アグネスタキオンの憂鬱(服選び編)【タキカフェ+ダンポケ・SS】

  • 1二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:47:56

     やあ、諸君。今日もウマ娘が到達しうる最高到達点とその先の未来への研究で大忙しのアグネスタキオンだ。早速だが、君たちはウマ娘の勝負服について、どう思う?

     知っての通り、現状トゥインクル・シリーズにおいて勝負服の着用が認められるのは基本的にGⅠレースのみだ。どのウマ娘も実に華やか、目も眩むような輝きを放ってターフに立っている。
     この学園に居るウマ娘ならば誰もがその煌びやかな姿に憧れるもの。だが、勝負服を手にするまでの道のりはそれだけでも険しいものだ。
     それを乗り越え、自身の夢を象ったそれに出会った時の喜びは一入だろう。新たなスタートラインに立ったウマ娘達が、共にトゥインクル・シリーズを駆け抜ける自分だけの相棒。それが、勝負服という存在だなのだよ。

     勝負服を纏ったウマ娘は、そこが彼女たちにとっての憧れの舞台であることを差し引いても驚異的な身体能力を発揮することがある。無論、GⅡや他のレースとて、ウマ娘達はただ一つの勝利を目指して全力で駆け抜けているのは言うまでもない。
     しかし、勝負服を纏って走るGⅠレースにおいて、それまで誰も見たことがないような走りを見せるウマ娘がいるのは紛れも無い事実だ。
     
     ある時は、秋の盾を駆けた東京レース場芝2000m、またある時は、トゥインクル・シリーズの頂点を決める中山レース場芝2500m。一つの時代が巡り、その先の新時代が築かれるまで破られない程の走りが、鮮烈な記憶と共に幾度となくターフに刻まれてきた。
     その時のウマ達に、一体何が起こっている? 秘めた才能か、たゆまぬ努力の賜物か、はたまた天運が味方したか? それまでの走りの比ではないその力は、どこから生まれ、どこへ行く? 彼女達はそのターフで、その瞳の先に何を見た?

     いやはや、堪らないねぇ! 再現性の無い走りの数々が、これ以上ない程に探究心を刺激してくれるよ!

  • 2二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:49:04

     つい先日のティータイムでカフェにこの話を振った時には、付喪神の話を返されたよ。長い年月をかけて愛され使われた道具には魂が宿り、時には持ち主の想いに寄り添い続ける、という話だね。
     ウマ娘がトゥインクル・シリーズを全力で駆け抜ける事ができる期間は、一年足らぬ九十九にさえ到底及ばない。しかし、ターフに立つウマ娘達の意志や想いの力は計り知れないものがある。

     その一瞬の煌めきが、或いは百年分の想いを身体に宿し、時に勝負服に神を降ろす。否、その一瞬の間だけウマ娘に寄り添う付喪神と成ることさえ可能なのではないか……と。いやはや、実にカフェらしい考察だ! なんとも興味深い!
     単純な数字では表せない事象だろうが、感情の発露が身体に及ぼす影響の凄まじさを考えると、決してありえない話とも思えない。
     この胸の高鳴りと共に秘密を解き明かした時、私の目指すウマ娘が到達しうる限界のその先へ、また一歩近づけるかもしれないね。

     ……どうして突然こんな話を長々としだしたのかって? 素晴らしい、実に良い質問だ。それはだね……まあ、まずは後ろの二人に聞き耳を立ててみたまえ。

    「じゃーん♪ こういうのはどうかな?」
    「お、それも良いな! んでも、どっちかっつーと親しみやすいって感じだな。ダンツらしいけど、勝負服って言うにはちょっと弱くねえか?」
    「うーん、そっかぁ。じゃあこれはお出かけ用にしようかな……例えば、今度のデートの時に、とか」
    「おいおい、そういう服選びじゃねーんだぞ?」
    「えへへ、ごめんね? でも、やっぱり……ポッケちゃんといる時は、一番好きだって思って貰えるような服で一緒にいたいな、って」
    「……んだよ、それ」
    「ホントだよ?」
    「知ってるよ。俺だって……ダンツには、ずっとそう思ってて欲しいから、な」
    「……うん。ありがとう、ポッケちゃん」
    「あー、ホラ! 早いとこ次だ、次! のんびりしてっと日が暮れちまうぞ!」
    「えへへ……♪ じゃあ、次はこれにしてみるね!」

     ポッケ君とダンツ君がイチャイチャしているね。これはまあいつもの事だが、今日この状況に至る経緯も説明せねば私の行動にも説明がつかないだろう。

  • 3二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:50:09

     先日、トゥインクル・シリーズの専門誌に、かの勝負服デザイナー・ビューティー安心沢氏のコラムが載った。
     これもまあよくある事なのだが、今回は掲載に当たってURAが一枚噛んだらしく、抽選企画が催される事となったらしい。

     その内容というのが、ウマ娘限定で『自身にとって最高の一着』を纏った写真を送ると、抽選でそのウマ娘にその"最高の一着"をイメージしたビューティー安心沢氏の勝負服がプレゼントされるというものらしい。
     ポッケ君とダンツ君は、この抽選企画に随分目を輝かせたようだねぇ。さっきここに来た時の二人の荷物を見てびっくりしたよ。クローゼットから引っ張り出してきたであろう私服に一張羅に特攻服らしき服でポッケ君達が(勝手に)作ったスペースは一杯になってしまった。

     それからすぐに二人にとって最高の一着を選ぶためのファッションショー……という名のイチャイチャタイムが始まって、かれこれ二時間は経過している。
     無論窓を閉めカーテンもしているが、二人とも私の事など気にも止めず平気で服を着替えるものだから、ふと羞恥心というモノが備わっているのか少し疑問を感じたりもする。
     まあ、仮に聞いた所で『タキオンなら別に気にしなくても良いだろう』と、今更何をと言わんばかりの答えがポッケ君から返ってくるのが目に見えているので、特に問いただしたりはしないがね。

     まあ、詰まるところ私がこうして勝負服とウマ娘の関係性について全力で考察しレポートを書いているのは一種の現実逃避なのだよ。
     せめてカフェがこの場に居ればティータイムにかこつけてこの甘ったるい空気をリセットする事が出来るのだが、今日は委員か何かの仕事でもあるのか、普段より到着が遅いときている。
     せめて研究に没頭することで後ろの二人のイチャイチャ空間に巻き込まれないようにしていると言う訳だ。

  • 4二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:52:20

    「どうだ? L/Roarsのヤツらが贈ってくれた特服、イカしてるだろ?」
    「うんうん! とってもカッコ良いよ、ポッケちゃん!」
    「っへへ……だろ?」
     
     これで何着目か、数えるのも面倒になってきたその時、研究室の扉が開く音がした。私にとって、それが希望の鐘にさえ聞こえたのは言うまでもない。

    「……あの、これは一体……どういう状況ですか……?」
    「やあカフェ、今日は随分遅かったね。実は斯く斯く云々ピーパーペーポー寿限無寿限無……」

     自分でも驚きだが、研究室の扉を開ける音に続いて困惑したカフェの声を耳が捉えた瞬間、私は聞かれてもない後ろの二人の事情について一から十まで説明してしまっていたよ。
     全力で研究に没頭して二人を意識から追い払うようにしていたが、それでも限度というモノがあったようだね。塵も積もればデジタル君というヤツだ。

    「抽選で新しい勝負服を……?」
    「おう! んで、俺とダンツでお互い色々見せ合って最高の一着を選んでるって訳さ」
    「成る程、それでこの服の量ですか……」
    「良かったらカフェちゃんもどう? 新しい勝負服、一番好きな服で作ってくれるんだよ!」
    「お誘いは嬉しいのですが、私は遠慮しておきます。先日ユキノさんと新しい勝負服を誂えたばかりですし……」

     事情を説明したらダンツ君がすぐさまカフェを誘い、これに対してカフェが断りを入れる。ここまでは予想通りだ。この次は恐らく私にも同じような問いかけが来ることだろう。
     そうしたら、私もカフェ同様、先日勝負服を新調したばかりだから、と断りを入れる。そこですかさず二人に『まあ、カフェも来た事だし、少し休憩にしたらどうだい?』とティータイムに誘う。

     この流れなら、ごく自然にこの部屋の甘ったるい空気をふくよかに香るコーヒーとスイーツで入れ替える事が出来るだろう。そこから二人はまた服選びを再開するのだろうが、そうしたら私はカフェと雑談でもしていれば良い。
     我ながら完璧なプランと言えるだろう。

  • 5二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:53:05

    「んじゃさ、カフェがタキオンの服選んでタキオンがカフェの服選ぶのはどうだ? 俺たちみたいにさ」
    「私が、タキオンさんの服を……?」
    「うんうん! それが良いよカフェちゃん! 折角の機会だし、楽しまないと!」

     おっと、そう来たか。ポッケ君達は相変わらずナチュラルに私を巻き込むのが上手い。
     まあ確かに、カフェにあれこれ私の服を選んで貰うのは吝かではないが、とは言え私が勝負服を新調したばかりなのはカフェも十分承知しているし、流石に────。

    「……成る程、それなら……楽しそうですね」
    「カフェ?」

     不意を打たれて思わず聞き返してしまった。カフェに視線を移すと、何と言うかそこはかとなく楽しそうな顔をしている。
     しまった、これは予想の外だ。確かに吝かではないとは言ったが、まさかここでカフェが乗り気になるとは。

    「いや、待ちたまえよカフェ、私はどちらかというとティータイムをだね」
    「んじゃ、取り敢えずタキオンもカフェも服もってこいよ。俺達は俺達で選んでるからさ」
    「ええ、ではお言葉に甘えて……行きましょうか、タキオンさん」

     言うが早いか、カフェはすぐに私の手を取った。いやはや、これは困ってしまったねぇ、あっという間にこの場を挽回出来なくなってしまったよ。
     まあ、少なくともポッケ君とダンツ君の最高の一着会議という名のイチャイチャ領域からは一旦逃げられる訳だし、良しとしようじゃないか。
     後で研究室を片付けるのが大変になりそうだが、懸賞に応募するまでの辛抱だと思えば大したことじゃあない。

  • 6二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:55:28

     それにだ。好きに服を選んで私をあれこれ着せ替えできると知って、随分と嬉しそうに微笑むカフェを今から独り占めできるというのは、決して悪いこととは思わないしね。
     思えば、ポッケ君とダンツ君のおかげで研究室を根城にするカップルが増えて以来、カフェがこんなに表情豊かだとは私も知らなかったよ。これからも、カフェの知らない一面を沢山知っていくんだろうね。

    「……どうしたんですか。口元、緩んでますよ」
    「いやなに。どうやら私も案外、このイベントを楽しんでるようだと思ったまでさ。カフェもそうだろう?」
    「ええ、まあ……折角の機会ですし、思うまま染め上げてみるのも、悪くないかもしれません」
    「ふふ……そうか。それは楽しみだ」

     そうカフェに返し、私達は自室へと脚を進める。この分だと、研究室へ持っていく服を選ぶのも、少し時間がかかりそうだ。
     まあ、どうせポッケ君とダンツ君は私達が多少遅れたらこれ幸いと研究室でよろしくやってるだろうし、こちらもゆっくり行動させて貰う事にしよう。そういう訳なので、今日はこの辺で暇乞いとさせてくれたまえ。
     先日スカーレット君に貰ったファッション誌を参考書として持って行くべきか、それとも私自身の感性に従うべきか悩む所だが、まずはカフェにあれこれ服を選んで貰う時間を楽しませて貰うとするよ。

     さて、そうして選んだ四人分の一張羅だが、結果から言うと私達の元に新しい勝負服が届く事は無かった。
     その代わり、ポッケ君とダンツ君はデートの時の服選びに困らなくなったし、私は私でカフェと一緒に服屋に行く機会が増えた。
     今までは無頓着だったが、やはり人との交わりで人は変わるものだねぇ。ポッケ君とダンツ君も含め、これから私達がどんな風に変わっていくのか、今からとても楽しみだよ。

  • 7二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 22:56:56

    以上です、ありがとうございました。

    アグネスタキオンの憂鬱(進展編2)【タキカフェ+ダンポケ・SS】|あにまん掲示板「カフェちゃんって、タキオンちゃんのこと好きなの?」「んっ……!? ゲホッ!! ゲホッ!! ゴホッ!!?」「わっわっ、カフェちゃん、大丈夫!?」「ダンツ、お前な……そういうのはもうちょっとタイミングを…bbs.animanch.com

    前回一気に関係が前進したタキカフェですが、そんな中でも相変わらずダンポケのイチャイチャ領域に巻き込まれたり時に乗っかったりしてると美味しいと思います。

    そんなこんなでお話の内容に若干"憂鬱"感がなくなってきたのは御愛嬌です。

  • 8二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 23:12:54

    ダンポケに巻き込まれるタキオンの供給助かる
    今まではダンポケだけだったのがタキカフェも糖度を上げる側に回るの良いぞ

  • 9二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 23:15:43

    久々に来た〜〜〜!
    助かる〜〜〜!

  • 10二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 00:02:12

    ダンポケとタキカフェずっとイチャイチャしろ下さい

  • 11二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 07:03:25

    月曜の朝から接種するダンポケタキカフェが1週間の活力になる

  • 12二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 09:06:06

    うおおおお新作だあああああ!!!!

  • 13二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 14:51:42

    その内ダブルデートとか行きそうな雰囲気があってとてもすき
    お店での服選びもお互いに色々選んで試着したのを見せあってると良いよね……

  • 14二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 18:32:36

    お疲れ様

  • 15124/10/07(月) 21:41:48

    皆様、お読み頂きありがとうございます。


    >>8

    カフェが合流した途端カップルに巻き込まれるタキオンからカップル二組に変わるのが強みですね。


    >>9

    ありがとうございます。

    またネタが閃いたら書くかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。


    >>10

    ついでに片方がトラブったらもう片方がずっと世話を焼いたりしてると美味しいですね。


    >>11

    季節の変わり目を乗り越える為の力にもなる。


    >>12

    ありがとうございます!喜んで頂けたなら何よりです!


    >>13

    劇中のカフェの台詞通り、お互いをお互いのセンスで染め上げてちょっとだけ独占力お出ししてると素敵ですね。


    >>14

    乙!

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