- 1二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 18:12:26
- 2122/02/27(日) 18:13:09
自動販売機のおじさん」
自動販売機というのは、その売り上げによって実に雄弁に物語を語ってくれるものだ。
例えば、近くに学校がある自販機は炭酸やスポーツドリンクの消費が早く、下校の時に友達と買って飲んでいるのが想像できる。
ビル街、サラリーマン街ではコーヒーやエナジードリンクなどのカフェイン入り飲料の消費が早く、企業戦士の方々の激闘を垣間見ることができる。
自販機は、その周辺で暮らす人々の生活を色濃く表す写し鏡であると言えよう。
では、日本随一のレースの名門校「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」の自販機事情はどうであろうか。
広大なトレセン学園の敷地内にはいたるところに自販機が設置されており、特に正面玄関エントランスの休憩室には、麺類やホットサンド、具沢山の鍋の自販機等バリエーションに富んだものが取り揃えられており、残業が日常茶飯事のトレーナーたちの強い味方となっている。
さて、肝心の自販機の売り上げである。
トレセン学園での売り上げはおおよそ各世代の主活動領域と連動している。
練習場近くの自販機ではスポーツドリンクの消費が早く、4段あるうちの2段がスポーツドリンクでも1週間程度でなくなってしまう。
校内、特にトレーナー室が密集する区画はカフェイン入りの飲料の消費が早い。時折、心配になるほどの量を買い込む者もいるので、トレーナーたちの仕事環境には一抹の不安を抱かざるをえない。
寮では甘味を多く含んだ物の売れ行きがいい。彼女たちも年ごろなのだから当たり前なのかもしれないが。
それにしても、この仕事はどこか後ろめたいものを感じるのは事実である。
国民的アイドル集団であるトレセンのウマ娘たちの生活の裏側を垣間見るのは、なんだか見てはいけないものを見ているような俗的な背徳感を感じるからだ。
別に法を犯しているわけでも何でもないのだが、そういう余計なおせっかいの心を持ってしまうのが日本人の性であろう。 - 3122/02/27(日) 18:13:59
いま,自販機の補充をしているこの男もそんなおせっかいな心を持つ人間の一人であった。
赤いトラックから、積み荷を自販機に補充していく。
時刻は午後2時少し前、天高く昇った太陽はカンカンとアスファルトを焼き、うだるような熱気で思わず手を止めたくなる。ここが日陰でなかったら、男は思わず文句をこぼしていただろう。
額から汗を流しながらの作業が終わり、自販機の扉を閉めた時、一人のウマ娘が現れた。
「おじさん!コンチワ!」
葦毛の、大きな目をしたウマ娘が元気ハツラツと言った様子で、男に挨拶をした。
「あら、こんにちは。調子はどうだい?」
「私はいつでも元気全快だよ!」
どうやら、男とウマ娘は親しい中のようだ。
「いいねぇ、若いってのは。おじさん見た目よりかは若いけれど,体中バキバキだよ」
男はトントンとわざとらしく腰を叩いてみせ、「おじさんまだ30ちょいでしょ~」とウマ娘は笑っていた。
目当てのドリンクを買い、取り出し口と格闘しているウマ娘は男に語り掛けてきた
「そういえばおじさん、また予想当たってたね!」
どうやら、この男、ウマ娘のレース順位を予想していたらしい。その行為自体は別段珍しくないようだが、どうやらこの男の的中率の高さにウマ娘は驚いているらしい。
「そりゃなんってたって、おじさんのあだ名は若い頃から「ミラクルマン」だったからな!」
「いいなぁ、そのあだ名。私も名前みたいなミラクル早くおこしたいよ…」
しょぼくれている彼女は、実はまだ思うような勝ち星が挙げられずにいた。別に珍しくもない話である。この学園にいるというだけで彼女も立派なエリートの一人だが、だからと言ってレースで勝てるかと言われれば話が違ってくる。勝てずにこの学園を去る者は多い。
目の前でしょぼくれる彼女を励ます言葉を男はあまりも居合わせてはいなかった。 - 4122/02/27(日) 18:14:08
「うーん。そうだな…じゃぁ、ミラクルマンのおじさんが予想しよう。君が今週出るレースで勝つのは‥‥‥ズバリ君だ」
「あぁぁ、大丈夫ですよ!そんな気を使ってもらう必要なんて…‥」
「気なんて使ってないよ。おじさん言ったろ?おじさんはミラクルマンだって。そんなおじさんが予想するんだ。きっと、いや、絶対に勝てるさ」
そう力強く言い切ると、ウマ娘の顔が少しだけ晴れたかのように見えた。
勢いよく立ち上がり、男にぺこりとお辞儀をすると「必ず勝ちます」と言い、練習場へかけていった。
一週間後、彼女から勝利の報告を聞いたのは記すまでもないだろう。 - 5122/02/27(日) 18:15:55
少し時が飛び、10月上旬。
程よく肌寒くなり、タンスから長袖を引っ張りだす時期になってきた。
ここトレセンでは「ウマ娘肥満撲滅月間」としてあちらこちらで「PAKUAPKAU今日壊滅運動」とかかれたノボリがあちらこちらで立っていた。
何だか殺伐としているが、トレセンの直接的な関係者ではない男には特に関係のない話である。
時刻は午後一時を少し回った頃であったが、その日はかなり早く自販機の補充が進んだのでこのあと、馴染みの喫茶店にでも寄ろうかと考えていた時だった。
「おじさん、コンチワ」
随分とめかしこんだウマ娘に声をかけられた。はて、こんな子知り合いにいたかと男は首をかしげていたが、よくよく考えればこの学園で知り合いのウマ娘は、よくこの自販機に来る子しかいなかったことに気づいた。
「おぉ、こんにちは.今日はずいぶんとめかしこんでるねぇ。お友達とお出かけかい?」
行き先を聞いたところ、なにやら、ウマ娘は顔を赤らめて恥ずかしがっていた。
「今日、幼稚園から一緒だった男の子が近くに来てるから、…リフレッシュがてら会わない?ってきいたらOKしてくれて‥‥‥今から会いに行く、とこ、です‥‥‥」
顔を真っ赤にして、茶色のロングスカートを強く握りしめながら彼女はうつむいていた。
なるほど、どうやら彼女の幼馴染がトレセン学園近辺に来ているから、勇気を出してデートに誘った、というところだろうか。
実にほほえましいものである。年頃の女の子が恋をするということは、精神が健全に発達している何よりの証拠である。
「それで、何でここへ?」
「あの実は、私がいつも飲んでるやつ、私の地元、北海道の田舎町なんですけど、そこにはなくて、いっつも私がおススメしてるから、今日、持って行ってあげようと思って」
なんといい子なのだろうか。年甲斐もなく,男は泣きそうになっていた。 - 6122/02/27(日) 18:16:12
「ようしわかった、じゃぁ、恋にもレースにも頑張る君に今日はおじさんのおごりだ!」
「あぁ!待ってください!」
男が運転席に財布を取りに戻ろうとしたとき、彼をウマ娘が呼び止めた。
「あの、お気持ちはうれしいんですけど、彼に上げる分は自分で買って渡したいんです…」
その瞬間、男は激しく後悔した。考えてもみれば、彼女にとって大事なデートであることは明白だ。それなのに得意の余計なおせっかいをしてしまった。
「あぁ‥‥‥申し訳ない。おじさん余計なことしちまったなぁ…、今日はもう補充し終わっているからぞ」
なんとなく居心地が悪くなって、トラックの後ろ扉のステップにどっかっと座って、ウマ娘がドリンクを購入するのを眺めることとした。
2本買うと、ウマ娘は小走りで駆けていった。
一人残された男は、自販機で缶コーヒーを飲みながらバツの悪そうな顔をしていた。歳を重ねたころに失敗した後飲むコーヒーはいやに渋かった。 - 7122/02/27(日) 18:16:28
それから少し時間がたったある日のこと。菊花賞を目前に控えた曇りの日のことだった。
今日も男とウマ娘は自販機の前にいた。
会話の内容はレースの意気込みに始まり、最近の幼馴染との近況、昨日の夜食べたものと多岐にわたっていた。
ウマ娘がこんなことをつぶやいた。
「そういえば、おじさんて、なんでミラクルマンって呼ばれてるの?」
男はほんの少し悩んだ後、「そんなに大した話じゃないよ」とおいて話を始めた。
男は大学生の頃、登山サークルに入っていた。メンバーは少なかったが、休日のたびに明峰に挑戦するのは楽しかった。男はサークル内ではいじられる側であり、よく名前をネタにされ、薩摩示現流の掛け声をやらされたり、名前のとおりサークル内の次男坊的立ち位置であった。
ある日、男とサークルメンバーの一人はとある山に挑戦していた。その山はほとんど崖のような山で、盗聴がこんなことでも知られている山だった。一歩でもミスをすればそのまま滑落してしまう恐怖が二人に恐怖を与えていた。
そんな時だった。サークルメンバーの後方で進んでいた男が道を踏み外し、崖に身が投げ出されてしまった。崖上でサークルメンバーが何とか命綱を引っ張っているが、このままでは二人とも落ちてしまうのは明白だった。
男の手にある選択肢はたった一つだった。
男の手に握られたサバイバルナイフで切断された命綱は支えるべき対象を失い宙ぶらりんで漂っていた。
落下する視界の中で男が最後に見たのは、堕ちていく自分に必死に手を伸ばすサークルメンバーの姿だった。 - 8122/02/27(日) 18:16:52
男が次に目を覚ましたのは病院のベットの上だった。
男は困惑していた。あの状況から生きていることを自分が一番信じられなかった。
サークルメンバーが言うには、あの後すぐに警察に連絡を入れ、男の救助が始まったらしい。捜索開始から2時間後、男は崖下で発見された。男には奇跡的にケガ一つもなかった。
にわかには信じがたい状況であるが、事実として男は無傷なのだからそれ以上の追及の余地はなかった。
それから男は、死の状況から奇跡的に生還したから「ミラクルマン」と呼ばれるようになった。
「っていうだけの話だよ」
「だけにしてはずいぶんと濃い話だね」
なんとも現実味のない話を聞かされ、ウマ娘は混乱しているようだった。
「まぁ、なんだ。この体験を通しておじさんが言えるのは、奇跡は奇跡を望む暇がないときにおこるってことかな?」
「奇跡を望む暇がないとき‥‥‥」
ぶつぶつとつぶやくと彼女は考え込んでしまった。
「あぁぁ‥‥‥つまり、君が全力で頑張れば、知らないうちに奇跡はおこるってことだよ。だって、ほら、後からミラクルマンって呼ばれたおじさんと違って、君は生まれた時からミラクルマン…あ、女の子だからミラクルガールか、なんだから」
その時、彼女の動きがピタッと止まった。そしてフルフルと体を震わせると、ぴょーんと飛び上がった
「そうですよ!私は生まれた時からミラクルなんです!何でそんなこと今まで分からなかったんだろう‥‥‥ありがとうおじさん!元気出た!」
とても興奮した様子で、ペットボトルの中のスポーツドリンクをあおった。その顔は傍から見ても興奮していて、今にも走り出しそうな様子だった。
「私頑張ります!奇跡なんて考える暇がないくらい、頭が真っ白になるまで頑張ります!」
そう言って、追加でもう一本買うと、ウマ娘は今まで見たこともないようなスピードで駆けて行った。
呆気にとられ、一人残された男は、トラックの運転席に戻ると、威勢よくサングラスをかけ自販機の前を後にした。今日のコーヒーはずいぶんと味が濃く感じた。 - 9122/02/27(日) 18:21:53
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以前私が書いていたものを置いておくぞ!
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ウワーッ!あなたそんなに書いてたのか!!
- 11二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 18:23:23何事ッ!切り抜き理事長だ!|あにまん掲示板雑ッッッッ!!!トレーナー君、もう少しなんとかならなかったのか!?bbs.animanch.com
私の切り抜いた理事長産駒がSSを書いていて嬉しいぞッ!
- 12二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 18:44:55
良かったよ 登頂が盗聴になってるもん
- 13122/02/27(日) 19:07:55
- 14二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 19:13:28
- 15二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 21:07:00
この子はヒシミラクルですかね?ミラクルマンなおじさんもいるし
- 16二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 22:20:43
- 17二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 00:34:56
age
- 18二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 03:02:57
- 19二次元好きの匿名さん22/02/28(月) 14:45:02
保守
- 20122/02/28(月) 20:31:30
- 21二次元好きの匿名さん22/03/01(火) 02:14:03
夜Age
- 22二次元好きの匿名さん22/03/01(火) 12:48:37
保守
- 23二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 00:01:52
保守!
- 24二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 07:33:39
保守
- 25二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 12:47:37
保守
- 26二次元好きの匿名さん22/03/02(水) 22:49:14
保守用意
- 27二次元好きの匿名さん22/03/03(木) 06:54:44
保守完了
- 28二次元好きの匿名さん22/03/03(木) 12:47:44
保守
- 29二次元好きの匿名さん22/03/03(木) 21:10:30
保守
- 30二次元好きの匿名さん22/03/04(金) 03:08:39
hosh
- 31二次元好きの匿名さん22/03/04(金) 10:37:55
hosh
- 32二次元好きの匿名さん22/03/04(金) 12:46:55
保守
- 33二次元好きの匿名さん22/03/04(金) 23:18:32
hosh
- 34二次元好きの匿名さん22/03/05(土) 09:14:17
捕手
- 35二次元好きの匿名さん22/03/05(土) 15:08:31
保守
- 36二次元好きの匿名さん22/03/05(土) 15:09:46
保守しかねえ!
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