棗イロハの【仕事】の話

  • 1二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:08:30

    棗イロハは憚む。
    仕事の呼び名が、いつしか私事に塗り替えられる、未知が呼び起こす恐怖が身に宿る。
    棗イロハは滞る。
    尽きぬ話題と悩み事。それらに適した対処と審査は、目を逸らそうとも最低限にはこなしていた。
    棗イロハは喘ぐ。
    零れかけた純情を呑み込み、ソファに身体を溶かして本に溺れる。没頭しようにも、気泡が浮かび上がるだけ。息が、苦しかった。
    嘆息に包まれた安息の地、楽園の園。
    「…狭い。」
    まるで、水槽の様だ。
    手を伸ばすこともせず、乾いた笑いが漏れる。ブラウン管が映す白黒の水槽の中は、私が欲しくて【手に入れた物】がある。
    それ以上でも、以下でもない。
    辛うじて呼吸を繰り返し、一拍置いて呟いた。
    「…仕事、行かなきゃ。」

    報われなければならないと思いました。
    ブルアカ関連の文字初めてです。
    細々と続けます。

  • 2二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:23:17

    幸せになってくれぇ…

  • 3二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:24:51

    イロハ...

  • 4二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:33:36

    悲しい雰囲気がする...

  • 5二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:38:26

    すみません何も関係ないのですが、あにまん使ったことないので勝手をしっかりと把握しておらず…仮にスレが落ちた後って何か変化が起きたりするのでしょうか。

  • 6二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:48:30

    >>5

    書き込みができなくなるだけだよ〜。落ちても10日以内ならレス削除とかはできるよ

  • 7二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:49:41

    >>6

    了解です!感謝

  • 8二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:51:11

    これは面白そうだ、期待

  • 9二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 01:56:51

    うむむ、不穏

  • 10二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 02:08:17

    何が起きるかわからないな

  • 11二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 06:51:27

    文豪の予感

  • 12二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 08:24:59

    引き込まれるような感覚がする

  • 13二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 08:33:00

    きっかけなど覚えていない。と言うより、気にも止めていなかった。
    シャーレの先生を万魔殿へと呼び寄せる。
    自分専用の部屋でも作ろうかと思索し始めた頃、その仕事を課せられた瞬間「お、都合の良い理由ができた。」程度にしか考えていなかった。
    第一に浮かんだ、私一人でどうにかなるはずないだろうに、なんて小言は懐にしまった。
    こんな絶好の機会、棒に振る訳にはいかない。
    、少それにし似ているのではないかと思ってた。
    立場とか、役職とか…憶測でしかないが、性格とか。そういった部分が。
    以降貴方と関わって、貴方を知っていく。
    積み重なる日々は、色鮮やかに溶け込みつつ、丁度そこに重なる書類を彷彿とさせるが如く、同時に認識の過ちを痛感させる。
    まず、価値観の違い。
    受け入れた仕事に、過剰なまでに挑む姿。
    何時も遅くまでそれに取り掛かる、しかしその能力を見るに、単に効率の善し悪しだとは思えない。
    原動力となるのは、生徒の役に立とうとする自己犠牲か、はたまた立場に動かされる歯車か
    いずれにせよ、多少の理解はできるが、異端だとも感じた。
    立場も、似て非なるものだった。
    抱えるものはあまりにも大きく、その種類はあまりにも多い。
    やれあの先生が、やれあの時先生が━━と、行動範囲が広すぎる。
    そして、そこに余念が無い。
    取るべき対応も、行うべき処置も。
    先生自身の技量か、それとも「責任」がなせる技なのか。
    推し量るには、些か幼すぎる。
    確かに生物学の範囲で見れば同類の筈…と、疑念が湧くのにそう時間はかからなかった。
    役職は、少し似ていた。
    おかげで話の種程度にはなったし、なによりサボりと銘打って2人で遊びにも出掛けた。精々、息抜き程度にはなったはず。
    そうして知る度、解像度が上がる度、情報が増える度。脳のリソースに、貴方の枠が増えていく。
    とはいえ、仕方の無い事だ。
    新たに買った本を読むあの高揚感と、それに準じて割かれるのと同じ。当然のこと。それが面白ければ、尚のこと。読んでいた本を閉じる。
    視線に気づいた先生が浮かべたやらかな笑みに、不意を突かれた私の返した表情は、どんなものだったのだろうか。
    言及が特にないのを曲解して、火照る頬を悟られまいと、閉じた本を開き直した。

  • 14二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 10:49:40

    知らないこととは恐ろしい。
    真意に辿り着かなければ騙される。手にするはずの利益は蝕まれ、却って失う事になる。
    例の会議、あまりに多くの犠牲を要した。
    額にすれば果てしない程の被害と損傷、額にできない、心の傷。
    論理も倫理も欠如した、あってはならぬ大戦の追憶。
    全てが済んだ後、事の概要と終末を聞いた。要所を省くが、アリウスの事、ゲヘナ、トリニティ間の引き金となったこと、先生が発砲を受け運ばれて、結局、その先生が「なんとかした」といった内容の伝手。
    本人に聞けば、より多く、正確なものだとは思うが、局所的な情報のみで、重心を失いふら着くほどの衝撃を受けた。
    大元を辿れば、マコト先…いや、違う。万魔殿が起こした不祥事。
    そこに巻き込み、あろう事か全て背負わせた。
    自分にしか出来ない【責任】を背負わせる重圧と心労は、よく知っているはずなのに。
    だが、仮にその贖罪をしたとて、あの大人は受け取ってくれないだろう。偏った知識で象られた大人は、きっとそういう人なのだ。
    …話題を変える。先生の話をしたい訳では無い。
    最近、読破する本が増える度、この世が未知で溢れていることを実感する。
    知ることは好きだ。
    長方形の本一冊が、まるで未踏峰の秘境かのように【知らない事】を綴り描く。
    月並みな表現だが、泳いでいる様な、漂い続けている様な、そんな錯覚が心地よい。
    詰まるところ、サボりが横行するのみで、人並みには知識欲もある、物事への関心、興味も持っている、一般的な女子高生である、ということ。
    そう、普通の、女子高生。
    仕事をこなして、適度にサボって、青春を謳歌して、楽しいに身を委ねて、…人並みに、恋を、して…?
    …???
    「…最近、恋愛小説でも読んだっけ。」
    たった一単語が妙にこそばゆく、胸の奥がやけに温かい。
    最近の私の、【知らないこと】の一つ。
    「イロハ先輩!」
    「っ!イブキ。どうしたの?」
    「…んー?」
    唐突な登場に少し驚く。呼んだかとおもえば、無垢な瞳がこちらを見つめる。顔になにか付いているだろうか。
    「なんだか、とっても嬉しそうな顔!」
    そう言われ、スマホの画面を手鏡にする。
    …薄々勘づいてはいたが、この感情は、さして悪いことではないらしい。

  • 15二次元好きの匿名さん24/10/25(金) 18:28:25

    恋という毒が回ってきたね

  • 16二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 04:14:54

    恋を知ることとなるのかな

  • 17二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 13:53:21

    えとリアルの方で体調崩しました。 暫く更新出来ないです…細々と書くと明言しておいて良かった

  • 18二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 14:11:52

    スレ主お大事になさってください

  • 19二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 00:32:04

    スレ主を待つために保守

  • 20二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 09:37:19

    スレ主の体調が治りますように
    保守

  • 21二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 20:41:44

    保守

  • 22二次元好きの匿名さん24/10/27(日) 20:48:02

    恋に恋するイロハはとてもかわいい

  • 23二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 08:11:51

  • 24二次元好きの匿名さん24/10/28(月) 18:19:26

    >>22

    理解できる

  • 25二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 01:42:11

    スレ主の体調が治る事を祈る

  • 26二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 08:25:27

    早めの保守

  • 27二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 10:01:13

    保守ありがたすぎます。あったけぇ…

    大人は、賢くないふりが上手い。
    独り歩きした噂が運ぶ、生徒会直属のシャーレを統治する、なんでも解決してしまう完璧な大人。
    邂逅をを果たして気づいたことは、噂はどこまでも噂であるということ。
    確かにスペックは高い。常人離れしているのは目に見えてわかるが、それとは別に、誰よりも人間らしいと思う。
    感情はそれなりに豊か。怒っているところは見ないが、大人として無闇矢鱈に感情を剥き出しにするのも、立場というものが許さないのだろう。
    だが、ストレスが溜まっている時は、隠しきれない苛立ちを見せることもある。
    疲労がピークを迎えれば、眠ってしまう。
    体が限界を迎えれば、倒れてしまう。
    銃で一発でも打たれてしまえば、重傷を負ってしまう。
    誰彼構わず、救おうとしてしまう。
    どこまでも人間らしく、誰よりも弱くて、優しい人だった。
    そんな大人でも知らない、一つの能動を教えてあげることにした。
    私を支える、私の最も重要で、子供らしい、大好きなこと。
    大人に、足りていないこと。
    先生になら、教えてあげないこともない。

  • 28二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 10:02:50

    「…イロハ?ここは?」
    「何を聞くかと思えば。以前紹介した、休憩スペースですよ。忘れてしまいましたか?」
    「いや、車庫で戦車のトラブルがあったって言ってなかった?」
    「ふふっ。いやぁ、どうだったでしょう。あまり記憶には無いですが。」
    こちらの思惑程度気づいていた筈なのに、のこのことこちらの策略にハマった振りをする。
    恐らく私の為なのだが、いずれは先生自身がサボりたいという欲の元、ここに訪れてくれるのが目標である。
    今はまぁ、乗せられるまま、思い上がっておくとしよう。
    「因みに、座布団は買い足しました。これは先生の分です。どうぞ。」
    「わぁ、ご丁寧に…じゃなくて。仕事があるからもう戻らなきゃ。」
    「…律儀な人ですねぇ。大人だからですか?」
    「できる限り、生徒の力になりたいからね。」
    「壊れられては、困りますよ?」
    「はは。その時は、イロハに助けてもらおうかな。」
    …嘘偽りのない笑顔。
    呼吸が、一瞬停止した。
    「…これ以上、私の仕事が増えると困るんですよ。今でさえこうしてサボっている位なのに。」
    「たしかに。忙しいもんね。」
    「先生程じゃありませんがね。」
    ほんの静寂が、あまりにもありがたい。
    この動揺を知られたくなかった。
    私の意向に沿うように、徐ろに先生が立ち上がろうとする。

  • 29二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 10:07:28

    が、それは望んでいることじゃない。そっと、先生の服の袖へと手を伸ばす。
    「、イロハ?」
    折角二人になれたのに、勿体ない。
    まだここにいて欲しい。
    先生にも休んで欲しい。
    …まだ、私を見ていてほしい。
    ゆっくりと首に手を回し、体重をそのまま後ろにかける。
    「っうわ!?」
    首に触れたてから伝播する温度。心地いい。離したくない。
    背中が畳につく。手の力は、抜いていない。
    先生が手で体重を支えつつ、私の上に覆い被さっている"よう"に見えてその実、全て私が仕組んだこと。
    顔が、体が、近い。数秒遅れて聞こえてきた心拍音が、私の耳下で轟いて。伝わってしまうのではないかと、ありもしない緊張で震えてしまいそうだった。
    「ちょ、イロ「っ先生は、頑張りすぎです。倒れられたら困るのは私なので、せめてここで少し休んでください。」」
    口早に唱えた本音。表に出せる、私の本音。
    「…ごめんね。心配かけさせちゃったかな。そうだね。少し休んでいこうかな。」
    それを聞くと、強ばった体の力が抜けていき、自ずと手を離していた。
    「少し横になるよ。ありがとう。イロハ。」
    「…お気になさらず。1時間後に起こします。」
    「30分でいいよ。あまり長居する訳にもいかないしさ。」
    「それでいいのなら、そうします。」
    「助かるよ。」
    1分程度だったか。それだけの時間で、すぅと寝息が聞こえてきた。
    一体何日寝てなかったというのだろう。
    背を向けて、腕を枕に眠っている姿に、失落と諦念の意を覚えた。
    …一つ、欲が叶った。
    かと思えば、思ってもみなかった醜い欲が、また一つ湧いてくる。
    (…これは、先生のため。私はただ、この大人を労いたいだけ。それ以外なんて、何も無い。そう、それだけだから。)
    座布団を頭部付近に移動し、音を立てずに座り込む。
    「…失礼、します。」
    頭を腕からするりと抜き取り、私の太腿にあてがう。吐息が、体温が伝わる。やはり、心地よかった。

  • 30二次元好きの匿名さん24/10/29(火) 21:10:28

    イロハは先生を欲して感じているな
    綺麗だ

  • 31二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 08:02:06

  • 32二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 18:43:45

    ホシ

  • 33二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 21:36:44

    イロハの膝枕…すべすべして気持ち良さそう

  • 34二次元好きの匿名さん24/10/30(水) 23:27:33

    自覚はあった。
    ふと、何をしているのか気になって。
    目に映る情景に、貴方の幻影を重ねて。
    些細な出来事から、想い吹けるようになった。
    私利私欲のための部屋に燻る孤独の穏やかさが、今は何ともうら寂しい。
    あの後、起こす直前に頭を戻して、何も知らずに眠っていた先生と少し会話を交わして帰って行った。
    ドアがしまった瞬間、力が抜けて畳にへたりこむ。
    えもいえぬ高揚感、昂る我が身を支える力はなかった。
    行動の代償が、これである。
    魘されるような顔の熱、沸騰しそうな思考回路、馬鹿になった鼓動のリズムは過去最高にはねている。
    認めてはいけないのに。私情を持ち込むなんて言語道断で、許してはいけないのに。
    導かれた結論は、一つだけだった。
    でもこんな、邪な感情を抱いているのは私だけな筈がない。なんで勝率の無い勝負に挑まなければならないのか。
    そもそも誰か一人を選ぶわけもないだろ。
    勘違いだ。気の迷い、偶然の産物。
    自己否定を繰り返して、必死に思考を切り替える。
    末に浮かび上がるのは、私の下で眠る穏やかな寝顔だった。
    「……ほんっとうに、厄介な仕事を押し付けられたものですね。」
    捨てなければならないこの感情は、無情にも、憎いほどに暖かかった。

  • 35二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 09:57:55

    なんだろう愛のようなものを感じる
    引き寄せられるSSだ

  • 36二次元好きの匿名さん24/10/31(木) 20:26:41

    良いSSだ
    官能的ですらある

  • 37二次元好きの匿名さん24/11/01(金) 07:08:36

    推しよ幸せであれ

  • 38二次元好きの匿名さん24/11/01(金) 17:01:35

    なんだろうかこの包み込まれるようなSSは...良い

  • 39二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 04:58:46

    このレスは削除されています

  • 40二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:01:17

    このレスは削除されています

  • 41二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:06:55

    このレスは削除されています

  • 42二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:19:29

    このレスは削除されています

  • 43二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:26:53

    このレスは削除されています

  • 44二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:30:50

    このレスは削除されています

  • 45二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:45:37

    このレスは削除されています

  • 46二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 05:51:47

    このレスは削除されています

  • 47二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 08:36:38

    このレスは削除されています

  • 48二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 08:49:31

    恙無く業務をこなす。
    たまには、束の間の休息を共に過ごすより、共通の目標へと取り組むこの空間も悪くない。
    書類仕事なことは懸念点だが。
    (にしても…)
    普段、ソファから眺める後ろ姿とは違う、書類に向けた真剣な眼差しや所作の一つ一つ。普段と何ら変わらないと言うのに、やけに視線が留まってしまう。
    「…」
    「…イロハ、?どうかしたの?」
    「、え?どうしてですか?」
    「いや、ずっとこっちを見てるから、何か用でもあるのかなって。」
    「…あー、なんでもありません。偶然視界に写ってしまって、成り行きで眺めてました。」
    「そう?何かあったらすぐ言ってね。」
    そう言って、先生は視線を戻した。
    自覚したが故の無自覚に、他人の指摘でようやく気づく。
    恥じらいより先に、そんなに見ていただろうかという疑問が浮かぶ。
    まるで乙女のようだと嘲笑し、逃げるように目先の書類へと手を伸ばした。

  • 49二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 08:50:00

    「んーー!つっかれたぁ…。」
    強ばった身体を引き伸ばし、大きく息を吐いた先生を見て、読んでいた本に栞を挟む。
    「お疲れ様です。コーヒーでも入ります?」
    「イロハもお疲れ様。じゃ、お言葉に甘えようかな。」
    普段なら好みのエスプレッソでも入れるタイミングなのだが、如何せん面倒だし手早く済ませたいと思い、シンプルなコーヒーメーカーを稼働する。
    マグカップを二つ用意して、片方を先生に渡す。謝礼を背中で受けつつ、隣の椅子に座った。
    「にしても、こんなに早く片付くとは。イロハのおかげだね。」
    「たしかに後半は休憩していたとはいえ、残りの殆どは生徒が触れては行けない書類ばかりだったでしょうに。まぁ、私に苦労がかかることも無いので構いませんが。」
    「けど、手伝ってくれたのは事実だから。」
    「…ふふっ。何としても褒めるんですね…いいでしょう。思う存分褒めちぎってください。頭を撫でることも許可します。」
    時折コーヒーを啜り、なされるがままの姿勢に入る。
    あ、そういえば。
    「先生、この後のご予定は?ないのであれば、ショッピングにでも行きませんか?」
    「特にないけど、欲しいものでもあるの?」
    「休憩スペースの補充をしたいと思いまして。それに、ここ数日デスクワーク続きですよね?」
    「そ、そんなことは…」
    「鏡でも見たらどうですか…その隈で反論するのは流石に悪手ですよ。散歩がてら、少し付き合ってください。」
    「情けない所見せちゃったなぁ…そうだね。行こうか。」
    コーヒーを飲み終えて立ち上がる。
    シャーレから差し込む光は、まだ少し眩しかった。

  • 50二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 18:34:54

    このレスは削除されています

  • 51二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 18:36:32

    「━━ありがとうございました〜。」
    「さて、あとは…」
    「イロハ、荷物持とうか?」
    「あーいえ、気を遣わないでください。全部私物ですし、大丈夫ですよ。」
    「んー…それじゃあ、二人でいるのに私が手持ち無沙汰だと、大人である私の見え方が少し悪いからさ。少しだけ、分けてくれない?」
    「はぁ…ふっ、分かりましたわかりました。ではこの紙袋を持ってください。小さいものは私が持ちますから。」
    よくもまぁ、そういう上手い物言いがすっと浮かぶ。
    あの部屋の快適性を上げようと、日用品の買い出しのつもりだったのだが、ついでということで備品の調達も行っていると、自ずと手荷物が増えていく。
    先生の両手に荷物が増えた代わりに片手が空いた。他に買うものは…
    『おら!いいからとっとと金出せよ!』
    『いやっ…離してください!』
    …はぁ、この都市はどこまでも。
    普段ならばスルーしていたかもしれない程の日常風景だが、被害者に抵抗の意思が見られない。
    洋装を見るに…この辺りの生徒じゃない?
    「イロハ、行こう。」
    「そういうとは思いましたが…どうするんですか?私、手持ちの銃はあるとはいえそこまで自信はありませんが。」
    「なるべく示談で終わらせたいけど…じゃあ、イロハは打ち合いになったら勝てないってこと?」
    「、口が達者ですね。…はぁ、面倒ですが、静観するのも気が引けますし…行きますか。」
    何気なく日頃の日課として行っていた整備が、こんな形で役立つとは。
    歩幅を進め、ゆっくりとリロードをして手に携えた。

  • 52二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 18:39:53

    「何をしているの。」
    『な、シャーレの先生!?なんでこんなとこに…っクソ!引くぞ!』
    『はぁ?こんな大人一人くら…おい!ちょ、どこ行くんだよ!』
    「…あれ?」
    「わ。流石ですね、シャーレの先生。悪名が轟いています。」
    「できれば良い方の印象であって欲しかったなぁ。」
    呆気なく尾を引いて逃げ出した二人組の背中は、いつの間にやら見えなくなる。
    『あ、ありがとうございました…助かりました。』
    「ううん、大丈夫だよ。怪我はない?」
    こくこくと頷き、先生へと眼差しを向ける彼女。
    …この目線、よく知っている。
    「貴方、ゲヘナの生徒じゃありませんよね?なぜわざわざこんな所に?」
    『あ、あはは…お恥ずかしながら、道に迷ってしまいまして、スマホの充電も切れてしまって…』
    迷う…?制服ではなく、角や翼も無いとはいえ、雰囲気的にはトリニティの生徒だと思うが…目的地にもよるが見当外れな位置すぎ無いか、?
    「大丈夫?目的地はどこだったの?」
    『えっと、○○のカフェでコラボを行っていると聞いて…』
    「あぁ、そこならたしか…そこまで遠くない位置にあるはず。何度かいった事もあるよ。」
    「へぇ。先生、この辺りの土地感あるんですね。」
    「仕事で出向くこともあるけど、個人的に良いお店が多いからね。たまに生徒とも来たりするんだ。」
    『あ、あの!こうしてお助け頂いたのですし、なにかお礼をしたいのですが…!宜しければ、一緒にどうですか?』
    あぁ、やっぱり、よく知っている。
    焦がれるような、同時に、訴えかけるようなその視線。
    私も、こんな風に見えているのだろうか。
    なんて考えていると、縋るようにこちらを横目にする先生。
    困っている…と言うより、こちらに判断を促しているような目線。3人で、なんて思っているんだろうなぁ。
    …疎い人。
    自覚しただけで、この場で張り合おうと思える程の気概は持ちえなかった。
    「じゃあ、私は用が済んだので。失礼しますね。」
    「え、」
    『あ、えっと、本当に、助けていただいてありがとうございました!』

  • 53二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 18:40:26

    律儀だなぁ。私は何もしていないと言うのに。
    本当に、いい子で…こんな子の方が、きっと先生も好きなんだろうな。
    表情を見られぬように一瞥し、貰い直した荷物で両手が塞がる。
    …重い。
    青空を反射したような日差しは、気付かぬ内に橙色に染まっていた。

  • 54二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 20:00:12

    綺麗だなあ
    イロハの心情に引き込まれる

オススメ

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