉を開いた。

    「おはようございま~す」

     場所は大人数を収容できそうなライブ会場だった。カラーリングは全体的に黒で統一されていて、照明の確認もされている。個性の都合上出入りをすることの多いライブ会場とほぼ同じと言って良いだろう。

     普段と違うのは、壇上にあるのが楽器類ではなくて大きな……本当に大きな写真と花の群れであること。ライブ会場にそぐわないマイクの喪服も、壇上の風景とはマッチしていた。

    「あらひーくんいらっしゃい!」

  • 117124/09/09(月) 23:14:46

    >>116

     黒のウェーブがかった長髪の女性が同じように喪服を着てバインダーを持っていた。マイクに声をかけた女性は近くに居た他のメンバーにも声をかけ始める。

    「あんたたち! ひーくん来たよ!」

    「うわ! ひざしマジで来てる! 助かる~!」

    「ママ~! ひざしくん来たよ!」

     口々に伝言されていき、最後は年配の女性が出てくる。真っ黒な長い髪はストレートで、「そこはお父さん譲りなんすね」といういつもは口に出している言葉を飲み込んだ。

    「ひざしくん! 来てくれて助かるわぁ!」

    「おばさん、この度はご愁傷様で」

    「ああいいからそういうの! もう死ぬほど聞いたしこれから死ぬほど聞くんだし! それより手伝って! 事前に送ってもらったターンテーブルってこの位置で良い?」

  • 118124/09/09(月) 23:15:19

    >>117

     言いながら、女性はマイク愛用のターンテーブルを壇上の目立つところに設置している。マイクは何か言いたいことを飲み込んで「大丈夫デス」と片言で返事をした。

     マイクは壇上の一番目立つところを見る。

     置かれている壺に、思わず息が詰まった。

    「おばさん、あれ……」

    「ああ、前火葬にしたのよ。これだけの大人数火葬場に移動させるの大変でしょ。……それに、あんまり見てほしくない状態だったから」

    「あ……」

     なにが、と言わずともわかる。マイクも事件のあらましは知っていた。思わずマイクが黙り込んでしまうと、後ろから背中を思い切り叩かれた。

    「い゛っ!?」

    「ちょっとひざし! チャキチャキ働いてよね! 兄貴に「合理的じゃないな……」ってまた言われるよ!」

  • 119124/09/09(月) 23:16:01

    >>118

    「い、妹ちゃん、お久~……そういや結婚したんだっけ? おめでと♡」

    「いつの話よ。花束と電報だけ送りやがって。もう子供は十二歳です~、この独身ハゲ野郎。ほら、霧子ご挨拶」

    「十二歳です! 霧子です! ひざしくん初めまして!」

    「ちょちょちょちょちょ! 独身まではいいけどハゲはねえだろハゲは! 霧子ちゃん可愛いねえ~初めまして!」

    「ほら働いて~、兄貴が怒ってるよ~」

     自分の目を吊り上げて「山田ぁ~なにやってんだぁ~」と低い声を出す女性はマイクと六つしか変わらないが随分と幼く見える。

     吊り上げさせた目があいつにそっくりで、マイクは思わず笑ってしまう。

    「大丈夫だよひーくん、死んでるから言われないって。平気平気~」

    「ちょ、お姉さんそれは……」

    「それもそっか……ひざし! 地獄に居る兄貴が「合理的じゃないな……」って言ってるよ!」

    「自分のお兄さんを地獄送りにしないで!?」

  • 120124/09/09(月) 23:16:36

    >>119

     女性たちに囲まれてマイクは戸惑いながらもツッコミを放棄しない。女性陣の動きに一々ツッコミを入れていると、後ろから大きな咳払いが聞こえた。

    「あっママ……」

    「ほら! あんたら何やってんの、さっさと準備しなさい! ひざしくんケータリング運んできて! 男は力仕事だよ!」

    「ウィ、ウィッス!」

     怒鳴りつけられてマイクは大急ぎでケータリングの受け取りに走る。場所は昨日の内に送られてきたメールで全て熟知していた。

     内面は似ても似つかない家族だけれど、こういう几帳面なところは彼そっくりだ。

     マイクはヒーロー業で培われた体力でケータリングを運んでいく。体を動かしている間は、何も考えずに済む気がした。


     ‡


     相澤が死んだ、と聞かされたのは三日前。

  • 121124/09/09(月) 23:17:07

    >>120

     朝の時間、珍しく朝礼をすると職員室に入ってきた校長が言った言葉に室内がしんと静まり返っていた。小さな「え?」という呟きは相澤の隣に座っている緑谷の物だった。

    「え、そん……え? あい、ざわ先生が……?」

    「今朝、警察から歯型が一致したと、連絡があったよ」

     相澤は二日前から行方不明だった。だがそれ自体はあまり問題のないことだ。彼は個性の都合上どうしても人に言えない業務に携わることが多い。

     今回もその類だろうと、誰も特に気にしていなかった。強いて言うならば緑谷が「聞きたいことがあったんだけどいつ戻ってくるだろう」と不安がっていたことくらいだろう。

     山田も、当然気にしていなかった。

    「い、いやでもさ、歯型って、そんな……」

  • 122二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 23:17:51

    一作目のマイクsideストーリー!?

  • 123124/09/09(月) 23:18:05

    >>121

    「DNA鑑定は済んでいて、ご家族への連絡も終わっている。……通夜はご家族で行うらしい、告別式は三日後を予定しているそうだ。参加は募るようだから、各知り合いへの連絡の手伝いと……それから、当日手が空いていれば行ってほしい。相澤くんが副担任のA組は希望があれば臨時休校に」

    「ま、まってください!」

     緑谷の悲鳴が響いた。

     大きな目は見開かれているが状況を飲み込めておらず涙は浮かんでいない。ただ混乱が渦巻く視線に、セメントスが肩を抱いた。

    「まって、まってください、そん、そんな。い、いつですか、いつ……」

    「……二日前、敵に襲われたようだ。遺体は損傷が激しく身元の特定に時間がかかったらしい」

    「だ、って、先生ですよ!? あいざわ、先生、ですよ」

    「敵は異形型の個性でイレイザーヘッドが全盛期の時代に倒した相手だった。今回は逆恨みで……完全に彼の戦闘スタイルを熟知していた相手の方が上手だった。それでも相討ちまでは持って行ったのが彼らしいよ」

    「ぁ……え、あ……」

     緑谷が立っていられなくなり、座り込む。

  • 124124/09/09(月) 23:19:29

    >>123

     声をかけるが、彼の視線は遠くにありようやく追いついてきた涙がこぼれていた。なんと言えばいいかわからず、ただ肩に手を置く。

    「今日は……緑谷くんはお休みにしよう、寮で休んでいなさい」

    「い、ぃ、やでも」

    「良いから。そんな顔を生徒に見せるものではないよ」

     校長に優しく諭されて、緑谷は大人しく荷物を纏めて職員室を出た。それからほどなくして、予鈴が鳴る。

    「悪いがマイク、今日のA組は」

    「だぁぃじょうぶっすよ、俺がやっとくんで」

    「……すまない。君も親友を失っているのに」

     校長に頭を下げられ、それでもマイクは首を横に振った。サングラスの奥の緑色が、何でもないように笑っている。

    「こんなことでしょげてたらあいつに顔向けできねえっすよ! まあ任せといてください校長!」

    「ああ、頼むよ」

  • 125124/09/09(月) 23:19:54

    >>124

     校長の表情変化はわかりにくいが、気遣われていることだけは分かった。マイクは伸ばされた手に握手をして今日の業務に取り掛かる。

     ひとまずは、A組の予定を頭に入れるところからだった。




     ひとしきり仕事が終わり、マイクは職員室で椅子に凭れ掛かる。目を瞑ると昼間の少年少女たちの顔が思い浮かびそうになって意図的に目を開けた。それでも耳にこびりついた音が鼓膜を揺らして不快だった。

     どうして、なんで。嘘でしょ、嫌。

     悲鳴と、怒号と、すすり泣く声。戦場では何度も聞いてきたけれど、教室では一度も聞いたことのなかった音。

    「俺だって嫌だよリスナー……」

     誰もいない職員室で、ぽろりと本音がこぼれる。いつもならば何人かが常駐しているこの場所も、彼の穴を埋めるために皆散らばっている。

  • 126124/09/09(月) 23:20:45

    >>125

     夕焼けの日差しが長く職員室を照らしている。まるで映画の照明みたいだ。無言になっていると、急に今までの記憶がよみがえりそうになる。誤魔化すために携帯の画面を点けた。

    「そういや、告別式の連絡……しねえと」

     まず、相澤が死んだことを伝えなければいけない。自分の家族に伝えようとしたら未読メッセージに既に母親から連絡が来ていた。親同士の仲が良いとこういう時連絡が省けて良い。

     あとは誰だろうか。誰に伝えなければいけないだろうか。

  • 127124/09/09(月) 23:21:57

    >>126

    「相澤の知り合い……アイツ案外顔ひろいんだよな、付き合いも悪いわけじゃねえから年上に可愛がられやすいし……ってなると事務所継いだ心操に……って流石に心操には行ってるか」

     あとは。

    「小学校時代の先生とか? いや結婚式じゃねえんだからそういうのは良いか」

     あとは。

     マイクは一つ一つ考えていく。だが、自分でも意識的に避けているものがあった。

     トークアプリのグループ画面を見る。歴代雄英生の代表OB・OGの連絡用グループルームだ。誰もここに触れた形跡はなく、皆意図的に見ていないのだとわかる。

     重苦しいため息を吐いてグループにトークの投稿をしようとするが、文面を書いては消して書いては消してを繰り返す。

  • 128124/09/09(月) 23:22:42

    >>127

    「いや、そういや……場所どこだよ」

     文面を考えているとき、ふと重要な事項が抜けていることに気が付いた。

     というか告別式と通夜がこんなに日が空いてるのも珍しい。日程が取れなかったのだろうか。マイクはPCを開いて職員に一斉送信されたメールを探し始める。

     未開封になっているそれをクリックして開いた。

    「えーと、場所、場所……っていうか告別式ってあれ棺桶に花入れるやつだよな。あれをわざわざやるってどういうことなんだ……? あー、メールメールメール……」

     メールの文面は相澤の母親が書いたものをそのまま転送していた物だった。一から順に読み込んでいくと、次第にマイクの表情が曇っていく。

  • 129124/09/09(月) 23:23:15

    >>128

     そして、書かれた一文を読んで、思わず大絶叫する。

     彼の困惑に応えるかのように、メールの本文を書いた張本人から呼び出しの電話が鳴った。


     ‡


     “DJヒーロー、プレゼント・マイクが相澤消太と皆様とのお別れを盛り上げます! ぜひご参加ください! 場所は■■ビル二階ライブ用ホールにて”

  • 130124/09/09(月) 23:23:49

    >>129

     書かれた一文を読み上げて、更に準備を手伝いながらマイクは絶叫する。

    「これもう告別式じゃなくナイ!?」

    「まあ通夜は終わったし……火葬も終わったし……あとは生前皆さんに沢山お世話になりました有難うございます会が出来れば良いかなって」

    「せめて俺への許可は取ろう!? 俺がどんだけ怒られたと思ってんの!?」

    「えっ、怒られたんだ。どんまい」

    「不謹慎だ何やってんだってめちゃくちゃ怒られたんだよ!」

    「雄英ってお堅いのね」

    「相澤家が自由なんだろこれ!」

  • 131124/09/09(月) 23:27:43

    >>130

    とりあえずここまでです!

    お付き合いいただきありがとうございました!

    一作目の半年後相澤先生が死んだことになったあとのマイクの話になります!

    モブのお母さんとお姉さんと妹と妹の娘が出てきます!

    私は先生に女の子の姉妹に囲まれててほしいんだ


    死ネタが好きとかじゃなくてキャラが一番輝くのが死の瞬間だと思っているのと同時に、残された側が苦悩し絶望してその闇を乗り越えて光に向かって歩いていく姿が好きなんです

    死ネタって広義でのハピエンなんですよ

  • 132124/09/09(月) 23:30:16

    すまん、また明日も同じような時間に来るので昼間保守をオナシャス
    昨日と同じようにスレ消費しすぎなければ雑談してて大丈夫です
    足りなくなったら立てるので

    おやすみなさい

  • 133二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 23:31:15

    >>131

    ありがとう!

    憂鬱な月曜に最高の栄養素になったよ!

  • 134二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 23:31:52

    スレ主の文章人の心がありすぎて作中の温度すら感じ取れそう
    ハピエンはこんなに心を苦しくしないもん(号泣)
    今日もいいお話ありがとうございました

  • 135二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 23:37:52

    死ぬ瞬間が一番輝くってのも残された人の歩みの尊さもめちゃくちゃ分かりすぎて首もげるかと思った

  • 136二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 23:37:52

    死ネタはハピエン理論、そんなことないだろ派なんだけどスレ主はマジで思ってそうだし理解らせられそうで今から怖いんだよな
    続き楽しみにしてます

  • 137二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 06:48:50

    ほしゅ

  • 138二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 13:09:36

    保守
    かわいい生徒とわちゃわちゃやってる先生も山田と同期ノリで笑ってる先生も大好きだ

  • 139二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 18:26:03
  • 140二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 18:26:19

    保守ありがとう!

  • 141二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 18:29:09

    コテハン忘れた1です

    >>139

    >>140

  • 142二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 18:29:27

    おかえり
    イレイザーいいよね…いいよね…
    もしよければいつかおいて行かれる側の相澤先生も書いてくれ…

  • 143124/09/10(火) 18:29:41

    >>141

    ま た わ す れ た

    1です

  • 144124/09/10(火) 18:52:41

    書いてく
    前日書いたやつとは何のかかわりもないです

     もし、尊敬する担任が教室で這いずっていたらどうする?
     今日は休日だったが、爆豪たちと共に自主練をする予定だった。だが瀬呂は教室にヒーロースーツを置いており、イラつく爆豪の怒声を背に受けながらそれを取りに来た。
     がらりと開けた2年A組の扉の向こう、教室の中で黒い塊が机の足元に絡みついている。なんだデカいゴミか? ありえない発想が頭の中に出てきた瞬間、黒い塊に灰色の紐のような物が巻きついていることに気づく。
     黒い塊が服と髪で、灰色の紐が捕縛布だと気づいた瞬間、瀬呂はあまりの恐ろしさにひっくり返った。

  • 145124/09/10(火) 18:53:04

    >>144

    「ん? ああ……なんだ瀬呂か。悪いな、こんな状態で」

    「えっえっえっえっ、せん、せんせ」

    「悪い今忙しいんだ後にしてくれ」

    「いやいやいや何やってんすか」

    「探し物」

     あまりに地を這う黒い物体……担任の相澤消太がいつも通りに受け答えをする物だから、瀬呂も幾分か落ち着きを取り戻し自分の机へと近寄ってスーツをとりあえず回収した。

     探し物、と言われれば確かにそんな感じにも見える。瀬呂は今すぐ戻らなければいけない焦燥感に駆られながらも好奇心に負けてしまった。

    「何探してるんですか?」

    「……これ」

    「猫のストラップ?」

  • 146124/09/10(火) 18:53:48

    >>145

     携帯の画面を見せられると、そこには黒くて可愛らしい小さなストラップの写真が映っていた。意外なものを探してるのだな、と思ったが次の言葉でひっくり返る。

    「エリちゃんがお小遣いを貯めて買ってくれた猫さんのストラップだ」


    「へえ、エリちゃん! 最近お手伝い頑張ってると思ったらそんなことが……エリちゃんから貰ったストラップ!? なくしたんスか!?」


    「だからお前に構ってる時間はないんだ。昨日は外に出てないから敷地内にあることは間違いないんだが」

     相澤の声音に若干の焦りが見える。

     更に話を聞けば無くしたのは昨日の夕方〜夜にかけて。昼の三時まではあることを確認しているらしい。平日は朝イチで入る清掃も土日はお休みだ。この休日に見つけなければいけないらしい。

  • 147124/09/10(火) 18:54:21

    >>146

     瀬呂は話もそこそこにまた捜索に戻った相澤を見て、ぎゅ、と携帯を握りしめる。

    「先生、画像送ってください」

    「あ? だからそんな余裕は」

    「今日暇な奴ら使ってみんなで探しますから。こんな探し方してたらいつまで経っても見つかりませんよ」

    「ダメだ。これは俺の責任だ、お前たちの貴重な時間を費やしていい問題じゃない。ヒーロースーツ取りに来たってことは自主練するんだろう、行ってきなさい」

     あくまで担任という顔を崩さない相澤に、けれども瀬呂は食い下がる。

    「金曜の夕方っつったら演習ありましたよね? なら俺らのドタバタに巻き込まれて無くした可能性高くないですか? それなら原因である俺らを使うのが一番『合理的』だと思うんですけど?」

    「っ……」

    「決まりっすね、ほら、画像送ってください」

  • 148124/09/10(火) 18:54:59

    >>147

     相澤に再度そう言えば、彼は渋々と立ち上がって携帯を操作する。頭には僅かに乗った埃が見えた。

    「……助かる」

    「いいえ〜!」

     初めて聞いたかもしれない担任の素直な謝礼に瀬呂は気分良く返事をした。もらった画像をそのままクラスのトークグループに流し、人を招集する。

     あっという間に半分以上のクラスメイトが手を挙げた。



     人海戦術とは恐ろしい。

     まず連絡を受けたA組が人手が欲しいとB組に連絡をして二年ヒーロー科全体に広がり、その内今日どうしても予定があり参加できない面子が力を貸して欲しいと不和に連絡、そこから三年生全体へと広がった。サポートアイテムの調整のため登校していた心操からC組に連絡が行き、調整の担当者である発目とパワーローダー経由でサポート科全体に伝達。更に切島が「暇な奴がいたら手伝って欲しい!」と一年に連絡をかけ、結局寮に残っていたほぼ全生徒たちが黒猫さんのストラップ探しに名乗りをあげた。

  • 149124/09/10(火) 18:56:32

    これは話とは関係ないけど相澤先生の「猫さん」「お医者さん」みたいな語彙が好きです

  • 150124/09/10(火) 18:56:55

    >>148

     ストラップは三時間ほどで一年が見つけ、その間「どうせ校内探すなら掃除もしようぜ」と大掃除も決行された結果、休日であるにも関わらず学校は大変な賑やかさとなってしまった。

    「たいへんもうしわけございません」

     ……という経緯を起こしてしまった瀬呂は誰もいなくなった教室で相澤に頭を下げていた。

    「こ、こんなことになると思ってなかったんスよ〜、まさか一瞬で全校生徒に広がるとは」

    「いや、本当にありがとう。助かったよ、まさか演習場から風に流されてUSJまで行ってたとはな、俺じゃ見つけられなかった」

     相澤は素直に頭を下げる。

     ストラップはやはり演習中の爆発やごたごたに巻き込まれて切れてしまっていたようだ。禿げた塗装は八百万が直してくれたおかげで元の可愛らしい姿となって戻ってきた。

    「いやでも、先生を全校生徒にストラップ無くして生徒使って探させる人って認識にさせちまいましたし……」

    「元はと言えば無くした俺が悪い。お前はできることをやってくれただけだろう、気にするな」

    「ッス……」

  • 151124/09/10(火) 18:58:19

    >>150

     一応今日の経緯を聞かれた時瀬呂は必ず勝手にお節介を焼いてるだけだと説明していたが、何人が納得してくれただろうか。

     しかも無くしたのは結局自分たちのせいだったわけだ、逆に申し訳が立たない。

    「瀬呂」

    「はい!?」

    「……何度も言うが、無くしたのは俺だ。演習中に激しい爆風や衝撃に見舞われることは想定できた。その対策を怠ったのは俺で、お前は探すために尽力してくれた。それが事実だよ」

     事実だ、と言われながらも褒められているとわかる。顔が赤くなっしまい、口角が勝手に上がった。

    「や、先生やっぱかっけーわ。女の人にモテるでしょ」


    「まあね」


     真顔で「何言ってんだ」と言われることを想定していた言葉にきた返答に、瀬呂は目を見開きがたんと席を揺らす。

     目の前では相澤がイタズラが成功した悪ガキのように笑っていた。今は授業時間外で、捜索も終わって、相澤は瀬呂に借りがある状態で。

     つまり、これは。

    「せ、先生」

  • 152124/09/10(火) 18:59:21

    >>151

    「なんだよ」

    「ちなみにどんくらいモテるんですか?」

     舞い降りた雑談のチャンスに食いつくと、相澤は手を口元に当てて考え込む。

    「学生時代は縁がなかったけど……」

    「けど?」

    「卒業と同時に独立してからは大体年四人以上……か?」

    「年四人!?」

     なんとも生々しい数字だ。

     大声を出す瀬呂に相澤はくぐもった笑いを漏らす。

    「そんな驚くか?」

    「いや、いや、えっ、因みにその人たちって俺らの知ってる人も入ってますか?」

    「いや? さすがに知らないと思うよ一般人もいるしな。それに知ってたとしても人のプライバシーは勝手に話さない」

    「おお……モテる男っぽい」

    「なんだそれ。ちなみにジョークは頭数に入ってないからな」

    「いや、俺ならすげー自慢してるんで。年四人て。っていうかMs.ジョークは違うんすね」

    「あいつはそう言うのじゃない」

     瀬呂の興奮は止まるところを知らない。峰田や上鳴ほど露骨ではないけれど年齢も年齢で、やはりモテるモテないというのが全く気にならないわけではないのだ。

     更に相手はあの担任だ。もっと知りたいと思ってしまっても仕方がない。

  • 153124/09/10(火) 19:00:55

    >>152

    「年四人の内訳聞いていいですか?」

    「助けた一般人、同業者、あとは時々バーとかでの逆ナンかナンパ」

    「ナンパ!? 先生ナンパとかすんの!?」

    「する、合コンもする」

    「合コン!? 先生が!?」

     嘘だろと声がひっくり返る。

     相澤消太がナンパ。相澤消太が合コン。おそらく今世紀で一番あり得ない字面だろう。

    「な、ナンパってどうやって……?」

    「大体見れば一人が好きでいるかナンパ待ちかはわかるから、後者なら声かけ。ただ顔で審査振り落とされることがあるからお勧めはしない。あれはかなり傷つく」

    「髭剃った先生でも無理なんですか?」

    「お前の中の俺の顔はどんな評価なんだ? 髭剃ってたら成功率は上がるが無理な時は無理」

     普通の男の人みたいなことを言う相澤に瀬呂は思わず関心のため息を漏らした。

    「合コンは……? ど、どうやってお持ち帰り? ってするんですか」

    「それは酒が飲めるようになったら教えてやる」

    「いやそんな……!」

  • 154124/09/10(火) 19:02:24

    >>153

     ご無体な、と言うが相澤はそれ以上は口にしない。ここから先はライン超えだと暗に言われているようで刷り込まれた恐怖が躊躇させる。

     ならばせめて、と別の角度から切り込んだ。

    「今、付き合ってる彼女 さんとかは……?」

    「あー……去年別れた」

    「わかれた!!???」

    「まあ色々あってな」

     色々ってなんですか。

     聞きたかったが去年といえば本当に色々あった年だ。藪蛇にも思えて瀬呂は口をつぐむ。

    「もういいか?」

    「っ……! っ……」

     ある。

     聞きたいことなど山ほどある。

     めちゃくちゃ気になる。

     彼女 さんの写真見せてくださいとか。どんな人がタイプなんですかとか。合コンってどんなメンツで行くんですかとか。だがどこまで話を振っていいかわからない。

  • 155124/09/10(火) 19:03:20

    >>154

    「あ、あるにはあるんすけど〜……!」

    「ま、今日じゃなくても良いだろ。あと一年は担任なんだし」

    「えっ」

    「授業がなくて仕事してない時なら話しかけても俺は怒らないよ」

    「えっ、そうなんですか!?」

    「俺をなんだと思ってるんだ……」

     呆れたようにため息をつく相澤はいつもよりも若干柔らかい顔をしていて。

     そういえばずっと優しいけど怖い先生という認識でしかなく、彼のことを同性の大人と思ったことはなかったかもしれない。

    「いや、怒らせるとめちゃくちゃ怖いなって」

    「そりゃお前らが怒らせるからだろ。座学に対する熱意もないのに礼儀もなってない時が多い」

  • 156124/09/10(火) 19:03:56

    >>155

    「ゔっ……」

    「座学ってのは知識を蓄えるのも勿論大事だがそもそも学び続ける姿勢も評価点に入っている。ヒーロー活動では常に考え行動しなければならんからな。その点を加味して『態度』を項目化した場合、お前らは爆豪よりも点が低い」

    「あの悪態以下っすか!?」

    「以下だ。だから筆記が出来ない奴らは生活態度を厳しめに見ている」

    「お、おああ……」

     知りたかったような、知りたくなかったような。すっかりいつもの担任の表情に戻った相澤は「ふう」と息を吐いた。

    「それじゃ、俺はもう帰るから」

    「えっ、まだ四時っすよ、もう帰るんですか?」

    「寄るところがあるからね」

  • 157124/09/10(火) 19:04:29

    >>156

     相澤はそう言ってふらりと教室から出て行ってしまう。その背中を呼び止める言葉を知らず、瀬呂は自分も立ち上がろうとして、そうはせずに座った。

    「……案外、喋りやすいのかもなあ」

     相澤先生。

     強くて、格好良くて、どんな時も生徒を守ってくれるヒーロー。片目も片足もなくなってしまったけど、いまだにあの人と組み手をして勝てたことはない。

     なんとなく届かないところに居る人だと思っていたその人は、同じ地続きの人間だったようだ。

    「峰田たちに話してやろ」

  • 158124/09/10(火) 19:04:48

    >>157

     先生が実はモテる男だという事。

     もうちょっと押せば歴代彼女の写真くらいは拝めそうなこと。

     あとはなんだろうか。初エッチで気を付けなければいけないこととか?

     瀬呂はにやつきながら夕日が沈む空を見た。




     週の開けた月曜日。

     各クラスに土曜日のお礼として配られた人数分あるお高めのお菓子に、瀬呂はやはり「モテる男っぽいな……」と苦虫を噛み潰したような顔になった。

  • 159二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 19:06:59

    うわぁ好きだ
    相澤先生のそういうとこ好きだ

  • 160124/09/10(火) 19:09:23

    >>158

    ここまでになります!

    元ネタは>>71から

    勝手に書いた、許せ


    入らなかったネタ1

    不和先輩をちょっと可愛いなって思ってる瀬呂(瀬呂は年上が好きそうなので)がそれを先生に言ったら「いや…不和はやめた方が良い」ってやんわり言われるんだけど気になりすぎて「彼氏いるんですか?」って本人に聞いたら「彼氏は居ないけどイレ先が好きなんよ」って言われて職員室に「イレ先! イレ先! どういうことですか! 納得のいく説明をしてください!」って殴り込みに行く展開


    入らなかったネタ2

    合コンにはよく行くけどマイクが来る合コンは外れという先生。なんでか聞いてみたら「あいつグラサンとって髪おろすとただのイケメンなんだよ」「全部取られる」って言って少し悔しそうにする先生。マイクは別にとってるつもりはなくて相澤行くの~?俺も行く~!盛り上げてやるぜ~!くらいの気持ち。スペックでただ全負けしてるだけ

  • 161124/09/10(火) 19:11:00

    私普通に相澤先生に性欲があって付き合いの飲みには行って彼女欲しいな~って思うと気が合って気が向いたら外面モードで合コンに行っててほしい人間なんです

  • 162124/09/10(火) 19:12:27

    じゃあこれから昨日のマイクの続き書くね
    ただごめんちょっと途中呼ばれるかもなので今日帰ってこなかったら死んだと思って
    明日は間違いなくくるので…

  • 163二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 19:12:50

    ありがとう…ありがとう…本当にありがとう…今泣いてる……

  • 164二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 19:14:12

    >>162

    おけ

    ありがとうマジで待ってる

  • 165124/09/10(火) 19:17:58
  • 166二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 19:21:23

    >>163

    おめでとうすぎる…

  • 167二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 19:22:11

    >>163

    おめでとう、本当におめでとう。

  • 168二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 20:03:58

    もうマジでスレ主さんのお話好きすぎる
    負担にならない程度でいつまで続いても良いからいっぱい見たい(小声)

  • 169二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 21:02:13

    瀬呂と先生の絡み大好きありがとう
    イレ先に納得のいく説明を!!って殴り込みに行く瀬呂かわいい

  • 170二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 21:59:01

    スレになんとなく書き込んだネタがこんな文章になって帰ってきたら脳カリカリに焼けちまう
    スレ主のファンになりそうで怖い

  • 171二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 21:59:53

    >>170

    ファンになっちまえよ

    俺もなってる

  • 172二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 23:50:19

    スレ主寝ちゃっただろうか…
    失踪しなければなんでもいい
    出来れば末永くだらだらと続けてくれ
    part100くらいまで続けてくれ

  • 173二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 05:44:47

    保守

  • 174二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 07:02:39

    ほしゅ

  • 175二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 13:04:40

    相澤先生生徒たちが成人したら一緒に酒飲んで欲しい
    まだ酒に飲まれがちな生徒たち横目にマイペースに飲んでて欲しい(後に周囲に転がってる酔っ払い生徒達)

  • 176124/09/11(水) 18:41:02

    TUM4巻おまけのアヴァンギャルド相澤先生ってバチバチにピアス開けててほしいよな
    あと舌ピとスプリットタンもお願いします
    治安の悪い相澤先生が好きです

    ただいま

  • 177124/09/11(水) 18:41:25

    普通に昨日はあのあと呼び出しされたのでなんも書けなかったよ
    これから書いていくぜ

  • 178124/09/11(水) 18:43:57
  • 179二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 18:45:01

    おかえり
    おれも治安の悪い先生大好き

  • 180二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 19:00:23

    おかえりなさい
    待ってたよ

  • 181124/09/11(水) 19:38:55

    >>130

     手渡されたフライヤーにはメールで見たものと同じ文面が記載されていた。

     このフライヤーは一体何? と聞いたところ事務所時代の後輩が善意で作ってくれたらしい。そんなものを善意で作らせるなとマイクは内心思ったが、理性で押しとどめる。

    「……事務所時代のって、もう復帰はしねえの?」

    「私の個性足由来だからね、片っぽないのはキツいのよ。リハビリ頑張ったんだけどね」

    「そっか」

    「そういえばひーくんのところって事務員募集してない? 今ヒーロー事務所すっごい勢いで倒産が相次いでるからうちが昔世話した子もそれに巻き込まれちゃって」

    「Ahー……うちも経営カッツカツなんすよ姐さん」

    「そっかー、そだよね。どこもヒーローが試される時代だ」

  • 182124/09/11(水) 19:39:25

    >>181

     相澤の姉はそう言って寂しそうに笑う。朝見た時降ろされていたウェーブがかった髪は今アップにまとめられている。シャープな横顔は親友を思い出させた。

     パラパラと入場予定名簿を見ていく。ずらりと並んだ名前の群れは壮観だった。

    「……全部で二百五十六人。あいつの葬式にここまで人が集まるとはな」

    「それもお別れ会なのにね。お父さんの時と同じノリでライブ会場貸し切ったけど正直ひーくんと校長先生しか来ないと思ってた」

    「それは相澤の人脈舐めすぎ」

    「やっぱり先生って人脈凄いわ。ひーくんが死んだらこれくらい来る?」

    「いや無理無理。俺担任持ってないもん」

    「よくわかんないけど担任じゃないと生徒に好かれないの?」

    「そういう悲しいこと言わないでよ」

  • 183124/09/11(水) 19:40:08

    >>182

     軽口を叩いていると受付の開始時間を五分前に控えた。そろそろ早めに来た奴らが来る頃だろうかと入り口を見ると、薄い色素の髪が目に入る。

     真っ黒な喪服に身を包んで、髪は跳ねないようにしっかりと抑えている。いつもと全く雰囲気の違う彼の様子にマイクは少し驚いた。TPOを弁えられる奴だとは思っていたがまさかこれほどとは。

    「この度はご愁傷さまです」

    「お心遣いありがとうございます。ご芳名と住所をいただけますか」

     先ほどまで雑談をしていた姿が嘘のようにしっかりと頭を下げる女性に、マイクも同じようにしおらしく頭を下げる。

     すっかり両利きになった左手で自分の名前と住所を記載した青年は手に持っていた盛籠を手渡す。マイクがそれを受け取っていると、名前を読んだ女性は「あ」と聞き流すにしては大きめの声を出した。

  • 184124/09/11(水) 19:40:26

    >>183



    「スーパー問題児爆豪……?」

  • 185124/09/11(水) 19:43:48

    >>184

    「え」

    「あ?」

    「やだ! スーパー問題児爆豪って大・爆・殺・神ダイナマイトだったの!? もー、消くんがいつまでも喋り方が治らなかったって言ってたけどちゃんとしてるじゃない! どんなやんちゃ坊主が来るかと身構えちゃった!」

     完全に親戚のおばちゃんのようなテンションになっている相澤の姉に、爆豪は目を白黒させていた。助けを求める様に──恐らく怒ったりして良いのかという確認──こちらを見てくる彼に首を横に振る。

    「ちょ、ちょっと姐さん」

    「あらやだごめんなさい。消くんから聞いてた話と全然違ったからびっくりしちゃって。すごく利発そうなお子さんねえ」

    「え、あ……ども、っす?」

  • 186124/09/11(水) 19:44:16

    >>185

    「私は昔忙しくて雄英体育祭とか見られなくってさあ。三年間ずっと一位だったんだって? すごいねえ」

    「んなこと、知ってんスか」

     爆豪の声は少し上ずっていた。

     彼を警戒させないように、相澤の姉は視線を細め柔らかい物を見つめる目をする。

    「知ってるよ。どの代の子もみんな印象的だし。消くんいつも生徒たちのことしか話さないもん。たまに家に帰ってきても君たちの話ばっかりだし。半年前にちらっと顔出したときは今年の受け持ちの子のことばっかりだったっけ」

    「そう、なん……ですか」

    「特にスーパー問題児爆豪は話題の華だったよ!」

    「そのスーパー問題児爆豪ってなに?」

    「下の子がつけたあだ名」

    「……っ」

  • 187124/09/11(水) 19:44:58

    >>186

     出来るだけ雰囲気が重くならないように茶々を入れてみるが、その甲斐むなしく前方から嗚咽が聞こえてくる。

     二十代も後半に差し掛かった男である自覚はあるのか、堪える様に泣く爆豪を見て相澤の姉はハンカチを差し出す。

    「い、いや、持ってます」

    「これノベルティだから」

    「ノベルティ?」

    「葬式だよな?」

    「うちの家では葬式記念品は必ず作るのが決まりだから……」

    「ここ相澤先生の家の葬式であって……ますか?」

    「相澤はこういう家で育ったから反面教師にしてああなったんだぜ」

    「ああ、なるほど」

     納得した爆豪はノベルティを受け取り涙を拭く。黒無地に金のラインが入ったそれは上品な仕上がりで喪服の彼にも良く似合った。

  • 188124/09/11(水) 20:08:25

    すまん昨日結局寝れなかったからクソ最悪なところで寝落ちしそう
    書けなかったら察して

  • 189二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 20:09:30

    >>188

    そっかぁ

    待ってるね

  • 190124/09/11(水) 21:25:02

    >>187

     爆豪が落ち着いて背を向けようとした頃、後ろから大きな声が迫ってくる。

    「あ、あれ!? かっちゃんだ! はやいね……って、え、ええ!? 泣いてる!? 泣っちゃん!?」

    「泣いてねえ。さっさと受け付けしろ出久」

    「え、ええ……バリバリ泣いてるだろ……あ、ええと……この度はご愁傷さまです」

     緑谷は入口から入って来た瞬間こそ暗い顔をしていたが、泣き顔の爆豪というレアキャラを見て少しは持ち直したようだった。定型文を用いて受付をすると、芳名帳の名前を見てまた相澤の姉は閃いたように呟く。

    「……ハイパー問題児緑谷……!」

    「ちょっとランク上がったな」

    「そ、その声はもしかして成長ヒーロー『クレセール』ですか……!?」

    「こっちもわかんの!?」

  • 191124/09/11(水) 21:25:22

    >>190

     こちらから言われると思っていなかったマイクは思わずテンションが振り切れる。緑谷はこんな場所で言うつもりはなかったのか口を押えるが、言われた彼女は酷く嬉しそうに笑った。

    「知ってるの? 有難う、そうよ私が『クレセール』!」

    「わ、わあ本物だ……! 個性『成長』を使って実際本物の森林を成長させ地域の復興にも役立つ災害派遣特化型ヒーロー! 二年前の大怪我で表舞台から姿を消していたとは聞いてましたけどこんなところで会えるなんて……!」

    「おい出久、ここどこかわかってんのか」

    「あ゜っ、す、すみません、不謹慎な」

     謝る緑谷に女性は「気にしないで」と手を振る。不謹慎と言えば告別式にライブ会場を選び照明とスモークをバリバリに効かせてクラブミュージックをかけている主催側の方だろう。

  • 192124/09/11(水) 21:25:42

    >>191

     女性は二人の表情を見て、何かを懐かしむように微笑む。

    「……本当に来てくれてありがとう、弟もきっと喜んでいるわ」

    「お、お姉さん、なんですね」

    「ええ。貴方たちの話は……特に、他の代と比べても良く聴いてる」

     女性は続けて言葉を言おうとして少し迷った。

     後ろから続々と人が集まってきている。言うなら早く言った方が良い、とマイクは視線を送るが彼女は緩く首を振った。

    「うちの葬式は特殊だから慣れないこともあると思うけど楽しんでいってね、あの子を送り出してあげて」

    「は、はい!」

    「っす……」

  • 193124/09/11(水) 21:26:03

    >>192

     頭を下げて二人が会場へと消えていく。焚かれているスモークにビビる声がここまで聞こえてきた。

     そこからひっきりなしにやってくる来場者を二人でさばいていると、途中誰も来ない空白の時間が出てきた。芳名帳とリストの照らし合わせを行いながら、マイクは相澤の姉に問いかける。

    「言わなくて良かったのか」

    「どうせ後でお母さんから言われるもの」

    「でも、姐さんからも言いたかったでしょ」

    「そりゃね。けど……あんな泣きはらした顔の子たちに言えないわよ」

     彼女は視線を遠くに投げる。

     今でも耳をすませば聞こえてくる、建物が壊れる音と人が消えていく悲鳴。そして、その渦中にあった二人分の命。

  • 194124/09/11(水) 21:26:16

    >>193

    「生きててくれてありがとう、なんて」

     彼女は続けて「そんなこと、あの子が一番言いたかったんだろうし」と言ってから私語を完全に無くしてしまった。

     会場は少しずつ盛り上がりを見せている。

     けれどどこか引き攣った不協和音みたいなものが混じっていて。嗚呼これはきっとみんな、悲しみを押し殺すのに必死なのだと、マイクの肌がそう感じていた。

  • 195124/09/11(水) 21:29:29

    >>194

    とりあえずここまでです!

    すまん眠気に負けます……!


    スレ埋めて2スレ目作って10レスまで保守して今日は寝ます!

  • 196二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 21:30:06

    ありがとうめちゃくちゃよかった最高だった

  • 197124/09/11(水) 21:32:51
  • 198124/09/11(水) 21:33:25

    マジご支援ありがとうです
    次スレでも好き勝手かきます

  • 199二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 21:34:14

    1に感謝をしつつ埋め

  • 200二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 21:34:18

    埋めます

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