(SS注意)シュヴァルグランを褒める話

  • 1二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:04:10

     もう少し、シュヴァルに自信をつけてあげられないだろうか。

     秋の大舞台を前にして、俺はそんなことを考えていた。
     前哨戦において、他にG1ウマ娘はいなかったとはいえ、完勝ともいえる結果を残している。
     ここのところのタイムの伸びも素晴らしく、周囲からの評価だってうなぎ昇り。
     同期であるキタサンブラック達に対しても決して引けを取らないと、みんなが思っている。
     ────ただ一人、シュヴァル本人を覗いては、だけれど。
     
    「謙虚なのは、あの子の良いところではあるんだけどな」

     苦笑いを浮かべつつも、そう呟く。
     素直で、真面目で、頑張り屋。
     姉妹との差を受けて、ひたむきに努力を続けて来たからこそ、今の彼女の走りがある。
     その道程を信じることが出来れば、シュヴァルは更に強いウマ娘になれると思うのだが。
     …………まあ、そう簡単に難しいよな。
     色々と方法を模索しながら、傍らで彼女を支える。
     今、出来ることはそれしかない────そう考えた矢先、とある会話が聞こえて来た。

    「ふふっ、我が君の称賛を頂戴すれば、我が“聖剣”は一騎当千の力を発揮するのよ」
    「ちょっとわかる気がするー、トレーナーさんから褒められると、やりますかーってなるんだよねー」
    「ええ、王の褒美は騎士の誉れ……だから、いくら褒めてくれても構わないのだけれどね」
    「ほぁ、つよつよー……でもまあ、わたしもそう、かも?」

     そこにいたのは、二人の生徒。
     片や、まるで凛とした立ち振る舞いの、金髪碧眼のウマ娘。
     片や、おっとりとした顔つきで、普通そうな雰囲気を纏った芦毛のウマ娘。
     その二人はすぐさまどこかへと歩き去ってしまったが、その会話は妙に頭へと残っていた。

  • 2二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:04:32

    「……褒める、か」

     思えば、シュヴァルに対しては褒めるという行為を、あまりしていなかったかもしれない。
     勿論、良かったところとか、素晴らしいと思ったことは、すぐに、はっきりと伝えるようにしている。
     しかしながらそれは当然のことであり、意識して褒める、とは違うことなのだ。
     もしかすると────これが、彼女が自信を持ち切れない原因の一つ、なのかもしれない。

    「よし」

     そうと決まれば、実践あるのみ。
     俺は決意を固めると、足早にトレーナー室へと向かうのだった。

  • 3二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:04:50

    「シュヴァル────これから俺は、キミを褒めようと思う」
    「えっ?」

     ミーティングを終えた後、俺は意を決して彼女へとそう告げる。
     茶髪のショートヘア、一房混じった白いメッシュ、特徴的な白いマリンキャップ。
     シュヴァルグランは不思議そうな表情で、こてんと首を傾げてみせた。

    「……トレーナーさんは、いつも僕のことを褒めてくれてますよね?」
    「……そうだった?」
    「自覚、ないんですか?」
    「キミに対して思ったことや感じたことは、出来るだけ正直に伝えようとはしているけどさ」
    「そっ、そうなんですね……そう、なんだ…………へへっ」

     シュヴァルは帽子を深く被りながらも、嬉しそうに照れ笑いを浮かべた。
     思わぬ好反応に、一瞬だけきょとんとしてしまう
     けれどすぐ我に返って、改めて、彼女へと向けて言葉を続ける。

    「俺はさ、キミ自身に、シュヴァルグランは偉大なウマ娘なんだって、もっと知ってもらいたいんだ」
    「…………トレーナーさん、僕なんかは、そんなんじゃ、ないですよ」
    「じゃあ言い方を変えようか、シュヴァルグランの偉大さを、俺がもっとキミに伝えたいんだ」
    「……っ!」
    「だから、俺にシュヴァルを、褒めさせて欲しいんだ……どうかな?」

  • 4二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:05:04

     俺はシュヴァルの目を真っ直ぐに見つめて、そう言った。
     彼女はぴんと耳を立ち上がらせて、少し顔を染めて、困ったように視線を逸らしてしまう。
     そして、右往左往と、その空色の瞳を彷徨わせてから────こくりと、小さく頷いてくれた。
     とりあえず、一安心。
     俺は微笑みを浮かべて、両手を広げながら、彼女へと声をかける。

    「それじゃあ、こっちに来て座ってくれるかな」
    「…………そっ、そこに、僕が座るんですか?」
    「ああ……恥ずかしながら、俺も褒めるのには慣れてないから、出来るだけ近くで話したくて」

     変に照れてしまい、上手く、通りの良い声が出せないかもしれない。
     だから、シュヴァルには隣に座ってもらって、それで褒めさせてもらおうと考えていた。
     無論、彼女の意思が最優先だから、彼女が嫌と言えばこのまま向かい合って実施するけれども。
     
    「……………………じゃっ、じゃあ、いっ、行きます、から、ね?」
    「ああ、おいでシュヴァル」

     言葉を返すと、シュヴァルはとてとてと小走りで近づき、何故か、座る俺の目の前に立ち塞がる。
     彼女は目を大きく見開く、頬を真っ赤に燃え上がらせながら、じっとこちらを見下ろしていた。
     やがて、意を決したように瞳を鋭く細めると────くるりと、勢い良く、背中を向けた。
     ぱさりと、俺の身体を尻尾が掠める。

  • 5二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:05:20

    「しししし、失礼、します……っ!」
    「へっ?」

     そしてシュヴァルは、そのまま、ぴょんと俺の膝の上へと飛び乗って来た。
     柔らかくもハリのある、暖かで豊満な尻肉の感触が、俺の太腿をむちりと包み込む。
     震えるように揺れ動く彼女の尻尾は、俺の身体をふぁさりと撫でて、匂いを伝えて来た。
     爽やかで涼しげな香りと、甘ったるい女の子の匂いと、微かに混ざる汗の酸味。

     シュヴァルグランというウマ娘の存在が、生々しく、俺の神経を刺激してくる。

     さすがに、これは。
     そうじゃないよ、と声をかけようとして────すぐに、言葉を詰まらせた。
     俺に座るシュヴァルは、ぎゅっと手を膝の上に固めて、ぷるぷると震えていたから。
     正面からは見えないけれど、その頬は、先ほどよりと更に赤みを増している。
     …………違うよ、何て言ったら、このまま爆発してしまいそうだ。
     仕方がない、このまま、始めるとしよう。
     小さく息を吸って、俺はそっと彼女の耳元で、彼女の名前を呼んだ。

    「シュヴァル」
    「……ひゃっ」

     すると驚いてしまったのか、シュヴァルは小さな悲鳴を上げて、身体を跳ねさせた。
     そして、ぐらりとバランスが崩れ始めた。
     滑るように、俺の膝の上から落ちてしまいそうになる、彼女の肢体。
     俺は慌てて、彼女のお腹を、両腕を巻き付けた。
     細身で、柔らかくもありながら、しっかりとした芯を感じる腹筋を、しっかりと抑える。

  • 6二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:05:35

    「んんっ……!」

     腕の中でシュヴァルの身体がぴくりと震えて、少しだけ高い声が漏れた。
     ……なんとか、落ちたり倒れたりするのは、阻止できたようである。
     しかし、緊急事態とはいえ、女の子のお腹を抱きしめるのは、良くなかったな。

    「驚かせちゃってごめんね、すぐに放すから────」

     俺は謝罪を告げつつ、腕を放そうとする。
     しかし、それは出来なかった。
     シュヴァルの手によって、しっかりと、上から押さえつけられていたから。

    「あの、トレーナーさんが良ければ、このままでも良いでしょうか?」
    「……抱き締めたまま、ってこと」
    「なんだか、安心できるので、このままが、良いなって」
    「…………シュヴァルが望むなら、そうするけど」
    「はい、お願いします……出来れば、もっと強く、ぎゅっとしてもらえると嬉しい、です」

     珍しく、おねだりをしてくるシュヴァル。
     そのことが何だかとても嬉しくて、俺は無言のまま、ぎゅっと力を込めた。
     ヒトとウマ娘の力の差は歴然、俺が少し力を入れたところで、彼女らに何のダメージもありはしない。
     現に、シュヴァルはぴくんと反応を示した後、嬉しそうに尻尾をぱたぱたと揺らしてみせた。
     …………いかん、本来の目的を忘れてしまいそうだ。
     俺は気を取り直して、帽子に包まれている彼女の耳に向けて、そっと囁いた。

  • 7二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:05:51

    「キミは、才能のあるウマ娘だよ」
    「!」
    「素直で、真面目で、努力家で……そんなひたむきさに、俺は惹かれたんだ」
    「……っ」
    「キミの走りは格好良くて、綺麗で、素敵で、キミのトレーナーになれたことは一生の誇りだと思う」
    「…………ふあ」
    「どんな時も決して諦めることなく、向かい続ける────そんなシュヴァルが、俺は好きだよ」
    「~~~~っ!」
    「それと普段から…………って、すごい熱出てるけど大丈夫!?」
    「……だっ、だいじょうぶ、ですよ?」

     まるで湯たんぽのような熱を帯びたシュヴァルの身体。
     俺は一旦褒めるのを中断して、彼女の顔を覗き込む。
     大丈夫という言葉とは裏腹に、呼吸は乱れて、瞳は蕩けたように潤み、肌はしっとり汗ばんでいた。
     ……もしかして、最初から体調が良くなかったのだろうか。

  • 8二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:06:18

     もうやめておこう────そう言おうとした瞬間、それを遮るように、彼女の後頭部が口元に押し付けられる。

     さらさらとした髪の感触と、柑橘系の、清潔感のある爽やかなシャンプーの香り。
     思わずどきりとしてしまい、頭が真っ白になってしまった隙に、彼女は帽子を外した。
     空気に晒される、少し小さめで、ちょっとだけしっとりとした、可愛らしい左右の耳。
     シュヴァルはそれをぴこぴこと動かしながら、はにかんだ笑顔で、言葉を紡いだ。

    「…………トレーナーさん、このままもっと、僕のことを褒めてくださいね?」

  • 9二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:06:34

    お わ り
    某スレを参考にして書きました

  • 10二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 06:56:07

    このレスは削除されています

  • 11二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 08:21:43

    すごい良かった…

  • 12二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 09:25:27

    歓喜
    それはそうとここ最近見かけるんだけどシュヴァルをほめる某スレってどこ..?

  • 13二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 16:52:05

    自分も気になる

  • 14二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 19:55:13

    >>11

    そう言っていただけると幸いです

    >>12

    >>13

    このSSの場合は下記のスレになります

    というかなんで投下時にわざわざぼかしたんだろう……

    トレーナーに抱き締められて|あにまん掲示板耳元生ASMRでぶっ壊される(意味深)が似合うウマ娘ステークス出走随時受付中bbs.animanch.com
  • 15二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 20:25:39

    このレスは削除されています

  • 16二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 23:52:31

    >>14

    ありがとう

  • 17124/10/20(日) 07:44:11

    >>15

    >>16

    こちらこそありがとうございました

  • 18二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 19:44:24

    もしもシュヴァちがシュヴァトレさんにお姫様抱っこされたらどうなっちゃうのかな?

  • 19124/10/21(月) 07:18:46

    >>18

    シュヴァち姫になります

スレッドは10/21 19:18頃に落ちます

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