【暗黒街シティ】シティの組織SS

  • 122/02/23(水) 21:02:20

    https://bbs.animanch.com/board/386108/?res=612

    安価とダイスで暗黒街を作る総合wikiseesaawiki.jp

    【安価とダイスで暗黒街を作る】で生まれたシティの組織についてのSSです。

    一部安価を募集しますので、お付き合いいただければ幸いです。

  • 2ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:06:41

    ♫助けてくれなんて言わないよ
    ♫誰も味方になりゃしないんだから
    ♫一人でもがいて抗っても そのうち削れて消えていく
    ♫俺は川底の石ころ 俺はグラスの中の氷
    ♫俺はトラックのタイヤ 俺は黒板のチョーク

    ラジオのスイッチを切り、ロシュー・ケイネスは車から降りる。
    大小さまざま、何台もの車が置かれた地下駐車場。彼の車も、他の車も、車種こそ違うが共通点がある。

  • 3ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:07:06

    シティ市警のマークは?

    >>5

  • 4二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:08:20

    おむすび

  • 5二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:08:52

    白い鳩

  • 6ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:10:00

    「剣をもつ白い鳩」シティ市警のマークである。
    この街ではどんな車種でも安全とは言えないが、警察のマークを掲げる車に手を出すものは多少は減る。

  • 7ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:10:35

    「おはようございます。ロシュ―署長」
    ロシューは、1階の警備員のボディチェックとスキャンを受け、認証コードを入力した後、エレベータに乗った。

  • 8ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:11:24

    「丁度いい、署長。今月のVRパレードの予測をあげておきました。あとで確認と作戦案の承認を」
    乗り合わせた警視がタブレットを見せてくる。
    ロシューの「了解」のジェスチャーを見ると、目的の階で男は降りていった。
    ロシューを乗せたエレベータはそのまま最上階、署長室へと到着した。

  • 9ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:12:49

    「おはようございます。署長」

    彼の副官が挨拶をしてくる。

    彼の名前・特徴は?

    >>11

    >>18まで

  • 10二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:14:16

    ナターリヤ

  • 11二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:14:48

    ケウルス

  • 12ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:15:40

    ちょっと多かったのでksk

  • 13二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:16:13

    マッチョのスキンヘッド

  • 14二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:16:56

    白人

  • 15二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:16:57

    身長180cm

  • 16ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:17:55

    十分そろったので加速

  • 17ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:18:15

    ksk

  • 18ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:20:02

    警察署長副官ケウルス
    スキンヘッドで180cmほどの白人。
    とはいえロシューと比べれば小さく見える。
    職務には忠実で、ロシューの意図をよく読み気をまわす。

  • 19ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:20:35

    『おはようケウルスくん!』
    スタングレネードと間違うほどの爆音がロシューの口から放たれる。
    彼の声は部屋をびりびりと揺るがすが、それによって壊れたものはこの部屋にはなかった。
    彼の着任した初日に粉砕された窓ガラスは対爆のものへと付け替えられ、部屋の物もまき散らされないようピンやクリップでしっかりと取り付けられている。
    ケウルスの耳にも、防音のヘッドホンが取り付けられ、鼓膜が破壊されないようにしていた。

  • 20ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:21:47

    デスクについたロシューに、ケウルスが話し始める。

    「昨晩の報告をいたします」

    昨晩警察が対処した、シティの犯罪は?

    >>まで

  • 21ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:22:02

    >>25まで

  • 22二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:23:03

    赤ちゃんの行方不明が連続して発生した

  • 23二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:23:29

    放火3件

  • 24二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:23:47

    爆破テロを未然に防いだ

  • 25二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:23:49

    薬中が銃乱射

  • 26ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:27:32

    「児童の失踪事件が昨日同様○件発生。

    dice1d10=3 (3)

    放火が3件いずれも家屋全焼

    予告のあった爆破テロ犯を鉄道ターミナルにて逮捕。

    薬物中毒者の発砲により、警官○名、市民△名死亡

    dice1d6=4 (4)

    dice2d6=4 4 (8)

    以上です」

  • 27ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:28:20

    10分以上の時間をかけ、スクリーンに映された事件の詳細、対応した警官について説明した後、逮捕された犯罪者のデータをロシューに手渡した。

  • 28ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:36:26

    『今日もいつも通り、か』
    溜息を吐き、ロシューはいつも通り業務を始めた。
    「署長。VRの活動予測が届いています。24日木曜、出現地点は自然公園周辺と予想されます」
    『先ほど警視から知らされたよ。パワードスーツ20部隊を現場周辺に待機させておくように』
    ケウルスと言葉を交わしながら、各指示書・報告書に目を通して承認していく。
    書類仕事と会議で大体ロシューの午前は終わるのであった。

  • 29ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:38:20

    ロシュー署長の午後ですが、特別な業務を一つやります。

    どれにしましょうか。

    >>31

    1・凶悪犯のジーザスウォールへの移送

    2・犯罪組織摘発

    3・内部監査組織の設立

  • 30二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:40:07

    3

  • 31二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:41:50
  • 32ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:44:08

    午後ロシューは武装を整え、装甲車に乗り込んだ。

    目的は、犯罪組織拠点の摘発である。

    その犯罪組織の違法な罪状は?

    >>33

  • 33二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 21:45:17

    臓器売買

  • 34ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:49:43

    臓器の違法売買組織の摘発が、今回の作戦だった。
    目的の組織は、最近勢力を拡大するために動いていたが、隠蔽が杜撰だったためにその尻尾をつかむことに成功した。

  • 35ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:54:36

    相手が逃げる前に、施設を制圧しなければならない。
    「突入!」
    リーダーの合図がかかると、部隊は一斉に建物へと入っていく。
    ロシューは体躯の大きさから、建物の外で待機し、逃走する者たちへの対処にあたる。

  • 36ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 21:58:50

    「…!?」
    突入したビルは表向きはデリバリーフード店だったが、内部はやはり臓器販売組織のものであった。
    大型の冷蔵室。人間を解体するための医療器具や工具。
    取り出した「商品」を保存するための薬品と容器。

    だが、突入した隊員は、そこにあるはずの物を見つけることができなかった。

  • 37ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:03:53

    死体・臓器・そして組織の人間である。
    どのフロアにも誰もいない。
    どのフロアにもなにもない。

    だが、そこには確かに害悪の名残が残っていた。

    そこら中に、大量の血の花が咲いていたのである。
    まるで赤のペンキが入ったバケツをひっくり返したような血痕が、10数カ所に残されていた。

    そしてビルの最上階、店長室には1人の獣人がいた。

  • 38ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:04:37

    何の獣人?

    >>39

  • 39二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 22:05:19

    オオカミ

  • 40二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 22:10:54

    このレスは削除されています

  • 41ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:11:34

    店長室にいたのは1人のオオカミの獣人であった。
    いや、だったものと言った方が正しい。

    彼の体は文字通り「開かれ」ていた。
    下顎から両脇までが引きちぎられ、垂れ下がった体の前面はエプロンのように足元まで垂れ下がっていた。
    そして、体の中には「何も」なかった。
    脈打つ心臓も、汚物をため込んだ腸も、肺も、肝臓も、腎臓もすべてが、なくなり空っぽになっていた。

  • 42ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:17:28

    「確かに、ターゲットの店長です」
    死体を確認したリーダーは、通信機でロシューに報告する。

    報告を受けたロシューは、撤収の合図をしながら考えていた。
    おそらく同業者との抗争だろう。これ自体はこの街ではよくあることだ。
    だが、空振り、徒労、無駄。この組織を摘発するための戦力を他の摘発に使えていたら。何人の命が救えただろうか。
    この後悔も数えきれないほど繰り返している。

  • 43ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:18:42

    後始末と事件の調査の手配に終われ、エレベータを降りたのは深夜だった。
    いつも通り退所の手続きをとり、車に乗る。
    ロシューは無言でしばらくぼうっとしていたが、おもむろに後部座席からモノを取り出した。

  • 44ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:21:21

    黒くずしりと重いそれは、ただの鉄の塊だった。
    それをロシューは、全力で殴りつける。
    壁や車を殴りつけたい。ただ弱者を屠り続ける犯罪者どもを殴り殺してやりたい。
    だが、彼には。だからこうして、ただの鉄の塊に怒りをはきだす。
    毎日のようにこうして殴られた鉄塊は形を変え、子供が遊んだ後の油粘土のようになっていた。

  • 45二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 22:22:37

    このレスは削除されています

  • 46ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:24:06

    大きく息を吐き、車のエンジンをかける。
    ラジオのスイッチを入れると、朝にかかっていた曲が流れていた。

    ♫負けるもんかよ 消えてたまるか
    ♫クソみたいなシステムに
    ♫飲まれるもんか 流されるもんか
    ♫俺は粗悪な不良品だ 噛み合わせない 回ってやらない
    ♫歯も軸もチェーンも まとめて「おしゃか」にしてやる

  • 47二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 22:24:10

    おおえぐいねぇ

  • 48ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:25:12

    以上で警察署長の1日は終わりです。
    長々とお付き合いいただきありがとうございました。

  • 49ロシュー署長の悪戦苦闘22/02/23(水) 22:32:56

    と、いう感じでつらつらと書いていくだけでしたが、安価しながらSSを書くってなかなか難しいものですね。
    筆も遅いし誤植も多いしで、どうにもうまくいかない。

    どうだったでしょうか。
    今後も読んでみたい、という方がいらっしゃいましたら、次回の組織の希望をお願いします。

  • 50二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 22:34:04

    おもしろかった

  • 51二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 22:34:58

    コルネウス・ファミリー

  • 52二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 22:40:57

    割とヘビーな世界観で好きよ
    比較的穏健派となったコルネリウスファミリーの情勢を見てみたい気もする

  • 5322/02/24(木) 07:57:06

    保守

  • 54二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 14:22:29

    保守

  • 55二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 21:55:51

    保守

  • 56二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 04:38:54

    保守

  • 5722/02/25(金) 07:22:37

    保守

  • 58二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 14:39:39

    保守

  • 59122/02/25(金) 21:11:45

    保守

  • 60二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:27:18

    保守

  • 61二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 08:10:47

    保守

  • 62二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 16:47:15

    保守

  • 63親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 19:32:39

    組織SS第2弾。今回はコルネリウス・ファミリーについてです。
    お楽しみいただけたら幸いです。

  • 64親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:01:52

    暗黒街「シティ」、無法と外道の街の北にある小高い山。
    混沌とした街とは裏腹に、ここには調和と秩序に満ちている。
    その理由は、山の中腹にある1つの邸宅であった。

    磨き上げられた正門を超えると季節の植物が彩る庭園が広がり、その庭園の向こうには荘厳な屋敷が見えてくる。
    このような屋敷をシティに立てれば、たちまち略取の対象となり次の日には見る影もなくなるほど荒廃するだろう。
    そうならないのはこの屋敷の主の力ゆえである。

  • 65親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:02:18

    ドン・コルネリウス。

    その名を呼ぶことすら憚られるほどに畏れられる、シティに君臨する古の怪物。
    表向きはシティの金融・運輸・不動産を幅広くおこなう企業グループの社長であるが、その実態は多くの違法組織を傘下に従え、この広大なシティの半分近くを勢力下におくマフィア、コルネリウス・ファミリーの長である。

    この屋敷に足を踏み入れて無事に帰って来られるものは、彼の近親者を除けばファミリーの幹部、ブルードアイズたちくらいなものであろう。
    故にまともなものなら、いや、狂人であっても、この山に入ろうとする者はいない。

  • 66親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:03:20

    この街で最も恐れられる男の日常は、まったく平穏なものであった。

    「おはようございます。コルネリウス」
    執事のクラスト・ベルトンデンは、朝食の準備を終えると主の部屋へ入った。すでに部屋の主は起きており、新聞を読みながら朝食を待っていた。

    男は老いていた。髪は完全に白く染まり、顔には彼の歩んだ歴史が深い皺となって現れている。
    だがその大理石のような灰の目だけは変わらず鋭く光っていた。

    「昨夜ですが、ブルードアイズ第7席、ドブグズリ様がお越しになられました。突然の訪問でしたが、たっての希望でしたので応接室でお待ちいただいております」
    「そうか。では朝食後に会うとしよう」
    この屋敷に幹部の会合を除いて人が訪れることはまれである。
    そして、もたらされるのが朗報であることはあまりなかった。
    「…悩ましいことだ」

  • 67親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:04:35

    朝食は基本的に家族そろってとるのがこの家の決まりである。
    ふっくらと焼き上げられたパンや、みずみずしい果物と野菜。
    オムレツや発酵食品など、上質な食品がテーブルを埋める。

    この食卓につくのは、ドン・コルネリウスとその妻アイーシャ、そして双子のフリントとアンナ、末弟のラークである。
    この日は嫁いだ長女のメアリーを除く全員が集まっていた。
    「母さん、今日は仲間と遊ぶから夕飯はいらないよ」
    「フリント、またあの店?外で薬を買うのは危ないわよ。サムに買わせなさい」
    「違うよ母さん!食事をするだけさ」

  • 68親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:05:46

    フリントとアイーシャがそんな話をしていると、急に軽快な音楽が流れ始めた。
    「アンナ、食事中に電話するのはやめー「大事なことなの!」
    アイーシャが窘めるのも聞かず、アンナは通話しながら部屋を出ていってしまった。

    「…アンナの今のボーイフレンドはだれだったか」
    コルネリウスがつぶやくと、フリントが答える。
    「たしかストリートバスケのグループのやつだったよ。
    エース扱いでキャーキャー言われてた。身辺調査の結果やいかに!」

    ガチャガチャガチャ!ダダダダダダ!ガチャ!バン!
    けたたましい音を立て、アンナと思しき物体が屋敷を飛び出した。
    その様子を見て、フリントはゲラゲラと笑い出す。
    「ハハハハハ!エース君よ安らかに眠れ!」

  • 69親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:07:04

    溜息をつき、ラークは席を立つ。食事は終わり、1人が席を立ったならもう留まる必要もない。
    「ラーク、今日は何が食べたい?」
    「今日は帰らない」
    話しかけてくる母に一言だけ返すと、鞄をとって屋敷を出る。
    今日は「あいつ」のところに行こう。携帯を取り出し、メッセージを打つ。
    「今日行くから。メシの準備しとけ」

  • 70親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:07:57

    「ラーク!待ちなさい!」
    アイーシャが窘めるのも聞かずにラークは出て行ってしまった。

    「じゃ、俺もいってきます」
    しばらくして食事を終わらせたフリントもアイーシャに挨拶をすると、テーブルを離れていく。

  • 71親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:08:43

    「あなたもラークに言ってくださいな。あの子もあなたの言うことなら素直に聞きますから」
    アイーシャは2人になった食卓でコルネリウスに話しかけるが、返ってきたのはすげない言葉だった。
    「あいつなら問題ない。私の子供だ、この街での生き方くらい心得ている。自分の身の守り方もな」

  • 72親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:09:12

    アイーシャはむっとした。
    自分の身の守り方?ファミリーのメンバーが近くにいるのが一番安全だろう。
    だが、ラークはそういった者たちすら近づけない場所に行ってしまう。

  • 73親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:09:56

    「それで選んだのがあれですか!?あんな獣のような男、余計に危険ではないですか!」
    声を荒げるアイーシャの剣幕に、ふ、コルネリウスはかすかに笑みを浮かべた。
    「確かに危険という点であれに並ぶものはそうはいないな。だが、あれは見かけよりもよく考えているぞ。
    ラークもそうだ。眠っている虎の上でさえずる小鳥を捕まえに来る愚者もそうおるまい」
    そう言うと、コーヒーを飲み切り席を立つ。
    これから旧友に別れを告げねばならない。かわいげのある話で、少しは気分が楽になった。

  • 74親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:11:11

    庭園に面した書斎。開け放たれた窓から穏やかな陽光が差し込む中、コルネリウスは読書を楽しんでいた。
    「コルネリウス、ドブグズリ様をお連れいたしました」
    ノックと共にクラストが来客を告げる。
    クラストと入ってきたのは、小柄でがっちりとした体の中年男性だった。
    普段は自信にあふれ、会合では上位の者にも臆せず嫌味を言ってのける男だったが、今はすっかりやつれており、落ち窪んだ眼は暗い光をたたえていた。
    「ドブグズリよ、先日も思ったが随分と調子が悪いようだな」
    コルネリウスは本のページをめくりながら話しかける。
    ドブグズリはしばらくばつが悪そうにしていたが、やがて意を決したように口を開いた。

  • 75親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:12:07

    「ドン・コルネリウス。ファルクスの野郎を止めてくれ!」
    コルネリウスが書を読み進める間に、ドブグズリはことの顛末を話していた。

    ことはこうだ。
    ドブグズリの傘下にファルクスという若いリーダーが率いる組織があった。
    彼は優秀で、ドブグズリの支持を十二分に叶え勢力の拡大に貢献し、ドブグズリの右腕となった。
    だが、ある日からドブグズリの組織はおかしくなっていった。
    指揮下の兵隊は敵対勢力との抗争に敗れることが多くなり、流通ルートや傘下の店舗の営業も、ある日を境に一斉に止まった。
    ドブグズリは慌てて配下の粛清に乗り出したが、そのために送り出した部隊のすべてが1夜にして壊滅してしまう。

  • 76親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:12:43

    ここまでいってようやくドブグズリは気付いた。
    重用していたファルクスの仲間達が傘下の組織全体に浸透し、一斉に蜂起したのだ。
    粛清部隊の中にもファルクスの仲間はおり、部隊を誘導、包囲し抹殺した。
    信用できる手駒を失ったドブグズリは慌ててドン・コルネリウスの邸宅に逃げ込む。

    というのが、これまでのいきさつである。

  • 77親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:13:32

    「頼む!ファルクスを片付ければ組織もまともに運営できるようになるハズだ!あんたなら!」
    鼻息荒くまくしたてるドブグズリの声は、クラストのノックで遮られる。
    「コルネリウス。ドブグズリの配下の者がお話があると」

  • 78親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:14:43

    クラストに連れられて入ってきたのは、薄水色の髪をロン毛にし、眼鏡をかけた優男であった。
    「お初にお目にかかります。ドン・コルネリウス」
    恭しく礼をするファルクスに、ドブグズリは掴みかかる。
    「てめぇ…ファルクス!よくも俺の前に面を出せたな。
    さんざんいい目を見せてやった恩も忘れて、てめぇのせいでうちの縄張りは滅茶苦茶だ!
    どう落とし前つける気だ!」
    「ドンの前でそう見苦しい姿を晒すのはおやめになった方がよろしいかと。
    それに、この街でも、この組織でも日常的に行われていることです」

  • 79親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:15:20

    ファルクスはドブグズリを意に介さず、コルネリウスに語り掛ける。
    「ドン。私が率いるファミリーは現在、ドブグズリの治めていた縄張りと、ファミリー構成員を掌握いたしました。
    この一件の落としどころはドンに一任したく思います。
    ドブグズリにすべてを返上しろというのなら、従いましょう」

  • 80親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:16:07

    ファルクスの発言に、ドブグズリは困惑した。
    完全に組織を掌握した状態を自ら放棄するというのだ。
    長年ファミリーに貢献してきた自分と、新人のファルクスとではドンの信頼度には雲泥の差がある。
    再び組織のトップに返り咲けばこの小賢しい反逆者をすぐにでも挽肉に変えてやる。

  • 81親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:16:46

    緊張した面持ちのファルクスと顔を歪めるドブグズリを前に、本から目を離しコルネリウスは口を開く。
    「随分と組織に被害があったな。回復の見通しはあるのか?」
    おお、なんとお優しい。組織の回復の心配までしてくださるとは。
    感激するドブグズリを横目にファルクスは答える。
    「問題ありません。最近対立していた組織も、現在は協力関係にあります。
    この一件が片付けばファミリーに併合されます」
    この野郎、後ろで手引きしていやがったのか。今更白状してももう遅い、お前の処刑は確定だ。

  • 82親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:18:04

    そう考えるドブグズリの耳に意味不明の言葉が聞こえた。
    「そうか、『ならばいい』」

    「…は?」

  • 83親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:19:12

    「ファルクス。お前にドブグズリの縄張りの管理を任せる」
    「光栄の至り」
    話は終わりとばかりに、読書に戻るコルネリウス。

    「待ってくれ!」
    そんなはずはない。これまで10年もファミリーの幹部としてファミリーに貢献してきたんだ。
    縄張りの運営も失敗なんてほとんどなかった。損害らしいものを負ったことなんて今までなかった。
    「なんでだ!こいつはファミリーの敵なんだぞ!こいつのせいで何もかもぶち壊されたんだ!」
    「ですが、結果的には組織はさらに大きくなる。今回の件に関わったすべての組織を飲み込んで。
    この私、ファルクスの管理下でね」

  • 84親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:19:47

    うるさい。ふざけるな若造が。お前さえいなければ。
    ドブグズリは体を折り曲げる。大きく開いた口から、大型の拳銃が吐き出される。
    拳銃を驚くファルクスに向ける。
    ファルクスは慌てるが、回避の術はなく、この屋敷に武器を持ち込むことは許されない。
    殺してやる。お前を消せば、俺の幹部の座は安泰だ。

    コルネリウスは、区切りのいいところまで本を読み進めると、しおりを挟んで閉じた。

  • 85親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:20:20

    開いた窓から銀色の光が飛び込む。
    それはドブグズリの首に吸い込まれていき、その頸椎を切断した。
    首から下へ指令は送られることなく、拳銃の引き金が引かれることもない。
    ドブグズリはびくりと震えると、ゆっくりと床へ倒れ込む。

    後ろに立っていたクラストは、いつの間にか持ち込んでいた厚手のシーツを打ち広げる。
    ドブグズリの体が床に触れる前に、その血の一滴まで漏らさずシーツの中へと包み込んだ。
    その左手には鈍い輝きをはなつ枝切りバサミが握られていた。その刃には血の痕跡は見つけられない。

  • 86親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:21:24

    「「武器庫」のドブグズリ、お前は確かに過ちは犯さなかった。だが、貪欲に力を求めることもなかった。
    うねりのたうつこの街の混沌を前に、それはあまりにも危ういのだ。
    さらばだ、我が忠実なる臣下よ」
    別れの言葉を告げると、コルネリウスはファルクスに声をかける。
    「ファルクス、ブルードアイズの席には空座が生まれた。だが、それは珍しくもない。
    末席に加わることを望むのなら、次の会合までにその力を証明しろ」
    事態が呑み込めず、ぼうっとしていたファルクスに、クラストが1枚の紙を手渡す。
    ドブグズリ配下の一人の名前が記されていた。
    「生きているなら、後日屋敷に向かわせろ」

  • 87親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:22:06

    ファルクスは乱れた髪を軽く整えると、礼をして足早に部屋を出る。
    この屋敷にいる者たちは、まさしくコルネリウスの親衛隊であった。
    つぶれた組織の中で彼の目につく優秀さを備えたものは、この屋敷に迎え入れられる。
    コルネリウス本人には高齢ゆえの衰えがある。だが、彼の兵たちは組織の死体から力を吸い上げ強化されていくのだ。

  • 88親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:22:39

    恐ろしい。だが。

    ついにここまできた。最大の賭けに勝ったのだ。
    やはりあの老人は組織の成長を第一に考えた。
    ドブグズリを捕獲できず一巻の終わりかと思ったが、俺の予想に狂いはなかった。
    掌握した組織を再構成したら温めていた作戦を始動させよう。
    上り詰めてやる。ブルードアイズの席では満足しない。
    あの老人すら蹴落とし、このシティの支配者となってやる。

    欲望に顔を歪ませ、ファルクスは屋敷をあとにした。

  • 89親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:23:21

    ドブグズリの死体を担ぐクラストに、コルネリウスは話しかける。
    「しおりが切れたぞ」
    クラストが目をやると、本に挟まれたしおりのひもが切断され、短くなっていた。
    「おや、これは失礼いたしました。サムにはきつく言っておきます」
    礼をしてクラストは部屋を出ていく。もう今日は来客も用事もない。

    コルネリウスは本を机に置くと、目を閉じる。
    のどかな陽光に包まれ、コルネリウスは思案をめぐらす。

    この街の変わらぬ平穏を願って。

  • 90親愛なるゴッドファーザー22/02/26(土) 20:27:58

    以上が、コルネリウス・ファミリーについてのSSです。
    長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
    ボリュームが増えたので、安価を入れる余裕がありませんでした。
    決めてない設定も生やしてしまいましたが、ご容赦を。

  • 91二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 20:29:01

    お疲れ様でした。コルネリウスが渋くてカッコよかったです

  • 92二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 20:29:52

    前回のSSと併せて群像劇って感じで好きですねぇ

  • 93二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 20:47:08

    ファルクス君、ちょっと応援したくなった
    しかし…
    【上にはまだ上がいる】
    と、思い知りつつ、ブルードアイズの席次を確保し、登っていってほしいものです♪

  • 94二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 03:24:57

    保守

  • 95二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 07:38:19

    保守

  • 96二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 14:15:40

    保守

  • 9722/02/27(日) 20:57:21

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 01:37:10

    保守

  • 99二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 07:03:26

    保守

  • 100二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 13:13:17

    保守

  • 10122/02/28(月) 21:07:52

    本スレその2が落ちたので、こちらで。
    破壊組織「ヴァイオレンスライオット」のSSを今度あげます。
    本スレ3をつくるかどうかはその後決めますね。

  • 102二次元好きの匿名さん22/03/01(火) 01:03:07

    保守保守

  • 103二次元好きの匿名さん22/03/01(火) 12:25:35

    保守

  • 10422/03/01(火) 19:33:32

    SSは明日になりそうです。
    今日は保守だけで。

  • 105二次元好きの匿名さん22/03/01(火) 20:40:57

    はい

  • 106二次元好きの匿名さん22/03/01(火) 20:56:20

    保守

  • 107二次元好きの匿名さん22/03/01(火) 23:15:36

    保守

  • 108二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 07:06:05

    保守

  • 109二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 13:01:05

    保守

  • 110二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 16:05:53

    保守

  • 111暴王のパレード22/03/02(水) 20:18:34

    もう少ししたら、SSあげます!

  • 112暴王のパレード22/03/02(水) 20:56:37

    第3弾・ヴァイオレンスライオット
    始めます。

  • 113暴王のパレード22/03/02(水) 20:56:47

    シティ。
    毎日何十人もの人間が、殺し殺されを繰り返す街。
    しかし、空から見ればその凄惨極まる人の営みは見えず、ビルが立ち並ぶだだの大都市となる。

    晴天。涼風。のどかで平穏な気候。普段は剣呑な住民たちもいくらか穏やかになったある日の午後。

    シティ中区商業街。いくつもの企業がビルを構え、しのぎを削る暗闘を繰り広げる区画。
    そこに立つビルの一つが突如として崩壊した。

    粉塵を巻き上げ崩れるビルは隣のビルに倒れ込みさらに被害を拡大させる。

  • 114暴王のパレード22/03/02(水) 20:59:06

    轟音が響く土煙の中から、100人ほどの集団が現れる。
    その服装は様々で、上半身裸のものもいれば、特殊部隊ばりの重装備に身を包んだものもいる。
    一見統一感のない集団ではあるが、彼らには一つの共通点があった。
    グレネードや無反動砲などの重火器、ハンマーやパイルバンカー、果てはショベルカーや鉄球クレーンに乗るものもいる。
    種類こそ違えど、彼らの手の中にあるものの用途は「破壊」。
    進撃を妨げるすべての物を破壊し、目的地にたどりつく。
    ただそれだけのために、どんな障害があろうとなぎ倒して進む破壊者たちのパレード。
    それが「ヴァイオレンスライオット」である。

  • 115暴王のパレード22/03/02(水) 21:02:09

    彼らの戦闘を悠々と進む男が一人いる。
    3メートル近い巨躯を赤と黒のタクティカルギアに包み、トラックかと見まごう大きさのバイクに跨るその男の名は、ヴェルドニクス。
    このシティでも指折りの「危険生物」と恐れられる男である。

    「目標は…今回はあのビルにしよう」

    ヴェルドニクスが指さしたのは、出版社「シティウィークリー」の本社ビルである。
    その声を受けた者たちは、嬉々として目的地に向けて進撃を始める。
    進撃を妨げる壁を撃ち抜き、柱を砕き、原形をとどめなくなるまで徹底的に蹂躙する。

  • 116暴王のパレード22/03/02(水) 21:05:08

    ヴェルドニクスが指さしたのは、出版社「シティウィークリー」の本社ビルである。
    その声を受けた者たちは、嬉々として目的地に向けて進撃を始める。
    進撃を妨げる壁を撃ち抜き、柱を砕き、原形をとどめなくなるまで徹底的に蹂躙する。
    破壊者達が通った後の瓦礫の山には、やがて200人ほどの人々が現れる。
    彼らは瓦礫の山の中から、鉄骨や貴金属、スクラップや死体を拾い集めた。彼らもまた、パレードの構成員たちである。
    先ほどの破壊者達を「デストロイヤー」と呼ぶなら、彼らは「スカベンジャー」と呼ぶのがふさわしいだろう。

  • 117暴王のパレード22/03/02(水) 21:08:16

    ヴァイオレンスライオットは、システマチックに月に一度のパレードを運行する。
    まず全体の3分の1のデストロイヤーたちが街を破壊し、その瓦礫の山を後ろから追いかける形でスカベンジャーたちが有用な資源を回収する。
    回収された資源は換金され、スカベンジャーたちが分け合う。
    デストロイヤーの役目は持ち回りで、誰でも3か月に1度は破壊する側に回る。
    そのため、ヴァイオレンスライオットの構成員はただ破壊を目的とする狂人ばかりではない。
    スカベンジャーとなり金を得ようとするものが半分以上を占めるのである。
    必然的にスカベンジャーの中にも暴力に慣れた者が一定数いることとなり、このシステムにこっそり入り込み利益を得るようという「部外者」は、袋叩きにされスカベンジャーたちの収集物に加わることとなる。

  • 118暴王のパレード22/03/02(水) 21:12:41

    この破壊と回収のシステムに対し、抵抗という対応をとる勢力はひとつしかない。
    シティ市警である。

    「アラン隊長。全部隊ポイントに到着しました」
    「よし、作戦を開始する」

    破壊者達のパレードが進むなか、周囲のビル群から大量の投射物が降り注ぐ。
    投下されたのは暴徒鎮圧用のスモークグレネード。
    あたりにまき散らされた煙はパレードのメンバーを苛み、行動不能へと追い込む。
    動きが止まった暴徒たちに、ビルの上からパワードスーツの部隊が一斉射撃を開始した。

  • 119暴王のパレード22/03/02(水) 21:13:23

    彼らを指揮する隊長は、アラン・ベンジャミン警部。
    「市民」からの救援要請に迅速に対応し、部下からの「信頼」も厚い「優秀」なリーダーである。
    彼は部隊が展開した一帯から100メートルほど離れたビルの裏手に止められた大型トレーラー、彼はそこから部隊へ支持を出している。

    害獣駆除に成功すれば、「市長」からの私の評価は急上昇。より重要な役職になることも可能だろう

    自分の輝かしい未来に夢をはせながら、モニターを眺めるアラン。

  • 120暴王のパレード22/03/02(水) 21:16:43

    とはいえ、彼は相手を見くびるつもりはない。
    ヴェルドニクス。
    数年前にシティに現れたあの男は、こうして毎月のように破壊活動をおこなっている。
    はじめは1人で。
    始めはただの薬物中毒者と同様に警官隊が対処しようとしたが、鎧袖一触に薙ぎ払われたという。
    やがてあの男の破壊活動に加わるものまで現れ始め、今では100人を超える軍隊となってしまった。
    アランは吐き捨てる。

    「いい加減はしゃぐのをやめろ、クズめ」

  • 121暴王のパレード22/03/02(水) 21:17:15

    ビルの屋上から降り注ぐ銃弾の雨。
    瓦礫に隠れた構成員たちにも反撃するものはいるが、スモークで直接視認できずパワードスーツを装着した相手に有効打にはならない。
    これがアランのたてた必殺の布陣。捕縛など微塵も考えない冷徹な作戦であった。

  • 122暴王のパレード22/03/02(水) 21:22:49

    だが、この布陣をたやすく打ち砕く生物が、この場に存在する。

    「アウレリウス」
    ヴェルドニクスはバイクから立ち上がると、短くつぶやく。

    『認証。アウレリウス、展開』
    その声に応じるように、バイクの中ほどが分離し変形していく。
    1秒後にバイクのエンジン部分があった場所には、鉄塊が転がっていた。

    巨大な鉄塊が太い鎖で長い棒の端につながれた武器。
    モーニングスターである。

  • 123暴王のパレード22/03/02(水) 21:23:33

    ヴェルドニクスはそれを持つと、無造作に振り回す。
    鉄塊が地面をえぐり、人間ほどもあるコンクリート塊が空高く打ち上げられ、次々と周囲のビルに突き刺さる。
    中にはビルの屋上まで貫通したものもあり、直撃したパワードスーツは弾き飛ばされ落下していった。

    「くそ!化物め!」「撃て!撃て!」「一か所に固まるな!」

    今度は警官たちが慌てる番、とばかりにヴェルドニクスは連続して岩塊を打ち出す。

  • 124暴王のパレード22/03/02(水) 21:25:25

    一機、また一機と破壊される中、アランの指示が飛ぶ。

    「…チッ!仕方がない。ビルを放棄!第2ポイントに再集結しろ!」

    退避を許可されたパワードスーツたちは、一斉にビルから飛び降りる。
    着地補助機能によって、高層ビルの上方でも安全に着地できるのである。

    「走れ、走れ、レミングス」

    ヴェルドニクスは楽しそうに謳う。
    「エピクテトス」
    『認証。エピクテトス、展開』

    次に彼の手に握られたのは、バイクの後輪が変形した、巨大な大砲であった。

  • 125暴王のパレード22/03/02(水) 21:28:56

    ボン、ボン、ボンボンボンボン
    その砲口から射出された球体は、周囲のビル群へと降り注ぐ。

    「飛び込め、飛び込め、火の海に」

    着弾した物体からこぼれたのは、どろりとした液体。
    それは一瞬のうちに燃え上がり、ビルの周囲を炎一色に染め上げる。

    着地しようとした地面が一瞬にして地獄へと変わった警官たちは、抵抗もできず重力にひかれて落ちていく。
    着地しても、その周囲は炎の海。さらに、この炎は尋常のものではなかった。
    パワードスーツは火災現場であっても活動できるよう、耐火性能も一級品である。
    だがその装甲はまるで蝋細工のように融解していく。
    崩壊していくビル群と炎に、末期の悲鳴は押し流されていった。

  • 126暴王のパレード22/03/02(水) 21:31:33

    「…なんだこれは」

    一瞬のうちに壊滅したパワードスーツ部隊。
    「LOST」の文字が並ぶ画面を呆然と眺めていたアランは、トレーラーの一室に駆け込んだ。

    「ふむ、まぁこんなものか。お前たちはここで待っていろ」

    警官隊を一掃したヴェルドニクスは、悠々と歩いていく。
    今回の標的のビルは目と鼻の先。
    さっきのグレネードの炎もあちこちに残っている以上、構成員たちにあれを解体させるのは少々危険である。

  • 127暴王のパレード22/03/02(水) 21:34:24

    しばらく進んだ彼の前に、巨大な物体が落下してきた。
    それは、巨大な4本のアームに鋼鉄の鉄鞭を備えた、5メートルを優に超えるサイズのロボットであった。

    『貴様よくも俺のかわいい駒たちを!挽肉にしてくれる!』
    ロボットからはアラン・ベンジャミンの声が響き渡る。
    「組織」からの謝礼を使って調達した戦闘用ロボット。
    パワードスーツすら容易に破壊できるほどの戦力を、アランはこの男に使わざるをえなくなった。

  • 128暴王のパレード22/03/02(水) 21:35:59

    4本の鉄鞭を振り回すロボットの猛攻を、モーニングスターで弾き、受け流すヴェルドニクス。
    だが、その均衡はアランによって破られた。
    2本のアームが鉄鞭を手放し、ヴェルドニクスの腕を拘束する。

    『捕まえたぞ』

  • 129暴王のパレード22/03/02(水) 21:37:31

    動きを止められたヴェルドニクスの体を、今までの怒りを吐き出すように叩きのめすアラン。
    だが、すぐに異常に気付く。
    人間なら一撃で叩き潰され、ペーストのようになるほどの攻撃を何十発と受けても、ヴェルドニクスの肉体は出血こそすれ、完全に人の形を保っていた。

  • 130暴王のパレード22/03/02(水) 21:39:30

    「…どうした。マッサージはもう終わりか?」
    ゴキリと首をならし、こちらを眺めるヴェルドニクスに、アランは動揺を隠せなかった。
    「おまえ…一体どうなってる!なんの冗談だ!」

    「この後用事があってな。とっとと終わらせたいんだ。…お仕事ご苦労、『警部殿』」
    メシャリと音を立てて、ヴェルドニクスは自分の腕をつかんでいたロボットのアームを引きちぎる。

  • 131暴王のパレード22/03/02(水) 21:40:38

    『うぉぉおおおぉ!ふざけるなぁああ!』

    ロボットの胸部が展開し、内部から極太の熱線が放出される。
    熱線は地面を焼き、範囲内にあるすべてのものを灰へと変える。
    水道管を破壊したのかあたりには蒸気が充満して視界を遮るが、アランは目の前の邪魔者を排除できた喜びに震えていた。

    『フーッ…、ビビらせやがって。クズはクズらしく死んでろ!』

  • 132暴王のパレード22/03/02(水) 21:44:41

    「それはこっちのセリフだ。あんなもん食らったら火傷じゃすまんだろうが」

    聞こえた声が一瞬でアランを絶望の淵に叩き込んだ。
    振り向くと、モーニングスターを振りかぶったヴェルドニクスがそこにいる。

    「アウレリウス、ブースト」

    鉄塊の後方から青い炎が噴き出し、ヴェルドニクスの剛腕によってさらに加速された鉄塊が、一撃でロボットを叩き潰した。

  • 133暴王のパレード22/03/02(水) 21:50:19

    「…全く。ガンガン殴りやがって」

    さて、邪魔者は消えた。あとは目的のビルを叩き壊すだけ…と再度モーニングスターを振りかぶるヴェルドニクスに声がかけられた。

    「…おい、ヴェル。お前こんなとこで随分と暇そうだな」

  • 134暴王のパレード22/03/02(水) 21:52:56

    その声を聴き、ヴェルドニクスはびくりと震え、ゆっくりと振り返った。
    目の前にいたのは一人の少年だった。
    セーラーのシャツとズボンに身を包み、眼鏡をかけた少年。
    彼の顔貌は整っており、街を行けば誰もが目を奪われることだろう。
    だが、今彼の顔は渋面、しかめっ面、不機嫌というのがふさわしい剣呑なものであった。それでも十分に美しいのだが。

  • 135暴王のパレード22/03/02(水) 21:56:45

    「……ラーク。き、奇遇だな」
    「久しぶりじゃねぇんだよ…。てめぇ、朝連絡したろうが。こんなところで油売りやがって。ンなことしてる場合か!ええ!?」

    ヴェルドニクスに近づいてきた少年は、その脛を思い切り蹴り上げる。
    「痛い!」
    先ほど鉄塊でさんざん打ち据えられてもなんら痛痒を見せなかった男が、初めて悲鳴をあげた。

  • 136暴王のパレード22/03/02(水) 21:59:38

    「オメー、メシの準備しろって言ったよなぁ!部屋行ったらなんもねぇじゃねぇか!何やってんだ、アァ!?」
    「いや、これが終わったらすぐに買い物して作るって…。痛い!痛い!腿を蹴るな!」
    「塩一つまみがスプーン一杯になるテメーの図体で、まとも食えるもん作ろうとしたら何時間かかるかわからんだろうが!とっとと帰るぞ!オラ!バイク出せ!」

  • 137暴王のパレード22/03/02(水) 22:02:45

    ギャンギャンとまくしたてる少年に完全に委縮したヴェルドニクスは、武器をバイクに戻すと彼と一緒に乗り込み走りだす。
    途中でヴァイオレンスライオットの構成員たちとすれ違うと、ぽかんとする彼らに撤収の支持を出して走り去っていった。

    こうして今回のヴァイオレンスライオットのパレードは中断となった。
    この中断はここ1年ほどでたびたび見られ、助かったターゲットの会社に勤めるものたちは神の救いだと天を仰ぐのであった。

  • 138二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 22:06:05

    ラーク君の知り合いヤベェな 

  • 139暴王のパレード22/03/02(水) 22:08:48

    その日の夜、大型のミュータントや獣人たちが住むためのマンション「カオスベッド」の一室。
    騒騒しい一日が終わり、巨大なベッドで心地よい疲労感に包まれ瞼を重くしたラークは、傍らで横たわる大男に声をかける。
    「…なぁ。いつまでこれ続けるんだ?」

  • 140暴王のパレード22/03/02(水) 22:12:23

    男はしばらく間を置き、答えた。

    「……この街が『正しく組み上がるまで』」

    それがどれほど無謀な試みか、どれほど愚かな挑戦か、彼自身も知らないはずがない。

    「ハハ…。不器用だなぁ」

    こうして、シティの夜は更けていった。

  • 141暴王のパレード22/03/02(水) 22:13:18

    以上で、ヴァイオレンスライオットの組織SSはおしまいです。
    お付き合いいただき、ありがとうございました!

  • 142二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 22:14:21

    意外な組み合わせで驚き

  • 143二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 22:15:37

    最後の描写はそういう事かな?

  • 14422/03/02(水) 22:19:00

    ヴェルドニクスのキャラ設定やってる時からやってみたかったお話がやれて満足ですね。
    ゴリゴリの戦闘描写ってなかなか難しい。
    ヴェルドニクスと絡ませるならそれなりにいいポジションのキャラがいいなぁって思ってたので、ラーク君には助かりました。

  • 145二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 22:22:04

    読み応えあったわ ラーク君かなりの重要キャラでは

  • 146二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 22:23:35

    このレスは削除されています

  • 14722/03/02(水) 22:25:29

    今後のシティスレですが、ちょっと休止したいと思います。
    またやりたくなったらSSと組織作成をやるスレを立てますので、その時はよろしくおねがいします。
    ありがとうございました!

  • 148二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 22:29:13

    お疲れ様でした

  • 149二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 22:29:34

    乙乙

オススメ

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