【閲覧注意!】 ミカさんのラーメンは美味しいですね

  • 1二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 15:54:02

    アリウスとやらに行ったミカさんが遺体になって帰って来た時は泣きましたが、部下の進言でミカさんの遺体をふんだんに使った贅沢ラーメンを作りましたがとても美味しいです。
    特に、ミカさんの足の肉と手羽先が最高です!
    先生にも少し分けてあげたいですね。

  • 2二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 15:54:56

    祈るね⭐️で死んだミカかな?

  • 3二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 15:56:10

    腕の肉も美味しいだろ?

  • 4二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 15:58:53

    とりあえず替え玉無料?

  • 5二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:00:59

    先生がガチギレするな

  • 6二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:01:32

    ゴリラ肉なのか鶏肉なのか

  • 7二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:02:27

    >>6

    筋肉質の鶏肉

  • 8二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:07:14

    遺言とかじゃなくて進言でラーメンにするのか……

  • 9二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:11:42

    その日産んだ卵からミカが産まれた

  • 10二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:13:06

    >>1

    これ、カップ麺にもできそう

    「桐藤ナギサシェフによる、厳選素材をふんだんに使用しこだわり抜いて作り上げたラーメンです!」みたいなキャッチコピーで

    エンジェル24で発売されねーかなー

    贈り物として実装されたらナギサとかの絆ランクは結構大幅上昇しそうだなー

    待てよ?これをミカに渡せば実質ミカ in ミカ...ミカはミカでできてるからミカ成分100%のミカになるのでは...?

    でも、麺は流石にミカからは製造できないか、誠に遺憾である

    ただ、チャーシューとかスープとかは脂が少な目になってしまいそうなのが残念...その辺は脳のゼラチン質(?)でカバーできると良いけど

    できるだけミカで作るとすれば、


    スープ→骨とか肝臓とか

    麺→無理

    チャーシュー→普通に肉

    メンマ→眼球とかで代用できません...?無理ですかそうですか

    ネギ→髪

    海苔→衣服もまあ食べられなくはない


    とか?

    こう考えると結構厳しいなぁ、羽も大きいから毟るの大変そうだし

  • 11二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:14:01

    (一旦は懇切丁寧に遺体をエンバーミングしてもらったんだけど……なんかえらいことになってるじゃんね)

  • 12二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:14:38

    幽霊ミカ

  • 13二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:15:08

    >>11

    土に埋めるのは可哀そうだし、ねぇ?

    MOTTAINAI精神です

  • 14二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:17:37

    このレスは削除されています

  • 15二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:27:38

    正直常軌を逸した発想だと発案者すらそう口にしていましたが、葬儀後ミカさんの遺体を土葬してしまっては墓を暴かれたりしかねないのは明らかでした
    ですから私たちは密葬したという体でミカさんの肢体を貪り…失礼、血肉にすることを決めたのです

  • 16二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 16:30:58

    ミレニアムに頼んでミカのクローン作ってもらえたら日〇食品のカップ麺みたいに大量生産できたりしない?

  • 17二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 17:29:26

    >>16

    倫理

  • 18二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 17:41:56

    >>17

    …………

  • 19二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 17:51:05

    先に対面した時もそうでしたが、ミカさんの顔は死者のそれに見えず、まるで眠っているようでした。
    なにせ幸せそうにしているのです。一所懸命に戦い抜きついには敵と相討って、先生に怒られ悲しまれつつも褒めてもらえたから。
    罪を贖い、赦していただけたのです。彼女にとってそれ以上のことはなかったでしょう。

    私だって、ミカさんが生きているうちに彼女を赦したかった!
    なのに面と向かってそれが出来なくて、先生に、大人に任せてしまいました!
    こんな情けない親友で、本当にごめんなさい───そう思った時でした。

    ───いいよ、ナギちゃん。ありがとう。裏切り者の私なんかを親友だって思ってくれて☆

    声がしたんです。思わずミカさんの方へ目を向けましたが、勿論動いたような様子ではありません。
    でも確かに聞こえました。間違いなく、ミカさんの声でした。
    私は彼女が愛おしくて愛おしくて仕方なくて、切なくて……気付けば唇を重ねていました。

    墓を暴かれかねないということから、ミカさんの土葬はしませんでした。けれど火葬をすることもありませんでした。
    まず教義としてタブーでしたし、魔女と呼ばれ糾弾された彼女の亡骸を燃やしてしまえば、魔女と謗られたことを認めることになってしまう。
    ……ですから部下の進言に乗りました。
    私と、セイアさんと、それからミカさんの最期を看取った者達とで彼女の遺骸を血肉とすることを。

  • 20二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 18:16:33

    死装束を脱がし、それから防腐剤を抜かれたミカさんの姿がありました。
    ……不謹慎ながら、同性の私でも思わず見惚れてしまうような肢体でした。
    見てくれは間違いなく健康体のそれなのです。ですが、確かに死んでいます。その胸に側頭部をあて、いくら耳を澄ませようと……やはり心臓の鼓動は聞こえません。

    外科処置に明るい救護騎士団の方がやって来ました。
    他のスタッフはいませんし、そもそも呼べませんでした。なにせ秘匿性のある行いでしたし、他言無用となれば関わる者の数は少なくしなくてはならなかったので。
    それに万が一にでもミネさんが知ってしまえば、どうなるかわかったものではありません。

    処置はあっという間でした。
    その流れるようなメス捌きは目にも止まらぬ程の速さで、しかも正確無比でした。
    そしてミカさんの中身が顕になり、並べられた膿盆に次々と置かれていきます。そしてそのどれもがくすんだ色ではないのです。
    私は勿論、その場にいる誰もがますます彼女の死を信じられなくなりました。ですが血液は防腐剤を注入する際抜いておりますし、心臓をはじめとした臓腑がひとりでに動いでいるわけでもありません。

    ───ねえナギちゃん……セイアちゃんと先生にも訊いたけど、その、ホントに私を食べるの?

    ええ食べますとも。私はとうに狂っているんです。食べるに決まってるじゃないですか。
    自然に還したり灰にするなどとんでもない。これからも一緒にいてもらうんですからね。
    そのために私達はあなたを血肉とするのです!

    ───そ、そう……。

    なんですか。ミカさんったら変なこと言うんですね。

  • 21二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 18:34:16

    「その……ミカさん……」
    うん、やりたいことは分かったけど……あの件に関わってた人たち、みんなどうかしてたよね。
    私を食べるって何で!?
    もしかして私の身体、美味しそうに見えちゃったとか?
    「……かも、しれませんね」
    ……わーお。それはそれで、ある意味私が魔女だってことを証明しちゃったのかもね。
    亡骸となっても周りを魅了するってとっても魔女っぽいと思うし。
    あはは……でもまあ、そのお陰でお別れせずこうして話が出来るんだし、結果オーライ……なの、かな?

    「そう言ってくださるとありがたいのですが……その、ミカさん?」
    なにかな?
    「ミカさんで作ったラーメン、その、とってもとっても美味しくて……えっと、念の為髪の毛とか残してるんですけども」
    ちょっとナギちゃん!?倫理観ゲヘナにでも置いてきたの!?というかそれは流石にゲヘナ連中でもドン引きするよ!?
    「す、すみません……」
    うん、だったら髪の毛は処分しようね。……なんだか嫌な予感がするからさ☆

    「ナギサ様、大変です!そのっ……えっと、ミカ様の遺髪が何者かに盗難されました!」
    「……なななっ、なっ、何ですってーーーーーー!!!???」
    ……遅かったか~。

  • 22二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 18:47:05

    >>21

    別に他意はありませんが、ミカの髪が無くなったせいでそれを媒介にして現世に留まっていたミカが少しずつ消えていく展開ってどう思います?

  • 23二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 00:48:52

    怪文書が

  • 24二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 10:35:10

    ラーメンおいしい

  • 25二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 16:34:54

    味って醤油なのかな?塩とかもあると嬉しいんだけど

  • 26二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 18:40:24

    "ナギサ!"
    「先生!」
    ミカさんの遺髪盗難の報を受けた先生は、連絡して間もなくやって来ました。
    「先生……お早いご到着に感謝いたします」
    "あの場にいた者として責任を果たそうとしているだけだよ……本来であれば、誰かが止めなければいけなかったことだから"
    「先生……」
    普段の優形なお顔とはおよそかけ離れたその鬼気迫る表情に、私は事態の深刻さを痛感します。
    ミカさんの遺体はそのどれもが不朽体と呼ばれるもの。
    あの時、不朽体のことさえ思い至らなかったのは、まるで何者かに思考を誘導されていたかのようだったと思えてなりません。

    『ねえねえ、二人ともちょっといいかな?』
    「(なんですかミカさん)」
    "(ひょっとして遺髪の場所が分かったとかかな?)"
    ミカさんの肉体は喪われましたが、その魂は未だ現し世におりました。
    ミカさんの亡骸をあろうことか調理し美味しく食した時、いえ、その少し前くらいから彼女の声が聞こえるようになり、食した後ではその姿をはっきり見ることが出来るようになりました。
    触れられないことと、いわゆる分霊として複数になっている以外は生前と変わりません。それから、ミカさんとは伝えたいことを念じれば意思疎通が出来ます。
    『私の遺髪、盗んだのは私を食べちゃうように進言したナギちゃんの近衛だね』
    「(なっ……どうしてそんなことがわかるんですか)」
    『私の肉体に関することならなんでも伝わってくるみたい。例えば私を食べたみんなの居場所とかね』
    "(初耳だね)"
    『あははっ、ごめんね先生☆遺髪にも私の魂が宿っているのを知ったのは、ついさっきだったから』
    "(あちらのミカとは話が出来るの?)"
    『えっと、今は出来ないかな。遺髪が外部からの干渉を遮断する容器に入れられたみたいで、向こうの私までそれに閉じ込められちゃったみたいなの』
    「先生……!」
    "うん、一刻の猶予もないみたいだね"

    食人……それも聖人と同じ不朽体をそうしたのですから、責任は果たさなくてはいけません。
    たとえ何者かの企みであったとしても、人倫に悖る行いをしたことに変わりはないのですから。
    私と先生はセイアさん、それにアリウススクワッドの方々とも合流し、ミカさんたちを伴いミレニアムへ向かうことになったのでした。

  • 27二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 19:20:26

    遺髪の行先はすぐに分かりました。
    ここ最近様子がおかしくなっていたミレニアム生徒らが、ミカさんの遺髪を手に入れようとしていたのです。
    その生徒たちが行っていた研究というのが、いわゆる幹細胞治療でした。
    「ど、どうかしていました。申し訳ございません」
    「……どうしてこんなことをしたのかしら?」
    セミナーの早瀬ユウカさんが下手人たちを詰問しています。冷酷な算術使いの名に違わぬ、極めて冷徹な声色と表情でです。
    彼女の後ろにいる私達まで身震いしてしまいます。
    「そのっ、ある人に頼まれたんです。罪を贖い、聖人となった彼女を再誕させる手伝いをして欲しいと」
    「相手の特徴は?」
    「えっと……恐らくですが、最近耳にしたアリウス分校の生徒さんだったのではと思います。身長は大体160cm前後で、体つきはとてもしっかりしていました」
    「しっかりと?私が伝え聞くアリウス分校の様子から考えると、十分な食生活を送ってそうな生徒は限られると思うけれど」
    それを聞いた私は話に割り込み、ユウカさんに代わって質問を投げかけます。
    「失礼します。その生徒さんの髪型はセミロングで、藍色の髪ではありませんでしたか?」
    「お、仰る通りです。ガスマスクで顔は見えませんでしたが、柔和な印象を感じさせる声色でした。この人の言うことならきっと大丈夫だって思ってしまう雰囲気がありました」
    想像していた通りでした。今になって彼女の経歴を疑ったのは私の不覚です。
    私の近衛を務め、内通者の情報集めには率先して取り組み、そして私達にミカさんを糧とするよう進言した彼女もまた、トリニティの裏切り者に違いありませんでした。

    『ナギちゃん』
    "ナギサ"
    「……ええ、大丈夫です。トリニティを代表する者として、ここで容易く狼狽えることなど出来ませんから」
    そう、立ち止まることなど出来ません。
    ミカさんを辱めた責任を果たすため、私達はカタコンペの奥地へと向かいました───。

  • 28二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 19:32:50

    Wow wow wow ミカを食え‼︎
    Wow wow wow ナギサ‼︎
    Wow wow wow ミカを食え‼︎
    Wow wow wow ナギ・ナギ・ナギ・ナギサ‼︎

  • 29二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:03:31

    なんかいい話風になってて笑う

  • 30二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 06:58:46

    笑うな――――!

  • 31二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 18:15:56

  • 32二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 19:19:39

    「……念の為とはいえ、まさか脆弱な器に魂を移すとは」
    「万が一に備えてのことです。元々の計画が上手くいったなら、あなたが私の望みを叶え莫大な力を得ればいい」
    「仮にそうなったとして、あなたはどうなるのです?」
    「あなたの影として仕えるだけのこと。かつての私がそうしたように。『大人』となった私が搾取した『子供』のように」

    少女は事も無げにそう言った。
    彼女は、元々の肉体とそれに付随する己の全てを『複製した自らの魂』に託したのだ。
    拭えなかった一抹の不安に備えるため。
    そしてその不安が的中した場合、他の誰でもない自分の手で新たな計画を遂行するためだ。

    「どうせ複製するのなら、魂のみならず肉体も複製すればよかったのでは?」
    「上手くいかなかったのですよ。崇高に至るためとはいえ、その肉体は節操なく様々な力を取り込みすぎましたから。我ながら愚かなことをしたものです」
    「私は存在が歪みすぎていて安定に程遠く、複製は途中で崩れ去ってしまった……そんなところでしょうか」
    「理解が早くて助かります」

    両者はそんなやり取りの後、目を瞑り思索に耽る。
    これまでのこと、これからのこと、それから望みがかなった時のこと。そして……望みが叶わなかった時のこと。
    望むがままならそれでよし。そうでなければ、また抗うだけのこと。

  • 33二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 19:20:27

    「……まあ、上手くやってみせますよ。そうなればあなたは私の従者です。よろしいですね?」
    「異論はありません。私は搾取される側となりましょう」
    「ふふ……ですが、万が一です。万が一あなたの不安が的中してしまったら、その時は───」
    「知れたことです。何があろうと叶えてみせましょう。崇高へ至り、それを通じて全てを救う───それこそが『大人』である私が自らに課した責務ですからね」





    かつて少女だった者は、今少女の姿に扮している。
    望みを託し大願に殉じさせたもう一人の自分に思いを馳せ、今度こそはと決意を新たにする。
    運任せの綱渡りばかりだった。
    かつての自分を思い出させる愚かな少女。けれど自分とは違い、生まれながらにして自らが切望するものを大抵持ち合わせている彼女こそ、現在遂行している計画の要。
    黒服が目をかけていたキヴォトス最高の神秘である小鳥遊ホシノには及ばずとも、自らが目指す崇高に近しい絶大な神秘を有していた、元パテル派の首長である聖園ミカ。
    せめて、せめてあれだけの力がかつての自分にあったなら───女がそう考えてしまうのはひとえに自己憐憫であったが、過去の自分が喪ってしまった者への偲びでもあった。





    "見つけたよ"
    「ああ、やっといらしたのですか『シャーレの先生』」
    女が少女のテクスチャを剥ぎ取り、真の姿を顕にする。
    「マダム……!」
    「また会えましたねサオリ……それでは、儀式を始めるとしましょうか」
    女の名はベアトリーチェ。かつてアリウスを自らの領地とし、最低な環境と教育を与えた者にして、全てを救おうとする者だ。

  • 34二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 01:15:36

    狂気

  • 35二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 06:22:34

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 13:32:33

    ラーメン狂気スレ

  • 37二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 17:40:14

    "……二度と会いたくなかったよ、あなたには"

    「私もですよ。それと、今の貴方に凄まれても私の行いを非難されているようには思えませんね」

    "だろうね。生徒に扮したあなたに唆されたからとはいえ、私はミカを食べてしまった"


    事実である。

    先生たちは、ミカの遺体を可能な限り材料にしたラーメンを作り、美味しく食したのだ。

    実際どうかしていたに違いない。幽体となりその場を見守っていたミカが言うには、みんな何かに取り憑かれていたようだったとのこと。

    だとしても禁忌中の禁忌である。食べるくらいならミカの遺体は火葬し、どのような形にしろ弔えばよかったのだ。


    「そうですとも。今となってはあなたも私と同じ人でなしでしかない」

    "……そうだね。けれど私は、私の大切な生徒を不幸にしようとするあなたを否定し、今度こそ決着をつける。そのためにここへ来た"

    「なるほど、倫理に悖る行いを経てもその本質が損なわれるわけではないということですか……あなただけでなく、この場に集まり私に相対する誰もが」


    ベアトリーチェは得心した。自分がいくら悪しように導こうと、先生と生徒たちを貶められはしないのだと。

    ただ気になることがあり、ひとつ尋ねた。

    それは彼女にとって非常に大切なことで、どうしても答えてもらわなくてはならなかった。


    「みなさん……私の作ったラーメンは、美味しかったですか?」

    "え、うん"


    誰もが一切の躊躇なく首を縦に振り、ベアトリーチェは破顔する。

    一方ミカはドン引きした。

  • 38二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 01:18:43

  • 39二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 06:20:08

    保守

  • 40二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 15:51:05

  • 41二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 00:13:29

  • 42二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 11:06:32

    y

  • 43二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 12:41:32

    『私……いや私たちはどうリアクションしたらいいのかな……?』

    『えーっとね、うん、笑えばいいと思うよ☆』

    『だよね~。あっという間に内蔵全部取り出されちゃったかと思えば、そのままうつ伏せにされ背骨を拗られポッキリだもん』

    『そのまま伸ばし棒で伸ばされたりして身体を麺にされたんだから、もう言葉もなかったよね』

    『うんうん。そう言えばあの時は私、まだ8人に別れてなかったねー』

    『食べられてからだね☆そこまで来たら「何これ、おもしろーい☆」って言うしかなかったよ……』

    『漫画みたい……いや、神話みたいかな。もう何でもありっていうか』

    『私さ、先生に感想求めたんだけど「キン肉マンって作品のアニメで実際そんなシーンがあったんだよ」って返ってきたの。その、元の漫画では胴をまっぷたつだったから、アニメじゃそんなこと出来ないからって私みたいにされたんだって』

    『いや怖いでしょ』

    『人が粘土みたく扱われて麺料理になり食べられるなんて、周りは卒倒するんじゃない?』

    『先生が見せてくれた該当のシーンがまさにそれだったね。私も唖然としてたけど、それはそれとして先生と一緒なんだし勧められるままキン肉マン見てたよ。面白い作品だし、いくらなんでもこんなえげつないのばかりじゃないからってことでさ』


    『『『『『『『……いやズルくない?』』』』』』』


    『えっいきなり?それとも今更?』

    『だってあなただって私なのにあなただけ先生と一緒って……なにそれズルいじゃん!』

    『そう言われたって仕方ないじゃん☆それに先生「ごめんね、間に合わなくて」って泣きじゃくってて、こっちまで泣きそうだったんだから』

    『悪役相手にするような態度じゃないよね~……先生はさ、優しすぎるんだよ』

    『それを言ったら他のみんなだってそうじゃない?七人とも私にものすごく迷惑かけられたはずなのに、こうなった私に一々付き合ってくれたんだから』

    『付き合わされた、の間違いじゃないかなあ。それなのに私たちって誰ひとりも悪い扱いはしてないよね。だからこうして見守ってるんだろうし。あ、それと七人じゃなくて八人だよ?』

  • 44二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 12:42:13

    ひとりのミカが訂正すると他のミカはギョッとした。信じられない言葉を聞いたせいだ。

    『……えっと、そこの私は確かその、ベアトリーチェに憑いてたんだよね?』
    『え、うん』
    『ええと、あの女と一緒だったんだよね?私を、私たちを殺した張本人』
    『そうだよ?』
    『きっと、いや間違いなく私のこと馬鹿な女だって思ってただろうし、なんなら言ってたんでしょ!?』
    『思ってたし言ってたね』
    『だったら、どうして?どうして寂しそうな顔してるの?』
    『そうだね……うん、あの女は……ううん、あの人が多くを救おうとしてるらしいのは、ただの方便じゃないって分かったから』
    『それは……確かなのかな?また騙されてない?』
    『そうかもしれない。でも……騙されてもいいかなって思っちゃうくらいには、ベアトリーチェに感じ入っちゃったんだよね』
    『つまりはあなたの勘……ってコト!?』
    『あはは、そうだね。でもなんでだろう、今ああして喜んでいるのを見てたら、あながちただの勘じゃないって思ってるんだ』

    ベアトリーチェの真意。
    答えはきっと、あの日先生たちがベアトリーチェに振る舞われたラーメンにこそあった。

  • 45二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 15:21:25

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 22:38:12

  • 47二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 09:37:05

  • 48二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 17:27:18

    このレスは削除されています

  • 49二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 17:28:46

    "本当に不本意だし悔しかったけど……!ベアトリーチェ!あなたのラーメンは美味しかった!"
    「だろうね。先生、気持ちはわかるよ」
    「えへへ……彼女のラーメンって美味しいですよね先生。私は勧められるまま夜食としてよく食べてました……」
    「うん。本当に美味しかった。袂を分かった今でもそこだけは認めざるを得ない」
    「マダム、あなたの誘惑に負けて夜食の快楽を覚え込まされても、どうにかウエストを保とうと必死だったあの日々……今となっては懐かしく思う」

    先生の叫びにアリウススクワッドの一同が相槌を打つ。
    ベアトリーチェは世を儚み憎悪するよう教育していた一方、虚しさを紛らわす術もアリウス生徒たちに授けている。
    そのひとつが夜食で、特に彼女手ずから仕込んだラーメンは絶品と評判であった。
    特にサオリたち4人は特別目をかけられていたこともあり、口にする機会が多かったという。

    "健康にいいことじゃないけど、辛いことに耐えうるための術もあなたは教えていた……どうして?"
    「ままならないことばかりの世界で生き延びるためですよ。私がそうだったように」
    "あの美味しかったラーメンが?"
    「美味しいものひとつで心が救われたことがあった。ただ、それだけのことです」
    "あなたが私たちにくれた一杯には邪悪な意図があった。けどそれだけじゃなくて、確かな真心があった……あなたはどうして、自分を裏切るような真似を?"
    「世の中がそれだけで救われたなら、どれだけよかったでしょうか。そうではないからこうせざるを得なかったのですがね」
    "……あなたがそんな風に考えてしまうのは残念だし、やはり許せないよ"
    「許すも許さぬもありません。私は大人の責任として、成すべきことを成すだけですよ……さあ、始めましょうか」

    両者身構え、直後先生たちはその場に膝をついてしまう。強烈な虚脱感から立つことも叶わない。
    ベアトリーチェは一体何をしたというのか?

  • 50二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 00:29:36

    ほしゅ

  • 51二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 09:13:19

  • 52二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 09:32:40

    なんかサイコ的な話かと思ったら面白くなってきてる...

  • 53二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 15:06:02

    最初の猟奇的な発言からここまで面白い怪文書が出来上がると誰が予想できただろうか

  • 54二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 20:24:04

    せやね

  • 55二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 00:33:03

  • 56二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 12:32:23

    このレスは削除されています

  • 57二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 13:04:15

    くるしい……くるしい……。





    おや、まだ生きていたのですか。
    「あなたは……そちらこそ、まだ死んではいなかったのですね、ベアトリーチェ」
    ……あんなところで死んでしまっては、きっと死にきれず苦しんでいたに違いありません。
    「はは、でしょうとも……なにせゲマトリアの中でも、貴女は」
    黙りなさい。
    「ひぃっ……!し、失礼をしましたマダム。最期にお会いしたのは相当昔のはずですが、相変わらずの癇癪持ちなのですね……」
    貴方にだけは言われたくありませんよ「地下生活者」。
    その癇癪がゲマトリアから追放される一因になったこと、よもや忘れたわけではないでしょう?
    「それはその通り……ところでマダム、小生に一体何の用があって来たのです?」
    先生に勝ちたい。
    「無理な話だ」
    何故です。
    「貴女の写し身が処断される直前言われたことだ。『敵対者』たり得ないから」

  • 58二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 13:23:11

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  • 59二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 13:29:22

    ……怖気付いて、世界との関わりを捨てた者にしては、随分とハッキリした物言いですね。
    「求められたからそうしたまで……それにもう、あなたには後がない」
    ……その通りです。
    「ではまず状況の再確認を。貴女の写し身……いえ、もうひとりの貴女は同志たちの意に反した結果追放された。小生の時よりも苛烈な方法を用いてです」
    はい。
    「その上で貴女の生存に気が付いているかも知れない。とすれば、今の貴女に手出しをしないのは同志としてかける最後の情けでしょう……間違ってもアテには出来ません」
    ええ。
    「アリウス分校の生徒たちは貴女の支配下ではなくなりました……加えて、アリウスは貴女の領地でなくなってしまったのです……」
    ここから私が逆転出来る方法は?
    「ありません。少なくとも、小生が貴女の立場ならテーブルを叩き割るくらいはするでしょうね」

    ……だから貴方は大人になりきれないのですよ。

    「黙れッ!!!!!!!!!!」
    か、はっ……!
    「その脆弱な身体で何が出来るッ!!!!!!!貴様は、現在キヴォトスに干渉しているゲマトリアのメンバーで唯一領地を!そして十分に戦う力を持ち合わせていただろうが!それが今はどうだァッ!」
    ぐぅっ……!
    「今の貴様には何も無い!敵対者だと!?巫山戯るなッ!そんなもの、なれるわけがねえだろうがッ!!!!!!!!!!!」

    それでも……私は、私はっ!!!!!!!!!!

  • 60二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 13:40:40

    「ぐ、お……その、ヘイローは」
    ハァッ……ハァッ……!
    「なるほど、なるほどなるほど、そういうことでしたか!貴女はとうに結論を出していた!出していたが今一歩実行に踏み切れず、藁にも縋る思いで小生のところへ来たわけだ!」
    形は違えど、苦行に挑む者同士何かしら通じ合うものはあると思いました。それだけの、ことっ……。

    「……仮にも少女のテクスチャで、そのようないじらしい様子を見せられては、ね」

    ふふっ……まさか貴方に庇われ支えられるなどとは、思いもよりませんでしたよ。
    「勘違いをされては困ります……小生は世界と、他者との関わりを否定した末この立場に甘んじている……この先もきっと、変わることはないでしょう……」
    なるほど……つまり私に手を貸すつもりはないと。
    「貴女の苦行だ、マダム。貴女の苦しみはどこまで行っても貴女だけのもの……他者はそれに寄り添えこそすれ、それを奪うことは出来ない」
    ……そうでしょうとも。

    「───ですから、ひとつ言わせてもらいましょう。マダム……そう、同志たる貴女への忠告だ。心して聞くがいい、貴女が先生の『敵対者』たりうるには……」

  • 61二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 14:05:10

    「クク……感謝しますよ。聖園ミカを喰らい、その魂と神秘を保持してくれたことに」
    "ベアトリーチェ!!!!!!"
    「一応、ミカが生きているうちに彼女の複製を試みたこともあったのですよ。だが生憎上手くいかず、殺すしかありませんでしたがねっ!」
    「貴女という人は……!ミカさんの、かたきっ!」
    脱力して立つことも叶わない身でありながら、目力だけは確かですね桐藤ナギサ。
    己の罪のみならず、死した友の罪をも贖う覚悟を示すためこの場に赴いたのでしょうが、一兵士としては大した兵力にならないでしょうに。
    「ぐうっ……くううっ……!!!!!!!」
    それにセイア……あなたは戦力としてナギサ以下でしょう?
    ましてミカとは口論が絶えず……ミカは私に唆されたからとはいえ、軽はずみな考えで貴女の生命を奪いかけたのですよ?

    「……ははっ、その通り、だっ!」

    むっ……!なるほど、ミカの愛銃で私を撃ちますか。
    意趣返しとしてこれ以上はないでしょう。惜しむらくは、使い手が扱い慣れていないゆえにいくらか照準が甘いところですね。
    「ハァッ……敵討ちなどと言われては心外だね。まして私はミカのためにこんなところ、来たくはなかったんだ」
    なら何故……?
    「たとえ口論相手でも、いなくなってしまえば寂しいものだよ。それにだね、ベアトリーチェ……私はッ!」
    ……ッ!?!?!?!?
    「生きているうちに、ミカと仲直りしたかったんだッ!!!!!!ケホッ……!」
    ふふ……慣れないことをするものではありませんよ。
    それにしても、いくらミカからの恩恵を受けているからとはいえ、まさか貴女がここまで戦えますか。

    これは期待が高まるというものです!

  • 62二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 14:37:32

    狂喜したベアトリーチェが凄むと、先生たちを襲う脱力感はより強いものとなる!

    だが生徒たちは立ち上がる。

    動機は様々だが、誰もが戦わずにはいられないと奮起し彼女たちは全身に力を漲らせる。


    "う、うう……!"

    「「「「「「「「先生!?」」」」」」」」


    しかし先生は蹲ったままだ。どんなに悲しみ、怒ろうともその感情が身体に伝わることはない。

    「クク……先生、今以上に無理をするものではありませんよ」

    『先生……!』

    ベアトリーチェと先生に宿っていたミカにはその理由がわかっていた。

    「先生。ミカを喪ってからの貴方は、もうこんなことは繰り返させまいと腐心しいっそう職務に励んでいましたね」

    『どうしてそれを……!?』

    「儀式を通して私に流れ込むのはミカの神秘……それに、ミカの宿主となっていた者達の記憶なのです」

    『なんだって……!?』

    「貴方が生徒想いなことには感心しますが、ミカの神秘を宿した結果身体に無理を強いることが出来るようになったとはいえ、一ヶ月不眠不休はどう考えても馬鹿かと。ですから神秘が奪われつつある今、その反動が身体を蝕んでいるのですよ」

    「「「「「「「「せ……先生ッ、なんたる無茶を!」」」」」」」」

    そういう訳で、先生は早々に無力化されてしまうこととなった。

    アロナにもミカにもセリナにもコタマにもノドカにも止められてなお止まらなかった結果である。


    『なんで止めなかったの!?』

    『止められるなら止めたかったよ!?でも先生ったらずっと健康なままだからいくらでも頑張れるなって張り切っちゃってさ!』

    『いや力ずくでも止めなよ!?』

    『悪霊みたいに取り憑いて?うん、やってみたよ!先生とひとつになれたの超気持ちよくて、気付けば一緒にハイテンションで仕事してたけど!』

    『『『『『『『この色ボケ女!!!!!!!!』』』』』』』

  • 63二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 15:03:25

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  • 64二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 15:11:58

    「ミカの頭がお花畑で私も助かりましたよ」

    『誰の頭が!?』

    『『『『『『『あなたのことだよ。あなただけって思いたいよ』』』』』』』

    口々に否定を唱えるミカたちだったが、想いを同じくしていることはこの場の誰もが知っている。


    「現実を直視するのですミカ」

    『あなたが私を殺したんでしょ!?』

    「ですね。それはそうと貴女も言っていたではありませんか。数多の兵を少数の生徒を率い打ち倒していく様は、自ら武力を振るわずとも勇ましい姿でまさに王子様だったと」

    『そうだけど!?!?!?!?』

    およそ殺した者と殺された者のそれとは思えぬ受け答え。


    「あなたがそういう子でなければ、兵に紛れた私が先生に放った致命の一撃を庇うこともなかった」

    『それ、は……』

    そこに相手を知らねば出てこない核心を突く言葉が差し込まれる。

    「あるいは貴女に未練がなければ、たとえその血肉を食らった者たち相手であっても、宿主にすることはなかったのかもしれません」

    『そんな……私は、また』

    「ミカさん、気をしっかり持ってください!」

    「ベアトリーチェの口車に乗せられるな!」

    自己完結してはいけない。そう理性ではわかってはいても、性根はそうそう変わらないのだ。

    だからナギサとセイアの言葉を受け入れ、気持ちを持ち直すだけの余裕がない。

    「潔く死を受け入れたのなら、どうして昇天しないのですか?」

    『やめてっ、やめ……!』

    「死者が常世に居座ることは罪悪に他なりません。ミカ、結局貴女は罪を贖いきれなかった未練よりも、降って湧いた情欲の方が大切なのですよ。何より───」


    "ダメだよ、ミカ!"

    「先生たちが今こうして苦しんでいるのは、貴女が未練がましくこの世にしがみついているからなのです」

    『あ─────────────』


    そして魔女の一撃が、ひび割れた少女の心に深々と突き刺さった。

  • 65二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 16:26:21

    ベアトリーチェに流れ込むミカの神秘が変容していく。
    「はははっ、これが……これこそがっ!」
    『……』
    "ベアト、リーチェエエエエエエッ!!!!!!!"
    「心地よい怒号ですよ先生!そうです!その怒りが、憎しみが見たかった!」
    「マダム……貴女という人は、どこまでッ……!」
    いつの間にサオリがアサルトライフルを構え、引き金を引いている。銃弾は過たずベアトリーチェの脳天を捉えた。
    しかし微動だにしない。
    「馬鹿なッ……!」
    「ふふ……この身体は特別でしてね。サオリ、貴女だけの力ではいくら手を尽くそうと傷つけられはしませんよ。それに今は先生の助力を得られないのですから」
    「サッちゃん。諦めようとしないで」
    「アツコ……!」
    項垂れそうになったサオリをスクワッドの仲間たちが鼓舞する。
    「サオリ姉さん……辛いですよね。でも苦しいのは私たちだって一緒ですから」
    「……それにリーダー、私たちは先生の力を借りられなかった時からずっと一緒に戦い抜いてきた。この世界は騙し、傷付け合うことばかりで憎たらしいものなんだって教えられても、いつかはそれだけじゃなくなるんだって思えたのは、あなたやみんなのおかげ。だからどうか、諦めないで」
    サオリを励ましながらヒヨリとミサキが銃撃と砲撃をベアトリーチェへと放った。
    ベアトリーチェは両手を広げ、まるで受け入れるかのように受け止めてみせる。身体には傷ひとつなく、痛がっている様子でもない。ただ微笑み悠然と立っている。

    「……うん、いいね★憎しみや虚しさばかりを強調した規範意識を持たせてもよかったんだけど、それじゃラーメンが美味しくないからね★」
    「な……!?」
    「驚いた?驚いたよね?まあ無理もないかな★」
    硝煙が上がり、ミカがいた。
    いや、ミカではない。ミカの姿をした『魔女』がそこにいた。

  • 66二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 16:44:10

    "ど、どういう、こと……?"
    「ああこれ?先生に相手をしてもらうには、こうなるのがいいって思ったし知り合いにも勧められたからね★」
    「何を、言って……?」
    「あははっ★どう?可愛いでしょー?さっすがミカ、いや……私だよね★」
    「ふざけているのか……?まさかいい年して少女趣味に走るだなんて」
    「どうとでも言いなよ★こうなったらもう私に怖いものなんてないんだし、大人しく道を譲ってくれると助かるな★」

    女は少女になった。いつか望んだように、力ある存在の姿と力を得た。
    すべては「崇高」へと至り、世界の不条理とそれに伴う憎悪と虚無を振り払うため。

    「……ベアトリーチェ。貴女はいつか私にこう言ったね。『他者との接触は地獄である……互いが憎しみ合うことでその実在を証明しているに他なりません』だったか」
    「うん、言った言った★まあそれだけじゃダメだから、他の考え方も教えてあげてはいたけどね★」
    「他者とは憎しみ合うものとアリウスの生徒たちに教え込んだ貴女……いや、お前がッ!よりによって……ミカの姿になるなんて……!」
    憤慨したセイアの表情は、いつかアリウススクワッドに憎悪を向けた時のミカに似ていた。
    「あはは、ダメですよセイアさん……今怒っては、相手の思うつぼですからっ……!」
    口ではセイアを窘めているナギサだが、手に持ったHGの引き金はもう何度も引いた後だ。
    何度も何度も撃っては時折ベアトリーチェの顔を掠めるも、そのことごとくが無傷で凌がれているし、相手は身動ぎすらしていないのだ。それが余計にナギサを苛立たせる。
    「もーナギちゃんってば無駄玉使うのはよしなよ★どんなに頑張ったって傷ひとつつけられないんだし、虚しいだけだよ」
    「……貴様アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」
    「あははっ、ムリムリ★」
    銃弾がなくなる度、慣れない手つきで必死でマガジンを入れては何度も何度も魔女を撃った。
    マガジンを切らし銃弾も底をついてなお、ナギサの引き金を引く指は止まらない。

  • 67二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 16:45:40

    「無駄だってわからないかな~。ま、いっか!そういうのを教え込ませるのはいつものことだしね!……それじゃ、始めよっか」
    ───戦場に光が差した。それは太陽や月からではなく星からの光。
    "みんなっ!"
    小岩ほどの大きさであるそれは地面を叩き割り、先生たちを散り散りにしてしまった。

    「これでふたりきり、だね?」
    "本当に気持ち悪いよ……!"
    「ひどーい!先生ったら、一応今は私も『生徒』なんだよ?」
    "それってどういう……まさかっ!?"
    「うん、そのまさかだよ?」

    ───シャーレの先生は、先生という役割を与えられています。ですが教職ではない。
    ───先生を先生たらしめるのは、まず生徒の味方であること。
    ───それがたとえ敵対する相手であっても、守るべき子供である生徒ならば決して見捨てないし、求められれば相手をする。そのようになっている。
    ───たとえ生徒全ての助けになれずとも、そうあろうとすることを決して諦めないでしょうね……マダム。ある意味では、貴女に似ていると言えるでしょう。
    ───ではマダム、ご武運を。本当は小生が先生の相手になりたいですが……いくら掟破りを良しとする私でも順番抜かしは憚られる……ですから小生としては、マダムが負けてくれても構いませんね。ヒヒヒッ。

    そう、ベアトリーチェは『生徒』になったのだ。先生の『敵対者』足りうるには、これ以上なく手っ取り早い方法に違いなかった。

    "……悍ましい"
    「こうでもしないと相手してもらえなかったんだから、仕方ないよね★」
    彼女は狂っていた。

  • 68二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 23:39:33

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  • 69二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 10:56:03

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  • 70二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 19:05:05

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  • 71二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 19:55:19

    『先生、大丈夫!?』

    ミカだ。

    あの、黒いドレスを身に纏う「ミカのような何か」ではない、本当のミカ。

    薄っすらとした姿ながらも、実体を持って再び常世へ現れ身を挺し先生を守ったのだ。

    "大丈夫だよ。ミカが守ってくれたからね"

    『ありがとっ☆でも次はないかな……この身体じゃ持たないだろうし、それに……』

    "うん、また目の前であなたが消えてしまうのは嫌だね"

    よろめきながらも立ち上がり、先生は言った。一筋流した涙はミカの指に拭われた。

    『そういうことなら、今は逃げないとね。と言ってもどこに逃げたらいいかな~?』

    威圧感漂わせる魔女の姿は鬼の形相だ。

    「あはは、まいったな~★どうも取り込んだミカの感情に引っ張られてか、見てて妬けちゃうよ★」

    『ふーん……まさか年甲斐もなく嫉妬してるの?まあ若人のフリしたって、結局長生きしてるおばあちゃんだもんね☆』

    「言うね~。まっ、これからあなたもそのおばあちゃんになるんだけどさ★」

    唯一先生に憑いているミカ以外は、もうすっかりベアトリーチェと一体になっている。

    自己嫌悪渦巻くベアトリーチェの邪悪な魂と感情に、心が弱り果てた上に不完全なミカでは太刀打ちできなかったからだ。

    「全員取り込めたと思ったんだけどな~」

    『詰めが甘かったんじゃない?元々の計画だって失敗してるんだしさ』

    「だって仕方ないじゃん★まさか一個師団相当をたったひとりで相手取って殲滅する子が現れて、増援を殲滅するとか思わないじゃん★」

    『捨て駒にされた複製ちゃん、流石に可愛そうすぎないかなー?』

    「必要な犠牲だったんだよね。ましてあの子は私の複製なんだし、不本意ながらも察してはいたでしょ★」

    魔女は自嘲するように吐き捨てた。

    『でもあなたは誰かに犠牲を強いても自己犠牲はしない。ズルくない?』

    「そうだね★それが搾取する側の大人ってものだから」

    『だったら私の姿をして「生徒」を気取るのは、おかしくない?まさか子供の姿になって先生に甘えたいとか?』

    「……面白いこと言うね★」

    図星を突かれ、ベアトリーチェが眉間に皺を寄せる。

    「あははっ☆図星じゃん、ね?」

    ミカはしたり顔をして、ベアトリーチェに厭味ったらしい目線を向けた。

  • 72二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 20:11:03

    『……あなたも、先生みたいな「大人」に出会えてたらよかったのにね』

    「大人って言うけどさ、そこの先生結構なことしてるよ?」

    『うん、知ってる☆だって私たちこの一月ずっと一緒だったし、ひとつになったことだってあったから』

    ───ひとつになった?

    ベアトリーチェはミカの艶めかしい声色に違和感を覚えたが、嫌な予感がしたので踏み込まないことにした。

    「……さて、そろそろおしゃべりは止めて戦おっか★」

    『あ、やっと力が安定してきた感じ?』

    「だってあなたったらデタラメな力してるんだもん★あはは、ゴリラかっての~」

    『……知らないの?ゴリラは私と違って穏やかで優しい性格なんだよ☆』

    「あははっ!穏やかじゃない自覚はあったんだね★」

    『……折るね☆』

    我慢出来なくなったミカが挑発に乗ろうとするも、

    "ダメだよミカ!さっき逃げるって言ったでしょ!?それにもう何度も言ったように、ミカはとっても優しい子だよ"

    『せんせぇ……♡』

    先生がやんわりと静止した。そしてミカの頭を優しい手つきで撫でてあげると、ミカはもうデロンデロンな顔つきになる。

    「折るね★」

    魔女は二人が漂わせるどこか甘ったるい雰囲気に耐えかね、割れた地面を粉々にする勢いで踏み込み襲いかかった。

  • 73二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 01:01:11

  • 74二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 06:14:58

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  • 75二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 13:28:08

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  • 76二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 22:38:05

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  • 77二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 22:46:08

    『先生!』

    "うん!"

    ミカと先生が手を繋ぐと、その周りに力場が展開される。

    迫るベアトリーチェは握り拳に黒いオーラを纏わせ思い切り殴りかかるが、拳は二人が形作る強固な障壁に阻まれた。

    「へえ~?先生ってば、シッテムの箱に加えてミカの心臓を食べた恩恵もあって、守るのは得意なんだね?」

    "皮肉で言ってる?"

    「だね★……今度はちゃんとミカを守ってみせなよ、先生!」

    ベアトリーチェがオーソドックスの構えを取った。

    どうやら格闘技をかじっていたことがあったらしく、まずは手数重視で目にも止まらぬジャブを放つ。

    「あははっ★身体が思い通り、いやそれ以上に動いてくれるのって楽しいね★」

    『……年寄りがはしゃがないでよ☆』

    「実際そうだったんだから仕方ないじゃん★まさか若さ溢れる肉体の力強さを堪能しちゃってるんだしさ★」

    『その、力強いっていう言い方やめない?まるで私が筋骨隆々な子みたいじゃん』

    「違うの?」

    『違うよ!』

    障壁がベアトリーチェを弾き返そうとする!

    「やだな~★ムキになっちゃって」

    『ぬぐぐ……!』

    "ミカ!頑張って!吹き飛ばされたみんながもうじき戻ってきてくれるから!"

    連絡を受けた先生にそう伝えられ、奮起したミカは押し返す力を強める。

    「えっ?そんなの私が許すと思う?」

    だがベアトリーチェはそれがどうしたと言わんばかりに微笑み、拳を振るっていなかった左手の指を鳴らす。

    するとバルバラの軍団がわらわらと現れた。

  • 78二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:24:33

    『ウソでしょ!?』

    "ベアトリーチェ……まさかこれほどだなんて……"

    「そんなに驚くことかな?『神秘』を『恐怖』に反転させれば、このくらいは造作もないよ★」

    "『反転』……?"

    「あ、まずそこからか。えっとさ、私がこういう黒基調の服装をしてるのもその結果なんだよね★正確には、多次元解釈を元に出力されたミカの『可能性』から持ってきたんだけどさ」

    ベアトリーチェの真っ黒なドレスは、ミカの純真な一面を象徴する真っ白な制服とは対照的な意匠をしている。

    喪服のよう……いや、事実喪服なのかもしれない。

    死を予感させるその姿はまさに凶兆そのもので、これから彼女がしようとしていることを予感させるには十分だ。

    "お前はまた、私の生徒を殺すつもりなのか!"

    「イヤなら止めてみなよ★出来るものなら、ね?」

    "……ミカの顔で、そんな風に笑うな───!"

    「いたっ!」

    二人の怒りに呼応するように出力が増した障壁が、ついにベアトリーチェを弾き返す!

    『やったっ☆』

    "早く行かなくちゃ!……みんな聞いて!ベアトリーチェがバルバラの大群を呼び出した!各個撃破されないうちに集まって!"

    ミカに抱きかかえられた先生は電話で一同にそう伝え、合流地点を画面入力し送る。

    そのまま二人は目的地に向かおうとするも、

    「行かせないよ★」

    戻ってきたベアトリーチェの赤黒い光線に阻まれた。

    『邪魔しないでよ……!』

    「邪魔するよ★だって先生に指揮を執られたら負け筋が出来ちゃうもんね★」

    "私たちは今度も負けないよ"

    『負けてもらわないと困るんだよね★だってさ、それじゃあハッピーエンドにならないでしょ?』

    そう言われ、二人は耳を疑った。

  • 79二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:51:16

    "ハッピーエンド……?あなたは一体何を言っているの……?"

    「え、言葉の通りだよ?だって今の私、こんな辛気臭い姿になってるじゃない★」

    『実年齢に合わせてるんじゃないの?』

    「あははっ、そうじゃないんだよね★さっき多次元解釈って言ったでしょ?SF作品を中心にある程度浸透した考え方だから、サブカルチャーに馴染みのある先生はピンと来るでしょ?」

    "ああ、そうだね"

    『えっと……大雑把に言えば、私が辿る可能性のひとつを引っ張ってきてその姿をしてるってこと?』

    「そういうこと★私が元いたグループと敵対してた奴らから拝借した技術を利用したの★」


    "……あなたはいつも、誰かから奪ったものではしゃぐんだね"

    「それの何がいけないの?」

    『あなたのやりたいことって結局何なのか、さっぱりわからないんだよね。支配者としてアリウスに君臨し、支配してればそれで満足なんじゃなかったの?』

    先生とミカの言葉を受けベアトリーチェは俯く。それから少しして顔を上げ、答えた。


    "この荒廃した土地じゃ、ちゃんと育つのは渇望と憎しみ……それに虚しさだけだよ"

    その声は、彼女の内心に渦巻く虚しさを吐き出したかのようだった。

  • 80二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 00:31:14

    遠くから戦闘の音が聞こえる。味方がバルバラたちと交戦し始めたのだろう。

    「ミカ……後はあなただけなんだよ?あなたが私と一緒になって……『私』になってくれたなら、きっと全てを救ってあげられる」

    その様子を遠目で見ながら、ベアトリーチェはそんな世迷言を呟いた。

    『……本当に気持ち悪いよ』

    「でももう他のあなたは私に取り込まれたよ?私というか、私が干渉した『色彩』の影響なんだけどね。『色彩』のことは、とりあえずさっき言った『神秘』を『恐怖』に反転させるものという理解でいいよ?」

    "『色彩』……その禍々しい雰囲気だけでもどれほど危険なものか想像がつくよ。そんなもので生徒をどうにかしようだなんて、私は絶対に許さない"

    先生とミカはどうにかベアトリーチェの攻勢を凌いでいるが、力の差が歴然としているのは明らかで「恐怖」を感じざるを得ない。

    けれども二人は一向に怖気づく様子を見せなかった。

    それどころか決意を新たにしたような目つきで、ベアトリーチェを真っ直ぐに見つめている。


    「ああ、そうそう。ミカが食べられちゃったのって洗脳の類なんだよね★」

    『えっ……あなたってそういうこと出来たっけ?』

    「いや出来ないけど?いや、今ならなんかこう頑張ったら出来ちゃうってことはあるかもしれないか」

    『じゃあどうやったの?』

    「ミレニアムの子が作った『ゆるキャラになる装置』っていうのが実際は『倫理観ゆるキャラになる装置』になっちゃってて、それを使ったんだよ。倫理観どころか人格崩壊させそうなシロモノだったから、使ったのはアレっきりですぐぶっ壊したけどね」

    ベアトリーチェは利き手で頭を抑えながらそう吐き捨てる。様々な非道を働いた彼女ですら思うところがあったのだろう。

    "どんな理由があるにせよ、私がそうしたのは私の咎だよ。大人として……そこから絶対に逃げたりはしない"

    先生はミカに目配せをしながらそう言ったことに、

    「……え、何その意味深な視線」

    ベアトリーチェはなんとなく嫌な予感がした。

    なんというか、今まさにシリアスな雰囲気漂う中だというのに、二人の周りだけがどうもほわわんとしているというか、桃色の空間が広がっているようで。

  • 81二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 00:48:37

    (えっと……どうしたらいいんだろ。有利なのは私なはずなのにちっともそんな気がしない)

    焦燥感に駆られるベアトリーチェ。

    試しにバルバラを100体呼び出し差し向けた。するとミカには秒で掃討された。

    「えっ」

    『今の私は無敵だよ、普段の2倍は強いよ?』

    「いやいやいやいや!待って待って!2倍どころじゃないでしょ!?生前のあなたが万全な時でも相手するのは大変だったはずだよ!?それを100体!それがどうして、秒殺!?」

    『先生とひとつになったからだけど?』

    「答えになってないから!なんだかわからないけど、そんなので勝てるようなら多次元解釈で観測した数多のあなたが不幸になったりしないから!───闇に堕ちて、聖園ミカ!」

    ベアトリーチェの精神干渉だ!それはいかなる守りも通り越してミカの心に作用する!

    数え切れない悪意が彼女の心身を苛み壊すはずだ!

    だのに少しも効き目が現れない!わけのわからないものに振り回され、ついにベアトリーチェはリスクを度外視して意識をミカの心に直接乗り込ませた!

    するとどうだろう!

    ミカと先生が一心不乱に過酷しているではないか!

  • 82二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 06:28:41

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 11:17:35

    ww

  • 84二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 22:12:12

    『あっ今のはあくまでイメージ映像だからね。まだだから、まだ』

    「いやそうだとしてもおかしいよね!?ひとつになったってそういうこと!?一心同体なの!?」

    "……責任は、私が負うからね"

    「えっとさ、その言葉はね、まずあなたであってあなたでない人が言うことだよ★」

    多次元解釈の観測者となったベアトリーチェは、当然あまねく奇跡の始発点も観測している。

    それは自分の死後であるから当然彼女は不本意に思っていたが、己の軽挙妄動が転じて世界を救う一因になった一連の物語には思わず涙ぐんだものだ。

    そして、ある者の遺言であり生き様であると解釈したその言葉を目の前にいる先生が口にしたことを、彼女は不服に思ったらしい。

    「それを色ボケ二人の片割れが言うのはちょっと、ね?」

    ベアトリーチェは両手からコロナを放ち、先生とミカを焼き尽くそうとする。

    荒れた大地のあちこちが絶大な磁場に引きつけられ、空間はあちこちが歪んでいた。そんなものが人を包み込めばどうなるかは火を見るより明らかだろう。

    『……うぇ~。煙たいし埃っぽいしメチャクチャ暑かったよ~……先生、大丈夫?』

    "ミカが守ってくれたから大丈夫だよ"

    『私もそう。だって先生が私をギュッと抱きしめながら庇ってくれたから』

    ベアトリーチェはちくしょう何をイチャついてるんだと思わざるを得ない。

    彼女は不幸な結末に至った「聖園ミカ」の総体でもある。

    それゆえ目の前の幸せを看過出来ない。同じ「聖園ミカ」だというのに、何故あなたは幸せになっているのだという嫉妬に駆られる。

    それに先の精神干渉によって、その幸福感が消えてなくなるほどの悲劇を追体験させもしたのだ。ミカは勿論先生にもそうした。

    なのに少しも消耗していないのはどう考えてもおかしかった。

    「……私が言うのもなんだけどさ、お二人さんって色欲極まってトチ狂ってるの?」

    半ば投げやり気味にベアトリーチェは言った。

  • 85二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 23:48:53

    「それにミカってば、いつの間にかハッキリとした実体を持ってたんだ」

    『え、今更気付いたの?どういうわけか声はまだエコーがかかったままなんだけどね~』

    どうも精神干渉をしたのがよくなかったらしい。

    8つに分かれていたミカの魂。そのうち7つをベアトリーチェは取り込んでいたのだが、過酷のイメージを流された途端機敏に反応し逃れたようだった。

    二人は互いに銃を構え、致命打になりうる光弾を愛銃から放ちながら戦場を目にも止まらぬ速さで駆け抜ける。

    戦闘の余波はナギサたちとバルバラ軍団の戦場にまで及ぶほどだ。


    「なっ、何が起こっているのですか!?」

    「わからない!希望的観測を述べるなら、きっとミカと先生が一所懸命に戦っているんだろうさ!」

    「……予言以上に曖昧な言い様ですが、予言よりも信じたくなりますね!」

    戦傷よりも余波のせいでズタボロながらも、ナギサたちは二人の勝利を強く信じながら戦っている。


    『あ、今ナギちゃんたちが私たちの話をした気がするし、勝つって信じてもらえたって気もする!』

    "私もだよ!"

    それをにわかに感じた二人もまた、仲間たちの勝利を信じた。

    「ミカ、どうして信じようとするの!?裏切り裏切られて傷付いた末に生命を奪われたあなたが!!」

    『信じたいから!それじゃあダメなの!?』

    一方は神秘、もう一方は恐怖を纏う拳で打ち合っており、先生は後方でミカのセコンドを務めている。

    「ダメに決まってるでしょ!それほどの力を持つのなら、搾取する側に回るべきなんだから!」

    『どうして!?』

    「力を誇示し続けるにはそれを維持する糧が必要なの!そうしなきゃ持て余すだけじゃん!」

    『あなたはそうなんだね、ベアトリーチェ……私はね、力が足りないって思ったことはないからあなたの気持ちが分かんないや』

    それは挑発ではなく純粋な疑問だった。ベアトリーチェにはそれが分かっていたが、納得は出来なかった。

  • 86二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 23:58:46

    「力が足りないってことはさ……過ぎた望みに押し潰されて不幸せになるってことなんだよっ……!」

    『……ぶつかり合う中で感じ取れたあなたの過去、それから未来の可能性を思うと説得力十分なセリフだね☆』

    隕石による一撃を受け膝をついたベアトリーチェを、ミカが蹴飛ばそうとする。

    「踏みにじられてたまるかっ……!」

    それをベアトリーチェは色彩化したビナーを呼び出し凌いだ。彼女はビナーの頭に飛び乗ると、相対する二人を見下ろしている。

    『あなたがそれを言っちゃうの?』

    「世界はちっとも親切なんかじゃない!むしろひどく悪辣なことの方が多いじゃん……!そうでしょうミカ!?」

    "───それが、あなたの所業についての言い訳かな?"

    「……ああもうそれでいいよ!だけどアリウスの荒廃そのものについては当てはまらないよね!?私が生徒会長になる以前からそうだったんだから!……どうしてかはわかるでしょ?」

    ビナーが放つ熱光線により、ついにミカと先生を守る障壁は打ち破られる。加えてビナーは巨体にそぐわぬ俊敏な動きで襲い来るので二人は体制を整えられず、ひとまず逃げ回ることを強いられた。

    『……第一回公会議』

    「そう!唯一トリニティ自治区の統合に反対したアリウスと統合を推進したティーパーティーの中心であるパテル、フィリウス、そしてサンクトゥス……多勢に無勢でアリウスは潰された!墓地向こうの荒れ果てた土地で細々と生きていくしかなくなった!」

    "……"

    「アリウス分校の生徒たち……その大半は今でも私みたいなのを慕ってる!世を儚み憎む者として同志が欲しかっただけの私を……哀れじゃん、ね?」

    "本当にそうだね……それはあの子たちだけじゃない、あなたも……"

    「……驕るな───!!」

    ビナーはミサイルで二人を牽制するもミサイルは全て撃ち落とされてしまい、その上装甲有利にも関わらずミカに一撃で粉砕されてしまった。

    だがベアトリーチェは既にビナーの頭上から逃れた後だった。

    彼女が両手を天に掲げるとありったけの恐怖が迸った。その力は、世界を数度滅ぼしてなお余りあるほどの総量だろう。

    「仮にも私は世界滅亡の一因になりうる存在なんだよ?それがまさか、あなた達のイチャイチャに敗れるだなんて……そんなこと、あってはならない!!!!!!」

  • 87二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 00:12:30

    放たれたのは滅びそのもの。

    防ぐも逃れるも叶わない。それでいて受け入れるつもりがないなら、

    "ミカ!"

    『うん!』

    ただ迎え撃つだけ。二人は手を取り合い、掲げる。

    「う、うううっ……何の光!?」

    二人の手から放たれた光が滅びの闇を切り裂く。その源であったベアトリーチェ諸共に。





    「あははっ★流石だね、ミカ★」

    『……夢は潰えたね、ベアトリーチェ』

    「そう悲しい顔しないでよ。これでも私、満足してるんだから。ホントだったらもう死んでたはずなのにね」

    『代わりに私が一度死んだけどね』

    「……謝りはしませんよ?なにせ私も生きるために必死だったのですから」

    『それはもういいよ。あ、喋り方戻すんだ☆』

    「もう、最期ですからね。あなた気取りで終わるのは忍びないのですよ。ところで……」

    『何?奥歯に物が挟まったような感じしちゃって』





    「どうしてもっとシリアスに出来なかったのですか」

    『私がラーメンにされたところから始まったのに、そんなの無理じゃない?』

    "そうだね……"

    「そうですね……」

  • 88二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 00:49:24

    このレスは削除されています

  • 891324/10/18(金) 00:54:00

    「……こんなことなら、ただ美味しいラーメンを作ることに一所懸命だったらよかったと思いますね」

    『往生際が悪いね~』

    「悪役とはそういうものですよ。誰かの迷惑とかろくに考えなくて、自分勝手で、それでいて潔さとは無縁で……」

    "……ベアトリーチェ"

    「何でしょうか?」

    "私はあなたのしたことを絶対に許さない……だけど、ひとつでいいからお節介を言わせて?"

    「……私は敗者であなたは勝者。拒む理由が見当たりませんね」


    "もしも、もしもだよ?仮に向こうであなたの大切な人や今まで関わった人たちに会えたなら……謝るなり、思いの丈をぶつけるなり、出来ることは全部やっておこうね"

    「───まさかとは思いますが、それは私を『生徒』とみなし『先生』として忠告しているのですか?」

    "……だって、あなたが望んだことだよ?"

    「くくくっ、まさかあんな世迷言を信じるとは。……いや、あなたがそういう人柄だからこそ、生徒たちの多くが惜しみなく助力するのでしょうね」

    "それが私の取り柄だから、さ"


    「……いいでしょう。ならば『生徒』として『先生』の言うことを素直に聞きます。最初で最後の授業ですからね───」

    そう言い遺すとベアトリーチェは掻き消えた。

    彼女は先程まで騒乱の中心だったというのに終わり際はひどく穏やか、かつ潔い様子で。

    激闘の終盤、彼女はまるで当事者のようにアリウスのことを語っていた。

    キヴォトスの外から来たというのにだ。

    それはつまり、ベアトリーチェ自身がどこかしら似たような境遇に陥ったらしいと察せられるということ。

    そのことを彼女は深く語らなかった……たとえ訊いても、けして答えはしなかっただろうが。

    ベアトリーチェがしたことは許せない。それは先生もミカも同じ思いだった。

    その一方で、多少は彼女なりの考えがあったということも認めていた。


    消え去ったベアトリーチェが遺したラーメンのレシピ。

    彼女が何から何まで自分本位な女だったなら、まかり間違ってもこんなに美味しいラーメンは作れなかったに違いない。

    二人はラーメンをたっぷり堪能すると、その晩は本当の過酷に及んだ───。


    Wappy End.

  • 90二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 11:44:24

  • 91二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 16:00:23

    食後に過酷しても問題ないならさぞかし後味スッキリなラーメンだったんだろうな

  • 92二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 23:54:25

    ラーメン(ミカの遺体)

  • 93二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 11:12:52

    いいね!

  • 94二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 22:34:11

  • 95二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 10:05:28

  • 96二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 21:31:46

  • 97二次元好きの匿名さん24/10/21(月) 08:56:27

    りょ

オススメ

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