- 1二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:36:59
キヴォトスのどこかの学園をドロップアウトした不良が黒服との契約と実験によって「柚鳥ナツ」の名前と立場を与えられた世界
設定は前スレ>>1を参照
ここだけナツが黒服の実験体 Part2|あにまん掲示板キヴォトスのどこかの学園をドロップアウトした不良が黒服との契約と実験によって「柚鳥ナツ」の名前と立場を与えられた世界以下前スレのダイス結果反映https://bbs.animanch.com/boar…bbs.animanch.com
?res=1ここだけナツが黒服の実験体 Part2|あにまん掲示板キヴォトスのどこかの学園をドロップアウトした不良が黒服との契約と実験によって「柚鳥ナツ」の名前と立場を与えられた世界以下前スレのダイス結果反映https://bbs.animanch.com/boar…bbs.animanch.com余談
前スレ
?res=27より100レス近いSSが連載開始(およそ3万字)ここだけナツが黒服の実験体 Part2|あにまん掲示板キヴォトスのどこかの学園をドロップアウトした不良が黒服との契約と実験によって「柚鳥ナツ」の名前と立場を与えられた世界以下前スレのダイス結果反映https://bbs.animanch.com/boar…bbs.animanch.com感想は一区切りついた投下後に
- 2二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:38:14
- 3二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:38:33
スレ立て感謝です
- 4二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:40:07
続きの投下は明日になりそうだし今日はスレ保守だけしとくか
- 5二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:40:18
スレ立てかんしゃぁ~
- 6二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:40:18
かんしゃ~
- 7二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:41:09
スレのナツは勿論原作ナツやSS登場キャラの魅力も再確認できる良スレ
メモロビ見返したよ~ - 8二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:41:58
うへへ
おじさんがマジ顔で戦闘してるのはいいねえ - 9二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:43:07
- 10二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:43:29
業の深いナツ好き
- 11二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:44:12
青春と友情は代え難いロマンだね
- 12二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:46:49
今さらだけど黒服が紳士でよかった、逆らわない神秘の塊な実験体だしエダ死な交配とかあり得ない話じゃなかったよね(絶対にやってないとは言わないけど可能性は極めて低い!)
- 13二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:47:45
- 14二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:48:24
邪悪なロマンも胸熱なロマンもある
- 15二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:50:41
たておつ
前スレのss感想を
暗い命令は嫌だけど与えられたものもデカいので黒服を恩人にしてるナツすき
和解パート入る前に記憶を思い出して暴走するのは様式美を感じてすき
過去の不良仲間同士で駄菓子を分け合う■■すき - 16二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:54:25
- 17二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 23:08:00
過去の思い出が因縁と化す…これはロマンなのか…
- 18二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 23:11:57
眠ってる三人の性格を合わせてエミュしてるのが今のナツ、と想像するだけで鬱屈とした気分になれる……
- 19二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 01:11:40
万全テラー6割ナツ+通常疲労ヒナvs連戦ホシノとかいう地下生活者目線のクソバトル
- 20二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 01:18:10
アイリのナツから自分が言われたことを元にした説得が涙腺にきた…これからも一緒に歩いてくれ…
宇沢は良い場面で出てくるね! - 21二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 07:57:38
朝保守
- 22二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:15:48
お待たせしました、続きができたので書いていきます~
ここからは最後までノンストップで。 - 23二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:23:23
- 24二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:24:13
「・・・クックック。クックックックッ・・・えぇ、柚鳥ナツ。先生と一緒に来たこと、そしてその火炎に焼かれきった身体。そう言うと、思いましたよ。ですが──
忘れたわけじゃないでしょう」
「シャーレの先生がこのキヴォトスに赴任する以前に──私と君は契約を結んでいる。しかも──あなたは一度、側にいた三人の被検体達を生存させるために、貰った貴方自身の『柚鳥ナツ』という名前で契約書に記入をして更新している。彼の介入があったところで──それが覆るとでも?」
「えぇ、えぇ。残念ながら──それはあり得ません。これは私と貴方の間の関係であり、問題です。彼に、そこに立ち入る権利など──」
「──黒服」
そこで、隣で聞いていた先生が口を挟む。
「あなたは、何か誤解をされているようだが──私は、ただの付添人だ」
- 25二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:24:42
- 26二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:25:19
- 27二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:25:39
- 28二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:26:52
- 29二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:28:25
「──ですが。それは、あまりにも愚行だと思われます。何故なら──課題点があまりに多い。思考が浅はかと言わざるを得ません」
「まず──あなたの神秘は、未だ不完全──そもそも、概念も含めての『完全な生まれ変わり』ができるかどうか。していることは、輪廻転生で全く同じ存在として生まれるということ・・・今ここでするというのなら──あなたはこの場で、神秘を完全体にしなければいけない」
「次に──概念ごと消えてしまうということは、あなたを『柚鳥ナツ』として覚えている全ての人の記憶が──同時に失われるということ。それは──仮に成功したとして、あなたは今度こそ一人きりになります。『柚鳥ナツ』という名前すらも、失って──。
確かに契約の相手そのものがいなくなるので、私との契約は無効化はされるでしょうが──そのあとのあなたはどうすると言うのでしょうか」
「そして──あなたがずっと生かし続けてきた、三人の被検体。──彼らの生命も、保証するものは同時に失われます。それは──貴方の望むことではないでしょう?」
「そのようなことをして、君の価値がなくなるのは、私としては実にいただけません。考え直して──貴方の神秘を利用して、自身の手で掴み取ればいいではありませんか──」
「断る」
- 30二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:29:17
- 31二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:29:53
- 32二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:32:03
そんな私を見て──先生もまた、笑って見せた。
「・・・確かに、上手くいかない可能性の方が高いだろう。でも、これは──私の生徒が、希望を掴むために選んだ大事な選択だ。
それを応援して、時に支える──それぐらいが、先生として私にできる唯一のことだよ、黒服」
先生の声を聴いた黒服──彼もまた、私と同じく笑う。
「クックック・・・成る程、面白いです。狂気の沙汰としか思えない生徒の選択を、あなたという大人がさらに進んで取らせるとは。やはり──貴方は愉快な人です」
「いいでしょう──今、私の目の前で。その『完全な生まれ変わり』をやってみせなさい。できた暁には──私もまた、あなたのことを忘れているでしょう。その時には、契約そのものすら覚えていない。晴れてあなたは自由です」
「──分かった。それじゃ──始めるね」
「えぇ。ですが──そう簡単に行くでしょうか?」
彼の目元の罅から漏れる白い光が、更に一層濃くなる。強く睨まれてでもいるのかと思った私は──それでも、笑みは絶やさない。一歩も引きはしない。
一度こうすると決めたロマンチストの覚悟を、舐めないでいただきたい。
- 33二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:33:25
- 34二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:34:46
- 35二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:35:01
- 36二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:38:05
「!?」
私の発した、焼け爛れた喉からの声に──彼は口を噤んだ。
「黙って見てなよ──『私』の生誕を」
「それに──今度こそ『一人ぼっちになる』って言ってたよね。先のことなんて誰一人として分からないのに、減らず口を叩かないでもらいたい」
先生は、人でなくなっていく私の手を。
彼もまた灼けてしまいそうなその手を、それでも握ってくれていた。
そして──思い出すのは──大事な人たち。
カズサ。ヨシミ。レイサ。先生。────アイリ。
あぁ、それと──小鳥遊ホシノも、また。
──ここに彼らはいないのに。
思い出すだけで──どこまでだって行けそうで。
そして──どこにいようと、帰ってこれる。
これもまた──大事な、ロマンの一つ。
- 37二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:38:42
- 38二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:39:10
- 39二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:40:25
- 40二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:41:48
- 41二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:43:16
- 42二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:44:01
- 43二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:45:15
このレスは削除されています
- 44二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:47:04
- 45二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:48:32
「気づいてももう遅いよ。今の貴方に、彼らの身体を取り返す力も権限もない。何かしら裏で動いて、下準備を済ませるのが、君のやり方だしね」
そう言って、ホシノが私と先生の横に立った。そうして、私と彼女は顔を見合わせて微笑み合う。
「・・・ありがとう、ホシノ。これで随分と楽になったよ」
「いや~、神秘を飛ばしたのはナツちゃんでしょ。それに──良く乗り切ったねぇ。おじさんは嬉しいよ」
「クックック・・・お見事。確かに、これで貴方を脅かす問題の内の二つは無くなった──では、残りの一つは如何するおつもりでしょうか?」
「──やることは変わらないさ。私自身を──完全に生まれ変わらせる」
「それでは何も解決はしないでしょうが──それでもですか?」
「うん。変わらない。私は、私を諦めない」
「『柚鳥ナツ』を──決して諦めない」
- 46二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:49:51
- 47二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:50:42
- 48二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:51:57
- 49二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:53:20
- 50二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:53:53
- 51二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:55:45
彼の目の前には──確かに、『柚鳥ナツ』がいた。
灰の山から確かに──彼女は、『再生』を果たしていた。
執事服はもう着てなどいない。服ごと新たに生まれ直し──放課後スイーツ部としての、彼女の服装に戻っていた。
「お帰り、ナツ。気分はどうだい?」
「うん、文字通り生まれ変わった気分。最高だよ」
「うへへ、やっぱり若い子はこういうのを着なくちゃねぇ」
「にへ、でもあれはあれで気にいってたけどね」
そうして、弄ってくるホシノに対して、私はダブルピースで返事をする。
「・・・どういうことでしょうか、『柚鳥ナツ』。何故──あなたのことを、私も含めて皆覚えているのでしょうか」
「そして──覚えているのなら契約は、未だにゆうこ──」
彼は、引き出しから、契約書と思わしき一枚の紙を取り出し──しかし、慌ててそれを見返した。
- 52二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:55:56
- 53二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:56:50
- 54二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:57:07
- 55二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:58:29
それを聞いた黒服は──笑いを堪え切れなかったようだ。
「クックック・・・クックックックック・・・これはまた、随分な選択を。
生と死という、人にとって切っても切り離せない概念に結び付いた、極上の神秘──『再生』という神秘を、たった一つの名前を手に入れるために売り払うとは!実に狂った選択です、柚鳥ナツ──」
「しかし──買ったのはあくまで名前だけ。あなたは確かに一度、存在が消えた。である以上、それと関連した記憶も確かに消えるはずですが──」
「あれ、黒服?それは違うよ。もう、答えは今の中に合ったけど?」
すると、ホシノが隣でそれを否定する。
「?????」
「まだ分からないの、黒服?
『再生』っていう、生死に関するあまりに希少な神秘を手放して、それで手に入れるのが『柚鳥ナツ』っていう名前の固有概念の一つだけだよ。どう見ても、割に合うわけないじゃん」
- 56二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:58:58
- 57二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:00:16
「──そうですか──では、非常に沢山のものを買い取ったようですね」
「そう。余った価値──お釣りで買ったのが、『柚鳥ナツ』に関する記憶、ってことさ」
「しかし、そうなると過去の『柚鳥ナツ』の存在を肯定することに──
いえ、既に契約書の名前は『朱羽』に書き換えられている。
過去の『柚鳥ナツ』がいたとして──その存在こと『朱羽』は、書き換えられた後に既に死んでこの世にいない。死んだ存在に対して──契約は意味を為さない」
「それにさ──『デジャヴ』ってあるよね。
経験した事がないはずなのに、まるで過去にあったように覚える錯覚。存在の概念と、過去の記憶──繋がりはあっても、一蓮托生って程じゃない。どちらか片方だけが存在する、なんて事は、イレギュラー的に発生することもあるんだ。で、今回は記憶だけを、その『お釣り』で買い取ったってこと」
「これで、ナツちゃんは人質ともいえる子たちの安全を確保して──完全体となった神秘で生まれ変わって──過去の自分の概念を書き換えて。そして──覚えられたまま帰ってきたって訳だ」
「つまり──私の完全勝利、ってわけだよ、黒服」
- 58二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:01:27
- 59二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:02:39
「無論だよ、黒服。
貴方は確かに今──契約書の名前が変わっているのを認識した。そして、あなた自身が暴論と言った上で、あなたの頭の中ではこのやり方に納得してしまっている──故に、あなたはその契約書を無理に書き直そうともしない。そうだろう?」
「そして、生まれ変わった今の『柚鳥ナツ』は──正真正銘、私の生徒だ。もう、あなたの実験体としていた彼女は、どこにもいないのだから」
「えぇ──確かに。私は、このやり方に、口とは裏腹に納得してしまっている。認めましょう。
あぁ──惜しい。非常に惜しい。ですが──これでも、私も一介の大人なのですよ。
貴方と対峙したあの日から──私もまた、どうやら影響を受けたようです。でなければ──彼女を、ただ実験体としてここまで至らせはしなかったでしょうから」
「俗な言葉で言えば──育てた者としての『親心』──『愛着』が湧いてしまったのかもしれませんね」
- 60二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:04:51
「ですが──えぇ、えぇ。私が手塩をかけて育てた存在自身が、自らの意志で私の思考を上回った──その時点で、私の敗北は確定です」
「大人しく、引きさがるとしましょう。ここで彼女を無理やりにでも引き留めようとするほど──私は『毒親』にはなりたくはないですからね」
「・・・あなたに親になってもらった覚えはないけどね、黒服」
「──えぇ。それは、そうですね」
「・・・だけど。確かに、貴方からもらったものがあるのは事実だ。側にいる二人は貴方を良くは思わないだろうし、私も貴方を許す気はない。
それでも──ありがとう、とだけは言えるだろう」
「・・・利用した相手にありがとう、とは。クックック・・・ですが、えぇ。今はそれを受け取りましょうか」
「この契約書は意味をなさないので、私の方で処分いたしましょう。ここまで覚悟を持って臨み、この状況を勝ち取った──私からあなたへの餞別です」
「では、時間です。行きなさい、柚鳥ナツ。ここに、あなたはもう縁もゆかりもないのだから」
「・・・うん。それでは、失礼するよ」
そうして、先に立ち去っていくホシノと先生を見送り──私は一度だけ立ち止まる。
「──黒服」
「──何でしょう」
- 61二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:05:41
- 62二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:07:32
「──ねぇ、先生」
「ん?どうしたんだい、ナツ?」
高層ビルから出た帰り道。私は──先生に相談していた。
「これで契約からは解放された訳だけど──多分、私はまだ自由じゃない。
結局、私がやってしまったことは変わらないし、私が犯した罪は消えない。
それは──償う必要があるんだ」
「・・・真面目だねぇ。だけど、当然か。良いのかい?せっかく自由になったのに、またみんなに会えなくなるかもだけど」
そう、ホシノが気遣うように聞いたが──私はそれでも、意志は変えない。
「みんなは、資格なんていらないとは言うだろうけど──
これは私が、自分自身で決めたんだ。
勿論、みんなには話した上で決めるけど──多分、結局はそうなると思う。それに──」
「獄中でも、スイーツは何とか食べられるだろうからね」
「・・・そっか。意志が強い子だねぇ・・・」
「だからさ──先生。これは形としてじゃなくて、心としての話。
本当の意味で償うために──私は、どうすればいいんだろう」
「うーん・・・どういう意味で償うかにもよるけど・・・」
暫く考えてた先生は、やがて口を開いた。
- 63二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:10:29
「──『ロマン』かな」
「・・・ここで?」
「うん。寧ろここ以外無いだろうしね。
誰かにとって大事な『ロマン』を──ナツが守ってあげて。勿論、自分の『ロマン』も大切にね」
「それが──壊してしまった誰かの『ロマン』の、『再生』に繋がるだろうから」
その言葉に──私は頷く。
「──分かった。檻の中にいたとしても、できることからやってみるよ」
「うん。ナツ自身が自分で決めた先で──それをやってみるといいんじゃないかな」
「じゃ、暫くは会えないかぁ~・・・惜しいなぁ、せっかく新しい『友達』ができたと思ったのに」
「・・・すまないね、ホシノ。また、会えたら嬉しいけど」
「そうだねぇ・・・その時は、どこか美味しいお菓子でも食べに行こうか」
「にへ、いい所を期待してる」
すると、朝焼けの空が作る影の向こうから──彼らがやってきた。
- 64二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:11:31
「・・・みんな?」
カズサ、ヨシミ、レイサ──そしてアイリ。大事な、彼女にとっての「放課後スイーツ部」(+α)だった。
「・・・ナツちゃん」
「──上手くいったみたいだね」
「全く・・・ずっと気が気でなかったわよ」
「でも、これで一安心ですね!」
「・・・うん。待たせたね、みんな」
すると、アイリがバッグから、何かを包んだ袋を取り出した。
「・・・これは?」
私がそれを覗き見れば──そこにあったのは、歪な形のクッキーだった。
「・・・誕生日用に、放課後スイーツ部のみんなで作ってたの。今回のことで、渡すまで時間がかかっちゃったけどね」
「・・・ッ」
そのクッキーを見て、受け取るか迷っていた私の背中を──ホシノがそっと押してくれた。
- 65二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:12:46
「・・・えっ」
「受け取ってあげなよ。受け止めるって、きっとそういうことだよ」
「そうそう。あんたが犯罪者だからって──差し入れの品ぐらいはあっても良いでしょ」
「カズサ、あんたね・・・もうちょっと言い方ってもんがあるでしょうが」
「私もケーキを買って来たんですが・・・戦闘している内に潰れてしまって・・・うぇぇ・・・」
「おーよしよし、泣くな宇沢。私が次はお金持つから」
そうしてレイサを慰めるカズサと、あきれ顔で見るヨシミ。そして──
「そういうわけだから──受け取ってほしいな、ナツちゃん」
「・・・・・・」
恐る恐る袋を取り──包装をはがして、一枚のクッキーを手に取る。
そしてそれを──一口齧り、咀嚼する。
味わうようにゆっくりと噛み──そのクッキーは、喉を過ぎていった。
「──どう?」
そう、どこか緊張した面持ちで聞いてきたみんなに。
私は、泣いていいのか笑っていいのか、よく分からないながらも──こう答えた。
- 66二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:13:40
- 67二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:14:50
- 68二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:17:09
それから後のことについて。
私が暴走した廃墟の爆発や火災は、出所が完全に不明なこともあり、放置されたガス管から漏れたガス爆発ということで処理された。
多分、あそこにあった大量の駄菓子たちは、大半がダメになってしまっただろう。
哀しいし、あそこを知っている人には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。今後、また少しずつ駄菓子をおいていくとしよう。
ゲマトリアの部下として出頭した私は、ゲマトリアという存在が絡むだけに公の公表はされず、秘密裏にトリニティ上層部に引き渡され、判断を仰ぐこととなった。そしてそれが、ある意味逆に功を奏していた。
上層部というのは、正確には様々な派閥のトップのことだった。
ティーパーティーの三人、桐藤ナギサ、百合園セイア、聖園ミカ。
シスターフッドの歌住サクラコ。
救護騎士団の蒼森ミネ。
そして、正義実現委員会の剣先ツルギなどだった。
普段は知らないように装っていたが、黒服の元で仕事をしていた際に本当は知っていたこともあって、さすがに私も肝を冷やしていた。
- 69二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:18:52
しかし、彼らの眼前に立った時──意外にも彼らの対応は非常に丁寧かつ温厚だった。
各派閥同士の多少の軋轢こそあれど、私という罪人に対する反応は何故だか統一して好意的だったのには非常に面食らって、思わず理由を訪ねてしまった。
ティーパーティーの三人は、「かつて自分たちも各々の独断や不十分な会話がきっかけで、瓦解しかけた過去があり、私にその面影を感じていた」という。
桐藤ナギサは、「今後は大事な人を裏切らないように努めてほしい」と、何故か顔色が悪そうに私に告げた。過去に何か、裏切られたトラウマでもあったのだろうか。
百合園セイアは、ゲマトリアという存在を知っていたことらしく、彼らの脅威を踏まえたうえで「周りの劣悪な環境と統制の中から抜け出すために抵抗したのは、賞賛に値する」と、私の最後の契約改定に対する姿勢を評価してくれた。
聖園ミカは、「私自身もあなたと同じように罪を犯した人間だし、あなたのように理不尽に抵抗した強い人を知ってる。だから、あなたも許されてほしいと私は思ってる」と言ってくれた。
彼女が三人の中でも、人一倍私に好意を持っていたのは、どこか私にシンパシーを感じていたのだろう。
- 70二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:20:16
歌住サクラコは「本人が悔い改める意思があり、かつ直前の行動がそれを証明している」と言い、蒼森ミネは「自らを救護する意志を持つ者に、これ以上問いただす必要性はない」と、こちらもそれぞれ私のことを肯定してくれた。
ただし、私がまた何か悪事を働いた際は、全力で「救護」すると言っていた。怖い。
最後に、一見凄まじい圧力を放つように見える剣先ツルギだったが──非常に冷静に分析したうえで「現状の脅威になるとは考えにくい」と断定したらしい。
ギャップが凄まじすぎて脳が混乱しかけるのだが、彼女が正義実現委員会のトップであることが、その思考回路から頷けた。
以上を踏まえたうえでの私への判決は──「執行猶予をつけた上で、自由な活動を許可する。ただし、トリニティの有事の際に、治安維持のために必ず助力すること」だった。
- 71二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:21:46
随分と温情が多すぎる気もするが──上層部の方も、エデン条約の際に大きく動きがあったからかもしれない。
とはいえ、神秘はなくとも培われた戦闘能力は確かにあるので、その内容には寧ろこちらから願い出たいものだった。
できるならば──誰かの「ロマン」を守りたい。
先生と交わした言葉の上での、私が自分で決めた「契約」だから。
生活については、放課後スイーツ部としてよく通りがかったお菓子の店を、働き口として紹介してもらった。店主は非常に親切で、貸部屋までしてくれるという気前の良さだから本当にありがたい。その恩義に応えようと、今では手伝いながら少しずつレシピを覚え始めている。
前に比べればお金は少ないというのは事実かもしれないが──正直、今となってはそんなことはどうでもよかった。
求めるものは、そこにはないと今は知っているから。
因みに、店で会計をしていた際に──例の『三人』がやってきたのだが──彼らが幸せそうだったのは、語るまでもない。彼らなりに幸せというのなら──私はそれでよかった。
そうして──晴れて、本当の意味で『日常』を手に入れた私は──一週間後に、部室でみんなと集まった。
その理由は──
- 72二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:22:50
「宇沢・・・結構高めなの買ったんだねあんた・・・」
「金額のことは野暮ですよ杏山カズサ!友達のためなら、手を抜きたくないんですよ!」
「あぁぁレイサそこ動くな!あたしのクッキー潰れる!」
「あはは・・・ヨシミちゃん、私の変えてあげるから」
「おーい、今日はおじさんもいるんだよ。ちゃんと残しておいてよぉ」
「・・・ふふ。ここはいつでも賑やかだねぇ」
そうして、私は部室のドアを開ける。そこにいけば、いつもみんなは待っていてくれる。
今日は集まる理由がちょっと違って──もう一人増えているけれどもね。
「あ、やっと来たわよ主役が!遅いわよ!」
「ささ、早く始めましょう!」
「ふあ~待ちくたびれたよぉ~」
「OK──準備できてるよ。アイリ」
「うん、それじゃ──」
そうして、パーティークラッカーのパンパン、という音が部室に響く。
- 73二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:23:42
- 74二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:24:07
- 75二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:24:36
- 76二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:26:24
- 77二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 09:32:28
とんでもねえ大作だった…ありがとうございます
やっぱ負けたらそれを素直に認める黒服ってほんと大人だな
某地下だったらチートだズルだ云々喚きそうだし - 78二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 10:16:11
完結乙です
ここまでの大作になるとは…ナツが幸せをきっちりと掴めたのが良かった…
トリニティ上層部も許してくれて償いに執行猶予をくれて良かった…
まとめ版(pixiv)作成も待ってます - 79二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 13:26:52
ナツがピンチになった時に助けてくれそうな黒服……いいね
- 80二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 13:42:55
1
こんな長編が投下されてスレ立てして良かったと心底思っている
完結お疲れ様です
後日談とかアビドス三章編とかあれば是非 - 81二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 13:44:54
まだレス余ってるし余裕あったら見たいね
- 82二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 13:53:42
良いロマンを再び求められるようになった
これもまたロマンだね - 83二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 14:02:03
アビドスのifルートは書いてみたい気持ちもあるけど、そこまでの先が長いので、当分は無理かもですね…
じっくりゆっくり、メインシナリオを読んでいった先で、改めてスレ立てするかもしれないので、その時にでもまた邂逅できたら嬉しいかもです - 84二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 14:03:20
- 85二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 14:57:28
pixivの方も投稿完了したので、そちらで一気見したい方はこちらから。
#二次創作 #ブルーアーカイブ もしも、柚鳥ナツが黒服の実験体だったらの話 - げんぶの小説 - pixivこちらの作品は、あにまん掲示板の『ブルーアーカイブ」カテゴリー内、「ここだけナツが黒服の実験体」というスレッド内にて書き込まれた様々な要素を元に、スレ内で自分が書き上げた作品になります。 最初は途中の難題に立ち向かうのが難題となりましたが、それでもプロットを何とか組み上げたことが...www.pixiv.netというわけで、もうバレるんで正体明かしすると、知ってる人は知ってるかもなのですが。
私、前に「カッコいい宇沢概念」でSSを書いた先生でございます。
ちょっと宣伝みたくなっちゃうかもですが、こっちでもSSを描いてましたので、もし興味あったら是非。
カッコいい宇沢概念|あにまん掲示板戦闘が長引いたり傷が深くなって来たりすると体力の無駄を省く為に口数が少なくなる集中状態になって攻撃の精度が上がってくる宇沢bbs.animanch.com(pixivのSSのURL)
「レイサ*スター SS集」/「げんぶ」のシリーズ [pixiv]平行世界の宇沢レイサこと、「レイサ*スター」のSSのまとめになります。 詳しい説明は各作品中にて。www.pixiv.net今回も楽しんでもらえたなら何よりです~
- 86二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 14:59:07
ロマンに溢れたスレ
- 87二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 15:00:44
- 88二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 18:06:07
このスレでもつながりはないけどかっこいい自警団のヒーロー宇沢が見れて満足
- 89二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 18:16:45
- 90二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 23:17:57
見に来たら完結してた
お疲れ様です - 91二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 02:51:12
- 92二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 06:51:25
生まれ直しはロマンだね。
- 93二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 09:08:35
ナツ、神秘は売っちゃったけどトリニティの有事の際は力を貸すように言われてるってことは、盾投げたりしてたときと素の戦闘力は変わってないのかな。
もしそうならゲーム内での性能とかどうなってるか気になる。このナツは確実に周年キャラの器だろうし - 94SS筆者24/09/12(木) 09:30:32
- 95二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 15:47:30
- 96二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 21:51:14
- 97二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 22:17:39
- 98二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 22:21:03
偶然の出会い…期待値以上のノベルスコップ…これもまたロマンかもしれないね
- 99二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 22:23:42
- 100SS作者24/09/12(木) 22:31:16
わざわざスレまで来てくださったとは…見てくれてありがとうございます。
面白かったなら何よりでございます。書いて良かった~
正直・・・欲張りではあるけれど…
動画化されたら、僕のロマンが一つ叶うんすよね
そしたら、ちょっと報われた気がして嬉しいなぁ、なんてね…
ま、乗ったらめちゃ嬉しい、ぐらいで、今後も良いものを書いていきたいなと思うんで。
また何かの節に会えたら、よろしくですー。
- 101二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 23:56:46
- 102二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 00:12:06
- 103二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 11:33:11
ほ
- 104二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 13:14:09