- 1二次元好きの匿名さん24/09/19(木) 23:53:40
「靚……。ふふっ、やっぱり日本でも今日の月は一段と輝いてるわ」
「そうだな。あまりに月がはっきり見えるから、日本では月の模様が餅つきするウサギに見えるけど、そっちはどう?」
「幾乎相同。こっちもうさぎだけど、餅つきではなく、薬草を挽いている姿って言われているわ」
「なるほど。それじゃあ、月と団子はそちらには関係性がないのか。あぁ、だから、今日、団子ではなく月餅を食べようと誘ったのはそういうことか」
月を見上げながら、私との会話でうんうんと一人納得するトレーナー。
周りを見渡すと私達と同じで、三女神像前で月を見上げる人達が多いこと。
そう、今日は中秋節……日本で言うと中秋の名月。もともと中国発症の文化が日本に伝わってきたのが始まりだったりする。
日本では、今は月を見上げながら団子を食べるのが一般的みたい。
でも、私が住んでいた香港では、家族や友達と一緒に月餅とお茶を楽しむのが普通だったりする。
なんでも丸い満月は家族団らんの象徴で、月餅には団結と調和の願いが込められているらしい。
他にも香港ではこの中秋節になると、様々な場所に燈籠をつける習慣がある。この時期の香港の街はクリスマスのイルミネーションさながら、光の街へと変貌したりする。日本でもランタンフェスティバルっていうイベントに行けば似たような風景は楽しめるけど、それはあなたと香港に行った時の楽しみとして残して置きたかった。
だから、今日は外に出かけず、せめて、トレーナーには私の故郷の味を色々と楽しんでもらいたい。
そう思って、香港から美味しいものを色々と取り寄せたのだ。
ただ、ここだけの話。発注する時に気つかずに数字を連続で押したみたいで、大量に届いた月餅をクラスメイトに振る舞ったのは内緒。
私は隣にいるトレーナーの裾を引っ張って、
「Exactly。トレーナー、そろそろ月餅を食べにトレーナー室に行きましょう。お茶も用意してあるから」
ここから離れる合図を送る。
「そうだな。そろそろ行こうか」
私達は月を見上げるのを止め、他の方より一足早くその場を立ち去り、一緒にトレーナー室へと向かった。 - 2二次元好きの匿名さん24/09/19(木) 23:54:26
「我記得、トレーナー。日本って、目玉焼きを月に例える月見料理があるけど、あなたのオススメとか何かあるのかしら」
トレーナー室に行く途中、ふと、気になったことをトレーナーに尋ねる。
「う〜ん。やっぱ、定番だけど月見バーガーかな。団子よりこっちの方が食べてるな」
「あら、そうなの。確かにダイヤと一緒に食べたけど、確かにあれは美味しかったわ」
私はついこの前、食べた味を思い出しながらトレーナーの言葉を肯定する。
「そうなのか。それ以外となるとぱっと思いつかないな。それじゃあ、来年は一緒に月見バーガー以外の月見料理を探そうか」
「Really?えぇ、来年一緒に探しに行きましょう」
来年の話をトレーナーがするのは珍しい。もしかして、トレーナーも私と一緒でその国独自の料理を紹介したくなったのかしら。
そう思うと顔が軽く火照りほど嬉しくなるのだった。
そんな他愛のない話をしていると、しばらくして、トレーナー室に着いた。
私は用意していたお茶を淹れて、月餅を食べることに。 - 3二次元好きの匿名さん24/09/19(木) 23:55:16
「さぁ、トレーナー、月餅をいただきましょう。どれからでもどうぞ。I'm confident。味には自身あるから」
軽く胸を叩いて、自信があるように見せる。
用意したものは月餅は3つ。
「これから、頂こうか」
トレーナーかそのうち一つを選び、口に運ぶ。
「どうかしら」
その様子を見ながら、味を尋ねる。
「美味しい。餡とナッツ類が混ざったものかな。普通の饅頭より甘さ控えめで甘じょっぱいね。うん、美味しい」
「ふふっ、気に入ってくれて良かったわ」
月餅に満足してくれてようで、少しホッとすると同時に嬉しく思う。
そして、私も同じものを1つ手に取り……ひとくち口に入れる。
月餅のモチモチとした食感が口の中に広がり、その後に餡の甘さが口の中全体に広がる。噛んでいくと、餡に混じったナッツ類が砕け、甘さのなかに程よい塩気が混じり、より甘さを引き立てている。
うん、美味しい。私も自然と頬が緩んだ。
- 4二次元好きの匿名さん24/09/19(木) 23:55:39
「ごちそうさま。クラウン、美味しかった」
「多謝。こちらこそ、美味しい、美味しいって言いながら食べてもらって嬉しかったわ」
トレーナーの感想を嬉しく思いながら、
私はお茶を飲みつつ、一息つく。
後に食べた、月餅の中身が濃厚なクリーミーカスタードや、餡の中に塩漬の玉子の黄身が入ったものも美味しくて、トレーナーはしばらく月餅に舌鼓を打っていた。
「ねぇ、トレーナー」
「どうした、クラウン?」
しばらく経った後、私はトレーナーに話しかける。
「外出せずに、たまにはあなたと一緒に室内でゆったりするのも悪くないわね」
ふと思ったことを口に出した。気の緩みだろうか、いや、あなたが相手だからこそ
、素直に言えたかもしれない。
「あぁ、そうだな。たまにはこういうのんびりした時間も悪くないな」
トレーナーは私の言葉に優しく笑顔で応えてくれた。
その笑顔を見ると、満月を眺めているように胸に心地良いと感じたのであった。 - 5二次元好きの匿名さん24/09/19(木) 23:56:08
ほっこり…
- 6二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 00:31:32
乙でした。お月見の一コマ良いね
- 7二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 07:55:54
- 8二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 08:48:16
相変わらず婚約者の距離感
- 9二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 10:47:19
良かったよ