【オリキャラSS】コルトM1877を持つ二人の生徒の話 Part2

  • 1◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 22:33:36
  • 2◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 22:36:05
  • 3二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 22:38:41

    このレスは削除されています

  • 4二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 22:40:46

    すまん、前スレに貼ってないように見えたけど貼ってたわ

  • 5◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 22:43:01

    >>4

    ん、大丈夫だよ~

    お気遣いありがとです

  • 6◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 22:45:51

    https://bbs.animanch.com/board/3955435/?res=190


    それじゃ、ここから続きを書いていきますぜ。

  • 7◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 22:50:04

    >>6

    二人で顔を見合わせていたが──やがて、ライカが天井を見上げながらパチンと指を鳴らす。


    「地下鉄からそのまま地下へ持ち込み、そのままそこで資材を投与する。その後、それとは別に地上で建築を始めれば、それがそのままダミーとして機能する。どちらの工事も終わってしまえば──あとは上の工場の建築だったとして認知され、地下で起きた建築は誰にもバレませんな」

    「…地下で、我々に知られると厄介になるであろう場所をこっそりと作り出す。そしてそこは、奴らにとって非常に都合の良いアジトとして機能する。もしそうなれば──理由は何であれ、今後の脅威となりかねない」


    こうして、ここ最近起きていた様々な問題は、一つの束となって複雑に絡み合ったある陰謀から成り立っているのではないかという推測となった。


    「…やや疑いすぎかもしれませんが、念には念を入れねば。後ほど私も現地で確認して参るとしましょう」

    「あぁ、頼む。状況と場合、手に入れた情報によっては突入に移行する可能性もある。面倒な手続きは私に任せておけ」

    「あり難い。こちらとしては心置きなく動けますな」

  • 8◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 22:51:33

    >>7

    互いに頷き合い、カップに残った冷めたコーヒーを飲み干す。そうして、最初の話題は一先ず進路が定まった。この後忙しくなるだろうが、その前に約束のもう一つの話をしなければいけなかった。

    「さて──予め決めていた話もしなければいかんな。マワリのことだが、何か進展があったとは聞いていたが」

    「えぇ。実は──」

    空になった二つのカップに再びコーヒーを注ぎながら、ライカは話を続ける。


    「出動している最中、途中でマワリに会ってきたのでして」

    「…会ったのか!?」


    思わずカンナは、乱雑な音を立てながら椅子から立ち上がる。彼女としては、「居場所が分かった」という類の話だと思っていたのだろう。


    「えぇ。巡回中に通報を受けたレストランにて先生と共におりました。かと思えば、マワリの方から話を持ちかけられましてな。私も、これには心底驚かされました」

  • 9◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 22:57:28

    >>8

    「先生と…そうか、ここまで早いとはな」

    そこでカンナは、若干視線を下に向けて床を眺めていたが、やがて意を決したようにライカに聞く。

    「…マワリは、私とお前がしたことについて許してはいなかっただろう」


    しかし──ライカは、それとは全く別の反応を返した。

    「私もそう思っていまして、マワリに謝りましたが──彼女は許さないどころか、我々に謝りたかったと申し出たのです」

    「何…だと?」


    耳を疑ったカンナは、それが嘘ではないかとライカの方を見つめる。しかしライカは、コーヒーの入ったマグカップを再度渡しながら一息つく。

    「先生と話した上で、彼女なりの気づきがあったようで──正義を追い求めた彼女なりの苦心と後悔を語ってくれました。正しさより先に、自分はもっと我々を信じるべきだったと」

  • 10◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 22:58:49

    >>9

    「それは…あまりにも人の善性に頼りすぎではないのか。あの状況の中で信じろというのも、無理な話だとは思うが…」

    「私もそうは思いましたが、彼女なりに通した筋のようでして。何せ、あまりに真っすぐ見つめてくるものでしたから──結局、私もそれを受け止めました。彼女曰く、カンナ先輩にも同様にしたいと言っておりました」

    「…そうか」


    じっと目を閉じ、カンナは何かを考え込んでいたが──やがて、ゆっくりと前を見据える。


    「だとすれば──私もまた、それに応えなければ。どのようになろうと受け入れるつもりではあったが、まさか向こうが謝りたいと言うとはな。

    それは本来、私のするべき行いだろうに…少し目を離した隙に、随分と追い越されたような気分だ」

    「ハハッ…何をおっしゃいますか。あなたもまた、自らの行いを顧みて責務を全うしてきた公安局長ですぞ?あなた自身が卑下しようと、我々はあなたが真摯に取り組む姿を見逃しておりませんから」

    「…私は、部下に恵まれたようだな」

    やがて、顔を見合わせてカンナとライカは微笑する。二人共、この先どうマワリと接するべきか、定まったようだった。

  • 11◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:00:07

    >>10

    それとほぼ同時に──カンナのスマートフォンが、突然鳴る。


    「む。電話が」

    「…キリノ?メッセージではなく、電話とは…急用か?」

    電話の発信元は、生活安全局の中務キリノだった。


    「私だ。キリノ、どうした」

    「カ、カンナ局長!良かった、繋がりました…!今、フブキもいるので少しお待ちください!」

    かと思えば、どうやら向こうはスピーカー状態にしたらしく、フブキの声も電話に混じる。


    「やぁ、局長。聞こえてる?」

    「あぁ、お前たちから電話とはな。慌ただしいが何かあったか?」

  • 12◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:01:14

    >>11

    「え、えっと…本官達もついさっきあったことで混乱してはいるのですが…実は、夜中のパトロールをしていた区画で、何故かカイザーの兵士が多くいまして。そのあたりを、開発のためだって立入禁止にしているんです!

    それに、人も全くいなくなってますし…」

    「カイザーPMCが?」

    キリノからその情報を聞いたカンナは、何か嫌な予感がして聞き返す。

    「キリノ、まさかだが──それはこの区画の辺りか?」


    カンナが送った地図の情報を受け取ったキリノの声は、何で分かったのかと言わんばかりに興奮していた。

    「そ、そうです!何で分かったのですか!?」

    「あー…まぁ局長は気づくよねこの変化」

    「…キリノ、フブキ。どうやらお前たちは、意図せずか大事に関わることになるかもしれないな」


    そこで、カンナはスマートフォンをスピーカー状態にし、ライカの方に目くばせする。そこでライカも察したのか、会話に参加し始めた。

  • 13◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:02:20

    >>12

    「二人とも、私も入るが気にしないで続けてくれたまえ。実は、君たちが見たものが先ほど私とカンナ先輩が話していたことに繋がったようでね。恐らくだが、連中はここ最近の一連の事柄の元凶のようだね」

    「うーわ…やっぱそうじゃん。こりゃ厄介なことになったなぁ…ってそれはそれとして」

    「そ、そうです!それよりも大事なことが!」

    「ん?いったいどうしたというんだね?」

    「実は──


    マワリさんが先ほど、カイザーの兵士に誘拐されてしまいました!!!」


    「「…は!?」」

    途端、二人とも絶句した。それもそうだろう。先ほどまで話題に上がっていた人物が攫われたなんて報告、そうそうタイミングがあうものではないのだから。というかあってほしくない。

  • 14◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:03:34

    >>13

    「まて、どうしてそうなるんだね!?訳をいいたまえ訳を!」

    「いや、それは本官たちにも分からないというか、該当の区画から銃声が聞こえて行ってみれば、マワリさんが撃たれた状態で追われていまして…」

    「で、あっという間に取り押さえられて車の中へ詰め込まれていったって感じ。多分だけどさ──この感じだと何か知りすぎちゃったんじゃ?」

    「~~~~~ッ」

    そこまで聞いていたカンナだったが──これには流石に爆発せざるを得なかった。


    「何故こうもタイミングが悪いんだ!!!」


    「きょ、局長!?」

    「な、なんか地雷踏んだ感じ?」

    それに二人がビビったのを、慌ててライカがフォローする。

    「おっと、二人とも気にしないで構わないとも。いやはや、しかしこうなるとは思わなんだ…」

    「…すまない、こっちの事情だ。それで…お前たちもただ指を咥えて見てた訳ではないだろう?」

  • 15◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:04:54

    >>14

    「は、はい!勿論です!本官たちとてこのような悪事を見逃すわけには参りませんでしたから!」

    「ま、だからといって二人でどうにかできる訳でもなかったからさ。ちょっと手を入れておいたんだ。

    局長、今から送るデータをそっちで共有してもらえない?」


    「…これは、GPSか?」

    「例の車体の下に発信装置を取り付けておいたんだ。途中までこれで追跡できたんだけどさ、ピタッと止まっちゃって。これはその最終位置のデータ」

    「一応、このあと二人で向かう予定なのですが…気づかれてしまったかもしれません。とはいえ、出来る限りの追跡は試みるつもりです!」

    「あんま大事には関わりたくないし、正直私たちの管轄外だけど・・・ちょっとこればっかりは見過ごして帰っても気になって眠れないだろうしねぇ」


    唯一の目撃者ということもあり、二人は出来るところまでマワリの捕らえられている車両を追うようだった。

    模範的な警察官であろうとするキリノはともかく、普段怠惰なフブキも珍しく意欲的なのは、同期でもあったマワリに何かしら思うところでもあったのだろうか。

  • 16◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:05:24

    >>15

    ならばと──カンナは二人に命令する。


    「分かった。キリノ、フブキ、お前たちは生活安全局だが──この際だ、少し付き合ってくれ」

    「お前たちはGPSが発信した最終位置まで向かってほしい。我々も後ほどそこへ向かうが、くれぐれも向こうに悟られないように警戒を怠るな」

    「は、はい…!ですが、もうそこにはいないかもしれませんが…」

    「いや、その止まった要因には、一つ心当たりがあるのだよ」

    「え?どういうこと?」


    キリノとフブキの疑問に対して、ライカはカンナと話していた、ここ最近の事柄をまとめた考察を共有した。

    「実はだね──」

  • 17◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:06:49

    >>16

    (かくかくしかじか説明中…)


    「地下建設!?」

    「…ははぁ、GPSは衛星からの電波を利用するからね。地下では通信が途絶えて使えなくなるってわけか」


    カイザーコンストラクションが、地上での建設に乗じてこっそり地下施設を建てようとしている──その推察は、普段こういった大事にあまりかかわらない二人としては中々に衝撃が大きい。

    しかし、その推察を前提として、GPSが止まった理由の候補にもう一つ可能性のあるものが浮上してきた。それが、地下に車両が入ったことによるGPS回線の断絶である。


    「逆に言えば、その周辺には地下へとつながる道が用意されているはず。それも、車体が通れるほどの大きさのものでなければならん」

    「あぁ。おそらくだが、地下鉄へと入る経路も近辺で確認できるはずだ。恐らく、それが地下施設へと物資や人員を運搬するための経路だろう」

    「では、その経路を私たちは探せばよいのですね?」

  • 18◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:08:13

    >>17

    「あぁ、ぐずぐずしていると手遅れになる。特に、マワリに関しては向こうがどういう処置をとるか分からん。

    時間との勝負だ、お前たちにいけるか?」

    「いけるかっていうか…現場で目撃しちゃったのが私とキリノだしなぁ。はぁ、やれやれ…運がいいのか悪いのか。こうなった以上は、もっと面倒になる前にさっさと片付けよっか」

    「安心しろ、これが全て終わった暁にはそれ相応の賞与を約束してやる。各々、望むものがあれば私が取り次いでやる」

    「ほ、本当ですか!?」

    「へぇ~、なら悪くない話じゃん」

    「無論、その分は働いてもらうがな。では──頼むぞ」

    「はい!お任せください!では、生活安全局の中務キリノと合歓垣フブキ両名、これより作戦開始いたします!」

    「んじゃ、いっちょやりますか。また後でね、局長」


    キリノと吹雪との電話を切った後、すぐさま二人は身支度を整え始める。

    「さて──忙しくなりますな。行くとしましょうかね、カンナ先輩」

    「あぁ。今度こそ、私たちの正義を果たす。


    マワリ──そこで無事に待っていろ。私たちが必ず迎えに行く」

  • 19◆J1qLHjcRhM24/10/16(水) 23:09:48

    今日はここまで。2スレ目行ったね~。
    少しプロットの立て直しがいるかもなので、また頑張らんといけんな…
    ではまた、次の更新まで。

  • 20二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 08:14:02

    立て乙

  • 21二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 13:16:33

    急がば回れだ

  • 22◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 00:11:35

    保守~

  • 23二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 08:21:33

    ボーナスか、いいな

  • 24二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 16:18:17

    作戦上手くいくかな

  • 25二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 21:17:38

    このレスは削除されています

  • 26◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:17:41

    >>18

    一方、マワリが詰め込まれた車両の中では、彼女もまた機を伺っていた。

    両手は後ろ手で拘束され、武器は没収されている。それでも、抜け出せる準備はいつでも整えていよう──そう考えていたマワリは、車が停止した衝撃で少し体を揺らした。

    「着いたぞ。ほら、降りろ」

    隣の席に乗っていた兵士に促され、大人しく下車したマワリは周囲を見渡す。

    そこは、すでに古くなった線路が敷かれた暗いトンネルの中だった。車内では、窓から外を見ることができないようにされていたため、どうやってここに辿り着いたかの経緯は分からずじまいではある。


    「ここは…」

    「黙って歩け」

    暗いトンネルの中を、自分を監視している兵士に押されながら仕方なく歩く。そうして暫く行った先で、その男は待っていた。

    「やぁ、君が術業マワリ君だね?」

    「…あなたは?」


    「今回の『開発担当』とでも言おうか」

  • 27◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:18:58

    >>26

    周りの兵士が重装備をしている中、その男だけはスーツにネクタイというえらくシンプルな格好をしていた。それがどこか浮いてるように見えて不気味に思える。

    「手荒な真似をしてすまない。この件に関しては君も怒り心頭に発していただろうが、私は君と話がしたくてね。後ろの者、それを外してあげたまえ。銃も返してあげなさい」

    「了解しました」

    すると、彼の指示通りにマワリの手錠が外され、愛銃も無事ホルスターの中へと戻って来た。マワリが愛銃を確認すると、弾倉の中にしっかりと弾丸も装填された状態であり、細工をされたような形跡も無かった。予想外の対応に、マワリは首を傾げながら尋ねる。

  • 28◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:20:37

    >>27

    「どういうつもり?最悪ここで私に撃たれても文句は言えないけど」

    「さて、この周囲がカイザーPMCの兵に囲まれている状況下で、君がそうするとは思えないがね」

    「…最初から選択肢は無いってことか。いいよ、取り合えずやりたいようにしなよ。それを私が飲むかって言われたら別問題だよ」

    「それでいい。一先ず、私の後についてきたまえ」


    そうして、トンネルの奥へと開発担当は歩を進める。一旦は様子を見るということで、頭に上っていた血を何とか収めつつ、マワリは彼の後へとついていくことにした。

  • 29◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:21:35

    >>28

    「ただ歩いていくのもつまらないだろう。聞きたいことがあれば、遠慮なく言ってくれて構わないよ」

    「思ってた以上に寛容だね。なら聞くけど…あなたたちはあの区画を使って、いったい何をしようとしているの?」

    「単刀直入だね。そうだな…一言で言えば──我々の拠点をもう一つ構えたくてね」

    「拠点?区画の住居を撤去したその上に?」

    「まぁ、半分は正解だ。だけど、それは単なる目くらまし。もう半分は──ここだよ」


    その答えを目の前に示すがごとく、開発担当はトンネルの横にできたあるスペースへとマワリを誘導する。

    そのスペースの奥を垣間見たマワリは──目を疑った。


    「──どういう、ことなの」

  • 30◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:23:32

    >>29

    そこには、まるで巨大なホールの如く広がる、カイザーコンストラクションによる軍事工場が敷かれていたのだから。


    「ありえない──いったいいつから、こんなものを」

    「ほんの二週間だ。まぁ、上で例の施した仕掛けが充分に機能し始めたころ辺りからかな」

    「仕掛け…ヴァルキューレに気づかれないための──」

    そこでマワリは思い当たる。地上で不良生徒が各地で大きく暴れ始め、その数が増加したのは──ちょうど二週間前ぐらいだった。やはり、あれは予定通りに仕組まれたものだったのだ。


    「そんな……だからって、いくら何でも早すぎる。たった二週間で、こんなに大きな施設を地下に作れるはずがない!」

    流れだした冷や汗もそのままに、マワリは当然の疑問を側にいるスーツの男にぶつける。しかし、男はあごに指を当てて施設を眺めながら、いとも容易くその質問に答える。


    「まぁ、0からならそうだろうね。だけど、元々この辺りには広い空間が作られていたからね。地下鉄と言ったら、それがあるのは普通だろう?」

    「──使われなくなった駅周辺を、再利用した?」

  • 31◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:27:00

    >>30

    「駅と一緒に残っていた地下デパートもね。おかげで、新しく掘り進める所は極端に少なかったって訳だ。物資の移動方法は、線路を見れば分かるだろう?まぁ、かなりのスピード工事だったから私も部下も骨が折れたけどね」


    そうして伸びをする男の近くで、マワリはこの大きな軍事目的の生産工場に対して、ある疑問を脳内で反響させていた。

    この隠れた軍事施設で、いったい彼らは何を作っているというのか。

    然してその答えは、工場の奥から大きく響く駆動音と共に現れた。


    「おっ、来た来た」

    「…えっ…」


    象ぐらいもあろうかという二足歩行の駆動型兵器ロボットが、いくつも出てきたのだ。中心には主砲や機関銃が装備されており、上には人の乗れるような操縦スペースまで敷かれていた。

    「『フルングニル』と呼んでいる我々の新たな兵器だ。各パーツを分解し、再組み立てを可能とした駆動型兵器でね。一つ一つが強大な威力を持っていて移動能力も保証済みだが、今はまだ試作段階でね。その実証と完成した場合の生産もかねて、この施設を利用しているのさ」

  • 32◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:29:48

    >>31

    「…………」

    これがもし外に出れば、彼らの制圧力は劇的に上がる。キヴォトスにとって、それが何を意味するかは明白だろう。少なくとも、上で暮らす人々のためになるとは考えられない。


    「私にここまで見せておいて、何を期待しているの」

    「ん?もうその段階の話に入るのかい?まぁいっか。そうだね──」


    そこでスーツの男は、マワリに向き直って提案をしてきた。


    「術業マワリ君。今この施設は完成間近といった所だ。その状態でヴァルキューレに感づかれては非常に困る。そこでだ、君は元ヴァルキューレ生と聞いている。それも、あの学校の裏事情から出ることを決めたようだが──

    どうだね。君も、君自身の正義のために、腐敗したかつての古巣を改めたくはないか」

    「……?」

  • 33◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:31:45

    >>32

    「本当の正義のために致し方ない犠牲があることは、君も重々分かっていることだろう?ならば、ここは我々と手を組み、君の望むべき正義を知らしめてやるのも一つの手だ。彼女たちの元に復帰するという体で、我々に内部情報を伝えたり、情報の元に混乱を引き起こしてほしい」

    「私に、スパイをやれってこと?」


    ふとマワリが周囲を見ると、取り囲むように兵士たちが銃口を向けてきている。前に撃たれた傷のダメージも完全には消え去っていない。戦局として見るなら、敵地の中心ということもあり、あまりにも不利だった。


    「分かりやすく言えばそうだろう。上手くいった暁には、今のヴァルキューレを君がコントロールできるように我々が助力しよう。軍事的支援もいとわないし、君には彼女たちを糾弾する権利もある。悪い話ではないだろう」


    「さぁ、決断をしたまえマワリ君。腐りきったあの組織を中から改革できるのは──君だけだ」

    「…………」

    帽子の元、彼女の表情は陰に隠れる。


    その口は──未だ閉じたままだった。

  • 34◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:34:52

    >>33

    ────────────────────────────────────────────────────

    そんな問答が行われる、少し前。


    「さて、この辺りのはずですが…」

    キリノとフブキは生活安全局としての土地勘をフルに使い、GPSを追いながら最終位置へと到着した所だった。そこには区画に密接した地上の路線が敷かれた駅があったが、見た感じは伽藍洞といった所だ。いわば、既に使われなくなった駅の名残とでもいうのだろうか。


    「夜にこっそり流してたとかかな?周囲の住居も少ないし、気づかれにくいのも分かるかもね~」

    「であれば、この辺りにきっと──あ、ありました!あそこです!」


    キリノが指さした先には、暗い中で見えにくくはあったが、地上とは別に下へと続くトンネルとその中に伸びている路線があった。もし物資を運び込むとしたらここになるだろうか。

    そして──数少ない人の気配の正体もそこにあった。カイザーPMC兵が、幾人かそこで見張るかのように待機していたのだ。さらに丁度路線の向こうから、コンテナを積んだ貨物列車がそこに向けてやってきていた。

  • 35◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:37:39

    >>34

    「…厄介ですね」

    「そうだね。さてと…迂闊に行けば気づかれちゃうし、どうしたものかな」


    そうして二人が線路の近くにある草むらに隠れながら頭を悩ませていると、ふと側から三人の人物がこっそりと現れた。

    「状況はどうだ?」

    「カンナ局長、ライカ先輩…!お早い到着で!それに…先生まで!?」

    「やぁ、キリノ、フブキ。こんばんは。応援要請を受けて、微力ながら力になりに来たよ」


    カンナ、ライカ、そしてシャーレの先生が、状況の確認と連絡をかねて二人の近くにやってきていた。

    「既に部隊は突入準備を済ませて、バレない程度に近くで待機しておいてあるがね。位置は分かっているんだね?」

  • 36◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:39:33

    >>35

    「まぁね。ただ、見張りがいるから簡単には入れないけど…どうしよっか?」

    フブキが悩まし気にトンネルの入り口を睨んでいた隣で、先生は打開策を考案し始める。

    「ふむ…そうだね。キリノ」

    「な、何でしょう?」

    「確か、煙幕弾を持っていたよね?」

    「はい、そうですが…」

    「そしてフブキ──君は狙った所への射撃は割と得意ではあったはず」

    「…なんか大事を頼まれる予感がし始めたんだけど」


    段々不安げな顔になる後輩二人を尻目に、カンナとライカは何かを理解したかのように先生に問いかける。


    「…なるほど」

    「あれを逆に利用するということですかな?」

    「えぇ。向こうがそうしたように、こっちもまた──電撃戦と騙しうちで仕掛けるのはどうかな?」

  • 37◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:41:34

    >>36

    ────────────────────────────────────────────────────

    「…幾つか聞いていい?」

    「何だね」

    問答の末、閉じたマワリの口から次に放たれたのは、疑問だった。


    「最初から地下にこれを作るためだけに、地上の区画を利用したってこと?」

    「ふむ。まぁ、そういうことになるだろうね」

    「住んでいた人たちを移動させたのも、見せかけの工場を作るため?」

    「見せかけとはいえ、きちんと機能はさせるがね。それに彼らには別の場所を用意してある。問題は無いと思うが」

    「…あの公園も消すの?」

    「公園…?あぁ、あの小さなさび付いた公園か。無論だが?」


    「……そっか」

  • 38◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:43:15

    >>37

    そうして質問を終えたマワリは、一息深呼吸をする。腰に入ったホルスターの愛銃をちらりと見る。かつてライカに貰った、大切なリボルバー。

    そして躊躇うことなく──そのリボルバーを素早く引き抜いた。


    「私の正義は──それを守るためにある。答えはとっくに決まっているんだ!」


    そのまま開発担当に向けて、トリガーを引き──



    破裂音が一つ、地下の広大な空間に反響する。

    それは、確かに彼女の握る銃から響いた。

    ただし、銃弾が放たれた音ではなく──


    銃そのものが弾けた音だったのだが。



    「……ッ!?」

    彼女の握った銃は、気づけば床に無残な破片となって転がっていた。弾そのものが爆発したかのように衝撃を受けて残骸となった銃は、今やもう修復不可能なことを無慈悲にマワリの瞳に示していた。

  • 39◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:44:17

    >>38

    「………なん、で……銃には何も仕掛けられてなかったはず…」


    自分が本当にあらゆる手段を失ったことを自覚したマワリは、ただ呆然とするしかなかった。

    開発担当は──静かにほくそ笑む。


    「…あぁ。君はこの状況の中、それでも撃つことを選んだか。元警察官として誇り高き選択だが──最初に君も分かっていただろう。そもそも、君に選択肢などないと自分で言っていたじゃないか」

    「そんな──細工もされていなかったはずなのに」


    「あぁ、銃には何もしていないよ。私が指示したのは──ただ、『弾を変える』それだけだ。

    慣れているものになるほど、それにおける当たり前を確認することがおろそかになる。


    銃そのものは調べていても──弾丸の入った弾倉の奥まで入念に調べなかった君の甘さが招いた結果だ」

  • 40◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:52:03

    >>39

    「…フフッ…」


    失った銃を見ていたマワリは──膝から崩れ落ち、虚ろな瞳で微かに笑う。その色彩を澱ませた瞳から、頬をなぞるように一本の筋が通る。


    「最初から、私がどう動くかも含めて特等席からずっと楽しんでたんだ、あなたは」

    「あぁ、そうだ。君が早撃ちの名手であることは私も知っていた。故に、玉砕覚悟で私を撃つという可能性も充分あるだろう。

    だが──撃とうと撃たなかろうと最初から君は私の管理下に置かれている。それは、君の正義など関係なく──ただの決定事項なんだよ」


    マワリを取り囲んでいた兵士が、彼女の腕や体を無理やり抱える。砕かれた正義と共に──彼女の立ち上がる力さえも、今や失われかけていた。


    「丁度いい、新しい貨物列車もついたところだ。より相応しい所へと君を招待するとしよう。君にはもう、それを選ぶ権利すら無いのだからね」


    マワリは兵士に引きずられたまま、開発担当に線路の方へと向かわされる。そこには、新たに到着した貨物列車が大量のコンテナを持ってやってきていた。

  • 41◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:52:59

    >>40

    「さて、中身を確認してくれ。時間はないぞ、急ぐんだ」

    「はっ、了解しました」

    一人の兵士が、列車の先頭の運転席へと向かう。運転手に確認を取ろうとドアを開ける。


    その瞬間──


    「グハッ!?」

    「!?」

    その兵士が、運転席から突然飛び出した足に蹴り飛ばされた。かと思えば、席から銃弾がいくつも飛んでいき、兵士へと容赦なく叩き込まれた。

    「おい、どうした…」

    開発主任が確認を取らせに別の兵士を向かわせたその時──


    すべてのコンテナが、一斉に勢いよく開く。その中から現れたのは──

  • 42◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:54:31

    >>41

    嘶きのような声を上げて飛び出す機械馬たちだった。



    「な…何だこれは!?」

    機械馬たちには、それぞれの主と思わしきヴァルキューレ生徒が跨っており、その一頭の上で──マワリにとって大事な人が威風堂々と佇んでいた。


    「ハッハッハ!!!我ここに参上しせりィ!!!」


    声の主は──玄翁ライカ。ヴァルキューレ機動隊長の一人が彼女の機動隊を引き連れ、貨物列車のコンテナ内へと侵入していたのだ。

    その声に反応するかのように──俯いていたマワリの目に、一瞬の光が差す。

    「ライカ先輩…?」

  • 43◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:56:05

    >>42

    「これは…入る前に列車をハイジャックしたのか!?」

    「そ-いうこと。いやー、連絡される前に仕留めるのは大変だったよ」

    「本官の煙幕弾が役に立てたようで、嬉しい限りでした!」

    かと思えば、コンテナの一つからキリノとフブキもひょっこりと顔を出す。二人とも、ピースサインをして誇らしげににんまりしてみせる。


    そして、運転席の方からも、カイザーグループの運転手に手を上げさせながら、公安局長であるカンナとシャーレの先生も姿を現した。

    「ヴァルキューレ警察だ!全員動くな!」

    「よし、無事に侵入は出来たね」

  • 44◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 21:57:28

    >>43

    「カンナ、先輩…」


    そうして、約束通りとはいかない歪な形ながら、彼女たちは一つの事件の終着点にて再び相まみえることとなった。


    カンナとライカは周囲の状況をすぐさま見まわし──マワリが取り押さえられているところを目撃する。

    「マワリ──」

    「いましたな。まだ無事なようです」

    その場所に向け、カンナは少し目を閉じた後、しっかりと見つめながらマワリに語りかける。


    「……マワリ。いろいろと話したいところだが、後にしよう。一先ずは──


    お前をそこから助け出す!!!」

  • 45◆J1qLHjcRhM24/10/18(金) 22:03:46

    今日はここまで!
    そろそろ終盤。最後まで書ききっていきたい…

スレッドは10/19 10:03頃に落ちます

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