- 1二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:13:18
- 2二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:13:55
- 3二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:16:11
【ちょっとした前書き】
暇さえあればイヤホンを耳に入れているカヨコ。
先生は訊ねます。
「なに聴いてるの?」
激しい音楽ばかりが好きなわけではない。
いつかそう言った彼女のプレイリストを、先生と一緒に聴くSSです。
会話のみで進みます。
地の文ありません。
一話(ほぼ)独立型なので、お時間開いたときにぽちぽち読んでくださいませ。
好きな曲だけ聴くように、つまみながら読むのもありよりのあり。
なお、聴いている音楽はわたしたちの世界と同じものです。
世界観? 細けぇことはいいんだよ。
お前たちの好きな曲のめんどくさい語り、待ってるぜ! - 4二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:20:03
【ふたりぼっち / さよならポニーテール】
あれ?
ゴソゴソ
だよね、今日流しているのは、先生のプレイリスト。
おどろいた。先生も『さよポニ』の曲入れたんだ。
――わかるよ。
明るい曲もいいけどやっぱりこういう、どこか退廃的でノスタルジックで、黄昏が似合うような曲が、この人たちの真骨頂。『さよなら、ありがとぉ』とか。
にしても『ふたりぼっち』か。
……♪
ふふ。口遊みたくなるよね。
……♪
ボソ
もし、先生と私が、成長する過程を、一緒に過ごすような関係だったらさ。
もしかしたら、――今とは違った青春があったのかもね。
……いや、なにも言ってないよ。
ああ、先生の鼻歌聴いてたら、私もちょっと歌いたくなってきちゃった。
ちょっとだけ、乗ってあげる。
……♪
――……~♪ - 5二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:20:52
スレ立てありがとうございます
- 6二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 01:22:58
【Californication / Red hot Chilli Peppers】
――ああ、いい曲なんだけどね。
Californication。Red Hot Chilli Peppersっていう人たちの曲。
はっきりは言っていないし、曲調もおだやかだけど、ひどく攻撃的。
……先生のその想像は当たりだね。
やっぱさ、音楽をやれる人たちだから。
何か不満があるのなら、音楽で表現すべき。
だから、私も好きだよ。
なんだろうね……こういう音楽はさ、根本的に何かが違う。
生きて来た環境なのか、活動する上での環境なのか、センスなのか。
……。
怒りを芸術に昇華するんじゃなくて、芸術が怒りの形、か。
あながち間違ってないんじゃない?
ノスタルジーも言い換えれば、今の環境への不満だもんね。
……ふふ。
じゃあ、甘いラブソングも、恋人への怒りからしか生まれないんだね? 先生。 - 71/224/09/20(金) 01:25:54
【すかんぽ / 高田渡】
ポテポテ
んんーっ。――ふわぁ。
こんな日に土手沿いを歩くのは気持ちがいいね。
……ふふ。気にしないで。わたしだって無理な時はちゃんと断るから。
あ。
先生、これわかる?
イタドリだよ。食べれるけど、さすがに、この辺に生えてるのは食べないほうがいいね。ここ、ワンちゃんの散歩コースだから。
……たしかに。すかんぽ、ともいうね。
あはは。ちょっと古臭い言い方かもよ、それ。
あ。
でも、歌であるんだ。そのまま、いま先生が言った言い方のタイトルでさ。
えーっと、あ、はいこれイヤホン。
ちょっと待ってね。
これだ。
……素朴な歌でしょ。
詩は歌っている人、高田渡が書いたものじゃなくて、ヨヒアム・リンゲルナッツっていう遠い国の大むかしの人のでさ。
酒場で詩を詠んでお金をもらう、ってことをしてたみたい。もちろん、それだけじゃ食べていけないから、船乗りなんかをして。
先生、この歌、どう思う?
線路に生えているイタド……すかんぽが行き過ぎる鉄道を見て、羨ましがる。だけどすかんぽは植物だから、どこにも行けない。
哀れなすかんぽ、弱い草。
いつか船すら見ることもしなくなった。
――悲しい歌、だよね。
【↓続】 - 82/224/09/20(金) 01:26:47
【続】
でもさ、これ、現地の人は笑いながら読むんだよ。
酒場詩人ってさ、やっぱり盛り上げないとだから、たぶん本人も笑ってもらうような詩として書いてる。
うん。
歌っている高田渡は、この歌の『寂しい部分』を強調した。
この詩の持つ……書いた人がもしかしたらあまり考えなかったその部分を。
何年も、何十年も経った後で、この詩が高田渡のもとに届いたときに、ね。
かわいい子には旅をさせろっていうじゃん?
きっとこのひとのすかんぽは、旅に出られたんだよ。
線路から鉄道に乗り、船で海に出て。
さらに大陸をいくつもわたって、高田渡に届いて、さらに何十年も経っていま、わたしたちの元にたどり着いたんだ。
もしかしたらこのイタドリも、いつかどこかへ旅立つのかもしれないね。 - 92/224/09/20(金) 01:28:41
- 101/924/09/20(金) 01:33:05
【死んぢゃってからも / 知久寿焼】
あーあ。なんで今日に限ってじゃんけん負けちゃうかなー。
ムツキはそんなに私と一緒に買い物したくなかった?
そうじゃなくてさー。遊びに行くのと違うんだもん。決まったところで決まったもの買うのって、ぜんぜん面白くなーい!
ゴォォォオ……ガタンゴトン……
ガヤガヤ
しかも今日の晩御飯私じゃん。カヨコちゃーん、ちょっと手伝ってくれるよ――カヨコちゃん?
……おーい。聞いてるー?
――ムツキさ。
どしたの? 早く帰ろうよー。 - 112/924/09/20(金) 01:33:41
ムツキさ、今ここにいる人たちで、知ってる人っている?
- 123/924/09/20(金) 01:34:51
なにそれ。いないんじゃない? いるかもしれないけど、いないかもしれないなー。こんな人の多い駅で言われてもムツキちゃん、わかんなーい。
私も。これだけ人がいるのにね。知ってる人、一人もいないや。
どしたのどしたの。ねー。ムツキちゃんもう手が痛いんだけどー。
……今目の前を歩いている人たちに、知っている人がいないっていうのはさ。 歩いている子たちから見た私も、また知らないひとってことだよね。
私が生きていることを、歩いてる人たちはさ、知らないんだ。
生きていることを知らなければ、死んじゃってもわからない。
この中の誰かが死んじゃってもわからないのも同じ。
なんかさ、それってすごく寂しいことじゃない?
ゴォォォオ……ガタンゴトン……
……カヨコちゃんさ、ちょっとオトナすぎ。感受性が高すぎるっていうのも考え物だよ?
別に、私なんかは特別、感受性が高いってわけじゃないよ。ただ、そういうことが寂しいなって思っただけ。
うそ。あのさ、他人のぜんぶを乗せたモノって、薬だけど毒でもあるの。救われるってことは、飲み込まれるってことと同じ。……ほら、いいから、カヨコちゃんにそんな考えを植え付けた曲を、私に聴かせてみて?
――よくわかったね。
くふふ。でも手が痛いのはほんとだから、そこの植え込みのとこでちょっと休憩しよっか♪ - 134/924/09/20(金) 01:35:41
……
――~♪
♪……
……ん。終わったよ~。
飲み物買ってきたけど、いる?
なになに優しいじゃん☆ じゃあお茶貰うね。
どうぞ。
カシュ カシュ
コク コク
ぷはっ。冷たくて美味しー☆
ムツキなら炭酸選ぶと思ったんだけど。ダイエット?
ムツキちゃんは太りませーん。それに、周りが大きくなれば、相対的に私が細く見えてラッキー♪
性格ゆがんでるなあ。
で、この曲。『死んぢゃってからも』。なるほどねー。なるほどなるほど……。暗ーい! あははっ。暗すぎるよカヨコちゃんっ。
そりゃ、暗いけどさ。でも、良く聴くと
明るい。とっても。曲も、このひとの独特な声も、詩もね。――明るく、前向きに、死を見ている歌だね? カヨコちゃん。
……うん。
それにしても危ない曲だね~。うん、とぉーっても怖い歌。なにこれ、この人妖怪かなにかなの? - 145/924/09/20(金) 01:36:42
グイッ
ほら、私を見て? カヨコちゃん。
ん、んむ。
まず一つね? カヨコちゃんの考えてる……、欲しがってる答えは、これ。
パッ
難しく考えすぎなんだよー。別にこれ、ムツキちゃんじゃなくてもいいんだよ? アルちゃんでも、ハルカちゃんでも。ヒナちゃんでも、アコちゃんでも、美食研究会の子たちでも、給食部の子でもさぁ。カヨコちゃんは『宝物』をもう持ってるけど、まだまだそういう『チャンス』はやってこないしくるはずもない。違う?
……。
くふ。正解みたいだね☆ じゃあ次。
これを歌ってる人が誰を思ってるのかとか、いま何歳なのかとか。そんなの知らないけどさー? ……目線が違うの。歌ってる人の目線じゃなくて、カヨコちゃんが透かすべき目線は『死んじゃっていくことをちゃんと過ごした人』。『おしまいまで生き切った人』。幽霊さんがいないと、そもそもこの歌は成り立たないよね?
たし、かに。
カヨコちゃん。あのね?
この歌に飲み込まれるのは、まだ早いよ? - 156/924/09/20(金) 01:37:13
ゴォォォオ……ガタンゴトン……
――あり、がと。
あはっ☆ どういたしまして~。
ガヤガヤ
はぁ。ムツキってさ、ほんとすごいね。
あったりまえじゃーん。だってムツキちゃんだよ~? あ、でもー。カヨコちゃんがヒゲぼうぼうになったら、超面白いかも♪ ねえねえ、今日から処理とか一切しないで――いったぁい!
それは言い過ぎ。あんまり生々しい言い方、わたしは好きじゃない。それに髭なんか生えないし。
だからって叩くことないじゃん! ふーんだ。カヨコちゃんの写真髭ぼうぼうに加工して先生に送り付けちゃおー☆
は?
きゃははっ。やだぁ、その顔めっちゃこわいんだけど! 撮って良い? パシャ
……消して。
あー! 先生だ! - 167/924/09/20(金) 01:37:45
トッタッタッタ
うん、そうそう、買い出し♪ 銃弾とかー、爆薬とかー、食材とかー、日用品とかー☆ カヨコちゃん一人で行かせると、万引き疑われたりするからさー。もうさ、重くて重くて、ムツキちゃんのかわいい手にビニール袋が食い込んじゃって見てよ、色変わっちゃってるぅ。
ムツキ、そういうズルい言い方は――ていうかあんた今まで袋……いつの間に。
えー! ほんとぉ? 先生、やっさしー!
あーあー……。
ほら、カヨコっちも持ってもらいなよ。
え、いいって。先生のが力ないじゃん。
くふふ。こういう時はー、『大人の先生』に甘えさせてもらお?
はぁー。
……わかったよ。
ほんとごめん、先生。
ここで会ったのも何かの縁。ご飯ぐらいごちそうするからさ、事務所まで荷物持ち、よろしくね。 - 178/924/09/20(金) 01:38:13
――――
――
―
ドス……ドス……
トテトテトテトテ
大丈夫かな先生。
たぶん大丈夫だよー♪ あ、せっかくならさ、その暗ーい考えをぶっ飛ばせる、ムツキちゃんおススメの曲があるんだけど聞く?
へぇ。Homeみたいなかわいいやつ? 私もあれ好きだったし、ムツキのおススメなら聞かせてもらおうかな。なんて曲?
『バナナチョモランマの乱』!
いいや、遠慮しとく。
なんでー!? - 189/924/09/20(金) 01:39:11
【死んぢゃってからも / 知久寿焼】
終わり。
配分ミスった。 - 19二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 02:46:32
【GREEN SLEEVES Feat.池田綾子/ TATOO】
――この曲知ってる?
もう、世界中で何回カバーされたかわからないぐらい有名な曲なんだけどさ。
もちろん、これもカバーだよ。
この旋律が『心が叫びたがっているんだ。』っていうアニメーション映画でも使われていた時は、びっくりしたよ。
カバーって言い方は正しくないかもね、もともと、民謡だから。
今から何百年も前に歌われていたのは確かだけど、それより前からあったかもしれないんだって。
誰が作ったのかも、だれが広めたのかも、タイトルのGREEN SLEEVES――『緑の袖の人』が誰かもわからない。
ふふ、なんにもわからないんだ。
けど、ずっと歌い継がれてきた。
初めに歌われたときとは歌詞も旋律も違うのかもしれないけど。
河原の石みたいに、長い年月を、何年も何百年もかけて、こういう形に落ち着いたんじゃないかな。
でも、うらやましいよね。
このひとは、『緑の袖の人』は、何百年も思われ続けてる。
――歌は、時の流れの行きつく場所。
それは、決して見ることができない『世界』の決まり事のひとつ、なのかもね。 - 20二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 03:15:43
【Lyla / Derek & the Dominos】
あ。
あはは、絶対先生は好きだと思ったよ。
最高だよね、このギターリフ。うん。ロックが好きでこれに痺れない人はいないよ。
……たぶん、そのギターを弾きたくなるっていう思いは、何千、何万の人が感じているだろうね。
本人がこれをレコーディングしたときは薬物でベロベロになってたらしいけど――だから、私は絶対にやらないって。心配してくれるのはうれしいけど、しつこい。
Lyla。愛しのレイラ。これがTears in Heavenのクラプトンなんだから、振れ幅がすごい。
もちろん、……子供もできる前の、若いころの曲。
とにかくこの女の人が好きだったんだなっていう、だれにでもある衝動をさ、ここまで思い切りぶつけられるともう気持ちがいいのなんのって。
まあ、いろいろ逸話のある曲だけどさ、
自分の衝動がここまで人に受け入れられるって、どんな気分だろうね。
――本人はもうあまり歌いたくないみたいだけどさ。
みんなが好きな曲だから、歌わないわけにはいかないし。
ギター、やりたいんだっけ? 先生。
だったら、今の先生の衝動が永遠に残ることを覚悟しないと。
ふふ、でも聴いてみたいかも。
先生が今、何を思って、何を叫びたいか。
その思いは、誰に向けられるんだろうとか、ね。
- 21二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 04:15:15
【亡き王女のためのパヴァーヌ / モーリス・ラヴェル】
――今日の仕事はとりあえず終わったよ。
先生は?
……ああ、お疲れさま。
にしても今からアビドスの方か。じゃあ、泊まり込みかな。
それならさ、最後に一曲聴いてかない?
うん、コーヒー淹れてあげるから。いつものやつだよ、一杯飲む間は、ちゃんと休憩しようってやつ。なにもかもを忘れて、さ。
コプコプ
コトン
はい、どうぞ。
で、曲は……。
珍しいかもね。私がクラシックの曲を流すのは。
別にわかる顔をするつもりはないよ。実際、指揮者がどうの、何年の録音がどうの。形式がどうのとかぜんぜんわかんないし。
バロック時代の曲はたまに流すけど、あれはフォーク・ミュージックの原型として聴いてるからさ、感覚としてはちょっと違うんだ。
まあ、私はもっと私の目線に近い、『私たちの中』で生まれた音楽が好きだから。
という言い訳をさせてもらうね、先生。
つまり、音楽的なことは、私に聞かれてもさっぱりってこと。
ふふ。じゃ、流すね。 - 22二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 04:18:35
――――
――
―~♪
……この曲が、なんで好きかって話だけど。
どこかで、素敵な話を聞いたからなんだ。
この曲を作ったラヴェルって人、晩年はもう、いろんなことを忘れちゃってたらしくて。
まあ、そうだね。いわゆる老人性の――ってやつ。
それでね、先生。
この曲を本人に聴かせたんだって。昔の記憶を刺激するのって、いいっていうでしょ。
そしたら、ラヴェルはなんて言ったと思う?
『素晴らしい曲だ。誰が作ったんだ?』って言ったんだってさ。
この話は私もうろ覚えで、どこで見聞きしたのか、本当にこの曲のことだったのかもわからない。
でも。
……なんて幸せな人なんだろう。
なんて素敵な話なんだろうって思わない?
自画自賛、って言ってしまえばそれまでだけど、この人は、自分の作品で、自分すらも感動させた。
なんだか、それがとても、私の胸を締め付けてさ。
――本当?
よかった、先生もそう思ってくれて。
うん。
誰が弾いてても、どんな演奏でもいいんだ。クラシックの聴き方としては、怒られそうだけど。
ただ、この旋律を聴くと、そういう話を思い出す。
思い出すたびに、素敵な曲だなって、心の底から思うんだ。
~♪ - 23二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 04:23:13
今日は終わります。
もう朝やん。
【GREEN SLEEVES】【Lyla】【亡き王女のためのパヴァーヌ】はあと一話書けたら、のちのち
しぶの方にまとめます。
ハーメルン? 知らない子ですね。
では明日もよき音楽ライフを。
読んで下さりありがとうございました。
……あと、復活祈願のスレに記載ありがとうございます。
とてもうれしかったです。