- 1◆KVFDwqdrwoh824/10/03(木) 22:26:28
全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。
本当か?
オリキャラSS、以前立てた時一瞬で落ちてしまったので再チャレンジします。
こういうの初めてなんで不手際ないように頑張りますのでお付き合い頂ければと。
身長 120+dice1d30=18 (18) cm
髪色・瞳色 dice2d7=5 7 (12)
1.赤 2.青 3.黄 4.緑 5.紫 6.白 7.黒
色合い 1ほど淡く100ほど濃い
髪・瞳 dice2d100=20 22 (42)
髪の長さ 1でショート50で腰上くらい
dice1d50=3 (3)
武器 dice1d5=4 (4)
1.HG 2.AR 3.SR 4.SMG 5.SG
戦闘 dice1d100=34 (34) +25
知性 dice1d100=75 (75) +20
学力 dice1d100=92 (92) -40
学習 dice1d100=83 (83)
常識 dice1d100=89 (89) -40
運動 dice1d100=94 (94)
技術 dice1d100=96 (96)
倫理 dice1d100=10 (10)
慈悲 dice1d100=1 (1)
神秘 dice1d100=25 (25)
- 2◆KVFDwqdrwoh824/10/03(木) 22:34:09
アリウス分校所属・剣条ライカ
学年dice1d2=2 (2)
アリウスでのポジションは?
dice1d5=2 (2)
1.戦闘員(一般)
2.戦闘員(精鋭)
3.工作員
4.サポート
5.雑用
時系列的にはエデン条約の少し後位を想定。
アリウス生だからってことで学力系ステータスにはマイナス補正掛けたのにダイスが暴れている……
- 3二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 22:39:54
体型はロリ気味なんだな。運動能力と技術力で精鋭に配属された感じかな
- 4二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 22:40:08
技術と運動が高いが慈悲と倫理観がゆるキャラしてる
- 5◆KVFDwqdrwoh824/10/03(木) 22:42:58
よく訓練された戦闘員だったようです、でしょうね。
やっぱアリウスだと栄養不足になりがちかなと思って上限低めに、髪も手入れ大変そうなので長すぎないようにしたんですがかなりのショートになりましたね。
さて、トリニティでの騒動の後、ライカは今どこにいるでしょうか。
dice1d6=5 (5)
1.アビドス
2.トリニティ
3.ゲヘナ
4.ミレニアム
5.DU
6.ブラックマーケット
- 6二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 22:46:49
宇宙……か、なんか前にも見た気がせんでもない
けど宇宙はいいところだよ?見ていて落ち着くし、広いから探すものに困らない - 7◆KVFDwqdrwoh824/10/03(木) 22:52:24
現在はD.U.で身を潜めているようです。
よりにもよって連邦生徒会やヴァルキューレのお膝元とは、でもシャーレにはアクセスしやすそう。
やっぱりアリウスなので発育不良気味でいて欲しいなって。
バニタス教育の成果が出ちゃってますね、とはいえ補正を跳ねのける知性があるので学習次第では馴染める……かも。
実は前に似たようなの立てたんですけど深夜だったので一瞬で落ちてしまった、全ては虚しい。
今日は厄日だ。という表現があることを最近学んだ、今の私がそうだ。
もっとも客観的に見ればずっと厄日のような人生なのだろうが、それにしても今日は酷い。
「どこに行きやがったあのチビ!」
追手の怒号が聞こえる、追われる理由は十分あるが、それは治安側から追われる場合だ。どう見てもチンピラ集団といったなりの連中から狙われる理由には心当たりがない。
敵の数dice1d10=6 (6)
- 8二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 22:53:31
チンピラか傭兵か賞金稼ぎとかかな
- 9二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 22:54:53
- 10◆KVFDwqdrwoh824/10/03(木) 23:15:07
そう言ってもらえるとありがたい、今度は落とさないよう頑張ります。
混乱に乗じてトリニティから離れてみたものの、どうやらこの地区はキヴォトスの中枢に近いらしい。
あまり使われていない建物や無駄な路地裏が少ないのはやり辛い。以前からつけられている気配は感じていたが、身を隠し辛い地区に移動しても離れないということは相手が誰でもいい強盗や追剥ではないのだろう、標的は私か。
「おい、どこに行きやがったあのガキ!」
比較的入り組んでいる路地を探して、誘い込み、室外機を伝って手近な踊り場に身を隠す。
数は6、統制を取っているリーダーが居ないことから練度は低そうだが正面から戦うのは避けたいところだな。
獲物を見失ったことで追手はバラけることを選んだ。
2人ずつ3組に分かれて1組はそのまま奥へ、1組はT字を曲がった先へ、そして残る1組はその場で物陰や建物を探し始めた。あまり広い路地裏でもない、時間をかけてまた集まられても面倒だ、薬莢を一つ取り出すと通路を挟んで向こう側にせり出した非常階段に向けて放り投げた。
からん、と軽い金属音。聴き間違いかと疑うような幽かな音だ、確信を持たれては仲間を呼ばれてしまう。
音に気付いたらしい1人がおい、と相方に声を掛け上を見上げる、警戒しつつ一人は下に残って銃を構え、一人が非常階段を上る選択を取ってくれた。
- 11二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 23:15:26
戦い方は小柄を生かしたゲリラ戦とかだろうか。
- 12◆KVFDwqdrwoh824/10/03(木) 23:32:17
大きなマスクで顔を隠した生徒が銃を構えながら向かいの階段を上っていく、2階、3階と登るのを待って私は音を立てないよう、地上に向かったもう一人めがけて飛び降りた。
上方を警戒していたとはいえ、こちらに背を向けた状態ではすぐには気付けない。後ろから首に手を回し、締め付けた勢いのまま壁へと押し付ける。頸動脈を強く抑えられた相手は窒息を待たずに意識を落とした。
「こっち鍵が開いてるぞ!」
脱力した体を引きずりながら口元を軽く覆って声を掛ける、揃ってマスクをしているせいか多少の声色の違いに気付かず返事を寄越した、足早に階段を下りる相手に気付かれぬよう、階段の真下で身を屈める。
「おい、どこ……だ?」
階段を下りた相手の目に入るのは脱力した仲間の姿、そんな状態ではすぐ後ろに敵がいても気付けないものだ。
これで残りは4人、逃げても良いが目的は聞いておきたい、1人は残す。 - 13◆KVFDwqdrwoh824/10/04(金) 01:45:39
後は速攻だ。
分かれ道へと移動して素早く確認、短い道と長い道、迷わず長い方の道を選ぶ。
極力音を立てないように駆けるがそれにも限界はある、相手が物音に反応する素振りを見せたその瞬間に引き金を引き、走りながら1マガジン分の弾丸全てを叩き込む。
短い悲鳴を上げて1人が沈黙するが、もう1人は仕留めきれなかった。
「て、めぇ……!」
震える手で銃口が定まっていないが、わざわざ喰らうまでもない。先ほどの相手から奪っておいた銃を相手の目線やや上に放り投げる、反射的に上がった視線と銃口の死角を突くように体勢を落として滑り込み、鳩尾にストックを叩き込む。銃撃のダメージが大きかった相手は今度こそ昏倒した。
「やってくれたな、クソ」
だが最後の最後で相手の指はあらぬ方向に向かって引き金を引いていた。こちらの銃とは違い、無駄な飾りつけばかり多い癖に消音機も装備していないそれは小さくない音を立てていくつかの窓を砕いた。
この距離では残り二人も臨戦態勢で向かってくるだろうが、それを素直に待つ義理もない。
空になったマガジンを交換しながら引き返し、また分かれ道を目指す。脚比べだ。
進行方向にはおあつらえ向きに砕けた窓ガラスの破片が、いくつかまとめて蹴り飛ばすと丁度いい位置に破片が落ちた。先に辿り着いた曲がり角で呼吸を整える、分かれ道に落ちたガラスの反射で朧気ながら相手の位置を確認。どうやら何も考えずに2人まとまって来るようだ。
- 14二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 01:48:40
最近スペースキヴォトスって流行ってるのかな?
- 15二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 02:37:28
左から迫る足音でタイミングを計る。3、2、1。
接敵の瞬間に懐に飛び込む。しゃがんだ状態から突き上げるように体ごとぶつかり、右手の銃を顎下に押し当てて発砲。同時に左手でもう1人のポニーテールを掴み、手首のスナップを利かせて地面に叩き付ける勢いで素早く引く。
顎にフルオート射撃を喰らった1人は何が起こったか理解する前に昏倒し、頭ごと脳を揺さぶられた1人は軽い脳震盪を起こして膝をついた。
制圧完了。
戦力差を考えれば上々かもしれないが。身に迫った脅威を払っただけ、達成感も何もない、なんとも虚しいものだ。
「起きろ。質問だ、何故私を狙った」
視線の定まっていない相手の髪を掴み上げて膝立ちにさせ、気付けに頬を打って銃を突きつける。
痛みで思考がクリアになった相手は倒れた仲間を見て動揺したのか、それとも命惜しさか、早口でまくし立てた。
「……か、金だよ金! そのマークの生徒を捕まえりゃ金になるって依頼が出てるんだよ!!」
「アリウス狙いか」
元々が大規模なテロを起こした身の上だ、野放しにされるとは思っていなかったがそんな雑な依頼まで出回っているとは。明らかに秩序側ではなくその逆、アンダーグラウンドの人間の仕業だろう。アリウス分校の人間は少し前までは存在しないも同然、公的機関に一切のデータが存在しない人員となれば使いようは幾らでもあるだろうからな。
何とも皮肉なものだ、追いやられ、忘れらた我々をそんな形で必要とする人間が居るとは。
これが空虚か? 全てが虚しいとはこういうことか? 違うな、これはもっと質が悪い、ゼロ以下だ。 - 16二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 02:48:22
「もういいだろう、悪かったって、もうアンタらに手は出さないから見逃してくれよ!」
「その前にもう1つ質問だ。依頼主は誰だ」
「そんなの知らねぇ! ほんとに知らねえんだよ、匿名で出回ってて、胡散臭いとは思ったけどブラックマーケットなんてそんなのばっかだしよ!」
「疑わしいな。それだけでわざわざこんなところまで追いかけてきたのか?」
「違う! やめろって! 試しに受けてみたらマジで前金が振り込まれたんだよ! こういうのはすっぽかしたらヤバいってて相場が……」
「承知した。筋は通っているな」
聞き取りは十分だろう。手を放すと半狂乱だった相手は尻餅をついて呻き声を上げ、悪態を吐いた。
「じゃ、じゃあアタシらはこれで」
「待て」
聞き取りは十分だ、だがまだ足りない。
「確認だ。相手の正体が分からなくても引き渡しの時には接触があるだろう」
「や、勘弁してくれよ、もう関わりたくな……」
尻を抑えて後退る相手に詰める。後腐れは断っておくに限る。
このアリウスの校章が目印だというのなら外すなり隠せばいいのだろうが、あんな場所でも自分のアイデンティティを担っているらしい、何度か試そうとしたがどうにも抵抗があった。
執着か、あんな虚しい過去に何の執着があるのだろうな。
だからまあ、他に手があるうちはこの虚しさを抱えたままでいることにしよう。
「提案だ。私を捕まえて差し出せ」 - 17二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 02:52:17
- 18◆KVFDwqdrwoh824/10/04(金) 03:08:08
あらやだトリップ外れてた。
賞金目当てのチンピラ、ってな具合でしたね。
このくらい一般市民でも当たり前だから雑に戦闘がやりやすいといえばやりやすい、助かる。
しかしD.U.かぁ……連邦生徒会にシャーレと子ウサギ公園、ヴァルキューレがD.U.地区でしたっけ、動かしやすいネームドがいないわ、当番てことにすればどうとでもなるけれども。
生活安全局ってどこにあるんだろ。
- 19二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 08:01:31
生活安全局なら巡回してる可能性はあるな
- 20◆KVFDwqdrwoh824/10/04(金) 13:48:57
生活安全局ならよっぽど郊外じゃなきゃどこにいてもいいですからね、しかしあんまり剣呑な雰囲気になると巻き込みたくないと思ってしまう。お巡りさんなのに。
依頼を受けただけのこいつらが何も知らないのは事実だろう、だが私という人間がターゲットなら物理的に身柄を引き渡す必要がある。受け手もまた無関係の人間を金で動かしているだけかもしれないが、“品物”の届け先は知っている筈だ、最悪そこを張ればなにかしら手掛かりくらいは掴めるだろう。
中途半端に関わって逃げだしたら貴様らも報復を受ける可能性がある、と脅し賺して依頼主に任務成功の連絡を入れさせ、現れた運び屋を締め上げて目的地を聞き出す。
後は連絡用の端末を徴収して入れ替わり、運転手に扮して目的地まで向かう。そこからまた乗り物を変えるなら同じように運び屋を締め上げればよし、関係者が顔を出したのならそのまま攫う、もしも単独で対応できない程に武装していたらそのまま逃走すればいい。
そう、思っていたのだが。
周囲は警戒していたつもりだが目的地の廃倉庫に着く直前、爆炎に包まれて車両が横転した。入れ替わりがバレたか? ドアは使わずフロントガラスを叩き割って車外へ飛び出す、襲撃者が潜んでいるのは廃倉庫側だろうと当たりを付けそのまま横転した車体を盾に身を隠す。
「動くな」
やられたな、どうやらこちらの思惑は読まれていたようだ。黒煙の向こうから銃を構えた女が現れた。その動きだけで分かる、こいつは素人じゃないな、恐ろしく隙が無い。
長身長髪に口元を覆い隠す黒いマスク、視界を遮る煙が風に散ると共に油断なくこちらを見据える鋭い眼光が露になる――ちょっと待て。
「おい」
「喋るな、武器を捨てて伏せろ」
「待て、質問だ。お前、スクワッドか」
「……なに?」
2人は知り合い?
dice1d100=51 (51)
1でもとりあえず所属(スクワッド、アリウス生徒)が分かる、50以上ならお互い名前も知ってる、70以上でそこそこ交流があった、90以上で心の友。
- 21二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 14:24:27
軌跡シリーズ最新作も宇宙目指すとこから始まるし、最近宇宙ブーム来てるのかも
とりあえず応援してます! - 22二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 15:36:41
いいですよね、宇宙ブーム。現実では随分と下火になっちゃいましたが浪漫は変わらんものです。
応援ありがとうございます、励みになります。
「お前……ライカか!」
「そうだ。やはりサオリか。それで……この状況は」
武器を納めたサオリから差し伸べられた手を取って立ち上がる。
恐らくはアリウスの残党を狙ったであろう犯罪、その実行犯と入れ替わって追跡しようとした私とその実行犯の目的地で待ち伏せしていたサオリ、という状況だな、これは。
「現状説明だ。何者かに尾けられていたので無力化して尋問、アリウス残党狙いだと判明したので運び屋と入れ替わってここまで来た。そちらも似たようなものか?」
「そうだ。だが……いや、少し待ってくれ」
そう言ってサオリがどこかに向かって合図をすると、程なくして何人かの生徒と共に一人の大人が現れた。
「その子は?」
「彼女もアリウスの生徒だ、自力で追手を撃退して犯人を追う為に運転手と入れ替わっていた」
妙な大人だ、状況に戸惑いながらもこちらを見る目には敵意も害意もない。敵ではないと判断してもおかしくはない状況ではあるが、それにしても無防備が過ぎる。
“はじめまして、シャーレの先生です”
- 23二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 15:37:25
その言葉と共に差し伸べられた大人の手は、なんとも無防備で頼りなく見えた。
だが、まあ。サオリが無駄なことをするとも思わない、行動を共にしているのならそれなりの理由はあるのだろう。
「剣条ライカだ」
「よろしく、ライカ」
素直に握手に応じると、先生は微笑んだ。
が、そんなことをしている場合ではないだろう。
「挨拶は十分だろう。状況を説明してもらいたい」
「うーん、そのことなんだけど」
状況が状況だというのに気の抜けた態度を崩さない先生に若干の苛立ちを覚えて先を促すが、視線を下げて私の目を覗き込んだ先生は、求めたのとは違う言葉を返してよこした。
「酷く疲れた顔をしているよ、ちゃんと休めてる? 食事はどう?」
「なに?」
何を言っているんだこいつは、状況を分かっているのか?
「実はこの件ではシャーレも少し前から動いていてね、攫われた子の身柄を保護するために張っていたんだけど。元締め自体はもう目星がついているんだ。だからライカが無理する必要はないんだよ」
その割には随分と荒っぽい登場だったが、アリウスの生徒ならあの程度でどうこうなるほど軟ではないからと確実な方法を実行したのだろう、サオリらしいといえばそうだ。
「拒否する。戦力は多い方が確実だろう、現に私は1人で敵を排除してここにいる、お前よりも確実に――」
「ライカ」
甘いことを言い出した先生に反論するが、その言葉は途中で遮られる。
「大丈夫だ。先生と、私達を信じて欲しい」 - 24二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 15:41:16
このレスは削除されています
- 25◆KVFDwqdrwoh824/10/04(金) 15:41:54
- 26二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 16:02:41
時系列次第にはなりそうだがとりまサオリを信じて先生と一緒に作戦を頼みそうな子かね…
ホシノか? - 27二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 16:05:19
サオリを信じそうな子であまりアリウスにアンチよりじゃない子ならミカかね?ただこういうのは出るかな?って疑問はあるが先生から頼まれたなら協力しそうだからミカで
- 28二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 21:43:29
何故かピンと来たスズミ
- 29二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 21:45:03
ヒナかな
- 30二次元好きの匿名さん24/10/04(金) 21:46:04
とりまセナで
- 31◆KVFDwqdrwoh824/10/05(土) 00:11:39
戻ってみれば安価分キッチリ埋めていただいたようで、嬉しいものです
それでは早速運命のダイスロールをば
dice1d5=2 (2)
1.ホシノ
2.ミカ
3.スズミ
4.ヒナ
5.セナ
- 32二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 00:16:41
ミカか
場合によってライカ側に面識あるかも - 33◆KVFDwqdrwoh824/10/05(土) 00:49:31
なんだかんだアリウスと関わり深いですからねミカ、正直安価取る前は想定してなかったんですが中々いい目を引いた気分。
先生を、自分たちを信じろと、そう言ったサオリの目は真っすぐで、力強かった。
お互い面識はあるがそこまで深い交流があったわけではない、だが私の知る錠前サオリは誰にも心を許さなかった、常に気を張っていた。マダムにも、同じアリウスの同志たちにも、もし今のこれが彼女の素なのだとすれば、かつてそれを知っていたのはスクワッドのメンバーくらいだろう。
「信じろか。変わるものだな」
「変わった……か、まだ自分でもよくわからないが、案外そういうものなのかもな」
「まあいいだろう。確認だ。戦力的に私は不要、合っているか?」
「ああ、今は休むといい」
「了解した」
「うん、話はまとまったみたいだね」
話が一段落したのを見て取った先生が一歩前に踏み出して告げる、妙に生暖かい微笑を浮かべているのが気になるが。
「それじゃあ案内は……ミカにお願いしようかな」
「えっ私?」
私とサオリが既知の仲であったからか、特に話に割り込むでなく待機していた生徒の1人が先生の呼びかけに声をあげた。
「うん、お願いできる?」
「うーん。ま、先生のお願いならしかたないかな。それに悪の組織に殴り込みなーんて私には似合わないもんね☆」
そう言ってコロコロ表情を変えるのは身なりの良い生徒だ、荒事の後だろうに汚れ一つない純白の制服に身を包み、腰から生えた純白の翼には星々を模した飾りがつけられている。最後の台詞をウィンクしながらサオリに向けたのは少々気になるが、サオリもサオリでなにやら口籠って目を逸らしているし。
まあ些事だろう。
「それじゃ行こっか、よろしくねライカちゃん」
「よろしく頼む」
- 34◆KVFDwqdrwoh824/10/05(土) 02:13:56
「じゃーん、こちらがシャーレになります☆」
目の前にはビルが丸々一棟。道すがら説明は受けていたが、中々どうして大層な組織のようだ。
「もう、ライカちゃんたらノリ悪いんだから。それともお腹空いてる? インスタントならいっぱいあるから食べて良いって先生は言ってたけど」
「空腹は、そうだな。否定はしない」
適当に相槌を打ちながら続いてビルに足を踏み入れる。無駄話は好きじゃないんだが、こいつは勝手に話し続けるからと放っておいたらおいたで面倒な絡み方をしてくるタイプだ。
コンビニ、トレーニングルーム、カフェ、運動場、菜園、図書館、射撃場、オフィスに向かいながらあれこれと説明を受ける、実際にこの目で見るまで連邦捜査部がどのような施設なのか想像し辛かったが、思った以上に何でもありのようだ。
「ちょっと待て」
「どうしたの?」
そこまでは特に問題もなく入れたのだが、肝心のオフィスの前で足止めを喰らう羽目になった。そこにあるのは簡易ながらどう見てもセキュリティゲートの類い。こともなげに学生証を取り出して首を捻るミカに私は1つの事実を告げる。
「問題がある。私は学生証など持っていないぞ」
「え」
「……休むだけならオフィスでなくとも構わないだろう」
「それはそうなんだけど、案内してって言われちゃったしなー」
セキュリティのことを考えずに誘導したのだろうか、そもそもなんの身分証もなしにここまで入れていること自体、異常だと思うのだが。
「うーん……えいっ!」
「おい何を……」
急に腕を引っ張られ、密着した状態でゲートに突撃された、いくら何でもそんな方法でセキュリティを突破できるわけが……“ピコーン”
「おい」
「あはは、やったね☆」
「おい、いいのか、どうなってるんだここのセキュリティは」 - 35二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 03:34:48
先生またチヒロに説教されるよ⋯
- 36◆KVFDwqdrwoh824/10/05(土) 04:27:28
「そのおかげで入れたんだしいいんじゃない? ね、先生って優しいでしょ」
「優しさがどうこうの問題ではないだろう、悪意があったらどうするつもりなんだ」
「もう、そうカリカリしないの。やっぱりお腹空いてるんじゃない? あ、でもその前にシャワー浴びてきたらどうかな、確か乾燥機も置いてあるからその間に来てる物も洗っちゃえるよ」
このアマ。遠回しに臭うと言っているのか、衛生状態に十全を期せていないのは事実だが、勝手に密着して勝手に文句を言うのはどうなんだ。
「いいや。この際だ、先に食事を貰う。だがその前に」
いやに饒舌で、落ち着きなくあちこちに視線を向けていた相手の視線を正面から捉える。
「聖園ミカ、お前に言っておきたいことがある」
「あー。まあ、わかっちゃうよね……」
その瞬間、1人で騒いでいた聖園ミカの中で何かが凪いだ。手近な椅子を引き寄せて座ると、視線だけで黙って先を促す。かつて群雄割拠の時代であったトリニティを巨大な総合学園へと伸し上げた第一回公会議。その歴史を知りエデン条約の調印式に先駆けアリウスに接触してきたのが彼女だ。
彼女がいなければあの戦乱は起こらなかったか、或いは違う形で起こって違う形で収まっていたのかもしれない、だからいい機会だ。
「お前の行動に感謝を。聖園ミカ」 - 37◆KVFDwqdrwoh824/10/05(土) 04:29:36
「……………………え?」
感謝の言葉を伝えただけなのに、なにを言われたのか分からないといった顔で呆然としている、何故だ。
「質問だ。私は何かおかしなことを言ったか?」
「いや、だって感謝って……なんで?」
「……そんなに難しい話か? お前はアリウスの現状を知り、和解を求めて手を差し伸べたのだろう。聊か稚拙で傲慢であったのは事実だが、それは感謝しない理由にはならない」
「稚拙で傲……それは酷いよっ!」
「その結果があの様だろう」
「口悪っ! 薄々思ってたけど実は口悪いよねライカちゃん!」
椅子を跳ねのけて立ち上がると腕をぶんぶん振り回しながら抗議する、その姿はやはり稚拙の二文字が似合う。
「だって……私……」
急に萎れたと思ったら今度は声を震わせて俯いた。忙しい奴だ。
「仲良くしたかった、のは本当……でもいいように使われて、結局こうなっちゃったんだよ。あなた達が行き場を失くしたのも……さっきみたいに追い回されてるのも、私のせい。ほんと、馬鹿みたいだよね」
頑なにこちらへ向けようとしない双眸から一粒、また一粒と小さな雫が零れ落ちる。
「ごめんなさい……」
「何か勘違いしているようだが、お前の接触があろうがなかろうが、マダム――我々の生徒会長だった者は同じように動いていた筈だぞ。補足だが。今の生活もそう悪いものではない、何を勘違いしているのか知らないが。あの程度の連中につけ狙われるくらい、今までの生活に比べればマシな方だ」
「……っ」
「だから感謝こそすれ、特にお前を恨む理由は無い。それを勝手に落ち込んで泣きだすとは、本当に馬鹿に見えるぞ。自覚があるだけまだマシだが」
「……ふ……ふふ……ぐす……っふ」
「……私やっぱり、ライカちゃんのこと嫌いかなぁ!?」
そう叫んだきり、声を上げて泣きながら笑うという器用な状態に陥ったミカを宥める羽目になった。 - 38二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 04:39:50
このレスは削除されています
- 39◆KVFDwqdrwoh824/10/05(土) 04:42:45
シャーレのセキュリティはボロボロ、助けてチーちゃん。
まぁ先生のことだからどんな状況でも生徒がアクセスできるようにしてるんでしょうけど、ちょっとは懲りた方がいいと思うの。
というわけでシャーレにてミカとの一幕でした。
実際ミカがアリウスと和解しようとしてたのは本心だし、事情を知ってれば感謝寄りの感情を抱く生徒だって居ていいよね。ばにたすさえなんとかすれば、だけども。
ダイスでミカ引いた時にこういう流れにしたいなってのは浮かんだんですけど中々引っ張ってくのが難しかった……
好感度補正
dice2d100=54 12 (66)
1.ライカ→ミカ(最低保証30)
2.ミカ→ライカ(最低保証30)
- 40二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 09:11:52
まぁあんな絡みなら最低保証でもなるよなミカは…ライカは話す以上に好感触な感じだが
- 41二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 20:04:37
ライカ側の好感度思ったより高いんだな
- 42二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 21:41:38
これエデン条約編の内容知ってればやること全部裏目に出てメンタルボコボコなところに「あなたに感謝している人間もいる」って言われてるから感極まってもおかしくはないんだな…
ライカはそれ知らないから礼を言った口でバカに見えるとか言い出したが - 43二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 23:34:39
ほ
- 44◆KVFDwqdrwoh824/10/06(日) 02:28:27
「どういう状況なのかな、これは」
シャーレに戻って来た先生は、私たち二人の姿を目にすると少しの間目を閉じて眉間を抑え、再び目を開けても目の前の光景が変わらなかったことに嘆息し、問いかけた。
「あのね……違うの……先生……」
ミカは先生からなるべく姿を隠すように部屋の隅で縮こまっている。今にも逃げ出したそうだが流石に部屋から出る勇気はないようだ。
「報告する。ミカのせいだ」
「違うの! ……違わないけど!」
私は目下の課題であるアメリカンドッグと焼きおにぎり、そのどちらを取るかという難題を前にしながらも正確な状況報告を遂行した。
……やはりカレーパスタの後は炭水化物よりも動物性たんぱく質を優先すべきだな、私はアメリカンドッグを冷凍室から取り出すと指定のワット数と調理時間を入力して電子レンジを起動し、先生に向き直る。
「ダメ―ッ! ライカちゃんダメ! ちゃんと隠して!」
さっきからミカは何を必死にやっているんだろう、ちゃんと裸の上にブランケットは羽織っているんだから問題ないだろうに。ブランケットの下に下着も来ている分ミカの方が堂々とすべきではないのか。
「私がシャワーを浴びている間、ミカが洗濯に失敗した、途中で扉を開けたのが原因だ。私の服は再び洗濯中、ミカの服は吹き出した水に濡れて陰干し中だ」
「だって……ピーって鳴って止まったから終わったと思ったんだもん……そしたらいきなり水がバシャー! って」
「……うん、状況は大体わかったかな、多分留め金が壊れてロックがちゃんと掛かってなかったんだね」
さっきからずっと壁の方を向いて固まっている先生がようやく口を開いた、途端にミカが顔を真っ赤にして大人しくなる。
「確か体育館の備品に予備の体操服が合ったはずだから、持ってくるまで少し待っててね」 - 45◆KVFDwqdrwoh824/10/06(日) 02:38:36
ミカの動機が単純な善意だったのを知っているのが大きいですね
結果が伴わなくとも善意での行動を評価している形になります
時間をかけて準備をしている以上、特にミカからの接触が無くてもテロは結構されていたとは思うんですよね、それなのにやらかしばかりピックアップされるのも不憫なので、ちょっとした救いを入れられたらな、と
持ってる情報の差による悲しきすれ違いで帳消しになってしまった気もしますが
ちょっと週末は外に出てて触れなさそうなのでちょっとだけの投降になります
スマホが一生規制の巻き込み喰らってるので、安価は取りませんが保守がてらライカに食べさせて欲しい物があれば上げておいてもらえると反映できるかもしれません、ロールケーキでもチョコミントアイスでもプリンでもチェリョンカでもエビでもカイテンジャー魚肉ソーセージでも、くさやは流石に無理かもしれない
- 46二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 09:11:36
待機
- 47二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 17:40:51
保守
- 48二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:15:04
食べ物ねぇ、シンプルにピザとか?
種類はスレ主の好みで - 49二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 00:34:46
デザートも欲しいな
あんま甘いものとか食べたことなさそうだし最初は普通のから行こう、チョコミントをお食べ - 50二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 08:09:35
ラーメンはどうだろうか
- 51◆KVFDwqdrwoh824/10/07(月) 14:52:18
保守ありがとうございます、巻き添え規制が一生終わらないので助かります
いいですよねジャンクフード、不遇なこにはどんどん食べて欲しい
ミントはどうなるのだろう、アリウスは歯磨き粉とかなさそうだし変な偏見もないのかもしれない
結局、ひとしきり騒いだ後ミカは先生に送られて帰っていった。聞けば門限やら服装がどうやら、何やらいろいろと制限を受けているらしい。濡れた制服が乾くまで待つわけにもいかず、さりとて借り物の体操服のまま寮に戻るのも問題がある、なので先生が色々手を回すのに付き添いが必要だからと言っていた。
礼を言った時に情動が乱れていたのは、そういった背景が関係していたのかもしれない。であれば先の私の言葉は聊か言い過ぎだろう、帰る前に謝罪の言葉を掛けるべきかとも思ったのだが、先生が付きそうと聞いて妙に浮かれていたのでやめた、なんとなく調子に乗られそうな気がする。
しかし主に置いていかれて陰干しされているこの服。洗濯機に放り込むわけにもいかず、乾燥機で乾かすわけにもいかず、日に当てて乾かすわけにもいかずと。主に似てなんとも我がまま放題だ、値の張る品だろうと想像はつくが、良い衣類というのは耐久力と清掃、補修のしやすいものであるべきだろう、それなのになぜ……
さわさわ。
手触りが良いな。癖になりそうだ。
そう言えば先生への好感度とか今どうなのだろう
dice1d100=29 (29) 最低保証30
好意の種類は?
1なら信頼より、2ならキヴォトスでは!
dice1d2=2 (2)
- 52◆KVFDwqdrwoh824/10/07(月) 15:29:21
ほんのりの先生loveの気配が……読めなかった!
静かだ。
普段シャーレでは一定数の生徒が業務の手伝いを行っているらしいのだが。たまたま先の捕り物で全員が出動し、珍しくオフィスは無人となっている、他のフロアも探せば誰かしらいるかもしれないが。
白を基調とした無機質な空間、デスクの隅に鎮座する玩具類や妙に主張の強い一部のショーケースを除けば「普通」の事務室といった様相だ。こういう場に足を踏み入れるのは初めてな筈なのにいるべき人間が誰もいないという状況が妙にうすら寒く感じる。
留守番を頼む、とは言われたが要はシャーレで待機していろということだろう、この部屋に籠っている必要もなさそうだ、腹ごなしに少し歩き回ってみようか。
幸いセキュリティゲートは退室時になんの認証も求めなかった。ザルめ。
部屋を出ると、やはり白と青を基調とした廊下が伸びている、窓の外に目をやればそこにも空の青と雲の白。寂寥感、虚無感を煽る色だ。つめたく、さみしく、孤独を引き立たせる。
先ほどは気付きもしなかったのに1人になった途端に白い壁が、音のない空気が、触れることのできない青が悪意を持って私を取り囲む。
「……vanitas vanitatum et omnia vanitas……」
黙れ。マダムはもういない、いまさらそんな言葉にはなんの意味もない。
では何になら意味がある。
足を早める。一歩一歩、靴底が床に触れる度に音が鳴るように意識して歩く。カツカツ、カツカツ、カツカツ、何も紛れやしない、単調なリズムに嫌気が差す、意味もなく壁をノックする、カツカツコン、カツカツカツコン、カツコンコンカン、コンカツコンコン、カツコンコンカツ、コンコンコンコンコンコン。
ガン。
なんの意味がある。
「vanitas vanitatum et omnia vanitas……」
やめろ、黙れ。もうそんな言葉を口にする必要はない。 - 53二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 17:12:12
虚しい……検索結果0件
虚しさ……検索結果2件
虚無……検索結果4件
図書館の検索用端末にいくつかの単語を打ち込んでは表示結果を見てやり直す。そんなに広い施設ではない、シャーレでの業務に関わる資料や生徒用の参考書に娯楽本が殆どだ。
『虚しさを感じた時に聞きたい曲10選』今は役に立たんな。
『虚無感とのつきあいかた』軽くめくってみたが綺麗ごとばかりで参考にならん、知りたいのは消し方、殺し方だ。
『虚無式ごはん ―お金をかけずに腹を満たせ―』後で読む。
『人は何故 意識の虚無を嫌うのか』ダメだ、難解すぎて何一つ理解できん。
『虚無への旅』最後に手に取ったこれは、小説か……
本棚に背を預け、ずるずると座り込む。無駄足、無意味、無価値。
こんなことでこの身に刻まれ続けたモノがどうにかできるとでも思っていたのか私は。
……違うな、ただ少しの間気を紛らわせられればそれでよかったんだ。
手に持ったままの書籍に目をやる、他の物と違い古めかしたハードカバーのそれは、タイトルの他には抽象的なイラストが描かれているだけで、そこから内容は読み取れない。
座り込んだままページを開く、登場人物の紹介が目に入った。
エンジニア、政治家、教師、警察管、詐欺師、運転手、冒険家、医者、それらの兄弟、妻、子、飼い犬。一行ずつの短い紹介文。 - 54◆KVFDwqdrwoh824/10/07(月) 17:12:39
『本質的にだよ、未踏の地を人が求めるのはそこに資源があるからだ。かつてはそう、食料などが主だったろう、それが今では石油や希少金属に置き換わっただけだ』『そうかな、そんなものはいいわけにすぎないよ。やはりね、人は浪漫を捨てきれないのだとぼくは思う。金にならないからって、冒険をやめる理由にはならないだろう?』『そうかい、それじゃなんだって君はやっきになってスポンサーにアピールしてるんだい、スポンサーが君に金を払う理由もだ、なんと言ったって金だろう』『それは目的じゃなくて手段だよ、金がなくっちゃあ地下鉄の切符も買えないだろう』『リターンは』『君をおつかいに行かせたとして、毎回手ぶらで帰ってくるようじゃ“次”の切符を君に買い与える理由はなくなるんじゃないのか』『その理由が浪漫さ、彼らはなにか新しい発見の貢献者になりたいんだ』『そもそも、開拓というのはDNAに刻まれた本能だ。競い争う者の無い餌場、水場、天敵の居ない新天地。それを求めて生物は生息域を広げて発展してきた。本能や衝動といったものはそれらに紐づけられた種としての積み重ねだよ、どちらも間違ってはいない』『だったらなおさら』『そうだね、宇宙開発なんてものは無駄だろう。技術力の誇示や制空権の確保という観点で見れば別だがね。考えても見たまえ、必死になって地球の重力を振り切ってそこに何がある? 資源もない、土地もない、空っぽで、空虚だ、仮に他天体まで辿り着けたとして、ひとかけらの貴金属を持ち帰るのにどれだけ金が掛かる? 金のつるはしを使い潰して石炭を掘り起こすようなものだよ』
- 55二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 18:39:52
- 56二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 22:46:42
- 57二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 08:16:46
- 58◆KVFDwqdrwoh824/10/08(火) 08:44:03
ん、あにまんはルール無用
発売前はちょっと気になってたけどPS5が手に入らなかったから見送っちゃったんですよねぇ……
ぺらり、ぺらりと1枚1枚頁をめくる。
そこに書かれていたのは宇宙開発と、それに関わる人々の物語だった。一般常識に欠ける自分の目から見てもなお見慣れない国名や歴史、完全な創作か、或いは外の世界から持ち込まれた物なのかもしれない。先生の来歴を考えればかつては先生自身が好んだ物語なのかもしれない。
選んだのはたまたまだ、検索用端末に虚無と入力したらタイトルが引っかかった、その中で最後に棚から抜き出した、ただそれだけ。例えそれが読んだ者に違わず薫陶を授けるような名著であったとしても、最高峰の心理学者による洗脳染みた自己啓発本であったとしても、半生に渡る教育によって歪んだ価値観に大きな変化は起きないだろうという確信があった。
それでもこの孤独を紛らわせられればと手に取っただけのこの本には、目を惹き付ける何かがあった。
小説なんて読んだ経験はないがそれでもわかる、無駄に多い登場人物に冗長な言い回し、ただただ結論の出ない話し合いをするだけで一向に進まないストーリー。もしもこの本が一般的に見て出来の良い部類に入るというのなら、人類に小説という文化は不要だと言っていい。
だが登場人物の多くが空に手を伸ばしていた。空の上のさらに上、星間に横たわる絶対零度の領域に。
知らないだけだ。と吐き捨てたかった。ただ何もない場所を目指すなど、恵まれた者の道楽でしかないと切り捨てたかった。虚無は何も与えてくれないと、人の意思を内側から貪り、個を削ぎ、欠けた心に憎悪を焚べ、厭忌の炎を絶やさぬための孔を開けるための道具でしかなかったはずだと。
それなのに誰もが虚無に手を伸ばすのだ。行ってどうなるのか、誰も具体的な言葉で語らない。損益ばかり気にしていた筈の登場人物もいつの間にか星を見ていた。
わからない。そこに何があるのか、なんの意味があるのか。
もし自分もそれに触れられれば、この身の内で澱のように積もった虚無感にも変化が現れるのだろうか。
もっと知りたい。先が知りたい。彼らの答えを知りたい。
- 59二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 19:54:15
保守
- 60二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 22:59:03
痛みを乗り越えて宇宙への道を切り開こうとするあの曲を思い出す感じだな何か…
- 61二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 23:03:04
ライカはこの本から目指すようになったのか
- 62◆KVFDwqdrwoh824/10/09(水) 04:40:06
保守ありがとうございます、書き込めないまま時間が迫るとヒヤヒヤする
なんかそんな曲ありましたっけ、どうにも歌は寡聞にして知らぬものが多いのです
大きな目標もきっかけは案外小さなものだったりしますからね、ともあれようやくスレタイに触れられた
思ったより長くかかったなあ
始めは事あるごとにケチを付けながら頁をめくっていた筈が、いつしか私は物語の世界に引き込まれていた。何かに没頭する、というのはいつ以来の経験だろうか。
自分がそんな心地好さに浸っていたことを知ったのは、皮肉にもそれが打ち破られるのと同時だった。
誰かが来る。極々僅かなものだが、開けっぱなしだった図書館の扉の隙間からエレベーターの到着を継げるチャイムと、そこからこのフロアに通じる自動ドアが開く音がした。
反射的に本を置いて膝立ちになり、銃を手に取ったところで冷静になる……何をやっているんだ私は、シャーレに生徒が来るのは珍しいことではないと聞いたばかりなのに。
とはいえだ、余りにもザルが過ぎるセキュリティを目にした直後だ、悪意のある輩でないとも限らないし、留守を任された以上は顔くらいは出すのが筋だろう。
反射的に床に置いたハードカバーの書籍に視線を落とす……シャーレから持ち出さなければ問題ないだろう。それを懐に収めて私は立ち上がった。
対象は先生のオフィスへ向かって歩いている。鼻歌を歌いながら、リズムを付けて弾むようにやや速足で。オフィス側から姿が見えるかどうかという距離までくると、窓ガラスの方を向いてなにやら前髪を弄っている。
見るからに危険性は無さそうだ。先行した相手に追いつくようこちらもペースを上げる。
「質問だ。先生に用事か?」
「ひゃあっ!」
ガラスに映った自分の顔を注視していた相手は、頭一つよりも更に低い位置に映った影には気付かなかったらしい、意識の外からのアクションに素っ頓狂な声を上げて飛び上がる。
「驚かせたか? 不意に声を掛けるべきではなかったな、謝罪する」
「えっと、うん、大丈夫。こっちこそごめんね、変な声出しちゃって」
そう言い終わると胸を押さえて深呼吸を始めた、白いセーラー服の胸元で青みがかった緑のリボンが揺れている。
- 63二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 08:19:13
来たのは、多分アイリかな…?
- 64二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 17:54:43
じ
- 65二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 17:55:21
ほ
- 66二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 22:58:02
う
- 67二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 07:57:43
アイリ?
- 68二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 18:38:00
ほ
- 69二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 23:49:20
し
- 70◆KVFDwqdrwoh824/10/11(金) 03:48:30
「えっと、あなたが今日の当番の子?」
「否だ。ここに来たのは成り行きだが、先ほど先生が急用で出てしまったためここで帰りを待っている、なので当番ではなく留守番になるな」
留守番。その言葉を聞いた生徒は数瞬置いて肩を落とすと「そっかぁ……」と小さく呟いた。やはり目的は先生だったか。
「うぅ、入れ違いになっちゃったなんて」
「すぐには戻らないだろうし、何か言伝があれば預かるが」
「ええと。伝言とかそういう用事があるわけじゃなかったんだけど」
そう言い淀むと手に下げた紙袋に視線を落とす。
「うーん、今から引き返しても溶けちゃいそうだし……」
名も知れぬ来訪者は百面相しながらうんうん唸っていたが、やがて意を決したように私の目を覗き込むと、こう問いかけた。
「あの……えっと、あなた」
「剣条ライカだ」
「あ、ごめんねライカちゃん。私は栗村アイリっていいます」
知らない人間と話すのが苦手なのか、それと口に出し辛い要求でもあるのか。僅かに揺れるその瞳もまた、少し青みがかった綺麗な翠色をしていた。
「それで、ライカちゃん、アイスは好き……かな?」 - 71◆KVFDwqdrwoh824/10/11(金) 04:33:17
「その回答は保留だな。食べたことがないから判断できん」
アイス。甘味。贅沢品だ。アリウスではそんなものを口にする機会などなかった。こちらに流れて来てからは日雇いの仕事や報酬の出る荒事で多少の稼ぎもあったが、そういった品は総じて生活必需品や食料品と比べると割高だ、結局手を出すことは無かった。
もちろんそんなことを口にはしないが。自分達の境遇が異質だという自覚くらいはある、わざわざ自らの異常性を吹聴するなど、デメリットしかない。
だから余計な揉め事を避けるために無難に事実だけを伝えた……
「……え」
はずだった、のだが。
「ええええぇぇ~~~~っ!?」
どちらかといえば大人しい・控え目といった印象だったアイリが一転、凄まじい声を上げると同時に鬼気迫る表情で迫って来た。
「ライカちゃん!」
「な、なに」
「それはダメだよ!」
「ダメなの?」
「ダメなの!」
ダメなのか。確かに日常生活を送る上で一切の甘味を取らないというのも逆に不自然、かもしれないが。
しかしここまで豹変するほどの異常事態なのか? 本当に?
混乱するこちらを余所になんだかアイリのテンションがどんどん上がり続けている気がする、やがて腕から下げていた紙袋を高々と掲げると、こう宣言した。
「今日がライカちゃんのスイーツデビュー、だよ!」 - 72◆KVFDwqdrwoh824/10/11(金) 04:37:16
- 73二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 04:43:05
- 74二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 08:17:30
ライカにとってはアイスなんて幻に近かっただろうからたっぷり甘みを食べさせてあげたいな
- 75二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 18:01:04
やはり味はチョコミントかね
- 76二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 22:21:20
ほ
- 77二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 08:44:49
アイスにどんな反応するかな
- 78二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 18:25:42
味わってくれ…
- 79二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 22:16:44
ほ
- 80◆KVFDwqdrwoh824/10/13(日) 02:42:22
私はスイーツデビューすることになった。
スイーツデビューってなんだ? 初めて甘味を食べるだけでそんな大袈裟な言い回しをするものなのだろうか。
自分で言うのもなんだが、私はアリウス分校時代にはそれなりに優秀な成績を収めていた。なので決起に先駆けてトリニティで活動する場合に備えてある程度はキヴォトスでの常識や振る舞いを学んだ……つもりだったのだが、こういうその場限りの適当なノリという奴が一番難しい、普通の学生という奴は皆こういう突発的な状況に対処できるのだろうか。
「……」
「……」
沈黙の中。高々と掲げられたアイリの右手、そこに握られた紙袋の振れ幅が次第に短くなり、止まった。
「すまない。なにか返した方がよかったか」
「……うん、いいんだよ……」
些事だ。お互い不都合なことは忘れるに限る。
先生のオフィス、そこに併設された休憩スペースには自由に使っていいテーブルや食器類が一通り揃っているらしい。なんだか行ったり来たりしてばかりだと考えながら二人で歩調を合わせる。
ちらと横目で外を眺める。
抜けるよな青空、陽光を浴びて輝く雲、ほんの少し前に見た時と何も変わらない。
変わらないが、そこにあるのはもはや冷たく漠々としただけの空間ではなかった。
「そうだアイリ、少し頼みがある」
視線を前に戻すとセキュリティゲートが待ち構えている。
事情を話すとアイリは少し戸惑いを見せた後、楽しそうに言った。
「なんだか、ちょっと悪いことをしてるみたいで新鮮な気分だな~って」 - 81二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 02:46:36
おっなんかアイリと何かやるっぽいな
いたずらかな? - 82◆KVFDwqdrwoh824/10/13(日) 04:29:20
2人で寄り添いながら1枚の生徒手帳を入り口のゲートにかざす。ピコーンとマヌケな音を立ててゲートが開き、生徒1名と不法侵入者1名を招き入れる。本当にこいつは無能だな、なんのためのセキュリティだ。
「えへへへ。悪いことやっちゃったなぁ」
「問題ない。私は今日2回目だ」
そんな他愛のない話をしながら書類が山と積まれたデスクの脇を通って休憩室の扉を開く。
心なしか先ほど訪れた時よりも山が高くなっているような気がする……気のせいだろうか。
「確認するが。本当に貰ってしまっていいのか? 生憎私には返せるようなものは何もないんだが」
「そんなの気にしなくていいよライカちゃん。元々先生への差し入れのつもりだったから1人じゃ食べきれないし、それにアイスを一度も食べたこと無いなんて。放課後スイーツ部としては見逃せないからね」
「……放課後スイーツ部?」
「うん。私と友達でやってるの。部活といっても放課後にスイーツを食べるだけなんだけどね」
「そんな部活もあるのか……世界は広いな」
「確かにあんまり部活、って感じじゃないけど……でも、楽しいよ」
部活というのはスポーツや文化的活動を主として行う活動……だったか、どうやら思った以上に何でもありだったようだ。妙に手慣れた様子で食器を並べ、電気ケトルで湯を沸かす姿を眺めながら部活動というものに考えを巡らせる、一般的なスポーツや無難な活動はなんとなくイメージできるが、放課後に甘味を喫するだけの集団がなぜ部活動と認められるのだろうか。うん、分からん。
「飲み物は紅茶でいい?」
「任せる」
良し悪しは分からんが、これでも放浪時代にはボトル飲料の紅茶くらいなら口にしたことはある。食事の共に口にするなら水が一番好ましいとは今でも思っているが、どうもこの手の嗜好品にはそれぞれに相性の良い飲み物があるそうだ、そこはプロに任せるとしよう。
「それじゃあ、いよいよだね」
「ああ。しかし……だいぶ数が多いな」
「えへへ、いざ選ぶとなるとどうしても目移りしちゃって」
「こう多いと迷うな……」
白。赤。桃。茶。黄。緑。
なんとも色鮮やかな並びだ、どれも甘いのは確かだろうが、とても見た目からは味が想像できない。 - 83◆KVFDwqdrwoh824/10/13(日) 05:24:05
「うーん。やっぱり最初に食べるなら定番のバニラ、かな」
そう言ってアイリが指したのは僅かに黄色がかった白いアイスだった。ことアイスにかけては何歩も先を行く先輩からのアドバイスだ、素直にしたがうとしよう。
スプーンを手に取り、その白い塊にゆっくりと押し当てる。見た目の印象よりも硬い手応えが指先に伝わったが、力を籠めるとなんなく沈み込んでいく。そうしてスプーンの上に一口分のバニラアイスが掬い取られた。
「……いただきます」
想像の付かないモノを口に入れる緊張は僅かにあるが、やはり甘味への誘惑というのは誰にでもあるらしい。誘われるようにそれを含んだ。
「――――――!?」
口に入れた瞬間甘さが広がるものと想像していたが、先に来たのは触れた箇所に突き刺さる痛みにも似た冷たさだった。こんなものかと受け入れようとしたが、口内から熱を奪ったアイスが解けて広がった瞬間、それは弾けた。
――甘い。甘いという刺激は知っていたが、想像を絶する衝撃に思考が止まる。
舌先に触れどろりと溶けたバニラが舌と口腔の隙間を通って口内に行き渡る、舌の両脇を通って重力に従い舌裏を撫ぜて咽頭へ、その道すがら強烈な感覚が味覚を刺激し続け、僅かに残った冷たさが喉の奥へと消えていく。冷えた口内が熱を取り戻すと、残ったバニラの香りが体の内側から鼻腔を擽る。
その全てが未知の感覚だった、口を、舌を動かす度に脊髄が震えるような快感が舌から流れ込んでくる。これが幸福……砂糖は人を堕落させるという話を聞いたことがあるが、いま私はその理由を理解した……これは、危険だ。
「……ちゃん! ライカちゃん!」
「アイリ」
ほんのひとさじ口に含んだだけでしばし動きを止めていた私を心配して呼びかけるアイリの声が私を現実に引き戻した、スプーンを口から引き抜くと私は率直な感想を口にした。
「甘い物って、甘いんだな……」 - 84◆KVFDwqdrwoh824/10/13(日) 05:32:48
ストリートチルドレンか少年兵かって境遇の生徒にいきなりアイスを食べさせたらどうなるんでしょうか、私は宇宙アリウスになると思います、もっとお食べ
仕事終わりにだらだらしながら書いてたら毎度気付けばこんな時間に、寝ねば
辛い境遇の子はたっぷり甘やかしたい、まずは基本のジャブですがやはり衝撃は大きいだろうなと
そして栗村アイリがいる以上チョコミントを避けることはできない、これは絶対です
保守ありがとうございます、延命を望まれるのは嬉しいものね
1人分のパスを使って2人でセキュリティゲートを通る、普通の生徒にとってはちょっとした悪いことだと思うんですよ
戦車を盗んで治安維持部隊の小隊クラスを蹴散らすのは普通じゃない
- 85二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 15:53:28
アイスたっぷり食べてほしい
クッキーアンドクリームなんて極楽に感じるだろうな - 86二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 21:53:01
保守
- 87二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:09:11
し
- 88二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:22:21
この子に31のポッピングシャワー食べさせたい
- 89二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 08:30:45
ほ
- 90二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 17:06:00
し
- 91二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 23:32:52
の
- 92◆KVFDwqdrwoh824/10/15(火) 03:57:40
……何を口走っているんだ私は。
確かに言葉を失う程に甘美な体験ではあったが、もう少し言い様があっただろう。見たことか、あまりにもな感想にアイリも微妙な表情で固まってるじゃないか。
「その……なんだ。本当に初めてで、うまく言葉が出てこないんだ」
そう断りを入れてもうひとさじ掬って口に含む。唇を合わせたままスプーンを抜き取りアイスだけを口内に残す。一口目はあまりの衝撃に呆然と溶けるままに任せてしまったが、心構えの出来ている二口目はそうはいかない、今度こそ意識して味わう。
強すぎる刺激に反応して湧きだす唾液に流されてしまわないよう、舌の上から零れないように上顎へと押し付けて小さな塊を圧し潰す。逃げるように、口内に残された僅かな隙間を求めて広がったバニラが舌を包むように満遍なく刺激する。
どうやらアイスというのは口に入れ瞬間よりも、口腔内の熱を奪って溶ける瞬間が最も強く甘みを発するらしい。三口、四口と食べ勧める内に私はアイスを食べるコツを掴んだ。
しかし、悲劇は唐突に訪れる。
「もう、ない……」
一つ一つは小さなカップ入りにすぎない、いくら一度に掬う量が少ないとはいえ、知らず知らず上がったペースで口に運び続ければなくなるのも早いのは道理だ。今日一番虚しい。
いつの間にか閉じていた瞼を開くと、頬杖を突いた両手の上に乗ったアイリの笑顔が花のように咲いていた。
「おいしい」
視線を交わして一言、告げる。それ以上の言葉は不要だった。
本当に、おいしかった。 - 93二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 04:25:47
ライカ、アイスを味わえたんだな良かった、そしてアイリも微笑ましい
そして見てるこっちも食べたくなってくるな - 94◆KVFDwqdrwoh824/10/15(火) 05:37:20
それから楽しい時間が過ぎた。
チョコレート。ストロベリー。マンゴー。オレンジ。色とりどりのアイスを二人でつつきながら簡単な解説を受ける。時にバニラとは毛色の違う甘味を、時に果物特有の酸味の混じった濃厚な香りを。
ときおり紅茶で一息つき、冷え切った舌と口内に残る甘ったるさを洗い流しては次のフレーバーをつついて行く。あまりにも私が物を知らないのでアイリは目を白黒させていたが。
アリウスの状況を知る人間ならば推して知るべしだが、キヴォトスで普通に暮らしていては、やはり想像もつかないのだろう。
チョコレートも、果物も。私は本物の味や香りを知る前に今日、このアイスのフレーバーでそれらを知った……いや、これだけ多様な種類があるのならそういう経験自体は普通に暮らしていても無い話ではないのか? 全部が全部となると珍しいだろうが。
いや、せっかく楽しい時間を過ごしているんだ。くだらないことを考えるのはよそう、些事だ。
「ライカちゃん、本当にどれも食べたことないんだ」
何度目かの紅茶で喉を潤したアイリがぽつりとそう溢す。そしてそれがあまりいい印象を与えるものではないと気付いたのか、ハッとした様子で両手を振って弁明する。
「あっ、ごめんね! 別に変な意味じゃないっていうか、なんだか珍しいっていうか」
「それだと意味が同じじゃないか?」
「あっ」
しまったという表情で口元を抑えるアイリに気にしてないと告げる。
「そうだな、珍しいといえば確かに、珍しいところだった」
「果物も甘い物も無いなんてびっくりだよ。凄い厳しいところだった、とか?」
「ああ、大体そんな感じだ」
「そっかあ、だから最初会った時はなんだか堅苦しい口調だったんだね、あの時は警備の人かと思っちゃった」
関心したように何度も頷きながら言われたので、適当に同意の姿勢を見せる。下手に訂正することも無いだろう、無難に勘違いしてくれるならその方が接しやすい。しかし今の言葉が少し引っかかった。
「ん……最初は?」
「そうだよ? さっきまでは堅苦しい感じだったけど、今は普通に話してくれてるもんね」
やっぱり甘い物のおかげかな? そう笑うアイリの言葉を受けて少し前までの自分の言動を思い起こす。
……普通か。そうか、私は普通に談笑していたのか。 - 95◆KVFDwqdrwoh824/10/15(火) 05:50:35
- 96二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 10:57:18
- 97二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 18:26:20
ロールケーキとかどうすかね?
- 98二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 22:58:57
保守
- 99二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 06:29:19
- 100二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 08:34:15
- 101二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 18:41:25
保守
- 102二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:01:01
…ポンデリングとかは?
- 103二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 08:08:53
ドーナツかいいな
- 104二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 17:27:28
シンプルに果物とか
- 105二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 23:01:16
遅くても体調不良なら無理だけはしないでください……
- 106◆KVFDwqdrwoh824/10/17(木) 23:04:05
ぎこちないやり取りなどと気にしていたのは私だけだったのかもしれない。或いは“普通”というのは意外とこんなものなのか。
初めて見るもの、聞くもの、触れるもの、味わうもの、そのどれもが私を傷つけない。
唐突に訪れた、今まで夢に見ることすらできなかった穏やかな時間。その全てがかけがえのない物のはずなのに、いざ交わした言葉の端々を思い返そうとするとどうにもとりとめのない会話の数々。
「うん、だんだん甘さに慣れて違いが分かるようになってきた」
新しく淹れてもらった紅茶でまた一息。
テーブルの上には空になった容器が少なくない数並んでいた。ひとつひとつ手に取ってパッケージを眺めると、口にした時の感動が蘇る。
バニラ、初めて口にしたスイーツ。甘さに慣れていない舌が許容値を越えてしまい、甘い以外の感想が見つからなかったのは勿体ないな、機会があれば今度はちゃんと味わいたい。
チョコ、バニラに並んで定番のフレーバーらしい。こちらもまだ慣れていなかったので甘さだけが印象に残ってしまっているが、バニラよりも濃いというか、舌の奥の方にまで届く甘さだった気がする。
ストロベリー、オレンジ、マンゴー、その名の通り果物のアイス。甘さの中に酸っぱさが混ざっているのは同じだが、一口に果物と言っても随分と違いがあった、ストロベリーは少し軽い甘さだがマンゴーはドロッとした甘さというか、口の中に濃厚な香りが広がる感じがした、逆にオレンジは甘さよりも酸っぱさが際立っていてすっきりした味わいだった。
クッキー&クリーム、バニラの中にチョコクッキーが入っている贅沢な代物だった。基本はバニラと同じらしくシンプルなのだが、口に入れると冷たさの中でクッキーの温かさがはっきりわかる、同じチョコでもチョコアイスに比べると甘さ以外の風味のような物が感じられて嬉しかった。
ポッピングシャワー、白と緑の混ざった中にカラフルな粒が埋め込まれていて綺麗だった。アイリが言うには炭酸みたいに弾ける飴らしい。炭酸は苦手なのだがそんなに強くはないらしいので食べてみた、確かに所々ぱちぱちするだけでそんなに痛くなかった。味は……なんだろう、ホワイトチョコレートとミントらしい、この頃には結構甘さにも慣れていたはずなのだが、それ以上に色々な味や刺激が混ざって口の中が賑やかだった、こういう楽しみ方もあるんだな。 - 107◆KVFDwqdrwoh824/10/17(木) 23:04:33
「どうかな、気に入ったフレーバーはある?」
「そうだな……難しいところだが……」
dice1d5=4 (4)
1.バニラ
2.チョコ
3.フルーツ
4.クッキー&クリーム
5.ポッピングシャワー
- 108二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 23:07:01
クッキー&クリームか気に入ってもらえてよかった
美味しいよね - 109◆KVFDwqdrwoh824/10/18(金) 01:10:40
「クッキー&クリームだろうか。あのアイス以外の食感が一緒に味わえる感じがいい、一粒で二度美味しいという奴だ」
「ふふふ、この短い時間で中々わかってきたみたいだね」
「個別で指導を受けたからな、この程度は当然だ」
妙に得意げな顔でわざとらしく笑うアイリにつられてつい口元が綻ぶ。
「うーん。でもそうか、いろんな味や食感が味わえるのが好きなら……うん!」
そう言ってカラフルなロゴの描かれている紙箱を開く、まだ残っていたドライアイスの煙と共に現れたのは、緑をベースにチョコチップが埋め込まれたようなアイスだった。
「とっておきだけど……今のライカちゃんにならきっとこの良さがわかるはず!」
「チョコミント、さっきのとは違ってミントがメインになってるのか」
「そう、チョコミントはどんなものにも合う至高のフレーバー。それがアイスと一つになってるんだからそれはもう……はぁ」
「そ、そうか……」
チョコミントを持ったままうっとりした表情でどこか遠くを見つめている……食べて大丈夫なのかこれは?
「……はっ」
「……」
「それで。これは私の一押しなんだけど、結構好き嫌いが分かれる味なんだよね、だから進めるのはちょっと迷ってたんだけど」
こほん。と小さく咳払いすると何事も無かったかのように話を進めた。
そう語る顔は今までの無邪気なはしゃぎようから変わって、どこか憂いを帯びたものになっていた。ほんの少し前までの私だったら、食べ物の好み程度で一喜一憂するなどくだらないと切り捨てていただろう。
だが、この僅かな触れ合いだけでも栗村アイリという人間がどれだけこういう時間を大切にしているかが伝わってきた。私自身、釣られてこの幸福に浸っていたいと思ってしまう程に。
「やっぱり友達とは好きな物を共有したいな、って」 - 110二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 01:16:07
アイリは優しくて友達思いだな
チョコミントどんな反応をするか - 111◆KVFDwqdrwoh824/10/18(金) 01:35:49
友達。
その言葉を受けて表情が固まらなかったのは、どこかで自分でもそう思っていたからだろうか。
その言葉を受けて自然に話を続けられたのは、どこかで自分もそう言いたかったからだろうか。
その言葉を受けて涙をこぼさずに済んだのは、どこかで自分がそれを望んでいたからだろうか。
友達と好きな物を共有する、そんな当たり前を崩さないように、私は努めて平静を装って差し出されたそれを受け取る。
「見た目はそんなに変じゃないと思うが、そんなに気にする程なのか?」
「うーんと、そのね。人によっては……歯磨き粉の味なんて酷いことを言うことも……」
よほど腹に据えかねているのか、瞑目し眉間に皺を寄せながらその悪評をあえて口にする。
「……歯磨き粉は食べ物じゃないだろう?」
使ったことはないがそのくらいは知っている。
「うぅ、そう、そうだよね」
ますます眉間の皺が深くなり表情が苦しみを帯びる、どうやら世間にはよほどチョコミントの存在が許せない連中がいるようだ。なんだかその顔も知らぬ連中に対して怒りが湧いてきた、こんなに善き心の持ち主を苦しめているという自覚があるのだろうか。
「それじゃあ少しだけ貰うぞ」
兎にも角にも、食べてみないことには始まらない。
好物ならアイリの分も残しておくべきという考えと、遠慮しすぎたら悪評を真に受けて敬遠していると思われないかという考えから、結局はスプーンひとさじ分だけ掬い取って口に含んだ。
100に近いほど美味しい
1に近いほどスース―する
dice1d100=69 (69)
- 112◆KVFDwqdrwoh824/10/18(金) 03:50:08
- 113二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 08:12:03
チョコミント気にってくれそうでよかった
- 114◆KVFDwqdrwoh824/10/18(金) 11:50:14
- 115二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 12:42:34
- 116二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 22:48:50
一筋の光って感じで良いな…
- 117二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 07:40:08
保守
- 118二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 12:16:52
これを機にスイーツ部とも関わって欲しいな
- 119二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 22:35:26
綺麗なヘイローなんだろうな
- 120二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 23:11:52
良いなこれは…
- 121◆KVFDwqdrwoh824/10/20(日) 07:31:20
今夜仕事終わって動けたらまた少し更新します、そろそろアイリとの憩いの時間も終わりです
以外とエミュが難しかった - 122二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 11:09:46
期待の保守
- 123二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 21:37:33
待機
- 124二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 22:57:46
保守
- 125二次元好きの匿名さん24/10/21(月) 07:59:36
- 126二次元好きの匿名さん24/10/21(月) 14:56:02
- 127◆KVFDwqdrwoh824/10/21(月) 16:31:37
「なんだ、おいしいじゃないか」
今までのフレーバーとは違った独特の感覚が口に広がる。純粋な温度の低さから来るのとは違う、爽やかな冷たさが口腔を満たし、飲み込んだ後も不思議な清涼感が残った。
すう、と意識して空気を吸ってみると風が当たった場所がひんやりと冷えた気がする。もう一口、冷たいアイスとチョコチップの温かみにミントの涼やかさが加わる。いいなこれ。
なんと言えばいいのか、アイスだから冷たいのは当然としても今まで食べてきたのは温かい甘さ、みたいな感覚があったのだが、これは冷たい甘さというか、そんな感じがした。
「今日食べた中では一番おいしいかもしれない」
「本当っ!?」
「うん、私も好きだぞこれ」
少しだけ、嘘をついた。
おいしいと思ったのは、本当。
でも一番かというと、まだそんなに違いは分からない。
だから少しだけ、ちょっとだけ大袈裟に感想を呟いた。
そうすればアイリが喜んでくれると思ったから、アイリが何度も口にする放課後スイーツ部の友達、顔も知らない彼女らに負けたくないと思ってしまったから。
……の、はずだったんだが。失敗したかもしれない。
「……いつまで私の手を振ってるんだ?」
「あっ、ごめんね。まさかこんなところでチョコミントの素晴らしさを理解してくれる同志に出会えるとは思わなかったからつい興奮しちゃって」
「そんなに喜ぶほどなのか……」
なんかアイリが凄い目を輝かせて私の手を握ってぶんぶん振っている、あまりの勢いに危うく反射で手が出かけてしまった。そんなにか、そんなにチョコミントが好きなのか。
まあ、それだけ好きな物があるというのが分かっただけよし、ということにしておこう。ちょっとだけの罪悪感を押し殺すように、自分をそう納得させる。 - 128二次元好きの匿名さん24/10/21(月) 22:16:55
良いね…こりゃ…
- 129二次元好きの匿名さん24/10/21(月) 22:20:05
アイリのチョコミント愛すごいしね
そして可愛いな - 130◆KVFDwqdrwoh824/10/22(火) 03:59:03
楽しい時間はあっという間。という表現があることを最近学んだ、今の私がそうだ。
学生は夜には自らの所属するところに帰らなければならない、帰る場所のない私とは違う。
いくつかの食器を洗い、空になったアイスのカップを片付ける。
あとはお別れの言葉を言ったら終わり。
もうだいぶ語る言葉も少なくなったが、それでも帰り支度をするアイリとぽつぽつと言葉を交わす。少しでもこの時間を伸ばしたいが、無理に引き留めて困らせたくもない。
それでも、元々片付けが必要な物など大してなかったのですぐに準備は済んでしまう、ふと会話が途切れて、なんとなく別れの空気が漂う。
「ねえ、連絡先教えてもらってもいいかな?」
「……すまない、そういう類のものは持っていないんだ」
「あ……」
最後にそう切り出されたが、生憎と個人用の携帯端末など所持していない。それを伝えるとアイリはばつの悪そうな顔をした。
今までのやり取りで私の今まで暮らしていた環境が散々なものだというのは流石に察していただろう、そこから携帯端末のような値の張る品など持てるはずもない、という発想に至らず無神経なことを言ってしまったことを気にしてしまったのだろうか。
しかし、そうか。ここで連絡先を確保しておかないと、また会おうにも会えなくなってしまうのか。
放課後スーツ部、という情報から辿ることは可能かもしれないが……今まで見ないようにしていた制服の首元に意識が向く。
逆三角形と三つの円が組み合わさったエンブレム。
トリニティ総合学園の所属であることを表す校章だ。
理解はしている。ずっと、ずっと、この身に刻まれ続けたトリニティへの憎しみはなんの意味もない物だった、ただただ、無駄だったと。今も頭ではわかっている。でも、それでも、トリニティの名を聞くだけで心臓が早鐘を打つ。血が湧き、巡る、復讐しろと叫ぶ。
そんな状態ではとても会いにはいけない。
今だって―― - 131◆KVFDwqdrwoh824/10/22(火) 03:59:23
「ふふっ」
嫌な方向に陥りそうになった思考が、不意の笑い声で中断された。
何事かと目を向ければアイリがおかしそうに口元を抑えていた、それを見た私は怪訝そうな顔をしていたのだろう、弁明するように続けた。
「ごめんね、考えてみれば先生にお願いすればよかったんだ」
「……確かに」
それはそうだ。私が今後どうなるかは決まっていないが、それを決めるのに最も発言力があるのは先生なのだろうし、先生は全ての生徒に対して親身になってくれるとサオリやミカも言っていた。
なら連絡を取りたくなったら仲介して貰えばいいだけの話だ。直接会うにしても、私がトリニティへ踏み込むことに抵抗があるなら別の場所を示してくれるだろうし、なんならまたシャーレで会ってもいい。
気付いてしまえばなんとも簡単なことだ。
色々と悩んでいたのが馬鹿らしくなって、顔を合わせて二人で笑ってしまった。
「それじゃあ私はそろそろ帰らなきゃ。またね、ライカちゃん」
「ああ、また会おう。アイリ」
二人で席を立ち、休憩室から出る。先生のオフィスを出て役に立たないゲートを通って。
ここから出たら一人で戻れなくなる、なんて笑い合いながら。
アイリが長い廊下を行き。最後に振り向いてこちらに手を振る。
私も小さく手を振り返し、改めて大きく振り返した。
友達の背中が見えなくなるまでずっと。
寂しいと思っていた別れも、また会えるかもしれないと思うだけでなんだか楽しいことのように思えた。 - 132◆KVFDwqdrwoh824/10/22(火) 04:58:10
また1人だ。
1人だが、さっきまでのようなそら寒さは感じない。なにか温かいものが私の中に残って、悪いものから守ってくれているようだ。
窓辺によってキヴォトスを眺めてみる。青い空を背景に立ち並ぶ白いビル群、窓ガラスに映った雲が切れ切れになりながら流れていく。
空のガンラック、普段はシャーレの当番とやらの生徒が使うのだろうか、一時的とはいえ銃を預けるのは落ち着かない気もするが、それを可能にするのが先生の人徳だろうか。
ホワイトボードには地図とそれを取り囲む様々なメモ、知らない名前が並んだスケジュール表。
棚に積まれた段ボールの数々、上から覗き込んでみればファイルに収められた書類群からはみ出す色とりどりの付箋、隣の箱には……ロボット? の玩具がしまい込まれている。
キャビネットのガラス戸の奥にはまたも色とりどりのファイル。背表紙を見る限り各学園の資料が主だろうか。
先生のデスク、うず高く書類が積まれている、さっきよりも更に増えていないか……? 気のせいだろうか。
先生の椅子、キャスター付きで、背もたれと肘掛けがついている。
登ってみる、大人なら丁度いいサイズなのかもしれないが、私の体躯に対してはやや大きい、膝を抱えて座っても十分に収まった。
先ほど図書館から拝借したままだった本を懐から取り出しす。
どこまで読んだか大体の辺りを付けて開く。数度、進んだり戻ったりしながら見覚えのあるところまで辿り着くと再び読み進めようとした……が、どうにも瞼が重い。
そう言えば先生にちゃんと眠れているか聞かれていたんだった。
確かにあまり眠れていはいなかった、1人になると特にだ。
しかし……これは、眠いな。糖分を摂ったからか。
諦めて本を懐に戻す。
寝てしまおう。 - 133◆KVFDwqdrwoh824/10/22(火) 05:12:07
夢を見た。
私は静かで真っ暗なところに浮かんでいて。ああ、いつの間にか宇宙にいるんだなと考えていた。
手足を動かそうとしても妙に窮屈で上手く動かせない、こんなに広いのに理不尽なものだと静かに憤慨する。するのだがしたところでどうにもならない、諦めて漂うことにした。
流れに身を任せてゆったりと浮かんでいると、青く輝く大地が眼下に現れた。
綺麗だ。
青く青く、果ての無い大地を雲が覆い隠し、巨大なヘイローが浮かんでいる。私はそれを手に取ると口に含む、チョコミントアイスの香りが口の中に広がったが、甘くなく、冷たくもない、拍子抜けだ、理不尽だと再び憤慨する、アイスならもっと甘く冷たくあるべきだろう、香りが良いだけでは生殺しというものだ。
残った地球を元の場所に放り投げて戻そうとするが手に絡みついて離れない、手を振って振り払おうにも依然として手足は動かない。仕方がないので残ったアイスのページを捲って読みかけのページを探そうとする、捲っても捲っても目当てのページに辿り着けない。
躍起になって手元の雑誌をひたすら捲っていくと1枚の写真が目に留まった。
星々がちりばめられた暗闇に浮かぶ1つの星。ずっとずっと、昔に見た気がする。
罅割れ、崩れかけた壁の角に身を埋めるように、息を潜めてそれを眺める。もしもこんな美しい光景があるなら見てみたい、こんな自由な場所があるのなら、いつか行ってみたい。
いつかの自分がそんなことを夢見ていたことがあった気がする。
……どうして忘れていたのだろうか? - 134◆KVFDwqdrwoh824/10/22(火) 05:24:42
久々の好感度チャレンジ
低い値は無いだろうということでチョコミントの絆69にプラスする形で振ってみようと思います。
dice2d31=4 16 (20) +69
1.ライカ→アイリ
2アイリ→ライカ
ありがとうございます、まんま引っ張ってくる形になりましたが、直線多様なデザインはアリウスっぽいかなと意外としっくり来てます
いつかはトリニティへの憎悪を振り切ってみんなでワイワイやって欲しいですよね
>>117>>122>>123>>124>>125>>126
保守&期待の待機ありがとうございます、そして申し訳ない、労働には勝てなかったよ……
ありがとうございます、良い感じに可愛く見えるように頑張りました
アイリのチョコミントにかける愛、凄いですよね、絆ストーリー読み返したら先生の前でトリップしてたよこの子
- 135◆KVFDwqdrwoh824/10/22(火) 15:09:54
放課後スーツ部になってる……なんてこった
- 136二次元好きの匿名さん24/10/22(火) 19:05:20
ライカめちゃくちゃ楽しかったんだろうな青春してるな
そしてアイスはやっぱり印象に残ったか - 137二次元好きの匿名さん24/10/22(火) 23:11:26
期待の保守
- 138二次元好きの匿名さん24/10/23(水) 07:39:42
保守
- 139二次元好きの匿名さん24/10/23(水) 17:18:16
保守
- 140二次元好きの匿名さん24/10/23(水) 23:01:35
他にも交流できそうな子と関わって欲しいな…
- 141二次元好きの匿名さん24/10/23(水) 23:02:46
ライカは星を見て憧れたんだな
- 142二次元好きの匿名さん24/10/24(木) 07:57:03
保守
- 143二次元好きの匿名さん24/10/24(木) 14:49:35
続きも期待大ですな
- 144二次元好きの匿名さん24/10/24(木) 23:24:45
保守
- 145◆KVFDwqdrwoh824/10/25(金) 02:27:26
ミカを送り届けた帰り、幸運にも公共の交通機関に乗り込んで直ぐに座席を確保できた先生は先の誘拐未遂事件の顛末をモモトークにて知ることとなった。
結果的に言えば肩透かし、の一言であった。似たような依頼を複数出していたらしいが、目的の生徒は確保できず、前金で不良生徒の懐が多少温まり、逆に自らは冷えた飯を食う羽目になったということだ。
闇社会の住人気取りで手を出すにはあまりにも甘い見積もりで、自業自得とはいえ安くはない授業料だろう。
だが本題はそんなところにはない、問題はその悪い大人に狙われ、利用された生徒たちの方にある。
『アリウス分校という名前に聞き覚えはある?』
『エデン条約の破談以降、折に触れて耳にはしますが……恥ずかしながら噂話よりは多少マシ、という程度です』
モモトークの向こう側にいるのはヴァルキューレ警察学校、公安部局長である尾刃カンナだ。続けて送られてきた『トリニティが協力的でないのはいつものことですが、この件に関しては更に頑ななようで』という一文を見るだけで眉間に皺を寄せて苦々しげに奥歯を噛み締める表情が浮かぶようだ。
狂犬の異名で内外から恐れられている彼女であるが、先生の目からすれば厳しくとも部下想いで正義感の強い生徒である。
トリニティ総合学園には正義実現委員会という治安維持組織がある、元々各自治区は独自の治安維持組織を持つことが多い。なにかと脇に押しやられることも多いヴァルキューレだが、政治色の強いトリニティにおいては更にその傾向が強いのだろう。
彼女の気苦労を知る身としては思わず肩入れしたくなるが、当然トリニティ側にも相応の事情はある、アリウス絡みの一件、その原因となったのは遠く過去の出来事とはいえ、消えぬ禍根は今を生きる生徒にとっては受け入れ難い醜聞となるのだから。
だからこそ先生は過去よりも今を、そしてこれからを生きる生徒のためにその蟠りを少しでも解こうと動いている。
『ただ最近、不良生徒がその名を口にすることが増えているようです』
曰く、その名を口にする見慣れぬ生徒に縄張りを侵されて逃げ出す者も多いのだという。 - 146◆KVFDwqdrwoh824/10/25(金) 02:27:46
今回の雇われにしてもそうだ、他にもアリウスと思しい生徒に接触したという証言はいくつかあるが、ライカを襲った者のように“穏当な”反撃を受けたものは少ない。
その多くが語るのは自らの行いを後悔するほどの、通常のキヴォトスでは考えられない苛烈な反撃、聞けば決して軽くはない傷を負った者もいるらしい。
中にはヴァルキューレ警察学校に保護を求めて出頭する不良生徒もいるなど、冗談としか思えない話もあった、だがそれを述べている相手の立場が立場である、事実として受け取る他ないだろう。
『良かったら、もう少し詳しく聞かせてくれないかな?』
『構いませんが、量が多い上に煩雑としていますので。まとめるのに少々時間を頂きます』
『ありがとう。忙しいのにごめんね』
ただでさえ多忙なところに申し訳ないとは思いつつも、アリウスも衝突した生徒たちも、どちらも放ってはおけない。
画面から視線を離して目頭を揉み解し、背筋を伸ばすとパキパキと音がした。いつの間にか結構な時間が過ぎていたようだ。
再び画面に目を戻すと幾つか届いていた他の生徒からのメッセージにも目を通していく、すると留守の間にシャーレを訪れたというアイリからのメッセージが目に留まった。
シャーレを訪れたらちょっと変わった子と友達になった。という内容だった。
一瞬呆気にとられるが、すぐに頬が緩む。
きっと彼女はよく知らないのだろう、過去のトリニティで何が起こったのか。これまでアリウスの生徒たちがどんな環境に身を置いていたのか。エデン条約の調印式で何が起こったのか。その顛末も。
凄いことだと思う。大人が一々手を出さなくても、積み重なった歴史や蟠り、そんなものを軽々と飛び越えて子供たちは手を取り合っていくのだから。
もちろん、簡単にすべてが上手く行くわけではない。事情を知る者、過去を知る者、受け入れる側、行け入れられる側、1人1人が違う価値観を持っているのだから。
それでも、これからのトリニティとアリウスにとってこの出会いはきっと良いものになるだろう。
あくまで一般的な、当たり障りのないメッセージを返しながらそう思った。 - 147◆KVFDwqdrwoh824/10/25(金) 02:49:40
- 148二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 08:03:42
何やら不穏な気配
アリウス生か
何か裏がありそう - 149二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 13:22:26
保守
- 150二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 19:30:13
待機
- 151二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 22:44:02
どうなることやら…
- 152◆KVFDwqdrwoh824/10/26(土) 07:31:40
シャーレに戻ってきたのはそろそろ陽も落ちようかという頃合いだった。
立ち入る前にオフィスのある辺りを眺めてみるがそこから明かりは漏れていなかった。単に灯りをつけずにいるのか、それとももう眠ってしまったのか。
トリニティを立ったところで一報を入れようとしたが、連絡を取ろうにもライカは連絡用の携帯端末の類いを所持しておらず、自分のオフィスにも固定電話が無かったことを思い出した。
いつ戻るかも告げずに結構な時間を待たせることになってしまい。今さらノコノコ顔を出すのはなんとも極まりが悪いな、と苦笑してビルに入る。
夕日に照らされたエレベーターが音もなく登っていくと、それに呼応するように太陽がビル群の端に飲み込まれていった。
確か、マックアワーといったか。茜色よりも淡い黄金の光が大気を包み込む、日没後の僅かな時間にだけ見られる幻想的な光景。
もしもオフィスにいるのなら、あの子もこの光景を見ているのだろうか。そんな考えが頭をよぎった。
軽い電子音と共に透明な籠が目的のフロアに到着する。
静かな廊下へ向かって足を踏み出すと、人感センサーによって天井にある電灯に音もなく光が点されてゆく。
もしかしたらライカが眠っているかもしれない、そう思ってそっとオフィスへと入り様子を窺うがそこに人の気配はなかった。
灯りを付けて室内の様子を窺うが、山と積まれた書類の束から目を逸らせば特に変わったところはない。ただいつも自分が使っているキャスター付きの椅子が倒れていたので元に戻す。
休憩室、仮眠スペースを順に覗いていくがどちらも人のいる様子はない。
「ライカ?」
声を上げる。反応が無いのを確認してもう一度、もう少し声量を上げて。やはり反応が無い。待ちくたびれて出て行ってしまったのだろうか。直接話した時の様子やアイリから送られてきたメッセージを読む限り、ある程度の居心地の良さは感じてくれていたと思うのだが。
シャーレは広い。連絡の付かない相手を探そうとするとビル一棟を丸々探すのと同等の労力を割く羽目になる。
なのでちょっとした裏技を使うことにした。 - 153◆KVFDwqdrwoh824/10/26(土) 07:31:59
「アロナ、ちょっと人探しを頼めるかな?」
“はい、先生! そのくらいスーパーアロナちゃんにかかればあっという間ですよ!”
「うん、よろしくね」
取り出したタブレットから声が響く。
このタブレット――シッテムの箱――のメインOSであるアロナの手に掛かればあらゆる電子情報を詳らかにすることができる。
シャーレ内部のこととなればセキュリティや電子ロックの開閉など、より細かい精査も可能となるだろう。
実際、質問をしてから回答までに掛かる時間はごくわずかだった。
“現在、シャワールームが使用中みたいですね”
「……? ありがとう、アロナ」
シャワーならここを立つ前に浴びていたはずだが、また汚れるような何かがあったのだろうか。何にせよ居場所が分かっただけ一安心だ。
そう、思っていた。
“――先生! 様子がおかしいです!”
突如アロナが声を荒げる。慌ててタブレットを除き込むと、普段は無邪気な笑顔を見せることの多いアロナが珍しく緊迫した表情で言葉を続けた。
“シャワールームの使用状況ですが、水道が使用されているのにガスが使われていません!”
ガスが使用されていない、突然のことに思考が遅れるが、その遅れを取り戻す前にアロナがその答えを口にした。
“ライカさん、どういう訳か冷水を浴びています! それもさっきからずっとです!” - 154◆KVFDwqdrwoh824/10/26(土) 07:32:16
続きはまた夜になります
- 155二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 08:22:12
お湯にしてないだけなら良いがどうなることやら…
- 156二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 16:25:04
水...シャワールーム...アリウス...ミサキ
嫌な予感がするからすぐに行ったほうがいいな - 157◆KVFDwqdrwoh824/10/26(土) 22:53:45
「どうした! なにがあったの!」
シャワールームの入口まで駆けつけ、呼びかけても扉越しにくぐもった水音が聞こえるだけで返事がない。
「ごめん、開けるよ!」
途端に聞こえる鮮明な水音、毎日聞いているなんの変哲もない響き。
だが通常とは明らかに空気が異なる、シャワールーム独特の弾けた湯がもたらす熱気と湿度がないのだ、空気が冷たい。
「……ライカ!!」
水音を頼りにブースに駆け込むと、そこには服を着たまま背中に流水を受けるライカの姿があった。壁にもたれかかるように座り込み、脱力している。
とにかく水を止めなければと、バルブに手を伸ばすが正面からシャワーを浴びる羽目になった上に焦りから手元が狂い、何度か手を伸ばしてようやく止めることが出来た。
衣服にしみ込み、或いは首元から流れ込む水の冷たさにぞっとしながら急いでライカを抱き起す。脱力し、衣服が水を吸っているせいか不気味なほどに重く感じる。
何度も名前を呼ぶが反応が薄い。
「どうしてこんなことを……」 - 158◆KVFDwqdrwoh824/10/26(土) 23:16:12
元々血色の良くなかった肌は更に色味を失い、唇も紫色に染まっている。
僅かに動く唇と息遣いから何かを訴えかけようとしているようにも取れるが、がちがちとふるえ、打ち鳴らされる歯の音にかき消されて聞き取ることはできなかった。
とにかく体を温めないと、と考えを巡らせようとしたところで己の浅はかさに腹が立った。
今、自分がいるところが本来何をするところなのか。
もう一度バルブに手を伸ばすと、シャワーヘッドを引っ掴み赤いマークの付いたそれを勢いよく捻った。ホース内に残っていた冷水を手に受け、流れ出るそれが熱を持ったことを確認すると冷え切った小さな体へと向けた。
悲鳴。そして衝撃。
全身を貫く衝撃、肺の中が空になり、瞳の中で星が舞い散る。
飛びそうになる意識を悲痛な金切り声が繋ぎ止めた。
熱い。
許して。
手元を離れて荒れ狂うシャワーヘッドから流れる湯がかかるたびに、記憶にある落ち着いた雰囲気からは想像もつかない絶叫を上げる。身を縮こませたかと思うと次の瞬間には遮二無二手足を振り乱す。
自分の体はその振り払われた腕によって狭い個室の壁に叩きつけられたのだろう。
痛みを堪えて起き上がる、未だに事情は呑み込めないが、少なくとも湯を浴びることに対して彼女が強い拒絶反応を引き起こしているのは間違いない。手を伸ばして再びバルブを掴み、力いっぱい閉める。 - 159◆KVFDwqdrwoh824/10/26(土) 23:57:29
悲鳴がやむと同時、糸が切れた人形のように倒れ伏す。
慌てて駆け寄りまた抱き起す。
かろうじて意識はあるようだが、虚ろな瞳がこちらを捉えることはなかった。
浅く速い呼吸から僅かな活力を感じることはできる。しかしそれ以上に先の豹変ぶりが衝撃だった。
決して広くはないシャワールームの一室だ、その気になれば簡単に出ることができる。それなのにもがくばかりで出ようとはしなかった、自分がどこにいるのかもわからない錯乱とも言える状態。
「許して……許してください……」
啜り泣き、体を震わせながら、虚ろな表情で繰り返し呟く。
「もう夢は見ません……なにも求めません……だから、もう……」
「許して、ください……マダム」 - 160二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 23:59:09
元はベアトリーチェの仕業だったか
さては熱湯でも浴びせたな - 161◆KVFDwqdrwoh824/10/27(日) 04:05:19
マダム、またの名をベアトリーチェ。
キヴォトスの外から来た『大人』による組織の一員。
その所業は悪辣の一言である。
当時内戦状態にあったアリウスを平定し、生徒会長の座に就いたと語られている。
そこだけ切り取れば、秩序を齎し子供たちを導いた大人とも取れる。しかしその実態は自らの目的の為にアリウス分校の生徒たちを利用していたに過ぎない。トリニティ・ゲヘナ両学園への憎悪を利用した洗脳教育は、話に聞くだけでも真っ当なものではないのは明白だ。
思わずその名を口に出す、大人というある意味対等な存在に対しての悪感情が胸中に巻き起こるが、すぐにそんなものは消え失せる。
まずは生徒の問題を何とかしなければ。
とにかくこれ以上体温を失うことは避けなければならない。
それよりもまずは救急車を呼ぶべきだろうか。
痛む体を押してライカの体を抱え廊下へと出るが、未だにまとまらない思考は次に何をするべきかという決断を下せないでいた。
そんな時だ。
「先生!」
声のする方に視線をやればそこには白と桃色を基調とした看護師を思わせる衣装に身を包んだ生徒。
トリニティ総合学園、救護騎士団の1人、鷲見セリナが駆けよってくるところだった。 - 162◆KVFDwqdrwoh824/10/27(日) 04:30:31
- 163二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 10:26:21
低体温症を引き起こしてる可能性があるしセリナ頼むぞ
- 164二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 15:24:43
熱湯は避けてた感じか…
- 165二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 22:36:30
期待の保守
- 166二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 05:37:42
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- 167二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 13:10:48
にしてもやはり速いなセリナ
- 168二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 20:17:02
- 169二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 23:01:02
- 170◆KVFDwqdrwoh824/10/28(月) 23:25:15
医療従事者としての彼女の活躍は何度も目にしているし、自分が助けられたことも多い。
この状況では誰よりも頼りになる生徒の1人だ、その姿を見ただけで不安になっている場合じゃないと気持ちが前向きになる。
まるで予め状況が分かっていたかのように、セリナはこちらの目を見て頷くとなにも聞かずに何度かライカの体に触れる。
普通であれば状況を説明するところだが、彼女には少し不思議なところがある。彼女が診やすいように身を屈める。顔が近づいたことで改めて血の気の引いた顔を直視することになったが、動揺して動かないように意識する。
何事か呟いているのが微かに聞き取れる。かろうじて意識があるように見えるが、触れられていることにも気付いていないようで反応は無い。
「私は彼女を休憩室で寝かせてきます。先生は食堂でお湯を沸かしてきてください、1つはそのまま、1つは冷まさずに飲める温度で」
「わかった、ライカをよろしくお願い」
務めて冷静に下された明確な指示はやはり踏んだ場数の違いだろう。このまま自分が運んだ方がいいのでは、と口を挟もうとしたが、止めた。
濡れた服を脱がせる必要があるだろうし、それなら任せてしまった方がいい。
小さな身体をそっと預ける。
膝裏と背中に手を当てて抱きかかえられると、ぼたぼたといたるところから水を滴らせながら、右手がだらりと垂れ下がった。
不安に足が止まりそうになるが、最善を尽くすため足早に目的地へと向かった。 - 171◆KVFDwqdrwoh824/10/29(火) 02:06:31
シャワールームや休憩室、食堂が同じフロアにあるのは僥倖だった。
食堂の扉をあけ放って厨房へと駆けこむ、水を吸って重くなった衣類がもどかしい。
卓上に置いてあった電気ケトルを満タンにしてスイッチを入れ。その間に端から戸棚の中を確認する、1つだけ見つけたヤカンを満たしこちらは最大火力でコンロにセットする。
湯が沸くまでの時間が永遠にも感じられる。
今はセリナが付いていてくれるのだから、だから大丈夫。何度も何度も、自分に言い聞かせるように考えて気持ちを落ち着かせる。
まず電気ケトルのアラームが沸騰を告げる。冷まさず飲めるように、というリクエストだった。加熱中のヤカンの蓋を開けて熱湯の一部を流し込むと、減った分の水位を水で補う、丁度いい塩梅だ。次いでヤカンの蓋が鳴り出すと、すぐさま手に取って食堂を出る。 - 172◆KVFDwqdrwoh824/10/29(火) 02:08:48
「大丈夫です。低体温症の初期症状は出ていますが、大事には至りませんよ」
休憩室へ入ると開口一番にそう伝えてくれた。
まだ事態が解決したわけではないが。大事には至らないというその一言で緊張が一気に緩む。
「こちらのゆたんぽにお湯をお願いできますか?」
電気ケトルをセリナに手渡し、代わりに受け取ったゆたんぽの中へと慎重に熱湯を注いでいく。危機的な状態ではないと告げられたことが大きいのだろう、手の震えで溢すことなく注ぎきることが出来た。
「他に、なにか私にできることはないかな?」
渡したゆたんぽを手早くタオルで包み、ベッドで横になるライカの体を動かしながら設置するセリナの背中に声を掛ける。
「今は落ち着いているので大丈夫ですよ。それよりも、先生も早く着替えてくださいね、そのままだと風邪を引いちゃいますから」
そう言われて自分の恰好を改めてみると、確かに酷い状態だった。何度も水やお湯を被ったせいでシャツの中まで濡れており、歩く度に水が滴る。早いところ着替えないと今度はこちらが寝込む羽目になりかねない。
「うん、そうさせてもらうよ。この子をお願い」
「はい、任せてください」
そう微笑むセリナにこちらも微笑みを返して部屋を出ようとする。
「先生」 - 173◆KVFDwqdrwoh824/10/29(火) 02:09:03
そう呼びかける声に視線を返す。変わらず笑顔のままだったが、今度はその中に僅かな労りが添えられていた。
「どうか、気に病まないでください」
「うん」
短く答える。
「本当にありがとう。セリナが来てくれて助かったよ」 - 174二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 02:24:49
ライカが大事に至らず助かりそうでよかった
そしてセリナありがとう - 175二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 04:03:23
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- 176◆KVFDwqdrwoh824/10/29(火) 04:05:36
- 177二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 08:21:05
ライカさん助かりそうでよかったあ
あとでメンタルケアも必要になりそう - 178二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 08:32:01
保守
- 179二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 14:52:19
- 180二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 21:52:20
- 181二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 23:11:17
どうなることやら…
- 182二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 06:27:22
- 183二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 13:14:53
今は安静にかな
- 184◆KVFDwqdrwoh824/10/30(水) 20:45:40
ようやく陽の落ちたD.U.の街並みを見下ろしながら、静かにエレベーターが昇っていく。
目的の階につくまでに足元に小さな水たまりができる。生憎と自分の着替えはオフィスにしかないのでそこまでは濡れ鼠のままだ。
ぽたぽたと、無色透明な足跡を残しながらオフィスに入る、着替えの入ったロッカーに向かう途中、濡れた服をどうしようかと考えて、とりあえず濡れて困る物のない部屋の隅に置いてしまうことにした。どうせこの後は洗濯しなければならないのだ。
そうして上着とシャツ、ついでに肌着も、多少行儀が悪いのは承知で部屋の隅に放り投げてしまう。生徒がいる状況ではとてもできない狼藉だが、自分の中で燻る感情も衣類と一緒にほんの少し飛んで行った気がした。
そして体を拭けるものはどこかにあっただろうか、とオフィスを一瞥したところでデスクの上に畳まれたバスタオルが置いてあるのが見て取れた。
気のせいかと思ったが、気のせいではなかった。明らかにさっき訪れた時にはなかったと思うのだが。
「……セリナなら、そういうこともあるのかな」
深く考えるのはよそう。そう決めてタオルを手に取ると頭から被って水気を拭きとる、上半身だけでも拭き取ったことで不快感がだいぶマシになった。
そのまま椅子に腰かけてしまう。上半身に比べて下半身はそこまで水を被っていなかったのもあるし、誰も居ないとはいえオフィス内で下も脱ぐのははやり抵抗がある。 - 185◆KVFDwqdrwoh824/10/30(水) 20:50:25
どうか気に病まないで、というセリカの言葉がリフレインする。
分かってはいた。不可抗力の類いだ、あらかじめ知っていなければ避けられない類いのものだった。
それでも、あの時のライカの表情が目に焼き付いて離れない。
恐怖、苦痛、絶望。
彼女の過去にどのようなトラウマが刻まれているのかはわからない。しかし、あの瞬間まではまだ堪えられてはいたのだ。恐らくはあの冷水を浴びる行為が記憶の底に眠るなにかを抑え込むのに必要だったのだろう。
自分が。
そう、自分が張りつめていたその最後の糸を切ってしまったのだ。
もう一度、気に病まないで、という声が思い返される。わかってはいるのだ、もしもあのまま体温が下がり続けたらいくらキヴォトスの人間であっても命に関わる可能性もあっただろう。
それでも考えてしまう、もっと違うやり方があったのではないかと。
例え最初からとっくに手遅れで、正解など1つも用意されていない問題だったとしても、自分の手で生徒の心を傷つけてしまったという結果は想像以上に重く、善き先生であろうとする自分を苛むのだ。
「情けないな……私は」
自分が完全無欠な人間だなどと奢るつもりはないが、思わず弱音が口に出る。
弱い自分を隠すようにタオルを頭から被り、背もたれに体重を預けて天を仰ぐ。先ほど痛めた部分がずきりと傷んだ。 - 186二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 22:32:40
こればっかしはなぁ…
- 187二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 22:42:07
命の危険があるしなあ...コレは難しい問題になりそうだ
- 188◆KVFDwqdrwoh824/10/31(木) 04:31:14
「失礼します」
暫しの自責の後、ノックの音と共に扉が開き足音が近づいてくる。
自分が中々顔を出さないからセリナが様子を見に来たのだろうか。眠ってはいなかったはずだが、少し考え込み過ぎたらしい。
「~~ッ!!」
なにか、押し殺した悲鳴のような吐息が聞こえた気がする。
そう言えば上半身が裸のままだった。とはいえエデン条約渦中での治療や予後の検診で救護騎士団の面々には何度か体を晒したことはある、とはいえやはり治療とそれ以外では受け取り方も違うのだろう。
体を起こして顔に掛かっていたタオルを取り、配慮に欠けたことを詫びようとした。
「ごめんね、ちょっと着替えるのが億劫になっちゃっ……て……」
オフィスの入口のすぐ傍で1人の生徒が震えながら立ち尽くしていた。
切れ長のタレ目は片方が流された前髪に隠れ。
長髪と同じ金の毛に覆われ、一部の欠けた耳が真っすぐ立っている。
青系統で揃えられたシャツとネクタイ、タイトなスカート組織人の規律正しさを。
機能性に優れたジャケットと腕章からは法の番人たる厳しさを窺い知ることができた。
「あ」
「……先生」
ハの字に垂れ下がった眉と、同じく目尻の下がった目。どちらも気弱、大人しいといった印象を持たれがちな属性なのに随分と強い意志を感じるな、勿論口には出さないが。なぜ今そんなことを考えたのかは分からないが、恐らくは一種の現実逃避であろう。
怒られるな、と自分の中のどこか達観した部分がそう告げた。
「いくらご自身のオフィスとはいえ!! 生徒の出入りもある場所でなんて格好をしているんですか!!」 - 189◆KVFDwqdrwoh824/10/31(木) 06:25:43
カンナが初めてシャーレの当番を務める直前、彼女と同じくヴァルキューレ警察学校に所属する生徒から話を聞かされたことがあった。
狂犬と呼ばれる彼女はヴァルキューレ内では恐怖の象徴であり、絶対に機嫌を損ねることのないように。とか。
結局は当番に呼んだその初日に雷を落とされる羽目になったりもしたのだが。
やっぱり怒らせると怖いな。再び雷を落とされながらそう思う。そしてカンナの肺が空になったタイミングを見計らって「ごめんなさい」と言葉を差し挟む。
そうしてできた一瞬の隙を見逃さず、次なる一手を差し込む。
「とりあえず、着替えてきていいかな?」
改めて自分の目の前の大人が今どんな状態なのか再認識すると、既に紅潮していたその顔がさらに赤みを増す。
早くしてください、と目を逸らしながら告げられた。
急いで休憩室へと引っ込み、替えの衣類を探して手っ取り早く着替える、内腿に張り付くズボンと、靴の中に滴り落ちた水の不快な感触が無くなった。
またしても脱いだ服の置き場所に悩んでしまう。基本的に居住スペースは濡れた衣類を置くことを想定していないのだ、とりあえず少しでも濡れる場所が少なくなるようにと、ゴミ箱に引っ掛ける形で妥協した。 - 190二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 06:27:40
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- 191◆KVFDwqdrwoh824/10/31(木) 07:02:48
「さっきはごめんね、だらしないところを見せちゃって」
「まったく、一体何を考えて……」
苦々しげにそう呟くカンナだが、落ち着いてこちらの姿を直視したことで何かに気付いた素振りを見せた。
不機嫌とはまた違う形で眉間に皺をよせ、こちらの頬に手を伸ばしてくる、そっと触れられただけだで鈍い痛みが走った。
「この腫れは?」
訝しげに問うカンナ、切れ長の目がすうと細くなる。
ひとつ、雨も降っていないのになぜかずぶ濡れであった。
ふたつ、下のシャワールームからここまで、点々と水滴の跡が続いていた。
みっつ、なぜか殴られでもしたかのような痣が出来ている。
まるで生徒がシャワーを浴びているところに踏み込んで撃退でもされたかのようだ。
そして困ったことに、生徒がシャワーを浴びているところに踏み込んで払い飛ばされたのは事実であった。
「……」
「……」
「あの」
「先生」
頬に添えられていた手が肩に移る、気遣うように触れるだけだったそれが、まるで犯人の逃亡を阻止せんとするかのように力強くなってゆく。
「なにか、弁明がおありで?」 - 192◆KVFDwqdrwoh824/10/31(木) 07:26:29
- 193二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 08:01:56
カンナが登場か
素直にライカのこと話す感じかな - 194二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 15:35:36
そろそろ次スレかね?
- 195◆KVFDwqdrwoh824/10/31(木) 16:28:23【オリキャラSS・🎲】私は、必ず宇宙へ行く part2|あにまん掲示板エデン条約を巡る騒動の少し後、1人のアリウス生徒の物語です。プロフィール名前:剣条ライカ学年:2年所属:アリウス分校・精鋭兵身長:138cm体系:痩せ型髪型:ショートカット髪色:藤色瞳色:灰色武器:V…bbs.animanch.com
次スレを立てました、ライカの物語は続きますのでどうかお付き合いください
アリウス絡みの話はしてますからね、ライカ個人、というよりはアリウス絡みで関わることになりそうです
皆様のおかげ様でPart2まで漕ぎつけることができました、嬉しい限りです
- 196二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 17:28:23
このレスは削除されています
- 197二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 19:10:57
埋め
- 198二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 19:40:34
う
- 199二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 19:43:41
ち
- 200二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 19:52:18
とりあえず埋め