カヨコ「なに聴いてるのって?」【SS】track 2.

  • 1二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:13:18

     
     はい、イヤホン。片方貸してあげる。
     いいよ、べつに気にしないし。
     ……激しい曲ばかり聴いているわけじゃないって言わなかったっけ。 
     確かに好みではあるけど、他のジャンルがキライってわけじゃない。
     せっかくだから私のプレイリスト、片っ端から流してみる?

  • 2二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:13:55
  • 3二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:16:11

    【ちょっとした前書き】

    暇さえあればイヤホンを耳に入れているカヨコ。
    先生は訊ねます。
    「なに聴いてるの?」
    激しい音楽ばかりが好きなわけではない。
    いつかそう言った彼女のプレイリストを、先生と一緒に聴くSSです。

    会話のみで進みます。
    地の文ありません。
    一話(ほぼ)独立型なので、お時間開いたときにぽちぽち読んでくださいませ。
    好きな曲だけ聴くように、つまみながら読むのもありよりのあり。

    なお、聴いている音楽はわたしたちの世界と同じものです。
    世界観? 細けぇことはいいんだよ。

    お前たちの好きな曲のめんどくさい語り、待ってるぜ!

  • 4二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:20:03

    【ふたりぼっち / さよならポニーテール】

     あれ?

     ゴソゴソ

     だよね、今日流しているのは、先生のプレイリスト。
     おどろいた。先生も『さよポニ』の曲入れたんだ。
     ――わかるよ。
     明るい曲もいいけどやっぱりこういう、どこか退廃的でノスタルジックで、黄昏が似合うような曲が、この人たちの真骨頂。『さよなら、ありがとぉ』とか。
     にしても『ふたりぼっち』か。
     
     ……♪

     ふふ。口遊みたくなるよね。 

     ……♪

     ボソ
     もし、先生と私が、成長する過程を、一緒に過ごすような関係だったらさ。
     もしかしたら、――今とは違った青春があったのかもね。 
     
     ……いや、なにも言ってないよ。 
     ああ、先生の鼻歌聴いてたら、私もちょっと歌いたくなってきちゃった。
     ちょっとだけ、乗ってあげる。
     
     ……♪
     ――……~♪ 

  • 5二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:20:52

    スレ立てありがとうございます

  • 6二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:22:58

    【Californication / Red hot Chilli Peppers】
      
     ――ああ、いい曲なんだけどね。
     Californication。Red Hot Chilli Peppersっていう人たちの曲。
     はっきりは言っていないし、曲調もおだやかだけど、ひどく攻撃的。
     ……先生のその想像は当たりだね。
     やっぱさ、音楽をやれる人たちだから。
     何か不満があるのなら、音楽で表現すべき。
     だから、私も好きだよ。
     なんだろうね……こういう音楽はさ、根本的に何かが違う。
     生きて来た環境なのか、活動する上での環境なのか、センスなのか。
     ……。
     怒りを芸術に昇華するんじゃなくて、芸術が怒りの形、か。
     あながち間違ってないんじゃない?
     ノスタルジーも言い換えれば、今の環境への不満だもんね。
     ……ふふ。
     じゃあ、甘いラブソングも、恋人への怒りからしか生まれないんだね? 先生。

  • 71/224/09/20(金) 01:25:54

    【すかんぽ / 高田渡】

     ポテポテ

     んんーっ。――ふわぁ。
     こんな日に土手沿いを歩くのは気持ちがいいね。
     ……ふふ。気にしないで。わたしだって無理な時はちゃんと断るから。
     あ。
     先生、これわかる?
     イタドリだよ。食べれるけど、さすがに、この辺に生えてるのは食べないほうがいいね。ここ、ワンちゃんの散歩コースだから。
     ……たしかに。すかんぽ、ともいうね。
     あはは。ちょっと古臭い言い方かもよ、それ。
     あ。
     でも、歌であるんだ。そのまま、いま先生が言った言い方のタイトルでさ。
     えーっと、あ、はいこれイヤホン。
     ちょっと待ってね。
     これだ。
     ……素朴な歌でしょ。
     詩は歌っている人、高田渡が書いたものじゃなくて、ヨヒアム・リンゲルナッツっていう遠い国の大むかしの人のでさ。
     酒場で詩を詠んでお金をもらう、ってことをしてたみたい。もちろん、それだけじゃ食べていけないから、船乗りなんかをして。
     先生、この歌、どう思う?
     線路に生えているイタド……すかんぽが行き過ぎる鉄道を見て、羨ましがる。だけどすかんぽは植物だから、どこにも行けない。
     哀れなすかんぽ、弱い草。
     いつか船すら見ることもしなくなった。
     ――悲しい歌、だよね。

    【↓続】

  • 82/224/09/20(金) 01:26:47

    【続】

     でもさ、これ、現地の人は笑いながら読むんだよ。
     酒場詩人ってさ、やっぱり盛り上げないとだから、たぶん本人も笑ってもらうような詩として書いてる。
     うん。
     歌っている高田渡は、この歌の『寂しい部分』を強調した。
     この詩の持つ……書いた人がもしかしたらあまり考えなかったその部分を。
     何年も、何十年も経った後で、この詩が高田渡のもとに届いたときに、ね。
     かわいい子には旅をさせろっていうじゃん?
     きっとこのひとのすかんぽは、旅に出られたんだよ。
     線路から鉄道に乗り、船で海に出て。
     さらに大陸をいくつもわたって、高田渡に届いて、さらに何十年も経っていま、わたしたちの元にたどり着いたんだ。
     もしかしたらこのイタドリも、いつかどこかへ旅立つのかもしれないね。

  • 92/224/09/20(金) 01:28:41

    >>5

    毎度毎度遅い時間にすみませぬ。

    ゆったりぽったり、お楽しみくださいませ。

  • 101/924/09/20(金) 01:33:05

    【死んぢゃってからも / 知久寿焼】

     あーあ。なんで今日に限ってじゃんけん負けちゃうかなー。
     ムツキはそんなに私と一緒に買い物したくなかった?
     そうじゃなくてさー。遊びに行くのと違うんだもん。決まったところで決まったもの買うのって、ぜんぜん面白くなーい!
     
     ゴォォォオ……ガタンゴトン……
     ガヤガヤ
     
     しかも今日の晩御飯私じゃん。カヨコちゃーん、ちょっと手伝ってくれるよ――カヨコちゃん?
     ……おーい。聞いてるー?
     
     ――ムツキさ。
     どしたの? 早く帰ろうよー。

  • 112/924/09/20(金) 01:33:41

     ムツキさ、今ここにいる人たちで、知ってる人っている?

  • 123/924/09/20(金) 01:34:51

     なにそれ。いないんじゃない? いるかもしれないけど、いないかもしれないなー。こんな人の多い駅で言われてもムツキちゃん、わかんなーい。
     私も。これだけ人がいるのにね。知ってる人、一人もいないや。
     どしたのどしたの。ねー。ムツキちゃんもう手が痛いんだけどー。
     
      ……今目の前を歩いている人たちに、知っている人がいないっていうのはさ。 歩いている子たちから見た私も、また知らないひとってことだよね。
     私が生きていることを、歩いてる人たちはさ、知らないんだ。
     生きていることを知らなければ、死んじゃってもわからない。
     この中の誰かが死んじゃってもわからないのも同じ。
     なんかさ、それってすごく寂しいことじゃない?

     ゴォォォオ……ガタンゴトン…… 

     ……カヨコちゃんさ、ちょっとオトナすぎ。感受性が高すぎるっていうのも考え物だよ?
     別に、私なんかは特別、感受性が高いってわけじゃないよ。ただ、そういうことが寂しいなって思っただけ。
     うそ。あのさ、他人のぜんぶを乗せたモノって、薬だけど毒でもあるの。救われるってことは、飲み込まれるってことと同じ。……ほら、いいから、カヨコちゃんにそんな考えを植え付けた曲を、私に聴かせてみて?
     ――よくわかったね。
     くふふ。でも手が痛いのはほんとだから、そこの植え込みのとこでちょっと休憩しよっか♪

  • 134/924/09/20(金) 01:35:41

     ……
     ――~♪
     ♪……

     ……ん。終わったよ~。
     飲み物買ってきたけど、いる?
     なになに優しいじゃん☆ じゃあお茶貰うね。
     どうぞ。

     カシュ カシュ
     コク コク
     
     ぷはっ。冷たくて美味しー☆
     ムツキなら炭酸選ぶと思ったんだけど。ダイエット?
     ムツキちゃんは太りませーん。それに、周りが大きくなれば、相対的に私が細く見えてラッキー♪
     性格ゆがんでるなあ。
     で、この曲。『死んぢゃってからも』。なるほどねー。なるほどなるほど……。暗ーい! あははっ。暗すぎるよカヨコちゃんっ。
     そりゃ、暗いけどさ。でも、良く聴くと
     明るい。とっても。曲も、このひとの独特な声も、詩もね。――明るく、前向きに、死を見ている歌だね? カヨコちゃん。
     ……うん。
     それにしても危ない曲だね~。うん、とぉーっても怖い歌。なにこれ、この人妖怪かなにかなの?

  • 145/924/09/20(金) 01:36:42

     グイッ

     ほら、私を見て? カヨコちゃん。
     ん、んむ。
     まず一つね? カヨコちゃんの考えてる……、欲しがってる答えは、これ。

     パッ

     難しく考えすぎなんだよー。別にこれ、ムツキちゃんじゃなくてもいいんだよ? アルちゃんでも、ハルカちゃんでも。ヒナちゃんでも、アコちゃんでも、美食研究会の子たちでも、給食部の子でもさぁ。カヨコちゃんは『宝物』をもう持ってるけど、まだまだそういう『チャンス』はやってこないしくるはずもない。違う?

     ……。
     くふ。正解みたいだね☆ じゃあ次。
     これを歌ってる人が誰を思ってるのかとか、いま何歳なのかとか。そんなの知らないけどさー? ……目線が違うの。歌ってる人の目線じゃなくて、カヨコちゃんが透かすべき目線は『死んじゃっていくことをちゃんと過ごした人』。『おしまいまで生き切った人』。幽霊さんがいないと、そもそもこの歌は成り立たないよね?
     たし、かに。
     カヨコちゃん。あのね?
     
     この歌に飲み込まれるのは、まだ早いよ?

  • 156/924/09/20(金) 01:37:13

     ゴォォォオ……ガタンゴトン……
     
     ――あり、がと。
     あはっ☆ どういたしまして~。
     
     ガヤガヤ
     
     はぁ。ムツキってさ、ほんとすごいね。
     あったりまえじゃーん。だってムツキちゃんだよ~? あ、でもー。カヨコちゃんがヒゲぼうぼうになったら、超面白いかも♪ ねえねえ、今日から処理とか一切しないで――いったぁい!
     それは言い過ぎ。あんまり生々しい言い方、わたしは好きじゃない。それに髭なんか生えないし。
     だからって叩くことないじゃん! ふーんだ。カヨコちゃんの写真髭ぼうぼうに加工して先生に送り付けちゃおー☆
     は?
     きゃははっ。やだぁ、その顔めっちゃこわいんだけど! 撮って良い? パシャ
     ……消して。
     あー! 先生だ!

  • 167/924/09/20(金) 01:37:45

     トッタッタッタ

     うん、そうそう、買い出し♪ 銃弾とかー、爆薬とかー、食材とかー、日用品とかー☆ カヨコちゃん一人で行かせると、万引き疑われたりするからさー。もうさ、重くて重くて、ムツキちゃんのかわいい手にビニール袋が食い込んじゃって見てよ、色変わっちゃってるぅ。
     ムツキ、そういうズルい言い方は――ていうかあんた今まで袋……いつの間に。
     えー! ほんとぉ? 先生、やっさしー! 
     あーあー……。
     ほら、カヨコっちも持ってもらいなよ。
     え、いいって。先生のが力ないじゃん。
     くふふ。こういう時はー、『大人の先生』に甘えさせてもらお?
     はぁー。

     ……わかったよ。
     ほんとごめん、先生。
     ここで会ったのも何かの縁。ご飯ぐらいごちそうするからさ、事務所まで荷物持ち、よろしくね。

  • 178/924/09/20(金) 01:38:13

     ――――
     ――
     ―

     ドス……ドス……
     トテトテトテトテ

     大丈夫かな先生。
     たぶん大丈夫だよー♪ あ、せっかくならさ、その暗ーい考えをぶっ飛ばせる、ムツキちゃんおススメの曲があるんだけど聞く?
     へぇ。Homeみたいなかわいいやつ? 私もあれ好きだったし、ムツキのおススメなら聞かせてもらおうかな。なんて曲?
    『バナナチョモランマの乱』!
     いいや、遠慮しとく。
     なんでー!? 

  • 189/924/09/20(金) 01:39:11

    【死んぢゃってからも / 知久寿焼】
    終わり。

    配分ミスった。

  • 19二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 02:46:32

    【GREEN SLEEVES Feat.池田綾子/ TATOO】

     ――この曲知ってる?
     もう、世界中で何回カバーされたかわからないぐらい有名な曲なんだけどさ。
     もちろん、これもカバーだよ。
     この旋律が『心が叫びたがっているんだ。』っていうアニメーション映画でも使われていた時は、びっくりしたよ。
     カバーって言い方は正しくないかもね、もともと、民謡だから。
     今から何百年も前に歌われていたのは確かだけど、それより前からあったかもしれないんだって。
     誰が作ったのかも、だれが広めたのかも、タイトルのGREEN SLEEVES――『緑の袖の人』が誰かもわからない。
     ふふ、なんにもわからないんだ。
     けど、ずっと歌い継がれてきた。
     初めに歌われたときとは歌詞も旋律も違うのかもしれないけど。
     河原の石みたいに、長い年月を、何年も何百年もかけて、こういう形に落ち着いたんじゃないかな。
     でも、うらやましいよね。
     このひとは、『緑の袖の人』は、何百年も思われ続けてる。
      ――歌は、時の流れの行きつく場所。
     それは、決して見ることができない『世界』の決まり事のひとつ、なのかもね。

  • 20二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 03:15:43

    【Lyla / Derek & the Dominos】

     あ。
     あはは、絶対先生は好きだと思ったよ。
     最高だよね、このギターリフ。うん。ロックが好きでこれに痺れない人はいないよ。
     ……たぶん、そのギターを弾きたくなるっていう思いは、何千、何万の人が感じているだろうね。
     本人がこれをレコーディングしたときは薬物でベロベロになってたらしいけど――だから、私は絶対にやらないって。心配してくれるのはうれしいけど、しつこい。
     Lyla。愛しのレイラ。これがTears in Heavenのクラプトンなんだから、振れ幅がすごい。
     もちろん、……子供もできる前の、若いころの曲。
     とにかくこの女の人が好きだったんだなっていう、だれにでもある衝動をさ、ここまで思い切りぶつけられるともう気持ちがいいのなんのって。
     まあ、いろいろ逸話のある曲だけどさ、
     自分の衝動がここまで人に受け入れられるって、どんな気分だろうね。
     ――本人はもうあまり歌いたくないみたいだけどさ。
     みんなが好きな曲だから、歌わないわけにはいかないし。
     ギター、やりたいんだっけ? 先生。
     だったら、今の先生の衝動が永遠に残ることを覚悟しないと。
     ふふ、でも聴いてみたいかも。
     先生が今、何を思って、何を叫びたいか。
     その思いは、誰に向けられるんだろうとか、ね。
     

  • 21二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 04:15:15

    【亡き王女のためのパヴァーヌ / モーリス・ラヴェル】

     ――今日の仕事はとりあえず終わったよ。
     先生は?
     ……ああ、お疲れさま。
     にしても今からアビドスの方か。じゃあ、泊まり込みかな。
     それならさ、最後に一曲聴いてかない?
     うん、コーヒー淹れてあげるから。いつものやつだよ、一杯飲む間は、ちゃんと休憩しようってやつ。なにもかもを忘れて、さ。
     
     コプコプ
     コトン

     はい、どうぞ。
     で、曲は……。
     珍しいかもね。私がクラシックの曲を流すのは。
     別にわかる顔をするつもりはないよ。実際、指揮者がどうの、何年の録音がどうの。形式がどうのとかぜんぜんわかんないし。
     バロック時代の曲はたまに流すけど、あれはフォーク・ミュージックの原型として聴いてるからさ、感覚としてはちょっと違うんだ。
     まあ、私はもっと私の目線に近い、『私たちの中』で生まれた音楽が好きだから。
     という言い訳をさせてもらうね、先生。
     つまり、音楽的なことは、私に聞かれてもさっぱりってこと。
     ふふ。じゃ、流すね。

  • 22二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 04:18:35

     ――――
     ――
     ―~♪

     ……この曲が、なんで好きかって話だけど。
     どこかで、素敵な話を聞いたからなんだ。
     この曲を作ったラヴェルって人、晩年はもう、いろんなことを忘れちゃってたらしくて。
     まあ、そうだね。いわゆる老人性の――ってやつ。
     それでね、先生。
     この曲を本人に聴かせたんだって。昔の記憶を刺激するのって、いいっていうでしょ。
     そしたら、ラヴェルはなんて言ったと思う?

     『素晴らしい曲だ。誰が作ったんだ?』って言ったんだってさ。

     この話は私もうろ覚えで、どこで見聞きしたのか、本当にこの曲のことだったのかもわからない。
     でも。
     ……なんて幸せな人なんだろう。
     なんて素敵な話なんだろうって思わない?
     自画自賛、って言ってしまえばそれまでだけど、この人は、自分の作品で、自分すらも感動させた。
     なんだか、それがとても、私の胸を締め付けてさ。
     ――本当?
     よかった、先生もそう思ってくれて。
     うん。
     誰が弾いてても、どんな演奏でもいいんだ。クラシックの聴き方としては、怒られそうだけど。
     ただ、この旋律を聴くと、そういう話を思い出す。
     思い出すたびに、素敵な曲だなって、心の底から思うんだ。

     ~♪

  • 23二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 04:23:13

    今日は終わります。
    もう朝やん。

    【GREEN SLEEVES】【Lyla】【亡き王女のためのパヴァーヌ】はあと一話書けたら、のちのち
    しぶの方にまとめます。
    ハーメルン? 知らない子ですね。

    では明日もよき音楽ライフを。
    読んで下さりありがとうございました。

    ……あと、復活祈願のスレに記載ありがとうございます。
    とてもうれしかったです。

  • 24二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 08:25:08

    >>23

    ありがとうございます、お疲れ様でした。

  • 25二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 08:31:18

    >>23

    お疲れ様!

    お帰り、待ってたっすよ~


    Green sleevesは聞くとわかるタイプの曲よね。「あっこれかぁ」ってなる感じ。

    レッチリが出てきたのは意外。「Can't stop」とかはイントロがいいぜ。

  • 26二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 10:34:35

    Laylaいいよね…高校時代の英語の先生が流してたのが出合いでした(隙自語)
    イントロも超いいが実はアウトロも超好き

  • 27二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 15:30:11

    >>24

    いつもありがとございます!

    ……思うんだ。このSSは朝には合わないんじゃないかって。

    でもしょうがないね!



    >>25

    日本での流行はアメリカのブラフォーからだと思うけど、元はイギリスの曲なんですよね。

    実はパヴァーヌも繋がったり。16世紀にヨーロッパで流行した舞踊曲だし、グリーンスリーヴスが書物で言及されたのも16世紀が最初。ルネサンス期やべーよ。

    Cant'stopもよい……。2000年代初頭のチリペはノリに乗ってたんだろうね。

    前スレでNirvana書いたし、今回はそれ繋がり。


    >>26

    アウトロいいよね!!!!

    さんざんリビドーをぶつけられたあとのこのアウトロって、なんか動物の求愛行動みてるみたいですき。クジャクが羽広げてるんよ。


    夜中までもたせる為に一本だけ投稿します。

  • 28二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 15:31:00

    【GHOST WORLD / Tempalay】
     
     ――ん、気になる? この曲。
     Tempalayって人たちだね。曲自体もそうだけど、MVも独特で面白いよ。
     これ終わったら観ようか。
     奇妙奇天烈で閉塞的な始まりから、サビに入ったときの恨めしいほどの解放感。
     なんだか百鬼夜行の方のお祭りでかかるような曲を思い出すかも。
     この人たちの得意技かもね。ふふ。
     ブロックを決めて、それぞれ気持ちがよくなるように組み替えているみたいな、いままで聞いた音楽とは違う、新しい流行の形式。
     どこのメロディをきりとっても表情が違う。
     そういうのがきっと、今の時代には求められているのかもね。
     歌詞もそうだよ。点を置くだけで線にしない。
     まあこういう、そのものに意味を為さないで解釈をゆだねるような詩はあまり得意じゃないけど、この音でフォークみたいな文章を歌われても、って。あはは。
     いいよ、今度CD貸してあげる。
     ……ねえ、まだその仕事片付け終わってないでしょ、先生。
     MVはそれが終わったら。わかったら早く片付けちゃって。

  • 29二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 00:52:00

    ばんばんわ。

    今晩は一本投稿して終わると思います。

    すみませぬ。


    あと、昨日投稿した分のプレイリストです。

    ご参考までに。


    https://youtube.com/playlist?list=PLlZbR9KWRLgkxX4eq7zPXxVQwav9iIFKO&si=5xKhbV2F2fypVBQG

  • 30二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 12:01:01

    保守~

  • 31二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:28:16

    【Horrific Compositions of Decomposition / LAST DAYS OF HUMANITY】

    ~♪
     ガサガサ
     
    「あ」
    「あ」

     クルッ
     ガシィ
     
    「むぐっ!」
    「なぜ逃げるの? 鬼方カヨコ」
    「むー! んーー!!」
    「静かにしてちょうだい。別に今日はあなたたち目当てじゃない。あれ見える?」

     コソコソ
     オイ、ソロソロ、マチアワセ ノ ジカン ダカラナ
     ブツ ノ カクニン シテオケ ヨ

    「私の目当てはあれ。だから静かにしてもらえる?」

     コクコク
     パッ

    「――ぶはっ」
    「人の顔を見ていきなり逃げ出すとか、傷つくじゃない」
    「そりゃ逃げるでしょうよ。私たちからしたら恐怖の象徴以外なにものでもないし」
    「……」

  • 32二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:28:39

     シナ

    「私だって学生らしいことをしたみたいと思うことだって――」
    『傾注。情報通りならそろそろ取引が開始されるはずです。ヒナ委員長、イオリ、チナツ。配置についてください』
    『こっちはいつでもいいよーアコちゃん』
    『こちらも準備はできていますアコ行政官』

     ……

    「……ほんとお疲れさま」

     コホン

    「ヒナよ。鬼方カヨコがたまたま通りがかったから、拘束してるわ」
    「拘束ってあんたね……」
    『へー。この近くに便利屋もいるとは。こりゃ一石二鳥だ』
    『交戦したというわけではないんですよね?』
    「ビニール袋ぶら下げて歩いてたから、とっつかまえただけ」
    『承知しました。ではカヨコさんはほかの風紀委員に身柄を預けていただいて――』
    「せっかくなら、鬼方カヨコも戦力に加えましょう」
    「!?」
    『はぁ!?』
    『あははっ。委員長、それなんの冗談? 鬼方カヨコでしょ? 便利屋と手を組めっての?』
    『まあ確かに、使える戦力が増えるというのはメリットではありますが。行政官はどう思います?』
    『ありえません。便利屋なんかと手を組まなければいけないほど、私たちは落ちぶれていませんから! それにそんなのが万が一万魔殿にバレたら、どんな嫌がらせを言われるか……』
    「難癖付けられるのなんかいつものことじゃない」
    『そういう問題ではないのです!!』

  • 33二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:29:55

     キィィ――ンン

    「アコ、うるさい」
    『うるさ……っ!?』
     
    「そうだよ、ヒナ。あんたたちが私と手を組んだなんて知れたら、いったいどれだけ面倒なことになるか。ていうか実際、うちの社長が白目剥きそうだから勘弁してほしいんだけど」
    「だってそっちのほうが面白そうだと思わない?」 
    「面白いって、あんたさ……。なんか悪いものでも食べた?」

    『とにかく、私は反対です、ヒナ委員長。この案件は私たちだけで十分遂行可能です』
    『……いや、アコちゃん。そうもいかないかもよ』
    『なぜですか!?』
    『あれは……栗浜アケミ、ですか』

     ヒ、ヒィ! ナンダオマエッ!
     ワタシハ クリハラアケミ ト モウシマスノ。コオノタビノ トリヒキ ヲ タントウ サセテイタダキマスワ
     アンダーテメー! ネエサン ニ ハムカウッテノカー? オァー? 

  • 34二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:30:16

    『ななな、なんで七囚人がこんなところに!』
    「……だれなの、あれ? どう考えてもヤバいやつに見えるのは気のせいかな」
    「私でもちょっと厄介だと言えばどんな奴かわかる?」
    「ヒナで手こずるってそれは……。あ、でも勝てないわけではないんだ」
    「負けるわけがないわ。ちょっと面倒になったってだけ」

    『ていうかさ、アケミが出てくるような取引されるブツってなんなのさ。アコちゃんは知ってる?』
    『そんなものはどうでもいいのです! ああもう、そんな情報こっちには上がってきていませんよ!』
    『はぁ。で、どうしますか。現状はカヨコさんを戦力換算してようやく、っていう状況ですか』
    『うぐぐぅ……』
    「というか、私手伝うなんて一言も言ってないんだけど。この港には、海見ながらアイス食べようと思って来ただけだよ」
    「食べながらでもいいわよ」
    「そういう話じゃなくて……」
    「それに、あまり時間はないみたい」
     
     コイツガ レイノ ブツ ダ
     タシカ ニ ウケトリマシタ ワ。アナタタチ、ヤクソクノモノヲ。
     ハイ、ネエサン! ホラヨッ
     ランボウ ナ ヤツメ……。カクニン サセテ モラウ

  • 35二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:30:32

    「取引確認。どうする、アコ? 作戦では、ここで奇襲だけど」
    『――あれ。イオリ、多分そちらからの方が確認しやすいと思います。ちょっと見てもらえますか? あなたの配置のコンテナの奥です』
    『今度は何ですか!』
    『ええと、あー、ヘルメット団だね』
    『増援?』
    『ちょっとまってねー委員長。 ……あ、あれカタカタヘルメット団じゃない。ジャブジャブの連中だ』
    『今回の取引ってカタカタヘルメット団だけじゃないのかしら?』
    『その通りです。ジャブジャブヘルメット団は関与していないはず……』
    『あ。あれってあいつじゃない? 幹部の……。赤い髪の』
    『河駒風ラブ?』
    『そうそう。そいつが……ざっと30人ぐらい引き連れて取引現場に向かってる』
    『もう……もう!! なんでなんですか! なんで情報にないことがこんなにも!!』

    「はぁ」

    「アコ。とにかく、この取引を成立させなければいいのよね?」

  • 36二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:30:46

    『……委員長、私は反対ですよ』
    『そうそう、こっちの戦力が足りてないって。そりゃ、委員長がいれば戦いには勝てるだろうけどさ。連れてきてる人数じゃ制圧まではできない』
    『最悪の最悪、ヒナ委員長の言う通りにカヨコさんを戦力に加えたとしても、この規模では、どさくさに紛れてブツを逃してしまう。きっと彼女たちも、それを一番に動くはずだし……』

     ギリィ

    『ああもう、なんでこんなことにィ……!』
    「戦力ならいるわよ」
    『今からゲヘナに戻って戦力をかき集める時間は……いや、まさか。ヒナ委員長……?』

    「ここに、どんな仕事でも引き受けるやつらの一味がいるじゃない」

    「……本気?」

  • 37二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:31:44

     ――――
     ――
     ―

     ピッ

    「15分。ありったけの物資持ってくるってさ」
    「あら、やっぱり早く来れるのね」
    「……完全に事務所の場所知ってるよね、ヒナ」
    『今回は特別! 特別なんですから! あと絶対万魔殿には気取られないように!!』
    「アコ、うるさい」
    『ジャブジャブヘルメット団、スケバン連中と交戦開始したよ』

     タタタタタ
     ナンダテメェ!
     ハッハー! ウチラ ノ ニワ デナニシテンノー? オマエラ ヤッチマエー!!
     ダレダテメェラコラァ!! ココハ コウキョウ ノ ミナトダロウガ!

    『カタカタヘルメット団も動きました。隊を分けて、受け取った品をエスケープさせるようです』
    『イオリ』
    『はいよアコちゃん。足止めなら問題ない! イオリ班総員、戦闘開始! いくぞー!』
    『チナツ班、スケバンとジャブジャブヘルメット団の交戦地点の西に移動してください。それでルートBは封鎖できるはずです』
    『チナツ班了解』
    『ヒナ委員長はアケミたちの動向に注意をお願いします』
    「ヒナ了解。さて鬼方カヨコ。働いてもらうわよ」
    「金がもらえるならなんでもやる。それが便利屋のモットーだからね。いいよ、ヒナたちの言う通りに動いてあげる」

  • 38二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:31:58

    「ふふふ。こうしてあなたと肩を並べて戦う日が来るなんて」
    「虚妄のサンクトゥムタワーのときも、一応一緒に闘ったけど」
    「こうして、目の届くところでってことよ。水を差さないで」
    「で、どうするの? あのアケミって人、腕を組んだまま動かないけど」 
    「動いたら被害が出るからあのままでいて欲しいけれど……」
    「そんなにヤバいの?」
    「戦車を片手でひっくり返せるって聞いたわよ」
    「……またまたご冗談を」 
     
    『チナツ班、移動完了』
    『ではそのまま、待機を――』
    『きゃあっ!』
    『チナツ!?』
     
     ナンダァー? ゲヘナ ノ フウキイイン ジャネエカ
     イインチョウ ジャネエナラ ショウキ ハ アル!
     ヨーシ オマエタチ アイツラハサンデ ウッチマエ!!

    『ジャブジャブヘルメット団の分隊です! わたしたちを遮蔽物にしてスケバンに攻撃を――きゃああっ』
    『チナツ! 誰かチナツ班の救援に――挟撃を受けています!』

  • 39二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:32:40

    「カヨコ」
    「おっけー。わたしが行くよ」
    「アコ。チナツ班の救援に鬼方カヨコが向かうわ。連絡手段はある?」
    『急に言われてもっ。ヒナ委員長のインカム渡すわけにはいかないし、ええと、ええと……』

     prrrrrr
     ピッ

    「モモトークがあるでしょ」
    『……通信手段確保。カヨコさん、チナツ班の援護ポイントまでわたしがサポートします』
    『はい、よろしくアコ』
    『……あなたと私がこうして共に行動するのはあの船以来ですが、私たちは本来あなたを取りしまる側。ゆめゆめお忘れのないように』
    「はいはい……。便利屋68課長鬼方カヨコ。受けた依頼は必ず遂行するから任せなよ」
    『ほんとに頼みますよ!? ではまず現在地点から左のコンテナの二列目を通って――』

  • 40二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:32:56

    ――――
    ――


    「この騒ぎはどういうことですの?」
    「は、はい姐さん。どうやらジャブジャブヘルメット団の奴らが縄張りを主張して襲撃してきたようです」
    「ヘルメット団? こいつらの仲間かしら?」 バキバキ
    「ち、ちげーよ! 私らはカタカタヘルメット団。ジャブジャブの奴らとは違う!」
    「ふうん」
    「おーい、やばい、やばいぞ!!」
    「どうした!」
    「ゲヘナの風紀委員だ! 風紀委員が来た!」
    「なんだと!?」
    「だからゲヘナの管轄はやめようって言ったんだ! 終わりだ! ヒナが来る!」
    「……」
    「ヒナという方はそんなにお強いのでしょうか」
    「強いっす。私たちも何度もやられて……」
    「私よりも?」
    「!」
    「いや! 姐さんの方が強いに決まってます!」
    「ねえ、そちらのヘルメット団の方たち」
    「な、なんだよ! わたしらはもう逃げるから、お前たちも……」
    「あなたたちが戦っている風紀委員の場所をざっくりでいいから教えてちょうだいませ」

  • 41二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:33:12

     ……

    「ふうん。なるほどねえ」
    「のんびりしてる場合じゃねえ! いっつもそうだ、ヒナは遅れてやってくる!」
    「ここと、ここ。ここを塞がれていたら、わたしたちはこの道をまっすぐ行くしか逃げ道がないわ。……カルレス君でも考え付くような、稚拙な作戦ですわね」
    「お、おい、まさか」
    「ふふふ。ヒナとやらがどれだけ強いのかわかりませんけれど」
    「姐さん……! やるんすね!!」
    「自分が最強だとうぬぼれる子供には、教育が必要ですわよね……」バキバキバキ
    「ヒィっ!」
    「道は私が拓きましょう。あなたたちはそれを持って、一目散に逃げること。おわかり?」
    「で、ですが姐さん!」
    「あなたたちが逃げられれば、この戦いは勝ち。どうかわかってくださいまし」
    「……はい!」

  • 42二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:33:37


    ――
    ――――
     
    「指定ポイントに到着」
    『そこからなら背後からの奇襲はありえません。逆に、ジャブジャブヘルメット団分隊の背後を取る形になります。さらに今通って来た迷路のようなコンテナ通路は、ゲリラ戦に大いに役立つかと』
    「戦況をかき乱すには最高だね。ありがと、アコ」
    『いえ。では、カヨコさん、戦闘を開始してください。とにかく、チナツたちから注意をそらすように!』
    「了解。じゃ、また用があったら電話するね」
    『は、いや、繋いだままでも』
    「戦闘中はどうせ現場判断でしょ。何かあったらすぐ連絡するから。じゃあね」
    『……よろしくお願いします』

     ピッ

    「さて」

  • 43二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:34:34

     スッ
     スポッ

     スッスッ
     ♪ガガガガガガゴポゴポゴポ

    「やっぱりこういう時は、ゴアグラインドが聴きたくなるからさ」 ギギギギィ

  • 44二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:34:50

     ガンガンガン

    「ぐあっ! なんだ、後ろから!?」
     
     ガンガン

    「いってぇ! スケバンのやつらじゃねえ! 誰かいるぞ!」

     ガガガン

    「ぐはあっ!」 
    「どこだ、どこに居やがる! ――いっでぇ!」
    「――……風紀委員相手に余所見とは、ずいぶん舐められたものですね」
    「ちくしょう、こっちはそれどころじゃ……」

    「――鬼さんはこちらだよ」
     ギギギィ

    「ヒィィイ!」
    「な、なんだあの顔!!」
    「ウワァァァア!!」

    「反撃です! チナツ班、後方のジャブジャブヘルメット団に集中砲火!」

     ワァァアア!!

  • 45二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:35:03

    ――――
    ――


    「はっはっは! この辺の地理は散々叩き込んだんだよ!」
    「ああもうちょこまかと!」
    『カヨコさんがチナツの救援戦闘に入りました。イオリ? そっちはどうですか』
    「逃げられてないよ! けど、捕まえてもない。ああもう、ほんと港って嫌い! 迷路だよ! 現在地はわからないごめん!」
    『とにかく追い回してください。そこはどこに逃げても海に繋がるどん詰まりのはずです!』
    「了解! 待てこら! 今なら救急医学部送りは勘弁してやる!」
    「待つかバーカ! 何度その言葉に騙されたと思ってるんだ!」
    「それは確かになあ」
    「よし、ここを抜ければ!」
    「どうせまた迷路に――えー!? アコちゃん!」
    『どうしました?』
    「船だ」
    『は?』
    「ボートだよボート! 奴らボート隠してやがった!」
    「ボートを使うのがジャブジャブの奴らだけだと思ったか? ばーーか! 免許はないけど動かすことぐらいできるんだよー!」
    「お、お前ら撃て撃て!」
    「当たるかそんなもん!」

  • 46二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:35:21

     ブルルン
     ザァァアア――

    「あーばよー!」
    「早っ……。あそこはさすがに私のライフルでも無理そうかな」
    「くっそ。こちらイオリ、カタカタの奴らに逃げられ――」

     ガァン

    「ぎゃああああ! エンジンが! エンジンが火を噴いたぁぁあ!!」
    「……へ?」

     ――たとえどんな依頼であろうと完璧に遂行する。

     ジャコン

    「信頼には信頼で応える真のアウトロー。それが私たち、便利屋68よ!」

  • 47二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:36:04

    ――――
    ――


    ♪ガガガガガガゴポゴポゴポ
    「……」ギギィ
      
    ガンガンガン

    「ヒィィ!」
    「うぎゃああ!」

    「次はあそこです! とにかくこの挟撃の状況から脱出を!」
    「オイテメー! 今こっちに当てただろ!」
    「はぁ? スケバンのあなたたちを撃ってるのはジャブジャブ――」
    「うるせー!!」

     ガンガンガン
      ガンガンガン
    ガンガンガン

    「きゃああっ!」
    「隊長を守、ぎゃああ!」
     
    「あーあー、こりゃもうめちゃくちゃだね。――あ」

    「うへ、へへ、へ」
    「!? あなた、いつの間に――」
    「全部吹っ飛ばしていいんですよね? ほんとにいいんですよね? へへ、ふふふふ……。アル様が徹底的にやっていいっておっしゃってましたし、やりますね……? こんなに固まって……、固まっちゃったら……うへへへ」
    「あなたは便利屋68の……」

  • 48二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:36:23

    ――いいよ、ハルカ。派手にやって。

    「はい、カヨコ課長」

    「ヤバイ、に、逃げ――」
    「はい、捕まえた」
    「――鬼」

     カチッ

     ――ォォォオン

  • 49二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:36:42

    ――――
    ――

     
    「アコ」
    『はい、ヒナ委員長。イオリ班、逃亡したヘルメット団の捕縛に成功。チナツ班は――大丈夫です。ただ、爆発の影響で動けません』
    「アケミが動いた」
    『……ご武運を』
     
    「あらあら、よっぽどお強い風紀委員長と伺いましたが、ずいぶんとまあ、かわいらしい子ですのね」
    「あなたもかわいいわよ、アケミ。とってもチャーミングな身体だわ」
    「わたしの名前をご存じですのね。ふふふ、最強のスケバンとして、鼻が高いですわ」
    「あなたはこのまま矯正局に逆戻りするのだけど、最後に何かやり残したことは?」
    「ふふふ……」
    「ね、姐さん」
    「あなたたちは混乱に乗じて逃げなさい。わたしもすぐに後を追うわ。あの子に勝つことが目的ではありませんもの」
    「はい……!」
    「……そう。それがやり残したこと。残念だけど、心残りを抱えたままになりそうね」 
    「どうでしょう。てっきり部下の方々も一緒かと思ったら、一人だけ。なら、どうってことありませんわ」
    「そう……」

  • 50二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:37:03

     キィィィ――

    「さあ、来いっ!!」
     
     ポーイ
     ドサッ

    「……バッグ?」
    「ヒナちゃーん。逃げないと巻き添えだよー?」

     バッ

     ドォォォォォン

    『委員長!』
    「――まったく。見境ぐらいつけてもらいたいものだわ」
    「きゃははっ☆ よく避けたねー。さっすが風紀委員長!」
    「今はあなたたちの雇い主よ。気を付けて」
    「はーい。あんまりいたずらしたらアルちゃん怒るからねー。仕方ないけど、協力してあげる!」

     パンパン
     
    「けほけほ。私、埃っぽいところは苦手ですのに。あなたたち、大丈夫?」

  • 51二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:37:27

    「はい、ありがとうございます! さっすが姐さん!」
    「うっそぉ。結構詰め込んだのになー。無傷っておかしくない?」
    「あれがアケミよ。憶えておきなさい、浅黄ムツキ」
    「誰に命令してるの? ……だったら、手加減なんていらないってことだよね!」
    「じゃあこちらは手加減してさしあげますわ!」

     ガガガガガガガ

    「あっはは! パワフルぅ!」
    「こういう手合いが一番めんどくさい」

     キィィィィイ
     ガララララララ

    「くすぐったいですわねえ!!」
    「マッサージは強いのが好き? ドMだね♪」

     ポイ
     ドォォン

    「だから埃っぽいのは苦手ですの」

     ガチャン
     ドォン
     タッタッタッタ

  • 52二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:37:48

    「ひゅー☆ なにその武器。脳みそまで筋肉じゃないと使えないでしょ!」
    「わたしもあまり見たことないわ」
    「いや、ヒナちゃんのも十分重そうだよ?」

    「逃げられた」
    「え? あー! スケバンが減ってる! 追わなきゃ――」

    「――行かせません」

     ドォン

    「けほけほっ。もー!」
    「……私が徹底的に弾幕を張ればいけるかしら?」
    「あの筋肉玉相手に? 無理だと思うな―」
    「……イオリ、行ける?」
    『走ってるけどちょっと遠いかな!』 
    「チナツは――無理だから。ムツキ、便利屋の連中で他に動けるのは」
    「社長が今狙撃ポイントに登ってるって。あのクレーンの途中でへっぴり腰な人影がそう」
    「あー! カヨコっちお疲れー☆」
    「お疲れムツキ。どう、あのアケミって人」
    「筋肉を煮詰めた感じ! あははっ。ハルカちゃんは―?」
    「伸びてる。まったく、なんで自分をまきこむような爆発させるかな」
    「すごい音したもんねー。カヨコちゃんよく無事だったねー」
    「そりゃまあ、盾はあったし。赤い髪して目立ってたんだよね」

  • 53二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:38:01

    ガチャン

    「連戦で申し訳ないのだけど、逃げたスケバンを追ってくれない?」
    「はぁ? 誰に命令してんの? 例え依頼主でも気に食わなかったらぶっ殺すからね」
    「ヒナ相手にケンカ売らないでよ」
    「だってぇー」
    「受けた依頼は『取引の妨害』。これだけ派手に暴れたんだから、お金貰わないとまたテント暮らしだよ」
    「私は別にいいよ?」
    「お風呂に入れないから私は嫌だ」
    「ぶぅー」
     
    「うふふ。美しい友情ってやつですわね」 
    「そうだよー! 反吐が出るほどのねー!」

     ガチャン
     ドォォン

  • 54二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:38:26

    「――けほけほ。なにあれ、あんなの振り回せるって反則じゃん。そりゃ、戦車片手でひっくり返すわけだ」
    「あの人から逃げられなくてさー」
    「なるほどね。困ったな……」
    「……鬼方カヨコ」
    「ん?」
    「あなたのスマホに、こないだ聴いていた曲って入ってる?」
    「どうしたの急に」
    「イヤホンと一緒に貸してくれない?」
    「いいけど……どうするの?」
    「ちょっとちょっとヒナちゃん。そういうおふざけはさすがのムツキちゃんもすっごいムカつくんだけど」
    「ふざけてないわよ。鬼方カヨコ、あなたならわかるでしょ?」
    「……ああ、ヒナもそういう人ってことね」
    「なになに……あ、そういうこと? カヨコっちと同じタイプ? テンションぶち上げたい系? いがーい。あははっ☆」
    「うるさいわね、浅黄ムツキ」
    「やるならいつでもどうぞー? 乱戦なら私もヒナちゃんに勝てるかも♪」
    「だからなんでこっちでケンカしてるのさ。ヒナ、はいこれ。再生ボタン押せば聴ける」
    「ありがと。……GASTUNKじゃないの?」
    「こういう時は、もっと攻撃的で、もっと破滅的で、もっとグロテスクな――ゴアグラインドが最高だから。騙されたと思って聞いてみて」
    「わかった」

     スポ

    「ヒナ、ヒナが暴れたくなったタイミングでどうぞ。合わせるよ」

  • 55二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:39:21

     コクリ
     ピッ

     ♪ガガガガガガガゴポゴポゴポ

    「……ひどい音楽ね。というかこれ、音楽なの? 下水道みたいな音してるけど」
    「解説欲しい?」
    「いらない。こういう曲は、ただ衝動のままに聴いていればいい。――ほんと、いい趣味しているわ。気に入った」 
    「そりゃどうも」

     ユラァ
     キィィィィイイイ
     
    「ふふふ……、小鳥遊ホシノとの戦いを思い出すわね」

    バサァ
    ――スゥ
     
    「行きなさい」

  • 56二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:39:47

    ガラララララララガガガガガガガ
    ガガガガガガガ

    「くっ――急に威力が――!!」

    ガラララララララガガガガガガガ
    ♪ガガガガガガガゴポゴポゴポ
    ガィィィィィ―――

    「あっはっはっは、ヒナちゃんすごーい! なにあれビーム!?」
    「……お願いだから、これからヒナにケンカ売るのはやめて、ムツキ」

     タッタッタッタッタ
     ガラガラガラガラ……

  • 57二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:40:23

    ――――
    ――


    「あ、アルちゃーん? もう下りてきていいよ。物資は回収したからさ♪」
    『ま、ま、ま、まって! か、風強くて身動き取れないのよぉ!』
    「はぁ。ハルカに根元から爆破してもらう?」
    『絶対やめて!!』
    「さっき見たところから一歩も動いてないじゃーん。ほら、いっちにー、いっちにー!」
    『むむむ、むりむりむり! 落ちちゃう! 死んじゃう!』
    「狙撃手がなにしてんだか、まったく」
    「で、取引したブツって、結局なんだったの?」
    「……プロテイン?」
    「こんなの使わなくてもよくない?」 
    「まあ、やつらは逃がしたけど、モノはこうして奪ったわけだし、とりあえず任務完了。はぁ、アイス、溶けちゃっただろうな」
    「あははっ。どんまいどんまーい☆ 帰りに買ってけばいいじゃん。そういえばさ、電話受けたときアルちゃん白目剥いて足ブルブル震わせてたよ? まさか風紀委員から依頼取ってくるとは、カヨコっちもやるねー!」
    「……とりあえず、なんとかして社長をあそこから降ろそう。ムツキ、ハルカ持ってきて」
    「はぁーい♪」
    『早く助けてちょうだいぃい!』

  • 58二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:40:37

    ――――

    『逃がしたんですか!?』
    「ご、ごめんなさい」
    『いえ、ヒナ委員長が……そんな。珍しい。それほどまでに栗浜アケミは手ごわかったってことですね』
    「それもあるけれど」
    『けれど?』
    「……ちょっと、やりすぎてしまって。行方が分からないと言った方がいいかもしれないわね」
    『すみません、戦闘が激しかったせいで映像がまだこちらに出力されていないのです。被害規模としてはどのぐらい……』
    「港はしばらく使えないわ」
    『……ええと』
    「施設の半分が、その、瓦礫に。あとコンテナも、無事なやつを探す方が、難しいかも」
    『……そこの荷下ろし場は、ゲヘナに流通する物資の7割を担っているのですが』
    「……ごめん」
    『帰ったらすぐに万魔殿に出向、でしょうか』
    「わたしも行くわ」
    『いえ……はい』

    「あーあー、すごいねこりゃ。怪獣大戦争跡地?」
    「委員長が始末書を書くの、初めてではないですか?」
    「どうせ全員仲良く懲罰だよ……。さすがに私たちも知らぬ存ぜぬはできないでしょ」
    「こうしてみると……委員長がいない風紀委員は弱いって言葉、しみじみ噛み締めさせられますね」
    「いや、これやれって言われても、ねえ」

  • 59二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:40:49

    ――――

    ザバァ
     
    「――はぁっ」
    「姐さん!」
    「無事ですか!?」
    「げほっげほっ。潜水もなかなかいい運動になるわね。あなたたちは無事?」
    「姐さんが風紀委員長をひきつけてくれたおかげっす! でも……すみません。キヴォトスで禁止されてる成分もりもりのプロテインは、取られちゃいました」
    「せっかく探したのに……。ほんとすいません!!」

     グズグズ

    「……おバカさんたち」

     ギュ

    「いいの、薬に頼らなくても身体は鍛えられるんですもの。あなたたちが私のために一生懸命探してくれたことは知っていますわ。今は、あなたたちが無事であることが、一番うれしいんですの」

    「姐さん……」
    「姐さん!!」

     ウワアアアァン……

    「ふふふ。さて、高たんぱく低脂質の特別メニューで、反省会といきましょう?」
    「はい!!」

    ――――

  • 60二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:41:03

    「――げふっげふっ」
    「うぁあ……あれ、うち、何してたんだっけ」
    「港で釣りしようってなって」
    「どうせならシーフードパーティしようって、みんな誘って……」
    「そしたらスケバンとカタカタヘルメット団の奴がいて、撃ち合って、風紀委員のやつらもいて、何かに襲われて……」
    「――光が」
    「鬼が、私を盾に」

    「河駒風ラブだな!」
    「ヒィィ! な、なによ! ……って、風紀委員!?」
    「ジャブジャブヘルメット団幹部河駒風ラブ。お前の身柄を拘束する! おとなしくお縄につけ!」
    「……へぁ?」
    「毎度毎度面倒ごと起こしやがって……。今度こそ矯正局送りにしてやるぞ!」
    「……」

     ヤダァァァアアアアナンデェェェ!

  • 61二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:41:22

     ――

    「あ」
    『今度は何ですか、ヒナ委員長。もう何があっても一緒なので、全部まとめて教えてください……』
    「カヨコから借りたスマホとイヤホン、音が聞こえなくなった」
    『……弁償、ですね』
    「ほんとごめんなさい、アコ」
    『いえ……大丈夫です』

  • 62二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 16:42:46

    【Horrific Compositions of Decomposition / LAST DAYS OF HUMANITY】

    終わり。

    これが書いてて楽しくなっちゃうパターンってやつです。


    >>30

    申し訳ない…申し訳ない!

    ありがとう!

  • 63二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 00:56:08

    ずいぶん涼しくなったよね、先生。
    中秋の名月ってやつも便利屋のみんなとみられたし。
    お団子食べた?
    季節のものはちゃんと食べたほうがいいよ。
    意味なんかなくても、そういう積み重ねが人生を輝かせてくれると思うから。

  • 64二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 00:57:16

    【Yesterday Once More / Carpenters】

     私ね、この曲を聴くたびに、羨ましい気持ちになるんだ。
     『いつかをもう一度』って、前も言った通りに、私ってあまり、存在しないノスタルジックに引きずり込まれるような曲は得意じゃない。
     でも、この曲は不思議とね、好きなんだよ。
     なんでだろうね。
     わたしにも『いつか』を持つときが来る。
     それまでにどれだけ『いつか』を作れるか。
     ……そんな風に、前向きに考えさせてくれるんだ。
     思い出ってさ、きっと音で出来てるんだよ。
     こうやって先生と、イエスタデイ・ワンス・モアについて話したことも。
     『いつか』。
     思い出す頃が来るんだろうな。

  • 65二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 01:44:29

    【Red Hot / ELLEGARDEN】

     あ、フウカだ。
     ……あー、また美食のやつらに連れまわされてるんだね、楽しそう。
     ああいう風にさ、自由な運転して、例えばさ。
     Red Hotを聴いたらとても気持ちいいんだろうなってたまに思うんだよね。
     ん、聴く?
     はいどうぞ。
     ――そうそう、ちゃんとエンジンを掛ける間も設けられてるみたいなんだよね。
     先生はバイクの免許、持ってるの?
     そっか、持ってたら後ろ乗せてもらおうとおもったんだけど。
     風を切りながら、地平線まで続く田園風景の中を、こんな曲を聴きながら走るっていうのはさ、わたしの人生でやりたいことの一つ。
     一人もいいけど、やっぱり、誰かと一緒がいいかな。
     便利屋のみんなか、先生か。
     こういう疾走感のある曲を聴くたびに、そんな風景を想像してるんだよね。

  • 66二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 02:39:11

    【永遠の嘘をついてくれ / 吉田拓郎】

     先生。
     お疲れさま。どうしたの、こんな人気のないところに。夜はあぶないよ、この辺。
     ――ばーか。別に毎日いるわけじゃないよ。
     確かに、この薄暗さにぽつんとある自販機って、なんだか落ち着くから好きな場所ではあるけど。
     ん。いいよ。はい。
     ……この歌ね、ずっと嘘を吐き続けるひとと、それを信じ続けるひとの歌なんだ。
     嘘だってわかってるのに信じてる。そういう歌。
     おおきな運動があったんだって。レッドウィンターみたいなさ。
     時代の流れに押し流されちゃったけど、でも、その時の夢から覚めることができない人もいた。
     嘘を信じる人は、その運動から――夢から覚めた人。
     夢を見るってさ、起きている状態があるからこそだよね。
     だから、夢を見たいがために、嘘を信じ続けてる。
     まどろみの時間って、本当に心地がいいから。
     でも……嘘をつく人はさ。
     とっくに夢から覚めているけど、信じる人のために、ずっと夢の中に居るフリをしているんだよ。
     信じる人よりずっと目が覚めているのに、自分を信じているという嘘を、ずっとついていてほしい。
     そうすれば、自分は夢の中に居るんだと錯覚できる。
     だから二人とも『永遠の嘘をついてくれ』って、お互いに懇願してる。
     そういう歌、なんだと思う。
     なんて残酷で、なんて優しいお話なんだろう。
     ねえ、先生。
     もし、私についている嘘があるならさ。
     お願いだから、ずっと嘘のままにしておいて。
     嘘も死ぬまで続ければ、本当になるんだからさ。

  • 67二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 02:39:34

    エルレのRed Hotは自分がロックにハマりギターを買うきっかけになった思い出の曲だからすごく嬉しい

  • 68二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 03:16:37

    【道情 / 道教音楽(原詩 白玉蟾)】

     うぅー……。
     先生、ここのこれって訳すとしたら、どう訳す?
     え? 資料? ないよ、これ、まだわたしたちの言葉に訳されてない詩だから。
     いや、たまたま見つけた詩――漢詩っていう、山海経の古い古い詩に曲をつけたものなんだけど、これがまた何とも言えない味わいで。
     だから詩の意味を理解したくて、こうやって訳してみてるんだけど……。
     ここにきて不勉強に泣かされるとは。
     ちょっと訳してみる? 先生。助けると思ってさ。

     ……
     
     常世人間笑哈哈,(常世の人間が笑いながら)
     争名奪利你為啥 (名を争い利益を奪うのはなんのため)
     不如回頭悟大道,(無駄なことに頭を使うより、良き政治を理解すべきだ)
     無憂無慮神仙家。(神仙のものには憂いも煩わしい考えも無い)

     ……

     おお、すごいね。
     こうしてみると、山海経独特の宗教の歌、かな。
     ……まあ、先生の訳が正しいとは限らないけど。
     ふふ。でも、 なんだかのんびりしてていい歌。
     このひとね、大酒飲みで四六時中旅をしていたみたい。
     なんだろ。ラーメン屋でおじさんが、自治区の政治に文句言ってるのを聞いてる感覚に近いかも。
     あはは。こんなの聞かれたら、山海経の人たちに怒られちゃうかもね。

  • 69二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 03:22:12

    >>67

    サビの小刻みコードチェンジすき……

    なおボーカルは死ぬ。

    エルレはいろんなひとの脳と耳を焼いたんだろうなって。

  • 70二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 03:29:17
  • 71二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 12:31:13

    保守

  • 72二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 22:00:57

    むん

  • 73二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 23:55:39

    今年の夏は本当につらかった。
    ……って言っても、もういいよね?
    秋の虫も鳴き始めたことだしさ。
    いや、よく耐えたと思うよ。
    これからどんどん涼しくなるといいね、先生。 

  • 74二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 23:56:03

    >>71

    保守ありがとうございます。

    助かります…。

  • 75二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 00:04:37

    【トマト / Nico Touches The Walls】

     シャクシャク
     
     むぐっ。
     ――さすがにこれを見られたのは恥ずかしいんだけど。
     いや、そうはいっても先生。
     道端でトマト丸かじりしてる女とかヤバいって自分でもわかってるって。
     ちょっと小腹が空いたけど、お菓子って気分じゃないし……。
     かといってジャンクフードを食べられるほどお腹が空いているわけじゃない。
     野菜とかフルーツって、こういう時便利なんだよ。
     いや、違う。別に痩せようと思ってない。というか、普段の生活で太れる要素ないし。さすがにデリカシーないんじゃない? 先生。
     うるさいな、何も用がないならはやくあっち行って。

     ……♪

     ……当てつけ?
     いい歌なのは知ってるよ、ていうか聴かせたの私だから。
     トマトでしょ、NICOの。
     ぜんぜん違うじゃん。そんなエモい状況じゃなくない?
     ちなみにだけど。
     天野月子みたいって言ったら、蹴るから。

  • 76二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 00:20:16

    【秋の夜の会話 / 高田渡(原詩・草野心平)】 
     
     パタン

     ふぅ。
     ん、先生、用事済んだ?
     いきなり連邦生徒会に呼び出されるのも大変だったね。
     荷物はそれ? おっけ、じゃあ持つよ。
     あ、じゃあ先生はこれ、この本持ってて。借りたやつだから汚さないでよ。
     よいしょっと……。
     それ? そうそう、詩集。ずいぶん昔の人のやつでさ。
     視覚的にも面白いし、オノマトペとか多用されてて変な詩が多いんだ。面白いよ。るるるるるる、ってね。
     え? そりゃ読むよ。だってこれの中に……ちょっとわたしのポケットからスマホ取って。
     パスワードは――いいや、インカメラに私の顔を……それでロック解除されるから。
     ん。そしたら音楽プレイヤー開いて……。
     高田渡。
     『秋の夜の会話』って歌。
     
     ~♪

     この歌の詩が載ってるんだ。冬眠を前にした蛙たちの会話。
     ふふ。面白いよ。その本ちょっとだけ貸してあげるから、読んでみたら?
     ごはんが少なくなってお腹が切ないけど、お腹取ったら死んじゃうねとかさ。
     切実な悩みなんだけど、ちょっとクスりと笑っちゃう。

     ソヨソヨ
     
     ……秋だね、先生。

  • 77二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 00:27:57

    【月の爆撃機 / THE BLUE HEARTS】

     ~♪

     ……そんなに私に似合う?
     ありがと。パンクロックだし、私のイメージには合――。
     え、歌詞が?
     それは、まあ、なんかちょっと恥ずかしいけど――ありがとう、先生。
     好きだよ。大好きと言ってもいいかも。だから、うれしいな。
     ずいぶん昔にレンタルしたアルバムでさ、ライナーノーツにね。
    「誰の青春にも、THE BLUE HEARTSがいる」みたいな言葉だったかな。
     そういうことが書かれていて、じーんときたんだ。
     リアルタイムじゃないし、実際に見たわけでもない。当時の盛り上がりとか、ライブの熱も知らないけど。
     歌はたしかに、いろんな人の胸を打っている。
     特にこの歌はさ……。
     音楽に沈む人って、独りぼっち気質な人が多いから。
     それをとっても前向きに肯定してくれているんだ。
     『ここから一歩も通さない 誰の声も届かない』。
     とにかく拒絶、拒絶、拒絶。
     でも、この歌の言葉だけは通しちゃう。
     いったい何人の音楽ジャンキーが、この歌に救われて、慰められたんだろう。
     ……そんな歌が似合うって言ってくれた先生はさ。
     いま、私がどれだけうれしいか、わからないんだろうね。

  • 78二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 00:33:48

    【16 / andymori】

     こうやって、いつもの川辺でさ、ゆっくり座りながら。
     遠くの道路に通る戦車とか、搬入トラックの轟音とか、人が歩いているな、走ってるな、立ち止まったのはなんでなんだろう、とか。
     ぼんやり眺めているとさ、andymoriが聴きたくなるんだ。
     どうぞ、イヤホン。どうせ聴かせて、って言うんでしょ?
     ……16、って曲。
     これが歌詞の通りリズム……16ビートを指すのか。
     それとも、16才のリズムで生き続けている、って意味なのか。
     そんなことはどうでもよくて。
     エモーショナルだけど、なんていうかな。
     残酷なんだ。
     ああ、あるある、わかるよって感じ。いいことじゃないけど、ついやっちゃうこと。
     もらった花を世話しないで枯らしたり、今度遊びに行こうって行って遊びに行かなかったり。
     16才……ハルカはまだ15歳だけど、私とはさ、先生からみたらそりゃ一緒だろうけど。
     やっぱり違うんだよね。
     きっと見ている景色が違う。思うことだって。
     ちょっとだけ、ハルカや、他のみんなよりオトナなんだ、私は。
     先生、今は子供扱いしてくれるの、うれしくないかも。
     ……ほら、こういう気持ちになるのだって、きっとそういうことなんだよ。

  • 79二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 01:07:31

    【老女優は去り行く / 美輪明宏】

     コト

     今日もお疲れさまでした、先生。
     わたしはこの後便利屋の仕事があるから、もうシャーレを出るけど、何かやっていった方がいいことってある?
     そんなに時間がかからなければ……。
     うーん……映画を一本見るほどの時間はないけど……あ、そうだ、じゃあとっておきの『舞台』を観ようか。
     プロジェクター借りるよ。ふふ、意外? 私だってたまには――ま、歌なんだけどね。
     
    ~♪
     ~~♪
      ~~~♪
     ワァァァァ パチパチパチパチ

     ――あははは。手を叩いちゃうよね、すっごくわかるよ、先生。
     この曲は、観客の拍手で完成する歌。だから、レコーディング音源より、こういうテレビとか舞台の方が映える。
     なにより美輪明宏の表現力が圧倒的すぎるんだ。こんなの、ナマで観られたら、号泣する自信がある。歌と言うより舞台。演劇。わかるよね?
     女優に憧れた少女が、人生を経て、老い、舞台から去る日の歌。
     一人の女優の人生が、たった7分に集約されてるんだ。
     痺れてるね、先生。こんなのに触れたら、しばらくはそのまんまだから。経験談。
     わたし? ――もう脳内で映像が出てくるぐらいには観てるよ。
     
     カタン
     カチャ
     
     じゃ、そろそろ私は行くね。
     じっくり余韻に浸ってて、先生。

     パタン

  • 80二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 01:11:10

    今日はあらかじめ書き溜めたので、早い時間ですがこれで終わります。

    保守ありがとうございました。


    例によってしぶ(>>70)にまとめておきますので、暇つぶしのスナックSSが読みたい方はぜひどうぞ。



    ではでは、おやすみなさいまし。

  • 81二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 11:11:07

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 21:13:49

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 00:06:15

     涼しいね、先生。
     まさかここまで一気に気温が下がるとは思わなくて。
     この恰好だとすこし寒かったかも。
     そろそろ秋物を出さなきゃ。
     はあ。タイツってすぐダメになるから、出費がかさむ季節だよ。

  • 84二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 00:07:34

    >>81

    >>82

    保守ありがとうございます!

    助かっております……。

  • 85二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 00:09:01

     【Have You Ever Seen the Rain(雨を見たかい) / CCR】

     ガチャ

     おはよ、先生……って、今日休日なのに、なんで仕事してんの?
     わたしも午後から便利屋の仕事があるから人のこと言えないけど、それにしても先生働き過ぎ。
     ――忘れ物があって。
     ええと……あった。
     マガジン。弾込めしてたら一個足りないって気付いて。
     私の用はこれだけだけど……せっかくだから、お昼まで先生の仕事手伝ってあげる。
     気にしないで。その代わり、便利屋のみんなに晩御飯でもおごってもらうから。
     ふふ。冗談。はい、こっちに回せる仕事ちょうだい。
     はいはい、そうですよ、どうせ音楽が聴きたいだけ。私、音楽聴きながらなら何も苦痛に思わないんだよね。手は遅いかもしれないけど、延々働けると思う。
     一曲目は、そうだね、久々にこれ聴こう。
     
     ~♪

     Have You Ever Seen the Rain。雨を見たかい。
     気持ちがいいでしょ。カラっとしてるよね。
     歌詞が不思議で、これを反戦歌っていう人が多いけど、私はそういう解釈は好きじゃない。
     この曲が発表された当時はそういう文化が多かったってのも知ってるけど……反戦歌って言えばなんだってそうできると思わない?
     私はもっと、楽しい解釈が好きなんだ。
     というか、アーティスト本人も言ってるしね。地元の気象現象。よく、天気雨が降る地域だったんだってさ。
     さ、じゃあやれるところまでやろうか。
     これをやればいいんだね?

  • 86二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 00:29:47

    【秘密基地 / 高田梢枝】

     カタカタカタ

     今さ、便利屋のみんなと、ちょっと古いアニメを見てるんだ。
     それがまた、物語もいいんだけど、音楽が独特で。
     『交響詩篇エウレカセブン』、ふふ、なんだか声に出して読むと気持ちがいいかも。
     そうそう、挿入歌とか、作品の中のセリフとか、各話ごとのタイトルも、往年の名曲から取られてたりしてて面白いんだよね。
     例えば?
     私がわかったのはビョーク、坂本龍一ぐらいだったな……。
     テクノ系からが多いみたい。今まであまり聴かないジャンルだったから、これを機にっていうのもいいかもね。
     で、これはエンディングの曲。
     長いアニメだからさ、何回か変わってるんだけど、一番最初のエンディング曲。
     こういうしっとりエモーショナルな曲を一番最初に持ってくるのって、なかなか難しいんだろうけど……いいよね。
     大人になった子が、子供のころの純朴さを思いだす、っていう歌。
     うん。こういう曲も聴くようにしたんだ。いい曲は、好みにかかわらず、自分の栄養にしようって。苦手な食べ物も食べないと、栄養バランスが悪くなるってね。
     『中途半端な僕には、なにひとつできなかった』
     その前の詩は、『一生懸命がカッコ悪くて、冷めたフリをしていた』みたいな感じなんだけど。
     ……よくある歌詞かもしれないけどさ。
     聴くタイミングによっては、こんなにも胸をえぐるんだね。
     私は、大人になる人。
     「一生懸命」を忘れていた――のかも。
     一生懸命を続ける先生みたいな大人になれたら、どんなに素晴らしいんだろう。

  • 87二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 00:43:33

    【Piano Man / Billiy Joel】

     「人間は根源的に孤独な生き物である」。
     昔、そんな言葉をどこかで見たんだ。
     人と分かり合えるとか、一心同体とか。そんなことありえないって思っていたんだよね。
     ――わかってるよ。若気の至り。恥ずかしい過去。思い出したくもない。
     便利屋に入って、そんな考えは間違いだった、って気付いた。
     でも、間違いないのはさ。
     アルは私じゃない。
     私はアルじゃないし、私はムツキじゃない。ハルカでもない。
     確かに、独立しているんだよね。それを孤独というのかもしれないって。
     Piano Manってさ、そういうことを端的に著していると思わない?
     酒場に集まるいろんな人は、いろんな人生を持ってる。みんな同じところにいるけれど、みんな違う人。
     孤独が集まって、孤独ってお酒をみんなで飲む。べつに悲しそうとか、そういうことはなくて。そんなお酒でも、一人で飲むよりはいい。
     孤独って、きっとそういうことなんだろうね。悪いことじゃなくて、当たり前。
     私は先生ではないし、先生は私じゃない。
     でも、いっしょに仕事を片付けているっていうことが、大事なことなんだ。

  • 88二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 01:03:19

    【Will the Circle be Unbloken / The Cater Family】

     ……そりゃ古く聞こえるはず。
     この録音、確か100年弱前だから。
     Will the Circle be Unbloken。WillがCanになったりもするかな。
     古い古い、カントリーソング。
     お母さんが亡くなって、お墓に連れて行く朝の歌。
     Circle be Unbloken……壊れていない円っていうのは、お母さんがいなくなっても、いつか会えるからっていうところから来てるんだと思う。
     そう、だね。トリニティの宗教の教えらしいのはその通り。
     だってこれ、原曲がアメイジング・グレイスだもん。
     あはは。分からないよね。でも、例えば楽器なんかで一音一音追ってみて、先生。アメイジング・グレイスになるから。
     ああいう、神様! みたいな荘厳な歌をさ、野に生きる大衆が自分たちの目線で替え歌したもの。カントリー・スタイルに変えたもの。
     いろんな人が、これをカバーしてる。翻訳して、自分たちの言葉で歌っている人も。
    「良い旋律は良い家だ。住む人間が変わっても、家としての役割は変わらない」。
     ――いい言葉だと思わない? 先生。

  • 89二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 01:10:46

    【キセキ / Greeeen(高木さんCover)】
     
     聴いたことがある?
     そうそう、Greeeenのキセキだよ。
     それを、何かのアニメ―ションのキャラが歌ってる、みたいなカバー……なんだってさ。
     いや、そのアニメは見たことなんだけどね。今はほら、エウレカセブンをみんな見てるから。
     前にさ、曲のカバーについて少し話したの憶えてる?
     ……うん。わたし、カバーって嫌いじゃないんだよね。
     音楽って、やっぱりそのアーティストありきなところがあるけど、いい歌は別の人が歌い継ぐっていう考え方が好き。
     特にこういう、カラオケなんかで歌ってるような感じでさ、世代じゃない人が往年の歌を歌っているっていう状況が一番だね。
     ああ、この曲は生きてるなーって、そう思う。
     音楽ジャンキーの私が言うのもアレだけど、歌って、ただ流れているだけでいいんだ。
     生活のワンシーンで流れている。それだけで。
     楽器がどうとか、構成がどうとか、コード進行がどうとか。アーティスト目線じゃなくて。
     ただ流れてて「あ、この曲、いいな」ってふと思う。
     理屈なんかわからないで、ただ、感じる。
     そういう、「みんな」が作った、「みんな」に向けられた音楽が、大好きなんだよね。

  • 90二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 01:16:07

    書き溜めって偉大。

    とはいえ、書き溜め分は全部その日に使い切りなんだけど。


    本日も保守ありがとうございました。

    例によってしぶ(>>70)にまとめておきますので、暇つぶしのスナックSSが読みたい方はぜひどうぞ。


    ……ふと思ったのです。

    保守の手間を考えたら、このままぴくしぶのみの連載に変えてもいいんじゃないかって。


    ではでは、おやすみなさいまし。

  • 91二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 08:07:22

    保守

  • 92二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 16:31:24

    夜までほ

  • 93二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 23:16:12

    >>90

    >……ふと思ったのです。

    >保守の手間を考えたら、このままぴくしぶのみの連載に変えてもいいんじゃないかって。

     それもまた正論ですね。もしそうするのでしたら、限の良い所からでお願いします。

  • 94二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 02:13:36

    食欲の秋。読書の秋。芸術の秋。
    いろんな秋があるけど、先生はどう過ごすの?
    私は相変わらず。
    春だろうが、冬だろうが。
    季節は音楽と過ごすって決めてるんだ。

  • 95二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 02:15:17

    >>91

    保守ありがとうございます。

    たしゅかりゅ。


    >>93

    一話完結みたいなもので、一生キリがいいと言えばいいと言う。

    とりあえず、今週はスレで続けようと思います。

  • 96二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 02:26:14

    【花のサンフランシスコ / scott McKenzie】

     サァァァ――
      ブロロロロ

     やあ、先生。
     急ぎ? もし急いでいないなら、隣座りなよ。
     アルと待ち合わせなんだけどさ、なんかバス乗り過ごしたらしくて。時間空いちゃったんだよね。
     わたしは昨日、ちょっと知り合いのところに泊まってたんだ。
     ……他校だよ。他校の人。ミレニアムのね、音楽好きの子のところに。
     まあそれはいいんじゃん。ほら、イヤホン。私と……先生も、もうそうでしょ?
     立派な音楽ジャンキー。起きてるとき、音楽がないと物足りなく感じてる。
     なんだかうれしいよ、先生。同じような趣味を持った人と、こうして音楽を聴けるのは。
     ――この曲は。こないだ、エウレカセブンってアニメを見ているって言ったじゃん?
     その中に出て来たセリフというか、設定に関係のある歌なんだ。
     ずっと昔、花を身に着けて戦争に反対する運動が起きてね。とっても大きい運動。20万人も、同じ場所に、同じ目的で集まった。
     サマー・オブ・ラブ。
     そう呼ばれている集会の、テーマソングみたいな感じで作られたんだって。
     主義主張は人それぞれで、私がこの運動に賛成か、という話は抜きにして。
     なにかのために一生懸命になるって、それが命を賭すほどのものだったとしたら。
     たとえどんなものでも、私は素敵だなって思う。
     ……便利屋?
     ふふ。私は我が強いからね。
     素敵だと思わないと、身を投じることはないんだ。

  • 97二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 02:36:14

    【Shape of My Heart / Sting】

     ――ふふ。そう、やっぱわかる? 先生。
     LEON。あの映画、アルの好きな映画の一つだよ。
     最強の殺し屋だけど、優しくて、あまり頭が良くない。
     そんな殺し屋が、たまたま出会った少女の面倒を見ながら、在り得たかもしれない人生を楽しんで、なにかを取り戻す。
     ……いい映画だよね。
     キャッチコピーのさ。
     『凶暴な純愛』っていう言葉。
     愛っていう言葉にいろんな意味が含まれてて、おしゃれだなって思ったよ。
     映画自体もおしゃれだしね。
     アルも私も、タクシードライバーとか、LEONとか。こういうフィルム・ノワールの中でも、うだつの上がらない主人公が好きみたい。等身大というか、自分を重ねやすいんだろうね。
     あのラストシーンで、このStingのShape of My Heartのイントロが流れ始めるところ。
     そりゃ人気な映画になるはずだよって話。ずるいったら。
     先生と便利屋の関係も、それに近いのかなって思ったこともあったけど。
     その場合、レオンの役割は私たちになっちゃうし。
     ……いやいや、先生に殺し屋とか、絶対に合わないって。
     くっ。ふふふ。
     あはは。想像しちゃったよ。
     あー、おかし。

  • 98二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 02:52:11

    【The Rose (愛は花、君はその種子)/ Bett Midler(都はるみ)】
      
     ……これも、映画の曲。
     今日はそんな気分かも。次は違うの聴こうか。ガラッと雰囲気変えてあげる。
     でも、今はこの曲に浸ろうよ。
     この映画ね、ジャニス・ジョプリンっていう歌手がモデルになっててさ。
     ジャニスは……すごい歌手。
     残念ながら27才で亡くなっちゃったけどね。
     死の際に持っていたものは、煙草ひと箱とそのお釣り、4ドル50セント。
     こんなどうでもいいことすら、みんなが記憶に残して、歴史にも残るぐらいには、ジャニスの死っていうのは衝撃的だったんだ。
     27才……。わたしより、たった9歳しか違わないのに。
     The Rose。
     優しくて、強くて、哀しくて。
     涙を流した後に、前を向ける。そんな歌。
     さっきも言ったけど、『愛』って、いろんな意味があるんだよ。決して、恋愛そのものの意味だけじゃない。
     『傷つくことを恐れていたら、踊ることはできない』
     がむしゃらに生きようとする心すら……『愛』って言うんだろうね。
     なんかこういう、秋の気配のする日に聴きたくなるんだよ。
     次の春に向けて種を撒く、世界の強さを教えてくれる歌をさ。

  • 99二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 03:23:12

    【Follow the Drinkin' Gourd / 黒人霊歌(サ・フォーク・クルセダーズ版)】

     ほら、ぜんぜん雰囲気違うでしょ。
     最初に聞いた花のサンフランシスコに近いかもね。
     これも、人をどこかに導く歌だよ。
     ……歌詞全部使ってね。
     こういうの、初めて聴く?
     歌は『道具』だって前に私は言ったけど、これはまさしく道具。
     歌詞がさ、全部暗号なんだよ、これ。
     暗号を紐解いて、その通りに移動するとね。
     ある場所からある場所へと、ちゃんと辿り着く。
     いろんな人が歌っていて、歌詞も違ったりするけど、全部原典みたいな歌詞からつまんでるって感じ。
     いちばんきれいにまとまっているのは、このザ・フォーク・クルセダーズ版かな。
     厳しい差別を受けていた黒人が、解放される場所を目指す歌なんだ。
     文字を読み書きできなくても、歌なら覚えられる。
     ね、すごく実用的でしょ。
     ――まあ、実際に歌われていたわけではない、っていうのが通説だけど。
     でも、当時の人たちが歌を使って秘密の言葉を伝えていたっていう文化は、確かに存在したんだ。
     歌は道具……。
     情緒のない言い方だけど、これは本質の一つでもあると思わない?

  • 100二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 03:49:15

    【やつらの足音のバラード / ちのはじめ(ムッシュかまやつ)】

     ピッ
     やっとバスが来たってさ。
     まったく。アウトロー目指す女がバス停で待ちぼうけって……。
     ムツキとハルカ? 買い出しに行ってるよ。明日の依頼で使うものが多くてね。
     じゃ、最後の一曲かな。わたしも、待ち合わせ場所に行かなきゃいけないし。
     はい、イヤホン。
     
     ~♪

     あはは。
     聴くよ、こういうのも。のんびりしてて、ぼんやり沈める。特に、こういう心地のいい日差しの中ではね。
     ここまでいくと郷愁も感じない。
     大むかし、まだ人間も居なかった時代。ゆっくり時間が流れて、生き物はいるんだけど、意識みたいなものはなくてさ。
     ゆっくり、ゆっくり、雲が流れて、草原がそよいで……。
     そしてあるとき『やつらの足音』が聞こえてくる。
     むかーしのアニメの曲。もちろん、みたことはないけど。
     キヴォトスでの毎日はきらびやかな情報ばかり目に入るけどさ、たまにはこういう、なんにもない歌を聴くのもいいよね。

     ♪……

     ……ちょっとは休憩できた?
     先生も、こういうなんにもない世界を想像して、なんにもない時間を過ごさなきゃだめだよ。
     忙しさに追われると、小さい秋すら見つけられなくなる。
     そんなの、この世界に生きる生き物の一つとして、寂しいと思わない?
     
     じゃ、そろそろいくね。お疲れさま。

  • 101二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 03:51:50

    本日も保守ありがとうございました。

    例によってしぶ(>>70)にまとめておきますので、暇つぶしのスナックSSが読みたい方はぜひどうぞ。


    >>95の通り、今週中はスレ内でのSSを続けようと思います。

    もし落ちてしまっても、しぶでは書き続けていますので、よろしければそちらで会いましょう。

    カヨコもきっと、ずっと音楽を聴き続けているはずです。


    ではでは、おやすみなさいまし。

  • 102二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 08:19:20

    「老女優は去り行く」あの方の曲を見てたら一つの劇を見ているかのような気分でした。ありがとうございます

  • 103二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 16:24:27

    >>102

    バケモンなんよね……あの人は。

    以前、劇やってる友人に見せたら唖然としてました。

    泣き崩れて舞台袖にはけて行く老女優が、キリっと持ち直して、

    往年のスターの貫禄を演じながら消える。たまらん。女優とはかくあるべきなのか。


    よるまでほ。

  • 104二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 00:37:24

    このレスは削除されています

  • 105二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 00:55:09

    「ん?……ああ、指の動き?気になっちゃった?」
    「……そうだね。今聴いてるのがちょうどこんな感じでさ」
    「そう、Iwamizuの戀歌って曲」
    「アルバムのAlone2の、一番目」
    「ジャジーな曲調で環境感がバックに流れていて、跳ねるようなリズムが印象的だね」
    「そして何よりサビの3音トリルがたまらない」
    「……そう、さっき指を動かしてたのはその部分」
    「気持ちゆったり目のペースから急に忙しなく叩かれる鍵盤を思うと楽しくなっちゃって」
    「このトリルの前後、前の方はむしろ音を減らしてぐんっ、て緩急をつけてるんだけど、終わる時は音の数はそのままに高低差で自然に元のペースに合流させてるんだ」
    「なかなか技アリだね」
    「ピアノと鉄筋の音が好きなら聴いてみて」
    「先生も、きっと気にいると思う」

  • 106二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 01:31:46

     ――あれ、ムツキだけ?
     おかえりー。ハルカちゃんはねー、アルちゃんと明日の下見だって~。
     ふーん。じゃあどうする、晩御飯どっか食べいく?
     夜には帰ってくるんじゃない? あ、Bluetooth使っちゃってるや。
     別に私のってわけじゃないし……。たまにはムツキのプレイリスト聴かせてよ。
     やだぁ~、なんか恥ずかしいよカヨコっちぃ!
     いたっ、いたいって。

  • 107二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 01:33:15

    >>105

    オレ オマエ スキ

    本気で気に入りました。CD買います。

    ……ちょっとヴァーチャンルインサニティみありゅ?

  • 108二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 01:49:54

     【トウキョウ・シャンディ・ランデヴ / MAISONdes feat.花譜】
     
     「ああ、これね。去年あたりやたら流行ってた」
     「どこいっても流れてたよね~。動画でもやたら使われてたし?」
     「急に聴かなくなると、なんとなく耳寂しくなる気持ちわかるよ」
     「私はあんまり追わないジャンルだけど、なんていうんだろうね。ボカロ系の血筋の人って聞けばすぐわかるから、文化として確立されてていいと思うよ」
     「えー。いちいちそんなの考えながら聴いてないよ~」
     「なんていうかさ、フォーク・ソングの文化とちょっと似ててさ」
     「フォーク・ソングってあれ? たまにカヨコちゃんが流す、なんか素朴ーなやつ」
     「そうそう。プロでもなんでもない人が歌を作るって言うのは、それこそフォーク・リバイバルの趣旨として――」
     「オタクだねえ♪」
     「……悪かったね」
     「いいよいいよ、なにか一つのことを、そこまで好きになれるのって、私からしたらちょっとうらやましいし」
     「ムツキだって好きなことの一つや二つあるでしょ。特別なことじゃない」
     「んーん。カヨコちゃんのは特別。そんなに深く何かを追おうなんて――」
     「ふふ。ね、特別じゃないんだよ」
     「まあ、便利屋はそういうのとちょっと別というか……」
     「そういえばさ、これ歌ってる人の歌だったら聴きたいのあるんだけど、ある?」
    「なんてやつー? MXSTREAMに上がってる?」
    「上がってる上がってる」

  • 109二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 02:10:46

    【例えば / 花譜 】

    「あー! なんだっけこれ! 聴いたことある!」
    「『映画大好きポンポさん』」
    「それー! いやぁ、ムツキちゃん、不覚にも泣いちゃったんだよね。ほんと面白かったー! もう一回観たいな―」
    「観ればいいじゃん。サブスクで観たんだから」
    「あれさー、ほら、前に貧乏タイム入ったときに解約されちゃって」
    「なにそれ。言ってくれればお金ちょっと貸したのに」
    「え、カヨコっち貯金とかしてるタイプ?」
    「……え?」
    「え?」
    「……いいよ、私のアカウントで、あとで一緒に観ようか」
    「やったー! なんかすっごい地味ーなシーンなのに、あんなに派手にできるって、ものごとはやりようだよねー☆」
    「ただいらないシーンをカットしてるってだけだもんね、あそこ」
    「いらないシーンが大事なものっていうのがいいんだよ~」
    「ムツキがそこまで気に入るって珍しいね。私も一介の映画好きとして、まるで『ニューシネマパラダイス』が現代にリバイバルされたみたいで、うん。好きな映画」
    「『君は、映画の中に自分を見つけたんじゃないかね?』だっけ」
    「……うん。あんなに人を救う言葉は、なかなかない」
    「あれ? ちょっとうるうるきてる? 思い出して?」
    「うるさい」
    「きゃははっ。――でも、うん。ムツキちゃん、音楽とか映画にそういうのは感じないから、羨ましい」
    「でも、共感はできるでしょ?」
    「?」
    「私たちは、いろんなものを切って、ここにいるから」
    「……くふふ。『ただひとつ、残ったものを、手放さないために、諦めないために、切れ』って?」
    「記憶力ヤバいね」
    「好きなものは憶えてるだけー☆」

  • 110二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 02:36:09

    【Stan / Eminem feat.Elton John】
     
    「あ、次の曲になっちゃった。うわー、懐かしい!」
    「なんだっけこれ。エミネムってことはわかるんだけど」
    「Stanっていうんだよー。なんかね、熱狂的ファンの人がファンレターを送り続けるって歌」
    「あの人の歌はほとんど物語調だもんね。もしくはディス系だっけ。Lose Your Selfぐらいしか知らないかも」
    「送るのはいいんだけどさー、お返事貰えなくて。生まれてくる子供にも、その人の名前つけるぐらい大好きな人なのに。それでー、だんだん病んじゃって、出産間近の彼女を車のトランクに詰めて、いっしょに川にドボーンしちゃうの!」
    「……後味悪すぎでしょ」
    「くふふっ。曲の最後はね?」
    「返事返せなくてごめん、妊娠した子どもに名前つけてくれるの嬉しいよって、お返事するんだ~♪」
    「……うわぁ」
    「これさ、ほんとはコーラスに女の人が入るんだけど、これは男の人でしょ? エルトン・ジョンって人で、同性愛者の人なんだって。……すごいフューチャリングだと思わない?」
    「なんか超ド級のB級映画見たときの胸やけがする……」
    「えーでもでもぉ、カヨコちゃんもこういう物語調の歌聴くじゃん」
    「こういう作られたバッドエンドの歌はあんまり聴かないよ……。無理矢理にでもハッピーエンドに持ってく方が好み」
    「これを機に新しい扉開いてみる~?」
    「バラードの世界は広いからなあ……」

  • 111二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 02:54:59

    【Beautiful things / Benson Boone】

     コト
     
    「はい、コーヒー」
    「ありがとー☆」
    「あ、これ、どこかで聴いたね」
    「MXSTREEMのShortsでみんな使ってたからねー」
    「こういうのも好きなんだ。なんからしいと言えばらしいかも。Homeもそうだし」
    「好きっていうかー。聞いてるっていうか? だれもがみんな、カヨコちゃんみたいに音楽一辺倒なわけじゃないよー」
    「でも、好みのものってあるでしょ? これ、たぶん現代系のオルタナ・ロックだから、そっち方面聴いてみたら?」
    「そうなの? んーでも、流行ってる曲の中からお気に入り見つける方がムツキちゃんの性に合ってるかも」
    「別に無理に勧めるわけじゃないし。ま、ひとつのとっかかりとしてね」
    「カヨコちゃんが流してる中でもお気に入りはあるよ? さよならポニーテールとかかわいくて好き!」
    「私はもう、時代とかジャンルとかめちゃくちゃだからね。逆に、流行がわかるムツキが羨ましい」
    「くふ。お互い、羨ましい同士だね~♪」
    「それぐらいがちょうどいいんだよ。刺激がないとつまらないしさ」

  • 112二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 03:14:34

    【寝れない!!! / PSG】
     
    「寝れなーい! きゃははっ☆」
    「……なにこれ」
    「寝れない歌~♪」
    「これもどっかで流行ってたの?」
    「流行りそう~と思って、キープしてる歌だよ。たまたま見つけてさ~」
    「誰が歌ってんの、こんなの……って、メンバーにPUNPEEいるじゃん」
    「知ってるの?」
    「有名なラッパーの人。こんな歌出してたんだ……出してそうではあるけど」
    「へぇ~。じゃあ、これでなにかショート動画撮ってみる? 振付考えて~。ちょっと爆発させて~」
    「私は遠慮しておく」
    「なんでー!」
    「でも、これ古い曲っぽくない? こんなの、今のアプリとかで通用するの?」
    「あんま時代関係ないよ。むかしの歌だって、こういう風にいくらでもMXSTREAMで観られるじゃん」
    「聴くじゃなくて、観るものなんだね。音楽ってさ……」
    「? みんなそうじゃん? 音楽好きとしてはもやもやしちゃうのかもしれないけど、カヨコっちも私たちと同じ女子高生なんだからさー。こっちにもちゃんと顔出さなきゃだめだよ?」
    「……ふふ。だね」

     ピロン

    「あ、アルちゃんだ」
    「なんだって? ……あ、グループの方に来てた」
    「どうする?」
    「どうするって……。別に断る必要ないでしょ。アビドスの方までまだ電車あるし」
    「おっけー☆ じゃあ準備して、柴関いこー!」
    「了解」

  • 113二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 03:18:32

    本日も保守ありがとうございました。

    例によってしぶ(>>70)にまとめておきますので、暇つぶしのスナックSSが読みたい方はぜひどうぞ。


    Iwamizuの戀歌、教えてくれてありがとう。

    すき。いっぱいすき。


    でぁでぁ、明日もよき音楽ライフを~。

  • 114二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 04:16:51

    CD整理してたら、結構前に買ったグレゴリオ聖歌のCDにキリエが入ってた。
    キリエ=ミカ。
    つまりミカはかわいい。
    意識してないとこんなもんよね……。

    なお歌詞もメロディも同じ。
    歌ってるのはどっかの大聖堂の聖歌隊(男)

  • 115二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 04:20:22

    歌詞は同じだけどメロディは同じじゃなかった……
    なるほど。
    主よ憐れみ給え

  • 116二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 08:12:57

    【例えば / 花譜 】聴いてみると晴れやかになる曲でした。映画もいつか見てみようかな

  • 117二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 16:20:40

    >>116

    映画大好きポンポさんはいろんな人を救う映画なのです……。

    自分が好きなものを肯定する理由をくれます。

    1時間半の映画は名作が多い。

  • 118二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 16:22:30

    ちな今日は
    ちょっとやらねばならんことがあって投稿できませぬ。
    すみません。

  • 119二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 21:43:30

    >>118

    ええんやで

  • 120二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 21:45:27

    このレスは削除されています

  • 121二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 21:46:07

    >>118

    大丈夫ですよ。いつまでも待ってます

  • 122二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 23:23:25

    >>118

    OKよ~

    リアルは大事

  • 123二次元好きの匿名さん24/09/27(金) 08:08:37

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん24/09/27(金) 16:25:51

    ほしゅほしゅ
    すみませんありがとうございます@いっち

  • 125二次元好きの匿名さん24/09/27(金) 23:36:36

    「……………………」
    「………………ん?」
    「あ、私、そんなにすごい顔してた?」
    「……んもう、やめてよ先生。どうせ私がどんな顔しても可愛いっていうんだから」
    「……今聴いてたやつ?」
    「うーーーん。今までのと比べてもとびきり変なやつなんだけど……」
    「これはフーゴ・バルの作った『Gadji beri bimba』って音響詩」
    「音響詩って言うのは言葉の意味や繋がりを全く無視して声音の抑揚とか高低とかリズム感だけで作られた詩のこと」
    「そ、だからこの歌の歌詞に意味なんてないんだ」
    「元々はダダイズム……えっと、これまでの常識とか慣習にNoを突きつける芸術運動の中で生まれたもので……」
    「……やめとこう。これは意味のない言葉遊び、音遊びで、よくわからないってことがわかっていれば十分だから」
    「こんなヘンテコな歌だけど当時も受ける人はかなり受けたみたい」
    「教会いっぱいの観衆に多大なるセンセーションを引き起こしたとかなんとか……」
    「ま、こういうジャンルの音楽もあるってこと」
    「音響詩作ってる人って案外いるから、気に入ったら探してみてね」

  • 126二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 07:47:53

    このレスは削除されています

  • 127二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 07:48:23

    このレスは削除されています

  • 128二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 07:50:25

    このレスは削除されています

  • 129二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 07:54:54

    このレスは削除されています

  • 130二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 08:22:52

    このレスは削除されています

  • 131二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 08:43:11

    このレスは削除されています

  • 132二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:10:40

    このレスは削除されています

  • 133二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:10:50

    このレスは削除されています

  • 134二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:19:53

    このレスは削除されています

  • 135二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:32:13

    ごめんなさい、さすがに雑文が過ぎたので、手直ししました。

    ひとまず、昨晩ぶんと考えていただければうれちいです。


    >>125

    ダダイズム……なるほど。

    言ってしまえばスキャットもそうなるんですかね。

    よくよく考えればドイツ語だフィンランド語だペルー語だので歌われてる歌も、

    その言葉がわからなければ音としては「意味のないもの」になるな……。

    面白い観点。

  • 136二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:32:40

    ゴソゴソ――バッ
     ガタンッ
     ガタガタガタ
     バンッ
     
     バタバタバタ
     ジャー……

    「ごめんハルカ、先に顔洗わせて。あとおはよう」
    「ふぇ!? お、おはようございます課長……、あの、す、すぐどきます……。ど、ど、どうぞ」ボタボタボタ

     バシャバシャ
     キュッ

    「あれー? カヨコちゃん、今日シャーレ行くんじゃなかったっけ?」
    「寝坊した」
    「ええ~? 珍しい。いいよ、メイクしてて。ムツキちゃんが髪結んであげる☆」 
    「もうこの際マスクで……、いや、やっぱお願い」
     
     パッパッパ
     デキター! ツインテール カヨコッチ! カワイイー♪
     バサッ
     アアー!

  • 137二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:32:57

     「あら、おはようカヨコ。コーヒーは?」
     「ちょっと余裕ないかも。それ一口だけちょうだい」
     「いいわよ」
     
     ズズッ
     
     「――そういえば、今日は先生の当番だったわよね?」
     「寝坊した」
     「昨晩遅くまでなにをやってるのかと思ったけど……。あまり無理はしちゃだめよ。社員の勤怠状況を管理するのも、社長の役目なのだから」
     「事業計画書書いてたんだけど、融資用の。社長、今日午後一だからね。銀行」
     「うぐっ……。そ、それは申し訳ないことをしたわ……ました……ごめんなさい」
     「いいって。それも仕事だしね……。書類はカバンに入れといたから。じゃ、行ってきます」
     「ええ、行ってらっしゃい」
     
     バタバタバタ
     ガチャ
     ――バタンッ

  • 138二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:33:13

     【Don't Thing Twice, it's All Right / Bob Dylan】

     バタバタバタ
     ガチャ

     ごめん先生、ちょっと遅れた。
     ――ふぅ。
     ああ、ちがうちがう。……いや、ただの寝坊。ちょっと、ここ数日忙しくてさって、ただの言い訳。大丈夫、トラブルとかじゃないんだ。

     ……♪
     
     これ。
     『Don't Think Twice, it's All Right』。
     Free Wheelin'。買ったんだ。
     あ。針飛んだ。……周回ノイズもすごい。これ、確かジャケットにそのまま盤が入ってたやつだよね。音もざらざらしてる。
     でも――いい。
     有名な人の有名な歌。だからこそ、前の持ち主がどんな聴き方をしていたのかわかる。
     LP盤の保護ビニールがなかったのは、取り出す手間を省くため。ここで針飛びするのは、ここに繰り返し針を置いてたからかも。
     一人で聴いてたのかな。みんなでかもしれないし、恋人とかもあるかもね?
     ……恋人と聴くには失恋ソングすぎるけど『くよくよするなよ』と家から出ていくって詩は、時代に別れを告げるようにも聞こえるとおもわない?
     相変わらず素朴で、心地のいいギター。
     ――くぁ。
     ……うるさいな。あくびくらいは目をつむってくれるとうれしいんだけど。

  • 139二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:33:25

     【Blowin' in the Wind(風に吹かれて) / Bob Dylan】

     コト

     ありがと先生。ごめん、私の仕事なのに。
     たまには先生の淹れてくれた、うっすいシャビシャビコーヒーも美味しいね。
     ……ふーん。
     人に作ってもらってばっかりじゃよくないんじゃない、先生。
     あとで粉の量教えてあげる。
     
     ……♪

     あれ、もう一回聴くの? これA面じゃなかったっけ。
     ――そっか。確かに。あれを聴いたら、こっちも聴きたくなる。
     風に吹かれて。Bob Dylanといったらコレっていう人は、多い。
     PPMのカバーで有名になったけど……。
     カレッジ・フォークのPPMより、こういう素朴な、語り掛けるような歌い方のほうが、曲には合ってると思う。
     なんせガスリー・チルドレンだからね。ああいう、ギター一本で、詩に節をつけて歌うような、昔ながらのフォーク・スタイルを想定して作られているんじゃないかな。

     ……♪

     何度聴いても飽きないね。
     まあ、無責任すぎると思うけど。『答えは風にある。風に舞っている』なんて。
     そうだ。
     せっかくなら面白い歌を聴かせてあげるよ。

  • 140二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:37:31

     【No More Auction Block For Me】

     『オークションにかけないで』
     BlockとBlackがたぶん、ダブルミーニング。
     そうだよ。奴隷制度に反対する――黒人霊歌。
     『風に吹かれて』のあとだから、わかるよね、先生。
     そうだよ、『風の吹かれて』のメロディは、この黒人霊歌からとられてる。
     詩も雰囲気もぜんぜん違うし、今だったらパクリとか言われるんだろうけど……。
    『良い旋律は良い家だ。住む人間が変わっても、家としての役割は変わらない』
     住む人間が……、歌われる詩が変わっても、良い旋律なのは変わらない。
     替え歌、って言えばいいのかな。
     そうされる歌が良いものなんだっていう、独特だよね。
     オリジナリティって、なにもかもが新しければいいってもんじゃない。
     歌ってさ、どの時代にもあるけど、先生。
     生きて呼吸をしている歌って、どれぐらいあるんだろうね。

  • 141二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:37:42

     【This Land Is Your Land / Woody Guthrie】

     さっきガスリーチルドレンって言ったでしょ?
     これがガスリー。ウディ・ガスリー。
     ……あはは。わかる。ボブディランとか、結構まんまだよね。
     このひとの住んでいた国ってとっても広いんだけど、それらを旅しながら、土地土地の歌をギターでコピーして歌ってたひとでさ。
     歴史的価値がある、って大学とかでレコーディングしていたんだ。
     けどメインはこういう、ナショナリズムとプロテスト色の意味の強い歌。
     『この国は、あの場所も、あの景色も、私とあなたたちのための創られたんだ』って歌ってるのは、その通り、自分たちの先祖が開拓して作り上げた国だからってこと。
     でも、アビドスみたいにさ。
     お金があると、その土地を所有する人が出てくる。
     自分が耕した畑がある日、立ち入り禁止の看板が立てられて、大きなテーマパークになるって言われたらさ、反発したくなるよね。
     ……いや、別にそういう意味じゃない。
     コーヒーの淹れ方ぐらい自分で覚えたら? っていうのは、そっちのほうが便利だよってだけ。
     深い意味なんかないよ。自意識過剰。
     ばーか。

  • 142二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 15:38:09

     【窓を開けて / CIEL】

     あ。
     ちょっと雰囲気変わっちゃった。
     こないだムツキと話してたら聴きたくなって、プレイリストに入れたままだったんだ。
     先生は知ってる? 『映画大好きポンポさん』。
     そっか……。
     あのムツキが泣いた映画だって言えば、それだけで宣伝になりそう。
     だよね、気になるよね。お金に換えられないかなこれ。
     主人公は映画にのめりこんだオタクくん。
     ずっとプロデューサー補みたいな仕事をしてたんだけど、ある日突然、映画監督を任されるっていうお話。
     ちょこちょこ名作映画の話とか、ちらっと『これってあの映画の……』みたいな小物が置いてあったりさ。
     ちなみに、主人公はタクシードライバー好き。
     結構前、OST聴いたやつ。
     あ、先生観たんだ。どうだった?
     ……ふふ。
     男の子だね、先生も。
     
     ――さて。
     遅刻しちゃったからね。そろそろちゃんと仕事するよ。
     あ、次のコーヒーは私が淹れるから。
     やっぱりちょっと薄すぎるよ、先生。白湯みたい。

  • 143二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 22:27:51

    「~~~♪」
    「え?いや、そんなにトンチキな曲ばかり聴いてるわけじゃないって」
    「前も言ったでしょ?一個のジャンルしか聞かないわけじゃないよ」
    「……まあ、風変りじゃないのかって聞かれたらそりゃ」
    「……風変りだって答えるしかないけど」
    「何の曲か?ゲームのBGMだよ。タイトルは『Drift』」
    「ゲームに登場する、ハッピーケイオスってキャラクターのテーマソングみたいなのだね」
    「このキャラを簡単に説明すると、世界崩壊の危機を何とかして救うんだけど、その時のゴタゴタで全知全能の力の半分と融合しちゃうんだ」
    「それで精神が崩壊して彼の精神はまさしくカオスな状態に陥った」
    「そんな心中を表現したような曲だね」
    「冒頭の『何かの答えを見つけるのに十年かけたことがある。ニ秒で忘れたけどね』って歌詞が正にそれ」
    「ほかにも、アップジャズからプログレッシブ・ロック、ハードロック、そしてまたアップジャズって音楽のジャンルすらフラフラと渡り歩いてて……」
    「……それこそ『Drift(漂う)』って感じ」
    「一つ一つの要素を見ると成立しているんだけど、他との繫がりを考えると完全に破綻している」
    「だって言うのに全体で見たら完璧に調和していて、もう訳が分からない」
    「最高にイカしてるからぜひとも一回、聴いてみてね」

  • 144二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 09:42:01

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  • 145二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 09:50:22

     準備できた?
     あ、は、はい。すみません、お待たせしてしまって……。
     いいんじゃない。せっかくの休日だし。お店は逃げないし。
     あのぅ……カヨコ課長。
     ん?
     私でいいんですか……?ムツキ室長や社長のほうが、きっとそのほうが、そういう場にはふさわしいのに……。
     あのね。ただのバーガーショップだよ。ふさわしくない人の方が珍しいって。――ティーパーティの人たちがいたらちょっと面白いけど。
     うえっ!? そ、そんな優雅で高級なところになんかにわ、私なんかが入店するわけには。
     だからいないって……。それより、ハルカはアルと一緒じゃなくてよかったの?
     「シャーレの仕事を手伝いに行くだけ」とおっしゃってましたし……私なんかが行ってもお邪魔するだけなので……。先生のところなら、護衛も必要ないかと……。あ、いえ、護衛なんておこがましいのですが。
     ハルカほど頼りになる護衛もいないけど……。じゃ、たまには私の護衛をよろしく。バーガーはおごってあげるからさ。
     あ……そん……いえ。ありがとうございます。ごちそうになります、カヨコ課長。
     あ、あと、今日は仕事じゃないから。
     ?
     「課長」禁止。
     ――ええっ!

  • 146二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 10:08:41

    ――――
    ―――
    ― 
     
     トテトテ

     なんか雨降りそうじゃない? 傘持ってきた?
     いえ、すみません……。いざとなれば私の服をお貸しするので傘代わりに……汚い服で申し訳ありませんが……。
     私が服を傘代わりにして隣に裸のハルカがいたら、それはもう事件じゃん……。
     も、も、もしお邪魔でしたら、遠くを歩きますので……。
     いや、普通にコンビニで傘買うから。
     そ、そうですね……すみません。これからは一日に3回洗濯します……。
     水道代もったいないからやめなって。どこの貴族だよって。――こないだムツキとふたりきりのときにさ。
     は、はい。
     ムツキのスマホに入ってるプレイリスト聴かせてもらったんだよね。
     お、音楽ですか?
     そうそう。もっと流行の曲聴け―って怒られた。
     ムツキ室長もたまに、カヨコ課長がいらっしゃらないときに……事務所のスピーカーを使われてまして……。へへ……。一緒に聴かせてもらってます。
     そうなんだ。うーん、私が占有しちゃってるの、申し訳ないな。
     い、いえ。BGMが欲しいだけとおっしゃってましたし……。
     ていうか課長禁止。
     うぅ……。

  • 147二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 10:17:50

     カヨコ。
     む、む、むりです! 課長を呼び捨てなんかしたら、口を爆発四散させなければなりません!
     なんでよ。ムツキもアルも私のこと呼び捨てなのに。
     お二人はカヨコかち……お二人と私は違うので。私ごときがそんな親し気にするわけには……。
     カヨコ。
     うぅ……。
     はいどうぞ。カ・ヨ・コ。
     か、か、か、かかかか――。
     がんばれ。
     カヨコ……か、さ、さん。
     ……カヨコかささんってなに? 傘になれって? 脱げばいい?
     いいいいいいえそうではなくてっ! すみませんごめんなさい口下手ですみません。
     じゃあわんもあ。はいどうぞ。
     ――か、カヨコ、さん。すみませんこれが限界ですごめんなさい許してください脱ぎますから……。
     脱がなくていいよ。やめなって。ジャケット着て早く。……ま、一歩前進ってことで。
     はあっはあっ……。
     そんなに……? あ、一回呼んだからには。
     はぁ、はあっ……?
     これからずっとその呼び方でよろしく。仕事中も。
     くぁswでfrtgひゅじこlp;!?

  • 148二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 10:33:25

     テクテク

     んでさ、ほら、ムツキのプレイリスト聞かせてもらったって話。
     はい……。
     今日はせっかくだから、ハルカの聴かせてよ。
     え、いや、でも、私はあまり、ムツキ室長やカヨコ……さんみたいにそこまで聴くわけじゃないし……。聴かせてもらったものを……聴いてるだけなので……。
     それでもいいよ。はいこれイヤホン片方貸してあげる。で、これジャックに挿して。
     い、いえいえいえいえ! そんな、カヨコさんの大事にしてるものを私なんかの耳に入れるわけに――わっ。
     はい、これジャックに挿して。
     ……はい。
     あ、あの、な、なにを流せば……。
     んー、お気に入りの曲……って難しいよね。最近聞いたリストってあるでしょ? あそこから適当で。上から片っ端でも。
     わ、わかりました。お、音量に不都合があればすぐに言ってください……壊しますから。
     なんでよ。
     じ、じゃあ、流します……。

     Tap

  • 149二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 11:06:14

    【World's Smallest Violin / AJR】
     
     あれ、これ聴いたことある。どこだっけ……。
     すみません新鮮味のないものをごめんなさい壊しますいますぐ新曲を作ってもらいます。
     ショットガンで脅しながら? だめだって。
     は、はい。すみません。
     ――あ、思い出した。これ、すごく有名な曲じゃん。一時期みんなSNSで使ってた。確か最後の部分。
     そ、そうですね。
     なるほど。じゃあムツキだ。
     はい、そうです……。前に聴かせていただいて……。面白いなって……。
     これってわりと弱い人への応援歌的な歌じゃない? 面白いの?
     へへへ……。だって『悪いことが楽しいのか』って言ってるじゃないですか……。
     言ってるね。悪い人のすぐ仲良くなれる友だちが信じられないみたいに。
     楽しい、ですもんね?
     ハルカ。
     ひゃいっ。
     ……まあ、私らがいればかじ取りはできるか。なんでもない、ごめん。
     あとは……、そのくせ『だれも聴いてくれないなら全部ぶっ壊してやる』って言うのもわりと……。
     癒されたりとか、励まされたりとか、そういう感じでは聴いてないんだね。
     そういう歌は……キラキラしたような歌は……あんまり好きじゃないです。すみません。
     ――へえ。今のハルカの話が一番面白いかも。
     そうですか……?
     好みとか、あんまり言わなかったからね。ハルカ。
     あ、いえ、おこがましくてすみません。

  • 150二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 11:40:13

    【Rape Me / Nirvana】

     ……これはまた。意外も意外。
     え、あの、ごめんなさいすみません。
     これ、私が事務所でかけてたから? よりにもよってこの曲気に入ったの? 放送禁止歌に近いんだけどこれ。
     カヨコさんが事務所でかけたの聴いたときは……あの、実は、ちょっと嬉しかったというか……。ごめんなさいわたしなんかがカヨコさんと同じもの聴いてて。
     それはこっちのセリフ。こんな古いの――古いと言ってもレジェンドだけど――聴いてた同士がいるなんて。なんで早く言わなかったの?
     その……あんまりいい意味じゃないというか……。む、昔のことを思い出したときとか……実際そのころ聴いてたと言うか……。新譜のコーナーはいつもあの……人たちがいて……、古いコーナーにしか行けなかったので……。
     あ。
     す、すみません。こんな気持ち悪くてじめじめした自分語りなんてごめんなさい……。

     ワシャワシャ

     わぷっ。……?
     いい歌だよね。Rape Me。
     は、はい。新しい考え方をくれたので……。

     ワシャワシャ

     私もNirvana大好きなんだけど、周りに聴いてる人あんまいなくてさ。あとでMTVのアンプラグドライブ観よう。一緒に。見たことある?
     は、はい。When did you sleep last nightでまっすぐ前を見るときとか……。
     めっちゃわかる。かっこいいよね。あと雑に演奏が始まるAbout A Girlも――。
     
     テクテク

  • 151二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 12:06:17

    【One Reason / DWB feat.Fade】

     ――あ、すみません、次の曲になっちゃいました。
     いいよ、お店着いたらどうせNirvanaのライブ観るし……。ていうか、これ知らないかも。かっこいいね。
     はい。た、確かボーカルの方がシアトル出身……だとか。
     つながってるんだ。
     いえ、あんまり気にしてなくてですね。
     あはは。なにそれ。たまたま?
     は、はい。アニメの主題歌っぽいジャケットだったのですが、視聴したら好みだったので……。
     曲名なに? 私もスマホに入れたいかも。
     えあ、えっと、One Reasonっていうタイトルです……。

     ポチポチ
     アニメ、アニメ……、なんかこれ今観てるのと似てるような……。あ、やっぱそうだ。エウレカの漫画版描いてた人だってさ。
     そうなんですか、それは……ほんと偶然ですごめんなさい。
     前にさ、先生と「ハルカの主題歌を考えるとしたら、スメルス」って話をしたんだよね。
     いいいいいいやいや! 恐れ多いです、コバーンさんのようなカリスマ溢れる歌なんて……あんなに傍若無人になんてできませんすみませんすみません。
     いや、そこも意外といけそうだけど……。訂正。これいいね。これ、ハルカの主題歌。決定。かっこいい。
     余計無理ですぅ! あ、でも心臓ぐらいなら捧げられます……。
     勝手に私が言ってるだけだから。あと心臓いらない。服脱がないで。

  • 152二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 12:25:33

    【Boxer / S&G】

     ずいぶん雰囲気変わるね。しかもS&Gじゃん。まさか、ほんとに結構趣味似てたり……?
     あ、これはカヨコさんが流してて……そこから勝手に……ごめんなさい。
     アリスの方のチャンピオンは? あんまり好みじゃない?
     あっちはなんというか……胃もたれしそうで……。
     気持ちはわかる。……面白いな。
     え、あの。
     人のプレイリスト聴くのって。本棚を見られるの嫌がる人っているじゃん?
     そう、なんですか? 本はあまり読まないので……。無知ですみません。
     いや、それはいいんだけど。それと一緒だと思うんだよね。何年も付き合って人となりを知るのと一緒なんだよ。その人のプレイリストを聴くと、そういう曖昧で言語化できない部分がわかるっていうかさ。
     わ、わたしがカヨコさんのプレイリストを聴いてて、お、お、思うのは――。
     いいよ、言わないで恥ずかしい。ていうか、予想だけど、それ、言葉にできないでしょ。
     ……はい。語彙が無くてごめんなさい。
     わたしも、このプレイリスト聴いて、ハルカがどんなこと考えてるんだろってのはちょっとだけわかるけど、言葉にはできないし。おあいこだね。
     でも、こういう歌は好きです。どうしようもない歌なので……。
     ふふ。でも、とりあえずは立ってる。本当にボクサーなのかもわからない歌の中で、この人は闘ってる。そういうことなんだろうね。
     うぅ……。ごめんなさい。
     あははっ。照れるハルカも新鮮。……そろそろ着くよ。一曲分あるかないかってぐらい。
     ――あ。

  • 153二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 13:22:10

    【Desperado / Eagles】

     ……スマホに入れてくれたんだ。
     一生大事にします! カヨコさんが……大事なものだったものを、私なんかに……。
     いやまあ、便利屋にいれば共有物みたいなものだし……。そうだよ、勝手にラック漁っていいからね。
     は、は、はい。では今度、拝見させていただきます……。
     「最近聴いたリスト」にこの曲があるっていうのがうれしい。この歌はすくなくとも、ハルカが死ぬまでは生き続けることが確定した。
     ……?
     こっちの話。でも、ああいう捉え方をするなんてね。先生も感心してたよ。
     いえ……。あの、励ますみたいな歌は好きじゃないんですけど……。こういう、なんていうんでしょう……たたきつけられる歌というか……。
     うん。

  • 154二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 13:23:27

     テクテク――
     タチドマリ

     昔には戻れない、っていうのが、その時はいちばんうれしかった――んですけど。
     うん。
     『お前はこうしないと、どうしようもなくなる』っていうのを、ちゃんと教えてくれて……。その通りの人間で……。ダイヤのクイーンすらない山札なのに、しかも全部負け札で……ハートのクイーンなんか最初からなくて……ようやくダイヤのクイーンが出て……。ハートの方も、周りにはあって……。散らばってて、あるのに。欲しいんですけど、そもそも私がゲームに参加なんかしていけないんじゃないかって……。あのカードを、テーブルには……。ほんとは席を立った方が、みんな嫌がって――。
     ――そこまで聴きこんでくれるなんて、ほんと、私は泣きそうなほどうれしい。
     す、すみません。何言ってるかちょっと、わけわからないですよね。ていうか、私もわかってないというか……。

     
     肩ギュ

     うへあっ!?

  • 155二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 13:23:44

     口数が少なかったりさ、自分の意見をあまり言わない人って、これ、私の主観ね。私の主観だけど、普通のひとよりも、おしゃべりなんだ。
     おしゃべり、ですか。でもわた、私はあんまり話すのは……。
     頭の中で、の話。
     あ……はい……。
     そこまで聴きこんで、自分を投影させているなら、いろいろ省くけど。ハルカさ、自分でも言ってるじゃん。
     はい……? わたしなにか言いましたっけ。 
     『お前はこうしないと、どうしようもなくなる』。
     そうですね……言いました……。身の丈にあったものを望むべきだと。席に座っていることが、私にとっての……。
     そんなことじゃなくて。もっと簡単な方。で、ハルカが選べるものじゃないもの。わかるでしょ?
     ――でも。
     でもも革命もないんだって。ハルカには選べない。ハルカがどうこうできるもんじゃない。だからどうしようもない。ね?
     だ、だ、だとしたら……。
     言葉にするもんじゃないから言わないけど。だから、あきらめて受け入れて。アルもムツキも私も、そうだから。なんなら今度直接口に出す機会を設けようか?
     だだだだだだだっ!? そそそそそ、そんなことしていただけたら死にます!
     死なれちゃ困るから言わない。……ていうか、お店着いたんだ、ごめん。
     うあ……。はい、すみません、お話に夢中になってしまって……。
     今日はゆっくりできるし、むしろだらだらと駄弁るためにお店に来たようなもんだし。今日はNirvanaを聴きつつ……。ハルカの音楽遍歴をじっくり教えてもらおうかな。
     ……ありがとうございます。
     別になんにもしてないんだけど。
     それでもです。
     はいはい。まあ、このお店は私の行きつけ。人があんまりいないから好きなんだけど、良かったら売り上げに貢献してあげて。潰れないように。
     わかりました……。とりあえず覆面水着団の方々と話し合いの場を設けます!
     ……そういうやり方じゃなくて。いいや、入ろ。朝抜いたからお腹空いた。
     はい!
     
     You better let somebody love you, before it's too late.
     

  • 156二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 13:32:34

    今日分おわり。

    カヨコ×ハルカが好きなんですっていうか好きになりました。

    一日ズレてる気がするのは気のせい……気のせい……。

    夜も書くかもしれません。わかりません。忙しいのはしばらくおしまいになった……とおもう。



    >>143

    なんだこれまじかっこいい……。

    ゲーム音楽ってやらないとわからないところあるからほんと意外な発掘あってすき。もっと教えろ。

  • 157二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 22:21:31

  • 158二次元好きの匿名さん24/09/30(月) 08:01:24

    保守

  • 159二次元好きの匿名さん24/09/30(月) 09:32:49

    すまぬ、ありがとうございます

  • 160二次元好きの匿名さん24/09/30(月) 16:36:51

    よるまでほ

  • 161二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 01:20:12

    「……」タンタタンタンタン
    「…………ふぅ」
    「これ?音ゲーだけど」
    「ああ、さっきの曲は『Credits』だね」
    「おどろおどろしいリズムに不気味なMVがとっつきにくい印象だけど……」
    「歌詞は単純に『貴方たちのおかげでこの曲が成り立っています』って感謝の歌なんだ」
    「MVだって文字だけで作られててなかなか面白いよ」
    「あとロングバージョンの『Credit EX』って言うのもあるけど……」
    「動画共有サイトにあるのはたぶん無断転載だから一応公式サイトから聴いてみてね」
    「そうだ、ラストの『YOU』って生声があるんだけど」
    「サンプリング元だけじゃなくって聴いている一人一人、あなたのおかげで曲が作れていますって特別な意味が込められてるんだってさ」

  • 162二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 02:03:20

    ぐおー
    うーむ……どうしようか……
    ひとまずのご報告として、パート3のスレは立てない予定です。以降は不定期でぴくしぶにて書くかもしれません。
    日常のつもりで書いたシーンをシングルカットして、中・長編にしたいという気持ちが。

    とりあえず、200までお付き合いお願いしまする。
    いつもありがとうございます。

  • 163二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 08:28:00

    保守

  • 164二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:00:30

    スポッ スポッ
    カチャ

    「はぁ~……ただい――」
    「おっかえりーアルちゃーん!」
    「――ま。嫌に元気ねムツキ」
    「まぁまぁいいじゃん、元気ないよりは♪ さあこっちこっち~」
    「えあ、ちょ、なんなのよ。何か大きな案件でもとれたの?」

     ガチャ

    「アル様」
    「社長」
    「アルちゃん♪」

    『いつもおつかれさま!』

     ガァン

    「きゃああっ!」
    「あ、天井壊れた」
    「壊れたじゃないわよ! なんで銃をぶっ放すの!? 敷金がぁ……修繕費がぁ……」
    「クラッカー代わりだったんだよー。てかそんなの夜逃げしちゃえばいいじゃーん♪」
    「追っ手は私が引き受けます……!」
    「エスケープルート作っとかなきゃね」
    「そういう問題じゃないの! ……はぁ。で、どうしたの?」
    「どうしたもなにもないよ。ただのお疲れさま会」
    「という名の、ただの女子会だよー!」
    「ムツキ、バラすの早い」
    「きゃははっ」

  • 165二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:00:46

    「カヨコさんと話してて、そういえばこういう、みんなで『らしい』ことしたことないって……。あと、アル様をきちんと労ったこともないよねと……」
    「で、ムツキに連絡したらちょうど繁華街に居るっていうから、いろいろ飾り付けを買ってきてもらって」
    「おかげでお財布すっからかーん」
    「……私は普通に、社長として会社を維持しようとしてるだけなんだけど」
    「その普通ができない大人がどれだけいることか。便利屋の仕事してる中で、いろんなことを学んだよ、ほんと」
    「そうだねー。経営とか難しいことはともかく、アルちゃんはすごいと思うよ」
    「わ、私も……。この便利屋がなかったら、今はきっと……」
    「な、なによもう。……助けられてるのは、私のほう。一人だったら会社なんて成り立たない。あの時、あの学生寮の狭い部屋で私についてくると言ってくれた……、夢の手伝いをしてもらってるんだもの。なら、報いなければ、間違いじゃない」
    「そういうとこだよ、アルちゃん☆」
    「?」
    「ほんとにわかってないんだよね」
    「アル様……!」
    「ああもうこそばゆいわね! 私をねぎらってくれようとしてくれる気持ちはありがたくいただくけれど、私だけじゃないわよ。あなたたち、便利屋の社員である、あなたたちを私が慰労する会にするわ! ……私は、もう充分すぎるほど、いただいてるもの」
    「そそそそれじゃあ、私たちの振り上げた拳の行き場所が……」
    「なんで拳振り上げてんのさ。おろしなよ」
    「とにかく、食べて飲んで、明日からの活力に変える会にしましょう。ふふ。なんか、会社っぽくていいわね! さあカヨコ、なにかこの場にそぐう音楽を! テンション上がる系で!」
    「あ、それなんだけどさ」

  • 166二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:01:11

    「?」
    「せっかくだから社長のプレイリストをBGMにしよう」
    「え?」
    「いいじゃ~ん☆ さぞかし任侠たっぷりでオジサン臭い曲ばっかりなんだろうなあ♪」
    「そういう系はカヨコに任せれば間違いがな――」
    「アル様の聴いている音楽、ふひ、ひへへ……」
    「ハルカ? こ、怖いんだけど」
    「聴いたことないからね、社長の好きな音楽。一人で帰ってくるときとか、イヤホン点けてるのは知ってるんだけど……まあ、予想は付く」
    「……はあ。まあ、たまにはいいわよ」
    「あ、ちなみにだけど」
    「Bluetoothはこれでいいのよね? ――なにカヨコ。やっぱりあなたに任せた方がこういう時は」
    「それはぜんぜん。ちなみに、どうせ社長、曲を選んでくるのわかってるから。最近聞いたプレイリストから流してね」
    「え”?」
     
     Tap
     

  • 167二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:01:23

    【唐獅子牡丹 / 高倉健】

    「……やっぱり」
    「なによ! いいじゃない唐獅子牡丹!」
    「アルちゃん、絶対これ普段聴いてないでしょー。なにこれ、演歌?」
    「聴いてる、聴いてるわ! かっこいいじゃない高倉健……」
    「唐獅子牡丹……唐獅子牡丹……へへ……購入しました……」
    「それ経費じゃ落ちないわよ! 『昭和任侠伝』を観てないの……? あんな有名な作品なのに……」
    「一生見ないかなー☆」
    「ムツキィ!?」
    「あの、今度ぜひご一緒させてください……!」
    「やめときなハルカ。9作ぐらいあるから。で、どうせアルはぜんぶ観てない」
    「うぐっ」
    「あははっ☆ アルちゃん、ゴッドファーザーも結局ぜんぶ観てないもんねー」
    「……だってぇ」
    「……」
    「じゃあ今度こそ、最近聞いたリストから。営業用の曲流されてもしょうがない。それこそどうせゴッドファーザー入れてるだろうし」
    「うぐぐぅ……カヨコ、あんたやっぱり敵に回すと面倒ね……」
    「なんで敵なのさ。あ、ピザ食べる?」
    「食べるわよ!」

  • 168二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:01:38

    【21st Century Breakdown / Green Day】
     
    「わー! ずいぶん雰囲気変わったねー」
    「GreenDayとはまたベタな……。好きだけど」
    「あ、カヨコっちー。ウーロン茶取って」
    「ん。ハルカ、ピザもパスタもどんどん食べなよ。残したらお金もったいないし」
    「はいっ、いただきます、カヨコさん」
    「もうちょっと興味持ちなさいよ!」
    「アル様、取り分けたのでこちらを」
    「それはハルカが食べなさい。今日は無礼講」
    「は、はい……」
    「ありがと」
    「はい……!」
    「GreenDayもちょっと想像してた。反骨精神の塊だからね。個人的にはMinorityかBasket Caseあたりが来ると思ってたけど」
    「……聴くわよ、そっちも」
    「ふふふ」ニヤリ
    「なんか恥ずかしいんだけどこの催し!」
    「定期的にやろうね♪ 私は聴かれても恥ずかしくないし」
    「ムツキはたまに流してるしそうでしょうね……。でもハルカは嫌が――」
    「へへへ……」
    「今日、ハルカの音楽遍歴たっぷり聞いて来たんだけど、趣味が似ててさ。これからは流してって言ってある」
    「い、いつのまに……。わたし、ハルカの聴いてる音楽とか知らないんだけど!?」
    「社長としてもっと社員のこと理解しなくちゃねー♪」

  • 169二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:01:48

    【ソラニン / 宮崎あおい】
     
    「んー! この暴力的な炭水化物! おいしー!」
    「太るものが一番美味しいって、世の中残酷だよね」
    「モグモグ……」
    「ハルカちゃんが頬張ってる姿かわいー!」
    「意外と食べるときは食べるよね、ハルカ」
    「んぐっ」
    「はいオレンジジュース」
    「ンクンク――」
    「――ぷあっ。かかか、見苦しくてすみません貧乏性でごめんなさい」
    「貧乏なのはみんな一緒だよー☆」
    「確かに」モグモグ
    「うぅ……。もっと効率よく仕事を回せるようにいろいろ考えてみるわ……」
    「アルちゃんは十分頑張ってるってー。そもそも口座凍結とかいやらしいことしてくる、風紀委員長が悪いんじゃん」
    「ヒナっていうよりアコだね。ヒナはここのことも知ってるみたい」
    「えええええ!? なんでそれ早く言わないのよ、早く引っ越しの予定を――」
    「知ってるのはどうやらヒナだけ。とりあえずは大丈夫」
    「カ、カヨコがそういうなら信じるわ。正直、ここから動きたくないってのはあるもの……」
    「お風呂付は手放したくないよね~」
    「同感」
    「……にしても、せっかく私のプレイリストなのに、ほんとにBGMなのね」
    「物語込みでこっちのバージョン、私も好きだよ。ソラニン。エモいよね」
    「そうなのよ! ライブシーンでギターが重なる演出が――」

  • 170二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:02:11

    【The S――夢見るバンドワゴン / andymori】
     ~♪
    「!」
     ▶▶ ~♪

    「あれ? なんで飛ばしちゃったの?」
    「……いや、ちょっと」
    「……」
    「カヨコ」
    「はいはい」
    「? あ、ハルカちゃーん、タバスコ取ってー」
    「もごもご」
    「ありがとー☆」
    「社長、これ、わたしのプレイリストから?」
    「そうね、そうよ」
    「ふーん……。andymoriはバンドサウンド好きなら、嫌うひとはあまりいないからね。うん」
    「コクン あ、あの、飲み物のお替りを……」
    「ありがと、いただくわ」
    「はい! カヨコさんはどうしますか」
    「わたしももらおうかな。あ、氷入れてもらっていい?」
    「かしこまりました! ……あ、すみません、氷はさっき全部使っちゃいまして……すみません」
    「そっか。じゃあちょっと買ってこようかな」
    「それなら私がそこのコンビニで……」
    「いいよ、ハルカはご飯食べてて」

     カタッ

  • 171二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:02:23

    「アル」
    「……いいわよ。ちょっと待ってて」
    「ん、アルちゃんたち。でかけるならアイスも買ってきてー」
    「はいはい。さき外出てるよ」
     ガチャ
     バタン
    「……どしたの?」
    「私は社長でもあるけど、後輩でもあるってこと」
    「なるほどねー」
    「? あの……」
    「ハルカちゃんは気にしなくてだいじょーぶ☆ あとでちゃんと教えてあげるから。ほら、冷めたピザほど不味いものはないよー? 美味しいうちに食べちゃお!」
    「は、はい……」
    「じゃ、いってくるわね」

     ガチャ
     バタン

     

  • 172二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:02:48

    【The Show Must Go On】

     カツコツ
     トテトテ

     ウィィーン
     シャーセー
     
     ゼンブデ1400エン ナヤース
     ピッ
     
     アッシター

     ウィィーン

    「持つよ」
    「ありがと」
    「……」
    「……」  

     カツコツ
     トテトテ

  • 173二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:03:04

    「アルさ、正直『昭和任侠伝』嫌いでしょ」
    「……なんで?」
    「任侠ものお決まりの『とんぼ』を全部観てないのも、まして『オルゴール』なんて途中で嫌そうな顔してたの、すごい印象的で憶えてる」
    「はぁ。だからカヨコにプレイリストとか聴かれるの嫌なのよ……。怖いったら」
    「ゴッドファーザーも、飽きたから見ないんじゃなくて、観たくないから観ない」
    「そうよ。ぜんぶ……ぜんぶ、『家族』が壊れる話だもの。これから作ろうとしているものがそんな結末を迎える映画を、だれが好きになるのかしら?」
    「お決まりではあるけどね。組が壊れて、破滅的な復讐をするっていうのは」
    「憧れはある。あんなに強固な絆を持って、義理と人情の世界で、生きあがく姿はね。でも、それならスパイものとかの方がよっぽどハッピーエンド。私が望むのはハッピーエンドなの。金さえもらえばなんでもする。けれど、任侠に背けば依頼人にすら牙を剥く。そういう世界でハッピーエンドを掴む。それが、便利屋68の物語よ」
    「幕を下ろしてはならない?」
    「なんであれだけでわかるのよ。実質2秒ぐらいしか流れてないのに」
    「伊達に音楽ファンやってない。最初の一音さえ聴けば、ましてそれが自分の領域であるなら、誰だってすぐにわかる」 
    「風紀委員会が一目置くだけあるわよ、カヨコは」

     カツカツ
     トテトテ
     

  • 174二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:03:17

    「聴かれたくないんだ」
    「だって……付いてきてくれてるのに、『演じてる』って思わせちゃったら、申し訳ないし」
    「ほんと、ゲヘナに入って来たとは思えないほど真面目なんだから」
    「……うるさいわね」

     カツ
     トテトテ
      
    「――ぁ」

     トテ
     
    「ん?」
    「……いや」
    「アル?」
    「……」

  • 175二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:03:37

    「私のショウは、どう?」
    「無様」
    「ええええっ!? ハッキリ言い過ぎじゃない!?」
    「あははっ。実際そうだからしょうがないじゃん」
    「……今日、先生に相談に行ってたの」
    「経営の?」
    「会社を続けることはできる。幸い、仕事は入ってるから。けど、それは続けているだけ。こういうのはいつか平均化されて、周りにあるフツーの会社と同じになるわ。どこにでもある、普通の会社に」
    「ブラマの依頼じゃ物足りない?」
    「物足りない……わけじゃないけど、いつか陳腐化するのはわかってる。でも、刺激を求め続けると、破滅を迎える。さすがに、それがわからないほど私もマヌケじゃないわ」
    「私たちはアルの創りたい便利屋が好きだからここにいるわけだから、別に今のままでもいいんだけどね」
    「……便利屋は、私が始めた物語だもの。途中で投げ出したりはしないわ。でも、他の人にとっては違うじゃない。私は私の人生において主人公。けど、他人からみたらわき役。風紀委員からみたら木っ端みたいなもので、ティーパーティに至っては私たちの存在すら知らないんじゃないかしら。ムツキにとってもそうだし、ハルカとっても。カヨコ、あなたも」
    「……そういう方向に行っちゃったか」
    「『The Show Must Go On』を歌ったこのひとは、確かに永遠になったかもしれないわ。破滅と引き換えにね。私がそれで、あなたたちを永遠にできるならそうする。でも、現実はそうじゃない。このままじゃ、便利屋はいつか『古い栄光』になって、思い出を金にしてお酒を飲むようになるの。そうなったら――その時が、便利屋の終わり。幕は下りるの」
    「先生はなんだって?」
    「今は楽しみなさいって。ふふ……。私は先生と対等でいたいのに、さすがに堪えたわ」
    「10代の子供が先生と対等になんてどだい無理な話を……。それに、今のアルの話をしたって、答えようがないって」
    「経験が足りない。圧倒的に」
    「そうだね」

  • 176二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:04:37

    「魂を彩るための経験。永遠になるために。便利屋が栄光で酒を飲むのではなく、便利屋の栄光で酒を飲ませるために。わたしは今のままではだめだと思ってるの。でも、そのためには――」
    「キヴォトスを出なければならない」
    「……そうよ」
    「先生がそう言ったの、私はなんとなくわかる」
    「今は楽しめって? 便利屋は所詮、青春ごっこの一幕だと?」
    「そうカッカしないでよ、社長」

     ジャキッ

    「……なんのつもり」
    「有名なアウトローがいたよね。ジェシー・ジェイムス。彼の最期は、味方に背中を撃たれて死んだ。卑怯者のロバート・フォードに。これも破滅の伝説。永遠の物語」
    「知ってるわよ。映画観たもの。私がここで死.ねばいいってこと? 背を向けようかしら」
    「まさか。ロバート・フォードになんかなるもんか」

     カチャ

    「語られ続ける銀行強盗、ジェシー・ジェイムス。冷酷な殺人鬼、時代の寵児、哀れな英雄、義賊。いったい、どれが彼の本当の顔だったんだろうね」
    「なにがいいたいの?」

  • 177二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:04:56

    「わたしたちは、まだ舞台に立ってないんだよ、アル。決まっているのは設定だけ。舞台に『上がってしまった』人たちとは違うの。今を青春として楽しめる。失敗が出来る。――脚本の精度を上げられる時期なんだ」
    「脚本の、精度」
    「風紀委員と戦争をしてもいい。ティーパーティの信頼を勝ち得てもいい。ミレニアム、レッドウィンターとか、百鬼夜行と手を組んでみるのもいいかもね。ニンジャっていうの、いわゆるあっちのアウトローだし、そういうのも面白そう。シャーレ直属部隊になってもいいし、ブラマを掌握するのもいいんじゃない? なんでもできるんだよ。なんでも挑戦できる。なにをやっても――先生が助けてくれる」
    「だから! それをやったら対等な関係になれないって言ってるの!」
    「急がなくていいんだって。何をやったらどうなるか。それを勉強させてもらえる猶予を与えられてるんだから。アル。アルがやりたいことって、バッドエンド確定の『お約束』をひっくり返そうとしてるってこと。生半可な脚本じゃつじつまはガタガタ。現実は、大人の世界は、つじつまの合わない箇所を容赦なくついてくる。そして、破滅を与えられる。二度と這い上がれない。誇りも栄光も何も取り戻せない。アルは、そういうの嫌でしょ?」
    「イヤよ。絶対にイヤ」
    「それがいいって人もいるんだけど、ふふ。私もほら、夢追い人だから。アルの意見には賛成」
    「だからって、先生に甘えるわけにはいかないわ」
    「『世界』に甘えるんだよ。そうすればいつか『世界」がわたしたちの栄光で酒を飲めるような物語が――ショウが出来上がる。アルが嫌いな報酬の前借。でもどう? そう考えたら、ゾクゾクしない? 私たちが永遠になれるんだ。脚本を整え、しっかり練習して、役を完璧に演じて、最高のエンディングを魅せる。いずれ私たちのショウは伝説になって、カーテンコールが鳴りやまず、語られる。幕は下りない。物語の中で、私たちは永遠に舞台に立ち続ける。主役として」
    「――最高ね」

  • 178二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:05:07

    「でしょ」
    「わかったわ。キヴォトスを出るのは……ハルカが卒業してから。それまでは、わたしたちは脚本を整える」
    「最高の脚本を頼むよ、社長」
    「ふふふ……。成功報酬しか受け取らない便利屋が、唯一前借したもの。それは『ハッピーエンド』! あーはっはっは! いいわね、かっこいいわ! 最高にアウトローじゃない!」
    「私も、ムツキも、ハルカも。キヴォトスを出ることに反対はしない。それまでに、何ができるか。ちゃんとプロットを書き連ねよう」
    「そうね。まずは――各学校のトップに顔を売ること。これをクリアしなければ、キヴォトスを出て生きていくなんて、夢のまた夢だわ」
    「正直、現段階では美食の奴らのほうが顔が知れ渡ってるからね。まあ、目下の課題としては――」
    「なんでも言ってちょうだい、カヨコ。あなたは便利屋最強の参謀なのだから!」
    「この溶けたアイスをムツキに見せて、どう言い訳するかを考えることかな」
    「……あ”」
     

  • 179二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 15:05:30

    ながい、本日分は以上です
    雑にとうこうしてすみませぬ。

  • 180二次元好きの匿名さん24/10/02(水) 00:14:32

    「唐獅子牡丹」聞いてみたら初めて聴く渋い男らしい曲だった。ありがとうございます。

  • 181二次元好きの匿名さん24/10/02(水) 07:12:49

    >>161

    音ゲー…くれじっと……まいまいってやつでよいのかしら……


    >>180

    70代の人がソラで歌ってました。

    60年代に青春を過ごした人の記憶力がいちばんパない。


    ――


    次回更新分でラストになりますので、先にご挨拶申し上げます。(スレが足りることを祈る)

    読んでいただけ、ずぼらなわたしに変わって保守をして下さる方のおかげで1スレを消費することが出来ました。

    SS初投稿でありながらモチベーションを保てたのは、まっこと皆様のおかげです。

    本当にありがとうございました。


    次スレは立てませんが、ときたましぶで更新するかもしれません。

    全く違うSSスレを建てるかもしれません。シングルカット&リマスター版も書くかも。カヨコ×トリニティ組書いてないし。ミレニアムも。

    そのときはさながらフォーク・ソング集会のごとくヤジのひとつでも飛ばしていただければと思います。


    であであ、最終話書けましたら、投稿いたします。

    今日か、明日までには。

    10レス以内に収まる……ようにすりゅ。


    重ねて、三週間弱、カヨコ「なに聴いてるのって?」にお付き合いいただき、ありがとうございました。

    カヨコかわいいよ。

  • 182二次元好きの匿名さん24/10/02(水) 15:15:17

    とうとう最終話かぁ…
    前スレ完走できてたらどうなってたんだろう…

  • 183二次元好きの匿名さん24/10/02(水) 23:33:10

    最終話待ってるぜ

  • 184二次元好きの匿名さん24/10/02(水) 23:39:13

    最終話か
    もう三週間経ってたとは驚きだな

  • 185二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 05:56:49

     すべて消えてしまった
     もうなにも感じない
     私の血よ
     すべてを覆いつくせ

     心に響くメロディ
     だが、ここには存在しない
     消えていく記憶
     だが、お前にはわからない

     何気なく手を見る
     ふと我に返ったとき
     それは幻想
     二度と戻らない

        Dead Song(拙訳)

  • 186足りてくれ24/10/03(木) 05:57:16

     
     【Dead Song / GASTUNK】
     
     サァアアア――
     カサカサ

     ――ん。おつかれさま、先生。
     なんとなく来るかなって思ってた。なんだろうね。やっぱり似て来たとか?
     なに聴いてるのって?
     言われると思った。いいよ、どうぞ。
     今日はパンク。GASTUNKは……、まえ聴いた時は、先生いなかったね、そういえば。
     憶えてる? ヒナがシャーレに来てさ、先生と電話したでしょ。そのとき、BGMにしてたんだよ。

     サァアアア――
     
     ――気持ちいい。
     あそこの街路樹、見える?
     色づき始めた。『秋山明浄にして粧うが如く』ってやつだ。
     百鬼夜行の方に行楽に行く人も、駅でよく見かけるようになったでしょ。
     綺麗なんだよ。前に一度、車窓から見たことがあるんだよね。遠くの山が、本当に化粧をしているみたいで。紅、黄、緑、茶。空はうんと澄んだ水色。うろこ雲が高くに浮かんでてさ。
     みんな感動しちゃって、ムツキにいたっては「ここに事務所構えたい」ってアルに猛アタックしてたっけな。
     結局、アクセスが悪すぎて断念したけど。
     今年も行こうって話になってる。恒例行事になりそう。

  • 187>182多分数曲増えただけさ24/10/03(木) 05:58:38

     ~♪
     ……。
     
     でしょ。意外と合うんだよね。
     こういう、秋の寂しさがある景色と、パンクって。
     『Dead Song』。『死した歌』。ぜんぜんそんな感じしないでしょ? バラードみたいな、パンクにしては……、しかもこの人たちはヘヴィメタルも入ってるんだけど、それにしては、しっとりしてる。
     勢いで聴くジャンルなのに、この曲は聴き入っちゃう。
     演奏はカッコいいけど、英語の発音がおもちゃみたいなんだ。歌詞も、まるで英語を習いたての子が、必死に書いたような。
     あはは、怒られそう。
     ……ちょっと座ろうか、先生。
     あそこのベンチでさ。

    ――――
    ――

     
     ピッ ゴトン

     いいの? 遠慮なくいただいちゃうよ?
     ……ありがと。ごちそうさま。

     ピッ ゴトン

     ふふ。
     いや。缶コーヒーも、ホットを選ぶ時期になったんだなって。

  • 188>183ありがとうございました24/10/03(木) 05:59:41

       
     カシュ コクコク
     カシュ コク

     先生ってさ、いま何歳だっけ。

     ……。

     ……先生は、私よりも、たくさん秋を観てる。秋だけじゃない。いろんな季節。いろんな景色。いろんなことを。
     人間はきっと、80回くらいしか秋を見られない。きっと先生もそのぐらいだろうし、私もそう。
     まだまだ、先生の数には追い付けないけど。いずれ追いつく。……追いついちゃうんだよね。

     コク

     この歌はもう、40年近く前の歌。
     当時の若者が歌って、当時の若者を熱狂させて、今でも、当時の若者たちを魅了し続けてる。
    「懐かしいなあ」って言ってしまう人もいる。なにごとにも「当時の」って付いちゃうあたり、それがよくわかるよね。
     最新の歌も、好き。私、ジャンルとか、年代とか、こだわりないから。片寄りは認めるけど。
     ただ、音楽であればいい。音楽として創られたものならなんでもいい。フロントマンのカリスマも、楽器隊の技量も、どれだけ売れたとか、そんなのも。
     どうでもいい。
     心に響いたものなら、それがわたしの好きな音楽。
     でも、この歌は。
     この歌は。
     ……。

     ……。

     好きだよ。
     ……好きなんだけど。

  • 189>184もう10月なの怖すぎ24/10/03(木) 06:01:20

     ……銃をね、こないだ、つきつけたんだ。
     アルに。

     ……。

     けんかじゃないよ。大丈夫。ありがと先生。
     わたしの拳銃なんか、撃ったところで、困ったことにはならないし。
     私がアルに銃を突きつけたことが、大事だった。
     先生に相談しに行ったって日。あの日の夜。私って便利屋の社員だけど、アルの先輩でもあるからさ。
     たった1歳の差。先生から見れば無いようなものだけど、わたしたちにとっての一歳差って、大きいんだ。
     後輩が迷ったら、道を示してあげるのが、先輩の役目。
     先生と同じだよ。
     『先生』と。
     『先輩』。
     なんだか、すごく疲れた。
     こんなことをずっとやれる先生はすごいよ。『大人』だから?

     ……。

     チャポチャポ

     わたしがさ。
     こうやって、こういう、昔の歌を聴いて、いいなあ。かっこいいなあ。そんなことを思うわけだけど。

  • 190二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:03:13

     ……。

     『だが、お前にはわからない』。 
     この曲だけじゃない。
     私はリスナーだから。いろんな時代のいろんな音楽を聴く。聴いたとしても。
     『お前にはわからない』。
     ……ははっ。正面から顔を殴られた。そんな気分だった。
     『死した歌』。死んだ歌。
     かつての歌に心奪われた私を、正面から殴り飛ばしてくれる、そんな歌。

     コク

     先生。
     私たち便利屋68は、ハルカが卒業したら、キヴォトスから出ていく。

     ……。

     うん。

     ……。

     きっと私たちだけじゃない。
     多くの、今こうして街を歩く生徒たちの、きっと多くが、そうする。
     そうしなきゃいけない……んだと思う。

     ……。
     

  • 191二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:05:45

     いつか話したとおもうけど、私は、『あの頃は良かった』という大人になるのが怖い。
     アルとも、ムツキとも、ハルカとも。
     先生とも、風紀委員の連中とも、ゲヘナの他の連中、他の学園の人たちも。
     その人たちの顔を思い出して『あの頃は良かった』なんて言うのは、嫌なんだ。
     ……そう思うのは、欲張りかな?

     チャポ
     ……。

     ありがと。先生ならそう言ってくれるってわかってた。
     だから、あと2年。
     2年の間に、私たちは成長しなくちゃいけない。キヴォトス全土に名前が知れ渡るぐらい。
     キヴォトスの外に出た『あの頃の人たち』に見つけてもらえるように。憶えててもらえるように。
     そして、キヴォトスに居る先生に、届くぐらいに。
     『死した歌』になんか、なってやるもんか。

     ……。

     ♪……――

  • 192二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:08:12

     ――あ。
     ……終わらない歌はないよ、先生。楽曲はかならず終わる。
     だから数分の音の羅列に、この人たちはすべてを込めるんだよ。
     ムツキに怒られたっけ。
     『救われるってことは、飲み込まれること』。
     今の私は、飲み込まれてばかりだけど。
     いつか、私が。
     私が、誰かを飲み込むんだ。
     今日ここにいるわたしが。
     いつか、未来にいる私が。
     誰かを飲み込む。

     私は、そういう大人になりたい。

  • 193二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:10:50

     ……。

     ――曲が終われば、また新しい曲が、私たちを迎えてくれる。
     さっきまで存在していた音は新しい音で塗り替えられる。
     その中でさ、こういう風に、ふと音が途切れたとき。
     耳の中で。頭の中で。
     音が鳴る。
     幻想になんかさせない。
     カーテンコールに鳴りやまないファンファーレと熱狂を浴びて。
     語られ、歌い継がれる、便利屋68が主役の舞台を。
     最高のショウを、描いてみせるよ。

     

  • 194二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:12:05

     
     ――んんっ、はぁ。
     先生。
     あと何回一緒に、こうして同じ秋を見られるか、それはわからないけどさ。

     コテッ

     いつか終わるからね。
     人も、曲も。
     だから、いつかが来たら。
     最期の秋を、こうしていっしょに眺めていたい。
     みんなと。
     ――先生と。
     それが私の『おしまいまで生き切る』ということなんだ。

  • 195二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:13:01

     ……。

     スッ
     
     ――ふふ。
     だから私たちの新譜、楽しみにしててね。
     まあ、捨て曲もあるかもしれないけど。あはは。
     歴史に刻まれなくとも、いつかの誰かを飲み込む大名盤。
     必ず作ってみせるからさ。
     

  • 196二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:15:34

    それじゃ、次の曲聴こうか、先生。
    なにが聴きたい? 

  • 197二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:15:55

     カヨコ「なに聴いてるのって?」
     おわり

  • 198二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:27:11

    わーお……。

    ぎりぎりぃ……。


    こんな趣味満載ごりごり隙間産業にお付き合いいただきありがとうございました。

    楽しんでいただけたら幸いうれしいです。

    感謝感謝。

    まじで。

    ムリヤリ締めたとか言わないで。


    しぶのリンクは>>70です。

    今回分もまとめておきます。

    そして適当に書き散らかします。

    スレはこのまま落としてくれてももーまんたいです!


    これからもよき音楽ライフを!

    あとプレイリスト潤してくれてありがとう!

    Driftハマっちゃったよ!


    でぁでぁ、またどこかでお会いしましょーう。

    どうもお世話になりましたァ!

    おはよーございました!!!!

  • 199二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 06:48:18

    三週間お世話になりました。作者様のおかげで様々な名曲に出会うことができました。作者様へ心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました!!!!

  • 200二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 08:26:02

    よかったです
    ありがとうございました

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