- 1◆VXuj9FaIJBj.24/10/12(土) 13:00:42
- 2◆VXuj9FaIJBj.24/10/12(土) 13:01:13
- 3◆VXuj9FaIJBj.24/10/12(土) 13:01:59
- 4二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 13:05:16
たておつです!
- 5二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 13:05:53
盾乙
- 6◆VXuj9FaIJBj.24/10/12(土) 13:12:34
現在はトリニティですが、終わったらそろそろ光輪大祭当たりのパートに移行させても良さそうですね。そろそろ原作のストーリーに絡めていかないとです。その後はパヴァーヌ2章でしょうか………難しそうですが、頑張ります。
- 7二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 13:14:21
ブルマがエッチいアレか
今の時系列そのへんなのね - 8◆VXuj9FaIJBj.24/10/12(土) 13:18:25
時系列が明確になってないですが、エデン条約とカルバノグ終わってから光輪大祭っていう考察?を見たのでそれを参考にしていますね。
- 9二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 13:24:39
後マオちゃん用意した衣装着ての動画撮影も楽しみですね
- 10◆VXuj9FaIJBj.24/10/12(土) 13:29:26
ですね。まだまだ書くことはいっぱいです!少しずつ形にしていきます!
- 11二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 13:30:30
護衛しつつも誰かしら参加することになるんじゃろか
- 12◆VXuj9FaIJBj.24/10/12(土) 13:48:39
光輪大祭をやるのであれば、専属部隊にもやっぱり体操服着せたいですよね………どうしようかと考えています………
- 13二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 13:49:53
せやな
シフト作って誰か残れば護衛いけるもんだろうかなぁ - 14◆VXuj9FaIJBj.24/10/12(土) 14:02:08
今更ですが、セラさんというキャラが出来たおかげでトリニティには明確な強者生徒が増えてしまったことになりますね………参加した場合ちょっと凄い事になりそうですが。ヴァルキューレは競技には参加していなかった(記憶が正しければ)はずなので、護衛はマオさんに任せると言う手もあるでしょうか。
- 15二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 15:34:14
本気が見える采配してきそうですなトリニティ…
- 16二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 00:13:53
保守ー
- 17二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 09:36:04
トリニティに寄った流れでもうすぐ運動会だからそれにも参加してねいわれる感じかな
- 18二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 19:43:47
このレスは削除されています
- 19◆VXuj9FaIJBj.24/10/13(日) 22:47:54
ナギサの頼みを受け、4人はトリニティ総合学園の自治区へ向かった。様々な事が後手後手になってしまっている結果、以前と比べてではあるものの、治安が悪化しているのだ。
専属部隊もいるのだから、今の先生が出来る仕事はこれが恐らく最も適任だろうと判断していた。とは言え、それでも歩いていれば事件が起こる、と言うレベルの治安ではないのだが。
「本当に治安が悪くなったの、って感じだね~」
「ここいらは中心区に近いからの。いくら混乱しとるとはいえ、この辺りで騒ぎを起こす輩はおらんじゃろう」
ニケの言葉通り、4人が向かうのは中心区から離れた外郭地区だった。そこまで行けば、基本的には正義実現委員会の手が回っていない場所であり、自警団が主となって治安維持をしている。だが、自警団も人数には限りがあり、特に正義実現委員会の手が回っていない現状ではどうしても中心区に人員が集中してしまうのは自明の理であった。
故の目的地だったのだが、その途中でつい最近聞いた活発な声が周囲に響いた。
「あ、先生~!」
その声に4人が振り向くと、特徴的な髪色の少女が先生に目掛けてダッシュしていた。それを見て先生はいつものかと身構えるが、3人は少女へ向ける視線が鋭くなる。その視線は腕、体、足、そして背負う銃をそれぞれ違う順番に流れ、すぐに3人の視線は普段通りのものとなっていた。それは、正しく一瞬だったと言えるだろう。
故に、3人の視線は向けられていた少女も含め誰も気が付いていないのだから。
「とりゃあーーーっ!!!」
勢いを付けてダイブ。先生はそれを受け止め、彼女に声を掛けた。
"レイサ、こんにちは"
「こんにちはぁ!!お仕事ですか?」
にこっ、と周りすらも明るくしてしまうような笑顔と、それ以上に至近距離で聞いていれば若干耳が痛くなってしまうような声で挨拶をしたのは、つい最近当番に来ていた宇沢レイサだった。 - 20◆VXuj9FaIJBj.24/10/13(日) 22:48:05
言うまでもないが、先ほどの3人の視線はレイサが先生に危害を加えようとする素振りがないかの確認だった。彼女に限ってそんなことは無いだろうと思ってはいるが、それでも絶対はない。先生は、その一瞬の油断ですら命の危機に瀕する存在なのだから。
"うん。ちょっとパトロールにね"
「!!じゃあ、ご迷惑でなければ、私もご一緒しても良いですか!?」
"勿論だよ。レイサがいてくれると心強いし………みんなも良いかな?"
先生の問いに、3人はすぐに頷く。こういう任務は人数が居て困ることは無いし、レイサ自身自警団をやっていることもあってそれなりの実力もある。足手纏いにはならないであろうという判断であった。
「勿論!レイサちゃんと一緒だと楽しいし!」
「儂も構わん」
「異議はありません」
と、満場一致でレイサの同行が決まる。そして、5人の賑やかなパトロールが始まったのだった。とは言え、ただのパトロールにしてはやや………いや、かなり戦力が過剰であるのは置いておくとする。 - 21二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 23:49:21
まあ強い子多いからね
- 22二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 07:08:47
乙
- 23二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 07:17:13
これは頼もしいスケットですね!
益々パトロール上手くいきそうです
仲良いからって気を抜かないのは流石ですね - 24二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 16:56:08
んーなんかパトロール中にミカのいじめ現場に遭遇しそう
- 25二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 23:34:32
そういや劇中のトリニティ生アレな行動が目立つ時期だもんな
- 26◆VXuj9FaIJBj.24/10/15(火) 01:02:43
それから1時間が経った頃だった。とあるコンビニの前で、数人の生徒が縄で縛られている。言うまでもないが、コンビニを襲撃しようとしていた暴徒である。外郭区の店を狙い、自警団も周囲にいない。そんな状況を狙ったのは賢いが、彼女らには致命的に運が無かった。
でなければ、選りすぐりである専属部隊の3人と自警団のレイサが先生の指示を受けて鎮圧してくるなどという地獄を見ることにならなかったはずである。
「な、なんでここにこんなバケモンみたいな連中がいるんだ………」
「先生までいるとか聞いてないぞ………」
口々に恨み節を零す暴徒たち。先生とセラは後処理などを行っており、ニケとマオ、レイサは暴徒たちの監視をしていた。まぁ、暴徒たちも仮に逃げ出したところで余計に痛い目に合うだけだと分かっているため、そんな素振りすら見せないのだが。
「やはりこの面子じゃと手応えがないのう」
「でもゲヘナの風紀委員会みたいな暴徒がいたらちょっとヤバすぎない?」
「ふむ?確かにそうじゃな」
既にそれなりに前の話だが、彼女らは3人で風紀委員会と引き分けにまで持ち込んだのだ。特にセラはあの風紀委員長と互角の戦いを繰り広げた正真正銘のエリートだ。
彼女らが苦戦する相手がいたとすれば、キヴォトスの治安悪化は著しいものとなってしまったはずである。3人の戦いを見ていたレイサは、そんな2人に声を掛けた。
「やっぱり皆さんお強いんですね………」
「む。お主も良い動きじゃったぞ?個人で治安維持を買って出ているだけはあるのう」
「ねー!レイサちゃん、迷わず先陣を切ってくれるから助かったよ~!」
「そ、そうでしょうか………へへ。お役に立てていたのなら嬉しいです」
にへら、と笑みを浮かべながら頭を掻くレイサ。そんな彼女を見て、マオはともかくニケは何となく彼女の抱える何かを察した様子だった。先生やセラがやけに気を遣っていたのはこれが原因なのだろう。 - 27◆VXuj9FaIJBj.24/10/15(火) 01:02:56
「………そういえば、セラのお菓子を持って帰っておったな。どうなったのじゃ?」
「え、あぁぁぁっ!?セラさんにそのお礼をまだ言っていませんでした!?」
唐突な方向に、ニケが頭から伸びる大きな耳を抑える。それを見たレイサはしまったという表情を浮かべ、声を小さくして頭を下げた。
「あ、ご、ごめんなさい………」
「いや………構わん。その反応で、上手くいったのは分かったからの」
「えへへ………はい。みんな喜んでくれました。一緒に食べたら凄くおいしくて、楽しかったです………」
「それは良かったの。じゃが、それはセラにも伝えておくのじゃよ」
「はい!勿論です!」
とは言うものの、恐らくレイサの声では間違いなく聞こえていただろう。その証拠に、ちらりと見た先生の隣にいるセラは、小さく笑みを浮かべていたのだから。とは言え、それでもちゃんとレイサが伝えた方がいいだろう。その時は、声は少し抑えめにしてくれるといいのだが。と、ニケは苦笑を交えて考えていた。 - 28二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 05:29:16
どんまいコンビニ強盗…自業自得だから諦めてくれ
スイーツ部のみんなも喜んでくれたみたいで何よりですね!
そしてレイサのスイッチ入ってない時の性格を察したニケさんは流石ですね
褒められて照れるレイサは可愛い(断言) - 29二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 08:51:23
これ……京山カズサ!!こんにちわーー!!×2が見れる?
- 30二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 18:14:14
ほ
- 31二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 21:57:44
レイサは可愛いなぁ
- 32◆VXuj9FaIJBj.24/10/16(水) 01:21:24
後処理が終わってからもしばらくパトロールを続けていたが、やはり早々事件など起こるはずもない。ここがゲヘナであれば、もしかすれば既に3件ほどの事件の鎮圧をしていたのかもしれないが。気が付けば既に巡回ルートを周りきり、トリニティ総合学園へ戻る所であった。
「それでですね!セラさんのマカロンを食べた放課後スイーツ部の皆さん、こんな美味しいカップケーキをどこで買ったの?って凄く絶賛してたんですよ!」
「それほどまでに喜んでいただけたのなら、私としても作った甲斐がありますね」
「あ、でもスイーツ部の皆さんはセラさんの事を知らなかったらしくて………友達に作ってもらったと紹介してしまったんですが………」
「?………何か問題でもありましたか?」
「え、や、その………勝手に友達と言ってしまって良かったかな………と」
しどろもどろになりながら答えるレイサ。そんな様子を見てセラが何かを言う前に、マオがレイサに飛びついた。
「わぁっ!?」
「もう!レイサちゃん!友達だって呼ぶことを失礼だと思ったら駄目だよ!そういう時は、友達だよね?くらいの勢いで行かなきゃダメ!」
「え、で、でも………」
「でもじゃないの!さっきまでのの元気はどこ行った~~~~~っっ!!!」
「むむむぅ!?」
みょーんとレイサの頬を引っ張って伸ばすマオ。じたばたと抵抗しつつも、本気で嫌がっているという訳でもないらしい。それに、普段ならばマオのお転婆を窘めるニケも今回は黙っていた。マオの言う通り、友達であることを恐れるのは、自分にも………そして、相手にも失礼であると思ったためだ。
代わりに、そんなマオを窘めたのはセラだったが。
「マオさん。そこまでです。レイサさんにはレイサさんなりの考えがありますので」
「むぅ………」
マオは仕方ない、といった様子でレイサの頬を離す。まだ納得いっていない!という態度は傍から見ても明らかであったが。
レイサは若干赤くなってしまった頬を撫でているとセラは彼女に視線を向けて口を開いた。 - 33◆VXuj9FaIJBj.24/10/16(水) 01:21:38
「ですが、レイサさん」
「ふぁい?な、なんでしょうか………」
「私の考えにはなりますが、レイサさんのようなお友達が居たら、きっと楽しいだろうと思いますよ」
「え………」
小さく驚いたような声を上げるレイサ。しかし、セラは彼女が何かを言う前に青い瞳でレイサを見つめて言葉を続けた。
「とても元気で、少しうるさい所もありますが笑顔が絶えなくて、それでも少し自分に自信がない………そんな可愛らしい女の子が、友達で楽しくない訳が無いと思いますので。レイサさんは自分が思っているより、ずっと色んな方に元気と笑顔を与えていると思いますよ」
「う、うぇぇぇっ!?そ、そんないっぱい褒めないでくださ………あれ?うるさいって言いました?」
「気のせいかと」 - 34◆VXuj9FaIJBj.24/10/16(水) 01:26:32
- 35二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 05:15:16
良かったねレイサ…友達その調子で増やしていって構わないからね
マオちゃんとセラさんの二人ともに頼りになりますね…引っ張って行く力と後押しする力…みたいな(例え方下手くそですまない) - 36二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 10:44:15
- 37二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 20:18:41
うるさいの前に少しとつけてくれてるからw
- 38◆VXuj9FaIJBj.24/10/16(水) 22:24:20
続ける前に前スレ見返してて見つけた部分で決めておきたい部分があったのでダイス振りますね。セラさんとハナコさんの関係で、今回出すかどうか決めるかもしれません………
セラからハナコへの印象(ハナコのあれ補正で若干マイナスします)
dice1d100=11 (11) -20
ハナコからセラへの印象
dice1d100=25 (25)
- 39◆VXuj9FaIJBj.24/10/16(水) 22:24:57
想像以上に険悪すぎますこの二人………
- 40二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 22:25:46
これは…下手に絡ませない方が平和な可能性が…
仲直りイベとか出来るならあるいは… - 41◆VXuj9FaIJBj.24/10/16(水) 22:33:24
ちょっとこれを今すぐ絡めるのは怖いですね………ミカさんとの初対面もやろうとしてたので、少しシリアスが続きすぎることになりそうです………
- 42二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 22:36:56
ここまで苦手意識あるって珍しいね
- 43二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 22:37:59
今回はいっそミカの方に集中してハナコとの絡み及び仲改善チャンスは次回…とか有りかも…?
- 44◆VXuj9FaIJBj.24/10/16(水) 22:43:13
セラさんはまぁ、あっちの話題があれなので………ハナコからの印象はどうなんでしょう。自分とは正反対の、望まれるがままにあろうとするセラさんを認めたくないとかそう言うことなんでしょうか。これに関しては両方有り得そうですが。
今回は一旦補習授業部というか、ハナコとの接点は無しで行きます。ちょっと重くなりすぎる気がしますので。
- 45二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 23:03:27
了解っす
- 46二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 07:14:09
このレスは削除されています
- 47二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 07:49:17
良かった!某オリキャラスレみたく……オリキャラちゃんに嫉妬しまくるハナコはいないんですね!!
- 48二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 12:35:35
追いついたー
これからも期待ー! - 49二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 15:21:44
セラちゃんとマオちゃんの横の関係とか、お家事情だとかはだいぶ分かってきたけど、本当にニケちゃんが謎だらけだなぁ……
- 50二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 23:42:16
推薦人のニヤが少しなにか知ってるかも
- 51◆VXuj9FaIJBj.24/10/18(金) 02:03:48
先生達がトリニティ学区内に戻ったのは、お昼が少し過ぎた頃だった。5人は校庭を歩きながら、皆に声を掛ける。
「歩き回ったし、おなか減ったねー!」
「そうですねー!!あ!実は近くにお勧めのファミレスがあるんですけど、良かったら一緒に行きませんか!?」
「おぉー!?行きたい!行こう!!」
レイサの提案に顔を輝かせて頷くマオだったが、その後頭部をニケのデコピンが襲う。「あてっ!?」と悲鳴を上げながら振り向くと、ニケは呆れた表情を浮かべながらマオを見ていた。
「これ。儂らは任務中なのじゃ。予定は先生の確認を取ってから決めんか」
「あ、うー………ごめんなさーい………」
"はは。大丈夫だよ。ナギサにパトロールの報告をしたら、みんなでそこに行こうか"
先生は穏やかに笑みを浮かべると、マオとレイサは互いに顔を見合わせて笑みを交わす。その様子は、既に会ってから長い友人同士のようで、流石波長が似ているだけはあるな、とニケは感心していた。
そんな時、ふと先生の足が止まる。それに疑問を浮かべた4人も足を止めて先生の方を振り返ると、先生はある一点を見つめていた。ピンクの髪をお団子に纏めた、白い翼が特徴的な体操服の少女が校庭の草むしりをしていた。
「んー?せんせ、あの人誰?」
「………ミカさんです」
マオの問いに答えたのはセラだった。それを聞いて、マオは「あー………」と微妙な反応を浮かべた。エデン条約の事件自体は、キヴォトスでも隠しようがない程の大事件となってしまっていたが、その詳細………特に、トリニティの裏切者が聖園ミカであるという事実まで公にされている訳ではない。
とは言え、噂とは怖いもので知っている者もいないという訳ではないのだが。そして、元々ヴァルキューレにいたマオは当然その話を聞いたことがあった。
「………懲罰ってこと?」
「まぁ、そんなところです。先に言っておきますが、彼女への処罰は聴聞会で正式に決定したことなので、私達が口を出せる事ではありませんよ」
「ん?あぁ、うん………分かってるよ。悪い事をしたら、その分の罰があるのは当たり前だし」
「………そうですね。SRTだったマオ先輩には言うまでもありませんでしたか」
「うぇぇ!?マオさんってSRTだったんですかぁ!?」 - 52◆VXuj9FaIJBj.24/10/18(金) 02:04:18
レイサの驚きの声に、マオはニコッと笑みを向ける。こう言っては何だが、自分の同級生でSRTを代表するFOX小隊と比べれば、自分はあまりSRTと言う雰囲気が無いのは自覚していた。それでも、それを改めるべきだとは思っていないし、自分はこうやって人に笑顔を届けるのだという確固たる思いが彼女にはあるのだが。
「まぁね!これでもエリートだったんだよ!」
「おぉー!!凄いです!自警団のエースと言われているこの宇沢レイサですが、マオさんは………」
レイサの言葉が途中で止まる。全員の視線がある方向へ向けられていた。それは、ミカの方へ水のいっぱいに入ったであろうバケツを抱えている一人の生徒。
だが、その動きは明らかに芝居掛かっており、ミカの境遇を知ってしまったニケとマオも一体何が行われようとしているのかを理解した。
「先生………」
"………"
マオの言葉に、先生は険しい顔をしつつも動かない。いや、動けないのだ。先生の役目は、ミカを守ることではない。全ての生徒の味方であるからこそ、誰かの味方になるには助けを求められなければならない。それに、まだあの生徒が本当にそうだと決まったわけでもないのだ。
だからこそ、様子を見るしかない。出来るならば、何も起きないようにと願いながら。しかし………
「わぁっ!」
「え、きゃ!?」
そして案の定と言うべく、唐突にミカの傍で転ぶその生徒。足元には何も存在せず、そもそも戦闘慣れしている者の目には、それが明らかに意図的な動きであったことを理解するのは容易い事だった。しかし、直前まで動かなかった以上はどうする事も出来ず……… - 53◆VXuj9FaIJBj.24/10/18(金) 02:11:04
「大丈夫ですか?」
「は?」
しかし、倒れそうになっていた生徒を支え、落としそうになっていたバケツをセラが掴んでいた。彼女にとって、その生徒が倒れてから動き始める事などあまりに容易い事であった。唐突な出来事に、その生徒だけでなく腕で顔を覆っていたミカも唖然とした表情でセラを見上げていた。
「せ、セラさん!?何故ここに………!?」
「任務です。その様子だと特に怪我はないようですね。足元にはお気を付けください。何もない場所で転ぶなど、初歩的なミスを繰り返さないように」
「っ………………申し訳ありません」
その生徒は唇を噛むと、セラの持っていたバケツを受け取って再び歩き出す。それを見送ると、セラは小さくため息を付いた。短い時間の間に起こった出来事に全員が暫く無言のままであったが、先生が二人に近付いて声を掛ける。
"セラ、ありがとう"
「お礼を言われる事の程では」
「せ、先生!?どうしてここにいるの………!?」
"ちょっとお仕事でね。ミカは最近はどう?"
「え、えっと………相変わらずかな、あはは………」
ミカの笑顔に、複雑な表情を浮かべる先生。すると、ミカはセラに向き直って小さく頭を下げた。
「あ、ありがとね。えっと………セイアちゃんの所の子、だったよね?」
「えぇ。今は先生の部隊ですが。ミカ様はお変わりないようで」
「あはは………」
セラの言葉に苦笑するミカ。直感ではあるものの、恐らくミカは自分とセラはあまり相性がいい方ではないだろうな、と思っていた。元より、あんなことを起こした自分に………セイアを間接的にとは言え危害を加えてしまった自分を、セラが許してはいないだろうなと思っていたが。 - 54◆VXuj9FaIJBj.24/10/18(金) 02:16:43
「えーと………せ、先生はお仕事なんでしょ?ここで油を売ってて大丈夫なの?」
"あぁ、うん………そうだね。ミカが元気そうでよかった。また今度トリニティに来るから、その時はゆっくり話そう"
「うん!楽しみに待ってるね!」
ミカはいつもの笑顔で先生に返す。そんなやり取りを見ていたマオ達は、やはり複雑な表情を浮かべていた。
「………」
しかし、それでも敢えて口にはしない。ここで下手な事を言えば、セラが穏当に終わらせた意味が無いのだから。けれど、もしもミカがシャーレに助けを求めてきたときは………全力で力になろうと、マオは心に誓っていた。 - 55◆VXuj9FaIJBj.24/10/18(金) 02:17:10
すみません!思った以上に長くなったので少しキリが悪いですがここで今日は終わっておきます!
- 56二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 07:53:18
セラさんファインプレーナイスですね!
ただ助け求められないと助けられないのは辛いところ…ミカ本人が今現在自罰意識に囚われてるから助け求めないってあたりが余計に辛い…
メンタル回復して自罰意識無くなってくれれば良いですけどもそれは一朝一夕でなるものでもないですし…
しかしマオちゃんかっこいいですね…その正義感素敵です - 57二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 11:45:47
トリカスの陰湿イジメも相変わらずと……
ここのセラ…短い間で確かな成長を感じるなぁ - 58二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 22:28:10
ミカ…
- 59◆VXuj9FaIJBj.24/10/18(金) 23:33:10
- 60二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 10:36:18
保守
- 61二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 21:36:07
保守
- 62◆VXuj9FaIJBj.24/10/20(日) 01:55:23
すみません!ようやく書ける状況になったのですが、時間が時間なので更新は日中にします!2日空けてすみません!
- 63二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 01:58:13
了解です
お疲れ様です - 64二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 11:11:15
このレスは削除されています
- 65◆VXuj9FaIJBj.24/10/20(日) 11:44:46
パトロールが終わった後、先生達はナギサへの報告を行っていた。本来は報告書なりで報告をするのだが、先生に書類と言う手間を掛けさせないために口頭で報告を受けていた。レイサはここに来るのが難しいため、外で待っていてもらっているが。
「なるほど……元より外郭区には人手が回っていないところもありました。自警団や、今動かせる正義実現委員会では人手が足りませんね……」
「それは分かっていたことだろう?そのためにも、今は少しでも早くトリニティの内情を安定させなければならないよ」
"手伝えることがあったらなんでも言ってね"
「……はい。ありがとうございます」
とは言え、そう簡単に先生に頼れる状況でもない。シャーレは政治のことに関しては基本的にノータッチてあるし、先生に頼りきりになるのは体裁としても、実情としても良くないのだから。
報告を一通り終えると、セイアが口を開く。
「ところで、ミカには会ったかい?」
"あぁ………うん。会ったよ"
先生がやや歯切れ悪く答えると、セイアとナギサは何が起こったのか察したのだろう。少し表現を固いものに変える。
"あ、いや………今回は、セラが未然に防いでくれたんだけど"
「………なるほど。セラ、ありがとう」
「仕事ですので」
いくら態度が軟化しているとは言え、やはり生真面目なところは健在か、とセイアが小さく笑みを浮かべ、再び口を開く。
「さて。報告が終わったのなら行くといい。人を待たせているんだろう?」
"………なんで分かったの?"
「勘だよ。それじゃあ、先生。今後ともよろしく頼むよ」
「今日はありがとうございました」
"いや、私も力になれて嬉しいよ。それじゃあ、またね" - 66二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 12:47:13
セイアの洞察力は相変らず高いねぇ
- 67二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 21:37:24
あの動きはプロって感じだった
- 68二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 23:13:30
今後トリニティでもアイドルが増えると思うめぇ
- 69◆VXuj9FaIJBj.24/10/21(月) 01:44:38
ナギサ達と別れた後、5人はレイサのお勧めのファミレスに………向かう前に、セラは少しよる場所があるからと一人で違う場所に向かっていた。
厳格な雰囲気を放つ大扉を開くと、ステンドグラスから差し込む光に照らされた大聖堂が広がっている。そして、セラの来客に気付いた一人が小さく声を上げる。
「あら?………ふふ。セラさん。こんにちは。トリニティにいらっしゃっていたのですね」
「お久しぶりです。サクラコ様」
セラは前にマリーに伝えたように、サクラコに甘いお菓子を持ってきていた。どこか美味しいお店のものを買おうかとも考えたが折角ならば手作りにしようと思って作って来たクッキーとカップケーキ。皆で分けて食べれるように、数が用意できて、尚且つ任務後でも形が崩れにくいものを選んでいた。
用意していた綺麗な袋に包んでいるそれを、サクラコに差し出す。
「こちらをどうぞ。私の手作りですが、お口に合うと幸いです。是非皆さんで分けてお食べ下さい」
「………ふふ。手作りとは、とても嬉しいですね。その様子だと、元気にしているようですね。マリーから話は聞いていましたが、実際に会って安心しました」
「………?安心、ですか?」
「はい。いくら所属する部が違えど、あなたは私のお友達で、後輩なので」
「!」
サクラコの微笑みに、セラは小さく目を見開く。なんとなく………ただの予想でしかないが、もしかして彼女も自分の事で………そんなセラの考えに気付いたのか、サクラコは「ふふっ」と笑みを零す。
「顔が見れて良かったです。もう少しお話していたいのですが、まだお仕事があるのでは?」
「………そうですね。そろそろ行かなければいけません」
「えぇ。頑張ってください。あなたに主のご加護があらんことを」
そう言ったサクラコに一礼をして、セラは大聖堂を出る。すると、外で待っていたマオが大きく手を振ってセラの名前を呼ぶ。
「セラちゃーん!早くいこー!私お腹ペコペコだよ~~!!」
「えぇ、そうですね。行きましょう」
そう言って、セラはマオ達と合流してレイサの言っていたファミレスに向かう。セラはその間、この専属部隊の事も含めて自分は出会いに恵まれていたのだな、ということに気が付いたのだった。 - 70二次元好きの匿名さん24/10/21(月) 05:27:37
やはりサクラコ様は優しいですね…色んな人らがセラさんの事気にかけてくれてたんだなって胸が熱くなりますね
- 71二次元好きの匿名さん24/10/21(月) 13:30:22
おつ
- 72二次元好きの匿名さん24/10/21(月) 22:23:16
友達って言ってくれるサクラコ様ええなぁ
- 73二次元好きの匿名さん24/10/22(火) 07:11:29
このレスは削除されています
- 74二次元好きの匿名さん24/10/22(火) 18:15:23
ほ
- 75◆VXuj9FaIJBj.24/10/22(火) 23:14:13
それから数日後。トリニティに何度かパトロールに行っていたが、それだけでも効果はてきめんであった。考えてみればわかるが、戦力過剰とも評されるシャーレの専属部隊が目を光らせているという状況で、やんちゃをしようという者などそうそういないのである。
特に、正義実現委員会の動きが悪い状況を狙って動くような者達は。結果として、数日であっても彼女らがパトロールを始めたという事実だけで多少の抑止力が働き、事件率は一気に下がったらしい。故に、トリニティでの仕事は一旦終わりでいい、という判断になったのだった。どちらにせよ、今後シャーレが現れるかもしれない、という事実はそれだけでもある種の警告にはなったであろう、とはセイアの言葉だった。
「そういえば………」
ということで、いつも通りのオフィスでの仕事。溜まりに溜まった仕事を、セラ、ニケ、マオの3人総動員で片付けていた。そんな中、珍しくセラが話題を切り出した。
「仕立て屋に頼んでいた衣装ですが、もうすぐ完成するそうです」
「はやっ!?」
「………普通、3着ともなれば数ヶ月かかってもおかしくはないと思うのじゃが」
「勿論、期間が短いからと言って雑な仕事をする方ではありません。ただ、仕事の早さはモチベーションに大きく依存する方ですので、そこは少々気難しい所がありますが………」
"仕事に拘りのある職人さんって事なんだね"
「はい、そうですね。今回のマオさんのデザインはとても気に入ったらしく、大層やる気でいらっしゃったので。恐らく、他所の仕事を放ってまで作っていたのでしょう」
仕事としてそれはいいのだろうか、と先生は苦笑するが、そもそもその仕立て屋自体が受ける相手がごく限られているらしい。恐らく、頼む者はその職人のそう言ったところも理解しているのだろう。
「じゃあじゃあ!そろそろ歌動画の計画も進めなきゃね!」
「そうですね。マオさんの方は大丈夫なんですか?」
「もっちろん!専門の人に連絡して、予定が付いたら連絡してって言ってもらったよ!シャーレは広いから、ちょっとスペースを借りて設備を持って来たらすぐにできるって!」
「………普通はそこまでしませんが、まぁそこは流石と言うべきでしょうか」 - 76◆VXuj9FaIJBj.24/10/22(火) 23:15:07
あの気難しい仕立て屋を唸らせた天才的なデザインセンスや、今回の計画を思いついて実行に移す行動力。少々頭が足りないのは事実だが、それだけでは語れないマオの強みを、流石に気が付いていた。
「ニケちゃん何歌う?」
「む?ふーむ………お主の計画なのじゃし、一番手はそなたで良いのではないかの?」
「ダメ!こういうのは一番のインパクトが大事なの!………あ、あの時歌ってくれた子守歌って百鬼夜行で伝わってる奴だったりするの?」
マオの質問に対して、ニケはそっと首を横に振る。何となく雰囲気が百鬼夜行の用だと思っていたため、先生とマオは少し意外そうな表情を浮かべた。
「いや、そうでもないの。百鬼夜行でも古い歌じゃ。今知る者は殆どおらんじゃろうな」
「あれはどう!?すっごく綺麗だったし、ニケちゃんの良さが凄く詰まってたし!」
「ふむ………ならば、心を込めて歌わなければならんの」
「えへへ~!ありがと!」 - 77二次元好きの匿名さん24/10/22(火) 23:15:10
準備が速い
- 78二次元好きの匿名さん24/10/23(水) 07:14:14
どんな歌かな
- 79二次元好きの匿名さん24/10/23(水) 10:21:48
マオちゃんの行動力と根回しの良さは明確な長所ですよね!
立案から根回しまで色々してくれるのは本当ありがたいですし…
後は服と歌がどうなるかが楽しみですね! - 80二次元好きの匿名さん24/10/23(水) 21:33:45
保守
- 81二次元好きの匿名さん24/10/24(木) 07:16:28
保守
- 82二次元好きの匿名さん24/10/24(木) 17:51:23
保守しときます
- 83二次元好きの匿名さん24/10/24(木) 23:20:54
保守
- 84◆VXuj9FaIJBj.24/10/25(金) 02:02:20
すみません!仕事がちょい忙しいのと、イベント走ってて少し更新サボってしまいました………ひと段落したので明日からまた更新します!
- 85二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 07:02:56
お疲れ様です
- 86二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 07:52:51
了解です!楽しみに待ってます!、
- 87二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 19:18:11
保守
- 88◆VXuj9FaIJBj.24/10/25(金) 22:08:21
本当にすみません……ここ最近左目が痛いなと思ってたのですが、ついに体調まで悪くなり始めたので今日もお休みさせていただきます……ごめんなさい
- 89二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 22:08:54
お大事に
- 90二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 22:37:33
大変でしたな
- 91二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 22:42:32
それはなかなか辛いですよね…眼科とか行った方が良いかも…
とにかくゆっくり休んで体癒してくださいね!
こちらは全然待てますので大丈夫ですので! - 92二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 09:53:48
保守
- 93二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 20:03:19
保守
- 94二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 07:08:11
保守
- 95二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 18:18:55
保守しときますね
- 96二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 23:23:22
保守
- 97二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 07:12:01
保守
- 98◆VXuj9FaIJBj.24/10/28(月) 17:32:22
保守と同時に報告です。もう少しだけお時間頂きます………思ったより酷かったので、しばらく安静にしとかないと駄目っぽいです………すみません。
- 99二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 19:36:40
お大事に
- 100二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 23:02:01
無理しないで休んでくださいね
- 101二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 07:00:52
保守
- 102二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 18:11:35
こちらはゆっくり待ってますー
お大事にー - 103二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 23:48:48
保守
- 104二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 07:01:11
保守
- 105二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 17:08:19
お大事にですー
- 106二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 00:07:43
このレスは削除されています
- 107二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 07:00:06
ほしゅ
- 108二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 17:56:34
保守
- 109◆VXuj9FaIJBj.24/10/31(木) 22:09:08
保守ありがとうございました………ようやく書けますが、ちょっと色々疲れてるので更新は明日からにします。お待たせしてしまって本当に申し訳ありません………
- 110二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 23:47:43
やったぜ
- 111二次元好きの匿名さん24/11/01(金) 05:12:09
了解です!
楽しみに待ってますのでスレ主さんも無理のない頑張ってくださいね - 112二次元好きの匿名さん24/11/01(金) 14:12:58
- 113二次元好きの匿名さん24/11/01(金) 22:42:46
ほ
- 114◆VXuj9FaIJBj.24/11/02(土) 03:03:52
マオが伝手のあるというレコード会社に連絡をし、そこからの動きは早かった。すぐさまレコード会社から日程の調整の連絡が入り、数日で体育館の一角をレコード用の防音室含め様々な機器の運び込みが終わっていた。
流石に気合が入り過ぎなのではないか、という思いが浮かぶと同時に、それだけの影響力を持つ二階堂グループの名前の大きさを先生は改めて実感していた。勿論、先生自身はマオをそのような視点で見たことは無いが。
「終わったみたいだねー!」
「………ちと急がせすぎではないかの?」
「えー!?出来るだけ早いと助かるって言っただけだよ!?」
「二階堂グループの一人娘から「出来るだけ早く」と言われるのは、実質「直ちに」と言われるのとそう変わらないと思いますよ」
「うぇ~………?」
とまぁ、本人があまり実感は無さそうであったが。しかし、兎にも角にも準備は整った。録る曲も事前にレコード会社に伝え、そちらの用意も出来ているらしい。
ニケが言っていたように古い歌だったらしく、探すのは随分と大変だったらしいが………死に物狂いで探したんだろうなぁ、と先生はぼんやり考えていた。
「マオさん、レコーディングの準備が整いました。いつでも録れますよ」
「よし!じゃあニケちゃん!れっつごー!」
マオが大きく腕を振り上げる。その様子を見てそっと笑みを浮かべたニケは頷き、防音室の中に入っていく。彼女が中に入ったのを確認すると、レコード会社の人たちはヘッドフォンを装着し、表情を引き締めた。
マオ曰く、とんでもなく歌が綺麗できっと誰もが聞き入ってしまうような素晴らしい歌声の持ち主だと聞いているのだ。二階堂グループの一人娘からの依頼と言うのもあるが、プロとしてそれ程の歌で失敗は出来ないという固辞もあったのだ。
「それでは、準備は良いですか?」
ディレクターがニケに確認を取ると、窓越しにニケが確かに頷く。それを見てディレクターが合図をすると、用意していた曲が流れ始める。以前聞いた時はニケの歌だけであったが、やはり曲自体も趣のあるどこか懐かしい感じを覚える綺麗な曲であった。 - 115◆VXuj9FaIJBj.24/11/02(土) 03:04:38
そして、ニケが曲に合わせてその歌声を響かせる。その一瞬、スタッフたちの動きが一瞬だけ止まったのをセラは見逃さなかった。ディレクターも驚いた表情をしているが、それでもすぐに指示に移ることが出来るのは本場の人間と言う事か。しかし………
「やっぱり………綺麗だよね」
「えぇ、そうですね。正直、そちらの道でやって行こうと思えばきっと成功したでしょう。ですが………」
「ん?」
「………いえ、ニケさんの事について、私達はまだ何も知らないのだと改めて思いまして」
包容力のある優しい少女、家事やその他諸々も得意とする、とても綺麗な歌声。彼女本人の事であれば分かってきたことはあるが、彼女の出身や家柄などもまだ何一つとして知らないのだ。
いつか、自分達に話してくれることはあるのだろうか。少しずつ歩み寄ることを知ったセラだからこそ、今はニケの事をもっと知りたい。そんな風に思うのは、彼女がニケの事を友達だと認める事が出来たからなのだろう。
「………きっと、いつか話してくれるよ。ニケちゃんだって、色々あるだろうからさ」
「えぇ、そうですね。その日が来る事を、私は待っています」
"………"
先生はそんな二人のやりとりを聞いて、良い方向に変わって来てくれているな、と安堵していた。だから次は………
"(次は、君が歩み寄る番じゃないかな)"
先生は、なおも美しい歌声を披露する少女に視線を向けるのだった。 - 116◆VXuj9FaIJBj.24/11/02(土) 03:05:28
暫く空くと書き方を忘れかけてしまっていました。こんな時間になってしまいすみません。
- 117二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:43:05
おつ
- 118二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:48:15
ニケさん凄い…!周りも思わず動き止まるほどとは中々の腕前…!
いつか経歴を明かしてくれる日が来る事を俺も待ってるからねニケさん…それはそうと久々のマオちゃんやっぱり可愛い(断言)
レコード会社の人も突然の大御所からの依頼に気合い入ってるだろうなあ - 119二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 16:40:12
保守
- 120二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 00:39:56
ほしゅ
- 121二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 11:21:03
このレスは削除されています
- 122二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 22:02:14
ほ
- 123◆VXuj9FaIJBj.24/11/04(月) 02:17:26
ニケの収録が終わり、彼女が部屋から出てくる。すると、ディレクターは即座に彼女の下に駆け寄った。
「とても素晴らしい歌でした!以前どこかで活動をされていたんですか?」
「む?いや、そんなことは無いのう。元より、人に披露する機会も無かったの」
「なんと勿体ない………宣伝のためと仰っていましたが、これは話題になること間違いなしですよ!CDにしても売れると思います!」
「くく、褒めてくれるのは嬉しいが副業は連邦生徒会に申請せねばならんでな。先生とそこは相談しておくれ」
プロからの絶賛に対しても特に照れる様子もなく、冷静にそう返すニケ。その対応はかなり手馴れているように見え、ディレクター自身このような話を切り出した際の相手の対応はよく見ているために、人に披露する事すらなかったという言葉に疑問を持つ。
とは言え、それを口にするわけにもいかず、「それは残念です」と返すのだった。勿論、一応先生に取り合ってみようとは決心していたが。
「ニケちゃん!お疲れ様さま~~~!!」
「くく、ありがとの。これで宣伝になるといいのじゃが」
「絶対なるよ!!ニケちゃんの歌凄く綺麗だもん!」
マオの言葉に、ニケは優しく微笑みを返す。先生も立場上そういったSNSを見ることは多いが、あれだけ美しい歌なのだ。公開されれば、きっと多くの話題を呼ぶだろうと確信していた。
"さっきの話、ニケはどうしたいの?"
「む?聞こえておったか………うーむ。儂は今の所その気はないのう。まずはライブの成功に専念したいのじゃ」
"そっか"
やはり真面目と言うか、考え方が堅実だなぁ、と先生は思う。本人がその意向ならば、先生はそれを尊重するつもりだった。とは言え、実際彼女の歌声がこれっきりになってしまうのは非常に勿体ない為、もし気が変わったのならいつでも協力するつもりであったが。
「………ニケさんは、本当に歌を誰にも披露していなかったのですか?」
「ふむ………気になるかの?」
「そうですね」
「ふむ………まぁ、そうじゃな。本当に無かったのじゃ」
「………そうですか」
やはり、何かを隠しているのだろう。それを理解はしていたが、やはり一歩踏み出す事が出来ない。彼女との距離がある訳ではないはずなのに、その一歩では届かないと思ってしまう。セラはそのもどかしさに、少しばかり悩んでしまうのだった。 - 124二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 07:54:10
伏線
- 125二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 17:39:33
このレスは削除されています
- 126二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 17:50:35
プロからベタ褒めされる勢いとは本当凄い…益々過去が気になりますね
果たしてどんな過去が待ち受けてるのか…明かされる時が楽しみですね - 127二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 00:24:36
乙
- 128二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 06:56:36
保守
- 129二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 14:13:21
タイミング悪いかもだけど支援SS貼ります
マオちゃんのキス待ち
「ん〜♡」←キス待ち顔
"マ…マオ…?"
「んっ〜ん!」(ちゅーしてよ〜!)
「これマオ先生が困っておるぞ?」
「んぅ〜!!」(や〜だ〜!)
「駄々をこねるでない」
ズルズル…
「んぇえ…いつか絶対先生とちゅーしてやるもん〜!」
"あはは…" - 130二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 22:06:24
悩みこそ青春よ
- 131◆VXuj9FaIJBj.24/11/05(火) 23:19:59
ニケの収録が終わって数日。あの日収録を担当したレコード会社のスタッフ達は、これ以上ないほどのやる気を見せて帰っていった。
今もマオによく連絡を交わしては、絶対に最高のものに仕上げて見せるという意志がこれ以上ない程に伝わったのだ。
「そーいえば、歌動画の画面はどうしますかってレコード会社の人から質問が来てたんだけど……」
「………フリー画像などで良いのでは?」
「え~~!?勿体なくない!?」
とは言うものの、流石に無いものはどうしようもないのである。ニケと先生はそんな二人のやり取りを聞きながら仕事に集中していた。
マオは定期的に飛んでくるレコード会社とのメッセージのやり取りのため、二人の反対側の席に座ってパソコンと向き合っている。
「………」
セラはいつものソファーで読書をしていたが、何か難しい本でも読んでるのかやや表情は真面目だ。
マオは、また教本やら学術書やら、その類いの本を読んでいるのだろうと気にすることはなかったが。
(………やはり、名前以上の詳細な記録はこれにもありませんね)
学術書、と言えば近いのかもしれないが、彼女が読んでいるそれは歴史書であったのだ。
それも、百鬼夜行連合学院の歴史について詳しく纏められた本を、実家の伝手を使って取り寄せた信憑性と情報量の多いものを。
ニケには知られないように、カバーを着けてタイトルは隠していたが。
(若樹家………百鬼夜行が今の形になる前は、各勢力の中でもとても大きな家であったと言うのは書かれていますが、それ以外の情報は不自然な程に載せられていない………)
勘解由小路家については、数ページも使って家柄やその役割、時代事の移り変わりなどが事細かに載せられているというのに。
若樹家については、勘解由小路家と比べて………いや、それ以外の家と比べても明らかに少ないのだ。
(ニケさんの今の様子から考えるに、恐らく今の若樹家はこの本に書かれている時代程の影響力はないはず………)
そもそも、それ程の家柄であれば自分が知らないはずはないのだから。
トリニティとはいえ、向上心の強かった蒼月家はトリニティ以外の名家、大企業との繋がりを持とうとしていた。勘解由小路家も、その名を聞いたことはある。何やら、二十年前程に少々いざこざがあったらしいが。 - 132◆VXuj9FaIJBj.24/11/05(火) 23:20:32
(………やはり、気になるのであれば自ら………と言うことでしょうか。それとも………)
「何やら熱心に読んでおるな」
「!……え、えぇ、少々熱中し過ぎたようです。すみません。何かありましたか?」
「くく。いやなに、それ程興味を引かれる内容なのかと思って気になっただけじゃよ」
ニケはそう言って仕事に戻る。聞いても大丈夫なのだろうか。家の事情とは、人によってはとても大きな爆弾になり得る。
それは、セラも名家と呼ばれる家に生まれたからこそ分かることだった。彼女の場合は地雷というよりは、進んで他人に話したいとは思わない程度だが。
(もし、この話題でニケさんとの間に亀裂が出来てしまったら………)
そんな不安を抱えるのは、生まれて初めてであった。他人の顔色を伺うのとは違う、対等な友達との関係に悩むことが。
面と向かって話し合えば大抵の事は解決する、と今までは思っていたが、その難しさをセラは初めて実感したのであった。 - 133◆VXuj9FaIJBj.24/11/05(火) 23:24:13
- 134二次元好きの匿名さん24/11/06(水) 07:06:45
悩むよね、そういうの
- 135二次元好きの匿名さん24/11/06(水) 07:42:36
実際悩みますよね…向こうから話してくれるならともかくこっちから聞くのは過去を暴くみたいで躊躇っちゃいますし
年頃の悩み出来ててセラさんもある意味成長したなと感じますね… - 136二次元好きの匿名さん24/11/06(水) 18:42:56
楽しみ
- 137二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 01:01:38
ほ
- 138二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 07:14:25
保守