- 1二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 21:57:52
- 2二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:00:59
立て乙です
- 3二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:06:01
前スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart8|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの8スレ目です。戦いに消耗したアグネスとミネ…bbs.animanch.com1スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たら|あにまん掲示板アグネスが士官学校卒業ザフトアカデミー、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSを書く予定です。お付き合い頂ければ。bbs.animanch.com2スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart2|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。はたして、アグネスは、ルナマ…bbs.animanch.com3スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart3|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。己を取り巻く不可解な状況に四…bbs.animanch.com4スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart4|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。ミネルバとアグネスはその進撃…bbs.animanch.com5スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart5|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。ミネルバの活躍は起こるはずだ…bbs.animanch.com6スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart6|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの6スレ目です。自分の心境の変化や激動する世…bbs.animanch.com※落としてしまった7スレ目です。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart7|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの7スレ目です。出世の点数稼ぎの場として『戦…bbs.animanch.com - 4二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:06:37
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- 5二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:10:58
このレスは削除されています
- 6二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:12:09
たておつ
- 7二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:12:30
激戦に次ぐ激戦を乗り越え、レクイエムの発射を阻止したアグネスとミネルバの戦士達
その前に立ちはだかるのは無謀としか言いようの無いクレタ攻撃作戦
アグネスはその裏に不穏な気配を感じとるも、一度は過労で倒れてしまった…
こんな状態でクレタ攻撃作戦は実施できるのか?
そしてミネルバとジュール隊の代表者による会談は、この状況に何をもたらすのか? - 8二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 23:00:08
たておつです
しかし前スレ見る限り、意図的にエターナルを映してない? - 9二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 23:36:36
戦闘に巻き込まれない遠距離から映してたら、エターナルも画面にはいって当然な筈なんですけどねえ…
不思議ですねえ…(棒) - 10二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 23:42:24
保守
- 11二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 23:50:29
原作でもデストロイ戦で絶対映ってるはずのフリーダムが消しゴムマジックされてたからな…
皮肉なことにステラ機をシンが倒したかのような報道に - 12二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 00:04:13
ディアッカ「ああ。いや。俺達はその時、月軌道艦隊とは別の中継コロニーの戦闘中で。こちらに来て、ダイダロス基地占領に加わった後、グラディス司令長官から事情を始めてお伝えいただいたんだが…」
ふむふむ。確かにジュール隊は『グノー』や『ヴェルディ』の戦いで忙しかったでしょうね。テレビ中継なんて見ている暇もないか。
アスラン「ただ、後から当時の中継映像を見直してみると。エターナルが映っていないんだ!ミーティアも。インパルスがミーティアなしで戦闘している場面はちゃんと映っているのに」
隣から動揺が収まらないアスランの声がする。ディアッカ先輩から視線をずらしアスランの目を見る。なるほど、これはやばい。映像編集のことよりアスランの内面が危機的状況だわ。
アグネス「どうか、お気を静めて。確かに他人の手柄を横取りしたようで不愉快ではありますが…。一応、放送局の配慮も理解できなくはありません。エターナルは―一応、当方の認識では―ザフト船籍でありながら、一方でターミナルなる組織に所属しているとのこと。デリケートな扱いが求められます」
無論、これは表向き―違うな、裏の表の理由だと思う。
怪訝な顔をしたアスランがこちらを見つめる。
アスラン「それは…。だが…。しかし、真意は!」
アグネス「はい。実際はラクス・クラインとの関係からだろうと思います。『本物のラクス』の指示を受けて動いた艦を映すのは、リスクしかないですから。暗殺未遂事件も明るみに出かねません。『編集を指示した者』がそれを認識しているかは、まだ確証がありませんが…」
というか、ミーアのことを考えると、絶対ぼろが出るわね。そう言えばミーアはどうしているんだろう?
アグネス「そう言えば、ミーア…。代役のラクスは今、どこで何をしているんでしょう?」
偽物のラクスという言い方は使いたくない。『代役の』に全力でアクセントをつけ、グラディス司令長官を含めこの場の5名に視線を送る。
共犯者ではないんだ、ミーアは。そこははっきりさせておかないといけない。
イザーク「キャンベル嬢はレクイエム攻防戦の最中、地上のザフト拠点や友好勢力を飛び回って兵と民衆の動揺を収めることに尽力していた。慰問活動と避難誘導が一段落したので、今は月に向かっているらしい。今晩の表彰式とそこで予定されている議長の声明発表に合わせてのことだそうだ」 - 13二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 00:19:54
また、新ワードが飛び出した。今晩の表彰式とは?
タリア「今晩、ここダイダロス基地にて一連の戦役-月軌道会戦からレクイエム攻防戦-の功労者・殉難者に勲章の授与等が行われます。式の終わりには議長が世界に向け、メッセージを発表するとも。私もジュール隊長も知らされたのは少し前だけど。アグネス、思うところがあるのは分かるが、しっかりした態度で臨みなさい」
アグネス「了解!」
奥に座るグラディス司令長官から驚きの発言。周りを見回すと、ジュール隊長、アスランは渋い顔をしている。それはそうね。タイトなスケジュールが無茶苦茶だわ。
アグネス「(私が倒れている間にも世界は動く。当たり前か…。しかし、それにしても、もっと早く伝えて欲しい。心臓に悪いし、訓練に支障をきたす。こんなサプライズは要らないわ)」
この部屋の空気も悪くなるわね。
対照的に、副長とディアッカ先輩は対照的にさほど苦い顔はしていない。というかして居られないと言うのが正しい、かな。
『副』が付く立場の人は何が何でも上を支えきらなきゃいけないから、今を乗り越えるために知恵を絞るのみ。特に副長は諸々の折衝で頭が一杯だったはず、そこにきてこれだから。ある意味凄いわ。鉄人かしらこの人。
アグネス「(白服への道は遠いと思ったけど黒服も大変ね。トライン副長は黒服の中でも上澄みだと思うけれど)」
副長とディアッカ先輩と視線が合ったので軽く目礼する。
副長とディアッカ先輩から目で返礼してもらったわ。やっぱりちょっと嬉しいわね。ディアッカ先輩は目礼じゃなくてウィンクみたいになってたけど。
アグネス「(しかし、議長のメッセージの中身は何だろう?うーむ。今回の事態への抗議と和平の呼びかけとかかな)」
言う分にはタダな訳だし。
いけない。どうも話題が散ってしまう。整理して話さなければ。滅多にない機会なのだから。 - 14二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 02:20:55
議長の声明?
ロゴスのこと暴露してクレタ方面混乱させてからミネルバを突入させる気か? - 15二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 11:32:07
☆
- 16二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 12:28:11
議長の方が打つ手早かった感じかな
ロゴス暴露で対ロゴスに民意を誘導して支持基盤を固めてロゴス壊滅させてその後にデスティニープランの導入宣言
そろそろミネルバにデスティニーとレジェンド来るか?
原作通りに議長がやらかしたらミネルバ隊とジュール隊がごっそり離反しますわ - 17二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 19:20:29
強くて義に厚くて仕事も丁寧にこなすアグネスちゃんマジ女神。
まさにワルキューレに相応しいよ - 18二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:14:44
一旦整理だわ。途中から加わったせいで、少しアウェイな感じになっている。
まず、ミネルバに来る前にアスラン、(もしかしたらメイリン)、イザーク先輩、ディアッカ先輩の3名ないし4名で1回目の会談が行われた、と。そしてそこで何が話され、どんな手が打たれたかは、グラディス司令長官と副長は『感知しない』と言うことなのね。
そして、今はミネルバで司令長官と副長も情報・認識の共有を行ったと。
じゃあ、1回目の結論・決定を隠す理由は特に無いのでは?副長が司令長官をお守りしたいのは理解できるけど、むしろその齟齬によって墓穴を掘ってしまうリスクの方が大きいように思う。
ここは―、恐いけどイザーク先輩に話しかけるしかないわね。銀髪の麗人に目線で合図お送りながら、恐る恐る口を開く。
アグネス「大変不躾で分を過ぎた振る舞いであることは承知しています。ただ、どうか今後の行き違いや齟齬を避けるためにも、一度目にアスラン先輩とどのようなやり取りをして、どう対処すると言う結論になったのか、お聞かせ願えませんか?」
アーサー「いや…。ちょっと」
タリア「アーサー。良いのよ。ジュール隊長、私からもお願いします。保身を図っている場合じゃない。いえ、自分はともかく部下の身を守るためにも教えて下さるかしら?」
やはり副長は司令長官の立場を慮っているのね。いざとなった時、『司令長官はご存じありませんでした』が通じるよう。でも、それは今回に限っては悪手よ。
イザーク先輩はディアッカ先輩に目で問いかけた後、お答えくださる。私の方をちらりと見た後、グラディス司令長官に向けて言葉を慎重に紡ぎながら―。
イザーク「分かりました。お話します。端的に、アスランから一連の話を聞き、私どもは…。大変驚きました。議長には深い恩を受けたと思っていましたし、何よりプラント・ザフトの現体制への信頼もありました。しかし、アスランからラクス・クライン暗殺未遂事件の記録映像を見せてもらい、少なくともこの事件に関しては事実であると認識しました。同時に私はアスラン・ザラが嘘偽りを述べるような人間ではないと確信しています」 - 19二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:20:12
イザーク先輩の揺ぎ無い信頼を受けて、アスランが一瞬、面映ゆげな表情を浮かべる。なるほど、この人は褒められることに案外、耐性が無いのかな。
アグネス「(しかし、あのフリーダムの映像を見せるとはナイスな判断ね)」
あのアッシュを見せられれば、ことの重要性に嫌でも気づくわ。最悪よ、本当に。
ディアッカ「そこで、3人、いやメイリン・ホークと合わせて4人で話し合って、彼女の補助も得て、先ず父に、タッド・エルスマン前最高評議会議員にレイの治療を依頼した後、『後発便』でこのことを伝えました。
具体的には、ユニウスセブン落下テロの疑惑、今のラクスの正体がミーア・キャンベル氏である事、ラクス・クライン暗殺未遂、アークエンジェル・アスハ代表の件、秘密結社ロゴス、エターナルのレクイエム攻防戦参戦、レクイエム発射のキーマンと推測されるロード・ジブリール氏の存在、レクイエム反応炉悪用防止の必要性の8点を。
父は相当、ショックを受けていましたが、事の重大性を理解して、ルイーズ・ライトナ―最高評議会議員、エザリア・ジュール元最高評議会議員、政府高官を務めているアグネスの父君にアポイントメントをとってくれました。
お三方とも、これらの事案にかなりの衝撃を受けていらっしゃいました。情報の精査をしつつ、軽挙妄動は控え対処なさるとのことです。
なお、一連の連絡に際しては、傍聴の恐れは排除してあります。それと…、このやり取りはレイには秘密にしてあります。軍病院の診察中に行っているのでその間に行いました」
ディアッカ先輩の話を聞くや、副長は目を白黒させ始めている。流石に声を上げたりはしていないが、『密談』ですむ範囲を超えていたことに不意打ちを受けているようね。
なるほど、レイには知られないように配慮済みか、良かった。この場の会合も一応、通常業務の時間内のやり取りだし。今もあいつは診察中だわ。
申し訳ないけれど、トライン副長のリアクションで、私はちょっと冷静になれたわ。
正直、私も一度に話が大きくなってしまって怖気づいきそうになった。自分で進言したくせに…。
アグネス「(これで前任の最高評議会議員2名、現職の最高評議会議員(2期目)1名、政府高官(パパ)1名の計4名に話が回ったことになる。パパにも…。もう私の家も後戻り不可能、一蓮托生ね。勝手なことをしてごめんなさい)」 - 20二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:26:24
家族を巻き込んでしまった。どっちみち政権中枢にいる以上、巻き込まれ済みではあったのだけど。親不孝な結果にならないよう力を尽くすしかない。ママの身も心配…。何かあったら…。
隣で難しい顔を続けていたアスランがここで声を上げ、ディアッカ先輩の説明に付け加える。
アスラン「正確に言えば、4人にお伝えしたのは9点です。9点目は、ミーアの保護をご依頼しました。4名とも可能なら…、とのことです」
タリア「なるほど。どうもありがとう」
平静を装いながら司令長官が3人にお礼を伝える。その後、少し考えをめぐらした後、私に話を振る。
タリア「アグネス、どう思う?」
アグネス「どう…。」
どう?とはどう対処するべきかと言うことね。一つずつ考えながらお話しなければ…。
グラディス司令長官の険しい顔に怖じないように語り掛けなければならない。大丈夫、別に私に怒っているわけではない。
アグネス「では、9点のうち、まずユニウスセブン落下テロ事件の黒幕疑惑についてですが…。これは仮に真相が判明しても表に出してはなりません。黒幕がいたとしても、この件で告発することも残念ながら不可能です。
『ブレイク・ザ・ワールド』は文字通り、世界の在り方を一変させてしまいました。仮に黒幕がプラント政府の指導者の一人であった場合、どう言い繕ったところで世界の敵意はプラントとコーディネイターに向かい関係修復はほぼ不可能になることでしょう。闇に葬るしかありません。
ただし、それと私達の身の振り方は別問題です。黒幕疑惑が極めて高い人間とは一一線を画すべきかと」
一線を画す、のタイミングで司令長官の眉がピクリと動くのが見えたが、気づかないふりをして話を続ける。 - 21二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:31:36
アグネス「次にラクス・クライン関係の事柄について。暗殺事件については、やはりこちらから告発することはできません。ラクス様やマルキオ導師から、責めを受ければプラントは対応を迫られることにはなりますが…。
オーブ国内、つまり主権国家の領域内に正規軍の部隊を侵入させ、女性と子供を含む民間人を巻き沿いにすることも躊躇なく攻撃をしているのです。その上、ナチュラル・コーディネイター双方から尊敬を集めるマルキオ導師もお命を落とすところでした。
このことが公になれば、せっかく自然休戦状態になっているオーブ国民の激高を買わずにはいられないでしょう。南太平洋は再び血の海になります。私達が蒸し返すべきではありません。十分な時が経過した後、きちんと情報公開されるべきとは思いますが…。
同じように、現時点ではエターナルの助力を公にすることも難しいと言えるでしょう。彼らから公にすることを止めることはできませんが…」
そこまで話したところで、正義感が強すぎる上に頭コチコチのアスランにアイサインを送る。彼はどう思うのだろう?今のところこの方針で行くしかないと思うけど…。
アスラン「そうだな。ただ、世界に公表することは無理にしても内部調査自体は、きちんとするべきだ。それと、どちらにせよミーア本人は関与していない。ちゃんと保護しないと…」
そうね。同じ意見だわ。
アグネス「はい。ミーア・キャンベル氏の身の安全と彼女のこれからの人生を守ることは必要です。犯人と目される人物を割り出したら…。あるいは現時点で疑わしい人物に心当たりがあるなら、付き合いは合法的な最低限度のものに留めるべきです」
もう、疑惑の人物の名前、『デュランダル議長』を口にしてしまってもよいだろうか?
アグネス「(いや…。流石にこの場で口にすれば、ルビコンを渡ることになる。口に出さなくてもこの場の全員が理解しているのだから、今はまだ留保するべきね)」
一旦言葉を切り、残りの事項について考えをまとめる。 - 22二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:36:59
アグネス「アークエンジェル・アスハ代表とはスカンディナビア王国の協力も得つつ、汎ムスリム会議ジッダの大使館で相互連絡体制を続けるべきです。
私は個人の意見として、アスハ代表のオーブ連合首長国における復権を願っていますが、それは政治が解決する問題でしょう。
私達が関与できる余地は少ないかと。彼らから介入を求められれば最高評議会が判断することになるでしょう。ただ、国内の内紛に外国勢力を引き入れることは避けるべきこと。アスハ代表がお望みになる可能性は低いと思います。
レクイエム反応炉悪用防止についても、最高評議会・国防委員会・60人議会がしっかり軍本部の監視・監督をしてくれないことには…。ただ、レクイエム反応炉の件は国内問題なので異変が有れば告発可能です。司令長官とアスラン先輩のフェイス権限を活用する余地があるかも知れません。
ロゴスについては休戦交渉で問題にするべき事柄です。財閥解体と経済の民主化を私は支持しますが、これも政治判断が求められること、私達が関与できる余地はあまり大きくないかと。ジブリール氏に関しては…」
ジブリールって誰だ状態だ、私は。対処方法を考えようがない。いや…。
アグネス「ロード・ジブリール氏が非人道的行為に加担していた証拠があるなら、国際指名手配をするべきですし、命令を受ければ氏の逮捕に積極的に協力するべきかと思います」
これでともかく全部かな。一気に話してちょっとへたばりそうだわ。
司令長官は時折頷きながら私の発言を聞いてくれていた。
タリア「つまり『その人物』に心当たりがあるなら、彼とは距離を置け、合法的な範囲内の関係になるように特に心掛けよ。では、もし事件の『証拠』を掴んだら?告発はしないんでしょう?」
そうなんだ。それが頭の痛いところなんだけれど。公表は出来ないなら…。
アグネス「最高評議会議員に非公式にコンタクトをとって、公開議会ではない秘密会を開催していただいてはいかがでしょう。その場で弾劾決議を。その後の裁判も誠に異例かつ遺憾ではありますが、遠い将来の情報公開を約した上、非公開で行うしかありません」 - 23二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:41:53
私としては、あくまで現在のプラントの体制を尊重しながら対処したい。流石に悪事の証拠を掴んだら、即『賽を投げてクーデター』など不可能だ。
相手が大規模な白色テロに手を染めたり、自ら最高評議会・60人議会を踏みにじってクーデターを起こすようなことをすれば、カウンタークーデターを起こす余地はあるけれど。
タリア「なるほど。そうね、手順としては。となると、今のことろ、ライトナ―最高評議会議員か、他にも伝手があるであろうジュール、エルスマン両前評議会議員が頼りね」
アグネス「はい。そうなろうと思います」
ここで司令長官は私との会話を切り上げると、イザーク先輩に視線を向ける。
タリア「ジュール隊長のご意見は?」
イザーク「同じ意見です。母にもこのことは伝えます」
イザーク先輩に怖い顔で反論されたら、どうしようかと思っていたけど、セーフね。良かった。
ディアッカ先輩がお隣から補足する。
ディアッカ「私も同じく父に。これから、今まで以上に慎重に立ち回る必要があります。互いに用心を」
タリア「ええ。上手く連絡を取り合い、連携しましょう。他に議題は?」
いろいろあるでしょうけれど、もうパッとは思いつかないわね。
タリア「よろしい。ジュール隊長、本艦を訪ねて下さり本当にありがとう」
イザーク「いえ。こちらこそ。貴重な情報、誠にありがとうございます」
お二人がご挨拶するなか、副長、アスラン、ディアッカ先輩、私も目礼を交わし、ご挨拶を終える。
皆で起立して敬礼し、司令長官から順に士官室を退出する。ジュール隊のお二人をお見送りする役はアスランに、積もる話がまだまだあるだろう。ここは気を使わなければいけない。 - 24二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:53:38
アグネス「(見落としは無いか?話忘れたことは無いか?)」
イザーク先輩達3人の背中をお見送りしながら、頭の中がグルグルする。
アグネス「(仮に在ったとしても、もう考えが回らない。仕方ない、今はこれが精一杯だわ)」
急展開に急展開で気押されているのは何も副長だけではない。
私だってルビコン川の前には怖気づく。賽を振るか否か判断する日が、今日でなかったことに正直安どしている。
ただ、きっとこの先遠からず来るだろう。そのとき、思い切った結論を果たして出し、行動に移せるだろうか。
私は自分のことをもっと果断で大胆不敵な主体的人間だと思っていた。勝ち馬に乗るためにリスクを厭わない。乱世でこそより一層輝く存在なのだと。
それがこの有様だとは!
自分が思っていた以上に臆病な人間であったことに深刻なショックを受けている。守りに入っていた。恐かったんだ。本当に怖かった。分を過ぎた陰謀に立ち向かうことに怯む気持ちが湧いて来て、それを止められなかった。
その事実を前に呆然と通路に立ち尽くす。廊下は戦場な筈なのに…。
愚かしい!だから何だと言うのだ。『恐れ』は生存のための本能だわ。今は良し、ただ、今日するべきことをするのみ。
アグネス「(訓練に戻ろう。手が空いたなら、カオスのシミュレーション訓練、訓練あるのみだわ!)」
そう言えば、そろそろレイの健診が終わる頃かな。あいつ、本当にめんどくさい立場ね。こっちもどう扱うか困るわ。
ただ、せっかくのエルスマン博士のお力をお借りできることになったんだから、あっちこそ体調に気を付けてもらわないと困るわ。 - 25二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 06:01:45
情報共有して信頼できる政治家筋に情報提供する
この状況でそれ以上打てる手はないもんね政治家任せにするしかない
ただ後手にならざるを得ない状況で議長が議会を強引に掌握されたらカウンタークーデターを起こさざるを得なくなる
最低限でも議会に後ろ盾のある味方が何人か居て最悪の事態が起きたときに議長を排除する為のお墨付きが欲しいところだが… - 26二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 14:10:41
ニコルも草葉の陰で喜んでるよ
- 27二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 17:31:03
戦時中のプラント最高評議会議長やりたい放題し過ぎ問題
- 28二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 18:42:16
議長を見るにプラント最高評議会議長ってかなり強権振るえるしその権力とのバランスの兼ね合いもあって任期が1年だったりする?
最高評議会議長の権力ではなく議長の政治力の賜物かもしれないけど - 29二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 23:47:18
まあ、パトリックも戦略目標を土壇場で変更したりで、他の議員にかなりヒンシュク買ってたのに、銃弾でしか止められなかったしねえ。
- 30二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 00:11:45
駆け足でシミュレーション訓練室に入る。そのまま、四の五の言わず自分のシミュレーターに乗り込む。
クレタ島の地形を再現したマップ上でカオスを空中・地上・海上とグルグル動かし、戦闘シミュレーションを重ねる。対ガイア戦、対デストロイ戦の訓練もやってみる。
デストロイの相手はなかなかきついわね。単独だとかなり厳しい。
アグネス「(何気に20門ある熱プラズマ複合砲『ネフェルテム503』が難関ね。高エネルギー砲『アウフプラール・ドライツェーン』は飛行可能なモビルスーツなら、それなりに躱せる余地があるけれど。『ネフェルテム503』のメリーゴーランドのような火線、基地攻防戦で一回潜ったけど、心臓が縮むところだった)」
反対にガイアについては、もうそれほど脅威には感じていない。恐るべき機動力だとは思うが、良くも悪くもバクゥの上位互換だ。奇襲さえ回避できればグフでも対処できると思う。
それより肝心なのは陽電子リフレクター装備モビルアーマー。クレタ攻めでは彼らがより現実的な脅威になる。ザムザザーにしろ、ゲルズゲーにしろ、ユークリッドにせよ、もう散々相手にして来た機体ではあるが…。
アグネス「(地上では宇宙とは勝手が違うし…。今回は全体の数、物量が違う。そこを軽く考えたら、自分か味方が死ぬ)」
脅威度ランキング2位は、フォビドゥンヴォーテクス。こいつは陸に引きずり上げない限りかなりの難敵ね。
一応、水中でもタコ殴りにするなり、手足を捥ぐなりなり、戦闘の仕方がないわけではないけれど。
アグネス「(連合のトランスフェイズ装甲は『実装個所は動力部やコクピット周辺などの機体の重要箇所に限定されている』。そして、この機体の強化チタニウム製耐圧殻は胴体周辺のみ。ハイネ先輩ならアビスを操って、高速誘導魚雷と水中使用可能なビームランスで何とかできるはず)」
まあ、極論、避戦に徹するのも有りだわ。この任務の第一目的は連合艦隊を撃滅して、ボスポラス・ダーダネルス海峡の突破を防ぐこと。第二にクレタ島に集結している大軍団に致命打を与えること。
無論、その『艦隊』の中にフォビドゥンヴォーテクスも含まれて入るけど本体ではない。連合艦隊の中では空母・大型揚陸艦の方が断然、優先度が高い。最悪、フォビドゥンヴォーテクスは取り逃がしてしまっても構わない。 - 31二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 00:36:01
アグネス「(この機体の水中速度100ノットは確かに驚異。でも、それを言ったら空中でセイバー、カオス、インパルス、グフ、そして、母艦ミネルバは、それをはるかに上回る速度で飛行している。多分、最高速度ではグゥルにも及ばないのではないかな)」
何より、最高速度が何ノットであれ、それを発揮できなければ意味はない。
連合軍はこの高性能機体を港の防御と艦隊の随伴護衛に投入してしまった。その時点でフォビドゥンヴォーテクスの優位の半分は消えてしまっている。
港・基地の防衛が任務なら、どうしても『通せんぼ』に徹しなければいけないし、艦隊に同行するなら、一番船足が遅い艦を無視して行動することはできない。
攻守三倍とよく言われるように、基本、防衛戦は守る方が有利だ。しかし、攻勢側に優位が全くないわけではない。何時、何処を攻めるかの主導権は基本こちらにある。
アグネス「(行動範囲と進軍速度に足枷を着けられた状態で、あの機体は戦わされる。何機いるのか正確には分からないが…。うーむ。立場が逆なら上層部に文句を言いたくなるわね。せっかくの機体、使い方を間違っているわよってね)」
だが、かと言ってフォビドゥンヴォーテクスだけでボスポラス・ダーダネルス海峡を突破させることは自殺行為。
海峡とマルマラ海はプラントの友好国である汎ムスリム会議に取り囲まれている。中立国とか言いながら、彼の国とプラントはもろに協力関係だ。ボスポラス・ダーダネルス海峡通過時に汎ムスリム会議海軍が『ソナーに感あり』、となった瞬間、ザフト基地に瞬時に情報が届く。
そうなれば、仮に100ノット出ていようが、彼らが軍港に接近するころにはこちらの防衛体制が整っていることだろう。空中とは違い、海中から単機駆けするには、そもそも向いていない地形なんだ。
シミュレーター内で浅瀬に追い込まれたフォビドゥンヴォーテクスのコックピットにビームサーベルを突き刺し、一旦、訓練を終える。
また倒れたらたまらない。休憩しよう。 - 32二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 00:44:52
訓練室の休憩スペースに向かおうとすると、同じくシミュレーターを出たシンとルナマリアが心配そうに歩み寄って来る。
シン「アグネス、その…。大丈夫か?」
アグネス「ええ。おかげさまで。あんた達も無理しちゃダメよ。レイは?」
シンに一方的に気を使われるのも癪なので、気を使い返してやるわ。
ルナマリア「もうそろそろ帰る頃だと思う。アグネス、もう本当に気を付けてね!」
アグネス「分かってるわよ。ダイダロス基地の様子は?他の部隊も結構到着しているでしょう?」
心配げな視線を私に注いでくれるルナマリア、ありがたいけれど少し迷惑ね。どの道、次の作戦には参加しなければならない。今休むことで生存確率が上がるならいくらでも休むけど、そうじゃないでしょう。今は立ち止まるべきではない。
シンとルナマリアに目線で席を勧めつつ、自分も腰を掛ける。
ルナマリア「そうね。もういっぱい。月軌道艦隊の他の6隻も来ているし、アルザッヘル上空宙域に展開していたジャガンナート艦隊の一部、ジュール隊と一緒に戦っていた隊。それに軍本部やザフト情報省、政府のお偉いさんたち、議会の人も。何でも表彰式と議長の声明発表があるとか」
アグネス「(なるほど。基地管制も大変そうね。随分気合が入っていることで。もっと早く知らせてほしかったけど!!)」
シンが隣からルナマリアの言葉を捕捉する。
シン「軍本部の人や情報省はジュール隊のすぐ後には到着していたんだって。そこまで気づかなかったな」
アグネス「それはそうよ。私達は自分の任務に手一杯だったし、そもそも疲労困憊していたわ」
そう答えながらも、心の中でちょっとした引っ掛かりを感じ、考え直す。軍本部に情報省ね…。特に不自然なことは無いか。うーん。疑い出したらきりがないかな。 - 33二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 00:47:26
アグネス「エクステンデッドのこともあったから。そうじゃなくとも大量の連合軍捕虜から聞き出せるだけ情報を集めなければいけない。彼らの管理や輸送の手配もある。急いで出張って来たんでしょう。捕虜といえば…。そっちは?」
ジュール隊が監視してくれているから、虐殺などは起きていないはずだが、ふとしたきっかけで悲劇は起こるものだ。
ルナマリア「本国からも捕虜の虐待・拷問の禁止が強く通達されているわ。輸送船も続々とダイダロス基地に。プラントでは収容所の開設も始まっているそうよ」
良し。千載に汚名を残すことは避けられそうね。
アグネス「そう。良かった。助けた捕虜が殺されるのは…。もうたくさんよ。ゴンドワナみたいなことは、人生で二度と遭遇したくないわ。」
少し息が詰まる。宇宙を貫く巨大な光の滝が一瞬脳を掠める。
いけない。また、嫌なことを思い出した。一呼吸置こう。大丈夫、もうゴンドワナのようなことは起こらない。
私の言葉にシンとルナマリアも黙ってうなずく。気持ちは同じか。
場の空気が暗くなりかけたタイミングで訓練室の扉がスゥっと空く。誰かと思えばレイが入室してきたわ。
顔色は…、悪くないわね。
レイ「3人とも…。心配をかけたな。一先ず、データはエルスマン博士に」
シン「レイ…」
ルナマリア「おつかれ」
お疲れなのはこっちよ。レイもあちこち検診で疲れただろうけど。
シンとルナマリアの歓声を受け嬉しそうな表情を浮かべ、レイはこちらに視線を移す。 - 34二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 00:52:20
流石にブスっとしているわけにはいかない。
アグネス「無事にすんで何より。検診を受けた以上、ちゃんと傷病休暇を申請して来院しなさいよ」
私の言葉、特に『傷病休暇』と言う単語を聞いてレイは目を丸くする。まあ、私も実際に申請が通るかは自信がない。『体を労わりなさい』の意味で言っただけだわ。
レイ「休暇か…。そうだな。たまには…、な。それよりそっちは?」
アグネス「大分ましになったわ」
『休暇』と言う単語、余程面白いのかシンやルナマリアも一緒になって、ちょっと皆で含み笑いをする。爆笑するわけにもいかないからね。
レイ「元気が戻って…、何よりだ」
アグネス「まあね。そろそろ表彰式の準備を。着替えましょう」
シン「ああ」
ルナマリア「そうね」
ルナマリアと更衣室に入り、汗でべたつく下着を脱ぎ、洗濯済みのものにかえる。何と無く気分も切り替わったように思う。嫌な思いが引きはがされたようで心地いい。
何時もの略綬いっぱいの制服に袖を通しながら、ふと考える。表彰式でまた勲章を貰い略綬が増えることになるだろう。流石にそろそろネビュラ勲章が回ってくるはず。
アグネス「(変なタイミングの表彰式…。ただ、これまでも大概だったわね。どうせなら、貰えるものはしっかり貰っておきましょうか。勝ち取ったものなんだし)」
そうだ。ルナマリアに一言。これは今、指摘しないとダメね。 - 35二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 01:17:17
アグネス「あんた、フォビドゥンヴォーテクスとガイア、デストロイの特訓している?」
ルナマリア「え…。ガイアの方は。デストロイも一応、攻撃を避けきることまでは。でも、フォビドゥンヴォーテクスは海中だからやってないわね」
良かった。対ガイア、対デストロイ対策はしていてくれた。多分、デストロイ対策はチームでシミュレーションした方が良いわね。
フォビドゥンヴォーテクスについて、実は私もお任せモードだった。ハイネ先輩とアッシュ隊の分担だと心の中で思っていたわ。でも、そう言う気持ちで今回の作戦は乗り切れないことに思い至った。
アグネス「戦術を駆使して、もし陸に引きずり上げられたら、カオスもザクも戦闘に加わるかも。海上から弾幕として複数のバズーカを一斉に発射するケースもあり得るはず」
ちょっと驚くルナマリアの表情、お互いに真剣な目で見つめ合う。
ルナマリア「確かに…。ごめん。ちょっと気が緩んでいたかも」
アグネス「ぜんぜん。私もアビスがあるから大丈夫だって、さっきまで思ってた。パイロットはハイネ先輩だから安心だってね。でも、試合じゃないんだから、水中で1対1の戦いを演じる必要なんてない。僚機を失わないように、全員で戦わないとね」
各モビルスーツとミネルバが有機的に連携しながら戦うよう心掛けないと絶対に戦死者が出る。何とか避けたい。その気持ちがルナマリアにも伝わって欲しい。
アグネス「(何をいい子ぶっているんだ、今更…。いや、今だからこそ!)」
ルナマリア「了解。全員で」
短く強い口調で言葉を放つ彼女。ルナマリアの瞳の奥に闘志が宿っているのを感じ取り、彼女の瞳に映る私の目が戦意を失っていないことを再確認する。
アグネス「ええ。全員で」
此方も息を合わせて…。良し!団結、大事ね。
二人で出入り口に向かう中、ちょっと軽口を叩いてみる。
アグネス「さーて。それはともかく、どの勲章授与されるかな。いっぱい欲しいな」
ルナマリア「ちょっと!もう」
委員長殿の窘めボイスを片耳で聞きながら、しゃっきりした姿勢で表彰式に向かうことにする。 - 36二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 09:30:10
☆
- 37二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 18:15:54
規制で全然書き込めてなかったですがいつも楽しみにしてます
- 38二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 22:39:13
情報省が来てる…?
不穏な気配が… - 39二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 00:28:32
ミネルバからグラディス司令長官、副長、パイロット全員で宇宙港に上陸する。宇宙港に上陸、考えると不思議な表現だけれど、そうとしか言えないわね。
出迎えに月軌道艦隊6隻の幹部とパイロット隊が整列していたので皆で一斉に敬礼する。この仲間たちと再出発か。もう一々『生き残りの6隻』とか思うのは止めよう。ミネルバ合わせて7隻、これからは単に『月軌道艦隊』と心の中でも表現することにする。
アグネス「(艦隊の…、部隊の名前は消えなかった。それなら、一々、『旧』とか『新』とかつけて考えるのは何かを侮辱するようで、ちょっと耐えられない)」
司令長官が6人の艦長と挨拶を交わし、順に握手をしている。艦長の内、5名が女性で育休切り上げ組だけど、ここは気楽に大きく構える。
何でも復帰した将兵の内、産休切り上げ組に関してはグラディス司令長官が直々に説得するなどして、もう一度休暇を再取得させたとのこと。それを知ったのは下船間際で…。
最近、急展開が多すぎるし、後から後から事後報告みたいに知らせてくるのもどうかと思う。頭がついて来ないわ。
でも、これは良い判断ね。こればっかりは。戦力がどうこう以前に赤子から母を奪うのはやはり気が咎めるから…。
アグネス「(母だけじゃないわね。父の産休切り上げ組もいたから。同じことだから良いか)」
それでは育休切り上げ組は良いのか、と問われたら返す言葉はない。赤子から親を取り上げるのは残酷で、幼子から親を取り上げるのは別に悪いことではない、とはならないから。
望ましいことでは勿論ない。でも今は戦時、国民全体でお国のために耐えねばならない時。優先順位が高い順で仕方ない。彼女・彼らの英断を称えるのみだわ。
それから、3隻のナスカ級と3隻のローラシア級に乗り込んでいる36人のパイロット隊にも視線を向ける。
目があった人達に目礼すると、相手がビクンビクン反応するからちょっと面白い。私の勇名もそこまで響くようになったか! - 40二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 00:44:34
まあ、そんな感慨はともかく…。やっぱり女性が多いわね。育休切り上げ組と出向帰りの配置転換組かな。配置転換組もパイロット経験があるはずだけど、こちらは楽観できないわね。機体だって変わっているし。
ただ、剽悍そうな顔つきをしている者が6名。レクイエム照射から生還を果たしたナスカ級のパイロット隊だ。内面から滲むような独特のオーラが漂っている。彼らが見た光景、体験した出来事がどれ程のものであったか、到底想像できない。
こっちはこっちでメンタルが危ういように思う。死に場所を求めて、なんて考えているんだったら、自分で精神病院の扉を叩いて欲しい。彼らが『戦友』としてこの場にいるのだと信じたいわ。
では、誰を当てにするべきかと言えば、有給・年給切り上げ組の人達ね。パイロット隊の中で割とお気楽そう、と言ったら失礼だが、相対的にまだマシな感がある。メンタルダメージを負っているのは前者と同様だけど、まあ、この中ならね。
多分この層を基盤にクレタの追加部隊を組むべきかな。進言しよう、あとで。
顔合わせを済ませた後、各艦長とパイロット隊隊長格が私達一行に合流し、基地内兵員輸送車に分乗、表彰式会場に移動する。
兵員輸送車から眺める広大なダイダロス基地、なかなか悪くないわね。戦略砲レクイエムと第一司令室は吹き飛ばしたけれど、かなりの施設が無傷で残っている。単なる大規模基地として接収、再使用する分には心強いザフト月面部隊の大拠点になるだろう。
アグネス「(まだ連合アルザッヘル基地は健在、逃げ込んだ死にぞこないの連合艦隊も2個~2.5個程度は残存している。ダイダロス基地はあいつらを見張るためにもなくてはならない拠点)」
うーん。惜しいな。月軌道艦隊が残るなら、やっぱりジャガンナート艦隊に引き渡したくない。引き渡したくないけど、今の規模じゃ手に余る、無念。 - 41二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 00:54:21
そんなことを考えていると同じ車に乗り合わせたシンと目が合う。
アグネス「なに?」
シン「いや…。何かわかんなくて…」
アグネス「何が?」
シン「怖いって言うのかな。褒められるのが。巻き込まれるって言うか…」
ほう。落第生(赤服)でも察するところがあるのね。隣のルナマリアに注意を向けると彼女も小さく震えている。何か大きな企みに引き擦り込まれているような感覚に2人とも苦しんでいる。
斜め前に座るレイの目が一瞬光る。鬱陶しいなこいつ。何とかして欲しい。放っておこう。
ここは正直な胸の内を明かしても危うくはないタイミングだろう。
アグネス「私も正直恐い。飲み込まれそうよ、と言うか既に飲み込まれているけど。でもそれは時代や環境のせい。私達個人のせいじゃない。良心に恥じることは何もしていないのだから、今を乗り切ることを一番に考えない?」
ルナマリアにも視線を振りつつシンの目も見ながら、自分の心根を打ち明ける。私は二人に共感を表して寄り添いたいし、私も出来れば寄り添って欲しい。
そう伝える。
シン「ああ。そうだね」
ルナマリア「うん」
言葉少なげだが確かに二人の不安な空気が和らぐのを感じる。私も和らいでいると思いたい。
チラっとレイにも視線を投げる。私と目が合った瞬間、気が咎めたように彼の視線が引っ込む。同時にさっきの怪しい眼光がかき消される。
気が咎めるなら、そんなふうに振舞わないでよ、本当に。こっちはそうでなくとも参っているのに。
式典会場となるダイダロス基地の大集会場は、私達が付く頃には大賑わいになっていた。各国の報道陣が詰めかけている。
アグネス「(ダイダロス基地が陥落して僅かな間にこんなに?プラントの放送局や新聞社だけなら分かるけれど…)」 - 42二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 01:09:40
大洋州連合、汎ムスリム会議、旧アフリカ共同体西部と言った同盟国・友好国からのジャーナリストだけでなく、目下交戦中の同盟条約締結国からも多くの報道陣が入場している。
アグネス「(大西洋連邦、ユーラシア連邦、南アフリカ統一機構、東アジア共和国。敵対国の記者が会場を闊歩している。入場手続きを通過した人達だけど、ちょっと複雑ね。国際紛争においてジャーナリストは保護されなければいけないけど。だからと言って、敵国の記者まで基地内に入れなくても…)」
オーブ連合首長国、スカンディナビア王国、赤道連合、南アメリカ合衆国と言った『お付き合い組』の記者も混じっているわね。
赤道連合とはインド洋で戦闘しているから、関係はもう主敵に近くなちゃってるかな。
奥の本会場まで皆で大名行列を作って練り歩くと、カメラマンが凄い勢いでシャッターを切り出す。パシャパシャパシャパシャってやつね。
自己顕示欲が満たされて超嬉しくはあるけれど…。
ルナマリア「すごいわね…。何だか」
ルナマリアが後ろから話しかけてくる。良かった、驚き怖じているのは私だけではない。急なシャッターの嵐に面食らいながら進む仲間たちの気配を感じ取る。皆で渡れば、赤信号さえ無効化できるわ!
アグネス「そうね。友好国の記者はプラントがお招きしたとして…。他の国の記者はダイダロス基地陥落に賭けて準備していたんでしょうね」
務めて平静に言葉を返す。ここで内面が露呈したら、相乗効果で二人とも崩れてしまう。会話を楽しむの、会話を!
ルナマリア「じゃあ、ここに入れたこの人達は…」
アグネス「内心ホクホクでしょ。『他社を出し抜いてやった!』てやつね」
パシャパシャが続く中を歩いているうちに、はたと思い至る。
そうか、私達は今、『時の人』なのか。英雄艦ミネルバとその艦長(司令長官)、副長、パイロット。忙し過ぎて、たまに頭から吹き飛ぶわ。
シンもショーンもデイルも他の人達も、皆戸惑っている。ただ、我武者羅に必死に戦って気が付いたら…、てやつね。 - 43二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 01:18:32
アグネス「(あれだけ上に行くとかエースになるとか、言っていたはずの私でさえこの有様か。せっかく苦労が報われそうなのに)」
多くの戦友が死んだのに自分だけ、そう耳元で囁く声がする。その言葉を説き伏せるのに苦労する。。
アグネス「(だから何?そのことと私が褒められることは別の話だ!寧ろ私が表彰されることで彼らの犠牲・献身にも世間の関心が向く。もし、共同受賞なら遺族もより報われるはず!個人受賞でも貰った後に聞かれたらこう言えば良い『この勲章は戦友と共に』と)」
私は卑怯者ではない。そう信じたい…。心から。
取材可能エリアの向こう側まで何とか姿勢を崩すことなく歩き切ったわ。人生の晴れ舞台だもの。余計な葛藤はポイポイしなきゃ。少なくとも今は。
式典会場までたどり着いても居心地の悪い時間はまだ少し続くことになる。会場に参列した他のザフト軍人の視線が痛い。『ミネルバ』・『ミネルバパイロット隊』に対する畏怖の念。
妬みの視線とはまた違った恐さがある。同格のジュール隊が参加してくれているのが救いか。あちらは私達より耐性がありそうね。見習いたいわ。
慌ただしく時間が過ぎ去る。居心地の悪い時間が流れ去ってくれるのは良いことだ。
それはそうと、私はミネルバの列でも前の方に立っている。司令長官、副長、ハイネ先輩、アスラン、シン、私、レイ、ルナマリアの順番だわ。まあまあ妥当な順番ではあるけれど。
アグネス「(シンが前なのはやっぱり癪ね。私より撃墜数が多いから、仕方ないんだけど)」
さっきまでの葛藤はどこにやら、早速心中で悪態をつき始める。うん。これで良い。ペースを戻そう。
前方、女性が進み出るのが目に入る。ブラウンの長髪、青服が彼女の最高評議会議員であることを証明している。 - 44二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 01:26:29
すると次の瞬間、リモート参加のために設けられたモニター画面が一斉に点灯し、演壇のバックには大型スクリーンモニターが下りている。
クリスタ・オーベルク「これより、C.E.73年ダイダロス基地奪取記念式典を開幕します。この式典は、月軌道並びに戦略砲レクイエム攻防戦に多大な功績を上げ、またその身を捧げた我がザフト軍将兵の表彰と顕彰を目的としたものです。司会は私、プラント最高評議会議員クリスタ・オーベルクが務めます」
オーベルク最高評議員の声で会場の騒めきは一気に引き、皆が姿勢を真直ぐ正す。不躾に取材エリアの前まで進出していた取材陣は、係員が本来の場所まで再誘導される。
アグネス「(オーベルク最高評議会議員か。傍にはノイ・カザエフスキー最高評議会議員もいらっしゃるわね。この二人はちょくちょく同士一緒だから仲が良いのかしら)」
二人とも一期目の議員、ほぼエアーウーマンだったから良く知らないのよね。
数合わせのために連れてこられたという所か。議長にとっては前大戦を乗り切った再任組より一年生議員の方がやりやすい。議場はライトナ―最高評議会議員に丸投げしてきたな、これは。
オーベルク「式の初めに当たって、一本の記録映像を放映します。この映像は連合軍の犯した戦争・人道犯罪を広く国際社会に問うものです。映像の内容はザフト軍がダイダロス基地を奪取後、回収した資料・証言と、基地攻略戦と連動して行われた『ロドニアのラボ救出作戦』で得られた貴重な証拠を合わせたものです。入手した資料は膨大です。今から放映する映像に含められなかったものも合わせ、これより全世界に無制限に公開いたします」
オーベルク評議会議員の言葉が終わると会場が一時暗くなり、スクリーンモニターに一本のドキュメンタリー風の映像が放映され始める。
前列のシンが心配そうに私に振り向く。『堂々としなさい』のアイサインを送り、前を向くように目線で促す。
内容が心配なのは私も同じだけど、もう私達は俎板の上の鯛なのだ。鯛なら堂々とするべき。
シンにも意図は伝わったようで、顔を戻したわ。全く、隣の子が話しかけたせいで、何故か先生に一緒に怒られる子になるところよ。 - 45二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 09:27:02
☆
- 46二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 19:51:11
ロゴス討伐宣言来るのか
デスティニープランまで宣言するかな
そこまでは無理、か? - 47二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 19:53:43
twitter@lEfypqjuhEEjr0M@1751638995724022119/photo/1
クリスタ・オーベルクって誰だっけ? って検索したらモブ議員もちゃんと設定あった事に驚いた
- 48二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 01:01:51
保守
- 49二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 02:35:26
スクリーンモニターに明かりがともり、『罪の在処』のロゴが筆記体で映し出される。この記録映像の題名かな。
その次に『悲劇の始まり 地球連合軍第81独立機動群『ファントムペイン』の文字が表示される。
アグネス「(『第81独立機動群』、連合軍の独立大隊みたいなものかな。それが悲劇の始まり、とは?)」
私は知らないうちに物知らずにでもなっていたのだろうか。会場に列席している将兵の中には既知の者もいそうな空気がする。因みにミネルバでは司令長官以外は『?』マークだ。グラディス司令長官は『聞いたことはある』って感じね。
アグネス「(まあ、一々聞かなくてもこのまま見ていれば何かしらわかるだろう)」
ナレーター「『ファントムペイン』は地球連合軍内に存在する非正規特殊部隊です。地球連合軍所属部隊としての正式名称は第81独立機動群、多くの非人道的隠密任務を遂行してきたことが判明しています。
中央アジアにおけるコーディネイター難民キャンプ虐殺事件を含む数々の戦争犯罪・人道犯罪を繰り返してきた部隊として、その動向はザフト情報省が徹底的にマークしてきました。
彼らは地球連合軍から部隊名を与えられ、連合軍と軍事施設を共有し、連合軍に似せた軍服を身にまとい、連合軍一般部隊よりも先進的な武器を揃え、他隊から資材や人材などを自由に引き抜く権限と優先指揮権を与えられた存在である一方、その実態は、ブルーコスモスが管理する私兵部隊であり、国際法のみならず、同盟条約締結国の国内法においても違法な存在。
しかしながら、その存在は連合軍上層部では公然の秘密であり、『ファントムペイン』の任務は連合軍正規軍と相互補完の関係にあります。
驚くべきことに、アーモリー1事変を引き起こし、ザフト軍の懸命なユニウスセブン破砕作業を執拗に妨害し、今日、世界が直面している悲劇の狼煙を上げたのも、この者達の手によるものなのです。」
女性ナレーターが淀みない声で解説を述べてくれる。なるほど―。
アグネス「(あの部隊…。アーモリーワンから戦ってきた鬱陶しいやつ等が地球連合軍第81独立機動群『ファントムペイン』だったのか。なるほど)」 - 50二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 02:41:31
会場の騒めきが大きくなる。とは言え、うーん。なるほど、うん?そう言えば!
アグネス「(諸悪の根源じゃない!おっと、危ない。プロパガンダに引っ掛かるところだったわ)」
前でうんうん頷いているシンの脹脛に蹴りを入れる。ビクッとして振り向くシンに声を出さず『自分で考えなさい』と唇を動かす。暗いけど、ちゃんと見えるはず、この距離なら。
意図が伝わったシンも『分かった』と唇を動かし、二人でまた映像記録に視線を移す。スクリーンモニターの映像はアーモリー1事変当日の光景が編集されて流れている。
格納庫に保管されているカオス、ガイア、アビス。あの日の格納庫の監視カメラか。やがて2人の少年と1人の少女が現れ、その場の兵士たちを殺戮すると、3機のセカンドステージシリーズを強奪する。
アグネス「(3人の顔に何とかモザイクを入れてあげて欲しかったけど…。第二次大戦開始の歴史的記録。無理か…)」
格納庫を突き破ったビームが複数のモビルスーツを破壊し、遠くない位置にいたデュランダル議長とアスハ代表が、護衛兵とアスランに庇われている。
ダークダガーLがザフト艦ごと宇宙港を破壊する映像が放映され、コロニーの外ではミラージュコロイドを解除したガーティー・ルーが前方のナスカ級をゴッドフリートで轟沈させている。
式典会場に参列した将兵に怒りが充満するのを肌で感じる。360度全方位の血液が沸騰する音を実際に耳にしている錯覚を覚える。
周りが高ストレス反応を示すせいで私自身はどこか冷めた感想を抱く。事件当事者なのに今一つ実感がわかないわね。あそこで戦っていた筈なのに。
アグネス「(半年も経っていないと言うのに、もう何年も下手したら何十年も昔の出来事のように感じる。いろいろなことが起こりすぎて)」 - 51二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 02:55:44
戦争の始まりを手柄を立てる絶好の機会と喜びさえした自分はもうこの場にはいない。今は、ただ疲れた翼を休めるオリーブの木が恋しい。
映像内の視点はそこで何故かミネルバカタパルト内に飛ぶ。護衛官時代のアスランと首長服のアスハ代表、そして私がスクリーンにデカデカと映る!
アグネス「待って。このお二方は!!」
アスラン「銃を下ろせ。こちらはオーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハ氏だ。俺は随員のアレックス・ディノ。デュランダル議長との会見中騒ぎに巻き込まれ、避難もままならないままこの機体を借りた。代表は怪我もされている。議長はこちらに入られたのだろ?お目にかかりたい」
頭部に外傷を負って苦しむアスハ代表の顔をドアップにした瞬間にナレーションが開始される。
ナレーター「C.E.73年10月2日、プラントの軍事工廠『アーモリーワン』において、3機のセカンドステージシリーズモビルスーツ、カオス、ガイア、アビスが地球連合軍、第81独立機動軍『ファントムペイン』に強奪されました。停戦条約に違反した宣戦布告無しの先制攻撃であり、卑劣なテロ行為と言っても過言ではありません。
この大事件にはプラント最高評議会議長デュランダルとオーブ連合首長国カガリ・ユラ・アスハ閣下も攻撃に巻き込まれ、アスハ代表は負傷、ザフト軍の献身的かつ適切な対応により事なきを得ました。
この映像に登場しているアレックス・ディノ氏の本名はアスラン・ザラ、今はザフトに籍を置きフェイスとして世界の安寧の為、貢献されています。二人を庇って両手を広げている女性はアグネス・ギーベンラート。ザフトアカデミーを次席で卒業した後、ミネルバ・パイロット隊に着任。『月光のワルキューレ』の二つ名で世に知られるスーパーエースです」
暗闇の中、視線が一斉に自分とアスランに向くのを感じる。どこかで、ぼそぼそ『あれが月光のワルキューレ』とか言う声が聞こえたけど、何のことやら。
アグネス「(というか本当に『月光のワルキューレ』って何?いつの間に付けられたの、そんな二つ名?もしかして今日の式典のためにでっち上げたの?)」
響きは格好いいけれど…。うーん。まあ、貰えるものは貰っとくか。 - 52二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 03:05:57
ただ、後ろの記者席でオーブの記者が熱心に反応していることは素直にありがたく思う。両国の関係改善につながるかも知れないし、アスランの面子も立つというものだろう。
無論、この映像の真意は他にある。『連合・ブルーコスモスの非難』こそが目的でアスハ代表のお怪我を世界放映した。一国の国家元首を平然と巻き込む極悪な組織、ファントムペインと言ったところか。
アグネス「(それと艦内の記録映像は提出済みなのね。まあ、当たり前か)」
しかし、今、この映像を流す意味は何だろう。ダイダロス基地の話はどうなったのか?
ナレーター「第81独立機動群は地球連合軍所属部隊でありながら、自らは『ユニウス条約を批准していない』と言わんばかりの行動をとり、禁止されたミラージュコロイドを臆面もなく使用していました。アーモリー1事変は宣戦布告前、条約が無効となる前のできごとです。
そして、この艦、ガーティー・ルーはこのレクイエム攻防戦に連合軍戦力して参加し、ダイダロス基地陥落直前にある重要人物を搭乗させ、密かに脱出していたことが判明しました」
ナレーターの言葉が終わると同時に映像が切り替わる。
この映像は…。ダイダロス基地宇宙港監視カメラね。日付と時刻を見るに確かに基地陥落目前。そこにはあの忌々しいガーティー・ルーの艦影がはっきり映っている。一度入港して、慌ただしく再出港しようとしているところだろうか。
アグネス「(私達がデストロイ3機とカオス、アビスを撃破した後ね。この時刻なら、私達は最後に移動してきた中継コロニー『マルタン』の護衛艦隊と満身創痍で戦っていたわ)」
となると、やはりこの艦はあの戦闘中、隙を見て撤退したことになる。
監視カメラの映像が少し早送りされると、やがて一人の特徴的な男が周囲の兵士にヒステリックに当たり散らしながら、速足で艦に乗り込むさまが大きく投影される。
アグネス「(白い短髪、黄金色にところどころ紫の刺繡が目立つ上着とズボン、黒い高級そうな猫を連れている。いかにも、成金って感じね)」
ガーティー・ルーは男を乗せるや戦闘中の味方などお構いなしに発進、宇宙の闇の中に逃げ込んでいく。 - 53二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 03:10:35
アグネス「(この男がロード・ジブリールか。まあ、こんなことをしたら残された兵士が激高してもやむなしね)」
ザフト情報省は降伏した連合将兵の尋問が予想外にうまくいき、大満足だったことだろう。彼ら、私が基地に踏み込んだ時も滅茶苦茶切れてたからね。
降伏の許可を出した後ならいざ知らず、いや、その場合でも後ろ指をさされるのは免れないが…。それすらせずに逃げ出したなら、後に残された連中に秘密を守る義理などない。
アグネス「(さぞ、有ること有ること、正直に洗いざらい話してしまったことでしょうね)」
ナレーター「この人物はブルーコスモス主義者の現『盟主』ロード・ジブリール氏です。彼は世界を裏で操る軍産複合体『ロゴス』のメンバーにして現代表でもあります。『ロゴス』こそブルーコスモスの母体で在り、ファントムペインは彼らの私兵でもあるのです。
そして当日、ガーディー・ルーがダイダロス基地に存在したことこそ、地球連合軍第81独立機動群『ファントムペイン』が非公然であれ実在する証拠であり、連合上層部が組織ぐるみで一連の戦争犯罪と人道犯罪に手を染めていた証拠でもあります」
アグネス「(え…。ここでサラッとロゴスを暴露するの?唐突過ぎない?)」
案の定、後ろの記者たちがざわついている。ガーティー・ルーがダイダロス基地にいたことから『ロゴス』は飛躍があるのではないか。
そもそもこの映像でわかるのは…。精々、ガーティー・ルーが連合軍の指揮命令系統の下にあった事と撤退時に『誰か』を乗せたことしか分からない。
アグネス「(訂正、アーモリーワンからの一連の戦闘に加わっていたことは判明しているから、連合の条約違反と戦争犯罪は確定するわ。多分、地球連合軍第81独立機動群『ファントムペイン』の存在も)」
でも、頑張ってそこまでだろう。後何かあるか…。
アグネス「(そうだわ。基地の兵士が証言するから、この男がブルーコスモス主義者の現『盟主』ロード・ジブリールであることまでは確定するのか。アホだなこいつ)」
でも、そこから『ロゴス』ね。うーん。勢い任せ過ぎないか?こっちについては。 - 54二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 03:23:53
私の懸念などどこ吹く風で記録映像は流れ続ける。
お次はミネルバとガーティー・ルーが繰り広げた追撃戦、あの時は結構大変だったわ。追撃しているつもりが奇襲されたり…。あれから、私達は大変な目にしか合ってない。戦時だから仕方ないけど。
そして、この鼬ごっこの終着駅は定まっている。
『ブレイク・ザ・ワールド』、ユニウスセブン破砕作戦。あの日を境に人類の歴史は一つ変わってしまったと言って良いだろう。前の大戦からそんなことばかり続いているけれど。
ミネルバパイロット隊、アスラン、ジュール隊がメテオブレイカーで必死にユニウスセブンを叩き割ろうとするのをテロリストが妨害し―。
アグネス「(あれ?!カオスとガイアとアビスが全力でメテオブレイカー設置作業を妨害している…。ああ、そうだったわね。)」
そうか。この映像は世間で流布している『ユニウスセブン落下テロ映像(連合視点)』ではなく、『プラント視点のユニウスセブン落下テロ映像』だ。ミネルバ隊とジュール隊のコックピット記録映像から編集されている。
だから、大西洋連邦が発表した映像から故意に省かれたシーン、地球連合軍第81独立機動群『ファントムペイン』がユニウスセブン破砕を妨害し続けた場面が克明に映り込んでいる。
こっちの映像はこっちでジン・ハイマニューバ2型をチラっとは掠める程度にしか映していないがイーブン以上に誠実と言えるだろう。
少なくとも嘘はついていない。あの作戦が不十分で終わった最大の要因の一つがあの3機の妨害であったことは事実なんだ。
アグネス「(なるほど、遠回しに落下テロの被害は連合の身から出た錆でもあったと示唆している訳ね。連合と言うか…。ここでは『ロゴスとブルーコスモスのせい』と言う方向に話を持って行きたいわけか)」
大気圏に突入するインパルス(シン)とザク(私とアスラン)を映した後、記録映像は再びセカンドステージシリーズ強奪の場面に巻き戻される。 - 55二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 03:38:25
もうここまでで結構なボリュームになっている。だんだん脳が疲れて来た。
どれどれ―。
自動小銃で武装した少年が2人、自動小銃とナイフで武装した少女が2人、ザフト兵を殺しまわっている。スティング、アウル、ステラね。
アグネス「(現場はかなり凄惨な状態。当たり前か…。というか今更だけど、この3人、私服で戦っているの国際法違反じゃない?コニールたちとは状況も立場も違うし。まあ、今更か)」
そんなことを考えていると、やがてナレーターの解説が始まる。
ナレーター「彼女彼らはこの事件の加害者でありますが、ロゴスとブルーコスモス、『ファントムペイン』の被害者でもあります。
この少年たちの正体は『エクステンデッド』。ブルーコスモスの手により、薬物投与や外科手術、幼少期からの戦闘訓練を強制された強化兵士。
連合は彼らを生きた兵器どころか兵器の部品『生体CPU』として、定期的な記憶の操作まで加えながら利用しているのです。
ザフト軍が制圧したエクステンデット関連施設『ロドニアのラボ』の全データを世界に公表します。電子、書籍、あらゆる媒体でこの事実、人道に対する罪を世界に告発いたします」
その言葉が終わるや否や会場のあちこちから悲鳴や慄き、言葉にならない嗚咽が一度に広がる。スクリーンモニター一面に映される『ロドニアのラボ』の内部、深淵の底などという綺麗な言葉ではないこの世の本当の地獄とでも言えるような光景が広がっている。
『ラボ』の入口からエクステンデッドと思われる子供の死体が無数に散乱している。銃殺された子たちは口封じの犠牲者。助けられたのは僅かだと聞いていた。だから、これはまだ見られる。覚悟していたし、軍人だから耐性がある。 - 56二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 03:40:41
アーサー「うわぁぁぁぁ!!これは!いったい何なんですか、ここは!」
前から副長の慄きあえぐ声が聞こえる。それを奇異に感じる者はこの場にいない。同じような呻き声や悲鳴が式典参加者も取材エリアからも、軍人・文民の隔てなく、そこら中で上がっているから。
勿論、私の前のシンと二つ後ろのルナマリアも。
施設のさらに奥にはまるでホルマリン漬けにされた標本のような形でガラスに閉じ込められたまま亡くなっている子供達が多数。ディストピア物の映画を見るのとは訳が違う。『○○博物館』の展示物じゃない。
アグネス「(どれだけ苦しかったのか。痛かったのか。つらかったのか。寂しかったのか。想像することしかできない。この半開きになった濁った眼の亡骸が人の死と言えるだろうか。人間はどうであれ、こんな風に死んではいけないはずなのに。何人も何人も…)」
誰かが嘔吐したのを合図に貰いゲロの連鎖が起こる。その更に奥にはガラス棚に無数の脳が剥き出しで保管されている。あんなものをどうしようと言うのだ。
ナレーター「遺伝子操作を忌み嫌う連合、ブルーコスモスはこのように薬やその他の様々な手段を使って子供たちを生きた兵器に仕立て上げてきました。戦うためだけの人間、この『ロドニアのラボ』はその実験、製造施設の一つです。
ひたすら戦闘訓練だけを施されて、適応できない、または付いていけない者は容赦なく淘汰されます。ここで言う淘汰とは、尊厳の無い死を意味します」
『僕たち私達のお父さん、お母さんを殺したのはコーディネイターです。コーディネイターは空の悪魔です。平和のためにコーディネイターを皆殺しにしよう。正義の為、青き清浄なる世界のために』
自分が電極を繋がれたわけではないのに、目の前で拷問同然の洗脳を受ける児童たちの記録映像を目の当たりにしたら人間は冷静ではいられないらしい。
研究所から押収したデータ・資料の放送はまだまだ続くが、これは拷問なのか…。 - 57二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 03:48:06
アグネス「(64年7月、11廃棄処分3入所。8月、7廃棄処分5入所。『西部戦線異状なし』ならぬ『ロドニアのラボ』異常なしとでも言った記録ぶりね)」
押収したデバイスからコマ送りのように次々と資料が投影され、一つ一つが脳裏にこびりつく。
ナレーター「研究所のデータを復元したところ、アーモリーワンでモビルスーツを強奪した3名のパイロット、アウル・ニーダ、スティング・オークレー、ステラ・ルーシェもこのラボで強化兵士にされたことが証明されました。このことは…」
役者がかった抑揚で解説を続けるナレーターの声が昂ぶる感情を臨界寸前まで引きずり上げる。
アグネス「(もうエクステンデッドと『ファントムペイン』の存在、彼らの背後にブルーコスモスがいることは十分わかった。残りの資料は後日検索で済ませて欲しい。お願いよ!)」
必死に脳内をブロックしているが、私も周囲と同様、だんだん限界に近付いている。心の水密区画が破れたら、私も泣き出し、胃の内容物を吐き出してしまうだろう。
後ろではレイが嗚咽を漏らすし蹲っている。仕方ないのでレイの前後に立っていた私とルナマリアで顔面蒼白になっているレイを抱き起す。ルナマリアも涙を流している。
戦場とはまた異なる残酷な現実に私達は震えあがっている。第二次世界大戦時、戦場を潜り抜けた兵士でも解放直後の強制収容所の中を覗き込んだら耐えられなかった、という話を聞くが、少しわかった気がする。
会場は完全にパニックになりつつある。慌てた誰かが証明を点灯させ、暗闇の沼から何とか皆を浮上させる。
この醜態、式典運営者もここまでの状況を想像できていなかったとしか思えない。多分、映像の中身までは見ず、というか急な式典だったので確認する時間がなくぶっつけ本番で挙行したと言う所だろう。概要までしか知らなかった、といったところだろうか。
ここの運営は大丈夫かとも思うが、急展開に苦しんでいるのは私だけではないらしい。
ともあれ、上映は一時中断される。 - 58二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 03:55:44
オーベルク「じょ…。上映途中ではありますが…。ここで一旦、休憩を撮りたいと思います。皆さん、ごゆるりご歓談を…」
クリスタ・オーベルク最高評議員が吐き気をこらえ、真っ青な顔になりながら、上映会の休止を宣言する。後ろのノイ・カザエフスキー最高評議員は大号泣している。
我が国の最高権力者2名の有様を目の当たりにして、乱れた気分がサッと引く。うん。冷静になったわ。
なるほど、仕込みなしのほうが迫真の事実、って感じがする。この演出を仕込んだ人は嫌な有能さがある。
アグネス「(しかし、あの二人。なまっちょろいわね。やはり建国の父母と比べると一年生議員は線が細い)」
ただ、これで実感した。あの二人は『白』だ。議長の傍に居ても大それた陰謀に加担できるようなタイプじゃない。勿論、人間には様々な顔があるものだけど…、多分断言できる。
ともあれ、今は、レイだ。まったくあんたの養父、二人ともロクなもんじゃないわね。
シン「レイ、何か飲むか?」
アグネス「吐くでしょ。落ち着かせるのが先」
ルナマリア「レイに決めさせなよ」
シンも加わり3人でしょうもない口論をしつつレイを担ぎ上げる。そのまま、会場の壁際の長椅子に何とか座らせる。
肩で息をしているレイ、私達ももう帰りたい。表彰式で一体何をしているんだか。運営、無能すぎ。インパクトが有れば良いと言うもんじゃない。
そう思いながら、ふと取材陣を見ると、ジャーナリストどもは、劇薬を水槽に入れられた魚の群れみたいになっている。単なる勲章授与式に来た訳じゃないことに気が付いたみたいだわ。
アグネス「(なるほど。効果は確かにあった。今頃、各国のニュースは大賑わいだわ。サイバー空間にもデータが放流された。多分、同時とか言っていたから、エクステンデッド関係以外の、『プラントが今流したいと判断した』全データが不可逆的に放出されたはずだわ)」
今頃、全世界の住民が『ファントムペイン』、『ロード・ジブリール』、『ロドニアのラボ』、『ロゴス』、『ブルーコスモス』を検索していることだろう。それが何をもたらすのかまでは、私が知る由もないが…。 - 59二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 08:44:32
やりすぎだぜ議長
- 60二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 09:06:09
これで民意はもう打倒ロゴスに傾いたな
議長悪辣過ぎる… - 61二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 09:46:00
オーブと外交ルートあるから潰すの止めて対ロゴスで抱き込みに来たか
- 62二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 18:36:41
- 63二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 00:24:30
(不意打ちでグロ映像を流すなんて)
なんて事しやがる! - 64二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 00:58:30
ただまぁ本編でもロゴス公表→ヘブンズベース戦までやってるのにジブリール受け入れちゃってるからどうだろうね
- 65二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 01:35:27
- 66二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 02:35:30
レイの身体の震えが治まり、息が整うのを待つ。
ルナマリア「なんだかすごいことになっているわね…」
アグネス「そうね…」
記念式典会場は急遽、野戦病院みたいになってしまった。心理的ショックを受けて体調が悪化した者達がベッドで一時横になるなどしている。床にぶちまけられた吐瀉物を衛生兵が掃除している。
ミネルバ・月軌道艦隊メンバーも例外ではない。各々、簡易ベッドに横に成ったり、設置されたパイプ椅子に座り込んだりしている。
因みにレイは前者、私とシンとルナマリアは後者だわ。
こんなことになって心細いのか、同期3人冬の寒さに耐える雀のように集まっている。レイの安静を邪魔しないように、かと言って目を離さないように程よい距離で肩を寄せ合っている。
一応、記念式典は1時間後に再会予定。記録映像の放映は中止。残りはサイバー空間にアップされたものを各々確認出来たらするようにとのことだ。
デバイスが配られたので、3人で覗き込んでいる。レイの体調を悪化させないように字幕版で音は消音にしている。
シン「ロゴスのメンバー、全世界に公表されてるな」
アグネス「まあ。そう言う話の流れだったからね」
他人事のように話すしかない。正直今後の世界がどうなるかなんて誰にも分からない。案外、皆気にせずに明日、明後日が来るかもしれない。明日には世界がひっくり返っているかも知れない。どうにも分からないわ。
ルナマリア「これで戦争は終わる?」
ルナマリアが難しい質問を私に投げかけてくる。正直、二つの可能性があるが…。
アグネス「寧ろ、激化する可能性があるわね。ロゴスのメンバー、まるで…。と言うか実際そうなんだけれど、世界の諸悪の根源みたいに弾劾されている。尻尾に火がついているから…。窮鼠になって悪足掻きをするかも知れない」 - 67二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 02:41:58
シンが何かに気が付いたように頷く。読書好きだから歴史の先例に思い至ったのかな。
シン「投降しても命がないなら最後まで…。ってやつだな。そうなると?」
アグネス「各国政府の上層部にもう圧力をかけて国家総動員、総力戦に持ち込もうとするかも。窮鼠と言ったけれど、彼らは鼠じゃない。こんなことをして『龍の逆鱗に触れた』みたいな結果にならないと良いけれど」
勿論、そんなことを各国の民衆が歓迎するとも思えない。戦争と内紛とテロがごっちゃ混ぜになった状態になるかも知れない。
アグネス「(何でこんなことをしたのよ!ロゴスの対応は戦後処理で…。財閥解体と個人犯罪の立件立証で済ませればいいじゃない。通常戦争で済ませないと厄介になる一方よ)」
頭が沸騰しそうになるが、私がのぼせてもどうにかなる問題ではない。この展開に持って来たのは、どう考えてもギルバート・デュランダル。戦争が長引けば異例の2期目もいけるとでも思ったのか、あいつは!
アグネス「(いや…。2期目とか派閥独立とかで収まる話なのか…。気味が悪くなってきたわ。ユニウスセブンのことだって)」
頭を抱える私をルナマリアが軽く突っつく。
ルナマリア「ともかく…。続きを見ましょう」
アグネス「そうね」
映像記録の続きは、まず、前半部分の裏付け証拠・証言の数々が紹介されている。
私達に関わりが深いものを上げるなら、ミネルバが捕虜にした地球連合軍インド洋前線基地司令官の取り調べ映像記録だろう。あの司令官は今、地元住民の強制収容・強制労働・虐待・殺がいの罪で取り調べを受けている。
本人は強制収容と強制労働を命じ、虐待の事実を認知しながら見逃していたことまでは認めているが、基地陥落時の混乱下における殺がい行為については関与を否定。そこが争点になっているそうだわ。 - 68二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 02:47:59
それはともかく、この映像記録の焦点はファントムペインについてのもの。
取調官「確認します。貴官は地球連合軍第81独立機動群『ファントムペイン』をご存じなのですね」
インド洋前線基地司令官「そうだ。連合軍の高級士官なら知らない者はいない。少なくとも司令官クラスで知らないものは皆無なはずだ」
取調官「それで、貴官はミネルバとの戦闘前に援軍の要請を受けたと」
インド洋前線基地司令官「要請ではない。命令だ。ファントムペインのネオ・ロアノーク大佐に」
従容と取り調べに応じていた基地司令官だが、ファントムペインに話が及んだ際には苛立ちを隠せないようだ。まあ、それが原因で基地は落ち、自分は捕虜になっているのだから当然か。
取調官「ネオ・ロアノーク大佐とは?」
インド洋前線基地司令官「詳しくは知らない。20代後半から30代前半の連合軍士官…、といった風だった。仮面をかぶっているという話も。だが、そこまでしか…」
アグネス「仮面ね。また、前時代的な…。連合も堕ちたものだわ」
ついつい突っ込んでしまう。
シン「ザフトもクルーゼが仮面して居ただろ」
シンが痛い点を衝く。全くザラ前議長も困ったものだわ。
アグネス「だから足を掬われた。過ちは繰り返したくないものね」
ルナマリア「しーっ!」
ルナマリアが視線でレイを示す。勿論、私もシンも分かっているから、ちゃんと小声で話しているわよ。委員長殿は本当に、もう!
そんな私達の会話を他所に映像は続く。
取調官「彼からどのような命令を?以前した質問の繰り返しになりますが」
インド洋前線基地司令官「構わんよ。そちらも仕事だろう。突然、当部隊のウィンダムを全機出せと言ってきた。手持ちのセカンドステージシリーズとザムザザーと合わせてミネルバを迎え撃つと。基地の防衛にはガイアを置いておいてやるから、などと命じて来た」
ここは私達が知っている。あの後、また大変だった。
取調官「セカンドステージシリーズがザフトから強奪されたものである事、ファントムペインがアーモリー1襲撃事件の実行犯であることを貴官はご存知でしたか?」
インド洋前線基地司令官「黙秘させてもらう」 - 69二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 02:53:14
アグネス「(自分の都合が悪くなるとこれか…。答える義務はないから仕方ないけれど。どうせ後で情報省が手を変え品を変え聞き出すでしょう)」
取調官「では質問を変えます。貴官は連合軍内に地球連合軍第81独立機動群『ファントムペイン』なる部隊が実在すること、彼らが一般部隊よりも先進的な武器を揃え、他隊から資材や人材などを自由に引き抜く権限と優先指揮権を与えられた存在であることを証言しました。間違いありませんか?」
インド洋前線基地司令官「ああ。何度も言うように間違いない」
画面を一時停止すると、ルナマリアが視線を私とシンに向ける。
ルナマリア「この映像は…。ファントムペインが実在して。そいつらが好き放題するのを連合軍上層部は黙認するどころか積極的に関与していた、っていう証言ね」
シン「そうだな。これ、証拠になるか?」
アグネス「まあ。証言の一つにはなるんじゃない。基地の司令室は降伏時に無傷だったから、いろいろ記録も押収しているはずだし。詳しい戦闘記録ならミネルバ…、ザフト側にもある。ファントムペインのことはもう揺るがないでしょう」
インド洋基地司令官の証言映像が終わる頃、横になっていたレイがむっくり起き上がる。
シン「レイ、大丈夫か?」
レイ「ああ。大丈夫だ。俺も自分がこんな風になるとは思っいなかったから、驚いている」
起き上がるなり、意味不明な強がりを言い出すレイに呆れるばかりだわ。
アグネス「あんたね!前から『ロドニアのラボ』の話を聞くたびに自分を重ねてメンタルやられていたでしょう。まったく!!」
真っ黒議長を何とかして欲しいわ。息子なら諫言しなさい、本当に。
レイ「議長のせいではない…。とは言え、心配かけてすまない…。3人ともありがとう」
ルナマリア「良いって、ね?」
ルナマリアの優し気な声にシンと二人で頷く。父を庇い支えようとするのは人間の心理、仕方ない面もある。素直に礼が言えるようになっただけで、今は良しとしよう。 - 70二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 02:57:39
今度は4人で残りの映像を確認。ちょっと窮屈だが、また係員からもう一台デバイスを借りてくるのも面倒だ。このまま続きを確認する。
係わりが薄いところはザックリ飛ばして、今度はレクイエム第一司令室のオペレーターの証言を聞く。運よく一人助かった兵士だ。包帯グルグルだが、それなりに元気そうだわ。
アグネス「(人間最後は運ね。せっかく助かったんだから、しっかり戦後の裁判で証言してもらわなきゃね)」
取調官「その時のことを、もっと詳しく。」
オペレーター「ダイダロス基地司令官はジブリールに『しかし、本当に撃つのですかな貴方はこれを』と尋ねました。ジブリールは『当たり前だ。そのためにわざわざこちらへ上がったんだからな』と応じていました」
アグネス「(レクイエム第一射目、というか最初で最後の照射時の証言か…)」
冷静に視聴していられるだろうか。少し怖い。
取調官「その場の指揮命令権はロード・ジブリール氏が優位にあったと」
オペレーター「はい」
取調官「では、基地司令官は無理やり従わされていたのですか?」
オペレーター「いいえ。司令官は『それは頼もしいお言葉だ。嬉しく思いますよ。ならば我々も懸命に働いた甲斐もあるというもの。こんなところでもね。最近は必要だと巨費を投じて作っておきながら肝心なときに撃てないという優しい政治家が多いものでね。それでは我々軍人は一体何なのかと、つい思ってしまうのですよ』と。自分には積極的に協力しているように思えました」
取調官「貴官は違った、と」
オペレーター「…。」
ミイラ男め!言葉に詰まってるわ。性根が丸見えね。
ルナマリア「何かショックだな。連合正規部隊の軍人もこんななの?」
失望したような顔をするルナマリア、一応ファローしておかないといけないわね。今後の捕虜虐待に繋がっても困る。彼女はそんなこと絶対しないけど。 - 71二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 03:02:41
アグネス「思うに、ダイダロス基地は連合ブルーコスモス派の巣窟だったんでしょう。連合将兵全てがこう、と言うわけじゃないと思う。実際そうだったし」
シン「そうだな」
レイ「だからこそ…。問題なんだ!」
何だか勝手に盛り上がっているレイは放置、続きを見る。
オペレーター「ジブリールは『私は大統領のような臆病者ではない。撃つべき時には撃つさ。守るために』。そう言って、レクイエムの照準をアプリリウスに。私は…。目標点をアプリリウスと入力しました」
取調官「!?確かですか。本当に首都アプリリウスと!警告ではなく?!」
オペレーター「はい。当のジブリール氏が『アプリリウスだ。決まっているだろう。これは警告ではない』と言っていました」
アグネス「やっぱりか…」
今更驚きはない。シンやレイ、ルナマリアもそうだろう。動揺をほぼ表に出すことなく淡々と見ている。では、目標点が変わったのはこの後か。
取調官「しかし、レクイエム一射目は月軌道艦隊本隊に。なぜ?」
オペレーター「月の南極上空宙域でグラディス隊他ナスカ級と戦っていた第3艦隊の敗色が濃厚になったためです。アプリリウスを撃ったとしても、ザフト月軌道艦隊が健在ならダイダロス基地は報復攻撃で陥落します。だから、予めこのような事態に備えて…。第2プランも決行していました。
…参謀が駆け寄ってきました。出撃させていたアルザッヘルの艦隊に命令を伝え、ザフト艦隊を目標点誘導させつつ、照準を取り急ぎ変更せよと。
中継コロニーも動かさなければいけないから…。時間との勝負でした。上手く目標点にザフト艦隊を向けて、アルザッヘルの艦隊で挟むように足止め、固定して第一照射を…」
アグネス「…。」
シン「…。」、レイ「…。」、ルナマリア「…。」 - 72二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 03:12:45
4人とも言葉が出ない。腹の底から湧き上がってくるような怒り。
このオペレーター、突然饒舌になりやがったわ。まるで自分の仕事をやり遂げたことを誇り、自慢するような口調…。作戦が成功したとでも言いたいのか!このクズが!!
取調官「…。ザフト月軌道艦隊をレクイエム目標点に足止めするため、最後まで留まって戦闘していた連合軍艦隊の内20隻は巻き添えとなって一人として生還しなかった!良心の呵責は感じなかったのですか?」
流石に語気が荒くなりかけた取調官の質問に地球軍オペレーターは淡々と答える。
オペレーター「それが私の仕事でした。皆、勝つために戦っている。覚悟はあるはずだと」
取調官「…。」
画面からそっと目を離す。
アグネス「(アイヒマン―、『凡庸な悪』か。仕事だからでこの男は最初、アプリリウスに照準を合わせた。発射されれば数多の無辜の命が消し飛ぶことを知っていた筈なのに。
民間人・文民と重要な民間インフラへの攻撃は国際法が禁じるところ。戦闘中に誤爆したとか巻き添えが出たとかとは訳が違う。
数十万、数百万の人間が死ぬことなど、こいつの頭にない。命令したのはジブリールでもキーを打ち込んだのは自分の指だ。それなのに良心的兵役拒否や抗命など頭を掠めもしない)」
アグネス「(こんな人間には絶対になりたくない。そう思えるようになれただけでもミネルバに乗り込んだ意味があった。そう今は思える。)」
『命令されたから』と言う理由で戦争犯罪や人道に対する罪は免責されない場合がある。
情状は量刑時に判断されることだ。アプリリウスにレクイエムが放たれなかったのは何より、こいつとレクイエム発射に直接関与した人間達にとっては幸運だっただろう。 - 73二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 03:19:37
取調官「月軌道艦隊殲滅後のレクイエム発射目標は?再設定された目標点はどこでしたか?」
オペレーター「…。データに残っているでしょう。消去は間に合わなかったはず」
取調官「はい。しかし、貴方の口から真実が聞きたい」
連合軍オペレーターの目線が取調官とぶつかる。包帯の隙間から感情の見えない目がギョロリと動く。
オペレーター「アプリリウスです。第一射後、ジブリールが即座に命令、司令官が実行を指示して、中継コロニーは移動を開始し、目標点の入力も終わっていた。しかし、チャージが終わる前に『フォーレ』は堕ちた。その後のコロニーも次々とミネルバらに破壊されて。」
取調官「民間人を殺さずにすみ、安堵しましたか?」
オペレーター「いえ。任務をこなすのに必死で、それ以外は何も考えていませんでした」
取調官「…」
もう十分だろう。3人と目線で会話しデバイスを閉じる。少し伸びをすると合わせたわけでもないのに3人も体を伸ばしている。
アグネス「コーラ飲む?」
私が提案するとシンもレイもルナマリアも驚く。
ルナマリア「ミネラルウォーターでもコーヒーでも紅茶でもなく?」
アグネス「そう言う気分なの。もうすぐ休憩終るでしょう。皆は?」
シン「俺はサイダーが良いかな。三ツ矢サイダーってまだあるかな」
アグネス「さあね」
視線を残りの二人に振る。
レイ「では、俺もコーラで」
ルナマリア「え…。レイも?どうしたの」
レイ「そう言う気分だ。入院したら飲めないだろう?」 - 74二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 03:27:23
そう言って少し微笑む。冗談を言える元気、出て来たじゃない。良かったわ。
アグネス「(いつまでも凹んでられたら迷惑だからね)」
ルナマリアは私達3人を純繰りで見まわし、決断をする。
ルナマリア「私は烏龍茶で!」
アグネス「この雰囲気で?!あんたね」
ルナマリア「たまにはいいでしょう。はいはい。皆で取りに行く」
そうね。お茶くみ係は御免だわ。
シン「はーい」、レイ「そうだな」
なお。給水所には文字通りミネラルウォーターと脱水症状対策飲料しか置いていなかった模様。
まあ、世の中そんなものだろう。
休憩時間が終わり、野戦病院と化していた式典会場は装いを慌ただしく整える。みんな疲れている。立ったままがきついと判断したのか、運営スタッフは全員分のパイプ椅子を用意してくれている。
グラディス司令長官のご着席を確認した後、皆で一斉に腰を下ろす。というか、この場の制服組のトップは彼女なので本当に列席しているザフト将兵が一斉に座ったから凄い音がしたわ。
あとはオーベルク最高評議員のお声を待つのみね。 - 75二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 07:45:53
よもや議長の目的が戦争激化させて経済破壊した上でデスティニープラン導入させるなんてアグネスに分かるわけないからな
今のアグネスならデスティニープランの危険性にも気付くだろうし - 76二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 17:05:08
こんな状況で表彰式をやったところでアグネスやシンたちは嬉しくないし、なにより先にやった事のせいでメンタルが…
- 77二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 17:46:31
議長は累積で何アグネスポイントぐらいなんだろう…
- 78二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 19:57:57
減点される事しかしてないからマイナスだよ…
- 79二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 00:40:01
保守
- 80二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 01:24:54
待つこと暫し、オーベルク最強評議会議員が司会台に現れる。
全将兵が一斉に起立して彼女に敬礼する。オーベルク最高評議員の心のこもった返礼を受け、皆で着席する。
よく見ると彼女の目元は赤くはれている。記録映像の衝撃で、司会から下がった後、ひとしきり涙を流したのだろう。傍に立つカザエフスキー最高評議員の目元も赤くなっている。彼女は号泣していたから、当たり前か。
オーベルク「列席のザフト軍人諸君諸姉、並びに列席の皆様。運営の不手際をお詫びします。それではこれより表彰式に移りたいと思います。ギルバート・デュランダル最高評議会議長、
タカオ・シュライバー国防委員長、ノイ・カザエフスキー最高評議会議員、ラクス・クラインアプリリウス市長代理、ご登壇下さい」
前方に設けられた一段高い舞台に4名の要人が登壇する。ミーアは登壇時、チラっとミネルバ隊に向かって目配せしてくれたわ。やっぱり、そう言うのは素直に嬉しいわね。
アグネス「(ミーアが授賞式はアプリリウス市長の名代か。ラクス・クラインの父、シーゲル・クライン元最高評議会議長はアプリリウス市選出だった。その縁と言うことね)」
今、プラント各市は避難・疎開させた国民を日常生活に復帰させ、日常の営みを再建することにてんてこ舞いだ。そのことも要因ではあるだろうけど、式典に花を添えるためにも必要とされたのだろう。
登壇した4名の内、まず、カザエフスキー最高評議会議員が演壇に進み出る。
オーベルク「ザフト軍諸君諸姉並びに御来賓の皆様はご起立ください。タリア・グラディス司令長官、演壇の前に進んでください」
タリア「はい」
オーベルク最高評議員の言葉と共に全員が一斉に起立する。ザザッという大きな音が会場に響く。
グラディス司令長官が演壇の向かいに立つとカザエフスキー最高評議員はやや擦れた声で、それでも精一杯の威厳と感謝の気持ちを込めて皆に語り掛ける。 - 81二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 01:27:58
カザエフスキー「月軌道艦隊司令長官タリア・グラディス、プラント最高評議会並びに60人議会は各議会3分の2以上の賛成により、月軌道艦隊に『議会名誉黄金勲章』を授与することを決定いたしました。月軌道艦隊の自己犠牲並びに並外れた奮闘が有ればこそ、プラント首都アプリリウス並びにプラント全市がレクイエム攻撃による惨禍を免れ得たことが決定の理由です」
月軌道艦隊本体殲滅直後にグラディス司令長官が述べたとおりか。月軌道艦隊はプラント6000万国民、ザフト全軍、友好諸国の損害代理艦隊になったと。
アグネス「(そして、生き残った私達、残存艦隊と人員はその後も力闘を続けた。それを賞してと言うことね)」
カザエフスキー最高評議会議員からグラディス司令長官に黄金のメダルが授与され、会場から満場の拍手が巻き起こる。リモート参加の皆さんからも。
カザエフスキー最高評議会議員の勧めでメダルを持った司令長官が此方に振り向くと報道陣のシャッターが一斉に押せれ、あのパシャパシャパシャという音が騒々しく会場をつつむ。
カザエフスキー「この金メダルは最高評議会議事堂に恒久的に展示されます。また、月面南極エイトケン盆地上空宙域会戦以降、ダイダロス基地陥落までの期間、軍務に従事していた月軌道艦隊将兵とそのご遺族には国民の寄付金で賄われたブロンズの複製メダルを授与いたします」
再び会場に満場の拍手が起こる。私達は授与される側なので拍手はせず黙って皆からの賛辞を受ける。
散々な表彰式だけれど、この勲章は正直嬉しい。国内最高位の名誉がもうこの世にいない戦友たちとご遺族に…。少しは心が軽くなった気がする。
アグネス「(ついでに私も共同受賞できたしね。これで『議会名誉黄金勲章』の共同受賞は2回目か。まずまずかな)」
暫し後、グラディス司令長官は席に下がり、カザエフスキー最高評議員も一旦、演壇から下がる。グラディス司令長官の着席を確認した後、皆で一斉に座る。まあ、どうせすぐ立つことになるだろうけれど。 - 82二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 01:37:22
オーベルク「次に月軌道会戦の表彰に移ります。この戦いは月軌道上でカーナヴォン、マルベース、ブルトン、の3隻よりなる月軌道艦隊グラディス分艦隊が地球連合軍第八艦隊と混成艦隊よりなる2個艦隊に襲撃を成功させたものです」
戦闘のあらましの説明がなされた後、今度は演壇にデュランダル議長とタカオ・シュライバー国防委員長が並んで前に進む。
オーベルク「グラディス司令長官、ハイネ・ヴェステンフルス、アスラン・ザラ、シン・アスカ、アグネス・ギーベンラート、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク、前に」
タリア「はい」
アグネス「はい!」
ハイネ、アスラン、シン、レイ、レナマリア「はい!」
7人で椅子を立って前に進む。今回はこの面子か。なかなか副長の番が回ってこないことを心苦しく思う。役職柄仕方ないが…。共同受賞はどんどん溜まっているけれど。
アグネス「(縁の下の力持ちと言えば聞こえがいいけれど。履歴書・職歴書には書けるし、勲章の数も増えてはいる。でも、気が咎める)」
因みに当の本人はそんなことを一切気にかけず、嬉しそうにグラディス司令長官や私達を見送ってくれる。聖人とはあのような人を言うのではないだろうか。
欠点が少ない人が優れている、そんな思い込みがどれだけ目を曇らせていたのだろう。と言うか、この人特に失態も犯していないから、そもそもが大した欠点もないかも知れない。
アグネス「(もう少し年齢が近ければワンチャン夫にと思ったかもしれないわね。残念)」
そんなことを考えながら、シンの後に続く。こいつは単純で良いわね…。 - 83二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 01:46:12
グラディス司令長官を前にして後ろに私達が並び、演壇の前に立つ。
まず、シュライバー国防委員長より、司令長官に声がかかる。
シュライバー「月軌道艦隊グラディス司令長官。月軌道会戦におけるグラディス分艦隊の奮闘に敬意を表し、分艦隊に『プラント最高評議会議長部隊表彰』及び感状を授与する。また、当会戦の置ける貴女の優れたレーダーシップと抜群の勲功に報いる為、個人としてはネビュラ勲章と証明書を授与するものとする。3つ目、本当におめでとう」
タリア「ありがとうございます」
会場の全員が席を立つ音が聞こえ、割れんばかりの拍手が巻き起こる。素晴らしい、本当に。
アグネス「(ネビュラ勲章3つ。そうそうあることじゃないわ。と言うか本当に初じゃない?)」
『プラント最高評議会議長部隊表彰』は部隊表彰だから、無論、私も対象だ。ミネルバ名義で6回受賞してきたけど、今回は「グラディス分艦隊」名義のものになるのなるのね。
心の中がチクチクする。そのグラディス分艦隊も今は私達以外、この宇宙に存在しない。三隻とも撃沈してしまった。
ミネルバに移乗した私達はただ幸運だった。私より善良な人が亡くなった方の中に何人もいたはず。ご遺族に渡ったリボン(略綬)はその悲しみを癒すのにどこまでの効力を持つのだろうか。
アグネス「(何で自分が…。そう耳元で囁く声を聞くのが辛い。誰かに『そんなことないよ』と言って欲しくて、でもそう言われて安心したら、もっと自分を嫌いになってしまいそうで…)」
黄金のメダルとリボン、でもそれさえ認められなければ、もっと辛い。割り切るしかない。
胸に新しい略綬付け加え、3つ目のネビュラ勲章を佩用した司令長官が観衆の方に体を向けるが、その眼はやはり悲しげだ。そうそう人生100点満点にはいかない。受け入れるしかないことなのだろう。 - 84二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 01:51:57
グラディス司令長官が脇に退くとシュライバー国防委員長も一旦、横にそれ、代わりにデュランダル議長が前に進む。
アグネス「?」
デュランダル「アスラン・ザラ、シン・アスカ、アグネス・ギーベンラート、レイ・ザ・バレル。前に」
アスラン、シン、アグネス、レイ「はい」
呼ばれたので一歩前進し、演壇で議長と向き合う。
アグネス「(表情が全く読めない。この張り付いた微笑みの意味するところは何だろう)」
デュランダル「特務隊アスラン・ザラ以下4名にプラント最高評議会の名において、『最高評議会名誉勲章』及び最高評議会議長感状を授与する。
連合軍第八艦隊にその正面より勇猛果敢かつ効率的な攻撃を敢行したこと、来援に来た混成艦隊に対しても驚くべき沈着さで精緻な戦闘を続けたことは、最大級の称賛に値する」
そう告げると私達4名に回れ右をさせ、一人一人に後ろから勲章を首にかけていく。名誉勲章は首にかける形式だから。
会場皆が息をのみ、最後のレイの首に勲章が掛けられると会場の全ザフト軍兵士が立ち上がり、割れんばかりの拍手をしてくれる。
合わせて、感状と略綬、ロゼット、名誉勲章旗も授与される。ロゼットはフォーマルな平服時、左襟に佩用するためのものだ。
シュライバー「誠に素晴らしい。知っての通り、最高評議会名誉勲章受章者は、軍内の身分の上下に関係なく先に敬礼をされる特権を常に有する。
毎月一定額の手当、制服費手当、退職金の割増し、本人及び家族の特別旅行権、最高評議会議員就任式並びに就任記念パーティーの招待状贈与、日常生活で任意に軍服を着用する権利などの恩典が与えられる。本当におめでとう」
シャッターが切られる音と拍手を聞きながら、何とも言えない感慨を抱く。今の状況が望ましくないことは分かっている。でも、嬉しくないと言ったら嘘になる。訂正、すっごく嬉しい。
嬉しさと…。さっき見せられた現実との落差にくらくらする。どのように心のバランスをとればいいのだろう。もう分からない。自分を見失わないようにすること。それだけだ。
アグネス「(ここで飲まれたら、議長の思う壺だわ)」
薄気味悪い議長の笑みをチラリと見やる。こんなに近い距離で立つのは久しぶりだ。ディオキアの時よりずっと怖い。緊張するじゃなく、ひたすら恐ろしい。
とは言え、何時までもそのまま突っ立っているわけにもいかない。 - 85二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 02:40:59
先ずは式を乗り越えないと。
その後、ハイネ先輩にネビュラ勲章、ルナマリアには殊勲十字勲章が授与されていた。
ショーンやデイル他パイロット隊は銀星勲章を授与されていた。遺族の下には後日届くそうだわ。
そうしたやり取りをぼーっと見聞きして居たら、気が付くと自分の席に戻っていた。ぬけているな、私も。
熱に浮かされたような顔を出来るのもここまで。ここからは、悲しみと共に褒められないといけない。最悪な気分になることは目に見えているが…。
オーベルク「続いて、月面南極エイトケン盆地上空宙域会戦の表彰を執り行います。この会戦は月の裏側に大規模な地球軍基地があることを看破した月軌道艦隊グラディス分艦隊に6隻のナスカ級を加えた計9隻の戦力が連合軍第三艦隊を打ち破った戦いです。この時の月軌道艦隊分艦隊の働きにより、連合軍はレクイエム第一射目の目標点を変更せざるを得なくなり、首都アプリリウスは間一髪で守護されました」
物は言いようね。私達はその時はレクイエムの存在を知らなかった。超巨大砲がダイダロス基地に配備されていることは察知していたし、核などの大量破壊兵器の存在を疑ってもいたが…。
あんなものは想像の範疇を超えていた。
アグネス「(それでもアプリリウスが撃たれなくて、パパとママが無事で嬉しい)」
無論、レクイエムに燃やし尽くされたザフト軍人にも親がいて。加えて子供がいた人も大勢いた。自分の家族の無事ばかり喜ぶのは心苦しい。けれど、それでも嬉しい物は嬉しい。生きていてくれて良かった。
アグネス「(それに首都を喪失したとなれば、プラントの損害は計り知れない。そこに何食わぬ顔で立っていらっしゃる議長はその方が良かったでしょうけど)」
まさかね...。流石に、いや。分からない。
止めよう。兎も角、乗り切る。そこからだわ。 - 86二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 02:45:48
オーベルク「グラディス司令長官、ハイネ・ヴェステンフルス、アスラン・ザラ、シン・アスカ、アグネス・ギーベンラート、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク、前に」
一同「はい!」
また、7名で進む。まあ、司令官+スーパーエース級となるとこの面子になるのか…。
アグネス「(胸を張らなければ。私は皆から褒められて当然の偉いことをしたのだから!)」
舞台の上で並ぶとシュライバー国防委員長が前に進み出る。
シュライバー「7名とも一歩前に」
一同「はい」
今度は7名共同受賞かな?取り合えず前に歩を進める。
シュライバー「月軌道艦隊グラディス司令長官。月面南極エイトケン盆地上空宙域会戦における月軌道艦隊の奮闘に敬意を表し、月軌道艦隊に『プラント最高評議会議長部隊表彰』及び感状を授与する。
グラディス司令長官以下8名に『ネビュラ勲章』を各個人に授与し、証明書を交付するものとする。当会戦の勝利はグラディス司令長官の卓越したレーダーシップと諸君諸姉7名を筆頭とする全パイロット・クルーの抜群の精神力と技術により勝ち得たものだ。特に活躍が著しかった君たちに本官が手渡す機会を得れたことを嬉しく思う」
そう言いながら国防委員長は司令長官、ハイネ先輩、アスラン、シン、そして私、レイ、ルナマリアと一人一人勲章を胸に付け、がっしり握手をして回っていく。
その表情を見てやっと思い至る。シュライバー国防委員長はゴンドワナ訪問後、間一髪でレクイエムの照射を免れた人だ。思うところが大いにあるのだろう。
アグネス「(生き残ったことに苦しんでいる人は大勢いると言うこと、忘れないようにしよう)」
今回の部隊表彰は月軌道艦隊のものね。グラディス司令長官のネビュラ勲章は4回、アスランは3回(1回は前大戦)、ハイネ先輩は2回か…。
私も授与されて嬉しいはずなんだけど、さっきの名誉勲章の衝撃が大きすぎて、ちょっと拍子抜けしている。
それはそうとして、国防委員長の勧めで聴衆に向き直るとやはり割れんばかりの拍手を受ける。パシャパシャし過ぎだわ。新聞に載れば親戚が喜ぶから良いけれど。
アグネス「(出来ればヴィーノ・ヨウラン・メイリン達一般クルーにもスポットが当たって欲しい。『プラント最高評議会議長部隊表彰』は皆も貰えているから、そこは良いんだけど)」 - 87二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 08:28:23
✩
- 88二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 12:31:19
ついにネビュラ勲章か
フェイスになる日も近い - 89二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 12:38:00
- 90二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 22:07:02
☆
- 91二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 22:31:43
☆彡油
- 92二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 00:20:08
余韻が収まるの待ちシュライバー国防委員長は後ろに引き、私達も一旦自席に下がる。
オーベルク「引き続き、レクイエム攻防戦の表彰を開始します。初めに『フォーレ』破壊作戦について。中継コロニー『フォーレ』はダイダロス基地直上に設置されたレクイエムの第一中継点であり、この兵器の要です。
この中継コロニーを早期に破壊できたことがプラント本国の破壊の危機を防ぐため、最も肝要でした。この作戦に従事した列席者、グラディス司令長官、トライン副長、ハイネ・ヴェステンフルス、アスラン・ザラ、シン・アスカ、アグネス・ギーベンラート、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク、他16名のパイロットは前に」
一同「はい」
席に座ったと思えばまた起立だ。強制スクワットかな?
今度は大所帯で大名行列を作り、皆でキビキビ前に進む。ここは格好をつけるべきところ、リモート先ではミネルバの皆も式典を見ている。がっかりさせるわけにはいかない。
グラディス司令長官と副長を前列にして横隊を組んだところで、シュライバー国防委員長が再び演壇の前に進み出る。
シュライバー「皆、良く『フォーレ』を墜としてくれた。それによって稼げた時間がプラントの興廃を分けたと言っても過言ではない。
月軌道艦隊に『プラント最高評議会議長部隊表彰』及び感状を授与する。グラディス司令長官はその適切極まる判断と武功を賞してネビュラ勲章を授与する。
また、ハイネ・ヴェステンフルス、アスラン・ザラ、シン・アスカ、アグネス・ギーベンラート、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホークはパイロットとしてその獅子奮迅の働きを賞し同じく各個人にネビュラ勲章を授与する。
トライン副長は上官を支え部下を導き、祖国の防衛に顕著な功績をあげた。その働きに殊勲勲章を以って報いたい。
ショーンデイルには殊勲勲章、その他のパイロットには銀星勲章を。各自、勲章の証明書も受け取ってくれたまえ」
一同「はい!!」
アグネス「(やっと副長も叙勲された。嬉しいわ。直属の上官なのにちょっと蔑ろにされているようで嫌だった)」
何より自分がしているように思われたくなかったから。 - 93二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 00:31:56
アグネス「(それにしても…。何か高位勲章のバーゲンセールになって来たわ。それだけの功績を上げているから当然ではあるのだけれど。これでグラディス司令長官はネビュラ勲章5回、アスランは4回、ハイネ先輩は3回…。私とシンとレイと2回、ルナマリアは1回目かのネビュラ勲章か)」
ただ、これはネビュラ勲章がインフレしたと言うより単純に会戦の規模が大きかったことが要因だ。
例えば、戦犯クルーゼは『モビルアーマー37機・戦艦6隻撃破』でネビュラ勲章を貰った。
当時と違って今は連合軍もモビルスーツに乗り、陽電子リフレクター搭載モビルアーマーなんて化け物もいる。
当時と比べれば撃破の難易度は上がっているわけだ。それを考えるとそう不自然な訳でもない。
シュライバー国防委員長が嬉しそうにグラディス司令長官、ハイネ先輩、アスラン、シンと順にネビュラ勲章を胸に着けていく。
グラディス司令長官が余計な偏見を受けなくて済むようになってホッとしている自分が居る。国防委員長は月軌道艦隊をちゃんと戦友だと思ってくれているみたいだわ。
じゃあ私も、目一杯格好の良い姿勢をとってそれにお応えしなきゃね。
エアーマンとして名高い(?)国防委員長は勲章を着けた後、微笑んでもう一度握手をしてくれた。人には様々な面がある。本当にね。
アグネス「(いつもやり込められているけれど、この人は政治的立場としては議長と少し距離がある。この縁を大事にするべきね)」
そのまま勲章授与は粛々と進み最後の順番の者に銀星勲章が渡されたタイミングで、皆で観衆に向き直り巨大な拍手を受ける。
嬉しそうな様子のトライン副長を目の当たりにして私も嬉しい。 - 94二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 00:47:44
さて、下がるか、そう思っているとシュライバー国防委員長が脇に下がり、何故かデュランダル議長が御付きの者を伴い私達の前にやって来た。観衆の視線が一気に集まり、何事かと会場が騒めく。
アグネス「(何しに来たの?こいつ)」
真っ黒議長の企みかそれとも国家の代表としての職務の範囲内か。表情からは伺えない。
アグネス「(この張り付いたような微笑みを信用する人も世の中に大勢いる。私も出来ればそちらの立場で安穏と過ごしたかったかも…)」
いけない。そんな気持ちでは飲まれる。今を凌げ、私は毒蛇の前にいるんだ!
その毒蛇はまず旧知であるグラディス司令長官の傍に歩み寄る。
デュランダル「グラディス司令長官」
タリア「はい。議長」
流石に公衆の面前、公人としてふるまおうとするが、議長のねっちょりとした未練たらたらな視線、分かる人には分かる。ウザいわ!
アグネス「(ただ、逆に言うとこの議長のグラディス司令長官に寄せる好意だけは本物の感情だと言うこと。その一点は信用できるから、ある意味で大事ね)」
デュランダル「ネビュラ勲章を5回も授与された多大な勲功、そして祖国防衛への絶大な貢献に敬意を表し、プラント最高評議会の総意により貴官に『提督』の称号を授与するものとする。
また、これより貴官タリア・グラディスをプラント最高評議会と国防委員会の承認の下、特務隊長に任ずる。特務隊員は各自に行動の自由が認められている。これより貴官は彼ら彼女らの『同輩中の首席』となって欲しい」
列席者がわっと沸き立ち歓声が上がる。
しかし、降ってわいた称号授与と特務隊長の任命に司令長官は目を瞬いている。 - 95二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 00:52:05
急すぎるけれど、妥当な理解であるとは思う。
アグネス「(確かにネビュラ勲章授与5回は大ごとだわ。元々、この勲章は他国で言う2階級特進相当とされている。白服だった司令長官のスタートラインが他国の大佐相当だったとして…。1個目で少将、2個目で大将、3個目で元帥(上級大将がある国)、4個目で大元帥に到達していることになる。勿論、『それぐらいの武功を上げて偉い』と言う意味で実際の指揮権とはまた別勘定と考えるべきだろうけれど…)」
だから、別に『提督』の名誉称号を貰うぐらいなら妥当だと思う。いっそ首席提督なり、元帥なりあげればよかったのに。今も司令長官なんだから、ほぼ変わらない。
特務隊長にしても、『誰が偉いんだ』問題の一応の解決法ではある。特務隊長職は以前から存在したのだから、これも妥当と言えば妥当だと思う。
しかし…。この男の下でそれを受けるべきなのか?最高評議会と国防委員会をもう通っているなら拒否権はないが…。
タリア「はい。全力を尽くします」
デュランダル「期待しているよ」
列席したザフト軍将兵が一斉に立ち上がると盛大な拍手をする。事情を理解しているイザーク先輩やディアッカ先輩は驚愕しているが、どうしようもない。周囲に不信を持たれないよう一緒に立ち上がり控えめな拍手をしている。
何と言うウザさ。これは酷い。完全に自分の派閥に組み込んでいるつもりだわ。
アグネス「(最高評議会も国防委員会も何とかして欲しいところだったけど…。拒む理由もないのよね。実績としては妥当だから…)」
茶番につき合ってはいられない。席に…。
デュランダル「では、次に。アーサー・トライン、シン・アスカ、アグネス・ギーベンラート、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク。5人ともこちらに来てくれるかな」 - 96二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 00:59:28
ビクッと悪寒が走る。次にこの男がやろうとすることが大体予想できるわ。
アグネス「(抱き込み工作と私兵づくりなら。次は私達か。何とか固辞出来ないものか)」
レイを除く私達4人は互いに顔を見合わせ戸惑いながら、グラディス提督と入れ替わるような形で議長の傍に進む。何か妙案は…。
デュランダル「それからこれを、君たち5人に」
議長は御付きの者から高級そうな箱を受け取り、私達に開いて見せる。
中には私の悪い予想通り、翼を模した徽章が5つ。フェイス、デュランダル派になれと、要はそう言うことだわ。
周りをさりげなく見回す。列席した将兵、リモート参加している観衆、皆祝福モードだ。断れる状況じゃない。
その上-。
デュランダル「私のみならず、最高評議会と国防委員会も君たちを選んだ。不服かね?」
アーサー「い…いえ。そのようなことは…」
議長の問いかけるような笑みを向けられ、副長が慌てて答えている。最高評議会と国防委員会の名前を出されたら、拒否出来ようはずもない。
アグネス「(踏み絵を踏ませる…、違うな。強制的に足を持ち上げて置かせる感じね。武勲を上げて特務隊入り。最高のシチュエーションを最悪の人間から押し付けられることになるとは…)」
アスランの時は建前上、拒否権があるような演出だったそうだけれど、もうそんな猶予はないと言うことね。
アグネス、シン、ルナマリア「……」
シンやルナマリアもこの徽章が呪いのアイテムであることは重々承知している。多分、タイミングが悪かった。フェイス任命の決定がなされたのは私達がライトナ―最高評議員達に情報を上げる前だったのだろう。
もし、上げた後だったとしても、反対する理由が無ければ押し切られていただろう。どちらにしても、この結果は変わらなかった。 - 97二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:04:33
デュランダル「これは我々が君達の力を頼みとしている、ということの証だ。どうかそれを誇りとし、今この瞬間を裏切ることなく今後もその力を尽くして欲しいと思ってね」
レイ「光栄です。ベストを尽くします」
総意ってレイは徽章を受け取った。このアホが!何であんたから貰うのよ!
アグネス「(やられたわ。これは不味い…。もう拒否できないなら…。これだけは言っとくべき!)」
レイがさっさと受け取ってしまったせいで、後戻りの道が完全に無くなり、副長もシンもルナマリアも完全に狼狽えている。何とかして見せないといけない。
ずいっと議長の方に一歩進みレイを押し分けるように進む。
アグネス「私、アグネス・ギーベンラートは、最高評議会と国防委員会のご決定に忠実に従います。祖国と国民の負託にお応えできるよう死力を尽くします。ザフトのために!」
レイの声を上回る大きな声を腹から出す。自分の『忠誠対象』を衆目の前で明示し、議長が開いている箱からフェイス徽章を手に取り、残りの者に手本を示す。
アーサー「自分、アーサー・トラインも最高評議会と国防委員会のご決定に従います。祖国のために全力を尽くす所存です」
シン「俺…。自分、シン・アスカも最高評議会と国防委員会に従います、プラントと国民のために頑張ります」
ルナマリア「私、ルナマリア・ホークも最高評議会と国防委員会のご決定に従います。祖国と同胞のために全力を尽くします」
私の例を参考に副長、シン、ルナマリアも一応、『議長の私兵になるわけではない』と留保をつけた上でフェイス入りの命令に従う。まあ、留保と言うか当たり前のことを言っているだけなのだが…。
皆が徽章を手に取ったところで、議長は満足そうに観衆に合図を送り、大きな拍手が再び巻き起こる。 - 98二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:17:07
私達は、と言うか私はとても喜ぶ気にはなれない。
してやられたわ!知らないうちに外堀を埋められていた。予想できたことだったはず!
この表彰式はこの男の私兵編成のためのものでもあったんだわ。
アグネス「(迂闊だった。予想できたところでどうにもならなかったでしょうけれど)」
皆の祝福の握手など聞こえない。ただただ、受け取った呪いのアイテムを手の中で弄びつつ、心の動揺を収めるのに必死だ。
苦い思いに包まれながら、表彰式はその後も続いた。
月軌道艦隊は『チェルニー戦』、『デストロイ・セカンドステージシリーズ戦』、『マルタン戦』、『ダイダロス基地レクイエム完全破壊』の功績で更に4回『プラント最高評議会議長部隊表彰』を受け、私達はその分の略綬と感状を授与された。
合同艦隊参加将兵全員(エターナル除く)に『ダイダロス基地占領記念記章』と『人道記章』が授与されたことは素直に嬉しい。ここにいない皆も記章が増えた。
アグネス「(頑張ってスティングやデストロイのパイロットを助けたかいがあったわ。今後の人生はきっと大変だろうと思うけど。苦しい思いをした分を少しでも取り戻すことが出来れば…。そう願う)」
アーモリー1で亡くなった兵士と遺族の気持ちを思うとスティングのことは難しくも思う。でも、それを彼らにぶつけるのはフェアじゃない。あの子たちをそんな境遇に置いた連中、ブルーコスモスを戦争犯罪や人道に対する罪で裁くことにエネルギーを注ぐべきだわ。
そして何より嬉しかったことは、全滅したローラン隊とホーキンス隊が連名で『議会名誉黄金勲章』を授与されたこと。最初に月軌道艦隊で黄金勲章は打ち止めかと思っていたから。私達が生還できたのは彼らのおかげ。ダイダロス基地を落とせたのも…。
どうかそのことはプラントの国民にも、地球の友好国の国民にも、皆が覚えていて欲しい。 - 99二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:34:56
グラディス提督は『チェルニー戦』と『マルタン戦』で2回、通算7回目の『ネビュラ勲章』を受け取り、『デストロイ・セカンドステージシリーズ戦』、『ダイダロス基地レクイエム完全破壊』の武功で『殊勲勲章』を2回授与された。
ハイネ先輩、アスラン、シン、私、レイ、ルナマリアの授与された勲章の種類は同じ。
『チェルニー』、『マルタン』でそれぞれ『ネビュラ勲章』を貰い、『デストロイ・セカンドステージシリーズ戦』では宇宙空間の安寧を守るために果たした貢献を賞され、『最高評議会宇宙名誉勲章』を頂いた。
アグネス「(ネビュラ勲章はこれで4回目。飛び上がるほど喜んでいるはずなのに心はどこか冷めている)」
嬉しいことは勿論嬉しい。これを目標に頑張って来たんだから。
こんな心境になっている理由は一度に勲章を貰い過ぎてちょっと現実感がないと言うこともある。戦時下だから渡せるタイミングで渡さなければいけないし、動揺した人心を沈める必要があると理解はしている。
ただ、最大の理由はやはりフェイス任命によるもの。私が今、左襟元に着けている徽章。こちらの内心などお構いなく…。議長は上手くやったと思っていることだろう。
特務隊と言う制度の濫用をもう議長は隠そうともしていないように思える。
アグネス「(自分にとって都合が良い人間、使える人間を手駒にするため、恩を着せ、首輪を嵌める。権力者の常ではあるが程度と言うものがある。議長は何に焦っているんだ?任期か、そんな理由で国権を壟断するつもりなら…)」
それ以上はいけない、今は。それにしても議長のあの視線、人をチェスの駒としか見ていない目、本当に腹が立つ。
アグネス「(一歩間違えば私も…。あんな目で人を見て恥じることもない人間になっていたかもしれない。と言うか、元はそう言う人間だったわ。冗談じゃない。そんなことに愉悦さえ感じていたなんて)」 - 100二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:44:05
デュランダル議長のやりたい放題は私達月軌道艦隊に限った話ではない。
ジュール隊は中継コロニー『グノー』と『ヴェルディ』の破壊に大きな貢献を果たしていた。
イザーク先輩とディアッカ先輩は2つ、シホ・ハーネンフース先輩は1つネビュラ勲章を授与さされ、ディアッカ先輩はその場で黒服も賜っていた。
そこまでは良い。妥当なことだと思う。問題はその後だ。
議長はまるで、ついでとでも言うように3つのフェイス徽章も3人に渡し始めた。勿論、拒否できる状況ではない。文字通り世界中の前で『デュランダル議長から』徽章を受け取る。このことのインパクトは大きい。
アグネス「(他人から見て、ああ見えるのか。これではいくら私が議長と一線を画したいと思ったところで…。政治的に距離をとりたい人間には効果的な一手だ)」
起立して、新しくフェイスに加えられた3人に罪悪感を感じながら拍手を送る。プラントのメディアがこちらの動きを逐一監視している。
落ち着け。そもそもプラントのメディアが全て議長の手中にあるわけではない。相手を過小評価することと同じくらい過大評価して萎縮するのは悪手だ。
少し落ち着くべきだ。相手が全てを把握し此方を思い通りに操っている訳じゃない。現にユニウスセブンはもう少しで破砕作業が完了するところだった。ラクス・クラインも生存している。
何よりアプリリウスも最高評議会も無事だ。陰謀なんて世界中で企てられている。
ディオキアで私はシンに『ロゴス』が世界を操っているというアジテーションは陰謀論的だと退けた。
相対的に影響力の大きい社会集団が存在することまでは否定しない。だが、複雑な要素で構成され、多くの偶発性に左右される人類社会を単独の組織が意のままに動かせるはずがないと、そう言った。
デュランダル議長も同じだ。侮るべきではないが、彼が全てを動かせるものならプラントも世界もこうはなっていない。冷静さを取り戻すべき。 - 101二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:46:28
議長は本当に人の心がわからねえな…って感想がメイク抑え目アグネス画像で吹っ飛んだ
ケバメイクしてないアグネスまじ可愛いな - 102二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:51:15
それにしても―。
アグネス「(フェイスと言えば…。不可解なのはジャガンナート隊長の任命ね。ある意味一番濫用と感じたわ。他の人には議長の思惑はどうあれ、任じられるだけの武功があるけれど。ジャガンナート艦隊は…)」
ちゃんとアルザッヘル艦隊の牽制をしてくれた。そのことの功績は大きいけれど…。役割以上のパフォーマンスを出したわけでもないし。あの任用だけは議長のごり押しだと思う。
ジャガンナート隊長とデュランダル議長、政治信条的の距離が分からない。
アグネス「(それとも…。ジャガンナート隊長はデュランダル派だったのか?極右と極左は実は近いと言うし)」
プラント保守派本流たるザラ派の私には理解しかねるわ。
それはともあれ、議長はこの表彰式で9人もフェイスを乱造したわけだ。
トライン副長、シン、私、ルナマリア、レイ、イザーク先輩、ディアッカ先輩、シホ先輩、ジャガンナート隊長。
アグネス「(本当に議長は何をしたいんだ?特務隊入りはザフト軍人にとっては名誉なこと。でもプラントと言う国家としては多ければ良いというものではない)」
じゃあ何人適切なのか、と尋ねられても解答はないけれど。多くて12~20人ぐらいかな。そう思うと今が丁度いいのか。いや、問題にするべきなのは決め方、でもそれを言うとジャガンナート隊長以外は要件を満たしているのよね。
そんな悲喜こもごもが混じる表彰式もようやく終わる。
シュライバー国防委員長が『レクイエム攻防戦従軍記章』を一連の戦闘に従事した全ザフト軍将兵に授与する旨を発表。
アプリリウス市の名代を務めるミーアは、議会が月軌道艦隊を含むレクイエム攻防戦で戦死した全ザフト軍人の名前を刻んだ顕彰碑を首都プリリウスの中央公園に立てることを決定したと報告してくれた。
何でも顕彰碑の形はゴンドワナを模したものになるそうだわ。 - 103二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 01:59:28
アグネス「(嬉しい心遣いだけど…。また大きなものになるわね)」
それだけ大きくて目立つモニュメントなら、きっと何時までも忘れられず残ってくれるだろう。悲しい記憶が昔の英雄伝に変る日まで皆待ってくれているはずだ。
ミーア、もといラクス・クラインの発表を受けて会場が柔らかい拍手に包まれる。この件に関しては私も心を込めた拍手をする。
アグネス「(それも祖国プラントとアプリリウスが残っていればこそ。頑張らなくっちゃ!!)」
戦争は勝って終わらねば意味がない。後悔も悲嘆も生者の特権だ。
具体的な休戦条約の内容は是々非々ではあるが、兎も角、この戦争が『名誉ある講和』で終わることは最低条件だ。前大戦から続く悲劇に何とか一度は幕を下ろしたい。
劫火の煙は前大戦の前から、ずっと燻っていたことは歴史を学んだ身として一応知っている。
アグネス「(それでも…。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間でさえ戦間期は20年あった(数え方に諸説あり)。戦間期でさえ衝突や悲劇が絶えなかったと知ってはいる。それでも今の時代は異常だわ)」
私は、生き延びる、上に行く、社会に福利を及ぼす、全部やって見せる。そのために生まれ育ったのだとまだ信じているわ。
オーベルク「それでは最後にプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルより世界に向け声明文が発表されます。ザフト軍諸君諸姉起立」
大きな音を響かせながら私達は一斉に立ち上がる。
もう長すぎて疲れて来たけど、たぶんこの声明で明日の世界は動く。耳をダンボにして聞くしかない。
私達の視線に答えるように周囲に目配せをしつつデュランダル議長はミーアを伴い二人で演壇に立つ。
腹話術人形にされたミーアは軽く戸惑いの表情を浮かべているが、ともあれ言われた通りにするしかないらしい。
さっき渡されたフェイス徽章を踏み割ることが出来なかった私が彼女を責める資格はない。
しかし、そのポジションは本当に危険だ。彼女もそれを分かっている。
さっき顕彰碑の構想を伝えてくれた時の明朗な雰囲気は既に萎んでしまっている。 - 104二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 03:25:41
彼女の戸惑いなど気にかけるつもりもない真っ黒議長は聖者のような顔をして取材エリアの記者たちに視線を飛ばしながら語り始める。
デュランダル「皆さん、私はプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルです。我等プラントと地球の方々との戦争状態が解決しておらぬ中、突然このようなメッセージをお送りすることをお許しください。ですが、お願いです。どうか聞いていただきたいのです。
私は今こそ皆さんに知っていただきたい。
こうして未だ戦火の収まらぬわけ。そもそも、またもこのような戦争状態に陥ってしまった本当のわけを。
地球各国政府は自らが有する情報を非民主的にコントロールし続けてきたため、未だご存知ない方も多くいらっしゃるでしょう。
多くの人が暗闇の中、平和を求め手探りを続けています。私どもが本式典開始時にお知らせした記録映像、そして世界にお示しした証拠資料がその一端を照らすものになれば幸いに思えます」
そこで照明がまた一旦落ちスクリーンモニターに映像が投影される。
ミネルバ隊とアスラン、ジュール隊がメテオブレイカーでユニウスセブンを破砕しようとするのをファントムペインが執拗に妨害している場面だ。
そんな場面をバックに今度は議長に代わりミーアの演説と言うか朗読が始まる。
ミーア「このたびの戦争はどのような経緯があったにしろ、確かにわたくしどもコーディネイターの一部の者達が起こした、大きな惨劇から始まりました。
それを止め得なかったこと、それによって生まれてしまった数多の悲劇を、わたくしどもも忘れはしません。被災された方々の悲しみ、苦しみは今も尚、深く果てないことでしょう。
それもまた新たなる戦いへの引き金を引いてしまったのも、仕方のないことだったのかもしれません」 - 105二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 03:32:08
ミネルバのタンホイザー照射を受けながらも燃え尽きず地上に落下するユニウスセブン。地上で巻き起こった『ブレイク・ザ・ワールド』の惨劇。
良く出来た映像だと思う。ミネルバ、と言うかプラントの奮戦をしっかり映しつつも地上の悲劇に喘ぐ人々の在り様を取りこぼすことなく伝えてくる。
ミーア「ですが!このままではいけません!こんな撃ち合うばかりの世界に、安らぎはないのです!果てしなく続く憎しみの連鎖も苦しさも、わたくし達はもう十分に知ったはずではありませんか?」
今度は『フォックストロット・ノベンバー』で連合軍クルセイダーズが無数の核をプラントに発射する場面が映し出される。
アグネス「(『撃ち合う世界』だから、核を撃つ場面なのね。メッセージの伝え方ね)」
ミーア「どうか目を覆う涙を拭ったら前を見てください!その悲しみを叫んだら今度は相手の言葉を聞いてください!そうしてわたく達は優しさと光の溢れる世界へ帰ろうではありませんか!それがわたくし達全ての人の、真の願いでもあるはずです!」
アグネス「(良かったグロい画像はもう配布済みだからパスしてくれたのね。セーフだわ)」
しかし、『優しさと光の溢れる世界へ帰ろう』ね。言葉の綾かもしれないけれど、私はそんな世界は知らない。私達の世代は古き良き時代を知らないから。生まれたときには世界は狂っていた。
アグネス「(前大戦までは理事国が幅を利かせていたわ。テロだって起きたし、何度も危機や理不尽にあった。私の家は高官で裕福な家だったから、ましだったけど)」
ルナマリアやメイリン、ヴィーノやヨウラン達は思うところあるんじゃないかな。
彼らは私達のようなカバーがない状態で歴史の荒波に晒されていた。ミーア自身だって、こんなセリフを素面で言える境遇では無かったはず。 - 106二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 03:42:03
アグネス「(余計なことだ。議長の声明を集中して聞くべき)」
デュランダル「なのにどうあってもそれを邪魔しようとする者がいるのです。それも古の昔から。
自分たちの利益のために戦えと、戦えと!戦わない者は臆病だ、従わない者は裏切りだ、そう叫んで常に我等に武器を持たせ敵を創り上げて、撃てと指し示してきた者達。平和な世界にだけはさせまいとする者達。
大量破壊兵器レクイエムを巡る悲劇と訪れたかもしれない破局的終末も、非道な強制労働や洗脳・薬物強化兵の戦線投入、各地で行われている凄惨な殺戮も彼等の仕業であることは明らかです!
間違った危険な存在とコーディネイター忌み嫌うあのブルーコスモスも、彼等の創り上げたものに過ぎないことを皆さんは御存じでしょうか?
その背後にいる彼等、そうして常に敵を創り上げ、常に世界に戦争をもたらそうとする軍需産業複合体、死の商人、ロゴス!彼等こそが平和を望む私達全ての、真の敵です!
私が心から願うのはもう二度と戦争など起きない平和な世界です。よってそれを阻害せんとする者、世界の真の敵、ロゴスこそを滅ぼさんと戦うことを私はここに宣言します!」
スクリーンに一瞬見たくない画像が流れた…。もうそれは見たくない。現実から目を逸らそうと言うんじゃないけど、いい加減にして欲しい。
議長の宣言が終わるとパッと照明がつき、その瞬間に嵐のような拍手が巻き起こる。本当にすごい勢いで拍手をしているザフト軍人が多い。
少なくないザフト軍人はレクイエムの照準は軍事目標のはずと考えていた。本国が目標になるのは仮定の話だと。あくまで相手は正規軍だし…、と。
それが蓋を開けてみれば、レクイエムの目標は最初から最後までアプリリウス。皆がブルーコスモス、ロゴス憎しになってしまうのも仕方ない面はある。
デュランダル「ありがとう」
聴衆に礼を言って議長とミーアは下がるが、こっちはそれどころじゃない。 - 107二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 03:51:06
周囲との温度差で風邪をひきそうになる。と言うかミネルバ組とジュール隊は割と冷静だから、皆でインフルエンザにかかってしまいそうだわ。
アグネス「(ただ、ロゴスを公表した時点で議長がこう出ることは想定していた。まあ、こうなっては仕方ない)」
『ロゴスとの戦い』なら、ロゴスメンバーの逮捕と裁判かが必要になる。罪状や刑事手続きはどうするのか、といった問題はさて置くとしても。逮捕可能なエリアからは既に逃げ出しているのではないか、最初の資料公開の時点で。
まだ、プラント勢力圏内に留まっているアホがいるなら兎も角、抑えるべきだけど。
そんなことより…。身柄拘束が間に合わないなら、もっと大事な戦いがある。
アグネス「(ロゴス関係資本・資産の散逸と隠匿は何としても防がないといけない。経済への影響が大きすぎる。プラント国民の自分には規模感にギャップがあると思うが...。
プラント勢力圏の大洋州、イベリア半島、モロッコ、西アフリカ、それにこの大戦で現在保護下にあるアゼルバイジャンやジョージア。これらの地域に存在する彼らの資産・資本は即時に差押え凍結するべき。現地政府と大洋州の同意と協力を得ながら急がないと!
半同盟国でザフト軍が駐留している汎ムスリム会議と西ユーラシア連邦にも同様の対応を要請して、一刻の猶予もない。一旦差押え・凍結した資本・資産は手順を踏んで地元企業か公共セクターに払い下げ・移管をすればいいから―)」
その他の地域のことは正直知ったことではない、というかどうしようも出来ないから。
まず、これらの手だけは打たないと話にならない。
アグネス「(資産・資本の差押えや凍結も本当はしっかりした法律や手順を遵守するべきなんだけど、止む負えない。今ある手順の内で最短最速、強引な法解釈勿論ありで!ダメなら何とでもする。
こんな宣言を全世界に出した以上、『法律の問題で出来ませんでした』は通らない。議長め、大概にしろ!)」 - 108二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 06:42:42
- 109二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 08:09:48
黒服だし、二度も新鋭艦の副長を任される程だから凄く優秀な筈なんですよ
むしろ本編の「えええ~!?」ってのを意図的にやって、場の空気をコントロールしてるぐらいの切れ者であってもおかしくない…筈、なんですけどねえ…
- 110二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 08:13:50
第3スレでアスランが言われてた『我等が誤った道を行こうとしたら君もそれを正してくれ』を拡大解釈して、FAITH皆でスエズ攻めに反対&議長のザフト私物化を公式に批判とか出来ないもんかなあ
- 111二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 19:12:01
小説版によるとローエングリンゲートの作戦説明をアスランに任せた時はミネルバに着任して間もないアスランの指揮官としての能力をクルーに示し、アスランがクルーに馴染めるよう配慮したとのことなので副官に求められる各部署間の調整能力にたけているのだと思われる
しかしシンからは副長は自分で作戦説明もできないのかと思われたり周囲からの評価が低い感じ
普段のリアクション芸人ぶりで頼りないイメージが付いてるせいだろうか?
- 112二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 20:15:25
- 113二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 20:27:09
議長のせいでまたアグネスがやる事が…やることが多い…! ってなってるよ南無
このインチキ議長本編よりも人使い荒くなってるなぁ - 114二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 23:06:21
- 115二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 23:58:35
月光のワルキューレ(医務室の常連)
- 116二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 01:07:10
議長の声明発表を聞き会場は大いに沸き立っている。
ザフト軍人たちは記録映像時の憔悴した顔色を一変、大いに気炎を揚げている。少し泥沼になりかかっている戦争に嫌気がさし始めているなかで悪の親玉が判明した、と思っているわけだ。士気も高まると言うものだろう。
グラディス提督とトライン副長、アスランは困った顔をして周囲を見回している。取り合えず運営は次の指示を出して欲しい。内容はともあれ議長の声明発表は終わり、彼とミーアは舞台を下りたのだから…。
しかし―。
司会席では、困惑した顔のカザエフスキー最高評議会議員が、もっと困り顔のオーベルク最高評議会議員と何やら話し込んでいる。そこにシュライバー国防委員長まで加わる。
来賓の60人議会議員達も隣の席の人同士で盛んにヒソヒソ話を始め、周囲は混沌とした様相を呈しそうになる。
まさかとは思うけど、あの議長、スタンドプレーをやらかして無いでしょうね?!
アグネス「(そんなはずはないと思うけど。司会のオーベルク評議員に事前に示した原稿に載ってなかったことをアドリブで付け加えたりしてないでしょうね。国家の意思表明なんだから、ちゃんとしてくれないと取り返しがつかなくなるわ)」
大枠の決定事項まで手を加えているとは考え難いが…。
オーベルク「そ…、それでは会場を変えまして、食事会に移りたいと思います。係員の誘導に従って第二会場にお進み下さい!」
オーベルク評議員は結局、式典を進める方が急務と判断したらしい。運営の指示の下、皆が移動を開始。マスコミへの公開はここまでのようだわ。部隊ごとに大名行列を作りながら歩くが、流石に皆少し肩の力を抜き始めている。
ちょっと列を乱して私語をするのも黙認してくれているから、気の合う仲間同士で軽い話し声が飛び交う。
私達、同期4人組も軽くコミュニケーションを取ることに決める。
ルナマリア「レイ、気分は?」
レイ「問題ない」
アグネス「ならば良し!」
振り回され続けた忙しい一日がようやくひと段落しようとしている。世界は今頃、蜂の巣をつついたような騒ぎだろうけど、私達は私達の日常がある。散文的だが、それが現実だ。 - 117二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 01:15:25
シン「お腹、空いたな。どんな料理が出るだろ」
ルナマリア「あんたね!」
アグネス「そう言えば夕食はまだだったわね。昼食は栄養ゼリー。最悪よ、ほんと」
昼何を食べたかは人それぞれだけど、式典参加者は皆、次向かう会場で食べる予定で来ている。その状態で胃液をぶちまけることにことになった人達はとんだ災難だった。
私も吐きこそしなかったが、精神的に相当参っていた。それでもお腹は空くのだから、人間は現金なものだ。
アグネス「(生きている証ね。明日の世界も明後日の世界も明々後日以降の未来も大事なことは皆分かっている。でも、こうでなければ人生は細やかな楽しみさえ消えてしまう)」
ともあれ、食事前に。この廊下を渡り切る前に上申しなければならないことがまだある。
まったく気が抜けない。誰かさんのせいや誰かさんのせいでいろいろなことが起こりすぎる。
まず、誰かさんその一、レイにもう一声かける。
アグネス「レイ、食欲は?後で気持ち悪いとかなしね」
振り向きざまに声かけると、ちょっと驚いた顔のレイが私の顔を眺める。
レイ「気にしてくれなくて良い。もしもの時は自分で言う。でも、ありがとう」
アグネス「どういたしまして!」
まったく、このアホのせいで今日一日は散々だわ。タイトなスケジュールがますますタイトになり、おまけにサッサとフェイス徽章を手に取って!戦友じゃなければ腕一本へし折っているところよ。
アグネス「そう!じゃあね」
レイ「おい…」
そのままスタスタ前に向かう。目指すはグラディス提督の下だわ。シンは私とルナマリアと喋るために列を下がった。そのため、目の前の背中はアスランだ。 - 118二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 01:22:51
このレスは削除されています
- 119二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 01:32:45
アスランに敬礼して通り過ぎようとすると、超難しい顔をしたアスランがアイサインを送って来る。『俺も一緒にお会いする』だそうだわ。
アスランと一緒にハイネ先輩を追い越す。その際、敬礼しようとするとワンテンポ早くハイネ先輩から先に敬礼して下さる。
アグネス「(そうか…。私とアスランとシンとレイが名誉勲章を授与された月軌道会戦。ハイネ先輩はネビュラ勲章だった。どっちもすごい勲章だけど、名誉勲章受章者は先に敬礼される特権があるから…)」
勿論、それで大きな態度をとる気はない。アスランと揃って心を込めて返礼する。今の情勢についてハイネ先輩も思うことは大いにありそうだけど、表情に出すことは無い。その点、この方は徹底されている。静かに笑って私達を送り出してくださる。
ご無礼して最前列、グラディス提督と副長の背中を追う。
二人は熱心に話し込んでいるところだわ。急いで聞き耳を立てる。何々-。
タリア「しかし、酷いものだわ。無茶苦茶よ!地球軍は…」
アーサー「そうですね」
やはり、話している内容は世界情勢について。確かに議長も大概ヤバいけど、地球連合軍も相当ひどい。そのことについてね。何よりこの場で議長への『意見』は言えない。
タリア「ディオキアにいらした時、議長も我々は何をやっているのかとおっしゃってたけど、これが彼の答えなのね」
アーサー「『ロゴスとの戦い』ですね。確かに、正直、こんな戦闘ばかりを繰り返して、どうなるのかという思いはありました。先の大戦の轍は踏むまい、ナチュラルとはあくまで融和を図るべきとする評議会の意志に自分も異存はありませんでしたが…。でも、討つべきものはさっさと討ってしまった方が良いのではないでしょうか?でないと何時になっても終わらないと思います。この戦争」
タリア「はぁ…。かもしれないわね」 - 120二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 01:37:05
アグネス「(意外と積極主義者ね。我らが副長は…。そう言えばユニウスセブン落下後、私より早くオーブからの出港を唱えていたのも彼だった。結果論だけど、それがあの場の最善手だったわ)」
逆に戦場では躊躇いなく陽電子砲を撃ち放つグラディス提督は、戦略的判断では消極主義になりがちな面があったように思う。最近は一皮むけたのか、そうした雰囲気はすっかりなくなったけれど。
アグネス「(タンホイザーもせっかく環境負荷が軽減したんだから積極的に使用しなきゃ損だわ。連合軍め、思い知ったか!うちの提督はラミアス艦長みたいに優しくはないぞ!)」
トライン副長も戦術面でのワンテンポ遅れる感じが大分減ったように思う。もしかしたらこの方は上官が傍にいない、自分で決断・指示出しをしなければいけない環境の方が力を発揮できるのではないだろうか。上官の補佐に気を配るあまり、受け身に流れる悪癖があるように思う。
『決して物事のやり方を教えてはいけません。彼らに何をすべきかを教えれば彼らは創意工夫であなたを驚かせるでしょう ジョージ・パットン』
アグネス「(戦闘中にそれをするのはお互いに勇気がいる決断、なかなか名言で通りにはいかないけれどね)」
さて、二人の会話も一段落したみたいだから、要件を切り出そう。アスランと一緒にひっこり近寄りアイサインを送ると二人揃って敬礼してくれるので返礼する。
タリア「また、貴女ね。食事の後ではいけない?」
アグネス「不躾ですが、今でないといけません。議長や…。彼でなくともせめてシュライバー国防委員長やカザエフスキー・オーベルク両評議員がお帰りになる前でないと…」
タリア「アスランも?」
アスラン「ええ…まあ…」
アスランは何となくついてきただけだわ。意見をすり合わす時間なんてない。さっきまでの感慨とは矛盾するが、1秒ごとに世界の情勢が動く大事な局面なのも事実だ。
タリア「手短に」
アグネス「はい」
提督もサッと顔色を変えると私に発言を許可してくれる。話す内容は決まっているロゴスとの戦いについてだ。 - 121二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 01:44:56
アグネス「では。議長はロゴスを討つと世界に宣言されました。その決断の是非を論じてももう間に合わないでしょう。彼らの戦犯訴追をどう進めるのかについては政治と司法の領域。軍も法務将校を始め関与すると思いますが…」
タリア「確かに。それで?」
話が早くて助かるわ。そっちについては後回しだ。
アグネス「問題は、彼等のグローバルカンパニーと関わりのない国は存在しないと言うことです。プラントはさほどではありませんが。地上国家は既に大きな打撃を受けています。議長の宣言をうけ、今頃、為替・株式市場は大混乱でしょう。影響は日に日に大きくなるはず」
地蔵になりかけているアスランにも視線を振ってみる。
アスラン「確かに。サイバー空間に提示されたリストにはセイラン家、いやオーブ連合首長国と深い関わりのある者もいます。リッターグループやグロート家の名まで出ているとなると…。カ…アスハ代表も胸を痛めていることでしょう」
胸を痛めるじゃなくて頭を抱えるが実態に近いはずだけど、まあ、オーブについてはどうにもならない。そっちはそっちで何とかしてもらうしかない。
アーサー「そうですね。我々は経済問題の専門家ではありませんから…。どう対応するべきか。市場の急変動で破産に追い込まれる者が一秒ごとに増えているかも」
私達の言葉を副長が受け、提督に取り持ってくださる。話の流れを読み取ったグラディス提督は顎に手を添え考えを巡らしている。
タリア「ロゴスとその関連団体の資本を早急に抑えるように、特務隊長である私から最高評議会に上申して欲しい、叶うなら今すぐにでも、と?」
アグネス「はい。端的に申し上げるなら。それも早ければ早いほど良いかと」
ちょっと困り顔の提督には申し訳ないが、フェイス徽章をさっき受け取ったとはいえ、私が一人で起こせるアクションには限りがある。 - 122二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 01:56:52
もう一押し言い添える。ご無理をお願いしていることは自分でも承知している。
アグネス「先程行われた議長の声明発表が国際経済に及ぼす影響は計り知れません。ロゴスとブルーコスモスの悪行の証拠を世界にばら撒いた以上、仮に我々が手を引いたところで火が回った火薬庫は吹き飛ぶでしょう。
なら、せめてプラント本国とザフトが実効支配している地域、同盟国と友好国に住まう人々の暮らしだけでも守らなければいけません。プラントに味方してくれた国の国内経済・地元経済だけは維持しないことには。彼らの怒りの矛先は我々に向きかねないのです」
一気に捲し立てて息も切れ切れな私をグラディス提督は少し思案気に見つめ、やがて一つ頷く。もう、会食会場が目の前だわ。
タリア「私に今からその足でシュライバー国防委員長とカザエフスキー最高評議会議員、オーベルク最高評議員、来賓に来てくださっている60人議会議員の皆様にロゴス討伐による経済への悪影響の懸念を伝え、ロゴスとロゴス関連団体の資本・資産の散逸・隠匿・破壊を防ぐよう上申せよ、と?」
アグネス「命令ではありません…」
やはり地雷を踏んでしまっただろうか。自爆覚悟で体当たりをするなら、自分で言い出すのが筋と言うもの。上官を、それも自分から見てかなり上の上官をスピーカー代わりにしようという魂胆、どう考えても褒められるものではない。
縮みあがりそうになる私を見て、提督は目尻をそっと下げる。
タリア「意地悪を言ってごめんなさい。そうね、フェイスとして貴女は今日から『同輩』ですもの。助言は歓迎するわ。よろしい。
『この戦いに当たって、ロゴスとロゴス関連団体の資本・資産の散逸・隠匿・破壊を防ぐ必要があります。
プラント勢力圏の大洋州、イベリア半島、モロッコ、西アフリカ、コーカサス。軍が駐留展開中の友好的中立国、汎ムスリム会議と建国(未承認)したばかりの西ユーラシア連邦。
これら地域に存在する彼らの資産・資本は即時に差押え凍結するべきです』そう、つたえましょう。抑えた資産と資本は?」 - 123二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 02:11:26
アグネス「公共性が高い資産・資本は、その現地政府や地方自治体、独立行政法人等の管理下に移管、それ以外は現地の企業や起業家にマッチングをしっかりした上で払い下げるべきかと。どちらにせよ、最終的には地域の実情と判断に委ねるべきです」
私が話し終わると提督はそっと私の顔に視線を注ぎ、副長とアスランにも目を配る。
タリア「異存は?特務隊アーサー・トライン、アスラン・ザラ?」
アーサー「いえ!良いと思います」
アスラン「私も異存在りません」
二人の賛意を聞いたうえで、提督は私に告げる。
タリア「良いでしょう。あくまで私の意見・判断としてこのことを伝えます。だから貴女、あなた達は夕食を楽しんで一杯食べなさい。私がそう言っていたと皆に伝えて命令を貫徹せよ。良いわね?!」
アグネス「はい!」
アーサー・アスラン「はい」
話が終わって敬礼しようとすると、また提督から敬礼され、慌ててアスランと返礼する。
アグネス「(まだ慣れないな。まあ、おいおいね)」
あとは、食事を…。楽しむか。
後ろからお気楽顔で歩くシンに視線を向ける。食事は大いに楽しむとして、少し乗せられやすいあいつに早めに釘を刺しておくべきね。
アグネス「(この唐突に宣言された戦い。正直どう進めるつもりなのか私も分からない。何か漠然としていて具体的な攻撃目標がつかめないのよね)」
ロゴスを倒す、つまり構成メンバーを逮捕して、裁判にかけ、彼らの財閥を適正に解体、経済を民主化する。それ自体は悪くない理想だけど。その目的を『国家の意思』として貫徹しようとするなら、それこそ条約締結国全部を叩き潰し、一時的にしろ国土を保障占領する必要がある。
果たしてそこまでする体力がプラントにあるのだろうか。戦争に勝つだけなら未だしもその後の国家体制、経済体制の再構築まで付き合ってられないし、損失が膨らむばかりではないか。
アグネス「(プラントの一般国民の利益になるとはどうしても思えない。安全保障政策としても…)」
いけない。上官の命令を忘れるところだわ。今は夕食、それだけを考えよう。 - 124二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 09:44:21
- 125二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 10:02:12
それもあるだろうしこの世界線今の所運命本編よりも上手くいってる可能性あるからね 浮かれてる事には違いない
- 126二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 11:21:10
- 127二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 19:18:36
>>121~122の話プラント内(できれば友好国首脳部も)で体勢を整えてから、ロゴス批判をぶちかます…あたりが本来あるべき流れだもんな。
公の場で、公職にあるものが、(情報操作した)正しい情報を発信したせいで、プラントとしても後戻りも方針転換も出来ないようにしたと…
しかもメタ視点以外だと議長が正義を盾に暴走してるように見える…
うーん、黒い!
- 128二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 20:23:03
根回しちゃんとしないと足元がくずれるぞ議長…
- 129二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 20:29:58
デュランダルは民衆からの支持が高い独裁者と言うかなり厄介な存在になりつつあるな
権力濫用してるけど支持率高いから最高評議会議長の座から容易に引き摺り降ろせない
下手に降ろせば最高評議会そのものへの支持率が落ちる
まして現在は戦時中なんでそんなことすれば大混乱必至で政治的空白が出来てしまう
これでは黒幕疑惑の情報が議会に届いても議長を止められないのでは無いだろうか - 130二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 20:35:18
藪を突けば蛇が出る状況作って周囲を既成事実化で矯正的に抱き込んで一蓮托生化する
インチキ議長のやってることは水星の魔女のダブスタクソ親父が権力獲得した手法と一緒だな
しかも両者共に戦争の起きない新たな社会秩序の構築が目的と来てる - 131二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 00:07:56
乾杯もそこそこにグラディス提督とトライン副長は、シュライバー国防委員長、カザエフスキー最高評議会議員、60人議会議員の面々と別室に退いて行った。
きっと緊急会議が始まるのだろう。他の最高評議会議員も交えてリモート会議になるのだろうか。
会場には司会のオーベルク最高評議会議員とミーアが残り、私達の相手をしている。オーベルク評議員は司会進行役だから、混乱していようとも持ち場を離れるわけにはいかない。
アグネス「(オーベルク評議員の表情、必死に平静を保とうとなさっているけれど、心ここにあらず。本音では提督やカザエフスキー最高評議会議員と今後の対策を練りに行きたいに違いない。本機で焦っているわね)」
アスラン「やはり…。最高評議会を通すことなく?」
アグネス「そう思います。フライングしたとしか思えません」
隣で夕食をモソモソ食べて居るアスランの問いに応じる。
会食はビュッフェ形式、『乾杯』と言ったけど、20歳どころか18歳にもなっていない私達はジンジャエールを飲んだだけだわ。アスランは18歳だけれど、それどころではないわね。
私はモソモソ食べて居る場合じゃないのでガツガツ食べる。タイムイズマネーだし、次、ちゃんとした『食事』が何時できるかなんて分からない。また当分、栄養ゼリーと点滴の日々が始まるかも…。
ミーアの方はオーベルク評議員と異なり、そつなく振舞い兵士達や来賓の方達のお相手が出来ている。流石『代役』の面目躍如と言えるだろう。無論、お二人の間では社会的立場が大きく異なるわけだけど。
因みにこの局面の最重要人物、デュランダル議長は会食会場にいない。アプリリウスに向かうシャトルの中からリモートで乾杯の音頭を取ってきやがったわ。
アグネス「(決戦で勝ったら首都を押さえる。基本か…。アプリリウスの評議会を『占領』するためトンボ返り、良いご身分ね)」 - 132二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 00:14:13
無論、シャトルの中で惰眠を貪る議長ではないだろう。グラディス提督はじめ別室に下がった皆さまがリモートで議長に押し掛けているはず。それに他の最高評議会議員、アプリリウスの60人議会議員、パパ達政府高官と議長の間で丁々発止の激論が交わされていることと思う。
タッチの差ではあるが、ロゴスのことを含めライトナ―最高評議会議員達にお伝え出来たのは幸運だったと言えるだろう。
ただ、そうやって自分抜きでは事態が動かない。動きようがない状態に持って行った時点で彼の勝ちだ。この状況で『議長がシャトルに乗っているならその間にクーデターを』何て行動を取れるわけもない。彼のペースにまんまと乗せられている。
アグネス「私は…。負けたんでしょうか」
アスラン「…。敵を見失ってはいけない」
ガツガツ食べながら呆然と呟く私をモソモソ食べながらアスランが窘める。食べるのか、打ちひしがれるのか、どっちかにしろと自分でも思う。でも、現実問題、食べられる時に食べるしかない。
人生は散文的で切実なんだ。今夜の料理の味は最高に美味しい。生きて、勲章を貰えて、このご飯を食べらること、最高に幸せだ。例え、議長にしてやられようとその事実は変りようがない。
お皿をペロッと平らげた後、アスランの顔を見つめ問いかける。
アグネス「敵って誰ですか?」
アスラン「それ…。ゴホ…ゴホ」
アグネス「すみません。飲み込んだ後で良いです。烏龍茶持って来ますね」
返事をしようとしてむせ込んだアスラン、急いで烏龍茶を届けるべくドリンクスペースに向かう。と、途中で給仕発見。
アグネス「ウェイターさん。飲み物、烏龍茶を」
ウェイター「はい。直ぐに」
飲み物の手配が終わってのでお詫びを。
アグネス「申し訳ありません。私…」
アスラン「いや、良いんだ。敵か…」
アグネス「それも心得違いを。申し訳ありません。クレタ島の連合軍が敵、それは確定しています」
アスラン「そうだな…」 - 133二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 00:23:52
虚しいやり取りかもしれないが、やはり悩みも不安も敗北感さえ生きていればこそだ。
アグネス「(何より私は『西ユーラシア連邦のロゴス系資産と資本を凍結・差し押さえろ』と上申したばかり。そんなことを言っておきながら『クレタ島?行くの嫌です』は通らない)」
これは私個人の問題ではない。クレタ島に大集結しているユーラシア連邦軍を叩き潰さないことには、そもそも西ユーラシア連邦の独立は達成されない。ボスポラス・ダーダネルス海峡も地中海の安全航行権も確保できないし、そもそも連合はクレタ島を拠点に反撃するつもりなんだ。
西ユーラシア連邦は大西洋連邦に北海とドーバー海峡、大西洋を押さえられている。それなら、せめて地中海の安全航行権だけは彼らの経済を立ち行かせるために必須だ。それは恐らくイベリア半島やモロッコのザフト勢力圏下に住む住民にとっても同じことだろう。
ザフト側に付いたがためにこれら地域の住民を窮乏させるべきではない。スエズ攻めはある意味でそれらを一気に解決する一手ではある。優先順位がそこまで高いかは計りかねるけれど。少なくともクレタの軍団は撃滅するしかない。
考えを短く取りまとめ、アスランの顔を正面から見つめ、語り掛ける。
アグネス「『ロゴスとの戦い』は一旦、置きます。プラントにはヨーロッパ地域に安定的な統治と恒久的な安全保障体制が確立されるよう援助する道義的責任があると、私は思います。ユーラシア西側の独立運動を裏から支援してきた―煽って来た―のはプラントです。あの地がああなった事、その全てに責任があるなどとは思いませんが…。」
アスラン「確かにな。ここで俺達が手を引けば、ユーラシア西側の人達は俺達の無責任を責め、恨むだろう。地域の混乱の収拾の目途さえつけずに見捨てたとあれば…」
何が人道活動だか...。プラントというか議長の対ユーラシア連邦戦略には承服しがたい点が幾つもある。
でも、それはあくまでこちらの事情。あちらはザフトの空手形を信じて行動している。あくまで空手形、言質を与えてさえいないかも知れないが。それは現地の民衆の生活をかき回したことを免責する理由にはならない。そう思われるだろう。 - 134二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 00:43:21
だからこそ、今はしっかり食べて次の作戦に備えなさい。難しい話は一旦、こちらに預けなさい。そう提督は命じて下さったのだと、今になって思い至る。
私は何時も大事なことに気が付くのが遅れる。自分が、自分が、そればかりだわ…。
ミーアの方に視線を向ける。彼女は議長がぶち上げた『ロゴスとの戦い』、その宣言のアシスタント、と言うより共同宣言者にされてしまった。
声のトーンを一回り二回り落としてアスランに囁く。
アグネス「アスラン先輩。婚約者特権(嘘)で何とか『ラクス様』と二人きりで話に行けるでしょうか。心の内とご事情を。身を守るために。先輩にしかできないことです」
そう話しながら自分の片眼と語耳を指さす。盗撮盗聴に注意、と。ディオキアで会った時から彼女を取り巻く状況は悪い方に激変している。ラクス・クライン暗殺未遂も判明した。情報のギャップで助かる命も助からなくなるかもしれない。誰に頼ればいいのかも分からないかも知れない。
私の意を察したアスランが小さく頷く。
アスラン「分かった。今から彼女の下に。何とかする。ありがとう」
アグネス「いえ。お気をつけて」
ミーアの下に向かうアスランを見送る。マネージャーっぽいのに妨害されそうになるも乏しいコミュニケーション能力を何とかフル動員して、やり込めミーアを会場外に連れ出す。
アグネス「(あの一シーンだけなら白馬の王子様っぽいのに。イケメンで能力も高くて、真っ当な善人で義人なのに、どうして残念な感じなんだろう)」
まあ、アスハ代表が居るし、大丈夫か。対ロゴス戦に巻き込まれて出向が何時終わるのかさえ分からなくなりつつあるが…。五里霧中なのは皆同じだ。 - 135二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 01:03:25
それはそうと、食事を楽しまなければ。上官から命じられた任務だわ。何かデザートをと思っているとシンがピョコピョコ此方に向かってくる。ルナマリアも一緒だ。
シン「アグネス、ちゃんと食べられてるか?」
ルナマリア「会食中ぐらい力抜きなよ」
アグネス「あんた達ね…。いや、それが正しい。私が馬鹿だったわ」
二人の様子を確認すると、恐るべきことに、会食開始からそこそこ立っているにも関わらず、シンはビュッフェから好きなものを大盛によそって頬張っている。
アグネス「これが健康な10代男子の胃袋か!?恐るべし」
ルナマリア「ほんとにね」
シン「何だよ!デザート持って来たのに」
アグネス「それはありがとう」
よく見ると確かにシンはケーキを片手に3つ持ってきてくれている。心遣い本当に嬉しい。落ちこぼれとあれだけ馬鹿にしていたのに。私が逆の立場なら生涯、根に持っていたはず。
アグネス「シン。今までごめん。命が尽きる前に謝っとくわ」
シン「どうした?映画だと死ぬぞ!」
ルナマリア「あんた何時も唐突ね」
アグネス「やかましい!反省したの。別に許しは強制するものじゃないから…」
シン「いや…。そもそも何で謝ってるんだ?」
純粋に疑問、とでも言うように私の目を覗き込んで来る。
アグネス「嫌な奴だだったから、私が!」
シン「いや、俺の方も」
ルナマリア「シンも怒りっぽかったからね」
シン「ルナ!?」
しょうもないやり取りになってしまったわ。やはりこいつ等と感動の名シーンは無理ね。 - 136二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 01:09:01
アグネス「(本当にうれしい。家族以外にも私には帰る場所があるんだ。勝手に許された気持ちになるのは卑劣なことかも知れないけれど)」
心の中の何かがチクチクするが、気づかないふりをする。過去が取り戻せないなら、良き未来を互いに目指すべき。そして、今はケーキを食べることの方が戦いだわ。
シンから受け取った皿を持ち、3人で壁際によって立つ。
シンはお子様ランチのようなご飯を胃袋と言う名のブラックホールに放り込み続ける。それを横目に私とルナマリアはケーキをパクパク食べ、更にお代わりを取って来てもう一種類を平らげる。
ルナマリア「それで、どう?」
アグネス「ロゴス討伐?そうね。シン、『ほどほどに』ね」
この場で議長批判、というかロゴス討伐戦を否定するのは憚られる。だから『ほどほどに』釘を刺す。
シン「ああ。それは大丈夫。どう戦うのか俺も良く分からないし。結構経済大変かも」
アグネス「へー。意外、でもないか」
シン「?」
不思議そうに私に視線を向けるシンに『しっかりしていてよろしい』のアイサインを返す。
そう言えばシンは普通の中流家庭に生まれ育った人間。底辺出身という訳でもなく、経済的にそこそこ恵まれたごく普通のオーブ国民だったと思う。
インテリだの革命家だのは大抵、元を正せば裕福な人間が多い。貴族の家に生まれたレーニン、地主の息子の毛沢東、ヒトラーだって生まれはそこそこ裕福だったはず。
シンと何となく視線が合ったまま離れない。本来こいつはそう言った連中が宣う熱に浮かされたような狂乱とは縁遠いし、折り合いも悪い。健やかな少年期を過ごすべきはずだった人間だ。 - 137二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 01:10:13
アグネス「あんた、悪い人に騙されたらダメよ」
シン「子供扱いかよ!1歳しか違わないのに」
ルナマリア「あんたはガキでしょ」
シン「ルナまで。そんなにか…」
ちょっと拗ねかけるシンにちゃんと本心を話す。
アグネス「シン。あんたはもう無力な子供じゃない。これまで多くの功績を上げ、一緒に勲章を貰ってパーティーに招かれている。首実検で手柄を認められたの、私達」
ルナマリア「ちょっと!アグネス!!」
『首実験』、古の日本の風習だと聞く。何でも討ち取った首を上官に差し出し、戦功を判定してもらう儀式らしい。『首』になった敵兵には儀式の中で相応しい敬意が払われるとか。
アグネス「だからこそ。私は使い捨ての駒になりたくないし、あんた達にもなって欲しくない。言いたいこと、分かるわよね?」
そう言いながら、シンとルナマリアの両方に目を配る。『ロゴスとの戦い』とやらに、議長の政治的な思惑に、勝手に乗せられて使い捨てられてはいけない。少なくとも私にはそんなつもりはない。そう二人に伝える。
ルナマリア「そうね!」
シン「分かった!」
この場で深く話し合えることじゃない。だからこそ短く強く互いの決意を交わし合う。良し、今日やることは大体終わったかな。
ルナマリア「じゃあ、ケーキもう1種類食べましょう」
シン「そうだな」
アグネス「そうね。え!?」
ちょっと驚くが、命短し恋せよ乙女。若人でいられるうちに若者らしいことは楽しまなくっちゃね。
結局、3人皆追加で2つずつケーキをお代わりした。因みにレイは会食開始からしばらくして胃もたれを起こし、休憩していたらしいわ。何とかあいつに傷病休暇を取らせないと。 - 138二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 08:58:01
レイの肉体年齢的に脂っこいものはキツいか
- 139二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 18:15:02
アグネスが点滴の常連になってる自覚あってワロタ
いや笑えねぇぞこのブラックさ… - 140二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 19:03:54
レイ…お前胃腸薬のお世話にもなるのか
- 141二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 19:09:50
ケーキ4つ…20代前半でやったけど吐きそうになったぞ。コーディネーターは胃袋も強いのか…
- 142二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:25:33
会食会の後に一応、ダンスパーティーも行われた。でも、もう皆へとへとだわ。武官・文官問わず。それでも、社会の礼儀。礼儀ではあるが…。
アグネス「お腹いっぱいで…。踊ったら逆流しそう」
ルナマリア「そうね。調子に乗り過ぎたわ」
ちょっと白けた雰囲気が漂う中、話し合いが終わって帰って来たアスランとミーアが何となくの流れで一曲踊る。婚約者(嘘)だから仕方ない。アスランはそつなくこなすし、ミーアもなんだか少し嬉しそうだ。
彼らだけ躍らすわけにもいかないので、足取りの覚束ないシンとお腹いっぱいでクルクルするのが嫌そうなルナマリアのペア、同じくちょっと気持ち悪くなりかけている私と胃もたれから気合で起き上がったレイのペアも何とか義理でつき合う。
アグネス「(ロマンチックさの欠片もないわね。早く帰りたい)あんた胃は大丈夫?」
一手踊ってお辞儀をし、皆から拍手を受けて引っ込みながらレイに聞く。
レイ「寧ろ…。今は腸に来ている…」
アグネス「…。衛生兵呼ぶ?」
レイ「待て…。もう少し」
言わんこっちゃない。まあ、お互い明日も知れぬ身、人生を味わい尽くしたいのは同じか。
アグネス「ルナマリア、吐いたら負けよ」
ルナマリア「今日、『吐く』というワードは禁止…」
何時もの元気はどこへやらなルナマリアと、平気などころかますます元気そうなシンと合流する。10代の男子は本当にモンスターなのだろうか。アスランも元気そうだし。
彼はちょうどミーアに暇乞いをしている。ミーアも引き締まった表情で挨拶に答えている。
アグネス「(情報伝達、成功したみたいね。あの人が権謀術数渦巻く世界を渡り歩けるとは思えない。タイミングを見つけて、何とか駆け込み寺に、と願うわ)」 - 143二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:27:34
ただ、そのタイミングとは何時なのか、私にも確言できない。
おまけにその時が来たとして…。例えばパパにも情報は上げてもらっているけど、『高官』はあくまで宮仕えの身。現職の最高評議会議員も少し危うい面がある。地盤があって、今はフリーのエザリアおば様の所が消去法でベストな気がするけど…。
オーベルク「それでは皆様、宴もたけなわではありますが、最後に我が祖国プラントの国歌を斉唱し、今日の表彰式を終えたいと思います」
国歌斉唱の合図とともに列席者全員が起立し、姿勢を正し国歌を斉唱。外国出身の来賓者と…、アスラン等は姿勢を正し右胸に手を当ててくれている。
結構こう言うの難しいのよね。外国国歌が流れたときは、もし歌詞を知っていて歌える場合は『敬意を表して一緒に謳う』のを良しとする方も中にはいらっしゃるけど。アスランは立場が微妙だからね。
国歌斉唱が終わり、波乱に満ちた表彰式はやっと終了になる。解放されたオーベルク最高評議員は駆け足でカザエフスキー最高評議員達の下に向かっていった。他の隊は続々と兵員輸送車に乗り込んで自分の隊に戻っていく。
月軌道艦隊の皆は車発着所まで来たは良いものの―。発着所に軍用バイクでトライン副長が駆けつけてくれたわ。
私とアスランとシンとレイへ敬礼もそこそこに副長はテキパキ指示を伝える。
アーサー「待たせたな、皆。今日の表彰式を受け、ますます士気を高め任務に邁進していこう。提督は少し帰りが遅くなるから皆は先にミネルバに帰り、疲れを明日に引きずることの無いようしっかり休め。ハイネ、帰りの指示は頼む。自分はまた提督の補佐に向かう」
ハイネ「はい」
それだけ伝えて、またバイクに乗ってとんぼ返り。ふーむ。大変だわ。ああいうお立場も。
ハイネ「良し!じゃあ皆、帰るまでが表彰式だからな」
一同「はい!」
ミネルバについて解散した後、ほとほと疲れ、シャワーを済ませると、ゾンビのようになって自室に辿り着く。 - 144二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:32:05
扉を開けたらベッドの上でメイリンが潰れたカエルのようにペチャンコになっていた!
メイリン「ああ…。アグネスさん。お帰りなさい…」
枕に顔を埋めたまま、ピクリともせず挨拶をしてくる。
アグネス「ええ…。ただいま。その姿勢、多分よくないわよ。クレタの『仕込み』?」
メイリン「ええ…。広い意味では。その訓練も合わせて。ダイダロスで抜いたデータによると、ありがたいことにクレタにはサイクロプスもニーベルングも無かったから…」
ああ。そう言えば。メイリンはダイダロス基地陥落時に陸戦隊と一緒に真っ先に突入して電子系の制圧を担当していたわね。
基地陥落時、敵が消去に失敗したデータを丸ごと押さえ、さらに基地外部とのリンクが切断される前に連合軍・条約加盟国にハッキングを仕掛けたのか。
そして、今日はこれまた忙しい仲、私達が式に言っている間に、そこから得た何かしらを次の作戦のためにと―。
アグネス「(言ってくれればいいのに、何て、言えないわね。そう言うことは)」
サイクロプスはともかく、ニーベルングは知らないが…。並べて口にしているなら、そういう新兵器を連合軍は保有しているのだろう。
アグネス「すごいじゃない!ネビュラ勲章授与されてもおかしくないわ」
メイリン「…」
いかん。完全にダウンしている。
アグネス「ごめん。お休み、メイリン」
メイリン「…。おやすみなさい、アグネスさん」
部屋の明かりを消して、自分も着替えてベッドにもぐりこむ。暗がりの中、メイリンに視線を移す。結局、枕に顔を埋めるようなポーズのままだわ。あれでは明日が辛いだろう。 - 145二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:34:49
みんな本当にお疲れ様
クレタ攻撃作戦直前に式典なんてたまったものじゃないね
スケジュールがタイト過ぎる - 146二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:35:32
アグネス「(仕方ない)」
立ち上がって側に行き、姿勢を直してあげる。どの姿勢が良いかわからなかったから、取り合えず仰向けにする。
メイリン「あ…。ありがとうございます」
アグネス「どういたしまして」
メイリン「ニ…。ニーベルングは…。ヘブンズベース基地に設置されている…広角レーザー発生装置、対空掃討砲です」
メイリンはそれだけ私に言い残すとガクッと力尽きて寝落ちする。映画でスパイが味方に最後の情報を伝えて逝く瞬間みたいね。生きているけど。
アグネス「(それで。なるほど。そのニーベルングはクレタに無いと。その情報だけでも勲章に値するのに)」
クローゼットの自分の制服、略綬で一杯だ。明日になったら今日の分も整理して付け加えなければならない。貰った勲章と感状と証明書と名誉勲章旗で帰りは腕が塞がっていた。
でも、そう言う場に呼ばれることなく戦い続けている人達もいる。日の当たらない場所で力戦してくれている戦友たち。工作員とか諜報員とか、祖国のために戦っているのは同じなのに。
メイリンは謎に、日の当たる方も当たらない方も出来てしまうみたいだけど。
すやすや顔のメイリンを何とはなしに見つめながら思う。どうか報われて欲しい。少なくとも虚しく命を落として良いはずがない。
議長の思惑に引きずられているのは私達パイロットだけじゃない。ミネルバの皆、それに月軌道艦隊の皆も道連れになっている。この戦いを、少なくとも目前のクレタ島の戦いを生き残らなければ。
アグネス「(『僚機を失ったも者は戦術的に負けている』ね。何度も何度も胸に刻み込んでおこう)」
決意も新たに毛布にくるまると途端に私の意識も落ちていく。今日は本当に大変だった。 - 147二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 07:16:10
- 148二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 07:58:35
地球は今頃パニックだろうな
オーブはどうなるか - 149二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 18:19:00
とりあえずアグネスたちはお疲れ様、と言うべきかな?
そして地球の方はどうなっているやら - 150二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 19:41:42
何気にアグレイフラグ立ってない?
- 151二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 19:57:04
レイアグじゃないですかね…?
それはそれとしてこの2人のやり取り好きだからたくさん絡んでくれて嬉しい
この先どうなるかは分からないけどみんな幸せになってほしいなぁ - 152二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 20:04:56
恋愛はさておき、今はアグネスがレイ(と愉快な仲間達)をグイグイ引っ張ってる感じはあるなあ。
あと、ズルズル引っ張られてるアスランは、そろそろ自分の立場(オーブ特使)思い出してくれ…表彰式の中継をAA組が見てたら何を思うんだろう。 - 153二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 20:08:33
今回の国歌のシーンとか見るに立場は忘れてなさそうだけどね
少なくともエターナルクルー共々レクイエム破壊に参加したことにはAA組も言う事なんかないでしょ - 154二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 20:19:40
確かにその通りだったわ
大量虐殺の阻止に加えて、本人にとっては故郷を守るという事でもあるし
問題は議長からの勲章手渡しとかが…
本人が二重所属の立場を活用するより、議長が「ザフトのアスラン」を利用する勢いの方が強い感じがする
- 155二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 02:52:30
深夜にブザーの音で叩き起こされる。一体誰だ!!締め上げるわよ!
タリア「アグネス、直ぐに出撃準備を。話は士官室で。アスランとシンも向かっています」
アグネス「提督?!出撃!?了解」
タリア「悪いわね」
出撃の言葉で頭の撃鉄が起こる。提督直々の呼び出し、何事だろう?
メイリン「う…。うーん」
アグネス「メイリン。そのままで、ね。私は行ってくるわ」
メイリンを起こしてしまったらしい。そこそこの声量で話したから当たり前か。悪いことをしたわね。
メイリン「行ってらっしゃい。アグネスさん」
瞬時に姿勢を正したメイリンが『行ってらっしゃい』の挨拶をしてくれる。今は戦時、『行ってらっしゃい』で部屋を出た人間が『ただいま』を言える保証はない。『ただいま』を言いたい相手が生きて待っていてくれる確信も持てない。
アグネス「行ってきます。深夜に叩き起こすとはさぞ良いニュースなんでしょうね」
ちょっと意地悪な皮肉を言ってしまうが、メイリンを困らせたいわけではない。第一、良いニュースでないことは自分で分かっている。
メイリン「お気を付けて」
アグネス「お互いに」
短く声を交わしながら制服に袖を通す。新しい略綬、つけている暇が無かったわね。人生は本当に散文的で誰にとっても伏線や予兆を教えてなどくれない。 - 156二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 02:55:16
名残惜しいからこそ、サラッと自室から飛び出して、そのまま艦内通路を駆け進む。交代制の勤務とは言え、宇宙の軍艦の中にさえ夜の帳は確かに下りている。勝利の女神も時には静かに眠りを楽しみたい日もあるはず。
ただ、私にとってそれは今日ではなかったらしい。
アグネス「『穏やかな夜に身を任せるな。消えゆく光に向かって、怒れ、怒れ』」
敢えて口から声を出して自分に言い聞かせ、士官室のブザーを押す。
アグネス「アグネス・ギーベンラート。出頭しました」
タリア「入りなさい」
アグネス「はい。失礼します」
士官室に入室するや、提督と副長が起立して敬礼して下さるので返礼、部屋にはグラディス提督、トライン副長、アスラン、シンの4名。席を勧められたので着席する。アスランとシンの真ん中だ。男二人に挟まれて狭い。
前にはグラディス提督と副長、ただならぬ雰囲気が既に部屋に充満している。
こんな時こそ―。
アグネス「お飲み物を。コーヒーでよろしいでしょうか?」
タリア「ああ。悪いわね」
アーサー「うん」
アスラン「頼む」
シンと一緒に立ち上がり、一緒に給仕室にスペースに入る。
アグネス「あんたは何時?」
シン「さっき。副長に」
言葉少なげに意思を交わしつつ、5人分のコーヒーを入れる。 - 157二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 03:09:05
そうか、シンと多分アスランは副長が起こしたのね。じゃあ、男女別に声をかけてくれたのか。そんな配慮をしてくれた以上、無茶な任務が振られること間違いないだろう。部屋を出るときには分かっていたことだけど。
アグネス「覚悟を!」
シン「ああ!」
互いに肯くと二人で入れたコーヒーをお盆で3つと2つに分けて持って行く。
一人で出来る工程だが、ワンクッション誰かと話したかった。シンもそれは同じだ。
タリア「ありがとう、さて、端的に。あなた達3人は隣に停泊している月軌道艦隊ナスカ級に移乗、ミネルバに先発してニュージーランド島攻略作戦に参加してもらいます。インパルス、セイバー、カオスの積み替えは既に始まっています」
コーヒーを配り終わると提督が思いもかけないことを言い出したわ。ニュージーランド島?クレタの攻略はどうなったの?
シン「ニュージーランド島…。クレタ島じゃないんですか?」
アーサー「シン。それは今から話す」
こらえ性の無いシンの質問を副長が制止、提督はそれに静かに頷くと続きをお話して下さる。
タリア「時間がない。焦らせるつもりはないけど。だから、手短に。まず、最高評議会において、リモート会議ではあるけれど、『ロゴス討伐』が決定されました。
秘密結社『ロゴス』の私兵たる地球連合軍第81独立機動群『ファントムペイン』をテロ組織、大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国、南アフリカ統一機構、赤道連合をテロ支援国家に指定。
また、ブルーコスモス思想の影響が強い諸団体の監視と摘発を強化します。
友好国である大洋州連合、汎ムスリム会議、アフリカ共同体も足並みを揃えることを緊急首脳会談で同意しました。首脳会談の結果については後でも話します」
アスラン、アグネス、シン「はい」
ともかく理解したから『はい』。賛成も反対もない、最高評議会が決めたこと、とやかく言うまい。 - 158二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 03:12:32
アグネス「(まあこれは妥当な所かな。『ファントムペイン』が諸々の戦争犯罪や人道に対する罪を犯していることは確定しているわけだし。
芋づる式にブルーコスモスやロゴスがその背後に存在することも判明した。そして、これらの組織と馴れ合いを通り超して共犯関係だった地球連合の諸国家を是認するわけにもいかない)」
だからと言って、突然、世界に公表するやり方が良かったとはならないけれど。今更後戻りはできない。
アスラン「『ファントムペイン』をテロ組織に指定すると言うことは…。組織の構成員は捕虜となる権利を喪失すると言うことですか?」
タリア「そうなります。降伏した構成員は犯罪者として逮捕されます。無論、虐殺は許しません。逮捕後、手続きを経て訴追され、裁きを受けます」
なるほど。彼らはもう兵士ではない、と。ファントムペインは軍隊ではなく犯罪集団。
シン「じゃあ。あいつ等はもう人を殺したら犯罪なんですね…」
少し動揺気味のシンが呟く。淡々と副長は同意する。
アーサー「そう言うことになるな。当然、兵士・テロリスト関係なく、過去の戦争犯罪や人道犯罪も訴追の対象になる」
ある種、冷徹な言葉を受けシンの背中に電流が走る。
アグネス「(気持ちはわかる。殺戮の巷を進んできたという意味では私達も彼らと紙一重だ。ファントムペインに同情しているわけではない。自分自身のこれまでの行いに震えているのね)」
シンの耳元に口を近づけて囁く。
アグネス「しっかりしなさい。私達は戦争をしている。奴等は犯罪をしている。軍人として、戦闘員として戦う限りその行いは正当なもの。彼らは違った。それだけよ」
小さく震えるシンに基本事項を思い出させる。こいつに伝えながら自分も再確認する。そこで迷ったら死ぬだけだわ。
私の言葉を聞いた提督はこちらに微笑み、落ち着くように促す。
タリア「あなた達は違う。ただ今後も『戦争の法規及び慣例に従って行動』せよ」
シン、アグネス、アスラン「はい」
私達の返事を聞き、一度頷くと提督は続きを話す。 - 159二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 03:17:27
タリア「『ファントムペイン』をテロ組織に指定すると同時に、彼らの運用母体である秘密組織『ロゴス』もテロ組織と指定することも最高評議会で決定しました。
プラント本国並びに実効支配地域において、『ロゴス』メンバーは広域指名手配、『ロゴス』関係資本・資産は凍結・差押えの対象とされます。
緊急首脳会談の結果、大洋州連合、汎ムスリム会議、アフリカ共同体及び現在、プラントが未承認の西ユーラシア連邦とファウンデーション王国もこの決定に同調し、国家間で足並みを揃えて『ロゴス』関連資本・資産の散逸・隠匿・破壊を阻止することを決定しました。ただ…」
何かファウンデーション王国が突然出て来たわ。まあ、ロゴスのグローバルカンパニーの影響はあの内陸国(未承認)にも及ぶだろうから、無関係ではないけれど。
アスラン「ただ…。何か問題でも」
アスランの問いかけに提督は困惑と苛立ちが混ざった不機嫌としか表現できない顔をする。
アーサー「まあ、それはこれを見てくれ」
そう言って、副長がデバイスを広げ現在の地上のニュースを表示してくれる。
アスラン「これは!?」
アグネス「(まあこうなるわよね)」
デュランダル議長が垂れ流した放送と声明発表、放流された大量の『ロゴス』『ブルーコスモス』『ファントムペイン』の悪行の証拠資料。
それらがきっかけで地上は大騒ぎになっている。真偽を問う声が各国政府に殺到し、抗議活動が沸き起こり、気が早い民衆の中には武装蜂起を起こす者も出始めている。ロゴス幹部が所有する施設が襲撃され死亡者が出たというニュースも流れた。恐ろしいスピード感ね。
各国政府は戒厳令を布告。また、条約締結国である大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア
共和国、南アメリカ合衆国、赤道連合、南アフリカ統一機構はレクイエムによるアプリリウス攻撃未遂と月軌道艦隊殲滅の報復に備えて、国家総動員令を布告、予備役動員を開始し、モスボールしていた兵器を再就役させるとのこと。
これに反発した反戦デモが各地で勃発、治安部隊と衝突して死者が多数発生している、と現地からリポーターが絶叫しているわ。 - 160二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 03:27:56
血と火の海で酷い状況ね。勿論、カメラ映えする部分と言うだけで、全地域がこうなっているわけではないと思う。
しかし―。
アグネス「(動乱の時代とはこう言うものか。本当にたった一晩と経たず世界が急変してしまう。時間の加速が早すぎる)」
今、カメラの前で転がっている亡骸。おそらく催涙弾の直撃で設けたのだろうか。彼の命はこのバカ騒ぎが変革の号砲でも単なる空鉄砲でも、どちらにしろ帰ってくることは無い。その重みをデュランダル議長は本当に理解しているのか。あんな宣言の仕方をしてこうなることは予想できなかった、なんて言い訳は通用しない。
アグネス「(私は聖人君子にほど遠い、義憤とは縁のない人間。それでも、彼の未来は。こんな風に終わるべきじゃなかった!)」
勝手にヒートアップする私はそっちのけで隣のシンは何かに引っ掛かりを覚えたらしく頭を捻っている。
アグネス「シン、どうしたの?」
シン「地球の人達はアプリリウスが狙われたことより、ユニウスセブンの破砕を妨害したことの方に怒っているんだな」
地上のニュースを見ながらシンがボソボソ言葉を溢す。確かに、私達プラントの国民からしたらアプリリウス破壊未遂のインパクトの方が強い。だが、それは仕方ないことだろう。
アグネス「そりゃそうよ。敵国首都の民間人虐殺未遂よりも自分の家族が巻き込まれた災厄の方が腹立つでしょう」
シン「まあ、確かに。というかあのこと知らなかったんだな。俺達にしたら今更なのに」
アスラン「敵対関係の中、情報の共有などできるわけもない。同じ国でも立場によって情報格差がある」
身に覚えがある話ね。しかし、本当に地上の喧騒は激しい。ゆっくり寝させて欲しいわ。 - 161二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 03:35:07
アグネス「(寝ていられない事態が起こったからこそ士官室で5人おしくら饅頭になっているんだけどね)」
映像は突如ニューススタジオに移る。取り乱した表情のアナウンサーがテレビ局のスタジオで絶叫している。最近はアナウンサーが絶叫するのが流行っているのか?
そう言うのは独裁国家だけにして欲しい。なになに…。
アナウンサー「さ…、先程、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル氏は、追加で声明を発表。内容は―。
一つ、プラントは秘密組織『ロゴス』とその私兵『ファントムペイン』、並びにブルーコスモス派武装組織をテロ組織に指定、また、大西洋連邦・ユーラシア連邦・東アジア共和国・南アフリカ統一機構、赤道連合をテロ支援国家に指定することを各国に布告。
二つ、プラントは、これらテロ支援国にロゴスメンバーとファントムペイン構成員の引き渡しを強く要請すること。
三つ、中央アジアにおけるコーディネイター難民虐殺事件は連合司令部とファントムペインが共謀した人道犯罪であるとしてこれを強く非難すること。
四つ、難民虐殺事件の再発防止のため、ユーラシア連邦南部と東アジア共和国西部に人道回廊を設定し、避難民の通行を許可すること。そして避難民の救護救援救難のため、人道支援部隊の立ち入りをユーラシア連邦に要求すること。
また、コーディネイター及び彼・彼女の家族・親族にあたるナチュラルの内、亡命を希望する者はプラントの新たな同胞として歓迎し、受け入れる旨を改めて表明。
五つ、南アフリカ統一機構内における南アフリカ共和国独立問題の平和的な解決、並びにコーディネイターが多数居住するオルドリン地区に自治特区を設け、現地住民保護のためザフト部隊の駐留を認めること。
六つ、クレタ島とハワイ、スリランカ島周辺に展開中の連合軍の撤収。
七つ、速やかな和平交渉の再開。以上です。
条約締結国各国首脳はこれを断固として拒絶する意向です」 - 162二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 04:30:48
アスラン「それで…。地上の様子は分かりましたが、その、俺達がニュージーランド島に行くのは」
タリア「大洋州からの要請よ。今回のロゴス討伐、友好国はメンバーの逮捕や資産の凍結・差押え、経済体制の構造転換に協力していくことが合意されたわ。勿論、『援軍』はただで得られたわけではない」
提督が一つ咳払いすると、副長が詳細を示してくれる。
アーサー「対ロゴス討伐に当たって、特にライトナ―最高評議会議員や表彰式でグラディス提督とお話された評議員、議員方々は各国政府の連帯の重要性を議長と最高評議会で力説された。特にロゴス関係資本・資産の凍結と差押えは急務だ。当然…、というか既に国際経済は大きな打撃を受けつつある。そこで、だ。各国は言わば交換条件を示してきた」
タリア「まず、大洋州連合ね。プラントの最友好国だけど、あの国は先の大戦のせいで首都ウェリントンを含むニュージーランド島を喪失している。
ユニウス条約では『地上の国境線および国家を戦前のコズミック・イラ70年2月10日の状態に復旧する』とされているから、これは厳密に言えば条約違反である。条約は失効したとは言え、現地のニュージーランド島住民が現状を肯定的に捉えているなら、いざ知らずね」
さっきの映像を見る感じそれはなさそうね。映像の中にはニュージーランド北島のデモ活動も映っていたから。
アーサー「ニュージーランドでは戦争反対運動が盛んになっていたが、今回のことで反連合感情が爆発、ロゴス追放と大洋州復帰の気運が北島・南島全土で高揚している。現地民主体の軍部隊も連合軍から離反を開始した。
ただ、連合軍本体は島を手放そうとしない。このままでは民間人の大規模な流血が起こりかねない。大洋州は現地民保護のため、ザフトに軍の派遣を要請している。事実上、これが対ロゴス戦に協力する条件とのことだ」
副長が一気に状況を説明してグラディス提督にバトンを渡す。提督は表情を引き締め私達に告げる。 - 163二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 04:57:54
タリア「大洋州連合首脳とプラント最高評議会はニュージーランド島奪還を決定。すでにカーペンタリア基地ザフト軍からは艦隊が出撃中。月軌道艦隊、インパルス、セイバー、カオスは大気圏を一気に突破して主攻を務めよ。
第一目標、北島オークランド・地球連合軍デボンポート海軍基地及びパパクラ軍事キャンプ、オークランド空軍基地、
第二目標ウェリントン郊外アッパーハット・地球連合軍ニュージーランド方面軍統合本部、第三目標パーマストンノース・地球連合軍リントン軍事キャンプ及びマナワツ地方オハケア空軍基地
第三目標攻撃後はカーペンタリア基地にシャトルが用意されています。それでクレタに向かうミネルバと大気圏外で合流、クレタ攻略戦を開始します」
アグネス、アスラン、シン「了解!!!」
了解、と言うしかないから了解。言われてみれば当たり前なこと、ここまで適当にやられたら見返りの一つも求めたくなるでしょう、大洋州も。
大洋州連合はうっかり私も忘れそうになるが一応、ザフト勢力圏で在ったとしても従属国ではない。
ちゃんとした友好国と言う立場だ。それを、あのカナーバが!どこまで迷惑を駆ければ気が済むんだ!!
アグネス「(そもそもが『地上の国境線および国家を戦前のコズミック・イラ70年2月10日の状態に復旧する』という条項が守られていないのを放置したカナーバ政権と議長が悪い。大洋州だけではないアフリカ共同体に至ってはモロッコと西アフリカ以外大半の領土を失ったままじゃない)」
結局、戦前の状態を形ばかり守られたのはオーブと南アメリカ合衆国だけ。その両国の有様を見れば、どこまで間抜けな条約を結んだのか分かると言うもの。
アグネス「(その上、今の腹黒議長だって、元はと言えばカナーバの派閥出身でしょう。それをまともに手綱も引けず)」
百万回滅しても滅したりぬわ。とはいえ…。
アグネス「(間違いを正す機会が来たのは良いけれど、このタイミングで…。自分が…。勘弁してほしいわ)」
しかも、クレタ攻めはやる気と言う。セカンドステージシリーズが4機しかないとは言え...。
軍人だから、戦争犯罪じゃない限り、やれ、と言われたらやるだけだけど…。 - 164二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 06:24:20
議長はさぁ…
- 165二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 08:26:36
なんかクレタは放置してるうちに瓦解しそうだな
- 166二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 12:25:30
また議長のスタンドプレーの尻拭いでアグネスが点滴打つ羽目になるんだろうな…
- 167二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 12:30:37
議長に対してはちゃんと警戒してるのに上手いこと思惑通りに動いてしまっているな
- 168二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 12:34:04
カナーバ女史は絶滅戦争一歩手前でなんとか停戦にこぎ着けた英断の人とも見れるけど、プラントの利益を犠牲にしたとも取れるんだな。
あとデュランダル議長はそもそも今後の立場とか気にしてないから、手綱を握るとかいうレベルじゃないんだ… - 169二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 22:45:11
ニュージーランド攻略してからおっとり刀でカーペンタリアに向かうとか肉体的精神的疲労がとてつもないな
- 170二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 23:55:30
アグネス「(今からナスカ級に三人で飛び乗り、地球、ニュージーランド島上空宙域まで突き進む。そこからインパルス、セイバー、カオスで小隊を組み大気圏突破、奇襲を敢行。ほぼ同時にカーペンタリア基地から出撃したザフト軍の総攻撃が開始される、と)」
インパルスはフォースシルエットで攻撃に参加することになるわけね。エクスカリバーレーザー対艦刀を持って行かないとね。
弾薬や電力の補給はカーペンタリア基地から出港するボズゴロフ級で受けることができるはずだけど、秒単位のタイトな作戦になりそうね。
敵兵力等のことは、おいおいナスカ級で聞けばいい。とういうかなし崩しで始まった作戦、そもそも両軍ともに彼我の正確な戦力を把握していない可能性すらある。
この流動的な世界情勢は全プレイヤーが暗闇の中、勘を頼りにボクシングをしているようなもの。手数が多く闘志が最後まで折れない者が勝つ。そう言うことだろう。
アグネス「(ここまで来たら全部聞いておくべきね)」
アグネス「提督、不躾ながら、もし可能なら大洋州以外の国との取り決めもお伝えいただけませんか?内密のものも含め、フェイスとしても」
グラディス提督を一度、正面から見つめた後、視線を左右に振る。すると、アスランとシンも頷いている。皆、明日の世界を知りたい。暗闇の先を探る手掛かりが、僅かでも欲しいんだ。
前を向くと提督も静かに視線を返してくださる。最初からそのつもりのでいてくれたのね。
タリア「当然ね。あなた達は知る権利がある。フェイスとしても。こんな無茶な命令を受けた身としても。アーサー」
副長から細かいことを聞けるのか。ありがたい。戦う理由と死ぬ意義を兵士は知りたいものだ。勿論、本当に死ぬ気などない!
アーサー「はい。汎ムスリム会議はユーラシア連邦と帰属が揺らいでいたウズベキスタン・トルキスタン・キルギス・タジキスタン地方の編入を望んでいる。
それをプラントにも国際社会の場で、支持して欲しいと。ウズベキスタンとトルキスタン、タジキスタンには既にガルナハン・ファウンデーションショック後に事実上の独立政権が発足、すでに向こうから、汎ムスリム会議に加入希望を打診している。汎ムスリム会議も乗り気だ。この三地域に関してはプラントも編入を支持することになった」 - 171二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 00:02:23
ほう。中央アジア、丸ごとよこせと。プラントもそれを支持して援助して欲しい、そうすれば対ロゴス戦の強力だろうと人道回廊接地だろうと協力しよう。と言ったところ。もう合意したのか。
シン「プラントで手に入る資料だと中央アジアの勢力図は結構色が変わりますね。オーブにいたときの授業でも、ザフトアカデミーの資料集でも矛盾した勢力図が載っているもんだから、大変だった…」
副長もシンの言葉にうんうん頷く。本当にあのあたりは複雑怪奇なのよね。提督も私達をちょっと片目で見た後同意する。
タリア「そうね。ただ、今の中央アジアはファントムペインの拠点が存在すると推測され
る。キルギスには地球軍基地も存在する。汎ムスリム会議もこの大戦に参戦までは望んでいない。当面、人道支援部隊の派遣と言った形で将来の編入の為、地固めを進めるつもりのようよ。ファントムペイン討伐ではザフトの力を当てにしている。あちらには後方支援をお願いするかもしれない」
アスラン「…。ファウンデーション王国は何と?」
ドロドロした話に辟易しながらも、アスランは尋ねざるを得ない。ザフトとしてもアスハ代表の特使としても、知っておかなければいけない。情報収集と整理はどちらの立場でも彼の職務の内だ。
アーサー「実効支配しているカザフスタン西部地域においてロゴスメンバーの逮捕、資産・資本の差押え、凍結に協力する。プラント行きの難民の保護にも積極的に応じる。その代わり、国家と領土の承認を要求している。それと資金援助、旧式モビルスーツ…、ジンやディンの払い下げ」
アグネス「結構欲張りですね。交渉とはそう言うものではありますが。プラント、最高評議会の回答は?」
タリア「満額回答よ。国家承認、資金援助、旧式モビルスーツ払い下げ全て飲んだわ。議長があの国に強く入れ込んだみたい。一応、地政学的要所ではあるけど…。何を考えているんだか。既に国交樹立のための手続きが進行中よ」
馬鹿じゃない!!プラントも一銭だって欲しい時に昨日今日で来た『独立国』に資金援助、これだけで弾劾ものよ。
アグネス「(そこまでしてロゴス討伐する意味が本当にあるのか…。コーディネイターの同胞の為、人道回廊を設けることに異存はないけど…。あれだってどこまで議論したのか分かったものじゃない)」 - 172二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 00:07:01
アーサー「プラントが承認したファウンデーション王国の領土範囲は旧カザフスタン共和国のアクトべ州、マンギスタウ州、アティラウ州、西カザフスタン州の西部4州、それとL3宙域のアルテミス要塞の保有」
副長がより具体的に補足してくれるが、その内容には呆れるばかりだわ。
アスラン「アルテミス要塞!?もう宇宙軍を?!独立して間がないのに」
タリア「そのようね。最初からプラントの資金援助有りきで『独立』直後から宇宙に上げていたみたいよ」
馬鹿らしい。本国の復興が完了していないのに宇宙開発ですか。
アグネス「(新興国あるあるね。独立した途端、一丁前に巨大ダムやら大規模鉱山開発、大規模港湾や大型工場建設。大抵持て余して、使いこなせもせず大失敗。これはファウンデーション王国の未来も危ういわね)」
しかし、アルテミス要塞か。腐っても鯛のユーラシア連邦に頭を押さえられている以上、王族や政府首脳の安全な避難場所が欲しい気持ちは理解できる。短絡的だけど。それ以前に良く落とせたわね。
隣のアスランはまだ、驚愕冷め止まぬよう。ニコル先輩が陥落させた要塞、思い入れがあるのは当然か。
シン「それより西、ヨーロッパ、西ユーラシア連邦は?クレタに関わりますよね?」
タリア「だいたい同じよ。国家と領土の承認、安全保障と連合軍撃退の確約、東欧圏が西ユーラシア連邦に加入を望んだ場合は受け入れるから、それをプラントに支持・援助して欲しい。それが対ロゴス戦協力の見返り、これも満額回答よ」
これは元からそう言う流れだった。もう止められないから仕方ない。
アグネス「(私まで『今更やめられない』思考に入っているわね。最悪だわ)」
ただ、だからと言ってこの状況を、よりましにする名案もない。もうプラントも友好国も『ロゴスとの戦い』あり気で動いている。回り始めた巨大な官僚機構はよっぽどのことがない限り止められないことは理解している。 - 173二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 00:16:01
ここまで来れば、もう流れは見えている。
アグネス「アフリカ共同体の条件は先の大戦で失われた領土の回復ですか?」
アーサー「そうだ。ザフトのスエズ攻略によって旧領土が開放されるなら引き渡して欲しい、と。『明けの砂漠』を始めとした独立色の強い勢力には特別自治州を設定して自治権を保証とも。これも承認された」
一気に話して疲れたのだろう、グラディス提督はコーヒーを飲み、口を湿らせる。副長もコーヒーを一気飲み。私も疲れたわ。話を聞いただけで。
アスランはさっきから最高度の難しい顔をしている。シンは…、あんまり考えていないわね。やむなし。
アグネス「(ただ、大洋州、汎ムスリム会議、ファウンデーション王国、西ユーラシア連邦、アフリカ共同体、それぞれの言い分と要求自体は割りと真っ当なのよね。何よりロゴス討伐は各国の経済に大きなダメージを与えかねない。それを考慮しての資産凍結・差押えだけど、全部のマイナスを打ち消せるとも思えない)」
それなら埋め合わせをして欲しい。そちらが勝手に始めて巻き込んだのだから、と。
そう要求してくるのは極めて健全なことだ。寧ろ、うやむやにせず、ちゃんと分かる形であるだけこちらも応えやすい。
温くなったコーヒーを一気に全部飲む。世界情勢の説明は終わりだ。私達は任務に邁進するのみ。
提督が一度、全員に目線を配った後、お立ちになる。それに合わせて全員起立、敬礼を交わす。
タリア「難しい任務が割り込む様み困惑していることと思う。ただ、時に物事を単純化して捉えることも大事よ。
あなた達が行かなければ、ニュージーランドにて連合軍による地元住民の大規模弾圧が発生し、悲劇の連鎖が繰り返されかねない。それを回避することにのみに集中を。避難勧告は既に大洋州連合が国際救難チャンネルで繰り返し放送しています。奮闘を期待する!」
アスラン、アグネス、シン「はい!!!」
返事と共に5人一緒に士官室を飛び出す。ニュージーランドを戦い抜き、カーペンタリアに移動、シャトルで宇宙に戻りミネルバ・月軌道艦隊と合流。寸刻を惜しまないと。
アグネス「(一寸先は闇だと言うのに、電車のダイアのような動きが求められる。提督の言うように深く考えすぎる暇はないわね)」 - 174二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 10:17:01
一寸先が闇過ぎる…
ミネルバが撃沈されたら即終わり。
そうでなくてもFAITH組が1、2人撃墜されたらそれだけで破綻しそうな綱渡りに思えるが…
議長もだけど、プラント本国もよくこんな無茶を承認したな? - 175二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 12:36:50
ミネルバを駆け下りたら、即、出港準備が終わっていた月軌道艦隊ナスカ級に乗り込む。私達3人が乗艦した数分後にはナスカ級はダイダロス基地を発進する。
全力で地球に向かって猛進するナスカ級艦内でパイロットスーツに着替えて、控室で何となくアスラン、シンとぼーっと過ごす。
パイロットスーツに張り付けられた真新しいフェイスマーク、まだ慣れないわ。私もシンも。そのうち板につくのかしら。
そんなことを何とはなしに考えていると横からアスランに声をかけられる。
アスラン「…。君は意外と冷静なんだな」
体を彼に向ける。アスランの表情は難し過ぎてパンク寸前だわ。やっぱりフォローしないといけないのか。
アグネス「いいえ。驚いています。ただ、目標が可視化したことに安堵を覚えているのかもしれません」
アスラン「可視化…」
アグネス「はい。『ロゴスとの戦い』などと言われたときは頭がパニック気味でしたが。どうやら当面の間、私達は『よく知った戦争』を戦うだけですみそうです」
アスランは私の『よく知った戦争』と言う言葉に曇り顔をするが、そうとしか表現しようがないのだから仕方ない。
シン「あ、それ俺も思った。ロゴスと戦うって言われたときはどこと戦うのかよく分からなかったから。俺達警察でも検察でもないし」
隣で私達の話を聞いていたシンも会話に加わる。
珍しく、でもないか、こいつの言うことは的を射ている。私達は別に警察官じゃないから逃亡したロゴスメンバーの捜査なんてできない。彼らの資産を差し押さえるのは各国の公務員のお仕事だ。
そもそも議長は宣言時、ロゴス資産の凍結や差し押さえなど頭になかったように見えた。皆さまのご尽力により、何とかそっちの方向に話が向いてくれて幸いだった。 - 176二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 12:43:58
アスラン「それは確かに…。少なくともプラントの友好国に関しては条約加盟国のようなロゴスメンバーへの襲撃やテロ、武装蜂起ではほぼ起こっていない。もう、どのように彼らの資産を処理するか、メンバーを捜索するかに焦点が移っている。国内が無政府状態に陥らず、本当に良かった」
アグネス「はい」
そもそもプラント勢力圏、プラントの友好国内にロゴスメンバーは居住していないだろうし、もしいたとしてもあの宣言直後に出国済みだろう。それもある意味幸いしている。
シン「でも、あちこちと戦わなきゃいけなくなって大変だな」
アグネス「私も聞いた時は頭を金槌で殴られた気がしたわ。けど、よく考えたらそれほどでもないのよね」
嘘だ。本当は十分大ごとで私の内心は嵐の小舟状態。それでも、二人を、特にアスランを宥めるしかない。努めていつも通りに振舞う。
アスラン「それほどでもない…。どういうことだ」
アスランがかなり怖い顔で私を睨んで来るが、その視線を受け止め、黙って彼の目を見つめる。目と目が合わさって数秒経つと彼の思考もようやく落ち着きを取り戻し始める。
一呼吸、二呼吸置いてアスランは自ら現状を整理し出す。
アスラン「確かに…。彼らの要求を良く考えると、西ユーラシア連邦の要求に関しては…。要はこれまでのプラントの姿勢を『ロゴスとの戦い』開始により変更されないよう求めるものだな。新しい『敵』との戦いにかまけて自分達のことを疎かにするな、と」
アグネス「はい。ファウンデーション王国についても。資金援助やら旧式モビルスーツの払い下げやらは私も遺憾に思いますが…。それ以外は現状追認を求めているにすぎません。国交樹立も…。この情勢下では早いか遅いかの違いでしかなかったでしょう」
資金援助についてはすっごく遺憾だけどね。宇宙軍だのアルテミス要塞だの調子に乗り過ぎなのよ。身の丈と言うものを考えて欲しい。ただ、今の本題はそこじゃない。 - 177二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 12:47:41
アグネス「(彼らの要求は現状の追認。もともとクレタ攻めも決定していたこと。寧ろ…)」
西ユーラシア連邦、つまりヨーロッパはプラントの友好国の中では一番、ロゴスの影響が強いはず。アフリカ共同体と大洋州は良くも悪くもプラントと一心同体の感があるし、経済もロゴス以上にプラントとの結びつきが強いだろう。
汎ムスリム会議も大西洋連邦とは元々、距離があった。先に挙げた2国ほどではないにしろ、ある程度打撃は少ないはず。あくまで他の地上国家の中では、と言う意味だけど。
アグネス「(西ユーラシア連邦、ヨーロッパは事情が異なる。だからこそ、あの地域を無秩序状態にするわけにはいかない。あくまで民衆の暴発という形ではなく、政府の政策として粛々とロゴスメンバーの捜査と検挙、彼らの資本と資産の凍結・差押えを進める必要がある)」
そして、それがこの戦争の長期化を防ぐ近道でもあるはず。どこかの議長さんは―。あくまで私の所感だが、状況は引っ搔き回して世界を自分のチェス盤にしようと目論んでいる節がある。
それが、今は最高評議会の尽力もあって、民衆単位の暴動ではなく国家単位の政策として『ロゴス、ファントムペイン・ブルーコスモス派武装勢力』との戦いを進める方向にシフトチェンジ出来た。多分これは大きい。議長め、ざまあみろ。
無論、これはプラントと結びつきが強い国と地域に限定される、それ以外の国や地域では壮絶な状況が繰り広げられつつあるわけだけど、そっちはそっちで何とかするべきだ。
或いは―。
アスランに体の向きを向けたまま、彼の言葉を待つ。
今は、認識の共有を図ることが何より大事だ。パニックのまま戦うわけにもいかない。一度、アスランにアイサインを送る。『どうか続きを』と。彼自身が考えてくれないと困る。
躊躇いながらも彼はそれに答える。
アスラン「汎ムスリム会議に関しても。中央アジアはもともとイスラム教徒が多数派の地域だから…。ユーラシア連邦が力を失うなら変に混乱する前に、抑えられる国が抑えてくれた方がプラントとしても良いのか。テロの温床になられても困る…」 - 178二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 12:53:15
アグネス「はい。それにあそこはファントムペインの本拠地の一つ。プラントとしても放置できません。ロゴスメンバーの潜伏先になるかも知れませんし、違法な資金洗浄や人身売買が横行するかも。それこそエクステンデッドにされる子供の供給地になってしまうかもしれません。人道回廊を通すとか言い出されたときは頭を抱えましたが…」
人道回廊と言う言葉にシンが反応する。
シン「俺は…。アグネスがどう思うかは分からないけど…。人道回廊を通すことには賛成だ。ユーラシア連邦と戦わなきゃいけなくなるかもしれないけど。それは今もそうだし。虐殺事件は嫌だ」
さっきまで飲んでいた空き缶を握りつぶしながらシンは言葉を吐き出す。こいつ自身も避難民出身だから、思うところが大きいのね。
ちょっと頭をめぐらした上で付け加える。
アグネス「遺憾極まりないことですが、コーディネイターの出生率低下問題はまだ解決できていません。たとえ難民と言う形であれ、新しい同胞の保護と移民は歓迎するべきかと。駆け回る部隊は大変ですが…」
それに関しても、やるならちゃんとやるべきだ。国が、最高評議会・国防委員会が音頭を取って避難民保護は大規模に部隊を展開して一気に行う。細々と五月雨式にやれば、同じくテロの温床になり世界の混乱に拍車がかかる。あくまでシステマティックに進めることが大切だ。無秩序な熱狂や混乱は排除するべき。
アスラン「ニュージーランドとアフリカは?」
ちょっと考えをまとめ、言葉を続ける。
アグネス「そもそもの現状がおかしかったのです。ニュージーランドと北アフリカ・西アフリカは大洋州とアフリカ共同体のものです。ユニウス条約が有効なうちにもっと主張して然るべきでした。
この機に乗じて奪還し、同盟国に返還できるならするべきかと。私個人の考えはともあれ、議長にしろ、国防委員会にしろスエズ攻略は元からやるつもりだったのです。
取り返した領域からロゴス、ファントムペイン、ブルーコスモス派武装勢力を追放できるならプラントとコーディネイターの利益になります。戦争・紛争の早期終結にも資するかと」 - 179二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 12:58:19
アスランの目をしっかり見つめ『戦争・紛争の早期終結に資する』を強調する。正直、私は『ロゴス討伐』にまったく乗り気ではない。議長が勝手に言い出したアホな国家戦略だ。
ただ、同盟国の国土回復の機会ととらえるなら、それも案外ありなのかもしれない。
『同盟国の国土回復≒プラントの勢力回復』だ。何より、今の流れ、決して悪くはない。
最高評議会が同盟国・友好国との協調路線をとったことで、無秩序が一瞬広がり出した世界は再び通常戦争に回帰しつつある。分かりやすい、対処しやすい戦争だ。少なくともニュージーランドとクレタと、スエズ・北アフリカに関しては。
世界の混迷に付け込みたかった(かもしれない)議長の目論見は、その3分の1程は既に空振りに終わったと私は見ている。
戦争の終結を口で唱えながら、その実、その複雑化と長期化を意図的にしろ何にしろ招こうとしていた。それが、地域が限定されるとはいえ、寸前で回避できたようで安心している。
アスラン「『戦争・紛争の早期終結に資する』か…。そうであって欲しいが…」
アグネス「…。ニュージーランド攻略にはアスハ代表、オーブにもメリットが。成功すれば、南太平洋から連合の影響力が大きく減退します。国の自主性を回復する追い風になるかも」
アスラン「そうだな…」
もういい加減納得して欲しい。この人は!もう、面倒見切れないわ。話はここまで。
此方の意図を察したアスランがようやく頷く
ナスカ級オペレーター「コンディションレッド発令、コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機してください」
うーん。メイリンやアビーじゃないと気合が入らないわね。でも、一生懸命さと誠意は確かに感じる。
議長の思惑が100%成功しているのか、彼自身も暗中模索状態なのか、その間の何処かなのかは分からない。私は戦友を裏切りたくない。今はそれだけで十分だ。
アグネス「時間です!」
アスラン「ああ」
シン「うん!」
そのままカオスにダッシュ、『仕方ない』は作戦が一段落するまで禁止ね。ニュージーランド第三攻撃ポイント達成までは万難を排して、敢行するのみ! - 180二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 16:54:09
連戦連戦連戦
人には休息が必要なんだ!!と叫びたいだろうに - 181二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 17:33:42
議長もチャート崩れて追い詰められてるしジブリは言わずもがな
誰もかれも自分の思い通りにならない世界で足掻いてくしかないのだ
それが嫌だからこそのデスティニープランだけど - 182二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 18:43:14
キラとやり合う状況になってないのにアスランが迷走モード入ってる
議長への不信感MAXだからだろうがそれはそれとして原作同様にメイリン巻き込んで脱走したらアグネスポイントが大暴落しそう - 183二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 19:24:10
- 184二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 23:54:08
議長の最終目的とアスランの目的は相容れないからザフト離反は避けられない
……んだけど現時点でアスランを処分できる大義名分が議長側にないよね - 185二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:06:25
私はカオスに、シンはインパルスに、そしてアスランはセイバーに乗り込む。
不思議と心は平静を取り戻している。戦う相手と死力を尽くすべき地が定まり、寧ろ安堵の気持ちすら生じている。
アグネス「(多分、向かう先、戦う理由がニュージーランド島の奪還、大洋州復帰だからかな。議長の思惑がどうであれ、『ザフト軍人として相応しい』任務だ)」
ナスカ級オペレーター「カタパルト推力正常。針路クリアー。インパルス、発進どうぞ!」
シン「シン・アスカ、インパルス、行きます!」
インパルスは艦内で機体はドッキング済み、フォースシルエットも装着済み。そのまま発艦。
長いエクスカリバー・レーザー対艦刀を片手に携え、もう片方の腕で機動防盾を最伸長させる。ナスカ級は地球の引力に抗えるギリギリの距離まで寄せてくれたから、発進と大気圏突入はほぼ同時だ。
ナスカ級オペレーター「続いてアスラン機、カタパルト推力正常。針路クリアー。セイバー発進どうぞ」
アスラン「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」
アスランも発艦。艦から出て直ぐに機体を高速飛行形態に変形させる。セイバーの空力防盾はモビルアーマー変形時、機体下面に装着される。だから、そのまま大気圏を突破することになる。大気圏内の飛行能力は3機の内でセイバーが頭一つ抜けている。この奇襲作戦の成否はアスランに掛かっていると言っても良い。
ナスカ級オペレーター「続いてアグネス機、カタパルト推力正常。針路クリアー。カオス発進どうぞ」
アグネス「アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!」
ミネルバと違う、自分がパチンコ玉になって飛ばされるような感覚と共に宇宙空間に放り出される。目の前には巨大な青い星。見とれている間も無く機体をモビルアーマー形態に変形。巡航機動防盾を前に構え、機体を焼き尽くさんとする高熱に抗う。
アグネス「(モビルスーツ単体での大気圏突破は2度目か。慣れないものね)」
機体の光学映像は真っ赤に染まり、嫌な振動が機体を揺らす。流石に警報装置がけたたましく音を上げたりしないのは救いね。ザクの時は五月蠅くてかなわなかったわ。 - 186二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:09:01
結局、敵の兵力は『(たくさん、でもハワイやクレタよりまし)と言うこと以上は不明だ。
一応、以前偵察した際は、デボンポート海軍基地に停泊中の艦隊は、ステングラー級8、アーカンソー級8、デモイン級10、フレーザ級14程度とされている。ただ、そこから増えているのか減っているのか、増減なしなのかは言ってみなくては分からない。
機体の周囲を取り巻く大気の様相は目まぐるしく変わり続ける。熱圏を落下し続け、カーマン・ラインを越え、やがて成層圏へ流星が走り抜ける高度を駆け下り続ける。
広大な南太平洋が眼下に広がり、オーストラリア大陸も懐かしいカーペンタリア湾もオーブ、ソロモン諸島も―、目指すべき二つの島も脳内に飛び込んで来る。
成層圏に突入、制動を徐々にかけ始める。アスランから通信が入る。以後固定。
アスラン「敵のレーダーは何とか潜れるはずだ。一気に奇襲。艦から艦載機を発艦させる前に叩く。陸揚げされているモビルスーツ隊は防空隊と共に直ぐにスクランブルに入るはずだ。機動力が鍵だ。決して止まるな」
アグネス、シン「了解」
アスラン「対空砲、防空陣地、自走リニア榴弾砲、ブルドックは俺が何とかする。二人は敵艦隊、モビルスーツ部隊に集中しろ。基地には大型モビルアーマーも配備されているかもしれない。準備を」
アグネス、シン「了解」
命令を聞きながらもニュージーランド島、北島・南島がぐんぐん大きくなっていく。対流圏に入ったところで警戒度をが一気に上がり、脳内のアラートが鳴り続ける。
ニュージーランド北島の北部、ハウラキ湾・オークランドに向かって突き進む。私達は猛禽だ。獲物に向かって爪を振り喰い込ませる時が来たんだ。
もうノースシェアは、デボンポート海軍基地は目前。本当に目前だ。
スクランブルは…。かかっていない!奇襲は成功した!! - 187二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:13:57
アスラン「スぺングラー級8、アーカンソー級9、デモイン級10、フレーザ級29、確認」
アグネス「確認しました」
シン「確認しました」
オークランド、ノースショア半島、半島先端のンガタリンガ湾にはフレーザー級29隻、大型艦27隻はランギトト海峡沿いに停泊中。
アスラン「少し増えているな。行くぞ」
アグネス、シン「了解」
言うが早いかセイバーは機首を下に急降下、射程圏に入るやアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲を発射し、デボンポート海軍基地のレーダーサイトを吹き飛ばす。
そのまま急降下攻撃を続け、スーパーフォルティスビーム砲で防空陣地を速射、ピクウス76mm近接防御機関砲を掃射し続け、自走リニア榴弾砲とリニアガン・タンク、ブルドックを合わせて20両火達磨にする。焼け爛れ、生きながら燃える人影が車両から飛び出して奇妙なダンスのような断末魔を上げているが、それに感慨を抱く間は私達にはない。
モビルスーツ形態に変形したセイバーが高エネルギービームライフルで自走リニア榴弾砲とリニアガン・タンクを更に吹き飛ばす。同時に20mmCIWSが駆け回る人影もろともブルドックを吹き飛ばし続けている。
それをモニターで確認しつつ、私も機首を下げ急降下を開始する。
時間がない。アーカンソー級とスペングラー級には艦対空ビームシステムがある。その咆哮が上げる前に潰せるだけ潰さなければならない。
まず、カリドゥス改・複相ビーム砲と高エネルギービームライフル、機動兵装ポッドのファイヤーフライ・誘導ミサイル、ビーム突撃砲を同時に起動。照準がコックピットモニターに次々と表示される。急速に下がる機外の光景、甲板を走り回る敵兵の白目さえ見える。
まず、カリドゥス改・複相ビーム砲を発射。港湾内中央に停泊中のスペングラー級に命中させる。 - 188二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:17:03
すると思いもかけないことが!
真っ赤なビームを喰らい、大きく膨らみながら弾け飛ぶ敵空母。その中に巨大なカニのようなシルエットが浮かぶとその巨大な影も大爆発を起こす。高度を下げていた機体は爆風がもろに受け、大きくバランスを崩す。
カオスはそのままランギトト海峡の海面に叩きつけられそうになる。訓練を思い出し、何とか態勢を持ち直して攻撃を続行。
先程のスペングラー級の大爆発に巻き込まれた隣接船舶が次々と誘爆、炎上、着底していく。巻き添えはスペングラー級3、アーカンソー級5、デイモン級4かその火災旋風は陸上の基地施設にまで被害を及ぼしている。
スペングラー級に艦載していたザムザザーが艦もろとも複相ビーム砲に貫かれ、大爆発を起こしたのだと思い至る。リフレクター装備巨大モビルアーマーの撃墜時の爆発はすさまじい。オーブ沖海戦で体験済みだったが、宇宙での戦闘の印象が強く失念気味になっていた。
地上での戦闘は閃光が瞬いて終わりではない。有用な戦訓かもしれない。脳裏にそんな考えが走るが、戦闘は無論、継続中だ。私の急降下爆撃・攻撃はまだ終わっていない。
24発あるファイヤーフライ・誘導ミサイルを4発ずつ残りのスペングラー級5隻に命中させ、これも大破・着底させる。これで艦隊の空母は全滅した。
残り4発のファイヤーフライはアーカンソー級の内1隻に叩き込み、隣のアーカンソー級にも高エネルギービームライフルも発射、命中。2隻の艦全体が爆発、着底するのを視認する。
ビーム突撃砲でアーカンソー級を更に追加で1隻着底させ、アーカンソー級最後の一隻はヴァジュラ・ビームサーベルで切り裂き、艦内から劫火が上がるのを確認しつつ、機首を上げながら、時計回りに半島を旋回、カオスの第一次攻撃を終了させる。
(カウントMS187 デストロイ1(共同) セカンドシリーズ1(共同) 大型MA9 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母11 イージス艦15 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10) - 189二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:20:57
シン「ううぉぉぉぉ!!」
眼下では、私に続いてランギトト海峡沿いに舞い降りたインパルスがエクスカリバー・レーザー対艦刀でデイモン級を斬っては飛び移り、斬っては飛び移りであっと言う間に6隻を捌いて大破、着底させる。
港湾内は悲惨としか言いようがない状態だ。陸上は言うに及ばず、港の中にも息絶えた亡骸が漂い、既に着底した艦が更に複数回誘爆し、その度に焦げた金属の塊とこびり付いた肉片が空を舞っている。流失したオイルの中で足掻く将兵に助けは来るのだろうか。彼らの目が無事とは思えない。
攻撃開始から2分経っていない。これが地上の光景なのか、現実なのか。
脳裏に走った要らぬ考えは脳内麻薬の海に泡のように消えていく。目を転じるとセイバーは陸上基地の脅威を粉砕し終え、今はンガタリンガ湾に停泊していたフレーザ級を攻撃している。
アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲が両門につき2隻ずつ艦を焼き、スーパーフォルティスビーム砲が更に1隻ずつフレーザ級を湾内に着底させる。
アグネス「(もうに6隻か。陸上拠点も対空能力も破壊した上で!)」
秒刻みのダイアは進んでいる。次だ!
アグネス「アスラン先輩、スペングラー級、アーカンソー級、デイモン級全艦着底しました」
アスラン「良し。シン、ンガタリンガ湾の残敵の掃討を。アグネスは俺とオークランド空軍基地に。スクランブルが始まる!」
アグネス「了解」
シン「え…。了解」
フレーザ級とは言え、23隻はきついのでは…。そう思ってシンを心配しかけるが、セイバーは高速飛行形態に変形する直前、もう一度アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲とスーパーフォルティスビーム砲を掃射、もう6隻着底させたうえでインパルスに戦場を引き渡す。
アスラン「頼む」
シン「はい」 - 190二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:27:21
通信で彼らのやり取りを確認しながら、私はカオスをモビルアーマー形態のままオークランド空軍基地に飛行を開始している。寸刻を惜しまなければならない。
しかし、直ぐに後ろから飛来したセイバーに追い抜かれる。やはり早い。
連合軍オークランド空軍基地は、湾の奥、デボンポート海軍基地から15㎞。
目前に敵編隊確認!
アグネス「敵編隊確認。ウィンダム6、ダガーL6」
アスラン「確認した。撃墜せよ。俺は先に行ってレーダーサイトと防空陣地を叩く」
アグネス「了解」
スクランブルが間に合った連中か。運がいいのか悪いのか。そんなもの関係ない。
即時に、カリドゥス改・複相ビーム砲で敵編隊を薙ぎ払い先頭の3機を落とし、高エネルギービームライフルでもう1機ウィンダムを落とす。
アスラン自身はスーパーフォルティスビーム砲を速射して2機撃墜すると、先に指示を出した通り先行して敵編隊を駆け抜け、空軍基地に真直ぐ飛んでいく。
自分達を置き去りにして基地に突っ込んでいくアスランに一瞬気を取られたマヌケにビーム突撃砲を1発ずつ撃ちこんで2機を墜とす。
残った1機のウィンダムと3機のダガーLが3連装ヴュルガー空対空ミサイルポッドから全ミサイルを発射し、ビームライフルを撃ち放ってくる。
アグネス「(今更か!)」
反応が遅すぎる。3分の2が撃墜されて、初めて本気を出すとは。
ミサイルはピクウス76mm近接防御機関砲で迎撃する。飛来するビームの内3本は避け、1本は巡航機動防盾で受け流す。同時展開される詰め将棋を高速で強制プレイしている気分よ。 - 191二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:33:38
ビームライフルで隊長機らしきウィンダムを撃墜、一瞬で間合いを詰め、両足のビームクローで2機を破断、上を衝こうとしたダガーLはビーム突撃砲で撃ち抜く。
アグネス「(今ので最後か)敵編隊殲滅。オークランド空軍基地に向かいます」
(カウントMS199 デストロイ1(共同) セカンドシリーズ1(共同) 大型MA9 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母11 イージス艦15 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10)
アスラン「了解。シン、そっちは?」
シン「あと2隻…。斬り終わりました」
アスラン「良し。シンはアグネスを追って空軍基地に。レーダーサイトと防空陣地は潰してある。俺はパパクラ軍事キャンプに向かう。電力の残量に注意を。空軍基地の戦闘能力を破砕し終えたら報告を」
アグネス、シン「了解!」
カオスの機首を再び空軍基地に向けるとセイバーがこちらに飛来、すれ違うとパパクラ軍事キャンプに。私はオークランド空軍基地上空に到着。焦げた機体や車両が散乱する空港、管制塔は吹き飛び、大破した格納庫が虚しく入口を空けている。ウィンダムもダガーLも戦闘車両も何台も何機も飛散し、焼き焦げ、果たして生存者はいるのか…。
アグネス「(ほぼ壊滅状態じゃない。本格発進前とは言え...)」
眼下では、連合兵の懸命な消火活動が続いている。救命車両は戦友の救助を諦めない。感傷は奥歯で砕く。武器を起動させるカオスを見上げる敵兵達。
此方を見上げ驚愕と恐怖で染まる一人一人の表情が網膜にこびり付く。
衛生兵は攻撃してはならない。絶対に。 - 192二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:39:41
このレスは削除されています
- 193二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:41:26
ピクウス 76mm近接防御機関砲で整備車両、弾薬補給車、計10破壊。弾薬補給車の大爆発が消防隊の努力を消し飛ばす。大事を聞いて基地に駆けつけて来たジーブ、軍用トラック30両も乗員ごと20mmCIWSで破壊。吹き飛ぶ車両と共にバラバラになった手足、頭や胴体が宙を舞い、燃え上がる人影が不気味なダンスを踊る。
救命車両と赤十字は絶対に撃たない。
機体をモビルスーツ形態に変形、頭部12.5mmCIWSで地上を掃射し、戦闘員を吹き飛ばしていく。逃げ込もう、隠れようとするジープやトラック10両もろとも吹き飛ばし、駆けつけた兵員輸送車6両は胸部の20mmCIWSで穴だらけにする。
アグネス「(そろそろか…)」
やがて地下格納庫の重いエレベーターが起動し、この基地の主たるゲルズゲーが這い出して来る。戦友を守りたいのは彼らとて同じこと。
アグネス「(デモンストレーションは終わり。彼らがこの基地最後の戦闘能力)」
こちらも瞬時にモビルアーマー形態に変形する。変形と同時にカリドゥス改・複相ビーム砲を発射、同時に高推力スラスターを思いっきり吹かせ、ゲルズゲーの右側部に回り込み、下半身本隊の横腹にビームサーベルを突き刺す。
引き抜き飛び退ると巨大な爆発がまた空港に吹き荒れ、人がバラバラに吹き飛び、軍用車が横転して燃え上がり、死者の葬列に新たな参列者を加えてしまう。
(カウントMS199 デストロイ1(共同) セカンドシリーズ1(共同) 大型MA10 対MSヘリ14 輸送機1 リニアタンク8 対空砲7 空母11 イージス艦15 駆逐艦2 コルベット艦2 戦闘機8 軍用艇3 対MSミサイル搭載トラック6 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10 汎用車両・兵站車両・軍用トラック等65)
そのまま地下格納庫上空に到達。エレベーターはまだ、締まり切ってはいない。閉じる前にカリドゥス改・複相ビーム砲を撃ちこみ地下施設を破壊する。地下で大誘爆が連鎖して起こり、衝撃が地上まで響いてくる。カオスをそのまま飛行させ、基地上空を一度旋回。敵の戦闘力が消滅したのをもう一度確認してアスランに連絡する。 - 194二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 01:04:16
アグネス「オークランド空軍基地、沈黙。そちらに向かいます」
アスラン「良し。こちらは済んだ。上空で待機せよ。警戒を怠るな。
『カーペンタリア派遣軍、こちらは月軌道艦隊・特務隊アスラン・ザラ。オークランド・地球連合軍デボンポート海軍基地及びパパクラ軍事キャンプ、オークランド空軍基地の攻撃に成功。敵戦力殲滅を完了しました』以後の指示を」
モニターに剽悍そうなザフト軍司令官の顔が映る。
ザフト軍司令官「良し!では、地上作戦を開始する。貴官らは補給に。こちらの座標を送る」
アスラン「了解。アグネス、シン。編隊を組んで向かえ。俺は先に行く」
アグネス、シン「了解」
アスランの報告を聞いている間に、シン、インパルスが応援に駆け付けてきた。上空で合流し、相互に警戒態勢を取りながら沖合のボズゴロフ級に向かう。
速度の出るセイバーは既に着艦してエネルギーの電力の補給を受け始めることだろう。アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲を多用した分、残量残り少ないはず。先に行ったのはそう言う理由だ。
周辺警戒をしながら海上に出ると件のボズゴロフ級が視認される。
通信を彼方にも固定する。
ボズゴロフ級オペレータ「コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。砲撃目標点確認。ニュージーランド北島ウェリントン郊外アッパーハット・地球連合軍ニュージーランド方面軍統合本部、パーマストンノース・地球連合軍リントン軍事キャンプ及びマナワツ地方オハケア空軍基地」
ザフト軍参謀「ファゾン隊アッシュ、イール隊グーン、発進準備、良し。全機オールウェポンズフリー」
ザフト軍司令官「目標は連合軍支配よりニュージーランドを解放することにある。残留する連合軍は速やかにこれを排除せよ。市街地、民間人への被害は最小限の上の最小限に留めるるよう努力」
着艦を前にシンの顔がコックピットモニターに映る。何だか変な顔ね。
アグネス「無事で何よりね。あんた。」
シン「あ…。ああ。アグネス、大丈夫か?!」
アグネス「…。平気よ。急ぎましょう」
まだ戦闘は始まったばかり、気を抜いた奴が死ぬ。私はまだ気を抜いていない。 - 195二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 06:31:19
目立った損害もなく複数の基地を壊滅させられてよかったけれど量産した惨殺死体を目の当たりにしたアグネスのメンタルがやばそう
周りの人たちを思いやれるように成長したからこそ敵兵の痛みに鈍感ではいられないよね - 196二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 07:55:27
敵どころか既にオーブで自身の家族が兵士達と似たようなバラバラ死体になったのを直で見てるシンも今回はだいぶメンタルヤバいことになってそう
- 197二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 09:07:19
奇襲とはいえ3機に基地を落されちゃたまったもんじゃないな
ナチュラルがコーディネーターを恐れる理由もわかる - 198二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 12:49:38
- 199二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 14:44:03
たておつ
強行軍続きだが皆無事に終わりますように - 200二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 14:50:54
200なら議長の野望もアコードの野望もくじいてみんなでハッピーエンド