あるバカどもに花束を 3

  • 1二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:30:21

    経過報告15――■月■■日

    施設を探し回るには悪い日だった――どんよりとした時雨模様――最初に行ったあの施設のことを考えると憂鬱になるのは、そんな天気のせいかもしれない。あるいは自己欺瞞。私の心を暗くするのは、自分がおそらくそこに送られるだろうという思いだったかもしれない。黒服の車を借りた。先生がなぜそこに行くのかとか、そこに同行させてだとかを言うのだが、私は一人であそこを見なければならない。アキラには話さなかった。
    その施設までは、ミレニアム自治区から一時間半程度のドライブだった。施設はすぐに見えてきた。不規則に広がる陰気な構内は、狭い路地に面して立っている二本のコンクリートの門柱、それと施設名の標識によって、その存在をひっそりと周囲の世間に示していた。
    構内に入ってすぐの標識に時速20km以下とあったので徐行しながら幾棟かの建物を通り過ぎて、管理事務所を探しながら慎重に車を進めた。
    一台の車が向かいの道からこちらに向かってくる。ハンドルを握っている犬の獣人の男の他に、二人の獣人が後ろの座席にしがみついている。私は開けた窓から首を突き出して声をかけた。
    「ここの責任者は今どこへ?」
    運転手の男は車をゆっくりと止めて、前方を指差した。
    「病気の本館だね。ここから道なりに行って、曲がり角を左に曲がってずうっと右を見て行きな」
    車の後ろでこちらを見つめている若そうな鳥の獣人の――おそらく女の――その様子が嫌でも目を引いた。呆けた笑いがうっすらと浮かんでいる。太陽は出ていないし、むしろ鬱屈とした天気であるのに、彼女は帽子の縁を目深におろしている。
    一瞬彼女の視線を捉えた。
    その眼は大きく見開かれていて――物問いたげで――私は思わず目をそらした。
    向かいの車が走りだすと、彼女が興味ありげにこちらを眺めているのがバックミラーに写っていた。それは私を狼狽させた......
    なぜならそれはスオウを思い出させたからだ。

  • 2二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:33:37

    あの物語続きですか!ありがとうございます!!

  • 3二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:34:10

    おっ続きか

  • 4124/11/02(土) 21:34:16

    初代スレ

    あるバカどもに花束を|あにまん掲示板けえかほおこく1――■月■■日先せいはわたしが考えたこと思いだしたことこれからわたしのまわりでおこたことやおもたことは全ぶかいておいてといった。なぜだかわからないけど黒いひとはこれからわたしの神×をふ…bbs.animanch.com

    前スレ(落ちた)

    あるバカどもに花束を(立て直し)2|あにまん掲示板bbs.animanch.com

    一回落ちてしまったのですが、実はあの後も展開を書き溜めておりまして一応ある程度の所までは行ったので復活させちまえ!!

    と建てたのがこのスレでございます

    このスレで終わりまで行く予定です 結末はもう決めましたのであとは突っ走るだけと思われ

  • 5二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:35:31

    スレ立てありがとうございます
    前スレを保守できなくて申し訳ない

  • 6二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:39:02

    復活かんしゃ~

  • 7二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:40:40

    保守出来なくて萎えてしまったかと…ありがとう!楽しみにしてるよ。

  • 8二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:41:42

    続ききたぁ!!

  • 9二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:43:48

    スオウの物語の続きが見れそうで嬉しい!ありがとうございます!!

  • 10二次元好きの匿名さん24/11/02(土) 21:46:30

    10まで

  • 11124/11/02(土) 21:54:36

    責任者がとても若いのには驚いた。煤がついているような、どこかくたびれた表情を映し出している長身のロボットの男である。しかし落ち着いたその態度は、その風貌の陰にある力を感じさせた。
    事前に連絡はとってあったので、一通りの面会を済ませると彼は自分の車で構内を案内してくれ、体育館、病院、学校、それと管理事務所、患者が住んでいる「寮」などを指差して教えてくれた。
    「まわりには塀が見えないな」と私は言った。
    「ええ、入口の門と、野次馬を締め出すための生け垣くらいでして」
    「しかしそれならどうやって......彼らが......さまよい出るのを、構内から出るのを防ぐんだ?」
    彼は申し訳なさそうに微笑した。「それは不可能ってもんです。出ていく人もいますが......大抵はすぐ戻ってくる」
    「追わないのか?」
    彼は私の真意を探るように見た。
    「ええ。彼らがトラブルを起こせば――外の連中からすぐに通報が来る。さもなくばヴァルキューレだったりが連れてきます」
    「もし......戻ってこなければ?」
    「彼らの消息が不明になれば、彼ら自身から連絡がなければ外で十分に順応しただろうと考えます。お分かり頂きたいですがスオウさん、ここは監獄というわけではないのです。何百何千の人間を四六時中、厳重に監視できるほどの設備や人員はありませんよ。ここから出ていこうとするのは軽度な精神発達遅滞に限られますが――こういう患者は最近はもう受け入れていません。最近は四六時中保護を要するような脳障害患者の受け入れが増えてるんです。しかし軽度精神発達遅滞はある程度は自由に動き回れるし、外で一週間も暮らせばすぐ戻ってきますよ。外にはどこにも居場所がないち気付く。世間は彼らを受け入れることはない。それに銃を取って適切に扱えるような技術もありません。彼らはすぐに思い知らされます」
    『死んだとは、危険な状態にあるとは思わないのか』とは言えぬまま、私たちは車を降りて、「寮」の一つへ歩いていった。中の壁はどこもかしこも白く、建物全体が消毒液の匂いで満たされていた。一回のロビーはお遊戯室に通じていて、そこでは何十人もの獣人、それとロボット、それとヘイローに亀裂が走っていたり、欠けていたりする少女達が昼食のチャイムが鳴るのを待っていた。

  • 12二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 00:46:04

    このレスは削除されています

  • 13二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 11:50:58

    保守

  • 14二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 11:53:08

    施設は精神病院ことか

  • 15124/11/03(日) 12:06:55

    すぐに目についたのは隅で縮こまっている小柄な鳥の獣人で、それをもう一人の大柄な犬の獣人が手で抱きしめて揺すっていた。私は一瞬止めようとしたが躊躇し、ついぞその行為をやめさせることはなかった。私たちが入っていくと彼らは一斉にこちらを見た。そして出しゃばりな子が近づいてきて私を見つめた。
    「心配しなくていいんです」と彼は私の表情に気付いて言った。
    「危害を加えるようなことはありませんから」
    この階を担当しているのは鳥の婦人、シャツの袖をまくり上げて、私たちに近づいてきた。鍵の束を持っていて、動くたびに揺れてジャラジャラと音を鳴らしていた。
    彼女が振り返ったときに、顔の左側が火傷で覆われているのが見えた。
    「今日お客様がいらっしゃるなんて思いませんでしたわ」と彼女が言った。「お客様は今日は来ないことになっているでしょう」
    「こちらはスオウさんだよ。ハイランダーの中心からわざわざおいでになったんだ。ここを見学して我々の仕事を理解したいとおっしゃる。きみならいつだって構わないだろう?いつだってね」
    「まぁ、そうですね」彼女は力強く笑った。「でも今日はマットレスを裏返す日ですから。明日の方が臭いはずっとマシなんです」
    顔の痕が隠れるように、彼女はいつも私の左側に立つようにしている。彼女の案内によって、共同寝室、洗濯室、貯蔵室、食堂――を見て回った。彼女は話しながら笑みを浮かべるも、私を正面から真っ直ぐ見ようとはしない。彼女に見守られながらここで暮らす生活というのは、どんなものだろうと私は思った。

  • 16二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 12:07:43

    このレスは削除されています

  • 17124/11/03(日) 12:08:18

    「この建物の子たちはかなり良い方なんですよ」と彼女は言った。「でもどんなものか――お察しはつくでしょう?男女混合の数百人――一つの階にはおよそ八十人、それを私たち五人で世話するんですから。監督するのは楽じゃありませんよ。でもあの『ちらかし寮』よりはずっとマシです。あそこの職員は長続きしません。赤ん坊ならいざ知らず、大人だとかティーンエージャーの癖に自分の始末もできないとなったら、目も当てられない」

    「あなたはとても良い人のようだ」と私は言った。「あの子たちはあなたのような寮母に当たって幸運だな」
    彼女は、相も変わらず真っ直ぐに前を見つめたまま、おおらかに笑った。
    「まあまあ――と言ったところでしょうかねぇ、私はこの子たちが好きでたまらないんですよ。楽な仕事ではないけれど、この子たちがどれほど私たちを必要としているか考えるだけで報われるというものです」
    笑みがふっと消える。
    「正常な子たちはすぐに成長してしまって、すぐ私たちを必要としなくなります。自力でやるようになって――その子たちを愛した人間――世話をしてくれた人間のことなんて忘れてしまいます。でもこの子たちは私たちが与えられるもの全てを必要としているんです......一生涯ね」
    彼女は自身の発言と熱っぽい口調に照れて、また笑った。「辛い仕事ですけど、やりがいはありますわ」

  • 18124/11/03(日) 20:13:05

    責任者が待っている階下へ戻った時に昼食のチャイムが鳴った。
    お遊戯室の彼らは列を作り、食堂へと入っていった。大柄な獣人がさっき揺すっていた鳥の獣人の手をとってテーブルへ導いていく。
    「よくやるな」私は手をとりとられている二人を横目で見ながら言った。
    責任者は頷いた。「ああいうようなことはここではよく見られます。彼らに誰も目を向ける暇がないとき、彼らはお互いに人間的な接触や愛情を求め合うことを知っているんです」
    養護教室へ向かう途中、別の寮を通りがかると、中から悲鳴が聞こえた。それから泣き叫ぶ声に混じって、二、三人の声が響き渡った。窓には格子がはまっていた。
    責任者は気まずそうな顔をした。「特別保護棟ですよ」と彼は説明する。「情緒障害を持つ知的障害を持っている子たちです。隙あらば自分や他人を傷つけようとするので、常時拘禁する他ないのです」
    「情緒障害患者がここに?しかしここには精神科医や適した設備はなかったはずだ。精神科のある他の施設の方が相応しいのでは?」
    「ええ、ええ、そうですとも」と彼は頷いた。「しかしこれは厄介な問題でしてね。知能指数が境界域にあるような情緒障害患者は、ここに来てからしばらくしなければはっきりとしてこない。実際には彼らを受け入れる余地はないのですが、受け入れざるを得ないんですよ。なにしろ、キヴォトスには精神病棟が少なすぎます。それに明日、ここが爆発しないとも限らない。無論対策はとっているつもりですがね。まぁ、この年末までには三十人程度は受け入れられる余地ができる『かもしれませんが』。お分かりでしょうが、我々のスペースの問題は、普通の病院の過密状態とは違うんですね。うちの患者は普通、ここで一生を過ごすためにここへやって来るんですからね」
    真新しい養護教室の建物――大きなガラスをはめこんだ窓が並ぶ――ガラスとコンクリートの平屋の建物にやってくると、患者として、あの廊下を歩くのはどんな気持ちがするものだろうと想像した。
    教室へ入るのを待っている大人と子供の列の真ん中にいる自分を思い描いてみる。私は......車椅子の子供を押している連中の一人か?それとも誰かの手を引いてやっているのか?自分よりも小さい子供を抱いているのか?

  • 19124/11/03(日) 20:13:48

    工作をやっている教室の一つでは年長組の子供たちが教員の指導によってベンチを作っていた。彼らは我々を直ちに取り囲んで、じろじろと私を眺めた。教教員はノコギリを置いて近づいてきた。
    「こちらハイランダー鉄道学園のスオウさんです」と責任者は言った。「患者たちをご覧になりたいと言われて。ここを考えていらっしゃるようで」
    ロボットの教員は笑って、生徒に手を振った。
    「ほ、ほう、こちらの方がここをか、買うことになれば、私たちのことも一緒にひ、ひきとってくれるわけだ。そうしたらこ、工作用の材料を、も、もっとたくさん入れてもらわないと、ね」
    吃音。その彼が工作所を案内してくれている間、子供たちが異様に静かであることに私は気付いた。彼らは出来上がったばかりのベンチを紙やすりで磨いたり、ニスを塗ったりしているのだが、誰一人喋る者がいない。
    「こ、この子たちはだ、だんまりやなんです」
    彼は私の無言の問いを感じ取ったかのように言った。
    「ろ、聾唖者です」

    「ここには百人ほどいるんですよ」と責任者が補足する。
    信じ難いことだ......他の人間に比べて、なんと僅かなものしか授かっていないのだろうか!?
    知的障害で、聾唖......耳が聞こえず言葉は発せない。――しかもなお一心にベンチを磨いている。
    用材をすごい力で締め付けている少年の獣人が仕事の手を止め、責任者の腕を叩き部屋の隅を指差す。そこには仕上がったおびただしい数の製品が陳列棚に並べられ乾かされるのが見えた。

  • 20124/11/03(日) 20:14:25

    その子は二段目の棚にある、スタンドの台を指差して、それから自分を指差した。彼は言っているのだ――あの製品を作ったのは自分なのだと。
    仕上がりは不細工で、ぐらぐらしていて充填剤が見えている。塗ったニスは分厚くてまだらで――責任者と教員がそれを一生懸命褒めると、その子は誇らしげに笑って私を見つめ、私の賞賛を待ち受けている。

    「――うん」と私は頷き、口を開けて言葉をハッキリと言いながら、手元のスマホでメモ帳に内容を記載した。「とても、上手だ......素晴らしいと思う」彼が恐らく言ってもらいたがっているであろうことを言った。それを見せもした。
    しかし、私は空しかった。その子は私に向かってニッと笑い、それから帰り際にそばに寄って来て、さよならを言う代わりに私の腕に触るのだった。胸が痛くて、つまって、廊下に出るまで、私は感情を抑えるのに酷く、酷く苦労した。

  • 21二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 20:55:27

    スオウもこの子たちの中に入ってる可能性もあったのか...

  • 22二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 23:13:48

    このレスは削除されています

  • 23二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 09:57:13

    寮母の人どこか壊れているかのような気がするな

  • 24二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 14:49:26

    このレスは削除されています

  • 25二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 14:50:50

    このレスは削除されています

  • 26二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 14:51:40

    このレスは削除されています

  • 27124/11/04(月) 15:00:02

    養護学校の校長は背の低い、小太りの鳥の婦人で、私をきれいな図表の前に座らせ、患者の様々なタイプ、それとそれぞれの部門を担当する職員の数や研究テーマなどを示し始めた。
    「無論」彼女は説明する。「IQが高いのはこちらへはあまり来ません。彼らは――60から70あたりは、おいおい別の所で面倒を見てもらえるようになっていますし、学校に通っているのもいます。さもなければ他の施設がございますからね。私どものところへやってくる人達の大半は保護者の下で暮らしていけますし、ああ、この場合は親ではございません。それに簡単な仕事なら、工場やアルバイトとか――」
    「トイレの掃除とか、電車を発車させる――とか」と私は口を挟んだ。
    彼女は眉をよせた。「はい。そういう仕事もできるかもしれませんね。さて、私どもは子供たちを『きれい組』と『ちらかし組』に分類いたします。年齢を問わず、わたくしは彼らを子供と呼びます、ここではみんな子供ということになっています。同じレベルの者をそれぞれ集めて分類すれば、寮の運営もずっと楽になりますからね。ちらかし組の中には重度の脳障害患者がおりまして、寝台にほとんど収容されています。縛り付けて。彼らは一生、そんな風に扱われて......」
    「あるいは彼らを救う方法を、科学が発見するまで、か」
    「はぁ......」彼女は微笑し、慎重に、こう言った。「あの子たちにはもう、救いようがないのではないでしょうか」
    「救いようがない人間がいるはずがない」
    彼女は不安げに私をうかがった。
    「はい、はい!無論、おっしゃる通りです。希望を持たねば......」
    私は彼女を落ち着かなくさせた。彼女の子供として私がここに閉じ込められた時は、一体どんな風になるだろうと考えて思わず笑みをこぼしたのだ。私はきれい組か?それとも。

  • 28124/11/04(月) 15:00:51

    責任者のオフィスに戻り、コーヒーを飲みながら、彼は仕事の話をした。
    「ここはいい所ですよ」と彼は言う。
    「スタッフには精神科医はいません――外部から数週間ごとにカウンセラーがやってきます。ですがそれぐらいでちょうどいいんです。精神科の連中はみんな自分の仕事で忙しいですし、その仕事は適当に病名を当てはめて患者を自宅まで送り返すだけと来た。」
    「精神科医を雇おうと思えば雇えます。ですが、その人に払わなきゃいけない給料を考えたら、心理学者の連中を雇った方がよっぽど有意義な金の使い方です――己の一部をあの子たちのために犠牲にすることを厭わない人間をね」
    「『己の一部』というのは一体どういう意味だ?」
    彼は私を一瞬、探るように見た、疲労の陰に怒りの色が見えた。「金や物を与える人間は大勢いますが、時間と愛情を与えられる人間は少ない。そういう意味ですよ」
    苦々しい声音になった。そして向かいの本棚に乗っていた空の哺乳瓶を指差した。

    「あれが見えるでしょう?」
    「ああ、ここに入った時から何なのだろうと思っていた」

  • 29124/11/04(月) 15:01:19

    「ええ、一体何人の人間が大の男と女を腕に抱えてあの哺乳瓶でミルクを飲ませられるでしょうか?それも愛情を持って。そして患者たちに小便や大便をひっかけられたとしても平気な人間がどれほどいるというんでしょうか?驚きましたかねぇ?あなたには一生かかっても理解できないことですからね。高い高いマンションの最上階から地上を見下ろしていたんじゃあ。うちの患者のように人間としてのあらゆる体験から、機会から締め出されるのがどういうことかお分かりですか?」

    私は笑みを禁じ得なかった。彼は明らかにその笑みを誤解したようだ。さっと立ち上がって話を打ち切ったからである。私は誰よりもその辛さを知っている。その『何人の人間』に当てはまる人物を知っている。私が今そこから下を見下ろしていようと、いずれ下へと突き落とされることになるのを知っている。
    私がここに来て事情が明らかになれば、その時は彼も理解するだろう――彼はそういう人間だ。愚者ではない。
    施設からの帰路、私はどう考えて良いのか分からなかった。冷たい灰色の感触が私を取り巻いていた。リハビリだとか、治療だとか、あの連中を世間へ復帰させるだとか、そんな話は一言もなかった。彼らは一人たりとも希望は語らなかった。受けた印象は、生きているだけの屍――もっと言えば生かさず殺さず、何も知らさず、ただゆったりと死にゆくのを待つ――といったところか。魂は初めから腐っていて、ばらばらで、日々の時空をただ凝視すべく運命付けられているのだ。

    顔に火傷痕のある寮母、吃音の工作教員、それから母性的である校長、くたびれた若い責任者のことを思い、彼らがいかにしてあの沈黙する魂に献身する道を発見したのか知りたいと思った。
    年下を抱きかかえていたあの大柄な獣人のように、あの人たちは少ししか授からない者のために己の一部を差し出すことに満足を見出しているのだ。
    そして、見せてもらえなかったことについてはどうなのだろうか。
    私ももうすぐあそこに行くことになるかもしれない。あの連中と共に一生を送るために......待っていてくれるあの連中と、共に。

  • 30二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 22:28:36

    タイムリミットが近づいてるかもしれないのか...

  • 31二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 23:22:41

    このレスは削除されています

  • 32二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 23:23:25

    >>11

    とても若い……ロボット……?

  • 33二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 23:25:11

    >>32

    老いてるとボディーのところどころに傷が入ってたり金属光沢がくすんでるのかもしれん

    あとは声の音質が変わるとか

  • 34二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 07:28:16

    ほしゅ

スレッドは11/5 19:28頃に落ちます

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